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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】座席装置の免振機構
(51)【国際特許分類】
   B61D 33/00 20060101AFI20240808BHJP
   B60N 2/50 20060101ALI20240808BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20240808BHJP
   B60N 2/14 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
B61D33/00 A
B60N2/50
B60N2/06
B60N2/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020130428
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026802
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】名和 博志
(72)【発明者】
【氏名】長尾 裕
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-097040(JP,U)
【文献】特開昭56-128235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 33/00
B60N 2/50
B60N 2/06
B60N 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席が固定側に対して変位可能に支持された座席装置に備わる免振機構において、
座席の固定側から座席に伝わる振動を減衰可能であり、かつ振動が減衰される方向を座席の特定方向に制限可能であり、
座席の固定側と座席との間に設けられ、前記固定側から座席に伝わる振動を減衰させる制振部と、
座席の固定側と座席との間に設けられ、前記制振部により振動が減衰される方向を前記特定方向に制限する規制部と、を備え、
座席の固定側は、移動可能な乗物の床面であり、
前記床面上に略水平に固定される固定プレートと、
前記固定プレート上に対向して略水平方向に変位可能に支持された座席側の可動プレートと、を備え、
前記規制部は、前記固定プレートに対して前記可動プレートを前記特定方向にスライドさせるスライドレールからなり、
前記スライドレールは、前記固定プレートに固定されるアウターレールと、前記可動プレートに固定され前記アウターレールに摺動可能に嵌められるインナーレールと、を備えてなり、
前記固定プレートと前記可動プレートとは、前記制振部および前記スライドレールを介して一体に組み合わせたユニットをなすことを特徴とする座席装置の免振機構。
【請求項2】
前記特定方向は、座席の前後方向と直交する左右方向であることを特徴とする請求項1に記載の座席装置の免振機構。
【請求項3】
前記可動プレート上に、座席は回転機構を介して回転可能に支持されたことを特徴とする請求項1または2に記載の座席装置の免振機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席が固定側に対して変位可能に支持された座席装置に備わる免振機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば鉄道車両に装備された車両用シートには、車両の走行中に車体側から様々な方向の振動が伝わる。この振動に関する着座者の体感として、上下方向の振動は座部のクッションで軽減され、前後方向の振動は背凭れのクッションで軽減されていた。しかし、左右方向の振動は特に軽減させる構成がなく、座部の両側にはクッション性に乏しい袖部があるので、着座者が振動により袖部にぶつかると不快感を感じる虞があった。
【0003】
ところで、車両用シートの外装のクッション性以外で、車体側からの振動を抑制する技術としては、例えば特許文献1に開示されたシート構造が知られている。このシート構造は、座部フレームとフロアの間に防振ゴムを挿入したものである。ここで防振ゴムは、具体的には座部の受け皿下部に固定された一対のスライドレールの前後4箇所に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平2-6634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1に記載の従来の技術は、スライドレールで任意の前後位置にロックされた状態のシートに対する全方向の振動を抑制するものであった。そのため、従来の技術では、例えば座席の上下方向と前後方向の振動は抑制することなく、左右方向という特定の方向における振動のみを軽減することはできなかった。
【0006】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、座席の固定側から座席に伝わる振動のうち、必要に応じて特定の方向における振動のみ軽減することを可能とする座席装置の免振機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様は、
座席が固定側に対して変位可能に支持された座席装置に備わる免振機構において、
座席の固定側から座席に伝わる振動を減衰可能であり、かつ振動が減衰される方向を座席の特定方向に制限可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る座席装置の免振機構によれば、座席の固定側から座席に伝わる振動のうち、必要に応じて特定の方向における振動のみ軽減することが可能となり、所望する方向への最適な免振を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る座席装置の免振機構を概略的に示す説明図である。
図2】本実施形態に係る座席装置の免振機構(内部の構成は隠れ線)で示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る座席装置の免振機構(内部の構成は隠れ線)で示す正面図、平面図、右側面図である。
図4】本実施形態に係る座席装置の免振機構を示す斜視図である。
図5】本実施形態に係る座席装置の免振機構を示す正面図、平面図、右側面図である。
図6】本実施形態に係る座席装置の免振機構の制振部を示す斜視図である。
図7】本実施形態に係る座席装置の免振機構の規制部を示す斜視図である。
図8】本実施形態に係る座席装置の免振機構の規制部を示す断面図である。
図9】本実施形態に係る座席装置を示す斜視図である。
図10】本実施形態に係る座席装置を示す右側面図である。
図11】本実施形態に係る座席装置を示す正面図である。
図12】本実施形態に係る座席装置を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
図1図12は、本発明の一実施形態を示している。
本実施形態に係る座席装置10の免振機構11は、座席1の固定側から座席1に伝わる振動を減衰可能であり、かつ振動が減衰される方向を座席1の特定方向に制限可能な機構である。なお、座席1の種類は特に限定されないが、以下、移動可能な乗物の一例である鉄道車両において、客室内に装備する1人掛け用の腰掛に適用した場合を例に説明する。なお、座席1の固定側とは、鉄道車両の車体の床面が相当する。
【0011】
<座席装置10の概要>
図1に示すように、座席装置10は、座席1(図9参照)のほか、免振機構11と、床面上に略水平に固定された固定プレート12と、該固定プレート12上に対向して略水平方向に変位可能に支持された座席1側の可動プレート13と、を備えている。なお、固定プレート12と可動プレート13は、免振機構11の構成の一部をなすものでもある。
【0012】
免振機構11は、前記各プレート12,13間に設けられ、走行中に固定プレート12側から座席1に伝わる振動を減衰させる制振部20と、同じく前記各プレート12,13間に設けられ、前記制振部20により振動が減衰される方向を座席1の特定方向に制限する規制部30と、を備えてなり、詳しくは後述する。本実施形態における「座席1の特定方向」とは、座席1の前後方向と直交する左右方向であり、これについても詳しくは後述する。
【0013】
図9図12に示すように、さらに座席装置10は、座席1側の可動プレート13上に重ね合わせて一体に固定された中継プレート14と、該中継プレート14上に対向して略水平方向に回転可能に支持された台座プレート15と、を備えている。ここで中継プレート14は、可動プレート13上に座席1を回転可能に支持するために介装する部材であり、例えば円盤形の金属板により形成されている。
【0014】
また、台座プレート15は、その上に座席1を取り付ける部材であり、例えば前記中継プレート14と同様に、円盤形の金属板により形成されている。本実施形態における台座プレート15は、座席1とは別体の部品として、この上に座席1の底面側を後付けするが、他に例えば座席1の底面をなす台枠そのものとして構成しても良い。
【0015】
台座プレート15は、回転機構16を介して中継プレート14上に水平方向に回転可能に支持されている。ここで回転機構16は、全体的には円盤状となる周知の製品であり、例えば内外一対のリング状の回転盤が、これらの間にベアリング等を介在させて互いに回転可能に組み合わせて構成されている。
【0016】
回転機構16は、例えば外側の回転盤が中継プレート14に固定され、内側の回転盤が台座プレート15に固定される。台座プレート15上の座席1は、回転機構16によって、例えば車両の進行方向に合わせて、車両前方を向く初期位置と、180度回転して逆方向を向く反転位置とに回転可能であり、各位置にて座席1を回転不能に拘束するロック機構も備えている。なお、回転機構16における回転動作は、電動あるいは手動のどちらでも構わない。
【0017】
<座席1の概要>
図9図12に示すように、台座プレート15上の座席1は、1人掛け用の腰掛として構成されている。座席1は、各図中ではフレーム構造のみを図示して外装部品は図示省略したが、1人分の座部2の後端側に、座部1と同じく1人分の背凭れ3がリクライニング可能に支持されている。また、座部2の両側には、座部2を側方から覆う一対の袖部4,4が設けられている。
【0018】
座席1においては、その回転位置に関わらず、着座者の正面側となる前方とその反対側の後方の双方向を「前後方向」とし、この前後方向と直交する右側と左側の双方向を「左右方向」とする。図9に代表して付記した矢印において、X軸、Y軸およびZ軸は、それぞれ座席1の前後方向、左右方向および上下方向を示している。なお、鉄道車両の場合、その進行方向に延びる線路と直交する枕木に喩えて、前記左右方向を枕木方向と称することもある。
【0019】
<免振機構11について>
図1に概略的に示すように、免振機構11は、座席1の固定側の固定プレート12から座席1の可動側の可動プレート13に伝わる走行中の振動を減衰可能であり、かつ振動が減衰される方向を座席1の特定方向に制限可能な構成である。免振機構11は、固定プレート12と可動プレート13のほか、各プレート12,13間に設けられた制振部20と規制部30を備えている。なお、図1では、前述した中継プレート14および台座プレート15は図示省略し、可動プレート13上に座席1を記している。
【0020】
図2は、免振機構11を内部の構成を隠れ線(破線)で示す斜視図である。図3も、免振機構11を内部の構成を隠れ線(破線)で示しており、図3では、免振機構11を平面視で見た状態を正面図とし、上側に平面図、その下側に正面図、その右側に右側面図を示している。また、図4は、免振機構11の外観のみを示す斜視図である。図5も、免振機構11の外観のみを示しており、図5でも、免振機構11を平面視で見た状態を正面図とし、上側に平面図、その下側に正面図、その右側に右側面図を示している。
【0021】
<<固定プレート12>>
図2図5に示すように、固定プレート12は、床面上に略水平に固定されて座席装置10全体のベースをなすものである。固定プレート12は、例えば角取りされた長方形の金属板により形成されている。ここで固定プレート12は、その短辺が座席1の前後方向と平行となり、その長辺は座席1の左右方向と平行となるように配される。
【0022】
固定プレート12の中央には、前記回転機構16の内側に合致する円形の開口部12aが設けられている。また、固定プレート12の適所には、床面に固定するためのネジ孔や、後述する制振部20や規制部30を取り付けるための孔や溝等が設けられている。なお、固定プレート12は、床面上に直に固定しても良く、あるいは別部材を介して床面に固定しても良い。さらに、固定プレート12は、必ずしも単体の部品である必要はなく、床面をなす車体の一部として構成しても良い。
【0023】
<<可動プレート13>>
図2図5に示すように、可動プレート13は、前記固定プレート12上に対向して略水平方向に変位可能に支持され、その上に免振機構11以外の座席装置10の構成部品を全て取り付けるものとなる。ここで可動プレート13は、固定プレート12に対して水平方向に変位可能であるが、後述する規制部30により、実際には水平方向のうち特定方向への変位に制限される。
【0024】
可動プレート13も、前記固定プレート12と同様に、例えば角取りされた長方形の金属板により形成されている。ここで可動プレート13は、その短辺が座席1の前後方向と平行となり、その長辺は座席1の左右方向と平行となるように配される。可動プレート13の中央にも、固定プレート12の開口部12aに合致する円形の開口部13aが設けられている。
【0025】
また、可動プレート13の適所には、中継プレート14に固定するためのネジ孔や、次述する制振部20や規制部30を取り付けるための孔や溝等が設けられている。なお、可動プレート13は、前記中継プレート14も兼ねる一部品として構成することも可能であり、その場合、別部品の中継プレート14は不要となる。すなわち、可動プレート13上に、回転機構16を介して台座プレート15を回転可能に直接支持しても良い。
【0026】
<<制振部(制振ゴム)20>>
制振部20は、座席1の固定側から座席1に伝わる振動を減衰させる機能を有するものであれば何でも良く、例えば制振ゴムが適している。ここで制振ゴムは、全体的には円柱状となる周知の製品であり、例えば外筒と内筒の間にゴムが充填されて構成されている。図6に示すように、制振ゴムの上下の端面には、それぞれ外筒または内筒に固定されたブラケット21と座金22を備えている。以下、制振部20の代わりに制振ゴム20とも表記する。
【0027】
制振ゴム20は、例えば下端のブラケット21が固定プレート12の上面に固定され、上端の座金22が可動プレート13の下面に固定される。制振ゴム20は、固定プレート12側からの振動を受けると軸心より全方向に弾性変形し、可動側に伝わる振動を減衰させることができる。制振ゴムは、一般に防振ゴムとも称されており、主たる構成のゴムの内部摩擦によって所定のバネ定数で弾性変形する。
【0028】
本実施形態の制振ゴム20は、車両の走行中における座席1の振動減衰を目的とするため、走行時の振動データや座席1の重量等を考慮して、最適なバネ定数のものを採用すると良い。また、制振ゴム20の類いとは別に、ゴム板と鋼板を交互に積層し貼り合わせて構成した免振ゴムも知られているが、本発明における制振部20は、座席1の振動を減衰できるものであれば、制振ゴムや免振ゴムに限定されるものでもない。なお、制振ゴム自体のより詳細な構成は、一般的であるので説明は省略する。
【0029】
<<規制部(スライドレール)30>>
規制部30は、前記制振ゴム20により振動が減衰される方向を座席1の特定方向に制限する機能を有するものであれば何でも良く、例えばスライドレールが適している。図2に示すように、本実施形態では一対のスライドレールが、固定プレート12と可動プレート13の間で、各プレート12,13の長辺の内側に沿って互いに平行に配置されている。以下、規制部30の代わりにスライドレール30とも表記する。
【0030】
図7に示すように、スライドレール30は、固定プレート12の上面に固定されるアウターレール31と、可動プレート13の下面に固定され前記アウターレール31の内側に摺動可能に嵌められるインナーレール32と、を備えてなる。アウターレール31およびインナーレール32は、両レールが相対的に摺動可能に組み合わされる構造上、それぞれ全体的に直線状に形成されている。
【0031】
図8に示すように、アウターレール31は、上面側が開口した溝状断面で直線状に延びるように形成されている。一対のアウターレール31,31は、固定プレート12上で左右方向と平行に互いに離隔して並ぶように配置され、固定プレート12の上面側にネジ等の固着手段で直接固定されている。一方、インナーレール32は、直線状に延びる略角材状に形成されており、アウターレール31の開口溝内でリテーナ33上に支持されたボールベアリング34を介して長手方向にスライド可能に嵌め込まれている。このインナーレール32上に、可動プレート13の下面側がネジ等の固着手段で直接固定されている。
【0032】
インナーレール32の断面形状において、下面にはリテーナ33の中心に沿って隆起し延びる凸条が嵌まる凹溝が形成され、両側面にはボールベアリング34が転動可能に嵌る弧状断面の窪みが形成されている。このような構成のインナーレール32は、アウターレール31の上面開口からは抜け出ないように組み合わされている。なお、リテーナ33は、例えば合成樹脂によりアウターレール31の内側に収まる大きさで、図8に示したように上面側が開口した溝状断面に形成され、その両側壁にボールベアリング34が所定間隔おきに並ぶ状態に収まる孔が設けられている。
【0033】
<座席装置10の免振機構11の作用>
次に、本実施形態に係る座席装置10の免振機構11の作用を説明する。
図1に示すように、車両の床面上に固定プレート12を略水平な状態で固定し、その上面側に免振機構11の制振ゴム20とスライドレール30を介して、可動プレート13を固定する。図2に示すように、本実施形態の制振ゴム20は、各プレート12,13の片隅に1つだけ設けられている。
【0034】
制振ゴム20の数は、個々の制振ゴム20のバネ定数や座席1の総重量等を考慮して定められる。これらの設計事項を勘案した結果、本実施形態では制振ゴム20は1つで足りるとした。各プレート12,13の四隅には、それぞれ制振ゴム20を取り付ける凹部が予め形成されている。
【0035】
従って、制振ゴム20が1つで足りなければ、例えば各プレート12,13の対角線上に2つ、あるいは最大4つと、必要な振動の減衰性能に応じて適宜選択すれば良い。なお、制振ゴム20の配置を、各プレート12,13の角隅としたことにより、外側の2方向からアクセスしやすく、組み付け時だけでなく保守点検や交換時にも容易に対応することが可能となる。
【0036】
スライドレール30は、本実施形態では一対が各プレート12,13の長辺と平行に配置されている。従って、座席1側の可動プレート13は、固定プレート12に対して座席1の左右方向にスライド可能に支持される。ここでスライドレール30をなすアウターレール31とインナーレール32との摺動抵抗は、リテーナ33やボールベアリング34によって軽減されている。スライドレール30自体としては、耐荷重は大きく摺動抵抗は小さいものが適しており、スライドを止めるロック機構の類いは備えず、スライドフリーな状態にある。なお、座席1の総重量は比較的重い方が、遠心力が効きやすくなり免振機能を生かすことができる。
【0037】
スライドレール30は、各プレート12,13の長辺と平行に配置されるため、インナーレール32側、すなわち座席1の可動側の水平方向における移動は、座席1の左右方向に限定される。その結果、前述した制振ゴム20によって、座席1の振動を減衰させる方向は、座席1の特定方向として「左右方向に」に制限される。これにより、従来の鉄道車両の車両用シートでは、外装のクッション性によって軽減することができなかった座席1の左右方向の振動を軽減することが可能となる。従って、着座者が左右方向の振動により袖部4にぶつかる事態を防ぐことができる。
【0038】
また、座席1の台座プレート15は、可動プレート13と一体の中継プレート14上に回転機構16を介して支持されている、従って、座席1の向きは、車両の進行方向に合わせて前方または後方と適宜反転させることができる。ここで座席1の車体に対する前後方向は、180度回転すると逆向きとなるが、座席1自体における前後方向は、座席1の反転によって変わるものではなく、座席1の左右方向も同様に座席が反転しても変わらない。
【0039】
その他、本実施形態における免振機構11では、固定プレート12と可動プレート13とが、これらの間に制振ゴム20およびスライドレール30を介して予め一体に組み合わされてユニットをなしている。これにより、免振機構11は、座席1の組み立て時において一部品として取り扱いやすく、組み立て作業も容易となる。
【0040】
<本発明の構成と作用効果>
以上、本実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではない。前述した実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0041】
[1]先ず、本発明は、
座席1が固定側に対して変位可能に支持された座席装置10に備わる免振機構11において、
座席1の固定側から座席1に伝わる振動を減衰可能であり、かつ振動が減衰される方向を座席1の特定方向に制限可能であることを特徴とする。
【0042】
本免振機構11によれば、座席1の固定側から座席1に伝わる振動を減衰させることができる。ここで座席1の振動を減衰させる方向を、座席1の特定方向だけに制限することができる。すなわち、減衰された振動による座席1の変位は、座席1の特定方向に制限される。
【0043】
これにより、座席1の固定側から座席1に伝わる様々な方向の振動のうち、所望する特定の方向に限って振動を減衰することが可能となる。この特定の方向以外の他の方向については、特に振動を減衰させる必要はなく、余計な構成を省いて構成を簡易化することも可能となる。
【0044】
[2]また、本発明では、
前記特定方向は、座席1の前後方向と直交する左右方向であることを特徴とする。
これにより、従来の鉄道車両の車両用シートでは、他の構成によっても軽減することができなかった座席1の左右方向の振動を軽減することが可能となる。従って、例えば着座者が左右方向の振動により袖部4にぶつかる事態を防ぐことができる。なお、座席1の左右方向以外の上下方向や前後方向の振動に関しては、座席1の外装のクッション性に任せれば良い。
【0045】
[3]また、本発明では、
座席1の固定側と座席1との間に設けられ、前記固定側から座席1に伝わる振動を減衰させる制振部20と、
座席1の固定側と座席1との間に設けられ、前記制振部20により振動が減衰される方向を前記特定方向に制限する規制部30と、を備えることを特徴とする。
このように、本免振機構11は、最低限2つの構成要素によって比較的簡易に構成することができる。
【0046】
[4]また、本発明では、
座席1の固定側は、移動可能な乗物の床面であり、
前記床面上に略水平に固定される固定プレート12と、
前記固定プレート12上に対向して略水平方向に変位可能に支持された座席1側の可動プレート13と、を備え、
前記制振部20は、前記固定プレート12と前記可動プレート13との間で上下端が各プレートに固定され、乗物の走行中に前記固定プレート12から振動を受けると水平方向に弾性変形し、前記可動プレート13に伝わる振動を減衰させる制振ゴム20からなり、
前記規制部30は、前記固定プレート12に対して前記可動プレート13を前記特定方向にスライドさせるスライドレール30からなることを特徴とする。
【0047】
このように本座席装置10を、乗物に装備することで、特に乗物の走行中に問題となる座席1の振動に対処することができる。また、本免振機構11は、具体的には例えば固定プレート12、可動プレート13、制振ゴム20、スライドレール30という簡易な部品や周知の製品によって、いっそう容易に構成することができる。
【0048】
[5]また、本発明では、
前記固定プレート12と前記可動プレート13とは、前記制振ゴム20および前記スライドレール30を介して一体に組み合わせたユニットをなすことを特徴とする。
これにより、免振機構11は、座席1の組み立て時において、一部品として取り扱いやすく、また組み立て作業も容易となる。
【0049】
[6]また、本発明では、
前記可動プレート13上に、座席1は回転機構16を介して回転可能に支持されたことを特徴とする。
このように、座席装置10に、回転機能16も付加して組み合わせることにより、よりいっそう使い勝手を向上させることが可能となる。よって、座席1自体の付加価値を高めることができ、高級感を与えるものとなる。
【0050】
以上、本実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば固定プレート12、可動プレート13、制振ゴム20、スライドレール30等の形状は、図示したものに限定されることはない。また、座席1ないし座席装置10は、鉄道車両に限らず地上を走行する車両全般(例えば乗用車やバス等)や、航空機、船舶等に装備されるものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、様々な用途の座席を対象とした座席装置の免振機構として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…座席
10…座席装置
11…免振機構
12…固定プレート
13…可動プレート
14…中継プレート
15…台座プレート
16…回転機構
20…制振ゴム
30…スライドレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12