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特許7535329リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240808BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240808BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022565994
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 KR2021005462
(87)【国際公開番号】W WO2021221480
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0052907
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521363413
【氏名又は名称】エスエム ラブ コーポレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SM LAB CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】27,Gacheongongdan 1-gil,Samnam-myeon,Ulju-gun,Ulsan 44953,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セオ ミン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジ ヨン
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2010-0013673(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0079465(US,A1)
【文献】特開平08-171900(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106602024(CN,A)
【文献】国際公開第2006/109930(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の1次粒子、複数の1次粒子の凝集体、またはそれらの組合わせを含み、
前記1次粒子は、α-NaFeO型の結晶構造を有し、Ni、Co、Mn及びAlのうち、少なくとも1つを含むリチウム遷移金属酸化物を含み、前記結晶構造の結晶格子のうち、遷移金属サイトの一部がドーピング元素Mで置換され、結晶格子のうち、酸素サイトの一部が硫黄(S)で置換され、
前記Mは、Mg、Ti、W、またはそれらの組合わせを含み、
前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Mが1,000ppm~4,000ppm含有され、
前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Sが1,000ppm以下含有され、
前記リチウム遷移金属酸化物がWを含み、
前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Wが900ppm~2,500ppm含有され、
前記リチウム遷移金属酸化物の結晶格子のうち、リチウムサイトの一部が1つ以上のナトリウムで置換された、
正極活物質。
【請求項2】
前記リチウム遷移金属酸化物において、前記ナトリウムが100ppm~250ppm含有される、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Mが1,200ppm~4,000ppm含有される、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム遷移金属酸化物のうち、ニッケルが80モル%以上含有された、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表示される、請求項1に記載の正極活物質:
(化学式1)
Li1-xM11-yM22-z
前記化学式1において、
Aは、ナトリウム(Na)であり、
M1は、Ni、Co、Mn、Alまたはそれらの組合わせを含み、
M2は、Mg、Ti、W、またはそれらの組合わせを含み、
0<x≦0.05、0<y<0.05、0<z<0.01である。
【請求項6】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2で表示される、請求項1に記載の正極活物質:
(化学式2)
Li1-xNaM11-α-βαM3β2-z
前記化学式2において、
M1は、Ni、Co、Mn、Alまたはそれらの組合わせを含み、
M3は、Mg、Ti、またはそれらの組合わせを含み、
0<x≦0.05、0<α≦0.01、0<β≦0.02、0<z<0.01である。
【請求項7】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式3で表示される、請求項1に記載の正極活物質:
(化学式3)
Li1-xNaM11-α-γ-δαMgγTiδ2-z
M1は、Ni、Co、Mn、Alまたはそれらの組合わせを含み、
0<x≦0.05、0<α≦0.01、0<γ≦0.01、0<δ≦0.01、0<z<0.01である。
【請求項8】
前記化学式3において、0<γ≦0.005、0<δ≦0.005である、請求項に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記化学式3において、γ=δである、請求項に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記リチウム遷移金属酸化物は、Liのモル比/遷移金属のモル比が1未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記1次粒子の平均粒径(D50)は、1μm~20μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項12】
Li含有化合物、遷移金属化合物、硫黄(S)含有化合物、M含有化合物を混合し、リチウム遷移金属酸化物前駆体を得る段階と、
前記前駆体を熱処理して複数の1次粒子、複数の1次粒子の凝集体、またはそれらの組合わせを含む正極活物質を得る段階と、を含み、
前記1次粒子は、α-NaFeO型の結晶構造を有し、Ni、Co、Mn及びAlのうち、少なくとも1つを含むリチウム遷移金属酸化物を含み、前記結晶構造の結晶格子のうち、遷移金属サイトの一部がドーピング元素Mで置換され、結晶格子のうち、酸素サイトの一部が硫黄(S)で置換され、
前記Mは、Mg、Ti、W、またはそれらの組合わせを含み、
前記リチウム遷移金属酸化物のうち、前記Mが1,000ppm~4,000ppm含有され、
前記リチウム遷移金属酸化物のうち、前記Sが1,000ppm以下含有される、
前記リチウム遷移金属酸化物がWを含み、
前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Wが900ppm~2,500ppm含有され、
前記リチウム遷移金属酸化物の結晶格子のうち、リチウムサイトの一部が1つ以上のナトリウムで置換される、
正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記Li含有化合物は、水酸化リチウム、酸化リチウム、窒化リチウム、炭酸リチウム、またはそれらの組合わせを含み、
前記S含有化合物は、硫酸リチウムを含む、請求項12に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記Li含有化合物及び前記S含有化合物は、99:1~99.9:0.1のモル比で混合される、請求項12に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記熱処理は、第1熱処理段階及び第2熱処理段階を含み、
前記第1熱処理段階での熱処理温度は、前記第2熱処理段階での熱処理温度よりも高い、請求項12に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし11のうち、いずれか1項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項17】
請求項1ないし11のうち、いずれか1項に記載の正極活物質を含む正極と、
負極と、
電解質と、を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規組成のリチウム二次電池用正極活物質、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、1991年Sony社によって商用化された以来、mobile IT製品のような小型家電から、中大型電気自動車及びエネルギー保存システムまで多様な分野において需要が急増している。特に、中大型電気自動車及びエネルギー保存システムのためには、低価格型高エネルギー正極素材が必須であるが、現在商用化された正極活物質である単結晶型LiCoO(LCO)の主原料であるコバルトは、高価である。
【0003】
したがって、最近、中大型二次電池用正極活物質として、LCOの代りに、Coの一部を他の遷移金属で置換した、LiNiCoMn(NCM、x+y+z=1)及びLiNiCoAl(NCA、x+y+z=1)で表されるNi系正極活物質を使用し、そのようなNCM及びNCA系正極活物質は、原料であるニッケルが安価であり、高い可逆容量を有するという長所を有する。特に、高容量の側面で、Niのモル比が50モル%以上であるNCM及びNCAが注目されている。一般的に、そのようなNi系正極活物質は、共沈法で合成した遷移金属化合物前駆体をリチウムソースと混合した後、固相で合成して製造される。しかし、このように合成されたNi系正極素材は、小さい1次粒子が凝集されている2次粒子状に存在し、長期間の充/放電過程で2次粒子内部に微細クラック(micro-crack)が発生するという問題点が存在する。微細クラックは、正極活物質の新たな界面と電解液との副反応を誘発し、その結果、ガス発生による安定性低下及び電解液枯渇による電池性能低下のような電池性能劣化が誘発される。また、高エネルギー密度の具現のために、電極密度の増加(>3.3g/cc)を必要とするが、これは、2次粒子の崩壊を誘発し、電解液との副反応による電解液枯渇を誘発して初期寿命急落を誘発する。つまり、既存の共沈法で合成した2次粒子状のNi系正極活物質は、高エネルギー密度を具現することができないということを意味する。
【0004】
前述した2次粒子状のNi系正極活物質の問題点を解決するために、最近、単結晶Ni系正極活物質に係わる研究がなされている。単結晶型Ni系正極活物質は、高エネルギー密度の具現のために、電極密度の増加時(>3.3g/cc)、粒子の崩壊が発生しておらず、優れた電気化学能を具現することができる。しかし、そのような単結晶型Ni系正極活物質は、電気化学評価時、安定していないNi3+、Ni4+イオンによって構造的及び/または熱的不安定性によってバッテリ安定性が低下するという問題点が提起された。したがって、高エネルギーリチウム二次電池の開発のために、単結晶Ni系正極活物質の不安定なNiイオンを安定化させる技術に対する要求が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高い電極密度でもクラックが発生せず、それと同時に、高エネルギー密度の具現、及び長寿命特性が向上した正極活物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面によって、複数の1次粒子、複数の1次粒子の凝集体、またはそれらの組合わせを含み、
前記1次粒子は、α-NaFeO型の結晶構造を有し、Ni、Co、Mn及びAlのうち、少なくとも1つを含むリチウム遷移金属酸化物を含み、前記結晶構造の結晶格子のうち、遷移金属サイトの一部がドーピング元素Mで置換され、結晶格子のうち、酸素サイトの一部が硫黄(S)で置換され、
前記Mは、Mg、Ti、Zr、W、Si、Ca、B、V、またはそれらの組合わせを含み、
前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Mが1,000ppm~4,000ppm含有され、
前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Sが1,000ppm以下含有された正極活物質が提供される。
【0007】
他の側面によって、Li含有化合物、遷移金属化合物、硫黄(S)含有化合物、M含有化合物を混合してリチウム遷移金属酸化物前駆体を得る段階;
前記前駆体を熱処理して複数の1次粒子、複数の1次粒子の凝集体を含む少なくとも1つの2次粒子、またはそれらの組合わせを含む前述した正極活物質を得る段階;を含む、正極活物質の製造方法が提供される:
さらに他の側面によって、前記正極活物質を含む正極が提供される。
さらに他の側面によって、前記正極;負極;及び電解質を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面によって提供されるリチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質は、単結晶及び単一粒子、そのような単一粒子の凝集体、またはそれらの組合わせを含み、遷移金属のうち、一部がドーピング元素(M)で置換され、酸素の一部がSで置換されるが、前記Mが1,000ppm~4,000ppm含有され、前記Sが1,000ppm以下含有されることにより、高Ni系リチウム遷移金属酸化物に存在する不安定なNiイオンが安定化され、充放電間に劣化が防止されて体積当たり容量増加及び寿命安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】製造例5~9の正極活物質に係わるSEM写真である。
図2】製造例1のS2p XPS分析結果を示すグラフである。
図3】実施例1~3、及び比較例2、5、6、9及び11に係わるサイクルによる容量維持率グラフである。
図4】実施例4及び5、及び比較例12~14に係わるサイクルによる容量維持率グラフである。
図5】例示的な具現例によるリチウム電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加え、様々な実施例を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明において詳細に説明する。しかし、これは、本創意的思想を特定の実施形態について限定しようとするものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物または代替物を含むと理解されねばならない。
【0011】
以下で使用される用語は、ただ特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本創意的思想を限定しようとする意図ではない。単数表現は、文脈上、明白に異なる意味ではない限り、複数の表現も含む。以下、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料またはそれらの組合物が存在するということを示すものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料またはそれらの組合物などの存在または付加可能性を予め排除するものではないということを理解せねばならない。以下で使用される「/」は、状況によって「及び」とも解釈され、「または」とも解釈される。
【0012】
図面において複数層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大するか、縮小して示した。明細書全体を通じて類似した部分については、同じ図面符号を付した。明細書全体において層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」または「上方に」あるとするとき、それは他の部分の直上にある場合だけではなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。明細書全体において第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用されうるが、構成要素が用語によって限定されてはならない。用語は、1つの構成要素を、他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0013】
以下、例示的な具現例による正極活物質、その製造方法及びそれを含む正極を含むリチウム二次電池についてさらに詳細に説明する。
【0014】
一実施形態による正極活物質は、複数の1次粒子、複数の1次粒子の凝集体、またはそれらの組合わせを含み、前記1次粒子は、α-NaFeO型の結晶構造を有し、Ni、Co、Mn及びAlのうち、少なくとも1つを含むリチウム遷移金属酸化物を含み、前記結晶構造の結晶格子のうち、遷移金属サイトの一部がドーピング元素Mで置換され、結晶格子のうち、酸素サイトの一部が硫黄(S)で置換され、前記Mは、Mg、Ti、Zr、W、Si、Ca、B、V、またはそれらの組合わせを含み、前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Mが1,000ppm~4,000ppm含有され、前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Sが1,000ppm以下含有される。
【0015】
ここで、用語「1次粒子の凝集体」は、1次粒子の熱処理過程で1つ以上の1次粒子の表面が互いに接触するように配置されたことを意味する。また、用語「1次粒子の凝集体」は、1次粒子の表面にコーティング層が存在する場合、個別コーティングされた複数の1次粒子の表面が互いに接触するように配置されたことを意味し、複数の1次粒子が凝集された凝集体の外面にコーティング層が形成され、コーティング層内に複数の1次粒子が内包される形態の2次粒子とは区別されるものである。
【0016】
本発明の一実施形態による正極活物質は、遷移金属のうち、一部がドーピング元素Mで置換され、前記Oの一部がSで置換されるが、前記Mは、1,000ppm~4,000ppm含有され、前記Sが1,000ppm以下含有されることにより、高容量及び長寿命特性を有する。前記Sが1,000ppmを超過する場合、初期放電容量が低下し、前記ドーピング元素の総量が前記範囲を満足していない場合、寿命特性が劣化する。したがって、前記ドーピング元素含量比率及びS元素含量比率を満足する場合、高容量及び長寿命特性が同時に達成されうる。
【0017】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、Niを含み、前記リチウム遷移金属酸化物のうち、ニッケルが80モル%以上含有されうる。
例えば、前記リチウム遷移金属酸化物のうち、ニッケルが、81モル%以上、82モル%以上、83モル%以上、84モル%以上、85モル%以上、86モル%以上、または87モル%以上含有されうる。
【0018】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物において、前記Mが1,200ppm~4,000ppm含有される。例えば、前記Mは、1,200ppm~3,800ppm含有される。
【0019】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、Wを含み、前記Wが900ppm~2,500ppm含有される。
【0020】
一実施形態によれば、前記ドーピング元素は、Mg、Ti、W、Si、Ca、V、またはそれらの組合わせを含む。例えば、前記ドーピング元素は、Mg、Ti、及びWでもある。
【0021】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物の結晶格子のうち、リチウムサイトの一部が1つ以上のアルカリ金属元素で置換されうる。
【0022】
例えば、前記アルカリ金属元素は、Na、Kまたはそれらの組合わせを含む。
【0023】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物において、前記アルカリ金属元素が100ppm~250ppm含有される。例えば、前記アルカリ金属元素が120ppm~230ppm、130ppm~220ppm、または140ppm~210ppm含有される。
【0024】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、Liのモル比/遷移金属のモル比が1未満でもある。これは、Liが1超過のモル比を有する過リチウム系正極活物質と区分され、Liのモル比が1未満であるにもかかわらず、アルカリ金属元素、ドーピング元素及びS元素の導入によって高容量及び長寿命特性を有する。
【0025】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表示される:
(化学式1)
Li1-xM11-yM22-z
前記化学式1において、
Aは、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)であり、
M1は、Ni、Co、Mn、Alまたはそれらの組合わせを含み、
M2は、Mg、Ti、Zr、W、Si、Ca、B、V、またはそれらの組合わせを含み、
0<x≦0.05、0<y<0.05、0<z<0.01である。
例えば、前記Aは、Naでもある。例えば、前記yは、0<y<0.02でもある。
【0026】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式2で表示される:
(化学式2)
Li1-xNaM11-α-βαM3β2-z
前記化学式2において、
M1は、Ni、Co、Mn、Alまたはそれらの組合わせを含み、
M3は、Mg、Ti、Zr、Si、Ca、B、V、またはそれらの組合わせを含み、
0<x≦0.05、0<α≦0.01、0<β≦0.02、0<z<0.01である。
例えば、0<β≦0.01でもある。
【0027】
前記Wが0<α≦0.01で含まれることにより、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が向上する。Wの置換モル比が0.01を超過する場合、結晶構造上の捩れによる構造的安定性の低下が誘発され、不純物としてWOが形成され、電気化学的特性の低下が招かれる。
【0028】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式3で表示される:
(化学式3)
Li1-xNaM11-α-γ-δαMgγTiδ2-z
M1は、Ni、Co、Mn、Alまたはそれらの組合わせを含み、
0<x≦0.05、0<α≦0.01、0<γ≦0.01、0<δ≦0.01、0<z<0.01である。
前記xは、0<x≦0.05でもある。ここで、xは、化学式3で表示されるリチウム遷移金属酸化物でLiに対するNaの置換モル比を意味する。前記化学式3で表示されるリチウム遷移金属酸化物のLiの一部がNaで置換されることにより、構造的安定性が向上しうる。Liが位置する格子空間にNaが置換される場合、リチウムに比べて、イオン半径が大きいNaの介入によって充電状態でリチウムの脱離時、リチウム遷移金属酸化物内の酸素原子間の反発力による結晶構造の膨脹が抑制され、その結果、反復的な充電時にも、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が達成される。
【0029】
一実施形態によれば、前記γは、0<γ≦0.005でもある。ここで、γは、化学式3で表示されるリチウム遷移金属酸化物でM1元素に対するMgの置換モル比を意味する。Mgの置換モル比が前記範囲を満足する場合、充電状態でリチウム遷移金属酸化物の構造的膨脹が抑制されうる。
【0030】
一実施形態によれば、前記δは、0<δ≦0.005でもある。ここで、δは、化学式3で表示されるリチウム遷移金属酸化物でM1元素に対するTiの置換モル比を意味する。Tiの置換モル比が、前記範囲を満足する場合、充電状態でリチウム遷移金属酸化物の構造的膨脹が抑制されうる。
【0031】
前記W、Mg、Tiが、前記モル比で前記リチウム遷移金属酸化物で置換される場合、充電状態でリチウム脱離時にも、リチウム遷移金属酸化物のうち、酸素間の相互作用による結晶の構造的膨脹抑制によって、構造的安定性が向上して寿命特性が向上する。
【0032】
一実施形態によれば、α、γ及びδが前記範囲を満足する場合、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が保証される。α、γ及びδのうち、いずれか1つが前記範囲を外れる場合、不純物が形成され、これは、リチウム脱離時、抵抗として作用し、かつ反復的な充電時に結晶構造の崩壊が招かれる。
【0033】
一実施形態によれば、前記化学式3においてγ及びδは、それぞれ0<β≦0.003、0<γ≦0.003でもある。
【0034】
例えば、前記化学式3において、γ=δでもある。γ=δである場合(例えば、Mg及びTiのモル比が同一である場合)、充電及び放電時にリチウム遷移金属酸化物内の電荷均衡がなされ、結晶構造の崩壊が抑制されて構造的安定性が向上し、その結果、寿命特性が向上する。
【0035】
一実施形態によれば、前記zは、0<z≦0.01でもある。ここで、zは、化学式3で表示されるリチウム遷移金属酸化物においてO元素に対するSの置換モル比を意味する。
【0036】
酸素元素の一部がSで置換されることにより、遷移金属との結合力が増加し、リチウム遷移金属酸化物の結晶構造の遷移が抑制され、その結果、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性が向上する。
【0037】
一方、Sの置換モル比が0.01を超過する場合、S陰イオンの反発力によって結晶構造が不安定になって寿命特性が低下し、かつ充電時、リチウムの脱離に対する抵抗層が形成されて初期放電容量も減少する。
【0038】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、単一粒子でもある。単一粒子は、複数の粒子が凝集されて形成された2次粒子または複数の粒子が凝集され、凝集体の周りがコーティングされて形成された粒子とは区分される概念である。前記リチウム遷移金属酸化物が単一粒子の形態を有することにより、高い電極密度でも粒子のクラックを防止することができる。したがって、リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質の高エネルギー密度の具現が可能になる。また、複数の単一粒子が凝集された2次粒子に比べて、圧延時にクラックが抑制されて高エネルギー密度の具現が可能であり、粒子のクラックによる寿命劣化も防止しうる。
【0039】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、単結晶を有する。単結晶は、単一粒子とは区別される概念を有する。単一粒子は、内部に結晶の類型と個数にかかわらず、1つの粒子から形成された粒子を指称し、単結晶は、粒子内に単に1つの結晶を有することを意味する。そのような単結晶のリチウム遷移金属酸化物は、構造的安定性が非常に高く、かつ多結晶に比べて、リチウムイオン伝導が容易であって、多結晶の活物質に比べて高速充電特性に優れる。
【0040】
一実施形態によれば、前記正極活物質は、単結晶及び単一粒子である。単結晶及び単一粒子によって形成されることにより、構造的に安定して高密度の電極の具現が可能であり、それを含むリチウム二次電池が向上した寿命特性及び高エネルギー密度を同時に有することができる。
【0041】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式4-1~4-3のうち、いずれか1つで表示されうる:
(化学式4-1)
Li1-x1Nax1Nia1Cob1Mnc1d1Mge1Tif12-z1z1
(化学式4-2)
Li1-x2Nax2Nia2Cob2Alc2d2Mge2Tif22-z2z2
(化学式4-3)
Li1-x3Nax3Nia3Cob3d3Mge3Tif32-z3z3
【0042】
前記化学式4-1において、
0<x1≦0.05、0<a1<1、0<b1<1、0<c1<1、0<d1≦0.01、0<d1≦0.005、0<e1≦0.005、0<(1-x1)/(a1+b1+c1+d1+e1+f1)<1、0.7<a1/(b1+c1+d1+e1+f1)<1、0<(b1+c1)/(a1+b1+c1+d1+e1+f1)<0.2、及び0<z1<0.01であり、
前記化学式4-2において、
0<x2≦0.05、0<a2<1、0<b2<1、0<c2<1、0<d2≦0.01、0<d2≦0.005、0<e2≦0.005、0<(1-x2)/(a2+b2+c2+d2+e2+f2)<1、0.7<a2/(b2+c2+d2+e2+f2)<1、0<(b2+c2)/(a2+b2+c2+d2+e2+f2)<0.2、及び0<z2<0.01であり、
前記化学式4-3において、
0<x3≦0.05、0<a3<1、0<b3<1、0<d3≦0.01、0<d3≦0.005、0<e3≦0.005、0<(1-x3)/(a3+b3+d3+e3+f3)<1、0.7<a3/(b3+d3+e3+f3)<1、0<b3/(a3+b3+d3+e3+f3)<0.2、及び0<z3<0.01である。
【0043】
前記組成を満足するリチウム遷移金属酸化物は、内部に不安定なNiイオンを安定化させ、高エネルギー密度及び長寿命安定性を保有しうる。
【0044】
一般的な高ニッケル系リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を含む正極活物質の場合、不安定なNiイオンの安定化が必須であるが、結晶内の遷移金属サイトの一部にW、Mg及びTiが導入することで、正極活物質が全体として電荷均衡をなすことができ、Ni(II)イオンから不安定なNi(III)またはNi(IV)イオンへの酸化を抑制し、不安定なNi(III)またはNi(IV)は、Ni(II)に還元されうる。一方、遷移金属の一部を異種元素であるW、Mg及びTiで置換することによる伝導度の損失は、Oの一部をSで置換することで補償され、Liの一部をNaで置換することにより、充放電時の構造的変形によるLiの伝導度低下も抑制することで、単結晶の構造的に安定した高容量及び長寿命の正極活物質を得た。
【0045】
一実施形態によれば、前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径(D50)は、0.1μm~20μmである。例えば、前記平均粒径(D50)は、0.1μm~15μm、0.1μm~10μm、1μm~20μm、5μm~20μm、1μm~15μm、1μm~10μm、5μm~15μm、または5μm~10μmである。前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径が前記範囲に属する場合、所望の体積当たりエネルギー密度を具現することができる。前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径が20μmを超過する場合、充放電容量の急激な低下を招き、0.1μm以下である場合、所望の体積当たりエネルギー密度を得にくい。
【0046】
以下、一側面による正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
【0047】
一実施形態による正極活物質の製造方法は、Li含有化合物、遷移金属化合物、硫黄(S)含有化合物、M含有化合物を混合し、リチウム遷移金属酸化物前駆体を得る段階;
前記前駆体を熱処理して複数の1次粒子、複数の1次粒子の凝集体を含む少なくとも1つの2次粒子、またはそれらの組合わせを含む正極活物質を得る段階;を含み、
前記1次粒子がα-NaFeO型の結晶構造を有し、Ni、Co、Mn及びAlのうち、少なくとも1つを含むリチウム遷移金属酸化物を含み、前記結晶構造の結晶格子のうち、遷移金属サイトの一部がドーピング元素Mで置換され、結晶格子のうち、酸素サイトの一部が硫黄(S)で置換され、
前記Mは、Mg、Ti、Zr、W、Si、Ca、B、V、またはそれらの組合わせを含み、
前記リチウム遷移金属酸化物のうち、前記Mが1,000ppm~4,000ppm含有され、
前記リチウム遷移金属酸化物のうち、前記Sが1,000ppm以下含有された、正極活物質の製造方法が提供される。
【0048】
一般的に、単結晶素材合成のために遷移金属前駆体/リチウム前駆体を乾式混合して高温(>1,000℃)で熱処理を通じて合成するが、高温焼成時、ニッケルイオンの還元による正極活物質内の構造変化によって高い可逆容量を具現し難く、活物質表面に過量の残留リチウムが存在して安定性の問題が招かれた。
一方、本発明者らは、高い可逆容量の具現が可能な単結晶素材合成のために合成原料物質に結晶成長補助剤を共に混合した後、1,000℃未満の低い温度で結晶成長を誘導した。この際、前記結晶成長補助剤は、正極活物質の焼成温度で溶融可能な融点を有する。そのような合成方法は、乾式で遷移金属前駆体/リチウム前駆体を高温熱処理する合成法に対して熱処理温度が低く、正極活物質の構造変化が少なく、高い可逆容量の具現が可能であり、表面残留リチウムの少ない素材合成が可能である。
【0049】
また、前記結晶成長補助剤は、正極活物質の焼成温度で溶融されて合成原料物質の均一な混合及び結晶成長を促進するので、全体工程時間を短縮させ、製造コストを節減することができる。
【0050】
一実施形態によれば、前記結晶成長補助剤は、S元素を含むアルカリ金属塩、例えば、リチウム塩を含む。前記結晶成長補助剤がS元素を含むことにより、焼成時にS元素が正極活物質結晶内に浸透し、結晶内の酸素格子位置のうち一部にS元素が置換されうる。この際、S元素は、全体正極活物質に対して1,000ppm以下に置換されることが望ましく、1,000ppmを超過する場合、容量が低下する。これは、過量のS元素がリチウム二次電池の充電及び放電時に、リチウムイオンの移動を妨害する抵抗層として作用するからであると思われる。
【0051】
前記混合段階は、前記特定元素含有化合物を機械的に混合することを含む。前記機械的混合は、乾式で遂行される。前記機械的混合は、機械的力を加えて混合しようとする物質を粉砕及び混合して均一な混合物を形成するのである。機械的混合は、例えば、化学的に不活性であるビード(beads)を用いるボールミル(ball mill)、遊星ミル(planetary mill)、撹拌ボールミル(stirred ball mill)、振動ミル(vibrating mill)のような混合装置を用いて遂行されうる。この際、混合効果を極大化するために、エタノールのようなアルコール、ステアリン酸のような高級脂肪酸を選択的に少量添加することができる。
【0052】
前記機械的混合は、酸化雰囲気で遂行されるが、これは、遷移金属供給源(例えば、Ni化合物)において遷移金属の還元を防ぎ、活物質の構造的安定性を具現するためのものである。
【0053】
前記リチウム元素含有化合物は、リチウム水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組合わせを含むが、それらに限定されない。例えば、リチウム前駆体は、LiOHまたは、LiCOでもある。
【0054】
前記遷移金属化合物は、Ni、Co、Mn及びAlのうち、少なくとも1つを含む遷移金属の水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物またはそれらの組合わせを含むが、それらに限定されない。例えば、Ni0.88Co0.09Al0.03(OH),Ni0.80Co0.10Mn0.10(OH)などでもある。
【0055】
前記硫黄(S)含有化合物は、結晶成長補助剤として、例えば、硫酸リチウムでもある。例えば、LiSOでもある。前記結晶成長補助剤は、単結晶、単一粒子形成に寄与し、それを含んでいない場合、2次粒子状の正極活物質が合成されたが、そのような結晶成長補助剤を特定の含量比で使用する場合、単結晶、単一粒子、及び単一粒子が凝集されて形成された凝集体が形成されうる。
【0056】
前記M含有化合物は、Mg、Ti、Zr、W、Si、Ca、B、V、またはそれらの組合わせを含む元素の水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組合わせを含むが、それらに限定されない。例えば、W(OH),WO,Mg(OH),MgCO,Ti(OH),TiOなどがある。
【0057】
一実施形態によれば、前記Li含有化合物は、水酸化リチウム、酸化リチウム、窒化リチウム、炭酸リチウム、またはそれらの組合わせを含み、前記S含有化合物は、硫酸リチウムを含む。例えば、前記Li含有化合物は、リチウムの水酸化物を含み、前記S含有化合物は、硫酸リチウムを含む。これにより、熱処理過程においてS元素が結晶内酸素の位置で置換されうる。
【0058】
一実施形態によれば、前記Li含有化合物及び前記S含有化合物は、99:1~99.9:0.1のモル比で混合する。
【0059】
前記Li含有化合物及び前記S含有化合物の比率が99:1を超過する場合、例えば、98:2となる場合、過量のS元素が導入されることによる抵抗上昇によって初期放電容量の低下が発生する。
【0060】
また、前記リチウム遷移金属酸化物前駆体は、Na元素含有化合物をさらに含んでもよい。
【0061】
前記Na元素含有化合物は、Naの水酸化物、酸化物、窒化物、炭酸化物、またはそれらの組合わせを含むが、それらに限定されない。例えば、NaOH、NaCOまたはそれらの組合わせでもある。
【0062】
前記混合する段階以後に、熱処理する段階を含む。前記熱処理段階は、第1熱処理段階及び第2熱処理段階を含む。前記第1熱処理段階及び第2熱処理段階は、連続して遂行されるか、第1熱処理段階以後に休止期を有する。また、前記第1熱処理段階及び第2熱処理段階は、同じチャンバ内で行われるか、互いに異なるチャンバ内で行われる。
【0063】
前記第1熱処理段階での熱処理温度は、前記第2熱処理段階での熱処理温度よりも高い。
【0064】
前記第1熱処理段階は、熱処理温度800℃~1200℃で遂行される。前記熱処理温度は、例えば、850℃~1200℃、860℃~1200℃、870℃~1200℃、880℃~1200℃、890℃~1200℃、または900℃~1200℃であるが、それらに限定されず、前記範囲内に任意の二地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0065】
前記第2熱処理段階は、熱処理温度700℃~800℃で遂行される。前記熱処理温度は、710℃~800℃、720℃~800℃、730℃~800℃、740℃~800℃、750℃~800℃、700℃~780℃、700℃~760℃、700℃~750℃、または700℃~730℃であるが、それらに限定されず、前記範囲内に任意の二地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0066】
一実施形態によれば、前記第1熱処理段階での熱処理時間は、前記第2熱処理段階での熱処理時間よりも短い。
【0067】
例えば、前記第1熱処理段階で熱処理時間は、3時間~5時間、4時間~5時間、または、3時間~4時間でもあるが、それらに限定されるものではなく、前記範囲内に任意の二地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0068】
例えば、前記第2熱処理段階で熱処理時間は、10時間~20時間、10時間~15時間であるが、それに限定されるものではなく、前記範囲内に任意の二地点を選択して構成された範囲をいずれも含む。
【0069】
前記第1熱処理段階は、800℃~1200℃の熱処理温度で3~5時間熱処理する段階を含む。
【0070】
前記第2熱処理段階は、700℃~800℃の熱処理温度で10~20時間熱処理する段階を含む。
【0071】
前記第1熱処理段階は、リチウム遷移金属酸化物が層状構造の正極活物質を形成すると共に、粒子の成長を誘発し、単結晶を形成可能にする。前記第1熱処理段階では、2次粒子状のリチウム遷移金属酸化物内のそれぞれの1次粒子が急激に成長して粒子間応力を耐えられず、1次粒子の内部が露出されつつ互いに融合され、二次電池用単結晶正極活物質が形成されるものと思われる。前記第2熱処理段階は、第1熱処理段階で、さらに低い温度に熱処理を長時間遂行することで、第1熱処理段階で生成された層状構造の結晶度を高める。第1及び第2熱処理段階を通じて単一相、単結晶、単一粒子の高ニッケル系正極活物質が得られる。
【0072】
一実施形態によれば、前記製造方法によって製造されたリチウム遷移金属酸化物は、単結晶、単一粒子であり、前記単結晶は、層状構造を有することができる。また、前記リチウム遷移金属酸化物の平均粒径は、0.1μm~20μmでもある。
【0073】
また、リチウム遷移金属酸化物の含量に係わる内容は、前述したところを参照する。
【0074】
また、前記正極活物質の製造方法によって製造されたリチウム遷移金属酸化物において、W、Mg及びTi元素は、構造内の遷移金属サイトで置換され、S元素がOサイトで置換され、Na元素がLiサイトで置換されることで、既存にNi2+の酸化を抑制し、かつ、既存に存在する不安定なNi3+イオンのNi2+イオンへの還元が誘発され、構造的安定性及び高密度のリチウム遷移金属酸化物が得られる。また、還元されたNi2+イオンとLiイオンとのイオン半径が類似しており、Li/Ni無秩序化(disordering)が促進され、Li脱離時に空格子をNiイオンが満たすことで結晶の構造的安定性が図れる。
【0075】
他の側面によれば、前述した正極活物質を含む正極が提供される。
【0076】
さらに他の側面によれば、前記正極、負極、及び電解質を含むリチウム二次電池が提供される。
【0077】
前記リチウム二次電池は、前述したリチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質を含むことにより、50回充放電後、容量維持率が89%以上である。
【0078】
前記リチウム二次電池は、初期放電容量が204mAh/g以上である。
【0079】
前記正極及びそれを含むリチウム二次電池は、次のような方法に製造されうる。
【0080】
まず、正極が準備される。
例えば、前述した正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。前記正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされて正極板が製造される。それとは違って、前記正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされて正極板が製造されうる。前記正極は、前述した形態に限定されるものではなく、前記形態以外の形態でもある。
【0081】
前記導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;カーボンナノチューブなどの導電性チューブ;フルオロカーボン、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカ;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;などが使用されうるが、これらに限定されず、当該技術分野で導電材として使用されうるものであれば、いずれも使用可能である。
【0082】
前記バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、その混合物、金属塩、またはスチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用されうるが、これらに限定されず、当該技術分野でバインダとして使用されうるものであれば、いずれも使用可能である。さらに他のバインダの例としては、前述したポリマーのリチウム塩、ナトリウム塩、またはカルシウム塩などが使用されうる。
【0083】
前記溶媒としては、N-メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使用されうるが、これらに限定されず、当該技術分野で使用されうるものであれば、いずれも使用可能である。
【0084】
前記正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で通常使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、前記導電材、バインダ及び溶媒のうち、1つ以上が省略されうる。
【0085】
次いで、負極が準備される。
例えば、負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒を混合して負極活物質組成物が準備される。前記負極活物質組成物が3μm~500μm厚さを有する金属集電体上に直接コーティング及び乾燥されて負極板が製造される。それとは違って、前記負極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされて負極板が製造されうる。
【0086】
前記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず、かつ導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ニッケル、銅の表面にカーボンで表面処理したものが使用されうる。
【0087】
前記負極活物質は、当該技術分野でリチウム電池の負極活物質として使用されるものであれば、いずれも使用可能である。例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群から選択された1つ以上を含む。
【0088】
例えば、前記リチウムと合金可能な金属は、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、SbSi-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などでもある。前記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、またはTeでもある。
【0089】
例えば、前記遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などでもある。
【0090】
例えば、前記非遷移金属酸化物は、SnO、SiO(0<x<2)などでもある。
【0091】
前記炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはそれらの混合物でもある。前記結晶質炭素は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛でもあり、前記非晶質炭素は、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどでもある。
【0092】
負極活物質組成物において、導電材、バインダ、及び溶媒は、前記正極活物質組成物の場合と同一物を使用することができる。
【0093】
前記負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で通常使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、前記導電材、バインダ及び溶媒のうち、1つ以上が省略されうる。
【0094】
次いで、前記正極と負極との間に挿入されるセパレータが準備される。
前記セパレータは、リチウム電池で通常使用されるものであれば、いずれも使用可能である。電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能に優秀なものが使用されうる。前記セパレータは、単一膜または多層膜でもあり、例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせ物のうち、選択されたものであって、不織布または織布の形態でもある。また、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータのような混合多層膜が使用されうる。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能に優れたセパレータが使用されうる。例えば、前記セパレータは、下記方法によって製造されうる。
【0095】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合してセパレータ組成物が準備される。前記セパレータ組成物が電極上部に直接コーティング及び乾燥され、セパレータが形成されうる。または、前記セパレータ組成物が支持体上にキャスティング及び乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極上部にラミネーションされてセパレータが形成されうる。
前記セパレータ製造に使用される高分子樹脂は、特に限定されず、電極板の結合材に使用される物質がいずれも使用されうる。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物などが使用されうる。
【0096】
次いで、電解質が準備される。
例えば、前記電解質は、有機電解液でもある。また、前記電解質は、固体でもある。例えば、酸化ホウ素、リチウムオキシナイトライドなどでもあるが、これらに限定されず、当該技術分野で固体電解質として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。前記固体電解質は、スパッタリングなどの方法で前記負極上に形成されうる。
【0097】
例えば、有機電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造されうる。
前記有機溶媒は、当該技術分野で有機溶媒として使用されうるものであれば、いずれも使用可能である。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類などがある。これらを単独または複数個組み合わせて使用することができる。例えば、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合した溶媒を使用することができる。
【0098】
また、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどの重合体電解質に電解液を含浸したゲル状重合体電解質であるか、LiI,LiN,LiGeα,LiGeαδ(X=F,Cl,Br)などの無機固体電解質を使用することができる。
【0099】
前記リチウム塩も、当該技術分野でリチウム塩として使用されうるものであれば、いずれも使用可能である。例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(CyF2y+1SO)(但し、x、yは、自然数)、LiCl、LiIまたはそれらの混合物である。
【0100】
図5に示されたように、前記リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。上述した正極3、負極2及びセパレータ4がワインディングされるか、折り畳まれて電池ケース5に収容される。次いで、前記電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6で密封されてリチウム電池1が完成される。前記電池ケース5は、円筒状、角状、パウチ状、コイン状、または、薄膜状などでもある。例えば、前記リチウム電池1は、薄膜状電池でもある。前記リチウム電池1は、リチウムイオン電池でもある。
【0101】
前記正極及び負極間にセパレータが配置されて電池構造体が形成されうる。前記電池構造体がバイセル構造によって積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がパウチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0102】
また、前記電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、そのような電池パックが高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用されうる。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両などに使用されうる。
【0103】
また、前記リチウム電池は、寿命特性及び高率特性に優れるので、電気車両(electric vehicle、EV)に使用されうる。例えば、プラグインハイブリッド車両(plug-in hybrid electric vehicle,PHEV)などのハイブリッド車両に使用されうる。また、多量の電力保存が要求される分野に使用されうる。例えば、電気自転車、電動工具、電力保存用システムなどに使用されうる。
【0104】
以下の製造例、実施例及び比較例を通じて本発明がさらに詳細に説明される。但し、実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0105】
(正極活物質の製造)
製造例1~19
下記表1及び表2に提示された特定含量の材料を約15分間機械的に混合した後、混合された粉末を960℃で4時間、及び700℃で10時間焼成を進めて正極活物質を合成した。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
(ハーフセルの製造)
実施例1
製造例1で合成した正極活物質:導電材:バインダを96:2:2の重量比で混合してスラリーを製造した。ここで、前記導電材としては、カーボンブラック(Super-P)を使用し、前記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)をN-メチル-2-ピロリドン溶媒に溶解させて使用した。
前記スラリーをAl集電体に均一に塗布し、110℃で2時間乾燥して正極電極を製造した。極板のローディングレベルは、11.0mg/cmであり、電極密度は、3.6g/ccであった。
前記製造された正極を作業電極として使用し、リチウムホイルを相対電極として使用し、EC/EMC/DECを3/4/3の体積比で混合した混合溶媒にリチウム塩としてLiPFを1.3Mの濃度になるように添加した液体電解液を使用して通常知られている工程によってCR2032ハーフセルを作製した。
【0109】
実施例2~5
製造例1で合成した正極活物質の代わりに、製造例2~5で合成した正極活物質をそれぞれ使用した点を除いては、実施例1と同じ方法によってCR2032ハーフセルを作製した。
【0110】
比較例1~14
製造例1で合成した正極活物質の代わりに、製造例6~19で合成した正極活物質をそれぞれ使用した点を除いては、実施例1と同じ方法によってCR2032ハーフセルを作製した。
【0111】
評価例1:SEM及びXPS分析
製造例6~9で合成した正極活物質をSEMによって分析し、SEM写真を図1に示した。硫酸リチウムを添加していない製造例6は、2次粒子状を帯びると確認されたが、硫酸リチウムを添加した製造例7~9は、いずれも単一粒子、または単一粒子が凝集された凝集体形態の正極活物質が合成されたことを確認することができる。
また、結晶内Sの酸素サイトへの置換有無を確認するために、製造例1で製造した正極活物質に対するXPS分析を進め、その結果を図2に示した。図2を参考にすれば、XPS分析結果、ノイズが含まれたローデータ(raw data)(太実線で表示)を得て、そのようなデータでノイズ(細実線で表示)を除去してフィッティング(fitting)過程を経たグラフ(2つの点線で表示)から約164eV及び170eVの2つのメインピークが観測された。そのようなピークは、正極活物質構造内のS-O結合の存在を意味し、これは、活物質内のSが酸素サイトで置換されることを証明する。
【0112】
評価例2:S元素の比率による分析
製造例1及び製造例8及び9で合成した正極活物質に対して、初期放電容量及び初期効率を測定した。その結果を下記表3に示した。
【0113】
【表3】
【0114】
硫酸リチウムの比率が高くなることにより、粒子の平均サイズ(D50)が増加し、それと同時に、可逆容量は、減少する傾向を示している。結局、過量のS置換は、可逆容量の低下を誘発することが分かる。
【0115】
評価例3:元素の比率分析
製造例1~3及び製造例10~16で合成した正極活物質に係わるNa、ドーピング元素(W、Mg、Ti)及びS元素の含量比を分析し、下記表4に示した。
【0116】
【表4】
【0117】
前記表4から分かるように、製造例1~3で合成した正極活物質をS含量が1000ppm以下であり、ドーピング元素W、Mg及びTiの総含量は、1000ppm~4000ppmであることを確認することができる。また、製造例10~16は、ドーピング元素の総含量が1000ppm~4000ppmを外れることを確認した。
【0118】
評価例4:常温寿命評価(1)
実施例1~3及び比較例2、5~11で作製したハーフセルを10時間休止させた後、0.2Cで4.25VまでCC modeで充電した後、0.05Cに該当する電流までCV modeで充電を進めた。次いで、0.2Cで3.0VまでCC modeで放電して化成工程を完了した。
次いで、常温(25℃)において0.5Cで4.25VまでCC modeで充電した後、0.05Cに該当する電流までCV modeで充電を進めた。次いで、1Cで3.0VまでCC modeで放電を進め、この過程を総50回繰り返し、サイクルによる容量維持率を図3及び表6に示した。また、初期放電容量及び初期効率を測定して下記表5に示した。
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
前記表5を参考にすれば、Wの含量が2500ppmを超過する製造例12及び13の正極活物質を採用した比較例7及び8と、ドーピング元素含量が4000ppmを超過する製造例15の正極活物質を採用した比較例10の場合、実施例1~3に比べて初期可逆容量及び効率が低下することが分かる。したがって、実施例1~3と初期放電容量及び初期効率が類似した比較例2、5、6、9及び11に対して常温寿命評価を進めた。
【0122】
前記表6及び図3を参考にすれば、比較例2、5、6、9及び11は、実施例1~3と初期放電容量及び初期効率は類似しているが、充放電サイクルが進められつつ、急激な容量低下を示した。50サイクルを経た後、実施例1~3は、最大約68%の容量維持率差を示した。
【0123】
実施例1~3は、ドーピング元素の総含量が1000ppm~4000ppmであるが、一方、比較例2、5、6、9及び11に含まれたドーピング元素の総含量は、前記範囲を外れることによる結果であると思われる。
【0124】
評価例5:常温寿命評価(2)
実施例4及び5、及び比較例12~14で作製したハーフセルを10時間休止させた後、0.2Cで4.25VまでCC modeで充電した後、0.05Cに該当する電流までCV modeで充電を進行した。次いで、0.2Cで3.0VまでCC modeで放電して化成工程を完了した。
次いで、常温(25℃)において0.5Cで4.25VまでCC modeで充電した後、0.05Cに該当する電流までCV modeで充電を進行した。次いで、1Cで3.0VまでCC modeで放電を進め、その過程を総50回繰り返し、サイクルによる容量維持率を図4及び表7に示した。
【0125】
【表7】
【0126】
図4及び表7を参考にすれば、ドーピング元素総含量が1000ppm~4000ppmであり、S含量が1000ppm以下である製造例4及び5の正極活物質を使用した実施例4及び5は、ドーピング元素総含量が1000ppm未満(製造例19の正極活物質を使用した比較例14)及び4000ppmを超過(製造例18の正極活物質を使用した比較例13)する比較例13及び比較例14に比べて、50サイクル後、向上した容量維持率を示した。また、実施例4及び5は、Wを含まない製造例17の正極活物質を使用した比較例2に比べても向上した容量維持率を示した。したがって、NCM系正極活物質もWを含み、ドーピング元素の総含量が1000ppm~4000ppmであり、Sの含量が1000ppm以下である場合、高容量及び長寿命特性を示すことが分かる。以上では、図面及び実施例を参照して、本発明による望ましい具現例が説明されたが、これは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、それにより、多様な変形及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決定されねばならない。
図1
図2
図3
図4
図5