IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ オブ マサチューセッツの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ミニ遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240808BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240808BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240808BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240808BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240808BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C12N7/01
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
A61K31/7088
A61K35/76
A61P27/02
C12N15/864 100Z
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023020149
(22)【出願日】2023-02-13
(62)【分割の表示】P 2019555010の分割
【原出願日】2018-04-05
(65)【公開番号】P2023088902
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】62/481,727
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507088266
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マサチューセッツ
【住所又は居所原語表記】One Beacon Street,31st Floor,Boston,Massachusetts 02108
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,グワンピン
(72)【発明者】
【氏名】カンナ,ヘマント
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0185832(US,A1)
【文献】Dev Cell,2008年,Vol.15, No.2,pp.187-197
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/864
C12N 7/01
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であって、
(i)配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むか、または配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるCEP290タンパク質フラグメントをコードするrAAVベクター、ここでCEP290タンパク質フラグメントは、配列番号1の700個以下の連続したアミノ酸を含み、CEP290タンパク質フラグメントは、配列番号1の1695~1966の位置のアミノ酸を欠いている、および
(ii)1つ以上のAAVカプシドタンパク質
を含む、前記rAAV。
【請求項2】
CEP290タンパク質フラグメントが、配列番号6に記載の配列によりコードされる、請求項1に記載のrAAV。
【請求項3】
プロモーターをさらに含む、請求項1または2に記載のrAAV。
【請求項4】
プロモーターが、ニワトリベータ-アクチン(CBA)プロモーターであるか、または、目特異的プロモーター、レチノスキシンプロモーター、K12プロモーター、ロドプシンプロモーター、桿体特異的プロモーター、錐体特異的プロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、または光受容器間レチノイド結合タンパク質近位(IRBP)プロモーターからなる群から選択される組織特異的プロモーターである、請求項に記載のrAAV。
【請求項5】
rAAVベクターが、AAV2 ITRsをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項6】
AAVプシドタンパク質の少なくとも1つが、AAV5カプシドタンパク質またはAAV8カプシドタンパク質である、請求項1~のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項7】
AAVプシドタンパク質の少なくとも1つが、配列番号9に記載の配列を含む、請求項に記載のrAAV。
【請求項8】
rAAVが、自己相補的なAAV(scAAV)である、請求項1~のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項9】
眼の繊毛関連疾患をそれを必要としている対象において処置する方法に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載のrAAV。
【請求項10】
投与が、網膜下注射を含む、請求項に記載の使用のためのrAAV。
【請求項11】
対象が、CEP290遺伝子における1つ以上の突然変異またはCEP290遺伝子の欠失を含む、請求項または10に記載の使用のためのrAAV。
【請求項12】
突然変異または欠失が、網膜変性症、光受容体の変性、網膜の機能障害、または視力の喪失をもたらす、請求項11に記載の使用のためのrAAV。
【請求項13】
眼の繊毛関連疾患が、レーバー先天黒内障(LCA)、ジュベール症候群、バルデ・ビードル症候群、メッケル・グルーバー症候群、アッシャー症候群、ネフロン癆、またはセニオール・ローケン症候群である、請求項12のいずれか一項に記載の使用のためのrAAV。
【請求項14】
眼の繊毛関連疾患が、レーバー先天黒内障(LCA)である、請求項13に記載の使用のためのrAAV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、35 U.S.C. § 119(e)の下で、2017年4月5日に出願され、「CEP290 MINIGENE THERAPY」と題された米国仮出願番号62/481,727の出願日の利益を主張し、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれている。
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所により授与されたEY022372、NS076991、AI100263およびHL131471の下での政府の支援でなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
背景
繊毛関連疾患は、異常な繊毛の形成または機能により特徴づけられる疾患および障害の群を表す。例えば眼の繊毛関連疾患は、網膜変性症、視力低下、および/または失明につながるであろう。CEP290関連レーバー先天黒内障(LCA)は、最も一般的で深刻な形態の網膜変性疾患の1つである。しかしながら、現在のところ処置または治癒は、存在しない。一般的に、例えばCEP290遺伝子(約8kb)といった、繊毛関連遺伝子の大きなサイズは、従来からあるアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター媒介遺伝子送達手法を使用する成功した療法の発展を制限している。ゲノム編集(CRISPR/Cas9手法など)およびアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用は、オフターゲット効果を有し得、典型的には繊毛関連遺伝子における突然変異の1つの種類にのみ適用される。したがって、繊毛関連疾患の処置のための新規な組成物および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
概要
本開示の側面は、対象へとミニ遺伝子を送達することに有用である組成物および方法に関係する。したがって、本開示は、一部分においては、ウイルス(例として、rAAV)ベクターなどの遺伝子治療ベクターに基づき、タンパク質またはペプチド(例として、ミニ遺伝子)、および任意に疾患または障害に関連する内在性遺伝子バリアント(例として、繊毛関連疾患に関連する遺伝子)を標的とする(例として、突然変異による)1つ以上の抑制性核酸(inhibitory nucleic acid)などの治療遺伝子産物をコードする1つ以上の遺伝子フラグメントに基づく。いくつかの態様において、1つ以上の抑制性の核酸は、ミニ遺伝子によってコードされる遺伝子産物の遺伝子発現をサイレンシングしない。いくつかの態様において、方法は、繊毛関連疾患(例として、眼の繊毛関連疾患)、例えば、レーバー先天黒内障(LCA)に関連するCEP290遺伝子などの繊毛関連遺伝子の突然変異または欠失によって特徴づけられる障害および疾患を処置するために提供される。
【0004】
したがって、いくつかの側面において、本開示は、治療ミニ遺伝子をコードする第1の単離された核酸配列および1つ以上の抑制性核酸をコードする第2の単離された核酸配列を含む発現カセットを含むウイルスベクターに関係し、ここで発現カセットは、ウイルス複製配列に隣接しており、およびここで1つ以上の抑制性核酸は、治療ミニ遺伝子をコードする単離された核酸に結合しない。
本開示は、一部分においては、「M領域」を欠いているCEP290遺伝子フラグメント(例としてCEP290タンパク質フラグメントをコードする)のCEP290遺伝子の突然変異または欠失によって特徴づけられる疾患または障害を有する対象の細胞(例として、眼の細胞)へのAAV媒介送達が、繊毛の長さを回復するかまたは改善し、および光受容体の機能をレスキューするかまたは改善するという予期せぬ発見に基づく。この発見は、例えば、CEP290遺伝子の「M領域」が、微小管の局在および繊毛の形成を媒介するために必要であると記載しているUS2016/0185832といった先の開示を考慮すると驚くべきことである。いくつかの態様において、本開示の例のセクションは、光受容体における機能を保持し、従来からあるAAVベクターを使用して送達され得るCEP290タンパク質のドメイン(例として、フラグメント)を記載する。
【0005】
したがって、いくつかの側面において、本開示は、以下を含む単離された核酸を提供する:第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、またはそのバリアントを含む第一領域;および、CEP290タンパク質フラグメントをコードする導入遺伝子を含む第二領域、ここでCEP290タンパク質フラグメントは、配列番号1の1695~1966の位置のアミノ酸を含まない。
いくつかの側面において、本開示は、以下を含む単離された核酸を提供する:第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、またはそのバリアントを含む第一領域;および、CEP290タンパク質フラグメントをコードする導入遺伝子を含む第二領域、ここでCEP290タンパク質フラグメントは、配列番号1の少なくとも500個の連続したアミノ酸を含む。いくつかの態様において、少なくとも500個の連続したアミノ酸は、配列番号2、3および4から選択される配列を含むかまたは配列番号2、3および4から選択される配列からなる。
【0006】
いくつかの態様において、第二領域は、配列番号1の1695~1966の位置のアミノ酸を含まない。いくつかの態様において、導入遺伝子は、配列番号1の1120個以下の 連続したアミノ酸を含む。
いくつかの態様において、導入遺伝子は、配列番号1の580~1695の位置のアミノ酸を含む。いくつかの態様において、導入遺伝子によってコードされるCEP290タンパク質フラグメントは、配列番号2に記載された配列を含む。いくつかの態様において、導入遺伝子によってコードされるCEP290タンパク質フラグメントは、配列番号1の580~1180の位置のアミノ酸、または配列番号1の1181~1695の位置のアミノ酸を含む。いくつかの態様において、導入遺伝子によってコードされるCEP290タンパク質フラグメントは、配列番号3または4に記載された配列を含むかまたは配列番号3または4に記載された配列からなる。
【0007】
いくつかの態様において、導入遺伝子は、配列番号5、6および7から選択される核酸配列を含むかまたは配列番号5、6および7から選択される核酸配列からなる。
いくつかの態様において、導入遺伝子は、dsRNA、siRNA、shRNA、miRNA、人工miRNA(amiRNA)等といった1つ以上の抑制性核酸をさらに含む。いくつかの態様において、1つ以上の抑制性核酸は、対象において内因的に発現したCEP290の発現を抑制(inhibit)するが、導入遺伝子によってコードされるCEP290タンパク質フラグメントの発現を抑制しない。
【0008】
いくつかの態様において、導入遺伝子は、プロモーターをさらに含む。いくつかの態様において、プロモーターは、ニワトリベータ-アクチン(CBA)プロモーターまたは組織特異的プロモーターである。いくつかの態様において、組織特異的プロモーターは、目特異的プロモーター、任意にレチノスキシンプロモーター、K12プロモーター、ロドプシンプロモーター、桿体特異的プロモーター、錐体特異的プロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター(例として、GRK1プロモーター)、または光受容器間レチノイド結合タンパク質近位(IRBP)プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、RNA pol IIプロモーターまたはRNA pol IIIプロモーターである。
いくつかの態様において、単離された核酸は、第2のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、またはそのバリアントを含む第三領域をさらに含む。
【0009】
いくつかの態様において、第一領域および/または第三領域は、AAV1 ITR、AAV2 ITR、AAV5 ITR、AAV6 ITR、AAV6.2 ITR、AAV7 ITR、AAV8 ITR、AAV9 ITR、AAV10 ITR、AAV11 ITR、またはそのバリアントである。いくつかの態様において、第一領域および/または第三領域は、AAV2 ITRまたはそのバリアントである。
いくつかの側面において、本開示は、本開示によって記載されるような単離された核酸を含むベクターを提供する。いくつかの態様において、ベクターは、プラスミドである。
いくつかの側面において、本開示は、本開示によって記載されるような単離された核酸、またはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0010】
いくつかの側面において、本開示は、以下を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供する:カプシドタンパク質;および、本開示によって記載されるような単離された核酸。いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、AAV8カプシドタンパク質またはAAV5カプシドタンパク質である。いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、配列番号9に記載された配列を含む。
いくつかの態様において、rAAVは、自己相補的なAAV(scAAV)である。
いくつかの態様において、rAAVは、目へと送達のために製剤化されている。
【0011】
いくつかの側面において、本開示は、本開示によって記載されているようなrAAV、および薬学的に許容し得る賦形剤を含む組成物を提供する。
いくつかの側面において、本開示は、それを必要としている対象における、疾患または障害(例として、単一遺伝子疾患、繊毛関連疾患等)を処置するための方法を提供し、該方法は、本開示によって記載された単離された核酸またはrAAVの治療有効量を、疾患または障害(例として、単一遺伝子疾患、繊毛関連疾患等)を有する対象へと投与することを含む。
いくつかの態様において、方法は、1つ以上の抑制性核酸(例として、1つ以上の抑制性核酸をコードする1つ以上の発現コンストラクト)を対象へと投与するステップをさらに含む。いくつかの態様において、1つ以上の抑制性核酸は、疾患または障害(例として、単一遺伝子疾患、繊毛関連疾患等)に関連する1つ以上の遺伝子の発現を抑制する。いくつかの態様において、1つ以上の抑制性核酸は、本開示によって記載されるような単離された核酸またはrAAVによってコードされる導入遺伝子の発現を抑制しない。
【0012】
いくつかの側面において、本開示は、それを必要としている対象における、眼の繊毛関連疾患を処置するための方法を提供し、該方法は、本開示によって記載されるような単離された核酸またはrAAVの治療有効量を、眼の繊毛関連疾患を有する対象へと投与することを含む。
いくつかの態様において、眼の繊毛関連疾患は、対象におけるCEP290遺伝子の突然変異または対象におけるCEP290遺伝子の欠失に関連する。いくつかの態様において、CEP290遺伝子の突然変異または欠失は、網膜変性症、光受容体変性、網膜機能障害、および/または視力の喪失をもたらす。
【0013】
いくつかの態様において、眼の繊毛関連疾患は、レーバー先天黒内障(LCA)、ジュベール症候群、バルデ・ビードル症候群、メッケル・グルーバー症候群、アッシャー症候群、ネフロン癆、またはセニオール・ローケン症候群である。いくつかの態様において、眼の繊毛関連疾患は、レーバー先天黒内障(LCA)である。
いくつかの態様において、CEP290遺伝子における突然変異は、イントロンの突然変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、ミスセンス変異、またはそのいずれかの組み合わせである。
いくつかの態様において、対象はヒトであり、CEP290遺伝子の突然変異は、c.2991+1655の位置に生じており、任意にここで突然変異は、A1655Gである。
【0014】
いくつかの態様において、投与は、単離された核酸またはrAAVの対象の目への送達をもたらす。いくつかの態様において、投与は注射、任意に網膜下注射または硝子体内注射を介する。いくつかの態様において、投与は、対象の目への局所投与である。いくつかの態様において、本開示によって記載されるような単離された核酸またはrAAVは、対象へと2回以上(例として、2、3、4、5、またはそれ以上)投与される。いくつかの態様において、投与は、4週間より長く離れた間隔をあけられる。
いくつかの態様において、方法は、1つ以上の抑制性核酸を対象へと投与することをさらに含み、ここで1つ以上の抑制性核酸は、配列番号1の580~1180、または配列番号1の1181~1695のアミノ酸残基をコードする核酸配列に結合しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、個別のタンパク質相互作用ドメインの位置を表す全長CEP290遺伝子の図式描写を示す。
図2A図2Aは、(繊毛増殖のために)24時間血清飢餓させ、次いで抗アセチル化α-チューブリン抗体(繊毛マーカー)で染色した野生型(WT)およびCep290rd16マウスからのマウス胎仔線維芽細胞(MEF)における繊毛の数および長さに関連した顕微鏡データを示す。下の画像は、より高い倍率での繊毛を描いている。
図2B図2Bは、変異MEFの繊毛の長さにおける統計学的に著しい減少を示す。
図3図3は、GFPまたはGFP-CEP290をコードするコンストラクトで形質転換され、続いてARL13b(繊毛マーカー)およびγ-チューブリンで染色したCep290rd16のMEFを示す。全長CEP290を発現する細胞の繊毛の長さにおいて著しい増大が観察された。GFPをコードするコンストラクトが、陰性対照として使用された。**:p<0.001。
【0016】
図4A図4Aは、ヒトCEP290タンパク質および欠失されたバリアントの略図を示す。Myo-tail:ミオシンテイル(Myosin tail)相同ドメイン。追加のタンパク質相互作用ドメインもまた示されない。
図4B図4Bは、図4Aに記載されたコンストラクトで一過性形質転換されたマウス線維芽細胞の抗GFP抗体を使用したイムノブロット分析を示す。特異的タンパク質のバンド(矢印によって描かれる)が検出され、欠失されたバリアントが細胞において安定的に発現していることを指し示している。
図5A図5Aは、GFP融合全長(FL)CEP290およびGFP、γ-チューブリン、ARL13B抗体を用いたバリアントをコードするプラスミドで一過性形質転換されたCep290rd16線維芽細胞の免疫染色を示す。核は、DAPIを用いて染色した。長い矢印は、基底小体/繊毛のタンパク質の局在を示す一方で、短い矢印は、拡散した染色をマークしている。
図5B図5Bは、ImageJを使用して定量した、図5Aに記載された細胞の繊毛の長さ(n>200)を示す。:p<0.001。ns:有意差なし。
【0017】
図6A図6Aは、GFPのみまたは指し示されたバリアントと融合したGFPをコードするプラスミドを用いて一過性形質転換されたCep290rd16線維芽細胞の抗GFP抗体を使用したイムノブロット分析を示す。矢印は、タンパク質産物の予期されるサイズを指す。分子量マーカーは、kDaの単位で示される。
図6B図6Bは、GFPおよびARL13B(繊毛マーカー)抗体を使用した細胞の免疫染色を示す。核は、DAPIを用いて染色された。矢印は、基底小体/繊毛のタンパク質の局在を指し示す。
図6C図6Cは、ImageJを使用して定量化した細胞の繊毛の長さ(n>200)を示す。:p<0.001。
図7A図7A~7Bは、ミニCEP290580-1180のin vivoの生理学的なレスキュー能力を示す。図7Aは、指し示されたミニCEP290またはGFPをP0/P1期に網膜下に注射され、注射後3週目にERGにより分析されたCep290rd16マウスを示す。同齢の注射されていないWTまたはCep290rd16(同腹の仔)マウスがERGのための対照として使用された。ERGのa波は、矢印で表わされ、一方b波は矢じりを使用して描かれている。データは、少なくとも6匹のマウスの分析を表している。***:p<0.0001。ns:有意差なし。
図7B図7Bは、指し示されたミニCEP290またはGFPをP0/P1期に網膜下に注射され、注射後3週目にERGによって分析されたマウスについての暗順応のa波およびb波の振幅を示す。
【0018】
図8A図8A~8Dは、ミニCEP290580-1180による光受容体のin vivoの形態学的なレスキューを示す。図8Aは、DAPIを用いて染色された指し示されたCEP290580-1180またはGFPを注射されたCep290rd16網膜を示す。
図8BC図8Bは、超薄切片法により評価された、指し示されたミニCEP290580-1180またはGFPを注射されたCep290rd16網膜を示す。ONL(外顆粒層)は、垂直の線を用いてマークされた。WTの網膜切片が比較のために示されている。INL:内顆粒層。図8Cは、ミニCEP290580-1180を注射したCep290rd16マウスにおいて検出されたRDSの改善された発現を示す。GFP染色は、注射された領域をマークしている。
図8D図8Dは、指し示されたミニCEP290を注射されたCep290rd16マウスの網膜の凍結切片が、GFP(注射された領域)、ロドプシン(RHO;桿体特異的)またはM-オプシン(MOP;錐体特異的)抗体およびDAPI(核)で染色されたことを示す。ミニCEP290580-1180の注射された網膜において、外節(OS)に豊富なオプシンの染色が検出される。ミニCEP2902037-2479を注射した網膜において、劇的に減少したオプシンの発現が検出される。ONL:外顆粒層;INL:内顆粒層;GCL:神経節細胞層。
図9図9は、CEP290のミニ遺伝子の追加の態様を示す。
図10図10は、GFPのみまたは指し示したバリアントと融合したGFPをコードするプラスミドを用いて一過性形質転換されたCep290rd16線維芽細胞のImageJを使用して定量化した、抗GFP抗体を使用した、繊毛の長さ(n>200)を示す。
【0019】
図11図11は、指し示されたミニCEP290またはGFPをP0/P1期に網膜下に注射され、注射後3週目にERGによって分析されたCep290rd16マウスを示す。同齢の注射されていないWTまたはCep290rd16(同腹の仔)マウスがERGのための対照として使用された。ERGのa波は、矢印で表わされ、一方b波は矢じりを使用して描かれている。データは、少なくとも6匹のマウスの分析を表している。***:p<0.0001。ns:有意差なし。
図12図12は、指し示されたミニCEP290またはGFPをP0/P1期に網膜下に注射され、注射後3週目にERGによって分析されたマウスについての暗順応のa波およびb波の振幅を示す。注射後4および5週目に実行され、3週目のERGと比べられた注射されたマウスの暗順応(a波およびb波)ならびに明順応のb波の分析が示される。同齢の注射されていないWTおよびGFPの注射されたCep290rd16マウスが対照として使用された。
【0020】
詳細な説明
いくつかの側面において、本開示は、例えば単一遺伝子疾患、繊毛関連疾患等の特定の遺伝子疾患を処置するために有用な組成物および方法に関係する。単一遺伝子疾患は、単一の遺伝子のアレルの異常な発現または機能に起因する疾患である疾患である。単一遺伝子疾患の例は、これに限定されるものではないが、サラセミア、鎌状赤血球貧血、血友病、嚢胞性繊維症、テイ・サックス病、脆弱性X症候群、ハンチントン病等が含まれる。繊毛関連疾患は、細胞の繊毛の発現または機能に影響を及ぼす遺伝子障害である。繊毛関連疾患の例は、これに限定されるものではないが、アルストレーム症候群、バルデ・ビードル症候群、ジュベール症候群、メッケル・グルーバー症候群(Merckel syndrome)、ネフロン癆、口-顔-指症候群、セニオール・ローケン症候群(Senior-Locken syndrome)、多発性嚢胞腎疾患、原発性線毛機能不全、および内臓逆位が含まれる。
本開示は、一部分においては、ウイルス性(例として、rAAV)ベクターなどの遺伝子治療ベクターに基づいており、タンパク質またはペプチド(例として、ミニ遺伝子)などの治療遺伝子産物をコードする1つ以上の遺伝子フラグメント、および疾患又は障害(例として、遺伝子に関連する繊毛関連疾患)に関連する内在性遺伝子バリアント(例として、変異体)を標的とする任意に1つ以上の抑制性核酸を含む。
【0021】
遺伝子治療ベクターは、ウイルスベクター(例として、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター等)、プラスミド、クローズドエンド(closed-ended)DNA(例として、ceDNA)等であってもよい。いくつかの態様において、遺伝子治療ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの態様において、ミニ遺伝子をコードする発現カセットは、1つ以上のウイルス複製配列、例えばレンチウイルスの長い末端反復(LTR)またはアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITRS)に隣接している。
本明細書において使用される、「ミニ遺伝子」は、天然起源のペプチドまたはタンパク質をコードする対応する遺伝子の1つ以上の非必須エレメントが除去され、ミニ遺伝子によってコードされるペプチドまたはタンパク質が対応する天然起源のペプチドまたはタンパク質の機能を保持する、組み換えペプチドまたはタンパク質をコードする単離された核酸配列を指す。「治療ミニ遺伝子」は、例えばジストロフィン、ジスフェリン、第VIII因子、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、チロシナーゼ(Tyr)等の遺伝子疾患の処置について有用であるペプチドまたはタンパク質をコードするミニ遺伝子を指す。ミニ遺伝子は、当該技術分野において公知であり、例えばKarpati and Acsadi (1994) Clin Invest Med 17(5):499-509;Plantier et al. (2001) Thromb Haemost. 86(2):596-603; and Xiao et al. (2007) World J. Gastroenterol. 13(2):244-9によって記載されている。
【0022】
一般的に、ミニ遺伝子(例として、治療ミニ遺伝子)をコードする単離された核酸は、対応する天然起源の野生型タンパク質をコードする核酸配列に関して約10%~約99%(例として、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約90%、約99%等)短縮している。例えば、いくつかの態様において、CEP290タンパク質フラグメントをコードするミニ遺伝子は、野生型CEP290遺伝子と比べて約76%短縮している(例として、核酸配列の約24%を含む)。
【0023】
いくつかの態様において、遺伝子治療ベクターは、ミニ遺伝子によってコードされる遺伝子産物の遺伝子発現をサイレンシングしないが、ミニ遺伝子によってコードされるタンパク質の野生型または疾患関連バリアントに対応する内在性タンパク質の遺伝子発現はサイレンシングする1つ以上の抑制性核酸をさらに含む。例えば、いくつかの態様において、遺伝子治療ベクターは、CEP290タンパク質フラグメントをコードするミニ遺伝子および内因的に発現されるCEP290(例として、c.2991+1655A>G、c.2249T>G、c.7341dupA、c.2118_2122dupTCAGG、c.3814C>T、c.679_680delGA、c.265dupA、c.180+1G?T、c.1550delT、c.4115_4116delTA、c.4966G>T、およびc.5813_5817delCTTTAから選択されるCEP290変異体)発現を抑制するが、ミニ遺伝子によってコードされるCEP290フラグメントの発現を抑制しない1つ以上の抑制性核酸(例として、dsRNA、siRNA、shRNA、miRNA、amiRNA等)を含む。熟練者は、いくつかの態様において、内因的に発現されるCEP290の発現を抑制するが、ミニ遺伝子によってコードされるCEP290フラグメントの発現を抑制しない1つ以上の抑制性核酸が、遺伝子治療コンストラクトとは別の様式で対象に投与されてもよいことを理解するだろう。
【0024】
眼の繊毛関連疾患を処置するための方法
本発明の側面は、対象に送達された際に、眼の繊毛(例として、光受容体の繊毛)の増殖の促進について有効である特定のタンパク質をコードする導入遺伝子(例として、ヒトCEP290のフラグメント)と関係し、対象における光受容体の構造および機能をレスキューする。したがって、本開示に記載された方法および組成物は、いくつかの態様において、レーバー先天黒内障(LCA)、ジュベール症候群、バルデ・ビードル症候群、メッケル・グルーバー症候群、アッシャー症候群、およびセニオール・ローケン症候群などのCEP290遺伝子の突然変異または欠失に関連する眼の繊毛関連疾患の処置に有用である。
導入遺伝子(例として、CEP290タンパク質をコードする遺伝子またはそのフラグメント)を対象へと送達するための方法は、本開示により提供される。方法は、典型的にはCEP290タンパク質フラグメントをコードする単離された核酸、またはCEP290タンパク質フラグメントを発現するための核酸を含むrAAVの有効量を対象に投与することに関係する。
【0025】
ヒトCEP290遺伝子は52のエクソンからなり、約290kDa(2479アミノ酸)のタンパク質についてコードする。いくつかの態様において、ヒトCEP290遺伝子は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードし、GenBank Accession Number(NP_079390.3)として記載されている。いくつかの態様において、ヒトCEP290遺伝子(例として、NCBI Reference Sequence:NM_025114.3)は、配列番号8に記載される配列を含む。
CEP290はマルチドメインタンパク質であり、タンパク質の全体の長さにわたって分布する多数のコイルドコイルドメインを含有する。加えて、CEP290タンパク質は、膜および微小管結合ドメインならびにミオシンテイル相同ドメインを含有する。典型的には、CEP290は、一次繊毛の中心体および移行帯、ならびに光受容体のCCへと主に局在している。先の刊行物は、タンパク質を中心体へと局在させるCEP290のドメイン(例として、CEP290遺伝子の「M領域」、US2016/0185832において記載されている)が微小管の局在および繊毛の形成を媒介するために必要であることが観察された。いくつかの態様において、「M領域」は、US2016/0185832に記載されるように、ヒトCEP290の1695~1966アミノ酸残基を指す。
【0026】
本開示の側面は、一部分においては、「M」領域を 欠いている特定のCEP290フラグメントが、例えばウイルスベクター(例として、rAAV)の投与を介して、それを必要としている対象において発現する際に、繊毛の形成のレスキューおよび光受容体のレスキューを媒介するという驚くべき発見に基づいている。
したがっていくつかの側面において、本開示は、CEP290タンパク質フラグメントをコードする導入遺伝子を提供し、ここでCEP290タンパク質フラグメントは、配列番号1の位置1695~1966のアミノ酸(例として、「M」領域を網羅する領域)を含まない。「CEPタンパク質フラグメント」は、CEP290タンパク質の2~2479(例として、2~2479のいずれかの整数)のアミノ酸部分を指す。いくつかの態様において、CEPタンパク質フラグメントは、CEP290(例として、配列番号1)の連続したアミノ酸部分(例として、580~1180のアミノ酸)を含む。いくつかの態様において、CEPタンパク質フラグメントは、CEP290(例として、配列番号1)の1つ以上の(例として、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)断続したアミノ酸部分(例として、1~10、580~1180および1967~2470のアミノ酸)を含む。
【0027】
いくつかの態様において、CEP290タンパク質フラグメントは、配列番号1の少なくとも500個の連続したアミノ酸を含む。例えば、いくつかの態様において、CEP290タンパク質フラグメントは、CEP290(例として、配列番号1)の580~1695のアミノ酸、または580~1180のアミノ酸、または1181~1695のアミノ酸を含む(またはそれらからなる)。いくつかの態様において、少なくとも500個の連続したアミノ酸は、配列番号:2、3および4から選択される配列を含むかまたはそれらからなる。いくつかの態様において、本開示は、CEP290タンパク質フラグメントをコードする核酸(例として、単離された核酸)を含む導入遺伝子を提供する。いくつかの態様において、導入遺伝子は、配列番号:5、6および7から選択される核酸配列を含むかまたはそれらからなる。
【0028】
いくつかの態様において、本開示により記載されるCEP290フラグメントをコードする導入遺伝子は、繊毛の増殖および光受容体のレスキューを媒介し、したがって繊毛関連疾患、例えば眼の繊毛関連疾患を処置するために有用である。一般的に、「繊毛関連疾患」は、対象の細胞において繊毛の異常な形成または機能をもたらす欠陥のある(または欠けている)タンパク質の機能によって特徴づけられる疾患または障害を指す。「眼の繊毛関連疾患」は、繊毛の異常な形成または機能が対象の眼の細胞(例として、桿体、錐体、光受容細胞等)において生じ、典型的には網膜変性症、視力の喪失および失明をもたらす、繊毛関連疾患である。繊毛関連疾患の例は、これらに限定されるものではないが、メッケル・グルーバー症候群およびジュベール症候群などの早期に発病する発生異常、バルデ・ビードル症候群、セニオール・ローケン症候群、およびアッシャー症候群などの比較的後期に発病する疾患を包含する。いくつかの態様において、網膜ジストロフィー(例として、眼の繊毛関連疾患に起因する)は、非症候性様式においてより一般的に存在する。
【0029】
いくつかの態様において、眼の繊毛関連疾患は、レーバー先天黒内障(LCA)である。一般的に、LCAは、生まれたときかまたは5~7歳の年齢のいずれかに始まる早期に発病する重症網膜変性症を伴う臨床的および遺伝的に不均一(heterogeneous)な疾患である。一般的に、CEP290における突然変異(単数または複数)は、LCA(LCA10;OMIM611755)の>26%を占める。いくつかの態様において、LCAは、対象におけるCEP290遺伝子の欠失に特徴づけられる。一般的に、LCAをもたらすCEP290における突然変異は、イントロンの 突然変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異、ミスセンス変異、またはそれらのいずれかの組み合わせであってもよい。LCAに関連するCEP290 遺伝子の突然変異の例は、これらに限定されるものではないが、c.2991+1655A>G、c.2249T>G、c.7341dupA、c.2118_2122dupTCAGG、c.3814C>T、c.679_680delGA、c.265dupA、c.180+1G?T、c.1550delT、c.4115_4116delTA、c.4966G>T、およびc.5813_5817delCTTTAを含み、例えばden Hollander et al. (2006) Am J Hum Genet. 79(3):556-561によって記載されている。いくつかの態様において、CEP290における突然変異は、例えばc.2991+1655Aの位置での深刻なイントロンの 突然変異である。いくつかの態様において、深刻なイントロンの 突然変異は、c.2991+1655A>Gである。
【0030】
対象(例として、CEP290 遺伝子の欠失または突然変異に関連する繊毛関連疾患を有するかまたは有する疑いのある対象)のCEP290遺伝子における欠失および/または突然変異は、対象から得られた試料(例として、DNA試料、RNA試料、血液試料、または他の生物学的試料)から当該技術分野において公知のいずれかの方法によって同定されてもよい。例えば、いくつかの態様において、核酸(例として、DNA、RNA、またはそれらの組み合わせ)は対象から得られた生物学的試料より抽出され、核酸シーケンシングは、CEP290遺伝子における突然変異を同定するために実行される。核酸シーケンシング技法の例は、これらに限定されるものではないが、マクサム・ギルバート配列決定法、パイロシーケンシング、鎖停止配列決定法、超並列末端固有配列解析、単分子配列決定法(single-molecule sequencing)、ナノポアシーケンシング、イルミナシーケンス手法等を包含する。いくつかの態様において、CEP290遺伝子における突然変異または欠失は、例えばCEP290タンパク質の発現(例として、ウェスタンブロッティングによって)または機能(例として、繊毛の増殖、構造、機能等を分析することによって)を定量することによって間接的に、またはDNAの直接シーケンシングおよび得られた配列と制御DNA配列(例として、野生型CEP290DNA 配列)を比べることによって検出される。
【0031】
いくつかの側面において、本開示は、それを必要としている対象における眼の繊毛関連疾患を処置するための方法を提供し、方法は、本開示により記載されているとおりの、単離された核酸またはrAAVの治療有効量を、眼の繊毛関連疾患を有する対象へ投与することを含む。
【0032】
物質の「有効量」は、所望の効果を生み出すのに十分な量である。いくつかの態様において、単離された核酸(例として、本明細書に記載されたとおりのCEP290タンパク質フラグメントをコードする導入遺伝子を含む単離された核酸)の有効量は、対象の標的組織の十分な数の標的細胞を形質転換させる(または、rAAV媒介送達の文脈において、感染させる)のに十分な量である。いくつかの態様において、標的組織は、眼組織(例として、光受容細胞、桿体細胞、錐体細胞、網膜神経節細胞、網膜細胞、その他)である。いくつかの態様において、単離された核酸(例として、rAAVを介して送達され得るもの)の有効量は、対象において、例として、興味対象の遺伝子またはタンパク質(例として、CEP290)の発現を増加させるかまたは補うこと、または対象において疾患の1つ以上の症状(例として、LCAなどの眼の繊毛関連疾患の症状)を改善すること、その他、の治療的有用性を有するのに十分な量であり得る。有効量は、例えば、対象の種、年齢、重量、健康状態、および標的とすべき組織などの様々な因子に依存し、ゆえに、本開示の他の箇所に記載されているとおり、対象および組織間で変動し得る。
【0033】
単離された核酸
いくつかの側面において、本開示は、ヒトCEP290、またはそのフラグメントを発現させるために有用である単離された核酸を提供する。「核酸」配列は、DNAまたはRNA配列を指す。いくつかの態様において、本開示のタンパク質および核酸は、単離されている。本明細書で使用される用語「単離された」は、人工的に生産されたことを意味する。核酸に関して本明細書で使用される用語「単離された」は、以下を意味する:(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、in vitroで増幅されている;(ii)クローニングにより、組み換えで生産されている;(iii)切断およびゲル分離によるなどで、精製されている;または(iv)例えば化学合成により、合成されている。
【0034】
単離された核酸は、当該技術分野において周知である組み換えDNA技法によって簡単に操作可能なものである。ゆえに、その5’および3’制限部位が知られているか、またはそのためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているベクターに含有されるヌクレオチド配列は、単離されているとみなされるが、その天然状態でその自然宿主中に存在する核酸配列は、そうではない。
【0035】
単離された核酸は実質的に精製されていてもよいが、そうである必要はない。例えばクローニングまたは発現ベクター内で単離されている核酸は、それが存在している細胞内におけるごく微小なパーセンテージの材料を含み得るという点で、純粋ではない。かかる核酸は、しかしながら、本明細書で使用されている用語でいえば、単離されており、なぜなら、それは、当該技術分野において通常の知識を有する者に知られている標準的な技法によって簡単に操作可能であるからである。タンパク質またはペプチドに関して本明細書で使用される用語「単離された」は、それの自然環境から単離されたか、または人工的に生産された(例として、化学合成による、組み換えDNA技術による、その他)、タンパク質またはペプチドを指す。
【0036】
熟練者はまた、カプシドタンパク質の機能的に等価なバリアントまたはホモログが提供されるように保存的アミノ酸置換がなされ得ることも当然認識する。いくつかの側面において本開示は、保存的アミノ酸置換をもたらす配列変異を包含する。本明細書で使用される保存的アミノ酸置換は、アミノ酸置換がなされるタンパク質の相対電荷またはサイズ特性を改変しないアミノ酸置換を指す。
【0037】
バリアントは、当該技術分野において通常の知識を有する者に知られているポリペプチド配列を改変するための方法、例えばかかる方法をまとめた参照物、例として、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambrook、et al.、eds.、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1989、またはCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M. Ausubel、et al.、eds.、 John Wiley & Sons、Inc.、New Yorkにおいて見出されるものなどに従って調製することができる。アミノ酸の保存的置換は、以下の群内のアミノ酸の間でなされる置換を含む:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D。したがって、本明細書に開示されたタンパク質およびポリペプチドのアミノ酸配列に対して保存的アミノ酸置換を生じさせることができる。
【0038】
本発明の単離された核酸は、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(rAAVベクター)であり得る。いくつかの態様において、本開示により記載されている単離された核酸は、第1のアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)またはそのバリアントを含む領域(例として、第一領域)を含む。単離された核酸(例として、組み換えAAVベクター)は、カプシドタンパク質中にパッケージングされて、対象へ投与され、および/または選択された標的細胞へ送達されてもよい。「組み換えAAV(rAAV)ベクター」は、典型的には、最低限、導入遺伝子およびその調節配列、ならびに5’および3’AAV逆方向末端反復(ITR)から構成される。導入遺伝子は、本明細書の他の箇所に開示されているとおり、1つ以上のタンパク質(例として、ヒトCEP290またはそのフラグメント)をコードする1つ以上の領域を含み得る。導入遺伝子はまた、本開示の他の箇所に記載されているとおり、例えば、miRNA結合部位および/または発現制御配列(例として、ポリAテール)をコードする領域を含んでもよい。
【0039】
一般的に、ITR配列は、長さ約145bpである。好ましくは、実質的に、ITRをコードする全配列が分子の中で使用されるが、これらの配列のある程度の小さな修正は許容される。これらのITR配列を修正する能力は、当該技術分野における知識の範囲内である。(例として、Sambrook et al.、"Molecular Cloning. A Laboratory Manual"、2d ed.、Cold Spring Harbor Laboratory、New York (1989);およびK. Fisher et al.、J Virol.、70:520 532 (1996)などの、テキストを参照)。本発明において採用されるかかる分子の例は、選択された導入遺伝子配列および関連付けられる調節エレメントが5’および3’AAV ITR配列によって隣接されている、導入遺伝子を含有する、「シス作用(cis-acting)」プラスミドである。AAV ITR配列は、現在同定されている哺乳動物AAV型を含む、あらゆる知られているAAVから得られ得る。いくつかの態様において、単離された核酸(例として、rAAVベクター)は、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびそのバリアントから選択される血清型を有する少なくとも1つのITRを含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、AAV2 ITRをコードする領域(例として、第一領域)を含む。
【0040】
いくつかの態様において、単離された核酸は、第2のAAV ITRを含む領域(例として、第二領域、第三領域、第四領域、その他)をさらに含む。いくつかの態様において、第2のAAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、およびそのバリアントから選択される血清型を有する。いくつかの態様において、第2のITRは、機能的な末端解離部位(TRS)を欠いた変異ITRである。用語「末端解離部位を欠いている」は、ITRの末端解離部位(TRS)の機能を無効化する突然変異(例として、非同義変異などのセンス変異、またはミスセンス変異)を含むAAV ITRを、または、機能的なTRSをコードする核酸配列を欠いている短縮AAV ITR(例として、ΔTRS ITR)を、指すことができる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、機能的なTRSを欠いているITRを含むrAAVベクターは、自己相補的なrAAVベクター、例えばMcCarthy (2008) Molecular Therapy 16(10):1648-1656により記載されているとおりのものを生産する。
【0041】
組み換えAAVベクターについて上記に同定された重要なエレメントに加えて、ベクターはまた、ベクターで形質転換されたかまたは本発明によって生産されたウイルスに感染した細胞中におけるその転写、翻訳および/または発現を許容する様式で、導入遺伝子のエレメントと作動可能に(operably)結びついている、従来からある制御エレメントも含む。本明細書で使用される「作動可能に結びついている」配列は、興味対象の遺伝子に連続した発現制御配列、および、興味対象の遺伝子を制御するためにトランスにまたは距離が離れたところで作用する発現制御配列の、両方を含む。発現制御配列は、適切な転写開始、終止、プロモーターおよびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセッシングシグナル;細胞質性mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を向上させる配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列);タンパク質安定性を向上させる配列;および所望に応じて、コードされた産物の分泌を向上させる配列を含む。天然、構成的、誘導性、および/または組織特異的プロモーターを含む数々の発現制御配列が当該技術分野において知られており、および利用され得る。
【0042】
本明細書で使用される核酸配列(例として、コード配列)と調節配列とは、それらが、核酸配列の発現または転写が調節配列の影響下または制御下に置かれるように共有結合的に結びついているときに、作動可能に結びついていると言われる。もしも核酸配列が機能的なタンパク質へと翻訳されることが所望される場合には、5’調節配列におけるプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらすのであれば、および、2つのDNA配列の間の結びつきの性質が、(1)フレームシフト変異の導入をもたらさないか、(2)プロモーター領域の、コード配列の転写を命令する能力と干渉しないか、または(3)対応するRNA転写産物の、タンパク質へと翻訳される能力と干渉しないのであれば、2つのDNA配列が作動可能に結びついていると言われる。
【0043】
ゆえに、プロモーター領域が、その結果得られる転写産物が所望のタンパク質またはポリペプチドへと翻訳され得るようにそのDNA配列の転写を行わせることを可能とするのであれば、プロモーター領域は、核酸配列に作動可能に結びついていることになる。同様に、2つ以上のコード領域は、共通のプロモーターからのそれらの転写が、インフレームにて翻訳された2つ以上のタンパク質の発現をもたらすように結びついているときに、作動可能に結びついている。いくつかの態様において、作動可能に結びついているコード配列は、融合タンパク質を産み出す。いくつかの態様において、作動可能に結びついているコード配列は、機能的なRNA(例として、miRNA)を産み出す。
【0044】
「プロモーター」は、細胞の合成装置または導入された合成装置によって認識されるDNA配列であって、遺伝子の個別具体的な転写を開始するのに要求されるものを指す。句「作動可能に位置している」、「制御下」または「転写制御下」は、プロモーターが、RNAポリメラーゼ開始および遺伝子の発現を制御するための核酸との関係において正しい位置と向きにあることを意味する。
【0045】
タンパク質をコードする核酸については、ポリアデニル化配列が、一般的には導入遺伝子配列の後、3’AAV ITR配列の前に挿入される。本開示において有用なrAAVコンストラクトは、望ましくはプロモーター/エンハンサー配列と導入遺伝子との間に位置するイントロンもまた含有し得る。1つの考え得るイントロン配列は、SV-40に由来し、SV-40 T イントロン配列と称される。別の使用され得るベクターエレメントは、内部リボソーム侵入部位(IRES)である。IRES配列は、単一の遺伝子転写物から1つよりも多くのポリペプチドを生産するのに使用される。IRES配列は、1つよりも多くのポリペプチド鎖を含有するタンパク質を生産するのに使用されることとなる。これらの選択および他の普及しているベクターエレメントは従来からあり、数多くのかかる配列が入手可能である[例として、Sambrook et al.,およびそこにおいて引用された参照物、例えば頁3.18 3.26および16.17 16.27、ならびにAusubel et al.、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York、1989を参照]。
【0046】
いくつかの態様において、口蹄疫ウイルス2A配列が、ポリプロテインに含まれる;これは、ポリプロテインの切断を媒介することが示されている小ペプチド(長さおよそ18アミノ酸)である(Ryan、M D et al.、EMBO、1994; 4: 928-933;Mattion、N M et al.、J Virology、November 1996; p. 8124-8127;Furler、S et al.、Gene Therapy、2001; 8: 864-873;およびHalpin、C et al.、The Plant Journal、1999; 4: 453-459)。2A配列の切断活性は、プラスミドおよび遺伝子治療ベクター(AAVおよびレトロウイルス)を含む人工的な系において既に実証されている(Ryan、M D et al.、EMBO、1994; 4: 928-933;Mattion、N M et al.、J Virology、November 1996; p. 8124-8127;Furler、S et al.、Gene Therapy、2001; 8: 864-873;およびHalpin、C et al.、The Plant Journal、1999; 4: 453-459;de Felipe、P et al.、Gene Therapy、1999; 6: 198-208;de Felipe、P et al.、Human Gene Therapy、2000; 11: 1921-1931.;およびKlump、H et al.、Gene Therapy、2001; 8: 811-817)。
【0047】
構成的プロモーターの例は、限定されることなしに、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意に、RSVエンハンサーとともに)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意に、CMVエンハンサーとともに)[例として、Boshart et al.、Cell、41:521-530 (1985)を参照]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーター[Invitrogen]を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、強化ニワトリβ-アクチンプロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、U6プロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーターである。
【0048】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を許し、外から供給された化合物、温度などの環境因子、または個別具体的な生理学的状態の存在、例として、急性期、細胞の特定の分化状態、または複製細胞においてのみ、によって調節されることができる。誘導性プロモーターおよび誘導系は、様々な商業的供給源から入手可能であり、それらは限定されることなしに、Invitrogen、ClontechおよびAriadを含む。数多くの他の系が記載されており、当該技術分野における知識を有する者によって簡単に選択されることができる。
【0049】
外から供給されたプロモーターによって調節される誘導性プロモーターの例は、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオネイン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系(WO98/10088);エクジソン昆虫プロモーター(No et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93:3346-3351 (1996))、テトラサイクリン抑制系(Gossen et al.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:5547-5551 (1992))、テトラサイクリン誘導系(Gossen et al.、Science、268:1766-1769 (1995)、Harvey et al.、Curr. Opin. Chem. Biol.、2:512-518 (1998)もまた参照)、RU486誘導系(Wang et al.、Nat. Biotech.、15:239-243 (1997)およびWang et al.、Gene Ther.、4:432-441 (1997))およびラパマイシン誘導系(Magari et al.、J. Clin. Invest.、100:2865-2872 (1997))を含む。この文脈において有用であり得るさらに他の誘導性プロモーターのタイプは、個別具体的な生理学的状態、例として、温度、急性期、細胞の特定の分化状態、または複製細胞においてのみ、によって調節されるものである。
【0050】
別の態様において、導入遺伝子のための天然プロモーターが使用されることとなる。天然プロモーターは、導入遺伝子が天然の発現を模倣することが所望されるときに、好ましいとされ得る。天然プロモーターは、導入遺伝子の発現が時間的にもしくは発達に応じて、または組織特異的な様式で、または特異的な転写刺激に応答して、調節されなければならないときに、使用され得る。さらなる態様において、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位またはKozakコンセンサス配列などの、他の天然発現制御エレメントもまた、天然の発現を模倣するのに使用され得る。
【0051】
いくつかの態様において、調節配列は、組織特異的遺伝子発現能を付与する。いくつかの場合において、組織特異的調節配列は、組織特異的な様式で転写を誘導する組織特異的転写因子を結合させる。かかる組織特異的調節配列(例として、プロモーター、エンハンサー、その他)は、当該技術分野において周知である。いくつかの態様において、組織特異的プロモーターは、眼特異的プロモーターである。眼特異的プロモーターの例は、これに限定されるものではないが、レチノスキシンプロモーター、K12プロモーター、ロドプシンプロモーター、桿体特異的プロモーター、錐体特異的プロモーター、ロドプシンキナーゼプロモーター、GRK1プロモーター、光受容器間レチノイド結合タンパク質近位(IRBP)プロモーター、およびオプシンプロモーター(例として、赤オプシンプロモーター、青オプシンプロモーター、その他)を含む。
【0052】
いくつかの態様において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIII(polIII)プロモーターである。polIIIプロモーターの非限定的な例は、U6およびH1プロモーター配列を含む。いくつかの態様において、プロモーターは、RNAポリメラーゼII(polII)プロモーターである。polIIプロモーターの非限定例は、T7、T3、SP6、RSV、およびサイトメガロウイルスプロモーター配列を含む。いくつかの態様において、polIIIプロモーター 配列は、1つ以上の抑制性核酸の発現を駆動し、およびpolIIプロモーター 配列は、ミニ遺伝子の発現を駆動する。
【0053】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
いくつかの側面において、本開示は、単離されたAAVを提供する。AAVに関して本明細書で使用される用語「単離された」は、人工的に生産されたかまたは得られたAAVを指す。単離されたAAVは、組み換え法を使用して生産され得る。かかるAAVは、本明細書において、「組み換えAAV」と称される。組み換えAAV(rAAV)は、好ましくは、1つ以上のあらかじめ決められた組織(単数または複数)へヌクレアーゼおよび/またはrAAVの導入遺伝子が特異的に送達されるような、組織特異的標的能を有する。AAVカプシドは、これらの組織特異的標的能を決定するのに重要な要素である。ゆえに、標的とされる組織のために適切なカプシドを有するrAAVを、選択することができる。
【0054】
所望のカプシドタンパク質を有する組み換えAAVを得るための方法は、当該技術分野において周知である(例えば、US2003/0138772を参照、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。典型的には、方法には、AAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列;機能的なrep遺伝子;組み換えAAVベクターAAV逆方向末端反復(ITR)および導入遺伝子から構成された組み換えAAVベクター;およびAAVカプシドタンパク質中への組み換えAAVベクターのパッケージングを許容するのに十分なヘルパー機能、を含有する宿主細胞を培養することが関与する。
【0055】
いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、AAVのcap遺伝子によってコードされる構造タンパク質である。AAVは、3つのカプシドタンパク質、ビリオンタンパク質1~3(VP1、VP2およびVP3と名付けられている)を含み、これらの全ては、選択的スプライシングを介して、単一のcap遺伝子から転写されている。いくつかの態様において、VP1、VP2およびVP3の分子量は、夫々、約87kDa、約72kDaおよび約62kDaである。いくつかの態様において、翻訳されると、カプシドタンパク質は、球状の60merのタンパク質シェルをウイルスゲノムの周りに形成する。いくつかの態様において、カプシドタンパク質の機能は、ウイルスゲノムを保護し、ゲノムを送達して宿主と相互作用させることである。いくつかの側面において、カプシドタンパク質は、組織特異的な様式で宿主へウイルスゲノムを送達する。
【0056】
いくつかの態様において、AAVカプシドタンパク質は、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAVrh8、AAV9、およびAAV10からなる群から選択されるAAV血清型のものである。いくつかの態様において、AAVカプシドタンパク質は、非ヒト霊長類に由来する血清型のもの、例えばAAVrh8血清型である。いくつかの態様において、AAVカプシドタンパク質は、対象の目への指向性を有する血清型のもの、例えば、対照の眼細胞を他のベクターよりも効率的に形質導入するAAV(例として、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.39およびAAVrh.43)のものである。いくつかの態様において、AAVカプシドタンパク質は、AAV8血清型またはAAV5血清型のものである。いくつかの態様において、AAVカプシドタンパク質は、配列番号9に規定された配列を含む。
【0057】
rAAVベクターをAAVカプシド中にパッケージングするために宿主細胞中において培養すべき構成成分は、宿主細胞へとトランスに提供されてもよい。代替的に、要求される構成成分(例として、組み換えAAVベクター、rep配列、cap配列、および/またはヘルパー機能)のいずれか1つ以上が、要求される構成成分の1つ以上を含有するように当該技術分野における知識を有する者に知られている方法を使用して操作された安定な宿主細胞によって、提供されてもよい。最も好適には、かかる安定な宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下で要求される構成成分(単数または複数)を含有することになる。しかしながら、要求される構成成分(単数または複数)は、構成的プロモーターの制御下であってもよい。好適な誘導および構成的プロモーターの例は、導入遺伝子とともに使用するのに好適な調節エレメントの考察において、本明細書において提供される。
【0058】
さらに別の代替において、選択された安定な宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下における選択された構成成分(単数または複数)および1つ以上の誘導性プロモーターの制御下における他の選択された構成成分(単数または複数)を含有し得る。例えば、安定な宿主細胞は、293細胞に由来するもの(構成的プロモーターの制御下におけるE1ヘルパー機能を含有するもの)が生成され得るが、これは誘導性プロモーターの制御下におけるrepおよび/またはcapタンパク質を含有するものである。さらに他の安定な宿主細胞も、当該技術分野における知識を有する者によって生成され得る。
【0059】
いくつかの態様において、本開示は、タンパク質(例として、CEP290タンパク質フラグメント)をコードするコード配列を含む核酸を含有する宿主細胞に関する。いくつかの態様において、本開示は、上記に記載した宿主細胞を含む組成物に関する。いくつかの態様において、上記の宿主細胞を含む組成物は、凍結保存剤をさらに含む。
【0060】
本開示のrAAVを生産するのに要求される、組み換えAAVベクター、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、あらゆる適切な遺伝子エレメント(ベクター)を使用して、パッケージング宿主細胞へ送達され得る。選択された遺伝子エレメントは、本明細書に記載されたものを含むあらゆる好適な方法によって送達され得る。この開示のあらゆる態様を構築するのに使用する方法は、核酸操作の知識を有する者に知られており、遺伝子工学的、組み換え工学的、および合成的技法を含む。例として、Sambrook et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、N.Y.を参照。 同様に、rAAVビリオンを生成する方法は周知であり、好適な方法の選択は、本開示に対する限定ではない。例として、K. Fisher et al.、J. Virol.、70:520-532 (1993)および米国特許第5,478,745号を参照。
【0061】
いくつかの態様において、組み換えAAVは、トリプルトランスフェクション法(米国特許第6,001,650号において詳細に記載されている)を使用して生産されえる。典型的には、組み換えAAVは、宿主細胞を、AAV粒子中へとパッケージングされるべき組み換えAAVベクター(導入遺伝子を含む)、AAVヘルパー機能ベクター、および補助機能ベクターで形質転換することによって生産される。
【0062】
AAVヘルパー機能ベクターは、生産的なAAV複製およびカプシド形成(encapsidation)のためにトランスに機能する「AAVヘルパー機能」配列(すなわち、repおよびcap)をコードする。好ましくは、AAVヘルパー機能ベクターは、いかなる検出可能な野生型AAVビリオン(すなわち、機能的なrepおよびcap遺伝子を含有するAAVビリオン)も生産することなく効率的なAAVベクター生産を支持する。本開示とともに使用するのに好適なベクターの非限定例は、米国特許第6,001,650号において記載されているpHLP19および米国特許第6,156,303号において記載されているpRep6cap6ベクターを含み、その両方の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
補助機能ベクターは、AAVが複製のために依存する非AAV由来のウイルスおよび/または細胞機能(すなわち、「補助機能」)のヌクレオチド配列をコードする。補助機能は、AAV複製に要求されるような機能を含み、それらは限定されることなしに、AAV遺伝子転写の活性化、段階特異的AAV mRNAスプライシング、AAV DNA複製、cap発現産物の合成、およびAAVカプシドアセンブリに関与している部分を含む。ウイルスベースの補助機能は、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス1型以外)およびワクシニアウイルスなどの知られているヘルパーウイルスのいずれに由来するものとすることもできる。
【0064】
いくつかの側面において、本開示は、形質転換された宿主細胞を提供する。用語「形質転換」は、細胞による外来DNAの取り込みを指すのに使用され、外因性DNAが細胞膜の内部に導入されているときに、細胞は「形質転換されている」。数々の形質転換技法が、当該技術分野において一般的に知られている。例として、Graham et al. (1973) Virology、52:456、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning、a laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratories、New York、Davis et al. (1986) Basic Methods in Molecular Biology、Elsevier、およびChu et al. (1981) Gene 13:197を参照。かかる技法は、ヌクレオチド統合ベクターおよび他の核酸分子などの1つ以上の外因性の核酸を好適な宿主細胞中へと導入するのに使用することができる。
【0065】
「宿主細胞」は、興味対象の物質を内部に持っているか、または内部に持つことを可能とする、あらゆる細胞を指す。しばしば、宿主細胞は、哺乳動物細胞である。宿主細胞は、AAVヘルパーコンストラクト、AAVミニ遺伝子プラスミド、補助機能ベクター、または組み換えAAVの生産と関連付けられる他のトランスファーDNAについての、レシピエントとして使用され得る。用語は、形質転換された起源細胞の子孫を含む。ゆえに、本明細書で使用される「宿主細胞」は、外因性DNA配列で形質転換された細胞を指し得る。自然、偶発的または意図的変異に起因して、単一の親細胞の子孫は必ずしもその元の親と形態学的にまたはゲノムもしくは総DNA相補体において完全に同一でないこともあり得ることが理解される。
【0066】
本明細書で使用される用語「細胞株」は、in vitroで継続的または長期的な増殖および分裂を可能とする細胞の集団を指す。しばしば、細胞株は、単一の前駆細胞に由来するクローン集団である。かかるクローン集団の保管または移動の間に、核型において自然発生的なまたは誘導された変化が生じる可能性があることが、当該技術分野においてさらに知られている。したがって、言及される細胞株に由来する細胞は祖先細胞または培養物と厳密に同一でないこともあり得、言及される細胞株には、かかるバリアントが含まれる。
【0067】
本明細書で使用される用語「組み換え細胞」は、生物学的に活性なポリペプチドの転写または生物学的に活性なRNAなどの核酸の生産に至らせるDNAセグメントなどの、外来性DNAセグメントが導入された細胞を指す。
【0068】
本明細書で使用される用語「ベクター」は、適した制御エレメントと関連付けられたときに複製を可能とするものであり、遺伝子配列を細胞間で移動させることができるものである、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオン、その他、などのあらゆる遺伝子エレメントを含む。ゆえに、当該用語は、クローニングおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを含む。いくつかの態様において、有用なベクターは、転写されるべき核酸セグメントがプロモーターの転写制御下に位置しているようなベクターであることが企図される。
【0069】
「プロモーター」は、細胞の合成装置または導入された合成装置によって認識されるDNA配列であって、遺伝子の個別具体的な転写を開始するのに要求されるものを指す。句「作動可能に位置している」、「制御下」または「転写制御下」は、RNAポリメラーゼの開始および遺伝子の発現を制御するために、プロモーターが、核酸との関係において正しい位置と向きにあることを意味する。
【0070】
用語「発現ベクターまたはコンストラクト」は、核酸コード配列の一部または全てが転写されることを可能とするものである、核酸を含有する遺伝的コンストラクトのあらゆるタイプを意味する。いくつかの態様において、発現は、例えば生物学的に活性なポリペプチド産物または機能的なRNA(例として、ガイドRNA)を転写された遺伝子から生成するための、核酸の転写を含む。本開示にのrAAVを生産する所望のAAVカプシドにおける組換えベクターのパッケージングのための前述の方法は、限定されることを意味せず、他の好適な方法は、熟練者にとって明白であるだろう。
【0071】
目へのCEP290導入遺伝子のrAAV媒介送達
対象における眼(例として、光受容体、例えば桿体細胞または錐体細胞、網膜細胞、その他)組織へ導入遺伝子を送達するための方法が、本明細書において提供される。方法には、典型的には、対象において導入遺伝子(例として、CEP290タンパク質フラグメント)を発現させるための核酸を含むrAAVの有効量を、対象へ投与することが関与する。rAAVの「有効量」は、対象における標的組織の十分な数の細胞を感染させるのに十分な量である。いくつかの態様において、標的組織は、眼(例として、光受容体、網膜、その他)組織である。
【0072】
rAAVの有効量は、対象における治療的有用性を有するのに、例として、対象において疾患の1つ以上の症状を改善するのに、例として、眼の繊毛関連疾患(例として、LCAなどのCEP290遺伝子の欠失または突然変異に関係した眼の繊毛関連疾患)の症状を改善するのに、十分な量であり得る。いくつかの場合において、rAAVの有効量は、安定した体細胞遺伝子組み換え動物モデルを生産するために十分な量であり得る。有効量は、例えば、対象の種、年齢、重量、健康状態、および標的とすべき眼組織などの様々な因子に依存し、ゆえに、対象および組織間で変動し得る。
【0073】
有効量はまた、使用されるrAAVにも依存し得る。本発明は、その一部において、特定の血清型(例として、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.39、およびAAVrh.43)を有するカプシドタンパク質を含むあるrAAVが、異なる血清型を有するカプシドタンパク質を含むrAAVよりも、眼(例として、光受容体、網膜、その他)組織のより効率的な形質導入を媒介する、という認識に基づく。ゆえにいくつかの態様において、rAAVは、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.39、およびAAVrh.43からなる群から選択されるAAV血清型のカプシドタンパク質を含む。いくつかの態様において、rAAVは、AAV8血清型のカプシドタンパク質(配列番号9)を含む。いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、配列番号9と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、カプシドタンパク質は、AAV5カプシドタンパク質である。
【0074】
ある態様において、rAAVの有効量は、kgあたり1010、1011、1012、1013、または1014ゲノムコピーである。ある態様において、rAAVの有効量は、対象あたり1010、1011、1012、1013、1014、または1015ゲノムコピーである。
【0075】
有効量は、投与方式にもまた依存し得る。例えば、基質内投与または皮下注射によって眼(例として、光受容体、網膜、その他)組織を標的とすることは、いくつかの場合においては、別の方法(例として、全身投与、局所投与)によって眼(例として、光受容体、網膜、その他)組織を標的とする場合とは、異なる(例として、より高いかまたはより低い)用量を要し得る。いくつかの態様において、ある血清型(例として、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.39、およびAAVrh.43)を有するrAAVの基質内注射(IS)は、眼(例として、角膜、光受容体、網膜、その他)細胞の効率的な形質導入を媒介する。ゆえに、いくつかの態様において、注射は、基質内注射(IS)である。いくつかの態様において、投与は、注射、任意には網膜下注射または硝子体内注射を介する。いくつかの態様において、注射は、局所投与(例として、目への局所投与)である。いくつかの場合において、rAAVの複数回用量が投与される。
【0076】
いずれの特定の理論によって限定されることを望まずに、本明細書に記載されたrAAVによる眼(例として、光受容体、網膜、その他)細胞の効率的な形質導入は、眼の疾患(例として、眼の繊毛関連疾患)を有する対象の処置のために有用であり得る。従って、眼の疾患を処置するための方法および組成物もまた、本明細書において提供される。いくつかの側面において、本開示は、眼の繊毛関連疾患(例として、CEP290遺伝子の欠失または突然変異に関係する眼の繊毛関連疾患)を処置するための方法を提供し、方法は、rAAVの有効量を、眼の繊毛関連疾患を有するかまたは有する疑いがある対象へ投与することを含み、ここでrAAVは、(i)AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh.8、AAVrh.10、AAVrh.39、およびAAVrh.43からなる群から選択される血清型を有するカプシドタンパク質、および、(ii)導入遺伝子(例として、本開示により記載されているとおりのCEP290タンパク質フラグメントをコードする導入遺伝子)と作動可能に結びついているプロモーターを含む核酸を含む。
【0077】
いくつかの態様において、本開示によって記載されるrAAV(または単離された核酸)の投与は、細胞または繊毛、任意に光受容体知覚の繊毛を含む細胞の形質導入をもたらす。光受容体(PR)の感覚繊毛は、内節の頂端表面で基底小体から核形成される。微小管が伸長するにつれ、それらは、結合繊毛(CC)と呼ばれるダブレット微小管構造を形成する。CCは、原型繊毛(prototypic cilium)の移行帯に類似しており、光受容体細胞の外節(OS)内へと伸長する。CCは、内節と外節との間のカーゴ部分の一方向性または双方向性の輸送のための導管としての役割を担う。CCは、その特有の組成物の維持を助けるカーゴの侵入または退出を調節するための「門番」としての役割もまた担う。いくつかの態様において、本開示によって記載されるとおりのrAAV(または単離された核酸)の投与は、光受容体の感覚繊毛、結合繊毛、またはその組み合わせの増殖または形成をもたらす。
【0078】
rAAVは、当該技術分野において知られているあらゆる適切な方法に従って、組成物にて対象へ送達され得る。rAAVは、好ましくは生理学的に適合性の担体中に(すなわち、組成物中に)懸濁されており、対象、すなわち、ヒト、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウサギ、ウマ、ウシ、ヤギ、ブタ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、シチメンチョウ、または非ヒト霊長類(例として、マカクザル)などの宿主動物へ投与され得る。いくつかの態様において、宿主動物は、ヒトを含まない。
【0079】
哺乳動物対象へのrAAVの送達は、例えば、眼内注射または局所投与(例として、点眼剤)によるものであり得る。いくつかの態様において、眼内注射は、基質内注射、結膜下注射、または硝子体内注射である。いくつかの態様において、注射は、局所投与ではない。投与方法の組み合わせ(例として、局所投与および基質内注射)もまた、使用することができる。
【0080】
本開示の組成物は、rAAVを単独で、または1つ以上の他のウイルス(例として、1つ以上の異なる導入遺伝子を有するコードする第2のrAAV)との組み合わせで含み得る。いくつかの態様において、組成物は、夫々が1つ以上の異なる導入遺伝子を有する1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、またはそれ以上の異なるrAAVを含む。
【0081】
いくつかの態様において、組成物は、薬学的に許容し得る担体をさらに含む。好適な担体は、当該技術分野における知識を有する者により、rAAVが向けられた適応を考慮して簡単に選択され得る。例えば、1つの好適な担体は、様々な緩衝液(例として、リン酸緩衝生理食塩水)とともに製剤化されていてもよい生理食塩水を含む。他の例示の担体は、滅菌生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナツ油、ゴマ油、および水を含む。担体の選択は、本開示についての限定ではない。
【0082】
任意に、本開示の組成物は、rAAVおよび担体(単数または複数)に加えて、保存剤または化学安定剤などの他の医薬成分を含有し得る。好適な例示の保存剤は、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールを含む。好適な化学安定剤は、ゼラチン、およびアルブミンを含む。
【0083】
rAAVは、所望の組織(例として、光受容体、網膜、その他の組織などの眼組織)の細胞を形質転換するのに、ならびに過度の悪影響なしに遺伝子導入および発現の十分なレベルを提供するのに十分な量で投与される。薬学的に許容し得る投与経路の例は、これに限定されるものではないが、選択された器官への直接送達(例として、目への網膜下送達)、経口、吸入(経鼻および気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腫瘍内、および他の非経口の投与経路を含む。投与経路は、所望に応じて組み合わせてもよい。
【0084】
特定の「治療効果」を達成するのに要求されるrAAVビリオンの用量、例として、ゲノムコピー/キログラム体重あたり(GC/kg)での用量の単位は、以下を含むがこれに限定されない複数の因子に基づき変動することとなる:rAAVビリオン投与の経路、治療効果を達成するのに要求される遺伝子またはRNA発現のレベル、処置される個別具体的な疾患または障害、および遺伝子またはRNA産物の安定性。当該技術分野における知識を有する者は、特定の疾患または障害を有する患者を処置するためのrAAVビリオンの用量範囲を、前述の因子ならびに他の因子に基づいて簡単に決定することができる。
【0085】
rAAVの有効量は、動物を標的として感染させ、所望の組織を標的とするのに、十分な量であり得る。有効量は、一次的には、対象の種、年齢、重量、健康状態、および標的とすべき組織などの因子に依存し、ゆえに、動物および組織間で変動し得る。例えば、rAAVの有効量は、一般的に、約10~1016ゲノムコピーを含有する溶液約1ml~約100mlの範囲にある。いくつかの場合において、約1011~1013の間のrAAVゲノムコピーの投薬量が適切である。ある態様において、10rAAVゲノムコピーが、眼組織(例として、角膜組織)を標的とするのに有効である。いくつかの態様において、10rAAVゲノムコピーよりも高濃度の用量は、対象の目へ投与されたときに毒性である。いくつかの態様において、有効量は、rAAVの複数回用量によって生み出される。
【0086】
いくつかの態様において、rAAVの用量は、1暦日(例として、24時間の期間)あたり1回を超えない範囲で対象へ投与される。いくつかの態様において、rAAVの用量は、2、3、4、5、6、または7暦日あたり1回を超えない範囲で対象へ投与される。いくつかの態様において、rAAVの用量は、1暦週(例として、7暦日)あたり1回を超えない範囲で対象へ投与される。いくつかの態様において、rAAVの用量は、隔週(例として、2暦週の期間に1回)を超えない範囲で対象へ投与される。いくつかの態様において、rAAVの用量は、1暦月(例として、30暦日に1回)あたり1回を超えない範囲で対象へ投与される。いくつかの態様において、rAAVの用量は、6暦月あたり1回を超えない範囲で対象へ投与される。いくつかの態様において、rAAVの用量は、1暦年(例として、365日またはうるう年において366日)あたり1回を超えない範囲で対象へ投与される。
【0087】
いくつかの態様において、rAAV組成物は、組成物中におけるAAV粒子の凝集を、特に、高いrAAV濃度(例として、約1013GC/mlまたはそれ以上)が存在する場合に、低減させるように製剤化される。その凝集を低減させるための適切な方法、例えば、界面活性剤の添加、pH調整、塩濃度調整、その他(例として、Wright FR、et al.、Molecular Therapy (2005) 12、171-178を参照、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる。)を含む、が使用され得る。
【0088】
薬学的に許容し得る賦形剤および担体溶液の製剤化は、様々な処置レジメンにて本明細書に記載された特定の組成物を使用するための好適な用量および処置レジメンの開発がそうであるように、当該技術分野における知識を有する者に周知である。活性成分(単数または複数)のパーセンテージはもちろん変動してもよく、便宜的に、全製剤の重量または体積の約1または2%と約70%または80%またはそれ以上との間であってもよいが、典型的には、これらの製剤は、少なくとも活性化合物の約0.1%またはそれ以上を含有し得る。当然のことながら、各々の治療的に有用な組成物中の活性化合物の量は、化合物のあらゆる所与の単位用量で好適な投薬量が得られるように調製され得る。溶解性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与の経路、製品有効期間、ならびに他の薬理学的な検討事項などの因子が、かかる医薬製剤を調製する技術の当業者によって企図されることになり、またそれゆえに、様々な投薬量および処置レジメンが望ましいとされ得る。
【0089】
いくつかの態様において、本明細書に開示された好適に製剤化された医薬組成物中のrAAVは、標的組織に直接的に、例として、眼組織(例として、光受容体、網膜、その他の組織)へ直接、送達される。しかしながら、ある状況においては、これとは別にまたは加えて、rAAVベースの治療用コンストラクトを、別の経路を介して、例として、皮下で、膵臓内で、経鼻で、非経口で、静脈内で、筋肉内で、髄腔内で、または経口で、腹腔内で、または吸入により、送達することが望ましいとされ得る。いくつかの態様において、米国特許第5,543,158号;第5,641,515号および第5,399,363号(夫々具体的にその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたとおりの投与のあり方が、rAAVを送達するのに使用され得る。いくつかの態様において、好ましい投与方式は、硝子体内注射または網膜下注射によるものである。
【0090】
注射可能な使用に好適な医薬形態は、滅菌された注射可能な溶液または分散液の即時調製のための、滅菌された水溶液または分散液および滅菌された粉末を含む。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中において、および油中において、調製されてもよい。通常の保管および使用の条件下にて、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含有する。数多くの場合において、形態は、滅菌であり、容易な注射針通過性が存在する程度に流体である。それは、製造および保管の条件下で安定でなければならず、および、細菌および菌類などの微生物の汚染作用に抗して保存されなければならない。
【0091】
担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例として、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合物、および/または植物油を含有する溶媒または分散媒とすることができる。適した流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合においては要求される粒子サイズの維持により、および、界面活性剤の使用により維持され得る。種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によって、微生物の作用の防止を引き起こすことができる。数多くの場合において、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。吸収を遅延させる剤、例えば、モノアステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの、組成物中における使用により、注射可能な組成物の長期的な吸収を引き起こすことができる。
【0092】
注射可能な水溶液の投与のために、例えば、溶液は、必要であれば好適に緩衝化されてもよく、液体の希釈剤は十分な生理食塩水またはグルコースで最初に等張にされる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与のためにとりわけ好適である。これに関連して、好適な滅菌された水媒体が採用され得る。例えば、一投薬量が、1mlの等張NaCl溶液中に溶解され、これは1000mlの皮下注入用の流体に添加されてもよいし、または提案される注入部位に注射されてもよい(例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第15版、頁1035-1038および1570-1580を参照)。投薬量におけるいくらかの変動は、宿主の状態に応じて、必然的に生じることとなる。投与に対して責任を持つ者は、いかなる場合にも、個々の宿主にとって適切な用量を決定するものとする。
【0093】
滅菌された注射可能な溶液は、要求される量の活性なrAAVを、要求に応じて本明細書中に列挙された他の成分の種々のものとともに、適切な溶媒中に組み込み、濾過滅菌がこれに続くことによって、調製される。一般的に、分散液は、基礎的な分散媒および上記に列挙されたものからの要求される他の成分を含有する滅菌されたビヒクル中に種々の滅菌された有効成分を組み込むことにより調製される。滅菌された注射可能な溶液の調製のための滅菌された粉末の場合においては、好ましい調製の方法は、活性成分の粉末に既に滅菌濾過された溶液からのあらゆる追加の所望の成分が加わったものを産み出す、真空乾燥および凍結乾燥法である。
【0094】
本明細書に開示されたrAAV組成物はまた、中性または塩形態にて製剤化されてもよい。薬学的に許容し得る塩は、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基とともに形成された)、および、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等のような有機酸とともに形成されたものを含む。遊離カルボキシル基とともに形成された塩もまた、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化鉄などの無機塩基、および有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等、に由来するものとすることもできる。製剤化されると、溶液は、投薬製剤と適合可能な様式にて、治療的に有効であるような量で投与されることとなる。製剤は、注射可能な溶液、薬物放出カプセル等のような様々な投薬形態にて、容易に投与される。
【0095】
本明細書で使用される「担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、ビヒクル、コーティング剤、希釈剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、緩衝液、担体溶液、懸濁液、コロイド等を含む。薬学的に活性な物質のためのかかる媒体および剤の使用は、当該技術分野において周知である。補助的な活性成分もまた、組成物中へと組み込むことができる。句「薬学的に許容し得る」は、宿主へ投与されたときにアレルギーまたはこれに類似する有害反応を生み出さない分子実体および組成物を指す。
【0096】
送達ビヒクル、例えばリポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、ベシクル等が、好適な宿主細胞中への本開示の組成物の導入のために使用され得る。特に、rAAVベクターによって送達される導入遺伝子は、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノスフェア、またはナノ粒子等のいずれにカプセル化されて送達のために製剤化されてもよい。
【0097】
かかる製剤は、本明細書に記載された核酸またはrAAVコンストラクトの薬学的に許容し得る製剤の導入のために、好ましいとされ得る。リポソームの形成および使用は、当該技術分野における知識を有する者に一般的に知られている。最近、改善された血清安定性および循環半減時間を有するリポソームが開発された(米国特許第5,741,516号)。さらに、潜在的な薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様調製物の種々の方法が記載されている(米国特許第5,567,434号;第5,552,157号;第5,565,213号;第5,738,868号および第5,795,587号)。
【0098】
リポソームは、普通は他の手順による形質転換に抵抗性であるような数々の細胞型とともに、首尾よく使用されている。加えて、リポソームは、ウイルスベースの送達系に典型的であるDNA長の制約がない。リポソームは、遺伝子、薬物、放射線治療剤、ウイルス、転写因子およびアロステリックエフェクターを様々な培養された細胞株および動物へ導入するのに効果的に使用されている。加えて、リポソーム媒介薬物送達の有効性を検査した、数件の成功した臨床試験が完了している。
【0099】
リポソームは、水媒体中に分散されたリン脂質から形成され、自然に多重膜同心二層ベシクル(多重膜ベシクル(MLV)ともまた呼ばれる)を形成する。MLVは、一般的に、25nmから4μmまでの直径を有する。MLVの超音波処理は、コアの中に水溶液を含有する、200~500Åの範囲の直径を有する小さな一枚膜ベシクル(SUV)の形成をもたらす。
【0100】
代替的に、rAAVのナノカプセル製剤を使用してもよい。ナノカプセルは、一般的に、物質を安定かつ再現性のあるやり方で封入することができる。細胞内ポリマー過負荷(intracellular polymeric overloading)に起因する副作用を避けるために、in vivoで分解されることが可能であるポリマーを使用して、かかる超微細粒子(およそ0.1μmのサイズである)を設計すべきである。これらの要求を満たす生分解性ポリアルキルシアノアクリラートナノ粒子が、使用に企図される。
【0101】
キットおよび関連する組成物
本明細書に記載された剤は、いくつかの態様において、治療の、診断のまたは調査の用途におけるそれらの使用を容易化するための、医薬または診断または調査キットにまとめられてもよい。キットはまた、本開示の構成成分および使用説明書を収容する1つ以上の容器を含んでもよい。具体的には、かかるキットは、本明細書に記載された1つ以上の剤を、これらの剤の意図する適用および適した使用を説明した指示と一緒に含み得る。ある態様において、キットにおける剤は、特定の適用に、および剤の投与の方法に好適な医薬製剤および投薬量であり得る。調査目的のためのキットは、種々の実験を実行するのに適切な濃度または分量で構成成分を含有し得る。
【0102】
いくつかの態様において、本開示は、rAAVを生産するためのキットに関し、キットは、配列番号2~4のいずれか1つに規定されたアミノ酸配列を有するCEP290タンパク質フラグメントをコードする導入遺伝子を含む単離された核酸を収容する容器を含む。いくつかの態様において、キットは、AAVカプシドタンパク質、例えばAAV8カプシドタンパク質(例として、配列番号9)、をコードする単離された核酸を収容する容器をさらに含む。
【0103】
キットは、研究者らによって本明細書に記載された方法の使用を容易化するように設計されてもよく、多数の形態を取ることができる。キットの組成物の各々は、適用可能な場合、液体形態(例として、溶液中)にて、または個体形態(例として、乾燥粉末)にて提供されてもよい。ある場合において、組成物のいくつかは、例えば、キットとともに提供されてもされなくてもよい好適な溶媒または他の種(例えば、水または細胞培養培地)の添加により、構成可能(constitutable)または別様に処理可能(例として、活性型へと)であってもよい。
【0104】
本明細書で使用される「指示」は、指示および/または販売促進の構成成分を定義することができ、典型的には、本開示のパッケージ上にまたはこれと関連付けられて書かれた指示書が関与する。指示は、その指示がキットと関連すべきであることをユーザーが明確に認識することとなるような、あらゆる様式にて提供される、あらゆる口頭または電子的指示、例えば、オーディオビジュアル(例として、ビデオテープ、DVD、その他)、インターネット、および/またはウェブに基づいた通信、その他をもまた含むことができる。指示書は、医薬品または生物学的製剤の製造、使用または販売を規制する政府機関によって定められた形であり得、これらの指示はまた、動物投与のための製造、使用または販売についての当局による承認を反映するものとすることもできる。
【0105】
キットは、本明細書に記載された構成成分のいずれか1つ以上を、1つ以上の容器中に、含有し得る。例として、一態様において、キットは、キットの1つ以上の構成成分を混合するための、および/または、試料を単離および混合して対象に適用するための、指示を含み得る。キットは、本明細書に記載された剤を収容する容器を含み得る。剤は、液体、ゲルまたは固体(粉末)の形態であり得る。剤は、無菌的に調製され、シリンジ中にパッケージングされて冷蔵で出荷されてもよい。代替的に、それは保管のためにバイアルまたは他の容器中に収容されてもよい。第2の容器は、無菌的に調製された他の剤を有してもよい。代替的に、キットは、あらかじめ混合されてシリンジ、バイアル、チューブ、または他の容器中にて出荷される活性薬剤を含んでもよい。
【0106】
本発明の例示態様を、以下の例により、より詳細に記載する。これらの態様は、本発明について例示的であり、当業者はこれらが例示態様に限定されないことを認識する。
【実施例
【0107】

CEP290-LCAについての治療戦略
CEP290-LCA患者の網膜の中心領域の相対的な不足が、遺伝子治療が患者において視力の回復のための実行可能な選択肢であるだろうことを指し示す。しかしながら、長大であるCEP290遺伝子を従来からある遺伝子治療のためのAAVベクター系内へとパッケージングすることが不適当であるために、CEP290-LCAのための突然変異と独立した遺伝子置換戦略の開発における進展は大きく遅れている。この例には、CEP290-LCAを処置するためのAAVを介したCEP290フラグメントの送達を記載する。いくつかの態様において、記載されたCEP290フラグメントは、繊毛の増殖および光受容体の機能を突然変異とは独立した様式において回復し、ゆえに非症候性LCAおよびCEP290の突然変異に起因する全身性繊毛関連疾患における網膜変性症の処置に有用である。
【0108】
全長CEP290cDNAは、約8kb長であり、一般的な従来からあるAAVベクターのパッケージング限界を超過している。図1に、個別のタンパク質相互作用ドメインの位置を表す全長CEP290遺伝子の図式描写を示す。ここで、光受容体(PR)における機能を保持し、従来からあるAAVベクターを使用して送達することができる、CEP290フラグメントを同定した。CEP290は繊毛タンパク質でり、繊毛の増殖を調節するので、繊毛の増殖のin vitroアッセイが、より短いCEP290領域の機能を試験するための代理マーカーとして使用するために開発された。早期発病の重症PR変性の表現型を再現している、Cep290変異(Cep290rd16)マウス由来のマウス胎仔線維芽細胞(MEF)が、より少ない繊毛細胞を有し、繊毛を形成する細胞が対照と比較してより短かったことが観察された。この観察は、CEP290-LCA患者試料由来の線維芽細胞において繊毛がより少なく、より短いことを明らかにしている先の研究と一致している。
【0109】
図2A~2Bに示すように、Cep290rd16のMEFの繊毛は、約3.8μmの長さの繊毛を有する対象と比べて、約2.7μmの長さである。加えて、対象と比べて、より少ない繊毛を有する細胞が、Cep290rd16のMEFの間で検出された。
次に、全長ヒトCEP290タンパク質を発現させることのCep290rd16のMEFにおける繊毛の長さへの効果を調査した。繊毛マーカーであるARL13bを用いた共染色によって決定されるように、全長ヒトCEP290タンパク質が正確に繊毛に局在することが観察された(図3)。GFPタンパク質を発現させることは、繊毛のその局在をもたらさなかった。加えて、繊毛の長さの測定により、CEP290タンパク質の発現がGFPの発現と比べて、Cep290rd16のMEFの繊毛の長さを著しくレスキューしたことが示された。
【0110】
vCEP290の構成
CEP290遺伝子は、主にコイルドコイルタンパク質をコードする。GFP融合ミニCEP290580-1695、ミニCEP2901751-2050およびミニCEP2902037-2479図4A)をコードするプラスミドなどの、ヒトCEP290の繰り返しドメインを除去するコンストラクトを生産した。バリアントを、CMVプロモーターの制御下で遺伝子を発現するpEGFP-C1ベクター内でクローニングした。一過性形質転換されたマウス胎仔線維芽細胞からのタンパク質抽出物のイムノブロット分析(図4B;矢印参照)によって決定されるような、安定したCEP290タンパク質フラグメントをコンストラクトは発現する。ミニCEP290の機能的な能力を試験するために、Cep290rd16MEF(マウス胎仔線維芽細胞)を使用した代理アッセイ系が使用された。図9は、CEP290バリアントの追加の例を示す。
【0111】
繊毛の長さへのvCEP290の効果
図5Aに示すように、Cep290rd16または野生型マウス胎仔線維芽細胞内での異なるGFP-vCEP290をコードするプラスミドの発現は、vCEP290580-1695が主に基底小体(γ-チューブリンとの共局在)および近位繊毛(ADPリボース化因子様13B;ARL13B;繊毛のマーカーとの共局在)へと局在していることを指し示す。他のバリアントの発現は、比較的拡散した局在のパターンを指し示す。Cep290rd16線維芽細胞において、vCEP290の繊毛の長さを調整する能力について次いで評価した。図5Bに示すように、vCEP290580-1695が発現した際に、変異線維芽細胞の繊毛の長さは著しく増加した。他のバリアント、およびGFPのみ発現する陰性対照について、線維芽細胞の繊毛の長さにおける変化は明らかにならなかった。野生型線維芽細胞の繊毛の長さに効果がないことが観察された。
【0112】
vCEP290580-1695をさらに短縮することが繊毛の長さのレスキューをもたらすかどうかを、次に調査した。GFP融合vCEP290580-1180およびvCEP2901181-1695をコードするプラスミドを生産し、Cep290rd16の線維芽細胞におけるそれらの発現、局在および繊毛の長さをレスキューする能力を試験した。両方のバリアントは、抗GFP抗体を使用してイムノブロッティングによって決定されるような適切な発現、および繊毛への局在を示した(図6A~6B)。vCEP2901181-1695についてのデータは、繊毛の根本への主な局在および基底小体の周りの分散した染色を指し示している。繊毛レスキューアッセイデータは、いずれかのバリアントの発現がCep290rd16の線維芽細胞の繊毛の長さにおいて著しい増加をもたらすことを指し示す(図6Cおよび図10)。
【0113】
in vivoでのvCEP290の能力
vCEP290コンストラクトのin vivoでの機能性を調査した。vCEP290580-1180、vCEP2901181-1695およびvCEP2902037-2479(線維芽細胞における繊毛の長さの欠陥がレスキューされなかったために陰性対照として)を、CBAプロモーターを有し、興味対象の遺伝子(例として、vCEP290)とGFPとの間にIRES(内部リボソーム侵入部位)を含有するAAV2ベクター内でクローニングした。このことは、CEP290およびGFPの両方が単一のバイシストロニックmRNAからの翻訳を可能にし、抗GFP抗体を使用して形質導入された光受容体を同定することにおいて役立つ。各々のrAAV(例として、AAV2/8-CBA-vCep290580-1180-IRES-GFP、AAV2/8-CBA-vCep2901181-1695-IRES-GFP、AAV2/8-CBA-vCep2902037-2472-IRES-GFP、および陰性対照のAAV2/8-CBA-GFP)を、P0期のCep290rd16の仔の網膜下腔内へと1μlの体積内に8x10vg/目で注射した。マウスを注射後5週間までのPR機能および網膜の形態について評価した。
【0114】
注射後3週目の網膜電図検査(ERG)によるPR機能の分析は、ミニCEP290580-1180の注射されたマウスでの暗順応(桿体PRに媒介される)および明順応(錐体PRにより媒介される)(図7A~B、および図11~12)の反応の両方において改善(25~30%)を明らかとした。ミニCEP2902037-2479またはGFPを使用したものについて改善は検出されなかった。さらなる分析にて、ERGにおける改善が注射後4週目まで安定していることが明らかとなった。
PRの生存と関連がある、ONLの層の数を、網膜の凍結切片においてもまたカウントした:図8Aにおいて示されるように、ミニCep290580-1180を注射したCep290rd16の網膜においては約6~7層を観察した;ミニCep2901181-1695を注射したCep290rd16の網膜においては4~5層を観察し、および;ミニCep2902037-2472またはGFPを注射した網膜(注射されていない3週齢のCep290rd16と等価である)においては2~3層を観察した。ミニCEP290580-1180を注射したCEP290rd16の網膜の超薄切片が、外顆粒層(ONL)の著しい保存を示していることもまた観察された(図8B)。
【0115】
ミニCEP290580-1180を注射したマウスにおける外節の光受容体(PR)の構造の保存を、ペリフェリン-RDS(retinal degeneraton slow、PR外節マーカー45)で染色することによって検査した。RDSは、外節(OS)ディスクに特異的に局在し、OS構造を維持する構造タンパク質である。ミニCEP290580-1180を注射したCep290rd16マウスは、GFPを注射したマウスにおいてRDSが未検出であったことに比べてRDSの外節への局在が改善されたことを示した(図8C)。ロドプシンおよび錐体オプシンの発現といった、2つの重要な光情報伝達タンパク質もまた検査された。ミニCEP2902037-2479を注射した網膜において、オプシンの発現が未検出であることが検出された。しかしながら、ミニCEP290580-1180を注射した網膜にて、外節におけるロドプシンおよび錐体オプシンの検出可能な発現が明らかになった(図8D)。内節および外顆粒層において錐体オプシンのいくつかの染色もまた観察された。全体的に、データは、ミニCEP290580-1180の発現が、CEP290rd16の網膜の機能、形態およびオプシンの輸送(trafficking)を改善することができることを指し示している。
【0116】
材料および方法
細胞培養、一過性形質転換および免疫染色
WTおよびCep290rd16マウス由来のMEFは、10%FBSを含むDMEM中で維持された。GFP-CEP290-FLまたはGFP-ミニCEP290を用いた一過性形質転換を、Lipofectamine 2000(Thermo Fisher)を使用して実施した。形質転換された細胞を、イムノブロッティングのために採取するか、または血清飢餓にして繊毛の増殖を誘導するかのいずれかをした。繊毛性の細胞を、次いで、免疫染色し、ライカの顕微鏡(DM5500)下で画像を取得した。画像は、次いで繊毛の長さの評価のためにImage Jを使用して処理した。
【0117】
コンストラクトおよびAAV生産
in vitro実験のために、全長またはミニCEP290発現cDNAを、CMVプロモーターの制御下でGFPタグ付けされたタンパク質を発現するpEGFP-C1プラスミド内でクローニングした。AAV生産のために、ミニCEP290をコードするcDNAを、pAAV2ベクタープラスミド内の、IRES(内部リボソーム侵入部位)GFPの上流のCMVエンハンサー/CBA(チキンβ-アクチン)プロモーターとβ-グロビンイントロンとの間でクローニングした。この発現カセットは、AAV2逆方向末端反復(ITR)に隣接していた。組み換えAAV2ゲノムを、HEK293の三重形質転換法によってAAV8カプシドと共にパッケージングし、CsCl勾配遠心法によって精製した。
【0118】
網膜下注射
野生型C57BL6/Jマウスは、商業的供給源から得られた。Cep290rd16マウスもまた得られた。Cep290rd16マウスの仔(P0/P1)に、8x10vg/μl(計体積1μl)のウイルスを片側の網膜下に注射した。
【0119】
網膜のERGおよび免疫蛍光顕微鏡観察
暗順応および明順応のERGを実行した。暗順応反応のために、マウスを一晩中暗順応させ(dark adapted)て、全ての手順を暗赤色灯下で実行した。30cd/mの背景照明(白色6500K)で8分間の明順応後に、明順応させた(light adapted)(明順応)ERGを記録した。
網膜凍結切片である切片を以下の一次抗体で染色することにより、免疫蛍光顕微鏡観察を実行した:ロドプシン、M-オプシン、およびペリフェリン-RDS、ARL13B、GFP(Abcam)、およびγ-チューブリン。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した後、Alexa-488またはAlexa-546共役二次抗体を添加し、切片をさらに1時間インキュベートした。洗浄後、核をDAPIで染色し、ライカの顕微鏡(DM5500)を使用して細胞の画像を取得した。
【0120】
配列
>ヒトCEP290アミノ酸配列;NCBI Reference Sequence:NP_079390.3(配列番号1)
【化1】
【0121】
>CEP290フラグメント(aa580-1695)アミノ酸配列(配列番号2)
【化2】
【0122】
>CEP290フラグメント(aa580-1180)アミノ酸配列(配列番号3)
【化3】
【0123】
>CEP290フラグメント(aa1181-1695)アミノ酸配列(配列番号4)
【化4】
【0124】
>CEP290フラグメント(aa580-1695)核酸配列(配列番号5)
【化5-1】
【化5-2】
【0125】
>CEP290フラグメント(aa580-1180)核酸配列(配列番号6)
【化6-1】
【化6-2】
【0126】
>CEP290フラグメント(aa1181-1695)核酸配列(配列番号7)
【化7】
【0127】
>CEP290 核酸配列;NCBI Reference Sequence:NM_025114.3(配列番号8)
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【0128】
>AAV8カプシドタンパク質アミノ酸配列(配列番号9)
【化9】
【0129】
本発明のいくつかの態様が本明細書において記載され、例示されている一方、当該技術分野において通常の知識を有する者は、機能を実行するおよび/または結果を得るための様々な他の手段および/または構造、および/または本明細書において記載される利点の1つ以上、およびかかるバリエーションおよび/または修正の各々が本発明の範囲内であると考えることを簡単に想起するだろう。より一般的に、本明細書に記載される全てのパラメーター、寸法、材料、および形状は、例となっていることを意味しており、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または形状は、本発明の教示が使用される特定の適用または複数の適用に依存するであろうことを当業者は簡単に理解するであろう。当業者は、日常の実験に過ぎないものを使用して、本明細書に記載された発明の特定の態様の多くの同等物を認識するかまたは確認することができるであろう。したがって、先の態様が例としてのみ存在しており、添付された特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で、本発明が明確に記載され請求される以外に実行されてもよいことが理解されるだろう。本発明は、本明細書に記載される個々の特色、系、物品、材料、および/または方法の各々へと向けられている。加えて、このような特色、系、物品、材料、および/または方法が互いに矛盾するものではない場合に、このような特色、系、物品、材料、および/または方法のいずれか2つ以上の組み合わせは、本発明の範囲内に包含される。
【0130】
本明細書および特許請求の範囲において使用される、不定冠詞「a」および「an」は明確に反対を指し示さない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲において使用される、「および/または」という句は、結合された要素、すなわちある場合においては結合的に存在し、他の場合においては分離して存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。他の要素には、明確に反対を指し示さない限り、それらの明確に同定される要素と関係するかまたは関係しないかに関わらず、「および/または」節によって明確に同定される要素以外が任意に存在してもよい。ゆえに非限定例として、「含む(comprising)」などのオープンエンドの言語と併せて使用される際に、「Aおよび/またはB」への言及は、一態様において、BなしのA(B以外の要素を任意に包含する);別の態様において、AなしのB(A以外の要素を任意に包含する);さらに別の態様において、AおよびBの両方(他の要素を任意に包含する);等を指し得る。
【0131】
本明細書および特許請求の範囲において使用される、「または」は、上記で定義される「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト中の項目と分離する際に、「または」または「および/または」は、包括的、すなわち、要素の数またはリストの少なくとも1つの包含だけではなく、その2以上および、任意に追加の列記されていない項目を含むことをも理解されるだろう。明確に反対を指し示す用語のみ、例えば、「1つのみの(only one of)」または「正確に1つの(exactly one of)」など、または特許請求の範囲において使用される際の「からなる(consisting of)」は、要素の数またはリストの正確に1つの要素の包含を指すであろう。一般に、「いずれか(either)」、「1つの(one of)」、「1つのみの(only one of)」、または「正確に1つの(exactly one of)」などの排他性の用語によって前置きされる際に、本明細書において使用される、用語「または」は、排他的代替を指し示すものとのみ理解されるだろう(すなわち、「あるものまたは他のものであるがその両方ではない」)。特許請求の範囲において使用される際に、「本質的にからなる([c]onsisting essentially of)」は、特許法の分野において使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0132】
本明細書および特許請求の範囲において使用される、「少なくとも1つ(at least one)」という句は、1つ以上の要素のリストに関して、要素のリスト中のいずれか1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、要素のリスト中に明確に列記されるありとあらゆる要素の少なくとも1つを包含する必要はなく、要素のリスト中の要素のいずれかの組み合わせを除外する必要もない。この定義はまた、要素が「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト中で明確に同定された要素以外を、それらの明確に同定された要素に関係するか関係しないかに関わらず、任意に存在させ得ることを可能にする。ゆえに、非限定例な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、等価的に、「AまたはBの少なくとも1つ」または、等価的に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一態様において、少なくとも1つのAであり、任意に2以上のAを包含し、Bは存在しない(および任意にB以外の要素を包含する);別の態様において、少なくとも1つのBであり、任意に2以上のBを包含し、Aは存在しない(および任意にA以外の要素を包含する);さらに別の態様において、少なくとも1つのAであり、任意に2以上のAを包含し、少なくとも1つのBであり、任意に2以上のBを包含する(および任意に他の要素を包含する);等を指し得る。
【0133】
特許請求の範囲において、上記明細書においてと同様に、「含む(comprising)」、「包含する(including)」、「運ぶ(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「関与する(involving)」、「保持する(holding)」および同様のものなどのすべての移行句は、オープンエンドである、すなわち、包含するがこれに限定されないことを意味していることを理解すべきである。移行句「からなる(consisting of)」および「本質的にからなる(consisting essentially of)」のみが、それぞれ米国特許庁Manual of Patent Examining Procedures、Section 2111.03.に記載されているように、クローズまたはセミクローズの移行句であるとする。
特許請求の範囲における請求項の要素を修飾する「第1の」、「第2の」、「第3の」等といった、順序を示す用語の使用は、それ自体によっていかなる優先、先行、またはある請求項の要素の別のものに対しての順序または方法の動作が実行される時間的順序を暗示することはないが、請求項の要素を区別するために、特定の名称を有するある請求項の要素を(順序を示す用語の使用がなければ)同じ名称を有する別の要素から区別するためのラベルとしてのみ使用される。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8BC
図8D
図9
図10
図11
図12
【配列表】
0007535332000001.xml