(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】レーザ加工用治具及びこれを有するレーザ加工装置、レーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/70 20140101AFI20240808BHJP
B23K 26/382 20140101ALI20240808BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/382
(21)【出願番号】P 2024041782
(22)【出願日】2024-03-16
【審査請求日】2024-04-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304053979
【氏名又は名称】株式会社共伸
(74)【代理人】
【識別番号】100144358
【氏名又は名称】藤掛 宗則
(72)【発明者】
【氏名】太田 明雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 真作
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129685(JP,A)
【文献】特開平4-262889(JP,A)
【文献】特開2016-74001(JP,A)
【文献】特開2013-753(JP,A)
【文献】特開2014-100720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B23K 26/382
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシストガスの供給とともにレーザ光を照射してパイプ材に貫通孔を形成するレーザ加工に用いるレーザ加工用治具であって、
前記パイプ材の管内で挿抜可能に内接し、且つ、当該パイプ材の長さよりも相対的に長く形成された柱状部を有し、
前記柱状部には、前記形成する貫通孔の幅よりも相対的に幅広に、且つ、少なくとも前記パイプ材の長手方向の端部から相対的に距離が長い方の前記貫通孔の端部位置までの距離を超える長さの溝部が形成されることを特徴とする、
レーザ加工用治具。
【請求項2】
前記柱状部の前記溝部は、当該溝部の端部が前記パイプ材の長手方向における前記貫通孔の一方の端部位置から、当該貫通孔の他方の端部位置に向けて当該端部が管内を移動して当該パイプ材の端部にまで到達することができる長さに形成されることを特徴とする、
請求項1に記載のレーザ加工用治具。
【請求項3】
レーザ加工用治具を用いて、アシストガスの供給とともにレーザ光を照射してパイプ材に貫通孔を形成するレーザ加工方法であって、
前記レーザ加工用治具は、前記パイプ材の管内で挿抜可能に内接し、且つ、当該パイプ材の長さよりも相対的に長く形成された柱状部を有し、
前記柱状部には、前記形成する貫通孔の幅よりも相対的に幅広に、且つ、少なくとも前記パイプ材の長手方向の端部から相対的に距離が長い方の前記貫通孔の端部位置までの距離を超える長さの溝部が形成されており、
前記貫通孔を形成する際に供給されるアシストガスが、前記レーザ加工用治具の溝部を通過して前記パイプ材の端部から排出可能となるように当該レーザ加工用治具を挿入する工程、
前記レーザ加工用治具が前記パイプ材に挿入された状態で、前記アシストガスの供給とともに前記レーザ光を照射して当該パイプ材に貫通孔を形成する工程、
前記貫通孔が形成された後に、前記レーザ加工用治具の溝部の端部が前記パイプ材の長手方向における当該貫通孔の一方の端部位置から、当該貫通孔の他方の端部位置に向けて当該端部が管内を移動し当該パイプ材の端部にまで到達するまで当該レーザ加工用治具をさらに押し込む工程、とを有することを特徴とする、
レーザ加工方法。
【請求項4】
アシストガスの供給とともにレーザ光を照射してパイプ材に貫通孔を形成するレーザ加工に用いるレーザ加工装置であって、
前記アシストガスを供給する供給手段と、
前記レーザ光を照射するレーザ照射手段と、
前記パイプ材の管内で挿抜可能に内接し、且つ、当該パイプ材の長さよりも相対的に長く形成された柱状部を有し、この柱状部を介して当該パイプ材を保持する保持手段と、
前記パイプ材に対して前記保持手段を挿入又は抜去する挿抜手段と、を有し、
前記保持手段の前記柱状部には、前記形成する貫通孔の幅よりも相対的に幅広に、且つ、少なくとも前記パイプ材の長手方向の端部から相対的に距離が長い方の前記貫通孔の端部位置までの距離を超える長さの溝部が形成されることを特徴とする、
レーザ加工装置。
【請求項5】
前記保持手段の前記溝部は、当該溝部の端部が前記パイプ材の長手方向における前記貫通孔の一方の端部位置から、当該貫通孔の他方の端部位置に向けて当該端部が管内を移動して当該パイプ材の端部にまで到達することができる長さに形成されることを特徴とする、
請求項4に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ材に貫通孔(貫通穴)を形成するレーザ加工に用いるレーザ加工用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプ材に貫通孔(貫通穴)を形成するレーザ加工の分野では、従来からパイプ材の内面に溶融金属付着、焦げ、キズ、又一部へこみや貫通穴等が発生して品質や生産性の低下という課題を抱えている。
【0003】
例えば特許文献1では、被加工素材に対してレーザ加工を行う際にこの被加工素材を支持する被加工素材固定用治具が開示されている。被加工素材は、レーザ加工によって肉厚方向に貫通するように加工される貫通加工予定部を備えており、被加工素材固定用治具の被加工素材を支持する支持面には、被加工素材の貫通加工予定部に対応する位置に凹部が形成されている、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図6(a)、(b)は、従来のパイプ材に貫通孔(貫通穴)を形成するレーザ加工の一例を示す図である。従来のレーザ加工では、パイプ材の内面に溶融金属付着、焦げ、キズ、又一部へこみや貫通穴等が発生するという問題が残る。そのため、後工程のブラストや電解研磨、化学研磨に多大な工数を要していた。また、それらの工程を経ても取り切れない溶融金属やキズへこみ穴などがある物は、選別され廃棄となってしまう。また、これらの問題により全数確認が必要となり生産性が著しく低下するという課題が残る。
これらの点は特許文献1に開示された被加工素材固定用治具であっても解消されない課題である。
【0006】
本発明は、パイプ材に貫通孔(貫通穴)を形成するレーザ加工における生産性向上及び品質向上のためのレーザ加工用治具を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はアシストガスの供給とともにレーザ光を照射してパイプ材に貫通孔を形成するレーザ加工に用いるレーザ加工用治具であって、前記パイプ材の管内で挿抜可能に内接し、且つ、当該パイプ材の長さよりも相対的に長く形成された柱状部を有し、前記柱状部には、前記形成する貫通孔の幅よりも相対的に幅広に、且つ、少なくとも前記パイプ材の長手方向の端部から相対的に距離が長い方の前記貫通孔の端部位置までの距離を超える長さの溝部が形成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明はレーザ加工用治具を用いて、アシストガスの供給とともにレーザ光を照射してパイプ材に貫通孔を形成するレーザ加工方法であって、前記レーザ加工用治具は、前記パイプ材の管内で挿抜可能に内接し、且つ、当該パイプ材の長さよりも相対的に長く形成された柱状部を有し、前記柱状部には、前記形成する貫通孔の幅よりも相対的に幅広に、且つ、少なくとも前記パイプ材の長手方向の端部から相対的に距離が長い方の前記貫通孔の端部位置までの距離を超える長さの溝部が形成されており、前記貫通孔を形成する際に供給されるアシストガスが、前記レーザ加工用治具の溝部を通過して前記パイプ材の端部から排出可能となるように当該レーザ加工用治具を挿入する工程、前記レーザ加工用治具が前記パイプ材に挿入された状態で、前記アシストガスの供給とともに前記レーザ光を照射して当該パイプ材(被加工素材)に貫通孔を形成する工程、前記貫通孔が形成された後に、前記レーザ加工用治具の溝部の端部が前記パイプ材の長手方向における当該貫通孔の一方の端部位置から、当該貫通孔の他方の端部位置に向けて当該端部が管内を移動し当該パイプ材の端部にまで到達するまで当該レーザ加工用治具をさらに押し込む工程、とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明はアシストガスの供給とともにレーザ光を照射してパイプ材に貫通孔を形成するレーザ加工に用いるレーザ加工装置であって、前記アシストガスを供給する供給手段と、前記レーザ光を照射するレーザ照射手段と、前記パイプ材の管内で挿抜可能に内接し、且つ、当該パイプ材の長さよりも相対的に長く形成された柱状部を有し、この柱状部を介して当該パイプ材を保持する保持手段と、前記パイプ材に対して前記保持手段を挿入又は抜去する挿抜手段と、を有し、前記保持手段の前記柱状部には、前記形成する貫通孔の幅よりも相対的に幅広に、且つ、少なくとも前記パイプ材の長手方向の端部から相対的に距離が長い方の前記貫通孔の端部位置までの距離を超える長さの溝部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パイプ材に貫通孔(貫通穴)を形成するレーザ加工における生産性向上及び品質向上のためのレーザ加工用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)、(b)は、本実施形態に係るレーザ加工用治具を用いてレーザ加工するパイプ材(被加工素材)の一例を説明するための図。
【
図2】(a)~(d)は、レーザ加工用治具の構成の一例を説明するための図。
【
図3】パイプ材の管内にレーザ加工用治具の柱状部が挿入された状態でレーザ加工を行っている状態の一例を示す概略縦断面図。
【
図4】(a)、(b)、(c)は、レーザ加工用治具を用いて行うレーザ加工の特徴の一つを説明するための図。
【
図5】本実施形態に係るレーザ加工装置の構成の一例を説明するための図。
【
図6】(a)、(b)は、従来の加工方法の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係るレーザ加工用治具及びこれを有するレーザ加工装置、レーザ加工方法の実施形態を説明する。なお、以下の説明においてはレーザ加工用治具の構成の特徴を中心に説明を進める。
【0013】
また、本実施形態に係る説明では一例として、円筒形のパイプ材の長手方向に楕円形の貫通孔(貫通穴)を形成するレーザ加工を挙げて説明をする。
なおレーザ加工とは、レーザ光の熱作用及び噴射ガスのアシスト(アシストガス)によって材料を切断する加工法である。加工ヘッドからレーザ光が材料表面に照射されると、材料表層部で波長吸収され電子振動を起こし発火点昇温し赤色スポットや溶融池、さらにクレーター形成される。そしてアシストガスの噴流でクレーターは深くなりレーザ光は板厚方向へ貫通する。この状態から加工ヘッドの移動、又は、材料の移動、あるいは両方を移動させて連続的な形状切断を行う、というものである。
【0014】
[実施形態例]
図1は、本実施形態に係るレーザ加工用治具を用いてレーザ加工するパイプ材10(被加工素材10)の一例を説明するための図である。
図1(a)は正面図(左側)と側面図(右側)であり、
図1(b)は
図1(a)に示すA-A線断面図である。
なお、パイプ材10は、例えば板厚が0.05[mm]~2.0[mm]程度であり、ステンレス、鉄、銅、チタン素材で形成された被加工素材である。
【0015】
ここで本実施形態に係るレーザ加工用治具を用いたレーザ加工では、
図1に示すように、パイプ材10に幅W、長さLの楕円形の貫通孔11が形成されるものとする。
また、一例として、後述するレーザ加工用治具100の柱状部100bは、
図1に示すパイプ材10の長手方向右側から左側に向かって当該パイプ材10の管内に挿入されるものとする。
なお、レーザ加工用治具100の柱状部100bは、レーザ加工が終了した後にさらにパイプ材10の長手方向右側から左側に向かって当該パイプ材10の管内でさらに押し込まれる。詳細は後述する。
【0016】
また、レーザ加工による貫通孔11の加工開始位置は、
図1に示す貫通孔11の位置Pを加工が開始される位置とする場合を例に挙げて説明を進める。
また、加工開始位置Pから
図1に示すパイプ材10の長手方向左側端部までの距離は距離Mとして説明を進める。
【0017】
図2は、本実施形態に係るレーザ加工用治具100の構成の一例を説明するための図である。
図2(a)は、レーザ加工用治具100の長さ方向の側面図であり、
図2(b)は、長さ方向の正面図である。
図2(c)は、パイプ材10に対してレーザ加工が開始されるときの当該パイプ材10の管内にレーザ加工用治具100(柱状部100b)が挿入されている様子を示す模式図である。
図2(d)は、パイプ材10に対してレーザ加工が終了し、当該パイプ材10の長手方向右側から左側に向かってさらにレーザ加工用治具100(柱状部100b)が押し込まれたときの様子を示す模式図である。
以下、
図2を用いて本実施形態に係るレーザ加工用治具100の具体的な構成の一例について説明する。
【0018】
レーザ加工用治具100は、
図2(a)~(d)に示すように、パイプ材10の管内で挿抜可能に内接し、且つ、当該パイプ材10の長さよりも相対的に長く形成された柱状部100bを有する。
また、柱状部100bには、形成する貫通孔11の幅Wよりも相対的に幅広に、且つ、少なくとも当該貫通孔11の加工開始位置Pから当該パイプ材10の端部までの距離Mを超える長さNの溝部100aが形成される。
【0019】
換言すると柱状部100bには、形成する貫通孔の幅よりも相対的に幅広に、且つ、少なくともパイプ材10の長手方向の端部から相対的に距離が長い方の貫通孔11の端部位置P(本例では加工開始位置P)までの距離Mを超える長さNの溝部100aが形成されることになる。
【0020】
柱状部100bの溝部100aは、
図2(d)に示すように、パイプ材10に形成される貫通孔11の加工開始位置P側の溝部100aの端部100cがパイプ材10の管内を移動し、当該パイプ材10の端部にまで到達することができる長さに形成される。
つまり、パイプ材10の加工開始位置Pを基準に、加工開始位置Pからパイプ材10の端部までの距離Mに対して、溝部100aの長さNが相対的に長くなるように溝部100aを形成する。
【0021】
換言すると柱状部100bの溝部100aは、この溝部100aの端部100cがパイプ材10の長手方向における貫通孔11の一方の端部位置から、当該貫通孔11の他方の端部位置に向けて溝部100aの端部100cが管内を移動して当該パイプ材10の端部にまで到達することができる長さに形成されることになる。
【0022】
図3は、パイプ材10の管内にレーザ加工用治具の柱状部100bが挿入された状態でレーザ加工を行っている状態の一例を示す概略縦断面図である。
図3に示す加工ヘッドHは、レーザ光の熱作用及び噴射ガスのアシスト(アシストガス)によって材料を切断するための機構である。
また、パイプ材10は、
図3に示すように、その管内に柱状部100bが挿入された状態、つまりレーザ加工用治具100によりパイプ材10が保持された状態でレーザ加工が実行される。
【0023】
レーザ加工用治具100を用いて、アシストガスの供給とともにレーザ光を照射してパイプ材10(被加工素材)に貫通孔11を形成する本実施形態に係るレーザ加工方法は、貫通孔11を形成する際に供給されるアシストガスが、レーザ加工用治具100の溝部100aを通過してパイプ材10の端部から排出可能となるように当該レーザ加工用治具100を挿入する。
【0024】
そして、レーザ加工用治具100がパイプ材10に挿入された状態で、アシストガスの供給とともにレーザ光を照射して当該パイプ材10に貫通孔11を形成する。
【0025】
そして、貫通孔11が形成された後に、レーザ加工用治具100の溝部100aの端部100cがパイプ材10の長手方向における貫通孔11の一方の端部位置から、当該貫通孔11の他方の端部位置に向けて端部100cが管内を移動し当該パイプ材10の端部にまで到達するまで当該レーザ加工用治具100をさらに押し込む。このようにしてパイプ材10に貫通孔11が形成される。この点について以下説明する。
【0026】
図4は、本実施形態に係るレーザ加工用治具100を用いて行うレーザ加工の特徴の一つを説明するための図である。
図4(a)は、貫通孔11を形成する際に供給されるアシストガスが、レーザ加工用治具100の溝部100aを通過してパイプ材10の端部から排出可能となるように当該レーザ加工用治具100が挿入されている様子の一例を示す概略縦断面図である。
【0027】
前述したように、レーザ加工用治具100の柱状部100bには、形成する貫通孔11の幅Wよりも相対的に幅広に、且つ、少なくとも当該貫通孔11の加工開始位置Pから当該パイプ材10の端部までの距離Mを超える長さNの溝部100aが形成されている。
【0028】
これにより、
図4(a)に示すように、貫通孔11を形成する際に供給されたアシストガスは溝部100aを通過してパイプ材10の端部から排出できることになり、パイプ材10外への溶融金属の排出が可能になる。また、パイプ材10の内側へ柱状部100bを挿入してレーザ加工を行うことで、照射されるレーザ光を遮光することが可能となり、反加工面のキズ、へこみ、貫通穴の発生を防止することができる。
【0029】
図4(b)は、貫通孔11を形成する際に生じたカットカス(抜きカス)12、ドロス13(バリ等含む)、管内に付着した溶融金属14などレーザ加工終了時の様子の一例を示す概略縦断面図である。
【0030】
図4(c)は、貫通孔11が形成された後に、レーザ加工用治具100の溝部100aの端部100cがパイプ材10の長手方向における貫通孔11の一方の端部位置から、当該貫通孔11の他方の端部位置に向けて端部100cが管内を移動し当該パイプ材10の端部にまで到達するまで当該レーザ加工用治具100をさらに押し込んだときの様子の一例を示す概略縦断面図である。
【0031】
図4(b)に示す状態から
図4(c)に示す状態にレーザ加工用治具100を動作させる(あるいは、
図4(c)に示す状態になるようにパイプ材10を移動させる)ことで、柱状部100bのフラット面(溝部100a)とパイプ材10隙間に溶融金属14等が付着したとしても、レーザ加工用治具100(柱状部100b)が加工後に動作することでこれらを排出することができる。
また、貫通孔11の切断面内側にドロスやバリが出たとしてもレーザ加工用治具100(柱状部100b)の動作により削り取って排出することができる(
図4(c))。
【0032】
図5は、本実施形態に係るレーザ加工装置Sの構成の一例を説明するための図である。
なお、これまでに説明した構成については、同一の符号を付すとともにその説明を省略する。
レーザ加工装置Sは、レーザ光の熱作用及び噴射ガスのアシスト(アシストガス)によって材料を切断するための機構である加工ヘッドH、レーザ加工用治具100を動作させる駆動機構201、パイプ材10が載置される筐体200、制御部50を含んで構成される。
【0033】
加工ヘッドHは、レーザ加工の加工位置に向けてアシストガスを供給する供給手段として機能する。なお、アシストガスの供給開始又はその停止、単位時間当たりの供給量などは予め設定された条件などに基づいて主として制御部50により制御される。
【0034】
また加工ヘッドHは、レーザ加工の加工位置に向けてレーザ光を照射するレーザ照射手段として機能する。なお、レーザ光の照射開始又はその停止、単位時間当たりの照射量などは予め設定された条件などに基づいて主として制御部50により制御される。
【0035】
レーザ加工用治具100の柱状部100bは、パイプ材10を保持する保持手段として機能する。
駆動機構201は、パイプ材10に対して保持手段であるレーザ加工用治具100(柱状部100b)を挿入又は抜去する挿抜手段として機能する。なお、挿入又は抜去の動作の開始又はその停止、押し込み量などは予め設定された条件などに基づいて主として制御部50により制御される。
【0036】
このように本実施形態に係るレーザ加工用治具100(レーザ加工装置S、レーザ加工方法)は、パイプ材10に貫通孔11を形成する際に供給されたアシストガスが溝部100aを通過してパイプ材10の端部から排出することができる。これにより、パイプ材10外への溶融金属の排出が可能になる。
【0037】
また、パイプ材10の内側へレーザ加工用治具100の柱状部100bを挿入してレーザ加工を行うことで、照射されるレーザ光を遮光することが可能となり、反加工面のキズ、へこみ、貫通穴の発生を防止することができる。
【0038】
また、レーザ加工用治具100の柱状部100bのフラット面(溝部100a)とパイプ材10隙間に溶融金属14等が付着したとしても、レーザ加工用治具100(柱状部100b)が加工後に動作することでこれらを排出することができる。
【0039】
また、貫通孔11の切断面内側にドロスやバリが出たとしてもレーザ加工用治具100(柱状部100b)の動作により削り取って排出することができる。
【0040】
上記説明は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が、これらの例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0041】
例えば、レーザ加工用治具100の挿抜の方向や加工開始位置Pなどは任意に設定することができる。この設定に応じて、形成する貫通孔の幅よりも相対的に幅広に、且つ、少なくともパイプ材10の長手方向の端部から相対的に距離が長い方の貫通孔11の端部位置P(本例では加工開始位置P)までの距離Mを超える長さNの溝部100aが形成されるように柱状部100bを形成する。また、柱状部100bの溝部100aを、この溝部100aの端部100cがパイプ材10の長手方向における貫通孔11の一方の端部位置から、当該貫通孔11の他方の端部位置に向けて溝部100aの端部100cが管内を移動して当該パイプ材10の端部にまで到達することができる長さに形成する。これら条件を満たすようにレーザ加工用治具100を構成する。
【0042】
同様にまた、パイプ材の形状は円形のみならず例えば矩形であっても良い。その場合、レーザ加工用治具の柱状部も管内で挿抜可能に内接する形状に形成する。
【符号の説明】
【0043】
10・・・パイプ材、11・・・貫通孔、50・・・制御部、100・・・レーザ加工用治具、200・・・筐体、210・・・駆動機構、H・・・加工ヘッド、S・・・レーザ加工装置。
【要約】
【課題】パイプ材に貫通孔(貫通穴)を形成するレーザ加工における生産性向上及び品質向上のためのレーザ加工用治具を提供する。
【解決手段】アシストガスの供給とともにレーザ光を照射してパイプ材に貫通孔を形成するレーザ加工に用いるレーザ加工用治具は、パイプ材の管内で挿抜可能に内接し、且つ、当該パイプ材の長さよりも相対的に長く形成された柱状部を有する。レーザ加工用治具の柱状部には、形成する貫通孔の幅よりも相対的に幅広に、且つ、少なくともパイプ材の長手方向の端部から相対的に距離が長い方の貫通孔の端部位置までの距離を超える長さの溝部が形成される。
【選択図】
図2