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特許7535343軸端補助部材及びそれを用いた部材の接続構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】軸端補助部材及びそれを用いた部材の接続構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240808BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
E04B1/58 507S
E04B1/24 D
E04B1/24 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023130241
(22)【出願日】2023-08-09
【審査請求日】2023-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】599050228
【氏名又は名称】株式会社コーヨークリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】高田 正利
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特許第3764020(JP,B2)
【文献】特開2013-108228(JP,A)
【文献】特表2020-536190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ部(11,12)を備えた第一部材(10)の前記フランジ部(11,12)に対して筒状の第二部材(20,30)をボルト(40)で接合するために用いられ、前記第二部材(20,30)に固定される軸端補助部材(50)において、
前記軸端補助部材(50)は、基板部(51)と、前記基板部(51)に設けられて前記ボルト(40)が挿通されるボルト孔(51a)と、前記ボルト孔(51a)の位置に宛がわれて前記ボルト(40)がねじ込まれるナット(52)と、前記ナット(52)を覆うとともに前記基板部(51)に固定されて前記ナット(52)を回り止めするカバー部材(53)とを備え、
前記カバー部材(53)は前記基板部(51)に溶接で固定されるフラットな基部(53a)と、前記基部(53a)から立ち上がる突出部(53b)とを備え、前記突出部(53b)の前記基部(53a)側の面は前記ナット(52)を収容しつつ前記ナット(52)を回り止めする凹部である軸端補助部材。
【請求項2】
フランジ部(11,12)を備えた第一部材(10)の前記フランジ部(11,12)に対して筒状の第二部材(20,30)をボルト(40)で接合するために用いられ、前記第二部材(20,30)に固定される軸端補助部材(50)において、
前記軸端補助部材(50)は、基板部(51)と、前記基板部(51)に設けられて前記ボルト(40)が挿通されるボルト孔(51a)と、前記ボルト孔(51a)の位置に宛がわれて前記ボルト(40)がねじ込まれるナット(52)と、前記ナット(52)を覆うとともに前記基板部(51)に固定されて前記ナット(52)を回り止めするカバー部材(53)とを備え、
前記カバー部材(53)は前記基板部(51)に溶接で固定され、前記ボルト孔(51a)は前記第二部材(20,30)の筒軸回りに等分方位に設けられ、前記カバー部材(53)の前記基板部(51)への固定箇所(w1)は、前記筒軸回りに隣り合う前記ボルト孔(51a)間にそれぞれ設定されている軸端補助部材。
【請求項3】
フランジ部(11,12)を備えた第一部材(10)の前記フランジ部(11,12)に対して筒状の第二部材(20,30)をボルト(40)で接合するために用いられ、前記第二部材(20,30)に固定される軸端補助部材(50)において、
前記軸端補助部材(50)は、基板部(51)と、前記基板部(51)に設けられて前記ボルト(40)が挿通されるボルト孔(51a)と、前記ボルト孔(51a)の位置に宛がわれて前記ボルト(40)がねじ込まれるナット(52)と、前記ナット(52)を覆うとともに前記基板部(51)に固定されて前記ナット(52)を回り止めするカバー部材(53)とを備え、
前記基板部(51)はその外縁に沿って複数の頂点(55)を有する平面視多角形状を成し、前記第二部材(20,30)の前記軸端(21,31)と前記第一部材(10)の前記フランジ部(11,12)との間に隙間を確保するために、前記第二部材(20,30)の軸端(21,31)が当接する段部(54)を、前記基板部(51)の外縁のうち前記頂点(55)が介在する部分のみに備えている軸端補助部材。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一つに記載の軸端補助部材を用い、
前記軸端補助部材(50)は前記第二部材(20,30)に対して前記ナット(52)が前記第二部材(20,30)の内部側に向くように固定され、
前記第一部材(10)のフランジ部(11,12)に形成された貫通孔(14)及び前記軸端補助部材(50)の前記ボルト孔(51a)に前記ボルト(40)を挿通して前記ナット(52)にねじ込むことにより、前記第一部材(10)の前記フランジ部(11,12)に前記第二部材(20,30)が接合されている部材の固定構造。
【請求項5】
請求項に記載の軸端補助部材を用い、
前記軸端補助部材(50)は前記第二部材(20,30)に対して前記ナット(52)が前記第二部材(20,30)の内部側に向くように固定され、
前記第一部材(10)のフランジ部(11,12)に形成された貫通孔(14)及び前記軸端補助部材(50)の前記ボルト孔(51a)に前記ボルト(40)を挿通して前記ナット(52)にねじ込むことにより、前記第一部材(10)の前記フランジ部(11,12)に前記第二部材(20,30)が接合されており、
前記基板部(51)は、前記段部(54)よりも前記フランジ部(11,12)側で前記第二部材(20,30)の軸端(21,31)に溶接されている部材の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物において部材を接続するために用いる軸端補助部材、及び、その軸端補助部材を用いた部材の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄骨を用いた建築物、構造物等(以下、建造物と総称する)の構造として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。この構造は軸組構造とも呼ばれ、基礎上の複数箇所に柱材を立設するとともに、その柱材間に横方向の梁材を架け渡して構成されている。必要に応じて基礎と梁材間や上下の梁材間に間柱を立て、また、隣り合う梁材間に桁材を架け渡している。さらに、部材の結合点を挟んで互いに90度の対角位置にある部材間を、筋交いと呼ばれる斜め方向の部材で結合するとともに、最上部に屋根組を設けて構築される。なお、一般に軸組構造とは、木造・鉄骨造等の建造物における骨組みのことを指し、土台(基礎)・柱・梁材・桁材・筋交い等で構成されるとされている。
【0003】
この種の軸組構造では、上下方向に立ち上がる柱材の上端に、横方向の梁材が接続されている。また、その柱材(第一柱材と称する)の上方には、梁材を挟んで別の柱材(第二柱材と称する)が接続されている。
【0004】
特許文献1では、第一柱材の上端に梁材を接続するに際し、また、その梁材の上方に第二柱材を接続するに際し、プレート状の軸端補助部材が用いられている。軸端補助部材は、筒状の柱材(第一柱材又は第二柱材)の軸端から内部に挿入されて、溶接により柱材に接合されている。
【0005】
軸端補助部材には表裏方向に貫通する穴が形成されており、その穴の位置に合わせてナットが溶接により接合されている。ナットは、軸端補助部材の表裏面のうち、柱材の内部空間に面する側に固定されている。また、梁材の上フランジ又は下フランジの柱材に対面する箇所には、ボルトを挿通するための穴が形成されている。梁材の上フランジの下面側又は下フランジの上面側からボルトを挿通し、対向する軸端補助部材のナットにねじ込むことで、梁材と柱材とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3764020号公報(第5頁、図2図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の軸端補助部材では、プレート状の基板にボルト挿通用の穴を形成するとともに、その穴の位置に合わせて溶接によりナットを接合している。このため、仮に溶接の施工不良や繰り返し荷重にともなう金属疲労等により溶接部が破断すると、柱材と梁材との接合強度が低下するという問題がある。このためナットの溶接作業には細心の注意が求められ、これが、施工時間の増大とコスト高の要因となっている。
【0008】
また、ナットは、軸端補助部材の表裏面のうち、柱材の内部空間に面する側に固定されているので、ナットと基板との溶接箇所が目視で確認しにくいという問題もある。溶接箇所が視認しにくいと、溶接箇所の不具合の発見が遅れるという問題も生じ得る。
【0009】
そこで、この発明の課題は、作業性の悪化やコスト増大をできる限り抑制しつつ、軸端補助部材の信頼性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明は、
フランジ部を備えた第一部材の前記フランジ部に対して筒状の第二部材をボルトで接合するために用いられ、前記第二部材に固定される軸端補助部材において、前記軸端補助部材は、基板部と、前記基板部に設けられて前記ボルトが挿通されるボルト孔と、前記ボルト孔の位置に宛がわれて前記ボルトがねじ込まれるナットと、前記ナットを覆うとともに前記基板部に固定されて前記ナットを回り止めするカバー部材とを備えている軸端補助部材を採用した(構成1)。
【0011】
構成1において、前記カバー部材は前記基板部に溶接で固定されている構成を採用できる(構成2)。
【0012】
また、構成1において、前記カバー部材は前記基板部に固定され、前記ボルト孔は前記第二部材の筒軸回りに等分方位に設けられ、前記カバー部材の前記基板部への固定箇所は、前記筒軸回りに隣り合う前記ボルト孔間にそれぞれ設定されている構成を採用できる(構成3)。
【0013】
構成2を備えた態様(構成2及び構成3を備えた態様を含む)において、前記基板部はその外縁に沿って前記第二部材の軸端が当接する段部を備えている構成を採用できる(構成4)。
【0014】
構成4を備えた態様において、前記基板部はその外縁に沿って複数の頂点を有する平面視多角形状を成し、前記段部は前記頂点が介在する部分のみに備えられている構成を採用できる(構成5)。
【0015】
これらの各態様の軸端補助部材を用い、前記軸端補助部材は前記第二部材に対して前記ナットが前記第二部材の内部側に向くように固定され、前記第一部材のフランジ部に形成された貫通孔及び前記軸端補助部材の前記ボルト孔に前記ボルトを挿通して前記ナットにねじ込むことにより、前記第一部材の前記フランジ部に前記第二部材が接合されている部材の固定構造を採用できる(構成6)。
【0016】
また、構成4を備えた態様(構成4及び構成5を備えた態様を含む)の軸端補助部材を用い、前記軸端補助部材は前記第二部材に対して前記ナットが前記第二部材の内部側に向くように固定され、前記第一部材のフランジ部に形成された貫通孔及び前記軸端補助部材の前記ボルト孔に前記ボルトを挿通して前記ナットにねじ込むことにより、前記第一部材の前記フランジ部に前記第二部材が接合されており、前記基板部は、前記段部よりも前記フランジ部側で前記第二部材の軸端に溶接されている部材の固定構造を採用できる(構成7)。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、作業性の悪化やコスト増大をできる限り抑制しつつ、軸端補助部材の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の一実施形態を示す断面図
図2】同実施形態の分解斜視図
図3図1の要部拡大図
図4】軸端補助部材の使用状態を示す斜視図
図5】軸端補助部材の基板部とナットを示す斜視図
図6】軸端補助部材のカバー部材を示す斜視図
図7図6の正面図
図8図6の平面図
図9図8のIX-IX断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この発明は、軸端補助部材及びその軸端補助部材を用いた部材の接続構造に関するものである。実施形態では建築物(例えば、戸建てや集合住宅等の住居、オフィスや店舗、倉庫、工場等の用途の建築物)を例に、この発明の構成を説明しているが、それ以外にも、各種の構造物等(例えば、足場や舞台、フェンス、鉄塔、仮設構造物等の用途の構造物)としても、この発明を適用できる。
【0020】
実施形態の構造は軸組構造とも呼ばれ、基礎上に立ち上がる複数本の柱材20(下部柱材20と称する)と、その下部柱材20間に架け渡された横方向の梁材10とを備えている。下部柱材20は、基礎に埋設したアンカーボルトでの締結によって基礎上に固定されている。下部柱材20は、一方向に沿って間隔を置いて設けられ、その一方向に直交する他方向に対しても間隔を置いて設けられる梁材10は、一方向及び他方向に対してそれぞれ設けられ、平面視格子状を成す形態となっている。なお、請求項では、この実施形態における下部柱材20及び上部柱材30を第二部材20,30と称し、梁材10を第一部材10と称している。
【0021】
下部柱材20の上端に梁材10が接続されている。また、下部柱材20の直上には、梁材10を挟んで別の柱材30(上部柱材30と称する)が接続されている。下部柱材20及び上部柱材30の筒軸は一致している。下部柱材20及び上部柱材30は各階毎の高さに相当する長さを有し、梁材10を挟んで上下に分断されて各階毎に独立した別部材になっている。また、建造物の高さや階数に応じて、上部柱材30の上方にさらに梁材10を挟んで別の柱材が接続される場合もある。この場合、梁材10を挟んで下方の柱材は下部柱材20に、梁材10を挟んで上方の柱材は上部柱材30に相当することとなる。
【0022】
なお、図1及び図2には示していないが、必要に応じて基礎と梁材10間や上下の梁材10間を結ぶ上下方向の間柱を設ける場合がある。また、隣り合う梁材10間を結ぶ横方向の桁材を設ける場合もある。さらに、部材の結合点を挟んで互いに90度の対角位置にある梁材10と梁材10、又は、梁材10と柱材20,30の間に筋交いを設ける場合もある。
【0023】
梁材10同士は、図2に示すように、一方向の梁材10の長手方向中途部分に、他方向の梁材10の端部が対向した状態で接続されている。他方向の梁材10は、一方向の梁材10の幅方向両側にそれぞれ配置されて、梁材10同士が互いに90度の角度をもって平面視十字型の配置となっている。
【0024】
梁材10は、上フランジ11及び下フランジ12と、その上フランジ11と下フランジ12とを結ぶウエブ13を備えたH型又はI型断面の鋼材(いわゆるH型鋼等)である。梁材10同士は、図1及び図2に示すように、ガセットプレート15によって連結されている。ガセットプレート15は、板状部材を曲げて構成されており、他方向の梁材10のウエブ13の側面に面接触する第一部分15aと、一方向の梁材10のウエブ13の側面に面接触する第二部分15bと、一方向の梁材10の上フランジ11の下面及び下フランジの上面に面接触する第3部分15cを備えている。第一部分15a、第二部分15b、第3部分15cには、それぞれボルト挿通用の穴が設けられている。また、上フランジ11及び下フランジ12にも、ボルト挿通用の穴14が設けられている。
【0025】
他方向の梁材10のウエブ13の側面に、その表裏両側からガセットプレート15の第一部分15aが宛がわれ、第一部分15aの穴、ウエブ13に形成された穴、反対側の第一部分15aの穴にボルト16が挿通されて、ナット17で締め付けることにより、ガセットプレート15が他方向の梁材10に一体化される。また、一方向の梁材10のウエブ13の側面に、その表裏両側からガセットプレート15の第二部分15bが宛がわれ、第二部分15bの穴、ウエブ13に形成された穴、反対側の第二部分15bの穴にボルト16が挿通されて、ナット17で締め付けることにより、ガセットプレート15が一方向の梁材10に一体化される。図2に示すように、1か所の平面視十字状の梁材10の結合点において、4つのガセットプレート15が使用される。
【0026】
下部柱材20と梁材10との接続、及び、梁材10と上部柱材30との接続に際し、プレート状の軸端補助部材50が用いられている。軸端補助部材50は、板状の基板部51と、基板部51に設けられてボルト40が挿通されるボルト孔51aと、ボルト孔51aの位置に宛がわれてボルト40がねじ込まれるナット52と、ナット52を覆うとともに基板部51に固定されてナット52を回り止めするカバー部材53とを備えている。
【0027】
図3及び図4に示すように、軸端補助部材50は、筒状の下部柱材20又は上部柱材30の軸端から内部に挿入されて、溶接により下部柱材20又は上部柱材30に接合されている。実施形態では、下部柱材20及び上部柱材30が断面四角形の中空形状であるので、軸端補助部材50の基板部51も平面視四角形となっており、基板部51の周囲が下部柱材20又は上部柱材30に溶接されている。なお、基板部51の下部柱材20や上部柱材30への固定は、溶接以外の手法、例えば、ボルトやビスによる接合等としてもよい。
【0028】
図5に示すように、基板部51には表裏方向に貫通するボルト孔51aが形成されており、そのボルト孔51aの位置に合わせてナット52が宛がわれている。実施形態では、ボルト孔51aは4箇所でありナット52も4つ配置されるが、ボルト孔51aやナット52の数は適宜増減できる。ナット52は、基板部51の表裏面のうち、下部柱材20又は上部柱材30の内部空間に面する側に配置されている。ナット52の軸心とボルト孔51aの軸心は一致している。
【0029】
図6及び図7に示すように、カバー部材53は、基板部51のフラットな頂面に面接触するフラットな基部53aと、そのフラットな基部53aから立ち上がる突出部53bとを備えている。突出部53bは、複数面(実施形態では6面)からなる立上り側面53eと、その頂部を覆う天面53cで構成される。突出部53bの基部53a側の面は、ナット52を収容できる凹部となっている。カバー部材53における図中の符号53d及び符号53gは、強度に影響しない範囲で軽量化を行うための肉抜き部53d,53gである。
【0030】
ナット52は軸心に直交する断面が六角形状であり、突出部53b(凹部)の内面形状もナット52に対応した六角形状となっている。ナット52が基板部51上に載置され、カバー部材53がナット52を凹部に収容しつつ、カバー部材53が基板部51に溶接等により固定されることで、ナット52は回り止めされるようになっている。このため、従来のように基板部51に対して個々のナット52を溶接固定することを省略できる。基板部51とカバー部材53とは広い範囲で接触しているので、互いの接合位置、接合構造を選択できる自由度が高いといえる。実施形態では、基部53aに溶接用穴53fを設けてあるので、この位置で溶接(アーク溶接等)すれば、カバー部材53と基板部51との溶け込みが良好である。なお、カバー部材53を基板部51に固定する前段で、基板部51に対してナット52を溶接等により仮固定等(位置決め等)しておくことを排除するものではない。
【0031】
また、カバー部材53の基板部51への接合に代えて又は加えて、カバー部材53を下部柱材20又は上部柱材30に対して溶接、その他手法により接合してもよい。また、実施形態では、カバー部材53をプレス加工品としているが、これを鍛造、鋳造等の他の製法としてもよい。
【0032】
以下、下部柱材20の軸端21と梁材10との接合方法を説明する。
【0033】
基板部51,ナット52及びカバー部材53を備えた軸端補助部材50が、既に下部柱材20の軸端21に固定されているとする。軸端21に、梁材10の下フランジ12の下面が宛がわれる。下フランジ12のボルト挿通用の穴14は、軸端補助部材50のボルト孔51aの位置に一致している。下フランジ12の上側から下方に向かって下フランジ12の穴14、軸端補助部材50のボルト孔51aにボルト40が挿通されて、ナット52にねじ込まれることにより、下部柱材20に梁材10が一体化される。図中のボルト40の頭部41とナット52とで、下フランジ12と基板部51とを締め付けている構成である。ナット52はカバー部材53によって回り止めされているので、このような締め付けが可能である。
【0034】
上部柱材30の軸端31と梁材10との接合についても、部材が上下反転していることを除けば同様である。
【0035】
すなわち、基板部51,ナット52及びカバー部材53を備えた軸端補助部材50が、既に上部柱材30の軸端31に固定されているとする。軸端31が、梁材10の上フランジ11の上面に宛がわれる。上フランジ11のボルト挿通用の穴14は、軸端補助部材50のボルト孔51aの位置に一致している。上フランジ11の下側から上方に向かって上フランジ11の穴14、軸端補助部材50のボルト孔51aにボルト40が挿通されて、ナット52にねじ込まれることにより、上部柱材30が梁材10に一体化される。
【0036】
なお、ナット52の形状や、そのナット52の回り止め機能を発揮する突出部53bの形状(凹部の形状)は、ナット52を回り止めし得る非円形の形状であればよく、実施形態の断面六角形状には限定されない。
【0037】
この実施形態では、4か所のボルト孔51aは、下部柱材20及び上部柱材30の筒軸回りに等分方位に設けられている。カバー部材53の基板部51への固定箇所(溶接箇所)w1は、筒軸回りに隣り合うボルト孔51a間にそれぞれ設定されている。このため、両者の固定がより確実である。一か所の突出部53bに対して、筒軸回りに沿って複数の固定箇所が存在するからである。なお、カバー部材53の基板部51への固定は、溶接以外の手法、例えば、ボルトやビスによる接合等としてもよい。ボルトやビスによる接合を採用する場合も、その固定箇所は、筒軸回りに隣り合うボルト孔51a間にそれぞれ設定されているとよい。
【0038】
また、基板部51の柱材20,30への固定に関し、この実施形態では、図4及び図5に示すように、基板部51の外縁に沿って段部54を形成している。段部54に下部柱材20又は上部柱材30の軸端21,31が当接することで、基板部51は上下部柱材20又は上部柱材30の内部にそれ以上入り込まないように位置決めされる。また、段部54の介在によって、軸端21,31と基板部51の側面との溶接(アーク溶接等)施工のスペースが確保できるので(図3参照)、施工の容易化を図ることもできる。図3に示す実施形態では、基板部51は、梁材10への当接面側にフランジ部56を有している。軸端21,31が段部54に係止されることで、基板部51の一部が柱材20,30内に入り込まず、基板部51と軸端21,31との溶接個所(軸端溶接部w2参照)を確保している。なお、軸端溶接部w2は、基板部51の外縁に沿って全周であってもよいし、その一部であってもよい。
【0039】
また、この実施形態では、基板部51はその外縁に沿って4つの頂点55を有する平面視四角形(正方形)状であり、段部54は4つの頂点55が介在する部分のみに備えられている構成としたが、頂点55以外の部分に段部54を設けてもよく、基板部51の周囲全周に亘って段部54を設けてもよい。また、基板部51の形状は自由であり、種々の形状としてもよいが、柱材20,30の断面形状に合致させることが望ましい。例えば、基板部51の形状を、その外縁に沿って複数の頂点55を有する平面視四角形以外の多角形状としてもよい。この場合も、段部54は、前述のように頂点55が介在する部分のみに備えられていてもよいし、頂点55以外の部分に段部54を設けてもよく、さらに、基板部51の周囲全周に亘って段部54を設けてもよい。また、基板部51は板状部材に限定されず、例えば、ブロック状(直方体状)の部材であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 第一部材(梁材)
11 上フランジ(フランジ部)
12 下フランジ(フランジ部)
20 第二部材(下部柱材)
30 第二部材(上部柱材)
21,31 軸端
40 ボルト
41 頭部
42 ナット
50 軸端補助部材
51 基板部
52 ナット
53 カバー部材
54 段部
w1 固定箇所
w2 軸端溶接部
【要約】
【課題】作業性の悪化やコスト増大をできる限り抑制しつつ、軸端補助部材の信頼性を高める。
【解決手段】第一部材10のフランジ部11,12に対して筒状の第二部材20,30をボルト40で接合するために用いられ、第二部材20,30に固定される軸端補助部材50において、軸端補助部材50は、基板部51と、基板部51に設けられてボルト40が挿通されるボルト孔51aと、ボルト孔51aの位置に宛がわれてボルト40がねじ込まれるナット52と、ナット52を覆うとともに基板部51に固定されてナット52を回り止めするカバー部材53とを備えている軸端補助部材とした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9