(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20240808BHJP
G01H 1/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01K1/14 E
G01K1/14 L
G01H1/00 G
(21)【出願番号】P 2024020784
(22)【出願日】2024-02-15
【審査請求日】2024-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-17634(JP,A)
【文献】実開平6-28669(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0016775(US,A1)
【文献】特開2022-121140(JP,A)
【文献】特開2001-296187(JP,A)
【文献】実開昭58-34026(JP,U)
【文献】特開2000-304622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
G01H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形の外周を有する部材を計測対象物とする計測装置であって、
筒形状を有するとともに、筒軸方向の一端側が開口され、且つ、当該一端側が前記計測対象物に向けられるプローブケースと、
前記プローブケースの内方から前記計測対象物に向けて延び、且つ、先端が前記開口から外方に露出するように配設された長尺部を有するとともに、前記長尺部の前記先端が前記計測対象物と当接して当該計測対象物の表面温度を計測する温度プローブと、
前記温度プローブの前記長尺部が挿通される貫通孔を有するとともに、前記プローブケースの前記開口の少なくとも一部を塞ぐように配される柱状のプローブ台座と、
を備え、
前記温度プローブの前記長尺部は、前記貫通孔を挿通する部分で熱的に結合された状態で、前記プローブ台座に固定されており、
前記プローブ台座は、前記計測対象物の外周面に対向する側の面が前記外周面に沿うとともに、少なくとも一部が前記外周面に当接するように設けられており、
前記プローブ台座は、前記開口から前記計測対象物側に突出した突出部と、前記プローブケースの内方に収容された被収容部とを有し、前記突出部と前記被収容部とが同一材料により一体形成されており、
前記被収容部は、当該被収容部の体積が前記突出部の体積よりも大きくなるように形成されている、
計測装置。
【請求項2】
前記プローブケースに取り付けられ、互いに離間した位置に設けられた2つの貫通孔を有するブラケットと、
長手方向の両端に形成されたネジ部と、長手方向の中間部分が円弧状に180°曲げられた円弧部と、を有し、前記円弧部が前記計測対象物の上に配された状態で前記ブラケットにおける前記2つの貫通孔のそれぞれに前記ネジ部が挿通されたU字ボルトと、
前記U字ボルトの前記ネジ部に螺合する2つのナットと、
をさらに備え、
前記プローブケースは、前記プローブ台座が前記計測対象物における前記外周面の下部に当接するように前記計測対象物の下に配置されるとともに、前記円弧部が前記計測対象物の上に配された前記U字ボルトのネジ部に対して、前記ブラケットの下で前記ナットが螺合することにより、前記計測対象物に対して下方に垂下した状態で固定されている、
請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記計測対象物の径方向に延びるとともに、前記U字ボルトが挿通する2つの貫通孔を有し、且つ、前記計測対象物における前記外周面の上部に当接するように配されるアジャスト部材をさらに備え、
前記プローブケースは、前記アジャスト部材における前記2つの貫通孔同士の間の部分と前記プローブ台座との間で前記計測対象物を径方向に挟持することで、当該計測対象物に固定されている、
請求項2に記載の計測装置。
【請求項4】
円形の外周を有する部材を計測対象物とする計測装置であって、
筒形状を有するとともに、筒軸方向の一端側が開口され、且つ、当該一端側が前記計測対象物に向けられるプローブケースと、
前記プローブケースの内方から前記計測対象物に向けて延び、且つ、先端が前記開口から外方に露出するように配設された長尺部を有するとともに、前記長尺部の前記先端が前記計測対象物と当接して当該計測対象物の表面温度を計測する温度プローブと、
前記温度プローブの前記長尺部が挿通される貫通孔を有するとともに、前記プローブケースの前記開口の少なくとも一部を塞ぐように配される柱状のプローブ台座と、
前記プローブケースに取り付けられ、互いに離間した位置に設けられた2つの貫通孔を有するブラケットと、
長手方向の両端に形成されたネジ部と、長手方向の中間部分が円弧状に180°曲げられた円弧部と、を有し、前記円弧部が前記計測対象物の上に配された状態で前記ブラケットにおける前記2つの貫通孔のそれぞれに前記ネジ部が挿通されたU字ボルトと、
前記U字ボルトの前記ネジ部に螺合する2つのナットと、
前記計測対象物の径方向に延びるとともに、前記U字ボルトが挿通する2つの貫通孔を有し、且つ、前記計測対象物における
外周面の上部に当接するように配されるアジャスト部材と、
を備え、
前記温度プローブの前記長尺部は、前記貫通孔を挿通する部分で熱的に結合された状態で、前記プローブ台座に固定されており、
前記プローブ台座は、前記計測対象物の
前記外周面に対向する側の面が前記外周面に沿うとともに、少なくとも一部が前記外周面に当接するように設けられており、
前記プローブケースは、前記プローブ台座が前記計測対象物における前記外周面の下部に当接するように前記計測対象物の下に配置されるとともに、前記アジャスト部材における前記2つの貫通孔同士の間の部分と前記プローブ台座との間で前記計測対象物を径方向に挟持して、前記円弧部が前記計測対象物の上に配された前記U字ボルトのネジ部に対して、前記ブラケットの下で前記ナットが螺合することにより、前記計測対象物に対して下方に垂下した状態で固定されている、
計測装置。
【請求項5】
前記プローブ台座は、前記開口から前記計測対象物側に突出した突出部と、前記プローブケースの内方に収容された被収容部とを有し、前記突出部と前記被収容部とが同一材料により一体形成されており、
前記被収容部は、当該被収容部の体積が前記突出部の体積よりも大きくなるように形成されている、
請求項4に記載の計測装置。
【請求項6】
前記プローブ台座における前記計測対象物側を向く表面は、前記計測対象物の前記外周面に沿うように凹曲面をもって形成されている、
請求項1
または請求項4に記載の計測装置。
【請求項7】
前記温度プローブにおける前記長尺部の前記先端は、前記計測対象物の管軸を指向するとともに、前記計測対象物の前記外周面に沿うよう凹曲面をもって形成されており、
前記プローブ台座の前記表面と、前記温度プローブの前記先端とは、前記計測対象物の管軸方向からの正面視で互いに面一となるように配されている、
請求項6に記載の計測装置。
【請求項8】
前記プローブケースの内方から前記計測対象物に向けて延び、且つ、先端が前記開口から外方に露出するように配設された探触棒を有するとともに、前記探触棒の前記先端が前記計測対象物と当接して当該計測対象物における振動の強度を計測する振動プローブをさらに備え、
前記振動プローブにおける前記探触棒の前記先端は、前記温度プローブにおける前記長尺部の前記先端に対して前記計測対象物の管軸に沿う方向に互いに間隔をあけて隣接配置されるとともに、前記計測対象物の前記管軸を指向するように配されている、
請求項1
または請求項4に記載の計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関し、特に円形の外周を有する部材を計測対象として、その表面温度を計測する温度プローブを備える計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備から復水(ドレン)のみを排出する用途に用いられるスチームトラップが知られている。また、当該スチームトラップやその入り口部分のスチーム配管における振動の強度および表面温度を計測し、それらの相互関係から蒸気漏れの有無を診断することが行われている。このような診断には、スチームトラップ等の振動の強度を計測するための振動プローブと、スチームトラップ等の表面温度を計測するための温度プローブとを備える計測装置が用いられる。
【0003】
ここで、計測装置としては、作業者が携帯する可搬タイプのものと、スチームトラップ等に固定される設置タイプのものとがある。特許文献1には、設置タイプの計測装置が開示されている。特許文献1に開示の計測装置をはじめとする従来技術に係る計測装置について、
図8を用いて説明する。
【0004】
図8に示すように、従来技術に係る計測装置9は、プローブ部90と、本体部91と、接続パイプ94と、クランプ92と、ボルト93とを備える。
図8のA部に示すように、プローブ部90は、ケース内に収容され、先端907a,908aがスチーム配管500に向けて突出する温度プローブ907および振動プローブ908を備える。温度プローブ907および振動プローブ908は、それぞれの先端907a,908aがスチーム配管500の外周面500aに当接するように配設されている。なお、従来技術に係る計測装置9において、温度プローブ907および振動プローブ908は、スチーム配管500の径方向に並ぶようにプローブ台座902に固定されている。そして、振動プローブ908の先端908aがスチーム配管500の管軸Ax500を指向するように配設されている。
【0005】
本体部91は、プローブ部90で計測した振動の強度および表面温度に関する各データを取り込み、中継器やプラントの管理室などに送信するための回路基板や電源としての電池ユニット等が収容されている。接続パイプ94には、プローブ部90の温度プローブ907や振動プローブ908と本体部91の回路基板等とを接続する配線が収容されている。
【0006】
クランプ92およびボルト93は、プローブ部90および本体部91をスチーム配管500に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図8のA部に示すように、従来技術に係る計測装置9では、スチーム配管500の外周面500aに対して温度プローブ907の先端907aが点でしか接触しておらず、温度の検出精度という観点から改善の余地がある。即ち、従来技術に係る計測装置9では、スチーム配管500の外周面500aから温度プローブ907への熱伝達が良好には行われず、スチーム配管500の表面温度を正確に計測することは困難である。なお、本体部91の回路で計測温度を補正することも行われているが、周囲の環境などの影響などにより、回路で補正を行ったとしても正確にスチーム配管500の表面温度を求めることは困難である。
【0009】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、円形の外周を有する部材を計測対象物としていながら、当該計測対象物の表面温度をより正確に計測することができる計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る計測装置は、円形の外周を有する部材を計測対象物とする計測装置であって、プローブケースと、温度プローブと、プローブ台座とを備える。前記プローブケースは、筒形状を有するとともに、筒軸方向の一端側が開口され、且つ、当該一端側が前記計測対象物に向けられる。前記温度プローブは、前記プローブケースの内方から前記計測対象物に向けて延び、且つ、先端が前記開口から外方に露出するように配設された長尺部を有するとともに、前記長尺部の前記先端が前記計測対象物と当接して当該計測対象物の表面温度を計測する。前記プローブ台座は、前記温度プローブの前記長尺部が挿通される貫通孔を有するとともに、前記プローブケースの前記開口の少なくとも一部を塞ぐように配される柱状の台座である。
【0011】
本態様に係る計測装置において、前記温度プローブの前記長尺部は、前記貫通孔を挿通する部分で熱的に結合された状態で、前記プローブ台座に固定されており、前記プローブ台座は、前記計測対象物の外周面に対向する側の面が前記外周面に沿うとともに、少なくとも一部が前記外周面に当接するように設けられている。前記プローブ台座は、前記開口から前記計測対象物側に突出した突出部と、前記プローブケースの内方に収容された被収容部とを有し、前記突出部と前記被収容部とが同一材料により一体形成されている。前記被収容部は、当該被収容部の体積が前記突出部の体積よりも大きくなるように形成されている。
【0012】
上記態様に係る計測装置では、プローブ台座が温度プローブに対して熱的に結合されているとともに、当該プローブ台座が計測対象物の外周面に沿い、且つ、少なくとも一部が外周面に当接するように設けられている。このため、上記態様に係る計測装置では、計測対象物の外周面から温度プローブへの直接的な熱伝達経路に加え、プローブ台座を介した温度プローブへの熱伝達経路が形成されているので、計測対象物の外周面からの熱をより効率的に温度プローブで受熱することができる。よって、上記態様に係る計測装置では、計測対象物の外周面に対して温度プローブが点接触しているだけの従来技術に係る計測装置に比べて、計測対象物の表面温度をより正確に計測することができる。
また、上記態様に係る計測装置では、被収容部の体積が突出部の体積よりも大きくなるようにプローブ台座が形成されているので、プローブ台座における熱容量を大きく確保できるとともに、外部環境への放熱を抑えることができる。このため、上記態様に係る計測装置では、プローブ台座の上記表面で受けた計測対象物の外周面の熱を外部への放熱を抑えつつ温度プローブへと伝達することができる。よって、上記態様に係る計測装置では、高精度に計測対象物の表面温度を計測することができる。
上記態様に係る計測装置において、前記プローブケースに取り付けられ、互いに離間した位置に設けられた2つの貫通孔を有するブラケットと、長手方向の両端に形成されたネジ部と、長手方向の中間部分が円弧状に180°曲げられた円弧部と、を有し、前記円弧部が前記計測対象物の上に配された状態で前記ブラケットにおける前記2つの貫通孔のそれぞれに前記ネジ部が挿通されたU字ボルトと、前記U字ボルトの前記ネジ部に螺合する2つのナットと、をさらに備え、前記プローブケースは、前記プローブ台座が前記計測対象物における前記外周面の下部に当接するように前記計測対象物の下に配置されるとともに、前記円弧部が前記計測対象物の上に配された前記U字ボルトのネジ部に対して、前記ブラケットの下で前記ナットが螺合により、前記計測対象物に対して下方に垂下した状態で固定されていてもよい。
上記態様に係る計測装置では、プローブケースが計測対象物に対して下方に垂下した姿勢で固定されているので、仮に風などの影響によりプローブケースが傾いて一時的に温度プローブの先端が計測対象物から離間したとしても、プローブケースおよびその内方に収容された温度プローブなどの自重により元の垂下した姿勢へと復帰することとなる。よって、上記態様に係る計測装置では、風などの影響によりプローブケースに外力が加わっても、作業者による修復作業を行わなくても計測を継続することが可能である。
また、上記態様に係る計測装置では、U字ボルトとナットという汎用部品を用いてプローブケースが計測対象物に固定された構成としているので、専用部品を用いる場合に比べて設置コストの低減を図ることが可能である。
上記態様に係る計測装置において、前記計測対象物の径方向に延びるとともに、前記U字ボルトが挿通する2つの貫通孔を有し、且つ、前記計測対象物における前記外周面の上部に当接するように配されるアジャスト部材をさらに備え、前記プローブケースは、前記アジャスト部材における前記2つの貫通孔同士の間の部分と前記プローブ台座との間で前記計測対象物を径方向に挟持することで、当該計測対象物に固定されていてもよい。
上記態様に係る計測装置では、計測対象物に対する固定に際して用いられるアジャスト部材をさらに備えるので、計測対象物のサイズ(特に、径方向寸法)が小さい場合であっても、設計変更することなく計測対象物に固定することが可能である。このため、上記態様に係る計測装置では、計測対象物のサイズ毎に設計変更する場合に比べて量産効果によって製造コストの低減が可能である。
本発明の別態様に係る計測装置は、円形の外周を有する部材を計測対象物とする計測装置であって、プローブケースと、温度プローブと、プローブ台座と、ブラケットと、U字ボルトと、2つのナットと、アジャスト部材とを備える。前記プローブケースは、筒形状を有するとともに、筒軸方向の一端側が開口され、且つ、当該一端側が前記計測対象物に向けられる。前記温度プローブは、前記プローブケースの内方から前記計測対象物に向けて延び、且つ、先端が前記開口から外方に露出するように配設された長尺部を有するとともに、前記長尺部の前記先端が前記計測対象物と当接して当該計測対象物の表面温度を計測する。前記プローブ台座は、前記温度プローブの前記長尺部が挿通される貫通孔を有するとともに、前記プローブケースの前記開口の少なくとも一部を塞ぐように配される柱状の台座である。前記ブラケットは、前記プローブケースに取り付けられ、互いに離間した位置に設けられた2つの貫通孔を有する。前記U字ボルトは、長手方向の両端に形成されたネジ部と、長手方向の中間部分が円弧状に180°曲げられた円弧部と、を有し、前記円弧部が前記計測対象物の上に配された状態で前記ブラケットにおける前記2つの貫通孔のそれぞれに前記ネジ部が挿通される。前記2つのナットは、前記U字ボルトの前記ネジ部に螺合する。前記アジャスト部材は、前記計測対象物の径方向に延びるとともに、前記U字ボルトが挿通する2つの貫通孔を有し、且つ、前記計測対象物における外周面の上部に当接するように配される。前記温度プローブの前記長尺部は、前記貫通孔を挿通する部分で熱的に結合された状態で、前記プローブ台座に固定されている。
本態様に係る計測装置において、前記プローブ台座は、前記計測対象物の前記外周面に対向する側の面が前記外周面に沿うとともに、少なくとも一部が前記外周面に当接するように設けられている。前記プローブケースは、前記プローブ台座が前記計測対象物における前記外周面の下部に当接するように前記計測対象物の下に配置されるとともに、前記アジャスト部材における前記2つの貫通孔同士の間の部分と前記プローブ台座との間で前記計測対象物を径方向に挟持して、前記円弧部が前記計測対象物の上に配された前記U字ボルトのネジ部に対して、前記ブラケットの下で前記ナットが螺合することにより、前記計測対象物に対して下方に垂下した状態で固定されている。
上記態様に係る計測装置では、プローブ台座が温度プローブに対して熱的に結合されているとともに、当該プローブ台座が計測対象物の外周面に沿い、且つ、少なくとも一部が外周面に当接するように設けられている。このため、上記態様に係る計測装置では、計測対象物の外周面から温度プローブへの直接的な熱伝達経路に加え、プローブ台座を介した温度プローブへの熱伝達経路が形成されているので、計測対象物の外周面からの熱をより効率的に温度プローブで受熱することができる。よって、上記態様に係る計測装置では、計測対象物の外周面に対して温度プローブが点接触しているだけの従来技術に係る計測装置に比べて、計測対象物の表面温度をより正確に計測することができる。
また、上記態様に係る計測装置では、プローブケースが計測対象物に対して下方に垂下した姿勢で固定されているので、仮に風などの影響によりプローブケースが傾いて一時的に温度プローブの先端が計測対象物から離間したとしても、プローブケースおよびその内方に収容された温度プローブなどの自重により元の垂下した姿勢へと復帰することとなる。よって、上記態様に係る計測装置では、風などの影響によりプローブケースに外力が加わっても、作業者による修復作業を行わなくても計測を継続することが可能である。
また、上記態様に係る計測装置では、U字ボルトとナットという汎用部品を用いてプローブケースが計測対象物に固定された構成としているので、専用部品を用いる場合に比べて設置コストの低減を図ることが可能である。
また、上記態様に係る計測装置では、計測対象物に対する固定に際して用いられるアジャスト部材をさらに備えるので、計測対象物のサイズ(特に、径方向寸法)が小さい場合であっても、設計変更することなく計測対象物に固定することが可能である。このため、上記態様に係る計測装置では、計測対象物のサイズ毎に設計変更する場合に比べて量産効果によって製造コストの低減が可能である。
上記態様に係る計測装置において、前記プローブ台座は、前記開口から前記計測対象物側に突出した突出部と、前記プローブケースの内方に収容された被収容部とを有し、前記突出部と前記被収容部とが同一材料により一体形成されており、前記被収容部は、当該被収容部の体積が前記突出部の体積よりも大きくなるように形成されていてもよい。
上記態様に係る計測装置では、被収容部の体積が突出部の体積よりも大きくなるようにプローブ台座が形成されているので、プローブ台座における熱容量を大きく確保できるとともに、外部環境への放熱を抑えることができる。このため、上記態様に係る計測装置では、プローブ台座の上記表面で受けた計測対象物の外周面の熱を外部への放熱を抑えつつ温度プローブへと伝達することができる。よって、上記態様に係る計測装置では、高精度に計測対象物の表面温度を計測することができる。
【0013】
上記態様に係る計測装置において、前記プローブ台座における前記計測対象物側を向く表面は、前記計測対象物の前記外周面に沿うように凹曲面をもって形成されていてもよい。
【0014】
上記態様に係る計測装置では、プローブ台座における上記表面が計測対象物の外周面に沿うように凹曲面を以って形成されているので、平面をもって表面が形成されたプローブ台座(
図8に示すプローブ台座902を参照。)を備える従来技術に係る計測装置に比べて、計測対象物の外周面から熱を効率的に受熱できる。即ち、上記態様に係る計測装置では、プローブ台座の上記表面が凹曲面をもって形成されることで計測対象物の外周面に沿っているので、接触による熱伝達および輻射による熱伝達で高効率に計測対象物における外周面の熱をプローブ台座で受熱することができる。よって、上記態様に係る計測装置では、計測対象物の外周面の熱をプローブ台座を介した熱伝達経路で温度プローブへと効果的に導くことができる。
【0015】
なお、計測対象物の外径のバラツキやプローブ台座の製造バラツキなどにより、計測対象物の外周面に対して上記表面の全体が面接触せず、一部が近接する場合もある。計測対象物の外周面に対してプローブ台座の上記表面に一部が計測対象物の外周面に面接触せず、近接する場合においても輻射により計測対象物における外周面の熱をプローブ台座で受熱するのに有効である。よって、必ずしもプローブ台座の上記表面の全体が計測対象物の外周面に面接触しなくても、従来技術に係る計測装置に比べて高精度に計測対象物の表面温度を計測することができる。
【0016】
上記態様に係る計測装置において、前記温度プローブにおける前記長尺部の前記先端は、前記計測対象物の管軸を指向するとともに、前記計測対象物の前記外周面に沿うよう凹曲面をもって形成されており、前記プローブ台座の前記表面と、前記温度プローブの前記先端とは、前記計測対象物の管軸方向からの正面視で互いに面一となるように配されていてもよい。
【0017】
上記態様に係る計測装置では、温度プローブにおける長尺部の先端についても計測対象物の外周面に沿うように凹曲面をもって形成されているので、先端が平坦面や凸曲面で構成された温度プローブを備える従来技術に係る計測装置に比べて、温度プローブ自体も計測対象物の外周面の熱を高効率に受熱することができる。即ち、上記態様に係る計測装置では、温度プローブにおける長尺部の先端が凹曲面をもって形成されることで計測対象物の外周面に沿っているので、接触による熱伝達および輻射による熱伝達で計測対象物における外周面の熱を温度プローブで高効率に受熱することができる。
【0018】
なお、上記態様に係る計測装置においても、計測対象物の外径のバラツキや温度プローブにおける長尺部の製造バラツキなどにより、計測対象物の外周面に対して先端を構成する凹曲面の全体が面接触せず、一部が近接する場合もある。計測対象物の外周面に対して温度プローブにおける長尺部の先端を構成する凹曲面の一部が計測対象物の外周面に面接触せず、近接する場合においても輻射により計測対象物における外周面の熱を温度プローブで受熱するのに有効である。よって、必ずしも温度プローブにおける先端を構成する凹曲面の全体が計測対象物の外周面に面接触しなくても、従来技術に係る計測装置に比べて高精度に計測対象物の表面温度を計測することができる。
【0019】
また、上記態様に係る計測装置では、プローブ台座の上記表面と、温度プローブの上記先端とが、計測対象物の管軸方向からの正面視で互いに面一となるように配されているので、プローブ台座の上記表面と温度プローブの上記先端とが、ともに計測対象物の外周面に対して沿うとともに、少なくとも一部が接触する。このため、上記態様に係る計測装置では、温度プローブの上記先端およびプローブ台座の上記表面が計測対象物の外周面に対して互いに阻害することなく接触および近接する。よって、上記態様に係る計測装置では、高精度に計測対象物の表面温度を計測することができる。
【0027】
上記態様に係る計測装置において、前記プローブケースの内方から前記計測対象物に向けて延び、且つ、先端が前記開口から外方に露出するように配設された探触棒を有するとともに、前記探触棒の前記先端が前記計測対象物と当接して当該計測対象物における振動の強度を計測する振動プローブをさらに備え、前記振動プローブにおける前記探触棒の前記先端は、前記温度プローブにおける前記長尺部の前記先端に対して前記計測対象物の管軸に沿う方向に互いに間隔をあけて隣接配置されるとともに、前記計測対象物の前記管軸を指向するように配されていてもよい。
【0028】
上記態様に係る計測装置では、温度プローブに加えて振動プローブも備える。このため、計測対象物における極近い箇所で計測対象物の振動の強度および表面温度を計測可能であり、離れた箇所で振動の強度と表面温度とを別々に計測する場合に比べて、計測対象物の状態(スチーム配管やスチームトラップの場合には、蒸気漏れの有無などの状態)を判断するための正確な計測が可能である。
【0029】
また、上記態様に係る計測装置では、温度プローブの先端と振動プローブの先端とが、計測対象物の管軸に沿う方向に互いに間隔をあけて隣接配置されているので、温度プローブの先端および振動プローブの先端のそれぞれが計測対象物の管軸を指向するように外周面に対して直交する方向から当接させることができ、より正確な計測を実現することができる。
【発明の効果】
【0030】
上記の各態様に係る計測装置は、円形の外周を有する部材を計測対象物としていながら、当該計測対象物の表面温度をより正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】第1実施形態に係る計測装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】計測装置の内のプローブ部の構成を示す展開斜視図である。
【
図3】プローブ台座に対する温度プローブの配置形態を示す断面図である。
【
図4】(a)は温度プローブの先端の形状を示す正面図であり、(b)はプローブ台座の表面の形状を示す正面図である。
【
図5】(a)はプローブ台座の構成を示す正面図であり、(b)は比較例に係る計測装置が備えるプローブ台座の構成を示す正面図である。
【
図6】第2実施形態に係る計測装置の一部構成を示す正面図である。
【
図7】参考例に係る計測装置の一部構成を示す正面図である。
【
図8】従来技術に係る計測装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明を例示的に示すものであって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0033】
[第1実施形態]
1.計測装置1の概略構成
本発明の第1実施形態に係る計測装置1の概略構成について、
図1を用いて説明する。
【0034】
図1に示すように、計測装置1は、プローブ部10と、本体部11と、U字ボルト12およびナット13と、を備える。プローブ部10は、円筒形状のプローブケース100と、ブラケット101と、プローブ台座102と、を備える。ブラケット101は、プローブケース100の外周面に固定されている。プローブ台座102は、プローブケース100におけるZ方向の一方側(上側)の開口から一部が突出し、残部がプローブケース100内に収容されている。
【0035】
U字ボルト12は、長手方向の両端に形成されたネジ部12aと、長手方向の中間部分が円弧状に180°曲げられた円弧部12bと、を有する。両端のネジ部12aは、2つのブラケット101の通し孔101aのそれぞれを挿通する。2つのナット13は、ブラケット101の下でU字ボルト12の各ネジ部12aと螺合する。
【0036】
スチーム配管500は、管軸Ax500に直交する方向での断面での外周が円形で形成され、管軸Ax500に沿う長尺状の部材である。U字ボルト12は、円弧部12bがスチーム配管500の外周面500aの上部に当接するように配されている。
【0037】
計測装置1は、スチーム配管500に対してプローブ部10が下方に垂下する状態で固定される。なお、スチーム配管500への計測装置1の固定は、U字ボルト12の円弧部12bとプローブ台座102とでスチーム配管500を上下に挟持することによりなされている。
【0038】
2.プローブ部10の構成
プローブ部10の構成について、
図2および
図3を用いて説明する。
【0039】
図2に示すように、プローブ部10は、ボルト103,104と、六角穴付き止めネジ105,106と、温度プローブ107と、振動プローブ108と、をさらに備える。ボルト103は、ブラケット101をプローブケース100に固定する部材であって、ブラケット101に設けられた通し孔101bを挿通してプローブケース100に設けられたネジ孔100cと螺合する。ボルト104は、プローブ台座102をプローブケース100に固定する部材であって、プローブ台座102に設けられたネジ孔102eと螺合する。
【0040】
温度プローブ107は、プローブケース100の内方から上方に向けて延びる長尺部107bを有するとともに、当該長尺部107bにおける上側の先端107aがプローブケース100の上側の開口100aから上方に向けて突出し、外方に露出している。
図3に示すように、温度プローブ107の長尺部107bは、先端107aを含む先端側の一部がプローブ台座102に設けられた貫通孔102bを挿通するように配されている。温度プローブ107は、貫通孔102bを挿通する部分において、ネジ孔102dと螺合する六角穴付き止めネジ105によりプローブ台座102に対して熱的に結合された状態で固定されている。そして、温度プローブ107の先端107aは、貫通孔102bの上側開口から上方に露出し、スチーム配管500の外周面500aに少なくとも一部が当接する。
【0041】
なお、温度プローブ107の長尺部107bは、金属材料からなり、上方が閉じられたパイプ状の部材であって、先端107aの内側面で一対の熱電対素線同士が接合されてなる。温度プローブ107は、スチーム配管500の外周面500aとの当接部分から熱の伝達を受けて表面温度を検出する。
【0042】
振動プローブ108は、振動センサー1080と、探触棒1081と、断熱部材1082と、センサー台座1083と、を備える。振動センサー1080は、一例として、圧電素子として圧電型セラミックスが使用された圧電型加速度センサーから構成されている。探触棒1081は、金属部材(一例として、ステンレス鋼)からなる棒状または筒状の長尺状の部材である。
図3に示すように、振動プローブ108の探触棒1081は、先端1081aを含む先端側の一部がプローブ台座102に設けられた貫通孔102cを挿通している。振動プローブ108は、探触棒1081における貫通孔102cを挿通した部分において、ネジ孔102eと螺合する六角穴付き止めネジ106によりプローブ台座102に対して固定されている。なお、本実施形態では、プローブ台座102のネジ孔102eに対してボルト104および六角穴付き止めネジ106が螺合する。ただし、プローブ台座102に対して、ボルト104に螺合するネジ孔と六角穴付き止めネジ106が螺合するネジ孔とを別々に設けることにしてもよい。
【0043】
断熱部材1082は、一例としてアルミナセラミックスからなる長尺状の筒状の部材であって、上端が探触棒1081に固定され、下端がセンサー台座1083に固定されている。断熱部材1082は、探触棒1081からセンサー台座1083への熱の伝達を抑制する。
【0044】
センサー台座1083は、金属材料(一例として、ステンレス鋼)からなる部材であって、下端に振動センサー1080が固定される。振動プローブ108においては、スチーム配管500の外周面500aに当接する探触棒1081の先端1081aからスチーム配管500の振動が」入力され、当該振動が振動センサー1080に伝達されることで振動の強度を計測する。
【0045】
ここで、
図3に示すように、プローブ台座102は、スチーム配管500側の表面102aが温度プローブ107の先端107aおよび振動プローブ108における探触棒1081の先端1081aと面一となるように配設されている。即ち、本実施形態に係る計測装置1では、スチーム配管500に固定されることにより、温度プローブ107の先端107aの少なくとも一部と、振動プローブ108における探触棒1081の先端1081aと、プローブ台座102の表面102aの少なくとも一部と、がそれぞれスチーム配管500の外周面500aに当接する。
【0046】
なお、温度プローブ107の先端107aと振動プローブ108における探触棒1081の先端1081aとは、互いにX方向(スチーム配管500の管軸Ax500に沿う方向)に離間するとともに、それぞれスチーム配管500の管軸Ax500を指向するように配されている。
【0047】
3.温度プローブ107における先端107aの形状
温度プローブ107における先端107aの形状について、
図3および
図4(a)を用いて説明する。
【0048】
図4(a)に示すように、本実施形態に係る計測装置1では、温度プローブ107の先端107aが平坦面ではなく曲率半径R107の凹曲面をもって形成されている。先端107aの曲率半径R107は、
図3に示すスチーム配管500の外径寸法D500に対して、次の関係を満たすように設定されている。
R107≒D500/2 ・・(関係式1)
【0049】
なお、上記の関係式1において、曲率半径R107と外径寸法D500の1/2の値とは、温度プローブ107における長尺部107bの製造バラツキおよびスチーム配管500の寸法バラツキの範囲内での差分が許容される。このため、曲率半径R107と外径寸法D500の1/2の値とが完全一致しなくても、温度プローブ107の先端107aは一部がスチーム配管500の外周面500aに当接し、残部が近接する。
【0050】
4.プローブ台座102における表面102aの形状
プローブ台座102における表面102aの形状について、
図3および
図4(b)を用いて説明する。
【0051】
図4(b)に示すように、本実施形態に係る計測装置1では、プローブ台座102の表面102aが平坦面ではなく曲率半径R102の凹曲面をもって形成されている。表面102aの曲率半径R102は、
図3に示すスチーム配管500の外径寸法D500に対して、次の関係を満たすように設定されている。
R102≒D500/2 ・・(関係式2)
【0052】
なお、上記の関係式2においても、曲率半径R102と外径寸法D500の1/2の値とは、プローブ台座102の製造バラツキおよびスチーム配管500の寸法バラツキの範囲内での差分が許容される。このため、曲率半径R102と外径寸法D500の1/2の値とが完全一致しなくても、プローブ台座102の表面102aは一部がスチーム配管500の外周面500aに当接し、残部が近接する。
【0053】
ここで、プローブ台座102では、温度プローブ107の長尺部107bが挿通された貫通孔102bの中心軸Ax102bが表面102aの曲率の底BPを通り、Z方向(法線方向)に延びるように形成されている。これにより、プローブ台座102の表面102aがスチーム配管500の外周面500aに沿うとともに、温度プローブ107の先端107aもスチーム配管500の外周面500aに沿うようにすることができる。
【0054】
5.プローブ台座102の形状
プローブ台座102の形状について、既に説明した表面102aの形状を除く部分について、
図5を用いて説明する。なお、
図5(a)は本実施形態に係る計測装置1のプローブ台座102を示す図であり、
図5(b)は比較例に係る計測装置9(
図8を用いて説明した計測装置)のプローブ台座902を示す図である。
【0055】
図5(a)に示すように、プローブ台座102は、プローブケース100(
図2等を参照。)から上方に突出する突出部102fと、プローブケース100の内方に収容される被収容部102gとを有し、突出部102fと非収容部102gとが同一材料(例えば、ステンレス鋼)で一体形成されている。
【0056】
一方、
図5(b)に示すように、比較例に係る計測装置9が備えるプローブ台座902も、プローブケースからスチーム配管500側に向けて突出する突出部902fと、プローブケースの内方に収容される被収容部902gとを有し、突出部902fと非収容部902gとが同一材料で一体形成されている。
【0057】
図5(a)に示すプローブ台座102と
図5(b)に示すプローブ台座902とを比較する場合に、
図5(a)に示すプローブ台座102は、表面102aが凹曲面で構成されている分だけ、平坦な円板形状で構成されている比較例のプローブ台座902の突出部902fよりも、突出部102fの体積が大きい。
【0058】
また、
図5(a)に示すように、Z方向における被収容部102gの寸法T102は、
図5(b)に示す比較例の非収容部902gのZ方向での寸法T902よりも大きくなるように設定されている。例えば、寸法T102は、寸法T902の2倍以上に設定されている。これより、プローブ台座102では、被収容部102gの体積が突出部102fの体積よりも大きい。
【0059】
以上の構成を採用することにより、本実施形態に係る計測装置1のプローブ台座102は、比較例に係る計測装置9のプローブ台座902よりも大きな熱容量を確保することができる。また、寸法T102を寸法T902の2倍以上と大きくとることにより、プローブケース100で外周が覆われた部分を大きく確保することができ、外部環境への放熱を抑えることができる。よって、本実施形態に係る計測装置1では、プローブ台座102の表面102aで受けたスチーム配管500の外周面500aからの熱を外部への放熱を抑えつつ温度プローブ107へと伝達することができ、高精度にスチーム配管500の表面温度を計測することができる。
【0060】
6.効果
本実施形態に係る計測装置1では、プローブ台座102が温度プローブ107に対して熱的に結合されているとともに、当該プローブ台座102がスチーム配管500の外周面500aに沿い、且つ、少なくとも一部が外周面500aに当接するように設けられている。このため、計測装置1では、スチーム配管500の外周面500aから温度プローブ107への直接的な熱伝達経路に加え、プローブ台座102を介した温度プローブ107への熱伝達経路が形成されているので、スチーム配管500の外周面500aからの熱をより効率的に温度プローブ107で受熱することができる。よって、計測装置1では、スチーム配管500の外周面500aに対して温度プローブ907が点接触しているだけの従来技術に係る計測装置9に比べて、スチーム配管500の表面温度をより正確に計測することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る計測装置1では、プローブ台座102における表面102aがスチーム配管500の外周面500aに沿うように凹曲面を以って形成されているので、平面をもって表面902aが形成されたプローブ台座902を備える従来技術に係る計測装置9に比べて、スチーム配管500の外周面500aから熱を効率的に受熱できる。即ち、計測装置1では、プローブ台座102の表面102aが凹曲面をもって形成されることでスチーム配管500の外周面500aに沿っているので、接触による熱伝達および輻射による熱伝達で高効率にスチーム配管500における外周面500aの熱をプローブ台座102で受熱することができる。よって、計測装置1では、スチーム配管500の外周面500aの熱をプローブ台座102を介した熱伝達経路で温度プローブ107へと効果的に導くことができる。
【0062】
なお、スチーム配管500の外径D500のバラツキやプローブ台座102の製造バラツキなどにより、スチーム配管500の外周面500aに対して表面102aの全体が面接触せず、一部が近接する場合もある。このように、スチーム配管500の外周面500aに対してプローブ台座102の表面102aに一部が近接する場合(一部が面接触しない場合)においても輻射によりスチーム配管500における外周面500aの熱をプローブ台座102で受熱するのに有効である。即ち、本実施形態に係る計測装置1では、プローブ台座102の表面102aの一部がスチーム配管500の外周面500aに接触しない場合であっても、
図5(b)に示すような比較例のプローブ台座902に比べて、輻射熱を受熱し易い分だけ高効率にスチーム配管500の外周面500aの熱を温度プローブ107で計測することができる。よって、必ずしもプローブ台座102の表面102aの全体がスチーム配管500の外周面500aに面接触しなくても、従来技術に係る計測装置9に比べて高精度にスチーム配管500の表面温度を計測することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る計測装置1では、温度プローブ107における長尺部107bの先端107aについてもスチーム配管500の外周面500aに沿うように凹曲面をもって形成されているので、先端907aが平坦面で構成された温度プローブ907を備える従来技術に係る計測装置9に比べて、温度プローブ107自体もスチーム配管500の外周面500aの熱を高効率に受熱することができる。即ち、計測装置1では、温度プローブ107における長尺部107bの先端107aが凹曲面をもって形成されることでスチーム配管500の外周面500aに沿うように構成されているので、接触による熱伝達および輻射による熱伝達でスチーム配管500における外周面500aの熱を温度プローブ107で高効率に受熱することができる。
【0064】
なお、温度プローブ107の先端107aについても、スチーム配管500の外径寸法D500のバラツキや温度プローブ107における長尺部107bの製造バラツキなどにより、スチーム配管500の外周面500aに対して温度プローブ107の先端107aを構成する凹曲面の全体が面接触せず、一部が近接する場合もある。このような場合の居ても、輻射によりスチーム配管500における外周面500aの熱を温度プローブ107で受熱するのに有効である。よって、必ずしも温度プローブ107における先端107aを構成する凹曲面の全体がスチーム配管500の外周面500aに面接触しなくても、従来技術に係る計測装置9に比べて高精度にスチーム配管500の表面温度を計測することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る計測装置1では、プローブ台座102の表面102aと、温度プローブ107の先端107aとが、スチーム配管500の管軸Ax500が延びる方向(X方向)からの正面視で互いに面一となるように配されているので、プローブ台座102の表面102aと温度プローブ107の先端107aとが、ともにスチーム配管500の外周面500aに対して沿うとともに、それぞれの少なくとも一部が接触する。このため、計測装置1では、温度プローブ107の先端107aおよびプローブ台座102の表面102aがスチーム配管500の外周面500aに対して互いに阻害することなく接触および近接する。よって、計測装置1では、高精度にスチーム配管500の表面温度を計測することができる。
【0066】
また、本実施形態に係る計測装置1では、被収容部102gの体積が突出部102fの体積よりも大きくなるようにプローブ台座102が形成されているので、プローブ台座102における熱容量を大きく確保できるとともに、外部環境への放熱を抑えることができる。このため、計測装置1では、プローブ台座102の表面102aで受けたスチーム配管500の外周面500aの熱を外部への放熱を抑えつつ温度プローブ107へと伝達することができる。よって、計測装置1では、高精度にスチーム配管500の表面温度を計測することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る計測装置1では、プローブケース100がスチーム配管500に対してZ方向下方(鉛直下方)に垂下した姿勢で固定されているので、仮に風などの影響によりプローブケース100が傾いて一時的に温度プローブ107の先端107aがスチーム配管500から離間したとしても、プローブケース100およびその内方に収容された温度プローブ107などの自重により元の垂下した姿勢へと復帰することとなる。よって、計測装置1では、風などの影響によりプローブケース100に外力が加わっても、作業者による修復作業を行わなくても計測を継続することが可能である。
【0068】
また、本実施形態に係る計測装置1では、U字ボルト12とナット13とという汎用部品を用いてプローブケース100がスチーム配管500に固定された構成としているので、専用部品を用いる場合に比べて設置コストの低減を図ることが可能である。
【0069】
また、本実施形態に係る計測装置1では、温度プローブ107に加えて振動プローブ108も備える。このため、スチーム配管500における極近い箇所で当該スチーム配管500の振動の強度および表面温度を計測可能であり、離れた箇所で振動の強度と表面温度とを別々に計測する場合に比べて、スチーム配管500の状態(蒸気漏れの有無)を判断するための正確な計測が可能である。
【0070】
また、本実施形態に係る計測装置1では、温度プローブ107の先端107aと振動プローブ108における探触棒1081の先端1081aとが、スチーム配管500の管軸Ax500に沿う方向(X方向)に互いに間隔をあけて隣接配置されているので、温度プローブ107の先端107aおよび振動プローブ108における探触棒1081の先端1081aのそれぞれがスチーム配管500の管軸Ax500を指向するように外周面500aに対して直交する方向から当接させることができ、高精度に振動の強度および表面温度を計測することができる。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る計測装置1は、円形の外周を有するスチーム配管500を計測対象物としていながら、当該スチーム配管500の表面温度をより正確に計測することができる。
【0072】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る計測装置2の構成について、
図6を用いて説明する。なお、なお、
図6では、上記第1実施形態と同じ構成を有する部分には、同じ符号を付している。そして、以下では、重複説明を省略する。
【0073】
図6に示すように、本実施形態に係る計測装置2は、計測対象物であるスチーム配管501の外径D501と、構成としてアジャスト部材14を備える点とが上記第1実施形態とは相違する。
【0074】
計測装置1が計測対象とするスチーム配管501は、上記第1実施形態に係る計測装置1が計測対象とするスチーム配管500よりも小さな外径D501を有する。ただし、プローブ部10については、プローブ台座102を含めて上記第1実施形態と同じ構成を採用するので、スチーム配管501に固定された状態でプローブ台座102の表面は一部だけがスチーム配管501の外周面501aに接触する。
【0075】
アジャスト部材14は、2つの貫通孔14aを有する板状の部材である。アジャスト部材14は、貫通孔14aにU字ボルト12におけるネジ部12aと円弧部12bとの間の部分が挿通される。そして、U字ボルト12のネジ部12aにナット13が螺合されることにより、アジャスト部材14は、プローブ台座102との間でスチーム配管501を上下方向に挟持する。
【0076】
以上のような構成を有する本実施形態に係る計測装置2は、計測対象とするスチーム配管501の外径D501と、アジャスト部材14を構成として備える点で上記第1実施形態とは相違するが、他の構成は同じである。よって、本実施形態に係る計測装置2についても、上記第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る計測装置1では、スチーム配管501に対する固定に際して用いられるアジャスト部材14をさらに備えるので、スチーム配管501の外径D501が上記第1実施形態と異なっていても、アジャスト部材14を追加採用するだけで他の構成の設計変更を必要とせずに、スチーム配管501に固定することが可能である。このため、計測装置2では、スチーム配管501の外径毎にブラケット101などの設計変更する場合に比べて量産効果によって製造コストの低減が可能である。
【0078】
[参考例]
参考例に係る計測装置8の構成について、
図7を用いて説明する。なお、
図7では、上記第1実施形態や上記第2実施形態と同じ構成を有する部分には、同じ符号を付している。そして、以下では、重複説明を省略する。
【0079】
図7に示すように、参考例に係る計測装置8は、プローブ部80の構成が上記第1実施形態や上記第2実施形態とは相違する。具体的に、計測装置8のプローブ部80は、スチーム配管501側(上側)の表面802aが平面であって、スチーム配管501の外周面501aに対して離間して配置されたプローブ台座802を備える。
【0080】
温度プローブ807および振動プローブ808は、互いにY方向(スチーム配管501の径方向であって、プローブ台座802の表面802aに沿う方向)に離間して配されている。温度プローブ807の先端807aおよび振動プローブ808の先端808aは、それぞれがスチーム配管501の外周面501aに対して点接触している。また、振動プローブ808の先端808aはスチーム配管501の管軸を指向するように配されているが、温度プローブ807の先端807aはスチーム配管501の管軸に対して径方向にズレを有した位置を指向するように配されている。
【0081】
なお、本参考例に係る計測装置8についても、アジャスト部材14を追加的に用いてスチーム配管501に固定されている。
【0082】
本参考例に係る計測装置8でも、上記第2実施形態と同様に、スチーム配管501に対する固定に際して用いられるアジャスト部材14をさらに備えるので、スチーム配管501の外径D501が上記第1実施形態と異なっていても、アジャスト部材14を追加採用するだけで他の構成の設計変更を必要とせずに、スチーム配管501に固定することが可能である。このため、計測装置8でも、スチーム配管501の外径毎にブラケット101などの設計変更する場合に比べて量産効果によって製造コストの低減が可能である。
【0083】
[変形例]
上記第1実施形態および上記第2実施形態では、表面102aが凹曲面をもって構成されたプローブ台座102を採用することとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、スチーム配管500,501の管軸が延びる方向からの正面視で階段状の表面を有するプローブ台座やV字ブロックに類似する形状を有するプローブ台座などを採用することもできる。この場合においても、プローブ台座の複数個所で計測対象物の外周面に当接したり、当接しないまでも外周面に近接させたりすることができる。よって、このような構成を採用する場合にも上記同様の効果を得ることができる。
【0084】
また、上記第1実施形態および上記第2実施形態では、温度プローブ107の先端107aも凹曲面をもって構成されることとしたが、本発明はこれに限定されない。温度プローブ107の先端107aについても、上述のプローブ台座と同様に正面視で階段状等とすることもできる。
【0085】
また、上記第1実施形態および上記第2実施形態では、被収容部102gの体積が突出部102fの体積よりも大きいプローブ台座102を採用することとしたが、本発明はこれに限定されない。被収容部の体積と突出部の体積とが同等であってもよいし、被収容部の体積よりも突出部の体積が大きいプローブ台座を採用することもできる。
【0086】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、および上記参考例では、U字ボルト12とナット13とを用いてスチーム配管500,501に計測装置1,2,8を固定することとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ワイヤーロープやローラーチェーン、さらにはクランプ装置などを用いた固定構造を採用することもできる。
【0087】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、および上記参考例では、計測対象物であるスチーム配管500,501に対して鉛直下方にプローブケース100を垂下させることとしたが、本発明はこれに限定を受けない。計測対象物の上方にプローブケースが直立する姿勢で計測装置を固定することとしてもよい。
【0088】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、および上記参考例では、プローブ部10,80が温度プローブ107,807に加えて振動プローブ108,808を備える構成を採用したが、本発明では、プローブ部が振動プローブを備えることは必須ではない。
【0089】
また、上記第1実施形態、上記第2実施形態、および上記参考例では、計測装置1,2,8をスチーム配管500,501に取り付けることとしたが、本発明では、計測装置の計測対象物はこれに限定されない。例えば、スチームトラップを計測対象物とすることも可能である。
【符号の説明】
【0090】
1,2 計測装置
10 プローブ部
14 アジャスト部材
100 プローブケース
100a 開口
102 プローブ台座
102a 表面
102b 貫通孔
107 温度プローブ
107a 先端
108 振動プローブ
500,501 スチーム配管(計測対象物)
500a,501a 外周面
【要約】
【課題】円形の外周を有する部材を計測対象物としていながら、当該計測対象物の表面温度をより正確に計測することができる計測装置を提供する。
【解決手段】計測装置は、円形の外周を有するスチーム配管を計測対象とする。温度プローブ107は、長尺部107bを有し、その先端107aがスチーム配管の外周面に当接し、スチーム配管の表面温度を計測する。プローブ台座102は、温度プローブ107の長尺部107bが挿通する貫通孔102bを有するとともに、プローブケース100の開口100aの少なくとも一部を塞ぐように配される柱状の台座である。プローブ台座102には、温度プローブ107の長尺部107bが挿通する部分で熱的に結合されている。プローブ台座102の表面102aは、スチーム配管の外周面に対して沿うとともに、少なくとも一部が当接するように形成されている。
【選択図】
図2