(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】玉軸受用保持器および転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/38 20060101AFI20240808BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240808BHJP
F16C 33/32 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
F16C33/38
F16C19/06
F16C33/32
(21)【出願番号】P 2019167218
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2018177772
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019054026
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】石田 光
(72)【発明者】
【氏名】辻 直明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 千春
(72)【発明者】
【氏名】小畑 智彦
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281196(JP,A)
【文献】特開2012-172784(JP,A)
【文献】特開2006-226447(JP,A)
【文献】特開2017-203551(JP,A)
【文献】特開2013-213555(JP,A)
【文献】特開2009-174605(JP,A)
【文献】特開2008-064166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0010640(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00
-19/56
F16C 33/30
-33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに軸方向に重なる二枚の合成樹脂製の環状体を有し、各環状体は、円周方向に所定の間隔で並びそれぞれが玉を保持するポケットの内壁面を構成する複数の半球状のポケット壁部と、円周方向に隣合う前記ポケット壁部同士を連結する複数の結合板部とを有し、前記二枚の環状体が、前記各結合板部で互いに重なって結合された玉軸受用保持器であって、
前記ポケット壁部の径方向寸法である帯幅が、前記結合板部の径方向寸法よりも小さくなるように、前記ポケット壁部の内径面または外径面に切り欠き部が設けられ、
前記ポケット壁部は、前記ポケット壁部における内径部を前記ポケット壁部の他の部分よりも軸受軸方向外側に厚肉にする厚肉部を有し、
前記結合板部の外径縁から軸方向に突出するフランジ部が設けられ、
前記フランジ部の内径側面が、軸受径方向に対し垂直な方向に対して傾斜角度を持つ傾斜面であり、
前記傾斜面が、前記フランジ部の突出する方向に向かうに従って前記フランジ部の外径側面に向かって傾斜しており、前記傾斜角度が3°以上である玉軸受用保持器。
【請求項2】
請求項1に記載の玉軸受用保持器において、前記切り欠き部は、前記ポケット壁部の内径面または外径面が軸受軸方向から見て凹曲線となる曲線形状である玉軸受用保持器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の玉軸受用保持器において、前記切り欠き部の最深部の軸受径方向の位置が、前記玉のピッチ円付近に位置する玉軸受用保持器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項
3のいずれか1項に記載の玉軸受用保持器において、前記互いに重なった二つの結合板部の軸方向寸法を、前記玉の直径の55%~65%とした玉軸受用保持器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項
4のいずれか1項に記載の玉軸受用保持器を備えた転がり軸受。
【請求項6】
請求項
5に記載の転がり軸受において、前記玉がセラミックボールである転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、玉軸受用保持器および転がり軸受に関し、工作機械主軸用やモータ用等の転がり軸受の高速化およびグリースの長寿命化を図ることができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
玉軸受用の合成樹脂製保持器が提案されている(特許文献1)。
図36に示すように、この合成樹脂製保持器は、半球状のポケット50を円周方向に等間隔に形成し、ポケット50間の連結板部51に互いに係合する結合孔52と結合爪53を有する。合成樹脂製保持器は、前記結合孔52に前記結合爪53を係合することで、二枚の同形状の環状体54,54を係合させた保持器である。
【0003】
他の玉軸受用保持器として、鉄板波形保持器が提案されている(特許文献2)。
図37に示すように、この鉄板波形保持器55は、玉56との摩擦損失を低減するため、ポケット部57に軸方向に貫通する貫通穴58が形成されている。
さらに他の玉軸受用保持器として、
図39に示すように、鉄板波形保持器において、各ポケット62のある円周方向部分の内周面63を外径側に凹む形状とした技術が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-7468号公報
【文献】特開2018-71720号公報
【文献】特開2010-65816号公報
【文献】特開2007-285506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図38に示すように、従来の合成樹脂製の波形保持器は、ポケット部59の帯幅H1が玉60のピッチ円PCDを中心として、玉径Bdの40%~50%で玉60を保持した形状となっている。また、ポケット部59は、外輪内径と内輪外径の間の半径方向寸法に対し、70%~80%の帯幅H1となっている。
【0006】
高速回転域dn=60万以上で回転すると、グリースは動空間から静止空間Saへ移動し、静止空間Saに保持されたままとなる。そのため、転走面にグリースが供給され難くなり、潤滑供給不足から発熱が生じ、潤滑寿命が短くなる問題がある。前記「dn」とは、軸受の内径(mm)に回転数(rpm)を乗じた値である。
また、前記ポケット部59の前記帯幅H1では、玉60とポケット間、保持器背面とシール間でのグリースのせん断抵抗が高く、トルク大または発熱が問題となることがある。
【0007】
さらに、従来の合成樹脂製の波形保持器(
図36)は、玉と保持器のポケット50の内径縁との軸方向の隙間が広いため、玉の表面に付着したグリースはポケット50の部分での掻き取りが少なく、ポケット50とポケット50間の結合板部51の内径縁付近で掻き取りが多い。掻き取られたグリースは遠心力で外輪転走面へ飛ばされる為、動空間から静止空間へ排出されるまでに時間を要し、グリースの慣らしに時間がかかる。
軸受組み立て時、保持器ポケット間付近に封入されたグリースは、軸受の運転により動空間で攪拌され、玉の表面等に付着する。
この場合、玉の表面のグリースが、保持器によって掻き取られ、掻き取られたグリースが動空間である転走面の付近から、保持器59と密閉板62(
図38)との間等の静止空間Saに排出され、ある程度排出されることで、軸受内のグリースが慣らされることになる。この後は、静止空間Saのグリースの基油が徐々に転走面に供給され、軸受の発熱の少ない微量潤滑が行われることになる。前記のように玉60に付着したグリースが前記静止空間Saに移動するように慣らされるまでは、グリースの攪拌抵抗により発熱が大きく、早期に慣らすことが望まれる。
【0008】
図37に示す鉄板波形保持器55では、貫通穴58が形成されているため強度不足である。
図39に示す鉄板波形保持器では、鉄板をプレスにより打ち抜きおよび成形加工して二枚の環状部材を製作しなければならず、製作コストが嵩む。
【0009】
この発明の目的は、転がり軸受の高速化およびグリースの長寿命化を図れ、グリースの慣らし時間が短縮され、また生産性に優れた玉軸受用保持器および転がり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の玉軸受用保持器は、互いに軸方向に重なる二枚の合成樹脂製の環状体を有し、各環状体は、円周方向に所定の間隔で並びそれぞれが玉を保持するポケットの内壁面を構成する複数の半球状のポケット壁部と、円周方向に隣合う前記ポケット壁部同士を連結する複数の結合板部とを有し、前記二枚の環状体が、前記各結合板部で互いに重なって結合された玉軸受用保持器であって、
前記ポケット壁部の径方向寸法である帯幅が、前記結合板部の径方向寸法よりも小さくなるように、前記ポケット壁部の内径面または外径面に切り欠き部が設けられている。
【0011】
この構成によると、ポケット壁部の帯幅が、結合板部の径方向寸法よりも小さくなるようにポケット壁部の内径面または外径面に切り欠き部が設けられているため、軸受運転時に、静止空間に溜まったグリースが遠心力により切り欠き部から転走面へ供給される。つまり、静止空間に滞留しようとするグリースの一部が切り欠き部で掻き取られることで、グリースの基油が分離して切り欠き部から順次、保持器内、玉表面、転走面へと供給され易くなる。これにより玉軸受の発熱が抑えられ、従来技術よりもグリース寿命を延ばすことができる。またポケット壁部に切り欠き部が設けられているため、玉とポケットの間でのグリースせん断抵抗が低減され、玉軸受の低トルク化および低発熱化を図れる。
また、運転開始時においては、前記切り欠き部が設けられていることで、玉の表面に付着したグリースの掻き取り量が増え、グリースが動空間から静止空間に排出され易くなり、グリースの慣らし時間を削減することができる。
前記切り欠き部は、金型等により簡単に形成することができるため、鋼板製の波形保持器に凹み部を機械加工する従来例よりも加工コストを低減することができ、生産性に優れた玉軸受用保持器とすることができる。
前記静止空間とは、内輪と、外輪と、密閉板とで閉じられた空間のうち、軸受回転時に転動体および保持器が通過しない空間を指す。
【0012】
この発明において、前記切り欠き部の最深部の軸受径方向の位置が、前記玉のピッチ円付近に位置していてもよい。
前記切り欠き部の最深部が玉のピッチ円付近の径方向位置付近に達していると、玉とポケット壁部の内面との隙間が狭い箇所で切り欠き部が開口することになり、静止空間に近い場所でグリースを多くかきとることができる。そのため、グリースが動空間から排出され易くグリースの慣らし時間をより一層削減することができる。
【0013】
この発明において、前記切り欠き部が前記ポケット壁部の外径側に位置し、前記結合板部の外径縁から軸方向に突出するフランジ部が設けられていてもよい。
前記フランジ部を設けることで、ポケット壁部と結合板部との繋がり部の近傍で掻き取られたグリースが遠心力で飛ばされ、動空間となる外輪転走面へ巻き込まれるのを防ぎ、グリースが動空間から静止空間へ排出されるまでの時間がさらに短縮される。
【0014】
前記切り欠き部は、前記ポケット壁部の内径面または外径面が軸受軸方向から見て凹曲線となる曲線形状であってもよい。この場合、ポケット壁部の切り欠き部に、局所的な応力集中が作用することを未然に防ぐことができる。また、金型等により切り欠き部を簡単に形成することが可能となる。
【0015】
前記ポケット壁部は、前記切り欠き部による体積減少分だけ軸受軸方向に厚肉にする厚肉部を有するものであってもよい。ポケット壁部が厚肉部を有するため、切り欠き部による玉軸受用保持器の剛性低下を抑制することができる。
【0016】
前記互いに重なった二つの結合板部の軸方向寸法を、前記玉の直径の55%~65%としてもよい。
前記55%~65%とは、玉の直径の55%を超え、玉の直径の65%未満を意味する。
この構成によると、玉軸受用保持器が高剛性になり、玉軸受用保持器の固有振動数が上昇することで、回転速度との共振が発生しない。このことにより共振による玉軸受用保持器の振動も発生せず、昇温が抑制され安定した回転が得られる。この場合、結合板部の軸方向寸法を規定するだけで共振点がずれることで昇温が抑制され安定した回転が得られることから、金属部品等を用いて保持器の剛性を高めるよりもコスト低減を図ることができる。
【0017】
この発明の転がり軸受は、前述のいずれかに記載の玉軸受用保持器を備えたものである。そのため、この発明の玉軸受用保持器につき前述した各効果が得られる。
【0018】
前記玉がセラミックボールであってもよい。この場合、例えば軸受鋼等から成る鋼球よりも比重を小さくして軸受の高速化を図ることができるうえ耐熱性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の玉軸受用保持器は、互いに軸方向に重なる二枚の合成樹脂製の環状体を有し、各環状体は、円周方向に所定の間隔で並びそれぞれが玉を保持するポケットの内壁面を構成する複数の半球状のポケット壁部と、円周方向に隣合う前記ポケット壁部同士を連結する複数の結合板部とを有し、前記二枚の環状体が、前記各結合板部で互いに重なって結合された玉軸受用保持器であって、前記ポケット壁部の径方向寸法である帯幅が、前記結合板部の径方向寸法よりも小さくなるように、前記ポケット壁部の内径面または外径面に切り欠き部が設けられている。このため、転がり軸受の高速化およびグリースの長寿命化を図れ、グリースの慣らし時間が短縮され、また生産性に優れた玉軸受用保持器とすることができる。
【0020】
この発明の転がり軸受は、前述のいずれかに記載の玉軸受用保持器を備えたため、転がり軸受の高速化およびグリースの長寿命化を図れ、また生産性に優れた玉軸受用保持器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の実施形態の玉軸受用保持器を備えた転がり軸受の断面図である。
【
図2B】同玉軸受用保持器の厚肉部を説明するための斜視図である。
【
図3】同玉軸受用保持器を軸方向から見た正面図である。
【
図4B】
図4(A)のIVB-IVB線断面図である。
【
図5】同玉軸受用保持器に玉と外輪を組み合わせた状態の正面図である。
【
図6】
図5のVI-VI線で断面した一部切り欠き断面図である。
【
図7A】同玉軸受用保持器のグリース流動解析の結果を示す説明図である。
【
図7B】従来の玉軸受用保持器のグリース流動解析の結果を示す説明図である。
【
図8】同実施形態品および従来保持器のグリース慣らし性確認試験の結果を示すグラフである。
【
図9】各実施形態品および従来保持器の他のグリース慣らし性確認試験の結果を示すグラフである。
【
図10】この発明の他の実施形態に係る玉軸受用保持器の正面図である。
【
図11】同玉軸受用保持器を内径側から見た部分側面図である。
【
図12】同玉軸受用保持器の結合板部を示す拡大断面図である。
【
図13】同玉軸受用保持器に玉と外輪を組み合わせた状態の正面図である。
【
図14】
図13のXIV-XIV線で断面した一部切り欠き断面図である。
【
図15】この発明のさらに他の実施形態に係る玉軸受用保持器の斜視図である。
【
図16】同玉軸受用保持器を軸方向から見た正面図である。
【
図18】この発明のさらに他の実施形態に係る玉軸受用保持器の斜視図である。
【
図19】同玉軸受用保持器を軸方向から見た正面図である。
【
図21】この発明のさらに他の実施形態に係る玉軸受用保持器の斜視図である。
【
図22】同玉軸受用保持器を軸方向から見た正面図である。
【
図24】この発明のさらに他の実施形態に係る玉軸受用保持器の斜視図である。
【
図25】同玉軸受用保持器を軸方向から見た正面図である。
【
図27】この発明のさらに他の実施形態に係る玉軸受用保持器を備えた転がり軸受の断面図である。
【
図28】この発明のさらに他の実施形態に係る玉軸受用保持器の斜視図である。
【
図29】同玉軸受用保持器を備えた転がり軸受の断面図である。
【
図31】同玉軸受用保持器の昇温試験結果を示す図である。
【
図33】この発明の切り欠き部形状の変形例となる実施形態に係る玉軸受用保持器の正面図である。
【
図34】この発明の他の切り欠き部形状の変形例となる実施形態に係る玉軸受用保持器の正面図である。
【
図35】この発明のさらに他の切り欠き部形状の変形例となる実施形態に係る玉軸受用保持器の正面図である。
【
図36】従来例の合成樹脂製保持器の斜視図である。
【
図39】従来例の鉄板波形保持器の一部を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
この発明の第1の実施形態に係る玉軸受用保持器および転がり軸受を
図1ないし
図9
と共に説明する。
<転がり軸受について>
図1に示すように、この転がり軸受1は、深溝玉軸受であって、内輪2と、外輪3と、内外輪2,3の転走面2a,3a間に介在する複数の玉5と、各玉5を保持する玉軸受用保持器6と、非接触シールである密閉板4とを備えている。玉5は、鋼球またはセラミックボールである。
【0023】
内輪2の外周と外輪3の内周間に環状空間が形成され、この環状空間の軸方向両端の開口が密閉板4,4により閉鎖されている。閉鎖された環状空間に潤滑用のグリースが封入されている。外輪3の内周面に外輪シール溝が形成され、内輪2の外周面に内輪シール溝が形成されている。密閉板4は、鋼板等から円板状に形成される。密閉板4の外端が外輪シール溝に取付けられ、密閉板4の内端が内輪シール溝に所定の隙間を隔てて挿入されて内輪2に対して非接触とされている。
【0024】
<玉軸受用保持器6について>
図2A,
図2Bおよび
図3に示すように、玉軸受用保持器6は、互いに軸方向に重なる二枚の合成樹脂製の環状体10,10を有する。各環状体10は、合成樹脂を例えば射出成形して形成される。二枚の環状体10,10は、同一形状であり同一の金型で成形可能である。前記合成樹脂としては、例えば、ポリアミド(例えばPA46)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等を採用し得る。各環状体10を形成する合成樹脂には、強度を高めるために、ガラス繊維またはカーボン繊維またはアラミド繊維等が添加されている。
【0025】
図4A,
図4Bに示すように、各環状体10は、複数の半球状のポケット壁部13と、複数の結合板部14とを有する。複数の半球状のポケット壁部13は、円周方向に一定の間隔で並びそれぞれが玉5を保持するポケット12の内壁面を構成する。複数の結合板部14は、円周方向に隣合うポケット壁部13同士を連結する。
【0026】
<結合爪16および結合孔17について>
結合板部14は、二枚の環状体10,10を結合したときに面接触する合わせ面15を有する。結合板部14における合わせ面15の中央付近には、軸方向に突出する結合爪16と、他方の環状体10の結合爪16が挿入される結合孔17とが形成されている。
結合爪16の軸方向先端部に鉤部19が形成され、一方の環状体10の鉤部19は、他方の環状体10の結合孔17の内面に形成された段部18に係合する。この係合により結合爪16が結合孔17から抜け止めされ、二枚の環状体10,10が互いに結合される。
【0027】
<突出壁部20および収容凹部21について>
結合板部14は、突出壁部20および収容凹部21を有する。突出壁部20は、一方の環状体10の合わせ面15における円周方向一端に、軸方向に突出するように設けられている。収容凹部21は、一方の環状体10の合わせ面15における円周方向他端に設けられ、他方の環状体10の突出壁部20を収容する。
【0028】
結合板部14が前述の突出壁部20および収容凹部21を有することによって、二枚の環状体10,10を結合したときの環状体10,10の合わせ目が、ポケット12の軸方向中央からずれた位置にくるようになっている。これにより、軸受運転時、玉5の遅れまたは進みにより玉5が結合板部14に接触するとき、二枚の環状体10,10の合わせ目の位置に玉5が接触することを防止し得る。したがって、玉5を安定して保持することが可能となる。
【0029】
二枚の環状体10,10を結合した状態において、突出壁部20および収容凹部21は、突出壁部20と収容凹部21の間に周方向および軸方向の隙間22,23が生じる大きさとされている。これにより、環状体10を射出成形した後の収縮差により突出壁部20と収容凹部21が干渉するのを防止することができ、二枚の環状体10,10の結合板部14における合わせ面15同士を確実に密着させ得る。
【0030】
各ポケット12の円周方向両端部には、玉5の外周に沿う部分凹球面25がそれぞれ形成されている。部分凹球面25は、玉5のピッチ円と直交する領域をもつ部分凹球面であり、玉5を間に挟んで玉5の進行方向の前後に対向して形成されている。部分凹球面25の曲率半径は玉5の半径よりも僅かに大きく設定されている。
【0031】
<切り欠き部7について>
図2Aおよび
図3に示すように、ポケット壁部13の内径面に、静止空間Sa(
図1)から転走面2a,3a(
図1)へのグリース供給をし易くする切り欠き部7が設けられている。この切り欠き部7は、例えば、環状体10の射出成形時に形成されるが、射出成形後の追加工によって形成することも可能である。切り欠き部7は、ポケット壁部13の径方向寸法である帯幅H1が、結合板部14の径方向寸法H2(
図3)よりも小さくなるように形成されている。この実施形態おいて、ポケット壁部13の内径面13aは、軸受軸方向から見て凹曲線となる曲面形状である。切り欠き部7は、ポケット壁部13の円周方向中間部の帯幅H1が最も小さく、前記円周方向中間部から円周方向両側に向かうに従って帯幅H1が前記曲面形状に沿って次第に大きくなるように形成されている。
【0032】
具体的には、
図1に示すように、ポケット壁部13の内径面を一部切り欠いた凹曲線となる曲面形状となる切り欠き部7とし、この切り欠き部7が形成されたポケット壁部13の帯幅H1が、玉5のピッチ円PCDを中心として玉径の35%以下の範囲に収まり、且つ、外輪内径と内輪外径の間の半径方向寸法H3に対し、50%以下の帯幅となるように形成されている。このように切り欠き部7を形成することにより、静止空間Saから転走面2a,3aへのグリースの供給をし易くしている。
【0033】
<厚肉部について>
図2(B)に示すように、ポケット壁部13は、前記切り欠き部7による体積減少分だけ軸受軸方向に厚肉にする厚肉部8を有する。この例では、切り欠き部が形成されていないポケット壁部(図示せず)よりもポケット壁部13の全体が、軸受軸方向に前記体積減少分だけ厚肉に形成されている。換言すれば、ポケット壁部13の全体が厚肉部8となっている。この厚肉部8により、切り欠き部7による玉軸受用保持器6の剛性低下を抑制し得る。
【0034】
<作用効果>
以上説明した玉軸受用保持器6およびこの玉軸受用保持器6を備えた転がり軸受1によれば、ポケット壁部13の帯幅H1が、結合板部14の径方向寸法H2(
図3)よりも小さくなるようにポケット壁部13の内径面13aに切り欠き部7が設けられているため、軸受運転時に、静止空間Saに溜まったグリースが遠心力により切り欠き部7から転走面2a,3aへ供給される。つまり、静止空間Saに滞留しようとするグリースの一部が切り欠き部7で掻き取られることで、グリースの基油が分離して切り欠き部7から順次、保持器内、玉表面、転走面2a,3aへと供給され易くなる。これにより転がり軸受1の発熱が抑えられ、従来技術よりもグリース寿命を延ばすことができる。またポケット壁部13に切り欠き部7が設けられているため、玉5とポケット12の間でのグリースせん断抵抗が低減され、転がり軸受1の低トルク化および低発熱化を図れる。
また、運転開始時においては、前記切り欠き部7が設けられていることで、玉5の表面に付着したグリースの掻き取り量が増え、グリースが動空間から静止空間Saに排出され易くなり、グリースの慣らし時間を削減することができる。
前記切り欠き部7は、金型等により簡単に形成することができるため、鋼板製の波形保持器に凹み部を機械加工する従来例よりも加工コストを低減することができ、生産性に優れた玉軸受用保持器6とすることができる。
【0035】
切り欠き部7が設けられるポケット壁部13の内径面13aが軸受軸方向から見て凹曲線となる曲面形状であるため、ポケット壁部13の切り欠き部7に、局所的な応力集中が作用することを未然に防ぐことができる。また、射出成形用の金型等により切り欠き部7を簡単に形成することが可能となる。
前記切り欠き部7の最深部7a(
図3、
図5)の径方向位置は、玉5のピッチ円PCD(
図1)またはその付近に位置していてもよい。
切り欠き部7の最深部7aが玉5のピッチ円PCDの付近の径方向位置付近に達していると、玉5とポケット壁部13の内面との隙間が狭い箇所で切り欠き部7が開口することになり、静止空間Saに近い場所でグリースを多くかきとることができる。そのため、グリースが動空間から排出され易くグリースの慣らし時間をより一層削減することができる。
玉5がセラミックボールである場合、例えば軸受鋼等から成る鋼球よりも比重を小さくして軸受の高速化を図ることができるうえ耐熱性を高めることができる。
【0036】
<<グリースの挙動解析結果>>
グリースの挙動解析結果を、
図7A、
図7Bに示す。
図7Aは、
図1~
図6に示す実施形態、すなわち切り欠き部7を有する玉軸受用保持器6の例を、
図7Bは切り欠き部7を有しない玉軸受用保持器55Aの例を示す。両図の玉軸受用保持器6,70におけるその他の構成は同じである。対応部分に同一符号が付してある。
切り欠き部7がない玉軸受用保持器55A(
図7B)に対して、切り欠き部7が有る玉軸受用保持器6(
図7A)は、表面に付着したグリースG(黒塗り部分)から、ポケット壁部13と結合板部14との繋がり部10aでの掻き取りに加え、ポケット壁部13の軸受周方向の中央部付近(符号Aで示す円内)でのグリース掻き取り量が多く、差が認められた。
【0037】
<<解析条件>>
玉5は玉軸受用保持器6、55Aのポケット中心とし、グリースは玉5の表面に1.5mmの厚さで配置した。玉5の接触角は0°とし、内輪2の回転速度600min-1で玉5が1回転したときのグリース流動を求めた。
【0038】
<<グリース慣らし性確認試験(1) >>
図8は、グリース慣らし性確認試験(1) の試験結果を示す。横軸は時間(min)、縦軸は外輪3の温度(℃)を示す。グリース慣らし性は、玉5の表面にグリースを塗布しておき、軸受の運転を開始した場合に、グリースが前記静止空間に移動して行く性能であり、グリースの攪拌抵抗による軸受温度の上昇によって確認できる。軸受温度の上昇は、外輪温度によって確認できる。
切り欠き部7を有する玉軸受用保持器6(
図1~
図6に示す実施形態)は、切り欠き部7を有しない玉軸受用保持器55Aに対して、各回転速度での外輪ピーク温度が低く、温度安定までに要する時間が短い。切り欠き部7を有する玉軸受用保持器6では、各回転速度30分で、外輪観点温度が油潤滑時と同等となることが認められた。
【0039】
<<試験条件>>
試験機:横型トルク試験機
試験型番:6312
回転速度:4000、6000、8000、10000min-1
荷重:Fr=411N
試験:各回転速度で30分
確認項目:外輪温度
【0040】
<<グリース慣らし性確認試験(2) >>
図9は、グリース慣らし性能確認試験(2) の試験結果を示す。
切り欠き部7を有する玉軸受用保持器6(
図1~
図6に示す実施形態)は、切り欠き部無し品に比べて、グリース慣らし時間が30%低減した。後に
図10~
図14と共に説明するフランジ部31を有する実施形態(フランジ部31と切り欠き部7の両方有り)の玉軸受用保持器6の場合は、グリース慣らし時間が切り欠き部無し品に比べて、50%低減した。前記「グリース慣らし時間」は、軸受の運転開始から外輪の温度が安定するまでに要する時間である。
【0041】
<<試験条件>>
試験機:横型トルク試験機
試験型番:6312
回転速度:5000、10000min-1
荷重:Fr=411N
試験:各回転速度で30分
確認項目:外輪温度
【0042】
<他の実施形態について>
以下の説明においては、各実施の形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している形態と同様とする。同一の構成から同一の作用効果を奏する。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0043】
図10~
図14は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態の玉軸受用保持器6は、
図1~
図6と共に説明した第1の実施形態に係る玉軸受用保持器6において、結合板部14の外径縁から軸方向に突出するフランジ部31が設けられている。フランジ部31は、結合板部14の軸方向の両側に延び、かつ結合板部14の軸受周方向の幅の全体に渡って設けられている。
図14に示すように、結合板部14は、円周方向の両端に幅広部14aを有しているが、フランジ部31の先端縁の軸方向位置は一定であり、両側のフランジ14,14の先端間の軸方向向幅寸法B(以下、「フランジ幅」と称す)(
図12)は、軸受周方向の全体に渡って一定であり、外輪3の転走面3aの幅寸法と略同等とされている。
【0044】
図14は、この転がり軸受1を内輪2側から外輪3側に見た図であり、
図6は第1の実施形態における転がり軸受を内輪2側から外輪3側に見た図である。フランジ部31を設けない
図6の実施形では、内輪2側から外輪3を見ると、外輪2の転走面3aが玉軸受用保持器6の結合板部14の両側に見えている(転走面3aが見える箇所3aaを同図に網点で示している)が、
図14の実施形態のようにフランジ部31を設けた場合、外輪3の転走面3aはフランジ部31に隠れて見えない。
【0045】
また、
図12に示すように、フランジ部31の外径側面31aの断面は、軸受径方向に対して垂直であるが、内径側面31aは、軸受径方向に対し垂直な方向に対して傾斜角度αを持つ傾斜面とされている。前記傾斜角度αは、3°以上とされている。
【0046】
この実施形態では、フランジ部31を有することで、ポケット壁部13と結合板部14との繋がり部10a(
図7A)の近傍で掻き取られたグリースが遠心力で外輪3の転走面3aに巻き込まれるのが防止され、外輪3の転走面3aの付近の動空間から、玉軸受用保持器6と密封板4の間の静止空間Sa(
図1)へ排出されるまでの時間がさらに短縮される。
【0047】
前記フランジ部31のフランジ幅B(
図12)は、外輪3の転走面の幅と略同等としているが、具体的には、フランジ幅Bは外輪転走面幅の90~110%とし、より好ましいくは95~105%とする。90%以下では、遠心力で飛ばされたグリースが動空間となる外輪転走面3aの付近へ巻き込まれるのを防ぎきれない。110%以上では、フランジ部31に阻害されてグリースが動空間から排出され難くなる。
フランジ部31の内径側面は、3°以上のテーパ形状とすることで、よりグリースが動空間から排出され易くなる。3°以下では、グリースが動空間から排出され難くなる。
【0048】
なお、参考例として示すと、従来の鉄板波型保持器に前記切り欠き部7およびフランジ部31を設けても、グリースの挙動に関してはこの実施形態と同様の効果が得られるが、鉄板保持器では製作に手間がかかり製作コストが嵩むと言う課題がある。
【0049】
<厚肉部8の変形例>
図15~
図17に示すように、ポケット壁部13における内径部を他の部分よりも軸方向外側に厚肉に形成された厚肉部8としてもよい。この厚肉部8は、切り欠き部7による体積減少分だけポケット壁部13の内径部を軸受軸方向に厚肉にするものである。厚肉部8により、切り欠き部7による玉軸受用保持器6の剛性低下を抑制し得る。
図18~
図20に示すように、ポケット壁部13のうち、玉5のピッチ円PCD(
図1)に略沿った外側面が他の部分よりも厚肉に形成された厚肉部8としてもよい。この場合にも、切り欠き部7による玉軸受用保持器6の剛性低下を抑制し得る。
【0050】
図21~
図23に示すように、ポケット壁部13における内径部および外径部がそれぞれ他の部分よりも軸方向外側に厚肉に形成された厚肉部8としてもよい。この場合、厚肉部8を、ポケット壁部13の内径部と外径部に離隔させて設けたため、軸受運転時における玉軸受用保持器6のバランスがよく、転がり軸受の高速化をより図ることができる。また切り欠き部7による玉軸受用保持器6の剛性低下を抑制し得る。
【0051】
図24~
図26に示すように、ポケット壁部13は、外側面が内径面から外径面に向かうに従って厚肉となるテーパ形状に形成された厚肉部8としてもよい。この場合、ポケット壁部13の外径側程厚肉となるため、軸受運転時に玉軸受用保持器6に作用するフープ応力に対抗することができる。また切り欠き部7による玉軸受用保持器6の剛性低下を抑制し得る。
【0052】
<切り欠き部7の配設箇所の変形例>
図27に示すように、ポケット壁部13の外径面に切り欠き部7が設けられてもよい。このポケット壁部13の外径面は軸受軸方向から見て凹曲線となる曲面形状である。この構成においても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0053】
<切り欠き部7の形状の変形例>
切り欠き部7の形状、すなわち切り欠き部7が設けられるポケット壁部13の内径面または外径面は、軸受軸方向から見て多角形状に形成されていてもよい。例えば、切り欠き部7の形状は、
図33に示すように矩形状としてもよく、
図34に示すように三角形状としてもよく、また
図35に示すように軸受径方向に延びるスリット状としてもよい。
図33のように切り欠き部7の軸受周方向幅がポケット壁部の軸受周方向の幅の半分以上となる矩形状であって、かつ切り欠き部7の最深部7aが玉5のピッチ円PCDの付近に位置する場合、グリースが動空間から静止空間Saにより一層、流出し易くなる。矩形状に限らず、例えば、円弧状の曲線形状の切り欠き部7を軸受径方向に扁平化させた楕円弧状とするなど、切り欠き部7の深い箇所の軸受周方向幅が広い形状であれば、グリースが動空間から静止空間Saにより流出し易くなる効果がえられる。
図示しないが、転がり軸受に用いられる密閉板は接触シールを用いてもよい。なお玉軸受用保持器は、密閉板が設けられていない開放形の転がり軸受にも適用可能である。
玉軸受用保持器の各環状体を、3Dプリンターまたは機械加工により形成することも可能である。
【0054】
ところで、従来の樹脂製波形保持器の課題として、回転速度がdn60万を超える高速領域において、決まった回転速度で保持器の振動、つまり保持器の固有振動との共振が発生することにより、潤滑剤を巻き込み一時的に急激な昇温が発生する。
金属部品を用いて樹脂保持器の剛性・固有振動数を上昇させることで、高速性を向上させる技術(特許文献4)が提案されているが、金属部品を用いることでコストアップとなる。
【0055】
そこで、
図28に示すように、互いに重なった二つの結合板部14,14の軸方向寸法(結合部肉厚)t1を、玉5(
図29)の直径の55%~65%とすることで玉軸受用保持器6が高剛性になり、玉軸受用保持器6の固有振動数が上昇する。前記軸方向寸法t1の下限を玉直径の55%とすることで、玉軸受用保持器6における、玉5(
図29)を抱えている根元部Nm(
図28)の厚み(軸方向厚み)が厚くなることで、玉軸受用保持器6が高剛性になり高速回転時の遠心力に対する耐久性を高め得る。玉軸受用保持器6の高剛性化による固有振動数の上昇により、回転速度との共振が発生しない。このことにより共振による玉軸受用保持器6の振動も発生せず、昇温が抑制され安定した回転が得られる。
【0056】
前記軸方向寸法t1の上限を玉直径の65%にした理由は以下の通りである。
上記玉直径の65%は、
図29に示す外輪溝幅(外輪転走面幅寸法)L1の90%にあたる。転がり軸受1において、玉軸受用保持器6のポケット間(各結合板部の側面)に封入されたグリースは、初期回転時、遠心力で径方向外方の外輪3側へ飛ばされるが、前記軸方向寸法t1(
図28)が外輪溝幅L1の90%以上の場合、遠心力で飛ばされたグリースが転走面(軌道面)3aへ供給され難い。
一方、前記軸方向寸法t1(
図28)が外輪溝幅L1の90%未満の場合は、グリースが軌道面3aへ供給され易く、初期の潤滑供給性が向上する。このため、前記軸方向寸法t1(
図28)は、外輪溝幅L1の90%にあたる65%を上限としている。
【0057】
結合部肉厚の違いによる昇温試験を実施した。
<試験条件>
試験機 :高速試験機(
図30)
試験軸受:呼び番号6312
回転速度:3000min
-1から13500min
-1までステップアップ
荷重 :アキシアル荷重Fa=588.4N
測定項目:軸受外輪温度
【0058】
図30に示すように、試験軸受として、二個の転がり軸受を軸方向に所定間隔を空けて設置し、モータ24の駆動による内輪回転とした。モータ24側に近い
図30の左側の転がり軸受をモータ側軸受Br1とし、
図30の右側の転がり軸受を反モータ側軸受Br2とした。またハウジング26に、外輪温度測定用の熱電対27,27がそれぞれ設置された。
昇温試験結果の
図31、
図32によると、結合部肉厚を厚くしていない実施形態品に対し、結合部肉厚を厚くした
図28の実施形態に係る試験軸受は、モータ側軸受Br1、反モータ側軸受Br2共に急激な昇温が抑えられ、dn=60万以上の高速運転が可能である。
【0059】
以上、実施形態に基づいてこの発明を実施するための形態を説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1…転がり軸受、2…内輪、2a…転走面、3…外輪、3a…転走面、4…密閉板、5…玉、6…玉軸受用保持器、7…切り欠き部、8…厚肉部、10…環状体、12…ポケット、13…ポケット壁部、14…結合板部、31…フランジ部、Sa…静止空間