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特許7535264モジュール式調整システムを有するダイ、及び、モジュール式調整システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】モジュール式調整システムを有するダイ、及び、モジュール式調整システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/31 20190101AFI20240808BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240808BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
B29C48/31
B29C48/92
B29L7:00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020517801
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018053005
(87)【国際公開番号】W WO2019067652
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】16/122,591
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/565,091
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391019120
【氏名又は名称】ノードソン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ピッシュ デイル
(72)【発明者】
【氏名】ダドリー マイク
(72)【発明者】
【氏名】レーツ ケリー
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】関根 洋之
【審判官】井口 猶二
(56)【参考文献】
【文献】特表平8-501261(JP,A)
【文献】特開平2-215515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイに結合するように適合された調整システムであって、前記調整システムは、
前記ダイに取り外し可能に取り付けられた第1の調整モジュールであって、
第1の本体と、
第1の複数のスタッドであって、前記第1の複数のスタッドの各々が前記第1の本体内に摺動可能に配置された、第1の複数のスタッドと、
前記第1の複数のスタッドに結合された第1のアクチュエータであって、前記第1の複数のスタッドの各々を移動させるように構成されている、第1のアクチュエータと、を備える第1の調整モジュール;及び、
前記ダイに取り外し可能に取り付けられた第2の調整モジュールであって、
第2の本体と、
第2の複数のスタッドであって、前記第2の複数のスタッドの各々が前記第2の本体内に摺動可能に配置された、第2の複数のスタッドと、
前記第2の複数のスタッドに結合された第2のアクチュエータであって、前記第2の複数のスタッドの各々を移動させるように構成されている、第2のアクチュエータと、を備える第2の調整モジュール、を備え、
前記第1の複数のスタッドを構成するスタッドの数が、前記第2の複数のスタッドを構成するスタッドの数とは異なる、調整システム。
【請求項2】
前記第1の調整モジュールの前記第1の本体は、第1の複数のスタッドチャネルを備え、前記第1の複数のスタッドチャネルの各々は、前記第1の複数のスタッドのうちの対応する1つを摺動可能に受け入れるように構成され、前記第2の調整モジュールの前記第2の本体は、第2の複数のスタッドチャネルを備え、前記第2の複数のスタッドチャネルの各々は、前記第2の複数のスタッドのうちの対応する1つを摺動可能に受け入れるように構成されている、請求項1に記載の調整システム。
【請求項3】
前記第1の複数のスタッドは3つのスタッドを含み、前記第2の複数のスタッドは4つのスタッドを含む、請求項1に記載の調整システム。
【請求項4】
接続ボックスと、
前記接続ボックス及び前記第1のアクチュエータに接続して、前記接続ボックスと前記第1のアクチュエータとの間に電気的接続を形成するように構成された第1の配線アセンブリと、
前記接続ボックス及び前記第2のアクチュエータに接続して、前記接続ボックスと前記第2のアクチュエータとの間に電気的接続を形成するように構成された第2の配線アセンブリと、を更に備える請求項1に記載の調整システム。
【請求項5】
前記接続ボックスに結合され、前記第1の調整モジュール及び前記第2の調整モジュールを覆って延びるように構成されたガードを更に備える、請求項4に記載の調整システム。
【請求項6】
前記第1の調整モジュールは、前記ダイに取り外し可能に取り付けられるように構成された第1の取り付けバーを更に備え、前記第1の取り付けバーは、前記第1の複数のスタッドを内部に受け入れるように構成された第1の複数の穴を含み、前記第2の調整モジュールは、前記ダイに取り外し可能に取り付けられるように構成された第2の取り付けバーを更に備え、前記第2の取り付けバーは、前記第2の複数のスタッドを内部に受け入れるように構成された第2の複数の穴を含む、請求項1に記載の調整システム。
【請求項7】
前記第1の調整モジュールは、第1の複数のリップコネクタを更に備え、前記第1の複数のリップコネクタの各々は、前記第1の複数のスタッドのうちの対応する1つの端部に結合するように構成されており、前記第2の調整モジュールは、第2の複数のリップコネクタを更に備え、前記第2の複数のリップコネクタの各々は、前記第2の複数のスタッドのうちの対応する1つの端部に結合するように更に構成されており、前記第1の複数のリップコネクタ及び前記第2の複数のリップコネクタは前記ダイのリップに結合するように構成されている、請求項1に記載の調整システム。
【請求項8】
前記第1のアクチュエータは第1の加熱ユニットを備え、前記第2のアクチュエータは第2の加熱ユニットを備える、請求項1に記載の調整システム。
【請求項9】
前記第1のアクチュエータ及び前記第2のアクチュエータに動作可能に結合されたコントローラを更に備え、前記コントローラは、前記第1のアクチュエータ又は前記第2のアクチュエータを制御して、それぞれ、前記第1の複数のスタッド又は前記第2の複数のスタッドを移動させるための制御コマンドを送信するように構成され、前記コントローラは、
前記ダイを出る物質の厚さプロファイルを感知するように構成されたセンサと、
感知された前記厚さプロファイル及び所望の厚さプロファイルに基づいて、前記制御コマンドを生成するように構成されたプロセッサと、を備える、請求項1に記載の調整システム。
【請求項10】
前記プロセッサは、
感知された前記厚さプロファイルを前記所望の厚さプロファイルと比較し、
感知された前記厚さプロファイルと前記所望の厚さプロファイルとの前記比較に応答して、感知された前記厚さプロファイルが前記所望の厚さプロファイルの許容範囲外にあることを判定し、
感知された前記厚さプロファイルが前記所望の厚さプロファイルの許容範囲内にないという前記判定に応答して、前記第1のアクチュエータ又は前記第2のアクチュエータに前記制御コマンドを生成して、前記第1の複数のスタッド又は前記第2の複数のスタッドをそれぞれ移動させるように構成されている、請求項9に記載の調整システム。
【請求項11】
物質を放出するためのダイであって、前記ダイは、
前記ダイに結合された調整システムを備え、前記調整システムは、
前記ダイに取り外し可能に取り付けられた第1の調整モジュールであって、
第1の本体と、
第1の複数のスタッドであって、前記第1の複数のスタッドの各々が前記第1の本体内に摺動可能に配置された、第1の複数のスタッドと、
前記第1の複数のスタッドに結合された第1のアクチュエータであって、前記第1の複数のスタッドの各々を移動させるように構成されている、第1のアクチュエータと、を備える第1の調整モジュール;及び、
前記ダイに取り外し可能に取り付けられた第2の調整モジュールであって、
第2の本体と、
第2の複数のスタッドであって、前記第2の複数のスタッドの各々が前記第2の本体内に摺動可能に配置された、第2の複数のスタッドと、
前記第2の複数のスタッドに結合された第2のアクチュエータであって、前記第2の複数のスタッドの各々を移動させるように構成されている、第2のアクチュエータと、を備える第2の調整モジュール、を備え、
前記第1の複数のスタッドを構成するスタッドの数が、前記第2の複数のスタッドを構成するスタッドの数とは異なる、ダイ。
【請求項12】
ダイを修理する方法であって、前記ダイは、前記ダイに取り付けられた第1の調整モジュール及び第2の調整モジュールを含み、前記第1の調整モジュールは第1の複数のスタッドを有し、前記第2の調整モジュールは第2の複数のスタッドを有し、前記方法は、
前記ダイから前記第1の調整モジュールを取り外すことと、
前記ダイに、第3の複数のスタッドを有する置換調整モジュールを取り付けることと、を含み、
前記第1の複数のスタッドを構成するスタッドの数が、前記第3の複数のスタッドを構成するスタッドの数と同じであり、前記第1の複数のスタッドを構成するスタッドの前記数が、前記第2の複数のスタッドを構成するスタッドの数とは異なる、方法。
【請求項13】
前記第1の複数のスタッドは3つのスタッドを含み、前記第2の複数のスタッドは4つのスタッドを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の調整モジュールは、第1の本体と、前記第1の複数のスタッドに結合された第1のアクチュエータとを含み、前記第1のアクチュエータは、前記第1の複数のスタッドの各々を移動させるように構成され、前記第1の複数のスタッドの各々は、前記第1の本体内に摺動可能に配置され、前記置換調整モジュールは、第3の本体と、前記第3の複数のスタッドに結合された第3のアクチュエータとを含み、前記第3のアクチュエータは、前記第3の複数のスタッドの各々を移動させるように構成され、前記第3の複数のスタッドの各々は、前記第3の本体内に摺動可能に配置される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のアクチュエータ及び第1の接続ボックスから第1の配線アセンブリを取り外すことと、
第3の配線アセンブリを前記第3のアクチュエータ及び第3の接続ボックスに結合させて、前記第3の接続ボックスと前記第3のアクチュエータとの間に電気的接続を形成することと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の接続ボックスにガードを結合させることを更に含み、前記ガードは、前記第2の調整モジュール及び前記置換調整モジュールを覆って延びる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の調整モジュールは第1の取り付けバーを更に含み、前記第1の調整モジュールを前記ダイに取り付けることは、前記第1の取り付けバーを前記ダイに取り外し可能に取り付けることを含み、前記置換調整モジュールは第3の取り付けバーを更に含み、前記置換調整モジュールを前記ダイに取り付けることは、前記第3の取り付けバーを前記ダイに取り外し可能に取り付けることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の調整モジュールは第1の複数のリップコネクタを更に備え、前記第1の複数のリップコネクタの各々は、前記第1の複数のスタッドのうちの対応する1つの端部に結合され、前記置換調整モジュールは第3の複数のリップコネクタを更に備え、前記第3の複数のリップコネクタの各々は、前記第3の複数のスタッドのうちの対応する1つの端部に結合され、前記方法は、
前記第1の複数のリップコネクタを前記ダイのリップから取り外すことと、
前記第3の複数のリップコネクタを前記ダイの前記リップに結合させることと、を更に含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイに関し、より具体的には、調整モジュールを使用してダイ全体にわたる流体配分を調整するモジュール式調整システムを有するダイに関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年9月28日に出願された米国特許仮出願第62/565,091号、及び、2018年9月5日に出願された米国特許出願第16/122,591号の利益を主張し、その開示は、本明細書に参考として組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ダイは、溶融ポリマー、流体、スラリー、又は他の物質を放出するために使用される。ダイは、ダイ出口を通して物質をリザーバから押し出すことによって、少なくとも1層の物質を供給する。次いで、押出物はロールスタック、基材、又は他の受け入れ要素に送り込まれる。
【0004】
ダイから放出される物質の配分を変化させるために、ダイ出口の形状は調整器の使用によって調整できる。通常のシステムでは、調整器は単一の本体を含み、本体には複数の調整器スタッドが取り付けられる。調整器はダイに取り付けられ、調整器スタッドの各々はダイ出口に沿って配置される。ダイ出口のサイズを調整するために、調整器スタッドが動かされる。調整器が整備又は修理を必要とする場合、調整器はダイから取り外され、整備され、修理され、ダイ上に戻される。取り外し及び置換プロセスは、調整器を取り扱うためのオーバーヘッドクレーン又は巻き上げ機を必要とする場合があり、多くの場合、著しいダウンタイムを必要とする。
【0005】
したがって、装置及びシステムの不必要なダウンタイムを最小限に抑えるために、ダイから放出される物質の配分を調整するための改良された調整器が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では物質を分配するためのダイが開示され、ダイは、モジュール式調整システムと、既存の調整システムに後付けするためのモジュール式調整システムとを含む。モジュール式調整システムは複数の調整モジュールを含み、調整モジュールの各々は調整スタッドを有する。単一の本体に多数の調整器スタッドが取り付けられた完全長調整システムと比較すると、調整モジュールは軽量であり、取り扱いが容易であり、取り外し及び置換のために必要なダウンタイムはより少なく、その結果、修理及び整備が確実な調整システムになる。
【0007】
調整システムは、第1の調整モジュール及び第2の調整モジュールを含む。第1の調整モジュールは、第1の本体、第1の複数のスタッド、及び第1のアクチュエータを含む。第1の複数のスタッドの各々は、第1の本体内に摺動可能に配置される。第1のアクチュエータは、第1の複数のスタッドに結合され、第1の複数のスタッドの各々を移動させるように構成されている。第2の調整モジュールは、第2の本体、第2の複数のスタッド、及び第2のアクチュエータを含む。第2の複数のスタッドの各々は、第2の本体内に摺動可能に配置される。第2のアクチュエータは、第2の複数のスタッドに結合され、第2の複数のスタッドの各々を移動させるように構成されている。第1の複数のスタッドを構成するスタッドの数は、第2の複数のスタッドを構成するスタッドの数とは異なる。
【0008】
本発明の別の態様は、物質を放出するためのダイを提供する。ダイは、ダイに結合された調整システムを含む。調整システムは第1の調整モジュールを含み、第1の調整モジュールは、第1の本体と、第1の複数のスタッドであって、当該第1の複数のスタッドの各々が当該第1の本体内に摺動可能に配置された、第1の複数のスタッドと、当該第1の複数のスタッドに結合された第1のアクチュエータであって、当該第1の複数のスタッドの各々を移動させるように構成されている、第1のアクチュエータと、を含む。調整システムはまた、第2の調整モジュールを含み、第2の調整モジュールは、第2の本体と、第2の複数のスタッドであって、当該第2の複数のスタッドの各々が当該第2の本体内に摺動可能に配置された、第2の複数のスタッドと、当該第2の複数のスタッドに結合された第2のアクチュエータであって、当該第2の複数のスタッドの各々を移動させるように構成されている、第2のアクチュエータと、を含む。ダイはまた、当該第2の複数のスタッドを構成するスタッドの数とは異なる、当該第1の複数のスタッドを構成するスタッドの数を含む。
【0009】
本発明の別の態様は、ダイを修理する方法を提供する。方法は、第1の調整モジュールをダイから取り外すこと、及び置換調整モジュールをダイに取り付けることを含む。置換調整モジュールは第3の複数のスタッドを有し、第1の複数のスタッドを構成するスタッドの数は、第3の複数のスタッドを構成するスタッドの数と同じであり、第1の複数のスタッドを構成するスタッドの数は、第2の複数のスタッドを構成するスタッドの数とは異なる。
【0010】
この「発明の概要」は、概念の選択を導入するために提供され、「発明を実施するための形態」において以下にて更に説明される。この「発明の概要」は、特許請求される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることも意図していない。更には、特許請求される主題は、本発明の任意の部分に述べられたいずれか又は全ての欠点を解決するという限定に拘束されるものではない。
【0011】
より詳細な理解を、添付の図面と共に例として与えられた以下の説明から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ダイの正面斜視図を示す。
図2A】調整システムの斜視図を示す。
図2B】カバーが取り外された、図2Aに示す調整システムの斜視図を示す。
図3A】第1の調整モジュールの斜視図を示す。
図3B】第2の調整モジュールの斜視図を示す。
図4A図3Aに示す第1の調整モジュールの底面斜視図を示す。
図4B図3Bに示す第2の調整モジュールの底面斜視図を示す。
図5】コントローラの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ダイから放出されるフィルム又はシートの厚さプロファイルを制御するための調整システムについて説明する。以前のシステムとは異なり、本明細書に記載される調整システムは、より高い品質及びより正確な製品を製造する自動リップ調整を提供し、これは、通常の手動システムと比較して原材料を実質的に節約することができる。調整システムはまた、モジュールセットを含み、その各々が複数の調整装置を収容し、それにより、ダイの特定の領域内の磨耗部品への容易なアクセスが可能になる。
【0014】
図1は、調整システム200が結合されたダイ100の正面斜視図を提供する。ダイ100は、押出ダイ、スロットダイ、成形ダイ、又は更に他の種類のダイを含み得ることが理解されよう。ダイ100は、後端(例えば、入口)102と、軸方向又は流れ方向Aに後端102から間隔を置いた前端(例えば、分配用)104と、第1の端部106(例えば、右側)と、長手方向Lに第1の端部106から間隔を置いた第2の端部108(例えば、左側)と、を含む。分配端104は、物質を、受け入れ要素に放出するように構成されている。物質としては、流体、溶融ポリマーブレンドなどを挙げることができる。ダイ100は、ベース、フロアマウント、テーブルトップ、又は他の支持構造(図示せず)によって支持されて、ダイ100をロールスタック、基材、又は他の受け入れ要素と整列させることができる。一態様では、受け入れ要素は、受け入れ要素への物質の供給中に、分配端104に隣接して配置されてもよい。
【0015】
特定の用語は、説明において便宜のためにのみ使用されており、制限を意図するものではない。「軸方向」、「長手方向」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「後部」、「前部」、「上部」、及び「底部」という語は、参照する図面内での方向を指定する。「実質的に」という用語は、かなりの程度又は大部分を意味することを意図しているが、必ずしも完全に指定することを意図していない。専門用語は、上で列記した用語、それらの派生語、及び類似する意味の用語を含む。
【0016】
ダイ100は、上側本体部材110及び下側本体部材112を含む。ダイ100は、例えば、左端プレート及び右端プレート、内部スタッド、チューニングアセンブリ、制限部材若しくはバー、デックルシステム、又は更に他の構成要素を含む、他の構成要素を含んでもよいことが理解されよう。上側本体部材110及び下側本体部材112は、好ましくは、流動面が硬質クロムめっきされた合金工具鋼から製造される。代替として、上側本体部材110及び下側本体部材112は、特殊合金又は高い寸法安定性を有する他の材料から製造されてもよい。ダイ100は、2層以上の層で流体を供給するように構成された、1つの中央本体部材(例えば、2層ダイ)、又は複数の中央本体部材(例えば、3層ダイ)などの、より多くの本体部材を含み得ることが理解されよう。
【0017】
上側本体部材110は、ダイ100の第1の端部106から第2の端部108まで長手方向Lに延びている。上側本体部材110は、上側表面114を含む。上側本体部材110はまた、例えば、チューニングチャネル、制限チャネル、スタッドチャネル、上側入口チャネル、上側ポートチャネル、配分チャンバ、又は内部に形成された他のチャネル若しくはチャンバを含んでもよい。
【0018】
下側本体部材112は、ダイ100の第1の端部106から第2の端部108まで長手方向Lに延びている。下側本体部材112は、下側表面116を含む。下側本体部材112はまた、その内部に形成された、上側本体部材110と同様のチャネル又はチャンバを含んでもよい。
【0019】
下側本体部材112は、上側本体部材110に隣接して垂直方向Vに配置されている。垂直方向Vは、長手方向Lに対して実質的に直角をなしている。上側本体部材110の上側表面114は、下側本体部材112の下側表面116と向かい合い、入口チャネル118及びランドチャネル120を形成している。上側表面114及び下側表面116はまた、それらの間に他のチャネルを形成してもよく、他のチャネルは、例えば、ポートチャネル、追加のプリランドチャネル、又は更に他のチャネルを含む。入口チャネル118はまた、「配分チャンバ」又は「配分チャネル」と呼ばれてもよい。ポートチャネル(図では見えない)が、ダイ100の後端102から入口チャネル118まで延びていてもよい。ランドチャネル120は、入口チャネル118からダイ出口122まで延びている。ポートチャネル、入口チャネル118、及びランドチャネル120は、ダイ100の後端102が、分配端104においてダイ出口122と流体連通するように、互いに流体連通している。
【0020】
図2A及び図2Bは、本発明の態様による調整システム200の斜視図を示す。調整システム200は、接続ボックス202(例えば、電気ボックス)、配線アセンブリ204、ガード206、及び調整モジュール208を含む。調整システム200は、ダイ100に単一のユニットとして結合されていてもよく、代替として、調整システム200の構成要素がダイ100に個別に結合されていてもよい。調整システム200は、既存のダイに後付けして結合されるように構成されてもよい。
【0021】
接続ボックス202は、調整モジュール208に電力を供給するように適合された電線及びケーブルを収容している。接続ボックス202は、電気的接続を保護し、安全バリアを提供するためのエンクロージャの形態である。接続ボックス202は、電力プラグ210を受け入れるためのいくつかの出口(図では見えない)を含む。
【0022】
配線アセンブリ204の各々は、プラグ210及びケーブル212を含む。プラグ210は、接続ボックス202内の出口に挿入されるように構成され、ケーブル212は調整モジュール208に電気的に結合される。プラグ210を接続ボックス202に接続することにより、接続ボックス202と調整モジュール208との間に電気的接続が提供される。一態様では、各調整モジュールは、2つの配線アセンブリ204を含むように構成される。
【0023】
ガード206は、例えば、ボルト、ねじ、又は他の結合手段を介して、接続ボックス202に結合されるように適合されている。ガード206は、調整モジュール208の上面を覆って延び、ダイ100の動作中に調整モジュール208を保護するように構成されている。ガード206はまた、調整モジュール208に結合されて、更に、ガード206を調整システム200に固定されるように適合されている。ガード206は、デブリが調整モジュール208に接触することを防止することができ、又は、調整モジュール208との、他の意図しない接触を防止することができる。
【0024】
調整モジュール208は、調整システム200の長手方向L’に沿って配置されるように構成されている。調整モジュール208の各々は、長手方向L’に沿って、それ以外の調整モジュール208の各々に隣接して配置されてもよい。調整モジュール208は、調整モジュール208の底面に沿って長手方向L’に延びる支持プレート214に結合されていてもよい。
【0025】
図3A及び図3Bは、調整モジュール208の2つの態様の斜視図である。図3Aは、第1の調整モジュール208aを示し、図3Bは第2の調整モジュール208bを示す。各調整モジュール208a、bは、対応する本体220a、b、アクチュエータ222a、b、複数のスタッド224a、b、及び取り付けバー226a、bを含む。本明細書で更に説明するように、「a」への言及は、第1の調整モジュール208aの構成要素を指し、「b」への言及は、第2の調整モジュール208bの構成要素を参照する。
【0026】
各本体220a、bは、その内部に形成されたスタッドチャネル228a、bを含む。各スタッドチャネル228a、bは、各調整モジュール208a、bを通って上端から下端まで延び、複数のスタッド224a、bを摺動可能に受け入れるように構成されている。一態様では、各本体220a、bは、その内部に形成された複数のスタッドチャネル228a、bを含み、複数のスタッドチャネル228a、bの各々が、対応する複数のスタッド224a、bを摺動可能に受け入れるように構成されていてもよい。例えば、第1の調整モジュール208aは、4つのスタッドチャネル228aを含んでもよく、4つのスタッドチャネル228aの各々が、対応するスタッド224aを受け入れるように構成されている。
【0027】
各アクチュエータ222a、bは、少なくとも部分的に対応する本体220a、bの各々の中に配置されている。各アクチュエータ222a、bは、対応する本体220a、bの各々を通って延びる複数のスタッド224a、bに結合され、複数のスタッド224a、bの各々を移動させるように構成されている。例えば、アクチュエータ222aは、複数のスタッド224aを作動させて、第1の調整モジュール208aの上端から下端まで、及び各調整モジュール208aの下端から上端まで移動させることができる。一態様では、各調整モジュール208a、bは、対応する本体220a、bを通って延びる複数のスタッド224a、bの各々に対してアクチュエータ222a、bを含んでもよい。例えば、第1の調整モジュール208aが4つのスタッド224aを含む場合、第1の調整モジュール208aは、4つのアクチュエータ222aを、各スタッド224aに対して1つずつ含んでもよい。
【0028】
アクチュエータ222a、bは、電気式アクチュエータ、機械式アクチュエータ、熱アクチュエータ、又は更に他の種類のアクチュエータを備えてもよい。好ましい態様では、各アクチュエータ222a、bは、熱アクチュエータ(例えば、加熱ユニット)を備える。熱アクチュエータは、温度変化時に直線運動を生み出す非電動モータ及びピストンを含んでもよい。温度が上昇すると、熱アクチュエータ内部の感熱材料が膨張してピストンを所望の長さに押す。温度が低下すると、熱アクチュエータ内部の感熱材料が収縮又は縮小し、ピストンが戻るための空間が生じる。
【0029】
図4A及び図4Bは、第1及び第2の調整モジュール208a及び208bの底面斜視図を示す。取り付けバー226a、bの各々は、対応する調整モジュール208a、bの本体220a、bの下端に結合されている。取り付けバー226a、bの各々は、例えば、取り付けバー226a、bの各々をダイ100に固定するように構成された一対のボルト、ねじ、又は他の構成要素によって、ダイ100に取り外し可能に取り付けられるように構成されている。取り付けバー226a、bの各々は、その内部を通って延びる複数の穴230a、bを含む。複数の穴230a、bの各々は、その内部に、対応する複数のスタッド224a、bを受け入れるように構成されている。例えば、第1の調整モジュール208aが4つのスタッド224aを含む場合、取り付けバー226aは、4つのスタッド224aの各々を受け入れるように構成された4つの穴230aを含む。
【0030】
調整モジュール208a、bの各々は、複数のリップコネクタ232a、bを更に含む。リップコネクタ232a、bの各々は、複数のスタッド224a、bの下端に結合するように構成されている。例えば、第1の調整モジュール208aの複数のスタッド224aが4つのスタッドを含む場合、4つのスタッドの各々が、下端の方で結合されたリップコネクタ232aを含む。複数のリップコネクタ232a、bは、複数のスタッド224a、bをダイ100の分配端104に結合させるように構成されている。
【0031】
一態様では、第1の調整モジュール208aの第1の複数のスタッド224aは4つのスタッド224aを含み、第2の調整モジュール208bの第2の複数のスタッド224bは3つのスタッドを含む。調整モジュール208a、bの各々は、より少ない又はより多くのスタッドを含んでよいことが理解されよう。好ましい態様では、調整システム200は、少なくとも1つの第1の調整モジュール208a、及び少なくとも1つの第2の調整モジュール208bを含む。例えば、調整システム200は、長手方向L’に沿って整列された5つの第1の調整モジュール208a、及び長手方向L’に沿って整列された1つの第2の調整モジュール208bを含んでもよい。この例では、調整システム200に組み込まれた23個のスタッド(5つの第1のモジュール掛ける4スタッドと、1つの第2のモジュール掛ける3スタッドの和)が存在することになる。別の例では、調整システム200は、3つの第1の調整モジュール208a、及び3つの第2の調整モジュール208bを含んでもよい。この結果、調整システム200に組み込まれた21個のスタッド(3つの第1のモジュール掛ける4スタッドと、3つの第2のモジュール掛ける3スタッドの和)が存在することになる。
【0032】
調整システム200を使用して、ダイ出口122を通して分配される物質の配分を制御する方法は、調整システム200をダイ100の上側本体部材110に取り付けることによって開始される。調整システム200は、単一のユニットとして実装されてもよく、又は各個別の調整モジュール208a、bが別々に取り付けられてもよい。調整システム200が取り付けられた場合、調整システム200の長手方向L’は、ダイ100の長手方向Lに実質的に平行である。リップコネクタ232a、bの各々は、ダイ100の分配端104において上側本体部材110に結合されている。
【0033】
調整システム200がダイ100に取り付けられた後、物質は、ダイ100の後端102に、そしてポートチャネル、入口チャネル118、及びランドチャネル120を通して提供されてもよい。ポートチャネルの中に精密な体積の物質を送達するために、より多くの押出機(図示せず)のうちの1つを使用して、ポートチャネルの入口に供給してもよい。流体は、入口チャネルの中に入るにつれて長手方向に配分され、入口チャネル118を充填する。流体流が入口チャネル118を出ると、流体の高さ(例えば、垂直方向Vの流体高さ)が低減され、流体はランドチャネル120の中に流れ込む。ランドチャネル120の高さは、調整システム200の調整モジュール208a、bによって調整されて、長手方向Lに沿ってランドチャネル120を通りダイ出口122から出るまでの厚さプロファイルが制御される。各アクチュエータ222a、bが、複数のスタッド224a、bの各々を制御して、ダイ出口122を通って出る物質の高さを増加及び減少させる。各アクチュエータ222a、bは、以下に更に説明するように、手動又は自動で制御されてもよい。
【0034】
調整モジュール208a、b内の構成要素が誤動作した場合、個々の調整モジュール208a、bが取り外され、新しいモジュール(例えば、置換調整モジュール)と置換されてもよい。置換モジュールは、取り外され置換される調整モジュール208a、b上のスタッドの数と同じ数のスタッドを含む。誤動作する調整モジュール208a、bにアクセスするために、ガード206が調整システム200から取り外される。調整モジュール208a、bは接続ボックス202から引き抜かれ、調整モジュール208a、bはダイ100から取り外される(例えば、固定ボルトを取り外す)。次いで置換モジュールがダイ100に取り付けられ、接続ボックス202に差し込まれて、接続ボックス202と置換モジュールとの間に電気的接続が形成される。リップコネクタ232a、bは、ダイ100の分配端104に結合される。次いで、調整モジュールを保護するために、ガード206が接続ボックス202に結合される。置換モジュールの置換後、ダイ100の動作が継続する。一態様では、誤動作する調整モジュール208a、bを置換する代わりに、調整モジュール208a、bが取り外され、修理され、ダイ100上の元の場所に戻されてもよい。
【0035】
図4は、ダイ100の制御及び連係を容易にするために使用され得るコントローラ300、例えば電子制御ユニットを示す。この実施形態では、コントローラ300は、開示されたダイ100の中に位置する各センサ308及びアクチュエータ310を備える。加えて、コントローラ300は、プロセッサ302、メモリ304、及びディスプレイ306を含む。コントローラ300は単一のユニットとして表されているが、他の態様では、コントローラ300は、別の構成要素に組み込まれるか、又はダイ100上の若しくはダイ100の外部の異なる場所に位置する、別個であるが相互運用される複数のユニットとして分散されてもよい。コントローラ300は、以下により詳細に説明するように、ダイ出口122を通ってダイ100から出る物質の厚さプロファイルを自動的に制御するように構成されてもよい。
【0036】
流量配分センサ308は、ダイ出口122に隣接して又はダイ出口122の近くでダイ100に結合されてもよい。流量配分センサ308は、ダイ出口122を通して放出される物質の厚さプロファイル(例えば、流量配分)を感知し得る。厚さプロファイルは、ダイ出口122に沿って長手方向Lに間隔を置いた場所における物質の高さを含む。一態様では、流量配分センサ308は複数のセンサを備えてもよく、これらの各々がダイ出口122に沿って整列されてもよい。
【0037】
プロセッサ302は、ダイ100に動作可能に結合されたセンサ308及びアクチュエータ222a、bの各々に結合されてもよい。プロセッサ302は、上述のように、流量配分センサ308からの入力に応答する信号を出力し、アクチュエータ222a、bを介して調整システム200の調整モジュール208を制御するように構成されてもよい。ディスプレイ306はまた、プロセッサ302に結合されて、例えばダイ出口122を通ってダイ100から出る物質の配分に関する様々なデータをオペレータに表示してもよい。データに応答して、ダイ100を出る物質の流量配分を修正して、所望の厚さプロファイルを維持することを含む処理が実行されてもよい。
【0038】
プロセッサ302は、コンピュータ可読メモリ304に格納されてもよい、センサ308によって感知された値を利用して、感知された厚さプロファイルを、メモリ304に格納された所望の厚さプロファイルと比較する。所望の厚さプロファイルが、入力装置(図示せず)によってコントローラ300に入力されてもよい。感知された厚さプロファイルが、所望の厚さプロファイルから、メモリ304に格納された最大閾値の分だけ異なる場合、又は感知された厚さプロファイルが、所望の厚さプロファイルの許容可能な範囲外である場合、プロセッサ302は、それに応じて、アクチュエータ222a、bに信号を送信して流量配分を調整してもよい。感知された厚さプロファイルが最大閾値に達していない場合、プロセッサ302は、アクチュエータ222a、bに信号を送信して、又は送信せずに、流量配分が調整されてもよい。いずれの場合でも、プロセッサ302はまた、厚さプロファイルが最大閾値を超えたか、又はまだ超えていないかを示す信号をディスプレイ306に送信してもよい。最大閾値は複数の閾値を含み、その各々が、長手方向Lに沿ってダイ出口122を通って放出される物質の厚さを示し得ることが理解されよう。
【0039】
コンピュータ可読メモリ304は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び/又は読み出し専用メモリ(ROM)を含んでよい。メモリ304は、厚さプロファイルを調整するためのアルゴリズムを含むコンピュータ実行可能コードを格納してもよい。メモリ304はまた、センサ308によって感知された値を含む様々なデジタルファイルを格納してもよい。メモリ304に格納された情報は、放出される物質の厚さプロファイルをプロセッサが決定できるように、プロセッサ302に提供されてもよい。
【0040】
上述のこれら特定の実施形態は、例示を目的としたものであり、本明細書において別途記載及び請求されるような本発明の範囲を限定することを意図していない。記載された実施形態からの修正及び変形が存在する。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5