IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本自動車部品総合研究所の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特許-距離推定装置 図1
  • 特許-距離推定装置 図2
  • 特許-距離推定装置 図3
  • 特許-距離推定装置 図4
  • 特許-距離推定装置 図5
  • 特許-距離推定装置 図6
  • 特許-距離推定装置 図7
  • 特許-距離推定装置 図8
  • 特許-距離推定装置 図9
  • 特許-距離推定装置 図10
  • 特許-距離推定装置 図11
  • 特許-距離推定装置 図12
  • 特許-距離推定装置 図13
  • 特許-距離推定装置 図14
  • 特許-距離推定装置 図15
  • 特許-距離推定装置 図16
  • 特許-距離推定装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】距離推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20240808BHJP
   G01S 3/30 20060101ALI20240808BHJP
   B60R 25/24 20130101ALN20240808BHJP
   E05B 49/00 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G01S3/30
B60R25/24
E05B49/00 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020110669
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022022557
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 直一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一朗
(72)【発明者】
【氏名】三治 健一郎
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018126219(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0196580(US,A1)
【文献】特表2020-510567(JP,A)
【文献】特開2014-071569(JP,A)
【文献】特開2016-021099(JP,A)
【文献】特開2018-048921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 - 1/82
G01S 3/80 - 3/86
G01S 5/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G01C 3/00 - 3/32
E05B 49/00
B60R 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末(21)と車両(100)との距離を推定する距離推定装置であって、
前記携帯端末は、
前記車両に電波を送信する端末送信部(37)と、
前記端末送信部を制御する端末制御部(39)と、を含み、
前記車両に搭載される車載装置(20)は、
前記車両に搭載され、前記携帯端末からの電波を受信する受信部(29b,30b)を備え、前記受信部が受信した前記携帯端末からの電波の受信信号強度を用いて前記携帯端末が位置する方向を特定する方向特定部(29,30,40,41,51~54)と、
前記携帯端末からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度以外の情報に基づいて、前記車両における自身の搭載位置から前記携帯端末までの距離を測定する距離測定部(31)と、
前記方向特定部が特定した方向と前記距離測定部の前記搭載位置に応じた、前記車両の縁から前記距離測定部までのオフセット量を用いて、前記距離測定部が測定した距離を、前記車両の縁から前記携帯端末までの距離に補正する補正部(34)と、を含む距離推定装置。
【請求項2】
前記方向特定部は、前記受信部が受信した電波の受信信号強度を用いて前記車両の右側から送信された電波か、または前記車両の左側から送信された電波かを特定し、
前記補正部は、特定した方向が右側の場合は、前記車両の右側の縁から前記搭載位置までの距離を用いて、測定した距離を補正し、特定した方向が左側の場合は、前記車両の左側の縁から前記搭載位置までの距離を用いて測定した距離を補正する請求項1に記載の距離推定装置。
【請求項3】
前記方向特定部は、
前記車両の左側および前記車両の右側にそれぞれ設けられ、前記携帯端末からの電波を受信する受信部(29b,30b)と、
前記受信部が受信した電波の受信信号強度を算出する算出部(29c,30c)と、
前記算出部が算出した前記車両の左側の前記受信部の受信信号強度と前記車両の右側の前記受信部の受信信号強度とを比較して、受信信号強度が大きい受信部が右側の場合は右側から送信された電波とし、受信信号強度が大きい受信部が左側の場合は左側から送信された電波とする特定部(32)と、を含む請求項2に記載の距離推定装置。
【請求項4】
前記方向特定部は、
前記車両の周辺部に少なくとも4つ周方向に間隔をあけて設けられ、前記携帯端末からの電波を受信する受信部(29b,30b)と、
前記受信部が受信した電波の受信信号強度を算出する算出部(29c,30c)と、
前記算出部が算出した4つの前記受信部が受信した受信信号強度を互いに比較して、前記車両の右側、左側、前側および後側のいずれかの方向から送信された電波かを特定する特定部(32)と、を含む請求項2に記載の距離推定装置。
【請求項5】
前記距離測定部は、前記携帯端末からの電波を受信し、受信した電波の前記携帯端末からの到達時間に基づいて、前記車両における搭載位置から前記携帯端末までの距離を測定する請求項1~3のいずれか1つに記載の距離推定装置。
【請求項6】
前記車載装置は、前記車室内に設けられ、前記携帯端末からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度を用いて、前記携帯端末が車室内にあるか否かを判定する車室内特定部(28)をさらに含み、
前記車載装置は、前記車室内特定部によって前記携帯端末が前記車室内にないと判定された場合には、前記方向特定部、前記距離測定部および前記補正部における処理を実施する請求項1~4のいずれか1つに記載の距離推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、携帯端末と車両との距離を推定する距離推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の測距装置では、車両及び電子キーの間で電波を送受信して、電波の伝搬時間から2者間の距離を求める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-85510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載の技術では、車両から電波を送信するアンテナと電子キーとの間の距離を求めているので、車両の縁からの距離が不明である。
【0005】
そこで、開示される目的は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、車両の縁からの距離を推定できる距離推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
ここに開示された距離推定装置は、携帯端末(21)と車両(100)との距離を推定する距離推定装置であって、携帯端末は、車両に電波を送信する端末送信部(37)と、端末送信部を制御する端末制御部(39)と、を含み、車両に搭載される車載装置(20)は、車両に搭載され、携帯端末からの電波を受信する受信部(29b,30b)を備え、受信部が受信した携帯端末からの電波の受信信号強度を用いて携帯端末が位置する方向を特定する方向特定部(29,30,40,41,51~54)と、携帯端末からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度以外の情報に基づいて、車両における自身の搭載位置から携帯端末までの距離を測定する距離測定部(31)と、方向特定部が特定した方向と距離測定部の搭載位置に応じた、車両の縁から距離測定部までのオフセット量を用いて、距離測定部が測定した距離を、車両の縁から携帯端末までの距離に補正する補正部(34)と、を含む距離推定装置である。
【0008】
このような距離推定装置に従えば、方向特定部によって携帯端末が送信した電波の方向を特定する。また距離測定部は、受信信号強度以外の情報を用いて、自身の搭載位置から携帯端末までの距離を測定する。距離の測定には受信信号強度以外を用いるので、受信信号強度が他の装置によって不正に増幅されていたとしても、距離の測定精度を維持することができる。そして補正部は、距離測定部が測定した距離測定部から携帯端末までの距離を、特定した方向と距離測定部の搭載位置に基づいて補正している。これによって距離測定部の搭載位置にかかわらず、車両の縁から携帯端末までの距離を測定することができる。
【0009】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電子キー位置推定システムを示す図。
図2】車載装置と示すブロック図。
図3】電子キーを示すブロック図。
図4】通信手順を示す図。
図5】電子キーが車室内にあるかを判断するフローチャート。
図6】距離を推定するフローチャート。
図7】RSSIと時間との関係を示すグラフ。
図8】距離と時間との関係を示すグラフ。
図9】第2実施形態の電子キー位置推定システムを示す図。
図10】距離を推定するフローチャート。
図11】RSSIと時間との関係を示すグラフ。
図12】第3実施形態の電子キー位置推定システムを示す図。
図13】距離を推定するフローチャート。
図14】RSSIと時間との関係を示すグラフ。
図15】第4実施形態の電子キー位置推定システムを示す図。
図16】距離を推定するフローチャート。
図17】RSSIと時間との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態を、複数の形態を用いて説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に関して、図1図8を用いて説明する。電子キー位置推定システムは、図1に示すように、車両100に搭載される車載装置20と、携帯端末である電子キー21との間の無線通信に基づいて、電子キー21の照合をECUにより実行し、照合が成立した場合、所定処理を実行あるいは許可する機能を有する。ECUは、電子制御装置(electronic control unit)の略称である。
【0013】
電子キー21の照合とは、電子キー21が車載装置20に予め対応づけられている正規の電子キー21であるか否かを確認することであり、たとえば次のように実行される。車載装置20の認証ECU22は、車載アンテナであるLFアンテナ23からリクエスト信号を送信させる。
【0014】
電子キー21は、リクエスト信号を受信すると、自身に固有のIDを含むレスポンス信号を送信する。車載装置20は、レスポンス信号をRFアンテナ24で受信すると、認証ECU22がレスポンス信号に含まれるIDを照合することにより、電子キー21を照合する。
【0015】
照合成立の場合に許可あるいは実行される所定処理としては、たとえば次のものが挙げられる。正規の電子キー21が車両100の車室内に位置する場合に車両エンジンの始動を許可する。その他にも、正規の電子キー21が車外の所定領域内に位置する場合に車両ドアの開錠を許可する。また、正規の電子キー21が車両100に所定距離近づいた場合に車両100のハザードランプを点灯等させるウェルカム処理を実行する。このように、電子キー位置推定システムは、車両100に対する電子キー21の位置に応じて異なる処理を許可あるいは実行する。
【0016】
電子キー位置推定システムは、上記の照合による所定処理を実行あるいは許可するにあたり、車両100に対する電子キー21の位置を推定する。以下、車両100に対する電子キー21の位置を推定するための電子キー位置推定システムの構成を説明する。したがって電子キー位置推定システムは、電子キー21と車両100との距離を推定する距離推定装置として機能する。
【0017】
図1に示すように電子キー位置推定システムは、車載装置20と電子キー21とを備える。車載装置20は車両100に設けられ、電子キー21はユーザにより携帯される。
【0018】
まず、車載装置20に関して、図2を用いて説明する。車載装置20は、認証ECU22と、記憶部25と、車側送信部26と、LFアンテナ23と、車側受信部27と、RFアンテナ24とを備える。さらに車載装置20は、車室内特定部28と、右方向特定部29と、左方向特定部30と、距離測定部31とを備える。
【0019】
認証ECU22は、マイクロコンピュータを主体として構成される。認証ECU22は、たとえばROM等の記憶装置に記憶されたプログラムをCPU等のプロセッサが実行することにより、電子キー21の照合および電子キー21の位置推定を含む各種処理を電子キー21と協働して実行する。なお、認証ECU22の機能の少なくとも一部は、専用のIC等によって提供されてもよい。記憶部25は、不揮発性メモリを備えており、各種のプログラムなどを記憶している。
【0020】
車側送信部26は、認証ECU22の制御の下で、LF波あるいはVLF波で車両信号を、変調および増幅してLFアンテナ23から電波として送信させる。LFは、Low Frequencyの略称であり、VLFは、Very Low Frequencyの略称である。本明細書ではVLFを含めてLFという用語を用いる。車両信号としてリクエスト信号が送信される場合、固有IDを含むレスポンス信号の返信を電子キー21に要求する情報が含まれる。LFアンテナ23は、たとえば車室内に設けられている。
【0021】
車側受信部27は、電子キー21からRF(Radio Frequency)波で送信されるキー信号を、RFアンテナ24を介して受信する。そして、車側受信部27は、RFアンテナ24から取得した電気信号を増幅し、かつ、その電気信号からキー信号を復調し、キー信号を認証ECU22に出力する。RFアンテナ24は、たとえば車室内に設けられる。
【0022】
リクエスト信号の返信として電子キー21から送信される固有IDを含むキー信号は上記したレスポンス信号である。キー信号にはさらに車両信号を電子キー21が受信した際の受信信号強度を示すRSSI情報が含まれ得る。受信信号強度は、以下、「RSSI」ということがある。
【0023】
車室内特定部28は、認証ECU22と協働して、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波のRSSIを用いて電子キー21が車室内にあるか否かを判定する。車室内特定部28は、第1送信部28a、第1受信部28b、第1算出部28cおよび第1アンテナ28dを備える。第1送信部28aは、認証ECU22の制御の下で、LF波あるいはVLF波で車両信号を、変調および増幅して第1アンテナ28dから電波として送信させる。第1受信部28bは、電子キー21からRF波で送信されるキー信号を、第1アンテナ28dを介して受信する。そして、第1受信部28bは、第1アンテナ28dから取得した電気信号を増幅し、かつ、その電気信号からキー信号を復調し、キー信号を出力する。
【0024】
車室内特定部28は、電子キー21と鍵交換プロトコルの実行、いわゆるペアリングを実施済みである。ペアリングによって取得した電子キー21についての端末情報は、車室内特定部28が備える不揮発性のメモリに保存されている。端末情報とは、例えば、ペアリングによって交換した鍵情報である。
【0025】
第1算出部28cは、第1送信部28aを介して電子キー21へのペアリングを要求し、第1受信部28bが受信した応答信号を用いて、ペアリング可否の認証を行う。また第1算出部28cは、ペアリング後に第1送信部28aを介して電子キー21に電波の送信を要求し、第1受信部28bが受信した電波のRSSIを検出する。第1算出部28cは、検出したRSSIを認証ECU22に出力する。
【0026】
認証ECU22は、車室内特定部28が出力したRSSIを用いて、電子キー21が車室内にあるか否かを判定する。RSSIは通信距離が長くなるのに応じて低下することが知られている。したがってRSSIと通信距離との関係は実験に基づいて決定された関係であり、記憶部25に記憶されている。したがってRSSIがわかると第1アンテナ28dと電子キー21との距離を推測することができる。認証ECU22は、RSSIを用いて電子キー21が車室内にあるか否かを判定する。
【0027】
右方向特定部29および左方向特定部30は、認証ECU22と協働して、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度を用いて電子キー21が位置する方向を特定する方向特定部として機能する。右方向特定部29および左方向特定部30は、電子キー21が位置する方向と対応付けられて配置されている。電子キー21が位置する方向は、鉛直方向に車両100を見たときに、車両100に対して電子キー21が位置する方向である。さらに具体的には、認証ECU22、右方向特定部29および左方向特定部30は、協働して、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度を用いて車両100の右側から送信された電波か、または車両100の左側から送信された電波かを特定する。
【0028】
左方向特定部30は、車両100の左側に設けられ、右方向特定部29は車両100の右側に設けられる。まず右方向特定部29に関して説明する。右方向特定部29は、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波のRSSIを出力する。右方向特定部29は、第2送信部29a、第2受信部29b、第2算出部29cおよび第2アンテナ29dを備える。第2送信部29aは、認証ECU22の制御の下で、LF波あるいはVLF波で車両信号を、変調および増幅して第2アンテナ29dから電波として送信させる。第2受信部29bは、電子キー21からRF波で送信されるキー信号を、第2アンテナ29dを介して受信する。そして、第2受信部29bは、第2アンテナ29dから取得した電気信号を増幅し、かつ、その電気信号からキー信号を復調し、キー信号を出力する。
【0029】
右方向特定部29は、電子キー21と鍵交換プロトコルの実行、いわゆるペアリングを実施済みである。ペアリングによって取得した電子キー21についての端末情報は、右方向特定部29が備える不揮発性のメモリに保存されている。
【0030】
第2算出部29cは、第2送信部29aを介して電子キー21へのペアリングを要求し、第2受信部29bが受信した応答信号を用いて、ペアリング可否の認証を行う。また第2算出部29cは、ペアリング後に第2送信部29aを介して電子キー21に電波の送信を要求し、第2受信部29bが受信した電波のRSSIを検出する。第2算出部29cは、検出したRSSIを認証ECU22に出力する。
【0031】
左方向特定部30は、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波のRSSIを出力する。左方向特定部30は、第3送信部30a、第3受信部30b、第3算出部30cおよび第3アンテナ30dを備える。第3送信部30aは、認証ECU22の制御の下で、LF波あるいはVLF波で車両信号を、変調および増幅して第3アンテナ30dから電波として送信させる。第3受信部30bは、電子キー21からRF波で送信されるキー信号を、第3アンテナ30dを介して受信する。そして、第3受信部30bは、第3アンテナ30dから取得した電気信号を増幅し、かつ、その電気信号からキー信号を復調し、キー信号を出力する。
【0032】
左方向特定部30は、電子キー21と鍵交換プロトコルの実行、いわゆるペアリングを実施済みである。ペアリングによって取得した電子キー21についての端末情報は、左方向特定部30が備える不揮発性のメモリに保存されている。
【0033】
第3算出部30cは、第3送信部30aを介して電子キー21へのペアリングを要求し、第3受信部30bが受信した応答信号を用いて、ペアリング可否の認証を行う。また第3算出部30cは、ペアリング後に第3送信部30aを介して電子キー21に電波の送信を要求し、第3受信部30bが受信した電波のRSSIを検出する。第3算出部30cは、検出したRSSIを認証ECU22に出力する。
【0034】
認証ECU22は、機能ブロックとして、強度比較部32を備える。強度比較部32は、左方向特定部30および右方向特定部29から出力されたRSSIを比較して、RSSIが大きい受信部が右側の場合は右側から送信された電波とし、受信信号強度が大きい受信部が左側の場合は左側から送信された電波とする特定部として機能する。
【0035】
距離測定部31は、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度以外の情報に基づいて車両100における自身の搭載位置から電子キー21までの距離を測定する。具体的には、距離測定部31は、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の電子キー21からの到達時間に基づいて車両100における搭載位置から電子キー21までの距離を測定する。距離測定部31は、第4送信部31a、第4受信部31b、計測部31cおよび第4アンテナ31dを備える。第4送信部31aは、認証ECU22の制御の下で、LF波あるいはVLF波で車両信号を、変調および増幅して第4アンテナ31dから電波として送信させる。第4受信部31bは、電子キー21からRF波で送信されるキー信号を、第4アンテナ31dを介して受信する。そして、第4受信部31bは、第4アンテナ31dから取得した電気信号を増幅し、かつ、その電気信号からキー信号を復調し、キー信号を出力する。
【0036】
距離測定部31は、電子キー21と鍵交換プロトコルの実行、いわゆるペアリングを実施済みである。ペアリングによって取得した電子キー21についての端末情報は、距離測定部31が備える不揮発性のメモリに保存されている。
【0037】
計測部31cは、第4送信部31aを介して電子キー21へのペアリングを要求し、第4受信部31bが受信した応答信号を用いて、ペアリング可否の認証を行う。また計測部31cは、ペアリング後に第4送信部31aを介して電子キー21に電波の送信を要求し、要求してから第4受信部31bが電波を受信するまでの時間を計測する。計測部31cは、計測した到達時間を認証ECU22に出力する。
【0038】
認証ECU22は、機能ブロックとして、距離推定部33を備える。距離推定部33は、距離測定部31から出力された到達時間を用いて、第4アンテナ31dから電子キー21までの距離を推定する。距離推定部33は、推定した距離を出力する。
【0039】
距離測定部31は、車両100の所定位置に搭載され、本実施形態では図1に示すように、右側後方に設けられる。距離測定部31は、搭載位置に関する情報として、左側ドアハンドルの位置から距離測定部31の第4アンテナ31dまでの左右方向の距離L1を含む。この距離L1は、以下、「左オフセット量」ということがある。また距離測定部31は、搭載位置に関する情報として、右側ドアハンドルの位置から第4アンテナ31dまでの左右方向の距離L2を含む。この距離L2は、以下、「右オフセット量」ということがある。
【0040】
認証ECU22は、機能ブロックとしてさらに位置推定部34を備える。位置推定部34は、距離推定部33が出力した推定距離、強度比較部32が出力した方向および距離測定部31の搭載位置を用いて、電子キー21の位置を推定する。位置推定部34は、電子キー21の位置をドアハンドルからの距離として推定する。具体的には、位置推定部34は、特定した方向と距離測定部31の搭載位置を用いて、距離測定部31が測定した距離を、車両100の縁から電子キー21までの距離に補正する補正部として機能する。位置推定部34は、特定した方向が右側の場合は、車両100の右側の縁から搭載位置までの右オフセット量L2を用いて距離推定部33が測定した距離を補正し、特定した方向が左側の場合は、車両100の左側の縁から搭載位置までの左オフセット量L1を用いて距離推定部33が測定した距離を補正する。
【0041】
次に、電子キー21に関して、図3を用いて説明する。電子キー21は、キー側受信部35と、キー側受信アンテナ36と、キー側送信部37と、キー側送信アンテナ38と、キー側制御部39とを備える。
【0042】
キー側受信部35は、LFアンテナ23から送信された電波を示す電気信号を、キー側受信アンテナ36を介して取得する。キー側受信部35は、その電気信号を復調および増幅して車両信号を取り出し、キー側制御部39に出力する。
【0043】
キー側送信部37は、キー側制御部39の制御の下で、RF波でキー信号を変調および増幅してキー側送信アンテナ38から送信させる。キー信号はキー側制御部39が生成する。キー信号には、電子キー21の固有IDが含まれる。したがってキー側送信部37およびキー側送信アンテナ38は、車両100に電波を送信する端末送信部として機能する。
【0044】
キー側制御部39は、マイクロコンピュータを主体として構成され、各部を制御する端末制御部として機能する。キー側制御部39は、たとえばROM等の記憶装置に記憶されたプログラムをCPU等のプロセッサが実行することにより、電子キー21の照合および後述する電子キー21の位置推定を含む各種処理を車載装置20と協働して実行する機能を有する。キー側制御部39の機能の少なくとも一部は、専用のIC等によって提供されてもよい。
【0045】
次に、電子キー21と各部の動作フローに関して図4を用いて説明する。図4では、各特定部としているのは、車室内特定部28、左方向特定部30および右方向特定部29である。これら3つの各特定部に関して、図4における動作フローは同一であるので、まとめて示している。
【0046】
図4に示すように、通信を開始するにあたって、まず車両100側の各特定部および距離測定部31からペアリング要求を電子キー21に送信する。そして電子キー21がペアリング要求を受信し、事前にペアリング実施済みであれば、ペアリングを可として、ペアリングを成立する。
【0047】
ペアリングが成立すると、各特定部は電波を送信するように電子キー21に要求する。すると電子キー21は、各特定部に電波を送信する。各特定部は、電子キー21から電波を受信すると、RSSIを検出して、認証ECU22に出力する。
【0048】
またペアリングが成立すると、距離測定部31は電波を送信するように電子キー21に要求する。すると電子キー21は、距離測定部31に電波を送信する。このとき送信時刻を示す時間情報が含まれる。距離測定部31は、電子キー21から電波を受信すると、送信時刻および受信時刻から到達時間を算出して、認証ECU22に出力する。
【0049】
次に、認証ECU22の処理に関してフローチャートを用いて説明する。図5は、認証ECU22における車室内外判定に関する処理を示すフローチャートである。図5に示す処理は、認証ECU22が電源投入状態で短時間に繰り返し実行する。
【0050】
ステップS1では、車室内特定部28から信号を受信したか否かを判断し、受信した場合はステップS2に移り、受信していない場合は、本フローを終了する。ステップS2では、RSSIは車室内強度以上か否かを判断し、車室内強度以上である場合は、ステップS3に移り、車室内強度以上でない場合は、ステップS4に移る。車室内強度は、予めRSSI値と距離との関係に基づいて設定される設定値である。
【0051】
ステップS3では、車室内にあると判定し、本フローを終了する。ステップS4では、車室外にあると判定し、本フローを終了する。
【0052】
次に、方向を特定し、距離を補正する処理に関して、図6図8を用いて説明する。図6は、認証ECU22における方向特定に関する処理を示すフローチャートである。図6に示す処理は、認証ECU22が電源投入状態で短時間に繰り返し実行する。さらに図6に示す処理は、図5のフローで車室外にあると判定された場合に実行される。したがって図6に示す処理は、電子キー21が車室内にあるときは実行されない。
【0053】
ステップS21では、各方向特定部および距離測定部31から信号を受信したか否かを判断し、受信した場合はステップS22に移り、受信していない場合は、本フローを終了する。各方向特定部は、左方向特定部30および右特定方向部の両方を示す総称である。
【0054】
ステップS22では、距離推定部33によって距離を推定し、ステップS23に移る。ステップS23では、強度比較部32によって左方向特定部30のRSSIが右方向特定部29のRSSI以上であるか否かを判断し、以上である場合は、ステップS24に移り、以上でない場合は、ステップS25に移る。ステップS23では、図7に示すように左方向特定部30のRSSIと右方向特定部29のRSSIの大小関係を比較する。図7では、一例として左方向特定部30のRSSIが大きい場合を示している。
【0055】
ステップS24では、左方向特定部30のRSSIが大きいので、ステップS22で推定した位置を補正部によって左オフセット量L1で補正し、本フローを終了する。ステップS25では、右方向特定部29のRSSIが大きいので、ステップS22で推定した位置を補正部によって右オフセット量L2で補正し、本フローを終了する。
【0056】
図8は、補正のイメージを示している。図8では、破線で示す補正前の距離は距離測定部31からの距離であるので、これを左オフセット量L1または右オフセット量L2で補正する。図8では、一例として左方向特定部30のRSSIが大きい場合を示している。したがって図8では、左オフセット量L1を減算して補正している。
【0057】
以上説明したように本実施形態では、左方向特定部30および右方向特定部29によって電子キー21が送信した電波の方向を特定する。そして補正部は、距離測定部31が測定した距離測定部31から携帯端末までの距離を、特定した方向と距離測定部31の搭載位置に基づいて補正している。これによって距離測定部31の搭載位置にかかわらず、車両100の縁から電子キー21までの距離を測定することができる。距離測定部31は、リレーアタック対策のために、受信信号強度以外を用いて距離を測定する。したがってリレーアタックによって信号強度が増幅された場合でも、距離の測定精度を維持することができる。
【0058】
本実施形態では、車室内における距離測定部31の搭載位置分の測距誤差を補正し、測距精度を向上することが可能であり、距離測定部31のアンテナの搭載位置を自由にできる。そして距離測定部31の搭載位置情報を予め把握し、車幅方向ならびに車長方向の搭載位置分を測距値からオフセットすることで無指向性のアンテナでも電子キー21までの距離を正確に測定することができる。
【0059】
また本実施形態では、左方向特定部30および右方向特定部29は、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度を用いて車両100の右側から送信された電波か、または車両100の左側から送信された電波かを特定する。そして補正部は、特定した方向が右側の場合は右オフセット量L2を用いて測定した距離を補正し、特定した方向が左側の場合は、左オフセット量L1を用いて測定した距離を補正する。RSSIを用いて、左側であるか右側であるかを特定できるので、簡単な演算で補正することができる。
【0060】
さらに本実施形態では、左方向特定部30および右方向特定部29は、車両100の左側および車両100の右側にそれぞれ設けられる。そして左方向特定部30および右方向特定部29のRSSIを比較して、方向を特定している。このような簡単な構成で方向特定部を実現することができる。
【0061】
また本実施形態では、距離測定部31は、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の電子キー21からの到達時間に基づいて車両100における搭載位置から電子キー21までの距離を測定する。到達時間を用いるので、精度よく距離を測定することができる。
【0062】
さらに本実施形態では、車載装置20は、車室内特定部28によって電子キー21が車室内にないと判定された場合には、方向特定部、距離測定部31および補正部における処理を実施する。電子キー21が車室外にある場合に、図6における処理が実行される。これによって演算負荷を減らすことができる。また誤作動を抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、車側受信部27を方向特定部とは別に設けているが、このような構成に限るものではない。たとえば車側受信部27が検出するRSSIを用いて、方向を特定してもよい。
【0064】
また本実施形態では、距離測定部31は、電波の伝達時間によって距離を測定しているが、伝達時間に限るものではない。たとえば電波の位相差を用いて距離を測定してもよい。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に関して、図9図11を用いて説明する。本実施形態では、図9に示すように、第1実施形態の左方向特定部30は有するが、右方向特定部29を有さない点に特徴を有する。
【0066】
次に本実施形態の方向を特定し、距離を補正する処理に関して図10および図11を用いて説明する。図10は、認証ECU22における方向特定に関する処理を示すフローチャートである。図10に示す処理は、認証ECU22が電源投入状態で短時間に繰り返し実行する。さらに図10に示す処理は、図5のフローで車室外にあると判定された場合に実行される。したがって図10に示す処理は、電子キー21が車室内にあるときは実行されない。
【0067】
ステップS31では、左方向特定部30および距離測定部31から信号を受信したか否かを判断し、受信した場合はステップS32に移り、受信していない場合は、本フローを終了する。
【0068】
ステップS32では、距離推定部33によって距離を推定し、ステップS33に移る。ステップS33では、左方向特定部30のRSSIが閾値以上であるか否かを判断し、以上である場合は、ステップS34に移り、以上でない場合は、ステップS35に移る。ステップS33では、図11に示すように左方向特定部30のRSSIを閾値と比較する。閾値は、たとえば0である。左側に電子キー21がある場合は、左方向特定部30はRSSIを取得するが、左側にない場合、たとえば右側に電子キー21がある場合は、車両100が障害となってRSSIを取得することができない。図11では、一例として左方向特定部30がRSSIを取得している場合を示している。
【0069】
ステップS34では、左方向特定部30のRSSIが閾値よりも大きいので、ステップS32で推定した位置を補正部によって左オフセット量L1で補正し、本フローを終了する。ステップS35では、左側にないので右側にあるとして、ステップS32で推定した位置を補正部によって右オフセット量L2で補正し、本フローを終了する。
【0070】
このように本実施形態では、左方向特定部30のみで電子キー21が右側であるが左側がであるかを特定している。したがって第1実施形態よりも簡単な構成で実現することができる。
【0071】
(第3実施形態)
次に、本開示の第3実施形態に関して、図12図14を用いて説明する。本実施形態では、さらに前方向特定部40および後方向特定部41を備える点に特徴を有する。
【0072】
右方向特定部29、左方向特定部30、前方向特定部40および後方向特定部41は、認証ECU22と協働して、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度を用いて電子キー21が位置する方向を特定する方向特定部として機能する。さらに具体的には、認証ECU22、右方向特定部29、左方向特定部30、前方向特定部40および後方向特定部41は、協働して、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度を用いて車両100の右側から送信された電波か、または車両100の左側から送信された電波か、車両100の前側から送信された電波、車両100の後ろ側から送信された電波かを特定する。
【0073】
図12に示すように、前方向特定部40は、車両100の前側に設けられ、後方向特定部41は車両100の後ろ側に設けられる。前方向特定部40および後方向特定部41は、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波のRSSIを出力する。前方向特定部40および後方向特定部41は、前述の右方向特定部29と同様の構成であって、送信部、受信部、算出部およびアンテナを備える。
【0074】
距離測定部31は、搭載位置に関する情報として、さらに車両100の前縁から距離測定部31の第4アンテナ31dまでの前後方向の距離L3を含む。この距離L3は、以下、「前オフセット量」ということがある。距離測定部31は、搭載位置に関する情報として、さらに車両100の後ドアハンドルの位置から第4アンテナ31dまでの前後方向の距離L4を含む。この距離L4は、以下、「後オフセット量」ということがある。
【0075】
位置推定部34は、特定した方向が前側の場合は、車両100の前側の縁から搭載位置までの前オフセット量L3を用いて距離推定部33が測定した距離を補正し、特定した方向が後側の場合は、車両100の後側の縁から搭載位置までの後オフセット量L4を用いて距離推定部33が測定した距離を補正する。
【0076】
次に、本実施形態における方向を特定し、距離を補正する処理に関して、図13および図14を用いて説明する。図13は、認証ECU22における方向特定に関する処理を示すフローチャートである。図13に示す処理は、認証ECU22が電源投入状態で短時間に繰り返し実行する。さらに図13に示す処理は、図5のフローで車室外にあると判定された場合に実行される。したがって図13に示す処理は、電子キー21が車室内にあるときは実行されない。
【0077】
ステップS41では、各方向特定部および距離測定部31から信号を受信したか否かを判断し、受信した場合はステップS42に移り、受信していない場合は、本フローを終了する。各方向特定部は、左方向特定部30、右特定方向部、前方向特定部40および後方向特定部41の4つを示す総称である。
【0078】
ステップS42では、距離推定部33によって距離を推定し、ステップS43に移る。ステップS43では、強度比較部32によって左方向特定部30のRSSIが各方向特定部中で最大であるか否かを判断し、最大である場合は、ステップS45に移り、最大でない場合は、ステップS44に移る。ステップS43では、図14に示すように各方向特定部のRSSIの大小関係を比較する。図14では、一例として左方向特定部30のRSSIが最大の場合を示している。
【0079】
ステップS45では、左方向特定部30のRSSIが最大であるので、ステップS42で推定した位置を補正部によって左オフセット量L1で補正し、本フローを終了する。
【0080】
ステップS44は、強度比較部32によって右方向特定部29のRSSIが各方向特定部中で最大であるか否かを判断し、最大である場合は、ステップS47に移り、最大でない場合は、ステップS46に移る。ステップS47では、右方向特定部29のRSSIが最大であるので、ステップS42で推定した位置を補正部によって右オフセット量L2で補正し、本フローを終了する。
【0081】
ステップS46は、強度比較部32によって前方向特定部40のRSSIが各方向特定部中で最大であるか否かを判断し、最大である場合は、ステップS49に移り、最大でない場合は、ステップS48に移る。ステップS49では、前方向特定部40のRSSIが最大であるので、ステップS42で推定した位置を補正部によって前オフセット量L3で補正し、本フローを終了する。
【0082】
ステップS48では、後方向特定部41のRSSIが最大であるので、ステップS42で推定した位置を補正部によって後オフセット量L4で補正し、本フローを終了する。
【0083】
このように本実施形態では、各方向特定部は、車両100の周辺部に少なくとも4つ周方向に間隔をあけて設けられる。そして各方向特定部が検出したRSSIを比較して、最大のRSSIを検出した方向特定部がある側を電子キー21がある方向と特定している。これによって4方向のいずれかに特定するので、より精度よく電子キー21のある位置を推定することができる。
【0084】
(第4実施形態)
次に、本開示の第4実施形態に関して、図15図17を用いて説明する。本実施形態では、各方向特定部の位置が第4実施形態と異なる点に特徴を有する。本実施形態では、図15に示すように、車両100の四隅、すなわち左前、右前、左後および右後に方向特定部がそれぞれ設けられる。したがって方向特定部は、左前方向特定部51、右前方向特定部52、左後方向特定部53、右後方向特定部54の4つである。
【0085】
各方向特定部は、認証ECU22と協働して、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度を用いて電子キー21が位置する方向を特定する。さらに具体的には、認証ECU22および各方向特定部は、協働して、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波の受信信号強度を用いて車両100の右側から送信された電波か、または車両100の左側から送信された電波か、車両100の前側から送信された電波、車両100の後ろ側から送信された電波かを特定する。
【0086】
各方向特定部は、電子キー21からの電波を受信し、受信した電波のRSSIを出力する。各方向特定部は、前述の右方向特定部29と同様の構成であって、送信部、受信部、算出部およびアンテナを備える。
【0087】
そして距離測定部31は、前述の第3実施形態と同様に、搭載位置に関する情報として、4つのオフセット量を含む。位置推定部34は、前述の第3実施形態と同様に、特定した方向に応じて、各オフセット量を用いて距離推定部33が測定した距離を補正する。
【0088】
次に、本実施形態における方向を特定し、距離を補正する処理に関して、図16および図17を用いて説明する。図16は、認証ECU22における方向特定に関する処理を示すフローチャートである。図16に示す処理は、認証ECU22が電源投入状態で短時間に繰り返し実行する。さらに図16に示す処理は、図5のフローで車室外にあると判定された場合に実行される。したがって図16に示す処理は、電子キー21が車室内にあるときは実行されない。
【0089】
ステップS51では、各方向特定部および距離測定部31から信号を受信したか否かを判断し、受信した場合はステップS52に移り、受信していない場合は、本フローを終了する。各方向特定部は、左前方向特定部51、右前特定方向部、左後方向特定部53および右後方向特定部54の4つを示す総称である。
【0090】
ステップS52では、距離推定部33によって距離を推定し、ステップS53に移る。ステップS53では、強度比較部32によって左前方向特定部51および左後方向特定部53のRSSIが他の2つの方向特定部よりも大きいか否かを判断し、大きい場合は、ステップS55に移り、大きくない場合は、ステップS54に移る。ステップS53では、図14に示すように各方向特定部のRSSIの大小関係を比較する。図14では、一例として左前方向特定部51および左後方向特定部53のRSSIが、他の2つよりも大きい場合を示している。左側に位置する方向特定部が、右側に位置する方向特定部よりもRSSIが大きい場合は、左側に位置すると判断している。
【0091】
ステップS55では、左側の方向特定部のRSSIが他の2つよりも大きいので、ステップS52で推定した位置を補正部によって左オフセット量L1で補正し、本フローを終了する。
【0092】
ステップS54では、強度比較部32によって右前方向特定部52および右後方向特定部54のRSSIが他の2つの方向特定部よりも大きいか否かを判断し、大きい場合は、ステップS57に移り、大きくない場合は、ステップS56に移る。ステップS57では、右側の方向特定部のRSSIが他の2つよりも大きいので、ステップS52で推定した位置を補正部によって右オフセット量L2で補正し、本フローを終了する。
【0093】
ステップS56では、強度比較部32によって右前方向特定部52および左前方向特定部51のRSSIが他の2つの方向特定部よりも大きいか否かを判断し、大きい場合は、ステップS59に移り、大きくない場合は、ステップS58に移る。ステップS59では、前側の方向特定部のRSSIが他の2つよりも大きいので、ステップS52で推定した位置を補正部によって前オフセット量L3で補正し、本フローを終了する。
【0094】
ステップS58では、後側の方向特定部のRSSIが他の2つよりも大きいと推定して、ステップS52で推定した位置を補正部によって後オフセット量L4で補正し、本フローを終了する。
【0095】
このように本実施形態では、各方向特定部は、車両100の周辺部の四隅に設けられる。そして各方向特定部が検出したRSSIを比較して、1番大きいRSSIと2番目に大きいRSSIを検出した方向特定部がある側を電子キー21がある方向と特定している。これによって4方向のいずれかに特定するので、より精度よく電子キー21のある位置を推定することができる。
【0096】
(その他の実施形態)
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0097】
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0098】
前述の第1実施形態では、方向特定部は、左側か右側であるかを特定しているがこのような構成に限るものではない。方向特定部は、360度のどの方向であるかを検出する構成であってもよい。たとえば方向特定部は、指向性を有する電波を送信し、360度走査して、その応答によって方向を特定してもよい。
【0099】
前述の第3実施形態では、オフセット量は、4つであったが、このような構成に限るものではない。方向の精度が向上するにつれて、より詳細な位置情報に基づいて左右方向および前後方向以外の方向のオフセット量を情報として有し、補正してもよい。
【0100】
前述の第3,第4実施形態では、方向特定部は周方向に4つであったが、4つに限るものではなく、5つ以上であってもよい。数が多くなるにつれて、分解能が向上するので、より方向を特定する精度を向上することができる。
【0101】
前述の第1実施形態では、携帯端末として電子キー21を開示したが、キー機能を持たない携帯端末、たとえばスマートフォンを採用することもできる。
【0102】
前述の第1実施形態では、車載装置20は、電波を送信するアンテナとしてLF波を送信するLFアンテナ23を備えていたが、送信する電波はLF波以外の周波数帯でもよい。たとえば、LFアンテナ23に代えてRF波を送信するアンテナを備えていてもよい。RF波はUHF波と呼ばれることもある。RF波の具体的な周波数は、たとえば、315Hz、920MHz、2.4GHzなどがある。これらの周波数を用いる通信方式には、たとえば、ブルートゥース(登録商標)がある。
【0103】
前述の第1実施形態において、認証ECU22によって実現されていた機能は、前述のものとは異なるハードウェアおよびソフトウェア、またはこれらの組み合わせによって実現してもよい。認証ECU22は、たとえば他の制御装置と通信し、他の制御装置が処理の一部または全部を実行してもよい。認証ECU22が電子回路によって実現される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって実現することができる。
【符号の説明】
【0104】
20…車載装置 21…電子キー(携帯端末) 28…車室内特定部 29…右方向特定部(方向特定部) 29b…第2受信部(受信部) 29c…第2算出部(算出部) 30…左方向特定部(方向特定部) 30b…第3受信部(受信部) 30c…第3算出部(算出部) 31…距離測定部 32…強度比較部(特定部) 33…距離推定部 34…位置推定部(補正部) 37…キー側送信部(端末送信部) 39…キー側制御部(端末制御部) 40…前方向特定部(方向特定部) 41…後方向特定部(方向特定部) 51…左前方向特定部(方向特定部) 52…右前方向特定部(方向特定部) 53…左後方向特定部(方向特定部) 54…右後方向特定部(方向特定部) 100…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17