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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/01 20060101AFI20240808BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240808BHJP
   E21F 17/18 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G08B25/01 A
G08B17/00 A
E21F17/18
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020144323
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039344
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆寿
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-133265(JP,A)
【文献】実開昭50-94889(JP,U)
【文献】特開2015-49701(JP,A)
【文献】特開2017-37516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 17/18
G08B 17/00,23/00-31/00
H04M 11/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に沿って設置された複数のトンネルのための防災システムであって、
複数のトンネルの各々には、当該トンネルに設置された非常用施設を制御する制御装置が設置されており、
前記制御装置は、コンピュータネットワークにより互いに接続されており、
前記制御装置の各々は、当該制御装置が設置されたトンネルの状態を示す第1の情報を、定期的に、他のトンネルに設置された制御装置のすべてに、前記コンピュータネットワークを用いて送信する、防災システム。
【請求項2】
前記制御装置が送信する第1の情報は、当該制御装置が設置されたトンネル内に設置された通報設備からの通報があったのか否かについての情報を含む、請求項1に記載の防災システム。
【請求項3】
前記制御装置が送信する第1の情報は、当該制御装置が設置されたトンネルが原状復帰したのか否かを示す情報を含む、請求項1または2に記載の防災システム。
【請求項4】
前記制御装置は、当該制御装置が設置されたトンネルの状態が変化したときに、当該制御装置が設置されたトンネルの状態が変化したことを示す第2の情報を、他のトンネルに設置された制御装置に、前記コンピュータネットワークを用いて送信する、請求項1から3のいずれか一項に記載の防災システム。
【請求項5】
前記制御装置は、当該制御装置が設置されたトンネル内に設置された通報設備からの通報があったときに、当該トンネルの状態が変化したと判断する、請求項4に記載の防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルのための防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルのための防災システムは、非常用施設を制御する制御装置を有している。制御装置は、トンネル内に配置された火災検知器や押しボタン式通報装置などの通報装置から、トンネル内において火災や事故などの災害が発生した可能性を示す通報信号を受け、この通報信号に基づいて、スピーカや、ブザー、警報表示灯、警報表示板などの警報設備や、水噴霧設備などの自動消火設備を制御する。例えば、特許文献1には、制御装置として、防災受信盤が開示されている。
【0003】
図7に示すように、道路Rに沿って、複数のトンネルが存在するような場合、これらの複数のトンネルの各々に、上記のような制御装置が設置されている。複数のトンネルのうちの1つで、火災や事故などの災害が発生した場合、災害が発生したトンネルの制御装置は、トンネル内に設置された警報設備により災害の発生の警報を出すとともに、この災害の発生に関する情報を他のトンネルにも送信している。このようにすることで、二次災害の発生を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-10359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の防災システムでは、図7に示すように、隣接するトンネルの制御装置の間がパラレル信号線により接続されており、このパラレル信号線を介して、隣接するトンネルの制御装置の間で情報の送受信が行われている。このため、例えば、トンネルT1で火災が生じたときに、この火災の発生に関する情報を、トンネルT1とは隣接していないトンネルT4に送信するためには、トンネルT1とトンネルT4の間に存在するトンネルT2、T3の制御装置がこの情報を中継する必要があった。よって、例えば、図8に示すように、トンネルT3の制御装置に故障が発生している場合には、トンネルT3で情報の流れが遮断され、トンネルT3の制御装置に情報を届けることができないだけでなく、トンネルT4にもトンネルT1からの情報を届けることができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、トンネルの状態を他のトンネルにより確実に通知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明における防災システムは、道路に沿って設置された複数のトンネルのための防災システムであって、複数のトンネルの各々には、当該トンネルに設置された非常用施設を制御する制御装置が設置されており、前記制御装置は、コンピュータネットワークにより互いに接続されており、前記制御装置の各々は、当該制御装置が設置されたトンネルの状態を示す第1の情報を、定期的に、他のトンネルに設置された制御装置のすべてに、前記コンピュータネットワークを用いて送信する。
【0008】
前記制御装置が送信する第1の情報は、当該制御装置が設置されたトンネル内に設置された通報設備からの通報があったのか否かについての情報を含むようにしても良い。
【0009】
前記制御装置が送信する第1の情報は、当該制御装置が設置されたトンネルが原状復帰したのか否かを示す情報を含むようにしても良い。
【0010】
前記制御装置は、当該制御装置が設置されたトンネルの状態が変化したときに、当該制御装置が設置されたトンネルの状態が変化したことを示す第2の情報を、他のトンネルに設置された制御装置に、前記コンピュータネットワークを用いて送信するようにしても良い。
【0011】
前記制御装置は、当該制御装置が設置されたトンネル内に設置された通報設備からの通報があったときに、当該トンネルの状態が変化したと判断するようにしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、トンネルの状態を他のトンネルにより確実に通知することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る防災システムを示す図である。
図2】道路に沿って連続して設置された複数のトンネルの一例を示す図である。
図3図1の防災システムにおける通信を説明する図である。
図4】第1の情報の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る防災システムの各制御装置Cnにおいて定期的に行われる処理動作の一例を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る防災システムの各制御装置Cnにおいて定期的に行われる処理動作の一例を示す図である。
図7】従来の防災システムの一例を示す図である。
図8図7の防災システムにおける通信を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<防災システム>
図1は、本発明の一実施形態に係る防災システムを示す図である。防災システムは、図2に示すように、道路Rに沿って連続して設置された複数のトンネルT1、T2、・・・、TN(例えば、N≧3)のための防災システムである。
【0015】
各トンネルTn(n=1、2、・・・、N)には、制御装置Cn(1、2、・・・、N)が設置されており、本実施形態に係る防災システムは、この複数の制御装置C1、C2、・・・、CNを有する。複数の制御装置C1、C2、・・・、CNは、図1に示すように、IPネットワークなどのコンピュータネットワークNWにより接続されており、このコンピュータネットワークNWを用いて、互いに情報の送受信を行う。
【0016】
一般に、トンネルには、トンネル内での火災や事故などの災害に備えて、非常用施設が設置されている。非常用施設には、火災検知器などの自動通報設備や、押しボタン式通報装置などの操作型通報装置、消火栓設備などの消火設備、警報器や警報表示板などの警報設備、誘導標示設備などの避難誘導設備などがある。
【0017】
各制御装置Cn(n=1、2、・・・、N)は、この制御装置Cnが設置されたトンネルTn(n=1、2、・・・、N)に設置された非常用施設を制御する。例えば、各制御装置Cnは、トンネルTnに設置された自動通報設備や、操作型通報装置から通報信号を受け、この通報信号に基づいて、トンネルTnに設置された警報設備や、避難誘導設備を制御する。
【0018】
各制御装置Cnは、制御装置Cnが設置されたトンネルTnの状態を示す第1の情報を、図3に示すように、コンピュータネットワークNWを用いて、定期的に(例えば、60秒経過するごとに)、他のトンネルに設置された制御装置のすべてに送信する。図3では、トンネルT2の状態を示す第1の情報が、トンネルT2の制御装置C2から他のトンネルに設定された制御装置のすべてC1、C3、・・・、CNに送信されている。
【0019】
このため、本実施形態では、制御装置C1、C2、・・・、CNのうちに故障した制御装置が存在したとしても、故障した制御装置以外の制御装置には、トンネルの状態を示す情報を定期的に提供することが可能である。よって、本実施形態では、トンネルの状態を他のトンネルにより確実に通知することが可能である。
【0020】
結果、本実施形態では、各トンネルの制御装置は、他のトンネルの状態を定期的に知ることができ、トンネルに設置された警報設備により、適切な情報通知(警報音を鳴らす、警報情報の標示)をすることが可能になる。例えば、本実施形態では、定期的に受信する第1の情報に変化が生じたときに、各トンネルの制御装置は、その変化に応じた情報通知をすることが可能になる。
【0021】
また、本実施形態では、各トンネルの制御装置は、他のトンネルの制御装置から定期的に第1の情報を受信している。第1の情報を送信してこない制御装置があった場合、その制御装置には、故障が発生している可能性がある。よって、本実施形態では、制御装置に故障が発生しているかの否かの確認を定期的に行うことが可能である。
【0022】
トンネルTnの状態を示す第1の情報は、トンネルTn内に設置された自動通報装置、操作型通報装置などの通報設備からの通報があったのか否か、例えば、通報装置から通報信号を受けたのか否かについての情報を含むようにすると良い。例えば、第1の情報は、図4に示すように、トンネルTnに設置された複数の火災検知器FD1、FD2、・・・、FDMや複数の押しボタン式通報装置PBl、PB2、・・・、PBLの各々からの通報信号の有無を含むようにすると良い。
【0023】
このようにすることで、本実施形態では、各トンネルの制御装置は、他のトンネルにおける通報装置からの通報の有無を知ることが可能になる。このため、本実施形態では、各トンネルの制御装置は、他のトンネルにおける火災や事故などの災害の有無を知ることが可能になる。
【0024】
例えば、本実施形態では、定期的に受信する第1の情報のうちの通報装置からの通報信号の有無に関する情報に変化が生じたときに、各トンネルの制御装置は、第1の情報に変化が生じたトンネルにおいて火災や事故などの災害が発生したことを知ることが可能になる。このため、本実施形態では、各トンネルの制御装置は、トンネルに設置された警報設備により、トンネルを走行する自動車の運転手などに、他のトンネルにおいて火災や事故などの災害が発生したことを通知することが可能になる。
【0025】
また、トンネルTnの状態を示す第1の情報は、トンネルが原状復帰したのか否かを示す情報を含むようにしても良い。ここで、「トンネルが原状復帰した」とは、災害による通行止めなどが必要な状態から回復したことを意味する。このようにすることで、各トンネルの制御装置は、トンネルに設置された警報設備により、トンネルを走行する自動車の運転手などに、他のトンネルが原状復帰したこと、例えば、他のトンネルにおける通行止めが終了したことを通知することが可能になる。
【0026】
このとき、制御装置Cnが送信する第1の情報は、制御装置Cnが設置されたトンネルTnが原状復帰したのか否かを示す情報だけでなく、他のトンネルが原状復帰したのか否かについての情報を含むようにしても良い。例えば、第1の情報は、図4に示すように、すべてのトンネルT1、T2、・・・、TNについて、各トンネルTnが原状復帰したのか否かについての情報を含むようにしても良い。
【0027】
各制御装置Cnは、制御装置Cnが設置されたトンネルTnの状態が変化したときに、第1の情報を書き換えるようにすると良い。例えば、第1の情報がトンネルTnに設置された複数の火災検知器FD1、FD2、・・・、FDMの各々からの通報信号の有無を含んでいる場合、制御装置Cnは、火災検知器FDn(n=1、2、・・・、M)から通報信号を受けたときに、第1の情報のうちの火災検知器FDnからの通報信号を有無に関する情報を、火災検知器FDnからの通報信号が無いことを示す情報から火災検知器FDnからの通報信号が有ることを示す情報に書き換えるようにすると良い。
【0028】
図5は、本実施形態に係る防災システムの各制御装置Cnにおいて定期的に(つまり、所定の時間ごとに)行われる処理動作の一例を示す図である。各制御装置Cnは、第1の情報を他のトンネルの制御装置に送信する(ステップS501)。各制御装置Cnは、所定の時間が経過するまでに(ステップS502、NO)、制御装置Cnが設置されたトンネルTnの状態に変化が生じたならば(ステップS503、YES)、第1の情報を書き換える(ステップS504)。
【0029】
<変化発生時>
上記の定期的な情報送信が、例えば、60秒ごとに行われているとすると、情報送信から30秒後にトンネルにおいて災害が発生したならば、次の情報送信がある30秒後まで、この災害発生は、他のトンネルに通知されないことになる。自動車が時速60kmで走行している場合、自動車は、30秒間に500mだけ走行する。このため、車長を5mとし、車間距離を60mとし、道路が上下一車線であるとすると、30秒間の間に、各トンネルからは、14台の自動車が出ていく。定期的な情報送信だけでは、これらの自動車の運転手は、次のトンネルに達するまで、災害の発生の通知を受けられないかもしれない。
【0030】
そこで、トンネルTnの制御装置Cnは、上記の定期的な第1の情報の送信に加え、トンネルTnの状態が変化したときに、トンネルTnの状態が変化したことを示す第2の情報を、他のトンネルの制御装置に送信するようにしても良い。この第2の情報は、トンネルTnの状態を示す情報のみを含むようにしても良いし、第1の情報と同様の項目を含み、第2の情報を受信した制御装置がこの第2の情報を受信する直前に受信した第1の情報とこの第2の情報とを比較することで、トンネルTnの状態がどのように変化したことを確認するようにしても良い。また、このとき、トンネルTnの制御装置Cnは、第2の情報を、他のトンネルの制御装置のすべてに送信するようにしても良いし、トンネルTnの近辺のトンネル(例えば、トンネルTnから所定の距離内に存在するトンネル)などの他のトンネルのうちの一部のみに送信するようにしても良い。
【0031】
例えば、トンネルTnの制御装置Cnは、トンネルTnに設置された通報装置から通報があったときに、つまり、通報装置から通報信号を受けたときに、トンネルTnの状態が変化したと判断する。例えば、トンネルTnの制御装置Cnは、トンネルTnに設置された火災検知器が火災を検知したときに、つまり、この火災検知器から通報信号を受けたときに、トンネルTnの状態が変化したと判断し、トンネルTnで火災が発生したことを示す情報を含む第2の情報を、他のトンネルの制御装置に送信する。また、トンネルTnの制御装置Cnは、トンネルTnに設置された押しボタン式通報装置のボタンが押されたときに、つまり、この押しボタン式通報装置から通報信号を受けたときに、トンネルTnの状態が変化したとし、トンネルTnで災害が発生したことを示す情報を含む第2の情報を、他のトンネルの制御装置に送信する。
【0032】
また、第2の情報は、制御装置Cnが設置されたトンネルTnに関する情報(例えば、トンネルの名前など)を含むようにしても良い。このようにすることで、第2の情報を受信した制御装置は、この制御装置が設置されたトンネルに設置された警報表示板などにより、「Aトンネルで火災発生」等の詳細な情報を、トンネルを走行する自動車の運転手などに通知することが可能になる。第2の情報は、変化が起きた時間を含むようにしても良い。このようにすることで、「AトンネルでB時C分に火災発生」等のより詳細な情報を、トンネルを走行する自動車の運転手などに通知することが可能になる。
【0033】
図6は、本実施形態に係るトンネル防災システムの各制御装置Cnにおいて定期的に(つまり、所定の時間ごとに)行われる処理動作の一例を示す図である。各制御装置Cnは、第1の情報を他のトンネルの制御装置に送信する(ステップS601)。各制御装置Cnは、所定の時間が経過するまでに(ステップS602、NO)、制御装置Cnが設置されたトンネルTnの状態に変化が生じたならば(ステップS603、YES)、第1の情報を書き換え、第2の情報を他のトンネルの制御装置に送信する(ステップS604)。
【0034】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
Tn トンネル
Cn トンネルTnに設置された制御装置
NW コンピュータネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8