(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】バッテリーケース
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6556 20140101AFI20240808BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240808BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240808BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240808BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240808BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240808BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/653
H01M10/6568
H01M50/204 401H
(21)【出願番号】P 2020140189
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】安田 英司
(72)【発明者】
【氏名】中村 繁央
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ シュウェンデレ
(72)【発明者】
【氏名】レナーテ クンツ
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0212355(US,A1)
【文献】特開2008-171628(JP,A)
【文献】特開平07-006796(JP,A)
【文献】中国実用新案第203260693(CN,U)
【文献】特開2015-149212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り壁材と底板材と側壁材とを備え、仕切り壁材と底板材と側壁材は、それぞれ中空部を有するアルミ押出形材であり、底板材は、両側の縁部を仕切り壁材に係合して取付けてあり、側壁材は、仕切り壁材と底板材の長手方向の両端面に当接して固定してあり、側壁材に底板材の中空部に連通する孔を設けて、側壁材の中空部と底板材の中空部を連通させて冷媒の流路を形成してあることを特徴とするバッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等に搭載されるバッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のバッテリーは、バッテリーケースに収容されて車体の床下等に設置されている。従来のバッテリーケースはスチール製であったために重く、軽いものが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、軽いバッテリーケースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明によるバッテリーケースは、仕切り壁材と底板材と側壁材とを備え、仕切り壁材と底板材と側壁材は、それぞれ中空部を有するアルミ押出形材であり、底板材は、両側の縁部を仕切り壁材に係合して取付けてあり、側壁材は、仕切り壁材と底板材の長手方向の両端面に当接して固定してあり、側壁材に底板材の中空部に連通する孔を設けて、側壁材の中空部と底板材の中空部を連通させて冷媒の流路を形成してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明によるバッテリーケースは、仕切り壁材と底板材と側壁材とを備え、仕切り壁材と底板材と側壁材は、それぞれ中空部を有するアルミ押出形材であり、底板材は、両側の縁部を仕切り壁材に係合して取付けてあり、側壁材は、仕切り壁材と底板材の長手方向の両端面に当接して固定してあり、側壁材に底板材の中空部に連通する孔を設けて、側壁材の中空部と底板材の中空部を連通させて冷媒の流路を形成してあるので、従来のスチール製のバッテリーケースと比べて軽くすることができ、尚且つ側壁材と底板材の中空部により構成された冷媒の流路に冷媒を流すことで、バッテリーを冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】本発明のバッテリーケースの一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】同バッテリーケースの冷媒流路を示す斜視図である。
【
図4】仕切り壁材と底板材との連結方法を示す縦断面図である。
【
図5】仕切り壁材と底板材とを連結した後、側壁材を取付けるときの状態を示す斜視図である。
【
図7】底板材と側壁材との連結部を示す縦断面図であって、(a)はろう材が溶ける前の状態、(b)はろう材が溶けてろう付けされた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~3は、本発明のバッテリーケースの一実施形態を示している。本バッテリーケースは、電気自動車の床下に搭載されるものである。本バッテリーケースは、
図1,2に示すように、前後方向に間隔をおいて配置された仕切り壁材1,1,…と、仕切り壁材1同士の間に設けた底板材2a,2b,2c,2dと、仕切り壁材1,1,…及び底板材2a,2b,2c,2dの長手方向の両端面に当接して固定した左右の側壁材3,3とで構成されており、バッテリーの収容部9が前後方向に4つ並べて設けてある。仕切り壁材1と底板材2a,2b,2c,2dと側壁材3は、それぞれ中空部4a,4b,5a,5b,5c,6a,6b,6c,6dを有するアルミ押出形材で形成されている。
【0008】
仕切り壁材1は、
図1に示すように、矩形断面の中空部4a,4bが上下に2つ並べて形成されている。仕切り壁材1の下部の前後両側面には、底板材2a,2b,2c,2dを連結するための係合溝10が突出して形成されており、係合溝10は下方に膨らむ円弧状に曲がった形になっている。
【0009】
底板材2a,2b,2c,2dは、
図1に示すように、平らな板状部11と、板状部11の下面側に突出して前後方向に間隔をおいて形成された3つの中空部5a,5b,5cと、前後の縁部に形成された係合部12とを有している。各中空部5a,5b,5cは、後述するように冷媒の流路8となるものであり、3つ並んだ中空部5a,5b,5cは後側(冷媒下流側)に位置するものほど前後方向の長さを長くして面積を大きくしてある。また、前側(冷媒上流側)に配置される底板材2aと後側に配置される底板材2dとでは、後側に配置される底板材2dの方が中空部5a,5b,5cを全体的に大きくしてある。各中空部5a,5b,5cは、前後の端部が円弧状となった長孔状の形状になっている。前後の係合部12は、円弧状に曲がった形になっている。
【0010】
仕切り壁材1と底板材2a,2b,2c,2dとは、
図4(a)~(c)に示すように、底板材2a,2b,2c,2dの係合部12を仕切り壁材1の係合溝10に挿入して回転させることで、係合して取付けてある。底板材2a,2b,2c,2dの両側に仕切り壁材1を係合すると、
図4(c)に示すように自立する。
本バッテリーケースは、底板材2a,2b,2c,2dと仕切り壁材1とからなるユニットの連結数を変更することで、バッテリーの収容部9の数が変化する。したがって、同じ材料を使用して、自動車の大きさ等に応じてバッテリーの容量を変化させるのが容易である。
【0011】
側壁材3は、
図2に示すように、縦壁部13と横壁部14とを有する略L型の断面形状となっており、仕切り板材1及び底板材2a,2b,2c,2dの端面に当接する縦壁部13に中空部6a,6bが上下に2つ並べて形成してあり、下側の中空部6bは上側の中空部6aよりも小さくなっている。横壁部14は、縦壁部13の下側の中空部6bに隣接する形で、中空部6c,6dが2つ並べて設けてある。縦壁部13の下側の中空部6bは、
図3に示すように、先に述べた底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cと共に冷媒の流路8を構成するものであり、そのために当該中空部6bの内側の壁に、底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cと連通する孔7が長孔状に形成されている。各孔7は、
図6と
図7(a)に示すように、底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cより一回り小さく形成されている。具体的には、中空部5a,5b,5cの内寸と孔7との大きさの差Yは、片側で約2mmずつ小さくしてある。
側壁材3は、
図7(b)に示すように、底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cの内側でろう付けにより固定してある(図中の符合15はろう材を示している)。なお、ろう付けの具体的な手順については後述する。
【0012】
本バッテリーケースは、
図3に示すように、側壁材3の縦壁部13の下側の中空部6bと底板材2a,2b,2c,2dの各中空部5a,5b,5cとを連通させて、冷媒の流路8が構成されている。冷媒は、側壁材3の中空部6bをエアコンのラジエーターと管で繋ぐことでラジエーターから導入してもよいし、それとは別の冷却ポンプと中空部6bを繋いで冷却ポンプから供給することもできる。底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cの大きさを、後側(冷媒下流側)にいくにつれて大きくしてあることで、圧力損失により流量差が生じるのを防ぎ、各中空部5a,5b,5cに冷媒を均一に流すことができる。
【0013】
次に、本バッテリーケースの製作方法について説明する。まず、
図4に示すように、仕切り壁材1,1,…と底板材2a,2b,…とを必要な数だけ連結する。
次に、
図6と
図7(a)に示すように、底板材2a,2b,2c,2dの各中空部5a,5b,5cに、直径約2mmの細い棒状のろう材15を中空部5a,5b,5cに沿うように輪状に曲げて挿入する。底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cに加え、仕切り壁材1の中空部4a,4bにもろう材15を挿入してもよい。
その後、
図5に示すように、孔7の加工がされた側壁材3,3を、孔7の位置を底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cに合わせるようにして底板材2a,2b,2c,2d及び仕切り壁材1,1,…の端面に当接させ、図示しない治具で固定する。
その後、これを熱処理炉に入れ、590~605℃に昇温し1~10分保持する。すると、中空部5a,5b,5cに入れたろう材15が溶けて流れ、側壁材3の孔7の周囲の壁で溶けたろう材15が堰き止められる。
その後、冷却すると、
図7(b)に示すように、ろう材15が中空部5a,5b,5cの内面と側壁材3の孔7の周囲の壁にまたがる形で固まり、これにより底板材2a,2b,2c,2dが中空部5a,5b,5cの内側の全周で側壁材3とろう付けされる。
【0014】
以上に述べたように本バッテリーケースは、仕切り壁材1,1,…と底板材2a,2b,2c,2dと側壁材3,3とを備え、仕切り壁材1と底板材2a,2b,2c,2dと側壁材3は、それぞれ中空部4a,4b,5a,5b,5c,6a,6b,6c,6dを有するアルミ押出形材であり、底板材2a,2b,2c,2dは、両側の縁部(係合部)12を仕切り壁材1に係合して取付けてあり、側壁材3は、仕切り壁材1,1,…と底板材2a,2b,2c,2dの長手方向の両端面に当接して固定してあり、側壁材3に底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cに連通する孔7を設けて、側壁材3,3の中空部6bと底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cを連通させて冷媒の流路8を形成してあるので、従来のスチール製のバッテリーケースと比べて軽くすることができ、尚且つ側壁材3,3と底板材2a,2b,2c,2dの中空部6b,5a,5b,5c,6bにより構成された冷媒の流路8に冷媒を流すことで、バッテリーを冷却することができる。
底板材2a,2b,2c,2dは、中空部5a,5b,5cが前後方向に間隔をおいて設けてあることで、側壁材3の孔7の加工が容易であり、孔加工による側壁材3の強度低下を防止できる。また、各中空部5a,5b,5cに冷媒をスムーズに流すことができる。
底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cの大きさは、冷媒上流側に位置する中空部5aよりも冷媒下流側に位置する中空部5cの方が大きくしてあることで、圧力損失による流量差を抑え、各中空部5a,5b,5cに冷媒を均等に流すことができる。なお、一つの底板材2a,2b,2c,2dに形成される中空部5a,5b,5cの大きさは同じとし、下流側に配置される底板材ほど中空部5a,5b,5cの大きさを大きくしてもよい。
側壁材3は、中空部6b,6c,6dを左右方向に複数並べて設けてあることで、側面に車が衝突するなどして衝撃が加わったときに、その中空部6b,6c,6dが変形することで衝撃を吸収し、バッテリーが破損するのを防ぐことができる。
また本バッテリーケースは、側壁材3の孔7を底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cの内寸より小さく形成してあり、底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cの内側で側壁材3と底板材2a,2b,2c,2dをろう付けしてあるので、側壁材3の孔7周辺がろう材15の受けとなるため、必要最低限のろう材15で効率よくろう付け接合を行うことができる。また、底板材2a,2b,2c,2dの中空部5a,5b,5cの内側で側壁材3の孔7周辺とろう付けしてあることで、ろう材15が冷媒の漏れを防ぐシールの役目を果たし、別途シールを行わなくても冷媒が漏れるのを防ぐことができる。
【0015】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。仕切り壁材、底板材及び側壁材の断面形状は、適宜変更することができる。側壁材の仕切り壁材及び底板材との固定は、溶接、嵌合、ネジ止め等で行うこともできる。また、底板材の中空部の外側で側壁材とろう付けすることもできる。本発明のバッテリーケースの用途は特に限定されるものではなく、電気自動車やハイブリッドカー等の普通乗用自動車用をはじめとして、ゴルフ場等のカート、電動バイク等、軽量化が求められるバッテリーのためのケースとして幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0016】
1 仕切り壁材
2a,2b,2c,2d 底板材
3 側壁材
4a,4b 仕切り壁材の中空部
5a,5b,5c 底板材の中空部
6a,6b,6c,6d 側壁材の中空部
7 孔
8 冷媒の流路