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特許7535304電気油圧式推進システムを有する電動車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】電気油圧式推進システムを有する電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240808BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20240808BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240808BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240808BHJP
   F16H 61/44 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K7/00
B60L50/60
B60L9/18 J
F16H61/44
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020572633
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 GB2019050694
(87)【国際公開番号】W WO2019175572
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】1803947.9
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520352621
【氏名又は名称】エヴェクテック エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100102406
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100100240
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 孝
(72)【発明者】
【氏名】ライトン,ジョージ
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0114739(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0053722(US,A1)
【文献】国際公開第2013/004937(WO,A1)
【文献】特開平09-249042(JP,A)
【文献】特開平10-169545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60K 7/00
B60L 50/60
B60L 9/18
F16H 61/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両システムであって、
油圧モータ/ポンプと、
推進システムであって、
車両の推進のための油圧力を提供するために前記油圧モータ/ポンプを駆動する、または前記油圧モータ/ポンプによって駆動される、電気モータ/ジェネレータを備えた推進システムと、
前記油圧モータ/ポンプと流体連通している少なくとも1つのアキュムレータであって、車両制御システムによる命令に応じて圧媒油を貯蔵および供給可能な、少なくとも1つのアキュムレータと、
油圧力によって供給されたとき、エネルギーを車両ホイールに移送する機能と、エネルギーを前記車両ホイールから前記油圧モータ/ポンプに戻す機能とを有する、複数のホイール駆動モータ/ポンプユニットであって、前記複数のホイール駆動モータ/ポンプユニットの各々が、ホイール駆動を独立して油圧制御できるようにする個別の制御弁手段を有することを特徴とする、前記複数のホイール駆動モータ/ポンプユニットと、
前記推進システムと、前記複数のホイール駆動モータ/ポンプユニットと、前記アキュムレータとの間の圧媒油の流れを制御するための弁システムと、
前記車両制御システムによる命令に応じて電気エネルギーを供給および貯蔵するための少なくとも1つのバッテリシステムと、
前記電気モータ/ジェネレータを制御し、および前記バッテリシステムと前記油圧モータ/ポンプとの間のエネルギーの流れを制御するための双方向コンバータと、
を備え、
内燃機関を含まない、
電動車両システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアキュムレータはコンプレッサを含み、前記アキュムレータは油圧の入力によって、または前記コンプレッサを介して、充填可能である、請求項1に記載の電動車両システム。
【請求項3】
前記推進システムは、油圧モータ/ポンプに結合された電気モータ/ジェネレータを備え、前記電気モータ/ジェネレータは前記ホイール駆動モータ/ポンプユニットから切り離されて極めて高速で動作する、請求項1または2に記載の電動車両システム。
【請求項4】
前記ホイール駆動モータ/ポンプユニットから切り離された前記推進システムは、重心を下げて向上した車両性能をもたらすために、前記車両の中心に位置する、請求項1~3の何れか一項に記載の電動車両システム。
【請求項5】
前記双方向コンバータは、前記電気モータ/ジェネレータと前記バッテリシステムとの間の電力変換および移送を管理する、請求項1~4の何れか一項に記載の電動車両システム。
【請求項6】
前記アキュムレータは、前記バッテリシステムを使用せずに加速または始動中に前記推進システムと共に使用される、回収されたまたは余分な油圧力を貯蔵する、請求項1~5の何れか一項に記載の電動車両システム。
【請求項7】
前記弁システムは前記推進システムおよび貯蔵サブシステム間の圧媒油の流れを制御する、請求項1~6の何れか一項に記載の電動車両システム。
【請求項8】
前記ホイール駆動モータ/ポンプユニットは、前記車両ホイールを駆動するために、および前記車両のばね下重量を相殺するために、使用される、請求項1~7の何れか一項に記載の電動車両システム。
【請求項9】
前記ホイール駆動モータ/ポンプユニットは、ホイールハブに一体化される、請求項1~8の何れか一項に記載の電動車両システム。
【請求項10】
前記ホイール駆動モータ/ポンプユニットは制動中に油圧力を回収し、それを前記アキュムレータに貯蔵する、請求項1~9の何れか一項に記載の電動車両システム。
【請求項11】
前記車両制御システムは、前記さまざまなサブシステムの作動をそれぞれの作動条件に応じて最適化する、請求項1~10の何れか一項に記載の電動車両システム。
【請求項12】
前記車両制御システムは、ドライバーの命令に応答する、またはドライバーレスシステムからの命令に応答する、請求項11に記載の電動車両システム。
【請求項13】
前記アキュムレータは、エネルギーを前記油圧モータ/ポンプに追加するために加圧空気またはガスの直接入力を可能にする、請求項1~12の何れか一項に記載の電動車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気油圧式推進に適したアーキテクチャを有する電動車両に関する。本発明は、固有の性能および操作力学を有する電動車両をもたらす。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器およびエネルギー貯蔵技術における進歩に伴い、気候変動を食い止めようとする複数社会の総合的目標がエレクトロモビリティの発展を推進および加速させてきた。都市における低エミッションまたはゼロエミッションゾーンの導入および政治的枠組みの変化は、その発展を加速化させるであろう。いくつかの事業体がエレクトロモビリティに投資しており、既存の概念を拡張し、技術革新を導入し、それらの将来の用途を計画している。本発明は、電動車両の性能、操縦性、および操作力学を向上させるための、エレクトロモビリティへの現在のソリューションのこの必要な進化の一部である。
【0003】
エレクトロモビリティの諸利点は当業者には広く知られており、CO2排出および他の有毒ガスの低減に対する直性的影響ばかりでなく、メンテナンスの改善および騒音公害の低減によっても証明可能である。
【0004】
加えて、近い将来、著しく混雑して汚染された都心部がゼロエミッションゾーンに変わり、ゼロエミッション車両のみがそれらゾーン内を走行可能になるであろう。
【0005】
現在のエレクトロモビリティソリューションは、最大効率40%の内燃機関に比べ、最大96%という高い効率を有する。
【0006】
制動エネルギーを回収して必要時に再利用するために推進モータがジェネレータとして動作可能であることによって、効率が更に向上される。
【0007】
車両の運動力学および操作に関して、エレクトロモビリティ車両推進システムは、停止時にフルトルク特性を有するので、同様の出力を有する内燃機関を有する車両より迅速な加速が可能である。
【0008】
エレクトロモビリティソリューション駆動システムは、利用可能な全てのソリューション間で機能が同様の主要構成要素を少数含む:
・エネルギー貯蔵およびその関連の制御
・電気モータ/ジェネレータおよび関連の制御
・動力伝達および制御
・制動システムを含む安全システム
・車両環境制御システム
【0009】
これらさまざまなサブシステムの位置は、ソリューション間で可変であり、主に、追求される車両アーキテクチャに依存する。ただし、車両内での重量構成要素の配置自由度は、車両アーキテクチャ、主に伝達システムのアーキテクチャに起因するそれぞれの重量および体積の故に、制限されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、請求項1に記載のエレクトロモビリティシステムが提供される。
【0011】
本システムは、駆動部を伝達システムから切り離す電気/油圧アーキテクチャを使用する。この設計には内燃機関は含まれず、エネルギーは主として、充電によって、場合によっては加圧空気またはガスによって、システムに追加される。
【0012】
この車両アーキテクチャは、最適な重量配分および低重心を実現するために、種々の車両のための主要構成要素のより大きな配置自由度を可能にする。本発明によると、モータ/ジェネレータパワーユニットの位置は、重心の位置を下げ、車両操作およびロードホールディング特性を向上させる。
【0013】
本発明の別の態様によると、重量および複雑度を低減するために、油圧モータ/ポンプユニットはホイールハブに一体化される。これにより、何れのドライブシャフトおよび対応付けられた伝達用構成要素も不要になり、ひいては総部品点数が減り、全体の機械設計が簡素化される。
【0014】
本発明の更に別の態様によると、モータ/ポンプは、車両のばね下重量を相殺するために使用される。したがって、ばね下重量ファクタにおける慣性を大きく減らすことによって跳ねおよび減衰における時間調整された周波数応答が低減される。モータ/ポンプの重量はホイールの重量に対して相殺され、ひいては車両の運動力学を向上させる。
【0015】
モータ/ジェネレータシステムは、そのサイズおよび重量を減らすために、ほぼ一定の高速で動作可能であり、車両の効率を更に向上させることが好ましい。
【0016】
圧媒油貯蔵システムは、バッテリ貯蔵部と組み合されて、冗長エネルギー貯蔵ソリューションを提供することが好ましい。
【0017】
本願明細書に記載のエレクトロモビリティソリューションは、種々の車両のために使用されるマルチ可変プラットフォームを作り出すために、主な機械/電気構成要素、すなわち、エネルギー貯蔵部、モータ/ジェネレータ、および動力伝達システムのためのモジュール構造を有する。
【0018】
本願明細書において提案されるソリューションは、種々の車両のために主要構成要素の大きな配置自由度を可能にするために、および最適な重量配分および低重心を実現するために、駆動部を切り離す電気/油圧式システムを使用する。
【0019】
本願明細書において提案されるアーキテクチャは、車両の運動力学に著しい向上をもたらし、基本性能を向上させる。すなわち、重心を下げ、極モーメント(旋回半径)を縮小する。これらは、スタビリティ、制動、ロードホールディング、およびタイヤ摩耗を改善する。また、これら改善点は、コーナー速度を限界まで増加させる。これは、高性能車において極めて大きな利点となるであろう。
【0020】
1つの構成において、独立に切り離されたモータ/ジェネレータとポンプ/モータホイールハブユニットとは、車両のばね下重量を相殺するために使用できるので、ひいては、ばね下重量ファクタにおける慣性を著しく減らすことによって、跳ねおよび減衰における時間調整された周波数応答を減らす。これは、あらゆる状態において車両操作およびロードホールディングを向上させることになる。
【0021】
切り離されるモータ/ジェネレータは、低重量および体積のための現在の諸ソリューションよりはるかに迅速に作動するように、設計可能である。高速且つコンパクトな永久磁石モータ/ジェネレータは、サイズおよび重量の低減が可能であり、車両の効率を更に向上させる。
【0022】
電気/油圧伝達アプローチを使用すると、2種類のエネルギー貯蔵部、すなわち圧媒油貯蔵システムおよびバッテリ貯蔵システムの使用によって、エネルギー貯蔵能力を増大させる可能性が開かれる。油圧システムは、始動および制動時におけるバッテリの充放電レートを下げるために使用され、ひいてはその寿命を延ばす。
【0023】
提案されるシステムにおいて、および殆どの状況において、車両は全輪駆動とすることができる。
【0024】
圧媒油貯蔵システムは、バッテリの充放電レートを下げ、ひいてはその寿命を伸ばす。
【0025】
油圧システムにおける各アキュムレータは、駆動システムへの低コストエネルギーの供給における更なる自由度を可能にするために、車両上または車両外からの圧縮空気によって独立に充填可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】全車両推進およびさまざまなサブシステムの模式図である。
図2】モータジェネレータとエネルギー貯蔵サブシステムとの間の相互接続を示す模式図の部分詳細図である。
図3】ホイールハブに取り付けられた油圧モータ/ポンプ、ならびに油圧力貯蔵部および制御弁とのその相互作用を示す模式図の部分詳細図である。
図4】インホイール油圧モータ/ポンプの制御の更なる詳細である。
図5】コントローラおよび車両のさまざまなサブシステムとのその相互接続を示す模式図の部分詳細図である。
図6】車両シャシー内のさまざまな主要構成要素の位置の全体図である。
図7】車両シャシー内の油圧システムの各構成要素の概略図である。
図8図4に示されている主要構成要素の位置を示す車両の斜視図である。
図9】本発明の一実施形態による図4に示されている主要構成要素の位置を示す車両の正面図である。
図10図9に示されている主要構成要素の位置を示す車両の側面図である。
図11】重心および旋回中心を示す車両の模式図である。
図12】重心の上昇を示す車両の正面および側面図である。
図13】モータ/ポンプがホイール外に取り付けられ、ホイールとモータ/ポンプとが釣り合わされた、ホイール駆動モータ/ポンプの一代替実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の説明においては、本発明の理解をもたらすために多くの詳細が記載されている。ただし、本発明は、これらの詳細なしに実施され得ること、および記載の諸実施形態からの多数の変形または変更が可能であり得ることが、当業者には理解されるであろう。
【0028】
本発明は、全般的には推進アーキテクチャと標準車両およびスポーツビークルにおけるその実際の実装とに関する。ただし、本発明の装置および方法は、本願明細書に記載されている特定の用途における使用に限定されるものではない。
【0029】
図1を全般的に参照すると、動力配分および制御手段1として油圧力を使用するエレクトロモビリティソリューションの模式図が示されている。この模式図は、主要なサブシステムとそれらの相互接続、すなわち、動力処理および貯蔵サブシステム2、動力配分および制御3、インホイール油圧モータ/ポンプおよびその制御相互接続4、最後にシステムコントローラおよびヒューマンインタフェース5を示している。
【0030】
モータ/ジェネレータに対応付けられたコンバータおよびエネルギー貯蔵システムが図2に示されている。モータリングモードにおいて、モータ/ジェネレータ24はモータ/ポンプアセンブリ26を駆動する。モータ/ポンプアセンブリ26は、加圧された圧媒油を弁アセンブリ30経由で送り、これにより、アキュムレータ25を加圧できる、および/または動力をモータ/ポンプユニット40、41、42、および43に伝達でき、これにより、ホイール44、45、46、および47を駆動する。ホイールへの圧媒油の流れおよび圧力は、ディストリビュータマニホルド39と三方弁50とを介して、弁アセンブリ27によって制御される。このための電力はバッテリ21から取られ、双方向コンバータ22によって処理される。
【0031】
モータ/ジェネレータ26に接続される各装置の制御および係合は、制御システム60から弁27、31、および32とクラッチ33、34、および35とによって制御される。システムへの圧媒油は、密封リザーバ36から供給される。
【0032】
更に図3を参照すると、制動中、動力は4つのホイール44、45、46、および47からホイール搭載モータ/ポンプユニット40、41、42、および43を介して取り出される。ブレーキの作動は、ブレーキ内の圧媒油を加圧する。こうして制動中にホイール搭載モータ/ポンプユニットが発生させた流れおよび圧力は、ブレーキ用アキュムレータ48に貯蔵される。貯蔵されたエネルギーは、アキュムレータに保持させることも、主モータ/ポンプアセンブリ26の駆動に使用することもできる。この動力は、その後、モータジェネレータ24の駆動に使用でき、生成された電力は、バッテリ21を充電するために双方向コンバータ22によって処理され得る。貯蔵かバッテリ充電かを選択するロジックは、走行状態および車両レンジを最適化するために設定される。エネルギー貯蔵の最適制御のためのロジックは、システムコントローラ60に埋め込まれる。
【0033】
双方向コントローラは、バッテリから引き出された電力をモータジェネレータのために必要な入力に変換する。この変換は、バッテリおよびモータに依存するが、例えば、スイッチドDCモータのための多相入力へのDCバッテリ出力の変換とすることもできる。同様に、双方向コントローラは、モータジェネレータ(またはアキュムレータのコンプレッサ)からの充電電流エネルギーを制御してバッテリに貯蔵されるようにする。
【0034】
図4を全般的に参照すると、ホイール駆動部を切り離すクラッチ52および作動弁51が示されている。これらが利用されるのは、車両が静止状態であり、動力下にないときに移動させる必要がある場合である。
【0035】
図5を全般的に参照すると、システムコントローラ60および各サブシステム62とのその相互接続が示されている。ブレーキ、クラッチ、およびアクセルからの信号がシステムコントローラ60に入力される。システムコントローラ60は、その後、双方向コンバータ、アキュムレータシステム、およびホイールモータの作動を制御する。ステアリング制御など、他の信号もシステムコントローラ60によって処理され得る。システムコントローラに入力されるさまざまな信号は、ユーザ(ドライバー)によって生成され得、あるいは自動(ドライバーレス)システムから生成され得る。各サブシステムはシステムコントローラに組み込まれ得ること、および同様に本願明細書に記載のシステムコントローラおよび各サブシステムは分散アーキテクチャを使用できることも、理解されるであろう。
【0036】
図6図7、および図8を参照すると、標準車両において可能な実装の概略図が示されている。システムの重量の大部分を構成するモータ/油圧統合システム24および複数の分散されたバッテリ貯蔵要素21は、低重心を保証するために、車両のフロントとリアとの間の中心に、ドライバーおよび乗客の座席の下に位置する。加圧された圧媒油を回路内で供給するために、モータ/油圧統合システム24は、ホイールモータ/ポンプユニット40、41、42、および43に接続される。制御システム60がこのシステムを支配する。制御システム60は、バッテリ制御システム62’および充電コントローラ62”を含むサブシステムを含む。制御システム60は、ブレーキ、クラッチ、およびアクセルなどのユーザ制御部63からの入力を受け付ける。
【0037】
エネルギーをシステムに入力するための主な方法は、従来の充電ポイント65などの電荷入力による。更に、モータ/油圧統合システム24からの余分な熱が熱-電気コンバータ64によって利用され、充電コントローラ62”を介して電気系統に入力される。熱-電気コンバータ64によってシステムから熱が取り出された後、冷却された流体は、密封された油圧リザーバ66とハイブリッドユニット冷却システム67とを介して、油圧システムに戻される。油圧システムは、例えばウォータジャケットを使用して、特に熱-電気コンバータ64と密封された油圧リザーバ66との間で、断熱される。
【0038】
上述のように、モータ/油圧統合システム24からのエネルギーは、ホイールハブモータのための圧媒油を加圧する、またはバッテリを充電する、またはアキュムレータを加圧する、の何れかのために使用可能である。双方向コンバータ22がバッテリとモータ/油圧統合システム24との間のエネルギーの流れを制御する。各アキュムレータ25はダイヤフラムアキュムレータであることが好ましい。ダイヤフラムは、作動用圧媒油を加圧空気から分離する。システムは、加圧空気をアキュムレータに加えることによって、アキュムレータを作動させる。ただし、追加の選択肢では、加圧空気をシステムに追加でき、これによりエネルギーをシステムに追加できる。これは、システムへのエネルギー付与方法に融通性をもたらす。充電ポイント65を介してシステムに充電することによるだけでなく、給気入力部68を介して加圧空気または他のガスをアキュムレータに追加し得る。これにより圧媒油が加圧され、この圧媒油は、ホイールハブモータへの動力供給のために使用され得るか、またはバッテリに貯蔵される電気に変換され得る。その後、ユーザが充電によって車両への充電を理想的に行い得るが、これが利用可能でない場合、車両は加圧空気またはガスの追加によって充填され得る。アキュムレータのエネルギー密度はバッテリより低くなり得るが、これは車両を短距離推進するために、またはバッテリに充電するために、十分なエネルギーを供給できる。
【0039】
図9を全般的に参照すると、車両の正面図が主要なサブシステムの位置と共に示されている。図10には、車両の側面図が主要なサブシステムの位置と共に示されている。図11を全般的に参照すると、提案される車両の旋回半径71の縮小が示されている。半径が短いほど、各タイヤにかかる荷重が小さくなる。これにより、所与の速度において車両の質量中心72に横加速力が加わるときに、タイヤパッチにかかる荷重が減ることになる。標準的な使用において、タイヤ摩耗が減少し、性能においては、オーバーステアまたはアンダーステア離脱が発生する手前での、より速いコーナー速度がもたらされる。
【0040】
図12を参照すると、重心72の上昇を示す車両の側面図が示されている。重心の下降は、車両の良好に設計されたアンチダイブ、アンチリフト、アンチスクワット要素と組み合わされてロールモーメントを減らす。この属性は、これら要素に対してはるかに良好なスタビリティコントロールをもたらし、車両の方向転換においてより少ない慣性荷重をもたらす。標準的な使用において、より少ないタイヤ摩耗をもたらし、性能においては、オーバーステアまたはアンダーステア離脱が発生する手前での、より速いコーナー速度をもたらす。
【0041】
図13を全般的に参照すると、ホイールに対するモータ/ポンプの取り付けの詳細が示されている。図示のように、およびピボット80の位置に基づき、モータ/ポンプはホイールアセンブリ42の重量を相殺し、ひいては、ホイールが不均一な路面からの鉛直動に入ったときに慣性を減らすことによって車両の総合的な運動力学を向上させる。これは、減衰特性を向上させることによって、車両の乗り心地ならびに全体的な動的性能を向上させることになる。
【0042】
本願明細書には四輪駆動車/自動車に関して図示および記載されているが、本願明細書に記載の諸原理は二輪駆動車、(一輪駆動または二輪駆動システムのどちらかとしての)オートバイ、および連結式車両にも等しく適用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13