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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】非破壊試料採取装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G01N1/04 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023534065
(86)(22)【出願日】2021-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 KR2021015297
(87)【国際公開番号】W WO2022119131
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0167250
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521288297
【氏名又は名称】プキョン ナショナル ユニバーシティ インダストリー-ユニバーシティ コーポレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】Pukyong National University Industry-University Cooperation Foundation
【住所又は居所原語表記】45, Yongso-ro, Nam-gu, Busan 48513, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨンモグ
(72)【発明者】
【氏名】パク、スルキ
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505302(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111175461(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0270710(US,A1)
【文献】特開2004-202208(JP,A)
【文献】特表2003-527138(JP,A)
【文献】特開昭58-007260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の針が備えられたシリンジと、
前記シリンジの移動を案内するためのガイドと、
前記ガイドの下端に連結され、前記シリンジに弾性復元力を伝達する針復元手段と、
を含み、
前記シリンジは、前記ガイドの中空に挿入され、先端運動が行われ、前記針が備えられたバレルおよび前記バレルの中空に挿入され、先端運動によって試料を吸引するプランジャーからなることを特徴とする、非破壊試料採取装置。
【請求項2】
前記針復元手段は、前記針が出入りする開口部が形成され、前記ガイドのフランジに結合されるカバーと、前記カバーとフランジとの間に備えられたガイド部材と、前記ガイド部材に沿って移動し、針が横切る貫通孔が形成された弾性部材および前記弾性部材とカバーの間に介在された圧縮ばねからなることを特徴とする、請求項に記載の非破壊試料採取装置。
【請求項3】
前記貫通孔の内径は、前記バレルの外径よりも小さく形成されていることを特徴とする、請求項に記載の非破壊試料採取装置。
【請求項4】
前記バレルにはガイド突起が形成され、前記ガイドには前記ガイド突起が移動するガイド溝が形成されていることを特徴とする、請求項に記載の非破壊試料採取装置。
【請求項5】
前記ガイド溝は、前記ガイド突起が進入する第1ガイド溝と、前記バレルの離脱を防止する第2ガイド溝とからなることを特徴とする、請求項に記載の非破壊試料採取装置。
【請求項6】
前記ガイド突起が第1ガイド溝の下端に進入した後に前記バレルを回転させると、前記ガイド突起が第2ガイド溝に進入するように構成されたことを特徴とする、請求項に記載の非破壊試料採取装置。
【請求項7】
前記第1ガイド溝と第2ガイド溝との間には離脱防止突起が形成されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の非破壊試料採取装置。
【請求項8】
前記第2ガイド溝の下端に前記ガイド突起が回転によって進入する係止溝が形成されていることを特徴とする、請求項5または6に記載の非破壊試料採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非破壊試料採取装置に関するものであって、水産物の商品性を損なうことなく、且つ、試料の採取が可能な非破壊試料採取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、国内への水産物の輸出が増加し、国内消費も増えているため、水産食品の安全に対する関心が高まっている。
【0003】
韓国は、多様な水産物が生産され消費されており、多様な流通経路を通じて消費者に供給されているが、流通構造が透明でないため、衛生の安全性を確保する必要があるのが実情である。また、水産物の安全に関する問題は、輸出時にも持続的に発生しており、米国やEUなどの先進国を中心に食品の安全性を強化するための様々な措置が取られている。このような水産物は、他の食品に比べて相対的に危害要因が多く散在している食品として認識されており、安全性を証明する必要性がますます高まっている。
【0004】
これに伴い、水産物における危害微生物(細菌、ウイルス、原虫)を検査できる多様な診断方法が提示されている。
【0005】
しかし、水産物に汚染された危害微生物は、肉眼で観察することが難しく、食品公転上の伝統的な培養法、免疫分析法またはポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)のような分子診断法などを主に活用して分析しているが、分析に数日から一週間ほどの時間を要するため、食品安全事故の原因を迅速に把握し、対応するには限界がある。
【0006】
また、既存の水産物の試料において、水産物における危害微生物を検出するために必要な検体は、最低25gであり、食品公転に記載された検体採取方法は、次のとおりである。採取された全検体から食べられる部位のみを取り、均質化した後、その中から一定量を1つの試験検体とする。ただし、魚類は、頭、尾、内臓、骨、鱗を除去した後、皮を含む筋肉部位を試験検体とし、このとき検体を水から取り出したり、水洗いした場合には、標準ふるい(20meshまたはそれと同等のもの)に載せて水切りをしてから均質化する(食品公転第7.検体の採取および取扱方法、6.個別検体の採取および取扱方法)。そのため、食品公転による試料を採取する際には、商品の価値が低下することによる経済的損失が生じた。
【0007】
これを改善するために、plastic syringe-style MK7 implanter(Biomark、USA)を用いた試料採取を通じて水産物の生物状態を保つための研究が行われたが、このような方法には、熟練した専門家が行う必要があるという短所があり、傷などによって商品価値や品質が低下するといった欠点が伴う。
【0008】
このため、非熟練者でも試料を容易に採取でき、商品性も損なわれない非破壊的な試料採取装置の開発が求められているのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来の諸問題を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、水産物に危害微生物が感染しているか否かを確認するために、水産物の商品性を損なうことなく、且つ、非熟練者でも試料採取が可能な非破壊試料採取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような目的を達成するための本発明の非破壊試料採取装置は、2本以上の針が備えられたシリンジと、前記シリンジの移動を案内するガイドと、前記ガイドの下端に結合され、前記シリンジに弾性復元力を伝達する針復元手段と、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、前記シリンジは、前記ガイドの中空に挿入され、先端運動が行われ、前記針が備えられたバレルおよび前記バレルの中空に挿入され、先端運動によって試料を吸入するプランジャーからなることを特徴とする。
【0012】
また、前記針復元手段は、前記針が出入りする開口部が形成され、前記ガイドのフランジに結合されるカバーと、前記カバーとフランジとの間に備えられたガイド部材と、前記ガイド部材に沿って移動し、針が横切る貫通孔が形成された弾性部材および前記弾性部材とカバーとの間に介在された圧縮ばねからなることを特徴とする。
【0013】
また、前記貫通孔の内径は、前記バレルの外径よりも小さく形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、前記バレルにはガイド突起が形成され、前記ガイドには前記ガイド突起が移動するガイド溝が形成されたことを特徴とする。
【0015】
また、前記ガイド溝は、前記ガイド突起が進入する第1ガイド溝と、前記バレルの離脱を防止する第2ガイド溝とからなることを特徴とする。
【0016】
また、前記ガイド突起が第1ガイド溝の下端に進入した後に前記バレルを回転させると、前記ガイド突起が第2ガイド溝に進入するように構成されたことを特徴とする。
【0017】
また、前記第1ガイド溝と第2ガイド溝との間には離脱防止突起が形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、前記第2ガイド溝の下端に前記ガイド突起が回転によって進入する係止溝が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明による非破壊試料採取装置によれば、非熟練者でも手軽に水産物を採取することができ、生命には影響を与えないため、品質を保つことができる効果がある。
【0020】
そのため、本発明の非破壊試料採取装置により、少量の試料量でも分子生物学的な検出方法を用いて水産物に危害微生物が感染しているか否かを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による非破壊試料採取装置を分解して示した斜視図である。
図2図1の結合状態を示す斜視図である。
図3】本発明による非破壊試料採取装置を分解して示す底面斜視図である。
図4図3の結合状態を示す底面斜視図である。
図5】本発明による非破壊試料採取装置と従来のシリンジを用いてヒラメの水産物試料の採取方法を示す参考写真である。
図6】本発明による非破壊試料採取装置で試料を採取したヒラメを示した参考写真である。
図7】本発明による非破壊試料採取装置で採取した試料を用いた遺伝子増幅実験の結果を示す結果値である。
図8】本発明による非破壊試料採取装置で採取した試料を用いた遺伝子増幅実験の結果を示す結果値である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付された図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明による非破壊試料採取装置を分解して示す斜視図であり、図2は、図1の結合状態を示す斜視図であり、図3は、本発明による非破壊試料採取装置を分解して示す底面斜視図であり、図4は、図3の結合状態を示す底面斜視図である。
【0024】
図1図4に示すように、本発明による非破壊試料の採取装置(A)は、2本以上の針111が備えられたシリンジ100と、前記シリンジ100の移動を案内するガイド200および前記ガイド200の下端に結合され、前記シリンジ100に弾性復元力を伝達する針復元手段300から構成される。
【0025】
まず、前記シリンジ100は、前記ガイド200の中空に挿入され、先端運動が行われ、前記針111が備えられたバレル110および前記バレル110の中空に挿入され、先端運動によって試料を吸引するプランジャー120からなる。
【0026】
また、前記バレル110の下端に9本の針111が備えられる。針の本数は必要に応じて加減可能である。
【0027】
また、プランジャー120には、前記バレル110の中空と密着して引っ張られたときに試料を吸引するゴムパッキン121が備えられる。前記プランジャー120の上端に使用者が押圧するプッシャ122が備えられている。前記プッシャは、指が挿入されるフィンガーグリップの形態で構成されてもよい。
【0028】
一方、前記ガイド200には、使用者の指が挿入され、把持するフィンガーグリップ210が形成される。
【0029】
また、前記ガイド200の下端に前記針復元手段300が結合されるフランジ220が形成され、前記フランジ220の中心はガイド200の中空と同様に貫通している。
【0030】
一方、前記針復元手段300は、前記針111が出入りする開口部311が形成され、前記ガイド200のフランジ220に結合されるカバー310と、前記カバー310とフランジ220との間に備えられたガイド部材320と、前記ガイド部材320に沿って移動し、針111が横切る貫通孔331が形成された弾性部材330および前記弾性部材330とカバー310との間に介在された圧縮ばね340からなる。
【0031】
また、前記カバー310は、内部構成の動作を視覚的に確認するために透明素材で形成されている。
【0032】
そして、前記ガイド部材320は、3個からなり、前記カバー310とフランジ220を3点で支持した状態でボルトまたはネジによって締結される。
【0033】
一方、前記弾性部材330は、ガイド部材320に沿って移動し、前記圧縮ばね340は、ガイド部材320の外周面に設けられる。
【0034】
このとき、前記弾性部材330は、ドーナツ状に形成され、前記貫通孔331の内径は前記バレル110の外径よりも小さく形成されている。
【0035】
これにより、前記バレル110の下端移動に伴って前記貫通孔331に針11が突出され、前記バレル110が貫通孔331に係り止められ、圧縮ばね340を圧縮することができる。すなわち、圧縮ばね340の弾性復元力がバレル110に印加される構造からなる。
【0036】
また、前記バレル110にはガイド突起112が形成され、前記ガイド200には、前記ガイド突起112が移動するガイド溝230が形成されている。
【0037】
そして、前記ガイド溝230は、前記ガイド突起112が進入する第1ガイド溝231と、前記バレル110の離脱を防止する第2ガイド溝232とからなる。
【0038】
一方、前記ガイド突起112が第1ガイド溝231の下端に進入した後、前記バレル110を回転させると、前記ガイド突起112が第2ガイド溝232に進入するように構成される。
【0039】
加えて、前記第1ガイド溝231と第2ガイド溝232との間には離脱防止突起233が形成されており、前記ガイド突起112が第2ガイド溝232に進入すると、前記離脱防止突起233により離脱を抑制する。すなわち、使用者の動作に加えて、ガイド突起112が第2ガイド溝232から離脱することを防止する。
【0040】
また、第2ガイド溝232の下端に、前記ガイド突起112が回転により進入する係止溝234が形成されている。
【0041】
すなわち、前記係止溝234にガイド突起112が進入すると、針111は、針復元手段300の下端に露出した状態を維持し、水産物の試料に挿入される。
【0042】
次いで、前記プランジャー120を引っ張って水産物の試料を採取する。
【0043】
本発明によれば、非熟練者でも容易に水産物の試料を採取することができ、生命に影響を与えないため、品質を保つことができる。
【0044】
このため、本発明の非破壊試料採取装置を用いて少量の試料量でも分子生物学的な検出方法により水産物に危害微生物が感染したか否かを確認することができる。
【0045】
図5は、本発明による非破壊試料採取装置と従来のシリンジを用いてヒラメの水産物の試料の採取方法を示す参考写真であり、図6は、本発明による非破壊試料採取装置を用いて試料を採取したヒラメを示す参考写真であり、図7図8は、本発明による非破壊試料採取装置により採取した試料を用いて遺伝子増幅実験の条件および結果を示す結果値である。
【0046】
図5に示すように、従来技術において、水産物の試料を採取する際に用いられたplastic syringe-style MK7 implanterは、針の径が広く、水産物の商品性の低下が起こり得るが、本発明の非破壊試料採取装置は、直径が狭い針9本を用いて試料を採取する方式であって、試料の商品性および生命には影響を及ぼさない。
【0047】
図6に示すように、本発明の非破壊試料採取装置を用いて試料を採取してから2時間が経過してもヒラメは、活魚状態で呼吸していることが観察され、試料を採取した部位においても外観上の傷や商品性の低下は見られなかった。
【0048】
図7図8に示すように、非破壊試料採取装置を用いて水産物の試料を採取する際に特定の遺伝子増幅実験を実施し、実験条件は、以下のとおりである。
1.ヒラメを非破壊試料採取装置を用いて3回、5回繰り返して試料を採取。
2.採取した試料を3次滅菌蒸留水(10mLおよび20mL)に5回繰り返して懸濁。
3.試料が抽出された蒸留水を1mLずつ、遠心分離し、細胞試料を濃縮(遠心分離条件:10,000g、3min、4℃)。
4.濃縮した試料をDNA抽出キット(DNA extraction kit)を用いてDNA抽出(DNA extraction)。
5.抽出したDNAをPCR templateで用いてPCRを行う。
6.電気泳動によって特異なbase pair(bp)のバンドを確認。
【0049】
実験の結果、非破壊試料採取装置を用いて採取したヒラメの試料から特異的な増幅バンドが現れ、5回の採取だけで水産物における有害因子を検出することが可能であった。
【0050】
P:陽性コントロール(クドア・セプテンプンクタータ遺伝子)
N:陰性コントロール(クドア・セプテンプンクタータに感染していない試料)
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって解釈されるべきである。この時、この技術分野で通常の知識を習得した者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、多様な修正および変形が可能であることを考慮しなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8