IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京久栄の特許一覧

<>
  • 特許-水中移動体用作業装置 図1
  • 特許-水中移動体用作業装置 図2
  • 特許-水中移動体用作業装置 図3
  • 特許-水中移動体用作業装置 図4
  • 特許-水中移動体用作業装置 図5
  • 特許-水中移動体用作業装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】水中移動体用作業装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/14 20060101AFI20240808BHJP
   B63C 11/48 20060101ALI20240808BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20240808BHJP
   F16H 21/44 20060101ALI20240808BHJP
   F16H 21/10 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01N1/14 Z
B63C11/48 D
B63C11/00 B
F16H21/44 Z
F16H21/10 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021035901
(22)【出願日】2021-03-07
(65)【公開番号】P2022136346
(43)【公開日】2022-09-20
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000151449
【氏名又は名称】株式会社東京久栄
(74)【代理人】
【識別番号】100166073
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】國澤 弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 努
(72)【発明者】
【氏名】別所 学
(72)【発明者】
【氏名】小林 月都
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209814239(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111413135(CN,A)
【文献】特開2007-284986(JP,A)
【文献】実開平7-27786(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
B63C 11/48
B63C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲線状の開閉動作によるアームを備えた水中移動体に取り付けるための取付手段と、
直線状の作業動作によるシリンダとピストンとを備えた作業手段と、
前記水中移動体のアームの曲線状の開閉動作を、前記作業手段の直線状の作業動作に変換する、リンク機構とを備えたことを特徴とする、
水中移動体用作業装置。
【請求項2】
前記作業手段が、シリンダ内をピストンが前後移動するものであることを特徴とする、請求項1に記載の水中移動体用作業装置。
【請求項3】
前記リンク機構が、曲線状の開閉動作を行うアームへのアーム取付軸と、直線状の作業動作を行うピストンへのピストン取付軸との間を、回転固定軸を介して連結したものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の水中移動体用作業装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中移動体用作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水中を移動してサンプリング等をする作業装置として、例えば、特許文献1に記載のドローンを利用してサンプルボトルにより水のサンプルをサンプリングできる装置が知られている。
該装置は、図1に示すように、ドローン11の底面の中心にはドローン支えフレーム13が対称的にかつ固定的に装着され、ドローンの下方にはサンプル箱が設置され、ラックが歯車との噛合により伝動ロッド及び第一傘歯車を駆動して回転させ、移動機構により固定ブロックを駆動して下方に移動させ、サンプルボトルが移動して中部空間から出た時、位置制限ブロックが位置制限空間の底壁まで移動することで、スライドブロックがヒンジロッドにより移動ブロックを駆動して回転させ、サンプルボトルを傾斜させることによりドローンがサンプルボトルを水中に入れることに必要な力を減らし、また、サンプルボトルを傾斜させる場合に、水がサンプルボトルの中に入る速度が速くなり、ドローンと水面の距離を大きくさせることもできるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6789477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の装置は、ドローン自体を含む構造のサンプリング装置であって、市販されているドローンに取り付けて使用することを考慮したものではない。
また、該装置は、水面下のサンプリングを対象としたものであり、任意の水深下のサンプリングを考慮したものではない。
【0005】
したがって、本発明の解決しようとする課題は、市販の水中移動に適した開閉アームを有するドローンに取り付け可能で、任意の水深でのサンプリングを可能とする水中動体用作業装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0007】
第1に、
曲線状の開閉動作によるアームを備えた水中移動体に取り付けるための取付手段と、
直線状の作業動作によるシリンダとピストンとを備えた作業手段と、
前記水中移動体のアームの曲線状の開閉動作を、前記作業手段の直線状の作業動作に変換する、リンク機構とを備えたことを特徴とする、
水中移動体用作業装置。
【0008】
前記曲線状の開閉動作によるアームとは、左アームの先端部と右アームの先端部が左右方向に曲線移動することで、対象物を挟み込むことが可能な構造のものをいう。
前記直線状の作業動作によるシリンダとピストンとは、シリンダ内をピストンが前後方向に直線移動することで、シリンダ内にサンプル対象の液状物を取り込み可能とし、また、シリンダ内の液状物を放出することを可能にした、一般的な注射器と同様の構造のものをいう。
【0009】
前記リンク機構とは、曲線状の開閉動作を行うアームへのアーム取付軸と、直線状の作業動作を行うピストンへのピストン取付軸との間を、回転固定軸を介して連結した構造のものである。
該アーム取付軸は、アームの開閉動作により、曲線状に位置が移動するものである。
該ピストン取付軸は、ピストンの動きにより、直線状に位置が移動するものである。
また、アーム取付軸と回転固定軸との間を連結する部材は、第1連結部材といい、ピストン取付け部と回転固定軸との間を連結する部材は、第2連結部材という。
ここで、第2連部材の回転固定軸との連結は、直接的に連結する他に、回転固定軸に連結された第1連結部材に連結することで間接的に連結することもできる。
該第2連結部材は、第1リンク体と第2リンク体とを移動支点軸で接続することで、前後に伸縮可能としたものである。
【0010】
第2に、
前記作業手段が、シリンダ内をピストンが前後移動するものであることを特徴とする、前記第1に記載の水中移動体用作業装置。
第3に、
前記リンク機構が、曲線状の開閉動作を行うアームへのアーム取付軸と、直線状の作業動作を行うピストンへのピストン取付軸との間を、回転固定軸を介して連結したものであり、
該ピストン取付軸が、スライドレールにガイドされ、直線状に前後移動可能に構成されていることを特徴とする、前記第1または第2に記載の水中移動体用作業装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0012】
本発明の水中移動体用作業装置は、水中移動体に取り付けるための取付手段を有しているので、市販の水中移動に適した開閉アームを有するドローンに取り付け可能であると共に、シリンダとピストンとを備えた作業手段を有しているので、任意の水深でのサンプリングが可能である。
また、本発明の水中移動体用作業装置は、予めシリンダ内に液状物を充填した状態で、水中移動体に取り付けておくことで、任意の水深での液状物の放出も可能となる。
すなわち、本発明の水中移動体用作業装置によると、液状物として色付きの液体を充填し、水中の目標箇所で放出することで、ダムのクラック(ひび割れ部)からの漏水確認や、水の流れの目視確認等にも利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の水中移動体用作業装置のサンプリング前の使用状態の説明図である。
図2】本発明の水中移動体用作業装置のサンプリング後の使用状態の説明図である。
図3】本発明の水中移動体用作業装置のリンク機構のサンプリング前の説明図である。
図4】本発明の水中移動体用作業装置のリンク機構のサンプリング後の説明図である。
図5】本発明の水中移動体用作業装置を、水中移動体に取り付けるアーム制御体に取り付けた状態の説明図である。
図6図5の状態で主要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
ここで、添付図面において同一の部材には同一符号を付しており、また重複した説明は省略されている。
なお、ここでの説明は本発明が実施される一形態であることから、本発明は該当形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0015】
主に図1図2に示すように、本実施例の水中移動体用作業装置は、曲線状の開閉動作によるアーム1を備えた水中移動体2に取り付けるための取付手段10(図6参照)と、直線状の作業動作によるシリンダ21とピストン22とを備えた作業手段20と、前記水中移動体2のアーム1の曲線状の開閉動作を、前記作業手段20の直線状の作業動作に変換する、リンク機構30とを備えている。
【0016】
図1図2中、符号11は、本実施例の水中移動体用作業装置のバランスを調整するための浮力調整部材であり、図示は省力するが、結束バンドによって取り付けられている。
【0017】
水中移動体2には、図5図6に示す薄板状のアーム接続基台4を介して、図1図2に示すように、曲線状の開閉動作によるアーム1が取り付けられている。
図5図6に示すとおり、アーム接続基台4には、円筒状のアーム制御体3が取り付けられ、該アーム制御体3の先端側に左右水平方向に開閉自在なアーム1が取り付けられている。
このように、円筒状のアーム制御体3が取り付けられたアーム接続基台4によって、図1に示すように、アーム1が取り付けられているので、本実施例の水中移動体2は、アーム1を備えたものとして構成されている。
【0018】
該アーム1は、図1図2において右側に位置する右アーム1Aと、左側に位置する左アーム1Bとで構成され、左アーム1Bの先端部と右アーム1Aの先端部とが左右水平方向に円弧状に曲線移動することで、対象物を挟み込み可能にしたものである。
図5図6中、符号5は、アーム制御体3の両側に位置する円筒状のフロートであり、アーム制御体3と共にアーム接続基台4に取り付けられている。
【0019】
取付手段10は、図6に示すように、円筒状のアーム制御体3を差し込み可能な円状開口部を有する接続部材12と、アーム制御体3より長い薄板状のベース板13と、ネジ,ボルト,ワッシャによる締付部品14とで構成されている。
接続部材12は、円筒状のアーム制御体3の先端部、中間部、後端部の3箇所において、アーム制御体3を円状開口部の内側に納める状態で、締付部品14によってベース板13に取り付けられている。
【0020】
作業手段20は、図6に示すように、注射器と同様の構造の直線状の作業動作によるシリンダ21とピストン22とを備えている。
図6中、21Aは、シリンダ21の先端に位置するノズルである。
【0021】
図6に示すように、シリンダ21は、中間部と後端部の2箇所で、シリンダ21の外周を取り囲むシリンダクランプ23によって、ベース板13に着脱自在に取り付けられている。
該シリンダ21とピストン22とは、シリンダ21内をピストン22が前後方向に直線移動することで、シリンダ21内にサンプル対象の液状物を取り込み可能とし、また、必要に応じて、ピストン22の直線状の動きによって、シリンダ21内の液状物を押し出すことでノズル21Aから放出することを可能にしたものである。
【0022】
リンク機構30は、シリンダ21及びピストン22を取り外した状態の図3図4に示すように、アーム取付軸31,ピストン取付軸32,回転固定軸33,第1連結部材34,第2連結部材35,第1リンク体35A,第2リンク体35B,移動支点軸35Cを有するものである。
【0023】
アーム取付軸31は、アーム1の開閉動作により、曲線状に位置が移動するものであり、図6に示すように、アーム1の先端側と第1連結部材34の一端側とを、両者の間隔より長いボルト,ナット,ワッシャを用いて、動作可能に緩く軸止したものである。
【0024】
図6に示すように、ピストン取付軸32は、ピストン22の動きにより、直線状に位置が移動するものであり、ピストン22の後端側と第2連結部材35の一端側とを、ピストン22の後端側に取り付けられたL型金具37,該L型金具37の水平張出片37aを貫通するボルト,ナット,ワッシャ,スライドナット38を用いて、動作可能に緩く軸止したものである。
該ピストン取付軸32は、図3図4に示すように、スライドナット38(図6参照)を納める凹型構造のスライドレール36によってガイドされることで、直線状に移動可能に構成されている。
【0025】
図3図4に示すように、第1連結部材34は、アーム取付軸31と回転固定軸33との間を連結するL型形状の金具である。
該L型形状の金具の曲がり部分には、アーム1の開閉の際に支点となる回転固定軸33が位置している。
【0026】
図3図4に示すように、第2連結部材35は、ピストン取付軸32と回転固定軸33との間を連結する部材である。
本実施例では、該第2連結部材35が、回転固定軸33に連結された第1連結部材34に、ボルト,ナット,ワッシャを用いて動作可能に緩く軸止した第1取付軸39及び第2取付軸40によって連結されることで、回転固定軸33とは第1連結部材34を介して間接的に連結されている。
該第2連結部材35は、取付位置調整用の開孔群が形成された細長片である第1リンク体35A及び第2リンク体35Bを、移動支点軸35Cで、ボルト,ナット,ワッシャを用いて動作可能に緩く接続することで、前後に伸縮可能とし、ピストン22の前後移動を可能としたものである。
【0027】
次に、上記の水中移動体用作業装置の作用について説明する。
【0028】
図1に示すとおり、アーム1を閉じた状態の水中移動体2に、取付手段(図6参照)によって、本実施例のシリンダ21とピストン22による作業手段20を備えた水中移動体用作業装置を取り付ける。
【0029】
その後、図示は省略するが、該水中移動体用作業装置を取り付けた水中移動体2を動作させて、水中の所定の水深まで移動する。
移動後、図3に示すとおり、アーム1を操作して右アーム1A及び左アーム1Bを開くことで、各アーム取付軸31が、回転固定軸33(図3参照)を支点として、曲線状に左右に移動する。
【0030】
アーム取付軸31の移動によって、第1連結部材34において、アーム取付軸31の取付側とは他端側に位置する第1取付軸39,第2取付軸40も、回転固定軸33を支点として曲線状に移動する。
該第1取付軸39,第2取付軸40の動きに連動して、第2連結部材35を構成する第1リンク体35A,移動支点軸35C,第2リンク体35Bも移動する。
【0031】
該第2連結部材35の各部材が移動することで、第2リンク体35Bの移動支点軸35Cとは反対側に位置するピストン取付軸32が動作する。
該ピストン取付軸32は、スライドナット38がスライドレール36に組み合うことで、ガイドされつつ直線状に移動し、図4に示す状態になる。
【0032】
図4の状態では、図2に示すように、ピストン取付軸32がピストン22を引っ張ることで、ノズル21Aから水中での対象サンプリング試料をシリンダ21内に吸い込む。
吸い込み後は、水中移動体2を操作してサンプリング試料を回収する。
【0033】
上記の回収例とは別の態様として、図2に示すように、予めシリンダ21内に色付液状物を充填した状態で、本実施例に係る水中移動体用作業装置を水中移動体2に取り付け、水中の目標箇所で、図1に示すように、アーム1を閉じるように操作することで色付液状物を放出できるので、水の流れの目視確認等に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 アーム
1A 右アーム
1B 左アーム
2 水中移動体
3 アーム制御体
4 アーム接続基台
5 フロート
10 取付手段
11 浮力調整部材
12 接続部材
13 ベース板
14 締付部品
20 作業手段
21 シリンダ
21A ノズル
22 ピストン
23 シリンダクランプ
30 リンク機構
31 アーム取付軸
32 ピストン取付軸
33 回転固定軸
34 第1連結部材
35 第2連結部材
35A 第1リンク体
35B 第2リンク体
35C 移動支点軸
36 スライドレール
37 L型金具
37a 水平張出片
38 スライドナット
39 第1取付軸
40 第2取付軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6