(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】セルバランス制御システム、状態推定装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240808BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240808BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240808BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240808BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20240808BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H02J7/00 Q
H01M10/44 P
H01M10/48 P
G01R31/389
(21)【出願番号】P 2022047415
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 将
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-520773(JP,A)
【文献】特開2022-135394(JP,A)
【文献】特開2008-123868(JP,A)
【文献】特開2021-036734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
G01R 31/389
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の電池セルから構成されるセル群と、直列接続された複数の抵抗から構成される抵抗群と、前記セル群と前記抵抗群とを切断可能に接続する断接部と、を備え、前記抵抗の数は、前記電池セルの数と同数のn個であり、前記複数の抵抗の各抵抗値は、全て等しく設定され、前記断接部は、前記複数の電池セルのうち任意の1つの対象セルに直列接続される前記抵抗の数を1個からn個の間の任意の数に変更可能に構成され
るバッテリ回路
に対して設けられ、前記対象セルを放電することによってセルバランスを調整するセルバランス制御システムであって、
前記対象セルの電圧値を検出電圧値として逐次取得する電圧検出部と、
セルバランスの調整開始前に、前記対象セルの検出電圧値よりも低い最終目標電圧値を設定するとともに、前記対象セルの検出電圧値と前記最終目標電圧値とに基づいて、前記対象セルの検出電圧値と前記最終目標電圧値との間に中間目標電圧値を設定する目標電圧設定部と、
セルバランスの調整開始時から前記対象セルの検出電圧値が前記中間目標電圧値に達するまでの間は前記対象セルに所定数の前記抵抗を直列接続し、前記対象セルの検出電圧値が前記中間目標電圧値に達した後は前記対象セルに直列接続する前記抵抗の数を前記所定数から増加するように前記断接部を制御する断接制御部と、を備える
ことを特徴とする
セルバランス制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載
のセルバランス制御システムであって、
前記目標電圧設定部が設定する中間目標電圧値は、第1中間目標電圧値と、前記第1中間目標電圧値よりも低い第2中間目標電圧値とを含み、
前記断接制御部は、前記対象セルの検出電圧値が前記第1中間目標電圧値に達するまでの間は前記対象セルに第1の所定数の前記抵抗を直列接続し、前記対象セルの検出電圧値が前記第1中間目標電圧値に達した後は前記対象セルに前記第1の所定数よりも多い第2の所定数の前記抵抗を直列接続し、前記対象セルの検出電圧値が前記第2中間目標電圧値に達した後は前記対象セルに前記第2の所定数よりも多い第3の所定数の前記抵抗を直列接続するように前記断接部を制御する
ことを特徴とするセルバランス制御システム。
【請求項3】
直列接続された複数の電池セルから構成されるセル群と、直列接続された複数の抵抗から構成される抵抗群と、前記セル群と前記抵抗群とを切断可能に接続する断接部と、を備え、前記断接部は、前記複数の電池セルのうち任意の1つの対象セルに直列接続される前記抵抗の数を変更可能に構成されるバッテリ回路の前記対象セルを通流する電流を検出し、前記対象セルの電圧を検出し、同一のタイミングに検出された電流及び電圧それぞれの波形に含まれる周波数成分に基づいて、前記対象セルの内部インピーダンスのインピーダンススペクトルを算出し、算出したインピーダンススペクトルに基づいて、前記対象セルの状態を推定する状態推定装置であって、
前記対象セルに1つの前記抵抗を直列接続するように前記断接部を制御する断接制御部を備える
ことを特徴とする状態推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バッテリ回路、セルバランス制御システム、及び状態推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直列接続された複数の電池セルを有するバッテリにおける複数の電池セルの電圧値を均等化するためのセルバランス回路が開示されている。セルバランス回路は、直列接続された複数の抵抗と、電池セルと抵抗との間に設けられる複数のスイッチとを有する。複数のスイッチは、各抵抗の一端側と、各電池セルの正極側との間に1つずつ設けられ、セルバランス制御装置の制御の下、オン/オフが切り替えられる。スイッチがオンになると、当該スイッチに接続される電池セルが抵抗を介して放電され、当該電池セルの電圧値が低下する。他の電池セルよりも電圧値が高い電池セルを放電することにより、複数の電池セルの電圧値を均等化することができる。
【0003】
特許文献2には、電気化学インピーダンス法を用いて、車載バッテリの各部の状態の推定を可能とする推定装置が開示されている。推定装置は、バッテリを通流する電流を検出し、バッテリの端子間の電圧を検出し、同一のタイミングに検出された電流及び電圧それぞれの波形に含まれる周波数成分に基づいて、バッテリの内部インピーダンスのインピーダンススペクトルを算出し、算出したインピーダンススペクトルに基づいて、バッテリの状態を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-161730号公報
【文献】特開2021-47032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のセルバランス回路では、1つの電池セル(対象セル)に対して1つの抵抗が接続され、放電時に流通する電流の量(電流値)は、対象セルに接続される抵抗の大きさ(抵抗値)によって決まり、放電時の対象セルの放電速度(電圧降下の速度)は、接続される抵抗の抵抗値が減少するほど速くなる。バランス調整時間の短縮には、対象セルに接続される抵抗の抵抗値が小さく、通電する電流の量が多い方が有利である。反対に、高精度なバランス調整には、対象セルに接続される抵抗の抵抗値が大きく、通電する電流の量が少ない方が有利である。特許文献1のセルバランス回路においてバランス調整を所望の精度で確実に行なうためには、対象セルに接続される抵抗の抵抗値をある程度大きく設定する必要があり、バランス調整時間を短縮することができない。
【0006】
また、特許文献1のセルバランス回路の対象セルの状態を、セルバランス回路のスイッチと抵抗を利用し、任意の周波数で矩形波を作成し、電気化学インピーダンス法の一種である矩形波インピーダンス法によって推定する場合、対象セルに流通する電流の量が少ないので、検出される電流値がノイズの影響を受けてしまい、適正な推定結果を得ることができないおそれがある。
【0007】
そこで本開示は、複数のセルのうち任意の1つのセルの放電時において、流通する電流の量を増減可能なバッテリ回路の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく、本開示の第1の態様は、直列接続された複数の電池セルから構成されるセル群と、直列接続された複数の抵抗から構成される抵抗群と、セル群と抵抗群とを切断可能に接続する断接部と、を備え、抵抗の数は、電池セルの数と同数のn個であり、複数の抵抗の各抵抗値は、全て等しく設定され、断接部は、複数の電池セルのうち任意の1つの対象セルに直列接続される抵抗の数を1個からn個の間の任意の数に変更可能に構成されるバッテリ回路に対して設けられ、対象セルを放電することによってセルバランスを調整するセルバランス制御システムであって、対象セルの電圧値を検出電圧値として逐次取得する電圧検出部と、セルバランスの調整開始前に、対象セルの検出電圧値よりも低い最終目標電圧値を設定するとともに、対象セルの検出電圧値と最終目標電圧値とに基づいて、対象セルの検出電圧値と最終目標電圧値との間に中間目標電圧値を設定する目標電圧設定部と、セルバランスの調整開始時から対象セルの検出電圧値が中間目標電圧値に達するまでの間は対象セルに所定数の抵抗を直列接続し、対象セルの検出電圧値が中間目標電圧値に達した後は対象セルに直列接続する抵抗の数を所定数から増加するように断接部を制御する断接制御部と、を備える。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様のセルバランス制御システムであって、目標電圧設定部が設定する中間目標電圧値は、第1中間目標電圧値と、第1中間目標電圧値よりも低い第2中間目標電圧値とを含む。断接制御部は、対象セルの検出電圧値が第1中間目標電圧値に達するまでの間は対象セルに第1の所定数の抵抗を直列接続し、対象セルの検出電圧値が第1中間目標電圧値に達した後は対象セルに第1の所定数よりも多い第2の所定数の抵抗を直列接続し、対象セルの検出電圧値が第2中間目標電圧値に達した後は対象セルに第2の所定数よりも多い第3の所定数の抵抗を直列接続するように断接部を制御する。
【0010】
本発明の第3の態様は、直列接続された複数の電池セルから構成されるセル群と、直列接続された複数の抵抗から構成される抵抗群と、セル群と抵抗群とを切断可能に接続する断接部と、を備え、断接部は、複数の電池セルのうち任意の1つの対象セルに直列接続される抵抗の数を変更可能に構成されるバッテリ回路の対象セルを通流する電流を検出し、対象セルの電圧を検出し、同一のタイミングに検出された電流及び電圧それぞれの波形に含まれる周波数成分に基づいて、対象セルの内部インピーダンスのインピーダンススペクトルを算出し、算出したインピーダンススペクトルに基づいて、対象セルの状態を推定する状態推定装置であって、対象セルに1つの抵抗を直列接続するように断接部を制御する断接制御部を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示のバッテリ回路によれば、複数のセルのうち任意の1つのセルの放電時において、流通する電流の量を増減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセルバランス制御システム及び状態推定装置を示すブロック図である。
【
図5】セルバランス制御回路が実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態のセルバランス制御システムは、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両に搭載されるシステムであり、
図1に示すように、バッテリ(バッテリパック)1のセルバランス制御を実行する。セルバランス制御システムは、バッテリ1と、セルバランス回路2と、セルバランス制御装置10と、を備える。
【0014】
バッテリ1は、外部の交流電源等から電力を供給されることにより充電される充電池であり、直列接続された複数(n個)の電池セルC(第1セルC1、第2セルC2、第3セルC3・・・第nセルCn)から構成されるセル群3を備える。電池セルCは、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池である。
【0015】
セルバランス回路2は、バッテリ1を構成する複数の電池セルCの電圧値を均等化してセルバランスを調整する回路であり、直列接続された複数(n個)の抵抗R(第1抵抗R1、第2抵抗R2、第3抵抗R3・・・第n抵抗Rn)から構成される抵抗群4と、セル群3と抵抗群4との間に設けられ、セル群3と抵抗群4とを断接可能に接続する断接部5と、を備える。
【0016】
抵抗Rは、1つの電池セルCに対して1つずつ設けられ、各抵抗Rの抵抗値は、全て等しく設定されている。
【0017】
断接部5は、複数の電池セルCのうち任意の1つの対象セルに直列接続される抵抗Rの数を変更可能に構成される。本実施形態の断接部5は、対象セルに対応する抵抗Rが対象セルに必ず直接接続されるように(例えば、対象セルが第1セルC1の場合には、第1抵抗R1が必ず直列接続されるように)、セル群3と抵抗群4とを接続する。
【0018】
本実施形態の断接部5は、複数(n個)のセル側スイッチSA(第1セル側スイッチSA1、第2セル側スイッチSA2、第3セル側スイッチSA3、第4セル側スイッチSA4・・・第nセル側スイッチSAn)と、複数(n個)の抵抗側スイッチSB(第1抵抗側スイッチSB1、第2抵抗側スイッチSB2、第3抵抗側スイッチSB3、第4抵抗側スイッチSB4・・・第n抵抗側スイッチSBn)と、複数(n個)の中間スイッチSC(第1中間スイッチSC1、第2中間スイッチSC2、第3中間スイッチSC3・・・第n中間スイッチSCn)と、を備える。
【0019】
セル側スイッチSA及び抵抗側スイッチSBは、各抵抗Rの一端側と各電池セルCの正極側とを接続する接続線に直列に設けられる2つのスイッチであり、セル側に設けられるスイッチがセル側スイッチSA、抵抗側に設けられるスイッチが抵抗側スイッチSBである。中間スイッチSCは、セル側スイッチSAと抵抗側スイッチSBとの間同士を接続する接続線に設けられる1つのスイッチである。各スイッチSA,SB,SCは、初期状態ではオフに設定され、各スイッチSA,SB,SCのオン/オフは、セルバランス制御装置10の制御によって切替わる。
【0020】
例えば、対象セルが第1セルC1であり、第1セルC1に1つの抵抗Rを接続する場合、
図2に示すように、第1セル側スイッチSA1、第1抵抗側スイッチSB1、第2セル側スイッチSA2、及び第2抵抗側スイッチSB2をオンに設定し、他のスイッチSA,SB,SCをオフに設定する(初期状態に維持する)。これにより、第1セルC1が1つの抵抗R1を介して放電される。
【0021】
対象セルが第1セルC1であり、第1セルC1に2つの抵抗Rを接続する場合、
図3に示すように、第1セル側スイッチSA1、第1抵抗側スイッチSB1、第2セル側スイッチSA2、第3抵抗側スイッチSB3、及び第2中間スイッチSC2をオンに設定し、他のスイッチSA,SB,SCをオフに設定する(初期状態に維持する)。これにより、第1セルC1が2つの抵抗R1,R2(R1とR2の合成抵抗)を介して放電される。
【0022】
対象セルが第1セルC1であり、第1セルC1に3つの抵抗Rを接続する場合、
図4に示すように、第1セル側スイッチSA1、第1抵抗側スイッチSB1、第2セル側スイッチSA2、第4抵抗側スイッチSB4、第2中間スイッチSC2、及び第3中間スイッチSC3をオンに設定し、他のスイッチSA,SB,SCをオフに設定する(初期状態に維持する)。これにより、第1セルC1が3つの抵抗R1,R2,R3(R1とR2とR3の合成抵抗)を介して放電される。
【0023】
各スイッチSA,SB,SCのオン/オフを制御することにより、第1セルC1以外を対象セルとすることや、対象セルに4つ以上の抵抗Rを接続することが可能である。複数の電池セルCのうち最も高電圧な電池セルを対象セルとして放電させることにより、各電池セルCの電圧値が均等化される。
【0024】
対象セルに接続する抵抗Rの数が1つの場合(
図2)と2つの場合(
図3)と3つの場合(
図4)とを比較すると、接続する抵抗Rの数(抵抗数)が増えるほど、抵抗値(合成抵抗値)が増大し、流通する電流の量(電流値)が減少し、放電速度が遅くなる。すなわち、対象セルに直列接続される抵抗数が1つの場合は、対象セルが高速で放電され(高速放電)、抵抗数が2つの場合は、対象セルが中速で放電され(中速放電)、抵抗数が3つの場合は、対象セルが低速で放電される(低速放電)。
【0025】
セルバランス制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び入出力回路等を備えて構成される。セルバランス制御装置10は、予め設定されたプログラムに従って、セルバランス回路2の断接部5(各スイッチSA,SB,SC)のオン/オフを制御し、バッテリ1のセルバランス制御(対象セルを放電してセルバランスを調整する制御)を実行する。
【0026】
セルバランス制御装置10は、電圧検出部11と、目標電圧設定部12と、スイッチ制御部(断接制御部)13とを有する。
【0027】
電圧検出部11は、各電池セルCの電圧値を取得し、取得した各電圧値を目標電圧設定部12及びスイッチ制御部13に出力する。電圧検出部11は、各電池セルCの電圧値を電圧センサによって直接取得してもよく、他の検出センサ等を介して取得してもよい。
【0028】
目標電圧設定部12は、電圧検出部11が取得した各電圧値のうち最も高い最高電圧よりも低い所定の電圧値(例えば、電圧検出部11が取得した各電圧値のうち最も低い最低電圧)を、対象セルの最終目標電圧値として設定する。また、対象セルの現在の電圧値と最終目標電圧値との間に、第1中間目標電圧値及び第2中間目標電圧値を設定する(現在の電圧値>第1中間目標電圧値>第2中間目標電圧値>最終目標電圧値)。
【0029】
例えば、対象セルを最終目標電圧値まで放電した場合に流通する電流の総量(総電流量)を推定し、総電流量の1/3が流通したときの対象セルの電圧値を第1中間目標電圧値とし、総電流量の2/3が流通したときの対象セルの電圧値を第2中間目標電圧値とする。なお、第1中間目標電圧値及び第2中間目標電圧値を他の方法(例えば、現在の電圧値と最終目標電圧値との差分を3等分するなど)によって設定してもよい。
【0030】
スイッチ制御部13は、所定の実行条件が成立したとき(例えば、電圧検出部11が取得した各電圧値のうち最高電圧と最低電圧との差が所定の閾値を超えたとき等)に、最高電圧の電池セルCを対象セルとして、対象セルを放電させるように断接部5を制御する。
【0031】
例えば、第1セルC1が対象セルの場合、スイッチ制御部13は、第1セルC1の電圧値が第1中間目標電圧値に達するまでの間、第1セルC1に1つの抵抗R1を接続して放電する(
図2に示す高速放電)。第1セルC1の電圧値が第1中間目標電圧値に達すると、第2中間目標電圧値に達するまでの間、第1セルC1に2つの抵抗R1,R2を接続して放電する(
図3に示す中速放電)。第1セルC1の電圧値が第2中間目標電圧値に達すると、最終目標電圧値に達するまでの間、第1セルC1に3つの抵抗R1,R2,R3を接続して放電する(
図4に示す低速放電)。第1セルC1の電圧値が最終目標電圧値に達すると、第1セルC1の放電を終了し、各スイッチSA,SB,SCを初期状態に戻す。
【0032】
次に、スイッチ制御部13が実行するセルバランス制御について、
図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0033】
本制御が開始されると、対象セルの電圧値を取得し(ステップS1)、取得した対象セルの電圧値と第1中間目標電圧値とを比較する(ステップS2)。
【0034】
本制御の開始直後は、対象セルの電圧値が第1目標電圧値を超えているため(ステップS2:YES)、対象セルに1つの抵抗Rを接続して高速で放電する(ステップS3)。高速放電中は、対象セルの電圧値と第1中間目標電圧値とを逐次比較し(ステップS2)、対象セルの電圧値が第1目標電圧値を超えている間は、高速放電を継続する(ステップS3)。
【0035】
高速放電によって対象セルの電圧が低下して第1目標電圧値に達すると(ステップS2:NO)、対象セルの電圧値と第2中間目標電圧値とを比較する(ステップS4)。
【0036】
第1目標電圧値に達した直後は、対象セルの電圧値が第2目標電圧値を超えているため(ステップS4:YES)、対象セルに2つの抵抗Rを接続して中速で放電する(ステップS5)。中速放電中は、対象セルの電圧値と第2中間目標電圧値とを逐次比較し(ステップS4)、対象セルの電圧値が第2目標電圧値を超えている間は、中速放電を継続する(ステップ5)。
【0037】
中速放電によって対象セルの電圧が低下して第2目標電圧値に達すると(ステップS4:NO)、対象セルの電圧値と最終目標電圧値とを比較する(ステップS6)。
【0038】
第2目標電圧値に達した直後は、対象セルの電圧値が最終目標電圧値を超えているため(ステップS6:YES)、対象セルに3つの抵抗Rを接続して低速で放電する(ステップS7)。低速放電中は、対象セルの電圧値と最終目標電圧値とを逐次比較し(ステップS6)、対象セルの電圧値が最終目標電圧値を超えている間は、低速放電を継続する(ステップ7)。
【0039】
低速放電によって対象セルの電圧が低下して最終目標電圧値に達すると(ステップS6:NO)、本制御を終了し、断接部5を初期状態に設定する。
【0040】
このように、スイッチ制御部13は、セルバランスの調整開始時は対象セルに1つの抵抗Rを直列接続し、セルバランスの調整開始時から所定時間(第1目標電圧値に達するまでの時間及び第2目標電圧値に達するまでの時間)が経過した後は、対象セルに直列接続される抵抗Rの数が増加するように(第1目標電圧値に達した後は2つの抵抗Rが直列接続され、第2目標電圧値に達した後は3つの抵抗Rが直列接続されるように)、断接部5を制御する。
【0041】
バランス調整時間の短縮には、通電する電流の量が多い方が有利であり、高精度なバランス調整には、通電する電流の量が少ない方が有利である。本実施形態では、対象セルに直列接接続される抵抗Rの数を増減可能であり、セルバランス制御において対象セルに直列接続される抵抗Rの数が段階的に増加するので、放電時に流通する電流の量(電流値)が段階的に減少し、対象セルの放電速度(電圧降下の速度)が段階的に遅くなる。このように、対象セルの放電速度を、高速から中速を経て低速に推移するように段階的に遅くするので、高精度なバランス調整を確保しつつ、バランス調整時間の短縮を図ることができる。なお、本実施形態では、2つの中間目標電圧値を設定し、放電速度を3段階で減速させているが、1つの中間目標電圧値を設定し、放電速度を2段階で減速させてもよく、3つ以上の中間目標電圧を設定し、放電速度を4段階以上で減速させてもよい。
【0042】
次に、本実施形態のセルバランス回路5のスイッチSA,SB,SCと抵抗Rとを利用し、任意の周波数で矩形波を作成し、任意の電池セルCを対象セルとし、対象セルの状態(例えば、劣化状態)を、電気化学インピーダンス法の一種である矩形波インピーダンス法によって推定する場合について説明する。
【0043】
電気化学インピーダンス法によって対象セルの状態を推定する状態推定装置20は、セルバランス制御装置10と同様に、CPU、ROM、RAM及び入出力回路等を備えて構成される。
図1に示すように、状態推定装置20は、スイッチ制御部(断接制御部)21と、電流検出部22と、電圧検出部23と、インピーダンス算出部24と、状態推定部25とを有する。
【0044】
スイッチ制御部21は、対象セルに1つの抵抗Rが接続されるように断接部5を制御する(高速放電に設定する)。対象セルに接続される抵抗Rが1つであるので、複数の抵抗Rを直列接続する場合(中速放電や低速放電)に比べて、流通する電流の量(電流値)が増大する。
【0045】
電流検出部22は、電流センサ(図示省略)からのセンサ信号を取得して、対象セルに通流する電流(電流の波形)を検出する。電圧検出部23は、電圧センサ(図示省略)からのセンサ信号を取得して、対象セルの電圧(電圧の波形)を検出する。なお、セルバランス制御装置10の電圧検出部11を、状態推定装置20の電圧検出部23として用いてもよい。
【0046】
インピーダンス算出部24は、同一のタイミングで検出された電流及び電圧それぞれの波形に含まれる周波数成分に基づいて、対象セルのインピーダンススペクトルを算出する。例えば、電流検出部22が検出した電流の波形(時間的に連続する複数の取得電流値)に対して、フーリエ変換又はウェーブレット変換を施すことによって、当該電流の波形に含まれる周波数成分を検出する。また、電圧検出部23が検出した電圧の波形(時間的に連続する複数の取得電圧値)に対して、フーリエ変換又はウェーブレット変換を施すことによって、当該電圧の波形に含まれる周波数成分を検出する。
【0047】
次に、インピーダンス算出部24は、周波数毎に、対象セルを通流する電流の波形に含まれる周波数成分と対象セルの電圧の波形に含まれる周波数成分との比を算出し、これによって、対象セルの内部インピーダンスのインピーダンススペクトルを算出する。なお、インピーダンス算出部24が実行する対象セルのインピーダンススペクトルの算出には、公知の電気化学インピーダンス法と同様の手法を用いることができる。
【0048】
状態推定部25は、インピーダンス算出部24が算出した対象セルの内部インピーダンスのインピーダンススペクトルに基づいて、対象セルの状態を推定する。例えば、対象セルの内部インピーダンスのインピーダンススペクトルに基づいて、対象セルの各部(例えば、電極及び電解液)の劣化状態を推定する。
【0049】
本実施形態によれば、対象セルを多量の電流が流通するので、電流検出部22による電流の検出値が受けるノイズの影響が低減する。このため、状態推定部25によって適正な推定結果を得ることができる。
【0050】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、複数の電池セルが直列接続されたバッテリに適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:バッテリ
2:セルバランス回路
3:セル群
4:抵抗群
5:断接部
10:セルバランス制御装置
13:スイッチ制御部(断接制御部)
20:状態推定装置
21:スイッチ制御部(断接制御部)
C:電気セル
SA:セル側スイッチ
SB:抵抗側スイッチ
SC:中間スイッチ
R:抵抗