(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】車両用バッテリパックの固定構造
(51)【国際特許分類】
B62D 21/00 20060101AFI20240808BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240808BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240808BHJP
【FI】
B62D21/00 A
B62D25/20 F
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2020210976
(22)【出願日】2020-12-21
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 雄眞
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-203029(JP,A)
【文献】特開2014-227075(JP,A)
【文献】特開2014-031109(JP,A)
【文献】特開2013-256265(JP,A)
【文献】特開2018-131136(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112103425(CN,A)
【文献】中国実用新案第210941325(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08,25/14-29/04
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
H01M 50/20-50/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体のフロア部の車両下方側に取り付けられるバッテリケースを有し、
前記フロア部の車幅方向外側部には、車両前後方向に延びるサイドシルが設けられ、
前記バッテリケースの車幅方向外側部には、車両前後方向に延びるバッテリサイドメンバが設けられ、
前記バッテリケースは、前記バッテリサイドメンバを介して、前記サイドシルに固定されている、車両用バッテリパックの固定構造において、
前記バッテリサイドメンバは、車両前後方向に延びる第1のサイドメンバと第2のサイドメンバと有し、
前記第1のサイドメンバは、アルミニウムを含む素材により形成され、中空の直方体状であり、車両前後方向視で、車幅方向を長辺とする四角形状の断面形状を有し、
前記第2のサイドメンバは、板金製のアウタパネルと板金製のインナパネルとを有し、前記アウタパネル及び前記インナパネルが接合されることにより、車両前後方向視で、車両上下方向を長辺とする四角形状の第1の閉断面構造が構成され、
前記第1のサイドメンバ及び第2のサイドメンバは互いに接合されており、
前記第1のサイドメンバは、前記サイドシルに接合され、前記第2のサイドメンバは、前記バッテリケースに接合されていることを特徴とする、車両用バッテリパックの固定構造。
【請求項2】
前記第1のサイドメンバの車幅方向の内側の下部には、車幅方向に突出し、前記第2のサイドメンバに接合される下側フランジが設けられ、前記第1のサイドメンバの車幅方向の内側の上部には、車両上方に突出し、前記第2のサイドメンバに接合される上側フランジが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の車両用バッテリパックの固定構造。
【請求項3】
前記第1の閉断面構造の上部は、車幅方向視で、前記サイドシルに重なるように配置され、
前記第1の閉断面構造の内部には、車両前後方向視で、ハット形状の断面を有するハット形状部材が車幅方向に頂点部を向けて固定されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用バッテリパックの固定構造。
【請求項4】
前記サイドシルには、車両前後方向視で、第2の閉断面構造が構成され、該第2の閉断面構造の内部には、複数の補強部材が車両前後方向に互いに間隔を空けた状態で固定されており、
前記各補強部材は、互いに間隔を空けて配置される2つの縦壁と、これらの縦壁を繋ぐ底面部とを有しており、
前記バッテリケースの底面部の下面側には、車幅方向に前記サイドシルまで延びる複数の外側クロスメンバが、車両前後方向に間隔を空けて配置された状態で接合されており、
前記外側クロスメンバと前記補強部材は、平面視で重なるように配置され、
車両上方側から下方に向かって、前記補強部材の底面部、前記サイドシルの下部、前記第1のサイドメンバ、前記外側クロスメンバが、この順に配置され、車両上下方向に延びる固定用ボルトによって固定されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の車両用バッテリパックの固定構造。
【請求項5】
前記バッテリケースの内側には、車幅方向に延びる内側クロスメンバが設けられ、該内側クロスメンバは、車幅方向視で、前記補強部材に重なって配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の車両用バッテリパックの固定構造。
【請求項6】
前記第1のサイドメンバは、中空部材であり、中空の断面形状は、車両上下方向に延びる壁によって仕切られており、
前記壁によって仕切られた複数の枠形状の車幅方向の長さは、外側の枠形状よりも内側の枠形状が長く設定されていることを特徴とする、請求項2に記載の車両用バッテリパックの固定構造。
【請求項7】
車体のフロア部の車両下方側に取り付けられるバッテリケースを有し、
前記フロア部の車幅方向外側部には、車両前後方向に延びるサイドシルが設けられ、
前記バッテリケースの車幅方向外側部には、車両前後方向に延びるバッテリサイドメンバが設けられ、
前記バッテリケースは、前記バッテリサイドメンバを介して、前記サイドシルに固定されている、車両用バッテリパックの固定構造において、
前記バッテリサイドメンバは、車両前後方向に延びる第1のサイドメンバと第2のサイドメンバと有し、
前記第1のサイドメンバ及び第2のサイドメンバは互いに接合されており、
前記第1のサイドメンバは、前記サイドシルに接合され、前記第2のサイドメンバは、前記バッテリケースに接合され、
前記サイドシルには、車両前後方向視で、第2の閉断面構造が構成され、該第2の閉断面構造の内部には、複数の補強部材が車両前後方向に互いに間隔を空けた状態で固定されており、
前記各補強部材は、互いに間隔を空けて配置される2つの縦壁と、これらの縦壁を繋ぐ底面部とを有しており、
前記バッテリケースの底面部の下面側には、車幅方向に前記サイドシルまで延びる複数の外側クロスメンバが、車両前後方向に間隔を空けて配置された状態で接合されており、
前記外側クロスメンバと前記補強部材は、平面視で重なるように配置され、
車両上方側から下方に向かって、前記補強部材の底面部、前記サイドシルの下部、前記第1のサイドメンバ、前記外側クロスメンバが、この順に配置され、車両上下方向に延びる固定用ボルトによって固定されていることを特徴とする、車両用バッテリパックの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリパックの固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両は、例えば、特許文献1に開示されているように、バッテリパックを備えている。バッテリパックは、バッテリモジュールを収容するバッテリケースを備えており、バッテリケースは、車体のフロア部の下面側に固定されている。電動車両の航続距離を延ばすためには、バッテリパックを大容量化させる必要がある。そのため、バッテリパックの大型化が求められる。
【0003】
一方で、バッテリパックは、例えば、車幅方向の外側から車体側部に物体等が衝突する側面衝突(以下、側突)等による衝撃荷重から保護する必要がある。特許文献1に開示されている構造では、バッテリパックの車幅方向の外側部に、サイドシルが配置されており、該サイドシルには、側突による衝撃を吸収するための衝撃吸収構造が設けられている。当該衝撃吸収構造は、サイドシルは、車幅方向に延びる略長方形状の断面形状を有し、当該断面形状は、縦壁によって仕切られている。当該構造により、側突による衝撃荷重を吸収して、バッテリケースの変形を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記例のような構造では、側突の衝撃荷重の吸収は、主として、サイドシルが担っている。当該例では、衝撃吸収構造のほぼ全てをサイドシルが担う構造である。そのため、サイドシルの断面形状が大きくなってしまう。この例では、サイドシルの車幅方向の寸法が大きくなってしまう。
【0006】
サイドシルの車幅方向の寸法の増大化は、バッテリパックの車幅方向の寸法を制限することになり、バッテリパックの大型化を阻害する要因となっている。そのため、上記例の構造では、バッテリパックの容量を確保しつつ側突等による衝撃荷重を吸収する上で、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、バッテリパックの容量を確保しつつ、側突等の衝撃荷重からバッテリパックを保護することが可能な車両用バッテリパックの固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る車両用バッテリパックの固定構造は、車体のフロア部の車両下方側に取り付けられるバッテリケースを有し、前記フロア部の車幅方向外側部には、車両前後方向に延びるサイドシルが設けられ、前記バッテリケースの車幅方向外側部には、車両前後方向に延びるバッテリサイドメンバが設けられ、前記バッテリケースは、前記バッテリサイドメンバを介して、前記サイドシルに固定されている。当該車両用バッテリパックの固定構造において、前記バッテリサイドメンバは、車両前後方向に延びる第1のサイドメンバと第2のサイドメンバと有し、前記第1のサイドメンバは、アルミニウムを含む素材により形成され、中空の直方体状であり、車両前後方向視で、車幅方向を長辺とする四角形状の断面形状を有し、前記第2のサイドメンバは、板金製のアウタパネルと板金製のインナパネルとを有し、前記アウタパネル及び前記インナパネルが接合されることにより、車両前後方向視で、車両上下方向を長辺とする四角形状の第1の閉断面構造が構成され、前記第1のサイドメンバ及び第2のサイドメンバは互いに接合されており、前記第1のサイドメンバは、前記サイドシルに接合され、前記第2のサイドメンバは、前記バッテリケースに接合されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バッテリパックの容量を確保しつつ、側突等の衝撃荷重からバッテリパックを保護することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る車両用バッテリパックの車両上方から見た斜視図である。
【
図2】
図1のバッテリケースの上側ケース及びバッテリセルを取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2の下側ケースが車体に取り付けられた状態を車両上方側から見た斜視図である。
【
図4】
図3のA-A矢視断面を車両外側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両用バッテリパックの固定構造の一実施形態について、図面(
図1~
図5)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印L、R方向は、車幅方向における左側、右側を示している。また、本実施形態の説明における「左右」は、車両室内の乗員が車両前方を向いたときの左右に対応している。
【0012】
本実施形態の車両用バッテリパックの固定構造は、
図1~
図5に示すように、車体のフロア部の車両下方側にバッテリパック1を固定するための構造である。車体のフロア部には、フロアパネル71が設けられている。フロアパネル71の車幅方向外側部には、車両前後方向に延びるサイドシル50が設けられている。また、フロアパネル71の上面には、車幅方向に延びるフロアクロスメンバ等が接合されることで補強されている。
【0013】
バッテリパック1は、バッテリセル(図示せず)を収容するバッテリケース10と、バッテリケース10の車幅方向外側部に設けられるバッテリサイドメンバ30と、バッテリケース10の内部に配置される内側クロスメンバ20と、下側ケース11の外側に取り付けられた外側クロスメンバ25と、有している。
【0014】
先ず、バッテリパック1のバッテリケース10について説明する。バッテリケース10は、車体のフロア部のフロアパネル71の車両下方側に配置され、バッテリサイドメンバ30を介して、サイドシル50に固定されている。該バッテリケース10は、下側ケース11と、上側ケース17と、を有している。
【0015】
図2及び
図3に示すように、下側ケース11は、底面部12と、側壁部13と、前壁部14と、後壁部15と、を有している。底面部12は、バッテリセルが設置される部分であり、車両前後方向に延びる略長方形状である。側壁部13は、底面部12の車幅方向の両外側に設けられており、底面部12の車幅方向外側端から車両上方に突出し、車両前後方向に延びている。側壁部13の上端には、車幅方向外側に突出する下外側フランジ13aが設けられている。
【0016】
前壁部14は、底面部12の前端から車両上方に突出し、車幅方向に延びている。また、前壁部14の車幅方向外側部は、側壁部13の前部に接続されている。前壁部14の前面には、フロントサイドメンバ等の骨格部材に連結されるブラケット75等が接合されている。後壁部15は、底面部12の後端から車両上方に突出し、車幅方向に延びている。また、後壁部15の車幅方向外側部は、側壁部13の後部に接続されている。下側ケース11の前壁部14の上端には、車両前方に突出し、車幅方向に延びる前側フランジ14aが設けられ、後壁部15の上端には、車両後方に突出し、車幅方向に延びる後側フランジ15aが設けられている。
【0017】
図1に示すように、上側ケース17は、下側ケース11を車両上方から覆う、蓋状の部材である。この例の上側ケース17は、天面部18と、側壁部19と、前壁部19aと、後壁部19bと、を有している。天面部18は、下側ケース11の底面部12の車両上方側に間隔を空けて配置され、フロアパネル71の下面に対して、若干の間隔を空けて配置されている部分であり、車両前後方向に延びる略長方形状である。上側ケース17の側壁部19は、天面部18の車幅方向の両外側に設けられており、天面部18の車幅方向外側端から車両下方に突出し、車両前後方向に延びている。上側ケース17の側壁部19の下端には、車幅方向外側に突出する上外側フランジ18aが設けられている。上外側フランジ18aは、下外側フランジ13aにボルト等により締結されている。
【0018】
上側ケース17の前壁部19aは、天面部18の前端から車両下方に突出し、車幅方向に延びている。前壁部19aの車幅方向外側部は、側壁部19の前部に接続されている。上側ケース17の後壁部19bは、天面部18の後端から車両下方に突出し、車幅方向に延びている。後壁部19bの車幅方向外側部は、側壁部19の後部に接続されている。上側ケース17の前壁部19a及び後壁部19bのそれぞれには、下側ケース11の前壁部14及び後壁部15と同様に、フランジ19cが設けられている。上側ケース17の各フランジ19cは、下側ケース11の前側フランジ14a及び後側フランジ15aに、それぞれボルト等により締結されている。
【0019】
図2及び
図3に示すように、内側クロスメンバ20は、車幅方向に延びる部材で、下側ケース11の底面部12に接合されている。この例では、複数の内側クロスメンバ20が、車両前後方向に互いに間隔を空けて配置されている。図示は省略しているが、バッテリセルは、車両前後方向に並ぶ内側クロスメンバ20の間に配置されている。内側クロスメンバ20は、車両前後方向に所定に幅を有し、この幅よりも、車両上下方向の高さが長く設定されている。
【0020】
本実施形態の内側クロスメンバ20は、中間部材21と、左右の外側部材22と、を有している。中間部材21の下部には、車両前方及び車両後方に突出するフランジが設けられており、該フランジは、下側ケース11の底面部12にスポット溶接等により接合されている。
【0021】
外側部材22は、中間部材21の車幅方向外側部に接合され、外側部材22の外側端は、下側ケース11の側壁部13に接合されている。
【0022】
図2~
図5に示すように、外側クロスメンバ25は、下側ケース11の底面部12の下面側、すなわち、下側ケース11の外側に接合される部材で、車幅方向に延びている。この例では、複数の外側クロスメンバ25が、車両前後方向に互いに間隔を空けて配置されている。この例では、外側クロスメンバ25は、車幅方向にサイドシル50まで延びている。
【0023】
外側クロスメンバ25は、車両前後方向に所定の幅を有する板状である。外側クロスメンバ25の車幅方向外側端は、下側ケース11の側壁部13よりも車幅方向外側に配置されている。この例では、サイドシル50の車幅方向外側端より内側であって、バッテリサイドメンバ30の外側端よりもやや内側に配置されている。また、外側クロスメンバ25は、内側クロスメンバ20と、平面視で重なるように配置される。すなわち、外側クロスメンバ25と内側クロスメンバ20によって、下側ケース11の底面部12が挟まれた状態で、接合されている。
【0024】
バッテリサイドメンバ30は、バッテリケース10に接合されている部材であり、車両前後方向に延びている。この例のバッテリサイドメンバ30は、
図4及び
図5に示すように、車両前後方向に延びる第1のサイドメンバ31と、車両前後方向に延びる第2のサイドメンバ40と有している。第1のサイドメンバ31及び第2のサイドメンバ40は互いに接合されており、第1のサイドメンバ31は、サイドシル50に接合され、第2のサイドメンバ40は、バッテリケース10の下側ケース11の側壁部13の外面に接合されている。
【0025】
第1のサイドメンバ31及び第2のサイドメンバ40を設けることで、異なる構造体によって、側突等による衝撃荷重を受けることができ、さらに、衝撃荷重を分散させることができる。すなわち、変形ストロークを小さくしつつ、側突の衝撃荷重のエネルギを吸収できる。変形ストロークを小さくすることで、バッテリサイドメンバ30の車幅方向の長さを短くできるため、バッテリケース10の車幅方向の長さを大きく設定できる。その結果、バッテリ容量を増やすことができる。
【0026】
ここで、第1のサイドメンバ31の詳細について説明する。
図4及び
図5に示すように、第1のサイドメンバ31は、アルミニウムを含む素材により形成され、車両前後方向に延びる中空の直方体状の部材である。また、第1のサイドメンバ31の横断面(車両前後方向視の断面)は、車幅方向に延びる、すなわち、車幅方向を長辺とする四角形状である。この例では、第1のサイドメンバ31は、アルミニウム合金を引抜成形によって形成される。
【0027】
第1のサイドメンバ31は、上側フランジ32及び下側フランジ33を有している。上側フランジ32は、第1のサイドメンバ31の車幅方向の内側の下部に設けられ、当該下部から車幅方向内側に突出し、車両前後方向に延びている。当該上側フランジ32は、第2のサイドメンバ40に接合されている。この例では、下側フランジ33は、第2のサイドメンバ40の底面部44にボルト等により締結されている。
【0028】
下側フランジ33は、第1のサイドメンバ31の車幅方向の内側の上部に設けられ、当該上部から車両上方に突出し、車両前後方向に延びている。下側フランジ33は、上側フランジ32と同様に、第2のサイドメンバ40に接合される。この例では、上側フランジ32は、第2のサイドメンバ40の外壁部42にボルト等により締結されている。
【0029】
上記のように第1のサイドメンバ31を構成することにより、側突の衝撃荷重を受けたとき、上側フランジ32及び下側フランジ33は大きく変形しない状態で、第2のサイドメンバ40を車幅方向内側に押圧することができる。その結果、第2のサイドメンバ40を中心に荷重の分散が効率よく進み、側突による衝撃荷重のエネルギを効率よく吸収できる。
【0030】
続いて、第2のサイドメンバ40の詳細について説明する。
図4及び
図5に示すように、第2のサイドメンバ40は、車両前後方向に延びる板金製のアウタパネル41と、車両前後方向に延びる板金製のインナパネル45とを有している。
【0031】
アウタパネル41は、1枚の金属材料からなる板材を屈曲することのよって形成される。この例のアウタパネル41は、車幅方向外側を臨む外壁部42と、該外壁部42の下端から車幅方向内側に延びる底面部44とを有し、外壁部42の上端には、車幅方向外側に突出する上側フランジ43aが設けられ、底面部44の車幅方向内側端には、車両下方に突出する下側フランジ44aが設けられている。
【0032】
インナパネル45は、アウタパネル41と同様に、1枚の金属材料からなる板材を屈曲することのよって形成される。この例のインナパネル45は、車幅方向内側を臨む内壁部46と、該内壁部46の上端から車幅方向外側に延びる上面部47とを有している。上面部47の車幅方向外側部には、アウタパネル41の上側フランジ43aがスポット溶接等により接合されている。また、内壁部46の下部には、アウタパネル41の下側フランジ44aがスポット溶接等により接合されている。
【0033】
図4及び
図5に示すように、アウタパネル41及びインナパネル45が、上記のように接合されることによって、車両前後方向視で車両上下方向に延びる、すなわち、車両上下方向を長辺とする四角形状の第1の閉断面構造S1が構成されている。第1の閉断面構造S1の上部に位置するインナパネル45の上面部47は、サイドシル50に重なるように配置されている。
【0034】
また、本実施形態では、第1の閉断面構造S1の内部には、ハット形状部材80が車幅方向に頂点部を向けて固定されている。ハット形状部材80は、車両前後方向視でハット形状の断面を有している。この例では、ハット形状部材80の車幅方向内側部に、上下にフランジが設けられ、フランジはインナパネル45の内壁部46にスポット溶接等により接合されている。ハット形状部材80の車幅方向外側端は、アウタパネル41の外壁部42の内側に間隔を空けて配置されている。
【0035】
上記のように効率よく衝撃荷重を吸収するためには、サイドシル50とバッテリケース10との間の中間部材21となるバッテリサイドメンバ30の閉断面の内部にアブソーバを設けることが好ましい。本実施形態では、アブソーバとして機能するハット形状部材80が、第2のサイドメンバ40に形成された第1の閉断面構造S1の内部に設けられている。これにより、第2のサイドメンバ40による衝撃吸収がより効率よく行われる。また、この例では、ハット形状部材80の車幅方向外側端が、第1のサイドメンバ31の上面に対応する位置に配置されているため、荷重分散をより効果的に行うことができ、側突のエネルギ吸収効果をより高めている。
【0036】
図4及び
図5に示すように、本実施形態のサイドシル50には、車両前後方向視で、第2の閉断面構造S2が構成されている。ここで、サイドシル50の詳細について説明する。サイドシル50は、車両前後方向に延びる部材で、フロアパネル71の車幅方向両側に配置されている。サイドシル50は、車両前後方向に延びる外側サイドシル51と、該外側サイドシル51の車幅方向内側に配置され、車両前後方向に延びる内側サイドシル55と、を有している。
【0037】
外側サイドシル51は、
図4及び
図5に示すように、外壁部52と、外側上面部53と、を有している。外壁部52は、車幅方向外側を臨み、車両前後方向に延びている。外側上面部53は、外壁部52の上端から車幅方向内側に延び、且つ車両前後方向に延びている。また、外側上面部53は、車幅方向内側に向かうに従い、車両上方にやや傾斜している。さらに、外側上面部53の車幅方向内側端には、車両上方に突出する上外側フランジ53aが設けられている。
【0038】
内側サイドシル55は、内壁部56と、内側上面部57と、底面部58と、を有している。内壁部56は、外壁部52の車幅方向内側に間隔を空けて配置され、車幅方向内側を臨み、車両前後方向に延びている。内側上面部57は、内壁部56の上端から車幅方向外側に延び、且つ車両前後方向に延びている。また、内側上面部57は、車幅方向外側に向かうに従い、車両上方にやや傾斜している。内側上面部57には、フロアクロスパネル71の下面における車幅方向外側部が接合されている。さらに、内側上面部57の車幅方向外側端には、車両上方に突出する上内側フランジ58aが設けられている。上内側フランジ58aは、上外側フランジ53aにスポット溶接等により接合されている。
【0039】
内側サイドシル55の底面部58は、内壁部56の下端から車幅方向外側に延びている。底面部58は、内側上面部57及び外側上面部53の車両下方側に間隔を空けて配置されている。また、底面部58の車幅方向中間部には、段差が形成されている。段差の車幅方向内側が下段面となり、段差の車幅方向外側が上段面となっている。また、底面部58の下段面の車幅方向外側には、車両下方に突出する下側フランジ58eが設けられている。下側フランジ58eは、外壁部52の下部にスポット溶接等により接合されている。
【0040】
上記のように、
図4及び
図5に示すように、第2の閉断面構造S2は、外側サイドシル51及び内側サイドシル55が接合されることにより構成される。第2の閉断面構造S2の内部には、複数の補強部材60が固定されている。複数の補強部材60は、第2の閉断面構造S2の内部において、車両前後方向に互いい間隔を空けて配置されている。
【0041】
各補強部材60は、
図3に示すように、車両前後方向に間隔を空けて配置される2つの縦壁、すなわち、前壁(縦壁)61及び後壁(縦壁)62を有し、さらに、前壁61の下部と後壁62の下部とを繋ぐ底面部63を有している。
【0042】
補強部材60の底面部63は、内側サイドシル55の底面部58に接合されている。前壁61は、底面部63の前端から車両上方の延びており、外側サイドシル51の外側上面部53及び内側サイドシル55の内側上面部57に当接している。前壁61の車両上下方向の中間部に、例えば車幅方向に延びる横ビード(図示せず)を設け、前壁61の車幅方向の中間部には、車両上下方向に延びる縦ビード(図示せず)を設けてもよい。後壁62は、底面部63の後端から車両上方の延び、前壁61と同様に、外側サイドシル51の外側上面部53及び内側サイドシル55の内側上面部57に当接している。また、後壁62には、前壁61と同様に、ビードを設けてもよい。
【0043】
なお、複数の補強部材60のうちのいくつかには、
図3に示すように前壁61の内側から車両後方に延びる内壁64が設けられている。内壁64の下端は、底面部63に接続されている。
【0044】
本実施形態では、
図4及び
図5に示すように、補強部材60は、外側クロスメンバ25に、平面視で重なるように配置されている。さらに、車両上方側から下方に向かって、補強部材60、サイドシル50、第1のサイドメンバ31、外側クロスメンバ25が、この順に配置され、車両上下方向に延びる固定用ボルト78によって固定されている。
【0045】
詳細には、補強部材60の底面部63、内側サイドシル55の底面部58の下段面、第1のサイドメンバ31の上面、第1のサイドメンバ31の下面、外側クロスメンバ25の順に配置される。これらには、車両上下方向に連通するように貫通孔が設けられている。当該貫通孔に、固定用ボルト78を貫通させた状態で、補強部材60、サイドシル50、第1のサイドメンバ31及び外側クロスメンバ25が締結されている。
【0046】
側突による衝撃荷重は、一般には、サイドシル50の構造で吸収する。本実施形態では、上記したようにサイドシル50に、バルク構造の補強部材60を設け、補強部材60が位置するサイドシル50に、バッテリサイドメンバ30及び外側クロスメンバ25を接合しているので、サイドシル50の剛性が向上する。
【0047】
さらに、側突による衝撃荷重によって、サイドシル50及びアルミニウム合金製の第1のサイドメンバ31が車幅方向内側に変形するときに、サイドシル50の変形と第1のサイドメンバ31の変形が連動するため、サイドシル50及び第1のサイドメンバ31が協調して荷重吸収を行うことができる。これにより、荷重吸収の効率化と荷重分散の多面化で、短いストロークで側突のエネルギの吸収を効果的に行うことができる。
【0048】
また、本実施形態では、
図3に示すように、内側クロスメンバ20は、車幅方向視で、補強部材60に重なるように配置されている。この例では、補強部材60の底面が、内側クロスメンバ20の車両上下方向の中間部に配置されている。
【0049】
本実施形態では、サイドシル50及び第1のサイドメンバ31の連動した変形によって、サイドシル50及び第1のサイドメンバ31で受けた荷重は、第2のサイドメンバ40に伝達される。このとき、第2のサイドメンバ40は、内側クロスメンバ20によって、バッテリパック1の内側から支えられるため、第2のサイドメンバ40は、衝撃荷重を効率よく吸収できる。サイドシル50の補強部材6は、内側クロスメンバ20に側方視で重なるように配置され、内側クロスメンバ20は、車幅方向視で、下側ケース11から車両上方に延びる縦長の形状となるため、第2のサイドメンバ40を効果的に支持することができる。
【0050】
ここで、本実施形態のバッテリサイドメンバ30の第1のサイドメンバ31の詳細な構造について説明する。
図4及び
図5に示すように、第1のサイドメンバ31は、中空部材であり、第1のサイドメンバ31の横断面(車両前後方向視の断面)は、車幅方向を長辺とする四角形状である。当該四角形状は、3つの縦壁によって、4つの領域が車幅方向に並ぶように仕切られている。この例では、車幅方向の外側から内側に向かって、第1の領域34a、第2の領域34b、第3の領域34c及び第4の領域34dが形成されている。第1~第4の領域34a~34dの断面形状は、それぞれ四角形(枠形状)で、第1~第4の領域34a~34dの車両上下方向の寸法は同一である。車幅方向の寸法は、第1の領域34aが最も小さく、第2の領域34b、第3の領域34c、第4の領域34dの順に、徐々に大きくなっている。上記した固定用ボルト78は、この例では、第2の領域34bを貫通している。
【0051】
上記のように第1~第4の領域34a~34dを設けることにより、衝撃荷重を効率よく吸収できる。本実施形態では、第4の領域34dには、上側フランジ32及び下側フランジ33が設けられているため、第4の領域34dは、第1~第3の領域34a~34cよりもやや剛性が高い。そのため、側突による衝撃荷重を受けたとき、第1~第3の領域34a~34cがより大きく変形する。すなわち、第1~第3の領域34a~34cがより潰れやすい。
【0052】
第3の領域34cは、大きいストロークを有しているが、第3の領域34cは、衝撃荷重により変形が開始されてから変形終了までの間において、後期に変形する。すなわち、本実施形態では、衝撃荷重による変形開始直後に、バッテリパック1の外側がすぐに変形することが抑制され、一定の期間、形状が保たれ、その後、内側に徐々に変形する。これにより、側突のエネルギ吸収を効果的に行うことができる。
【0053】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0054】
本実施形態では、バッテリサイドメンバ30の第1のサイドメンバ31を、アルミニウム合金を引抜成形することによって形成しているが、これに限らない。第1~第4の領域34a~34dを複数の部材によって構成してもよい。また、本実施形態では、ハット形状部材80をアブソーバとして用いてるが、これに限らず、別途、アブソーバを設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 バッテリパック
10 バッテリケース
11 下側ケース
12 底面部
13 側壁部
13a 下外側フランジ
14 前壁部
14a 前側フランジ
15 後壁部15
15a 後側フランジ
17 上側ケース
18 天面部
18a 上外側フランジ
19 側壁部
19a 前壁部
19b 後壁部
20 内側クロスメンバ
21 中間部材
22 外側部材
25 外側クロスメンバ
30 バッテリサイドメンバ
31 第1のサイドメンバ
32 上側フランジ
33 下側フランジ
34a 第1の領域
34b 第2の領域
34c 第3の領域
34d 第4の領域
40 第2のサイドメンバ
41 アウタパネル
42 外壁部
43a 上側フランジ
44 底面部
44a 下側フランジ
45 インナパネル
46 内壁部
47 上面部
50 サイドシル
51 外側サイドシル
52 外壁部
53 外側上面部
53a 上外側フランジ
55 内側サイドシル
56 内壁部
57 内側上面部
58 底面部
58a 上内側フランジ
58e 下側フランジ
60 補強部材
61 前壁(縦壁)
62 後壁(縦壁)
63 底面部
64 内壁
71 フロアパネル
75 ブラケット
78 固定用ボルト
80 ハット形状部材
S1 第1の閉断面構造
S2 第2の閉断面構造