(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】子宮内膜症の診断方法、病態モニタリング方法及びキット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240808BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 M
G01N33/53 D
(21)【出願番号】P 2021516229
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017595
(87)【国際公開番号】W WO2020218465
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019086223
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎太
(72)【発明者】
【氏名】長野 光司
(72)【発明者】
【氏名】大森 寛
(72)【発明者】
【氏名】垣内 綾子
(72)【発明者】
【氏名】今野 良
(72)【発明者】
【氏名】山海 直
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-168646(JP,A)
【文献】特表2003-531580(JP,A)
【文献】特開2002-325600(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0251718(US,A1)
【文献】特表2013-518606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0281110(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0274787(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0207743(US,A1)
【文献】国際公開第2015/174544(WO,A1)
【文献】EK, Malin et al.,AXIN1 in Plasma or Serum Is a Potential New Biomarker for Endometriosis,International Journal of Molecular Sciences,2019年01月07日,20(1), 189,1-12
【文献】FASSBENDER, Amelie et al.,Update on Biomarkers for the Detection of Endometriosis,BioMed Research International,2015年,Volume 2015, Article ID 130854,1-14
【文献】IRUNGU, Stella et al.,Discovery of non-invasive biomarkers for the diagnosis of endometriosis,Clinical Proteomics,2019年04月06日,16:14,1-16
【文献】GRANDE, Giuseppe et al.,Cervical mucus proteome in endometriosis,Clinical Proteomics,2017年02月02日,14:7,1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮内膜症
の診断
を補助する方法であって、
対象から得られた
血漿試料における、
マーカーNeutrophil-activating peptide 2
および/またはConnective-tissue-activating peptide IIIの存在量を測定する工程を含む方法。
【請求項2】
対象における子宮内膜症の罹患の有無
の決定
を補助する方法であって、
対象から得られた
血漿試料における
、マーカー
Neutrophil-activating peptide 2および/またはConnective-tissue-activating peptide IIIの存在量を測定する工程を含む方法。
【請求項3】
前記マーカーの存在量は、
血漿試料中の当該マーカーのポリペプチド濃度である、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
子宮内膜症を診断するためのキットであって
、
マーカー
Neutrophil-activating peptide 2および/またはConnective-tissue-activating peptide IIIの存在量を測定するための試薬を含むキット。
【請求項5】
対象における子宮内膜症の罹患の有無を決定するためのキットであって
、
マーカー
Neutrophil-activating peptide 2および/またはConnective-tissue-activating peptide IIIの存在量を測定するための試薬を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、子宮内膜症を診断する方法または対象における子宮内膜症の罹患の有無を決定する方法、子宮内膜症に罹患した対象の子宮内膜における線維化または癒着の程度を決定する方法、子宮内膜症に罹患した対象の痛みを予測する方法、子宮内膜症に罹患した対象の病態をモニタリングする方法等、およびこれらの方法を行うためのキット等に関する。
【背景技術】
【0002】
子宮内膜症は、妊娠可能な女性の6~10%に認められるエストロゲン依存性の炎症性疾患で、50%以上の患者において不妊症や骨盤痛が認められる(非特許文献1)。子宮内膜症の発症メカニズムに関して、様々な仮説が唱えられており(非特許文献2)、炎症性サイトカイン・ケモカイン、増殖因子、ホルモンなど様々な因子との関連性が報告されている(非特許文献3)。また、ホルモンを標的とした薬剤はすでに開発されており、ホルモン剤であるGnRHアンタゴニストやプロゲステロン製剤によって、疼痛の緩和、病態の改善が示されている(非特許文献4、5)。しかし、ホルモン剤治療は副作用が強く、長期的な使用が困難であることが治療上の問題となっている(非特許文献6)。また、炎症性サイトカイン・ケモカインを標的とした薬剤開発が進んでおり、子宮内膜症サルモデルにおいて、抗IL-8抗体が強い病態改善効果を示している(特許文献1)。
【0003】
子宮内膜症の診断において、内視鏡による観察や開腹手術など浸潤的な手法においてのみ確定診断が可能となる。また、患者において普段の月経に伴う症状(痛みなど)と初期的な子宮内膜症の症状の違いに気づくことが困難である。これらにより、患者候補群の診断までのハードルが高く、発症から確定診断まで平均して7~11年を要すると考えられている。確定診断の遅れは子宮内膜症の治療開始時期の遅れとなり、臨床上大きな問題となっている(非特許文献7、8)。このため血液マーカーなど患者の負担が少ない非浸潤的な診断法が強く求められているが、精度の高い診断法はまだ確立されていない(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Giudice LC. Endometriosis. N Engl J Med 2010; 362:2389-98.
【文献】Rogers PA et al. Research priorities for endometriosis. Reprod Sci 2017; 24:202-226.
【文献】Beste MT et al. Molecular network analysis of endometriosis reveals a role for c-Jun-regulated macrophage activation. Sci Transl Med. 2014; 6:222ra216.
【文献】Taylor HS et al. Treatment of Endometriosis-Associated Pain with Elagolix, an Oral GnRH Antagonist. N Engl J Med. 2017; 377:28-40.
【文献】Kohler G et al. A dose-ranging study to determine the efficacy and safety of 1, 2, and 4mg of dienogest daily for endometriosis. Int J Gynaecol Obstet. 2010; 108:21-5.
【文献】Treatment of Endometriosis-Associated Pain with Elagolix, an Oral GnRH Antagonist.
【文献】Greene R et al. Diagnostic experience among 4,334 women reporting surgically diagnosed endometriosis. Fertility and Sterility, 2009; 91:32-39.
【文献】Manderson L et al. Circuit breaking: Pathways of treatment seeking for women with endometriosis in Australia. Qualitative Health Research, 2008; 18:522-534.
【文献】Fassbender A et al. Update on biomarkers for the detection of endometriosis. Biomed Res Int 2015; 2015:130854.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、子宮内膜症を診断する方法または対象における子宮内膜症の罹患の有無を決定する方法、子宮内膜症に罹患した対象の子宮内膜における線維化または癒着の程度を決定する方法、子宮内膜症に罹患した対象の痛みを予測する方法、子宮内膜症に罹患した対象の病態をモニタリングする方法等、およびこれらの方法を行うためのキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の発明者らは、子宮内膜症の診断方法及び病態モニタリング方法について鋭意研究を行った結果、子宮内膜症患者において存在量が健常人と異なる複数のマーカーが存在すること、それらのマーカーの存在量を測定することにより、対象が子宮内膜症を罹患しているか否かを診断できること、子宮内膜の線維化、癒着の程度を決定できること、子宮内膜症に罹患した対象の痛みを予測できること、子宮内膜症に罹患した対象の病態をモニタリングできることを見出した。
【0008】
本開示は、このような知見に基づくものであり、具体的には以下の発明に関する。
[1]子宮内膜症を診断する方法であって、
対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定する工程を含む方法。
[2]対象における子宮内膜症の罹患の有無を決定する方法であって、
対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定する工程を含む方法。
[3]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象が子宮内膜症に罹患している、またはその可能性があると示される工程を更に含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]対象における子宮内膜の線維化の程度を決定する方法であって、
対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定する工程を含む方法。
[5]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜における線維化が発生している、またはその可能性があると示される工程を更に含む、[4]に記載の方法。
[6]対象における子宮内膜の癒着の程度を決定する方法であって、
対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定する工程を含む方法。
[7]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象が子宮内膜における癒着が発生している、またはその可能性があると示される工程を更に含む、[6]に記載の方法。
[8]子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症による痛みの程度を予測する方法であって、
対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定する工程を含む方法。
[9]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症による痛みが発生する、またはその可能性があると示される工程を更に含む、[8]に記載の方法。
[10]子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症の進行度を決定する方法であって、
対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定する工程を含む方法。
[11]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症が進行している、またはその可能性があると示される工程を更に含む、[10]に記載の方法。
[12]前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量より高い場合、存在量が高いと判定される、[3]、[5]、[7]、[9]、または[11]に記載の方法。
[13]前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量の2倍以上の場合、および/または表6Aで示されるマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量の1.6倍以上の場合、存在量が高いと判定される、[3]、[5]、[7]、[9]、または[11]に記載の方法。
[14]前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量より低い場合、存在量が低いと判定される、[3]、[5]、[7]、[9]、または[11]に記載の方法。
[15]前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量の0.5倍以下の場合、および/または表6Bで示されるマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量の0.625倍以下の場合、存在量が低いと判定される、[3]、[5]、[7]、[9]、または[11]に記載の方法。
[16]子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症の病態をモニタリングする方法であって、
対象から異なる時点で採取された複数の試料のそれぞれにおける、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量をそれぞれ測定する工程を含む方法。
[17]前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に減少する場合、または前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に増加する場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症の病態が改善している、またはその可能性があると示される工程をさらに含む、[16]に記載の方法。
[18]前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に増加する場合、または前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に減少する場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症の病態が悪化している、またはその可能性があると示される工程をさらに含む、[16]に記載の方法。
[19]前記マーカーをポリペプチドとして測定する、[1]から[18]のいずれか一項に記載の方法。
[20]前記試料が血液試料である、[1]から[19]のいずれか一項に記載の方法。
[21]前記試料におけるマーカーの存在量は、血液試料中の当該マーカーのポリペプチド濃度である、[20]に記載の方法。
[21-1]前記血液試料中のタイプVコラーゲンMMP分解産物濃度は配列番号:4または配列番号:6で示されるペプチドを特異的に認識することより測定される、[20]または[21]に記載の方法。
[22]子宮内膜症を診断するためのキットであって、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬を含むキット。
[23]対象における子宮内膜症の罹患の有無を決定するためのキットであって、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬を含むキット。
[24]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象が子宮内膜症に罹患している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含む、[22]または[23]に記載のキット。
[25]対象における子宮内膜の線維化の程度を決定するためのキットであって、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬を含むキット。
[26]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜における線維化が発生している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含む、[25]に記載のキット。
[27]対象における子宮内膜の癒着の程度を決定するためのキットであって、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬を含むキット。
[28]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜における癒着が発生している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含む、[27]に記載のキット。
[29]子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症による痛みの程度を予測するためのキットであって、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬を含むキット。
[30]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症による痛みが発生する、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含む、[29]に記載のキット。
[31]子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症の進行度を決定するためのキットであって、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬を含むキット。
[32]対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症が進行している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含む、[31]に記載のキット。
[33]前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量より高い場合、存在量が高いと判定される、[24]、[26]、[28]、[30]、または[32]に記載のキット。
[34]前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量の2倍以上の場合、および/または表6Aで示されるマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量の1.6倍以上の場合、存在量が高いと判定される、[24]、[26]、[28]、[30]、または[32]に記載のキット。
[35]前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量より低い場合、存在量が低いと判定される、[24]、[26]、[28]、[30]、または[32]に記載のキット。
[36]前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量の0.5倍以下の場合、および/または表6Bで示されるマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が健常人から得られた試料における同マーカーの存在量の0.625倍以下の場合、存在量が低いと判定される、[24]、[26]、[28]、[30]、または[32]に記載のキット。
[37]子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症の病態をモニタリングするためのキットであって、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬を含むキット。
[38]対象から異なる時点で採取された複数の試料のそれぞれにおける、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を比較すると記載した指示書をさらに含む、[37]に記載のキット。
[39]前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に減少する場合、または前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に増加する場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症の病態が改善している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含む、[37]または[38]に記載のキット。
[40]前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に増加する場合、または前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に減少する場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症の病態が悪化している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含む、[37]または[38]に記載のキット。
[41]前記マーカーをポリペプチドとして測定する、[22]から[40]のいずれか一項に記載のキット。
[42]前記試料が血液試料である、[22]から[41]のいずれか一項に記載のキット。
[43]前記試料におけるマーカーの存在量は、血液試料中の当該マーカーのポリペプチド濃度である、[42]に記載のキット。
[43-1]前記血液試料中のタイプVコラーゲンMMP分解産物濃度は配列番号:4または配列番号:6で示されるペプチドを特異的に認識することより測定される、[42]または[43]に記載のキット。
[44]子宮内膜症の診断に用いるための、
タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬。
[45]対象における子宮内膜症の罹患の有無の決定に用いるための、
タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬。
[46]対象における子宮内膜の線維化の程度の決定に用いるための、
タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬。
[47]対象における子宮内膜の癒着の程度の決定に用いるための、
タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬。
[48]子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症による痛みの程度の予測に用いるための、
タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬。
[49]子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症の進行度の決定に用いるための、
タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬。
[50]子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症の病態のモニタリングに用いるための、
タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬。
[51]前記マーカーをポリペプチドとして測定する、[44]から[50]のいずれか一項に記載の試薬。
[52]対象から得られた血液試料中の当該マーカーのポリペプチド濃度を測定することで、前記マーカーの存在量を測定する、[44]から[51]のいずれか一項に記載の試薬。
[53]前記血液試料中に存在する配列番号:4または配列番号:6で示されるペプチドを特異的に認識することより、前記血液試料中のタイプVコラーゲンMMP分解産物濃度を測定する、[51]に記載の試薬。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1-1】
図1-1から
図1-10は、LC-MSによる健常人血漿/子宮内膜症患者血漿中のタンパク質相対発現量の分析結果を示す図である。各グラフのタイトルは対象タンパク質のGene Symbol:UniProt IDを示しており、X軸はサンプル名であり、Y軸はタンパク質の相対発現量である。グラフ中のバーは、3回分析で得られた三つのデータセットにおけるタンパク質相対発現量の標準偏差である。
図1-1は、Gene Symbol:CALU、UniProt ID:O43852についてのデータを示す。
【
図1-2】
図1-2は、Gene Symbol:CAT、UniProt ID:P04040についてのデータを示す。
【
図1-3】
図1-3は、Gene Symbol:HBA1、UniProt ID:P69905についてのデータを示す。
【
図1-4】
図1-4は、Gene Symbol:HBB、UniProt ID:P68871についてのデータを示す。
【
図1-5】
図1-5は、Gene Symbol:HBD、UniProt ID:P02042についてのデータを示す。
【
図1-6】
図1-6は、Gene Symbol:PPIA、UniProt ID:P62937についてのデータを示す。
【
図1-7】
図1-7は、Gene Symbol:PRDX1;PRDX4、UniProt ID:Q06830についてのデータを示す。
【
図1-8】
図1-8は、Gene Symbol:S100A6、UniProt ID:P06703についてのデータを示す。
【
図1-9】
図1-9は、Gene Symbol:TPI1、UniProt ID:P60174についてのデータを示す。
【
図1-10】
図1-10は、Gene Symbol:UBE2V1;UBE2V2、UniProt ID:Q13404についてのデータを示す。
【
図2-1】
図2-1から
図2-10は、SOMAscan(登録商標)による健常人血漿/子宮内膜症患者血漿中のタンパク質発現量分析の結果を示す図である。各グラフのタイトルは対象タンパク質のGene Symbol:UniProt IDであり、X軸はサンプル名であり、Y軸はSOMAscan(登録商標)における対象タンパクのアプタマーシグナルの値である。
図2-1は、Gene Symbol:BGN、UniProt ID:P21810についてのデータを示す。
【
図2-2】
図2-2は、Gene Symbol:CDH12、UniProt ID:P55289についてのデータを示す。
【
図2-3】
図2-3は、Gene Symbol:DDX19B、UniProt ID:Q9UMR2についてのデータを示す。
【
図2-4】
図2-4は、Gene Symbol:IL1B、UniProt ID:P01584についてのデータを示す。
【
図2-5】
図2-5は、Gene Symbol:IL2、UniProt ID:P60568についてのデータを示す。
【
図2-6】
図2-6は、Gene Symbol:LAG3、UniProt ID:P18627についてのデータを示す。
【
図2-7】
図2-7は、Gene Symbol:MFGE8、UniProt ID:Q08431についてのデータを示す。
【
図2-8】
図2-8は、Gene Symbol:PDE5A、UniProt ID:O76074についてのデータを示す。
【
図2-9】
図2-9は、Gene Symbol:SERPINE2、UniProt ID:P07093についてのデータを示す。
【
図2-10】
図2-10は、Gene Symbol:SMPDL3A、UniProt ID:Q92484についてのデータを示す。
【
図3】
図3は、健常人血漿/子宮内膜症患者血漿中のタイプVコラーゲン分解産物(C5M)発現量分析の結果を示す図である。X軸はサンプル名であり、Y軸は血漿中の対象分解産物濃度(ng/ml)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
マーカー
本開示におけるマーカーとは、バイオマーカーと言い換えることもでき、正常な生物学的過程、発病過程、又は治療に対する薬理学的な応答性の指標として客観的に測定され評価され得る特定の生体内化学物質を指す。マーカーは、疾患の有無、進行状態、もしくは罹患のしやすさの評価、あるいは薬剤の効果、至適用量、もしくは安全性の評価もしくは予測、あるいは予後の予測などに有用である。本開示におけるマーカーはタンパク質名、タンパク質断片名または遺伝子名で特定されており、マーカーとなる遺伝子をポリペプチドまたはポリヌクレオチド(DNAの形態およびmRNAの形態を含む)として測定することが好ましく、マーカーとなるタンパク質またはタンパク質断片をポリペプチドとして測定することが好ましい。
【0011】
マーカー存在量の測定方法
マーカーの存在量の測定は、マーカーの形態あるいはマーカーの存在量を測定しようとする試料の種類に応じて適切な方法を選択して実施することができる。マーカーの形態がポリペプチドの場合は、当該ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いた免疫学的手法により測定を行うことができ、そのような手法として例えば、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、放射免疫測定法(RIA)、発光免疫測定法(LIA)、電気化学発光(ECL)法、ウエスタンブロッティング法、表面プラズモン共鳴法、抗体アレイを用いた方法、免疫組織染色法、蛍光活性化細胞選別(FACS)法、イムノクロマトグラフィー法、免疫沈降法、免疫比濁法、ラテックス凝集法などを挙げることができる。マーカーの形態がポリヌクレオチドの場合は、当該ポリヌクレオチドに特異的に結合するオリゴヌクレオチドを用いた遺伝子工学的手法により測定を行うことができ、そのような手法として例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、逆転写PCR(RT-PCR)法、リアルタイム定量PCR(Q-PCR)法、ノーザンブロッティング法、ハイブリダイゼーション法(DNAマイクロアレイなどのオリゴヌクレオチドアレイを用いた方法も含む)などを挙げることができる。
測定対象となるマーカーが遺伝子から発現されるタンパク質の場合、存在量を発現レベルに言い換えることが出来る。本開示においては、「存在量」はタンパク質の発現レベル、遺伝子発現レベルおよびタンパク質断片の濃度を含む。
【0012】
本開示の一態様において、マーカーの存在量は相対的な存在量であることができる。相対的な存在量の測定は、対象から得られた試料中の特定のマーカーのレベルおよび他のタンパク質/代謝産物レベルをコントロールと比較することで測定できる。相対的な存在量は、LC/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析法)によって測定してもよい。
【0013】
マーカー存在量の判断基準
本開示において、マーカーの存在量が高いまたは多いとは、マーカーの測定値がそのマーカーに対して設定された所定の値(対照レベル)より高いまたは多いことを意味し、マーカーの存在量が低いまたは少ないとは、そのマーカーに対して設定された所定の値(対照レベル)より低いもしくは少ないまたは対照レベル以下であることを意味する。
【0014】
本開示における所定の値とは、何らかの科学的根拠に基づいて予め決定された値を意味するが、その値を基準にして、子宮内膜症の罹患の有無の決定、対象における子宮内膜の線維化の程度の決定、対象における子宮内膜の癒着の程度の決定、子宮内膜症に罹患した対象における痛みの程度の予測、子宮内膜症の進行度の決定、または子宮内膜症の病態モニタリングができる限り、どのような値であっても構わない。本開示における所定の値は、マーカーごとに設定されていてもよい。
【0015】
本開示における所定の値は、健常な対象、例えば健康成人から得られた試料(対照試料)におけるマーカーの測定値から設定することができる。健常な対象から得られた試料におけるマーカーの測定値と比較して、子宮内膜症に罹患した対象から得られた試料におけるマーカーの測定値は増大もしくは減少していることが本開示において判明している。そのため、一つの取り得る手段として、複数の健常な対象から得られた試料におけるマーカーの測定値の平均値をそのまま所定の値としてもよい。また、別の取り得る手段として、複数の健常な対象から得られた試料におけるマーカーの測定値の平均値に標準偏差の0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、1.0倍、1.5倍、2.0倍、2.5倍、または3.0倍の値を加えた値を所定の値としてもよい。したがって、本開示の一態様において、健常人から得られた試料(対照試料)において測定されたマーカーの存在量(対照レベル)と被験対象から得られた試料におけるマーカーの測定値とを比較して、被験対象における子宮内膜症の罹患の有無の決定、対象における子宮内膜の線維化の程度の決定、対象における子宮内膜の癒着の程度の決定、子宮内膜症に罹患したまたは罹患していると疑われる対象における痛みの程度の予測、子宮内膜症の進行度の決定、子宮内膜症の病態モニタリングを行うことが示される。
【0016】
本開示におけるマーカーの測定値や所定の値は、マーカーの存在量の測定結果を何らかの方法で数値化したものであってもよい。本開示においては、マーカーの測定値や所定の値は、測定の結果得られる値(例えば発色強度など)をそのまま用いてもよいし、また、含まれるマーカーの量が既知の陽性対照試料を別途用意して、それとの比較で測定結果を換算した値(例えば濃度など)を用いてもよい。あるいは、上記のようにして得られた値を一定の範囲で区切るなどしてスコア化した値(例えばグレード1、2、3など)を用いてもよい。
【0017】
試料
本開示における試料は、生体試料と言い換えることもでき、生体内に含まれる器官、組織、細胞、体液、あるいはそれらの混合物を指す。具体的な例としては、皮膚、気道、腸管、尿生殖路、神経、腫瘍、骨髄、血球、血液(全血、血漿、血清)、リンパ液、脳脊髄液、腹腔内液、滑液、肺内液、唾液、喀痰、尿などを挙げることができる。また、これらを洗浄して得られるもの、あるいは生体外で培養して得られるものも本開示における試料に含まれる。本開示における好ましい試料は血液であり、特に好ましい試料は血漿または血清である。
【0018】
本開示において、対象から得られた試料は、マーカーの存在量の測定に供される前に、濃縮、精製、抽出、単離、あるいは物理的/化学的処理などの方法により加工されてもよい。例えば、血液試料から血球あるいは血漿成分を分離してもよいし、また、組織/細胞試料からDNAやRNAを抽出してもよい。あるいは加熱や化学試薬により不要成分を変性/除去してもよい。このような加工は、主にマーカーの存在量を測定する感度や特異性を向上させる目的で行われる。
【0019】
本開示中の、子宮内膜の線維化の程度の決定、子宮内膜の癒着の程度の決定、子宮内膜症による痛みの程度の予測、子宮内膜症の進行度の決定、子宮内膜症の病態のモニタリングにおいて、試料を取得する対象は、子宮内膜症を罹患していると既に診断された対象または子宮内膜症を罹患していると疑われる対象であっても良い。子宮内膜症を罹患した対象は、子宮内膜症に罹患した対象であればどのような対象であってもよい。子宮内膜症の治療をまだ受けていない対象であってもよいし、治療をすでに受けている対象であってもよい。
本開示中の対象は、哺乳類である。哺乳類は、これに限定されないが、飼いならされた動物(例えば牛、ヒツジ、猫、犬、および馬など)、霊長類(例えばヒト、およびサルのような非ヒト霊長類など)、ウサギ、およびげっ歯類(マウスやラットなど)を含む。ある実施態様では、対象はヒトである。
【0020】
本開示におけるマーカー
本開示におけるマーカーとしては、タイプVコラーゲンMMP(Matrix metalloproteinase)分解産物(配列番号:4に記載のアミノ酸配列をそのN末端に含む、および/または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をそのC末端に含む、タイプVコラーゲン由来のポリペプチド、例えば、配列番号:2、3に示すタンパク質断片)、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーを挙げることができる。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
これらの表に示されるマーカー(mRNA、タンパク質)の配列は、上記表に記載のUniprot IDに基づき、当業者公知のデータベース(Uniprot:https://www.uniprot.org/)より、容易に取得することができる。具体的には、Uniprot IDを基に対応するUniprot entryを検索し、「sequences」項目に記載されている配列を取得することが可能である。さらに、「sequences」項目の記載から他のデータベース(例えば、RefSeq、EMBL、GenBank、DDBJ、CCDS、PIR、UniGene、Ensemble、GeneID、KEGG、USCS)のID/accession numberを取得し当該データベースから更に配列を取得することも可能である。本開示における各マーカーの配列は、対応するUniprot entryのrelease numberが2018-09より前の最新バージョン(例えば、2018-08、2018-08が存在しない場合は2018_07、2018_08も2018_07も存在しない場合は2018_06、以降同様)に記載されている配列やID/accession numberを指している。
また、Uniprotのリリースデータのアーカイブが保存されているFTP(ftp://ftp.uniprot.org/pub/databases/uniprot/previous_releases/)において、Directory「release-2018_08/knowledgebase」(「release-2018_08」に含まれる「knowledgebase」Directory)に含まれるデータからも、上記表中の記載のUniprot IDに基づき、表中のマーカーのアミノ酸配列を取得することも出来る。
【0030】
上記表中に記載のマーカー群に、線維化を示すマーカー(TGFB1およびSPARC等)が含まれている。更に、上記表中に記載のマーカー群は、血小板由来と考えられる分子が多く含まれる。例えば、PPBP, THBS1, PF4, SERPINA1, TIMP3, APP, CALU, CASP3, MMRN1, SAA1, SRGN, VWFなどは血小板の脱顆粒などに関与することがuniprotに記載されている。Zhangらは子宮内膜由来細胞を用いたin vitroの実験系で活性化した血小板から放出されたTGFb1によってepithelial-mesenchymal transition (EMT)およびfibroblast-to-myofibroblast transdifferentiation (FMT)が誘導され、コラーゲン産生が増加し、線維化が誘導されることを示した(Molecular and Cellular Endocrinology, 428, 1-16, 2016)。このことは、本開示においてTGFb1および血小板由来タンパク質がマーカーとして選抜されことと一致しており、これらのタンパク質の変化は血小板の活性化等の変化を反映した可能性が示唆された。
【0031】
タイプVコラーゲンMMP分解産物は、MMP mediated type V collagen degradationとも呼ばれ、タイプVコラーゲンのalpha 3 chain(Refseq: NP_056534.2、配列番号:1)がMMPにより分解された産物である。具体的に、タイプVコラーゲンMMP分解産物は配列番号:1で示すタイプVコラーゲンの1316番アミノ酸(G)と1317番アミノ酸(H)の間が切断されることにより産生されたタイプVコラーゲン分解産物である(Clin Biochem. 2012 May;45(7-8):541-6)。具体的には、タイプVコラーゲン由来のポリペプチドであって、配列番号:4に記載のアミノ酸配列をN末端に含む、および/または配列番号:6に記載のアミノ酸配列をC末端に含むものであれば、タイプVコラーゲンMMP分解産物に含まれる。タイプVコラーゲンMMP分解産物の例示として、配列番号:2または3に示すタンパク質断片が列挙される。タイプVコラーゲンMMP分解産物の中で、配列番号:4(HMGREGREGE)のペプチド断片をC5Mと称することがある。
【0032】
タイプVコラーゲンMMP分解産物の存在の検出は、配列番号:1に記載の1316番アミノ酸(G)と1317番アミノ酸(H)の間で切断された後のタイプVコラーゲン断片を検出できる限り、その方法を問わない。ある態様において、配列番号:2で示すタイプVコラーゲン断片のN末端に位置するペプチドHMGREGREGE(配列番号:4)を特異的に認識する抗体を用いてタイプVコラーゲンMMP分解産物の存在量を検出することが出来る。より具体的な態様において、配列番号:2で示すタイプVコラーゲン断片のN末端に位置するペプチドHMGREGREGE(配列番号:4)を認識でき、GHMGREGREGE(配列番号:5)を認識しない抗体を用いて、タイプVコラーゲンMMP分解産物の存在量を検出することができる(Clin Biochem. 2012 May;45(7-8):541-6.では、そのような抗体を使用したELISA法検出を確立している)。ある別の態様において、配列番号:3で示すタイプVコラーゲン断片のC末端に位置するペプチドGPPGKRGPSG(配列番号:6)を特異的に認識する抗体を用いてタイプVコラーゲンMMP分解産物の存在量を検出することができる。より具体的な態様において、配列番号:3で示すタイプVコラーゲン断片のC末端に位置するペプチドGPPGKRGPSG(配列番号:6)を認識でき、GPPGKRGPSGH(配列番号:7)を認識しない抗体を用いて、タイプVコラーゲンMMP分解産物の存在量を検出することができる。
【0033】
本開示においては、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択されるタンパク質を単独でマーカーとして用いてもよいし、前記選択される複数のタンパク質を組み合わせてマーカーとして用いてもよい。複数のタンパク質をマーカーとする場合には、各マーカーをそれぞれ単独で測定した後にそれらの結果を組み合わせてもよいし、あるいは各マーカーを同時に測定してもよい。
【0034】
本開示のマーカーの存在量の測定は、本開示に記載の測定方法を用いて行うこともできるし、市販されている測定試薬を用いて行うこともできる。本明細書中に記載されている各マーカーの具体的な測定値や所定の値は、前記測定試薬を用いて測定された値として解釈することができる。
【0035】
本開示のマーカーに対して設定された所定の値(対照レベル)は、各マーカーの存在量を測定しようとする対象の試料の種類によっても変動し得るが、例えば、0.1から100 ng/mLの範囲から設定することができる。あるいは、0.2から90 ng/mL、0.3から80 ng/mL、0.4から70 ng/mL、0.5から60 ng/mL、1.0から50 ng/mL、1.5から40 ng/mL、2.0から30 ng/mL、2.5から20 ng/mL、3.0から10 ng/mLなどの範囲から設定することもできるが、これらに限定されない。
【0036】
また、本開示の各マーカーに対して設定された所定の値は、0.1 ng/mL、0.2 ng/mL、0.3 ng/mL、0.4 ng/mL、0.5 ng/mL、0.6 ng/mL、0.7 ng/mL、0.8 ng/mL、0.9 ng/mL、1.0 ng/mL、1.5 ng/mL、2.0 ng/mL、2.5 ng/mL、3.0 ng/mL、3.5 ng/mL、4.0 ng/mL、4.5 ng/mL、5.0 ng/mL、5.5 ng/mL、6.0 ng/mL、6.5 ng/mL、7.0 ng/mL、7.5 ng/mL、8.0 ng/mL、8.5 ng/mL、9.0 ng/mL、9.5 ng/mL、10 ng/mL、15 ng/mL、20 ng/mL、25 ng/mL、30 ng/mL、35 ng/mL、40 ng/mL、45 ng/mL、50 ng/mL、60 ng/mL、70 ng/mL、80 ng/mL、90 ng/mL、100 ng/mLなどの値から設定することもできるが、これらに限定されない。
【0037】
本開示においては、本開示の各マーカーの存在量が所定の値(対照レベル)よりも大きい場合に、「存在量が高い」または「存在量が多い」と決定することができる。例えば本開示においては、これらに限定されるものではないが、前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が、健常人から得られた試料における同一のマーカーの存在量の、例えば1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2.0倍以上、2.1倍以上、2.2倍以上、2.3倍以上、2.4倍以上、2.5倍以上、2.6倍以上、2.7倍以上、2.8倍以上、2.9倍以上、3.0倍以上、またはそれ以上の場合、「存在量が高い」または「存在量が多い」と判定することができる。あるいは本開示においては、これらに限定されるものではないが、表6Aで示されるマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が、健常人から得られた試料における同一のマーカーの存在量の、例えば1.10倍以上、1.15倍以上、1.20倍以上、1.25倍以上、1.30倍以上、1.35倍以上、1.40倍以上、1.45倍以上、1.50倍以上、1.55倍以上、1.60倍以上、1.65倍以上、1.70倍以上、1.75倍以上、1.80倍以上、1.85倍以上、1.90倍以上、1.95倍以上、2.00倍以上、またはそれ以上の場合、「存在量が高い」または「存在量が多い」と判定することができる。
【0038】
本開示においては、本開示の各マーカーの存在量が所定の値(対照レベル)よりも小さい場合に、「存在量が低い」または「存在量が少ない」と決定することができる。例えば本開示においては、これらに限定されるものではないが、前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が、健常人から得られた試料における同一のマーカーの存在量の、例えば0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、0.3倍以下、0.2倍以下、0.1倍以下またはそれ以下の場合、「存在量が低い」または「存在量が少ない」と判定することができる。あるいは本開示においては、これらに限定されるものではないが、表6Bで示されるマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が、健常人から得られた試料における同一のマーカーの存在量の、例えば0.9倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、0.3倍以下、0.2倍以下、0.1倍以下またはそれ以下の場合、「存在量が低い」または「存在量が少ない」と判定することができる。
【0039】
子宮内膜症の診断及び対象における子宮内膜症の罹患の有無の決定
本開示の一側面は、子宮内膜症の診断方法、または対象における子宮内膜症の罹患の有無を決定する方法に関する。また本開示の一側面は、子宮内膜症またはそのマーカーの検出方法に関する。また本開示の一側面は、当該診断または決定を補助するための方法に関する。また本開示の一側面は、当該診断または決定についての指示を提供するための方法に関する。また本開示の一側面は、それら方法に使用するための試薬及びキットに関する。
【0040】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定することを含む。また、当該存在量を所定の値(対照レベル)と比較する工程を含むことができる。
上記試薬は、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬である。上記キットは、前記試薬を含む。
【0041】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または対象から得られた試料における表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象が子宮内膜症に罹患している、またはその可能性があると示される工程を含めてもよい。
【0042】
上記各方法はin vivoおよびin vitroのいずれにおいても行うことができるが、in vitroにおいて行うことが好ましい。
また上記各方法は、対象から試料を取得する工程を含めてもよい。
また上記各方法は、子宮内膜症に罹患している、またはその可能性があると示された対象を治療する工程を含めてもよい。また上記各方法は、子宮内膜症に罹患している、またはその可能性があると示された対象に公知の子宮内膜症の治療薬を投与する工程を含めてもよい。すなわち本発明は、上記各方法によって子宮内膜症に罹患している、またはその可能性があると示された対象における子宮内膜症を治療する方法に関する。子宮内膜症の治療薬は当業者に様々なものが知られており、これらに限定されるものではないが、エストロゲン/プロゲステロン合剤、プロゲステロン製剤、GnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト、ダナゾールなどを例示することができる。
【0043】
上記キットは、対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象が子宮内膜症に罹患している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含めても良い。
【0044】
対象における子宮内膜の線維化の程度の決定
本開示の一側面は、対象における子宮内膜の線維化の程度を決定する方法、当該決定を補助するための方法、当該決定についての指示を提供するための方法、それらに使用するための試薬及びキットに関する。
【0045】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定することを含む。また、当該存在量を所定の値(対照レベル)と比較する工程を含むことができる。
上記試薬は、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬である。上記キットは、前記試薬を含む。
【0046】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または対象から得られた試料における表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜における線維化が発生している、またはその可能性があると示される工程を含めてもよい。
【0047】
上記各方法はin vivoおよびin vitroのいずれにおいても行うことができるが、in vitroにおいて行うことが好ましい。
また上記各方法は、対象から試料を取得する工程を含めてもよい。
また上記各方法は、子宮内膜における線維化が発生している、またはその可能性があると示された対象を治療する工程を含めてもよい。また上記各方法は、子宮内膜における線維化が発生している、またはその可能性があると示された対象に公知の子宮内膜における線維化を抑制するための治療薬を投与する工程を含めてもよい。すなわち本発明は、上記各方法によって子宮内膜における線維化が発生している、またはその可能性があると示された対象における、線維化を抑制する方法に関する。子宮内膜における線維化を抑制するための治療薬としては、上述の子宮内膜症の治療薬を例示することができる。
【0048】
上記キットは、対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜における線維化が発生している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含めても良い。
【0049】
対象における子宮内膜の癒着程度の決定
本開示の一側面は、対象における子宮内膜の癒着の程度を決定する方法、当該決定を補助するための方法、当該決定についての指示を提供するための方法、それら方法に使用するための試薬及びキットに関する。
【0050】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定することを含む。また、当該存在量を所定の値(対照レベル)と比較する工程を含むことができる。
上記試薬は、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬である。上記キットは、前記試薬を含む。
【0051】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または対象から得られた試料における表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜における癒着が発生している、またはその可能性があると示される工程を含めてもよい。
【0052】
上記各方法はin vivoおよびin vitroのいずれにおいても行うことができるが、in vitroにおいて行うことが好ましい。
また上記各方法は、対象から試料を取得する工程を含めてもよい。
また上記各方法は、子宮内膜における癒着が発生している、またはその可能性があると示された対象を治療する工程を含めてもよい。また上記各方法は、子宮内膜における癒着が発生している、またはその可能性があると示された対象に公知の子宮内膜における癒着を抑制するための治療薬を投与する工程を含めてもよい。すなわち本発明は、上記各方法によって子宮内膜における癒着が発生している、またはその可能性があると示された対象における、子宮内膜における癒着を抑制する方法に関する。子宮内膜における癒着を抑制するための治療薬としては、上述の子宮内膜症の治療薬を例示することができる。
【0053】
上記キットは、対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物の濃度、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜における癒着が発生している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含めても良い。
【0054】
子宮内膜症に罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症による痛みの程度の予測
本開示の一側面は、子宮内膜症に罹患しているまたは罹患していると疑われる対象における子宮内膜症による痛みの程度を予測する方法、当該予測を補助するための方法、当該予測についての指示を提供するための方法、それら方法に使用するための試薬及びキットに関する。
【0055】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定することを含む。また、当該存在量を所定の値(対照レベル)と比較する工程を含むことができる。
上記試薬は、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬である。上記キットは、前記試薬を含む。
【0056】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または対象から得られた試料における表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症による痛みが発生する、またはその可能性があると示される工程を含めてもよい。
【0057】
上記各方法はin vivoおよびin vitroのいずれにおいても行うことができるが、in vitroにおいて行うことが好ましい。
また上記各方法は、対象から試料を取得する工程を含めてもよい。
また上記各方法は、子宮内膜症による痛みが発生する、またはその可能性があると示された対象において、子宮内膜症による痛みを緩和する工程を含めてもよい。また上記各方法は、子宮内膜症による痛みが発生する、またはその可能性があると示された対象に公知の子宮内膜症による痛みを抑制するための治療薬を投与する工程を含めてもよい。すなわち本発明は、上記各方法によって子宮内膜症による痛みが発生する、またはその可能性があると示された対象における、子宮内膜症による痛みを抑制する方法に関する。子宮内膜症による痛みを抑制するための治療薬としては、上述の子宮内膜症の治療薬を例示することができる。
【0058】
上記キットは、対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症による痛みが発生する、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含めても良い。
【0059】
子宮内膜症の進行度の決定
本開示の一側面は、子宮内膜症に罹患しているまたは罹患していると疑われる対象において子宮内膜症の進行度を決定する方法、当該決定を補助するための方法、当該決定についての指示を提供するための方法、それら方法に使用するための試薬及びキットに関する。
【0060】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定することを含む。また、当該存在量を所定の値(対照レベル)と比較する工程を含むことができる。
上記試薬は、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬である。上記キットは、前記試薬を含む。
【0061】
上記各方法は、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または対象から得られた試料における表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症が進行している、またはその可能性があると示される工程を含めてもよい。
【0062】
上記各方法はin vivoおよびin vitroのいずれにおいても行うことができるが、in vitroにおいて行うことが好ましい。
また上記各方法は、対象から試料を取得する工程を含めてもよい。
また上記各方法は、子宮内膜症が進行している、またはその可能性があると示された対象を治療する工程を含めてもよい。また上記各方法は、子宮内膜症が進行している、またはその可能性があると示された対象に公知の子宮内膜症の進行を抑制するための治療薬を投与する工程を含めてもよい。すなわち本発明は、上記各方法によって子宮内膜症が進行している、またはその可能性があると示された対象における、子宮内膜症の進行を抑制する方法に関する。子宮内膜症の進行を抑制するための治療薬としては、上述の子宮内膜症の治療薬を例示することができる。
【0063】
上記キットは、対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して高い場合、または表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が所定の値(対照レベル)と比較して低い場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症が進行している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書をさらに含めても良い。
【0064】
子宮内膜症の病態モニタリング
本開示の一側面は、子宮内膜症を罹患しているまたは罹患していると疑われる対象において子宮内膜症の病態をモニタリングする方法、当該モニタリングを補助するための方法、当該モニタリングについての指示を提供するための方法、それら方法に使用するための試薬及びキットに関する。
本開示におけるモニタリングは、治療効果を判定すること、および/または将来の治療内容あるいは治療方針についての情報を提供することを含む。
【0065】
上記各方法においては、対象から得られた試料におけるタイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定することを含む。
上記試薬は、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定するための試薬である。上記キットは、前記試薬を含む。
【0066】
上記各方法は、対象から異なる時点で採取された複数の試料のそれぞれにおける、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量をそれぞれ測定する工程を含めても良い。また、異なる時点で採取された複数の試料について、各試料における前記マーカーの存在量を比較する工程を含めてもよい。本開示においては、試料を採取するタイミングや回数は特に制限されず、必要に応じて、治療前、治療中、治療後の様々な時点において試料を採取することができる。また、治療前、治療中、治療後のそれぞれの期間中においても、様々なタイミングで試料を採取することができる。本開示において「複数」は特に限定されるものではないが、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数を挙げることができる。
上記キットは、対象から得られた、異なる時点で採取された複数試料のそれぞれにおける、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を比較すると記載した指示書を含めても良い。
【0067】
上記各方法は、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に減少した場合、または前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に増加した場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症の病態が改善している、またはその可能性があると示される工程を含めてもよい。
上記各方法においては、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に増加した場合、または前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に減少した場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症の病態が悪化している、またはその可能性があると示される工程を含めてもよい。
【0068】
上記各方法はin vivoおよびin vitroのいずれにおいても行うことができるが、in vitroにおいて行うことが好ましい。
また上記各方法は、対象から試料を取得する工程を含めてもよい。
また上記各方法は、子宮内膜症の病態が悪化している、またはその可能性があると示された対象を治療する工程を含めてもよい。また上記各方法は、子宮内膜症の病態が悪化している、またはその可能性があると示された対象に公知の子宮内膜症の治療薬を投与する工程を含めてもよい。すなわち本発明は、上記各方法によって子宮内膜症の病態が悪化している、またはその可能性があると示された対象における子宮内膜症を治療する方法に関する。子宮内膜症の治療薬としては、上述のものを使用することができる。
【0069】
上記キットは、前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に減少した場合、または前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に増加した場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症の病態が改善している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書を含めても良い。
上記キットにおいては、前記タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に増加した場合、または前記表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量が経時的に減少した場合、前記試料が由来する対象において子宮内膜症の病態が悪化している、またはその可能性があると示されることを記載した指示書を含めても良い。
【0070】
試薬・キット
本開示のキットに含まれる試薬は、マーカーの存在量を測定可能であれば特に限定されないが、マーカーの形態に応じた試薬を適宜選択することができる。マーカーの形態がポリペプチドの場合は、当該ポリペプチドに特異的に結合する抗体を含む試薬が好ましく、また、マーカーの形態がポリヌクレオチドの場合は、当該ポリヌクレオチドに特異的に結合するオリゴヌクレオチドを含む試薬が好ましい。本開示においては、抗体またはポリヌクレオチド自体が試薬であってもよい。本開示におけるポリヌクレオチドは、DNAの形態およびmRNAの形態を含む。
【0071】
本開示における抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であってよい。またいくつかの実施態様において、抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体であってもよい。あるいは本開示における抗体は、抗体の断片やその修飾物であってもよい。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2、Fv又はH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。これらの抗体は当業者の周知の方法により取得することができる。
抗体は通常知られている方法により標識することができる。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることができる。
【0072】
本開示におけるオリゴヌクレオチドは、本開示におけるマーカーであるポリヌクレオチドまたはその相補鎖の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズする任意のオリゴヌクレオチドとすることができる。このようなポリヌクレオチドを検出するためのオリゴヌクレオチドの塩基配列は、本開示におけるマーカーのセンス鎖に相補的な塩基配列から選択される。オリゴヌクレオチドは、通常少なくとも15bp以上の鎖長を有する。
本開示におけるオリゴヌクレオチドも通常知られている方法により標識して使用することができる。本開示におけるオリゴヌクレオチドは、例えば市販のオリゴヌクレオチド合成機により作製することができる。
【0073】
また、本開示のキットは、マーカーの存在量を測定する際の基準となる陽性対照試料を含むことが好ましい。陽性対照試料は、そこに含まれるマーカーの量が予め特定されている試料であれば特に限定されないが、当該キットで測定されるマーカーの形態に応じて適宜調製することができる。例えば、マーカーの形態がポリペプチドの場合、当該マーカーと同じポリペプチドを単離精製して定量したものを含む試料が陽性対照試料として好ましい。
本発明のキットは、これらのほかに、例えば、滅菌水、生理食塩水、植物油、界面活性剤、脂質、溶解補助剤、緩衝剤、タンパク質安定剤(BSAやゼラチンなど)、保存剤、ブロッキング溶液、反応溶液、反応停止液、試料を処理するための試薬等が必要に応じて混合されていてもよい。
【0074】
また、タイプVコラーゲンMMP分解産物、表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーのセットもまた本開示に含まれる。このようなセットは、子宮内膜症の診断、子宮内膜症の罹患の有無の決定、子宮内膜症に罹患した患者の子宮内膜における線維化または癒着の程度の決定、子宮内膜症に罹患した患者の痛みの予測、子宮内膜症に罹患した患者の病態のモニタリングなどに使用することができる。
【0075】
なお、本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0076】
本開示は、以下の実施例によってさらに例示されるが、下記の実施例に限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)ヒト健常人および子宮内膜症患者の血漿を用いたLC-MS解析によるバイオマーカー探索
(1-1)ヒト血漿サンプルの取得
健常人および子宮内膜症患者由来血漿はProteogenex社より購入した。
【0078】
(1-2)血漿タンパク質のLC-MS解析
各血漿サンプル中の多量タンパク質はSeppro IgY14カラム(Sigma aldrich)を用いてメーカー推奨の方法によりカラムに結合され除去された。カラムに結合しなかったフロースルー画分のタンパク質はメタノール/クロロホルム法により沈殿され、8M尿素/400mM重炭酸アンモニウム溶液に溶解された。溶解タンパク質は還元、アルキル化された後、リジルエンドペプチダーゼおよびトリプシンにより消化されペプチドとなった。このペプチド溶液はMonospin C18 (GL Science)を用いてメーカー推奨の方法により脱塩された。
【0079】
前記ペプチドはTMT10plex Mass Tag Labeling Kits and Reagents (ThermoFisher Scientific )(以後TMT 10-plexと表記する)でメーカー推奨の方法により標識された。標識ペプチドは、PierceTM High pH Reversed-Phase Peptide Fractionation Kit (ThermoFisher Scientific)を用いてメーカー推奨の方法で分画され、おのおのの画分はnano-LC system (Ultimate3000, Dionex社)にOrbitrap fusion Lumos (ThermoFisher scientific)を繋げたLC-MS解析システムを用いて分析された。分析サンプルは、健常人3例、子宮内膜症患者3例の血漿のそれぞれから得たペプチドと、この6種類のペプチド溶液を等量混合したサンプル(コントロール)の7種類を含む。各サンプルはそれぞれ3回分析され、分析ごとに独立したデータセットとして後に解析された(N=3, 以下データセットTMT1, 2, 3)。
【0080】
サンプル中のタンパク質は、LC-MS分析のRaw dataからMaxQuant software (http://www.biochem.mpg.de/5111795/maxquant)を用いて同定され、相対発現量が分析された。タンパク質同定のためのデータベース検索は以下のパラメーターで行った。Taxonomy: uniprot human, Fixed modification: carbamidomethylation (C), Variable modification: oxidation (M); deamidation (NQ), Acetyl (protein N-term), FDR (protein, peptide) <1%。相対発現量は、以下の式で算出された:
【0081】
上記式で使用される対象タンパク質シグナル値は、MaxQunatのoutputファイルの一つであるProtein groups.txt中のReporter intensity correctedの列を使用し、TMT 10-plexの各ラベルそれぞれに対し、pipeline pilot (BIOVIA)を用いてintensity総和をコントロールサンプルのintensity総和で割り、1x1011を掛けて算出されたものである。
【0082】
(1-3)バイオマーカー候補分子の選抜
LC-MS結果データは、統計プログラミング環境R及びマイクロソフトエクセルを用いて、TMT1, 2, 3それぞれのデータセットごとに解析された。データセットごとに、各サンプル(健常人3例、子宮内膜症患者3例)中の各タンパク質の相対発現量から、以下の基準により、子宮内膜症患者で発現変化が認められた58個のタンパク質が選抜された(表3A、表3B)。
- 健常人3例と子宮内膜症患者3例における当該タンパク質の相対発現量がWelch t-testでp<0.05
【0083】
【0084】
【0085】
選抜されたタンパク質は、子宮内膜症診断のバイオマーカーとして有望であり、中に代表的なタンパク質の相対発現量グラフは
図1-1から
図1-10で示された。
【0086】
(実施例2)ヒト健常人および子宮内膜症患者の血漿を用いたアプタマー結合タンパク質解析(SOMAscan(登録商標))によるバイオマーカー探索
(2-1)ヒト血漿サンプルの取得
健常人および子宮内膜症患者由来血漿はProteogenex社より購入した。
【0087】
(2-2)血漿タンパク質のSOMAscan(登録商標)による解析
血漿サンプル(健常人3例および子宮内膜症患者3例)中の低発現タンパク質は、SOMAscan(登録商標、Somalogic社)を用いて分析された。具体的には、先ず1310タンパク質に対しておのおの特異的に結合するアプタマーが用意され、血漿と混合され、血漿中のタンパク質と結合させられた。次にアプタマーと結合したタンパク質がビオチン化され、アプタマー―タンパク質複合体がストレプトアビジンビーズを用いて精製された。その後、アプタマーが溶出され、マイクロアレイによって検出されることで、当該アプタマーと結合した血漿中タンパク質の発現量分析が行われた。
【0088】
(2-3)バイオマーカー候補の選抜
SOMAscan(登録商標)のアプタマーシグナルデータは、統計プログラミング環境R及びマイクロソフトエクセルを用いて解析された。以下の基準により、子宮内膜症患者で発現変化が認められた200個のタンパク質が選抜された(表4A、表4B)。
上記計算において、アプタマーシグナルの最大値が1000未満のものは検出限界以下とみなして解析対象から除かれた。
【0089】
【0090】
【0091】
選抜されたタンパク質は、子宮内膜症診断のバイオマーカーとして有望であり、中に代表的なタンパク質の発現量グラフは
図2-1から
図2-10で示された。
【0092】
(実施例3)ヒト健常人および子宮内膜症患者の血漿を用いた細胞外マトリックス分解産物分析によるバイオマーカー探索
(3-1)ヒト血漿サンプルの取得
健常人および子宮内膜症患者由来血漿はProteogenex社より購入した。
【0093】
(3-2)血漿タンパク質の細胞外マトリックス測定
血漿サンプル(健常人3例および子宮内膜症患者3例)は、細胞外マトリックスの切断部位特異的な抗体を用いたELISA系で分析され、サンプル中の細胞外マトリックス総量及び細胞外マトリックスの分解/合成状態が分析された(Nordic Bioscience社)。具体的に、タイプIII, IV, V, VIコラーゲン、decorin、またはnidogenが分解されるときの分解産物に含まれる切断部位に対する抗体を用いて、それぞれの分解産物の発現量が分析された。その結果、タイプVコラーゲンMMP分解産物(C5M)が3例中2例の患者で顕著に上昇している(C5Mの濃度が2例の上昇患者血漿中において10.2ng/ml、11.8ng/mlである)のに対し、健常者の血漿中のC5M濃度は全て検出限界以下であり、C5Mが子宮内膜症のバイオマーカーとして有望であることが示唆された。タイプVコラーゲンMMP分解産物(C5M)の血漿中濃度グラフが
図3に示された。
【0094】
(実施例4)ヒト健常人および子宮内膜症患者の血漿を用いたLuminex xMAP
TM
technologyによるバイオマーカー探索
(4-1)ヒト血漿サンプルの取得
健常人血漿(分泌期血漿サンプル5例、増殖期血漿サンプル5例)はProteogenex社より購入された。子宮内膜症患者の血漿は、子宮内膜症患者37例から、手術前、手術3日後および手術1か月後それぞれの血漿計111サンプルが取得された。
【0095】
(4-2)血漿タンパク質のLuminex xMAP
TM
technologyによる解析
血漿サンプル(中のタンパク質は、Luminex xMAPTM(Luminex社の商標)を用いて分析された。Luminex xMAPTM technologyは、マクロビーズを色々な濃度で組み合わせた2色の蛍光色素で染色し、蛍光色素の含有量を識別コードとして用い、それぞれのビーズに個別の解析対象と結合する物質を固定させ、少量サンプルで多項目を同時に解析することができる技術である。
本実施例では、152種のタンパク質を選択し、タンパク質測定パネルを用いて分析を行った。具体的には、先ずパネル毎に、ビーズに対象タンパクに結合する抗体が固定されており、ビーズ上の抗体に対し血漿サンプルを反応させ、さらに対象タンパクに対するレポーター抗体(蛍光色素で標識)を反応させたのち、フローサイトメトリー技術を利用し、2種類のレーザーで蛍光強度の測定を行って、対象タンパク質の発現量を分析した(Luminex100装置使用)。
【0096】
(4-3)バイオマーカー候補の選抜
得られた各種タンパク質の血漿中濃度は、マイクロソフトエクセルを用いて解析された。以下の基準により、子宮内膜症患者で発現変化が認められた24個のタンパク質が選抜された(表7A、表7B)。
選抜された24個のタンパク質のうち、12個のタンパク質は、子宮内膜症患者の手術時で最も高く、手術一か月後にその値が下がり、さらに健常人で最も低い値を示すものであった。
【0097】
【0098】
(実施例5)ヒト健常人および子宮内膜症患者の血漿を用いたLC-MS解析によるバイオマーカー探索
(5-1)ヒト血漿サンプルの取得
健常人血漿(分泌期血漿サンプル5例、増殖期血漿サンプル5例)はProteogenex社より購入された。子宮内膜症患者の血漿は、子宮内膜症患者39例から、手術前、手術3日後および手術1か月後それぞれの血漿計125サンプルが取得された。
【0099】
(5-2)血漿タンパク質のLC-MS解析
各血漿サンプルの中の多量タンパク質はHigh SelectTM Top14 Abundant Protein Depletion Mini Spin Columns (Thermo)を用いてメーカー推奨の方法によりカラムに結合され除去された。カラムに結合しなかったフロースルー画分のタンパク質はメタノール/クロロホルム法により沈殿され、8M尿素/400mM 重炭酸アンモニウム溶液に溶解された。溶解タンパク質は還元、アルキル化された後、リジルエンドペプチターゼおよびトリプシンにより消化されペプチドとなった。このペプチド溶液はMonospin C18(GL Science)を用いてメーカー推奨の方法により脱塩された。
【0100】
前記ペプチドはTMT10plexでメーカー推奨の方法により標識された。標識ペプチドは、AssayMAP reversed phase (RP-S) cartridges (Agilent technologies)を使用し、Triethylamineを用いたHigh pH Reversed-Phase法で分画され、おのおのの画分はnano-LC system(EASY-nLCTM 1200 system, ThermoFisher Scientific社)にOrbitrap Fusion Lumos(ThermoFisher scientific)を繋げたLC-MS解析システムを用いて分析された。分析サンプルは、健常人5例(分泌期、増殖期それぞれで計10サンプル)、子宮内膜症患者39例(手術前、手術3日後および手術一か月後の計125サンプル)の血漿のそれぞれから得たペプチドとなる。それぞれの分析の際に、測定間の補正を行うため購入した健常人7サンプルと購入した子宮内膜症患者7サンプルを等量混合したサンプルをコントロールとして使用し、各分析10サンプルなるようにした。各サンプルはそれぞれ3回分析され、それらは解析の過程で統合された。
【0101】
サンプル中のタンパク質は、LC-MS分析のRaw dataからThermo ScientificTM Proteome DiscovererTMを用いて同定され、相対発現量が分析された。タンパク質同定のためのデータベース検索は以下のパラメーターで行った。
Taxonomy: uniprot human
Static modifications: TMT6plex/ +229.163 Da (Any N-Terminus), Carbamidomethyl/ +57.021 Da (C, C-Terminus), TMT6plex / +229.163 Da (K, C-Terminus)
Dynamic Modifications: Oxidation/ +15.995 Da (M), Acetyl/ +42.011Da (N-Terminus)
FDR: Target FDR (Strict)/ 0.01, Target FDR (Relaxed)/ 0.05
健常人の血漿サンプル中の対象タンパク質に対する子宮内膜症患者の術前の血漿サンプル中の対象タンパク質の相対発現量は解析ソフト(Proteome Discoverer)で計算された。
【0102】
(5-3)バイオマーカー候補分子の選抜
LC-MS結果データは、Proteome Discoverer で解析された。サンプル(健常人5例の増殖期・分泌期の10サンプル、子宮内膜症患者39例の手術前サンプル)中の各タンパク質の相対発現量から、以下の基準により、子宮内膜症患者で発現変化が認められた27個のタンパク質が選抜された(表8A、表8B)。
- Abundance Ratio(存在比) がANOVA and tukey HSD post hocでP-Value ≦0.5 及び
- Abundance Ratios(存在比)≦0.6250または≧1.6000
選抜された27個のタンパク質のうち、16個のタンパク質は、子宮内膜症患者の手術時で最も高く、手術一か月後にその値が下がり、さらに健常人で最も低い値を示すものであった。
【0103】
【産業上の利用可能性】
【0104】
本開示によって、対象から得られた試料における、タイプVコラーゲンMMP分解産物の濃度、または表1Aで示されるマーカー、表2Aで示されるマーカー、表1Bで示されるマーカー、表2Bで示されるマーカー、表5Aで示されるマーカー、表6Aで示されるマーカー、表5Bで示されるマーカー、表6Bで示されるマーカーからなるグループから選択される少なくとも一つのマーカーの存在量を測定することによって、当該対象が子宮内膜症に罹患しているか否かを診断できることが証明された。本開示の発明は、非浸潤的な手法により子宮内膜症を診断することが可能にするものであり、当該疾患の診断及び治療に極めて有用である。
【配列表】