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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/30 20060101AFI20240808BHJP
   C11D 7/24 20060101ALI20240808BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20240808BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C11D7/30
C11D7/24
C11D7/50
C09K3/30 F
C09K3/30 T
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020018322
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021123658
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 公雄
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/104738(WO,A1)
【文献】特許第6557796(JP,B1)
【文献】特開2014-091785(JP,A)
【文献】特開2019-031671(JP,A)
【文献】特開2018-021159(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
C09K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液と噴射剤とからなり、
前記原液は、引火点が30~100℃である油性溶剤と、沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含み、
前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、2~25質量%であり、
前記油性溶剤は、ナフテン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素またはシリコーンオイルのうち少なくともいずれかを含む、エアゾール組成物。
【請求項2】
前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、2~12質量%である、請求項記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記ハイドロフルオロオレフィンの沸点は、前記油性溶剤の引火点よりも低い、請求項1または2記載のエアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、原液が火気への安全性が高く、塗布面にて洗浄などの効果が得られやすいエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油系炭化水素にアルコール類などを添加した原液と、液化石油ガスなどの噴射剤とからなる洗浄用エアゾール組成物が知られている。この原液およびエアゾール組成物は燃焼性が高い。特許文献1には、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンと、CO2などの噴射ガスとを含有する各種車両・乗物・輸送機関の洗浄用エアゾール組成物が開示されている。また、特許文献2には、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンと、HFE系の不燃性フッ素系溶剤を含有した洗浄用エアゾール組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-204007号公報
【文献】国際公開第2018-110679号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の洗浄用エアゾール組成物は、非引火性である(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンを洗浄成分として使用している。しかしながら、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンは、沸点が39℃と低い。そのため、特許文献1に記載のエアゾール洗浄剤組成物は、塗布面での乾燥が速く、効果が充分に得られない。また、特許文献2に記載の洗浄用エアゾール組成物において、(Z)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパンとHFE系の不燃性フッ素系溶剤は共に不燃物である。そのため、特許文献2に記載の洗浄用エアゾール組成物は、もともと、不燃性であるため、引火性溶剤の引火点をなくすという課題認識はない。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、原液が火気への安全性が高く、塗布面にて洗浄などの効果が得られやすいエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)原液と噴射剤とからなり、前記原液は、引火点が30~100℃である油性溶剤と、沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含み、前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、2~30質量%である、エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、原液は、ハイドロフルオロオレフィンが油性溶剤に溶解しやすく、ハイドロフルオロオレフィンの沸点より高温になっても原液中に残留しやすい。そのため、原液は、引火点が高くなり、火気への安全性が高くなる。また、塗布されたエアゾール組成物は、塗布面において適度に付着し、洗浄効果や潤滑効果などが得られやすい。
【0009】
(2)前記油性溶剤は、炭化水素系溶剤を含む、(1)記載のエアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、原液は、ハイドロフルオロオレフィンが炭化水素系溶剤に溶解しやすい。そのため、ハイドロフルオロオレフィンは、ハイドロフルオロオレフィンの沸点より高温になっても原液中に残留しやすくなる。その結果、原液は、引火点が高くなり、火気への安全性がより高くなる。
【0011】
(3)前記ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、7~25質量%である、(1)または(2)記載のエアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、原液は、沸騰するまで引火しなくなり、消防法上の非危険物に該当する。また、塗布されたエアゾール組成物は、塗布面において適度に乾燥し、洗浄効果や潤滑効果などが得られやすい。
【0013】
(4)前記ハイドロフルオロオレフィンの沸点は、前記油性溶剤の引火点よりも低い、(1)~(3)のいずれかに記載のエアゾール組成物。
【0014】
このような構成によれば、温度上昇に伴い、ハイドロフルオロオレフィンは、油性溶剤の引火点に到達する前に気化する。その結果、原液は、引火しにくくする効果がより得られやすい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原液が火気への安全性が高く、洗浄などの効果が得られやすいエアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<エアゾール組成物>
本発明の一実施形態のエアゾール組成物は、原液と噴射剤とからなる。原液は、引火点が30~100℃である油性溶剤と、沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含む。ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中2~30質量%である。以下、それぞれについて説明する。
【0017】
(原液)
原液は、引火点が30~100℃である油性溶剤と、沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィンとを含む。
【0018】
・引火点が30~100℃である油性溶剤
油性溶剤は、引火点が30~100℃であるものが用いられる。引火点が上記範囲内にあることにより、エアゾール組成物は、適度な乾燥性を有し、塗布面での付着に優れ、洗浄や潤滑などの効果が得られやすい。また、引火点が30~100℃である油性溶剤が含まれることにより、原液は、油性溶剤の引火点付近にまで温度上昇しても、原液中にハイドロフルオロオレフィンを保持しやすく、引火しにくくなる。
【0019】
引火点が30~100℃である油性溶剤は、特に限定されない。一例を挙げると、油性溶剤は、エクソールDSP145/160(引火点32℃)、エクソールD40(引火点45℃)、エクソールD60(引火点68℃)、エクソールD80(引火点81℃)などのナフテン系炭化水素、ノルパー10(引火点52℃)、ノルパー12(引火点75℃)、ノルパー13(引火点95℃)などのノルマルパラフィン系炭化水素、出光スーパーゾルFP25(引火点49℃)、出光スーパーゾルFP30(引火点87℃)、出光スーパーゾルLA25(引火点42℃)、出光スーパーゾルLA30(引火点84℃)、アイソパーG(引火点44℃)、アイソパーH(引火点54℃)、アイソパーL(引火点64℃)、アイソパーM(引火点94℃)、IPソルベント1620(引火点49℃)、IPソルベント2028(引火点86℃)、IPクリーンLX(引火点45℃)などのイソパラフィン系炭化水素、ティーソル100(引火点48℃)、ティーソル150(引火点66℃)、ソルベッソ150ND(引火点64℃)などの芳香族系炭化水素、ケロシン(引火点65~85℃)などの炭化水素の混合物、トリシロキサン(引火点46℃)、ジメチコン(粘度2ct、引火点96℃)、シクロペンタシロキサン(引火点77℃)、シクロメチコン(引火点77℃)などのシリコーンオイルなどである。これらの中でも、油性溶剤は、ハイドロフルオロオレフィンの溶解性が優れている点から、炭化水素系溶剤であることが好ましく、ナフテン系炭化水素であることがより好ましい。ハイドロフルオロオレフィンが炭化水素系溶剤に溶解することにより、ハイドロフルオロオレフィンは、ハイドロフルオロオレフィンの沸点より高温になっても原液中に残留しやすくなる。その結果、原液は、引火点が高くなり、火気への安全性がより高くなる。
【0020】
引火点が30~100℃である油性溶剤の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、油性溶剤は、原液中、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。また、油性溶剤は、原液中、98質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましい。油性溶剤の含有量が上記範囲内であることにより、原液は、油性溶剤の引火点付近にまで温度上昇しても、原液中にハイドロフルオロオレフィンを保持しやすい。これにより、原液は、引火しにくくなり、また、エアゾール組成物は、塗布面にて適度に付着して洗浄や潤滑などの効果が得られやすい。
【0021】
・沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィン
沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィンは、油性溶剤に溶解して原液を引火しにくくする、塗布面にて汚れ成分を洗浄する洗浄成分として用いられる。ハイドロフルオロオレフィンの沸点が上記範囲内であることにより、原液は、油性溶剤の引火点付近にまで温度上昇しても、引火しにくくなる。また、エアゾール組成物は、塗布面で付着しやすく、洗浄や潤滑などの効果が得られやすい。
【0022】
沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィンは特に限定されない。一例を挙げると、沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィンは、シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパン(HFO-1233zd(Z)、沸点39℃)などである。なお、原液の引火点を高くする効果や塗布面での洗浄などの効果が得られる範囲で、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパン(HFO-1233zd(E)、沸点19℃)などの沸点が25℃未満であるハイドロフルオロオレフィンを添加してもよい。
【0023】
沸点が25~50℃であるハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、2質量%以上であればよく、7質量%以上であることが好ましい。また、ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、原液中、30質量%以下であればよく、25質量%以下であることが好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、原液は、引火点が高くなりやすい。また、エアゾール組成物は、洗浄や潤滑などの効果が得られやすい。特にハイドロフルオロオレフィンの含有量が、原液中、7質量%以上である場合は、原液は、沸騰するまで引火点がなくなりやすく、消防法上の非危険物になる。
【0024】
本実施形態のエアゾール組成物は、ハイドロフルオロオレフィンの沸点が、油性溶剤の引火点よりも低いことが好ましい。これにより、原液は、温度が上昇した場合において、油性溶剤の引火点に到達する前にハイドロフルオロオレフィンが気化し始めることとなる。この場合、原液の周囲には、気化したハイドロフルオロオレフィンが多く存在する。その結果、原液は、引火が妨げられ、引火しにくくなる。
【0025】
・任意成分
原液は、上記した油性溶剤およびハイドロフルオロオレフィン以外に、引火点が100℃以上である油剤、アルコール、グリコールエーテル、グリコール、有効成分などが配合されてもよい。
【0026】
・引火点が100℃以上である油剤
引火点が100℃以上である油剤は、塗布されたエアゾール組成物の塗布面での乾燥性を調整して付着状態を調整する、洗浄や潤滑効果を高くするなどのために好適に配合される。
【0027】
引火点が100℃以上である油剤は特に限定されない。一例を挙げると、油剤は、ジメチコン(粘度5sc以上)、カプリリルメチコンなどのシリコーンオイル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソステアリル、ジ-2-ヘチルヘキサン酸ネオペンチレングリコール、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、サリチル酸メチルなどのエステル油、オリーブ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油等の油脂などである。
【0028】
引火点が100℃以上である油剤が配合される場合、引火点が100℃以上である油剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、油剤の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。引火点が100℃以上である油剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、油剤を配合することによる効果が得られやすい。
【0029】
アルコールは、塗布面での乾燥性を調整する、洗浄効果を調整するなどの目的で好適に配合される。
【0030】
アルコールは特に限定されない。一例を挙げると、アルコールは、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2~3個の1価アルコール等である。
【0031】
アルコールが配合される場合、アルコールの含有量は原液が引火点を有さない範囲を採用することができる。一例を挙げると、アルコールの含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、アルコールを配合することによる効果が得られやすい。
【0032】
グリコールエーテルは、高温になったときに原液に引火しにくくするなどの目的で好適に配合される。
【0033】
グリコールエーテルは特に限定されない。一例を挙げると、グリコールエーテルは、エチレングリコールモノエチルエーテル(引火点45℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(引火点63.5℃)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(引火点71℃)、エチレングリコールフェニルエーテル(引火点128℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(引火点117℃)などである。
【0034】
グリコールエーテルが配合される場合、グリコールエーテルの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、グリコールエーテルの含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、グリコールエーテルの含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。グリコールエーテルの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、グリコールエーテルを配合することによる効果が得られやすい。
【0035】
グリコールは、高温になったときに原液に引火しにくくするなどの目的で好適に配合される。
【0036】
グリコールは、特に限定されない。一例を挙げると、グリコールエーテルは、グリセリン、エチレングリコール(引火点111℃)、ジエチレングリコール(引火点124℃)、プロピレングリコール(引火点99℃)などである。
【0037】
グリコールが配合される場合、グリコールの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、グリコールの含有量は、原液中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、グリコールの含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。グリコールの含有量が上記範囲内であることにより、グリコールを配合することによる効果が得られやすい。
【0038】
有効成分は、製品の用途や目的などに応じて適宜選択することができる。
【0039】
有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分は、天然香料、合成香料などの各種香料、窒化ホウ素、黒鉛、二硫化モリブデン、滑石などの固体潤滑剤、防錆剤、界面活性剤等である。
【0040】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、有効成分を配合することによる効果が得られやすい。
【0041】
本実施形態の原液は、特定の引火点を有する油性溶剤を含む。そのため、原液は、適度な乾燥性を有し、エアゾール組成物は対象物上に塗布された際に、塗布面において適度に付着して洗浄効果などが得られやすい。また、原液は、特定の沸点を有するハイドロフルオロオレフィンを含む。そのため、原液は、ハイドロフルオロオレフィンが油性溶剤に溶解しやすい。その結果、原液は、温度上昇しても引火しにくく、安全性が高い。
【0042】
原液の調製方法は特に限定されない。原液は、油性溶剤に、必要に応じて油剤や有効成分等の任意成分を添加し、さらにハイドロフルオロオレフィンを添加して混合することにより調製することができる。
【0043】
原液の含有量は、噴射剤として液化ガスを使用する場合、エアゾール組成物中40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、霧状に噴射されやすく、対象物に付着しやすい。その結果、エアゾール組成物は、塗布面において、洗浄などの効果が得られやすい。
【0044】
また、噴射剤として圧縮ガスを使用する場合、原液の含有量は、エアゾール組成物中、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中、99.9質量%以下であることが好ましく、99.7質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、容器内の圧力を0.3~1.0MPaに調整されやすく、ジェット状に勢いよく噴射されやすく、対象物に付着している油汚れや錆びなどを除去しやすい。その結果、エアゾール組成物は、塗布面において、洗浄などの効果が得られやすい。
【0045】
(噴射剤)
噴射剤は、原液を霧状やジェット状にして噴射し、対象物に付着させるために配合される。
【0046】
噴射剤は、特に限定されない。一例を挙げると、噴射剤は、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze、沸点-19℃)、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234yf、沸点-29℃)などの沸点が10℃未満のハイドロフルオロオレフィン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物からなる液化石油ガス、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物等の液化ガス、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素、圧縮空気およびこれらの混合物等の圧縮ガス、および液化ガスと圧縮ガスの混合物等である。
【0047】
噴射剤として液化ガスを使用する場合、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましい。また、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、霧状に噴射されやすく、対象物に付着しやすい。その結果、エアゾール組成物は、塗布面において、洗浄などの効果が得られやすい。
【0048】
また、噴射剤として圧縮ガスを使用する場合、圧縮ガスの含有量は、エアゾール組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、圧縮ガスの含有量は、エアゾール組成物中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。圧縮ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、容器内の圧力を0.3~1.0MPaに調整されやすく、ジェット状に勢いよく噴射されやすく、対象物に付着している油汚れや錆びなどを除去しやすい。その結果、エアゾール組成物は、塗布面において、洗浄などの効果が得られやすい。
【0049】
エアゾール組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール組成物は、原液を耐圧容器に充填し、耐圧容器の開口部にバルブを取り付けて密封し、噴射剤をバルブから充填し、このエアゾール容器内で原液と噴射剤を混合することにより調製することができる。なお、耐圧容器の開口部にバルブを取り付ける前に、噴射剤を耐圧容器の開口部とバルブの隙間から充填してから、バルブを取り付けてもよい。
【実施例
【0050】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0051】
(実施例1)
以下の処方(単位:質量%)に従って、原液1を調製した。97gの原液1をアルミニウム製耐圧容器に充填し、バルブを取り付け、バルブから3gの炭酸ガスを充填した。容器内で炭酸ガスを原液1に溶解させることにより、エアゾール組成物を調製した。
【0052】
<原液1>
エクソールD80(*1) 97.0
シス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロパン(*2) 3.0
合計 100.0(質量%)
*1:ナフテン系炭化水素、引火点81℃、エクソンモービル社製
*2:HFO-1233zd(Z)、沸点39℃、ハネウェル社製
【0053】
(実施例2)
原液を表1に記載の処方に変更した原液2を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液2と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0054】
(実施例3)
実施例1と同様の方法により、70gの原液2と30gの液化石油ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0055】
(実施例4)
実施例1と同様の方法により、60gの原液2と10gの液化石油ガスと30gのトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン(HFO-1234ze)を充填してエアゾール組成物を調製した。
【0056】
(比較例1)
原液を表1に記載の処方に変更した原液3を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液3と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0057】
(比較例2)
原液を表1に記載の処方に変更した原液4を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液4と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0058】
【表1】
【0059】
(実施例5)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表2に記載の処方に変更した原液5を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液5と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0060】
(実施例6)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表2に記載の処方に変更した原液6を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液6と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0061】
(実施例7)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表2に記載の処方に変更した原液7を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液7と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0062】
(比較例3)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表2に記載の処方に変更した原液8を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液8と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0063】
【表2】
【0064】
(実施例8)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表3に記載の処方に変更した原液9を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液9と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0065】
(実施例9)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表3に記載の処方に変更した原液10を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液10と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0066】
(比較例4)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表3に記載の処方に変更した原液11を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液11と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0067】
【表3】
【0068】
(実施例10)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表4に記載の処方に変更した原液12を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液12と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0069】
(実施例11)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表4に記載の処方に変更した原液13を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液13と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0070】
(比較例5)
原液の処方およびハイドロフルオロオレフィンの配合比率を表4に記載の処方に変更した原液14を調製し、実施例1と同様の方法により、97gの原液14と3gの炭酸ガスを充填してエアゾール組成物を調製した。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例1~11および比較例1~5において調製した原液およびエアゾール組成物を用いて、原液の引火点を測定し、エアゾール組成物の噴射状態を評価した。結果を表5に示す。
【0073】
<原液の引火点>
原液の引火点は、25℃から80℃までをタグ密閉式引火点測定器にて測定した。さらに、密閉式で引火しなかった原液については、原液が沸騰するまでをクリーブランド開放式引火点測定装置にて測定した。
【0074】
<噴射状態>
エアゾール容器を25℃の恒温水槽に1時間浸漬してエアゾール組成物を25℃に調整し、テーブル上に載置したステンレス板に対して、5cm離れた位置から垂線方向に1g噴射し、ステンレス板に付着した噴射物の状態を以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
○1:エアゾール組成物は、ジェット状に噴射され、60秒経過しても噴射物の半分以上が残っていた。
〇2:エアゾール組成物は、スプレー状に噴射され、60秒経過しても噴射物の半分以上が残っていた。
×:エアゾール組成物は、ジェット状に噴射され、30秒以内に噴射物のほとんどが乾燥した。
【0075】
【表5】
【0076】
表5に示されるように、実施例1~11の原液は、密閉式引火点測定器にて80℃まで試験したが、溶剤の引火点よりも高い温度になっても引火しなかった。特に、実施例2~4、6、7、9、11は、開放式引火点測定器にて原液が沸騰するまで試験したが、引火しなかった。また、実施例1~11のエアゾール組成物は、ジェット状またはスプレー状に噴射することができ、60秒を経過しても、噴射物の半分以上が塗布面に残った。一方、ハイドロフルオロオレフィンの含有量が少ない比較例1、3~5の原液は、溶剤の引火点よりも低い温度で引火した。比較例2のエアゾール組成物は30秒以内に噴射物のほとんど全部が乾燥した。