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特許7535357多段式二軸回転ポンプ及び多段式クローポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】多段式二軸回転ポンプ及び多段式クローポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/04 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
F04C29/04 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024081456
(22)【出願日】2024-05-20
【審査請求日】2024-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】関 佳久
(72)【発明者】
【氏名】福島 一樹
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第113803255(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/08-18/20
F04C 23/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの円の一部を左右方向に重ね合わせた断面形状のポンプ室が多段に設けられ、
各段のポンプ室内で平行に配されて一対の歯車によって反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸と、
該二つの回転軸に対応して前記各段のポンプ室内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を排出できるように形成された各段の二つのロータとを備える多段式二軸回転ポンプであって、
前段ポンプ室の排気口が設けられた前段ポンプ排気側端壁、及び後段ポンプ室の吸気口が設けられた後段ポンプ吸気側端壁の間に設けられた前後段間部において、
前記二つの回転軸の左右方向における中間に前記前段ポンプ室の排気口と前記後段ポンプ室の吸気口とを連通する通路として設けられた段間連通室と、
前記二つの回転軸の左右方向における一方の脇側に下側から上側へ冷却空気を流すことができる流路として形成された一方側段間空冷流路と、
前記二つの回転軸の左右方向における他方の脇側に下側から上側へ冷却空気を流す流路として形成された他方側段間空冷流路とを備えることを特徴とする多段式二軸回転ポンプ。
【請求項2】
前記前後段間部が、前記前段ポンプ排気側端壁と前記後段ポンプ吸気側端壁とを含む形態であって、該前後段間部に、前記段間連通室、前記一方側段間空冷流路、及び前記他方側段間空冷流路が形成されるように一体的に設けられていることを特徴とする請求項1記載の多段式二軸回転ポンプ。
【請求項3】
前記多段のポンプ室が設けられたポンプ室ボディ部と、前記二つの回転軸を軸受けしている軸受部が設けられた軸受部ボディ部との間であって、前記二つの回転軸の周囲に相当する部位に、下側から上側へ冷却空気を流すことができるボディ部間の冷却用隙間が設けられていることを特徴とする請求項1記載の多段式二軸回転ポンプ。
【請求項4】
前記二つの回転軸のうちの一方における駆動モータの駆動力を伝達するために設けられたカップリングに遠心送風ファンが装着され、
該遠心送風ファンによって生じた空気流を冷却空気とし、前記一方側段間空冷流路、前記他方側段間空冷流路、及び前記ボディ部間の冷却用隙間を下側から上側へ流れるように案内する冷却空気案内部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の多段式二軸回転ポンプ。
【請求項5】
請求項1~4に記載の前記多段式二軸回転ポンプが多段式クローポンプであって、前記一方側段間空冷流路及び前記他方側段間空冷流路のうち前記一方側段間空冷流路の方が、クローポンプとして偏心して配されている前記前段ポンプ室の排気口に近接されて設けられていることを特徴とする多段式クローポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの円の一部を左右方向に重ね合わせた断面形状のポンプ室が多段に設けられ、各段のポンプ室内で平行に配されて一対の歯車によって反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸と、該二つの回転軸に対応して前記各段のポンプ室内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を排出できるように形成された各段の二つのロータとを備える多段式二軸回転ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回転ポンプとしては、ポンプ室10内で回転するロータが、回転軸の一方の端に設けられて片持ち状態に支持される回転ポンプにおいて、ポンプ本体が、ポンプ室を形成するようにシリンダ部及び該シリンダ部の両端面のそれぞれに設けられた端壁部によって設けられたポンプ室ボディ部と、前記ロータが回転軸の一方の端に設けられて片持ち状態に支持されるように、回転軸を軸受けする軸受部が設けられた軸受部ボディ部との間に、冷却用の隙間が形成されるように、分割された構造に設けられている(特許文献1参照)ものが、本出願人によって提案されている。
【0003】
この従来の回転ポンプによれば、空冷によって、駆動による発熱が軸受部ボディ部に伝わることを低減し、軸受部などを構成する機能部品を長寿命化することができるという効果を奏する。
【0004】
また、従来の二軸回転ポンプ及びクローポンプとしては、ポンプ室を形成するように、シリンダ部、一方の端壁部、及び他方の端壁部を備えるポンプ室ボディ部と、二つの回転軸と、相互に非接触状態で回転される二つのロータと、軸受部が設けられる構造壁部を構成すると共にギヤボックスとしての構造壁部を構成する軸受ボディ部とを備え、ポンプ室ボディ部と軸受ボディ部との間に、冷却用の隙間が形成されるように、ポンプ本体が、ポンプ室ボディ部と軸受ボディ部とに区画されて設けられ、軸受ボディ部のポンプ室ボディ部の側に位置する構造壁部に、軸受部冷却液流路が設けられている(特許文献2参照)ものが、本出願人によって提案されている。
【0005】
この従来の二軸回転ポンプ及びクローポンプによれば、ポンプ本体が過熱されることを、冷却液を用いてより効果的に防止でき、ポンプ稼働の信頼性を格段に向上できるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-67246号公報(第1頁、図2
【文献】特開2023-13385号公報(第1頁、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多段式二軸回転ポンプ及び多段式クローポンプに関して解決しようとする問題点は、単段式二軸回転ポンプについては、前述の先行技術文献にあるように、空冷又は水冷によって、ポンプ本体が過熱されることを適切に防止する構成が提案されているが、高い真空性能などが要求される多段式二軸回転ポンプに関しては適切な構成が提案されていないことにある。例えば、前述の特許文献2に示すような単段式二軸回転ポンプ(単段水冷式真空ポンプ)では、ロータ間接触回避のために、ロータにおけるポンプ室の排気口サイド(排気側)を冷却することが効果的であり、この単段水冷式真空ポンプでは、排気側に水冷式の冷却回路を追加して効率的な冷却がなされているが、部品点数が多くなってコストが高くなるという課題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、空冷によって、ロータやポンプ本体が過熱されることを合理的に防止することができる多段式二軸回転ポンプ及び多段式クローポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る多段式二軸回転ポンプの一形態によれば、二つの円の一部を左右方向に重ね合わせた断面形状のポンプ室が多段に設けられ、各段のポンプ室内で平行に配されて一対の歯車によって反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸と、該二つの回転軸に対応して前記各段のポンプ室内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を排出できるように形成された各段の二つのロータとを備える多段式二軸回転ポンプであって、前段ポンプ室の排気口が設けられた前段ポンプ排気側端壁、及び後段ポンプ室の吸気口が設けられた後段ポンプ吸気側端壁の間に設けられた前後段間部において、前記二つの回転軸の左右方向における中間に前記前段ポンプ室の排気口と前記後段ポンプ室の吸気口とを連通する通路として設けられた段間連通室と、前記二つの回転軸の左右方向における一方の脇側に下側から上側へ冷却空気を流すことができる流路として形成された一方側段間空冷流路と、前記二つの回転軸の左右方向における他方の脇側に下側から上側へ冷却空気を流す流路として形成された他方側段間空冷流路とを備える。
【0010】
また、本発明に係る多段式二軸回転ポンプの一形態によれば、前記前後段間部が、前記前段ポンプ排気側端壁と前記後段ポンプ吸気側端壁とを含む形態であって、該前後段間部に、前記段間連通室、前記一方側段間空冷流路、及び前記他方側段間空冷流路が形成されるように一体的に設けられていることを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る多段式二軸回転ポンプの一形態によれば、前記多段のポンプ室が設けられたポンプ室ボディ部と、前記二つの回転軸を駆動力が伝達される側で軸受けしている軸受部が設けられた軸受部ボディ部との間であって、前記二つの回転軸の周囲に相当する部位に、下側から上側へ冷却空気を流すことができるボディ部間の冷却用隙間が設けられていることを特徴とすることができる。
【0012】
また、本発明に係る多段式二軸回転ポンプの一形態によれば、前記二つの回転軸のうちの一方における駆動モータの駆動力を伝達するために設けられたカップリングに遠心送風ファンが装着され、該遠心送風ファンによって生じた空気流を冷却空気とし、前記一方側段間空冷流路、前記他方側段間空冷流路、及び前記ボディ部間の冷却用隙間を下側から上側へ流れるように案内する冷却空気案内部が設けられていることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る多段式クローポンプの一形態によれば、前記一方側段間空冷流路及び前記他方側段間空冷流路のうち前記一方側段間空冷流路の方が、クローポンプとして偏心して配されている前記前段ポンプ室の排気口に近接されて設けられていることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る多段式二軸回転ポンプによれば、空冷によって、ロータやポンプ本体が過熱されることを合理的に防止することができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る水冷機能を備えた多段式二軸回転ポンプ(クローポンプ)の形態例を示す斜視図である。
図2図1の形態例の分解図である。
図3図1の形態例の側面図である。
図4図1の形態例における図3のA-A線断面図である。
図5図1の形態例における図3のB-B線断面図である。
図6図1の形態例の正面図である。
図7図1の形態例の平面図である。
図8図1の形態例の背面図である。
図9】本発明に係る空冷機能を備えた多段式二軸回転ポンプ(クローポンプ)の形態例を示す斜視図である。
図10図9の形態例の分解図である。
図11図9の形態例の平面図である。
図12図9の形態例における図11のA-A線断面図である。
図13図9の形態例における図11のB-B線断面図である。
図14図9の形態例の正面図である。
図15図9の形態例に冷却空気の案内部材を設けた形態例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る多段式二軸回転ポンプ(多段式クローポンプ)の二つの形態例を添付図面(図1~15)に基づいて詳細に説明する。(図1~8には第1の形態例として水冷式の二段二軸回転ポンプを示し、図9~15には第2の形態例として空冷式の二段二軸回転ポンプを示してある。)なお、これらの形態例は、水冷式又は空冷式の真空ポンプとなっているが、本発明はこれに限定されず、排出される気体を製品気体とするブロアや気体圧縮機などとしても用いることができるものである。また、冷却手段として、水以外の冷却液や、大気以外の冷却気体を利用できることは勿論である。
【0017】
先ず、図1~8に基づいて第1の形態例について説明する。
本発明に係る多段式二軸回転ポンプでは、基本構成(本形態例では二段式)として、二つの円の一部を左右方向に重ね合わせた断面形状のポンプ室11、12が多段(二段)に設けられ、各段のポンプ室11、12内で平行に配されて一対の歯車(図示せず)によって反対方向に同一速度で回転される二つの回転軸20A、20Bと、その二つの回転軸20A、20Bに対応して各段のポンプ室11、12内に配され、相互に非接触状態で回転されて吸入した気体を排出できるように形成された各段の二つのロータ21A、21B、22A、22Bとを備えている。なお、一対の歯車は、一方が駆動側の回転軸20Aに、他方が従動側の回転軸20Bに装着され、ギヤボックスにもなっている軸受部ボディ部40の内部で噛合している。
【0018】
そして、本発明に係る多段式二軸回転ポンプでは、図5などに示すように、前段ポンプ室の排気口11bが設けられた前段ポンプ排気側端壁11a、及び後段ポンプ室の吸気口12bが設けられた後段ポンプ吸気側端壁12aの間に設けられた前後段間部30において、以下の構成を備える。
【0019】
すなわち、二つの回転軸20A、20Bの左右方向における中間に前段ポンプ室の排気口11bと後段ポンプ室の吸気口12bとを連通する通路として設けられた段間連通室33と、二つの回転軸20A、20Bの左右方向における一方の脇側に下側から上側へ冷却液を流すことができる流路として形成された一方側段間液冷流路31と、二つの回転軸20A、20Bの左右方向における他方の脇側に下側から上側へ冷却液を流すことができる流路として形成された他方側段間液冷流路32とを備える。
【0020】
これによれば、冷却液の上向き流れの方向性と冷却液が暖められて上昇する方向性とを同一方向へ揃えることができ、冷却液をスムースに流すことができると共に、冷却液が流れる際に生じる泡を上方へ移動させて排気させ易く、冷却性能を高い水準で発揮させて維持させることができる。従って、本発明に係る多段式二軸回転ポンプよれば、水冷によって、ロータやポンプ本体が過熱されることを合理的に防止することができるという有利な効果を奏する。
【0021】
さらに、本形態例では、一方側段間液冷流路31と他方側段間液冷流路32とは、左右方向の幅が広くて前後方向には狭い扁平で、配管(冷却液連通路35など)に比べて断面積が大きな流路(開口部)になっている。このため、冷却液が前段ポンプ排気側端壁11aと後段ポンプ吸気側端壁12aとに接触する表面積が大きくなっており、効率良くポンプ室11、12を冷却できる。なお、本形態例の前後方向とは、前段ポンプ室11と後段ポンプ室12とが前後に重なる方向であり、回転軸20A、20Bの軸心線に沿う方向のことである。また、前段ポンプ室11と後段ポンプ室12の間という一つの層状の部位に、一方側段間液冷流路31と他方側段間液冷流路32とが形成され、それらの流路の前後の両面が冷却のために利用されることから、結露を生じる面が発生しにくい構造になっている。このため、単段の二軸回転ポンプに比較しても、結露対策の専用部品を無くすことができ、コストを抑えることもできる。
【0022】
以上のように、本発明によれば、水冷によって、ポンプ室11、12を冷却できることで、前段のロータ21A、21B及び後段のロータ22A、22Bを同時に効率よく冷却できるため、二つの回転するロータ同士が熱膨張によって接触すること(ロータ間接触)などを、適切に防止することができる。そして、効率的な冷却効果に伴い、前記特許文献2のような単段水冷式ポンプでは必要であったポンプの排気に係る冷却が必要なく、部品数が減ることでコストダウンを図ることができる。
なお、前段排気部(前段ポンプ室の排気口11bを含む部位)冷却することで、半導体製造分野では昇華性反応副生成物(塩化アンモニウム)の析出が懸念されるが、前段排気部の冷水回路に流れる流量を、例えば、バイパス回路を用いることや、冷却水を送るポンプをインバータ制御することで調整し、過度な冷却になる防止することで、その析出を抑制することができる。
【0023】
なお、前段ポンプ室11は、上部に前段ポンプ室の吸入口11eが設けられた前段ポンプ室のシリンダ部11c、前段ポンプ軸受側端壁11d、前段ポンプ室の排気口11bが設けられた前段ポンプ排気側端壁11aによって構成されている(図2など参照)。また、後段ポンプ室12(図2参照)は、後段ポンプ室の吸気口12b(図5参照)が設けられた後段ポンプ吸気側端壁12a(図5参照)、後段ポンプ室のシリンダ部12c(図2参照)、後段ポンプ室の排気口12e(図2参照)が設けられた後段ポンプ排気側端壁12d(図2参照)によって構成されている。
【0024】
また、本形態例では、図5に示すように、冷却液が、冷却液導入接続部31fを介して一方側段間液冷流路31の下側から導入されて上側で排出され、続いて他方側段間液冷流路32の下側から導入されて上側へ排出されるように、一方側段間液冷流路31の上側と他方側段間液冷流路32の下側とが冷却液連通路35によって接続されている。より具体的には、配管によって構成された冷却液連通路35が、一方側段間液冷流路31の上部の閉塞板31bに設けられた液冷流路接続部31dから、他方側段間液冷流路32の下部に設けられた冷却液導入接続部32fに接続され、冷却液が一方側段間液冷流路31から他方側段間液冷流路32を通って流れる流路が形成されている。
【0025】
これによれば、高温になり易い側の部位(例えば、駆動側の回転軸20Aの側の部位)から冷却水を回して優先的に冷却されるように水冷の冷却回路を設けることができ、よりバランス良くロータやポンプ本体が過熱されることを防止することができる。
【0026】
これに加えて、冷却液が循環して流れる際には、泡を発生する場合があるが、その泡を下から上への冷却液の流れによって押し上げる効果がある。そして、泡は、気体であって軽量であるから冷却液の中で上昇する力が生じ、その上昇する方向は冷却液の上向き流れと同じ方向となる。このため、その泡を上方へ移動させ易くなる。これによれば、その泡を、一方側段間液冷流路31の上端と他方側段間液冷流路32の上端から外部へ排出(排気)する排気手段である排気弁31e、排気弁32e(図5参照)を設けることで、容易且つ適切に排気させることができる。本形態例では、上部の閉塞板31bの上側に設けられた液冷流路接続部31dの上部に排気弁31eが接続され、上部の閉塞板32bの上側に設けられた液冷流路接続部32dの上部に排気弁32eが接続されている。なお、本形態例では、上部の閉塞板31b及び上部の閉塞板32bと、それらの間の段間連通室33の上端を塞ぐ上部の閉塞板33bとが、一体的に一枚のプレートとして設けられている例が、図2及び5などに示されているが、後述する空冷式との互換性がある場合のように、別々に設けられていても良いのは勿論である。
【0027】
また、本形態例では、図4に示すように、冷却液が、二つの回転軸20A、20Bを駆動力が伝達される側で軸受けしている軸受部41を冷却した後に、一方側段間液冷流路31に導入されるように、その軸受部41に軸受部液冷流路42が設けられている。
そして、本形態の軸受部液冷流路42は、上下方向に広く前後方向に狭い扁平な開口部の形状に形成されており、表面面積を大きくして効率的に冷却できる形態になっている。さらに、この軸受部液冷流路42は、ギヤボックスである軸受部ボディ部40(軸受部41)の下側に設けられていることで、ギヤボックス内の潤滑油を効率良く冷却することができる。なお、冷却液の流路は、外部の冷却液源から、冷却液導入口45(図6及び7参照)を介して軸受部液冷流路42に導入され、その軸受部液冷流路42から冷却液接続管路43を介して一方側段間液冷流路31の冷却液導入接続部31fへ接続されている(図4参照)。また、他方側段間液冷流路32を通過した冷却液は、液冷流路接続部32dに接続される流路(配管)によって本装置から排出される。
【0028】
これによれば、冷却液が、始めに軸受部液冷流路42を流れた後に、一方側段間液冷流路31を流れる順となるため、より低温の冷却液が軸受部液冷流路42を流れることになり、多段式二軸回転ポンプの全体装置としてバランス良く合理的且つ効率良く冷却することができる。すなわち、軸受部41は、加熱されるポンプ室11、12に比較して低温に保たれる部位であり、この部位に冷却液を始めに流すことで、より低温の冷却液で合理的に冷却することができる。なお、冷却液接続管路43を構成する流路の上部に排気弁44が接続されており、軸受部液冷流路42を含む流路で発生する泡を適切に排気でき、冷却効率を向上させることができる。
【0029】
また、本形態例では、図2などに示すように、前後段間部30が、前段ポンプ排気側端壁11aと後段ポンプ吸気側端壁12aとを含む形態であって、その前後段間部30に、段間連通室33、一方側段間液冷流路31、及び他方側段間液冷流路32が形成されるように一体的に設けられている。
【0030】
このように一体化することで、一方側段間液冷流路31及び他方側段間液冷流路32を構成要素とする冷却回路を、例えば、図2などに示すように後段ポンプ室12を構成する後段ポンプ室の後段シリンダ部12cと一体化することができ、部品点数の削減及びそれによる組立工数の低減が可能となり、コストダウンを図ることができる。
【0031】
また、本形態例では、図5及び13に示すように、一方側段間液冷流路31及び他方側段間液冷流路32が、それぞれの上下部の閉塞板31b、31c、32b、32cによって上下の端部が塞がれることで冷却液を通す流路として設けられ(図5参照)、上下部の閉塞板31b、31c、32b、32cを取り外すことで、冷却空気が流通する一方側段間空冷流路31A及び他方側段間空冷流路32Aに成るように設けられている(図13参照)。なお、本形態例では、段間連通室33の上部の閉塞板33b及び下部の閉塞板33cは、水冷及び空冷のいずれの場合も、それぞれで段間連通室33の上端及び下端を塞いでいる。
【0032】
これによれば、冷却気体によってポンプ室11、12及びロータ21A、21B、22A、22Bを冷却するように構成される二段空冷式真空ポンプと、部品の共通化ができ、トータルコストの削減が可能となる。また、本形態例のように、冷却回路の構成要素である一方側段間液冷流路31及び他方側段間液冷流路32の流路を形成する開口部を広くした構造としたことで、冷水回路が不要の場合に冷却風を(冷却気体)効果的に流すことができる利点がある。
【0033】
また、本形態例では、以上に説明した多段式二軸回転ポンプが、多段式クローポンプになっており、図5に示すように、一方側段間液冷流路31及び他方側段間液冷流路32のうち一方側段間液冷流路31の方が、前記冷却液が先に導入される側として設けられていると共に、クローポンプとして偏心して配されている前段ポンプ室の排気口11b(図2参照)に近接されて設けられている。すなわち、冷却液が先に導入される側の一方側段間液冷流路31の下側の部位が、前段ポンプ排気側端壁11a(図2参照)の下側であって左右方向における一方の脇側に偏って前段ポンプ室の排気口11b(図2参照)が設けられた部位と近接されて設けられている多段式クローポンプになっている。
【0034】
これによれば、高温になり易い側の部位(例えば、一方の脇側に偏って配された前段ポンプ室の排気口11bの部位)から冷却液(冷却水など)を回して優先的に冷却されるように水冷の冷却回路を設けることができ、よりバランス良くロータやポンプ本体が過熱されることを防止することができる。なお、本形態例では、後段ポンプ室の排気口12e(図2参照)から吐出された排気は、マフラー60のマフラーの排気口61(図8参照)から排気管62(図15参照)を通り、第2マフラー63へ導入されて排気口64(図15参照)から排出されるように構成されている。
【0035】
次に、図9~15に基づいて第2の形態例(空冷式の二段二軸回転ポンプ)について説明する。第1の形態例(水冷式の二段二軸回転ポンプ)に係る発明の構成と同等の発明の構成ついては、同一の符号を付して基本的に説明を省略する。
【0036】
この本発明に係る多段式二軸回転ポンプでは、図10に示すように、前段ポンプ室の排気口11bが設けられた前段ポンプ排気側端壁11a、及び後段ポンプ室の吸気口12bが設けられた後段ポンプ吸気側端壁12aの間に設けられた前後段間部30において、二つの回転軸20A、20Bの左右方向における中間に前段ポンプ室の排気口11bと後段ポンプ室の吸気口12bとを連通する通路として設けられた段間連通室33(図13参照)と、二つの回転軸20A、20Bの左右方向における一方の脇側に下側から上側へ冷却空気を流すことができる流路として形成された一方側段間空冷流路31A(図10及び13など参照)と、二つの回転軸20A、20Bの左右方向における他方の脇側に下側から上側へ冷却空気を流す流路として形成された他方側段間空冷流路32A(図10及び13など参照)とを備える。
【0037】
これによれば、冷却空気の上向き流れの方向性と冷却空気が暖められて上昇する方向性とを同一方向へ揃えることができ、冷却空気をスムースに流すことができ、冷却性能を高い水準で発揮させて維持することができる。従って、本発明に係る多段式二軸回転ポンプによれば、空冷によって、ロータやポンプ本体が過熱されることを合理的に防止することができるという有利な効果を奏する。
【0038】
さらに、第1の形態例と同様に、一方側段間空冷流路31Aと他方側段間空冷流路32Aとは、左右方向の幅が広くて前後方向には狭い扁平で配管に比べて断面積が大きな流路(開口部)になっている。このため、冷却空気が前段ポンプ排気側端壁11aと後段ポンプ吸気側端壁12aとに接触する表面積が、大きくなっており、効率良くポンプ室11、12を冷却できる。
【0039】
以上のように、本発明によれば、空冷によって、前段のロータ21A、21B及び後段のロータ22A、22Bを同時に効率よく冷却できるため、二つの回転するロータ同士が熱膨張によって接触すること(ロータ間接触)などを好適に防止することができる。
【0040】
また、本形態例では、前後段間部30が、前段ポンプ排気側端壁11aと後段ポンプ吸気側端壁12aとを含む形態であって、前後段間部30に、段間連通室33、一方側段間空冷流路31A、及び他方側段間空冷流路32Aが形成されるように一体的に設けられている。これによれば、第1の形態例と同様に、部品点数を減らして製造コストを低減できる。
【0041】
また、本形態例では、多段のポンプ室11、12が設けられたポンプ室ボディ部10と、二つの回転軸20A、20Bを駆動力が伝達される側(駆動モータ25側)で軸受けしている軸受部41が設けられた軸受部ボディ部40との間であって、二つの回転軸20A、20Bの周囲に相当する部位に、下側から上側へ冷却空気を流すことができるボディ部間の冷却用隙間50(図12、14及び15など参照)が設けられている。
【0042】
これによれば、冷却空気の上向き流れの方向性と冷却空気が暖められて上昇する方向性とを同一方向へ揃えることができ、冷却空気をスムースに流すことができ、冷却性能を高い水準で発揮させて維持させることができる。従って、本発明に係る多段式二軸回転ポンプによれば、空冷によって、ポンプ室ボディ部10や軸受部ボディ部40が過熱されることを合理的に防止することができるという有利な効果を奏する。
【0043】
また、本形態例では、二つの回転軸20A、20Bのうちの一方における駆動モータ25の駆動力を伝達するために設けられたカップリング25aに遠心送風ファン26が装着され、その遠心送風ファン26によって生じた空気流を冷却空気とし、一方側段間空冷流路31A、他方側段間空冷流路32A、及びボディ部間の冷却用隙間50を下側から上側へ流れるように案内する冷却空気案内部55(図15参照)が設けられている。なお、この遠心送風ファン26は、ファンカバー部27の内部に配されており、下方に設けられた送風口27a(図12など参照)から冷却用の空気流が吐出されるように設けられている。また、本形態例のポンプ本体は、図15に示すようにベース部16に装着されて支持され、ポンプ本体カバー15に覆われた構成になっている。
【0044】
この冷却空気案内部55によれば、遠心送風ファン26で発生した冷却空気を適切にガイドして、一方側段間空冷流路31A、他方側段間空冷流路32A、及びボディ部間の冷却用隙間50に冷却空気を送ることができ、本発明に係る多段式二軸回転ポンプを効率的に冷却することができる。従って、前段のロータ21A、21B及び後段のロータ22A、22Bを同時に効率よく冷却できることになり、二つの回転するロータ同士が熱膨張によって接触すること(ロータ間接触)などを好適に防止することができる。
【0045】
また、本形態例の多段式二軸回転ポンプが多段式クローポンプであって、図13に示すように、一方側段間空冷流路31A及び他方側段間空冷流路32Aのうち一方側段間空冷流路31Aの方が、クローポンプとして偏心して配されている前段ポンプ室の排気口11b(図10参照)に近接されて設けられている。
【0046】
これによれば、図13に示すように、最も加熱される部分である前段ポンプ室の排気口11b(図10参照)が一方側段間空冷流路31Aに近接されることになるため、熱交換が効率良くなされ、多段式クローポンプを全体としてバランス良く冷却することでき、上述した効果と同等の効果を奏することができる。また、本形態例では、一方側段間空冷流路31Aを形成する前後段間部30における肉厚が、前段ポンプ室の排気口11b(図10参照)の形状に対応して薄くなっており(図13参照)、これによっても、一方側段間空冷流路31Aを流れる冷却空気によって効率的良く冷却できる。
【0047】
ところで、以上に説明した二つの形態例では、二段のロータ21A、21B、22A、22Bが二つの回転軸20A、20Bを介して片持ち状態に支持されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、二つの回転軸20A、20Bを両側から支持する構成の多段式クローポンプを含む多段式二軸回転ポンプにおいても効果的に適用できるものである。
【0048】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0049】
10 ポンプ室ボディ部
11 前段ポンプ室
11a 前段ポンプ排気側端壁
11b 前段ポンプ室の排気口
11c 前段ポンプ室のシリンダ部
11d 前段ポンプ軸受側端壁
11e 前段ポンプ室の吸入口
12 後段ポンプ室
12a 後段ポンプ吸気側端壁
12b 後段ポンプ室の吸気口
12c 後段ポンプ室のシリンダ部
12d 後段ポンプ排気側端壁
12e 後段ポンプ室の排気口
15 ポンプ本体カバー
16 ベース部
20A 回転軸(駆動側の回転軸)
20B 回転軸(従動側の回転軸)
21A 前段のロータ
21B 前段のロータ
22A 後段のロータ
22B 後段のロータ
25 駆動モータ
25a カップリング
26 遠心送風ファン
27 ファンカバー部
27a 送風口
30 前後段間部
31 一方側段間液冷流路
31A 一方側段間空冷流路
31b 上部の閉塞板
31c 下部の閉塞板
31d 液冷流路接続部
31e 排気弁
31f 冷却液導入接続部
32 他方側段間液冷流路
32A 他方側段間空冷流路
32b 上部の閉塞板
32c 下部の閉塞板
32d 液冷流路接続部
32e 排気弁
32f 冷却液導入接続部
33 段間連通室
33b 上部の閉塞板
33c 下部の閉塞板
35 冷却液連通路
40 軸受部ボディ部(ギヤボックス)
41 軸受部
42 軸受部液冷流路
43 冷却液接続管路
44 排気弁
45 冷却液導入口
50 ボディ部間の冷却用隙間
55 冷却空気案内部
60 マフラー
61 マフラーの排気口
62 排気管
63 第2マフラー
64 排気口
【要約】
【課題】多段に設けられたポンプ室やロータ21A、21B、22A、22Bを空冷によって効率よく冷却できる多段式二軸回転ポンプ及び多段式クローポンプを提供する。
【解決手段】二つの円の一部を左右方向に重ね合わせた断面形状のポンプ室が多段に設けられ、二つの回転軸20A、20Bと、各段のポンプ室11、12内に配された各段の二つのロータとを備え、前段ポンプ室11の排気口11bが設けられた前段ポンプ排気側端壁11a、及び後段ポンプ室12の吸気口12bが設けられた後段ポンプ吸気側端壁12aの間に設けられた前後段間部30において、左右方向における中間に排気口11bと吸気口12bとを連通する段間連通室33と、左右方向における一方の脇側に下側から上側へ冷却空気を流すことができる一方側段間空冷流路31Aと、左右方向における他方の脇側に下側から上側へ冷却空気を流すことができる他方側段間空冷流路32Aとを備える。
【選択図】図13
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15