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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
F25B1/00 351T
F25B1/00 351D
F25B1/00 396B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019045990
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020148389
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-11-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】宇津井 政彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将弘
【合議体】
【審判長】間中 耕治
【審判官】鈴木 充
【審判官】飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/140882(WO,A1)
【文献】特開2018-173196(JP,A)
【文献】特開昭58-33040(JP,A)
【文献】特開2000-74507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器が冷媒配管で接続されて形成される冷媒回路と、
前記蒸発器に送風する蒸発器ファンと、
を有し、
前記冷媒回路には、HFO-1123冷媒と、前記HFO-1123冷媒よりも沸点が高く、かつ前記HFO-1123冷媒よりも不均化反応を起こし難い少なくとも1種類の高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒が充填され、
前記冷媒回路が暖房サイクルとして機能するとき、
空調運転を停止して前記圧縮機を停止した時点から前記冷媒回路における高圧と低圧との圧力差が所定値より小さくなる均圧状態となる時点までの時間が経過するまでの間、前記蒸発器ファンを駆動し続けた後に停止する
ことを特徴とする空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気調和機、冷蔵機器、給湯器等の空気調和装置では、冷媒が循環する冷媒回路に冷媒として、GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)が低いHFO-1123冷媒を使用することが提案されている。HFO-1123冷媒は、大きな発熱を伴う不均化反応を起こし易い。HFO-1123冷媒は、例えば、圧縮機の内部の摺動部分で発生する異常摩耗に伴う高温が着火源となって不均化反応を起こす。空気調和装置において不均化反応が生じた場合、温度や圧力の急激な上昇によって、冷媒回路に接続される圧縮機などの装置や冷媒配管が損傷するおそれがある。
【0003】
このため、HFO-1123冷媒を使用する場合は、HFO-1123冷媒と不均化反応を起こさない冷媒を混合した混合冷媒を用いることにより、HFO-1123冷媒を単体で用いる場合と比べて、HFO-1123冷媒の不均化反応が起きることを抑える技術がある。例えば、特許文献1には、HFO-1123冷媒に不均化反応を起こさないR1234yf冷媒を混合した混合冷媒を空気調和装置に用い、HFO-1123冷媒とR1234yf冷媒の合計量に対するHFO-1123冷媒の比率を所定の範囲とすることで、不均化反応を抑えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/145245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HFO-1123冷媒に混合する冷媒として、HFO-1123冷媒よりも沸点温度が高く、かつ、HFO-1123冷媒よりも不均化反応を起こし難いまたは不均化反応を起こさない冷媒(以下、高沸点冷媒と称する。)をHFO-1123冷媒と混合した非共沸混合冷媒を空気調和装置に使用した場合、空気調和装置が停止した後に空調運転中に蒸発器として機能していた熱交換器において、以下に説明するような非共沸混合冷媒におけるHFO-1123冷媒と高沸点冷媒の比率に変化が生じる。なお、沸点温度は通常、標準大気圧(101.325kPa)下での飽和温度を指すが、以下の説明では、同じ圧力条件下での冷媒の各成分の蒸発温度を「沸点温度」と記載している。
【0006】
空気調和装置が空調運転を行っているとき、蒸発器として機能している熱交換器においては、圧縮機の駆動や膨張弁の開度調整により、HFO-1123冷媒の沸点温度や高沸点冷媒の沸点温度を蒸発器の周囲の空気温度よりそれぞれ低くしている。このため、空調運転時に熱交換器の近傍に配置されるファンの駆動により蒸発器に空気が流入すれば、HFO-1123冷媒も高沸点冷媒もともに蒸発してガス冷媒となって、蒸発器から流出する。
【0007】
空気調和装置が空調運転を停止すると圧縮機が停止されるので、圧縮機を停止した時点から時間が経つにつれて、空気調和装置の冷媒回路における高圧と低圧との圧力差が徐々に小さくなる。そして、圧縮機を停止した時点からある程度の時間が経過すれば、冷媒回路が、高圧と低圧との圧力差がほぼ0となる均圧状態となる。
【0008】
上記のような、圧縮機が停止した時点から冷媒回路が均圧状態となるまでの間、低圧が徐々に上昇することによってHFO-1123冷媒の沸点温度や高沸点冷媒の沸点温度も上昇する。そして、低圧が上昇し続けると、まず、高沸点冷媒の沸点温度が蒸発器の周囲温度より高い温度となって、高沸点冷媒が蒸発せずに液状態で蒸発器に滞留する。一方、HFO-1123冷媒の沸点温度も上昇しているが、高沸点冷媒の沸点温度が蒸発器の周囲温度より高い温度となったときは、まだHFO-1123冷媒の沸点温度は蒸発器の周囲温度より低い。このため、高沸点冷媒の沸点温度が蒸発器の周囲温度より高い温度となった時点以降は、HFO-1123冷媒のみ蒸発し続けることとなる。
【0009】
以上に説明したように、空気調和装置が運転を停止した時点から冷媒回路が均圧状態となるまでの間における、高沸点冷媒の沸点温度が蒸発器の周囲温度より高い温度となった時点以降は、蒸発器の内部に滞留するガス状態の冷媒にはHFO-1123冷媒が多く含まれ、蒸発器の内部に滞留する液状態の冷媒には高沸点冷媒が多く含まれる状態となる。このような状態で、空気調和装置の運転が再開されて圧縮機が再起動すれば、HFO-1123冷媒が多く含まれ液冷媒より密度が低いガス冷媒が、高沸点冷媒が多く含まれる液冷媒より早く圧縮機に吸入されることとなり、圧縮機の内部でHFO-1123冷媒の比率が高い非共沸混合冷媒が圧縮されるので、圧縮機の内部で不均化反応が起こりやすくなるという問題があった。
【0010】
開示の技術は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、圧縮機の内部でHFO-1123冷媒と高沸点冷媒とが混合された非共沸混合冷媒に不均化反応が生じることを抑制できる空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する空気調和装置は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器が冷媒配管で接続されて形成される冷媒回路と、蒸発器に送風する蒸発器ファンとを有する。冷媒回路には、HFO-1123冷媒と、このHFO-1123冷媒よりも沸点が高く、かつ、HFO-1123冷媒よりも不均化反応を起こし難い少なくとも1種類の高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒が充填される。そして、冷媒回路が暖房サイクルとして機能するとき、空調運転を停止して圧縮機を停止した時点から前記冷媒回路における高圧と低圧との圧力差が所定値より小さくなる均圧状態となる時点までの時間が経過するまでの間、蒸発器ファンを駆動し続けた後に停止する
【発明の効果】
【0012】
本願の開示する空気調和装置によれば、圧縮機の内部でHFO-1123冷媒と高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒に不均化反応が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態における空気調和装置の冷媒回路図である。
図2】空気調和装置が空調運転を停止した後の冷媒回路図である。
図3】非共沸混合冷媒について、不均化反応を起こす圧力とHFO1123の非共沸混合冷媒における比率との関係を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する空気調和装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する空気調和装置が限定されるものではない。
【実施例
【0015】
実施例の空気調和装置では、HFO-1123冷媒と、HFO-1123冷媒よりも沸点が高く、かつHFO-1123冷媒よりも不均化反応を起こし難いまたは不均化反応を起こさない少なくとも1種類の高沸点冷媒とを混合した非共沸混合冷媒が用いられる。高沸点冷媒としては、例えば、R32冷媒等が用いられる。ここで、不均化反応を起こし難い冷媒とは、非共沸混合冷媒における比率がHFO-1123冷媒と同じであるときに、HFO-1123冷媒よりも高い温度または圧力で不均化反応を起こす冷媒である。また、非共沸混合冷媒は、HFO-1123冷媒と、2種類以上の高沸点冷媒とが混合されてもよい。2種類以上の高沸点冷媒を混合する組み合わせとしては、例えば、HFO-1123冷媒と、R32冷媒と、R1234yf冷媒とが混合されてよい。この組み合わせの場合、HFO-1123冷媒が少なくとも40[wt%]、R32冷媒が少なくとも40[wt%]、R1234y冷媒が少なくとも15[wt%]である。以下、単に冷媒と記載した場合には、上述した非共沸混合冷媒を指している。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の空気調和装置1は、屋外に設置される室外機2と、屋内に設置され、室外機2に液管8及びガス管9で接続された室内機3とを有する。室外機2の閉鎖弁25と室内機3の液管接続部33とが液管4で接続されている。室外機2の閉鎖弁26と室内機3のガス管接続部34とがガス管5で接続されている。以上により、空気調和装置1の冷媒回路10が形成されている。
【0017】
<室外機の構成>
まずは、室外機2について説明する。室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、室外熱交換器23と、膨張弁24と、液管8の一端が接続された閉鎖弁25と、ガス管9の一端が接続された閉鎖弁26と、アキュムレータ27と、室外ファン28とを備えている。そして、室外ファン28を除くこれら各装置は、後述する各冷媒配管を介して相互に接続されており、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路10aを形成している。
【0018】
圧縮機21は、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型の圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出側と後述する四方弁22のポートaとが、吐出管61で接続されている。圧縮機21の冷媒吸入側とアキュムレータ27の冷媒流出側とが、吸入管62で接続されている。
【0019】
四方弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、4つのポートa、b、c、dを有している。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出側と吐出管61で接続されている。ポートbと室外熱交換器23の一方の冷媒出入口とが、冷媒配管62で接続されている。ポートcはとアキュムレータ27の冷媒流入側とが、冷媒配管65で接続されている。そして、ポートdと閉鎖弁26とが、室外機ガス管64で接続されている。
【0020】
室外熱交換器23は、冷媒と、後述する室外ファン28の回転よって室外機2の内部に取り込まれた外気とを熱交換させる。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述のように四方弁22のポートbと冷媒配管62で接続されており、他方の冷媒出入口と閉鎖弁25とが、室外機液管63で接続されている。
【0021】
膨張弁24は、室外機液管63に設けられている。膨張弁24は、電子膨張弁であり、その開度が調整されることにより、室外熱交換器23に流入する冷媒量、または、室外熱交換器23から流出する冷媒量を調整する。膨張弁24の開度は、後述する吐出温度センサ73が検出した圧縮機21の吐出温度が、室内機3で要求される空調能力に基づいて決定された目標温度となるように調整される。
【0022】
アキュムレータ27は、前述したように、冷媒流入側と四方弁22のポートcとが冷媒配管65で接続され、冷媒流出側と圧縮機21の冷媒吸入側とが吸入管66で接続されている。アキュムレータ27は、冷媒配管65からアキュムレータ27の内部に流入した気液二相冷媒を液冷媒とガス冷媒とに分離し、分離したガス冷媒のみを吸入管66を介して圧縮機21に吸入させる。
【0023】
室外ファン28は、樹脂材で形成されたプロペラファンであり、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン28は、図示しないファンモータによって回転されることで、室外機2の図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を、図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
【0024】
また、室外機2は、上述した構成に加えて、各種のセンサを有している。図1に示すように、吐出管61には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ71と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ73が設けられている。冷媒配管65におけるアキュムレータ27の冷媒流入側の近傍には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力を検出する吸入圧力センサ72と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度を検出する吸入温度センサ74とが設けられている。
【0025】
室外機液管63における室外熱交換器23と膨張弁24との間には、室外熱交換器23に流入する冷媒の温度、または室外熱交換器23から流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ75が設けられている。そして、室外機2の図示しない吸込口の近傍には、室外機2の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ76が設けられている。
【0026】
<室内機の構成>
次に図1を用いて、室内機3について説明する。室内機3は、室内熱交換器31と、液管4の他端が接続された液管接続部33と、ガス管5の他端が接続されたガス管接続部34と、室内ファン32を備えている。そして、室内ファン32を除くこれら各々の装置が以下で詳述する各々の冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路10bを構成している。
【0027】
室内熱交換器31は、冷媒と、室内ファン32の回転により図示しない吸込口から室内機3の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器31の一方の冷媒出入口が液管接続部33と室内機液管67で接続され、他方の冷媒出入口がガス管接続部34と室内機ガス管68で接続されている。室内熱交換器31は、室内機3が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機3が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。尚、液管接続部33やガス管接続部34では、各々の冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
【0028】
室内ファン32は樹脂材で形成されており、室内熱交換器31の近傍に配置されている。室内ファン31は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機3の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器31において冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ吹き出す。
【0029】
また、室内機3は、上述した構成に加えて各種のセンサを有している。室内機液管67には、室内熱交換器31に出入りする冷媒の温度を検出する液側温度センサ77が設けられている。室内機ガス管68には、室内熱交換器31に出入りする冷媒の温度を検出するガス側温度センサ78が設けられている。そして、室内機3の図示しない吸込口の近傍には、室内機3の内部に流入する室内空気の温度、すなわち室内温度を検出する室内温度センサ79が備えられている。
【0030】
<空調運転時の動作>
次に、本実施形態における空気調和機1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各々の装置の動作について、図1を用いて説明する。尚、以下の説明では、空気調和機1が暖房運転を行う場合について説明し、冷房運転を行う場合については詳細な説明を省略する。また、図1における矢印は暖房運転時の冷媒の流れを示している。
【0031】
図1に示すように、空気調和機1が暖房運転を行う場合は、四方弁22が実線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートdが連通するよう、また、ポートbとポートcが連通するよう、切り換えられる。これにより、冷媒回路10が、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに室内熱交換器31が凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。
【0032】
圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、吐出管61を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から室外機ガス管64、閉鎖弁26、ガス管5、ガス管接続部34の順に流れて室内機3に流入する。室内機3に流入した冷媒は、室内機ガス管68を流れて室内熱交換器31に流入し、室内ファン32の回転により室内機3の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器31が凝縮器として機能し、室内熱交換器31で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機3が設置された室内の暖房が行われる。
【0033】
室内熱交換器31から流出した冷媒は、室内機液管67を流れ液管接続部33を介して液管4に流出する。液管4を流れる冷媒は、閉鎖弁25を介して室外機2に流入する。室外機2に流入した冷媒は室外機液管63を流れ、膨張弁24を通過する際に減圧される。膨張弁24で減圧された冷媒は、冷媒導入部29、室外熱交換器23の順に流れて、室外熱交換器23で室外ファン28の回転によって吸込口211から室外機3の熱交換器室200bに流入する外気と熱交換を行って蒸発する。
【0034】
室外熱交換器23から冷媒配管62に流出した冷媒は、四方弁22、冷媒配管65と流れてアキュムレータ27に流入し、アキュムレータ27で液冷媒とガス冷媒に分離される。そして、分離されたガス冷媒は、吸入管66を介して圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0035】
尚、室内機3が冷房運転を行う場合は、四方弁22が破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbが連通するよう、また、ポートcとポートdが連通するよう、切り換えられる。これにより、冷媒回路10が、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器31が蒸発器として機能する冷房サイクルとなる。
【0036】
<空調運転停止後の蒸発器ファンの駆動について>
次に、図1乃至図3を用いて、空気調和装置1が空調運転を停止した後、空調運転時に蒸発器として機能していた熱交換器の内部で非共沸混合冷媒におけるHFO1123冷媒の比率が変化する理由と、空調運転停止後に蒸発器に送風するファン(以降、蒸発器ファンと記載する場合がある)を駆動して非共沸混合冷媒におけるHFO1123冷媒の比率の変化を抑制する方法について説明する。
【0037】
なお、以下の説明では、一例として空気調和装置1が前述した暖房運転を行っている状態から暖房運転を停止した場合を用いて説明する。この場合、暖房運転時に蒸発器として機能する熱交換器は室外熱交換器23であり、蒸発器ファンが室外ファン28となる。
【0038】
本実施形態の空気調和装置1のように、HFO-1123とこのHFO-1123冷媒よりも不均化反応を起こし難いまたは不均化反応を起こさない高沸点冷媒を混合した非共沸混合冷媒を冷媒回路10に充填して使用する場合、空気調和装置1が停止した後に空調運転中に蒸発器として機能していた室外熱交換器23において、以下に説明するような非共沸混合冷媒におけるHFO-1123冷媒と高沸点冷媒の比率に変化が生じる。
【0039】
空気調和装置1が暖房運転を行っているとき、蒸発器として機能している室外熱交換器23においては、圧縮機21の駆動や膨張弁24の開度調整により、室外熱交換器23を通過する外気温度よりHFO-1123冷媒の沸点温度や高沸点冷媒の沸点温度をそれぞれ低くしている。このため、室外熱交換器23の近傍に配置される室外ファン28の駆動により室外熱交換器23に空気が流入すれば、HFO-1123冷媒も高沸点冷媒もともに蒸発してガス冷媒となって、室外熱交換器23から流出する。
【0040】
空気調和装置1が暖房運転を停止すると圧縮機21が停止されるので、圧縮機21を停止した時点から時間が経つにつれて、冷媒回路10における高圧と低圧との圧力差が徐々に小さくなる。そして、圧縮機21を停止した時点からある程度の時間が経過すれば、冷媒回路10が、高圧と低圧との圧力差がほぼ0となる均圧状態となる。
【0041】
上記のような、圧縮機21が停止した時点から冷媒回路10が均圧状態となるまでの間、低圧が徐々に上昇することによってHFO-1123冷媒の沸点温度や高沸点冷媒の沸点温度も上昇する。そして、低圧が上昇し続けると、まず、高沸点冷媒の沸点温度が室外熱交換器23を通過する外気温度より高い温度となって、高沸点冷媒が蒸発せずに液状態で室外熱交換器23に滞留する。一方、HFO-1123冷媒の沸点温度も上昇しているが、高沸点冷媒の沸点温度が室外熱交換器23を通過する外気温度より高い温度となったときは、まだHFO-1123冷媒の沸点温度は室外熱交換器23を通過する外気温度より低い。このため、高沸点冷媒の沸点温度が室外熱交換器23を通過する外気温度より高い温度となった時点以降は、HFO-1123冷媒のみ蒸発し続けることとなる。
【0042】
以上に説明したように、空気調和装置1が暖房運転を停止した時点から冷媒回路10が均圧状態となるまでの間の、高沸点冷媒の沸点温度が室外熱交換器23を通過する外気温度より高い温度となった時点以降は、室外熱交換器23の内部に滞留するガス状態の冷媒にはHFO-1123冷媒が多く含まれ、室外熱交換器23の内部に滞留する液状態の冷媒には高沸点冷媒が多く含まれる状態となる。そして、冷媒回路10が均圧状態となるまでの間は冷媒回路10に高圧と低圧との圧力差があるため、HFO-1123冷媒が多く含まれ液状態の冷媒より密度が低いガス冷媒が、図2にGrで示すように、室外熱交換器23の四方弁22側、および、室外熱交換器23に接続されている冷媒配管62のうちの室外熱交換器23に近い箇所、つまり、圧縮機21の冷媒吸入側に近い箇所に偏って滞留する。
【0043】
上記のように、HFO-1123冷媒が多く含まれるガス冷媒が圧縮機21の冷媒吸入側に近い箇所に偏って滞留する状態で、空気調和装置1の暖房運転が再開されて圧縮機21が再起動すれば、HFO-1123冷媒が多く含まれるガス冷媒が、高沸点冷媒が多く含まれる液冷媒より早く圧縮機21に吸入されることとなる。そして、圧縮機21の内部でHFO-1123冷媒の比率が高い非共沸混合冷媒が圧縮されるので、圧縮機21の内部で不均化反応が起こりやすい状態となる。
【0044】
図3は、本実施形態で使用する非共沸混合冷媒について、不均化反応を起こす圧力[MPa]と、HFO-1123冷媒の重量比[wt%]との関係を説明するためのグラフである。図3においては、非共沸混合冷媒の温度が85[℃]のときに非共沸混合冷媒に不均化反応が生じる発生領域を斜線部分で示している。
【0045】
図3に示すように、温度が85[℃]の非共沸混合冷媒では、高沸点冷媒の重量比[wt%]が減少し、HFO-1123冷媒の重量比が60[wt%]から70[wt%]に増加するにつれて、不均化反応が起きる圧力が低下し、HFO-1123冷媒の重量比が70[wt%]以上となれば、圧力が6.0MPa以下で不均化反応が起こる。
【0046】
従って、空気調和装置1が暖房運転を停止した後に室外熱交換器23でHFO-1123冷媒が多く含まれたガス冷媒が生成され、暖房運転を再開したときにHFO-1123冷媒が多く含まれたガス冷媒が圧縮機21に吸入されたとき、このガス冷媒におけるHFO-1123冷媒の重量比が70[wt%]以上となっていれば、圧縮機21の内部の圧力が6.0MPa以下で不均化反応が起こる恐れがある。
【0047】
そこで、本実施形態の空気調和装置1では、空調運転を停止して圧縮機21を停止させた時点から所定時間が経過するまでの間、蒸発器ファンを駆動し続ける。上述した空気調和装置1が暖房運転を行っていた場合では、圧縮機21を停止させた時点から所定時間が経過するまで、室外ファン28を停止させずに駆動し続ける。これにより、空調運転停止後に、空調運転中に蒸発器として機能していた熱交換器の内部で、蒸発器のファンを駆動しない場合と比べて高沸点冷媒を多く蒸発させることができるので、図2にGrで示すガス冷媒におけるHFO-1123冷媒の比率を減少させることができる。
【0048】
ここで、上述した所定時間は、圧縮機21を停止させた時点から冷媒回路10が均圧状態となる時点までの間の時間(以降、均圧時間と記載する場合がある)とすればよい。前述したように、空気調和装置1が運転を停止した時点から冷媒回路10が均圧するまでの間に、蒸発器として機能する熱交換器の内部において、HFO-1123冷媒が多く含まれたガス冷媒が生成される。このため、均圧時間中は蒸発器のファンを駆動し続けて、できる限り高沸点冷媒も蒸発させればよい。
【0049】
なお、上記所定時間は、予め試験などを行って冷媒回路10が均圧状態となるのにかかる時間を求めて、図示しない室外機2の圧縮機21や室外ファン28などの駆動制御や室内機3の室内ファン32の駆動制御などを行う制御手段に記憶させておけばよい。あるいは、吐出圧力センサ71で検出した吐出圧力(高圧)と、吸入圧力センサ73で検出した吸入圧力(低圧)とをそれぞれ検出し、両者の圧力差が例えば0.1MPa以下となるまでの時間としてもよい。
【0050】
また、以上に説明した実施形態では、空気調和装置1が暖房運転を行っている場合を例に挙げて説明したが、空気調和装置1が冷房運転を行っている場合にも、本発明を適用できる。この場合、冷房運転時に蒸発器として機能する熱交換器は室内熱交換器31であり、蒸発器ファンが室内ファン32となる。そして、空気調和装置1が冷房運転を停止した後、冷房運転を停止した時点から所定時間が経過するまでの間、室内ファン32を停止させずに駆動し続ければよい。
【符号の説明】
【0051】
1 空気調和装置
2 室外機
3 室内機
10 冷媒回路
21 圧縮機
23 室外熱交換器
28 室外ファン
31 室内熱交換器
32 室内ファン
71 吐出圧力センサ
73 吸入圧力センサ
図1
図2
図3