(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240808BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20240808BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
H01L21/66 X
G01M11/00 T
G01N21/64 Z
(21)【出願番号】P 2020104552
(22)【出願日】2020-06-17
(62)【分割の表示】P 2020521619の分割
【原出願日】2020-01-29
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019062971
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】中村 共則
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010834(JP,A)
【文献】特開2010-118668(JP,A)
【文献】特開昭63-250835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 33/00
G01M 11/00
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を検査する検査装置であって、
前記対象物に照射される励起光を生成する励起光源と、
前記対象物からの蛍光を、基準波長よりも長い波長の蛍光及び前記基準波長よりも短い波長の蛍光に分離する光学素子と、
前記基準波長よりも長い波長の蛍光を撮像する第1の撮像部と、
前記基準波長よりも短い波長の蛍光であって前記対象物の正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光を撮像する第2の撮像部と、
前記第1の撮像部によって取得された第1の蛍光画像及び前記第2の撮像部によって取得された第2の蛍光画像に基づいて、前記対象物の良否を判定する判定部と、を備え
、
前記判定部は、少なくとも前記第1の蛍光画像に含まれる輝点に基づいて前記対象物の良否を判定する、検査装置。
【請求項2】
前記判定部は、少なくとも前記第1の蛍光画像に含まれる輝点数を導出して前記対象物の良否を判定する、請求項
1記載の検査装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記輝点数が一定数以上含まれているか否かを判定し、一定数以上の輝点が含まれていない対象物に形成された発光素子を良品、一定数以上の輝点が含まれている対象物に形成された発光素子を不良品と判定する、請求項
2記載の検査装置。
【請求項4】
対象物に形成された各発光素子の良否判定結果が表示されるモニタを更に備え、
前記判定部は、輝点の箇所を特定し、前記輝点の位置をモニタに表示させるように出力する、請求項1~
3のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項5】
前記光学素子はダイクロイックミラーである、請求項1~
4のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項6】
対象物を検査する検査方法であって、
前記対象物に励起光を照射する励起光照射ステップと、
前記対象物からの蛍光を、基準波長よりも長い波長の蛍光及び前記基準波長よりも短い波長の蛍光に分離する光学素子によって分離された、前記基準波長よりも長い波長の蛍光を撮像する第1の撮像ステップと、
前記光学素子によって分離された、前記基準波長よりも短い波長の蛍光であって対象物の正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光を撮像する第2の撮像ステップと、
前記第1の撮像ステップにおいて取得された第1の蛍光画像及び前記第2の撮像ステップにおいて取得された第2の蛍光画像に基づいて、前記対象物の良否を判定する判定ステップと、を備え
、
前記判定ステップでは、少なくとも前記第1の蛍光画像に含まれる輝点に基づいて前記対象物の良否を判定する、検査方法。
【請求項7】
前記判定ステップでは、少なくとも前記第1の蛍光画像に含まれる輝点数を導出して前記対象物の良否を判定する、請求項
6記載の検査方法。
【請求項8】
前記判定ステップでは、前記輝点数が一定数以上含まれているか否かを判定し、一定数以上の輝点が含まれていない対象物に形成された発光素子を良品、一定数以上の輝点が含まれている対象物に形成された発光素子を不良品と判定する、請求項
7記載の検査方法。
【請求項9】
前記判定ステップでは、輝点の箇所を特定し、前記輝点の位置を、対象物に形成された各発光素子の良否判定結果が表示されるモニタに表示させるように出力する、請求項
6~
8のいずれか一項記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハ上に形成された発光素子群の良・不良を判定する手法として、発光素子が発するフォトルミネッセンスを観察し、該フォトルミネッセンスの輝度に基づいて発光素子の良否判定を行う手法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された検査方法では、発光素子からの蛍光を分割して、複数のカメラそれぞれにおいて互いに異なる波長の蛍光を撮像し、それぞれの観察輝度値の比率に基づいて、観察対象部位から発せられる光の推定波長を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載されたような検査方法は、正常発光スペクトルの蛍光にのみ着目している。しかしながら、一部の発光素子では正常発光スペクトルよりも長波長側に発光スポットが生じる場合がある。上述した検査方法においては、このような長波長側の蛍光を考慮して発光素子の良否判定を行うことができず、発光素子の良否判定を高精度に行うことができない場合がある。
【0006】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、発光素子の良否判定を高精度に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る検査装置は、複数の発光素子が形成された対象物を検査する検査装置であって、対象物に照射される励起光を生成する励起光源と、発光素子からの蛍光のうち、第1の波長よりも長い波長の蛍光を撮像する第1の撮像部と、第1の撮像部によって取得された第1の蛍光画像に基づいて、発光素子の良否を判定する判定部と、を備え、第1の波長は、発光素子の正常蛍光スペクトルのピーク波長に該正常蛍光スペクトルの半値全幅を加えた波長である。
【0008】
本発明の一態様に係る検査装置によれば、発光素子の正常蛍光スペクトルのピーク波長に正常蛍光スペクトルの半値全幅を加えた波長の蛍光画像、すなわち発光素子の正常蛍光スペクトルに含まれ得ない長波長側の蛍光画像に基づいて、発光素子の良否判定が行われる。一部の発光素子では正常蛍光スペクトルよりも長波長側に蛍光スポットが生じることがあるところ、このような長波長側の蛍光画像に基づいて発光素子の良否判定が行われることによって、上述した長波長側の蛍光スポットを適切に検出し、該蛍光スポットを有する発光素子を適切に不良と判定することができる。すなわち、本発明の一態様に係る検査装置によれば、長波長側の蛍光を考慮することにより発光素子の良否判定を高精度に行うことができる。
【0009】
検査装置は、発光素子からの蛍光を、第1の波長よりも長い波長の蛍光及び第2の波長よりも短い波長の蛍光に分離する光学素子と、第2の波長よりも短い波長の蛍光であって発光素子の正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光を撮像する第2の撮像部と、を更に備えていてもよい。このような構成によれば、長波長側の蛍光、及び、正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光の双方がタイムロスなく撮像される。このことで、各発光素子について、長波長側の異常発光だけでなく、正常蛍光スペクトルにおける発光についても適切に検出することができ、各発光素子の発光状態をより詳細に取得することができる。
【0010】
第1の波長と第2の波長とは同じ波長であり、光学素子はダイクロイックミラーであってもよい。このような構成によれば、上述した長波長側の蛍光及び正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光を簡易且つ確実に撮像することができる。
【0011】
判定部は、第1の蛍光画像及び第2の撮像部によって取得された第2の蛍光画像に基づいて、発光素子の良否を判定してもよい。これにより、長波長側の蛍光を考慮して発光素子の良否判定を行うことに加えて、正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光に基づき発光素子の良否判定を行うことができる。このことで、長波長側の異常(蛍光スポット)及び正常蛍光スペクトルにおける発光状態の双方を考慮して、より高精度に発光素子の良否判定を行うことができる。
【0012】
判定部は、第2の蛍光画像に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、該判定の後に、該判定において良と判定された発光素子について、第1の蛍光画像に基づいて良否を判定してもよい。このような構成によれば、正常蛍光スペクトルにおける発光状態が異常である発光素子を適切に不良と判定した後に、さらに、正常蛍光スペクトルにおける発光状態が正常であっても長波長側の異常(蛍光スポット)を有する発光素子を不良と判定することができ、長波長側の発光状態及び正常蛍光スペクトルにおける発光状態の双方を考慮して、不良である発光素子を漏れなく特定することができる。また、第2の蛍光画像に基づく良否判定において良と判定された発光素子についてのみ、第1の蛍光画像に基づく良否判定が行われるため、長波長側の異常に係る判定に要する時間を短縮することができる。
【0013】
判定部は、第2の蛍光画像に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、該判定の後に、該判定において不良と判定された発光素子について、第1の蛍光画像に基づいて良否を判定してもよい。このような構成によれば、例えば、正常蛍光スペクトルにおける発光状態に基づいて不良と判定された発光素子であっても、長波長側の異常(蛍光スポット)を有さない発光素子については良と判定することができ、深刻な異常(長波長側の蛍光スポット)を有さない発光素子が不良と判定されることを回避することができる。また、第2の蛍光画像に基づく良否判定において不良と判定された発光素子についてのみ、第1の蛍光画像に基づく良否判定が行われるため、長波長側の異常に係る判定に要する時間を短縮することができる。
【0014】
判定部は、第2の蛍光画像の輝度に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、第1の蛍光画像に含まれる輝点に基づいて発光素子の良否を判定してもよい。このような構成によれば、正常蛍光スペクトルにおける蛍光の輝度と、長波長側の蛍光スポットの情報(異常蛍光スポットの有無や数等)とを考慮して、より高精度に発光素子の良否判定を行うことができる。
【0015】
判定部は、各発光素子の良否判定結果を出力してもよい。これにより、各発光素子の良否判定結果を利用して、発光効率に影響を与えている発光素子を特定し、発光効率を向上させるための対処を行うことができる。
【0016】
判定部は、発光素子内における不良個所を特定し、該不良個所の位置を出力してもよい。例えば、撮像結果に基づいて長波長側の蛍光スポットの位置を特定して、該蛍光スポットの位置を不良個所として出力することにより、不良個所の情報に基づいて、発光効率を向上させるための対処を行うことができる。
【0017】
本発明の一態様に係る検査方法は、複数の発光素子が形成された対象物を検査する検査方法であって、対象物に励起光を照射する励起光照射ステップと、発光素子からの蛍光のうち、第1の波長よりも長い波長の蛍光を撮像する第1の撮像ステップと、第1の撮像ステップにおいて取得された第1の蛍光画像に基づいて、発光素子の良否を判定する判定ステップと、を備え、第1の波長は、発光素子の正常蛍光スペクトルのピーク波長に該正常蛍光スペクトルの半値全幅を加えた波長である。
【0018】
検査方法は、発光素子からの蛍光を、第1の波長よりも長い波長の蛍光及び第2の波長よりも短い波長の蛍光に分離する分離ステップと、第2の波長よりも短い波長の蛍光であって発光素子の正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光を撮像する第2の撮像ステップと、を更に備えていてもよい。
【0019】
第1の波長と第2の波長とは同じ波長であってもよい。
【0020】
判定ステップでは、第1の蛍光画像及び第2の撮像ステップにおいて取得された第2の蛍光画像に基づいて、発光素子の良否を判定してもよい。
【0021】
判定ステップでは、第2の蛍光画像に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、該判定の後に、該判定において良と判定された発光素子について、第1の蛍光画像に基づいて良否を判定してもよい。
【0022】
判定ステップでは、第2の蛍光画像に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、該判定の後に、該判定において不良と判定された発光素子について、第1の蛍光画像に基づいて良否を判定してもよい。
【0023】
判定ステップでは、第2の蛍光画像の輝度に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、第1の蛍光画像に含まれる輝点に基づいて発光素子の良否を判定してもよい。
【0024】
判定ステップでは、各発光素子の良否判定結果を出力してもよい。
【0025】
判定ステップでは、発光素子内における不良個所を特定し、該不良個所の位置を出力してもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、発光素子の良否判定を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る検査装置の構成図である。
【
図2】発光スペクトル及びダイクロイックミラーの特性を説明する図である。
【
図3】評価指数による各発光素子のソート結果を示す図である。
【
図4】検査装置が実行する検査方法のフローチャートである。
【
図5】異常発光状態の発光素子の蛍光画像であり、(a)は本来発光波長の蛍光画像、(b)は長波長側の蛍光画像である。
【
図6】異常発光状態の輝度分布と正常発光状態の輝度分布とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る検査装置1の構成図である。検査装置1は、サンプルS(対象物)を検査する装置である。サンプルSは、例えば、ウェハ上に複数の発光素子が形成された半導体デバイスである。発光素子は、例えばLED、ミニLED、μLED、SLD素子、レーザ素子、垂直型レーザ素子(VCSEL)等である。検査装置1は、サンプルSにおいて形成されている複数の発光素子について、フォトルミネッセンス(具体的には蛍光)を観察することにより、各発光素子の良否判定を行う。発光素子の良否判定は、例えばプロービングによって(すなわち電気的特性に基づいて)行うことが考えられる。しかしながら、例えばμLED等の微細なLEDについては、針をあてて計測を行うプロービングが物理的に困難である。この点、本実施形態に係るフォトルミネッセンスに基づく発光素子の良否判定方法は、蛍光画像を取得することによって良否判定を行うことができるので、物理的な制約にとらわれることなく、大量の発光素子を効率的に良否判定することができる。
【0030】
図1に示されるように、検査装置1は、チャック11と、XYステージ12と、励起光源20と、光学系30と、ダイクロイックミラー40と、対物レンズ51と、Zステージ52と、ダイクロイックミラー60(光学素子)と、結像レンズ71,72と、カメラ81(第1の撮像部),82(第2の撮像部)と、暗箱90と、制御装置100(判定部)と、モニタ110と、を備えている。暗箱90は、上述した構成のうち制御装置100及びモニタ110以外の構成を収容しており、収容した各構成に外部の光の影響が及ぼされることを回避するために設けられている。なお、暗箱90に収容される各構成は、カメラ81,82において撮像される画像の質の向上(画質の向上及び画像の位置ずれ防止)を図るべく除振台の上に搭載されていてもよい。
【0031】
チャック11は、サンプルSを保持する保持部材である。チャック11は、例えばサンプルSのウェハを真空吸着することにより、サンプルSを保持する。XYステージ12は、サンプルSを保持しているチャック11をXY方向(前後・左右方向)、すなわちチャック11におけるサンプルSの載置面に沿った方向に移動させるステージである。XYステージ12は、制御装置100の制御に応じて、複数の発光素子のそれぞれが順次、励起光の照射領域とされるように、チャック11をXY方向に移動させる。なお、検査装置1は、更に回転ステージ(Θステージ。不図示)を備えていてもよい。このような回転ステージは、例えばXYステージ12の上且つチャック11の下に設けられていてもよいし、XYステージ12と一体的に設けられていてもよい。回転ステージは、サンプルSの縦横の位置を精度よく合わせるためのものである。回転ステージが設けられることによって、位置合わせ等の時間を短縮し、データ処理のトータル時間を短縮することができる。
【0032】
励起光源20は、サンプルSに照射される励起光を生成し、該励起光をサンプルSに照射する光源である。励起光源20は、サンプルSの発光素子を励起させる波長を含む光を生成可能な光源であればよく、例えばLED、レーザ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、D2ランプ、プラズマ光源等である。なお、検査装置1は、励起光源20から出射される励起光の輝度を一定に保つべく、照明輝度をモニタするセンサをさらに備えていてもよい。
【0033】
光学系30は、光ファイバケーブル31と、導光レンズ32と、を含んで構成されている。光ファイバケーブル31は、励起光源20に接続された導光用の光ファイバケーブルである。光ファイバケーブル31としては、例えば、偏波保存ファイバ又はシングルモードファイバ等を用いることができる。導光レンズ32は、例えば単独又は複合の凸レンズであり、光ファイバケーブル31を介して到達した励起光をダイクロイックミラー40方向に導く。なお、励起光源20から出射される励起光の波長が経時的に変化することを防ぐために、検査装置1は、励起光源20とダイクロイックミラー40との間にバンドパスフィルタ(不図示)を備えていてもよい。
【0034】
ダイクロイックミラー40は、特殊な光学素材を用いて作成されたミラーであり、特定の波長の光を反射すると共に、その他の波長の光を透過する。具体的には、ダイクロイックミラー40は、励起光を対物レンズ51方向に反射すると共に、励起光とは異なる波長帯の光である発光素子からのフォトルミネッセンス(詳細には蛍光)をダイクロイックミラー60方向に透過するように構成されている。なお、
図2に示されるように、励起光の正常発光スペクトルFSの領域は、蛍光の正常発光スペクトル(正常蛍光スペクトル)ESの領域よりも低波長側である。すなわち、ダイクロイックミラー40は、低波長帯の光である励起光を対物レンズ51方向に反射すると共に、励起光と比べて高波長帯の光である蛍光をダイクロイックミラー60方向に透過する。
【0035】
対物レンズ51は、サンプルSを観察するための構成であり、ダイクロイックミラー40によって導かれた励起光をサンプルSに集光する。Zステージ52は、対物レンズ51をZ方向(上下方向)、すなわちチャック11におけるサンプルSの載置面に交差する方向に移動させてフォーカス調整を行う。
【0036】
ダイクロイックミラー60は、特殊な光学素材を用いて作成されたミラーであり、特定の波長の光を反射すると共に、その他の波長の光を透過する。ダイクロイックミラー60は、発光素子からの蛍光を、第1の波長よりも長い波長の蛍光及び第2の波長よりも短い波長の蛍光に分離する。本実施形態においては、第1の波長と第2の波長とは同じ波長(基準波長BW)であるとして説明する。すなわち、ダイクロイックミラー60は、発光素子からの蛍光を、基準波長BWよりも長い波長の蛍光と、基準波長BWよりも短い波長の蛍光とに分離する。
【0037】
図2は、発光スペクトル及びダイクロイックミラー60,40の特性を説明する図である。
図2において、横軸は波長を示しており、左縦軸は発光輝度を示しており、右縦軸は透過率を示している。
図2に示されるように、上述した基準波長BWは、発光素子の正常蛍光スペクトルESのピーク波長PWに、正常蛍光スペクトルESの半値全幅WHを加えた波長とされている。そして、
図2に示されるダイクロイックミラー60の特性D2からも明らかなように、ダイクロイックミラー60は、基準波長BWよりも短い波長の蛍光を透過せずに(反射し)、基準波長BWよりも長い波長の蛍光を透過するように構成されている。また、
図2に示されるダイクロイックミラー40の特性D1からも明らかなように、ダイクロイックミラー40は、励起光の正常発光スペクトルFSの波長帯の光を反射し、正常蛍光スペクトルESの波長帯の光を概ね透過している。ダイクロイックミラー60,40の特性D2,D1から明らかなように、ダイクロイックミラー60が反射する短い波長の蛍光は正常蛍光スペクトルESに含まれる波長の蛍光(本来発光波長の蛍光)であり、ダイクロイックミラー60が透過する長い波長の蛍光は正常蛍光スペクトルESに含まれない波長の蛍光(長波長側の蛍光)である。なお、本来発光波長は、例えば予め発光素子の仕様から既知である波長であってもよく、発光素子からの蛍光を分光器により実測した強度のピークとなる波長であってもよい。
【0038】
なお、詳細には、ダイクロイックミラー60は、基準波長BWよりも短い波長の蛍光の一部を透過し、また、基準波長BWよりも長い波長の蛍光の一部を反射する(
図2参照)と考えられるが、概ね、基準波長BWよりも短い波長の蛍光を反射すると共に基準波長BWよりも長い波長の蛍光を透過することから、以下では単に、「ダイクロイックミラー60は基準波長BWよりも短い波長の蛍光を反射し、基準波長BWよりも長い波長の蛍光を透過する」として説明する。基準波長BWよりも長い波長の蛍光(長波長側の蛍光)は、ダイクロイックミラー60を経て結像レンズ71に達する。基準波長BWよりも短い波長の蛍光(本来発光波長の蛍光)は、ダイクロイックミラー60を経て結像レンズ72に達する。
【0039】
結像レンズ71は、長波長側の蛍光を結像させ、該蛍光をカメラ81に導くレンズである。カメラ81は、サンプルSからの蛍光を撮像する撮像部である。より詳細には、カメラ81は、発光素子からの蛍光のうち基準波長BWよりも長い波長の蛍光(長波長側の蛍光)を撮像する。カメラ81は、結像レンズ71によって結像された画像を検出することによって長波長側の蛍光を撮像する。カメラ81は、撮像結果である長波長側の蛍光画像を制御装置100に出力する。カメラ81は、例えばCCDやMOS等のエリアイメージセンサである。また、カメラ81は、ラインセンサやTDI(Time Delay Integration)センサによって構成されていてもよい。なお、検査装置1は、長波長側の余計な発光を防ぐために、ダイクロイックミラー60とカメラ81との間にバンドパスフィルタをさらに備えていてもよい。
【0040】
結像レンズ72は、本来発光波長の蛍光を結像させ、該蛍光をカメラ82に導くレンズである。カメラ82は、サンプルSからの蛍光を撮像する撮像部である。より詳細には、カメラ82は、発光素子からの蛍光のうち基準波長BWよりも短い波長の蛍光であって発光素子の正常蛍光スペクトルES(
図2参照)に含まれる波長の蛍光(本来発光波長の蛍光)を撮像する。カメラ82は、結像レンズ72によって結像された画像を検出することによって本来発光波長の蛍光を撮像する。カメラ82は、撮像結果である本来発光波長の蛍光画像を制御装置100に出力する。カメラ82は、例えばCCDやMOS等のエリアイメージセンサである。また、カメラ82は、ラインセンサやTDIセンサによって構成されていてもよい。なお、検査装置1は、短波長側の蛍光の計測の際ダイクロイックミラー60の表面反射に伴う長波長側の蛍光の混入を防ぐために、ダイクロイックミラー60とカメラ82との間にバンドパスフィルタをさらに備えていてもよい。
【0041】
制御装置100は、XYステージ12、励起光源20、Zステージ52、及びカメラ81,82を制御する。具体的には、制御装置100は、XYステージ12を制御することにより励起光の照射領域(サンプルSにおける照射領域)を調整する。制御装置100は、Zステージ52を制御することにより励起光に係るフォーカス調整を行う。制御装置100は、励起光源20を制御することにより励起光の出射調整並びに励起光の波長及び振幅等の調整を行う。制御装置100は、カメラ81,82を制御することにより蛍光画像の取得に係る調整を行う。また、制御装置100は、カメラ81,82によって撮像された蛍光画像に基づいて、サンプルSの発光素子の良否判定を行う(詳細は後述)。なお、制御装置100は、コンピュータであって、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部を備えて構成されている。かかる制御装置100としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)などが挙げられる。制御装置100は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより機能する。モニタ110は、計測結果である蛍光画像を表示する表示装置である。
【0042】
次に、発光素子の良否判定に係る制御装置100の機能について詳細に説明する。
【0043】
制御装置100は、カメラ81によって取得された長波長側の蛍光画像(第1の蛍光画像)、及び、カメラ82によって取得された本来発光波長の蛍光画像(第2の蛍光画像)に基づいて、発光素子の良否を判定する。制御装置100は、例えば、カメラ82によって取得された本来発光波長の蛍光画像に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、該判定の後に、該判定において良と判定された発光素子について、カメラ81によって取得された長波長側の蛍光画像に基づいて良否を判定する。
【0044】
制御装置100は、まず、蛍光画像に基づいて発光素子の位置を特定し、各発光素子の発光エリアを特定する。発光素子の位置の特定は、例えば蛍光画像内の位置とXYステージ12の位置の換算によって行われる。なお、制御装置100は、予めサンプルS全体のパターン像を取得しておき、パターン像ないし蛍光画像から、発光素子の位置を認識(特定)してもよい。そして、制御装置100は、本来発光波長の蛍光画像に基づいて各発光素子の発光エリア内の平均輝度を導出し、各発光素子についてアドレス位置と輝度(発光エリア内の平均輝度)とを紐づける。制御装置100は、各アドレス(各発光素子)について、絶対輝度と相対輝度とから評価指数を導出する。相対輝度とは、導出対象の発光素子と該発光素子の周辺の発光素子とを含む発光素子群の平均輝度に対する導出対象の発光素子の輝度比率である。制御装置100は、例えば、絶対輝度と相対輝度との積から評価指数を導出する。或いは、制御装置100は、絶対輝度と相対輝度のn乗(nは自然数。例えば2)との積から評価指数を導出する。制御装置100は、同一の蛍光画像に含まれる各発光素子それぞれについて上述した評価指数の導出を行う。また、制御装置100は、照射領域を変更することにより新たな蛍光画像(本来発光波長の蛍光画像)を取得し、該蛍光画像に含まれる各発光素子それぞれについて評価指数の導出を行う。制御装置100は、全ての発光素子について評価指数を導出すると、該評価指数の高い順に発光素子のソート(並び替え)を行う。
図3は、評価指数による発光素子のソート結果を示す図である。
図3において縦軸は輝度の大きさに応じた評価指数を示しており、横軸は各発光素子の順位を示している。
図3に示されるように、評価指数は、ある点(変化点)を境に急激に小さくなっている。制御装置100は、例えばこのような変化点を閾値として、評価指数が該閾値以上である発光素子を良品(良ピクセル)、該閾値よりも小さい発光素子を不良品(不良ピクセル)と判定してもよい。なお、閾値は、例えば、事前に閾値決定用の参照半導体デバイスを用いて、蛍光(フォトルミネッセンス)に基づく発光素子の良否判定結果と、プロービングに基づく良否判定結果(電気的特性に基づく良否判定結果)とを比較して決定されていてもよい。
【0045】
また、制御装置100は、長波長側の蛍光画像に基づいて各発光素子の発光エリア内における輝点(蛍光スポット)を検出し、各発光素子についてアドレス位置と輝点数とを紐づける。このような、正常発光スペクトルよりも長波長側の輝点(発光スポット)は、異常発光箇所である。そして、制御装置100は、上述した本来発光波長の蛍光画像に基づく良否判定において良品であると判定された発光素子について、長波長側の蛍光画像に一定数以上の輝点が含まれているか否かを判定し、一定数以上の輝点が含まれていない発光素子を良品(良ピクセル)、一定数以上の輝点が含まれている発光素子を不良品(不良ピクセル)と判定する。このような例では、本来発光波長の蛍光画像に基づいて良品であると判定された発光素子であっても、長波長側の蛍光画像に基づいて不良品であると判定される場合がある。
【0046】
なお、制御装置100は、カメラ82によって取得された本来発光波長の蛍光画像に基づいて発光素子の良品判定を行った後に、該判定において不良と判定された発光素子について、カメラ81によって取得された長波長側の蛍光画像に基づいて良否を判定してもよい。また、制御装置100は、全ての発光素子について、長波長側の蛍光画像に基づく良否判定を行ってもよい。このように、制御装置100は、本来発光波長の蛍光画像に基づいて良と判定された発光素子についてのみ長波長側の蛍光画像に基づいて良否判定を行ってもよいし、本来発光波長の蛍光画像に基づいて不良と判定された発光素子についてのみ長波長側の蛍光画像に基づいて良否判定を行ってもよいし、本来発光波長の蛍光画像に基づく良否判定結果によらずに全ての発光素子について長波長側の蛍光画像に基づく良否判定を行ってもよい。
【0047】
制御装置100は、各発光素子の良否判定結果を出力する。当該良否判定結果は、例えばモニタ110に表示される。また、制御装置100は、発光素子内における不良個所(例えば長波長側の輝点の箇所)を特定し、該不良個所の位置を出力(モニタ110に表示されるように出力)してもよい。
【0048】
次に、
図4を参照して、検査装置1が実行する検査方法(発光素子の良否判定)の処理手順について説明する。
図4は、検査装置1が実行する検査方法のフローチャートである。
【0049】
図4に示されるように、検査装置1では、最初に、サンプルSにおける照射領域が決定される(ステップS1)。具体的には、制御装置100は、XYステージ12を制御することにより励起光の照射領域を決定する。
【0050】
つづいて、制御装置100の制御に応じて、励起光源20がサンプルSの照射領域に励起光を照射する(ステップS2。励起光照射ステップ)。励起光源20は、サンプルSの発光素子を励起させる波長を含む光を生成して出射する。励起光は光学系30の光ファイバケーブル31及び導光レンズ32を経てダイクロイックミラー40に到達し、ダイクロイックミラー40において反射され、対物レンズ51を経てサンプルSの照射領域に集光される。サンプルSの発光素子は励起光に応じて蛍光を発する。該蛍光はダイクロイックミラー40を透過して、ダイクロイックミラー60において本来発光波長の蛍光と、長波長側の蛍光とに分離される(分離ステップ)。本来発光波長の蛍光は、結像レンズ72によって結像されカメラ82に導かれる。長波長側の蛍光は、結像レンズ71によって結像されカメラ81に導かれる。
【0051】
カメラ81は長波長側の蛍光を撮像する(ステップS3。第1の撮像ステップ)。また、カメラ82は本来発光波長の蛍光を撮像する(ステップS3。第2の撮像ステップ)。カメラ81,82は、撮像結果である蛍光画像を制御装置100に出力する。
【0052】
つづいて、制御装置100は、蛍光画像に基づいて発光素子の位置を特定し(ステップS4)、各発光素子における発光エリアを特定する。そして、制御装置100は、本来発光波長の蛍光画像に基づいて各発光素子の発光エリア内の輝度(平均輝度)を導出する(ステップS5)。また、制御装置100は、長波長側の蛍光画像に基づいて各発光素子の発光エリア内における輝点(蛍光スポット)を検出し、輝点数を導出する(ステップS6)。そして、制御装置100は、各発光素子について、アドレス位置と輝度(平均輝度)とを紐づけると共に、アドレス位置と輝点数とを紐づける(ステップS7)。
【0053】
つづいて、制御装置100は、各発光素子について、絶対輝度と相対輝度とから評価指数を導出する(ステップS8)。制御装置100は、例えば、絶対輝度と相対輝度との積から評価指数を導出する。或いは、制御装置100は、絶対輝度と相対輝度のn乗(nは自然数。例えば2)との積から評価指数を導出する。
【0054】
つづいて、制御装置100は、サンプルSの全ての発光素子(判定対象の発光素子)について上述した評価指数を導出済みか否か、判定する(ステップS9)。ステップS9において導出済みでないと判定した場合には、制御装置100は、評価指数を導出する前の発光素子が含まれるように新たな照射領域を決定する(ステップS10)。その後、再度ステップS2以降の処理が行われる。
【0055】
ステップS9において全ての発光素子について評価指数を導出済みであると判定した場合には、制御装置100は、各発光素子の評価指数と所定の閾値とを比較することにより、発光素子の良否を判定する(ステップS11。判定ステップ)。具体的には、制御装置100は、評価指数の高い順に発光素子のソート(並び替え)を行い、評価指数が閾値以上である発光素子を良品(良ピクセル)、該閾値よりも小さい発光素子を不良品(不良ピクセル)と判定する。
【0056】
最後に、制御装置100は、長波長側の蛍光画像に含まれる輝点数と所定の閾値とを比較することにより、発光素子の良否を判定する(ステップS12。判定ステップ)。具体的には、制御装置100は、長波長側の蛍光画像に一定数以上の輝点が含まれていない発光素子を良品(良ピクセル)、一定数以上の輝点が含まれている発光素子を不良品(不良ピクセル)と判定する。制御装置100は、各発光素子の良否判定結果を出力してもよい。また、制御装置100は、発光素子内における不良個所(例えば長波長側の輝点の箇所)を特定し、該不良個所の位置を出力(モニタ110に表示されるように出力)してもよい。
【0057】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係る検査装置1は、複数の発光素子が形成されたサンプルSを検査する検査装置であって、サンプルSに照射される励起光を生成する励起光源20と、発光素子からの蛍光のうち、基準波長BW(
図2参照)よりも長い波長の蛍光を撮像するカメラ81と、カメラ81によって取得された長波長側の蛍光画像(第1の蛍光画像)に基づいて、発光素子の良否を判定する制御装置100と、を備え、基準波長BWは、発光素子の正常蛍光スペクトルESのピーク波長PWに正常蛍光スペクトルESの半値全幅WHを加えた波長である(
図2参照)。
【0059】
検査装置1によれば、発光素子の正常蛍光スペクトルESのピーク波長PWに正常蛍光スペクトルESの半値全幅WHを加えた波長の蛍光画像、すなわち発光素子の正常蛍光スペクトルESに含まれ得ない長波長側の蛍光画像に基づいて、発光素子の良否判定が行われる。
図5は異常発光状態の発光素子L1の蛍光画像であり、(a)は本来発光波長の蛍光画像、(b)は長波長側の蛍光画像である。
図5(b)に示されるように、異常発光状態の発光素子L1では、正常蛍光スペクトルよりも長波長側に蛍光スポットFPが生じることがある。
図6は異常発光状態の発光素子の輝度部分布と正常発光状態の発光素子の輝度分布とを示す図である。
図6において縦軸は輝度を示しており、横軸は累積比率を示している。
図6に示されるように、異常発光状態の発光素子は、正常発光状態の発光素子と比べて輝度が小さくなる。このように、長波長側に蛍光スポットが生じている異常発光状態の発光素子は、輝度が小さいため、不良品と判定される必要がある。この点、本実施形態の検査装置1のように、長波長側の蛍光画像に基づいて発光素子の良否判定が行われることによって、上述した長波長側の蛍光スポットを適切に検出し、該蛍光スポットを有する発光素子を適切に不良と判定することができる。すなわち、検査装置1によれば、長波長側の蛍光を考慮することにより発光素子の良否判定を高精度に行うことができる。
【0060】
検査装置1は、発光素子からの蛍光を、長波長側の蛍光及び本来発光波長の蛍光に分離するダイクロイックミラー60と、本来発光波長の蛍光であって発光素子の正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光を撮像するカメラ82と、を備えている。このような構成によれば、長波長側の蛍光、及び、正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光の双方がタイムロスなく撮像される。このことで、各発光素子について、長波長側の異常発光だけでなく、正常蛍光スペクトルにおける発光についても適切に検出することができ、各発光素子の発光状態をより詳細に取得することができる。そして、ダイクロイックミラー60によって蛍光を分離することにより、上述した長波長側の蛍光及び正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光を簡易且つ確実に撮像することができる。
【0061】
制御装置100は、長波長側の蛍光画像及びカメラ82によって取得された本来発光波長の蛍光画像(第2の蛍光画像)に基づいて、発光素子の良否を判定する。これにより、長波長側の蛍光を考慮して発光素子の良否判定を行うことに加えて、正常蛍光スペクトルに含まれる波長の蛍光に基づき発光素子の良否判定を行うことができる。このことで、長波長側の異常(蛍光スポット)及び正常蛍光スペクトルにおける発光状態の双方を考慮して、より高精度に発光素子の良否判定を行うことができる。
【0062】
制御装置100は、本来発光波長の蛍光画像に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、該判定の後に、該判定において良と判定された発光素子について、長波長側の蛍光画像に基づいて良否を判定してもよい。このような構成によれば、正常蛍光スペクトルにおける発光状態が異常である発光素子を適切に不良と判定した後に、さらに、正常蛍光スペクトルにおける発光状態が正常であっても長波長側の異常(蛍光スポット)を有する発光素子を不良と判定することができ、長波長側の発光状態及び正常蛍光スペクトルにおける発光状態の双方を考慮して、不良である発光素子を漏れなく特定することができる。また、本来発光波長の蛍光画像に基づく良否判定において良と判定された発光素子についてのみ、長波長側の蛍光画像に基づく良否判定が行われるため、長波長側の異常に係る判定に要する時間を短縮することができる。
【0063】
制御装置100は、本来発光波長の蛍光画像に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、該判定の後に、該判定において不良と判定された発光素子について、長波長側の蛍光画像に基づいて良否を判定してもよい。このような構成によれば、例えば、正常蛍光スペクトルにおける発光状態に基づいて不良と判定された発光素子であっても、長波長側の異常(蛍光スポット)を有さない発光素子については良と判定することができ、深刻な異常(長波長側の蛍光スポット)を有さない発光素子が不良と判定されることを回避することができる。また、本来発光波長の蛍光画像に基づく良否判定において不良と判定された発光素子についてのみ、長波長側の蛍光画像に基づく良否判定が行われるため、長波長側の異常に係る判定に要する時間を短縮することができる。
【0064】
制御装置100は、本来発光波長の蛍光画像の輝度に基づいて発光素子の良否を判定すると共に、長波長側の蛍光画像に含まれる輝点に基づいて発光素子の良否を判定する。このような構成によれば、正常蛍光スペクトルにおける蛍光の輝度と、長波長側の蛍光スポットの情報(異常蛍光スポットの有無や数等)とを考慮して、より高精度に発光素子の良否判定を行うことができる。
【0065】
制御装置100は、各発光素子の良否判定結果を出力する。これにより、各発光素子の良否判定結果を利用して、発光効率に影響を与えている発光素子を特定し、発光効率を向上させるための対処を行うことができる。
【0066】
制御装置100は、発光素子内における不良個所を特定し、該不良個所の位置を出力する。例えば、撮像結果に基づいて、発光素子内における、長波長側の蛍光スポットの位置を特定して、該蛍光スポットの位置を不良個所として出力することにより、不良個所の情報に基づいて、発光効率を向上させるための対処を行うことができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、第1の波長と第2の波長とは同一の波長(基準波長BW)であるとして説明したがこれに限定されず互いに異なる波長であってもよい。
【0068】
また、長波長側の蛍光及び本来発光波長の蛍光に基づいて発光素子の良否を判定するとして説明したがこれに限定されず、制御装置100(判定部)は、カメラ81によって撮像された、長波長側の蛍光のみに基づいて発光素子の良否を判定してもよい。この場合においては、
図7に示されるように、検査装置1Aは、1台のカメラ81と該カメラ81に対応する結像レンズ71を有していればよく、本来発光波長の蛍光を取得するための構成(
図1に示されるダイクロイックミラー60、カメラ82、及び結像レンズ72)を有していなくてもよい。
【0069】
また、長波長側の蛍光に基づく発光素子の良否判定においては、蛍光画像に一定数以上の輝点が含まれているか否かを判定するとして説明したがこれに限定されず、単に蛍光画像に1つ以上の輝点が含まれているか否かに応じて発光素子の良否判定を行ってもよい。
【0070】
また、上述した実施形態ではダイクロイックミラー60は
図2に示されるように、波長に対する透過率(反射率)変化が急峻なものを用いて説明がなされたが、本発明はこのような特性のダイクロイックミラーを用いることに限定されない。例えば波長に対する透過率(反射率)が約100nm程度の幅をもって緩やかに変化するようなダイクロイックミラーを用いてもよい。このような、ダイクロイックミラーでは、特定の波長帯では波長の変化に応じて蛍光の透過率(反射率)が変化し、該特定の波長帯以外の波長帯(特定の波長帯よりも低波長側及び特定の波長帯よりも高波長側)では波長の変化に関わらず蛍光の透過率(反射率)が一定となる。波長の変化に応じて蛍光の透過率(反射率)が変化する波長帯の幅を「エッジ変移幅」とした場合、このようなダイクロイックミラーのエッジ変移幅は、例えば発光素子の正常蛍光スペクトルの半値全幅よりも広くされてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1,1A…検査装置、20…励起光源、60…ダイクロイックミラー(光学素子)、81…カメラ(第1の撮像部)、82…カメラ(第2の撮像部)、100…制御装置(判定部)。