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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】燃料ガス供給装置
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20240807BHJP
   F23N 1/00 20060101ALI20240807BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20240807BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240807BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20240807BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240807BHJP
【FI】
F23K5/00 301D
F23N1/00 103Z
G05D7/06 B
H01M8/04 N
H01M8/0438
H01M8/04746
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024539009
(86)(22)【出願日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2024005168
【審査請求日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2023029217
(32)【優先日】2023-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】松本 輝正
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 照章
(72)【発明者】
【氏名】能勢 明宏
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103158569(CN,A)
【文献】中国実用新案第211829046(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第114695920(CN,A)
【文献】特開2003-100334(JP,A)
【文献】実公平01-037265(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K 5/00
F23N 1/00
G05D 7/06
H01M 8/04
H01M 8/0438
H01M 8/04746
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを貯蔵するタンクから供給される燃料ガスの圧力を予め設定された圧力に減圧する少なくとも1つの減圧弁と、
前記少なくとも1つの減圧弁の下流側に形成される少なくとも1つのオリフィスを経由する燃料供給路を選択することにより前記燃料供給路からの燃料ガスの供給量を調整する供給量調整ユニットと
前記タンク内の前記燃料ガスの圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記供給量調整ユニットは、複数種類の前記燃料供給路の中から選択する少なくとも1つの燃料供給路を繰り返し変更するとともに、前記圧力センサから入力される検出信号に基づいて、前記少なくとも1つの燃料供給路を選択した状態を維持する状態維持時間を変化させることにより、前記燃料ガスの平均供給量が予め設定された目標供給量で維持されるように調整し、
前記供給量調整ユニットは、
前記タンク内の前記燃料ガスの圧力と、前記少なくとも1つの燃料供給路を選択した状態それぞれにおける前記供給量と、の相関を示すルックアップテーブルを記憶するルックアップテーブル記憶部と、
前記圧力センサから入力される検出信号に基づいて、前記タンク内の前記燃料ガスの圧力を特定し、前記ルックアップテーブルを参照して、特定した前記燃料ガスの圧力に対応する前記少なくとも1つの燃料供給路を選択した状態における前記供給量を特定し、特定した前記供給量と、前記少なくとも1つの燃料供給路を繰り返し変更する際の予め設定された切り替え周期と、から、前記平均供給量が前記目標供給量となるときの前記状態維持時間を算出し、算出した前記状態維持時間だけ前記少なくとも1つの燃料供給路を選択した状態が維持されるように制御する供給量調整部と、を有する、
料ガス供給装置。
【請求項2】
前記供給量調整部は、前記目標供給量の時間変化に応じて、前記状態維持時間を変化させることにより、前記平均供給量を変化させる、
請求項に記載の燃料ガス供給装置。
【請求項3】
前記供給量調整ユニットは、更に、前記少なくとも1つの減圧弁の下流側に形成される少なくとも1つのオリフィスを経由する燃料供給路を選択した状態と、下流側への燃料供給を遮断した状態と、を繰り返し交互に発生させることにより前記燃料供給路からの燃料ガスの供給量を調整する、
請求項1または2に記載の燃料ガス供給装置。
【請求項4】
燃料ガスを貯蔵するタンクから供給される燃料ガスの圧力を予め設定された圧力に減圧する少なくとも1つの減圧弁と、
前記少なくとも1つの減圧弁の下流側に形成される少なくとも1つのオリフィスを経由する燃料供給路を選択することにより前記燃料供給路からの燃料ガスの供給量を調整する供給量調整ユニットと、を備え、
前記供給量調整ユニットは、互いにオリフィス径が異なる2種類のオリフィスの両方を経由する第1燃料供給路のみが選択された第1状態と、前記2種類のオリフィスのうちオリフィス径が小さい一方のオリフィスを迂回し、他方のオリフィスのみを経由する第2燃料供給路と、前記第1燃料供給路と、の両方が選択された第2状態と、のいずれかに切り替える、
料ガス供給装置。
【請求項5】
底部で前記少なくとも1つの減圧弁の下流側に連通するとともに内側壁で前記オリフィスが設けられた第2オリフィス部材に連通する第1凹部が形成された本体部を更に備え、
前記供給量調整ユニットは、柱状であり先端部に第2凹部が形成されるとともに、前記第2凹部の内側から外側壁に連通するように前記オリフィスが穿設され、前記第1凹部内において摺動自在に嵌入された第1オリフィス部材と、
前記第1オリフィス部材を駆動する駆動部と、を有し、
前記駆動部は、前記第1凹部内における前記第1オリフィス部材の位置を変化させることにより、前記第1状態と前記第2状態とのいずれかに切り替わるように前記第1オリフィス部材を駆動する、
請求項に記載の燃料ガス供給装置。
【請求項6】
前記供給量調整ユニットは、更に、前記少なくとも1つの減圧弁の下流側に形成される少なくとも1つのオリフィスを経由する燃料供給路を選択した状態と、下流側への燃料供給を遮断した状態と、をとりうる、
請求項4または5に記載の燃料ガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスを高圧で貯蔵するタンクと、基準圧に基づいてタンクの供給口から供給されて燃料供給流路を流れる燃料ガスの圧力を減圧する減圧弁と、減圧弁の下流に設けられ、燃料供給流路の断面積を変化させることによって燃料ガスの供給量を制御する電気式圧力調整弁と、を備える燃料ガス供給システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。ここで、減圧弁は、ダイヤフラム式の減圧弁であり、内部に弁体とダイヤフラムとによって分離された大気圧導入室と水素供給路とが形成されており、大気圧導入室の大気圧と水素供給路の燃料ガスの圧力とが釣り合った状態となっている。そして、コンプレッサから大気圧導入室に供給される空気圧を、燃料ガスの流量が増加する場合と減少する場合とで一定となるように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-149398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された燃料ガス供給システムでは、減圧弁の圧力変化を抑制して燃料ガスの平均供給量を一定で維持するために、コンプレッサを含む空気供給手段が必要となるため、その分、燃料ガス供給システム全体が大型化してしまう虞がある。この場合、例えば小型無人飛行体のような小型移動手段に搭載すると、小型移動手段全体の重量が大きくなってしまい、燃費が低下してしまう虞もある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、小型化を図ることができる燃料ガス供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料ガス供給装置は、
燃料ガスを貯蔵するタンクから供給される燃料ガスの圧力を予め設定された圧力に減圧する少なくとも1つの減圧弁と、
前記少なくとも1つの減圧弁の下流側に形成される少なくとも1つのオリフィスを経由する燃料供給路を選択することにより前記燃料供給路からの燃料ガスの供給量を調整する供給量調整ユニットと
前記タンク内の前記燃料ガスの圧力を検出する圧力センサと、を備え、
前記供給量調整ユニットは、複数種類の前記燃料供給路の中から選択する少なくとも1つの燃料供給路を繰り返し変更するとともに、前記圧力センサから入力される検出信号に基づいて、前記少なくとも1つの燃料供給路を選択した状態を維持する状態維持時間を変化させることにより、前記燃料ガスの平均供給量が予め設定された目標供給量で維持されるように調整し、
前記供給量調整ユニットは、
前記タンク内の前記燃料ガスの圧力と、前記少なくとも1つの燃料供給路を選択した状態それぞれにおける前記供給量と、の相関を示すルックアップテーブルを記憶するルックアップテーブル記憶部と、
前記圧力センサから入力される検出信号に基づいて、前記タンク内の前記燃料ガスの圧力を特定し、前記ルックアップテーブルを参照して、特定した前記燃料ガスの圧力に対応する前記少なくとも1つの燃料供給路を選択した状態における前記供給量を特定し、特定した前記供給量と、前記少なくとも1つの燃料供給路を繰り返し変更する際の予め設定された切り替え周期と、から、前記平均供給量が前記目標供給量となるときの前記状態維持時間を算出し、算出した前記状態維持時間だけ前記少なくとも1つの燃料供給路を選択した状態が維持されるように制御する供給量調整部と、を有する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、供給量調整ユニットが、少なくとも1つの減圧弁の下流側に形成される少なくとも1つのオリフィスを経由する燃料供給路を選択することにより燃料供給路からの燃料ガスの供給量を調整する。これにより、燃料ガスの圧力変動を抑制するための機構が不要となるので、その分、燃料ガス供給装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る燃料ガス供給装置の構成図である。
図2】実施の形態に係る燃料ガス供給装置の斜視図である。
図3】実施の形態に係る燃料ガス供給装置の側面図である。
図4A】実施の形態に係る燃料ガス供給装置の図2のA-A線での断面矢視図である。
図4B】実施の形態に係る燃料ガス供給装置の図2および図3のB-B線での断面矢視図である。
図5A】実施の形態に係る燃料ガス供給装置が第1状態にある場合の図2のA-A線での断面矢視図である。
図5B】実施の形態に係る燃料ガス供給装置が第1状態にある場合の図3および図4AのC-C線での断面矢視図である。
図6A】実施の形態に係る燃料ガス供給装置が第2状態にある場合の図2のA-A線での断面矢視図である。
図6B】実施の形態に係る燃料ガス供給装置が第2状態にある場合の図3および図4AのC-C線での断面矢視図である。
図7】実施の形態に係る燃料ガス供給装置のルックアップテーブルが記憶する相関情報が示す相関関係を示す図である。
図8A】実施の形態に係る燃料ガス供給装置から供給される燃料ガスの供給量の推移を示し、単位周期当たりの第2状態で維持される時間がdT1_1の場合を示す図である。
図8B】実施の形態に係る燃料ガス供給装置から供給される燃料ガスの供給量の推移を示し、単位周期当たりの第2状態で維持される時間がdT1_1よりも長いdT1_2である場合を示す図である。
図9A】変形例に係る燃料ガス供給装置が第1状態にある場合の断面図である。
図9B】変形例に係る燃料ガス供給装置が第2状態にある場合の断面図である。
図10A】変形例に係る燃料ガス供給装置が第1状態にある場合の断面図である。
図10B】変形例に係る燃料ガス供給装置が第2状態にある場合の断面図である。
図11】変形例に係る燃料ガス供給装置の構成図である。
図12】変形例に係る燃料ガス供給装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る燃料ガス供給装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る燃料ガス供給装置は、燃料ガスを貯蔵するタンクから供給される燃料ガスの圧力を予め設定された圧力に減圧する減圧弁と、減圧弁の下流側に形成される、互いにオリフィス径が異なる複数種類のオリフィス部材のうちの少なくとも1つを経由する複数種類の燃料供給路の中から1つの燃料供給路を選択することにより燃料供給路からの燃料ガスの供給量を調整する供給量調整ユニットと、を備える。
【0010】
本実施の形態に係る燃料ガス供給システムは、図1に示すように、燃料ガスを貯蔵するタンク1と、タンク1に貯蔵された燃料ガスを、例えば燃料電池のような発電装置へ供給する燃料ガス供給装置2と、を備える。タンク1は、燃料ガスとして例えば水素を貯蔵する。
【0011】
燃料ガス供給装置2は、タンク1から供給される燃料ガスの燃料供給路L1に介挿された遮断弁21と、遮断弁21の下流側に設けられた減圧弁22と、減圧弁22の下流側に設けられ発電装置との接続口25へ供給する燃料ガスの流量を調節する供給量調整ユニット3と、を備える。また、燃料ガス供給装置2は、遮断弁21を遮断した状態で燃料ガスをタンク1に充填するための燃料充填部41と、タンク1の内圧が予め設定された基準値を超えた場合に開放さる安全弁42と、タンク1の内圧を計測する圧力センサ26とを備える。燃料充填部41は、燃料ガスのタンク1への充填時においてタンク1に充填された燃料ガスの逆流を防止するための逆止弁411を有する。更に、燃料ガス供給装置2は、遮断弁21の上流側に他のタンク(図示せず)を並列に接続する際に使用される接続ポート44と、減圧弁22の下流側の圧力が予め設定された基準圧力を超えた場合に開放される安全弁43と、を備える。
【0012】
燃料ガス供給装置2は、図2に示すように、本体部31と、有底円筒状であり本体部31の+Z方向側を覆うように本体部31に取り付けられるカバー32と、本体部31から-Z方向へ突出しタンク1の口金部分に固定される固定部33と、を備える。また、本体部31の-Y方向側には、枠状であり内側に後述の駆動部27が配置された状態で駆動部27を保持する駆動部保持部35が突設されている。更に、図3に示すように、本体部31の-X方向側には、筒状であり本体部31と連続一体に形成されるとともに、内側に供給量調整ユニット3の後述のオリフィス部材232が嵌入されるオリフィス部材保持部34が設けられている。オリフィス部材232の-X方向側に接続口25が配設されている。また、本体部31の-X方向側におけるオリフィス部材保持部34の+Y方向側において、Z軸方向に並ぶように安全弁42、43が配設されている。
【0013】
遮断弁21は、図4Aに示すように、円筒状であり筒軸方向における+Y方向側の端部が本体部31の+Y方向側に露出した状態で本体部31に形成された凹部31aに嵌入されたシリンダ211と、シリンダ211の内側に配置された弁体212と、弁体212の+Y方向側の端部に設けられた操作ノブ213と、を有する。また、遮断弁21は、シリンダ211の外壁に形成された溝211aに嵌入され本体部31の凹部31aの内壁に圧接するOリング214を有する。
【0014】
減圧弁22は、円筒状であり筒軸方向における-Z方向側の端部が本体部31に形成された凹部31bに嵌入されたシリンダ221と、弁体222と、弁体222を+Z方向側へ付勢する付勢部材223と、を有する。弁体222は、円筒状であり-Z方向側の端部がシリンダ221の内側に挿入された主部2221と、円板状であり主部2221の+Z方向側の端部から主部2221の径方向に延出した外鍔部2222と、を有する。また、減圧弁22は、弁体222の外鍔部2222の周面に形成された溝2222aに嵌入されカバー32の内壁に当接するOリング224と、弁体222の主部2221の-Z方向側の端部の外壁に形成された溝2221aに嵌入されシリンダ221の内壁に圧接するOリング225と、シリンダ221の-Z方向側の端部の外壁に形成された溝221aに嵌入され本体部31に形成された凹部31bの内壁に圧接するOリング226と、を有する。そして、主部2221の内側と外鍔部2222の+Z方向側とカバー32の内壁との間に形成される領域S221には、燃料ガスが導入され、カバー32の内壁と外鍔部2222の-Z方向側と主部2221の外壁と本体部31の+Z方向側との間に形成される領域S222には空気が導入される。そして、付勢部材223の付勢力と領域S221に導入された燃料ガスの圧力とに基づいて、弁体222の位置が定まる。減圧弁22は、遮断弁21が開放されると、タンク1から固定部33および本体部31の内側に形成された燃料供給路L1と、本体部31内部において遮断弁21から減圧弁22に連通する燃料供給路L2と、を流れる燃料ガスを予め設定された圧力に減圧して、減圧弁22の下流側の燃料供給路L3へ供給する。
【0015】
圧力センサ26は、例えばダイヤフラム式の圧力センサであり、-Y方向側の端部が本体部31の-Y方向側に露出した状態で本体部31に形成された凹部31cに嵌入されており、燃料供給路L1に連通する分岐流路L11を介して燃料供給路L1に存在する燃料ガスの圧力を検出する。そして、圧力センサ26は、検出した燃料ガスの圧力を示す検出信号を制御ユニット28へ出力する。
【0016】
燃料充填部41は、図4Bに示すように、円筒状であり筒軸方向における+X方向側の端部が本体部31の+X方向側に露出した状態で本体部31に形成された凹部31dに嵌入された充填部本体412を有し、充填部本体412の内側に逆止弁411が配設されている。充填部本体412の-X方向側の端部は、本体部31の内部に形成された分岐流路L12を介して燃料供給路L1に連通している。また、燃料充填部41は、充填部本体412の-X方向側の端部の外壁に形成された溝412bに嵌入され本体部31に形成された凹部31dの内壁に圧接するOリング413を有する。安全弁42は、本体部31における、X軸方向で燃料充填部41と燃料供給路L1を挟んで対向する位置に配置され、-X方向側の端部が本体部31の-X方向側に露出した状態で本体部31に形成された凹部31eに嵌入されている。安全弁42の+X方向側の端部は、本体部31の内部に形成された分岐流路L13を介して燃料供給路L1に連通している。安全弁43は、本体部31における安全弁42の+Z方向側に配置され、-X方向側の端部が本体部31の-X方向側に露出した状態で本体部31に形成された凹部31fに嵌入されている。安全弁43の+X方向側の端部は、減圧弁22における本体部31の内部に形成された燃料供給路L3に連通する領域に連通している。
【0017】
図1に戻って、供給量調整ユニット3は、複数種類の燃料供給路の中から選択する少なくとも1つの燃料供給路を繰り返し変更する。具体的には、供給量調整ユニット3は、減圧弁22の下流側に形成される、互いにオリフィス径が異なる2種類のオリフィス241、242のうちの少なくとも1つを経由する2種類の燃料供給路の中から少なくとも1つの燃料供給路を選択することにより燃料供給路L3からの燃料ガスの供給量を調整する。供給量調整ユニット3は、オリフィス241が形成されたオリフィス部材231と、オリフィス242が形成されたオリフィス部材232と、オリフィス部材231を駆動する駆動部27と、駆動部27を制御する制御ユニット28と、を有する。駆動部27は、オリフィス部材231を駆動することにより、矢印AR1に示すように、オリフィス241、242の両方を経由する燃料供給路のみが選択された第1状態と、オリフィス241を迂回しオリフィス242のみを経由する燃料供給路とオリフィス241、242の両方を経由する燃料供給路との両方が選択された第2状態と、のいずれかに切り替える。
【0018】
オリフィス部材231は、図5Aおよび図5Bに示すように、柱状であり-Y方向側の端部が本体部31の-Y方向側に露出した状態で本体部31に形成された凹部31gに、Y軸方向において摺動自在に嵌入されている。この凹部31gは、底部で減圧弁22の下流側に連通するとともに内側壁でオリフィス242が設けられたオリフィス部材232に連通している。オリフィス部材231の+Y方向側の端部には、凹部231aが形成されている。また、オリフィス部材231の+Y方向側の端部には、凹部231aの内側から外壁に連通するようにオリフィス241が穿設されている。また、オリフィス部材231の+Y方向側の端部の外壁には、溝231bが形成されており、溝231bには、シリコーンゴムのような弾性材料から環状に形成され凹部31gの内壁に弾接する封止部材233が嵌入されている。駆動部27は、+Y方向側の端部がオリフィス部材231に連結されたシャフト272と、シャフト272をY軸方向に沿って駆動するアクチュエータ271と、を有する。オリフィス部材232は、円筒状であり+X方向側の端部がオリフィス部材保持部34の+X方向側に露出した状態でオリフィス部材保持部34に形成された凹部34aに嵌入されている。オリフィス部材232の-X方向側の端部の内側にはオリフィス242が形成されている。また、オリフィス部材232の-X方向側の端部の外壁に形成された溝232aには、凹部34aの内壁に圧接するOリング234が嵌入されている。
【0019】
そして、図5Aおよび図5Bに示すように、オリフィス部材231が、その+Y方向側の端部が本体部31の凹部31gの底部に当接した第1位置Pos1にある状態では、破線矢印で示すように、オリフィス241、242の両方を経由する燃料供給路PASS1のみが選択された第1状態となる。ここで、駆動部27が、図6Aおよび図6Bの矢印AR2に示すように、オリフィス部材231を第1位置Pos1からその-Y方向側の第2位置Pos2へ移動させると、オリフィス部材231の+Y方向側の端部が本体部31の凹部31gの底部から離間した状態となる。この場合、オリフィス241を迂回しオリフィス242のみを経由する燃料供給路PASS2と、オリフィス241、242の両方を経由する燃料供給路PASS1と、の両方が選択された第2状態となる。この第2状態の場合、接続口25へ供給される燃料ガスの供給量は、第1状態の場合に比べて増加する。このように、駆動部27は、凹部31g内におけるオリフィス部材231の位置を変化させることにより、接続口25に燃料供給路L4を介して供給される燃料ガスの供給量を変化させる。
【0020】
制御ユニット28は、接続口25へ供給される燃料ガスの供給量を調整する供給量調整部281と、ルックアップテーブルを記憶するルックアップテーブル記憶部282と、を有する。制御ユニット28は、例えばメモリを備えたマイクロコンピュータである。ルックアップテーブル記憶部282が記憶するルックアップテーブルは、例えば図7に示すように、圧力センサ26で検出されるタンク1の燃料ガスの圧力Prと、前述の第1状態、第2状態それぞれにおける接続口25へ供給される燃料ガスの供給量F0、F1との相関関係を示す情報を記憶している。図7に示す例では、第1状態、第2状態それぞれにおける供給量F0、F1は、タンク1の圧力Prが満タン時の圧力Pr_0であるとき、最大供給量F0_0、F1_0となり、圧力Prが減少するにつれて漸減していくことを示している。
【0021】
供給量調整ユニット3は、圧力センサ26から入力される検出信号に基づいて、少なくとも1つの燃料供給路を選択した状態を維持する状態維持時間を変化させることにより、燃料ガスの平均供給量が予め設定された目標供給量で維持されるように調整する。具体的には、供給量調整部281は、圧力センサ26から入力される検出信号に基づいて、前述の第1状態と第2状態とを繰り返し交互に発生させて、燃料ガスの平均供給量が予め設定された目標供給量で維持されるように調整する。具体的には、供給量調整部281は、圧力センサ26から入力される検出信号に基づいて、本体部31の凹部31g内におけるオリフィス部材231の位置を繰り返し変化させるように駆動部27を制御する。これにより、図8Aおよび図8Bに示すように、接続口25へ供給される燃料ガスの供給量Fが、前述の第1状態における供給量F0と、第2状態における供給量F1と、に経時的に交互に変化する。そして、供給量調整部281は、接続口25へ供給される燃料ガスの供給量Fを時間平均した平均供給量が目標供給量となるように駆動部27を制御する。ここで平均供給量は、下記式(1)の関係式で表される。
【0022】
【数1】
【0023】
ここで、Faveは平均供給量を示し、F0は、前述の第1状態における供給量を示し、F1は、前述の第2状態における供給量を示す。また、dT1は、第2状態を維持している第2状態維持時間を示し、dT2は、第1状態と第2状態との切り替えを行う切り替え周期を示す。ここで、供給量調整部281は、圧力センサ26から入力される検出信号に基づいて、タンク1の圧力を特定し、ルックアップテーブル記憶部282が記憶するルックアップテーブルを参照して、特定した圧力に対応する各供給量F0、F1を特定する。次に、供給量調整部281は、前述の式(1)で表される関係式を用いて、特定した各供給量F0、F1と、予め設定された切り替え周期と、から、平均供給量が目標供給量となるときの第2状態維持時間を算出する。そして、供給量調整部281は、算出した第2状態維持時間だけ第2状態が維持されるように駆動部27を制御する。供給量調整部281は、例えば図8Aおよび図8Bに示すように、第2状態維持時間を時間dT1_1或いは時間dT1_1よりも長い時間dT1_2に切り替えることにより、接続口25へ供給される燃料ガスの平均供給量をFave1またはFave1よりも多いFave2に切り替える。また、供給量調整部281は、前述の目標供給量が経時的に変化する場合、当該目標供給量の時間変化に応じて、第2状態維持時間を変化させることにより、接続口25へ供給される燃料ガスの平均供給量を変化させる。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態に係る燃料ガス供給装置2によれば、供給量調整ユニット3が、減圧弁22の下流側に形成される、互いにオリフィス径が異なる複数種類のオリフィス241、242のうちの少なくとも1つを経由する2種類の燃料供給路PASS1、PASS2の中から少なくとも1つの燃料供給路PASS1、PASS2を選択することにより燃料供給路PASS1、PASS2からの燃料ガスの供給量を調整する。これにより、燃料ガスの圧力変動を抑制するための機構が不要となるので、その分、燃料ガス供給装置2全体の小型化を図ることができる。
【0025】
また、本実施の形態に係る燃料ガス供給装置2は、底部で減圧弁22の下流側に連通するとともに内側壁でオリフィス242が設けられたオリフィス部材232に連通する凹部31gが形成された本体部31を備える。また、供給量調整ユニット3は、柱状であり+Y方向側の端部に凹部231aが形成されるとともに、凹部231aの内側から外側壁に連通するオリフィス241が穿設され、凹部31g内において摺動自在に嵌入されたオリフィス部材231と、オリフィス部材231を駆動する駆動部27と、を有する。そして、供給量調整ユニット3は、駆動部27によりオリフィス部材231を駆動して、凹部31g内におけるオリフィス部材231の位置を変化させることにより、オリフィス241、242の両方を経由する燃料供給路のみが選択された第1状態と、オリフィス241を迂回し、オリフィス242のみを経由する燃料供給路PASS2と燃料供給路PASS1との両方が選択された第2状態と、のいずれかに切り替える。これにより、供給量調整ユニット3の構成の簡素化並びに小型化を図ることができる。
【0026】
更に、オリフィス部材231は、図5Aおよび図5Bに示すように、柱状であり-Y方向側の端部が本体部31の-Y方向側に露出した状態で本体部31に形成された凹部31gに、Y軸方向において摺動自在に嵌入されている。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば供給量調整ユニットが、減圧弁22の下流側に形成される、互いにオリフィス径が異なる3種類以上のオリフィスのうちの少なくとも1つを経由する3種類以上の燃料供給路の中から少なくとも1つの燃料供給路を選択することにより燃料ガスの供給量を調整するものであってもよい。
【0028】
実施の形態において、例えば図9Aに示すように、供給量調整ユニットが、燃料供給路L3から流入する燃料ガスを下流側へ流出させる供給路中継部材2231と、供給路中継部材2231を駆動する駆動部2027と、を有するものであってもよい。供給路中継部材2231は、柱状であり側壁に溝2231aが形成されるとともに、燃料供給路L3から溝2231aに流入する燃料ガスを下流側へ流出させる。また、この供給路中継部材2231は、燃料ガス供給装置の本体部2031に形成された凹部2031gに、その中心軸方向において摺動自在に嵌入されている。また、供給路中継部材2231の側壁におけるその中心軸方向における溝2231aの両側には、複数の溝2231bが形成されており、各溝2231bには、弾性材料から環状に形成され凹部2031gの内壁に弾接する封止部材2233が嵌入されている。駆動部2027は、供給路中継2231に連結されたシャフト2272と、シャフト2272を供給路中継部材2231の中心軸方向に沿って駆動するアクチュエータ2271と、を有する。
【0029】
また、本体部2031における凹部2031gと燃料供給路L4との間には、断面積が互いに異なる2つのオリフィス2241、2242が形成されている。オリフィス2241、2242は、例えば断面円形状であり、オリフィス2241の内径D1が、オリフィス2242の内径D2よりも小さくなっている。図9Aでは、破線矢印に示すように、燃料供給路L3から供給路中継部材2231の溝2231aに流入した燃料ガスがオリフィス2241のみを経由して燃料供給路L4へ至る状態となっている。そして、燃料供給装置の駆動部2027が、図9Bに示すように供給路中継部材2231を矢印AR3に示すように移動させると、破線矢印で示すように、燃料供給路L3から供給路中継部材2231の溝2231aに流入した燃料ガスがオリフィス2242のみを経由して燃料供給路L4へ至る状態に切り替わる。
【0030】
或いは、図10Aに示すように、燃料ガス供給装置の本体部3031における凹部3031gと燃料供給路L4との間に、2つのオリフィス3241、3242が形成されており、供給路中継部2231が、その溝2231aが2つのオリフィス3241、3242のいずれか一方のみに対向する位置または2つのオリフィス3241、3242の両方に対向する位置のいずれかに配置されるものであってもよい。図10Aでは、破線矢印に示すように、燃料供給路L3から供給路中継部材2231の溝2231aに流入した燃料ガスがオリフィス3241のみを経由して燃料供給路L4へ至る状態となっている。そして、燃料供給装置の駆動部3027が、図10Bに示すように供給路中継部材2231を矢印AR4に示すように移動させると、破線矢印で示すように、燃料供給路L3から供給路中継部材2231の溝2231aに流入した燃料ガスがオリフィス3241、3242の両方を経由して燃料供給路L4へ至る状態に切り替わる。
【0031】
実施の形態において、供給量調整ユニットが、更に、減圧弁22の下流側に形成される少なくとも1つのオリフィスを経由する燃料供給路を選択した状態と、下流側への燃料供給を遮断した状態と、を繰り返し交互に発生させることにより燃料供給路L3からの燃料ガスの供給量を調整するものであってもよい。即ち、実施の形態で説明した第1状態における燃料ガスの供給量が0に設定されるものであってもよい。この場合、供給量調整ユニットが、オリフィス部材231の代わりに、オリフィス部材231についてオリフィス241を無くした構造を有し燃料ガスの下流側への流出を遮断する遮断部材(図示せず)を備える構成とすればよい。
【0032】
実施の形態において、例えば図11に示す燃料ガス供給装置3002のように、タンク1から供給される燃料ガスの燃料供給路L1に介挿された遮断弁21の下流側に互いに直列に接続された2つの減圧弁3022を備えるものであってもよい。ここで、互いに直列に接続された減圧弁3022の数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。或いは、例えば図12に示す燃料ガス供給装置4002のように、タンク1から供給される燃料ガスの燃料供給路L1に介挿された遮断弁21の下流側に互いに並列に接続された2つの減圧弁4022を備えるものであってもよい。ここで、互いに並列に接続された減圧弁4022の数は、2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。或いは、並列に接続された複数の減圧弁4022から構成される少なくとも1つの組と、少なくとも1つの減圧弁3022とが互いに直列に接続された構成であってもよい。
【0033】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【0034】
本出願は、2023年2月28日に出願された日本国特許出願特願2023-029217号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2023-029217号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば小型移動手段に搭載される燃料電池へ燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置として好適である。
【符号の説明】
【0036】
1:タンク、2,3002,4002:燃料ガス供給装置、3:供給量調整ユニット、21:遮断弁、22,3022,4022:減圧弁、25:接続口、26:圧力センサ、27,2027:駆動部、28:制御ユニット、31:本体部、31a,31b,31c,31d,31e,31f,31g,34a,231a,2031g,3031g:凹部、32:カバー、33:固定部、34:オリフィス部材保持部、35:駆動部保持部、41:燃料充填部、42,43:安全弁、44:接続ポート、211,221:シリンダ、211a,221a,231b,232a,412a,2221a,2222a,2231a,2231b:溝、212,222:弁体、213:操作ノブ、214,224,225,226,234,413:Oリング、223:付勢部材、231,232:オリフィス部材、233,2233:封止部材、241,242,2241,2242,3241,3242:オリフィス、271,2271:アクチュエータ、272,2272:シャフト、281:供給量調整部、282:ルックアップテーブル記憶部、411:逆止弁、412:充填部本体、2221:主部、2222:外鍔部、2231:供給路中継部材、L1,L2,L3:燃料供給路、L11,L12,L13:分岐流路、PASS1,PASS2:燃料供給路、S221,S222:領域
【要約】
燃料ガス供給装置(2)は、燃料ガスを貯蔵するタンク(1)から供給される燃料ガスの圧力を予め設定された圧力に減圧する減圧弁(22)と、減圧弁(22)の下流側に形成される、互いにオリフィス径が異なる2つのオリフィス(241、242)のうちの少なくとも1つを経由する燃料供給路を選択することにより燃料供給路からの燃料ガスの供給量を調整する供給量調整ユニット(3)と、を備える。この燃料ガス供給装置(2)によれば、燃料ガスの圧力変動を抑制するための機構が不要となるので、その分、燃料ガス供給装置(2)全体の小型化を図ることができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12