(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】球状炭素粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20240808BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240808BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/587
(21)【出願番号】P 2021524845
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021702
(87)【国際公開番号】W WO2020246448
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019103817
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591173213
【氏名又は名称】三和澱粉工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392000888
【氏名又は名称】株式会社合同資源
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 麻央
(72)【発明者】
【氏名】高原 純一
(72)【発明者】
【氏名】海宝 龍夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 進一
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 祥央
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-081889(JP,A)
【文献】特表2017-507126(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104276569(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0058466(KR,A)
【文献】国際公開第2007/066674(WO,A1)
【文献】特開昭54-041296(JP,A)
【文献】宮嶋尚哉 ほか,種々の糖類からヨウ素処理を経由して作製した炭素体の収率と多孔性,炭素,2016年,No.271,pp.10-14,doi:10.7209/tanso.2016.10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00 - 32/991
H01M 4/587
C10C 1/00 - 5/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/WPIX(STN)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素粒子の一次粒子の圧壊強度をx(MPa)、球状粒子率をyとしたときの総強度xyが50MPa以上である球状炭素粒子を得る方法であって、
原料粒子をヨウ素と共に
100~200℃で加熱する工程を含
み、
かつ
前記原料粒子の乾燥減量が7%以下である、
上記方法。
【請求項2】
前記原料粒子がデンプン粒子又はアミロース粒子から選ばれる少なくとも一つである、請求項
1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリチウムイオン二次電池用負極炭素材料、高圧液体クロマトグラフィー用カラム充填剤、セラミックハニカム構造体に用いる造孔剤、研磨剤の原料に好適な炭素材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素粒子は、リチウムイオン二次電池用負極炭素材料、高圧液体クロマトグラフィー用カラム充填剤、セラミックハニカム構造体に用いる造孔剤、研磨剤の原料として広く用いられている。
【0003】
特許文献1には米の中白糠又は上白糠を炭化してリチウムイオン二次電池用負極炭素材料とする技術が開示されている。
特許文献2にはピッチ又は重質油類炭化物を液体クロマトグラフィー用カラム充填剤とする技術が開示されている。
特許文献3には黒鉛粉末を多孔質セラミックハニカム構造体の造孔剤とする技術が開示されている。
特許文献4には木質炭化物を研磨材料とする技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、リチウムイオン二次電池用負極炭素材料、高圧液体クロマトグラフィー用カラム充填剤、セラミックハニカム構造体に用いる造孔剤、研磨剤に用いられる炭素材料は高強度が要求されるのに対し、従来の炭化物は強度不足であり実用に耐えうるものではなかった。
【0005】
非特許文献1には、種々の糖類をヨウ素蒸気と6時間以上接触後炭化させてグルコース、コーンスターチ、セルロース、キトサンの炭化物粉末を得る技術が開示されている。
しかしながら、非特許文献1より糖類とヨウ素の反応を用いて原料粉末状の形状を維持した炭化物が得られることは既知であるが、その粉末の一次粒子の形状および強度についてはなんら述べられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-32166
【文献】特開平3-160364
【文献】特開昭53-121010
【文献】特開2007-246732
【非特許文献】
【0007】
【文献】宮嶋尚哉ら 「種々の糖類からヨウ素処理を経由して作製した炭素体の収率と多孔性」 炭素 2016 No.271 10-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
強度の高い球状炭素粒子とその工業的製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、原料粒子をヨウ素と加熱処理することにより、強度の高い球状炭素粒子を作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)炭素粒子の一次粒子の圧壊強度をx(MPa)、球状粒子率をyとしたときの総強度xyが50MPa以上である、球状炭素粒子。
(2)前記球状炭素粒子の原料がデンプン粒子又はアミロース粒子から選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載の球状炭素粒子。
(3)(1)又は(2)に記載の球状炭素粒子を得る方法であって、原料粒子をヨウ素と共に加熱する工程を含む、上記方法。
(4)前記原料粒子がデンプン粒子又はアミロース粒子から選ばれる少なくとも一つである、(3)に記載の方法。
(5)加熱温度が100~200℃である、(3)又は(4)に記載の方法。
(6)乾燥減量が7%以下の原料粒子を用いる、(3)から(5)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強度の高い球状炭素粒子とその効率の良い工業的製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の球状炭素粒子のSEM写真である。一次粒子は凝集しているが分散できる。
【
図2】実施例1の球状炭素粒子を分散させた一次粒子3個のSEM写真である。
【
図3】比較例1の炭素粒子のSEM写真である。一次粒子は複数の炭素粒子が複合した後に破砕された形状である。複合は分散によって分離できず、一次粒子は破砕のため鋭いエッジをもつ。
【
図4】比較例2の炭素粒子のSEM写真である。一次粒子は破砕のため鋭いエッジをもつ。
【
図5】微小圧縮試験機で測定される破壊点を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<一次粒子>
一次粒子とは、例えば
図2に示すようなそれ以上物理的に分散できない独立した微粒子を意味する。ゆえに、
図3に見られるような複合によりそれ以上物理的に分散できない粒子であれば、この複合体が一次粒子となる。
【0013】
<圧壊強度x>
本発明における圧壊強度とは、微小圧縮試験機により測定した「炭化物の一次粒子」(本明細書において「炭素一次粒子」又は「炭素粒子の一次粒子」ともいう)の破壊時の強度、すなわち
図5で示される破壊点に到達したときの試験力(P)から算出される強度である。
微小圧縮試験機(商品名:MCT-510、株式会社島津製作所製)を用いて、まず付属の光学顕微鏡で1個の一次粒子の垂直方向の粒子径d1と水平方向の粒子径d2を測定し、粒子径(d)=(d1+d2)÷2を算出した後、上記微小圧縮試験機の圧縮試験モードにて、平面圧子を用いて一定負荷速度で圧縮し圧壊強度を測定する。粒子径及び圧壊強度の測定を1試料につき5回繰り返し、得られた5個の圧壊強度の平均を試料の圧壊強度とする。破壊点とは、
図5のごとく破壊により急激な変位がおこる点を指す。その負荷速度は、荷重98mNまでで破壊する場合は1.5495mN/秒、荷重98mNより大きな荷重で破壊する場合は8.2964mN/秒とする。測定温度は室温とする。なお測定対象の粒子は、球状であっても球状でなくともよいが、光学顕微鏡による観察で試料台に焦点を合わせたとき粒子の頂点部に焦点が合わない程度の高さを有する粒子とする。
強度算出式:C=2.48P/(πd
2)
C:強度(MPa)、P:荷重(N)、d:粒子径(mm)
ここで、圧壊強度とは、破壊点に到達したときの試験力(P)を上記強度算出式にあてはめて算出した値である。
また、10%圧縮強度とは、微小圧縮試験機により測定した粒子径の10%変位時の試験力(P)を上記強度算出式にあてはめて算出した強度である。比較例1のごとく破壊点が認められない粒子の場合は圧壊強度が求まらないため10%圧縮強度で代替する。
【0014】
<球状粒子率y>
球状粒子率はSEM観察で、炭素一次粒子100個程度が確認できる視野に倍率を設定し、その視野内で認められる無作為に選んだ30個の炭素一次粒子に占める、球状炭素粒子の数を計測して算出する。
球状粒子率y=球状炭素粒子数/30
【0015】
<総強度xy>
本発明における総強度とは、炭素一次粒子の圧壊強度x(MPa)に球状粒子率yを乗じた値である。
【0016】
<球状炭素粒子>
本発明の球状炭素粒子は、その総強度が50MPa以上である。好ましくは、200MPa以上、より好ましくは、300MPa以上である。
総強度を50MPa以上とすることで、リチウムイオン二次電池用負極炭素材料、高圧液体クロマトグラフィー用カラム充填剤、セラミックハニカム構造体に用いる造孔剤、研磨剤といった高い圧力がかかる用途に好適に用いられる。
球状とは、破砕状と異なり、鋭いエッジを有しない形状を指す。このような鋭いエッジを有しない形状を有するため、本発明の炭素材料は振動や他の粒子との衝突による欠損を抑制できる上で好ましい。また、このような形状は全方向で強度が高くなり好ましい。
ここでいう球状とは上記のような鋭いエッジを有しない形状であればよいが、エッジを有しない形状の中でも、より真球に近いことが好ましい。具体的には、鉛直方向から炭素一次粒子を観察したときの最長径と最短径の比が1.0~3.0であることが好ましい。粒子の形状および最長径と最短径の比は光学顕微鏡や電子顕微鏡にて観察することにより確認できる。
なお本発明の球状炭素粒子の形状は原料由来であり、エッジを有しないアスペクト比1.0~3.0である原料粒子の形状を維持しているという特徴を有する。
【0017】
<球状炭素粒子の原料>
球状炭素粒子の原料としては、グルコースポリマーを用いることができ、α-1,4グリコシド結合、α-1,6グリコシド結合、β-1,3グリコシド結合からなるグルコースポリマー粒子が好ましく、α-1,4グリコシド結合、α-1,6グリコシド結合からなるグルコースポリマー粒子が最も好ましい。α-1,4グリコシド結合、α-1,6グリコシド結合からなるグルコースポリマー粒子としては、例えばデンプン粒子、アミロース粒子が挙げられる。
【0018】
<デンプン>
原料デンプンとしては、例えばコーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、えんどう豆澱粉、緑豆澱粉などが挙げられる。本発明においては、糊化により崩壊していないデンプン粒子が好ましい。さらに原料デンプンが加工デンプンであってもよい。当該加工方法については特に限定されないが、エーテル化、エステル化、架橋、α化、酸化、酵素処理、湿熱処理、乳化剤の添加、油脂加工、及びこれらの組合せからなる加工等を挙げる事ができる。またデンプンの原料植物としては、ジャガイモ、サツマイモ、トウモロコシ、コムギ、キャッサバ、コメ、サゴヤシ、エンドウ、緑豆が挙げられる。本発明においては、ジャガイモ、トウモロコシ、コメ、エンドウが好ましく、ジャガイモ、トウモロコシ、コメが最も好ましい。
【0019】
<アミロース>
原料アミロースは、デンプン中に存在する状態のアミロースでなく、デンプンから分離抽出して再結晶するか、酵素合成によって当該分野において公知の方法で作製され得る。好ましくは、公知の酵素合成法によって作製される。このような酵素合成法の例としては、グルカンホスホリラーゼを用いる方法が挙げられる。ホスホリラーゼは、加リン酸分解反応を触媒する酵素である。本発明においては、アミロース粒子が好ましい。
【0020】
<球状炭素粒子の製造方法>
総強度が50MPa以上の球状炭素粒子は、好ましくは乾燥減量7%以下の原料粒子(好ましくはデンプン粒子又はアミロース粒子)をヨウ素と共に、好ましくは100~200℃の温度範囲で加熱した後に、不活性ガス雰囲気下電気炉を用いて炭化することにより製造することができる。乾燥減量を7%以下とすることで原料粒子が溶融することもない。また、ヨウ素存在下で加熱温度を100℃以上とすることで脱水反応が進行しやすくなりその結果得られた球状炭素粒子の強度が高くなり、また200℃以下とすることでC=O結合の切断も起こりにくくなり総強度が50MPa以上の球状炭素粒子が得られることになる。
【0021】
<乾燥減量>
原料粒子の乾燥減量は、好ましくは7%以下である。より好ましくは6%以下であり、最も好ましくは3%以下である。原料の乾燥減量は、公知の方法で原料を乾燥させるか吸湿させることにより調整できる。原料の乾燥方法は、特に限定されないが、例えば熱風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などを用いることができ、それらの条件は適宜設定すればよい。
【0022】
<ヨウ素加熱処理の方法>
ヨウ素加熱処理の加熱処理装置は、腐食性を持つヨウ素を用いるために、容器はヨウ素に腐食されにくい材料を用いることが好ましい。具体的には、ガラス、ガラスライニング、セラミックス、レンガが好ましい。
【0023】
<ヨウ素加熱処理の加熱温度>
ヨウ素加熱処理の加熱温度は、好ましくは100~200℃、より好ましくは、130~190℃である。
【0024】
<ヨウ素加熱処理の加熱時間>
ヨウ素加熱処理の加熱時間は、好ましくは10分~144時間、より好ましくは、10分~72時間、最も好ましくは1時間~24時間である。
【0025】
<本発明の球状炭素粒子の用途>
本発明の球状炭素粒子は、リチウムイオン二次電池用負極炭素材料、高圧液体クロマトグラフィー用カラム充填剤、セラミックハニカム構造体に用いる造孔剤、研磨剤の原料として好適に用いることができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例、比較例における各物性の測定方法は以下の通りである。
1)乾燥減量(%)
原料粒子1gを105℃、2時間乾燥し、重量減少量を重量百分率で表した。
2)圧壊強度x(MPa)
微小圧縮試験機(商品名:MCT-510、株式会社島津製作所製)の炭化ケイ素平板を試料台として、炭素一次粒子を耳かき1杯程度散布し、付属の光学顕微鏡を用いて、炭素一次粒子1個の粒子径d1と水平方向の粒子径d2を測定し、d1とd2の平均値から粒子径(d)を算出した。
粒子径(d)=(d1+d2)÷2
次に、上記微小圧縮試験機の圧縮試験モードにて、平面圧子を用いて一定負荷速度で上記一次粒子を圧縮し圧壊強度を次式より測定した。粒子径及び圧壊強度の測定を1試料につき5回繰り返し、得られた5個の圧壊強度の平均を試料の圧壊強度とした。負荷速度は、荷重98mNまでで破壊する場合は1.5495mN/秒、荷重98mNより大きな荷重で破壊する場合は8.2964mN/秒とした。また測定温度は室温とした。
強度算出式:C=2.48P/(πd2)
C:強度(MPa)、P:荷重(N)、d:粒子径(mm)
比較例1のごとく破壊点が認められない粒子の場合は圧壊強度が求まらないため、10%圧縮強度を測定した。
3)球状粒子率y
キーエンス製マイクロスコープVHX-D510を用いたSEM観察において、炭素一次粒子100個程度が確認できる視野に倍率を設定し、その視野内で認められる無作為に選んだ30個の炭素一次粒子に占める球状炭素粒子の数を計測し、次式より球状粒子率を算出した。
球状粒子率y=球状炭素粒子数/30
4)総強度xy(MPa)
上記2)で算出した圧壊強度x(MPa)に上記3)で算出した球状粒子率yを乗じて、総強度xy(MPa)を算出した。
【0027】
(実施例1)
先ず送風定温乾燥器を用いて120℃で30分間乾燥し、乾燥減量2.7重量%に調整したコーンスターチ(三和澱粉工業製)約20gをヨウ素2gと共にナス型フラスコに投入し、ナス型フラスコ内にヨウ素が滞留し続ける程度に開放したロータリーエバポレーターへ装着した後、オイルバスを用いて160℃で1時間撹拌しながら加熱処理を行った。次いで不活性ガス雰囲気下電気炉を用いて800℃1時間加熱しコーンスターチ粒炭化物を得た。この炭化物は球状炭素粒子であり総強度351MPaであり高強度であった。
【0028】
(実施例2)
120℃で15分間乾燥し、乾燥減量を6.0重量%としたコーンスターチを原料に用いた以外は実施例1と同様にしてコーンスターチ粒炭化物を得た。
【0029】
(実施例3)
ヨウ素と共に190℃で10分撹拌しながら加熱処理した以外は実施例1と同様にしてコーンスターチ粒炭化物を得た。
【0030】
(実施例4)
ヨウ素と共に100℃で144時間撹拌しながら加熱処理した以外は実施例1と同様にしてコーンスターチ粒炭化物を得た。
【0031】
(実施例5)
50℃で4日間減圧乾燥することにより乾燥減量5.4重量%に調整した米澱粉(上越スターチ製)約20gを磁製るつぼに投入し、るつぼをオイルバスに入れたガラスビーカー内に設置し、ガラスビーカーにヨウ素を投入し、ガラスビーカー内にヨウ素が滞留し続ける程度に開放しつつ150℃で24時間静置して加熱処理した。次いで不活性ガス雰囲気下電気炉を用いて800℃1時間加熱し米澱粉粒炭化物を得た。
【0032】
(実施例6)
55℃で16時間減圧乾燥することにより乾燥減量6.5重量%に調整した馬鈴薯澱粉(小清水町農業協同組合製)約10gを磁製るつぼに投入し、るつぼをガラス容器内に設置し、ガラス容器にヨウ素を投入し、ガラス容器を開放した状態で定温乾燥器を用いて170℃で3時間静置し加熱処理した。次いで不活性ガス雰囲気下電気炉を用いて800℃1時間加熱し馬鈴薯澱粉粒炭化物を得た。
【0033】
(実施例7)
乾燥減量4.6重量%の酵素合成アミロース(ピーエスバイオテック製)約20gをヨウ素と共に130℃で72時間静置しながら加熱処理した以外は実施例5と同様にしてアミロース粒炭化物を得た。
【0034】
(比較例1)
乾燥減量12.5重量%のコーンスターチ(三和澱粉工業製)1gをヨウ素と共に容積200mLのガラス容器に減圧密閉した後、120℃で6時間静置して加熱処理を行った。次いで不活性ガス雰囲気下電気炉を用いて800℃1時間加熱しコーンスターチ炭化物を得た。この炭化物は粉末状の外観を有するが粒子は圧壊強度を持たず10%圧縮強度は13MPaであった。これは実施例1で得られた球状炭素粒子の10%圧縮強度が175MPaであることに照らしても、かなりの低強度であるといえる。
【0035】
(比較例2)
原料の乾燥減量が3.3重量%のコーンスターチ(三和澱粉工業製)でありヨウ素を用いない以外は実施例1と同様にしてコーンスターチ炭化物を得た。この炭化物は完全に溶融したため破砕状であり球状でなかった。
【0036】
(比較例3)
ヨウ素と共に210℃で5分撹拌しながら熱処理した以外は実施例1と同様にしてコーンスターチ炭化物を得た。この炭化物は大部分が溶融し球状粒子率0.1とごくわずかであった。
【0037】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の球状炭素粒子は、リチウムイオン二次電池用負極炭素材料、高圧液体クロマトグラフィー用カラム充填剤、セラミックハニカム構造体に用いる造孔剤、研磨剤の原料として有用である。