(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】はかりの検査装置およびはかりの検査装置の検査方法
(51)【国際特許分類】
G01G 23/01 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
G01G23/01 K
(21)【出願番号】P 2020142179
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 好昭
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203692(JP,A)
【文献】特開2016-057098(JP,A)
【文献】特開2016-057097(JP,A)
【文献】特公昭61-044254(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/14
G01G 1/00 - 9/00
G01G 21/00 - 23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象はかりを検査または検定するはかりの検査装置であって、
検査対象はかりの上方を跨った姿勢で固定部により支持された支持固定枠と、鉛直荷重を発生する荷重発生装置とを備え、
荷重発生装置は、重錘と、この重錘の荷重を増幅する槓桿と、槓桿の支点から重点側の質量と槓桿の支点から力点側の質量とを吊り合わせる無駄目消し槓桿と、を有し、
支持固定枠により槓桿の支点および無駄目消し槓桿の支点を支持して、槓桿の自重および無駄目消し槓桿の自重を支持固定枠により受けた状態で、槓桿の重点からの荷重を検査対象はかりに負荷させるよう構成
し、
前記槓桿の重点からの荷重を受ける負荷受け部の上下位置を調整する昇降装置を検査対象はかりと負荷受け部との間に設置し、
重錘を負荷することによって荷重発生装置による増幅された荷重が負荷受け部に負荷されることにより発生する検査対象はかりの載台および支持固定枠の撓みにより傾斜する前記槓桿が水平となるように昇降装置の昇降部の上昇量を制御し、
槓桿の支点に設けられる支点刃と、前記負荷受け部に支持されて前記支点刃に当接する支点刃受けとの接触位置が変化しないようにロック可能なクランプ装置を設け、クランプ装置により前記接触位置が変化しないようにロックされた状態で荷重発生装置を移動自在に構成していることを特徴とするはかりの検査装置。
【請求項2】
荷重発生装置がロバーバル機構を有し、
槓桿により増幅された荷重が、ロバーバル機構を通して、検査対象はかりに負荷するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のはかりの検査装置。
【請求項3】
荷重発生装置が、重錘の荷重を増幅する第1槓桿と、第1槓桿により増幅された荷重をさらに増幅する第2槓桿と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のはかりの検査装置。
【請求項4】
支持固定枠が固定されている固定部としてのベースに対して横方向に移動可能であるとともに縦方向に昇降可能な縦横移動用昇降装置を有し、検査対象はかりが縦横移動用昇降装置上に載せられ、平面視してベースに対する荷重発生装置の荷重負荷位置が一定である一方、荷重発生装置の荷重を負荷する部分に対して、縦横移動用昇降装置により検査対象はかりを縦横方向に移動させることで検査対象はかりの荷重負荷位置を変更自在とされているとともに、縦横移動用昇降装置を上昇させることで、槓桿が水平になって平衡するよう制御可能であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のはかりの検査装置。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のはかりの検査装置を検査する検査方法であって、
検査対象はかりに代えて電子式のマスコンパレータを設置し、
荷重発生装置からの荷重がマスコンパレータに負荷された時の指示値と、検査装置をマスコンパレータ上から退避させて、マスコンパレータに検査装置の必要精度より高精度クラスの基準分銅を積載した時の指示値とを比較して、基準分銅積載時の指示値を基準として、検査装置の器差を求めるようにしたことを特徴とするはかりの検査装置の検査方法。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載のはかりの検査装置を検査する検査方法であって、
検査対象はかりに代えて高精度の基準はかりを設置し、
基準はかりにより、荷重発生装置からの荷重を計量し、その計量値を基準値として荷重発生装置からの所定負荷値との差を器差として求めることを特徴とするはかりの検査装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はかりの検定、使用中検査、定期検査(これらの検定、使用中検査および定期検査を、特に拘らない場合は単に検査と称す)に適している、はかりの検査装置およびはかりの検査装置の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の取引や証明を行う際に使用される特定計量器や質量計は、計量法により、検定や検査に合格しないと取引や証明に使用することができない。また、前記検定や検査を行う際には、一部の例外を除いて基準分銅(または実用基準分銅)を使用しなければならない。例えば、精度等級3級6000目量の特定計量器について、検定をする場合には、分銅質量が100g以上1tにおいて基準器公差で表す質量の5/10万以内に収まっていることが必要要件であるので2級基準分銅(M1級)または2級実用基準分銅を用いなければならない。また、精度等級3級6000目量の特定計量器について、検査をする場合には、分銅質量が100g以上1tにおいて基準器公差で表す質量の15/10万以内に収まっていることが必要要件であるので、3級基準分銅(M2級)または3級実用基準分銅を用いなければならない。なお、以下において、基準分銅または実用基準分銅を単に基準分銅と称す。
【0003】
トラックスケールなどの秤量が大きな大型はかりにおいては、使用中検査を行う際や、修理後検定を行う際に、質量が大きい基準分銅を多数集めて検査や検定を行う現場まで運ばなければならないため、多大な運搬費用ならびに労力を要する。このため、使用中検査においては、昭和40年代初頭から、最大の試験荷重を以下のように決めている。
1.秤量が1tを超え、10t未満のはかりは、秤量の3/4付近(但し、秤量の3/4が1t未満の場合は1t)
2.秤量が10t以上のはかりは、秤量の3/5付近(但し、秤量の3/5が8t未満の場合は8t)
【0004】
さらに、定期検査または計量証明のための検査、およびこれに代わるものとして計量士が行う検査に細則の承認を受けた車両を以下の条件で使用することができるようにしている。すなわち、秤量が2tを超え、20t以下のはかりについては、5tを超える領域の検査(いわゆる器差検査)において基準分銅を用いる代わりに車両を使用してもよい(車両と基準分銅とを合わせて使用する)よう構成している。
【0005】
また、大型はかりの代表的なものであるトラックスケールでは、使用開始してから2年毎に定期検査を受ける必要がある。この2年毎の定期検査の際には、上記したように基準分銅および車両を用いて器差検査を行うが、この場合においても多大な費用がかかる。さらに、この定期検査で不合格となると、この後に、このトラックスケールを修理して検定を受け直さなければならないが、検定で合格するまでの間は使用できない。また、これらの修理、検定作業にも多大な費用がかかってしまう。つまり、修理後の検定の際には、定期検査時のような車両を使用することが許されておらず、秤量まで基準分銅を用いなければならないため、より多くの手間および時間と費用が発生する。
【0006】
以上のように、はかりの検定や検査を行う場合に、秤量(最大測定荷重)が大きいはかりに対しても基準分銅を用いなければならないという原則を貫くと、現場までの分銅運搬費用や多大な手間がかかるため、前述のように使用中検査においては、最大の試験荷重を秤量の3/4付近または3/5付近とし、検査荷重の一部を車両質量で代替してもよいという救済措置的な対応が法令でとられているのが実状である。
【0007】
しかし、この場合、はかりの試験荷重以上の測定については検査していないため、これらの測定範囲における測定結果の信頼性が極めて低いものとなってしまう。また、検定や検査には多大な手間と費用がかかるとともに、使用中検査で不合格となった場合には、再度、修理後の検定に合格するまでは、使用できないという課題がある。実際問題として、使用中検査が不合格となった場合、直ちに修理して、修理後の検定を受けようとしても秤量までの分銅を準備して現場へ運搬するには、例えば秤量40tのトラックスケールの場合では10t車4台が必要になるので、数日間を要することとなり、その間トラックスケールが使用できないこととなるので、使用者にとっては事業運営上大きな問題となる。
【0008】
このような課題に対処するものとして、特許文献1に開示されたはかりの検査装置がある。
図23、
図24に示すように、このはかりの検査装置150は、固定部(基礎部)152に固定された支持固定枠153を、検査対象はかり(トラックスケール)170の上方を跨ぐ姿勢で配置し、検査対象はかり170の載台171と支持固定枠153との間で上下方向に並ぶ姿勢で、油圧シリンダ装置などの荷重発生装置151と、検重用の基準はかり160と、を上下方向に並ぶ姿勢で直列に配設させている。そして、このはかりの検査装置150を用いて、荷重発生装置151から荷重を発生させ、基準はかり160により荷重を測定しながら、検査対象はかり170の測定値を検出するとともにこれらの値を比較する(器差を確認する)ことで、検査対象はかり170を検査するよう構成されている。
【0009】
このはかりの検査装置150を用いると、基準分銅などを用いることなく、検査対象はかり170を検査(または検定)することが可能である。また、秤量(最大測定荷重)に対応した荷重を実際に検査対象はかり170などに負荷させて検査(または検定)することが可能となる。
【0010】
このはかりの検査装置150は、基準はかり160として、複数の槓桿163A、163B、163Cと増錘(重錘とも称せられる)164などを備えて、増錘164の質量を槓桿163A~163Cにより増幅して大きな秤量でも測定できるものが用いられている。このように、基準はかり160として槓桿163A~163Cを用いたいわゆる機械式はかりは、重力加速度の影響がないため、検査する地域が異なって重力加速度の変化があった場合でも、検査に悪影響を及ぼさない利点がある。また、基準はかり自身の計量精度を検査する際に、基準はかり160の載台161にこの基準はかり160よりも高精度クラスの基準分銅を載せることによって、基準はかり160自身の検査を実施可能であるという長所も有している。なお、基準はかり160には、基台165や、槓桿163A~163Cの支点を支持する支持台166A~166C、荷重受け台167などが設けられている。
【0011】
このはかりの検査装置150では、載台161、槓桿163A~163C、増錘164、基台165、荷重受け部162、荷重受け台167、支持台166A~166Cなどを有する基準はかり160の全体の質量(自重)が初期荷重として常に負荷された状態で検査を行う。したがって、検査時における0点(零点)設定をする際に、検査対象はかり170に負荷している基準はかり160の全荷重に対応する初期荷重を減算して(キャンセルして)、荷重が0であるとみなして検査することとなる。
【0012】
また、特許文献1の
図16、
図17などは、トラックスケールなどの大型はかり(大秤量のはかり)の例を示しているが、秤量の小さい体重計や台秤の定期検査でも、現状では、基準分銅を人力で積載して、検査を行っている。このような秤量100kg~1t程度の台秤は特定計量器として産業界で多数使用されており、工場内や病院、医院などの様々な場所で使用されている。
【0013】
しかし、
図24に示すはかりの検査装置150を用いて0点設定をする際には、載台161や槓桿163A~163Cや増錘164を有する基準はかり160の全質量に対応する初期荷重を差し引いているため、実際には、0点から大きく乖離した荷重点から検査を行うことになる。したがって、0点設定時に検査対象はかり170の測定荷重がから大きく乖離した荷重点からしか検査することができず、検査の信頼性が低下してしまう。
【0014】
また、電気式はかりなどからなる特定計量器の場合には、操作する者が、はかりに設けられている0点設定ボタンを押すなどして0点設定を行う(いわゆるワンタッチ設定をする)が、この場合には、秤量の4%を超えない範囲内で実行可能である。しかし、基準はかりの質量(自重)が大きいため、検査対象はかりの秤量の4%を超えてしまう場合が多くなり、この場合には、いわゆるワンタッチ設定をすることができないという課題が生じる。
【0015】
つまり、検査対象はかりが汎用的なトラックスケールの場合では秤量が20t~50t程度だが、小型のトラックスケールでは秤量が5t~15tなので、ワンタッチ0設定を行うためには、秤量5tの場合では基準はかりを1台使用する場合には5t×0.04=200kg、基準はかりを2台使用する場合には200kg/2=100kgとなるから、基準はかりそのものの構造を大幅に変更して自重の軽量化を図るか、基準はかり以外の方式を検討しなければならない。
【0016】
また、検査対象はかりが秤量の小さい体重計や台秤の定期検査でも現状の基準分銅を人力で積載して検査を行う際には以下の課題を抱えている。
【0017】
課題例1:秤量100kg~1t程度の台秤は特定計量器として産業界で多数使用されており、使用場所も工場内の様々な場所に設置されている。これらの内、設置場所から移動が困難なはかりについては、検定所または指定検査機関の計量士等が現地に訪問して検査することになる。その際には、10kgの基準分銅を20~100個(200kg~1t)を設置場所まで運搬する必要があり、多くの場合、駐車場からは人力で運搬車に載せて設置場所へ移動しなければならないため、雨天時などは困難を極めているのが実情である。したがって、検査対象はかりの傍に基準分銅を並べる作業が、実際の検査作業の数倍から数十倍の時間を要している。
【0018】
課題例2:各自治体で実施している集合検査場所(役所、学校、公共施設等)へ運送可能なはかりは、使用者が検査場所に持ってくるので課題例1のような問題は無い。しかし、例えば秤量200kgの体重計の一部に見られるように、小さい寸法の載台の上に10kg基準分銅を2個づつ、10段積んでいるが、その際、基準分銅が荷崩れしないように安全に最大の注意を払わなければならないので、安全を確保するために基準分銅を人力で載せ降ろししないで済む検査装置の要請が高い。これを基準はかり方式の検査装置で対応しようとすると、その自重は200kg×0.04=8kgとしなければならない。これは基準はかりの重量としては軽量すぎてほぼ絶望的な値である。このような観点からも、基準はかり方式以外の検査装置を検討することが望まれる。
【0019】
過去においては、トラックスケールの検査装置として、「基準槓桿」として計量法に規定され、一部の地域で定期検査に使用されていたものがある。しかし、この「基準槓桿」を用いたはかりの検査装置は、全国的に普及することなく廃れてしまった。その原因は、はかりの検査装置の使用方法と「基準槓桿」自身の検査方法とに困難さがあり、更にトラックスケールの基礎への適応並びに高精度化への対応がないことも起因して、特に改良の兆しもなく廃れてしまった。
【0020】
過去に使用されていた「基準槓桿」式のはかりの検査装置(槓桿式検査装置とも称す)を
図25~
図28に示す。ここで、
図25は従来のはかりの検査装置の正面図、
図26はこのはかりの検査装置が設置される大型はかり(トラックスケール)などの平面図、
図27は、はかりの検査装置の側面図、
図28はかりの検査装置に用いられる基準槓桿(基準てこ)である。このはかりの検査装置(槓桿式検査装置)は、一軸式荷重試験機の検査装置として実用化されていた以前の槓桿式検査装置を、大型はかり、特にトラックスケールを検査対象として展開したものであり、前記したトラックスケールが抱えている、基準分銅を使用して現地で定期検査することの困難さを解消する方法として開発されたものである。
【0021】
図25~
図29において、200は従来のはかりの検査装置(従来の槓桿式検査装置)、201は検査対象はかりの載台、202はこのはかりの検査装置200が設置される基礎、203ははかりの検査装置200の支持フレーム206を基礎202に連結するアンカー、である。
図26に示すように、検査対象はかりとしてのトラックスケールは、周囲が基礎202で囲まれており、検査対象はかりの載台201が基礎202から隙間を有した状態で配置されている。また、はかりの検査装置は、トラックの前輪が載る載台201の前側の重点201aと、トラックの後輪が載る載台201の後側の重点201bとに対応して、荷重が負荷される重点台213が設置されるように、載台201の重点201a、201bの近傍箇所にそれぞれ1つずつ、合計2箇所に配置される。
【0022】
図25、
図27、
図28に示すように、従来のはかりの検査装置200は、基礎202の両側辺に跨るように幅方向に延びるとともにその両端部がアンカー203およびアンカー連結部204を介して基礎202に連結され、載台201の上面から浮いた状態(隙間を有する状態)で配置された支持フレーム206と、支持フレーム206の両端部寄り箇所から中央に向けて斜め上方に延びて左右で合わせて山型に連結された負荷傾斜枠207と、左右の負荷傾斜枠207の上端部同士を連結する負荷連結枠208と、負荷連結枠208の下端部がその支点209aに上方から当接されるとともに、その力点209bに基準分銅が載せられる分銅皿210が吊り下げられる基準槓桿209と、基準槓桿209の重点209cが上方から当接される力受け部211と、力受け部211を下方から昇降可能な状態で受けて支持し、基準槓桿209が水平姿勢になるように昇降位置を調整する油圧ジャッキ(昇降装置)212と、油圧ジャッキ(昇降装置)212を支持する状態で載台201に載せられる重点台213と、基準槓桿209に取り付けられて基準槓桿209が水平になっていることを確認するための水平器(水準器からなる)214と、基準槓桿209の力点209b側を一時的に保持したり検査時での搖動を規制したりするストッパ215などから構成されている。
【0023】
そして、分銅皿210に基準分銅を載せるとともに、基準槓桿209が水平姿勢を維持させた状態で、比較的小さい荷重を基準槓桿209のてこ比により拡大して、基準槓桿209の重点209cに大荷重を生じさせ、重点台213などを介して高精度の荷重を検査対象のはかりに作用(負荷)させることができる。
【0024】
図27に示すように、実用化された基準槓桿209は単一の槓桿で、てこ比が10:1が多く、当時でも市場で使用されている秤量40tトラックスケールに対応可能なもので、力点209bに積載する基準分銅の合計値が2t、重点209cの基準荷重が20tである。この基準槓桿209をトラックスケールの長手方向の前後2箇所に設置して検査に使用していた。
【0025】
このはかりの検査装置(槓桿式検査装置)200を用いると、0点設定時に検査対象はかりに負荷される実際の荷重は、基準槓桿209や分銅皿210の自重と、力受け部211、油圧ジャッキ(昇降装置)212の重量のみが負荷されることとなるので、
図24に示すはかりの検査装置150のように、載台161、槓桿163A~163C、増錘164、基台165、荷重受け部162、荷重受け台167、支持台166A~166Cなどを有する基準はかり160の全体の質量(自重)が初期荷重として常に負荷されている場合と比較して、0点設定時に検査対象はかりに負荷される実際の荷重を小さくすることが可能となる。
【0026】
なお、
図29は、基準槓桿209を検査する状態を簡略的に示す。検査時には、大きな架台(秤架と称する)220に設けた支持台221により、基準槓桿209の重点209cを支点として支持する。また、基準槓桿209の力点209bには使用時と同じく2tの基準分銅222を分銅皿に載せて、また、基準槓桿209の支点209aを検査時には重点とし、18tの荷重を適宜な分銅積載皿216に基準分銅217を積み上げて、例えば、てこ比9:1の大型不等比てんびんとしての検査を行う。そして、各検査荷重で「基準槓桿209」が水平になるために力点に小分銅(基準分銅222)を加除して平衡状態とすれば、その加除した小分銅の値が器差となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、
図25~
図27に示す従来のはかりの検査装置(槓桿式検査装置)200でも、0点設定時に検査対象はかりに負荷される実際の荷重は、基準槓桿209や分銅皿210の自重と、力受け部211、油圧ジャッキ(昇降装置)212の重量が負荷されることになる。つまり、従来のはかりの検査装置(槓桿式検査装置)200でも、0点設定時には基準槓桿209の自重などが負荷されているため、実際には、0点からある程度乖離した荷重点から検査を行うことになり、検査の信頼性が低下してしまう。
【0029】
また、検査対象はかりが秤量の小さい体重計や台秤の定期検査でも、0点設定時に検査対象はかりに負荷される実際の荷重は、小さいことが望ましいが、
図25~
図27に示す従来のはかりの検査装置(槓桿式検査装置)200を用いると、秤量の4%を超えない範囲内で実行することが困難となり、いわゆるワンタッチ設定をすることができなくなってしまう。
【0030】
本発明は上記課題を解決するもので、定期検査や使用中検査などの検査を行う場合に用いることができ、検査する場合の0点設定時において検査対象はかりに負荷される実際の荷重を小さくすることが可能なはかりの検査装置およびはかりの検査装置の検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題を解決するために、本発明は、検査対象はかりを検査または検定するはかりの検査装置であって、検査対象はかりの上方を跨った姿勢で固定部により支持された支持固定枠と、鉛直荷重を発生する荷重発生装置とを備え、荷重発生装置は、重錘と、この重錘の荷重を増幅する槓桿と、槓桿の支点から重点側の質量と槓桿の支点から力点側の質量とを吊り合わせる無駄目消し槓桿と、を有し、支持固定枠により槓桿の支点および無駄目消し槓桿の支点を支持して、槓桿の自重および無駄目消し槓桿の自重を支持固定枠により受けた状態で、槓桿の重点からの荷重を検査対象はかりに負荷させるよう構成していることを特徴とする。
【0032】
この構成によれば、荷重発生装置が、重錘と、この重錘の荷重を増幅する槓桿と、を有するだけでなく、これらに加えて、槓桿の支点から重点側の質量と槓桿の支点から力点側の質量とを吊り合わせる無駄目消し槓桿が設けられている。また、支持固定枠により槓桿の支点および無駄目消し槓桿の支点が支持され、槓桿の自重および無駄目消し槓桿の自重の多くの部分が支持固定枠により受けられる。したがって、0点設定時において、検査対象はかりに負荷する槓桿の自重および無駄目消し槓桿の自重を大幅に小さくすることができて、負荷される実際の荷重を小さくすることができる。
【0033】
また、槓桿の重点からの荷重を受ける負荷受け部の上下位置を調整する昇降装置を検査対象はかりと負荷受け部との間に設置し、重錘を負荷することによって荷重発生装置による増幅された荷重が負荷受け部に負荷されることにより発生する検査対象はかりの載台および支持固定枠の撓みにより傾斜する槓桿が水平となるように昇降装置の昇降部の上昇量を制御すると好適である。この構成により、重錘を負荷することによって検査対象はかりの載台および支持固定枠が撓んでも、槓桿を良好に水平とさせて槓桿が平衡状態となるように制御することができるので、検査精度を向上することができる。
【0034】
また、本発明の荷重発生装置がロバーバル機構を有し、槓桿により増幅された荷重が、ロバーバル機構を通して、検査対象はかりに負荷するよう構成されていると好適である。を特徴とする。これにより、ロバーバル機構によって、鉛直荷重に近い荷重だけを出力することが可能となり、検査を正確に行うことができる。
【0035】
また、荷重発生装置が、重錘の荷重を増幅する第1槓桿と、第1槓桿により増幅された荷重をさらに増幅する第2槓桿と、を備えていると好適である。この構成によれば、槓桿として第1槓桿と第2槓桿とを備えているので、これらの第1槓桿と第2槓桿とにより重錘の荷重を大幅に増幅することができ、ひいては、槓桿の力点に吊り下げた重錘載台などに載せる重錘の質量を大幅に軽減でき、これにより、重錘を積載する手間や労力を大幅に軽減できる。
【0036】
また、槓桿の支点に設けられる支点刃と、前記負荷受け部に支持されて前記支点刃に当接する支点刃受けとの接触位置が変化しないようにロック可能なクランプ装置を設け、クランプ装置により前記接触位置が変化しないようにロックされた状態で荷重発生装置を移動自在に構成してもよい。
【0037】
この構成により、荷重発生装置を移動する際や運搬時において、槓桿の接触位置が変化しないようにロックすることができる。したがって、荷重発生装置を移動する際や運搬時に槓桿が落下するなどして損傷したり、槓桿の重点を含めた接触点に設けられる刃と刃受けなどの接触位置がずれて精度が低下したりすることを防止できる。
【0038】
また、支持固定枠が固定されている固定部としてのベースに対して横方向に移動可能であるとともに縦方向に昇降可能な縦横移動用昇降装置を有し、検査対象はかりが縦横移動用昇降装置上に載せられ、平面視してベースに対する荷重発生装置の荷重負荷位置が一定である一方、荷重発生装置の荷重を負荷する部分に対して、縦横移動用昇降装置により検査対象はかりを縦横方向に移動させることで検査対象はかりの荷重負荷位置を変更自在とされているとともに、縦横移動用昇降装置を上昇させることで、槓桿が水平になって平衡するよう制御可能であるように構成してもよい。
【0039】
この構成により、縦横移動用昇降装置により検査対象はかりを縦横方向に移動させることで検査対象はかりの荷重負荷位置を変更して、検査対象はかりに対する偏置荷重検査を容易かつ迅速に行うことができる。すなわち、荷重発生装置を移動させることなく、又、検査対象はかりを移動させることなく偏置荷重試験を行うことができるので、偏置荷重試験についての手間や時間を削減して試験時のコストを削減できるとともに、精度よく検査することができる。また、この構成によれば、縦横移動用昇降装置を昇降させることにより、槓桿を水平位置に調整する昇降装置として用いることもでき、この構成によれば、槓桿を水平位置に調整する昇降装置(例えば、油圧シリンダや電動ジャッキなど)を検査対象はかり上に載せる構成の場合と比較して、昇降装置を検査対象はかり上に載せないので、0点設定時における、検査対象はかりに負荷される実際の荷重をさらに軽減できる利点がある。
【0040】
また、本発明は、上記の何れかのはかりの検査装置を検査する検査方法であって、検査対象はかりに代えて電子式のマスコンパレータを設置し、荷重発生装置からの荷重がマスコンパレータに負荷された時の指示値と、検査装置をマスコンパレータ上から退避させて、マスコンパレータに検査装置の必要精度より高精度クラスの基準分銅を積載した時の指示値とを比較して、基準分銅積載時の指示値を基準として、検査装置の器差を求めるようにしたことを特徴とする。この検査方法により、電子式のマスコンパレータを用いて比較的簡単にはかりの検査装置を検査することができる。
【0041】
また、本発明は、上記の何れかのはかりの検査装置を検査する検査方法であって、検査対象はかりに代えて高精度の基準はかりを設置し、基準はかりにより、荷重発生装置からの荷重を計量し、その計量値を基準値として荷重発生装置からの所定負荷値との差を器差として求めることを特徴とする。この検査方法により、高精度の基準はかりを用いてはかりの検査装置を検査することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、検査対象はかりの上方を跨った姿勢で固定部により支持された支持固定枠と、鉛直荷重を発生する荷重発生装置とを備え、荷重発生装置は、重錘と、この重錘の荷重を増幅する槓桿と、槓桿の支点から重点側の質量と槓桿の支点から力点側の質量とを吊り合わせる無駄目消し槓桿と、を有し、支持固定枠により槓桿の支点および無駄目消し槓桿の支点を支持して、槓桿の自重および無駄目消し槓桿の自重を支持固定枠により受けた状態で、槓桿の重点からの荷重を検査対象はかりに負荷させるよう構成することにより、0点設定時に検査対象はかりに負荷される実際の荷重を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るはかりの検査装置および検査対象はかりを概略的に示す側面図であり、検査対象はかりがピット埋込式のトラックスケールである場合を示す。
【
図2】同はかりの検査装置および検査対象はかりを概略的に示す平面図である。
【
図3】同はかりの検査装置および検査対象はかりを概略的に示す正面図である。
【
図4】同じくはかりの検査装置および検査対象はかりを概略的に示す側面図であり、検査対象はかりが地上設置式のトラックスケールである場合を示す。
【
図5】同はかりの検査装置および検査対象はかりを概略的に示す平面図である。
【
図6】同はかりの検査装置および検査対象はかりを概略的に示す正面図である。
【
図7】同はかりの検査装置の荷重発生装置などの正面図である。
【
図8】同はかりの検査装置の荷重発生装置におけるクランプ装置近傍を拡大した要部拡大正面図である。
【
図9】電子式のマスコンパレータを用いてはかりの検査装置を検査する状態を示す正面図である。
【
図10】マスコンパレータに基準分銅を積載している状態を示す正面図である。
【
図11】本発明の第2の実施の形態に係るはかりの検査装置の荷重発生装置などを示す正面図である。
【
図12】同はかりの検査装置の荷重発生装置などの側面図である。
【
図13】同はかりの検査装置の荷重発生装置などの平面図である。
【
図14】本発明の第3の実施の形態に係るはかりの検査装置の荷重発生装置などを示す正面図である。
【
図15】同はかりの検査装置の荷重発生装置などの側面図である。
【
図16】同はかりの検査装置の荷重発生装置における縦横移動用昇降装置の下降姿勢の平面図である。
【
図17】同縦横移動用昇降装置の下降姿勢の正面図(
図16のXVII-XVII線矢視正面図)である。
【
図18】同縦横移動用昇降装置の下降姿勢の正面図(
図16のXVIII-XVIII線矢視正面図)である。
【
図19】同縦横移動用昇降装置の下降姿勢の側面図(
図16のIXX-IXX線矢視側面図)である。
【
図20】同縦横移動用昇降装置の
図17に対応する上昇姿勢の正面図である。
【
図21】同縦横移動用昇降装置の
図18に対応する上昇姿勢の正面図である。
【
図22】同縦横移動用昇降装置の
図19に対応する上昇姿勢の側面図である。
【
図24】同従来のはかりの検査装置の荷重発生装置などの正面図である。
【
図25】他の従来のはかりの検査装置(槓桿式検査装置)の正面図である。
【
図26】同従来のはかりが設置される大型はかり(トラックスケール)などの平面図である。
【
図28】同はかりの検査装置に用いられる基準槓桿(基準てこ)を示す図である。
【
図29】同はかりの検査装置の基準槓桿を検査する状態を簡略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態に係るはかりの検査装置を、図面に基づき説明する。
図1~
図3に示すように、本発明の実施の形態に係るはかりの検査装置1は、検査対象はかり4を検査または検定するものである。このはかりの検査装置1は鉛直荷重を発生(負荷)する荷重発生装置2を備えている。そして、検査対象はかり4の上方に荷重発生装置2を配置して、荷重発生装置2からの荷重が検査対象はかり4に負荷するように構成している。なお、荷重発生装置2の具体的構成については後述し、
図1~
図3においては、荷重発生装置2を簡略的に示している。
【0045】
また、図示しないが、検査対象はかり4は入力部および表示部を有する指示計をそれぞれ備えているとともに、入力部に設けられた押しボタンを押すなどして指示した際に、計量値が0であるように設定する0点(零点)設定部(風袋設定部とも称される)をそれぞれ有する。
【0046】
この実施の形態では、
図1~
図3に示すように、検査対象はかり4がトラックスケールである。これらの図において、4aはトラックスケールである検査対象はかり4の載台、2は荷重発生装置、11は検査対象はかり4の上方を跨ぐ姿勢で配置されている門型の支持固定枠(負荷フレーム)、12は地面などの設置部(固定部)である。
【0047】
ここで、
図1~
図3は、検査対象はかり4が、いわゆるピット埋込式のトラックスケールである場合を示している。
図1~
図3において、13Aおよび18は検査対象はかり4が配設されているコンクリート製の基礎とピット、14は基礎13Aの側壁13a上に立設して固定されている金属製の基礎フレーム、15は、基礎フレーム14に固定されて、支持固定枠11が組み付けられる金属製の縦固定フレームである。なお、基礎フレーム14は、コンクリート製の基礎13Aの側壁13aを補強するとともに、縦固定フレーム15の上部に設置されている荷重発生装置2を検査対象はかり(トラックスケール)4の長手方向へ偏置荷重試験のために移動させる場合には、基礎フレーム14の上面を縦固定フレーム15によりスライドさせる機能も有している。
【0048】
これらの図に示すように、基礎13Aは周囲が埋められて、その上面が地表面などの設置面と同様な高さとなっている。また、トラックなどの車両が載せられる検査対象はかり(トラックスケール)4の載台4aは下方から複数のロードセル10により支持されており、これらのロードセル10に指示計などが接続されている。また、ロードセル10と、検査対象はかり4の載台4aを下方から支持する支持桁17とが、ピット18内に配置されている。なお、検査対象はかり4の載台4aと、基礎13Aとの間には隙間が設けられて、載台4aが基礎13Aに接触せず、計量時の誤差を生じないように配置されている。
【0049】
ピット埋込式のトラックスケールに代えて、検査対象はかり4が、
図4~
図6に示すような、いわゆる地上設置式のトラックスケールの場合にも、このはかりの検査装置1により検査可能である。これらの図に示すように、この地上設置式のトラックスケールからなる検査対象はかり4では、地面である設置部12から比較的浅い深さで載台4aの前方箇所と後方箇所とに基礎13Bが設置され、各基礎13Bの左右に設置された合計4つのロードセル10によりトラックスケールの載台4aが四隅で支持されている。また、載台4aにトラックなどの車両を導く傾斜案内路19が、載台4aの前方と後方とに配置されている。載台4aの側方に近接して縦固定フレーム15がそれぞれ立設され、これらの縦固定フレーム15上に跨って、門型の支持固定枠(負荷フレーム)11が設置されている。なお、
図4~
図6における14は、基礎13Bの側壁13a上に立設して固定されている金属製の基礎フレーム、15は、基礎フレーム14に固定されて、支持固定枠11が組み付けられる金属製の縦固定フレームである。なお、この場合にも、基礎フレーム14は、コンクリート製の基礎13Bを補強するとともに、荷重発生装置2の移動時のスライド面の機能も有している。なお、以下の図面では、検査対象はかり4が、ピット埋込式のトラックスケールである場合を図示して説明する。
【0050】
図1~
図6に示すように、検査対象はかり4の載台4aは略矩形であり、この実施の形態では、荷重発生装置2が載台4aの長手方向に対しても複数(この実施の形態では、載台4aの前方寄り箇所と後方寄り箇所とに1つずつで合計2箇所に)配置されている。
【0051】
ここで、
図7に示すように、この実施の形態(第1の実施の形態)では、支持固定枠(負荷フレーム)11として上支持固定枠11Aと下支持固定枠11Bとが設けられ、上支持固定枠11Aが縦固定フレーム15の上端部間に設けられ、下支持固定枠11Bが縦固定フレーム15の下部間に設けられている。
【0052】
荷重発生装置2は、重錘21の荷重を増幅する第1槓桿22と、第1槓桿22により増幅された荷重をさらに増幅する第2槓桿23と、備えている。また、荷重発生装置2は、下支持固定枠11Bの右寄り箇所から上方に立設する第1立設部24と、上支持固定枠11Aの略中央箇所から下方に立設する第2立設部25と、複数の重錘21を載せることが可能な重錘載台26と、負荷受け部29、ロバーバル機構30、昇降装置としての油圧シリンダ31などを有する。また、この実施の形態では、油圧シリンダ31側からの荷重を良好に検査対象はかり4の載台4aに負荷できるように、油圧シリンダ31と検査対象はかり4の載台4aとの間に受け台(荷重受け台)32が設けられて、負荷荷重が一点に集中しないように配慮されている。検査時には、重錘21の負荷によって生じる、検査対象はかり4の載台4aの撓みや第2立設部(第2槓桿支点台)25の上向き荷重によって生じる支持固定枠11の撓み等により、第1槓桿22が傾斜するので、これを水平状態に戻すために油圧シリンダ31を微小量上昇させるよう構成されている。検査荷重(重錘21の増減によって生じる)の増減に対応して、油圧シリンダ31をその都度昇降させて第1槓桿22を水平に保持することにより検査する。なお、昇降装置としての油圧シリンダ31については、負荷荷重の大きさによって適宜、電動または手動ジャッキに変更してもよい。
【0053】
第1槓桿22の力点22aには、重錘21が載せられた重錘載台26の上端部が上方から引っ掛けられて、重錘21の荷重が下方に負荷され、第1槓桿22の支点(支点刃)22bは、第1立設部24の上端部に組付けられた一対の受けローラにより下方から受けられ、第1槓桿22の重点(作用点)22cには、力伝達金具28の上受け部28aが上方から当接された状態で引っ掛けられている。また、第2槓桿23の力点23aには、力伝達金具28の下受け部28bが下方から当接された状態で引っ掛けられ、第2槓桿23の支点(支点刃)23bは、第2立設部25の下端部に組付けられた一対の受けローラにより上方から受けられ、第2槓桿23の重点(作用点)23cは、負荷受け部29により下方から受けられている。
【0054】
負荷受け部29はロバーバル機構(平行リンク機構)30の一方の縦リンクをなしており、負荷受け部29の下部には下リンク30aが回転自在に連結され、下リンク30aの他端部には、他方の縦リンク30bの下端部が回転自在に連結され、他方の縦リンク30bの上部は第2立設部25の下部に結合(固定)されている。すなわち、負荷受け部29と、下リンク30aと、縦リンク30bおよび第2槓桿23の連結箇所から支点23b部分と、第2槓桿23の支点23bから重点23cまでの部分とによりロバーバル機構30が構成され、負荷受け部29には鉛直荷重だけが作用するようになっている。さらに、この実施の形態では、負荷受け部29の下端部が、鋼球受け部33に当接され、負荷受け部29の荷重が鋼球受け部33を介して、油圧シリンダ31のピストンに固定された出退部31aに負荷されている。すなわち、鋼球受け部33により横荷重が逃がされ、負荷受け部29と油圧シリンダ31との間では鉛直荷重のみが作用するようになっている。
【0055】
上記構成に加えて、第1槓桿22の力点22a寄りの箇所には、無駄目消し槓桿34が取り付けられている。この無駄目消し槓桿34は、力点に無駄目消し錘34aが取り付けられ、無駄目消し槓桿34の支点34bは、上支持固定枠11Aから立設する無駄目消し槓桿用立設部43の上端部に設けられた一対の受けローラ44により下方から受けられている。また、無駄目消し槓桿34の重点には引上げ枠45を介して、第1槓桿22の力点22aと支点との間の箇所に適切な上向き荷重が生じるように構成され、これにより、重錘載台26を含めて第1槓桿22の支点22bからの質量の大部分が釣り合うようになっている。
【0056】
また、第1槓桿22の力点22a側の先端部には、第1槓桿22の水平状態を確認するための、指示針22dが形成されているとともに、この指示針22dを確認するための目盛り部36が縦固定フレーム15に取り付けられている。なお、目盛り部36の近傍には、第1槓桿22が大きく搖動しないように(第1槓桿22の端部が大きく上下動しないように)規制するストッパ39A、39Bが設けられている。また、
図7における35は第1槓桿22の搖動を緩和するオイルダンパ、37は基礎フレーム14に対して縦固定フレーム15を移動する際に、受け台32を引き上げて把持する(クランプする)受け台クランパであり、検査時には受け台クランパ37は取り外される。
【0057】
なお、第1槓桿22の水平状態を確認するためには水平センサ46を第1槓桿22に直接取り付けてもよく、この水平センサ46の電気信号に基づく水平度を適宜な見易い表示部に表示させることにより、油圧シリンダ31の昇降量を制御する操作が容易に行うことが可能になる。
【0058】
さらに、この荷重発生装置2には、はかりの検査装置1を移動・運搬する時に第2槓桿23が落下して第2槓桿23の支点23bに設けられている支点刃と支点刃受けの接触位置が離れてしまうことを防止するために、負荷受け部29を上向きに引っ張り上げて一定の上向き荷重を槓桿(第2槓桿23)に負荷するためのクランプ装置(接触状態保持装置)100を備えている。
【0059】
すなわち、
図8に拡大して示すように、第2槓桿23の重点23cの刃受けを支持している負荷受け部29に固定されたピン29aを引き上げるために、第2立設部25に固定されたピン25aを支点として上下に揺動する揺動レバー101に設けたピン101aに吊下がった吊環102の下部が、通常では負荷受け部29のピン29aとは離れているが、揺動レバー101の先端部を押し上げるために設けられている分離用上昇装置としての電動ジャッキ103が上昇すると、ジャッキ先端に配された圧縮ばね104を介して揺動レバー101が持ち上げられ、吊環102が負荷受け部29のピン29aを引き上げて、負荷受け部29が鋼球受け部33の受け部(検査対象はかり4側)から分離可能に構成されている。負荷受け部29のピン29aが上昇することによって、第2槓桿23が支点23bを回転中心として力点23aと連接する重点22cが引き下がり、第1槓桿22はその支点22bを回転中心として反時計回りに傾き先端がストッパ39Aの上側に当接する。この状態で負荷受け部29を更に上昇させると圧縮ばね104が縮むため、その反力分に相当する荷重で負荷受け部29が引き上げられる。適当な圧縮ばね104の縮み量を得た時点で電動ジャッキ103を停止させる。
【0060】
このように構成することにより、第1槓桿22および第2槓桿23の支点刃や重点、力点刃は当接している刃受けに適当な荷重で接触したままの状態が保持されるので、荷重発生装置2の移動時や運搬時に刃、刃受けの接触位置が変化することがなく、このため、槓桿比(てこ比:今回の場合は荷重増幅率)の変化が最小に抑えられるから負荷精度が良好に保たれる。
【0061】
また、荷重発生装置2の受け台32と検査対象はかり4の載台4aとの間には、荷重伝達体38が配置されている。この荷重伝達体38は、トラックスケールにのるトラックのタイヤの位置に対応して、荷重発生装置2の荷重が、検査対象はかり4の載台4aの前後左右の4か所の位置に負荷するように配置されている。
【0062】
このはかりの検査装置1を用いて、検査対象はかり4を検定または検査する際(はかりの検査方法を実行する際)には、
図7に示すように、基礎フレーム14上に縦固定フレーム15、支持固定枠11(上支持固定枠11A、下支持固定枠11B)および荷重発生装置2を組み付けた状態で、測定荷重が0(零)となるように、検査対象はかり4の測定荷重をキャンセル(減算)して(0点設定して)おく。
【0063】
この後、荷重発生装置2から荷重を検査対象はかり4に負荷させて、検査範囲で決められた値となるように荷重を発生させる。これにより、荷重発生装置2からの荷重が検査対象はかり4に負荷されるので、これらの測定値の差を、器差として確認し、この結果から検定または検査の合否などを判定する。
【0064】
具体的に説明すると、予め、重錘載台26に重錘21を載せない状態(重錘21は、基礎13A、13Bなどの荷重発生装置2や検査対象はかり4の載台4aなどの外部に置いておく)で、第1槓桿22が水平姿勢となるように、油圧シリンダ31の上昇量を調節しておく。したがって、0点設定時には、第1槓桿22および第2槓桿23の一部の荷重と受け台32、荷重伝達体38、油圧シリンダ31、鋼球受け部33及び負荷受け部29の自重の合計値が負荷されている状態である。
【0065】
この後、荷重発生装置2から荷重を検査対象はかり4に負荷させる際には、重錘載台26に順次重錘21を載せて荷重を負荷する。この際には、重錘載台26に重錘21を載せることにより、重錘21の荷重が第1槓桿22の力点22aに負荷する(作用する)。この荷重は、第1槓桿22のてこ比(第1槓桿22の支点22bから力点22aまでの距離/支点22bから重点(力伝達金具28の上受け部28aが当接されている箇所)22cまでの距離)の割合で増幅され、力伝達金具28により増幅された力(負荷)が第2槓桿23の力点23aに伝達され、さらに、この力(負荷)が第2槓桿23のてこ比(第2槓桿23の支点23bから力点23aまでの距離/支点23bから重点23cまでの距離)の割合で増幅される。そして、この第2槓桿23の重点23cに作用する力と、油圧シリンダ31で発生させた力(負荷)が釣り合うように油圧シリンダ31で荷重を発生させる。つまり、第1槓桿22(および第2槓桿23)が水平姿勢となるように、油圧シリンダ31から鋼球受け部33を通して伝達された荷重と、重錘21からの力が第1槓桿22および第2槓桿23で増幅され、ロバーバル機構30を通して伝達された力とを釣り合わせる。
【0066】
これにより、受け台32には、重錘21が第1槓桿22および第2槓桿23で増幅された力(荷重)が負荷(作用)する。例えば、これらの第1槓桿22および第2槓桿23による増幅率が50倍となるように、第1槓桿22および第2槓桿23を製造することにより(
図7はほぼこの寸法となっている)、受け台32には、重錘21の荷重の50倍の荷重が下向きに作用する(ただし、第1槓桿22および第2槓桿23の寸法はこれに限るものではなく、その他の増幅割合となるように寸法が異なるものに構成することは可能である)。この荷重が検査対象はかり4の許容公差の1/5以下に収まるように全荷重点で調整・検査・確認されており、基準荷重となる。この基準荷重が検査対象はかり4の載台4aに作用するため、この際の検査対象はかり4の計量値(荷重指示値)と基準荷重値との差が器差となる。
【0067】
このように、検査対象はかり4を検査する際には、重錘21を1つずつ重錘載台26に載せ、かつ、油圧シリンダ31から荷重をロバーバル機構30の負荷受け部29に負荷ささせて、第1槓桿22(および第2槓桿23)が水平に維持された際に、検査対象はかり4で測定した値(計量値)と、荷重発生装置2による基準荷重との差を器差として確認し、この結果から検定または検査の合否などを判定する。なお、例えば、上記寸法例の第1槓桿22および第2槓桿23を用いた場合には、1つが5kgの重錘を20個使用することで、250kg(=5kg×50)から5t(=5kg×20×50)の荷重を荷重発生装置2から負荷することができて、この荷重発生装置2を検査対象はかり4の載台4aの前寄り箇所と後寄り箇所とにそれぞれ配置することにより、例えば、10tの秤量のトラックスケールからなる検査対象はかり4を、実際に荷重を負荷させながら検査することができる。
【0068】
上記構成によれば、支持固定枠11により第1槓桿22および第2槓桿23の支点22b、23bが支持されて、第1槓桿22、第2槓桿23自体の一部の荷重と油圧シリンダ31、鋼球受け部33及び負荷受け部29の自重が検査対象はかり4に負荷されるので、0点設定時に検査対象はかり4に負荷される実際の荷重を基準はかり方式に比し、小さくすることが可能となる。なお、上記実施の形態では、油圧シリンダ31と検査対象はかり4の載台4aとの間に受け台32を設けた構成としたが、この受け台32として小型化した軽量のものを用いたり、受け台32を省いたりすることも可能であり、この場合には、0点設定時に検査対象はかり4に負荷される実際の荷重をさらに小さくすることが可能となる。したがって、0点設定時に検査対象はかり4の測定荷重が0に近づいた荷重点から検査することができ、検査の信頼性を向上させることができる。
【0069】
また、上記構成によれば、荷重発生装置2が、重錘21と、この重錘21の荷重を増幅する第1槓桿22と、を有するだけでなく、これらに加えて、第1槓桿22の支点22bから重点22c側の質量と第1槓桿22の支点22bから力点22a側の質量とを吊り合わせる無駄目消し槓桿34が設けられている。また、下支持固定枠11Bにより第1槓桿22の支点22bが支持され、上支持固定枠11Aにより無駄目消し槓桿34の支点34bが支持され、第1槓桿22の自重および無駄目消し槓桿34の自重の多くの部分が支持固定枠11(11A、11B)により受けられる。したがって、0点設定時において、検査対象はかり4に負荷する、第1槓桿22の自重および無駄目消し槓桿34の自重を大幅に小さくすることができて、負荷される実際の荷重を小さくすることができる。
【0070】
また、第2槓桿23の重点23cからの荷重を受ける負荷受け部29の上下位置を調整する昇降装置としての油圧シリンダ31を検査対象はかり4と負荷受け部29との間に設置し、重錘21を負荷することによって荷重発生装置2による増幅された荷重が負荷受け部29に負荷されることにより発生する検査対象はかり4の載台4aおよび支持固定枠11(11A、11B)の撓みを、昇降装置としての油圧シリンダ31の昇降部(ピストン連結部)を上昇させることにより第2槓桿23および第1槓桿22を水平とさせて第2槓桿23および第1槓桿22が平衡状態となるように制御している。この構成により、重錘21を負荷することによって検査対象はかり4の載台4aおよび支持固定枠11(11A、11B)が撓んでも、第2槓桿23および第1槓桿22を良好に水平とさせて第2槓桿23および第1槓桿22が平衡状態となるように制御することができるので、検査精度を向上することができる。
【0071】
また、電気式はかりなどからなる特定計量器の場合には、操作する者が、はかりに設けられている0点設定ボタンを押すなどして0点設定を行う(いわゆるワンタッチ設定をする)が、この場合には、秤量の4%を超えない範囲内で実行可能である。そして、上記構成によれば、2台のはかりの検査装置1の使用時に、検査対象はかり4の秤量(例えば秤量10tの小型トラックスケール)の4%(10t×0.04×1/2=200kg)を超えてしまうことがなくなり、ワンタッチ設定をすることができて便利である。
【0072】
また、上記構成によれば、荷重発生装置2が、重錘21の荷重を増幅する第1槓桿22と、第1槓桿22により増幅された荷重をさらに増幅する第2槓桿23と、を備えているので、大きな荷重を発生できるだけでなく、重力加速度の影響がなく、検査する地域が異なって重力加速度の変化があった場合でも、検査に悪影響を及ぼさない利点があり、信頼性が向上する。
【0073】
また、荷重発生装置2が、重錘21の荷重を増幅する第1槓桿22と、第1槓桿22により増幅された荷重をさらに増幅する第2槓桿23と、を備えているので、これらの第1槓桿22と第2槓桿23とにより重錘(基準分銅)21の荷重を大幅に増幅することができ、ひいては、第1槓桿22の力点22aに吊り下げた重錘載台26などに載せる重錘21の質量を大幅に軽減でき、これにより、重錘21を積載する手間や労力を大幅に軽減できる。
【0074】
すなわち、
図25や
図27に示すような従来のはかりの検査装置(槓桿式検査装置)200であっても、基準槓桿209の力点209bから吊り下げた分銅皿210には、2t分の基準分銅、すなわち、20kgの基準分銅を100個積載しなければならず、極めて多くの手間と労力を必要とし、現実的には行うことが困難であった。
【0075】
これ対して、このはかりの検査装置1では、荷重発生装置2が、重錘21の荷重を増幅する第1槓桿22と、第1槓桿22により増幅された荷重をさらに増幅する第2槓桿23と、を備えているので、1つが5kgの重錘を20個使用することで、250kg(=5kg×50)から5t(=5kg×20×50)の荷重を荷重発生装置2から負荷することができて、重錘21を積載する手間や労力を大幅に軽減できる。
【0076】
また、上記構成によれば、第1槓桿22および第2槓桿23により増幅された荷重が、ロバーバル機構30を通して、検査対象はかり4に負荷するよう構成されている。これにより、ロバーバル機構30を通して、鉛直荷重に近い荷重だけを出力することが可能となり、検査を正確に行うことができ。これによっても信頼性が向上する。
【0077】
なお、上記はかりの検査装置1を検査する際には、
図9に示すように、検査対象はかり4に代えて電子式のマスコンパレータ5を設置すると好適である。なお、
図9における107は検査用架台である。そして、荷重発生装置2からの荷重がマスコンパレータ5に負荷された時の指示値と、
図10に示すように、はかりの検査装置1をマスコンパレータ5上から退避させて、マスコンパレータ5に検査装置1の必要精度より高精度クラスの基準分銅106を積載した時の指示値とを比較して、基準分銅積載時の指示値を基準として、検査装置1の器差を求める。この検査方法により、電子式のマスコンパレータ5を用いて比較的簡単に、つまり少ない労力で安全にはかりの検査装置1を検査することができる。
【0078】
すなわち、
図25や
図27に示すような従来のはかりの検査装置(槓桿式検査装置)200において、基準槓桿209を検査する際には、
図29に示すように、背の高い秤架220を設置して、基準槓桿209から吊り下げられた大きな分銅積載皿216に18tの分銅217を積載するのは、分銅積載皿216が揺動することもあって、大きな労力および危険性を生じてしまっていたが、上記はかりの検査装置1を検査する際に、マスコンパレータ5や高精度クラスの基準分銅106を用いることにより、比較的簡単に、少ない労力で安全にはかりの検査装置1を検査することができる。
【0079】
なお、上記はかりの検査装置1を検査する場合に、上記のようにマスコンパレータ5を用いずに、検査対象はかり4に代えて高精度の基準はかりを設置し、基準はかりにより、荷重発生装置からの荷重を計量し、その計量値を基準値として荷重発生装置からの所定負荷値との差を器差として求めてもよく、この検査方法によっても、高精度の基準はかりを用いてはかりの検査装置を検査することができる。
【0080】
図11~
図13は本発明の第2の実施の形態のはかりの検査装置を示す。
この実施の形態では、検査対象はかり4が比較的小秤量(300kg程度)の台はかり(例えば、体重計など)である。はかりの検査装置1は、固定部としてのベース50と、ベース50の上面における四隅近傍箇所からそれぞれ支持固定脚51が立設され、これらの支持固定脚51の上端部に跨って矩形の支持固定枠52が載せられて固定されている。検査時には、ベース50と支持固定枠52との間に検査対象はかり4(検査対象はかり4の載台4aも含んだ計量部)が配設される。支持固定枠52上面に荷重発生装置2が設置されている。
【0081】
本検査装置1は主に使用現場で定期検査を行う場合に使用され、例えば10kgの基準分銅30個(合計300kg)を一人で現場に運搬することの多大な労力を軽減することを目的としている。そのために、荷重発生装置2、支持固定枠52、ベース50はそれぞれ、単独に運搬可能になっているとともに、人が持ち運べるような重量とされており、検査場所で台固定具53と枠固定具55によって、ベース50に支持固定枠52が固着・離脱でき、支持固定枠52に荷重発生装置2が固着・離脱できる。図示していないが、高精度を維持する必要がある荷重発生装置2は木製または強化プラスティック製の梱包箱に収納して運搬する。
【0082】
荷重発生装置2は枠固定具55により支持固定枠52上に立設された状態で固定された支持枠56(後述するねじ軸66Aやガイド軸66Cも支持枠56の一部を構成している)と、支持枠56に対して昇降自在に組付けられた組付け枠57に取付けられた支点枠58と、複数の重錘21が載置可能な状態で組付けられた重錘載台59と、重錘載台59を介して重錘21の荷重が負荷される槓桿60(例えば、てこ比が10:1の槓桿60)と、昇降自在に配置されて槓桿60の重点60cから負荷を受けるとともに下端部に検査対象はかり4などに負荷を与える荷重負荷部61aを有する荷重負荷体61と、ロバーバル機構62A、62B(下辺リンク62aはロバーバル機構62Aの下辺部を構成する)と、重錘載台59に重錘21を載せていない状態で、槓桿60や下辺リンク62aが水平となるように(荷重負荷体61による荷重が0となるように)する無駄目消し錘63Aや無駄目消し槓桿63Bなどを備えている。また、
図11~
図13において、60aは重錘21からの荷重を、重錘載台59を介して受ける槓桿60の力点、60bは支点枠58により上方から支持されている槓桿60の支点、60cは荷重負荷体61に、槓桿60により増幅された負荷を作用させる槓桿60の重点、64は槓桿60の水平状態を検知する水平センサ、65は荷重負荷部61aと検査対象はかり4(検査対象はかり4の載台4aも含んだ計量部)との間に配設される高さ調整スペーサである。なお、槓桿60には、槓桿連結リンク部60dが連結され、この槓桿連結リンク部60dの端部に槓桿60の支点60bが設けられている。また、槓桿連結リンク部60dには槓桿60が過度に上昇したり下降したりすることを規制するストッパ49が設けられている。さらに、昇降自在の組付け枠57の下部には、荷重負荷体61を下方から持ち上げ可能なクランプ装置57bが設けられており、運搬時などにクランプ装置57bにより荷重負荷体61を下方から持ち上げることで、槓桿60の支点60bや重点刃と刃受けを接触位置が変化しないように当接したまま移動、運搬できるよう構成されている。
【0083】
また、重錘載台59の下端部と下辺リンク62aの一端部とが回転自在に連結され、下辺リンク62aの他端部は支点枠58とも回転自在に連結され、槓桿60の力点60aは重錘載台59により回転可能な状態で当接され、槓桿60の支点60bは支点枠58により回転可能な状態で当接されており、槓桿60と下辺リンク62aとは平行に配置され、重錘載台59と支点枠58とも平行に配置されているので、これらによりロバーバル機構62Aが構成されている。また、下辺リンク62aは荷重負荷体61の上下方向の中間部分でとも回転自在に連結され、槓桿60の重点60cでは荷重負荷体61の上端部分で回転可能な状態で当接されており、支点枠58と荷重負荷体61とも平行に配置されているので、これらによってもロバーバル機構62Bが構成されている。これらの2つのロバーバル機構62A、62Bからなる構成により、重錘載台59が重錘21から負荷される鉛直荷重が、槓桿60により増幅されて(増幅率は、槓桿60の力点60aから支点60bまでの距離/槓桿60の重点60cから支点60bまでの距離)、増幅された鉛直荷重が荷重負荷体61に負荷される。これにより、荷重負荷体61の下端部の荷重負荷部61aから高さ調整スペーサ65を介して検査対象はかり4に負荷されるように構成されている。なお、無駄目消し槓桿63Bは支点枠58と支点63bで当接し、荷重負荷体61と力点63cで当接している。
【0084】
また、支持枠56の一部には、組付け枠57を昇降させるための、ねじ軸66A、昇降ハンドル67、ウオーム68とウオームホイール69などが取り付けられている。なお、支持枠56を支持する他の軸はねじなどが形成されておらず、単なる円柱状のガイド軸66Cとされて支持枠56を昇降自在な状態で案内しながら支持するよう構成されている。
【0085】
上記構成において、重錘21を、重錘載台59に載荷して検査対象はかり4に負荷すると、検査対象はかり4の載台4aなどの撓みにより、荷重負荷体61が下降し、槓桿60はストッパ49の下側に当接するように支点60bを中心として傾斜する。この状態から槓桿60を水平にして平衡させるために、昇降自在に組付けられた組付け枠57に取付けられた支点枠58を下降させる。そのために、昇降ハンドル67を回してウオーム68とウオームホイール69によって、減速されたねじ軸66Aを回転することにより、ねじ軸66Aに嵌合するナット部66Bが組付けられている組付け枠57を下降させて、支点枠58も下降させる。支点枠58の下降によって槓桿60の支点60bが下降し、それに伴い槓桿60の重点60cも下降するので、槓桿60は支点60bを中心とし水平に戻ろうとする。水平センサ64でそれを感知しながら昇降ハンドル67を回転しながら制御させることで、槓桿60は水平位置に停止して平衡状態となる。これにより、荷重負荷体61には所定の荷重が作用し、下端部の荷重負荷部61aから高さ調整スペーサ65を介して検査対象はかり4に所定の荷重が負荷される。この所定荷重が負荷された時の検査対象はかり4の指示値との差が器差となる。
【0086】
なお、検査対象はかり4の偏置荷重試験を行う時には、組付け枠57に固定されたクランプ装置57bにより荷重負荷体61を少し上昇させて、荷重負荷体61の下端部の荷重負荷部61aをスペーサ65から分離させる。この状態で、検査対象はかり4を偏置位置に人力で移動させ、偏置位置が荷重負荷体61の真下になるよう移動した後、スペーサ65をその偏置位置に合わせるように移動する。その後、クランプ装置57bを下降させて荷重負荷体61から分離させ、槓桿60が水平位置になっている場合はそのままで、槓桿60が水平でない場合は、昇降ハンドル67を回して再度水平調整を行う。なお、検査が終了した後は、クランプ装置57bを作動させて、槓桿60の支点60bや重点刃と刃受けを接触位置が変化しないように当接したまま移動、運搬する。
【0087】
この構成によっても、検査対象はかり4が比較的小秤量(300kg程度)の台はかりなどであっても、良好に検査することができる。また、荷重発生装置2、支持固定枠52、ベース50はそれぞれ、単独に運搬可能になっているとともに、人が持ち運べるような重量とされており、検査場所で台固定具53と枠固定具55によって、ベース50に支持固定枠52が固着・離脱でき、支持固定枠52に荷重発生装置2が固着・離脱できる。この構成により、10kgの基準分銅を用いる場合でも、基準分銅を3個用いるだけ(例えば、てこ比が10:1の槓桿60を用いた場合)なので、検査の手間や時間を大幅に削減できる。
【0088】
また、上記構成によっても、槓桿60の支点60bが、支点枠58や組付け枠57、ねじ軸66Aなどを介して支持固定枠52により支持されているので、0点設定時に検査対象はかり4に負荷される実際の荷重を基準はかり方式に比し、小さくすることが可能となる。
【0089】
また、上記構成においても無駄目消し錘63Aや無駄目消し槓桿63Bが設けられているので、0点設定時における槓桿60の荷重の大部分が荷重負荷体61に負荷しない状態(荷重負荷体61に負荷する槓桿60の自重を大幅に小さくした状態)とすることができ、0点設定時における負荷される実際の荷重を小さくすることができる。
【0090】
また、上記構成においても、槓桿60の接触位置が変化しないようにロック可能なクランプ装置57bを設け、クランプ装置57bにより槓桿60の接触位置が変化しないようにロックされた状態で荷重発生装置2を移動自在に構成している。この構成により、荷重発生装置2を移動する際や運搬時に槓桿60が落下するなどして損傷したり、槓桿60の重点を含めた接触点に設けられる刃と刃受けなどの接触位置がずれて精度が低下したりして、荷重発生装置2の性能が低下することを防止できる。
【0091】
なお、このはかりの検査装置1を検査する際にも、上記第1の実施の形態と同様に、検査対象はかり4に代えて電子式のマスコンパレータ5を設置し、荷重発生装置2からの荷重がマスコンパレータ5に負荷された時の指示値と、はかりの検査装置1をマスコンパレータ5上から退避させて、マスコンパレータ5に検査装置1の必要精度より高精度クラスの基準分銅を積載した時の指示値とを比較して、基準分銅積載時の指示値を基準として、検査装置1の器差を求めるとよく、この検査方法によっても、電子式のマスコンパレータ5を用いて比較的簡単に、つまり少ない労力で安全にはかりの検査装置1を検査することができる。
【0092】
また、
図14、
図15は本発明の第3の実施の形態のはかりの検査装置1を示す正面図である。この実施の形態では、検査対象はかり4が台はかりである。また、はかりの検査装置1が、固定部としてのベース50と、ベースに対して横方向に移動可能であるとともに昇降可能な縦横移動用昇降装置70と、荷重発生装置2となどを有しており、検査対象はかり4が縦横移動用昇降装置70に載せられている。また、検査対象はかり4に代えて、電子式のマスコンパレータ(質量比較器とも称せられ、電磁力補償方式のものが好適である)を配設することも可能とされている。
【0093】
ベース50は平面視矩形とされ、ベース50の上面における四隅近傍箇所からそれぞれ支持固定脚51が立設され、これらの支持固定脚51の上端部に跨って矩形の支持固定枠52が載せられて固定されている。検査時には、ベース50と支持固定枠52との間に検査対象はかり4と縦横移動用昇降装置70とが配設される。また、支持固定枠52に荷重発生装置2が組付けられており、荷重発生装置2からの荷重を検査対象はかり4に負荷するよう構成されている。なお、53はベース50上で支持固定脚51を所定位置に固定する台固定具、4bは検査対象はかり4の指示計であり、台固定具53はベース50に対して支持固定脚51を着脱可能とされているがこれに限るものではない。
【0094】
荷重発生装置2は、上記第2の実施の形態の場合と同様な構成の枠固定具55、支持枠56、組付け枠57、支点枠58、重錘載台59、槓桿60、荷重負荷体61、ロバーバル機構62A、62B、無駄目消し錘63A、無駄目消し槓桿63B、クランプ装置57bなどを備えている。
【0095】
図16~
図22に示すように、縦横移動用昇降装置70は、概略的には、走行用ボール71およびこの走行用ボール71を回転自在に受けるボールベアリングなどを有するボール受け部72(簡略的に示す)が四隅にそれぞれ取り付けられて水平面内で移動自在の下台枠73と、この下台枠73の上方に対向して配置されて検査対象はかり4やマスコンパレータ5が載せられる上載台74と、下台枠73と上載台74との間に組付けられて上載台74を昇降自在に支持する1対の昇降リンク機構80と、一方の昇降リンク機構80の動きを他方の昇降リンク機構80に伝える連動棒81と、昇降リンク機構80を介して上載台74を昇降させるための昇降用駆動モータ75と、昇降用駆動モータ75の回転を昇降リンク機構80に伝える駆動力伝達機構76などを備えている。
【0096】
そして、昇降用駆動モータ75の駆動力を、駆動力伝達機構76を介して、昇降リンク機構80に伝達し、これにより、検査対象はかり4やマスコンパレータ5を載せた上載台74を昇降させるように構成されている。上載台74を上昇させた上昇姿勢では、検査対象はかり4やマスコンパレータ5に対して荷重発生装置2からの荷重を負荷させることが可能とされている。一方、上載台74を下降させた下降姿勢では、荷重発生装置2からの荷重が負荷されず、検査対象はかり4やマスコンパレータ5を設置面上で(水平面内で)縦横方向に移動自在とされている。
【0097】
なお、この実施の形態では、昇降リンク機構80は、下台枠73の上面近傍の左側箇所(または右側箇所)で奥行方向に延びる下固定軸82と、下台枠73の上面の四隅近傍箇所に取り付けられて下固定軸82を固定状態で支持する下固定軸取付部83と、上載台74の下面近傍の左側箇所(または右側箇所)で奥行方向に延びる上固定軸84と、上載台74の下面の四隅近傍箇所に取り付けられて上固定軸84を固定状態で支持する回転自在に支持する上固定軸取付部85と、下台枠73と上載台74との間の略中間の高さにおける左側寄りの箇所(または右側寄りの箇所)で奥行方向に延びる中間軸86と、中間軸86を中心として正面視してX字状に交差して配置される2本で一対とされたクロスリンク87A、87Bと、クロスリンク87Aの下端部を下固定軸82に回転自在に支持する下軸受88と、クロスリンク87Bの上端部を上固定軸84に回転自在に支持する上軸受89と、左側寄りの箇所(または右側寄りの箇所)で奥行方向に延びて、上端部が上固定軸84に回転自在に支持されたクロスリンク87Bの下端部間に軸受77を介して回転自在に取り付けられた主軸90(90A、90B)と、左側寄りの箇所(または右側寄りの箇所)で奥行方向に延びて、下端部が下固定軸82に固定されたクロスリンク87Aの上端部間に回転自在に取り付けられたスライド軸91と、上載台74の下面の下方に取り付けられてスライド軸91を横方向にスライド自在に案内するスライド軸枠92などを有している。なお、一方の昇降リンク機構80の動きを他方の昇降リンク機構80に伝える連動棒81は、右寄り箇所に配置された下固定軸82を貫通して配置されている。
【0098】
また、駆動力伝達機構76は、昇降用駆動モータの駆動回転軸と一体的に回転するように連結された連動回転軸93と、下台枠73上に取り付けられて、連動回転軸93を回転自在に支持する回転軸受94A、94Bと、連動回転軸93に取り付けられたウォーム95と、平面視して連動回転軸93と直交する姿勢で回転自在に配置された駆動伝達軸96と、ウォーム95に噛み合う状態で駆動伝達軸96に取り付けられたウォームギヤ97と、駆動伝達軸96の外周に形成された雄ねじ部96aと、雄ねじ部96aに噛み合う雌ねじ部を有して、駆動伝達軸96の回転に伴って左右に移動自在に配置された左右駆動部98と、左右駆動部98の端部を左寄り箇所に配置されている主軸90Aに連結する連結体99などを有している。
【0099】
そして、昇降用駆動モータ75を回転駆動することで、ウォーム95とウォームギヤ97とを介して、駆動伝達軸96が回転し、これに伴い、左右駆動部98とともに一方の主軸90Aが左右に移動される。また、連動棒81を介して、一方の主軸90Aの動きが他方の主軸90Bに伝達され、これにより、クロスリンク87A、87Bの交差状態が変動して、上載台74が昇降される。但し、縦横移動用昇降装置70は、この構成に限るものではなく、下台枠73に対して上載台74を良好に昇降できる構造であれば差し支えない。
【0100】
上記構成によれば、検査対象はかり4が縦横移動用昇降装置70に載せられている構成であるので、検査対象はかり4の偏置荷重試験を以下のようにして行うことができる。まず、荷重発生装置2における荷重負荷体61の下端部の荷重負荷部61aの位置が、検査対象はかり4(詳しくは、検査対象はかり4の載台4a)の中央に位置するように配置する。そして、この状態で、縦横移動用昇降装置70により検査対象はかり4を上昇させて、検査対象はかり4に荷重負荷体61の下端部の荷重負荷部61aが当接する位置とさせ、重錘21を重錘載台59に載せて荷重発生装置2から荷重を発生させて測定し、測定値を記録する。この後、検査対象はかり4の偏置荷重試験を行う。先ず、縦横移動用昇降装置70により検査対象はかり4を下降させるとともに縦横方向に移動させ、荷重負荷体61の下端部の荷重負荷部61aの位置が、検査対象はかり4の四隅の1箇所に位置するように配置する。この後、縦横移動用昇降装置70により検査対象はかり4を上昇させて荷重負荷部61aが当接する位置とさせ、荷重発生装置2から荷重を発生させて測定し、測定値を記録する。この後、同様にして、検査対象はかり4の四隅の他の箇所に位置させて、順次荷重を発生させて測定してそれぞれの値を比較することで、偏置誤差が所定範囲内であるか否かを確認することができる。即ち、偏置荷重試験を行うことができる。
【0101】
上記構成においても、支持固定枠11により槓桿60の支点60bが支持されて、槓桿60自体の荷重が検査対象はかり4に負荷されない状態で、荷重発生装置2による荷重が検査対象はかり4に負荷されるので、0点設定時に検査対象はかり4に負荷される実際の荷重を小さくすることが可能となる。また、油圧シリンダも有しておらず、0点設定時に油圧シリンダの荷重も負荷しないので、0点設定時に検査対象はかり4に負荷される実際の荷重をさらに小さくすることが可能となる。したがって、0点設定時に検査対象はかり4の測定荷重が0に近づいた荷重点から検査することができ、検査の信頼性を向上させることができる。また、この構成においても、秤量の4%を超えない範囲内で実行可能であるので、ワンタッチ設定をすることができて便利である。
【0102】
また、上記構成によれば、荷重発生装置2が、重錘21の荷重を増幅する槓桿60を備えているので、大きな荷重を発生できるだけでなく、重力加速度の影響がなく、検査する地域が異なって重力加速度の変化があった場合でも、検査に悪影響を及ぼさない利点があり、信頼性が向上する。
【0103】
また、上記構成によれば、縦横移動用昇降装置70により検査対象はかり4を縦、横方向に移動させることで検査対象はかり4の荷重負荷位置を変更して、検査対象はかり4に対する偏置検査を容易かつ迅速に行うことができる。すなわち、荷重発生装置2を移動させることなく偏置試験を行うことができるので、偏置試験についての手間や時間を削減して試験時のコストを削減できるとともに、精度よく検査することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 はかりの検査装置
2 荷重発生装置
4 検査対象はかり
5 マスコンパレータ
11 支持固定枠(負荷フレーム)
12 設置部(固定部)
13A、13B 基礎
20 荷重伝達体
21 重錘(おもり)
22 第1槓桿(第1てこ)
23 第2槓桿(第2てこ)
24 第1立設部
25 第2立設部
26 重錘載台
29 負荷受け部
30 ロバーバル機構
31 油圧シリンダ(昇降装置)
32 受け台
33 鋼球受け部
34 無駄目消し槓桿
40 支持フレーム
41 第3立設部
42 重錘受け装置
46 水平センサ
50 ベース(固定部)
51 支持固定脚
52 支持固定枠
53 台固定具
56 支持枠
57 組付け枠
57b クランプ装置
58 支点枠
59 重錘載台
60 槓桿
61 荷重負荷体61
62A ロバーバル機構
62B ロバーバル機構
63A 無駄目消し錘
63B 無駄目消し槓桿
70 縦横移動用昇降装置
100 クランプ装置
103 電動ジャッキ