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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ロータ及びブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2733 20220101AFI20240808BHJP
【FI】
H02K1/2733
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020146429
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022041310
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】白木 謙次
(72)【発明者】
【氏名】西澤 克仁
(72)【発明者】
【氏名】窪田 翔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕平
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-327198(JP,A)
【文献】特開2018-133847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/2733
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーロータ型のブラシレスモータに適用されるロータであって、
薄板環状のコア片が複数積層されて構成され、シャフトと一体回転するロータコアと、
円筒形状に形成され、前記ロータコアの外周面との間に隙間を介して装着される樹脂製のマグネットと、
前記ロータコアの前記外周面において前記ロータコアの軸方向全体に亘って軸方向に一直線状に凹設された溝状の接着剤流入部と、
前記ロータコア及び前記マグネットを接着固定する接着剤と、
前記ロータコア及び前記マグネットの軸方向一端側に固定されたブッシュと、を備え、
前記接着剤は、前記ロータコアの前記外周面と前記マグネットの内周面との間の前記隙間及び前記接着剤流入部の双方からなる接着代の全体に充填されており、
前記ブッシュは、前記マグネットの前記一端側の径方向内側に嵌め込まれて前記隙間の前記一端側を塞いで前記接着剤の流出を防止する防止面を有し、
前記接着剤の粘度は、水の粘度以上かつ150mPa・s以下である
ことを特徴とする、ロータ。
【請求項2】
前記接着剤流入部は、前記ロータコアの周方向に等間隔に複数配置されている
ことを特徴とする、請求項1記載のロータ。
【請求項3】
前記コア片は、プレスによる打抜き加工によって製造されるものであり、
前記ロータコアの積厚は、10mm以上かつ40mm以下である
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のロータ。
【請求項4】
記ブッシュの前記一端側に固定され、前記シャフトと一体回転するセンサマグネットをさらに備え、
前記ブッシュは、前記一端側に前記センサマグネットが嵌め込まれて前記センサマグネットを保持する保持部を有する
ことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載のロータ
【請求項5】
請求項1~の何れか1項に記載のロータと、
コイルを有し、中央に前記ロータが配置される空間を持つ円筒形状のステータと、
前記ロータと一体回転するシャフトと、
前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングと、を備えた
ことを特徴とする、ブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーロータ型のブラシレスモータに適用されるロータ及びブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
インナーロータ型のブラシレスモータでは、コイルを備えたステータの中央に、マグネットを備えたロータが配置され、ロータと一体回転するシャフトから出力が取り出される。ロータは、円環状の薄板のコア片が軸方向に積層されてなるロータコアの外周面にマグネットが固定されることで構成される。また、特許文献1のように、ロータとシャフトとが一体化され、シャフトの一部が両端よりも大径に形成されて「マグネット装着部」として設けられたロータも提案されている。なお、特許文献1のモータでは、接着剤を介してマグネット装着部とリングマグネットとが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-146427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的な接着方法では、比較的粘度の高い接着剤を用い、接着したい対象物との間で接着剤を摺り切ることで隙間を埋めて接着する。しかしながら、積厚が大きいロータの場合、この接着方法では、ロータコアとマグネットとの間に塗りむらが生じ、ロータの品質が不安定になるという課題がある。特に、ロータコアの材質とマグネットの材質とが異なる場合(例えば、金属製のロータコアと樹脂製のマグネットとを接着する場合)、塗りむらが生じると、両者の熱膨張係数の違いに起因して、ロータの高速回転時や熱膨張及び収縮時に割れや亀裂が発生するおそれがある。
【0005】
また、上記の特許文献1のモータでは、マグネット装着部の外周面に複数の接着剤溝を設け、マグネット装着部の外周面に塗布した多量の接着剤の一部が接着剤溝に入り込むことで接着剤の漏出を防止しつつ接着強度を高めている。しかし、特許文献1の構成では、マグネット装着部の外周面に接着剤を塗布した後でリングマグネットを装着しているため、リングマグネットの内周面によってマグネット装着部の外周面に塗布された接着剤が摺り切られるおそれがあり、外周面全体にむらなく接着剤を塗布できるとは限らない。
【0006】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、簡素な構成で、積厚の大きいロータであっても接着剤の塗りむらを回避して品質を高めたロータ及びブラシレスモータを提供することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示するロータは、インナーロータ型のブラシレスモータに適用されるロータであって、薄板環状のコア片が複数積層されて構成され、シャフトと一体回転するロータコアと、円筒形状に形成され、前記ロータコアの外周面との間に隙間を介して装着される樹脂製のマグネットと、前記ロータコアの前記外周面において前記ロータコアの軸方向全体に亘って軸方向に一直線状に凹設された溝状の接着剤流入部と、前記ロータコア及び前記マグネットを接着固定する接着剤と、前記ロータコア及び前記マグネットの軸方向一端側に固定されたブッシュと、を備える。前記接着剤は、前記ロータコアの前記外周面と前記マグネットの内周面との間の前記隙間及び前記接着剤流入部の双方からなる接着代の全体に充填されている。また、前記ブッシュは、前記マグネットの前記一端側の径方向内側に嵌め込まれて前記隙間の前記一端側を塞いで前記接着剤の流出を防止する防止面を有する。さらに、前記接着剤の粘度は、水の粘度以上かつ150mPa・s以下である。
【0008】
(2)前記接着剤流入部は、前記ロータコアの周方向に等間隔に複数配置されていることが好ましい。
(3)前記コア片は、プレスによる打抜き加工によって製造されるものであり、前記ロータコアの積厚は、10mm以上かつ40mm以下であることが好ましい。
【0009】
(4)前記ロータは、前記ブッシュの前記一端側に固定され、前記シャフトと一体回転するセンサマグネットをさらに備えることが好ましい。この場合、前記ブッシュは、前記一端側に前記センサマグネットが嵌め込まれて前記センサマグネットを保持する保持部を有することが好ましい
【0010】
)ここで開示するブラシレスモータは、上記(1)~()の何れか一つに記載のロータと、コイルを有し、中央に前記ロータが配置される空間を持つ円筒形状のステータと、前記ロータと一体回転するシャフトと、前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングと、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
開示のロータ及びブラシレスモータによれば、ロータコアの軸方向全体に亘って軸方向に一直線状に凹設された溝状の接着剤流入部が設けられるため、低粘度の接着剤を接着剤流入部に供給することで接着代全体に接着剤を充填させることができる。このため、簡素な構成で、積厚の大きいロータであっても、接着剤の塗りむらを回避し、ロータ及びブラシレスモータの品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るブラシレスモータを示す斜視図である。
図2図1に示すブラシレスモータの分解斜視図である。
図3図1に示すブラシレスモータの軸方向に沿う断面図であり、ロータ,シャフト,小ケース板及びカバーを省略して示す。
図4】実施形態に係るロータを示す半断面図である。
図5図4に示すロータの軸方向他端側を軸方向から視た図である。
図6図4に示すロータのロータコアを構成するコア片を軸方向から視た図である。
図7図4のロータが備えるブッシュの半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としてのロータ及びブラシレスモータについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.構成]
図1は、本実施形態に係るブラシレスモータ1(以下「モータ1」という)の斜視図であり、図2は、モータ1の分解斜視図である。図3は、モータ1の軸方向断面図であって後述するロータ2,シャフト20,小ケース板9及びカバー8を省略して示す。図4及び図5では、本実施形態に係るロータ2を示し、図6及び図7では、ロータ2を構成する部品をそれぞれ示す。
【0015】
図1図3に示すように、モータ1は、円筒状のステータ3の中央にロータ2が配置されるインナーロータ型のブラシレスモータである。本実施形態では、直径が30mm(Φ30)であって、6溝の小径モータ1を例示する。モータ1は、円筒形状のマグネット22を有する円柱状のロータ2と、コイル32を有するステータ3と、ロータ2と一体回転するシャフト20とを備え、モータ1の外郭をなす金属製のハウジング4内にロータ2及びステータ3を収容して構成される。
【0016】
図2に示すように、本実施形態のモータ1は、ステータ3を内蔵したハウジング4に対して軸方向に組み付けられる、バスバーユニット6と、小ケース5と、プリント基板7(以下「基板7」という)と、カバー8と、ロータ2と、小ケース板9とを備える。以下、これらを順に説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、ハウジング4は、軸方向の一端側が開口した有底筒型であり、一端側の開口には小ケース板9が固定されるとともにシャフト20が突設される。なお、本実施形態のハウジング4は、その外観形状が円筒であるが、ハウジング4の形状はこれに限られない。
【0018】
図3に示すように、ステータ3は、内径側にロータ2が配置される空間を持つ略円筒状の部品であり、ハウジング4内に固定される環状のステータコア30と、ステータコア30に対してインシュレータ31を介して巻回されたコイル32とを備える。本実施形態のモータ1では、六つのコイル32が設けられる。二つのコイル32にはU相の電流が供給され、他の二つのコイル32にはV相の電流が供給され、残りの二つのコイル32にはW相の電流が供給される。
【0019】
図2及び図3に示すように、バスバーユニット6は、ステータ3の軸方向一端側に配置される環状の部品であり、三つのバスバー60を含む。バスバー60は、ステータ3に設けられる三相のコイル32を同相ごとに結線する導電性の平板部材である。バスバーユニット6は、軸方向から視て円弧状の各バスバー60を樹脂でモールドしたインサート成形品として設けられる。各バスバー60の端部60aは樹脂から露出して設けられる。なお、バスバーユニット6の中央には、モータ1の中心軸Cと同心の円形状の孔部6dが設けられる。
【0020】
図1図3に示すように、小ケース5は、絶縁性材料(例えば樹脂)で形成された部品であり、ハウジング4に隣接配置される有底筒状のコネクタ部51と、ステータ3の軸方向一端側に配置される筒部52と、コネクタ部51及び筒部52を繋ぐ連結部53とを一体で有する。コネクタ部51は、その外形状が略四角筒状であり、長手方向(中心軸方向)がモータ1の中心軸Cと平行になるように設けられる。なお、本実施形態のコネクタ部51の底部51aは、ハウジング4の底部とは逆側(一端側)に位置する。すなわち、ハウジング4は一端側に向けて開口し、コネクタ部51は他端側に向けて開口している。
【0021】
図3に示すように、コネクタ部51の底部51aには、複数のコネクタ端子50が底部51aを貫通して固定される。コネクタ端子50は、コネクタ部51の四つの側面部51bで囲まれた内部空間に露出して配置される。コネクタ端子50には、電源用の端子と作動信号用の端子とが含まれ、外部からの電源及び作動信号の入力を可能とする。本実施形態では、各コネクタ端子50が、コネクタ部51の底部51aに貫設された固定孔に対し開きカシメによって固定される。これにより、複数のコネクタ端子50のそれぞれを近接させた状態で簡単にコネクタ部51に固定可能である。
【0022】
図2に示すように、コネクタ部51の筒部52は、有底円筒状の外形をなし、その底部をステータ3側に向けて姿勢でハウジング4の一端側の開口近傍に収容される。筒部52の底部の中央には、モータ1の中心軸Cと同心の円形状の孔部52dが設けられる。なお、図3に示すように、軸方向における筒部52とステータ3との間には、上記のバスバーユニット6が配置される。
【0023】
図2に示すように、コネクタ部51の連結部53は、筒部52から径方向外側に延設されてコネクタ部51に繋がる断面略コ字状の部位である。筒部52の側面部は連結部53の部分で欠成されており、筒部52の側面部で囲まれた空間と連結部53のコ字で囲まれた空間とは連通している。これらの空間には、基板7が配置される。
【0024】
図2及び図3に示すように、基板7は、各バスバー60の端部60aと底部51aを貫通したコネクタ端子50とを電気的に接続する部品である。基板7は、ステータ3の軸方向一端側とコネクタ部51の底部51a側とに亘って配置される。基板7には、U相,V相,W相の出力線のほか、ホール信号を取り出すためのセンサ線,電源線,グランド線等を含むパターンが配置される。本実施形態の基板7は面一な平板状であり、小ケース5の一端側に配置される。
【0025】
本実施形態の基板7は、軸方向から視て、コネクタ端子50が接続される略矩形状の端子接続部7aと、中央に孔部7dを有する円環状のリング部7bと、端子接続部7a及びリング部7bを繋ぐ一直線状の接続部7cとを有する。端子接続部7aはコネクタ部51に収容され、リング部7bは筒部52に収容され、接続部7cは連結部53に収容される。なお、基板7のリング部7bには、ロータ2の回転位置を検出するホールセンサ10が取り付けられる。
【0026】
図1及び図2に示すように、カバー8は、小ケース5に対して軸方向一端側から取り付けられる絶縁性の部品であり、小ケース5の開口を塞ぐ。カバー8は、軸方向から視た形状が、小ケース5の一端側の外形(外縁部)と略同一形状となっている。すなわち、カバー8は、コネクタ部51を覆うコネクタカバー部8aと、筒部52を覆い中央に孔部8dを有する環状部8bと、連結部53を覆う接続部8cとを有する。
【0027】
図2及び図4に示すように、ロータ2は、シャフト20と一体回転するロータコア21と、ロータコア21の一体回転する樹脂製のマグネット22とを備える。シャフト20は、ロータ2を支持する回転軸であり、モータ1の出力(機械エネルギ)を外部に取り出す出力軸としても機能する。本実施形態のシャフト20は、ロータコア21を挟んだ二箇所に設けられた軸受を介して、ハウジング4の底部と小ケース板9とに回転自在に支持される。
【0028】
ロータコア21は、薄板環状かつ金属製のコア片21Pが軸方向に複数積層されて構成される。すべてのコア片21Pは同一形状である。本実施形態のコア片21Pは、図6に示すように、中央に貫通孔を有する略円環状であり、外周縁部21fに周方向に等間隔に凹設された四つの凹部21bを有する。凹部21bは、後述する接着剤流入部25bとなる部分である。本実施形態のコア片21Pでは、四つの凹部21bが90度間隔で配置されており、各凹部21bの形状は、軸方向から視て、角部が曲面状に形成された略矩形状である。
【0029】
コア片21Pの中央の貫通孔は、モータ1の中心軸Cと同心の円形の孔部21dと、この孔部21dから径方向外側へ凹設された四つの切欠き21cとから構成される。図5に示すように、孔部21dにはシャフト20が挿通される。なお、切欠き21cは、シャフト20が挿通される際の圧力緩和のための空隙である。切欠き21cも、周方向に等間隔に配置される。本実施形態のコア片21Pでは、四つの切欠き21cと四つの凹部21bとが、周方向に互いに45度ずれて設けられる。これにより、コア片21Pの径方向寸法が小さくなりすぎることがなく、磁束の通り道が確保される。
【0030】
なお、コア片21Pは、プレスによる打抜き加工で製造される。コア片21Pの板厚(軸方向寸法)は1mm未満(例えば0.3~0.5mm程度)となり、これが数十枚(例えば30枚~80枚)積層されて固着されることで、図4に示すロータコア21となる。ロータコア21の積厚(軸方向寸法)は、10mm以上かつ40mm以下であることが好ましい。例えば、板厚0.5mmのコア片21Pを80枚積層すると、積厚40mmのロータコア21となる。
【0031】
図4及び図5に示すように、ロータ2は、ロータコア21の外周面(外周縁部21fが連なった面)においてロータコア21の軸方向全体に亘って軸方向に一直線状に凹設された溝状の接着剤流入部25bを備える。接着剤流入部25bは、コア片21Pの凹部21bが連なって形成され、ロータコア21の軸方向一端側及び他端側の双方に開放している。接着剤流入部25bは、ロータコア21とマグネット22とを接着固定する接着剤27が流入される部分である。本実施形態のロータ2では、四つの接着剤流入部25bが周方向に等間隔に配置される。なお、ロータコア21には、その外周面との間に隙間25aを介してマグネット22が装着される。
【0032】
図5に網掛け模様で示すように、接着剤27は、ロータコア21の外周面とマグネット22の内周面との間の隙間25a及び接着剤流入部25bの双方からなる接着代25の全体に充填されている。言い換えると、接着代25には、接着剤27のない空間が存在しない。接着代25の容積に対する接着剤27の体積は略100%である。本実施形態の接着剤27の粘度は、水の粘度以上かつ150mPa・s以下であり、より好ましくは100mPa・s以下である。すなわち、本実施形態のロータ1では、低粘度又は超低粘度の接着剤27が使用される。
【0033】
これにより、接着剤流入部25bに流し込まれた接着剤27が接着代25全体にむらなく行き渡り、固化することでロータコア21とマグネット22とが隙間なく固定される。なお、本実施形態のモータ1では、ロータコア21の軸方向両端に接着剤27が滞留するための空間26a,26b(以下「接着剤溜まり26a,26b」という)が設けられており、接着代25は二つの接着剤溜まり26a,26bに開放している。
【0034】
図2及び図4に示すように、本実施形態のロータ2は、ロータコア21及びマグネット22の一端側に固定されたブッシュ23と、ブッシュ23の一端側に固定されてシャフト20と一体回転するセンサマグネット24とをさらに備える。ブッシュ23は、隙間25aの一端側を塞いで接着剤27の流出を防止する防止面23aと、センサマグネット24を保持する保持部23bとを有する樹脂部品である。センサマグネット24は、径方向においてホールセンサ10と対向配置される。これにより、センサマグネット24の回転がホールセンサ10によって検出される。
【0035】
図7に示すように、本実施形態のブッシュ23は、外径寸法が異なる三つの略円筒状の部分(円筒部)が軸方向に並んだ形状に形成される。軸方向中間に位置する円筒部23cの外径寸法が最も大きく、この円筒部23cの一端側に外径寸法が最も小さい円筒部23eが設けられ、中間の円筒部23cの他端側に二番目に大きな外径寸法を持つ円筒部23dが設けられる。他端側の円筒部23dは、図4に示すように、マグネット22の一端側における径方向内側に嵌め込まれる部分であり、この円筒部23dの他端側を向く面及び外周面と段差面とが上記の防止面23aとして機能する。また、円筒部23cの一端側を向く面にはセンサマグネット24の他端側の部分が嵌め込まれる嵌合部23fが凹設されている。この嵌合部23f及び一端側の円筒部23eは、上記の保持部23bとして機能する。
【0036】
図2に示すように、本実施形態のモータ1では、ハウジング4に収容されたステータ3に対し、バスバーユニット6,小ケース5,基板7及びカバー8をこの順に取り付けていくと、バスバーユニット6の孔部6dと、小ケース5の孔部52dと、基板7の孔部7dと、カバー8の孔部8dとがすべて重なる。これらの孔部6d,52d,7d,8dには、シャフト20が挿通される。本実施形態のモータ1では、これらの孔部6d,52d,7d,8dの直径がいずれも、ロータ2の外径よりも大きい。これにより、四つの要素6,5,7,8をハウジング4に組み付けたあとで、シャフト20と一体化されたロータ2を、ハウジング4(ステータ3)に挿入することが可能である。
【0037】
図1及び図2に示すように、小ケース板9は、カバー8の一端側に装着される金属製の部品であり、ハウジング4に固定される。本実施形態の小ケース板9は、カバー8の一端側の面に載置される平面部9aと、平面部9aから中心軸Cを中心とした有底筒状に形成された膨出部9bとを有する。この膨出部9bは、図示しない軸受を収容する部位である。
【0038】
[2.効果]
(1)上述したロータ2及びモータ1では、ロータコア21の外周面においてロータコア21の軸方向全体に亘って接着剤流入部25bが設けられているため、積厚の大きいロータ2であっても、低粘度の接着剤27を接着剤流入部25bに供給すれば接着代25全体に接着剤27を充填させることができる。つまり、簡素な構成で、ロータコア21とマグネット22とを固定するための接着剤27の塗りむらを回避できる。これにより、ロータコア21の材質とマグネット22の材質とが異なる場合でも、ロータ2の高速回転時や熱による膨張収縮が生じたときの割れを回避でき、ロータ2の品質を高めることができる。
【0039】
(2)上述したロータ2及びモータ1によれば、接着剤流入部25bがロータコア21の周方向に等間隔に複数配置されているため、複数の接着剤流入部25bに接着剤27を供給でき、接着剤27をより均一に充填することができる。したがって、ロータ2の品質をより高めることができる。
【0040】
(3)上述したロータ2及びモータ1では、コア片21Pがプレスによる打抜き加工で製造されるため、その板厚は1mm未満(例えば0.35~0.5mm程度)となる。ロータコア21は、このコア片21Pを積層することで構成されるが、積厚を40mm以下にすることで、例えばΦ30mm程度の小径モータ1のハウジング4に対し、ステータ3やバスバー60等を配置したあとからロータ2を挿入することができる。これにより、ロータ2に傷が付くことを防止でき、組み立て時の設備制約を低減できる。また、Φ30mm程度の小径モータ1では、ステータコア30の積厚は40mm程度が上限である。これを超える厚さとなると、コア片21Pの積み上げが困難となり、積み上げ誤差も顕著となるからである。また、ハウジング4は絞り加工により製造することが多いが、Φ30mm程度のハウジング4を絞り加工により製造する場合には、深さ50mm程度が上限となる。一方で、コイル32の軸方向両端部(上側コイルエンドと下側コイルエンド)は各々5mm程度必要であることから、ステータコア30の積厚の上限はやはり40mmとなる。このように、ステータコア30の積厚の上限が40mmであることから、ステータコア30の内側に配置されるロータコア21の積厚も40mmが上限となる。言い換えると、ロータコア21の積厚を40mm以下にすることで、組立性を向上でき、製造コストを低減できるとともに、ロータコア21の積み上げ誤差を小さくすることができる。
【0041】
さらに、上述したロータ2及びモータ1では、ロータコア21の積厚が10mm以上に設定される。上記の通り、コイル32の軸方向両端部(上側コイルエンドと下側コイルエンド)は各々5mm程度、合計で10mm程度必要である。この合計10mm程度のコイルエンドに対して、モータ1として磁束に寄与する積厚を、少なくとも同程度(10mm程度)確保することによって、モータ全長及びモータ体積に対する高トルクを確保できる。よって、ステータコア30の積厚の下限が10mmとなり、ステータコア30の内側に配置されるロータコア21の積厚も10mmが下限となる。言い換えると、ロータコア21の積厚を10mm以上とすることで、小径モータ1に本ロータ2を適用しても、同体格の既存のブラシ付きモータよりも高いトルクを出力することができる。
【0042】
(4)上述したロータ2及びモータ1によれば、接着剤27の流出を防止する機能とセンサマグネット24を保持する機能とを一つのブッシュ23が有しているため、部品点数及びコストの削減と小型化とを実現できる。
(5)上述したロータ2及びモータ1によれば、水の粘度以上かつ150mPa・s以下の粘度である低粘度の接着剤27を用いることで、接着代25全体にむらなく接着剤27を塗布することができる。これにより、ロータ2の品質をより高めることができる。
【0043】
(6)本実施形態のモータ1では、小ケース5の筒部52の孔部52d,基板7のリング部7bの孔部7d,カバー8の孔部8dの直径がいずれもロータ2の外径よりも大きいため、これら三つの要素をハウジング4に組み付けたあとから、ロータ2を組み込むことができる。このため、ロータ2に傷が付くことを防止でき、組み立て時の設備制約を低減できる。したがって、組立性を向上でき、製造コストを低減できる。
【0044】
[3.その他]
上述の実施形態で説明したロータ2の構成は一例であって、上述したものに限られない。例えば、ブッシュ23の代わりに、センサマグネット24を保持する保持部品と、接着剤27の流出を防止する部品とをそれぞれ配置してもよい。また、上記の接着剤27の粘度も一例であって、上記の粘度に限られない。
【0045】
上記のロータ2では、四つの接着剤流入部25bが周方向に等間隔で配置されているが、接着剤流入部25bは一つ以上設けられていればよく、その配置も等間隔でなくてもよい。また、上記のロータコア21には、切欠き21cが設けられているが、切欠き21cを省略してもよい。なお、ロータコア21の積厚も一例であって、上記の範囲(10mm≦積厚≦40mm)以外のロータコアを採用してもよい。
【0046】
また、上述したモータ1の構成も一例であって、上述したものに限られない。例えば、コネクタ部51が軸方向一端側に開口していてもよいし、径方向に向かって開口していてもよい。また、複数のコネクタ端子50の固定方法は開きカシメに限らず、接着などの他の固定方法を採用してもよい。なお、小ケース5(コネクタ部51)やカバー8を省略してもよい。
【0047】
また、小ケース板9の形状や素材も上述したものに限られない。上記のモータ1では、ハウジング4にバスバーユニット6,小ケース5,基板7及びカバー8を取り付けたあとでロータ2を挿入する構成を例示したが、ロータ2を先に挿入してからこれらの要素を組み付けてもよい。この場合、各孔部6d,52d,7d,8dの直径がロータ2の外径以下であってもよい。
【0048】
ホールセンサ10の取付位置や向きは上記のものに限られず、例えばロータ2の軸方向から回転を検出するように基板7に取り付けられていてもよいし、ホールセンサ10自体を省略してもよい。また、バスバー60が樹脂でモールドされたものでなくてもよいし、基板7が面一の平板状でなくてもよい。なお、基板7を用いずにコネクタ端子50とバスバー60の端部60aとを接続してもよい。
【0049】
上述したモータ1の大きさや極数は一例である。例えばΦ27~Φ36程度の小径モータであってもよいし、小径モータ以外のモータに対し、上記のロータ2を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 モータ(ブラシレスモータ)
2 ロータ
3 ステータ
20 シャフト
21 ロータコア
21P コア片
22 マグネット
23 ブッシュ
23a 防止面
23b 保持部
24 センサマグネット
25 接着代
25a 隙間
25b 接着剤流入部
27 接着剤
32 コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7