(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】繊維機械
(51)【国際特許分類】
D01D 7/00 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
D01D7/00 C
(21)【出願番号】P 2020041770
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 真
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-002091(JP,A)
【文献】特開平05-078012(JP,A)
【文献】特開昭54-077711(JP,A)
【文献】特開2017-082379(JP,A)
【文献】特開2015-078455(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03415452(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H67/00-67/08
D01D1/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の糸を
少なくとも1つのボビンにそれぞれ巻き取る処理
をする繊維機械であって、
前記糸が掛けられる糸掛対象部材と、
前記糸が前記糸掛対象部材に掛けられており且つ前記ボビンに巻き取られているときの所定の生産位置と、前記生産位置とは異なる
、前記糸掛対象部材への糸掛けが行われるときの糸掛位置との間で前記糸掛対象部材を移動させる駆動部と、
前記駆動部による前記糸掛対象部材の移動に関する情報を検知する検知部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検知部による検知結果に基づき、前記糸掛対象部材の移動が正常か異常か判断することを特徴とする繊維機械。
【請求項2】
少なくとも1本の糸を処理する繊維機械であって、
前記糸が掛けられる糸掛対象部材と、
所定の生産位置と、前記生産位置とは異なる糸掛位置との間で前記糸掛対象部材を移動させる駆動部と、
前記駆動部による前記糸掛対象部材の移動に関する情報を検知する検知部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記検知部による検知結果に基づき、前記糸掛対象部材の移動が正常か異常か判断し、
複数の前記糸がそれぞれ巻き取られる複数のボビンを前記複数のボビンの軸方向に並べて支持するボビンホルダと、
前記複数のボビンに対応して前記軸方向に並べて設けられた、前記複数の糸をそれぞれ綾振りするための複数のトラバースガイドと、を備え、
前記糸掛対象部材は、
前記複数のトラバースガイドにそれぞれ対応して前記軸方向に並べて設けられた、前記複数の糸がそれぞれ綾振りされる際の支点となる複数の支点ガイド、を含み、
前記複数の支点ガイドは、
前記生産位置として、前記複数のボビンに前記複数の糸がそれぞれ巻き取られるときの離隔位置と、
前記糸掛位置として、前記離隔位置に位置しているときと比べて前記軸方向における間隔が小さくなるように集められた近接位置と、の間で移動可能であることを特徴とする繊維機械。
【請求項3】
前記検知部は、前記複数の支点ガイドが前記離隔位置に正常に位置しているか否かに関する情報を検知することを特徴とする請求項2に記載の繊維機械。
【請求項4】
前記検知部は、前記複数の支点ガイドが前記近接位置に正常に位置しているか否かに関する情報を検知することを特徴とする請求項2又は3に記載の繊維機械。
【請求項5】
前記糸掛対象部材への糸掛けを行う自動糸掛装置を備え、
前記制御部は、
前記糸掛対象部材の移動が正常であると判断した場合にのみ、前記自動糸掛装置の動作を続行させることを特徴とする請求項1
~4のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項6】
情報を報知する報知部を備え、
前記制御部は、前記糸掛対象部材の移動に異常が生じたと判断した場合に、異常の発生を示す情報を前記報知部に報知させることを特徴とする請求項1
~5のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項7】
前記検知部は、前記糸掛対象部材の位置に関する情報を検知することを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項8】
前記検知部は、前記糸掛対象部材が目標位置に位置しているか否かに関する情報を検知するリミットスイッチであることを特徴とする請求項
7に記載の繊維機械。
【請求項9】
前記駆動部は、エアシリンダを含むことを特徴とする請求項
7又は
8に記載の繊維機械。
【請求項10】
前記駆動部は、電動モータを含むことを特徴とする請求項1~
8のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項11】
前記検知部は、前記電動モータの可動部の位置に関する情報を検知することを特徴とする請求項
10に記載の繊維機械。
【請求項12】
前記電動モータは、ステッピングモータであり、
前記検知部は、前記ステッピングモータの脱調を検知することを特徴とする請求項
10又は
11に記載の繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に記載された紡糸引取機(繊維機械)は、複数の糸を綾振りしながら複数のボビンにそれぞれ巻き取ってパッケージを形成する引取ユニットを備える。引取ユニットは、複数のボビンに対応して配列された、各糸が綾振りされる際の支点となる複数の支点ガイドを有する。複数の支点ガイドは、例えばエアシリンダによって、糸がボビンに巻き取られているときの生産位置と、生産位置に位置しているときと比べて互いに近接した糸掛位置との間で移動駆動される。糸掛位置に位置している複数の支点ガイドには、糸掛ロボット(特許文献1参照)或いは作業者(特許文献2参照)によって糸が掛けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-82379号公報
【文献】特開2015-78455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアシリンダ等の駆動部が、糸くずの詰まり等に起因して正常に動作しない場合、支点ガイド等の糸掛対象部材が正常に移動できなくなる。この場合、例えば以下のような不具合が生じうる。
【0005】
糸掛ロボットによって糸掛対象部材に糸が掛けられる構成においては、特許文献1には記載されていないが、例えば糸掛対象部材を移動させ始めてから所定時間が経過したときに移動完了と見なされ、糸掛けが続行される。このため、糸掛対象部材が本来あるべき位置からずれている状態で糸掛けが行われてしまうと、糸掛けに失敗しうる。
【0006】
また、糸掛けが糸掛ロボットによって行われる場合であっても作業者によって行われる場合であっても、支点ガイドが生産位置に正常に戻らない場合、支点ガイドが本来あるべき位置からずれた状態で糸の巻き取りが開始されうる。すると、パッケージが正常に形成されないおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、糸掛対象部材が正常に移動しない場合に生じうる不具合を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の繊維機械は、少なくとも1本の糸を処理する繊維機械であって、前記糸が掛けられる糸掛対象部材と、所定の生産位置と、前記生産位置とは異なる糸掛位置との間で前記糸掛対象部材を移動させる駆動部と、前記駆動部による前記糸掛対象部材の移動に関する情報を検知する検知部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記検知部による検知結果に基づき、前記糸掛対象部材の移動が正常か異常か判断することを特徴とする。
【0009】
本発明では、糸掛対象部材の移動が正常であると判断された場合には糸掛けを行い、糸掛対象部材の移動が異常であると判断された場合には糸掛けを中止等することができる。したがって、糸掛対象部材が正常に移動しない場合に生じうる不具合を抑制できる。
【0010】
第2の発明の繊維機械は、前記第1の発明において、前記糸掛対象部材への糸掛けを行う自動糸掛装置を備え、前記制御部は、前記糸掛対象部材の移動が正常であると判断した場合にのみ、前記自動糸掛装置の動作を続行させることを特徴とする。
【0011】
本発明では、糸掛対象部材の移動に異常が生じた場合に、糸掛ロボットによって糸掛けが意図せず行われることを確実に防止できる。
【0012】
第3の発明の繊維機械は、前記第1又は第2の発明において、情報を報知する報知部を備え、前記制御部は、前記糸掛対象部材の移動に異常が生じたと判断した場合に、異常の発生を示す情報を前記報知部に報知させることを特徴とする。
【0013】
本発明では、糸掛対象部材の移動に異常が生じた場合に、迅速な対処を作業者に促すことができる。
【0014】
第4の発明の繊維機械は、前記第1~第3のいずれかの発明において、前記検知部は、前記糸掛対象部材の位置に関する情報を検知することを特徴とする。
【0015】
本発明では、糸掛対象部材の位置に関する情報を利用することにより、糸掛対象部材の移動が正常か否か容易に判断できる。
【0016】
第5の発明の繊維機械は、前記第4の発明において、前記位置情報検知部は、前記糸掛対象部材が目標位置に位置しているか否かに関する情報を検知するリミットスイッチであることを特徴とする。
【0017】
本発明では、一般的に安価であるリミットスイッチを用いることにより、繊維機械の製造コストの増大を抑えつつ、糸掛対象部材が目標位置に到達したか否か容易に判断できる。
【0018】
第6の発明の繊維機械は、前記第4又は第5の発明において、前記駆動部は、エアシリンダを含むことを特徴とする。
【0019】
エアシリンダは、例えば電気モータと比べて一般的に推力が小さいため、例えば糸くずがわずかに詰まっただけでも、糸掛対象部材が正常に移動しなくなりやすい懸念がある。このような構成において、位置情報検知部による検知結果に基づき、糸掛対象部材の移動が正常か否か判断することは有効である。
【0020】
第7の発明の繊維機械は、前記第1~第5のいずれかの発明において、前記駆動部は、電動モータを含むことを特徴とする。
【0021】
例えば、電動モータの可動部と固定部との間に糸くず等が詰まると、電動モータに過剰な負荷がかかって電動モータが故障するおそれがある。本発明では、糸掛対象部材の移動に異常が生じたと判断された場合に電動モータの動作を停止させることで、電動モータに過剰な負荷がかかることを抑制できる。
【0022】
第8の発明の繊維機械は、前記第7の発明において、前記検知部は、前記電動モータの可動部の位置に関する情報を検知することを特徴とする。
【0023】
本発明では、可動部の位置に関する情報を利用することによって、糸掛対象部材の位置に関する情報を間接的に取得できる。したがって、糸掛対象部材の位置に関する情報を直接取得できない場合でも、糸掛対象部材の移動が正常か異常か判断できる。
【0024】
第9の発明の繊維機械は、前記第7又は第8の発明において、前記電動モータは、ステッピングモータであり、前記検知部は、前記ステッピングモータの脱調を検知することを特徴とする。
【0025】
本発明では、脱調に関する情報を利用することによって、モータが正常に動作したか否か判断できる。したがって、糸掛対象部材の位置に関する情報を取得できない場合でも、糸掛対象部材の移動が正常か異常か判断できる。
【0026】
第10の発明の繊維機械は、前記第1~第9のいずれかの発明において、複数の前記糸がそれぞれ巻き取られる複数のボビンを前記複数のボビンの軸方向に並べて支持するボビンホルダと、前記複数のボビンに対応して前記軸方向に並べて設けられた、前記複数の糸をそれぞれ綾振りするための複数のトラバースガイドと、を備え、前記糸掛対象部材は、前記複数のトラバースガイドにそれぞれ対応して前記軸方向に並べて設けられた、前記複数の糸がそれぞれ綾振りされる際の支点となる複数の支点ガイド、を含み、前記複数の支点ガイドは、前記生産位置として、前記複数のボビンに前記複数の糸がそれぞれ巻き取られるときの離隔位置と、前記糸掛位置として、前記離隔位置に位置しているときと比べて前記軸方向における間隔が小さくなるように集められた近接位置と、の間で移動可能であることを特徴とする。
【0027】
複数の支点ガイドは、離隔位置と近接位置との間で長い距離を移動する必要があるため、駆動部の動作が不調である場合に、目標位置に正常に到達できなくなる懸念が大きい。このような構成において、検知部による検知結果に基づき、糸掛対象部材の移動が正常か否か判断することは有効である。
【0028】
第11の発明の繊維機械は、前記第10の発明において、前記検知部は、前記複数の支点ガイドが前記離隔位置に正常に位置しているか否かに関する情報を検知することを特徴とする。
【0029】
糸がボビンに巻き取られる際に、複数の支点ガイドが離隔位置からずれていると、複数の支点ガイドに掛かった糸がボビンに正常に巻き取られず、ボビンに巻き取られた糸が無駄になるおそれがある。このような構成において、検知部による検知結果に基づき、複数の支点ガイドの移動が正常か否か判断することは有効である。
【0030】
第12の発明の繊維機械は、前記第10又は第11の発明において、前記検知部は、前記複数の支点ガイドが前記近接位置に正常に位置しているか否かに関する情報を検知することを特徴とする。
【0031】
糸が複数の支点ガイドに掛けられる際に、複数の支点ガイドが近接位置からずれていると、複数の支点ガイドへの糸掛けが正常に行われないおそれがある。このような構成において、検知部による検知結果に基づき、複数の支点ガイドの移動が正常か否か判断することは有効である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本実施形態に係る紡糸引取機の正面図である。
【
図3】紡糸引取機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】(a)、(b)は、支点ガイドの移動を示す説明図である。
【
図7】(a)、(b)は、第1セパレータを示す説明図であり、(c)は、第2セパレータを示す説明図である。
【
図9】(a)~(f)は、糸掛けの手順を示す説明図である。
【
図10】(a)、(b)は、糸掛けの手順を示す説明図である。
【
図13】別の変形例に係る駆動部を示す説明図である。
【
図14】(a)、(b)は、さらに別の変形例に係る位置情報検知部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明の実施の形態について説明する。なお、説明の便宜上、
図1及び
図2に示す方向を上下方向、左右方向及び前後方向とする。上下方向は、重力が作用する鉛直方向である。左右方向は、上下方向と直交し、後述する引取ユニット3が並べて配置された方向である。前後方向は、上下方向及び左右方向の両方と直交する方向である。また、糸Yの走行する方向を糸走行方向とする。前後方向と略平行な、後述する複数のボビンBの軸方向をボビン軸方向(本発明の軸方向)とする。
【0034】
(紡糸引取機)
本実施形態に係る紡糸引取機1(本発明の繊維機械)の構成について、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、紡糸引取機1の正面図である。
図1に示すように、紡糸引取機1は、複数の紡糸装置2と、各紡糸装置2に対応して設けられた複数の引取ユニット3と、糸掛ロボット4(本発明の自動糸掛装置)と、統括制御装置100(
図3参照)とを備える。
【0035】
複数の紡糸装置2は、左右方向に配列されている。各紡糸装置2は、複数の糸Y(例えば12本)を紡出する。複数の引取ユニット3は、複数の紡糸装置2の下方に配置されている。複数の引取ユニット3は、複数の紡糸装置2に対応して左右方向に配列されている。各引取ユニット3は、紡糸装置2から紡出される複数の糸Yを引き取り、複数のボビンB(例えば12個)に同時に巻き取ってパッケージPを形成する。糸掛ロボット4は、左右方向に延びたレール5に沿って移動し、各引取ユニット3への糸掛けを行うように構成されている。
【0036】
統括制御装置100(
図3参照)は、例えば一般的なコンピュータ装置である。統括制御装置100は、複数の引取ユニット3をそれぞれ制御する複数のユニット制御装置101、及び、糸掛ロボット4を制御する糸掛制御装置102と電気的に接続されている(
図3参照)。統括制御装置100は、ユニット制御装置101及び糸掛制御装置102と連携して、紡糸引取機1全体を統括的に制御する。
【0037】
(引取ユニット)
次に、引取ユニット3の構成について、
図2、
図3を参照しつつ説明する。
図2は、引取ユニット3及び糸掛ロボット4の側面図である。
図3は、紡糸引取機1の電気的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、引取ユニット3は、アスピレータ11と、規制ガイド12と、第1ゴデットローラ13と、第2ゴデットローラ14と、巻取部15とを有する。
【0038】
アスピレータ11は、引取ユニット3の前端部に配置されている。アスピレータ11は、引取ユニット3への糸掛けが行われる前に、紡糸装置2から紡出された複数の糸を予め吸引保持するように構成されている。
【0039】
規制ガイド12は、例えば、公知の櫛歯状の糸ガイドである。
図2に示すように、規制ガイド12は、アスピレータ11の下側に配置されている。規制ガイド12は、複数の糸Yを左右方向に並べて配置させるように構成されている。規制ガイド12は、複数の糸Yが掛けられたときに、互いに隣接する糸Yの間隔が所定の間隔に規定されるように、糸Yの左右方向への移動を規制する。規制ガイド12は、例えばエアシリンダ111(
図3参照)によって左右方向に移動駆動される。規制ガイド12は、糸YがボビンBに巻き取られるときの生産位置(
図9(d)の二点鎖線参照)と、糸掛けが行われるときの糸掛位置(
図9(d)の実線参照)との間で移動可能である。
【0040】
第1ゴデットローラ13は、軸方向が左右方向と略平行なローラである。
図2に示すように、第1ゴデットローラ13は、規制ガイド12の下側に配置されている。第1ゴデットローラ13は、不図示のモータによって回転駆動されることにより、糸Yを糸走行方向における下流側へ送る。
【0041】
第2ゴデットローラ14は、軸方向が左右方向と略平行なローラである。
図2に示すように、第2ゴデットローラ14は、第1ゴデットローラ13の上方且つ後方に配置されている。第2ゴデットローラ14は、不図示のモータによって回転駆動されることにより、糸Yを糸走行方向における下流側へ送る。第2ゴデットローラ14は、上方且つ後方に向かって斜めに延びたガイドレール16に移動可能に支持されている。第2ゴデットローラ14は、例えば、移動モータ112(
図3参照)、不図示のプーリ対、ベルト、エアー機器等によって、ガイドレール16に沿って移動可能に構成されている。これにより、第2ゴデットローラ14は、糸YがボビンBに巻き取られるときの生産位置(
図2の実線参照)と、第1ゴデットローラ13に近接して配置される、糸掛けが行われるときの糸掛位置(
図2の二点鎖線参照)との間で移動可能となっている。
【0042】
巻取部15は、複数の糸Yを複数のボビンBにそれぞれ巻き取ってパッケージPを形成するように構成されている。
図2に示すように、巻取部15は、第1ゴデットローラ13、第2ゴデットローラ14等の下側に配置されている。巻取部15は、フレーム20と、複数の支点ガイド21(本発明の糸掛対象部材)と、複数のトラバースガイド22と、ターレット23と、2本のボビンホルダ24と、コンタクトローラ25と、ユニット制御装置101とを備える。
【0043】
フレーム20は、例えば工場の床面に設置された、巻取部15の各構成要素が取り付けられ或いは収容される部材である。
図2に示すように、フレーム20は、床面に設置されて前後方向に延びたベース部20aと、ベース部20aの後端部に立設された後部20bと、後部20bの上側部分から前方に延びた上部20cとを有する。
【0044】
複数の支点ガイド21は、糸Yが各トラバースガイド22によって綾振りされる際の支点となるガイドである。
図2に示すように、複数の支点ガイド21は、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に配列されている。各支点ガイド21は、後側に開口した溝21a(
図5(a)、(b)参照)を有し、後側から溝21aに糸Yを挿入することによって糸Yを収容可能となっている。また、各支点ガイド21は、前後方向に開口した筒状の装着部21bを有する。装着部21bは、前後方向に延びたガイド支持体26に移動可能に装着されている(
図5(a)、(b)参照)。ガイド支持体26は、例えばフレーム20の上部20cに固定された、中空の筒状部材である。複数の支点ガイド21は、糸掛けが行われる際、後述する駆動部30によって、ガイド支持体26に沿って前後方向に移動駆動される。
【0045】
複数のトラバースガイド22は、複数の糸Yに対して個別に設けられ、前後方向に並べて配置されている。トラバースガイド22は、例えば公知の羽根式のガイドである。トラバースガイド22は、例えば不図示のモータによって前後方向に往復駆動される。これにより、糸Yが、支点ガイド21を支点として前後方向に綾振りされる。
【0046】
ターレット23は、軸方向が前後方向と略平行な円板状の部材である。ターレット23は、不図示のモータによって回転駆動される。2本のボビンホルダ24は、それぞれ、軸方向が前後方向と平行であり、ターレット23の上端部及び下端部に回転自在に支持されている。各ボビンホルダ24には、複数の糸Yに対して個別に設けられた複数のボビンBが前後方向(ボビン軸方向)に並べて装着され、回転可能に支持されている。2つのボビンホルダ24は、それぞれ、個別のモータ(不図示)によって回転駆動される。
【0047】
コンタクトローラ25は、軸方向が前後方向と略平行なローラであり、上側のボビンホルダ24のすぐ上方に配置されている。コンタクトローラ25は、上側のボビンホルダ24に支持された複数のパッケージPの表面に接触することで、巻取中のパッケージPの表面に接圧を付与して、パッケージPの形状を整える。
【0048】
ユニット制御装置101(
図3参照)は、CPUと、ROMと、RAM等を有し、エアシリンダ111、移動モータ112等を動作させるための制御を行うように構成されている。また、ユニット制御装置101は、作業者によって操作される操作部121(
図3参照)と、作業者に情報を報知する報知部122(
図3参照)とを有する。操作部121は、例えば不図示の操作ボタンを有する。報知部122は、例えば不図示のアラームランプを有する。ユニット制御装置101は、統括制御装置100(
図3参照)と電気的に接続され、統括制御装置100との通信を行う。
【0049】
以上の構成を有する巻取部15において、上側のボビンホルダ24が回転駆動されると、トラバースガイド22によって綾振りされた糸YがボビンBに巻き取られて、パッケージPが形成される。また、パッケージPが満巻きになった場合、ターレット23が回転させられることにより、2本のボビンホルダ24の上下の位置が入れ換わる。これにより、下側に位置していたボビンホルダ24が上側に移動し、このボビンホルダ24に装着されたボビンBに糸Yを巻き取ってパッケージPを形成できる。
【0050】
(駆動部)
複数の支点ガイド21を移動させる駆動部30について、
図4及び
図5(a)、(b)を参照しつつ説明する。
図4は、駆動部30を示す説明図である。
図5(a)、(b)は、支点ガイド21の移動を示す説明図である。
図4に示すように、駆動部30は、エアシリンダ31と、可動部材32とを有する。エアシリンダ31が、最も後側の支点ガイド21と連結された可動部材32を移動させることにより、複数の支点ガイド21が移動させられる。
【0051】
エアシリンダ31は、例えば、前後方向に延びたロッドレスシリンダである。エアシリンダ31の動作は、ユニット制御装置101(
図3参照)によって制御される。
図4に示すように、エアシリンダ31は、例えば、ガイド支持体26の内部に収容されている。エアシリンダ31は、シリンダ本体33と、シリンダ本体33に内蔵されており前後方向に移動可能なピストン34と、ピストン34と連結され且つシリンダ本体33の外側に配置されたスライダ35とを有する。
【0052】
シリンダ本体33は、前後方向に延びている。シリンダ本体33の内部には、シリンダ室33a及びシリンダ室33bが形成されている。シリンダ室33aは、ピストン34の前側に形成されている。シリンダ室33aは、ガイド支持体26の外側へ延びた配管36aと接続されている。シリンダ室33bは、ピストン34の後側に形成されている。シリンダ室33bは、ガイド支持体26の外側へ延びた配管36bと接続されている。配管36a及び配管36bは、例えば公知の4方向電磁弁(不図示)を介して、圧縮空気の供給ポート(不図示)又は排出ポート(不図示)と接続される。4方向電磁弁は、以下の第1状態と第2状態との間で駆動部30の状態を切換可能である。第1状態においては、配管36aと供給ポートとが接続され、且つ、配管36bと排出ポートとが接続されている。第2状態においては、配管36bと供給ポートとが接続され、且つ、配管36aと排出ポートとが接続されている。駆動部30の状態が第1状態であるとき、シリンダ室33aに圧縮空気が供給され且つシリンダ室33bから圧縮空気が排出される。これにより、ピストン34及びスライダ35が後側に移動する(
図4の実線参照)。逆に、駆動部30の状態が第2状態であるとき、ピストン34及びスライダ35は前側に移動する(
図4の二点鎖線参照)。スライダ35には、例えば不図示の磁石が固定されている。
【0053】
可動部材32は、ガイド支持体26に装着されており、ガイド支持体26に沿って前後方向(ボビン軸方向)に移動可能に構成されている。可動部材32には、最も後側の支点ガイド21(支点ガイド21R)が固定されている(
図5(a)、(b)参照)。可動部材32には、例えば不図示の磁石が固定されている。これにより、可動部材32は、磁力によってスライダ35と連結されている。可動部材32は、スライダ35が前後方向に移動したときに、磁力によってスライダ35に追従し、支点ガイド21R(複数の支点ガイド21のうち最も後側に配置されたもの)と共にボビン軸方向に移動する。
【0054】
また、上述した複数の支点ガイド21は、例えば不図示のベルトによって互いに連結されている。より詳細には、前後方向(ボビン軸方向)において隣接する2つの支点ガイド21がベルトによって連結されている。可動部材32及び支点ガイド21Rが後側へ移動すると、他の支点ガイド21は、上記ベルトによって引っ張られて後側へ移動する。支点ガイド21Rが可動範囲の後端まで移動したとき、複数の支点ガイド21は、ベルトの長さによって規定される間隔で略等間隔に並ぶ(
図5(a)参照)。このとき、複数の支点ガイド21は、対応するボビンBの真上に位置する(
図2参照)。このときの複数の支点ガイド21の位置を離隔位置(本発明の生産位置にも相当する)と呼ぶ。また、可動部材32及び支点ガイド21Rが前側へ移動すると、他の支点ガイド21の装着部21bが、支点ガイド21Rによって押される。これにより、複数の支点ガイド21は前側に集まるように移動する。このとき、複数の支点ガイド21は、離隔位置に位置しているときと比べて互いに近接している(間隔が狭くなっている)。このときの複数の支点ガイド21の位置を近接位置(本発明の糸掛位置にも相当する)と呼ぶ。以上のように、複数の支点ガイド21は、離隔位置と、離隔位置とは異なる近接位置との間で移動可能である。
【0055】
(糸掛実行部)
また、引取ユニット3には、支点ガイド21に掛けられた糸Yをトラバースガイド22及びボビンBに掛けるように構成された糸掛実行部40(
図6参照)が設けられている。以下、
図6及び
図7(a)、(b)を参照しつつ説明する。
図6は、糸掛実行部40の概略図である。
図7(a)、(b)は、後述する第1セパレータ42の説明図である。
図7(c)は、後述する第2セパレータ43の説明図であり、
図6のVII矢視図である。
【0056】
図6に示すように、糸掛実行部40は、例えば、糸収束ガイド41と、第1セパレータ42と、第2セパレータ43とを有する。糸収束ガイド41は、複数の糸Yを引取ユニット3の前端部に収束させるように構成されている。第1セパレータ42は、複数の支点ガイド21にそれぞれ掛けられた複数の糸Yを一時的に保持する。第2セパレータ43は、第1セパレータ42から糸Yを受け取り、糸YをボビンBに近接させる等の動作を実行する。
【0057】
糸収束ガイド41は、引取ユニット3の前端部に配置されている。
図1に示すように、糸収束ガイド41は、前後方向を揺動軸方向として揺動可能なアーム状の揺動部材44の先端に取り付けられている。揺動部材44は、例えばエアシリンダ113(
図3参照)によって揺動駆動される。これにより、糸収束ガイド41は、引取ユニット3の右端部に位置している初期位置(
図6の実線参照)と、初期位置よりも左側の受渡位置(
図6の破線参照)との間で揺動可能である。
【0058】
図7(a)、(b)に示すように、第1セパレータ42は、前後方向に延びたガイド部材51と、前後方向に並べてガイド部材51に移動可能に取り付けられた複数の保持部材52とを有する。ガイド部材51は、例えばエアシリンダ114(
図3参照)によって左右方向に移動可能に構成されている。ガイド部材51は、初期位置(
図6の実線参照)と、初期位置よりも左側の受渡位置(
図6の破線参照)との間で移動可能である。
図7(a)、(b)に示すように、保持部材52は、本体部52aと、糸Yの脱落を防止する突起52bとを有する。複数の保持部材52は、例えば不図示のベルトによって互いに連結され、エアシリンダ115(
図3参照)によって前後方向に移動駆動される。具体的には、複数の保持部材52は、その前後方向におけるピッチが複数のボビンBの前後方向におけるピッチと略等しい第1位置(
図7(a)参照)と、第1位置よりも前側に集合した第2位置(
図7(b)参照)との間で移動可能である。
【0059】
第2セパレータ43は、第1セパレータ42の左方に配置されている。第2セパレータ43は、前後方向に延び且つ前後方向を揺動軸中心として揺動可能なアーム状の揺動部材53と、揺動部材53の先端に固定された保持部材54とを有する。保持部材54の揺動部材53とは反対側の端部には、例えば、
図7(c)に示すように、糸Yが挿通される挿通空間54aが前後方向に並べて形成されている。また、挿通空間54aの入口部には、糸Yの脱落を防止する突起54b、54cが設けられている。揺動部材53及び保持部材54は、例えばエアシリンダ116(
図3参照)によって揺動駆動される。これにより、揺動部材53及び保持部材54は、所定の退避位置(
図6の実線参照)と、退避位置よりも右側の、第1セパレータ42から糸Yを受け取るための受取位置(
図6の破線参照)との間で移動可能である。また、図示は省略するが、第2セパレータ43は、第1セパレータ42から糸Yを受け取った後、保持部材54を受取位置から左方へ移動させることにより、往復移動しているトラバースガイド22に糸Yを捕捉させることが可能に構成されている。
【0060】
また、糸掛実行部40には、不図示の糸寄せ装置が設けられている。糸寄せ装置は、トラバースガイド22に捕捉されている糸Yを一時的にトラバースガイド22から外し、ボビンBの不図示のスリットへ案内するように構成されている(さらなる説明は省略する。なお、詳細については、例えば特開2017-154891号公報を参照されたい)。
【0061】
(糸掛ロボット)
図2に戻って、糸掛ロボット4の構成について説明する。糸掛ロボット4は、本体部61と、ロボットアーム62と、糸掛ユニット63と、糸掛制御装置102(
図3参照)とを備える。
【0062】
本体部61は、略直方体形状の部材である。本体部61は、移動モータ131(
図3参照)によって左右方向に移動駆動される。ロボットアーム62は、本体部61の下面に取り付けられている。ロボットアーム62は、複数のアーム62aと、アーム62a同士を連結する複数の関節部62bとを有する。各関節部62bには、アームモータ132(
図3参照)が内蔵されている。アームモータ132が駆動されると、アーム62aが関節部62bを中心に揺動する。糸掛ユニット63は、ロボットアーム62の先端に取り付けられている。糸掛ユニット63は、サクション64と、カッタ65と、糸掛補助部材66(
図5(b)参照)とを有する。サクション64は、糸掛け中に糸Yを吸引保持するように構成されている。カッタ65は、アスピレータ11から糸掛ユニット63に糸Yが受け渡されるとき(後述)に糸Yを切断するように構成されている。糸掛補助部材66は、複数の保持溝66a(
図5(b)参照)を有し、複数の糸Yを複数の保持溝66aによってそれぞれ保持する。
【0063】
糸掛制御装置102(
図3参照)は、CPUと、ROMと、RAM等を有し、移動モータ131、アームモータ132、糸掛ユニット63を制御するように構成されている。糸掛制御装置102は、糸掛けの対象となっている引取ユニット3の前に本体部61を移動させた後、糸掛ユニット63に糸Yを保持させながら、ロボットアーム62を制御して当該引取ユニット3への糸掛けを行わせる。糸掛制御装置102は、統括制御装置100(
図3参照)と電気的に接続され、統括制御装置100との通信を行う。
【0064】
次に、糸掛けに関する詳細な説明の前に、従来の紡糸引取機において発生しうる問題、及び、本実施形態における紡糸引取機1の詳細構成について説明する。
【0065】
(従来の問題)
従来は、例えばユニット制御装置101が支点ガイド21を移動させ始めてから所定時間が経過したときに支点ガイド21の移動が完了したと判断され、糸掛ロボット4による糸掛けが続行されていた。しかしながら、例えば、エアシリンダ31が正常に動作せずに支点ガイド21が正常に移動できない場合、支点ガイド21が近接位置或いは離隔位置に正常に位置できなくなる。支点ガイド21が近接位置に正常に位置していない場合、糸掛ロボット4による糸掛けに失敗するという問題が生じうる。また、支点ガイド21が近接位置から離隔位置に正常に戻らないとき、支点ガイド21が本来の位置からずれた状態で糸Yの巻き取りが開始されうる。すると、パッケージが正常に形成されず、巻き取られた糸Y及び巻き取りに費やされた時間が無駄になるおそれもある。
【0066】
なお、エアシリンダ31が正常に動作しなくなる原因の一つとして、例えば、糸くずがシリンダ本体33とスライダ35との間に詰まることによる負荷の増大が挙げられる。糸くずには、例えば、走行中の糸Yの一部が支点ガイド21等のガイド部材との擦過によって粉状となったものが含まれる。このような糸くずは、例えばガイド支持体26の内部空間にも入り込んでくることがあるため、糸くずの詰まりを完全に防ぐことは難しい。或いは別の原因として、圧縮空気の供給源がエアシリンダ31を含む多数のエアシリンダに共通に接続されている場合、複数のエアシリンダが同時に動作したときに圧縮空気の圧力不足が生じることが挙げられる。このような場合にも、エアシリンダが正常に動作しにくくなる。そこで、本実施形態では、複数の支点ガイド21(糸掛対象部材)が正常に移動しない場合に生じうる不具合を抑制するために、紡糸引取機1が以下のように構成されている。より具体的には、複数の支点ガイド21の近傍に、後述する位置情報検知部70が配置されている。
【0067】
(紡糸引取機の詳細構成)
図5(a)、(b)に戻って、紡糸引取機1の詳細構成(より具体的には、支点ガイド21の近傍の構成)について説明する。ガイド支持体26には、上述したように、可動部材32が前後方向に移動可能に装着されている。可動部材32の左端部は、例えば、支点ガイド21の左端よりも左側に突出している。このような可動部材32の近傍に、支点ガイド21の現在位置に関する情報を検知する位置情報検知部70(本発明の検知部)が設けられている。言い換えると、位置情報検知部70は、支点ガイド21の移動に関する情報を検知する。位置情報検知部70は、支点ガイド21が目標位置に位置しているか否かに関する情報を検知する第1リミットスイッチ71及び第2リミットスイッチ72(いずれも本発明のリミットスイッチに相当)を有する。第1リミットスイッチ71及び第2リミットスイッチ72は、例えば、公知の接触式のマイクロスイッチが内蔵されたスイッチ機器である。マイクロスイッチの駆動機構には、公知のプランジャ、ヒンジレバーなど様々なタイプのものが適用可能である。或いは、第1リミットスイッチ71及び第2リミットスイッチ72(リミットスイッチ)は、公知の非接触式の近接センサであってもよい。リミットスイッチには、非接触式の近接センサとして、電磁誘導や、ホール素子により金属体の接近を検知するタイプのものも適用可能である。第1リミットスイッチ71及び第2リミットスイッチ72は、ユニット制御装置101と電気的に接続されている。なお、以下では、第1リミットスイッチ71及び第2リミットスイッチ72が接触式のリミットスイッチであるものとして説明を進める。
【0068】
第1リミットスイッチ71は、可動部材32及び支点ガイド21R(複数の支点ガイド21のうち最も後側に配置されたもの)が近接位置に正常に位置しているか否か検知するように構成されている。
図5(a)、(b)に示すように、第1リミットスイッチ71は、可動部材32の左端部よりも前側に配置されている。第1リミットスイッチ71は、複数の支点ガイド21よりも左側に配置されている。このため、支点ガイド21は、ボビン軸方向に移動しているときに第1リミットスイッチ71と干渉しない。第1リミットスイッチ71は、可動部材32が近接位置に移動したときに、可動部材32の左端部が接触するように配置されている。可動部材32が第1リミットスイッチ71に接触しているとき、第1リミットスイッチ71はオンになる。可動部材32が第1リミットスイッチ71に接触していないとき、第1リミットスイッチ71はオフになる。これにより、第1リミットスイッチ71は、可動部材32の近接位置への移動が正常か否かに関する情報を検知できる。第1リミットスイッチ71に関して、近接位置が本発明の目標位置に相当する。
【0069】
第2リミットスイッチ72は、可動部材32及び支点ガイド21Rが離隔位置に正常に位置しているか否か検知するように構成されている。
図5(a)、(b)に示すように、第2リミットスイッチ72は、可動部材32の左端部よりも後側に配置されている。第2リミットスイッチ72は、左右方向において第1リミットスイッチ71と略同じ位置に配置されている。また、第2リミットスイッチ72は、左右方向において可動部材32の左端部と重なるように配置されている。第2リミットスイッチ72は、可動部材32が離隔位置に移動したときに、可動部材32の左端部が接触するように配置されている。可動部材32が第2リミットスイッチ72に接触しているとき、第2リミットスイッチ72はオンになる。可動部材32が第2リミットスイッチ72に接触していないとき、第2リミットスイッチ72はオフになる。これにより、第2リミットスイッチ72は、可動部材32の離隔位置への移動が正常か否かに関する情報を検知できる。第2リミットスイッチ72に関して、離隔位置が本発明の目標位置に相当する。
【0070】
(糸掛け時における支点ガイドの移動に関する判断等)
次に、引取ユニット3への糸掛け時における、支点ガイド21の移動が正常か異常かの判断及び当該判断に基づく対応について、糸掛けの具体的な手順と併せて、
図8~
図11を参照しつつ説明する。
図8は、糸掛けの手順を示すフローチャートである。
図9(a)~
図11は、糸掛けの手順を示す説明図である。なお、
図9(d)は、
図9(c)のD矢視図である。統括制御装置100とユニット制御装置101と糸掛制御装置102とが互いに連携し、引取ユニット3の各部及び糸掛ロボット4の各部を制御することによって、糸掛けが行われる。本実施形態では、統括制御装置100とユニット制御装置101と糸掛制御装置102とを合わせたものが、本発明の制御部に相当する。
【0071】
初期状態において、複数の糸Yがアスピレータ11に吸引保持されている(
図9(a)参照)。この状態において糸掛けが開始される(S101)。具体的には、糸掛けに必要な動作を引取ユニット3に行わせるための信号が、統括制御装置100から、糸掛けの対象となっている引取ユニット3のユニット制御装置101に送信される。また、当該引取ユニット3の前に糸掛ロボット4の本体部61を移動させるための信号が、統括制御装置100から糸掛制御装置102に送信される。糸掛制御装置102は、当該信号に従って移動モータ131を制御し、本体部61を左右方向に移動させる。
【0072】
次に、ユニット制御装置101が、引取ユニット3の各部を制御し、糸掛けの対象となる各部材を生産位置から糸掛位置へ移動させ始める(S102)。具体的には、移動モータ112によって第2ゴデットローラ14が糸掛位置に移動し始め、エアシリンダ31によって複数の支点ガイド21が近接位置(糸掛位置)に移動し始める。
【0073】
次に、ユニット制御装置101は、支点ガイド21を移動させ始めてから所定時間内に支点ガイド21が近接位置(糸掛位置)に正常に移動したか否か判断する。具体的には、次のステップS103において、可動部材32が第1リミットスイッチ71に接触して第1リミットスイッチ71がオンになったとき(S103:Yes)、ユニット制御装置101は、支点ガイド21が近接位置に正常に移動したと判断する。一方、第1リミットスイッチ71がオフのとき(S103:No)、ユニット制御装置101は、所定時間が経過するまでの間(S104:No)、ステップS103に戻る。
【0074】
支点ガイド21を近接位置に移動させ始めてから、第1リミットスイッチ71がオフのまま所定時間が経過したとき(S104:Yes)、ユニット制御装置101は、支点ガイド21の近接位置への移動に異常が発生したと判断する。これに伴い、糸掛けが停止させられる。具体的には、ユニット制御装置101は、引取ユニット3の各部の動作を停止させるとともに、支点ガイド21の移動に異常が生じたことを示す信号を統括制御装置100に送信する。統括制御装置100は、糸掛けを停止させるための信号を糸掛制御装置102に送信する。また、ユニット制御装置101は、報知部122を制御し、支点ガイド21の移動に異常が生じたことを示す情報を報知させる(S105)。作業者は、報知部122によって報知された情報に基づいて引取ユニット3の状態を確認する。また、作業者は、必要に応じて引取ユニット3のメンテナンスを行う。
【0075】
一方、所定時間が経過する前に第1リミットスイッチ71がオンになったとき(S103:Yes)、ユニット制御装置101は、支点ガイド21の移動が正常であることを示す信号を統括制御装置100に直ちに送信する。統括制御装置100は、ユニット制御装置101から受信した信号に基づき、糸掛ロボット4の動作を続行させるための信号を糸掛制御装置102に送信する。糸掛制御装置102は、当該信号に従って糸掛ロボット4を動作させる。具体的には、アスピレータ11によって吸引保持されている糸Yの近傍にサクション64が位置している状態で、糸Yがカッタ65によって切断される。これにより、糸Yがアスピレータ11から糸掛ユニット63に受け渡される(S106。
図9(b)参照)。このように、支点ガイド21の移動が正常であると判断された場合にのみ、糸掛ロボット4の動作が続行させられる。
【0076】
次のステップS107においては、糸掛ロボット4によって、規制ガイド12、第1ゴデットローラ13及び第2ゴデットローラ14への糸掛けが行われる。より具体的には、糸掛制御装置102は、ロボットアーム62によって糸掛ユニット63の先端部を規制ガイド12よりも下方、後方、且つ右側に移動させる(
図9(c)、及び、
図9(d)の二点鎖線参照)。その後、ユニット制御装置101は、規制ガイド12を生産位置(
図9(d)の二点鎖線参照)から糸掛位置(
図9(d)の実線参照)に移動させる。次に、糸掛制御装置102は、糸掛ユニット63を前方に移動させ、複数の糸Yを規制ガイド12に掛ける。次に、糸掛制御装置102は、糸掛ユニット63の先端部を第1ゴデットローラ13の軸方向における基端側へ移動させる(
図9(e)参照)。それとともに、ユニット制御装置101は、規制ガイド12を糸掛位置から生産位置に移動させる(
図9(e)参照)。その後、糸掛制御装置102は、糸掛ユニット63を移動させ、第1ゴデットローラ13及び第2ゴデットローラ14に順次糸Yを掛ける(
図9(f)参照)。
【0077】
次のステップS108において、糸掛ロボット4によって、複数の支点ガイド21への糸掛けが行われる。より具体的には、糸掛ユニット63の糸掛補助部材66(
図5(b)参照)によって、複数の糸Yが互いに離隔した状態で保持される。次に、糸掛制御装置102は、ロボットアーム62を制御して糸掛ユニット63を後側の所定位置に移動させる(
図5(b)の二点鎖線参照)。さらに、糸掛制御装置102は、糸掛ユニット63を左斜め前方へ移動させる(
図5(b)の矢印参照)。これにより、複数の糸Yが、対応する支点ガイド21に掛けられる(
図10(a)参照)。
【0078】
次のステップS109において、ユニット制御装置101は、第2ゴデットローラ14及び複数の支点ガイド21の生産位置への移動を開始させる。次に、ユニット制御装置101は、支点ガイド21を移動させ始めてから所定時間内に支点ガイド21が離隔位置(生産位置)に正常に戻った否か判断する。具体的には、次のステップS110において、可動部材32が第2リミットスイッチ72に接触して第2リミットスイッチ72がオンになったとき(S110:Yes)、ユニット制御装置101は、支点ガイド21が離隔位置に正常に移動したと判断する。一方、第2リミットスイッチ72がオフのとき(S110:No)、ユニット制御装置101は、所定時間が経過するまでの間(S111:No)、ステップS110に戻る。
【0079】
支点ガイド21を離隔位置に移動させ始めてから、第2リミットスイッチ72がオフのまま所定時間が経過したとき(S111:Yes)、ユニット制御装置101は、支点ガイド21の離隔位置への移動に異常が発生したと判断する。これに伴い、ステップS105と同様に糸掛けが停止させられる。また、ユニット制御装置101は、報知部122を制御し、支点ガイド21の移動に異常が生じたことを示す情報を報知させる(S112)。
【0080】
一方、所定時間が経過する前に第2リミットスイッチ72がオンになったとき(S110:Yes。
図10(b)参照)、ユニット制御装置101は、支点ガイド21の移動が正常であることを示す信号を統括制御装置100に送信する。また、ユニット制御装置101は、糸収束ガイド41を初期位置(
図6の実線参照)から受渡位置(
図6の破線参照)に移動させる。また、ユニット制御装置101は、第1セパレータ42の複数の保持部材52を第1位置から第2位置に移動させる(
図7(b)及び
図10(b)参照)。
【0081】
統括制御装置100は、ユニット制御装置101から受信した信号に基づき、糸掛ロボット4の動作を続行させるための信号を糸掛制御装置102に送信する。糸掛制御装置102は、当該信号に従って糸掛ロボット4を動作させる。具体的には、糸掛制御装置102は、ロボットアーム62によって糸掛ユニット63を移動させ、糸収束ガイド41に複数の糸Yを掛ける(S113)。これにより、各糸Yが、対応する保持部材52のすぐ後側に配置される(
図7(b)及び
図10(b)参照)。
【0082】
次のステップS114において、ボビンBへの糸掛けが行われる。具体的には、ユニット制御装置101は、保持部材52を第1位置に戻し(
図7(a)及び
図11参照)、第2セパレータ43を受取位置(
図6の破線参照)へ移動させる。さらに、ユニット制御装置101は、第1セパレータ42を受渡位置(
図6の破線参照)に移動させた後、保持部材52を再び第2位置に移動させる。これにより、第1セパレータ42から第2セパレータ43に糸Yが受け渡される(図示省略)。その後、ユニット制御装置101は、第2セパレータ43の保持部材54を受取位置から左方に揺動させる(図示省略)。このとき、糸Yがトラバースガイド22に捕捉される。さらに、ユニット制御装置101は、糸寄せ装置(不図示)に、糸Yをトラバースガイド22から一時的に外させ、ボビンBのスリットに案内させる。これにより、ボビンBに糸Yが掛けられる。その後、ユニット制御装置101は、糸寄せ装置に、糸Yがトラバースガイド22に捕捉される位置に糸Yを戻させる。糸Yがトラバースガイド22に再び捕捉されたとき、糸掛けが終了して、引取ユニット3による糸Yの巻き取りが開始される(S115)。
【0083】
以上のように、支点ガイド21の移動が正常であると判断された場合には糸掛けを行い、糸掛対象部材の移動が異常であると判断された場合には糸掛けを中止等することができる。したがって、支点ガイド21が正常に移動しない場合に生じうる不具合を抑制できる。
【0084】
また、支点ガイド21の移動が正常であると判断された場合にのみ、糸掛ロボット4の動作が続行される。したがって、支点ガイド21の移動に異常が生じた場合に、糸掛ロボット4によって糸掛けが意図せず行われることを確実に防止できる。
【0085】
また、支点ガイド21の移動に異常が生じたと判断された場合に、異常の発生を示す情報が報知部122によって報知される。したがって、支点ガイド21の移動に異常が生じた場合に、迅速な対処を作業者に促すことができる。
【0086】
また、位置情報検知部70は、支点ガイド21の位置に関する情報を検知する。したがって、このような情報を利用することにより、支点ガイド21の移動が正常か否か容易に判断できる。
【0087】
また、一般的に安価であるリミットスイッチを位置情報検知部70として用いることにより、繊維機械の製造コストの増大を抑えつつ、糸掛対象部材が目標位置に到達したか否か容易に判断できる。
【0088】
また、駆動部30が有するエアシリンダ31は、例えば電気モータと比べて一般的に推力が小さいため、例えば糸くずがわずかに詰まっただけでも支点ガイド21が正常に移動しなくなりやすい懸念がある。このような構成において、位置情報検知部70による検知結果に基づき、支点ガイド21の移動が正常か否か判断することは有効である。
【0089】
また、複数の支点ガイド21(特に、最も後側に配置された支点ガイド21R)は、離隔位置と近接位置との間で長い距離を移動する必要がある。このため、駆動部30の動作が不調である場合に、目標位置に正常に到達できなくなる懸念が大きい。このような構成において、位置情報検知部70による検知結果に基づき、支点ガイド21の移動が正常か否か判断することは有効である。
【0090】
また、糸Yがボビンに巻き取られる際に、複数の支点ガイド21が離隔位置からずれていると、複数の支点ガイド21に掛かった糸YがボビンBに正常に巻き取られず、ボビンBに巻き取られた糸が無駄になるおそれがある。このような構成において、位置情報検知部70の第2リミットスイッチ72による検知結果に基づき、複数の支点ガイド21の離隔位置への移動が正常か否か判断することは有効である。
【0091】
また、糸Yが複数の支点ガイド21に掛けられる際に、複数の支点ガイド21が近接位置からずれていると、複数の支点ガイド21への糸掛けが正常に行われないおそれがある。このような構成において、位置情報検知部70の第1リミットスイッチ71による検知結果に基づき、複数の支点ガイド21の近接位置への移動が正常か否か判断することは有効である。
【0092】
次に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0093】
(1)前記実施形態において、ユニット制御装置101は、複数の支点ガイド21が目標位置(離隔位置或いは近接位置)に正常に移動したとき、直ちに糸掛ロボット4の動作を続行させるものとしたが、これには限られない。例えば、ユニット制御装置101は、上述した所定時間が経過するまで待った後に、複数の支点ガイド21が目標位置に正常に移動したと判断しても良い。
【0094】
(2)位置情報検知部70は、第1リミットスイッチ71及び第2リミットスイッチ72の両方を有しているものとしたが、これには限られない。位置情報検知部70は、第1リミットスイッチ71及び第2リミットスイッチ72のうち一方のみを有していても良い。
【0095】
(3)位置情報検知部70は、第1リミットスイッチ71及び第2リミットスイッチ72の代わりに、例えば光学式の位置センサを有していても良い。或いは、位置情報検知部70は、例えば、画像を撮影する不図示のカメラを有していても良い。ユニット制御装置101は、当該画像を用いて画像認識を行い、画像認識の結果に基づいて、複数の支点ガイド21が目標位置に正常に移動したか否か判断しても良い。
【0096】
(4)前記までの実施形態において、駆動部30がエアシリンダ31を有するものとしたが、これには限られない。例えば
図12に示すように、巻取部15Aは、駆動部30の代わりに、回転軸81a(本発明の可動部)が設けられた電動モータ81を含む駆動部30Aを有していても良い。駆動部30Aは、例えば、ボールねじ83とナット84とを有する公知のボールねじ機構である。ボールねじ83は、例えばカップリング82によって回転軸81aと連結され、前後方向に延びている。ナット84は、ボールねじ83と螺合されている。ナット84にはスライダ85が固定されている。スライダ85と、上述した可動部材32とが、磁力によって連結されている。また、巻取部15Aは、上述した位置情報検知部70を有していても良いが、これには限られない。巻取部15Aは、位置情報検知部70に加えて、或いは位置情報検知部70の代わりに、例えばロータリーエンコーダ86(本発明の検知部)を有していても良い。言い換えると、電動モータ81がサーボモータであっても良い。ロータリーエンコーダ86は、電動モータ81の回転軸81aの回転角度の情報(言い換えると、回転軸81aの位置に関する情報)を検知するように構成されている。ユニット制御装置101は、支点ガイド21が所定の目標距離を移動するように電動モータ81を制御する。ユニット制御装置101は、ロータリーエンコーダ86による検出結果を利用して、支点ガイド21の移動距離を算出しても良い。そして、ユニット制御装置101は、算出された移動距離を目標距離と比較することによって、支点ガイド21が目標位置に正常に到達したかどうか判断しても良い。
【0097】
ここで、電動モータ81の回転軸81aと固定部(ハウジング等)との間に糸くず等が詰まると、電動モータ81に過剰な負荷がかかって電動モータ81が故障するおそれがある。この点、当該変形例では、支点ガイド21の移動が異常であると判断された場合に電動モータ81の動作を停止させることで、電動モータ81に過剰な負荷がかかることを抑制できる。また、回転軸81aの回転角度(言い換えると、回転軸81aの位置)に関する情報を利用することによって、支点ガイド21の位置情報を間接的に取得できる。これにより、支点ガイド21の位置に関する情報を直接取得できない場合でも、支点ガイド21の移動が正常か異常か判断できる。なお、ロータリーエンコーダ86の代わりに、不図示のポテンショメータが設けられていても良い。また、回転軸81aを有する電動モータ81の代わりに、略直線的に移動可能な可動部(不図示)を有する不図示のリニアモータが設けられていても良い。この場合、ロータリーエンコーダ86の代わりに不図示のリニアエンコーダが設けられていても良い。リニアエンコーダにより、リニアモータの可動部の位置に関する情報が検知されても良い。
【0098】
(5)上述した(4)のさらなる変形例として、例えば
図13に示すように、巻取部15Bの駆動部30Bは、電動モータとして、パルス信号によって駆動されるステッピングモータ91を有していても良い。ステッピングモータ91は、例えば、ユニット制御装置101と電気的に接続されたドライバ92(本発明の検知部)によって駆動されても良い。ドライバ92は、ステッピングモータ91の脱調を検知可能に構成されていても良い。すなわち、ステッピングモータ91の回転軸91aにかかる負荷トルクが大きくなると、回転軸91aの回転が鈍くなり、支点ガイド21がスムーズに移動しなくなるおそれがある。また、一般的に、ステッピングモータ91の回転軸91aにかかる負荷トルクが大きくなると、モータに流れるモータ電流が増大する。そこで、ドライバ92は、例えば、ステッピングモータ91に流れているモータ電流を正常時のモータ電流と比較することによって脱調を検知しても良い。ユニット制御装置101は、ドライバ92による検知結果(支点ガイド21の移動に関する検知結果)に基づいて、支点ガイド21の移動が正常か異常か判断しても良い。具体例として、ユニット制御装置101は、支点ガイド21が移動すべき目標距離の情報をドライバ92に送信しても良い。ドライバ92は、目標距離の情報に基づいて、必要な数のパルス信号をステッピングモータ91に送信する。そして、ユニット制御装置101は、例えば脱調が所定回数以上生じた場合に、支点ガイド21の移動に異常が生じたと判断しても良い。この場合、ユニット制御装置101は、支点ガイド21を移動させ始めてから所定時間が経過するよりも前に、支点ガイド21の移動に異常が生じたと判断しても良い。或いは、ユニット制御装置101は、ドライバ92からステッピングモータ91に最後のパルス信号が送られたときに脱調が検知された場合に、支点ガイド21の移動に異常が生じたと判断しても良い。或いは、ユニット制御装置101は、モータ電流の上限値を記憶しており、ステッピングモータ91に流れているモータ電流が上限値を超えたときに、支点ガイド21の移動に異常が生じたと直ちに判断しても良い。
【0099】
このようにすることで、支点ガイド21の位置に関する情報を取得できない場合でも、支点ガイド21の移動が正常か異常か判断できる。なお、上述したようにドライバ92が脱調を検知しても良いが、これには限られない。例えば、ユニット制御装置101が正常時のモータ電流の情報を予め記憶しており、実際のモータ電流を正常時のモータ電流と比較することにより脱調を検知しても良い。この場合、ユニット制御装置101が本発明の検知部に相当する。
【0100】
(6)上述したように、リミットスイッチは、例えば非接触式の近接センサであっても良い。以下、
図14(a)、(b)を参照しつつ具体的に説明する。
図14(a)、(b)に示すように、巻取部15Cの位置情報検知部70Cは、上述した第1リミットスイッチ71及び第2リミットスイッチ72の代わりに、第1リミットスイッチ71C及び第2リミットスイッチ72Cを有する。第1リミットスイッチ71C及び第2リミットスイッチ72Cは、例えば電磁誘導を利用して金属体等の導電性部材の接近を検知する公知の磁気式の近接センサであっても良いが、これには限られない。また、可動部材32の例えば下端部に、検知片として、前後方向に延びた金属板73が固定されていても良い。第1リミットスイッチ71C及び第2リミットスイッチ72Cは、金属板73と干渉しないように、金属板73の移動範囲の外側に配置されている。第1リミットスイッチ71C及び第2リミットスイッチ72Cは、例えば、
図14(a)、(b)に示すように、金属板73よりも下側に配置されていても良い。つまり、例えば、複数の支点ガイド21が近接位置に位置しているときに金属板73が第1リミットスイッチ71Cの真上に位置するように、第1リミットスイッチ71Cが配置されていても良い(
図14(a)参照)。複数の支点ガイド21が離隔位置に位置しているときに金属板73が第2リミットスイッチ72Cの真上に位置するように、第2リミットスイッチ72Cが配置されていても良い(
図14(b)参照)。ユニット制御装置101は、このような位置情報検知部70Cによる検知結果に基づいて、支点ガイド21の移動が正常か異常か判断しても良い。
【0101】
(7)支点ガイド21の移動に異常が生じたとき、報知部122による報知は必ずしも行われなくても良い。ユニット制御装置101は、支点ガイド21の移動に異常が生じたとき、例えば、単に引取ユニット3の動作を停止させても良い。
【0102】
(8)支点ガイド21の移動に異常が生じたとき、必ずしも直ちに糸掛けが中止されなくても良い。例えば、ユニット制御装置101は、支点ガイド21の移動に異常が生じたとき、支点ガイド21を元の位置(離隔位置及び近接位置のうち一方)に戻し、その後、再び目標位置(離隔位置及び近接位置のうち他方)へ移動させ始めても良い。
【0103】
(9)上述した実施形態において、位置情報検知部70等の検知部は、支点ガイド21の移動に関する情報を検知するものとしたが、これには限られない。糸Yが掛けられる他の糸掛対象部材(規制ガイド12、第2ゴデットローラ14、保持部材52等)の移動に関する情報を検知する検知部が設けられていても良い。
【0104】
(10)紡糸引取機1は、必ずしも糸掛ロボット4を備えていなくても良い。紡糸引取機1は、作業者によって糸掛けの少なくとも一部が行われるように構成されていても良い。
【0105】
(11)上述したエアシリンダ31は、必ずしもガイド支持体26の内部に収容されていなくても良い。また、スライダ35と可動部材32は、磁石以外の部材(例えば、ネジ等の連結具)によって互いに連結されていても良い。
【0106】
(12)前記までの実施形態において、ユニット制御装置101と糸掛制御装置102は、統括制御装置100を介して間接的に通信するが、これには限られない。ユニット制御装置101と糸掛制御装置102とが、直接通信しても良い。
【0107】
(13)前記までの実施形態において、統括制御装置100とユニット制御装置101と糸掛制御装置102とを合わせたものが本発明の制御部に相当するものとしたが、これには限られない。例えば、上述したユニット制御装置101及び糸掛制御装置102は、必ずしも設けられていなくても良い。統括制御装置100が、引取ユニット3及び糸掛ロボット4を制御しても良い。この場合、統括制御装置100が本発明の制御部に相当する。
【0108】
(14)上述した紡糸引取機1は、複数の引取ユニット3を備えるものとしたが、これには限られない。引取ユニット3は、1つのみ設けられていても良い。
【0109】
(15)前記までの実施形態において、糸掛けが開始される前の初期状態において、複数の糸Yがアスピレータ11に吸引保持されているものとしたが、これには限られない。例えば、紡糸装置2の近傍に、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを保持しつつ下方へ降ろす不図示の糸降ろし装置(例えば特開2017-82376号公報を参照)が設けられていても良い。糸掛ロボット4は、糸掛け時に、糸降ろし装置から糸Yを直接受け取っても良い。
【0110】
(16)糸掛対象部材の移動に関する情報を検知する検知部は、紡糸引取機1に限らず、少なくとも1本の糸を処理する様々な繊維機械に設けられていても良い。例えば、特開2016-223034号公報に記載された仮撚加工機(繊維機械)において、糸が掛けられる糸掛対象部材が生産位置と糸掛位置との間で移動可能に構成されていても良い。そして、仮撚加工機に検知部が設けられていても良い。
【符号の説明】
【0111】
1 紡糸引取機(繊維機械)
4 糸掛ロボット(自動糸掛装置)
21 支点ガイド(糸掛対象部材)
30 駆動部
31 エアシリンダ
70 位置情報検知部(検知部)
71 第1リミットスイッチ(リミットスイッチ)
72 第2リミットスイッチ(リミットスイッチ)
81 電動モータ
81a 回転軸(可動部)
86 ロータリーエンコーダ(検知部)
91 ステッピングモータ
92 ドライバ(検知部)
100 統括制御装置(制御部)
101 ユニット制御装置(制御部)
102 糸掛制御装置(制御部)
122 報知部
B ボビン
Y 糸