(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】エンジンの燃料系部品保護構造
(51)【国際特許分類】
F02M 55/02 20060101AFI20240808BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20240808BHJP
F02B 77/08 20060101ALI20240808BHJP
F02B 77/00 20060101ALI20240808BHJP
F02B 67/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
F02M55/02 350Z
F02M55/02 350H
F02M37/00 321Z
F02B77/08 L
F02B77/00 N
F02B67/00 N
(21)【出願番号】P 2021020845
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】守田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】石川 靖
(72)【発明者】
【氏名】河野 剛
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138772(JP,A)
【文献】実開平02-145635(JP,U)
【文献】特開2019-015210(JP,A)
【文献】特開2004-245147(JP,A)
【文献】特開2018-031337(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0162699(US,A1)
【文献】特開2015-078605(JP,A)
【文献】特開2006-046330(JP,A)
【文献】特開2011-185228(JP,A)
【文献】特開2005-113818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/00 ~ 55/02
F02M 37/00
F02B 77/08
F02B 77/00
F02B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの側壁近傍に配設された燃料系部品と、この燃料系部品に対して反エンジン側に配設されたスロットルボディとを備えたエンジンの燃料系部品保護構造において、
前記燃料系部品とスロットルボディとの間に平面視にて略コ字状に形成されたプロテクタ部材であって、前記燃料系部品の反エンジン側を覆う本体部と、この本体部からエンジン側に延びて前記側壁に固定された一端部と、前記本体部から前記側壁の近傍位置まで延設された他端部とを備えたプロテクタ部材を設け、
前記本体部が、前記他端部側に前記スロットルボディと車両衝突時に干渉する干渉部を有し、
前記干渉部は、前記スロットルボディを前記燃料系部品から離隔するように誘導可能なR形状に構成されたことを特徴とするエンジンの燃料系部品保護構造。
【請求項2】
前記干渉部は、平面視にて前記スロットルボディのフランジ部と略直線上になるように配置されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料系部品保護構造。
【請求項3】
前記スロットルボディに接続された吸気管が前記プロテクタ部材の反エンジン側に配置され、前記吸気管の前記プロテクタ部材に近接した部分が合成樹脂材料で構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの燃料系部品保護構造。
【請求項4】
前記他端部と前記側壁との離間距離は、前記本体部と前記燃料系部品との離間距離よりも短く設定されたことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のエンジンの燃料系部品保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの側壁近傍に配設された燃料系部品と、この燃料系部品に対して反エンジン側に配設されたスロットルボディとを備えたエンジンの燃料系部品保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、気筒内の燃焼室に直接燃料を供給する直噴エンジンでは、熱影響を避けるため、駆動負荷が大きい高圧燃料ポンプをエンジン本体の吸気側側壁近傍に配置し、吸気側カムシャフトを用いて高圧燃料ポンプを駆動している。そして、高圧燃料ポンプによって昇圧された高圧燃料は、燃料供給管としての高圧配管を介して複数のインジェクタが装着された燃料レール(デリバリパイプ)に供給され、各燃焼室に噴射される。
【0003】
車両衝突時、燃料系部品の1つである高圧配管が後退してエンジン本体に干渉する、或いはエンジン部品である吸気マニホールド等が後退して高圧配管に干渉する虞がある。
特に、インタクーラをエンジン本体の側壁中段部近傍に配設した横置きエンジンの場合、インタクーラに接続されたスロットルボディとこのスロットルボディの後方に位置するエンジン本体との間に高圧配管が配置されるレイアウト構造が採用されることから、高圧配管がスロットルボディ等に干渉するリスクは高くなる。
【0004】
特許文献1のエンジンの燃料供給装置は、吸気マニホールドよりもエンジン側に配置され且つ複数のインジェクタに燃料を分配する燃料レールと、燃料ポンプから燃料レールに燃料を供給する高圧配管と、吸気マニホールドに接続された上流吸気管と、この上流吸気管をシリンダヘッドに固定するステーとを備え、ステーは、シリンダヘッドに固定する上下1対のボルトの間部分において、燃料レールの一側端部及び燃料レールと燃料供給管の接続部とをカバーするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のエンジンの燃料供給装置のように、燃料系部品の外周をプロテクタ部材で囲繞することにより、車両衝突時、燃料系部品の損傷を回避することが可能である。
図8に示すように、プロテクタ部材60は、エンジン部品51に対向して燃料系部品52との間に介在する本体部61と、この本体部61の一端からエンジン側壁53に向けて延設されて側壁53に締結固定される一端部62と、本体部61の他端からエンジン側壁53に向けて延設されて側壁53に締結固定される他端部63とから主に構成されている。それ故、プロテクタ部材60及び1対の締結部材64により車体重量が増加する虞がある。
特に、エンジン部品51がスロットルボディのような塊状の金属製構造体の場合、プロテクタ部材60自身の強度剛性の向上に加えて、プロテクタ部材60の支持強度を増加する必要があり、更に重量増加が懸念される。
【0007】
図9に示すように、軽量化を狙いとして、エンジン側壁Cから十分に離隔するように他端部73の寸法を短くすると共にその締結部材74を省略することが考えられる。
他端部73がエンジン側壁53から離隔しているため、プロテクタ部材70は、一端部72によって片側支持されている。それ故、エンジン部品51が本体部71に衝突した際、プロテクタ部材70は、締結部材74を支点として時計回りに回動、或いは本体部71と一端部72との境界部分を支点として時計回りに回動して燃料系部品52に干渉する虞がある。即ち、重量軽減を図りつつ燃料系部品の衝突安全性を確保することは容易ではない。
【0008】
本発明の目的は、重量軽減を図りつつ燃料系部品の衝突安全性を確保可能なエンジンの燃料系部品保護構造等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のエンジンの燃料系部品保護構造は、エンジンの側壁近傍に配設された燃料系部品と、この燃料系部品に対して反エンジン側に配設されたスロットルボディとを備えたエンジンの燃料系部品保護構造において、前記燃料系部品とスロットルボディとの間に平面視にて略コ字状に形成されたプロテクタ部材であって、前記燃料系部品の反エンジン側を覆う本体部と、この本体部からエンジン側に延びて前記側壁に固定された一端部と、前記本体部から前記側壁の近傍位置まで延設された他端部とを備えたプロテクタ部材を設け、前記本体部が、前記他端部側に前記スロットルボディと車両衝突時に干渉する干渉部を有し、前記干渉部は、前記スロットルボディを前記燃料系部品から離隔するように誘導可能なR形状に構成されたことを特徴としている。
【0010】
このエンジンの燃料系部品保護構造では、プロテクタ部材が、前記燃料系部品とスロットルボディとの間に平面視にて略コ字状に形成されているため、燃料系部品の外周を囲繞することができ、車両衝突時、スロットルボディとの干渉に伴う燃料系部品の損傷を回避することができる。プロテクタ部材が、前記燃料系部品の反エンジン側を覆う本体部と、この本体部からエンジン側に延びて前記側壁に固定された一端部と、前記本体部から前記側壁の近傍位置まで延設された他端部とを備えているため、他端部の短縮化及びプロテクタ部材を固定するための締結部材を省略することができ、重量低減を図ることができる。
前記本体部が、前記他端部側に前記スロットルボディと車両衝突時に干渉する干渉部を有し、前記干渉部は、前記スロットルボディを前記燃料系部品から離隔するように誘導可能なR形状に構成されているため、車両衝突時、R形状によりスロットルボディを受け止めることなく燃料系部品から離隔方向に誘導することができ、プロテクタ部材の強度低下に伴う薄肉化により一層重量低減を図ることができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記干渉部は、平面視にて前記スロットルボディのフランジ部と略直線上になるように配置されたことを特徴としている。
この構成によれば、車両衝突時、スロットルボディをR形状により燃料系部品から離隔方向に確実に誘導することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記スロットルボディに接続された吸気管が前記プロテクタ部材の反エンジン側に配置され、前記吸気管の前記プロテクタ部材に近接した部分が合成樹脂材料で構成されたことを特徴としている。
この構成によれば、車両衝突時、吸気管を積極的に破壊することにより、吸気管の誘導を一層促進することができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記他端部と前記側壁との離間距離は、前記本体部と前記燃料系部品との離間距離よりも短く設定されたことを特徴としている。この構成によれば、本体部と燃料系部品とが干渉する前にR形状によるスロットルボディの誘導を開始することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエンジンの燃料系部品保護構造によれば、車両衝突時、R形状によりスロットルボディを燃料系部品から離隔方向に誘導することにより、重量軽減を図りつつ燃料系部品の衝突安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1に係る燃料系部品保護構造を備えたエンジンの斜視図である。
【
図5】プロテクタ部材を示す図であって、(a)は、斜め下方から視た図、(b)は、側方から視た図を示している。
【
図6】衝突実験結果を示す平面図であって、(a)は、衝突初期状態、(b)は、衝突中期状態、(c)は、衝突後期状態を示している。
【
図7】実施例1に係るプロテクタ部材のモデル図である。
【
図8】従来技術に係るプロテクタ部材のモデル図である。
【
図9】別の従来技術に係るプロテクタ部材のモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両用エンジンに適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施例1について
図1~
図7に基づいて説明する。
まず、本発明に係るエンジン1の概略構成について、
図1に基づき説明する。
エンジン1は、4輪の車両に搭載されたガソリンエンジン(特に、4ストローク式内燃機関)である。このエンジン1は、直列状に配置された4つのシリンダを備え、これらのシリンダが車幅方向に沿って並んだ直列4気筒横置きエンジンである。
【0018】
図1に示すように、エンジン1は、エンジン本体2と、エンジン本体2の前側に形成された吸気装置3と、エンジン本体2の後側に形成された排気装置(図示略)と、ターボ過給機(図示略)と、燃料系ユニット10等を主な構成要素としている。
エンジン本体2は、内部に気筒(図示略)が形成されたシリンダブロック4と、気筒を上から閉塞するようにシリンダブロック4の上面に取り付けられたシリンダヘッド5と、気筒内に収容されたピストン(図示略)等を有している。
尚、エンジン本体2の左側端部には、ミッションケース7のコンバータハウジング8が複数の締結部材を介して取り付けられている。
【0019】
ピストンの上方には燃焼室(図示略)が区画されている。燃焼室は、シリンダヘッド5の下面、気筒及びピストンの冠面によって形成されている。シリンダヘッド5には、燃焼室に高圧燃料を噴射するインジェクタ14(
図4参照)と、インジェクタ14から燃焼室に噴射された燃料と燃焼室に導入された空気とが混合された混合気に点火する点火プラグ(図示略)とが設けられている。以下、図において、矢印F方向を前方とし、矢印L方向を左方とし、矢印U方向を上方として説明する。
【0020】
吸気装置3は、エンジン本体2の吸気ポート(図示略)に接続された吸気通路6と、吸気系ユニット20とを有している。吸気通路6の上流端には、エアクリーナ(図示略)が設けられ、新気は、エアクリーナを介して吸気通路6に吸入される。吸気通路6には、ターボ過給機のコンプレッサ(図示略)と、スロットルボディ22に装備されたスロットルバルブ(図示略)と、インタクーラ21と、サージタンク23等が介設されている。
吸気通路6を流れてきた吸気は、ターボ過給機のコンプレッサによって過給され、スロットルバルブを通過してインタクーラ21に送られる。インタクーラ21では、コンプレッサの圧縮作用により上昇した吸気温度の冷却を行っている。
【0021】
次に、吸気系ユニット20について説明する。
吸気系ユニット20は、正面視にて略T字状に形成され、吸気系統の一部とインタクーラ21とが一体化されてエンジン本体2の前側に装着されている。
吸気系ユニット20には、吸気通路6の上流側吸気通路6aよりも下流側部分、インタクーラ21、スロットルボディ22、サージタンク23、独立吸気通路24、ブローバイ導入口等が含まれている。
【0022】
吸気系ユニット20は、合成樹脂材料で一体形成され、その下半部の内側(後側)ハウジングには、インタクーラ21のインタークーラコア(図示略)を収容可能な略直方体のチャンバ(図示略)が形成されている。それ故、インタクーラ21はエンジン本体2の前側側壁の中段部近傍に位置している。インタークーラコアは、冷却水が流通する蛇行状の冷却水通路が内部に形成された複数枚のプレートと、これらプレート間に挟まれた冷却フィンとから構成される積層コア構造体である。
【0023】
吸気系ユニット20の下側左端部で且つシリンダブロック4の中段部前方には、インタークーラコアに対応するようにスロットルボディ22が装着されている。
図1~
図3に示すように、スロットルボディ22の左端部には、吸気導入口が形成されたフランジ部22aが配置されている。スロットルボディ22のフランジ部22aは、左側から水平方向右側に延びる上流側吸気通路6aのフランジ部6bに複数の締結部材を用いて締結固定されている。尚、上流側吸気通路6aは、フランジ部6bを含めて合成樹脂材料で形成されている。
【0024】
次に、燃料系ユニット10について説明する。
図4に示すように、燃料系ユニット10は、金属製の高圧燃料ポンプ11と、複数(例えば4つ)のインジェクタ14が装着された金属製の燃料レール12と、高圧燃料ポンプ11の導出部と燃料レール12の左端側部分とを連通する金属製の高圧配管13等を備えている。
【0025】
高圧燃料ポンプ11は、ポンプカムを備えた回転自在なカム軸と、ポンプカムを収容するカム室と、ポンプカムに摺接して回動自在なローラと、このローラに押圧されると共にスプリングに付勢されたシューと、このシューと同期して上下に往復動するプランジャと、このプランジャの先端部に形成されたポンプ室等によって構成されている(何れも図示略)。高圧燃料ポンプ11は、吸気系ユニット20よりも高い高さ位置において、エンジン本体2の吸気側に対応するようにエンジン本体2の左側前部に配設されている。
高圧燃料ポンプ11のカム軸は、エンジン本体2の吸気側カムシャフト(図示略)によって駆動される。
【0026】
図4に示すように、燃料レール12は、ステンレス製パイプで構成され、4つのインジェクタ14が係止部材を介して取り付けられている。
図1,
図3に示すように、燃料レール12は、サージタンク23の下側且つインタクーラ21の上側において、シリンダブロック4の前側側壁近傍位置を左右方向に略直線状に延びるように配設されている。
この燃料レール12は、ステンレスで形成されている。
【0027】
図1,
図4に示すように、高圧配管13は、高圧燃料ポンプ11の導出部から右側下方に延設され、途中部、具体的にはエンジン本体2とコンバータハウジング8との連結部近傍位置で屈曲され、上方に延設されている。この高圧配管13は、ステンレスで構成され、燃料レール12の左端側部分にクイックコネクタ15を介して下方から接続されている。
図1~
図3に示すように、高圧配管13の右側部分とスロットルボディ22のフランジ部22aとの間、換言すれば、高圧配管13の右側部分と上流側吸気通路6aとの間には、プロテクタ部材30が設けられている。
【0028】
次に、プロテクタ部材30について説明する。
プロテクタ部材30は、鋼板をプレス加工することで成形されている。このプロテクタ部材30は、平面視にてシリンダブロック4とスロットルボディ22との間に略コ字状に形成され、シリンダブロック4の前側側壁と協働して高圧配管13の一部を囲繞している。
図2,
図3,
図5(a),
図5(b)に示すように、プロテクタ部材30は、高圧配管13の右側部分の前側を覆う本体部31と、この本体部31から後側に延びてシリンダブロック4の前側側壁に締結部材34を用いて固定された一端部32と、本体部31からシリンダブロック4の前側側壁の近傍位置まで延設された他端部33とを一体的に備えている。
【0029】
本体部31は、高圧配管13(クイックコネクタ15)から前方に所定距離d1(例えば、3mm)離隔する位置に配置されている。
この本体部31には、振動防止部31aと、干渉部31bとが設けられている。
振動防止部31aは、プロテクタ部材30の振動減衰を目的とするものである。この振動防止部31aは、略コ字状の片状部材として構成され、本体部31の車幅方向中央部前面に上下に延びるように接合されている。
【0030】
干渉部31bは、車両衝突時、スロットルボディ22を高圧配管13(クイックコネクタ15)から右方に向けて離隔するように誘導することを目的とするものである。
図2,
図3,
図5(b),
図7に示すように、この干渉部31bは、平面視にて本体部31の右端部分で且つスロットルボディ22のフランジ部22aと前後方向において略直線状になるように配置され、その横断面形状は、R形状(湾曲形状)に形成されている。
【0031】
一端部32は、コンバータハウジング8と連結するシリンダブロック4の左側側壁に締結部材34を介して右向きに締結固定されている。
他端部33は、本体部31の右端から後方に延び、シリンダブロック4の前側側壁から所定距離d2(例えば、1mm)離隔した位置まで延設されている。
距離d2が距離d1よりも小さく設定されているため、車両衝突時、本体部31が高圧配管13に接触する前に他端部33がシリンダブロック4の前側側壁に当接して本体部31の後退が停止される。
【0032】
次に、本発明の実施形態によるエンジンの燃料系部品保護構造の作用効果について説明する。作用効果の説明に当り、正面からのポールバリア衝突実験結果の説明を行う。
図6(a)~
図6(c)は、衝突状態を時系列に示している。
図6(a)に示すように、衝突初期では、ポールバリア40がシュラウドを伴って車体内部に侵入する。このとき、シュラウドの侵入に同期してスロットルボディ22の後退移動が開始される。
【0033】
図6(b)に示すように、衝突中期では、スロットルボディ22がプロテクタ部材30の干渉部31bに接触するため、プロテクタ部材30が後退移動を開始する。プロテクタ部材30の後退移動は、プロテクタ部材30全体の後退移動の他に、締結部材34を支点とした回動、或いは本体部31と一端部32との境界部分を支点とした回動を含んでいる。
プロテクタ部材30の後退移動は、他端部33の後端部がシリンダブロック4の前側側壁に当接するまで継続する。
【0034】
図6(c)に示すように、衝突後期では、他端部33の後端部がシリンダブロック4の前側側壁に当接しているため、他端部33に前後方向の荷重が発生し、本体部31の後退移動が停止される。距離d2が距離d1よりも小さく設定されているため、本体部31は高圧配管13(クイックコネクタ15)に接触する前に停止する。スロットルボディ22に接続された上流側吸気通路6aがプロテクタ部材30の前側に配置され、上流側吸気通路6aは合成樹脂材料で構成されているため、車両衝突時、上流側吸気通路6aは衝撃荷重によって積極的に破壊される。以上により、干渉部31bに当接したスロットルボディ22は、R形状に誘導されて高圧配管13から離隔する方向(右方向)に移動する。
【0035】
この燃料系部品保護構造によれば、プロテクタ部材30が、高圧配管13(クイックコネクタ15)とスロットルボディ22との間に平面視にて略コ字状に形成されているため、高圧配管13の外周を囲繞することができ、車両衝突時、スロットルボディ22との干渉に伴う高圧配管13の損傷を回避することができる。
プロテクタ部材30が、高圧配管13の前側(反エンジン1側)を覆う本体部31と、この本体部31から後側に延びてシリンダブロック4の左側側壁に固定された一端部32と、本体部31からシリンダブロック4の前側側壁の近傍位置まで延設された他端部33とを備えているため、他端部33の短縮化及びプロテクタ部材30を固定するための締結部材34を省略することができ、重量低減を図ることができる。
本体部31が、他端部33側にスロットルボディ22と車両衝突時に干渉する干渉部31bを有し、干渉部31bは、スロットルボディ22を高圧配管13から離隔するように誘導可能なR形状に構成されているため、車両衝突時、R形状によりスロットルボディ22を受け止めることなく高圧配管13から離隔方向に誘導することができ、プロテクタ部材30の強度低下に伴う薄肉化により一層重量低減を図ることができる。
【0036】
干渉部31bは、平面視にてスロットルボディ22のフランジ部22aと略直線上になるように配置されたため、車両衝突時、スロットルボディ22をR形状により高圧配管13から離隔方向に確実に誘導することができる。
【0037】
スロットルボディ22に接続された上流側吸気通路6aがプロテクタ部材30の前側に配置され、上流側吸気通路6aのプロテクタ部材30に近接した部分が合成樹脂材料で構成されたため、車両衝突時、上流側吸気通路6aを積極的に破壊することにより、吸気管の誘導を一層促進することができる。
【0038】
図7に示すように、他端部33とシリンダブロック4の前側側壁との離間距離d2は、本体部31と高圧配管13との離間距離d1よりも短く設定されているため、本体部31と高圧配管13とが干渉する前にR形状によるスロットルボディ22の誘導を開始することができる。
【0039】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、4気筒横置きエンジンの例について説明したが、4気筒縦置きエンジンにも適用可能である。また、気筒数に関わりなく、3気筒以下、或いは5気筒以上のエンジンに適用可能である。
【0040】
2〕前記実施形態においては、プロテクタ部材30の一端部32がシリンダブロック4の左側側壁に締結固定された例について説明したが、一端部32をシリンダブロック4の前側側壁に締結固定しても良い。この場合、一端部32にフランジ部を形成し、このフランジ部をシリンダブロック4の前側側壁に締結する。
【0041】
3〕前記実施形態においては、燃料系部品として高圧配管13(クイックコネクタ15)の例について説明したが、エンジン部品と干渉する可能性がある燃料系部品、例えば、燃料ポンプ、低圧配管、リターン配管等何れの燃料系部品に対しても適用可能である。
【0042】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0043】
1 エンジン
6a 上流側吸気通路
13 高圧配管
22 スロットルボディ
22a (スロットルボディ)フランジ部
30 プロテクタ部材
31 本体部
31b 干渉部
32 一端部
33 他端部