(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、レジンシート、積層板、金属箔張積層板、及びプリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240808BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240808BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20240808BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240808BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240808BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08G59/20
C08J5/24 CEZ
C08J5/24 CFC
H05K1/03 610L
H05K1/03 630H
H05K3/46 T
H05K1/03 610Q
(21)【出願番号】P 2021520689
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(86)【国際出願番号】 JP2020018367
(87)【国際公開番号】W WO2020235329
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019094211
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 悠仁
(72)【発明者】
【氏名】野本 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 恵一
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006981(JP,A)
【文献】特開2005-281625(JP,A)
【文献】特開2014-037485(JP,A)
【文献】特開2018-168262(JP,A)
【文献】特開2000-281753(JP,A)
【文献】特開2018-203796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物(A)と、
硬化剤(B)と、
黒色粒子(C)と、
無機充填材(D)と、を含み、
前記黒色粒子(C)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)と前記硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、
3~25質量部であり、
前記無機充填材(D)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)と前記硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、100~200質量部であり、
前記黒色粒子(C)が、表面の少なくとも一部が熱硬化性樹脂で被覆された、平均粒子径0.5μm以下の粒子であり、
前記黒色粒子(C)の含有量は、無機充填材(D)の含有量100質量部に対して、3~20質量部である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化合物(A)が、下記式(I)で表される化合物を含む、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(I)中、n1は1以上の整数を表す。)
【請求項3】
前記硬化剤(B)として、フェノール化合物(E)及び/又はシアン酸エステル化合物(F)を含む、
請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノール化合物(E)が、下記式(II)又は式(III)で表される化合物を含む、
請求項3に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(II)中、n2は1以上の整数を表す。)
【化3】
(式(III)中、R
1、R
2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、n3は1以上の整数を表す。)
【請求項5】
前記シアン酸エステル化合物(F)が、下記式(VI)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、及び/又は、下記式(VII)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物を含む、
請求項3に記載の樹脂組成物。
【化4】
(上記式(VI)中、R
5は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n6は1以上の整数を示す。)
【化5】
(上記式(VII)中、R
6は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n7は1以上の整数を示す。)
【請求項6】
マレイミド化合物(G)をさらに含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記マレイミド化合物(G)が、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、下記式(IV)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(V)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される1種以上を含む、
請求項6に記載の樹脂組成物。
【化6】
(式(IV)中、R
3は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n4は1以上の整数を表す。)
【化7】
(式(V)中、R
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基を表し、n5は、平均値であり、1<n5≦5を表す。)
【請求項8】
前記無機充填材(D)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される1種以上を含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
基材と、
該基材に含浸又は塗布された請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、を有する、
プリプレグ。
【請求項10】
支持体と、
該支持体の片面又は両面に積層された請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、を有する、
レジンシート。
【請求項11】
請求項9に記載のプリプレグ及び請求項10に記載のレジンシートからなる群より選択される1種以上を積層した、
積層板。
【請求項12】
請求項9に記載のプリプレグ及び請求項10に記載のレジンシートからなる群より選択される1種以上と、
前記プリプレグ及び/又は前記レジンシート上に積層された金属箔と、を有する、
金属箔張積層板。
【請求項13】
前記金属箔張積層板のバーコル硬度が、70~80であり、かつ、
前記金属箔張積層板から金属箔が除去された基板の波長400~2000nmの範囲における透過率が、0.1%以下である、
請求項12に記載の金属箔張積層板。
【請求項14】
請求項9に記載のプリプレグ及び請求項10に記載のレジンシートからなる群より選択される1種以上をビルドアップ材料として用いて作製された、
プリント配線板。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の金属箔張積層板をビルドアップ材料として用いて作製された、
プリント配線板。
【請求項16】
絶縁層と、
該絶縁層の表面に形成された導体層と、を含み、
前記絶縁層が請求項1~8のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、
プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、並びに、当該組成物を用いた、プリプレグ、レジンシート、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の高性能化、高機能化、小型化が急速に進んでおり、これに伴って電子部品に用いられる電子材料に対しても高機能化の要請が高まっている。例えば、ディスプレイやLED等の発光素子に用いられる電子材料には、外部への不要な光の漏出が生じないように遮光性が求められ、また、カメラの光学センサのような受光素子に用いられる電子材料には、外部からの光の侵入が生じないように遮光性が求められる。このように、発光素子や受光素子あるいはその他の電子光学部品に使用されるプリント配線板には遮光性が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フレキシブルプリント配線板として、アニリンブラック等を含有することで遮光性を確保した黒色ポリイミドフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、基材に樹脂組成物を含浸又は塗布したリジッド基板についても、遮光性の向上が望まれている。特許文献1に記載のように、フレキシブルプリント配線板には遮光性を向上させる方法としては、アニリンブラック等を用いることが知られているが、リジッド基板を構成する樹脂組成物に対して、フレキシブルプリント配線板と同様に黒色成分を添加すると、表面硬度が低下したり、成形性が低下したりするという問題が生じる場合があることが分かってきた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、遮光性と表面硬度に優れたリジッド基板を得ることができる樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いた、プリプレグ、レジンシート、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、所定量の黒色粒子(C)と、所定量の無機充填材(D)を用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
エポキシ化合物(A)と、
硬化剤(B)と、
黒色粒子(C)と、
無機充填材(D)と、を含み、
前記黒色粒子(C)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)と前記硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、1~25質量部であり、
前記無機充填材(D)の含有量が、前記エポキシ化合物(A)と前記硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、100~200質量部である、
樹脂組成物。
〔2〕
前記黒色粒子(C)が、表面の少なくとも一部が熱硬化性樹脂で被覆された、平均粒子径1μm以下の粒子である、
〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕
前記エポキシ化合物(A)が、下記式(I)で表される化合物を含む、
〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(I)中、n1は1以上の整数を表す。)
〔4〕
前記硬化剤(B)として、フェノール化合物(E)及び/又はシアン酸エステル化合物(F)を含む、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔5〕
前記フェノール化合物(E)が、下記式(II)又は式(III)で表される化合物を含む、
〔4〕に記載の樹脂組成物。
【化2】
(式(II)中、n2は1以上の整数を表す。)
【化3】
(式(III)中、R
1、R
2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、n3は1以上の整数を表す。)
〔6〕
前記シアン酸エステル化合物(F)が、下記式(VI)で表されるナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、及び/又は、下記式(VII)で表されるノボラック型シアン酸エステル化合物を含む、
〔4〕に記載の樹脂組成物。
【化4】
(上記式(VI)中、R
5は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n6は1以上の整数を示す。)
【化5】
(上記式(VII)中、R
6は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n7は1以上の整数を示す。)
〔7〕
マレイミド化合物(G)をさらに含む、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔8〕
前記マレイミド化合物(G)が、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、下記式(IV)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(V)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される1種以上を含む、
〔7〕に記載の樹脂組成物。
【化6】
(式(IV)中、R
3は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n4は1以上の整数を表す。)
【化7】
(式(V)中、R
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基を表し、n5は、平均値であり、1<n5≦5を表す。)
〔9〕
前記無機充填材(D)が、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選択される1種以上を含む、
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔10〕
基材と、
該基材に含浸又は塗布された〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、を有する、
プリプレグ。
〔11〕
支持体と、
該支持体の片面又は両面に積層された〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、を有する、
レジンシート。
〔12〕
〔10〕に記載のプリプレグ及び〔11〕に記載のレジンシートからなる群より選択される1種以上を積層した、
積層板。
〔13〕
〔10〕に記載のプリプレグ及び〔11〕に記載のレジンシートからなる群より選択される1種以上と、
前記プリプレグ及び/又は前記レジンシート上に積層された金属箔と、を有する、
金属箔張積層板。
〔14〕
前記金属箔張積層板のバーコル硬度が、70~80であり、かつ、
前記金属箔張積層板から金属箔が除去された基板の波長400~2000nmの範囲における透過率が、0.1%以下である、
〔13〕に記載の金属箔張積層板。
〔15〕
〔10〕に記載のプリプレグ及び〔11〕に記載のレジンシートからなる群より選択される1種以上をビルドアップ材料として用いて作製された、
プリント配線板。
〔16〕
〔13〕又は〔14〕に記載の金属箔張積層板をビルドアップ材料として用いて作製された、
プリント配線板。
〔17〕
絶縁層と、
該絶縁層の表面に形成された導体層と、を含み、
前記絶縁層が〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、
プリント配線板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮光性と表面硬度に優れたリジッド基板を得ることができる樹脂組成物、並びに、該樹脂組成物を用いた、プリプレグ、レジンシート、積層板、金属箔張積層板、プリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
〔第1実施形態:樹脂組成物〕
第1実施形態の樹脂組成物は、例えば、プリプレグ、特には、ガラスクロスを基材とし、該基材に樹脂組成物を含浸又は塗布したリジッド基板に用いる樹脂組成物である。当該樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、黒色粒子(C)と、無機充填材(D)とを含み、必要に応じてマレイミド化合物(G)や、その他の成分を含んでもよい。
【0012】
第1実施形態の樹脂組成物においては、上記所定の樹脂組成において、黒色粒子(C)の含有量を、エポキシ化合物(A)と硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、1~25質量部とし、無機充填材(D)の含有量を、エポキシ化合物(A)と硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、100~200質量部とする。これにより、可視から近赤外領域、例えば400~2000nmの波長領域における、遮光性に優れるリジッド基板が得られるとともに、得られるリジッド基板の表面硬度がより向上する。
【0013】
以下、各成分について詳説する。
【0014】
〔エポキシ化合物(A)〕
エポキシ化合物(A)は、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。エポキシ化合物(A)の1分子当たりのエポキシ基の数は、1以上であり、好ましくは2以上である。
【0015】
エポキシ化合物(A)としては、特に限定されず、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物、多官能フェノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、キシレンノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物、アントラキノン型エポキシ化合物、アントラセン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ザイロック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ樹脂、アラルキルノボラック型エポキシ樹脂、トリアジン骨格エポキシ化合物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、ポリオール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジル型エステル樹脂、ブタジエン等の二重結合含有化合物の二重結合をエポキシ化した化合物、及び、水酸基含有シリコーン樹脂類とエピクロルヒドリンとの反応により得られる化合物等が挙げられる。エポキシ化合物(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0016】
なお、上記例示に記すように、本明細書では、ある樹脂又は化合物をエポキシ化して得られる構造を有するエポキシ化合物を、その樹脂又は化合物の名称に「~型エポキシ化合物」との記載を付して表す場合がある。
【0017】
これらの中でも、エポキシ化合物(A)としては、絶縁層と導体層との密着性及び難燃性等を向上させる観点から、ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型エポキシ化合物、アントラキノン型エポキシ化合物、及びナフトールアラルキル型エポキシ化合物からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0018】
さらに、樹脂組成物の熱膨張率をより一層低くする観点から、エポキシ化合物(A)は、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ化合物、ビスナフタレン型エポキシ化合物及びアントラキノン型エポキシ化合物からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましく、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0019】
ビフェニルアラルキル型エポキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(I)で表される化合物が好ましい。このようなビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を用いることにより、上記の他に、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。
【化8】
(式(I)中、n1は1以上の整数を表す。n1の上限値は、好ましくは10であり、より好ましくは7である。)
【0020】
エポキシ化合物(A)の含有量は、エポキシ化合物(A)及び硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは30~70質量部であり、より好ましくは35~65質量部であり、さらに好ましくは40~60質量部である。エポキシ化合物(A)の含有量が上記範囲内であることにより、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。なお、2種以上のエポキシ化合物(A)を併用する場合には、これらの合計含有量が上記値を満たすことが好ましい。
【0021】
〔硬化剤(B)〕
硬化剤(B)は、エポキシ化合物(A)と反応する官能基を有する化合物である。このような硬化剤(B)としては、特に制限されないが、例えば、フェノール化合物(E)、シアン酸エステル化合物(F)、酸無水物、アミン化合物などが挙げられる。硬化剤(B)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0022】
これらの中でも、フェノール化合物(E)及び/又はシアン酸エステル化合物(F)が好ましい。このような硬化剤(B)を用いることにより、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。
【0023】
(フェノール化合物(E))
フェノール化合物(E)は、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。
【0024】
フェノール化合物(E)としては、特に制限されないが、例えば、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、下記式(II)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、下記式(III)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、及びポリビニルフェノール類等が挙げられる。フェノール化合物(E)は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
これらのなかでも、成形性及び表面硬度の観点から、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、下記式(II)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、下記式(III)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂、及びナフタレン型フェノール樹脂が好ましく、下記式(II)で表されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、下記式(III)で表されるナフトールアラルキル型フェノール樹脂がより好ましい。
【化9】
(式(II)中、n2は1以上の整数を表す。n2の上限値は、好ましくは10、より好ましくは7であり、さらに好ましくは6である。)
【化10】
(式(III)中、R
1、R
2は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、n3は1以上の整数を表す。n3の上限値は、好ましくは10、より好ましくは7であり、さらに好ましくは6である。)
【0026】
フェノール化合物(E)の含有量は、エポキシ化合物(A)及び硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは30~70質量部であり、より好ましくは35~65質量部であり、さらに好ましくは40~60質量部である。フェノール化合物(E)の含有量が上記範囲内であることにより、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。なお、2種以上のフェノール化合物(E)を併用する場合には、これらの合計含有量が上記値を満たすことが好ましい。
【0027】
(シアン酸エステル化合物(F))
シアン酸エステル化合物(F)は、1分子中に芳香環に直接結合したシアン酸エステル基を2個以上有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。
【0028】
シアン酸エステル化合物(F)としては、特に制限されないが、例えば、例えば、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物、ノボラック型シアン酸エステル化合物、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド型シアン酸エステル化合物、及びビフェニルアラルキル型シアン酸エステル化合物が挙げられる。シアン酸エステル化合物(F)は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
このなかでも、成形性及び表面硬度の観点から、ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物又はノボラック型シアン酸エステル化合物が好ましい。
【0030】
上記ナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(VI)で表される化合物が好ましい。
【化11】
(上記式(VI)中、R
5は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、この中でも水素原子が好ましい。また、上記式(VI)中、n6は1以上の整数を示す。n6の上限値は、好ましくは10であり、より好ましくは6である。)
【0031】
また、ノボラック型シアン酸エステル化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(VII)で表される化合物が好ましい。
【化12】
(上記式(VII)中、R
6は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、この中でも水素原子が好ましい。また、上記式(VII)中、n7は1以上の整数を示す。n7の上限値は、好ましくは10であり、より好ましくは7である。)
【0032】
シアン酸エステル化合物(F)の含有量は、エポキシ化合物(A)及び硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは30~70質量部であり、より好ましくは35~65質量部であり、さらに好ましくは40~60質量部である。シアン酸エステル化合物(F)の含有量が上記範囲内であることにより、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。なお、2種以上のシアン酸エステル化合物(F)を併用する場合には、これらの合計含有量が上記値を満たすことが好ましい。
【0033】
シアン酸エステル化合物(F)及びフェノール化合物(E)は両者とも樹脂組成物における機能が硬化剤(B)であるため、その含有量は合算して計算する。シアン酸エステル化合物(F)及びフェノール化合物(E)の合計含有量は、エポキシ化合物(A)及び硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは30~70質量部であり、より好ましくは35~65質量部であり、さらに好ましくは40~60質量部である。シアン酸エステル化合物(F)及びフェノール化合物(E)の合計含有量が上記範囲内であることにより、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。
【0034】
〔黒色粒子(C)〕
黒色粒子(C)としては、特に制限されず、例えば、カーボンブラック、グラファイト粉末、活性炭粉末、鱗片状黒鉛粉末、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、フラーレン、単層カーボンナノチューブ、複層カーボンナノチューブ、カーボンナノコーンなどの炭素系粒子(カーボン粒子);チタンブラック等のチタン系粒子が挙げられる。このなかでも、カーボン粒子が好ましく、カーボンブラックがより好ましい。黒色粒子(C)は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
黒色粒子(C)は、表面の少なくとも一部を熱硬化性樹脂で被覆されたものを用いてもよい。このような黒色粒子(C)を用いることにより、成形性及び絶縁信頼性がより向上する傾向にある。黒色粒子(C)の表面を被覆する熱硬化性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0036】
黒色粒子(C)の平均粒子径は、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。平均粒子径が1μm以下であることにより、遮光性、成形性、及び表面硬度がより向上する傾向にある。なお、黒色粒子(C)の平均粒子径は、黒色粒子(C)が熱硬化性樹脂で被覆されたものである場合には、被覆後の平均粒子径をいい、黒色粒子(C)が熱硬化性樹脂で被覆されたものでない場合には、被覆されていない状態の平均粒子径をいう。さらに、平均粒子径とは、体積基準の平均粒子径(モード径)であり、公知の方法により測定することができる。
【0037】
黒色粒子(C)の含有量は、エポキシ化合物(A)と硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、1~25質量部であり、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは3~17質量部であり、さらに好ましくは5~15質量部である。黒色粒子(C)の含有量が上記範囲内であることにより、遮光性及び成形性がより向上する傾向にある。
【0038】
黒色粒子(C)の含有量は、無機充填材(D)の含有量100質量部に対して、1~20質量部であり、好ましくは2~17質量部であり、より好ましくは3~10質量部である。無機充填材(D)に対する黒色粒子(C)の含有量が上記範囲内であることにより、遮光性及び成形性がより向上する傾向にある。
【0039】
〔無機充填材(D)〕
無機充填材(D)としては、特に限定されないが、例えば、カオリン、焼成カオリン、焼成クレー、未焼成クレー、シリカ(例えば天然シリカ、溶融シリカ、アモルファスシリカ、中空シリカ、湿式シリカ、合成シリカ、アエロジル等)、アルミニウム化合物(例えばベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、ハイドロタルサイト、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム等)、マグネシウム化合物(例えば炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等)、カルシウム化合物(例えば炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸カルシウム等)、モリブデン化合物(例えば酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛等)、タルク(例えば天然タルク、焼成タルク等)、マイカ(雲母)、ガラス(例えばAガラス、NEガラス、Cガラス、Lガラス、Sガラス、MガラスG20、Eガラス、Tガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の、短繊維状ガラス、球状ガラス、微粉末ガラス、中空ガラス等)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸ナトリウム、窒化ホウ素、凝集窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、錫酸亜鉛等の錫酸塩などが挙げられる。無機充填材(D)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0040】
これらの中でも、無機充填材(D)としては、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、酸化マグネシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種又は2種以上が好適である。このような無機充填材(D)を用いることにより、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。
【0041】
無機充填材(D)の含有量は、エポキシ化合物(A)と硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、100~200質量部であり、好ましくは105~180質量部であり、より好ましくは110~160質量部であり、さらに好ましくは110~155質量部である。無機充填材(D)の含有量が上記範囲内であることにより、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。
【0042】
無機充填材(D)と黒色粒子(C)の合計含有量は、エポキシ化合物(A)と硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、101~180質量部であり、好ましくは105~160質量部であり、より好ましくは110~150質量部である。無機充填材(D)と黒色粒子(C)の合計含有量が上記範囲内であることにより、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。
【0043】
〔マレイミド化合物(G)〕
マレイミド化合物(G)は、1分子中にマレイミド基を1個以上有する化合物であれば、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。マレイミド化合物(G)の1分子当たりのマレイミド基の数は、1以上であり、好ましくは2以上である。
【0044】
マレイミド化合物(G)としては、特に制限されないが、例えば、N-フェニルマレイミド、N-ヒドロキシフェニルマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5-ジエチル-4-マレイミドフェニル)メタン、下記式(IV)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(V)で表されるマレイミド化合物、これらマレイミド化合物のプレポリマー、及び、上記マレイミド化合物とアミン化合物のプレポリマーなどが挙げられる。マレイミド化合物(G)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0045】
このなかでも、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、2,2’-ビス{4-(4-マレイミドフェノキシ)-フェニル}プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、下記式(IV)で表されるマレイミド化合物、及び下記式(V)で表されるマレイミド化合物からなる群より選択される1種以上が好ましい。
【化13】
(式(IV)中、R
3は、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、n4は1以上の整数を表す。n4の上限値は、好ましくは10であり、より好ましくは7であり、より好ましくは6である。)
【化14】
(式(V)中、R
4は、各々独立に、水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はフェニル基を表し、n5は、平均値であり、1<n5≦5を表す。)
【0046】
マレイミド化合物(G)の含有量は、エポキシ化合物(A)及び硬化剤(B)の合計含有量100質量部に対して、好ましくは5~35質量部であり、より好ましくは10~30質量部であり、さらに好ましくは15~20質量部である。マレイミド化合物(G)の含有量が上記範囲内であることにより、成形性及び表面硬度がより向上する傾向にある。なお、2種以上のマレイミド化合物(G)を併用する場合には、これらの合計含有量が上記値を満たすことが好ましい。
【0047】
〔シランカップリング剤及び湿潤分散剤〕
第1実施形態の樹脂組成物は、シランカップリング剤や湿潤分散剤をさらに含んでもよい。シランカップリング剤や湿潤分散剤を含むことにより、上記充填材の分散性、樹脂成分、充填材、及び後述する基材の接着強度がより向上する傾向にある。
【0048】
シランカップリング剤としては、一般に無機物の表面処理に使用されているシランカップリング剤であれば、特に限定されないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系化合物;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシシラン系化合物;γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン系化合物;N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩などのカチオニックシラン系化合物;フェニルシラン系化合物などが挙げられる。シランカップリング剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
湿潤分散剤としては、塗料用に使用されている分散安定剤であれば、特に限定されないが、例えば、ビックケミー・ジャパン(株)製のDISPERBYK-110、111、118、180、161、BYK-W996、W9010、W903等が挙げられる。
【0050】
〔硬化促進剤〕
第1実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾールなどのイミダゾール類;過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチル-ジ-パーフタレートなどの有機過酸化物;アゾビスニトリルなどのアゾ化合物;N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルトルイジン、2-N-エチルアニリノエタノール、トリ-n-ブチルアミン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N-メチルピペリジンなどの第3級アミン類;フェノール、キシレノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどのフェノール類;ナフテン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸錫、ジブチル錫マレート、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、アセチルアセトン鉄などの有機金属塩;これら有機金属塩をフェノール、ビスフェノールなどの水酸基含有化合物に溶解してなるもの;塩化錫、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどの無機金属塩;ジオクチル錫オキサイド、その他のアルキル錫、アルキル錫オキサイドなどの有機錫化合物などが挙げられる。
【0051】
〔第2実施形態:樹脂組成物〕
第2実施形態の樹脂組成物は、エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、黒色粒子(C)と、無機充填材(D)とを含む樹脂組成物であって、該樹脂組成物を用いて得られる金属箔張積層板のバーコル硬度が、60~90であり、該金属箔張積層板から金属箔が除去された基板の波長400~2000nmの範囲における透過率が、0.1%以下である。
【0052】
第2実施形態の樹脂組成物を用いて得られる金属箔張積層板のバーコル硬度は、60~90であり、好ましくは65~75であり、より好ましくは70~80である。バーコル硬度が上記範囲内であることにより、十分な表面硬度を有する。バーコル硬度は、無機充填材(D)の含有量、黒色粒子(C)と無機充填材(D)の含有量比率、及び無機充填材(D)の種類等により調整することができる。バーコル硬度は、実施例に記載の測定方法により測定することができる。
【0053】
また、第2実施形態の樹脂組成物を用いて得られる金属箔張積層板から金属箔が除去された基板の波長400~2000nmの範囲における透過率は、0.1%以下であり、透過率の下限は特に制限されないが、検出限界以下であることが好ましい。透過率が0.1%以下であることにより、十分な遮光性を有する。透過率は、黒色粒子(C)の含有量、黒色粒子(C)と無機充填材(D)の含有量比率、及び黒色粒子(C)の種類等により調整することができる。透過率は、実施例に記載の測定方法により測定することができる。
【0054】
その他、エポキシ化合物(A)と、硬化剤(B)と、黒色粒子(C)と、無機充填材(D)の種類及び含有量等に関しては、第1実施形態と同様のものを例示することができる。
【0055】
〔樹脂組成物の製造方法〕
上記した本実施形態の樹脂組成物(第1実施形態および第2実施形態の樹脂組成物)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述した各成分を順次溶剤に配合し、十分に攪拌する方法が挙げられる。この際、各成分を均一に溶解或いは分散させるため、攪拌、混合、混練処理などの公知の処理を行うことができる。具体的には、適切な攪拌能力を有する攪拌機を付設した攪拌槽を用いて攪拌分散処理を行うことで、樹脂組成物に対する充填材の分散性を向上させることができる。上記の攪拌、混合、混練処理は、例えば、ボールミル、ビーズミルなどの混合を目的とした装置、又は、公転又は自転型の混合装置などの公知の装置を用いて適宜行うことができる。
【0056】
また、樹脂組成物の調製時においては、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。有機溶剤の種類は、組成物中の樹脂を溶解可能なものであれば、特に限定されない。
【0057】
〔用途〕
上記した本実施形態の樹脂組成物は、プリプレグ、レジンシート、積層板、金属箔張積層板、又はプリント配線板として好適に用いることができる。以下、プリプレグ、レジンシート、積層板、金属箔張積層板、又はプリント配線板について説明する。
【0058】
〔プリプレグ〕
本実施形態のプリプレグは、基材と、該基材に含浸又は塗布された、本実施形態の樹脂組成物と、を有する。プリプレグの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、本実施形態の樹脂組成物を基材に含浸又は塗布させた後、100~200℃の乾燥機中で1~30分加熱するなどして半硬化(Bステ-ジ化)させることで、本実施形態のプリプレグを作製することができる。
【0059】
プリプレグにおける本実施形態の樹脂組成物(充填材を含む。)の含有量は、プリプレグの総量に対して、好ましくは30~90質量%であり、より好ましくは35~85質量%であり、好ましくは40~80質量%である。樹脂組成物の含有量が上記範囲内であることにより、成形性がより向上する傾向にある。
【0060】
(基材)
基材としては、特に限定されず、各種プリント配線板材料に用いられている公知のものを、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。基材を構成する繊維の具体例としては、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラスなどのガラス繊維;クォーツなどのガラス以外の無機繊維;ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、コポリパラフェニレン-3,4’オキシジフェニレン-テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ株式会社製)などの全芳香族ポリアミド;2,6-ヒドロキシナフトエ酸-パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、株式会社クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン製)などのポリエステル;ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績株式会社製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられる。これらのなかでも低熱膨張率の観点から、Eガラスクロス、Tガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、及び有機繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。これら基材は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0061】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、基材は、厚み200μm以下、質量250g/m2以下のガラス織布が好ましく、Eガラス、Sガラス、及びTガラスのガラス繊維からなるガラス織布がより好ましい。
【0062】
〔レジンシート〕
本実施形態のレジンシートは、支持体と、該支持体上に配された、上記樹脂組成物と、を有する。レジンシートとは、薄葉化の1つの手段として用いられるもので、例えば、銅箔や樹脂フィルムなどの支持体に、直接、樹脂組成物を塗布及び乾燥して製造することができる。レジンシートは、金属箔張積層板やプリント配線板等の絶縁層を形成するために用いることができる。
【0063】
支持体としては、特に限定されないが、各種プリント配線板材料に用いられている公知の物を使用することができる。例えば、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリカーボネートフィルム、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体フィルム、並びにこれらのフィルムの表面に離型剤を塗布した離型フィルム等の有機系のフィルム基材、銅箔などの導体箔、ガラス板、SUS板、FPR等の板状の無機系フィルムが挙げられる。その中でも電解銅箔、PETフィルムが好ましい。
【0064】
塗布方法としては、例えば、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、バーコーター、ダイコーター、ドクターブレード、ベーカーアプリケーター等で支持体上に塗布する方法が挙げられる。
【0065】
レジンシートは、上記樹脂組成物を支持体に塗布後、半硬化(Bステージ化)させたものであることが好ましい。具体的には、例えば、上記樹脂組成物を銅箔などの支持体に塗布した後、100~200℃の乾燥機中で、1~60分加熱させる方法などにより半硬化させ、レジンシートを製造する方法などが挙げられる。支持体に対する樹脂組成物の付着量は、レジンシートの樹脂厚で1~300μmの範囲が好ましい。
【0066】
本実施形態のレジンシートの他の態様として単層樹脂シートが挙げられる。単層樹脂シートは、本実施形態の樹脂組成物を含む。単層樹脂シートは、上記樹脂組成物をシート状に成形してなるものである。単層樹脂シートの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。例えば、上記レジンシートから、支持体を剥離又はエッチングすることにより得ることができる。または、本実施形態の樹脂組成物を溶剤に溶解させた溶液を、シート状のキャビティを有する金型内に供給し乾燥する等してシート状に成形することで、シート基材を用いることなく単層樹脂シートを得ることもできる。
【0067】
〔積層板〕
本実施形態の積層板は、上記プリプレグを積層したものである。積層板はプリプレグを1層以上備えるものであれば特に限定されず、他のいかなる層を有していてもよい。積層板の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、上記のプリプレグ同士や、プリプレグと他の層を積層し、加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。このとき、加熱する温度は、特に限定されないが、65~300℃が好ましく、120~270℃がより好ましい。また、加圧する圧力は、特に限定されないが、2~5MPaが好ましく、2.5~4MPaがより好ましい。本実施形態の積層板は、金属箔からなる層をさらに備えることにより、後述する金属箔張積層板として好適に用いることができる。
【0068】
〔金属箔張積層板〕
本実施形態の金属箔張積層板は、上記プリプレグ及び/又は上記レジンシートと、当該プリプレグ及び/又は当該レジンシート上に積層された金属箔とを有する。本実施形態の金属箔張積層板において、プリプレグ及びレジンシートは絶縁層を形成するが、当該絶縁層は、1層のプリプレグ及び/又はレジンシートからなるものであっても、上記プリプレグ及び/又はレジンシートを2層以上積層したものであってもよい。
【0069】
金属箔としては、銅やアルミニウムなどを用いることができる。ここで使用する金属箔は、プリント配線板材料に用いられるものであれば、特に限定されないが、圧延銅箔や電解銅箔などの公知の銅箔が好ましい。また、金属箔(導体層)の厚みは、特に限定されないが、1~70μmが好ましく、より好ましくは1.5~35μmである。
【0070】
金属箔張積層板の成形方法及びその成形条件は、特に限定されず、一般的なプリント配線板用積層板及び多層板の手法及び条件を適用することができる。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができる。また、金属箔張積層板の成形において、温度は100~300℃、圧力は面圧2~100kgf/cm2、加熱時間は0.05~5時間の範囲が一般的である。さらに、必要に応じて、150~300℃の温度で後硬化を行うこともできる。また、上述のプリプレグやレジンシートと、別途作成した内層用の配線板とを組み合わせて積層成形することにより、多層板とすることも可能である。
【0071】
本実施形態の金属箔張積層板のバーコル硬度は、好ましくは60~90であり、より好ましくは65~75であり、さらに好ましくは70~80である。バーコル硬度が上記範囲内であることにより、十分な表面硬度を有する。バーコル硬度は、無機充填材(D)の含有量、黒色粒子(C)と無機充填材(D)の含有量比率、及び無機充填材(D)の種類等により調整することができる。バーコル硬度は、実施例に記載の測定方法により測定することができる。
【0072】
また、上記金属箔張積層板から金属箔(例えば電解銅箔)が除去された基板の波長400~2000nmの範囲における透過率は、好ましくは0.1%以下である。透過率の下限は特に制限されないが、検出限界以下であることが好ましい。透過率が0.1%以下であることにより、十分な遮光性を有する。透過率は、黒色粒子(C)の含有量、黒色粒子(C)と無機充填材(D)の含有量比率、及び黒色粒子(C)の種類等により調整することができる。透過率は、実施例に記載の測定方法により測定することができる。
【0073】
なお、実施例におけるバーコル硬度及び透過率の測定は、測定条件を特定する観点から、下記構成を有するEガラス織布を用いた金属箔張積層板を用いて行ったが、本実施形態の樹脂組成物を用いてプリプレグを形成する際のガラス織布は下記構成を有するEガラス織布に限定されるものではなく、前述した各種基材を用いることができる。
IPC該当品種:2116
密度(本/25mm)タテ:62
密度(本/25mm)ヨコ:58
厚さ(mm):0.100
質量(g/m2):108.5
上記構成を有するEガラス織布の市販品としては、特に制限されないが、例えば、有沢製作所製、1031NT-1270-S640が挙げられる。
【0074】
〔金属箔張積層板(他の実施形態)〕
また、他の実施形態として、プリプレグ及び/又はレジンシートと、プリプレグ及び/又はレジンシート上に積層された金属箔と、を有する金属箔張積層板であって、プリプレグが、基材と、該基材に含浸又は塗布された樹脂組成物と、を有し、レジンシートが、支持体と、該支持体の片面又は両面に積層された樹脂組成物と、を有し、バーコル硬度が、60~90であり、金属箔張積層板から金属箔が除去された基板の波長400~2000nmの範囲における透過率が、0.1%以下である、金属箔張積層板を提供することもできる。
【0075】
他の実施形態の金属箔張積層板は、上記構成を満たすものであれば特に制限されず、例えば、プリプレグやレジンシートを構成する樹脂組成物として、上記第1又は第2実施形態の樹脂組成物を用いなくてもよい。このなかでも、第1又は第2実施形態の樹脂組成物を用いることが好ましい。なお、その場合の樹脂組成物における樹脂成分や充填材等の種類及び含有量等に関しては、第1実施形態と同様のものを例示することができる。また、バーコル硬度と透過率に関しても、上述したものと同様の範囲を例示することができる。
【0076】
〔プリント配線板〕
本実施形態のプリント配線板は、絶縁層と、前記絶縁層の表面に形成された導体層とを有し、前記絶縁層が、本実施形態の樹脂組成物を含む。このようなプリント配線板としては、プリプレグ、レジンシート及び金属箔張積層板からなる群より選択される1種以上をビルドアップ材料として用いて作製されたものが挙げられる。このなかでも、プリプレグ及びレジンシートからなる群より選択される1種以上をビルドアップ材料として用いて作製されたプリント配線板が好ましい。上記の金属箔張積層板は、所定の配線パターンを形成することにより、プリント配線板として好適に用いることができる。そして、上記の金属箔張積層板は、低い熱膨張率、良好な成形性及び耐薬品性を有し、そのような性能が要求される半導体パッケージ用プリント配線板の材料として、殊に有効に用いることができる。
【0077】
また、多層構造を有するプリント配線板としては、積層された複数の絶縁層と、該複数の絶縁層の間及び最外層表面に配置された複数の導体層と、を有し、前記絶縁層が、本実施形態の樹脂組成物を含むものが挙げられる。このような多層プリント配線板は、その他の構成として、複数の絶縁層を貫通するめっきスルーホールなど、多層プリント配線板として公知の構成を有することができる。
【0078】
また、本実施形態の多層プリント配線板は、絶縁層としてのコア基板を持たず、ビルドアップ層のみを絶縁層として積層したコアレスプリント配線板であってもよい。このような、コアレスプリント配線板としては、少なくとも一つの絶縁層と、該絶縁層の最外層表面に配置された複数の導体層を有するものが挙げられる。絶縁層が複数ある場合、複数の絶縁層の間に、さらに導体層を有していてもよい。この場合、一つ又は複数ある絶縁層のいずれかが、本実施形態の樹脂組成物を含むことになる。
【0079】
従来のビルドアップ基板は、支持基板であるコア基板の上下に絶縁層と導体層を積み重ねた構造を有する。コア基板の上下に積み重ねる絶縁層と導体層は、ビルドアップ層とも呼ばれる。配線を高密度に形成する観点から、ビルドアップ層は薄い層の積層により構成される。これに対して、コア基板は、絶縁層と導体層を積層する工程においてある程度の強度等を有する支持基板として役割も有する。そのため、一般にコア基板はビルドアップ層における絶縁層よりも厚いものである。本実施形態におけるコアレスプリント配線板とは、このコア基板を有しないプリント配線板をいう。
【0080】
多層プリント配線板の製造方法は、特に制限されず、プリント配線板を積層する方法など、従来公知の方法を用いることができる。
【0081】
〔プリント配線板の製造方法〕
本実施形態のプリント配線板は、具体的には、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、上述の金属箔張積層板(銅張積層板等)を用意する。金属箔張積層板の表面にエッチング処理を施して内層回路の形成を行い、内層基板を作成する。この内層基板の内層回路表面に、必要に応じて接着強度を高めるための表面処理を行い、次いでその内層回路表面に上述のプリプレグを所要枚数重ね、更にその外側に外層回路用の金属箔を積層し、加熱加圧して一体成形する。このようにして、内層回路と外層回路用の金属箔との間に、基材及び本実施形態の樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層が形成された多層の積層板が製造される。次いで、この多層の積層板にスルーホールやバイアホール用の穴あけ加工を施した後、硬化物層に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアを除去するためデスミア処理が行われる。その後この穴の壁面に内層回路と外層回路用の金属箔とを導通させる導体層を形成し、更に外層回路用の金属箔にエッチング処理を施して外層回路を形成し、プリント配線板が製造される。
【0082】
例えば、上述のプリプレグ(基材及びこれに添着された上述の樹脂組成物)、金属箔張積層板中の樹脂組成物層(上述の樹脂組成物からなる層)が、本実施形態の樹脂組成物を含む絶縁層を構成することになる。
【0083】
また、金属箔張積層板を用いない場合には、上記プリプレグ上に、回路となる導体層を形成しプリント配線板を作製してもよい。この際、導体層の形成に無電解めっきの手法を用いることもできる。
【0084】
さらに、上記のようにして得られたプリント配線板に対して、ソルダーレジストを塗布し、回路パターンを保護する絶縁膜を形成する工程を行ってもよい。より具体的には、プリント配線板を上記のとおり準備する工程と、プリント配線板の両面に波長350~420nmの光で硬化する感光性組成物層を形成する工程と、感光性組成物層の表面にマスクパターンを配し、該マスクパターンを通して波長350~420nmの光で露光を行う工程と、を有する方法が挙げられる。露光後、感光性組成物層の未硬化部分を現像し、回路パターンが保護されたプリント配線板を得ることができる。なお、感光性組成物層としては、例えば、ソルダーレジスト層が挙げられる。
【0085】
また、コアレスプリント配線板の製造方法では、例えば、上記プリント配線板を上記のとおり準備する工程に代えて、コア基板を準備する工程と、コア基板上に、本実施形態の樹脂組成物を含む、少なくとも一つの絶縁層と、該絶縁層の最外層表面に配置された複数の導体層とを、積層した積層体を得る工程を経る。すなわち、コア基板上に、一又は複数の絶縁層と一又は複数の導体層を積層することで、コア基板上にビルドアップ層が形成された積層体を得ることができる。その後、コア基板を除去(剥離)することで、コアレスプリント配線板(コアレス基板ともいう)を形成する。
【0086】
そして、このコアレス基板に対して、感光性組成物層を形成する工程、露光を行う工程を行うことにより、回路パターンが形成されたコアレスプリント配線板を得ることができる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0088】
〔合成例1〕1-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(SNCN)の合成
α-ナフトールアラルキル樹脂(SN495V、OH基当量:236g/eq.、新日鐵化学(株)製)300g(OH基換算1.28mol)及びトリエチルアミン194.6g(1.92mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.5mol)をジクロロメタン1800gに溶解させ、これを溶液1とした。
【0089】
塩化シアン125.9g(2.05mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.6mol)、ジクロロメタン293.8g、36%塩酸194.5g(1.92mol)(ヒドロキシ基1molに対して1.5mol)、水1205.9gを、撹拌下、液温-2~-0.5℃に保ちながら、溶液1を30分かけて注下した。溶液1注下終了後、同温度にて30分撹拌した後、トリエチルアミン65g(0.64mol)(ヒドロキシ基1molに対して0.5mol)をジクロロメタン65gに溶解させた溶液(溶液2)を10分かけて注下した。溶液2注下終了後、同温度にて30分撹拌して反応を完結させた。
【0090】
その後反応液を静置して有機相と水相を分離した。得られた有機相を水1300gで5回洗浄し、水洗5回目の廃水の電気伝導度は5μS/cmであり、水による洗浄により、除けるイオン性化合物は十分に除けられてことを確認した。
【0091】
水洗後の有機相を減圧下で濃縮し、最終的に90℃で1時間濃縮乾固させて目的とするナフトールアラルキル型シアン酸エステル化合物(SNCN)(橙色粘性物)331gを得た。得られたSNCNの質量平均分子量Mwは600であった。また、SNCNの赤外吸収スペクトルは2250cm-1(シアン酸エステル基)の吸収を示し、且つ、ヒドロキシ基の吸収は示さなかった。
【0092】
〔実施例1〕
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000-FH、日本化薬社製)50質量部と、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(KAYAHARD GPH-103、水酸基当量:231g/eq.、日本化薬社製)50質量部と、絶縁被覆カーボンブラック(製品名#B503、御国色素(株)社製、平均粒子径0.1μm)10質量部と、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(BMI-70、大和化成工業(株)製)20質量部と、シリカ(SC4500-SQ、アドマテックス(株)製、平均粒子径1.5μm)120質量部と、湿潤分散剤(Disperbyk-161、ビックケミー・ジャパン(株)製)1質量部と、モリブデン酸亜鉛をコートしたタルク(ケムガード911C、モリブデン酸亜鉛担持:10質量%、シャーウィン・ウイリアムズ・ケミカルズ)10質量部と、硬化促進剤(2,4,5-トリフェニルイミダゾール、東京化成工業社製)0.3質量部と、を混合し、メチルエチルケトンで希釈することでワニスを得た。
【0093】
このワニスを、厚さ0.1mmのEガラス織布(有沢製作所製、1031NT-1270-S640)に含浸塗工し、165℃で3分間加熱乾燥して、樹脂含有量46質量%のプリプレグを得た。なお、使用したEガラス織布の特性は、以下のとおりである。
IPC該当品種:2116
密度(本/25mm)タテ:62
密度(本/25mm)ヨコ:58
厚さ(mm):0.100
質量(g/m2):108.5
【0094】
〔実施例2〕
絶縁被覆カーボンブラックの使用量を5質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0095】
〔実施例3〕
絶縁被覆カーボンブラックの使用量を20質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0096】
〔実施例4〕
シリカの使用量を100質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0097】
〔実施例5〕
シリカの使用量を150質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0098】
〔実施例6〕
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂に代えて、SNCN50質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0099】
〔実施例7〕
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂に代えて、SNCN50質量部を用い、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0100】
〔実施例8〕
絶縁被覆カーボンブラックに代えて、チタンブラック(製品名13M-T、三菱マテリアル株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0101】
〔比較例1〕
絶縁被覆カーボンブラックを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0102】
〔比較例2〕
シリカの使用量を50質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0103】
〔比較例3〕
シリカの使用量を70質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0104】
〔比較例4〕
シリカの使用量を250質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0105】
〔比較例5〕
絶縁被覆カーボンブラックの使用量を30質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、プリプレグを得た。
【0106】
〔参考例1〕
実施例1により得られたワニスのメチルエチルケトンを蒸発留去することで混合樹脂粉末を得た。得られた混合樹脂粉末を1辺100mm、厚さ0.1mmおよび0.8mmの型に充填し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成型を行い、一辺100mm、厚さ0.1mmおよび0.8mmの硬化物を得た。当該硬化物は、ガラス織布を用いないものである。
【0107】
〔成形性〕
実施例または比較例で得られたプリプレグに、12μm厚の電解銅箔(3EC-LPIII、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成型を行い、金属箔張積層板として、絶縁層厚さ0.1mmの銅張積層板を得た。銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去した後に、表面を観察しボイドの有無を確認し、下記評価基準により成形性を評価した。なお、参考例1においては、厚さ0.1mmおよび0.8mmの硬化物の表面を観察しボイドの有無を確認した。
〇:ボイドの発生が認められない場合
×:ボイドの発生が認められた場合
【0108】
〔遮光性〕
実施例または比較例で得られたプリプレグに、12μm厚の電解銅箔(3EC-LPIII、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成型を行い、金属箔張積層板として、絶縁層厚さ0.1mmの銅張積層板を得た。銅張積層板の銅箔をエッチングにより除去して得られた基板をサンプルとし、波長400~2000nmの透過率を測定した。測定には、日立ハイテクノロジー製、分光光度計U-4100を用いた。得られた透過率に基づいて、下記評価基準により遮光性を評価した。なお、参考例1においては、厚さ0.1mmの硬化物をサンプルとし、波長400~2000nmの透過率を測定した。
〇:波長400~2000nmの範囲における透過率が0.1%以下
×:波長400~2000nmの範囲における透過率が0.1%超過
【0109】
〔表面硬度〕
実施例または比較例で得られたプリプレグを8枚重ねて、12μm厚の電解銅箔(3EC-LPIII、三井金属鉱業(株)製)を上下に配置し、圧力30kgf/cm2、温度220℃で120分間の積層成型を行い、金属箔張積層板として、絶縁層厚さ0.8mmの銅張積層板を得た。得られた銅張積層板をサンプルとし、JISK7060に準じて、COLMAN社製 GYZJ935を用いて、バーコル硬度を測定した。なお、参考例1においては、厚さ0.8mmの硬化物をサンプルとし、JISK7060に準じてバーコル硬度を測定した。表面硬度(バーコル硬度)が高いほどワイヤーボンディング性に優れる。
【0110】
【0111】
上記に加え、樹脂被覆されていないカーボンブラックを用いて、実施例1と同様にプリプレグの作製を行った。結果としては、樹脂被覆がされていないため分散性に劣り、他の実施例と比較した場合には成形性が若干劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の樹脂組成物は、リジッド基板の製造に用いる材料として産業上の利用可能性を有する。