(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】飛行装置
(51)【国際特許分類】
B64U 20/80 20230101AFI20240808BHJP
B64U 10/16 20230101ALI20240808BHJP
B64U 50/33 20230101ALI20240808BHJP
【FI】
B64U20/80
B64U10/16
B64U50/33
(21)【出願番号】P 2024063430
(22)【出願日】2024-04-10
【審査請求日】2024-04-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011199
【氏名又は名称】株式会社石川エナジーリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】石川 満
(72)【発明者】
【氏名】関田 孝人
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112050(JP,A)
【文献】特開平01-114597(JP,A)
【文献】特開2018-131169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 20/80
B64U 10/16
B64U 50/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータが回転することで発生する推力により空中を浮遊する飛行装置であり、
機体と、エンジンと、タンクと、電装品と、を具備し、
前記機体の内部空間は、前記タンクにより、第1空間と第2空間とに区画され、
前記エンジンは、前記第1空間に配設され、
前記電装品は、前記第2空間に配設され、
平面視において、前記第1空間と前記第2空間とが配列する方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とした場合、
前記タンクは、前記第2方向に沿って長手方向を有することを特徴とする飛行装置。
【請求項2】
前記第2方向において、前記タンクの幅は、前記内部空間の幅と、略同一であることを特徴とする請求項1に記載の飛行装置。
【請求項3】
前記タンクは、前記エンジンに供給される燃料が貯留される燃料タンクであることを特徴とする請求項1に記載の飛行装置。
【請求項4】
ロータが回転することで発生する推力により空中を浮遊する飛行装置であり、
機体と、エンジンと、タンクと、電装品と、を具備し、
前記機体の内部空間は、前記タンクにより、第1空間と第2空間とに区画され、
前記エンジンは、前記第1空間に配設され、
前記電装品は、前記第2空間に配設され、
前記エンジンは、エンジン本体部と、外部から空気を取り入れる給気部と、前記給気部から前記エンジン本体部に供給される空気が通過する供給風路部と、を有し、
前記供給風路部は、前記第1空間から前記第2空間に延在し、
前記給気部は、前記第2空間に配設されることを特徴とする飛行装置。
【請求項5】
ロータが回転することで発生する推力により空中を浮遊する飛行装置であり、
機体と、エンジンと、タンクと、電装品と、を具備し、
前記機体の内部空間は、前記タンクにより、第1空間と第2空間とに区画され、
前記エンジンは、前記第1空間に配設され、
前記電装品は、前記第2空間に配設され、
前記タンクは、前記第1空間と前記第2空間とを連通させる連通部を有し、
前記エンジンは、エンジン本体部と、外部から空気を取り入れる給気部と、前記給気部から前記エンジン本体部に空気を供給する供給風路部と、を有し、
前記供給風路部は、前記連通部を貫通して、前記第1空間から前記第2空間に延在し、
前記給気部は、前記第2空間に配設されることを特徴とする飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行装置に関し、特に、機体にタンクを有する飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無人で空中を飛行することが可能な飛行装置が知られている。このような飛行装置は、垂直軸回りに回転するロータの推力で、空中を飛行することを可能としている。
【0003】
かかる飛行装置の適用分野としては、例えば、輸送分野、測量分野および撮影分野等が挙げられる。このような分野に飛行装置を適用する場合は、測量機器や撮影機器を飛行装置に備え付ける。飛行装置をかかる分野に適用させることで、人が立ち入れない地域に飛行装置を飛行させ、そのような地域の輸送、撮影および測量を行うことができる。このような飛行装置に関する発明は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載されている。
【0004】
一般的な飛行装置では、飛行装置に搭載された蓄電池から供給される電力により、上記したロータは回転する。しかしながら、蓄電池による電力の供給ではエネルギの供給量が必ずしも十分ではないため、長時間に渡る連続飛行を実現するために、エンジンを搭載した飛行装置も出現している。このような飛行装置では、エンジンの駆動力で発電機を回転させ、発電機で発電された電力でロータを回転駆動する。かかる構成の飛行装置は、動力源からロータにエネルギが供給される経路に、エンジンと発電機とが直列的に接続されることから、シリーズ型ハイブリッドドローンとも称される。このような飛行装置を用いて撮影や測量を行うことで、広範囲な撮影や測量を行うことができる。エンジンが搭載された飛行装置は、例えば特許文献3に記載されている。また、エンジンの駆動力により機械的にメインロータを回転させ、モータによりサブロータを回転させるパラレル型ハイブリッドドローンも徐々に登場している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-51545号公報
【文献】特開2014-240242号公報
【文献】特開2011-251678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従前の飛行装置においては、飛行装置に搭載されるエンジンに関して改善の余地があった。
【0007】
具体的には、エンジンが運転することによりエンジンを取り巻く空気は昇温する。よって、昇温された空気が、エンジンの燃焼室に送りこまれると、エンジンの運転効率が低下してしまう課題があった。また、係る課題を解決するために、エンジンに供給される空気を遠方から取り込むためのダクトを配設すると、飛行装置全体の構成が複雑化すると共に、飛行装置全体の軽量化が困難になる課題があった。また、飛行装置の機体の内部において、エンジンの近傍に、バッテリやインバータ等の電装品が配設されると、エンジンにより電装品が過熱され、電装品の動作が不安定になる恐れもあった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、飛行中に於いてエンジンを効果的に運転できる飛行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ロータが回転することで発生する推力により空中を浮遊する飛行装置であり、機体と、エンジンと、タンクと、電装品と、を具備し、前記機体の内部空間は、前記タンクにより、第1空間と第2空間とに区画され、前記エンジンは、前記第1空間に配設され、前記電装品は、前記第2空間に配設され、平面視において、前記第1空間と前記第2空間とが配列する方向を第1方向とし、前記第1方向に直交する方向を第2方向とした場合、前記タンクは、前記第2方向に沿って長手方向を有することを特徴とする飛行装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、飛行中に於いてエンジンを効果的に運転できる飛行装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る飛行装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る飛行装置を示す上面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る飛行装置を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る飛行装置を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る飛行装置の機体およびその内部を示す斜視図である。
【
図6A】本発明の実施形態に係る飛行装置の燃料タンクを示す斜視図である。
【
図6B】本発明の実施形態に係る飛行装置の燃料タンクを示す側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る飛行装置のエンジンを示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る飛行装置のエンジンを示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る飛行装置を示す接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明に於いて、左右方向とは、飛行装置10を後方から見た場合の左右方向である。また、以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0025】
図1は、飛行装置10を示す斜視図である。
図2は、飛行装置10を示す上面図である。
図3は、飛行装置10を示す側面図である。飛行装置10は、ドローンとも称され、詳細にはハイブリッドドローンとも称される。更に、以下の説明において、前方とは、飛行装置10の進行方向前側であり、後方とは、飛行装置10の進行方向後側である。更に、以下の説明では、機体19から離れる側を外側と称し、機体19に近づく側を内側と称する場合もある。
【0026】
図1は、飛行装置10を示す斜視図である。飛行装置10は、ロータ14の回転により発生する推力により、空中を浮遊する装置である。飛行装置10は、機体19と、エンジン30と、タンク27と、電装品28と、を主要に具備する。ここでは、エンジン30、タンク27および電装品28は、カバー17により覆われているので図示されない。エンジン30、タンク27および電装品28は、
図4等を参照して後述する。更に、飛行装置10は、アーム12と、モータ21と、ロータ14と、等を有する。
【0027】
図1ないし
図3を参照して、飛行装置10は、後述するエンジン30を搭載し、エンジン30が運転されることで発生するエネルギにより飛行するエンジン搭載型ドローンである。飛行装置10としては、シリーズハイブリッドドローンまたはパラレルハイブリッドドローンを採用できる。シリーズハイブリッドドローンは、エンジン30により後述する発電機16を駆動し、発電機16から給電を受けたモータ21が、後述するロータ14を回転させる。パラレルハイブリッドドローンは、モータ21によりロータ14を回転させる電気的駆動系とは別に、エンジン30により機械的に別のロータ14を回転させる機械的駆動系を有する。
【0028】
機体19は、飛行装置10を構成するエンジン30等の機器を支える本体であり、合成樹脂、金属またはこれらの複合材から成る。ここでは、機体19は、カバー17により覆われているので、
図1には現れない。
【0029】
カバー17は、合成樹脂から成る板材であり、後述する機体19、エンジン30等を被覆するように構成される。カバー17は、カバー上面部171、カバー側面部172および取出部273を有する。カバー上面部171、カバー側面部172およびカバー下面部173は、一体に連続しても良いし、各々が個別の板状部材であっても良い。カバー上面部171は、機体19を上方から被覆するように構成される。カバー側面部172は、カバー17を、側方、即ち、前方、右方、後方および左方から被覆するように構成される。カバー下面部173は、機体19を、下方から被覆するように構成される。
【0030】
ロータ14は、回転することにより機体19が浮遊するための推力を発生する。ここでは、複数のロータ14が配設されている。具体的には、ロータ14は、前方左側、前方右側、右方側、後方右側、後方左側および左側に、合計で6個が配設される。
図1等では、ロータ14の回転範囲の外周を示している。実際は、ロータ14は2枚または4枚のプロペラ状の部材から成る。
【0031】
エンジン30は、ロータ14が回転するための動力を発生させる。
図1では、エンジン30は機体19に内蔵されており、図示されない。エンジン30は、機体19に内蔵され、ロータ14を所定の回転速度で回転させるためのエネルギを発生させる。
【0032】
機体19からは、周囲に向かって複数のアーム12が伸びている。アーム12は、前方左側、前方右側、右方側、後方右側、後方左側および左側に向かって略棒状に伸びる部材である。ここでは、合計で6個のアーム12が配設される。
【0033】
モータ21は、後述するエンジン30が発電機16を運転することで発生する電力により、ロータ14を回転させる。モータ21は、各々のアーム12の先端に配設される。ここでは、アーム12の先端部の下面にモータ21が配設され、モータ21の下部にロータ14が設置される。
【0034】
脚部15は、機体19の下部から下方に伸びる支持部材である。飛行装置10が着陸状態の場合に、脚部15の最下部が接地面に接触する。
【0035】
排気部13は、エンジン30が運転することで発生する排気ガスが、外部に排出される部位である。排気部13は、マフラーとも称される。
【0036】
ここでは図示しないが、飛行装置10は、エンジン30を冷却するための冷却機構を有する。この冷却機構は、アーム12に取り付けられる図示しないラジエタを有し、このラジエタとエンジン30との間で冷却流体を循環させることでエンジン30を冷却する。
【0037】
図4は、飛行装置10を示す斜視図である。機体19は、上方から見て略六角形状を呈するように組まれたアーム状部材から構成される。機体19の内部には、エンジン30、タンク27、電装品28等の構成機器が内蔵される。これらの構成機器は、
図1に示したカバー17により覆われる。
【0038】
図5は、飛行装置10の機体19およびその内部を示す斜視図である。
【0039】
内部空間29は、機体19の内部の領域である。内部空間29は扁平な六角柱の如き形状を呈する。また、内部空間29は、
図1等に示されたカバー17により覆われる空間である。内部空間29は、カバー17により覆われるものの、カバー17に形成された間隙を経由して外部と連通する。よって、飛行装置10の飛行に伴い、当該間隙を介して内部空間29は外気と換気される。よって、飛行装置10の飛行中において、エンジン30が発熱しても、内部空間29の空気が換気されることにより、内部空間29の内部が過度に高温となることが抑制される。
【0040】
機体19の内部空間29は、タンク27により、第1空間291と第2空間292とに区画される。具体的には、上面から機体19を見た場合において、タンク27は、内部空間29を第1空間291と第2空間292とに区画する。よって、内部空間29において、タンク27よりも後方側の部分が第1空間291であり、タンク27よりも前方側の部分が第2空間292である。
【0041】
タンク27は、例えば、エンジン30に供給されるガソンリン等の燃料が貯留される燃料タンク271である。燃料タンク271は、中空構造を呈する合成樹脂から成り、左右方向に沿って細長い形状を呈する。前後方向において、燃料タンク271は、内部空間29の略中央に配設される。詳しくは、前後方向において、燃料タンク271の後面が、内部空間29の略中央に配設される。また、左右方向において、燃料タンク271の幅は、内部空間29の幅と略同一である。係る形状のタンク27により、内部空間29を区画することができる。本実施形態では、タンク27は、燃料が貯留される燃料容器として機能し、更に、内部空間29を区画する区画部材として機能し、更には、第1空間291と第2空間292とを断熱する断熱部材としても機能する。
【0042】
第1空間291には、エンジン30および発電機16等が配設される。
【0043】
エンジン30は、エンジン本体部34、供給風路部26および給気部25を有する。給気部25は、エンジン本体部34の後述する燃焼室48に供給される空気を、外部から取り入れる部位である。給気部25は、取り入れられる空気に含まれる粉塵を捕獲するフィルタを有する。供給風路部26は、エンジン本体部34の燃焼室48と給気部25とを連通する管状の部材である。供給風路部26は、前後方向に沿って伸びる管状の部材であり、燃料タンク271の連通部35を通過する。換言すると、供給風路部26は、燃料タンク271を部分的に窪ませた連通部35を貫通して、第1空間291から第2空間292に延在する。
【0044】
エンジン30には、発電機16が取り付けられる。発電機16は、発電機161と発電機162とを有する。後述する様に、エンジン30は対向配置される第1エンジン部40および第2エンジン部41を有する。発電機161および発電機162は、夫々、第1エンジン部40および第2エンジン部41により回転駆動され、これにより発電する。発電機16は、エンジン本体部34と燃料タンク271との間に配設される。かかる構成により、運転時には高温となるエンジン本体部34と燃料タンク271とを、発電機16により断熱することができる。よって、エンジン本体部34の運転時において、燃料タンク271に貯留されるガソリン等の燃料が過熱されることを防止できる。
【0045】
電装品28は、第2空間292に配設される。電装品28としては、飛行装置10を構成する電気機器が採用される。具体的には、電装品28は、電力変換部281やバッテリ282等である。第2空間292に収納された電装品28は、燃料タンク271により、エンジン本体部34と断熱される。よって、飛行装置10の飛行時においてエンジン30が発熱しても、その発熱により電装品28が過熱されることが防止される。また、第2空間292は第1空間291の前方側に配設される。よって、飛行装置10の飛行時において、エンジン30により過熱された第1空間291に存在する空気が、第2空間292の側に流入することが抑制される。このことによっても、第2空間292の内部の空気が過熱されることが抑制される。
【0046】
飛行装置10の飛行中においてエンジン30が運転されると、エンジン本体部34の後述する燃焼室48には、給気部25および供給風路部26を経由して空気が供給される。給気部25から取り入れられる空気は、第2空間292に存在するものである。前述した様に、第1空間291に配設されたエンジン本体部34と、第2空間292に存在する空気とは、燃料タンク271により断熱されている。よって、第2空間292に存在する空気は、エンジン30により加熱される第1空間291に存在する空気よりも低温である。更に、飛行装置10の飛行時においては、第2空間292には、前述したカバー17に形成された間隙から、常に外気が取り入れられている。更に、飛行装置10の進行方向において、第2空間292は第1空間291よりも前方側に配設される。よって、飛行装置10が前方に向かって飛行する際において、第1空間291からの高温空気が第2空間292の側に進入することは殆ど無い。よって、比較的低温である第2空間292の空気が、給気部25および供給風路部26を経由して、電力変換部281の後述する燃焼室48に送りこまれる。このことから、燃焼室48における燃焼効率が高まり、エンジン30の運転効率を向上できる。
【0047】
図6Aは、飛行装置10の燃料タンク271を示す斜視図である。
図6Bは、飛行装置10の燃料タンク271を示す側面図である。
【0048】
図6Aおよび
図6Bを参照して、前述した様に、燃料タンク271は、前後方向において扁平な形状を呈している。また、燃料タンク271は、タンク本体部272と、供給部275と、取出部273と、底面部274と、連通部35と、を主要に有している。
【0049】
タンク本体部272は、燃料タンク271の大部分を占める部位であり、中空形状を呈する合成樹脂板から成る。
【0050】
供給部275は、タンク本体部272の上面の左方側に形成された略筒状の部位である。供給部275は、タンク本体部272の内部と外部とを連通させる。供給部275は、普段はキャプにより閉鎖され、給油時等において当該キャップは取り外し可能とされる。供給部275を経由して、タンク本体部272にガソリン等の燃料が供給される。
【0051】
取出部273は、タンク本体部272の底面における略中央部に形成された略筒状の部位である。取出部273は、タンク本体部272の内部と外部とを連通させる。取出部273からは、タンク本体部272に貯留されたガソリン等の燃料が、図示しない導管を経由して、エンジン30に輸送される。
【0052】
底面部274は、タンク本体部272の底面である。底面部274は、取出部273に向かって下方に傾斜する。具体的には、左右方向において取出部273がタンク本体部272の略中央に配設されていることから、左右方向において底面部274は中央に向かって下方に傾斜する傾斜面を呈する。かかる構成により、飛行装置10の飛行時において燃料タンク271が傾斜したとしても、タンク本体部272の内部に貯留された燃料を、底面部274を伝って取出部273の側に流動させることができる。
【0053】
図6Bを参照して、連通部35は、タンク27の上面を部分的に下方に向かって窪ませた凹状の部位である。前述した様に、
図5を参照して、連通部35は、第1空間291と第2空間292とを連通させる部位である。連通部35には、
図5に示したエンジン30の供給風路部26が配設される。連通部35を係る形状とすることで、タンク本体部272の内部における燃料の流動を連通部35が阻害することを抑制できる。ここで、連通部35は、タンク本体部272の右側辺を左方に向かって窪ませた部位でも良いし、タンク本体部272の左側辺を右方に向かって窪ませた部位でも良いし、タンク本体部272の下辺を上方に向かって窪ませた部位でも良い。更には、連通部35は、タンク本体部272の略中央部を貫通する部位として形成されても良い。
【0054】
図7は、飛行装置10のエンジン30を示す斜視図である。
【0055】
エンジン30は、第1エンジンブロック32と、第2エンジンブロック33とを有する。第1エンジンブロック32および第2エンジンブロック33は、鋳造されたアルミニウム等の金属から成り、エンジン30の外殻を構成する。後述するように、第1エンジンブロック32には、第1エンジン部40の構成機器が内部に配設される。第2エンジンブロック33には、第2エンジン部41の構成機器が内部に配設される。第1クランクシャフト42および第2クランクシャフト45は、夫々、第1エンジンブロック32および第2エンジンブロック33の側面から外部に導出している。
【0056】
図8は、飛行装置10のエンジン30を示す断面図である。
【0057】
エンジン30は、第1エンジン部40と、第2エンジン部41と、を有する。第1エンジン部40と第2エンジン部41とは対向配置される。また、第1エンジン部40の各部材は第1エンジンブロック32に収納され、第2エンジン部41の各部材は第2エンジンブロック33に収納される。
【0058】
第1エンジン部40は、往復運動する第1ピストン43と、第1ピストン43の往復運動を回転運動に変換する第1クランクシャフト42と、第1ピストン43と第1クランクシャフト42とを回転可能に連結する第1コネクティングロッド44と、を有する。
【0059】
第2エンジン部41は、往復運動する第2ピストン46と、第2ピストン46の往復運動を回転運動に変換する第2クランクシャフト45と、第2ピストン46と第2クランクシャフト45とを回転可能に連結する第2コネクティングロッド47と、を有する。
【0060】
第1エンジン部40の第1ピストン43と、第2エンジン部41の第2ピストン46で、燃焼室48を共有する。換言すると、第1ピストン43と第2ピストン46とは、連通する一つのシリンダ49の内部を往復運動する。よって、第1エンジン部40および第1ピストン43が中心部に向かって同時にストロークすることで、ストローク量を少なくしつつ、燃焼室48における混合ガスの高膨張比をとることができる。燃焼室48には、
図6Aを参照して、燃料タンク271に貯留された燃料、および、給気部25から取り入れた空気から成る混合気が導入される。
【0061】
ここでは図示していないが、エンジン30には、燃焼室48から連通する容積空間が形成されており、この容積空間に点火プラグが配置されている。また、燃焼室48には、ここでは図示しない吸気口および排気口が形成されており、ガソリンなどの燃料を含む混合気が吸気口から燃焼室48に導入され、燃焼後の排気ガスが排気口を経由して燃焼室48から外部に排気される。
【0062】
エンジン30は、第1エンジンブロック32と第2エンジンブロック33とを接合して締結することにより成る。即ち、第1シリンダブロック50の内部空間と、第2シリンダブロック51の内部空間とを連通させることにより、シリンダ49である燃焼室48が形成される。第1シリンダブロック50の内部を第1ピストン43が往復運動し、第2シリンダブロック51の内部空間を第2ピストン46が往復運動する。
【0063】
図9は、飛行装置10の接続構成を示す接続図である。
【0064】
飛行装置10は、演算制御部31と、エンジン30と、発電機16と、バッテリ282と、電力変換部281と、モータ21と、ロータ14と、を主要に有する。
【0065】
演算制御部31は、CPU、ROM、RAM等を有し、ここでは図示しない各種センサやコントローラからの入力に基づいて、飛行装置10を構成する各機器の挙動を制御する。また、演算制御部31は、各種センサからの入力に基づいて、各々のロータ14の回転数を制御するフライトコントローラも含む。
【0066】
エンジン30は、演算制御部31からの入力信号に基づいて動作し、飛行装置10が飛行するためのエネルギを発生させる。エンジン30の具体構成は
図7等を参照して説明した通りである。
【0067】
発電機16は、エンジン30の駆動力を用いて電力を発生する装置であり、発電機161および発電機162を有する。発電機161は、前述したエンジン30の第1エンジン部40により駆動される。発電機162は、前述したエンジン30の第2エンジン部41により駆動される。
【0068】
バッテリ282は、発電機16と電力変換部281との間に介装される。バッテリ282は、発電機16により充電される。バッテリ282から放電された電力は、後述する電力変換部281等に供給される。
【0069】
電力変換部281は、個々のモータ21およびロータ14に対応して設けられる。電力変換部281としては、発電機16から供給される交流電力を、一旦直流化した後に所定の周波数の交流電力に変換するコンバータおよびインバータを採用できる。更に、電力変換部281としては、バッテリ282から供給される直流電力を所定の周波数に変換するインバータを採用できる。
【0070】
モータ21は、個々のロータ14に対応して設けられる。モータ21は、夫々、電力変換部281から供給される電力により所定の速度で回転する。
【0071】
飛行装置10の動作を簡単に説明する。飛行装置10は、着陸状態、離陸状態、ホバリング状態、昇降状態、水平移動状態で稼働される。
【0072】
着陸状態では、飛行装置10は接地している。この状態では、エンジン30は稼働しておらず、ロータ14は回転しない。
【0073】
離陸状態では、飛行装置10は、ロータ14の回転により発生する推力により、接地面から離れて上昇する。
【0074】
ホバリング状態では、飛行装置10は、演算制御部31からの指示に基づいて、エンジン30から発生する駆動力によりモータ21およびロータ14を回転させ、飛行装置10を空中の所定位置に浮遊させる。この際、演算制御部31からの指示に基づいて、各々のロータ14は回転している。演算制御部31は、飛行装置10が所定の高度および姿勢を維持できるように、各々の電力変換部281を制御することで、各々のモータ21およびロータ14の回転速度を所定のものにしている。
【0075】
昇降状態では、各々のモータ21およびロータ14の回転数を制御することで、飛行装置10を上昇または下降させる。この際も、演算制御部31は、飛行装置10が所定の高度および姿勢を維持できるように、各々の電力変換部281を制御することで、各々のモータ21およびロータ14の回転速度を所定のものにしている。
【0076】
水平移動状態では、演算制御部31は、各々の電力変換部281を制御することで、各々のモータ21およびロータ14の回転数を制御することにより、飛行装置10を傾斜状態にする。この際にも、演算制御部31は、エンジン30の駆動状態を制御することで、ロータ14を所定速度で回転させる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0078】
例えば、
図6A等を参照して、タンク27として燃料タンク271を例示したが、タンク27としては他の物体が収納されるものを採用できる。具体的には、タンク27に収納される物体としては、液体、例えば農薬等を採用できる。更に、タンク27に収納される物体としては、ラジエタとエンジンとの間で循環する冷却流体の一部を採用できる。
【0079】
図5を参照して、燃料タンク271は、内部空間29を必ずしも前後方向に仕切る必要は無い。燃料タンク271は、内部空間29を左右方向に仕切っても良いし、上下方向に仕切っても良い。
前述した本実施形態により把握できる発明を、その効果と共に下記する。
本発明の飛行装置は、ロータが回転することで発生する推力により空中を浮遊する飛行装置であり、機体と、エンジンと、タンクと、電装品と、を具備し、前記機体の内部空間は、前記タンクにより、第1空間と第2空間とに区画され、前記エンジンは、前記第1空間に配設され、前記電装品は、前記第2空間に配設されることを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、エンジンが第1空間に配設され、電装品が第2空間に配設されることにより、タンクによりエンジンと電装品とを断熱することができる。よって、飛行時においてエンジンが発熱しても、電装品が過熱されることが無く、電装品を安定的に動作させることができる。
また、本発明の飛行装置では、上面から前記機体を見た場合において、前記タンクは、前記内部空間を前記第1空間と前記第2空間とに区画することを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、例えば、機体の後方側に第1空間を形成すると共に、機体の前方側に第2空間を形成することができる。よって、後方側に形成された第1空間にエンジンを収納し、前方側に形成された第2空間に電装品を収納することができる。
また、本発明の飛行装置では、前記タンクは、前記第1空間と前記第2空間とを連通させる連通部を有することを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、エンジンの構成機器の一部を、連通部を経由して第2空間に配設させることができる。
また、本発明の飛行装置では、前記連通部は、前記タンクの上面を部分的に下方に向かって窪ませた凹状の部位であることを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、連通部を凹状の部位とすることで、簡素な構成で連通部を形成することができる。更に、タンクの上面の凹部として連通部を形成することで、タンクの内部における流体の流れを連通部が阻害することを抑制できる。
また、本発明の飛行装置では、前記エンジンは、エンジン本体部と、外部から空気を取り入れる給気部と、前記給気部から前記エンジン本体部に空気を供給する供給風路部と、を有し、前記供給風路部は、前記連通部を貫通して、前記第1空間から前記第2空間に延在し、前記給気部は、前記第2空間に配設されることを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、第2空間に存在する比較的低温な空気を、給気部および供給風路部を経由してエンジン本体部の燃焼室に供給することができる。よって、エンジンの出力を大きくすることができる。
また、本発明の飛行装置では、前記タンクは、前記エンジンに供給される燃料が貯留される燃料タンクであることを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、燃料タンクを、第1空間と第2空間とを区画する断熱材として機能させることができる。よって、専用の断熱部材を不要として、第1空間と第2空間とを断熱させることができる。
また、本発明の飛行装置では、前記タンクは、流体が外部に取り出される取出部と、底面部を有し、前記底面部は、前記取出部に向かって下方に傾斜することを特徴とする。本発明の飛行装置によれば、底面部が取出部に向かって下方に傾斜することにより、空中を浮遊する機体が傾斜した場合であっても、タンクに貯留される燃料等の流体を、底面部を伝って取出部に集合させることができる。
【符号の説明】
【0080】
10 飛行装置
12 アーム
13 排気部
14 ロータ
15 脚部
16 発電機
161 発電機
162 発電機
17 カバー
171 カバー上面部
172 カバー側面部
173 カバー下面部
19 機体
21 モータ
25 給気部
26 供給風路部
27 タンク
271 燃料タンク
272 タンク本体部
273 取出部
274 底面部
275 供給部
28 電装品
281 電力変換部
282 バッテリ
29 内部空間
291 第1空間
292 第2空間
30 エンジン
31 演算制御部
32 第1エンジンブロック
33 第2エンジンブロック
34 エンジン本体部
35 連通部
40 第1エンジン部
41 第2エンジン部
42 第1クランクシャフト
43 第1ピストン
44 第1コネクティングロッド
45 第2クランクシャフト
46 第2ピストン
47 第2コネクティングロッド
48 燃焼室
49 シリンダ
50 第1シリンダブロック
51 第2シリンダブロック
【要約】
【課題】飛行中に於いてエンジンを効果的に運転できる飛行装置を提供する。
【解決手段】飛行装置10は、ロータ14の回転により発生する推力により空中を浮遊する装置である。飛行装置10は、機体19と、エンジン30と、タンク27と、電装品28と、を具備する。機体19の内部空間29は、タンク27により、第1空間291と第2空間292とに区画される。エンジン30は第1空間291に配設される。電装品28は、第2空間292に配設される。
【選択図】
図5