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特許7535278オゾン含有組成物及びオゾン含有組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】オゾン含有組成物及びオゾン含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20240808BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20240808BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20240808BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
A01N59/00 A
A01P7/04
A01P7/02
A01N25/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023192158
(22)【出願日】2023-11-10
【審査請求日】2023-11-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508206210
【氏名又は名称】株式会社E・テック
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英一
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である揮発性油性溶媒と、
全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である揮発性水性溶媒と、
オゾンと、
を含有するオゾン含有組成物であって、
前記揮発性油性溶媒は、沸点が170度であり親油性である揮発性流動パラフィン、沸点が170度~200度の範囲内であり親油性である揮発性シリコーンオイル、又は、前記揮発性流動パラフィンと前記揮発性シリコーンオイルの混合物であり、
前記揮発性流動パラフィンは、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン及び水添ポリイソブテンからなる群から選択された1種又は2種以上の揮発性流動パラフィンであり、
前記揮発性シリコーンオイルは、環状ジメチルシリコーンオイルを含む揮発性シリコーンオイルであり、
前記揮発性水性溶媒は、沸点が150度以下であり親水性であるとともに親油性を有する揮発性アルコール、沸点が150度以下であり親水性であるとともに親油性を有する揮発性ケトン、又は、前記揮発性アルコールと前記揮発性ケトンの混合物であり、
前記揮発性アルコールは、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ペンタノールのいずれかを含み、
前記揮発性ケトンは、メチルエチルケトン、2-ヘキサノンのいずれかを含む、
殺虫用、害虫忌避用、又は、抗がん剤の除染・分解用のオゾン含有組成物。
【請求項2】
前記揮発性油性溶媒の濃度が、全組成物に対して30重量%~90重量%の範囲内であり、
前記揮発性水性溶媒の濃度が、全組成物に対して10重量%~70重量%の範囲内である、
請求項1に記載のオゾン含有組成物。
【請求項3】
本オゾン含有組成物に、過酸化水素水を含む酸化剤、還元剤、アルカリ性剤、酸性剤のいずれかの添加物を更に含有する、
請求項1に記載のオゾン含有組成物。
【請求項4】
全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である揮発性油性溶媒と、
全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である揮発性水性溶媒と、
オゾンと、
を所定の混合槽に、オゾン含有組成物の混合物として入れて混合する混合工程と、
前記混合槽内の混合物を所定の撹拌機で攪拌する攪拌工程と、
を備えるオゾン含有組成物の製造方法であって、
前記揮発性油性溶媒は、沸点が170度であり親油性である揮発性流動パラフィン、沸点が170度~200度の範囲内であり親油性である揮発性シリコーンオイル、又は、前記揮発性流動パラフィンと前記揮発性シリコーンオイルの混合物であり、
前記揮発性流動パラフィンは、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン及び水添ポリイソブテンからなる群から選択された1種又は2種以上の揮発性流動パラフィンであり、
前記揮発性シリコーンオイルは、環状ジメチルシリコーンオイルを含む揮発性シリコーンオイルであり、
前記揮発性水性溶媒は、沸点が150度以下であり親水性であるとともに親油性を有する揮発性アルコール、沸点が150度以下であり親水性であるとともに親油性を有する揮発性ケトン、又は、前記揮発性アルコールと前記揮発性ケトンの混合物であり、
前記揮発性アルコールは、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ペンタノールのいずれかを含み、
前記揮発性ケトンは、メチルエチルケトン、2-ヘキサノンのいずれかを含む、
殺虫用、害虫忌避用、又は、抗がん剤の除染・分解用のオゾン含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン含有組成物及びオゾン含有組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、オゾン(オゾンガス)は、非常に強力な殺菌力を有することで知られており、その殺菌力は、細菌の細胞膜又は核酸の破壊に起因する。そのため、オゾンは、一般的な消毒剤、抗生物質と比較して、耐久性の高い芽胞形成菌を含むあらゆる細菌を不活化(死滅)させることが可能であり、耐性菌を発生させないという特徴がある。
【0003】
本発明者は、このようなオゾンの特徴を用いて、オゾンを含有する消毒剤や殺菌剤を独自開発し、特許出願し、権利化している。例えば、特表2009-525974号公報(特許文献1)には、流動パラフィン又はワセリンにオゾンを混入させながら撹拌してオゾンを含有させることによって、殺菌力が与えられた消毒剤であって、オゾンを含む消毒剤が開示されている。又、特開2013-234132号公報(特許文献2)には、シリコーンオイル中にオゾンを気泡として吹き込みながら、当該シリコーンオイルを撹拌することで、シリコーンオイルに、オゾンを微細気泡として含有させて殺菌力を与えたオゾン含有シリコーンオイルが開示されている。更に、特開2015-071586号公報(特許文献3)には、揮発性流動パラフィン、揮発性シリコーンオイル又はこれらの混合物を基剤として含有する揮発性溶媒にオゾンガスを吹き込ませながら当該揮発性溶媒を撹拌することで、当該揮発性溶媒にオゾンガスを含有させ、本消毒剤を所定の対象物に塗布した場合に、当該対象物上の病原体を不活化させた後に、当該対象物から揮発する揮発性消毒剤が開示されている。
【0004】
一方、消毒や殺菌の用途の他に、上述のオゾンの特徴を用いて、害虫の駆除・殺虫の開発や医療現場で取り扱われている抗がん剤の除染・分解が進められている。例えば、特開平05-170610号公報(特許文献4)には、オゾン暴露により害虫を駆除する方法が開示されている。ここでは、0.2ppm以上の濃度のオゾンまたは該オゾンと微量の窒素酸化物との暴露により、ゴキブリ、ダニ、白アリ、ノミ、シラミ、蝿、蚊などの家屋害虫や不快害虫と称される害虫を駆除することが出来るとしている。又、オゾン発生手段とオゾン分解手段とを備えた害虫の駆除装置により、効率的に害虫駆除を行うことが出来るとしている。
【0005】
又、特開2019-208864号公報(特許文献5)には、ガス充填空間内で殺菌、病害虫防除効果を有する殺菌又は病害虫防除ガスに青果物を暴露させることにより、青果物に対する殺菌又は病害虫防除を行うための殺菌又は病害虫防除システムが開示されている。このシステムは、記憶部と、選択指定受付部と、決定処理部と、制御処理部と、を備える。記憶部は、殺菌又は病害虫防除ガスのガス濃度と、殺菌又は病害虫防除ガスに対する青果物の暴露時間との組合せを殺菌又は病害虫防除条件として青果物の種類ごとに記憶する。選択指定受付部は、青果物の種類の選択、及び、暴露時間又はガス濃度の指定を受け付ける。決定処理部は、選択指定受付部により選択が受け付けられた青果物の種類に対応する殺菌又は病害虫防除条件を記憶部から読み出し、選択指定受付部により指定が受け付けられた暴露時間に対応するガス濃度、又は、選択指定受付部により指定が受け付けられたガス濃度に対応する暴露時間を決定する。制御処理部は、殺菌又は病害虫防除ガスを発生させ、ガス充填空間内を決定処理部により決定されたガス濃度で維持、又は、決定処理部により決定された暴露時間だけ青果物を殺菌又は病害虫防除ガスに暴露するように制御を行う。殺菌又は病害虫防除ガスが、オゾンガスである。これにより、青果物に対し、殺菌、病害虫防除効果を有する殺菌又は病害虫防除ガスを用いて、青果物の損傷が生じないガス濃度又は暴露時間で十分な殺菌又は病害虫防除効果を得ることが出来るとしている。
【0006】
又、再表2019-073996号公報(特許文献6)には、界面活性剤水溶液を用いて加湿された環境においてオゾンガスを作用させて有害物を分解または殺菌する有害物処理方法が開示されている。この有害物は、抗がん剤であり、使用される界面活性剤としては非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤又は両性界面活性剤が挙げられる。これにより、オゾンガス単独では、分解等が容易ではない有害物等を分解し、または有害微生物の無害化を促進することが出来るとしている。
【0007】
又、再表2014-208428号公報(特許文献7)には、オゾンを含み加湿手段により加湿された空気を作用させて抗がん剤を分解する抗がん剤分解方法が開示されている。これにより、調剤時等に外部(安全キャビネット、調剤室等)に飛散した抗がん剤から医療従事者を保護することが出来るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2009-525974号公報
【文献】特開2013-234132号公報
【文献】特開2015-071586号公報
【文献】特開平05-170610号公報
【文献】特開2019-208864号公報
【文献】再表2019-073996号公報
【文献】再表2014-208428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、害虫の殺虫や駆除には、気体、液体、固体状の薬剤が使用されているが、この薬剤は、通常、人体に対する悪影響があるという課題がある。又、薬剤には、通常、残留性があるため、塗布後に残存した薬剤が外部環境に悪影響を及ぼすという課題がある。更に、オゾンを害虫に吹き付けても、害虫が死なない場合があり、オゾンだけでは、害虫の殺虫や駆除に役に立たないという課題がある。
【0010】
又、医療現場で取り扱われている抗がん剤の除染・分解も同様である。抗がん剤は、適切な投与による患者への薬理効果を有するものの、患者以外の医師、看護師、薬剤師等の医療従事者に健康障害をもたらす可能性がある。例えば、気化した抗がん剤の吸入曝露や、漏出した抗がん剤との接触による経皮曝露等によって、医療従事者が健康障害を発症するおそれがあり、消化器症状や循環器症状等の急性症状を引き起こしたり、抗がん剤が有する慢性毒性(発がん性等)によってがん発症につながったりする。そのため、実際の現場では、医療重視者が所定の手順に従って慎重に抗がん剤の調剤や投与、廃棄を行っているが、これらの対応は十分では無いという課題がある。又、一般的な抗がん剤の除染・分解に用いる処理剤は、抗がん剤に塗布後に残存したり、塗布対象を汚染したりするという課題がある。ここで、特許文献1-7に記載の技術では、上述の課題を解決することが出来ない。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、殺虫効果、害虫忌避効果、抗がん剤の除染・分解等の効果を有し、人体に安全で、塗布後の後処理を容易にすることが可能なオゾン含有組成物及びオゾン含有組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るオゾン含有組成物は、揮発性油性溶媒と、揮発性水性溶媒と、オゾンと、を含有する。揮発性油性溶媒は、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン及び水添ポリイソブテンからなる群から選択された1種又は2種以上の揮発性流動パラフィンと、環状ジメチルシリコーンオイルを含む揮発性シリコーンオイル、又は、これらの混合物であり、全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である。揮発性水性溶媒は、揮発性アルコール、揮発性ケトン、又は、これらの混合物であり、全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である。
【0013】
本発明に係るオゾン含有組成物の製造方法は、混合工程と、攪拌工程と、を備える。混合工程は、揮発性油性溶媒と、揮発性水性溶媒と、オゾンと、を所定の混合槽に混合物として入れて混合する。攪拌工程は、前記混合槽内の混合物を所定の撹拌機で攪拌する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、殺虫効果、害虫忌避効果、抗がん剤の除染・分解等の効果を有し、人体に安全で、塗布後の後処理を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るオゾン含有組成物の製造方法を示す概念図である。
図2】実施例1における蚊の殺虫試験結果の一例を示す噴霧直後の正面写真と右側面写真と左側面写真である。
図3】参考例1と実施例1における防ダニ性試験結果の一例を示す写真である。
図4】実施例1-7と比較例1-2のオゾン含有組成物の各成分と評価結果の表である。
図5】実施例8-16のオゾン含有組成物の各成分と評価結果の表である。
図6】実施例17-27のオゾン含有組成物の各成分と評価結果の表である。
図7】実施例28-34のオゾン含有組成物の各成分と評価結果の表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
本発明者は、長年、オゾンを含有する消毒剤や殺菌剤について鋭意研究している。このような消毒剤や殺菌剤は、基本的に、オゾンを油性溶媒に溶解させて、油性溶媒中にオゾンを保持させ、油性溶媒を細菌に接触させることで、油性溶媒中のオゾンが細菌に接触して、細菌を不活化させる。
【0018】
ここで、本発明者は、このような消毒剤や殺菌剤を、害虫の殺虫や忌避へ応用を試みたが、害虫は、意外にも、親水性の性質が強く、オゾンを溶解させた油性溶媒を害虫に塗布しても、所望の殺虫効果、害虫忌避効果を得られないことが分かってきた。ここで、害虫等の昆虫は、肺を持たず、気管で酸素と二酸化炭素を直接交換して呼吸しているが、害虫へオゾンを吹きかけても、オゾンが害虫の気管へ適切に接触することが無いことから、害虫の呼吸を妨げるものでは無く、オゾンだけの害虫の殺虫や忌避は、困難であることが分かってきた。
【0019】
又、本発明者は、抗がん剤の除染・分解についても試みたところ、上述と同様に、抗がん剤も、親水性の性質を有していることから、オゾンを溶解させた油性溶媒を抗がん剤に塗布しても、抗がん剤の除染・分解の効果を得ることが出来なかった。
【0020】
そこで、本発明者は、油性溶媒と混合可能な水性溶媒を一定量追加したところ、驚くべきことに、油性溶媒中のオゾンが、水性溶媒を介して害虫の気管に接触して、殺虫効果や害虫忌避効果が生じることを発見した。又、抗がん剤の除染・分解も同様であり、油性溶媒中のオゾンが、水性溶媒を介して抗がん剤に接触して、抗がん剤の除染・分解等の効果が生じることを発見した。その結果、本発明者は、後述する実施例に基づいて、本発明を完成させたのである。
【0021】
即ち、本発明に係るオゾン含有組成物は、揮発性油性溶媒と、揮発性水性溶媒と、オゾンと、を含有する。ここで、揮発性油性溶媒は、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン及び水添ポリイソブテンからなる群から選択された1種又は2種以上の揮発性流動パラフィンと、環状ジメチルシリコーンオイルを含む揮発性シリコーンオイルであり、全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である。更に、揮発性水性溶媒は、揮発性アルコール、揮発性ケトン、又は、これらの混合物であり、全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である。
【0022】
ここで、揮発性流動パラフィンと揮発性シリコーンオイルとは、親油性であり、オゾンに対して安定している(酸化しない)。又、揮発性流動パラフィンの沸点は、約170度であり、揮発性シリコーンオイルの沸点は、170度~200度の範囲内であるため、揮発性流動パラフィンも揮発性シリコーンオイルも、大気に晒して暫く放置すると、揮発して乾燥する。そして、揮発性流動パラフィンのSP値{(cal/cm1/2}は、6.5~7.5の範囲内であり、揮発性シリコーンオイルのSP値{(cal/cm1/2}は、6.5~9.5の範囲内であり、揮発性流動パラフィンのSP値と揮発性シリコーンオイルのSP値は、一部重複しており、揮発性流動パラフィンは、揮発性シリコーンオイルと反応せずに均一に混合される。ここで、SP値(cal/cm1/2とは、(蒸発エネルギー/モル容積)1/2と定義され、物質の凝集力を反映するパラメータであり、SP値が近接又は重複する溶媒同士では、相溶性が良いことを意味する。上述のSP値は、Fedors法による推定値である。そして、本発明では、このような揮発性油性溶媒にオゾンを溶解させるのである。
【0023】
一方、揮発性水性溶媒の揮発性アルコールと揮発性ケトンとは、親水性であるとともに、親油性を有する。ここで、揮発性アルコールとは、沸点が約150度以下のアルコールを意味し、揮発性ケトンとは、沸点が約150度以下のケトンを意味する。又、揮発性アルコールのSP値{(cal/cm1/2}は、10.0~13.8の範囲内であり、揮発性ケトンのSP値{(cal/cm1/2}は、8.0~10.0の範囲内である。つまり、揮発性アルコールのSP値と揮発性ケトンのSP値は、一部重複し、且つ、揮発性流動パラフィンのSP値と揮発性シリコーンオイルのSP値に対しても一部重複している。そして、揮発性アルコールは、揮発性ケトンと反応せずに均一に混合されるとともに、揮発性アルコールと揮発性ケトンとは、揮発性流動パラフィンと揮発性シリコーンオイルと反応せずに均一に混合される。更に、揮発性アルコールと、揮発性ケトンとは、カルボン酸や脂肪酸と比較して、オゾンとの反応性が低い。そのため、本発明では、揮発性水性溶媒を揮発性油性溶媒とオゾンとに混合することで、全体として親水性の性質を付与して、害虫の気管や抗がん剤への接触性を高め、オゾンを抗がん剤や害虫へ有効に接触させることが可能となり、殺虫効果、害虫忌避効果や抗がん剤の除染・分解効果を得ることが出来るのである。
【0024】
又、揮発性油性溶媒の揮発性流動パラフィンと揮発性シリコーンオイルは、化粧品、食品添加物等に使用され、仮に、ユーザがこれらを吸引しても、人体に無害である。又、オゾンは、米国食品医薬品局(FDA)で食品添加物として認可されており、低濃度であれば、仮に、ユーザがこれを吸引しても、人体に無害である。更に、揮発性水性溶媒の揮発性アルコールと揮発性ケトンは、人体に影響する可能性が低いことから、全体として安全性を確保することが可能となる。そのため、本発明は、取り扱うユーザの健康を損ねることが無く、殺虫効果、害虫忌避効果や抗がん剤の除染・分解等の効果を発揮させることが出来る。
【0025】
ここで、揮発性油性溶媒と揮発性水性溶媒は、オゾンと殆ど反応しないため、例えば、本オゾン含有組成物を密封保管すれば、オゾンを不活化(酸化)させること無く、長期的に保管することが可能となる。
【0026】
このように、本発明に係るオゾン含有組成物は、衛生分野、医療分野、農業分野、酪農分野等において、殺虫効果、害虫忌避効果や抗がん剤の除染・分解等の効果を好適に得ることが出来るのである。尚、その他に、親水性を有する対象物で、オゾンにより分解を必要とする用途や分野にも適用可能である。
【0027】
ここで、オゾンの種類に特に限定は無く、例えば、オゾンと酸素との混合ガス、オゾンのみの単体ガス等を挙げることが出来る。混合ガスにおけるオゾンと酸素との混合比は、例えば、オゾンが50重量%-2重量%の範囲内であり、酸素が50重量%-98重量%の範囲内である。
【0028】
又、本オゾン含有組成物中のオゾンの濃度に特に限定は無く、例えば、殺虫効果、害虫忌避効果や抗がん剤の除染・分解等の効果の確実性と、人体への安全性から、本オゾン含有組成物に対して10ppm-500ppmの範囲内が好ましく、20ppm-400ppmの範囲内が更に好ましい。ここで、大気中のオゾンの濃度には、0.1ppm以下とする法的暴露規制(作業環境許容濃度)が存在するが、上述のオゾンの濃度の範囲内にすることで、揮発性溶媒とともに揮発する大気中のオゾンの濃度を、法的暴露規制の範囲内にして、人体への安全性を確保することが出来る。
【0029】
又、揮発性油性溶媒の揮発性流動パラフィンの種類に特に限定は無く、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン等の軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン(イソブテンとn-ブテンを共重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素の混合物)、水添ポリイソブテン(分岐脂肪族酸化水素の一つで、イソパラフィンを主体とする合成の液状油)等を挙げることが出来る。又、揮発性油性溶媒の揮発性シリコーンオイルの種類に特に限定は無く、例えば、環状ジメチルシリコーンオイル等を挙げることが出来る。又、揮発性流動パラフィンの構成に特に限定は無く、1種類の揮発性流動パラフィンであっても、2種類以上の揮発性流動パラフィンの混合物であっても構わない。又、揮発性シリコーンオイルの構成に特に限定は無く、1種類の揮発性シリコーンオイルであっても、2種類以上の揮発性シリコーンオイルの混合物であっても構わない。本明細書に記載の揮発性流動パラフィンと揮発性シリコーンオイルは、これら両方の意味を包含する。
【0030】
又、揮発性水性溶媒の揮発性アルコールの種類に特に限定は無く、沸点が約150度以下のアルコールを包含する。揮発性アルコールは、例えば、メタノール(沸点が約64度)、エタノール(沸点が約78度)、イソプロピルアルコール(沸点が約80度)、tert-ブチルアルコール(沸点が約82度)、アリルアルコール(沸点が約97度)、1-プロパノール(沸点が約97度)、1-プロピルアルコール(沸点が約97度)、2-ブタノール(沸点が約100度)、2-メチル-2-ブタノール(沸点が約102度)、3-ペンタノール(沸点が約116度)、1-ブタノール(沸点が約118度)、2-メトキシエタノール(沸点が約124度)、2-クロロエタノール(沸点が約128度)、3-メチル-1-ブタノール(沸点が約131度)、イソアミルアルコール(沸点が約131度)、イソペンチルアルコール(沸点が約131度)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点が約133度)、2-エトキシエタノール(沸点が約135度)、1-ペンタノール(沸点が約138度)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点が約150度)等を挙げることが出来る。
【0031】
又、揮発性水性溶媒の揮発性ケトンの種類に特に限定は無く、沸点が約150度以下のケトンを包含する。揮発性ケトンは、例えば、アセトン(2-プロパノン)(沸点が約56度)、メチルエチルケトン(2-ブタノン)(沸点が約80度)、メチルビニルケトン(3-ブテン-2-オン)(沸点が約81度)、メチルイソプロピルケトン(3-メチル-2-ブタノン)(沸点が約93度)、ジエチルケトン(3-ペンタノン)(沸点が約101度)、メチル-n-プロピルケトン(2-ペンタノン)(沸点が約102度)、メチル-n-ブチルケトン(2-ヘキサノン)(沸点が約128度)、アセチルアセトン(沸点が約141度)、ジ-n-プロピルケトン(沸点が約144度)、エチル-n-ブチルケトン(沸点が約148度)等を挙げることが出来る。
【0032】
又、揮発性油性溶媒の濃度は、全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内であれば、特に限定は無いが、例えば、全組成物に対して30重量%~90重量%の範囲内であると更に好ましい。これにより、揮発性油性溶媒に溶解させるオゾンの量を増やして、オゾンの効果を得ることが出来る。
【0033】
又、揮発性水性溶媒の濃度は、全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内であれば、特に限定は無いが、例えば、全組成物に対して10重量%~70重量%の範囲内であると更に好ましい。これにより、揮発性油性溶媒に溶解させるオゾンの量を増やして、オゾンの効果を得ることが出来る。
【0034】
又、揮発性水性溶媒に対する揮発性油性溶媒の混合重量比率(-)に特に限定は無い。ここで、揮発性水性溶媒に対する揮発性油性溶媒の混合重量比率が0.1に近い場合、揮発性水性溶媒に対して揮発性油性溶媒が多いことから、オゾンを溶解する溶媒が多くなり、オゾンによる酸化力が高いオゾン含有組成物になる。一方、揮発性水性溶媒に対する揮発性油性溶媒の混合重量比率が10.0に近い場合、揮発性水性溶媒に対して揮発性油性溶媒が少ないことから、揮発性水性溶媒が揮発性を促進し、揮発性が優れたオゾン含有組成物になる。殺虫効果、害虫忌避効果や抗がん剤の除染・分解等の効果を期待する場合は、揮発性水性溶媒に対する揮発性油性溶媒の混合重量比率(-)は、例えば、0.1~10.0の範囲内であると好ましく、0.3~10.0の範囲内であると更に好ましい。これにより、揮発性油性溶媒に溶解させるオゾンの量を増やして、オゾンの効果を得ることが出来る。
【0035】
又、本発明に係るオゾン含有組成物では、上述した成分の揮発性油性溶媒と揮発性水性溶媒とオゾンの他にも、本発明の作用効果を損なわない範囲で、添加剤を添加しても構わない。添加剤は、例えば、酸化剤、還元剤、アルカリ性剤、酸性剤、香料、溶媒、染料、安定化剤、pH調整剤、紫外線防止剤、酸化防止剤等を挙げることが出来る。
【0036】
ここで、添加剤の種類に特に限定は無いが、例えば、過酸化水素水、二酸化マンガン、硝酸等の酸化剤、鉄(II)イオン、水素化アルミニウムリチウム、亜硫酸塩、シュウ酸、ギ酸等の還元剤、水酸化ナトリウム等のアルカリ性剤、塩酸等の酸性剤、不揮発性流動パラフィン、不揮発性シリコーンオイル、シクロメチルハイドロジェンシリコンオイル、炭化水素類、イソパラフィン類、ミネラルスピリット、非環式炭化水素、環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、エステル、カルボン酸等を挙げることが出来る。非環式炭化水素は、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等を挙げることが出来る。環式炭化水素は、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等を挙げることが出来る。ハロゲン化炭化水素は、塩化メチレン、塩化エチル、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン等を挙げることが出来る。エーテルは、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等を挙げることが出来る。エステルは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、γ-ブチロラクトン等を挙げることが出来る。カルボン酸は、酢酸等を挙げることが出来る。又、イソホロン、オレイン酸等の二重結合を含む溶媒等を挙げることが出来る。
【0037】
又、本発明に係るオゾン含有組成物の使用態様に特に限定は無い。ここで、揮発性油性溶媒も揮発性水性溶媒も、流動性に富むことから、本オゾン含有組成物を対象物にそのまま塗布しても、噴霧しても、浸漬しても構わない。又、本オゾン含有組成物をガーゼ等の布に浸み込ませて、対象物に貼り付けても良い。更に、本オゾン含有組成物を高圧ガス(圧縮ガス、液化ガス)とともにエアゾール容器(スプレー容器)に充填してエアゾール製品として使用しても良い。又、本オゾン含有組成物を希釈した希釈物を使用しても構わない。
【0038】
又、本発明に係るオゾン含有組成物の対象となる害虫の種類に特に限定は無く、害虫全般に対して適用可能である。害虫は、例えば、カ、ダニ、ノミ、シラミ、ハエ、ハチ、アブ、ゴキブリ、アリ、クモ、カメムシ等を挙げることが出来る。
【0039】
又、本発明に係るオゾン含有組成物の対象となる抗がん剤の種類に特に限定は無く、抗がん剤全般に対して適用可能である。抗がん剤は、例えば、アルキル化薬、代謝拮抗薬、白金化合物、トポイソメラーゼ阻害薬、微小管阻害薬、抗生物質等を挙げることが出来る。アルキル化薬は、例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、メルファラン等のナイトロジェンマスタード類、ニムスチン、ラニムスチン、カルムスチン、ストレプトゾシン等のニトロソウレア類を挙げることが出来る。又、代謝拮抗薬は、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、シタラビン、テガフール等のピリミジン拮抗薬、6-メルカプトプリン、フルダラビン、ネララビン、ペントスタチン等のプリン拮抗薬、メソトレキセート、ペメトリキセナトリウム等の葉酸拮抗薬を挙げることが出来る。白金化合物は、シスプラチン、カルボプラチン、ミリプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン等を挙げることが出来る。トポイソメラーゼ阻害薬は、エトポシド、イリノテカン、ノギテカン、ソブゾキサン等を挙げることが出来る。微小管阻害薬は、パクリタキセル、ドセタキセル等のタキサン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシ等のビンアルカロイド、エリブリンメシル酸等のエリブリンを挙げることが出来る。抗生物質は、ドキソルビシン、マイトマイシン、ダウノマイシン等のアントラサイクリン系、アクチノマイシンD、ブレオマイシン等を挙げることが出来る。
【0040】
次に、本発明に係るオゾン含有組成物の製造装置と製造方法について説明する。本発明に係るオゾン含有組成物の製造装置10は、図1に示すように、発生部11と、混合槽12と、供給部13と、撹拌機14とを備える。発生部11は、オゾンを発生させる。混合槽12は、揮発性油性溶媒と揮発性水性溶媒との両方の揮発性溶媒12aを収容する。供給部13は、混合槽12内の揮発性溶媒12aにオゾン12bを吹き込む。撹拌機14は、オゾン12bを吹込み中の揮発性溶媒12aを撹拌することで、当該揮発性溶媒12aにオゾン12bを含有させる。
【0041】
ここで、発生部11がオゾン12bを発生させる方法は、例えば、無声放電法、電解法、光反応法、高周波電解法、固体高分子電解法等を採用することが出来る。又、発生部11として、オゾン12bを封入したオゾンボンベをそのまま用いても構わない。
【0042】
又、供給部13がオゾン12bを吹き込む方法は、例えば、図1に示すように、長尺の供給管12cの末端部12dを揮発性溶媒12a内の底面にそのまま配置したり、末端部12dに、封入された気体を微細気泡として放出する多孔性物質の散気管12eを装着したりする方法を採用することが出来る。
【0043】
又、撹拌機14が揮発性溶媒12aを混合槽12で撹拌する方法は、例えば、図1に示すように、所定の撹拌翼14aを所定の回転速度で回転させたり、マグネチックスターラーのように、磁力を利用して攪拌子を回転させたりする方法を採用することが出来る。又、揮発性溶媒12aに入れた所定の振動子を振動させたり、揮発性溶媒12aに所定の超音波発生器で超音波を照射させたりして、オゾン12bを撹拌して微細化しても良い。
【0044】
又、揮発性溶媒12a中のオゾン12bの濃度は、オゾン12bの吹き込み時間と比例関係であるため、通常は、吹き込み時間(sec)を調整することで、目標のオゾン12bの濃度(目標濃度)を得ることが出来る。
【0045】
又、本発明に係るオゾン含有組成物の製造方法は、上述した製造装置10を用いて、揮発性油性溶媒と、揮発性水性溶媒と、オゾンと、を混合槽12に混合物として入れて混合する混合工程と、混合槽12内の混合物を所定の撹拌機14で攪拌する攪拌工程と、を備える。これにより、本発明のオゾン含有組成物を製造することが出来る。
【0046】
ここで、本発明に係るオゾン含有組成物の製造方法について、上述の他に、例えば、予め揮発性油性溶媒にオゾンを含有させておき、混合工程は、オゾンを含有した揮発性油性溶媒と、揮発性水性溶媒と、を混合槽12に混合物として入れて混合することで、揮発性油性溶媒と揮発性水性溶媒とオゾンとを混合しても構わない。又、例えば、予め揮発性水性溶媒にオゾンを含有させておき、混合工程は、オゾンを含有した揮発性水性溶媒と、揮発性油性溶媒と、を混合槽12に混合物として入れて混合することで、揮発性油性溶媒と揮発性水性溶媒とオゾンとを混合しても構わない。更に、例えば、混合工程は、揮発性油性溶媒と、オゾンと、を混合槽12に混合物として入れて混合し、その後に、揮発性水性溶媒を追加して混合しても構わない。揮発性油性溶媒と揮発性水性溶媒とオゾンとの混合順序に特に限定は無い。
【実施例
【0047】
以下に、本発明における実施例、比較例等を具体的に説明するが、本発明の適用が本実施例などに限定されるものではない。
【0048】
(オゾン含有組成物の製造)
図1に示す製造装置を用いて、本発明に係るオゾン含有組成物を製造した。図4図7の表に示すように、各成分を混合して、実施例1-34と比較例1-2のオゾン含有組成物を製造した。表中の数値は、濃度(重量%)を示す。又、成分のうち、オゾンの濃度は、吹き込み時間を調整することで、10ppm-500ppmの範囲内とした。
【0049】
(評価方法)
次に、製造したオゾン含有組成物の性能評価を行った。性能評価の項目は、(1)蚊の殺虫試験、(2)殺ダニ性試験、(3)防ダニ性試験、(4)パクリタキセル除染試験、(5)5-フルオロウラシル除染試験、(6)揮発性試験である。
【0050】
(1)蚊の殺虫試験
内径が20cm、長さが43cmのガラス製円筒を横に置き、一方の開口部をナイロンメッシュ布で塞ぎ、他方の開口部を袖付きのナイロンメッシュ布で塞いだ。この円筒の内部に供試害虫の蚊を所定数(約60匹)投入して、袖付きのナイロンメッシュ布から内部に向かって、オゾン含有組成物を5秒間直接噴霧した。噴霧から5分後と60分後のそれぞれにおいて、円筒から蚊をガラスシャーレに移し、死亡した蚊をカウントした。死亡数から投入数を除算した除算値を蚊の死亡割合(%)として算出し、以下の基準によってランク付けをした。「〇」と「◎」の評価が製品として合格である。図2は、実施例1における蚊の殺虫試験結果の一例を示す噴霧直後の正面写真と右側面写真と左側面写真とである。
【0051】
<基準>
◎:蚊の死亡割合が75%~100%の場合
○:蚊の死亡割合が50%~75%の場合
△:蚊の死亡割合が25%~50%の場合
×:蚊の死亡割合が0%~25%の場合
【0052】
(2)殺ダニ性試験
長さ10cmと幅5cmのろ紙にオゾン含有組成物の液体を0.5mL均一に滴下し、このろ紙を二つ折りにして5cm×5cmの大きさにし、その折った部分の中に供試害虫の生ダニを所定数(数十匹)投入して、折り目以外の三方をクリップで完全に密封する。それから24時間経過後に、クリップを外し、生ダニを顕微鏡で観察し、死亡した生ダニをカウントした。死亡数から投入数を除算した除算値を蚊の死亡割合(%)として算出し、以下の基準によってランク付けをした。「〇」と「◎」の評価が製品として合格である。
【0053】
<基準>
◎:蚊の死亡割合が75%~100%の場合
○:蚊の死亡割合が50%~75%の場合
△:蚊の死亡割合が25%~50%の場合
×:蚊の死亡割合が0%~25%の場合
【0054】
(3)防ダニ性試験
オゾン含有組成物の液体を滴下した直径40mmのろ紙をシャーレに配置して、その中央部に供試害虫のダニ飼育用培地50mg(約250匹)を直径約3cmで展開した。又、シャーレに近接する中央の空きシャーレにダニ飼育用培地を配置した。シャーレの周囲に飽和食塩水を浸し、25度に保持し、24時間放置した。その後、ダニの移動状況を観察した。移動後のダニ(ダニ飼育用培地)の直径から移動前のダニの直径(約3cm)を除算した除算値をダニの忌避割合(%)として算出し、以下の基準によってランク付けをした。「〇」と「◎」の評価が製品として合格である。図3は、参考例1と実施例1における防ダニ性試験結果の一例を示す写真である。参考例1は、コントロールを示し、オゾンを含有しない揮発性油性溶媒と揮発性水性溶媒の混合物である。図3に示すように、防ダニ性試験では、参考例1のダニの直径は約3cmの円形で示されており、移動前のダニの直径とほぼ同じである。一方、実施例1のダニの直径は1cm以下の円形で示されており、ダニに忌避効果のあるオゾン含有組成物の液体では、ダニの直径が小さくなることを示している。
【0055】
<基準>
◎:ダニの忌避割合が0%~25%の場合
○:ダニの忌避割合が25%~50%の場合
△:ダニの忌避割合が50%~75%の場合
×:ダニの忌避割合が75%から100%を超える場合
【0056】
(4)パクリタキセル除染試験
ステンレスパッドに、パクリタキセルを10μL滴下し、そこに、水を15mL濡らした清掃用ワイプで一回拭き取り、更に、オゾン含有組成物の液体を噴霧する、又は、オゾン含有組成物を濡らしたワイプで一回拭き取った。その後、そこに250μLの抽出溶液を滴下後、その溶液をろ紙で二回拭き取った。そして、拭き取り後のろ紙を検査用チューブに入れて、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)で残留後のパクリタキセルの濃度(ng/mL)を算出し、以下の基準によってランク付けをした。「〇」と「◎」の評価が製品として合格である。
【0057】
<基準>
◎:残留後のパクリタキセル濃度が0.00ng/mL~0.05ng/mLの場合
○:残留後のパクリタキセル濃度が0.05ng/mL~0.30ng/mLの場合
△:残留後のパクリタキセル濃度が0.30ng/mL~0.50ng/mLの場合
×:残留後のパクリタキセル濃度が0.50ng/mL~の場合
【0058】
(5)5-フルオロウラシル除染試験、
(4)パクリタキセル除染試験と同様である。ステンレスパッドに、5-フルオロウラシル(5-FU)を10μL滴下し、そこに、水を15mL濡らした清掃用ワイプで一回拭き取り、更に、オゾン含有組成物の液体を噴霧する、又は、オゾン含有組成物を濡らしたワイプで一回拭き取った。その後、そこに250μLの抽出溶液を滴下後、その溶液をろ紙で二回拭き取った。そして、拭き取り後のろ紙を検査用チューブに入れて、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)で残留後の5-FU濃度(ng/mL)を算出し、以下の基準によってランク付けをした。「〇」と「◎」の評価が製品として合格である。
【0059】
<基準>
◎:残留後の5-FU濃度が0.00ng/mL~0.05ng/mLの場合
○:残留後の5-FU濃度が0.05ng/mL~0.30ng/mLの場合
△:残留後の5-FU濃度が0.30ng/mL~0.50ng/mLの場合
×:残留後の5-FU濃度が0.50ng/mL~の場合
【0060】
(6)揮発性試験
オゾン含有組成物の液体をガラス板に所定量(約1mL、スプレー一吹き分の量)だけ滴下して、その後、25度に保持して放置し、滴下から10分後にオゾン含有組成物の液体の乾燥具合を観察した。10分後のオゾン含有組成物の液体の重量から滴下量を除算した除算値を乾燥割合(%)として算出し、以下の基準によってランク付けをした。「〇」と「◎」の評価が製品として合格である。
【0061】
<基準>
◎:乾燥割合が0%~25%の場合
○:乾燥割合が25%~50%の場合
△:乾燥割合が50%~80%の場合
×:乾燥割合が80%~100%の場合
【0062】
(評価結果)
評価結果を確認すると、図4に示すように、比較例1では、揮発性油性溶媒とオゾンを含有しているが、揮発性水性溶媒が含有されていないため、オゾンが害虫の気管又は抗がん剤へ適切に接触していないためか、(1)蚊の殺虫試験、(2)殺ダニ性試験、(3)防ダニ性試験、(4)パクリタキセル除染試験、(5)5-フルオロウラシル除染試験の評価結果のいずれも「△」であり、製品として不合格であった。又、比較例2では、揮発性水性溶媒とオゾンを含有しているが、揮発性油性溶媒が含有されていないため、オゾン自体が液体に溶解されず、(1)蚊の殺虫試験、(2)殺ダニ性試験、(3)防ダニ性試験、(4)パクリタキセル除染試験、(5)5-フルオロウラシル除染試験の評価結果のいずれも「×」であり、製品として不合格であった。
【0063】
一方、実施例1-7では、揮発性油性溶媒と揮発性水性溶媒の濃度を特定の濃度範囲とすると、(1)蚊の殺虫試験、(2)殺ダニ性試験、(3)防ダニ性試験、(4)パクリタキセル除染試験、(5)5-フルオロウラシル除染試験の評価結果は、「〇」又は「◎」であった。(6)揮発性試験の評価結果は、「〇」又は「◎」であり、製品として合格であった。
【0064】
次に、図5に示すように、実施例8-16では、揮発性油性溶媒の種類を軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、水添イソブテン、環状ジメチルシリコーンオイルのいずれか、又はこれらの混合物としても、(1)蚊の殺虫試験、(2)殺ダニ性試験、(3)防ダニ性試験、(4)パクリタキセル除染試験、(5)5-フルオロウラシル除染試験の評価結果は、「◎」であり、(6)揮発性試験の評価結果は、「〇」であり、製品として合格であった。
【0065】
又、図6に示すように、実施例17-27では、揮発性水性溶媒の種類を揮発性アルコール(イソプロパノール、エタノール、1-ペンタノール)、揮発性ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、2-ヘキサノン)のいずれか、又はこれらの混合物としても、(1)蚊の殺虫試験、(2)殺ダニ性試験、(3)防ダニ性試験、(4)パクリタキセル除染試験、(5)5-フルオロウラシル除染試験の評価結果は、「◎」であり、(4)揮発性試験の評価結果は、「〇」であり、製品として合格であった。
【0066】
更に、図7に示すように、実施例28-34では、揮発性油性溶媒と揮発性水性溶媒とオゾンを含有し、更に、添加物として、過酸化水素、水酸化ナトリウムのアルカリ性剤、塩酸の酸性剤、香料、色素のいずれかを添加しても、(1)蚊の殺虫試験、(2)殺ダニ性試験、(3)防ダニ性試験、(4)パクリタキセル除染試験、(5)5-フルオロウラシル除染試験の評価結果は、「◎」であり、(4)揮発性試験の評価結果は、「〇」であり、製品として合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように、本発明に係るオゾン含有組成物及びオゾン含有組成物の製造方法は、殺虫や害虫忌避の分野や抗がん剤の除染・分解の分野に限らず、衛生分野、医療分野、農業分野、酪農分野等に有用であり、殺虫効果、害虫忌避効果、抗がん剤の除染・分解等の効果を有し、人体に安全で、塗布後の後処理を容易にすることが可能なオゾン含有組成物及びオゾン含有組成物の製造方法として有効である。
【符号の説明】
【0068】
10 製造装置
11 発生部
12 混合槽
12a 揮発性溶媒
12b オゾン
13 供給部
14 撹拌機

【要約】
【解決手段】本発明に係るオゾン含有組成物は、揮発性油性溶媒と、揮発性水性溶媒と、オゾンと、を含有する。揮発性油性溶媒は、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン及び水添ポリイソブテンからなる群から選択された1種又は2種以上の揮発性流動パラフィンと、環状ジメチルシリコーンオイルを含む揮発性シリコーンオイル、又は、これらの混合物であり、全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である。揮発性水性溶媒は、揮発性アルコール、揮発性ケトン、又は、これらの混合物であり、全組成物に対して10重量%~90重量%の範囲内の濃度である。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7