(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】汚泥かき寄せ装置
(51)【国際特許分類】
B01D 21/18 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
B01D21/18 F
B01D21/18 A
(21)【出願番号】P 2020132056
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【氏名又は名称】倉澤 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【氏名又は名称】八木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康人
(72)【発明者】
【氏名】大塚 修史
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020319(JP,A)
【文献】特開2000-334216(JP,A)
【文献】特開2002-035506(JP,A)
【文献】特開2019-217503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け入れた水に含まれている汚泥が池底面に沈殿する沈殿池に設けられ、該池底面に沈殿した汚泥をかき寄せる汚泥かき寄せ装置において、
前記池底面に設けられたガイドレールと、
前記ガイドレールに接した摺接部材と、
前記池底面に沈殿した汚泥を、前記摺接部材を介して前記ガイドレールに沿って
前記池底面側で往復移動することでかき寄せる、内部空間が形成されたかき寄せ部材とを備え、
前記ガイドレールは、前記沈殿池の池幅方向の一部において、該池幅方向に直交する方向に延在したものであり、
前記かき寄せ部材は、前記池幅方向に延在したものであって、該池幅方向における前記ガイドレールがない領域では下面に前記内部空間に連通した開口部を有し、該内部空間に合成樹脂発泡体が配置されたものであり、
前記合成樹脂発泡体は、前記領域では、前記内部空間のうち、前記開口部に連通した下部空間の一部を除いた空間に配置されたものであることを特徴とする汚泥かき寄せ装置。
【請求項2】
前記かき寄せ部材は、該かき寄せ部材の往復移動方向に複数設けられたものであり、
前記往復移動方向に延在し、複数の前記かき寄せ部材が該往復移動方向に間隔をあけて下方に連結された連結部材を備え、
前記連結部材は、両端部が塞がれて気体溜りが設けられた中空のパイプ部材であることを特徴とする請求項1記載の汚泥かき寄せ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け入れた水に含まれている汚泥が池底面に沈殿する沈殿池に設けられ、該池底面に沈殿した汚泥をかき寄せる汚泥かき寄せ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
沈殿池の池底面に設けられたガイドレールに沿って往復移動するかき寄せ部材を備え、池底面に沈殿した汚泥を、かき寄せ部材が往復移動することで、往路方向に段階的にかき寄せていく、いわゆるレシプロ式の汚泥かき寄せ装置が知られている。本願出願人は、特許文献1において、ガイドレールとの摩擦を低減する目的で、ガイドレールとかき寄せ部材の間に、かき寄せ部材が往復移動する際にガイドレールと摺接する摺接部材を設けたレシプロ式の汚泥かき寄せ装置を提案している。この特許文献1に記載された汚泥かき寄せ装置では、ガイドレールを超高分子量ポリエチレン製のものにし耐摩耗性を高め、摺接部材の交換が容易になる工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は、特許文献1で開示した技術を用いた汚泥かき寄せ装置を施工し、実際に稼動していく中で、砂などの無機成分が多く含まれる汚泥をかき寄せる場合、無機成分がガイドレールに刺さり、その上を摺接部材が摺動することで、摺接部材の摩耗が予想以上に速く進む場合があることを知った。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、摺接部材の摩耗を抑える工夫がなされた汚泥かき寄せ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の汚泥かき寄せ装置は、
受け入れた水に含まれている汚泥が池底面に沈殿する沈殿池に設けられ、該池底面に沈殿した汚泥をかき寄せる汚泥かき寄せ装置において、
前記池底面に設けられたガイドレールと、
前記ガイドレールに接した摺接部材と、
前記池底面に沈殿した汚泥を、前記摺接部材を介して前記ガイドレールに沿って前記池底面側で往復移動することでかき寄せる、内部空間が形成されたかき寄せ部材とを備え、
前記ガイドレールは、前記沈殿池の池幅方向の一部において、該池幅方向に直交する方向に延在したものであり、
前記かき寄せ部材は、前記池幅方向に延在したものであって、該池幅方向における前記ガイドレールがない領域では下面に前記内部空間に連通した開口部を有し、該内部空間に合成樹脂発泡体が配置されたものであり、
前記合成樹脂発泡体は、前記領域では、前記内部空間のうち、前記開口部に連通した下部空間の一部を除いた空間に配置されたものであることを特徴とする。
さらに、
前記かき寄せ部材は、該かき寄せ部材の往復移動方向に複数設けられたものであり、
前記往復移動方向に延在し、複数の前記かき寄せ部材が該往復移動方向に間隔をあけて下方に連結された連結部材を備え、
前記連結部材は、両端部が塞がれて気体溜りが設けられた中空のパイプ部材であることを特徴としてもよい。
また、
受け入れた水に含まれている汚泥が池底面に沈殿する沈殿池に設けられ、該池底面に沈殿した汚泥をかき寄せる汚泥かき寄せ装置において、
前記池底面に設けられたガイドレールと、
前記ガイドレールに接した摺接部材と、
前記池底面に沈殿した汚泥を、前記摺接部材を介して前記ガイドレールに沿って往復移動することでかき寄せる、内部空間が形成されたかき寄せ部材とを備え、
前記かき寄せ部材は、前記内部空間に比重が1以下の物質を有するものであることを特徴としてもよい。
【0007】
本発明の汚泥かき寄せ装置によれば、前記かき寄せ部材に浮力が付与されるため、前記摺接部材にかかる面圧が軽減され、摺接部材の摩耗が抑えられる。
【0008】
なお、前記物質は、空気であってもよい。あるいはポリエチレンやポリプロピレンであってもよい。
【0009】
また、
前記かき寄せ部材は、前記内部空間に合成樹脂発泡体が配置されたものであることを特徴としてもよい。
【0010】
前記合成樹脂発泡体は、発泡スチロールであってもよい。
【0011】
また、
前記合成樹脂発泡体は、独立気泡を有するものであることを特徴としてもよい。
【0012】
また、
前記ガイドレールは、前記沈殿池の池幅方向の一部において、該池幅方向に直交する方向に延在したものであり、
前記かき寄せ部材は、前記池幅方向に延在したものであって、該池幅方向における前記ガイドレールがない領域では下面に前記内部空間に連通した開口部を有するものであり、
前記合成樹脂発泡体は、前記領域では、前記内部空間のうち、前記開口部に連通した下部空間の一部又は全部を除いた空間に配置されたものであることを特徴としてもよい。
【0013】
前記開口部から、前記下部空間のうち前記合成樹脂発泡体が配置されていない空間に、前記池底面に沈殿した汚泥が入り込み、該池底面に沈殿した汚泥が攪拌されることになる。この結果、前記領域における、前記かき寄せ部材の下面と前記池底面の間で汚泥が長時間滞留し、汚泥が腐敗することを防ぐことができる。
【0014】
なお、前記合成樹脂発泡体は、前記内部空間に充填されたものであって、底面が上方に切り欠かれた切欠部を有するものであってもよい。この切欠部によって、前記下部空間の一部又は全部が確保される。また、前記合成樹脂発泡体は、前記内部空間のうち前記開口部近傍の領域を除いた部分に充填されたものであってもよい。さらに、前記合成樹脂発泡体は、前記内部空間のうち、前記開口部に連通した下部空間の一部又は全部を除いた空間全てに充填されている必要はない。
【0015】
さらに、
前記かき寄せ部材は、該かき寄せ部材の往復移動方向に複数設けられたものであり、
前記往復移動方向に延在し、複数の前記かき寄せ部材が該往復移動方向に間隔をあけて連結された連結部材を備え、
前記連結部材は、両端部が塞がれた中空のパイプ部材であることを特徴としてもよい。
【0016】
こうすることで、前記連結部材にも浮力が付与される。
【0017】
なお、前記かき寄せ部材を往復移動させる駆動力を発生する駆動部と、複数の前記かき寄せ部材のうちの一部の該かき寄せ部材の上方に位置し、前記駆動力を前記連結部材に伝達する伝達部材とを備える場合には、前記伝達部材も、両端部が塞がれた中空のパイプ部材であってもよい。こうすることで、前記伝達部材にも浮力が付与される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、摺接部材の摩耗を抑える工夫がなされた汚泥かき寄せ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態である汚泥かき寄せ装置が設置された沈殿池の側断面図である。
【
図2】
図1に示す沈殿池を上方からみた平面図である。
【
図3】(a)は、
図2において円で囲んだA部を拡大して示す図であり、(b)は、
図2のB-B断面図である。
【
図5】(a)は
図3(b)に示すかき寄せ部材の内部空間から発泡スチロールを取り除いた状態を示す図であり、(b)は(a)に示すかき寄せ部材の内部空間に発泡スチロールを挿入した状態を示す図である。
【
図6】ガイドレールに沿って往復移動するかき寄せ部材を模式的に示した斜視図である。
【
図7】本実施形態の汚泥かき寄せ装置全体を示す平面図である。
【
図9】
図1、
図2および
図7を用いて説明した汚泥かき寄せ装置とは全体の構成が異なる汚泥かき寄せ装置が設置された沈殿池を上方からみた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の汚泥かき寄せ装置は、沈殿池の池底面に設けられたガイドレールに沿って往復移動するかき寄せ部材を備えた、いわゆるレシプロ式の汚泥かき寄せ装置である。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である汚泥かき寄せ装置10が設置された沈殿池9の側断面図である。
図2は、
図1に示す沈殿池9を上方からみた平面図である。
図1および
図2では、沈殿池9の長手方向(図では左右方向)の中央部分を省略して示している。
【0022】
図1および
図2に示す沈殿池9は、上流壁9aと、下流壁9cと、一対の側壁9dによって囲まれた、平面視で略長方形状をした池である。この沈殿池9は、
図1では左側にある導水渠9eから汚水や雨水といった下水を受け入れ、受け入れた下水に含まれる汚泥を池底面9fに沈殿させ、
図1では右側から排水する。以下、
図1および
図2における左側を上流側と称し、
図1および
図2における右側を下流側と称する。
【0023】
図1および
図2に示すように、この沈殿池9には、本実施形態の汚泥かき寄せ装置10と汚泥ピット91が設けられている。汚泥ピット91は、沈殿池9における上流側に設けられている。また、
図1において紙面に直交する方向、および
図2における上下方向を池幅方向と称する。なお、沈殿池9の池底面9fは、上流側に向かうに従って沈殿池9の水深が増加するように少しだけ傾斜した傾斜面になっている。また、汚泥ピット91にかき寄せられた汚泥は、図示しない汚泥ポンプによって沈殿池9の外部に排出される。
【0024】
本実施形態の汚泥かき寄せ装置10は、池底面9fに固定されたガイドレール2と、複数のかき寄せ部材3と、複数のかき寄せ部材3を連結した連結ロッド4(
図2参照)と、かき寄せ部材3を往復移動させる駆動ロッド5と、駆動ロッド5に駆動力を付与する駆動機構6と、かき寄せ部材3を駆動ロッド5や連結ロッド4に固定する固定機構7とを備えている。
【0025】
図1に示すように、駆動機構6は、モータ61と、モータ61の回転駆動力を往復動作に変換する変換機62と、変換機62の出力軸に一端が固定された往復ロッド63と、往復ロッド63の下端に取り付けられた三角形状リンク64と、三角形状リンク64を回転自在に支持したリンク支持体65と、三角形状リンク64と駆動ロッド5を連結する連結パイプ66とを備えている。なお、
図2では、連結パイプ66以外の駆動機構6を構成する部材は図示省略している。
【0026】
図1に示すように、モータ61は、地上に配置されている。モータ61の一方向の回転駆動力は、変換機62によって、往復ロッド63を上下動させる駆動力に変換される。往復ロッド63が上下動すると、三角形状リンク64は矢印Pの方向に揺動する。三角形状リンク64が揺動すると、連結パイプ66によって三角形状リンク64に連結された駆動ロッド5が、池底面9fに固定されたガイドレール2に沿って上流側と下流側との間で往復移動する。すなわち、往復ロッド63が下方向に駆動すると、三角形状リンク64は、上流側へ向けて揺動し、駆動ロッド5が上流側へ進出する。反対に、往復ロッド63が上方向に駆動すると、三角形状リンク64は、下流側へ向けて揺動し、駆動ロッド5が下流側へ後退する。駆動ロッド5には、複数のかき寄せ部材3が固定されている。駆動ロッド5が往復移動することで、各かき寄せ部材3は、ガイドレール2に沿って上流側と下流側との間で往復移動する。以下、かき寄せ部材3が往復移動する方向を、往復移動方向と称するが、この往復移動方向は、沈殿池9の長手方向である。
【0027】
各かき寄せ部材3は、その往復移動方向に均等あるいは略均等の間隔で配置されている。かき寄せ部材3それぞれは、沈殿池9の池幅方向に延在したものである。かき寄せ部材3の往復移動のストロークは、かき寄せ部材3が配置された往復移動方向の間隔以上の距離に設定されている。沈殿池9に沈殿した汚泥は、かき寄せ部材3の往復移動により汚泥ピット91側に1ストロークづつ段階的にかき寄せられ、汚泥ピット91に送り込まれる。
【0028】
ガイドレール2は、例えば超高分子量ポリエチレン製のものであり、
図2に示すように、沈殿池9の長手方向に延在している。言い換えれば、ガイドレール2は、池幅方向の一部において、池幅方向に直交する方向に延在したものである。本実施形態では、池幅方向中央部と池幅方向両端部の計3つのガイドレール2が沈殿池9の池底面9fに固定されている。駆動ロッド5は、池幅方向中央部に配置され、かき寄せ部材3の往復移動方向に延在している。また、連結ロッド4は、池幅方向両端部それぞれに1つずつ配置されている。駆動ロッド5および連結ロッド4は、1辺が100mmであって2mmの肉厚の中空四角柱形状のステンレス製のものであり、両端が塞がれている。したがって、駆動ロッド5にしても連結ロッド4にしても、内部に気体溜りが形成されたものである。また、連結ロッド4それぞれは、複数のかき寄せ部材3が配置された往復移動方向の全長にわたって延在し、固定機構7によって、複数のかき寄せ部材3それぞれが固定されている。これにより、連結ロッド4それぞれは、複数のかき寄せ部材3全てを連結している。各かき寄せ部材3が池幅方向両端側部分において連結ロッド4によって連結されているので、各かき寄せ部材3が池幅方向両側部分において一体化されてかき寄せ部材3全体として剛性が高まる。こうすることで、各かき寄せ部材3の池幅方向両端側部分が往復移動方向に撓んでしまったり、各かき寄せ部材3が池幅方向に対して傾斜してしまうことを抑制できる。かき寄せ部材3が撓んだり傾斜してしまうと、池幅方向端側に汚泥のかき残しが生じてしまう虞がある。駆動ロッド5は連結部材の一例に相当し、連結ロッド4も連結部材の一例に相当する。
【0029】
さらに、駆動ロッド5と連結ロッド4は、複数の連結バー41,42で連結されている。これら複数の連結バーは、2つの第1連結バー41,41と、2つの第2連結バー42,42とから構成されている。2つの第1連結バー41,41は、池幅方向に延在し、駆動ロッド5と連結ロッド4とをそれぞれ連結するものである。2つの第2連結バー42,42は、池幅方向両端側部分に配置されたそれぞれの連結ロッド4から下流側に向かうに従い駆動ロッド5側に傾斜したものである。これら複数の連結バー41,42は、
図2に示すように三角形状に配置されることで、駆動ロッド5と2つの連結ロッド4とを高い剛性をもって一体化している。さらに、駆動ロッド5の、連結パイプ66が取り付けられた箇所の近傍に、2つの第2連結バー42,42を固定している。三角形状に配置された連結バー41,42によって、駆動機構6から駆動ロッド5に伝達される駆動力が、効率的に連結ロッド4にも伝達され、駆動ロッド5が往復移動することで、2つの連結ロッド4も往復移動する。すなわち、2つの連結ロッド4は、かき寄せ部材3を往復移動させる機能も有する。三角形状に配置された連結バー41,42は、かき寄せ部材3の上方に位置し、駆動力を両端の連結ロッド4に伝達する伝達部材の一例に相当する。以下、三角形状に配置された連結バー41,42を総称して三角形状伝達部材40と称する。
【0030】
加えて、三角形状伝達部材40よりも上流側には、三角形状伝達部材40を構成する2つの第1連結バー41,41とは別の2つの第1連結バー41,41がさらに設けられており、駆動ロッド5と連結ロッド4が接続されている。以下、これら別の第1連結バー41,41のことを、下流側の接続部材41Lと称する。また、この下流側の接続部材41Lの池幅方向両端それぞれの近傍には、上下方向に延在した回転軸を持った下流側蛇行抑制ローラ81が取り付けられている。下流側蛇行抑制ローラ81は、池幅方向両端部に設置されたガイドレール2よりもさらに池幅方向外側に設けられており、往復移動するかき寄せ部材3が蛇行して外側に振れた場合に、固定機構7が下流側蛇行抑制ローラ81に衝突し、かき寄せ部材3の蛇行が抑制される。なお、往復移動する固定機構7が下流側蛇行抑制ローラ81に衝突すると、下流側蛇行抑制ローラ81は回転し、衝突の威力が軽減される。
【0031】
また、汚泥ピット91近傍になる上流側の端部にも、2つの第1連結バー41,41が設けられており、駆動ロッド5と連結ロッド4が接続されている。以下、上流側端部の第1連結バー41,41のことを、上流側の接続部材41Uと称する。さらに、この上流側の接続部材41Uの池幅方向両端それぞれの近傍には、下流側蛇行抑制ローラ81と同様な上流側蛇行抑制ローラ82が取り付けられており、かき寄せ部材3の蛇行が抑制される。
【0032】
図3(a)は、
図2において円で囲んだA部を拡大して示す図であり、
図3(b)は、
図2のB-B断面図である。
図4は、
図2のC-C断面図である。
【0033】
図3(b)に示すように、かき寄せ部材3は、上流側に面し、池底面9fに沈殿した汚泥を上流側(
図1および
図2に示す汚泥ピット91側)にかき寄せるかき寄せ面31と、かき寄せ面31の上端部分31aから下流側に向けて下方に傾斜した傾斜面32と、かき寄せ面31の下端部分31bから下流側に折り返された上流側折返し部33と、傾斜面32の下端部分から上流側に折り返された下流側折返し部34とを有し、内部空間ISが形成されたものである。
図3(b)に示す内部空間ISの一部には、独立気泡を有する発泡スチロールFSが配置されている。内部空間ISと発泡スチロールFSについての詳しい説明は後述する。
【0034】
また、かき寄せ部材3は、かき寄せ面31と傾斜面32との境界部分が頂部3aになり、傾斜面32と下流側折返し部34との境界部分が下流側端部3bになる。
【0035】
かき寄せ面31は、その上端部分31aと下端部分31bが上流側に張り出し、中央部分が下流側に凹んだ円弧状に形成されている。かき寄せ部材3が上流側に移動する際には、そのかき寄せ面31が汚泥を上流側にかき寄せる。一方、傾斜面32は、下流側に向かってかき寄せ部材3が先細になるように、池底面9f側に傾斜している。かき寄せ部材3が下流側に移動する際には、その傾斜面32を汚泥が乗り越えることで、かき寄せ面31でかき寄せられた位置に汚泥の大部分を留まらせることができる。このかき寄せ部材3は、曲げ加工したステンレス製の板で構成されている。
【0036】
図3および
図4に示すように、駆動ロッド5にかき寄せ部材3を固定する固定機構7は、一対のアングル71,71と、載置部材72と、押圧部材73とを有する。なお、連結ロッド4にかき寄せ部材3を固定する固定機構7は、駆動ロッド5にかき寄せ部材3を固定する固定機構7と同様の構成であるため説明を省略する。なお、
図4には、駆動ロッド5の内部に形成された気体溜りATが示されている。
【0037】
一対のアングル71それぞれは、ステンレス製のL形金具であり、上下方向に延在した姿勢で駆動ロッド5における池幅方向両側部分それぞれに溶接されている。なお、アングル71には、後述するボルト731を挿通する挿通孔71aが形成されている。
【0038】
図3(b)に示すように、載置部材72は、上流側部分に立ち上がった固定壁721と、この固定壁721の下端部分から下流側に延在しガイドレール2上に載置される摺接部722と、この摺接部722の下流側の端部から上流側の斜め上方に向けて突出した受部723とを有する。本実施形態の載置部材72は、いわゆるステンレス鋳物である。超高分子量ポリエチレン製のガイドレール2に比べて、ステンレス鋳物の摺接部722は耐摩耗性に劣るが、これは、交換作業に手間がかかるガイドレール2の摩耗を抑える目的がある。載置部材72の固定壁721は、
図4に示すように、一対のアングル71,71にわたって池幅方向に拡がった形状のものであり、
図3に示すように、アングル71の挿通孔71aに対応した位置に挿通孔721aが形成されている。
【0039】
図3(a)に示すように、摺接部722は、平面視略長方形状の部分であり、往復移動方向の長さが、かき寄せ部材3の往復移動方向の長さよりも長く形成されている。また、本実施形態では、摺接部722の池幅方向の長さは、駆動ロッド5の池幅方向の長さよりもやや長く形成されている。
図3(b)に示すように、摺接部722は、かき寄せ部材3が載置される部分である。具体的には、摺接部722の上面には、かき寄せ部材3の、上流側折返し部33と下流側折返し部34が載置される。この摺接部722は、かき寄せ部材3が往復移動する際にその下面がガイドレール2と摺接し、ガイドレール2との摩耗を低減する機能も有するものであり、摺接部材の一例に相当する。このため、ガイドレールとの摩擦を低減する例えばシュー等の別部材を別途設ける必要がない。また、摺接部722には、上方に突出した第2受部722aが形成されており、この第2受部722aは、摺接部722に載置されたかき寄せ部材3の上流側折返し部33が係止する部分である。かき寄せ面31には、汚泥を上流側にかき寄せる際に、上流側から下流側に向けて圧力がかかり、上流側折返し部33は下流側に向けて押される。第2受部722aは、下流側に向けて押される上流側折返し部33を、下流側から受けるものである。この第2受部722aにより、かき寄せ面31の位置が下流側にずれてしまうことが防止され、かき寄せ部材3を安定して固定することができる。
【0040】
受部723は、摺接部722との間に、かき寄せ部材3の下流側端部3bを含む下流側の部分が挿入されるように、かき寄せ面31に対応した傾斜姿勢に設けられている。なお、受部723には、補強用のリブ723aが設けられている。
【0041】
図3(a)および
図4に示すように、押圧部材73は、駆動ロッド5の池幅方向両側にそれぞれ設けられている。また、
図3(a)に示すように、押圧部材73それぞれが、ボルト731と、3つのナット732と、キャップ733と、ワッシャ734とを有する。本実施形態では、ボルト731、ナット732およびワッシャ734は、ステンレス製のものであり、キャップ733は、合成樹脂製のものである。なお、キャップ733は、円盤状の当接部733aを有する。
【0042】
図3(a)および同図(b)に示すように、ボルト731は、ナット732とワッシャ734が取り付けられた状態で、上流側から下流側に向けて、アングル71の挿通孔71aと固定壁721の挿通孔721aとに挿通されている。挿通孔71a,721aに挿通されたボルト731における、固定壁721の下流側には、ナット732が2つ取り付けられている。なお、これら2つのナット732は、ボルト731の緩み止めとして機能するいわゆるダブルナット構造である。これらのナット732とボルト731とによって載置部材72がアングル71に固定されている。また、挿通孔71a,721aに挿通されたボルト731の下流側の端部には、キャップ733が取り付けられている。キャップ733は、その当接部733aがかき寄せ面31に当接し、上流側から下流側に向けてかき寄せ面31を押圧している。本実施形態の押圧部材73は、かき寄せ面31における高さ方向の中央側の部分、すなわちかき寄せ面31における上端部分31aと下端部分31bとの間の部分を押圧している。ここで、押圧部材73が、かき寄せ面31における上端部分31aまたは下端部分31bのいずれか一方を押圧する態様としてもよいし、かき寄せ面31における上端部分31aおよび下端部分31bそれぞれを押圧する態様としてもよい。
【0043】
押圧部材73によって押圧され下流側に向けて押されるかき寄せ部材3は、載置部材72の受部723によって下流側から受けられる。具体的には、かき寄せ部材3における下流側の部分が受部723に当接し、かき寄せ部材3の下流側への動きが阻止される。すなわち、かき寄せ部材3は、受部723によって下流側への動きが阻止された状態で押圧部材73によって下流側に押圧されることで載置部材72に固定される。これにより、かき寄せ部材3が、固定機構7によって駆動ロッド5に固定される。
【0044】
以上説明した固定機構7では、ナット732を緩めボルト731を上流側に移動させることで、かき寄せ面31を押圧する押圧力が解除され、載置部材72からかき寄せ部材3を取り外すことができる。このため、かき寄せ部材が溶接等により駆動ロット等に固定されているような従来の汚泥かき寄せ装置と比べ、かき寄せ部材3の取り換え作業を容易に行うことができる。
【0045】
図5(a)は、
図3(b)に示すかき寄せ部材の内部空間から発泡スチロールを取り除いた状態を示す図である。
【0046】
かき寄せ部材3の下面3Uには開口3Hが設けられている。すなわち、上流側折返し部33と下流側折返し部34との間は離間しており、この間(
図5(a)に示す矢印参照)が開口3Hになる。開口3Hは、池幅方向に連続的に設けられたものであるが、
図3(b)に示すように、ガイドレール2の上に位置する部分では、固定機構7の摺接部722によって塞がれている。したがって、池幅方向に延在した開口3Hのうち、ガイドレール2が存在しない箇所に開口部3H1(
図6参照)が設けられていることになる。なお、開口3Hを画定する上流側の縁を上流側縁331と称し、同じく開口3Hを画定する下流側の縁を下流側縁341と称する。
【0047】
また、
図5(a)には、内部空間ISの領域が示されている。すなわち、開口3Hにつながった下部空間IS1と、下部空間IS1よりも上流側の上流下隅空間IS2と、下部空間IS1よりも下流側の下流下隅空間IS3と、下部空間IS1よりも上方の上部空間IS4それぞれが2点鎖線で区分けされて示されている。上流下隅空間IS2は、上流側折返し部33の真上の空間になり、下流下隅空間IS3は、下流側折返し部34の真上の空間になる。
【0048】
図5(b)は、同図(a)に示すかき寄せ部材の内部空間に発泡スチロールを挿入した状態を示す図である。
【0049】
発泡スチロールFSは、独立気泡を有するものであり、水に浮きやすい性質のものである。すなわち、比重が1以下の物質である。なお、発泡スチロールFSに代えて、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン等の合成樹脂発泡体を用いてもよい。あるいは、比重が1以下である、ソリッドのポリエチレンやポリプロピレンであってもよい。
【0050】
発泡スチロールFSは、かき寄せ部材3の長手方向の一端側から内部空間ISに挿入される。
図5(b)に示すかき寄せ部材3では、同図(a)を用いて説明した上部空間IS4に発泡スチロールFSが充填されており、内部空間ISのうち、上部空間IS4よりも下方の空間(下部空間IS1、上流下隅空間IS2および下流下隅空間IS3)は空いている。
【0051】
図6は、ガイドレールに沿って往復移動するかき寄せ部材を模式的に示した斜視図である。かき寄せ部材3は、固定機構7の摺接部722を介してガイドレール2に沿って往復移動するものであるが、
図6では、固定機構7を図示省略してある。
【0052】
図6には、1本のガイドレール2が示されている。このガイドレール2は、
図2に示す池幅方向中央部に設置されたガイドレールである。また、
図6には2本のかき寄せ部材3が示されているが、これら2本のかき寄せ部材3ともに、池幅方向中央部分のみが示されている。図の左斜め手前側には、2本のかき寄せ部材3それぞれの断面が示されている。汚泥かき寄せ装置10が備える全てのかき寄せ部材3では、
図6に示す池幅方向中央部に設置されたガイドレール2と、池幅方向両端部に設置された不図示のガイドレールとの間や、その池幅方向両端部に設置されたガイドレールよりも池幅方向外側の部分では、開口部3H1が池底面9fに向けて開口している。
【0053】
図6では、上流側に示されたかき寄せ部材3については、直線状の矢印fが示すように上流側に移動し、かき寄せ面31で汚泥をかき寄せている状態を示す。この際、下流下隅空間IS3が空いていると、池底面9fに堆積していた汚泥が下流側縁341によって掻き上げられる。また、下部空間IS1が空いていると、下流側縁341によって掻き上げられた汚泥が、下部空間IS1に入り込み、池底面9fに沈降した汚泥が攪拌される。さらに、本実施形態では、上流下隅空間IS2も空いているため、下流下隅空間IS3、下部空間IS1および上流下隅空間IS2といった下側の広範囲な空間を利用して、汚泥が攪拌される。この結果、池底面9fに堆積していた汚泥が長時間滞留し、汚泥が腐敗してしまうことを防ぐことができる。
【0054】
一方、下流側に示されたかき寄せ部材3については、直線状の矢印bが示すように、下流側に移動し、傾斜面32を汚泥が乗り越えている状態を示す。この際、上流下隅空間IS2が空いていると、池底面9fに堆積していた汚泥が、上流側縁331によって掻き上げられる。また、下部空間IS1が空いていると、上流側縁331によって掻き上げられた汚泥が、下部空間IS1に入り込み、池底面9fに沈降した汚泥が攪拌される。さらに、本実施形態では、下流下隅空間IS3も空いているため、上流下隅空間IS2、下部空間IS1および下流下隅空間IS3といった下側の広範囲な空間を利用しても、汚泥が攪拌される。この結果かき寄せ部材3の下流側への移動でも、池底面9fに堆積していた汚泥が長時間滞留し、汚泥が腐敗してしまうことを防ぐことができる。
【0055】
続いて、汚泥かき寄せ装置10の合力について説明する。
【0056】
図7は、本実施形態の汚泥かき寄せ装置全体を示す平面図である。この
図7では、
図2に比べて細かな部分は見えにくくなっているが、
図2とは異なり、長手方向中央部分を省略せずに示しているため、本実施形態の汚泥かき寄せ装置10が備える全てのかき寄せ部材3が示されている。本実施形態の汚泥かき寄せ装置10には、全部で78本のかき寄せ部材3が備えられており、
図7では、上流端のかき寄せ部材3から順番にかき寄せ部材3に番号を記している。
【0057】
本実施形態の汚泥かき寄せ装置10は、3つの領域に区分けされる。第1領域A1は、下流端側に配置された三角形状伝達部材40の配置領域を含む領域であって、70本目のかき寄せ部材3と71本目のかき寄せ部材3の中間位置から、駆動ロッド5及び連結ロッド4,4の下流端までの領域になる。したがって、この第1領域A1には、71本目~78本目のかき寄せ部材3が配置されている。第2領域A2は、接続部材41U,41Lの配置領域を含む領域であって、上流側と下流側で2つに分かれている。すなわち、上流側の領域は、上流側の接続部材41Uの配置領域を含む領域であって、2本目のかき寄せ部材3と3本目のかき寄せ部材3の中間位置から、7本目のかき寄せ部材3と8本目のかき寄せ部材3の中間位置までの領域になる。下流側の領域は、下流側の接続部材41Lの配置領域を含む領域であって、65本目のかき寄せ部材3と66本目のかき寄せ部材3の中間位置から、70本目のかき寄せ部材3と71本目のかき寄せ部材3の中間位置までの領域になる。したがって、この第2領域A2には、3本目~7本目のかき寄せ部材3と、66本目~70本目のかき寄せ部材3が配置されている。第3領域A3は、駆動ロッド5及び連結ロッド4,4の上流端から下流端までの領域から、上記第1領域および上記第2領域を除いた領域になる。したがって、この第3領域A3には、1本目~2本目のかき寄せ部材3と、8本目~65本目のかき寄せ部材3が配置されている。
【0058】
物体にかかる重力から浮力を差し引くと合力が求められる。物体は、この合力が正の値であると水に沈み、負の値であると水に浮く。ここでの合力(N)は、物体の体積(m3)と重力加速度と物体の密度から水の密度を差し引いた値(kg/m3)とを乗算した値である。以下では、物体にかかる重力を重さとして示す。
【0059】
第1領域A1全体の重さは、三角形状伝達部材40の重さと、8本のかき寄せ部材3の重さと、駆動ロッド5のうち、第1領域A1に含まれる部分の重さと、2本の連結ロッド4,4それぞれのうち、第1領域A1に含まれる部分の重さを含んだ重さになる。ここで、8本のかき寄せ部材3の内部空間ISに発泡スチロールFSを配置せず、また、駆動ロッド5を、1辺が40mmであって4mmの肉厚の中空四角柱形状のステンレス製のものとし、連結ロッド4を、1辺が40mmであって2mmの肉厚の中空四角柱形状のステンレス製のものとした場合、第1領域A1における、1m当りの上記合力は459N/mになる。一方、本実施形態の汚泥かき寄せ装置10の第1領域A1における、1m当りの上記合力(第1合力)は78.5N/mであり、459N/mの場合に対して、第1領域A1における摺接部722にかかる面圧は1/6程度ですみ、摺接部722の摩耗も1/6程度に抑えられる。第1領域に含まれる8本のかき寄せ部材3はいずれも、かき寄せ部材3の全長にわたって発泡スチロールFSが配置されている。
【0060】
第2領域A2全体の重さは、上流側の接続部材41Uの重さと、2つの上流側蛇行抑制ローラ82,82の重さと、下流側の接続部材41Lの重さと、2つの下流側蛇行抑制ローラ81,81の重さと、合計10本のかき寄せ部材3の重さと、駆動ロッド5のうち、第2領域A2に含まれる部分の重さと、2本の連結ロッド4,4それぞれのうち、第2領域A2に含まれる部分の重さを含んだ重さになる。ここで、10本のかき寄せ部材3の内部空間ISに発泡スチロールFSを配置せず、また、駆動ロッド5を、1辺が40mmであって4mmの肉厚の中空四角柱形状のステンレス製のものとし、連結ロッド4を、1辺が40mmであって2mmの肉厚の中空四角柱形状のステンレス製のものとした場合、第2領域A2における、1m当りの上記合力は363N/mになる。一方、本実施形態の汚泥かき寄せ装置10の第2領域A2における、1m当りの上記合力(第2合力)は15.7N/mであり、第2領域A2における摺接部722にかかる面圧は大幅に小さくなり、摺接部722の摩耗も大幅に抑えられる。第2領域に含まれる10本のかき寄せ部材3はいずれも、かき寄せ部材3全長の80%の長さにわたって発泡スチロールFSが配置され、第2合力の値があまり小さな値にならないように調整がなされている。
【0061】
第3領域A3全体の重さは、合計60本のかき寄せ部材3の重さと、駆動ロッド5のうち、第3領域A3に含まれる部分の重さと、2本の連結ロッド4,4それぞれのうち、第3領域A3に含まれる部分の重さになる。ここで、60本のかき寄せ部材3の内部空間ISに発泡スチロールFSを配置せず、また、駆動ロッド5を、1辺が40mmであって4mmの肉厚の中空四角柱形状のステンレス製のものとし、連結ロッド4を、1辺が40mmであって2mmの肉厚の中空四角柱形状のステンレス製のものとした場合、第3領域A3における、1m当りの上記合力は332N/mになる。一方、本実施形態の汚泥かき寄せ装置10の第3領域A3における、1m当りの上記合力(第3合力)は14.7N/mであり、第3領域A3における摺接部722にかかる面圧も大幅に小さくなり、摺接部722の摩耗も大幅に抑えられる。第3領域に含まれる10本のかき寄せ部材3はいずれも、かき寄せ部材3全長の65%の長さにわたって発泡スチロールFSが配置され、第3合力の値があまり小さな値にならないように調整がなされている。
【0062】
このように、本実施形態の汚泥かき寄せ装置10によれば、ガイドレール2と摺接部722の面圧が軽減され、摺接部722の摩耗が抑えられる。また、沈殿池9の長手方向に移動する部材(駆動ロッド5、2本の連結ロッド4,4、かき寄せ部材3)が軽くなる分、駆動力が少なくてすみ、汚泥かき寄せ装置10の低駆動力化につながる。
【0063】
1m当りの上記合力は、200N/m以下10.7N/m以上が好ましく、100N/m以下11.7N/m以上がより好ましい。この合力が大きすぎると、固定機構7の摺接部722にかかる面圧が大きくなりすぎて、摺接部722の摩耗が許容できなきい速さで進行してしまう。一方、この合力が負の値であると、かき寄せ部材3は浮いてしまい、正の値であっても小さすぎると、かき寄せ部材3のかき寄せ力が低下し、重い汚泥をかき寄せることができなくなってしまう。本発明者らは、鋭意研究を行った結果、かき寄せ部材3のかき寄せ力を確保しつつ、摺接部722の摩耗を抑えることができる好適な合力の範囲を見い出した。
【0064】
なお、第1合力、第2合力および第3合力のうち、第1合力が最も大きいが、これら3つの合力を同じ値や同程度の値に揃えておくと、各領域A1~A3における摺接部722の摩耗量も同じ位になり、載置部材72の交換時期を揃えることができる。
【0065】
以上説明した本実施形態の汚泥かき寄せ装置は、
受け入れた水に含まれている汚泥が池底面に沈殿する沈殿池に設けられ、該池底面に沈殿した汚泥をかき寄せる汚泥かき寄せ装置において、
前記池底面に設けられたガイドレールと、
前記ガイドレールに接した摺接部材と、
前記摺接部材を介して前記ガイドレールに沿って往復移動することで、該池底面に沈殿した汚泥をかき寄せるかき寄せ部材とを備え、
前記ガイドレールの延在方向に駆動する部材に浮力を与えたことを特徴とする。
【0066】
より具体的には、
前記かき寄せ部材を往復移動させる駆動力を発生する駆動機構と、
前記延在方向と同じ方向に延在し、複数の前記かき寄せ部材が該往復移動方向に間隔をあけて連結された連結部材と、
複数の前記かき寄せ部材のうちの一部の該かき寄せ部材の上方に位置し、前記駆動力を前記連結部材に伝達する伝達部材とを備え、
前記延在方向に駆動する部材に浮力を与えたことを特徴とする。
【0067】
ここにいう前記延在方向に駆動する部材とは、前記かき寄せ部材であってもよいし、前記連結部材であってもよいし、前記伝達部材であってもよい。
【0068】
浮力を与えるとは、浮力付与部材(例えば、比重が1以下の部材)を設けることであってもよいし、浮力付与構造(例えば、気体溜りを形成する構造)であってもよい。
【0069】
また、前記沈殿池の池幅方向に延在した浮力付与部材を有するものであってもよいし、前記往復移動方向に延在した浮力付与部材を有するものであってもよい。また、前記沈殿池の池幅の全幅あるいはほぼ全幅にわたって延在した浮力付与部材を有するものであってもよいし、前記沈殿池の長手方向の全長あるいはほぼ全長にわたって延在した浮力付与部材を有するものであってもよい。もしくは、前記沈殿池の池幅方向に延在した浮力付与構造を有するものであってもよいし、前記往復移動方向に延在した浮力付与構造を有するものであってもよい。また、前記沈殿池の池幅の全幅あるいはほぼ全幅にわたって延在した浮力付与構造を有するものであってもよいし、前記沈殿池の長手方向の全長あるいはほぼ全長にわたって延在した浮力付与構造を有するものであってもよい。
【0070】
前記ガイドレールは、前記池幅方向に複数設けられたものであり、
前記かき寄せ部材は、前記延在方向に複数設けられたものであって、それぞれが複数の前記ガイドレールにわたって前記池幅方向に延在したものであり、
前記連結部材は、前記池幅方向の複数箇所に設けられたものであり、
前記池幅方向に延在し、該池幅方向の複数箇所に設けられた連結部材が接続された接続部材を備え、
前記伝達部材の配置領域を含む第1領域全体の重さから該第1領域全体の浮力を差し引いた第1合力と、前記接続部材の配置領域を含む第2領域全体の重さから該第2領域全体の浮力を差し引いた第2合力と、連結部材の一端から他端までの領域から該第1領域および該第2領域を除いた第3領域全体の重さから該第3領域全体の浮力を差し引いた第3合力の中で、該第1合力が最も大きくてもよい。また、2番目に大きな合力は前記第2合力であってもよい。すなわち、前記第3合力が最も小さくてもよい。
【0071】
図8は、かき寄せ部材の変形例を示す図である。
図8(a)~同図(d)はいずれも、かき寄せ部材の断面を示す図である。なお、これまで説明した名称と同じ名称の構成要素にはこれまで用いた符号と同じ符号を付して説明する。
【0072】
図8(a)に示すかき寄せ部材3は、発泡スチロールFSの断面積を、
図5(b)に示すかき寄せ部材3よりも増やしている。すなわち、上流下隅空間IS2にも下流下隅空間IS3にも発泡スチロールが充填されており、さらに、下部空間IS1の一部である上流端部と下流端部にも発泡スチロールが充填されている。この結果、
図8(a)に示すかき寄せ部材3は、
図5(b)に示すかき寄せ部材3よりも上記合力を小さくすることができる。
図8(a)に示すかき寄せ部材3では、下流下隅空間IS3に発泡スチロールが充填されているため、池底面9fに沈降した汚泥を下流側縁341で掻き上げることが難しく、上流下隅空間IS2にも発泡スチロールが充填されているため、池底面9fに沈降した汚泥を上流側縁331で掻き上げることも難しい。しかしながら、
図8(a)に示す発泡スチロールFSの底面には切欠部FS1が設けられている。この切欠部FS1は、下流側縁341よりも上流側で立ち上がった下流側立上り壁FS11と、上流側縁331よりも下流側で立ち上がった上流側立上り壁FS12を有する。
図8(a)に示すかき寄せ部材3が上流側に移動し、かき寄せ面31で汚泥をかき寄せる際には、池底面9fに堆積していた汚泥は、下流側立上り壁FS11によっても押され、切欠部FS1内で攪拌される。また、
図8(a)に示すかき寄せ部材3が下流側に移動し、傾斜面32を汚泥が乗り越える際にも、池底面9fに堆積していた汚泥が、上流側立上り壁FS12によって押され、切欠部FS1内で攪拌される。したがって、
図8(a)に示す変形例のかき寄せ部材3でも、池底面9fに堆積していた汚泥が長時間滞留し、汚泥が腐敗してしまうことを防ぐことができる。
【0073】
図8(b)に示すかき寄せ部材3も、発泡スチロールFSの断面積を、
図5(b)に示すかき寄せ部材3よりも増やしている。すなわち、
図8(b)に示すかき寄せ部材3でも、上流下隅空間IS2にも下流下隅空間IS3にも発泡スチロールが充填されており、さらに、下部空間IS1の一部である上側部分にも発泡スチロールが充填されている。この結果、
図8(b)に示すかき寄せ部材3も、
図5(b)に示すかき寄せ部材3よりも上記合力を小さくすることができる。
図8(b)に示す発泡スチロールFSの底面にも切欠部FS2が設けられている。この切欠部FS2は、下流側縁341から立ち上がった下流側立上り壁FS21と、上流側縁331から立ち上がった上流側立上り壁FS22を有する。
図8(b)に示すかき寄せ部材3が上流側に移動し、かき寄せ面31で汚泥をかき寄せる際には、池底面9fに堆積していた汚泥は、下流側立上り壁FS21によっても押され、切欠部FS2内で攪拌される。また、
図8(b)に示すかき寄せ部材3が下流側に移動し、傾斜面32を汚泥が乗り越える際にも、池底面9fに堆積していた汚泥は、上流側立上り壁FS22によって押され、切欠部FS2内で攪拌される。したがって、
図8(b)に示す変形例のかき寄せ部材3でも、池底面9fに堆積していた汚泥が長時間滞留し、汚泥が腐敗してしまうことを防ぐことができる。
【0074】
図8(c)に示すかき寄せ部材3は、内部空間ISの全部に発泡スチロールFSが充填され、同図(a)や同図(b)に示すかき寄せ部材3よりも上記合力を小さくすることができる。
【0075】
以上
図8を用いて説明したように、発泡スチロールFSの断面積を変えることによって、上記合力の調整を行うことができるが、本実施形態の各領域A1~A3のように、発泡スチロールFSの長さを変えることによっても、上記合力の調整を行うことができる。例えば、発泡スチロールFSは、第1領域A1におけるかき寄せ部材3のように、かき寄せ部材3の長さ(池幅方向の長さ)と略同じ長さであってもよいし、第2領域A2におけるかき寄せ部材3や第3領域A3におけるかき寄せ部材3のように、かき寄せ部材3よりも短いものであってもよい。ここで、発泡スチロールFSの長さは、かき寄せ部材3の長さよりは短く、
図2に示す池幅方向一端側の連結ロッド4と他端側の連結ロッド4との間の長さよりは長い長さであってもよいし、連結ロッド4間の長さであってもよいし、連結ロッド4間の長さよりは短く、かき寄せ部材3の長さの1/3以上の長さであってもよい。なお、発泡スチロールFSの長さが、かき寄せ部材3の長さよりも短い場合には、発泡スチロールFSの長手方向の中心を、かき寄せ部材3の長手方向中心位置に合わせておくことが好ましい。
【0076】
以上、発泡スチロールFSの体積による上記合力の調整について説明したが、発泡スチロールFSの発泡倍率によっても、上記合力の調整することができる。
【0077】
図8(d)に示すかき寄せ部材3は、下面3Uに開口3Hが設けられておらず、内部空間ISは、密閉された空間であって、発泡スチロールFSは存在しない。
図8(d)に示す内部空間ISは、気体溜りとして機能し、この内部空間ISには、空気が密閉されている。なお、空気よりも比重が小さい気体(例えば、ヘリウムガス)を密閉してもよい。
【0078】
また、
図4に示す駆動ロッド5の気体溜りATや、連結ロッド4の気体溜りも、上記合力の調整に利用することができる。本実施形態では、駆動ロッド5の気体溜りATも、連結ロッド4の気体溜りも、空気が密閉されているが、空気よりも比重が小さい気体(例えば、ヘリウムガス)を密閉することで、上記合力を小さくすることができる。また、両端が塞がれたパイプ状の駆動ロッド5や連結ロッド4の断面積を小さくすれば、上記合力も小さくすることができ、その断面積を大きくすれば、上記合力も大きくすることができる。
【0079】
さらには、第1連結バー41や第2連結バー42(三角形状伝達部材40および/または接続部材41U,41L)といった他の長手部材を、両端が塞がれたパイプ状のものにしても、気体溜りによって上記合力を小さくすることができる。
【0080】
加えて、沈殿池9の長手方向に延在した浮き部材を設けてもよい。例えば、駆動ロッド5と同じ長さの、比重が1以下の浮き部材をその駆動ロッド5に固定してもよいし、連結ロッド4と同じ長さの、比重が1以下の浮き部材をその連結ロッド4に固定してもよい。あるいは、沈殿池9の池幅方向に延在した浮き部材を設けてもよい。浮き部材は、両端が密閉されたプラスチック製の筒部材であってもよいし、合成樹脂発泡体等であってもよい。
【0081】
図9は、
図1、
図2および
図7を用いて説明した汚泥かき寄せ装置とは全体の構成が異なる汚泥かき寄せ装置が設置された沈殿池を上方からみた平面図である。なお、これまで説明した名称と同じ名称の構成要素にはこれまで用いた符号と同じ符号を付して説明する。
【0082】
この
図9でも、
図2と同じく、沈殿池9の長手方向(図では左右方向)の中央部分を省略して示している。
図9に示す沈殿池9も、図の左側から下水を受け入れ、受け入れた下水に含まれる汚泥を池底面9fに沈殿させ、図の右側から排水する。
図9でも、図の左側が上流側になり、右側が下流側になる。また、
図9では、下流端のかき寄せ部材3から順番に図示されているかき寄せ部材3に番号を記している。
【0083】
図9に示す汚泥かき寄せ装置10は、駆動ロッド5の上流方側の部分に連結パイプ66が連結され、三角形状伝達部材40も上流側の部分に設けられている。また、
図9では省略しているが、連結パイプ66以外の駆動機構6を構成する部材も上流側に配置されている。各かき寄せ部材3のかき寄せ面31は、上流側を向いており、
図9に示す汚泥かき寄せ装置10でも、上流側に設けられた汚泥ピット91に向けて汚泥がかき寄せられる。
【0084】
図9に示す汚泥かき寄せ装置10でも第1領域A1における上記合力(第1合力)が、その他の領域A2,A3における合力(第2合力、第3合力)よりも大きい。
図9に示す汚泥かき寄せ装置10では、上流側に重い汚泥が沈降しやすいため、上流側の第1合力が大きいことから、重い汚泥をかき寄せやすくなるといった利点がある。すなわち、重い汚泥が沈降することがある沈殿池9では、上記合力が、上流側の方が下流側よりも大きくなるようにしておくことが好ましい場合がある。
【0085】
図9を用いて説明したように、本発明は、かき寄せ部材を往復移動させる駆動機構の態様等は特に限定されるものではなく、いわゆるレシプロ式の汚泥かき寄せ装置に広く適用することができる。
【0086】
また、本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。例えば、本実施形態では、摺接部722を有する載置部材72を、ステンレス鋳物で構成しているが、軽量化を目的として合成樹脂で構成してもよい。あるいは、耐摩耗性の向上を目的として超高分子量ポリエチレンで構成してもよい。なお、汚泥に含まれる砂などの無機物に対する耐摩耗性は、高い順に、超高分子量ポリエチレン、ナイロン、四フッ化エチレン、炭素綱、ステンレス綱、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、フェノール積層材である。また、本実施形態では、2本の連結ロッド4を設けているが、連結ロッド4は何本であってもよい。また、シュー部材に相当する摺接部722は、かき寄せ部材3ごとに設けられたものであったが、ガイドレール2と同じように沈殿池9の長手方向に延在したものであってもよい。すなわち、各かき寄せ部材3の摺接部722が1本につながったものであってもよい。
【0087】
さらに、以上説明した実施形態や変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 汚泥かき寄せ装置
2 ガイドレール
3 かき寄せ部材
31 かき寄せ面
32 傾斜面
3H1 開口部
IS 内部空間
IS1 下部空間
FS 発泡スチロール
4 連結ロッド
40 三角形状伝達部材
41 第1連結バー
41U 上流側の接続部材
41L 下流側の接続部材
42 第2連結バー
5 駆動ロッド
6 駆動機構
7 固定機構
72 載置部材
722 摺接部
81 下流側蛇行抑制ローラ
82 上流側蛇行抑制ローラ
9 沈殿池
9f 池底面