(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】基礎構造物、基礎構造物に用いられる鋼製セグメント及び基礎構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20240808BHJP
E02D 5/38 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
E02D27/01 D
E02D5/38
(21)【出願番号】P 2020173155
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2019199343
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】大場 雄登
(72)【発明者】
【氏名】松岡 馨
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-350867(JP,A)
【文献】特開2006-249784(JP,A)
【文献】特開平10-331568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E02D 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼製セグメントを長手方向及び短手方向に連結した筒状のセグメント構造体と、
前記セグメント構造体の内側に設けられた中詰部と、
前記セグメント構造体の軸線に沿って延びかつ前記軸線周りの周方向に所定の間隔をあけて配置され、前記セグメント構造体及び前記中詰部と一体化した複数の主筋と、
を備え、
前記鋼製セグメントは、
前記セグメント構造体の壁面を形成するプレートと、
前記周方向に延びる前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を備え、
前記主桁は、前記主筋を係止する係止部を有し、
前記係止部は、前記プレートと前記主桁との連結部とは反対側における前記主桁の縁部に設けられていることを特徴とする基礎構造物。
【請求項2】
前記係止部は、前記主筋が挿通される孔であることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造物。
【請求項3】
前記係止部は、前記主桁の前記周方向に沿った内側の縁部に形成され、所定の間隔で切り欠かれた切欠部であり、
前記切欠部に前記主筋の一部が嵌め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造物。
【請求項4】
前記切欠部は、半円形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の基礎構造物。
【請求項5】
複数の鋼製セグメントを長手方向及び短手方向に連結した筒状のセグメント構造体と、
前記セグメント構造体の内側に設けられた中詰部と、
前記セグメント構造体の軸線に沿って延びかつ前記軸線周りの周方向に所定の間隔をあけて配置され、前記セグメント構造体及び前記中詰部と一体化した複数の主筋と、を備え、
前記鋼製セグメントとで前記主筋を挟んで当該主筋を支持する支持部を備えることを特徴とす
る基礎構造物。
【請求項6】
前記支持部は、前記主筋を受容する受容部を有することを特徴とする請求項
5に記載の基礎構造物。
【請求項7】
前記支持部は、前記鋼製セグメントに連結されることを特徴とする請求項
5又は
6に記載の基礎構造物。
【請求項8】
前記鋼製セグメントは、
前記セグメント構造体の壁面を形成するプレートと、
前記周方向に延びる前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を備え、
前記主筋は、前記主桁と前記支持部とで挟まれて支持されることを特徴とする請求項5から7までのいずれか一項に記載の基礎構造物。
【請求項9】
前記主桁には、前記プレート及び前記主桁により画定された空間に前記中詰部を充填する際に空気を抜く孔が形成されていることを特徴とする請求項
1又は8に記載の基礎構造物。
【請求項10】
前記孔は、前記プレートと前記主桁との連結側に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の基礎構造物。
【請求項11】
前記鋼製セグメントは、前記主桁間を延在し、前記周方向に所定の間隔をあけて設けられた複数の補剛材を有し、
前記孔は、前記プレートと前記補剛材とがなす隅角部に対応する前記主桁の位置に形成されていることを特徴とする請求項
9又は10に記載の基礎構造物。
【請求項12】
埋設方向に延びる軸線に沿って延在する筒状のセグメント構造体と、
前記軸線に沿って延びかつ前記軸線周りの周方向に所定の間隔をあけて配置され
、前記セグメント構造体と係合する複数の主筋と、を備え、
前記セグメント構造体は、前記埋設方向及び前記周方向に連続的に連結され壁面を形成する複数の鋼製セグメントにより形成されており、
前記鋼製セグメントは、前記セグメント構造体の外壁を形成する外側ピースと、前記セグメント構造体の内壁を形成する内側ピースと、を有し、
前記外側ピースと前記内側ピースとの間に中詰部が設けられており、
前記主筋、前記鋼製セグメント及び前記中詰部は互いに一体化して
おり、
前記外側ピースは、外壁面を形成するプレートと、前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を有し、
前記内側ピースは、内壁面を形成するプレートと、前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を有し、
前記外側ピース及び前記内側ピースの少なくとも一方の前記主桁は、前記主筋を係止する係止部を有することを特徴とする基礎構造物。
【請求項13】
前記鋼製セグメントは、前記外側ピースと前記内側ピースとを連結する連結ピースを有することを特徴とする請求項
12に記載の基礎構造物。
【請求項14】
埋設方向に延びる軸線に沿って延在する筒状のセグメント構造体と、前記セグメント構造体の内側に設けられた中詰部と、前記軸線に沿って延びかつ前記軸線周りの周方向に所定の間隔をあけて配置され、前記セグメント構造体及び前記中詰部と一体化した複数の主筋と、を有する基礎構造物に用いられる鋼製セグメントであって、
前記基礎構造物の外壁面を形成するプレートと、
前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を備え、
前記主桁は、前記主筋を係止する係止部を有し、
前記係止部は、前記プレートと前記主桁との連結部とは反対側における前記主桁の縁部に設けられていることを特徴とする基礎構造物に用いられる鋼製セグメント。
【請求項15】
埋設方向に延びる軸線に沿って延在する筒状のセグメント構造体と、前記軸線に沿って延びかつ前記軸線周りの周方向に所定の間隔をあけて配置され、前記セグメント構造体と係合する複数の主筋と、中詰部と、を有す
る基礎構造物に用いられる鋼製セグメントであって、
外壁を形成する外側ピースと、
前記外側ピースに連結され、前記基礎構造物の内壁を形成する内側ピースと、を備え、
前記外側ピースは、前記基礎構造物の外壁面を形成するプレートと、前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を有し、
前記内側ピースは、前記基礎構造物の内壁面を形成するプレートと、前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を有し、
前記外側ピース及び前記内側ピースの少なくとも一方の前記主桁は、前記主筋を係止する係止部を有し、
前記中詰部は、前記外側ピースと前記内側ピースとの間に設けられていることを特徴とす
る基礎構造物に用いられる鋼製セグメント。
【請求項16】
請求項1に記載の基礎構造物の施工方法であって、
複数の鋼製セグメントを長手方向及び短手方向に連結してセグメント構造体を構築する工程と、
前記係止部に前記主筋を係止し、前記セグメント構造体の軸線方向に沿って
前記主筋を
係止する工程と、
前記セグメント構造体の内側に中詰材を打設して前記セグメント構造体及び前記主筋と一体化する工程と、
を有することを特徴とする基礎構造物の施工方法。
【請求項17】
請求項5に記載の基礎構造物の施工方法であって、
複数の鋼製セグメントを長手方向及び短手方向に連結してセグメント構造体を構築する工程と、
前記鋼製セグメントと前記支持部とで前記主筋を挟んで支持し、前記セグメント構造体の軸線方向に沿って前記主筋を係止する工程と、
前記セグメント構造体の内側に中詰材を打設して前記セグメント構造体及び前記主筋と一体化する工程と、
を有することを特徴とする基礎構造物の施工方法。
【請求項18】
請求項12に記載の基礎構造物の施工方法であって、
複数の鋼製セグメントを長手方向及び短手方向に連結してセグメント構造体を構築する工程と、
前記セグメント構造体の軸線方向に沿って前記係止部に主筋を係止する工程と、
前記外側ピースと前記内側ピースとの間に中詰材を打設して前記セグメント構造体及び前記主筋と一体化する工程と、
を有することを特徴とする基礎構造物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造物、基礎構造物に用いられる鋼製セグメント及び基礎構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の鋼製のセグメントを用いて立坑など鉛直方向の埋設構造物を構築するセグメントの圧入工法が知られている。この工法においては、セグメントを沈設地点で周方向に連結して、リング体を組み立てて、圧入装置によってリング体を地中に圧入する。リング体の圧入後、リング体内部を掘削して排土し、その上にセグメントリングを増設するといった作業工程を所定の深度まで繰り返し、立坑、橋脚補強の土留め壁等の埋設構造物を地中に構築するものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記工法により構築された埋設構造物の底部は、基礎構造物として利用することができる。底部は、セグメントリングにより構成された埋設物構造物の内側に、地上又は内部で組み立てた鉄筋籠を設置し、鉄筋籠を含めてコンクリートを打設することにより構築される。鉄筋籠は、鉛直方向に延びて、周方向に所定の間隔をあけて設けられた複数の主筋と、複数の主筋を周方向に連結する複数の帯筋と、を有する。複数の帯筋は、鉛直方向に所定の間隔をあけて設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の埋設構造物の底部を基礎構造部として利用する場合、基礎として有効とみなされる部分は、コンクリート部分を含めて中心軸線からセグメントリングの内径の部分までである。鉄筋籠の径方向外側にある埋設構造物は、多量の鋼材を用いたセグメントにより構築されているにもかかわらず、基礎の有効径には含まれない。そのため、基礎構造部の完成後であっても基礎構造部としては扱われず、経済性の観点から改善の余地がある。
【0006】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、鋼製セグメントを用いて基礎構造物を構築する場合の基礎構造物の有効断面としてみなすことができる部分を拡大する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る基礎構造物は、複数の鋼製セグメントを長手方向及び短手方向に連結した筒状のセグメント構造体と、前記セグメント構造体の内側に設けられた中詰部と、前記セグメント構造体の軸線に沿って延びかつ前記軸線周りの周方向に所定の間隔をあけて配置され、前記セグメント構造体及び前記中詰部と一体化した複数の主筋と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、前記鋼製セグメントは、前記セグメント構造体の壁面を形成するプレートと、前記周方向に延びる前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を備え、前記主桁は、前記主筋を係止する係止部を有していてもよい。
【0009】
また、前記鋼製セグメントとで前記主筋を挟んで当該主筋を支持する支持部を備えていてもよい。
【0010】
また、前記支持部は、前記主筋を受容する受容部を有していてもよい。
【0011】
また、前記支持部は、前記鋼製セグメントに連結されていてもよい。
【0012】
また、前記主桁には、前記プレート及び前記主桁により画定された空間に前記中詰部を
充填する際に空気を抜く孔が形成されていてもよい。
【0013】
また、前記鋼製セグメントは、前記主桁間を延在し、前記周方向に所定の間隔をあけて設けられた複数の補剛材を有し、前記孔は、前記プレートと前記補剛材とがなす隅角部に対応する前記主桁の位置に形成されていてもよい。
【0014】
さらに、上記課題をするために、本発明に係る基礎構造物は、埋設方向に延びる軸線に沿って延在する筒状のセグメント構造体と、前記軸線に沿って延びかつ前記軸線周りの周方向に所定の間隔をあけて配置され、前記前記セグメント構造体と係合する複数の主筋と、を備え、前記セグメント構造体は、前記埋設方向及び前記周方向に連続的に連結され壁面を形成する複数の鋼製セグメントにより形成されており、前記鋼製セグメントは、前記セグメント構造体の外壁を形成する外側ピースと、前記セグメント構造体の内壁を形成する内側ピースと、を有し、前記外側ピースと前記内側ピースとの間に中詰部が設けられており、前記主筋、前記鋼製セグメント及び前記中詰部は互いに一体化していることを特徴とする。
【0015】
また、前記外側ピースは、外壁面を形成するプレートと、前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を有し、前記内側ピースは、内壁面を形成するプレートと、前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を有し、前記外側ピース及び前記内側ピースの少なくとも一方の前記主桁は、前記主筋を係止する係止部を有していてもよい。
【0016】
また、前記鋼製セグメントは、前記外側ピースと前記内側ピースとを連結する連結ピースを有していてもよい。
【0017】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る基礎構造物に用いられる鋼製セグメントは、埋設方向に延びる軸線に沿って延在する筒状のセグメント構造体と、前記セグメント構造体の内側に設けられた中詰部と、前記軸線に沿って延びかつ前記軸線周りの周方向に所定の間隔をあけて配置され、前記セグメント構造体及び前記中詰部と一体化した複数の主筋と、を有する基礎構造物に用いられる鋼製セグメントであって、前記基礎構造物の外壁面を形成するプレートと、前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を備え、前記主桁は、前記主筋を係止する係止部を有することを特徴とする。
【0018】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る基礎構造物に用いられる鋼製セグメントは、埋設方向に延びる軸線に沿って延在する筒状のセグメント構造体と、前記軸線に沿って延びかつ前記軸線周りの周方向に所定の間隔をあけて配置され、前記セグメント構造体と係合する複数の主筋と、中詰部と、を有する前記基礎構造物に用いられる鋼製セグメントであって、外壁を形成する外側ピースと、前記外側ピースに連結され、前記基礎構造物の内壁を形成する内側ピースと、を備え、前記外側ピースは、前記基礎構造物の外壁面を形成するプレートと、前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を有し、前記内側ピースは、前記基礎構造物の内壁面を形成するプレートと、前記周方向に延在する前記プレートの縁に沿って立設された主桁と、を有し、前記外側ピース及び前記内側ピースの少なくとも一方の前記主桁は、前記主筋を係止する係止部を有し、前記中詰部は、前記外側ピースと前記内側ピースとの間に設けられていることを特徴とする。
【0019】
さらに、上記課題を解決するために、本発明に係る基礎構造物の施工方法は、複数の鋼製セグメントを長手方向及び短手方向に連結してセグメント構造体を構築する工程と、前記セグメント構造体の軸線方向に沿って主筋を構築する工程と、前記セグメント構造体の内側に中詰材を打設して前記セグメント構造体及び前記主筋と一体化する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、鋼製セグメントを用いて基礎構造物を構築する場合の有効断面としてみなすことができる部分を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る基礎構造物を基礎とした橋脚及び床版を示す概略図である。
【
図4】鋼製セグメントを内側から見た正面図である。
【
図7】基礎構造物の構成を説明する部分断面図である。
【
図8】セグメント構造体を構築した後の基礎構造物を構築する施工方法を説明する図である。
【
図9】従来の基礎構造物の有効断面と、基礎構造物の有効断面とを比較する図である。
【
図10】第2の実施の形態における基礎構造物の部分断面斜視図である。
【
図11】第3の実施の形態における鋼製セグメントの平面図である。
【
図12】第3の実施の形態におけるセグメント構造体を構築した後の基礎構造物を構築する施工方法を説明する図である。
【
図13】第4の実施の形態における鋼製セグメントと支持部との関係を示す図である。
【
図14】第4の実施の形態における支持部の平面図である。
【
図15】第4の実施の形態におけるセグメント構造体を構築した後の基礎構造物を構築する施工方法を説明する図である。
【
図16】第4の実施の形態における基礎構造物の平面図である。
【
図17】変形例に係る鋼製セグメントの斜視図である。
【
図18】変形例に係る鋼製セグメントを上下に重ねた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明に係る基礎構造物は、地上の建築物の基礎となるものであり、例えば、橋脚の基礎(土台)となる。基礎構造物は、鉄筋コンクリート構造物として地盤に埋設される。なお、本発明に係る基礎構造物が基礎として適用される建築物は、橋脚に限られず、高層ビルや集合住宅であってもよく、特に限定されない。
【0023】
1.第1の実施の形態
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る基礎構造物1を基礎とした橋脚100及び床版110を示す概略図である。橋脚100に支持されている床版110は、例えば、自動車、電車等の車両が走行し、車両の荷重が直接かかる部分である。なお、以下では、説明の便宜上、基礎構造物1の中心線を軸線xとする。軸線xに沿って基礎構造物1が埋設される方向を埋設方向Aとし、軸線x周りの方向を周方向Cとする。
【0024】
<基礎構造物>
基礎構造物1は、橋脚100の下側に構築されている。基礎構造物1は、例えば、円柱状に形成されている。基礎構造物1は、筒状に形成されたセグメント構造体10と、中詰部20と、主筋30と、を備える。
【0025】
[セグメント構造体]
セグメント構造体10は、埋設方向Aに沿って延びる軸線xに沿って延在する。セグメント構造体10は、埋設方向A及び周方向Cに連続的に連結され、基礎構造物1を構築する際の土留壁を形成すると共に、中詰部20を構築する際のコンクリート型枠を形成する複数の鋼製セグメント40により形成されている。
【0026】
図2は、基礎構造物1の平面図である。基礎構造物1のセグメント構造体10は、軸線xに沿って埋設方向Aに連結された複数のリング体(環状体)11を有する。すなわち、セグメント構造体10の軸線xに沿った方向は、埋設方向Aと一致する。基礎構造物1においてリング体11は、互いに周方向Cに環状に連結された複数の鋼製セグメント40を有しており、基礎構造物1の帯筋を代替する帯筋代替部として機能する。すなわち、リング体11は、埋設方向Aに複数連結されることで基礎構造物1を構成すると共に、各リング体11に本来設けられる帯筋の代わりとなる。したがって、帯筋を代替するリング体11は、主筋30に交差する方向(埋設方向Aに直交する基礎構造物1の横断面方向)に沿って配置されている。軸線xに沿って上下方向(埋設方向A)に隣接するリング体11において、上方のリング体11の各鋼製セグメント40と下方のリング体11の各鋼製セグメント40とは、周方向Cにおける端部がそれぞれ周方向Cにずらされて千鳥状に配置されている。周方向Cに連結する鋼製セグメント40の数は、構築する基礎構造物1の大きさ(外径)に基づいて適宜変更される。
【0027】
図3は、リング体11を構成する鋼製セグメント40の平面図である。
図4は、鋼製セグメント40を内側から見た正面図である。
図5は、鋼製セグメント40の斜視図である。
図6は、連結機構の構成を説明する斜視図である。帯筋を代替するリング体11は、複数の鋼製セグメント40と、連結機構50と、を備える。
【0028】
(鋼製セグメント)
鋼製セグメント40は、鋼材により形成されている。鋼製セグメント40は、プレート41と、主桁42と、継手部43と、リブ(補剛材)44と、を有する。鋼製セグメント40において、プレート41、主桁42及び継手部43により、中詰部20を形成するコンクリートを充填する充填空間Sが画定されている。なお、主桁42、継手部43、リブ44は、いずれもプレート41に溶接によって接合されていてもよいし、一部がプレート41と一体に形成されていてもよい。
【0029】
プレート41は、基礎構造物1、具体的にはセグメント構造体10の外壁面を形成する。プレート41は、平面視矩形状に形成されている。プレート41は、円弧状に湾曲して形成されている。なお、プレート41の曲率は、構築する基礎構造物1の大きさに基づいて決定される。
【0030】
主桁42は、周方向Cに沿って延びるプレート41の2つの端縁(短手方向端縁)にそれぞれ立設されている。主桁42は、プレート41に沿って湾曲して形成されている。主桁42は、プレート41に対して略直角を成しており、プレート41の内面に立設されている。主桁42は、リング体11が上下方向に重ねられた場合、上下方向のリング体11の鋼製セグメント40を向く。一の主桁42は、地上側に位置する縁に設けられている。他の主桁42は、地中側に位置する縁に設けられている。
【0031】
各主桁42には、複数の孔42a,42b,42cが形成されている。
孔42aは、上下に隣接する他の鋼製セグメント40と連結するためのボルト等の連結具(図示せず)が挿通される連結用の孔である。孔42aは、例えば、円形状に形成されており、主桁42の厚さ方向(軸線xに沿った方向)に貫通している。孔42aは、連結具の横断面よりも若干大きな径を有するように形成されている(連結具の最外径+3~6mm程度)が、打設されるコンクリートが通過可能な大きさに形成する必要はない。もちろん、コンクリートに含まれる骨材が孔42aと連結具との間の隙間を通過できるような大きさとなるように孔42aを形成してもよい。なお、孔42aは、円形状に限らず、楕円状、長円状、矩形状に形成してもよく、その形状及び大きさは主桁42の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。
孔42aは、プレート41と主桁42との連結側に設けられている。孔42aは、主桁42の周方向Cにおける一端から他端に亘って、その延び方向において所定の間隔をあけて設けられている。軸線xに対向する各主桁42の孔42aは、互いに同軸となるように設けられている。
【0032】
孔42bは、コンクリートを充填する際に充填空間Sから空気を抜く空気抜き用の孔であると共にコンクリートを流動させる孔である。孔42bは、例えば、円形状に形成されており、主桁42の厚さ方向(軸線xに沿った方向)に貫通している。孔42bは、空気だけでなく、コンクリートに含まれる骨材が通過できる大きさとなるように形成されている。なお、孔42bは、円形状に限らず、楕円状、長円状、矩形状に形成してもよく、その形状及び大きさは主桁42の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。具体的には、孔42bは、コンクリートの流入性の観点から、最小径はコンクリートに含まれる細骨材の最大サイズである10mmよりも大きく、最大径は主桁42の強度への影響の観点から主桁幅の1/3以下とすることが好ましい。
孔42bは、プレート41と主桁42との連結側に設けられている。孔42a及び孔42bは、軸線xを中心とした同じ仮想円上に形成されている。孔42bは、主桁42の周方向Cにおける一端から他端に亘って、リブ44の両近傍で孔42aと孔42aとの間に形成されている。すなわち、孔42bは、主桁42におけるリブ44との連結位置近傍に形成されている。さらに、孔42bは、主桁42の周方向Cにおける両端部近傍に形成されている。より具体的には、一部の孔42bは、主桁42における継手部43との連結位置と第2の継手部52(後述する)との連結位置とに挟まれた位置に形成されている。軸線xに対向する主桁42における孔42bは、互いに同軸上に設けられている。
【0033】
孔42cは、複数の主筋30がそれぞれ挿通される複数の主筋用の孔であり、主筋30を係止する係止部として機能する。孔42cは、例えば、円形状に形成されており、主桁42の厚さ方向(軸線xに沿った方向)に貫通している。孔42cは、主筋の横断面よりも若干大きな径を有するように形成されている。具体的には、孔42cの最小径は、施工性の観点から、主筋30の最外径(公称直径+両側のリブ高さ)+片側1mm(余裕しろ)以上とすることが好ましく、孔42cの最大径は、主筋配置位置の精度の観点から、主筋30の最外径+片側10mm(かぶりの許容誤差±10mm、鉄筋の中心間隔の組み立て施工許容誤差は±20mm)とすることが好ましい。なお、主筋30をD19(公称径19.1mm)で長さ1300mmとし、孔42cを最小径の25.1mmとして(最大リブ高さ片側2mm、片側余裕しろ1mm)、実大の主桁42間の最大距離となる1200mmまでの範囲内で挿入試験を行ったところ、問題なく挿入できることを確認した。
ただし、孔42cは、打設されるコンクリートが通過可能な大きさに形成する必要はない。もちろん、コンクリートに含まれる骨材が孔42cと主筋との間の隙間を通過できるような大きさとなるように孔42cを形成してもよい。なお、孔42cは、円形状に限らず、楕円状、長円状、矩形状に形成してもよく、その形状及び大きさは主桁42の設計強度を満たす範囲内で自由に変更可能である。
孔42cは、孔42a及び孔42bが形成されている側とは反対の側、つまり、軸線xの側(プレート41との連結部とは反対側)の主桁42の縁部に設けられている。孔42cは、主桁42の周方向Cにおける一端から他端に亘って、所定の間隔をあけて設けられている。軸線xに対向する主桁42における孔42cは、互いに同軸上に設けられている。孔42cと孔42a及び孔42bとは、軸線xを中心とした互いに異なる仮想円上に形成されている。
【0034】
継手部43は、周方向Cにおけるプレート41の各端部において軸線xに沿って延びる端縁(長手方向端縁)に設けられている。継手部43は、周方向Cにおける主桁42の端部において主桁42間を軸線xに沿って延びる。継手部43は、周方向Cにおいて隣接する他の鋼製セグメント40の継手部43と接触すると共に連結される。
継手部43は、プレート41から軸線xに向かって延びるようにプレート41の内面に立設されている。軸線xに沿って延びる継手部43の一端はプレート41に連結されており、他端は主桁42の内側の縁の手前まで延びている。軸線xに向かって延びる継手部43の縁は、それぞれ主桁42に連結されている。
継手部43には、軸線xに沿って所定の間隔をあけて、連結部51(
図2参照)を挿通する複数の孔43aが軸線xに沿って二列に形成されている。
【0035】
リブ44は、プレート41の内面において、軸線xに沿って2つの主桁42間を延びるように複数設けられている。リブ44は、鋼製セグメント40の周方向Cにおける各端部に設けられた継手部43の間で所定の間隔をあけて設けられている。リブ44は、プレート41から軸線xに向かって延びるように立設されている。軸線xに沿って延びるリブ44の一端は、プレート41に連結されており、他端は、主桁42の内側の縁の手前まで延びている。軸線xに向かって延びるリブ44の縁は、それぞれ主桁42に連結されている。
主桁42において各リブ44の周方向Cにおける両側にはそれぞれ孔42bが形成されている。孔42bは、リブ44とプレート41とにより形成される角部付近に形成されている。周方向Cにおいて最も外側にある孔42bは、継手部43と第2の継手部52(後述する)との間に形成されている。
【0036】
(連結機構)
図6に示すように、連結機構50は、連結部51と、第2の継手部52と、継手リブ53と、充填部54と、を備える。
連結部51は、継手部43及び第2の継手部52に挿通され、周方向(長手方向)に隣接する鋼製セグメント40同士を連結する。連結部51は、例えば、ボルト51aとナット51bにより構成されている。連結部51は、継手部43に形成された孔43aと第2の継手部52に形成された孔52aに挿通される。
第2の継手部52は、鋼製セグメント40の周方向Cにおける両端部近傍において、各継手部43に対して周方向Cに所定の間隔をあけて、継手部43と互いに平行に設けられている。第2の継手部52は、プレート41の内面に設けられており、当該内面から軸線xに向かって延びるように立設されている。軸線xに沿って延びる第2の継手部52の一端は、プレート41に連結されており、他端は、主桁42の内側の縁の手前まで延びている。軸線xに向かって延びる第2の継手部52の両端縁は、それぞれ主桁42に連結されている。
【0037】
第2の継手部52には、軸線xに沿って所定の間隔をあけて、連結部51のボルト51aを挿通する複数の孔52aが形成されている。孔52aは、例えば、6つ形成されており、鋼製セグメント40の短手方向(埋設方向A)に沿って並んだ3つの孔52aが、鋼製セグメント40の厚さ方向に沿って二列にわたって形成されている。継手部43の孔43aと、第2の継手部52の孔52aとは、周方向Cにおいて互い
に対向した位置に設けられている。したがって、双方の孔43a,52aに挿通されるボルト51aも6つ設けられ、これらの6つのボルト51aとナット51bによって隣接する鋼製セグメント40が連結されている。
【0038】
周方向Cに隣接する鋼製セグメント40を連結する場合、計4枚の継手部43,52の孔43a,52aのそれぞれに連結部51のボルト51aが挿通され、第2の継手部52の外側からボルト51aのそれぞれの端部にナット51bを螺合させる。このとき、ナット51bが各第2の継手部52に当接している。これにより、鋼製セグメント40は、周方向Cにおいて互いに連結される。
なお、頭部を有するボルト51aを用いる場合には、ボルト51aの頭部が一方の第2の継手部52に当接し、ナット51bが他方の第2の継手部52に当接すると共に、ボルト51aに螺合される。これにより、鋼製セグメント40は、周方向Cにおいて互いに連結される。
【0039】
継手リブ53は、周方向Cにおいて隣り合う継手部43と第2の継手部52との間に設けられている。継手リブ53は、軸線xに交差するように主桁42に対して平行に設けられている。各継手リブ53は、軸線xに沿って所定の間隔をあけて互いに平行に設けられている。より具体的には、各継手リブ53は、連結部51の各ボルト51a間において、ボルト51aの軸方向に沿って設けられている。各継手リブ53は、プレート41の内面に設けられており、当該内面から軸線xに向かって延びるように立設されている。各継手リブ53は、軸線xに交差する方向における一端が継手部43に連結され、他端が第2の継手部52に連結されている。
これにより、各継手リブ53は、継手部43と第2の継手部52とによって囲まれた空間V内を仕切っている。
【0040】
充填部54は、プレート41、主桁42、継手部43、第2の継手部52によって囲まれた空間V内に設けられ、連結部51のボルト51aと一体化される。具体的に、充填部54は、コンクリートであり、空間V内に打設されて固化することにより、鋼製セグメント40及び連結機構50と一体化される。ここで、空間Vは継手リブ53によって仕切られており、空間Vは、複数の空間に分割されている。充填部54は、中詰部20を構築する際に打設されるコンクリートが空間V内に充填されることで形成される。
【0041】
ここで、隣接する孔43a,52aの間隔は、これらの孔43a,52aに挿通されるボルト51aのピッチ間隔が設計上帯筋として必要なピッチ間隔以下となるように形成する位置が決められる。具体的には、一般的な基礎構造物、言い換えると、セグメント構造体10が基礎構造物の一部として用いることができない場合において、基礎構造物の大きさや必要強度に基づいて設計された、主筋に巻き付けられる帯筋のピッチ間隔以下となるようにボルト51aの間隔も決められる。例えば、設計された帯筋のピッチ間隔が150mmである場合には、鋼製セグメント40を連結するボルト51aの中心間の間隔も150mm以下とする。
また、鋼製セグメント40の高さあたりにおけるボルト51aの断面積の総和が、当該高さあたりにおける帯筋の断面積の総和以上となるように、各ボルト51aの径、数量が選択される。例えば、帯筋の所定長さあたりにおけるD41(断面積1340mm2)の帯筋の断面積の総和が5360mm2である場合、M33(有効断面積694mm2)の規格のボルト51aを用いる場合には、少なくとも8本以上のボルト51aを用いて鋼製セグメント40を連結する必要がある。
【0042】
また、ボルト51aの強度(材料の降伏応力)が帯筋の強度(降伏応力)以上となるようにボルト51aの材質が選択される。例えば、帯筋にD41(降伏応力345N/mm
2)を用いる場合、M33(降伏応力480N/mm
2)の規格のボルト51aを用いる場合には、強度上も問題ないといえる。
ボルト51aは、M33よりも大きな規格のボルトを用いてボルト51aの使用本数を減らすことも可能であるが、ボルト51aが大きくなると締め付ける際に必要なトルクも大きくなるため、作業性が低下する。そこで、
図6に示すように、セグメントの厚さ方向にボルト51aを複数配置する構造が好ましい。これにより、ボルト51aの締結作業の手間と、必要な締め付けトルクのバランスを考慮してボルト51aの大きさ、使用本数を決定することが可能となる。
なお、継手部43以外の部分では、プレート41と主桁42の断面積の和及び強度が設計上の帯筋の断面積の和及び強度以上となるように厚さや材質が決定される。
【0043】
[主筋]
主筋30は、例えば、鋼材により形成された鉄筋である。主筋30は、軸線xを中心とした所定の仮想円上に設けられている。主筋30は、埋設方向Aに沿って延び、周方向Cに所定の間隔をあけて設けられている。なお、セグメント構造体10において同じ箇所に設けられている主筋30は、軸線xに沿って延びる1本の鉄筋であってもよく、また、所定の長さを有する複数の鉄筋により形成されていてもよい。主筋30は、少なくともセグメント構造体10の地上側の上端から地中側の他端にわたって延びている。主筋30は、各鋼製セグメント40における孔42cに軸線xに沿って挿通されている。主筋30は、セグメント構造体10の内側に打設された中詰部20が固化することにより、鋼製セグメント40と一体に形成されている。
【0044】
[中詰部]
中詰部20は、リング体11を高さ方向に連結して形成された円筒状のセグメント構造体10の内側に設けられている。基礎構造物1において、鋼製セグメント40の内側は、中詰部20によって埋められており、鋼製セグメント40と一体に形成されている。
【0045】
<基礎構造物の構築方法>
次に、基礎構造物1の構築方法について説明する。基礎構造物1を構築する箇所に、例えば、油圧ジャッキ等によって構成された沈設装置(図示せず)を据え付ける。沈設装置は、環状の基礎構造物1の周方向Cにおいて複数箇所に設けられる。
【0046】
次いで、沈設装置の内側において鋼製セグメント40を周方向C(長手方向)に連結して環状のリング体11を形成する。リング体11を形成する際には、ボルト51aを継手部43及び第2の継手部52に挿通し、ナット51bにて締結する。さらに、リング体11の上で別のリング体11を形成して両者を連結する。この別のリング体11の上にさらに別のリング体11を形成して両者を連結する。リング体11の内側の地盤をクラムシェル(図示せず)により掘削する。リング体11を地中へ沈設するために必要な深さの掘削が終わると、掘削を止め、沈設装置によってリング体11の上面を地中に向けて押圧して、リング体11を地中に圧入する。
【0047】
次いで、沈設したリング体11の上側でさらに複数の別のリング体11を組み立てる。リング体11の内側の地盤をクラムシェルにより必要な深さだけ掘削し、リング体11を沈設装置によって地中に向けて押圧し、リング体11を地中に沈設する。この作業を所定の深さまで繰り返す。これにより、複数のリング体11が地中において軸線xに沿って連結された筒状のセグメント構造体10が構築される。上下に隣接するリング体11は、鋼製セグメント40の継手部43の位置が互いに周方向Cにずれて、鋼製セグメント40が千鳥状に配置されている。
【0048】
次いで、セグメント構造体10の内側に満たされている地下水を水中ポンプ(図示せず)によって外部に排出する。次いで、地上側のリング体11における各鋼製セグメント40に、軸線xに沿って主筋30を挿入する。高さ方向に亘って圧入によりリング体11を地中に押し込む工法は、軸線xに沿った高さ方向における精度に極めて優れており、上下に重ねられたリング体11における鋼製セグメント40の孔42c同士の整合性は極めて高い。なお、主筋30は、所定の長さの鉄筋を複数本、セグメント構造体10の最上部のリング体11の同じ孔42cから挿入し、適宜、途中で連結してもよい。
【0049】
図7は、基礎構造物1の構成を説明する部分断面図である。
図7において基礎構造物1は、左半分から右半分に移るに連れて完成度が高くなるように描画している。セグメント構造体10を設計上の高さにまで構築した後、
図8(a)に示すように、周方向Cにおいて所定の本数の主筋30(鉄筋)を同じ孔42cに挿通する(
図7の右側参照)。セグメント構造体10の高さに1本の主筋30で足りない場合には、複数本の主筋30を挿通して端部同士を溶接等により連結する。
【0050】
全周に亘って、主筋30を設置した後、
図8(b)に示すように、セグメント構造体10の内側に中詰部20を構成するコンクリートを段階的に打設する。打設されたコンクリートは、プレート41に向かって広がっていく。徐々に打設されていくコンクリートは、地上に向かって嵩を増していく。コンクリートは、孔42bから充填空間S内の空気を押し出ながら充填空間Sを埋めていく。そのため、基礎構造物1中に空気溜まりが形成されることを確実に防ぐことができる。
また、コンクリートは、セグメント構造体10の内側に開口しているプレート41、主桁42、継手部43、第2の継手部52によって囲まれた空間V内にも流れ込むので、コンクリートが固化した後は、充填部54として、連結部51のボルト51aと一体化される。これにより、隣接する鋼製セグメント40同士の連結が強固になる。
【0051】
図8(c)に示すように、孔42cへの主筋30の挿通、コンクリートの打設を繰り返し、コンクリートをセグメント構造体10の上端にまで打設して中詰部20を形成する。これにより、主筋30及び鋼製セグメント40は、中詰部20を介して互いに一体化され、基礎構造物1が構築される。このとき、主筋30は、基礎構造物1(鉄筋コンクリート構造物)の主筋としての機能を発揮し、鋼製セグメント40が連結機構50によって連結されたリング体11は、基礎構造物1(鉄筋コンクリート構造物)の帯筋としての機能を発揮する。
【0052】
鋼製セグメント40を圧入して基礎構造物1を構築する方法は、例えば、高架道路における橋脚100を補修等する場合に極めて適している。高架道路下では高さ方向の空間が制限されている。リング体11を構築して地中に圧入していく工法では、高さ方向における空間制限を受けることが小さい。なお、主筋30は、複数段のリング体11を地中に沈設する毎に挿通するようにしてもよい。
【0053】
以上のような、基礎構造物1によれば、主筋30は鋼製セグメント40と直接的に係合し、かつ中詰部20を介して一体化されることにより、従来、基礎構造物として利用することができていなかったセグメント構造体10を基礎構造物の一部として利用することができる。
また、リング体11は、鋼製セグメント40を連結機構50にて連結しているので、鋼製セグメント40が連結されたリング体11を鉄筋コンクリート構造物の帯筋に代替して用いることができ、セグメント構造体10の継手部分の強度を大幅に高めることができる。これにより、従来は継手の強度が十分ではないために、基礎の一部として用いることができなかったセグメント構造体10を基礎構造物の一部として用いることができる。
また、鋼製セグメント40の連結が帯筋代替部の設置となるので、主筋に帯筋を設けるという手間のかかる工程を省くことができ、基礎構造物1の構築にかかる時間を短縮できる。
【0054】
また、連結機構50は、引張力を受けた際の変形量が小さいほど、拘束力が高まり、帯筋としての機能を発揮する。ここで、コンクリートは、プレート41、主桁42、継手部43、第2の継手部52の各部材によって囲まれた空間Vに充填される。この空間Vに充填されたコンクリートは、各部材の拘束により変形が抑制されることとなり、高い強度を発現する。一方で、空間Vに充填されたコンクリートの剛性により、連結機構50の変形量を最小限に抑制することができる。すなわち、コンクリートによって形成される充填部54が連結機構50と一体になることで、引張力が作用した際の連結機構50の変形量を最小限に抑制できる。
また、連結機構50に空間Vを形成してコンクリートを充填し、当該コンクリートを拘束することで、鋼製セグメント40の連結強度を高めることができる。
【0055】
また、基礎構造物1においては、従来の鉄筋を交差させて帯筋を設ける構造に比べて強度がより高まる。また、鋼製セグメント40を用いることにより、従来のように主筋30に対して帯筋を軸線に沿って所定の間隔をあけて組み付ける必要がなくなり、基礎構造物1の構築に要する作業時間を大幅に減じることができる。
【0056】
基礎構造物1により、有効断面をリング体11の外径にまで拡大することができる。
図9は、従来の基礎構造物の有効断面と、基礎構造物1の有効断面とを比較する図である。従来の基礎構造物200においては、環状に連結されたセグメント210の内側に配筋構造220が配置されていた。配筋構造220は、軸線xに沿って延びかつ周方向に所定の間隔を互いにあけて配置された複数の主筋221と、全主筋221を囲みかつ軸線xに沿って所定の間隔をあけて組み付けられた帯筋222とを有する。セグメント210と配筋構造220とは直接的に係合しておらず、基礎の有効径rにセグメント210まで含むことができなかった。そのため、セグメント210の部分を基礎の有効断面としてみなすことができなかった。つまり、従来の基礎構造物200において有効断面は、配筋構造220までしか考慮することができない。
同じ直径(断面)の基礎構造物を構築しようとした場合、従来の基礎構造物200は、セグメント210の分だけ外径が大きくなっており、基礎構造物200としてみなされない部分における材料(セグメント、コンクリート)コストが極めて嵩んでいた。
【0057】
これに対して、基礎構造物1によれば、鋼製セグメント40によるリング体11の外径まで基礎の有効径Rとして考慮することができる。そのため、例えば、従来の基礎構造物200と同じ大きさの有効断面を確保する場合、配筋構造220と同じ直径のセグメント構造体10を形成すればよく(r=R)、基礎構造物1を構築する場合の材料、施工面積を従来の基礎構造物200に比べて小さくすることができる。
【0058】
また、基礎構造物1においては、鋼製セグメント40の主桁42及び継手部43も帯筋として考慮することができるので、基礎構造物1全体は、極めて強度の高い基礎として利用することができる。
また、鋼製セグメント40及び連結機構50で本来設けられる帯筋を代替することができるので、基礎構造物1としての強度を下げずに、鋼材の使用量を大幅に削減することができる。
【0059】
また、孔42cは、プレート41から所定の間隔だけ内側の位置で主桁42に確保している。一般的に基礎構造物において主筋の位置は目視で確認することができないため、主筋かぶりを、余裕をもって大きく確保することになる。これに対して、主桁42に主筋30が挿通される孔42cが形成されているので、主筋30の位置は設計上、一義的に決定することができる。そのため、主筋かぶりを小さくすることができ、例えば、同じ建築物に対する基礎構造物であっても、一般的な基礎構造物の直径よりも小さい直径の基礎構造物を構築することができる。また、主筋30を孔42cに挿通することにより、位置合わせの信頼性を向上させることができる。
【0060】
また、主桁42には孔42bが形成されている。従来、プレートとリブとにより形成される角部付近に空気溜まりが形成される傾向があった。空気溜まりにより鋼製セグメント40における充填空間Sがコンクリートにより完全に充填されていない。プレート41とリブ44とがなす角部に対応する主桁42の位置に孔42bが形成されているので、コンクリート打設時にプレート41の側に押しやられた空気は、孔42bを通じて確実に鋼製セグメント40の外側に排出される。これにより、鋼製セグメント40全体を基礎の有効断面として考慮することができる。
【0061】
また、連結機構50においては、中詰部20の形成のために打設したコンクリートを空間Vに導くことで鋼製セグメント40の連結を強固にすることができるので、空間Vに予め充填材を充填しておくことは必要ない。
【0062】
2.第2の実施の形態
次に、基礎構造物の第2の実施の形態について説明する。
図10は、基礎構造物1Aの部分断面斜視図である。基礎構造物1Aは、筒状のセグメント構造体10Aと、複数の主筋30Aと、を備える。セグメント構造体10Aは、埋設方向Aに延びる軸線xに沿って延在する。主筋30Aは、軸線xに沿って延びかつ軸線x周りの周方向Cに所定の間隔をあけて配置され、セグメント構造体10Aと係合する。セグメント構造体10Aは、埋設方向A及び周方向Cに連続的に連結され壁面を形成する複数の鋼製セグメント40Aにより形成されている。製セグメント40Aは、セグメント構造体10Aの外壁を形成する外側ピース60と、セグメント構造体10Aの内壁を形成する内側ピース65と、を有する。外側ピース60と内側ピース65との間に中詰部80が設けられている。主筋30A、鋼製セグメント40A及び中詰部80は互いに一体化している。以下、基礎構造物1Aの構成について具体的に説明する。
【0063】
基礎構造物1Aは、セグメント構造体10Aと、中詰部80と、主筋30Aと、を備える。セグメント構造体10Aは、複数の鋼製セグメント40Aを周方向Cに連結した、帯筋を代替する帯筋代替部として機能する複数のリング体(一部のみ示す)11Aを有する。鋼製セグメント40Aは、外側ピース60と、内側ピース65と、連結ピース70と、を有する。外側ピース60は、基礎構造物1Aの外壁を形成する。内側ピース65は、基礎構造物1Aの内壁を形成する。連結ピース70は、外側ピース60と内側ピース65とを互いに連結する。
【0064】
外側ピース60は、プレート61と、主桁62と、継手部63と、リブ(補剛材)64と、を有する。外側ピース60において、プレート61及び主桁62により、後述する中詰部80を形成するコンクリートを充填する際に充填空間S1が画定されている。プレート61は、基礎構造物1Aの外壁面を形成する。
【0065】
主桁62は、周方向Cに延在するプレート61の縁に沿って立設されている。各主桁62には、複数の孔62a、孔62b及び孔62cが形成されている。孔62a、孔62b及び孔62cは、鋼製セグメント40Aの孔62a、孔62b及び孔62cと同じ構成及び機能を有する。なお、主桁62、継手部63及びリブ64は、鋼製セグメント40Aの主桁62、継手部63及びリブ64と同じ構成である。
【0066】
内側ピース65は、プレート66と、主桁67と、継手部68と、図面には見られないリブ(補剛材)と、を有する。内側ピース65において、プレート66及び主桁67により、中詰部80を形成するコンクリートを充填する際に充填空間(図示せず)が画定されている。プレート66は、基礎構造物1Aの内壁面を形成する。内側ピース65においてプレート66は、外側ピース60とは反対側の主桁67の縁に沿って設けられている。
【0067】
主桁67は、周方向Cに延在するプレート66の縁に沿って立設されている。各主桁67には、複数の孔67a、孔67b及び孔67cが形成されている。孔67a、孔67b及び孔67cは、鋼製セグメント40Aの孔67a、孔62b及び孔62cと同じ構成及び機能を有する。なお、主桁67、継手部68及びリブは、鋼製セグメント40の主桁42、継手部43及びリブ44と同じ構成である。
【0068】
周方向Cにおける鋼製セグメント40A同士は、連結機構(図示せず)により連結される。基礎構造物1Aにおける連結機構の構成は、基礎構造物1における連結機構50の構成と同じである。
【0069】
連結ピース70は、鋼製セグメント40Aのせん断強度を高める。連結ピース70は、外側ピース60と内側ピース65との間に複数設けられている。連結ピース70は、中詰部80と接合することで、外側ピース60及び内側ピース65との一体性を高める。
【0070】
連結ピース70は、鋼製の棒材により形成されている。連結ピース70は、周方向Cに
おいて外側ピース60及び内側ピース65の両端部の間で外側ピース60及び内側ピース65を連結する。連結ピース70は、外側ピース60のリブ64及び内側ピース65のリブに架け渡されている。連結ピース70は、軸線xに沿った鋼製セグメント40Aの高さ方向において外側ピース60のリブ64及び内側ピース65のリブの上側端部と下側端部とにそれぞれ固定されている。
【0071】
中詰部80は、外側ピース60と内側ピース65との間に設けられている。
【0072】
鋼製セグメント40Aにより基礎構造物1Aを構築する方法について説明する。基礎構造物1Aを構築する方法は、基礎構造物1を構築する方法とほぼ同じである。
【0073】
鋼製セグメント40Aを周方向Cに連結して環状のリング体11Aを形成する。複数のリング体11Aを高さ方向に積み重ねて連結した後、リング体11Aの内側の地盤をクラムシェル(図示せず)により掘削する。リング体11Aを地中へ沈設するために必要な深さの掘削が終わると、掘削を止め、沈設装置によってリング体11Aの上面を地中に向けて押圧して、リング体11Aを地中に圧入する。
【0074】
この作業をセグメント構造体10Aの設計上の高さまで繰り返した後、セグメント構造体10Aの内側に満たされている地下水を水中ポンプ(図示せず)によっての外部に排出する。その後、周方向Cにおいて所定の本数の主筋30A(鉄筋)を同じ孔62cに挿通する(
図10参照)。
【0075】
全周に亘って、主筋30Aを設置した後、セグメント構造体10Aの外側ピース60と内側ピース65との間にコンクリートを打設する。打設されたコンクリートは、外側ピース60と内側ピース65との間を広がっていく。これにより、複数のリング体11Aが地中において軸線xに沿って連結された基礎構造物1Aが構築される。基礎構造物1Aは、内側ピース65の内側が空洞となる円筒状の構造物である。
【0076】
また、コンクリートの打設は段階的に行われてもよい。具体的には、所定の高さに重ねられた複数のリング体11Aを地中へ圧入した後に、圧入したリング体11Aにおいて外側ピース60及び内側ピース65それぞれの孔62c,67cに主筋30を挿通する。主筋30の挿通後、外側ピース60と内側ピース65との間にコンクリートを充填する。コンクリートの固化後、沈設したリング体11Aの上側でさらに複数の別のリング体11Aを組み立てる。リング体11Aの内側の地盤をクラムシェルにより必要な深さだけ掘削し、リング体11Aを沈設装置によって地中に向けて押圧し、リング体11Aを地中にさらに沈設する。
【0077】
沈設後、主筋30を鋼製セグメント40Aに挿入し、主筋30の下端と、先に地中に埋設されていた鋼製セグメント40Aに挿入されている主筋30の上端とを連結する。次いで、外側ピース60と内側ピース65との間にコンクリートを充填する。この作業を所定の深さまで繰り返す。これにより、複数のリング体11Aが地中において軸線xに沿って連結された基礎構造物1Aが構築される。
【0078】
以上のような、基礎構造物1Aによれば、上記実施の形態に係る基礎構造物1と同様の効果を奏する上に、主筋30は鋼製セグメント40Aと直接的に係合し、かつ中詰部80を介して一体化されることにより、従来、基礎構造物として利用することができていなかった鋼製のセグメント部分を基礎構造物の一部として利用することができる。
【0079】
鋼製セグメント40Aは、外側ピース60及び内側ピース65を有する構成となっているので大断面の基礎構造物1Aの施工に適している。鋼製セグメント40Aの外側ピース
60及び内側ピース65は、連結ピース70を介して互いに連結され、かつ、主筋30と鋼製セグメント40Aとは互いに係合している。したがって、多くの鋼材が基礎構造物1Aにおいて使用されており、基礎構造物1Aとしてより強度が高められている。
【0080】
3.第3の実施の形態
次に、基礎構造物の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態における基礎構造物1Bが第1の実施の形態における基礎構造物1と異なる点は、主筋30を係止する主桁42の孔42cをなくして、切欠部に主筋30を係止する点であるため、以下では主桁について説明し、他の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
図11は、第3の実施の形態における鋼製セグメントの平面図である。
【0081】
図11に示すように、鋼製セグメント40Bの主桁42Bは、第1の実施の形態における主桁42よりも幅が短く形成されている。具体的には、主桁42Bは、継手部43の幅と同じ幅に形成されており、継手部43よりも内側に張り出していない。
主桁42Bの周方向(長手方向)Cに沿った内側(長さが短い方)の縁部には、所定の間隔で切り欠かれた切欠部42Bcが形成されており、主筋30を係止する係止部として機能する。切欠部42Bcは、例えば、主筋30の配置間隔をあけて主桁42Bに形成されている。切欠部42Bcは、例えば、半円形状に形成されており、用いられる主筋30の半分程度が嵌り込むような大きさに形成されている。したがって、主筋30は、主桁42Bに挿通されることはなく、単に主筋30の一部が嵌め込まれるだけである。
【0082】
基礎構造物1Bを構築する際には、セグメント構造体10を設計上の高さにまで構築した後、
図12(a)に示すように、周方向Cにおいて所定の本数の主筋30(鉄筋)を切欠部42Bcに嵌め込み、クリップや溶接等の手法により、主筋30を主桁42Bに固定する。セグメント構造体10の高さに1本の主筋30で足りない場合には、複数本の主筋30を切欠部42Bcに嵌め込んで端部同士を溶接等により連結する。
【0083】
全周に亘って、主筋30を設置した後、
図12(b)に示すように、セグメント構造体10の内側に中詰部20を構成するコンクリートを段階的に打設する。打設されたコンクリートは、孔42bから充填空間S内の空気を押し出ながら充填空間Sを埋めていく。
また、コンクリートは、空間V内にも流れ込むので、コンクリートが固化した後は、充填部54として、連結部51のボルト51aと一体化される。これにより、隣接する鋼製セグメント40B同士の連結が強固になる。
【0084】
図12(c)に示すように、切欠部42Bcへの主筋30の嵌め込み及び固定、コンクリートの打設を繰り返し、コンクリートをセグメント構造体10の上端にまで打設して中詰部20を形成する。これにより、主筋30及び鋼製セグメント40は、中詰部20を介して互いに一体化され、基礎構造物1Bが構築される。このとき、主筋30は、基礎構造物1B(鉄筋コンクリート構造物)の主筋としての機能を発揮し、鋼製セグメント40が連結機構50によって連結されたリング体11は、基礎構造物1B(鉄筋コンクリート構造物)の帯筋としての機能を発揮する。
【0085】
以上のような、基礎構造物1Bによれば、主筋30を配置する際には、主筋30の一部を切欠部42Bcに嵌め込んでクリップ等で留めるという簡単な作業で済むことになるため、第1の実施の形態のように、主筋30を主桁42の孔42cに順次挿通するという手間のかかる作業を省略することができ、作業効率を大幅に改善することができる。これにより、第1の実施の形態における基礎構造物1よりも施工期間を短縮することができる。また、コンクリートを充填する段階で主筋30の位置は固定されるので、主筋30を切欠部42Bcに嵌め込むだけでも主筋30の位置合わせの信頼性を向上させることができる。
【0086】
4.第4の実施の形態
次に、基礎構造物の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態における基礎構造物1Cが第3の実施の形態における基礎構造物1Bと異なる点は、主桁42Bの切欠部42Bcをなくして、鋼製セグメントとは別個の支持部によって主筋30を固定する点であるため、以下では相違点について説明し、他の構成要素については、同一符号を付して説明を省略する。
図13は、第4の実施の形態における鋼製セグメントと支持部との関係を示す図である。
図14は、第4の実施の形態における支持部の平面図である。
【0087】
図13に示すように、主桁42Cは、第3の実施の形態における主桁42Bと同様に、第1の実施の形態における主桁42よりも幅が短く形成されている。具体的には、主桁42Cは、継手部43の幅と同じ幅に形成されており、継手部43よりも内側に張り出していない。主桁42Cには、主筋30を係止する孔や切欠部は形成されておらず、隣接する鋼製セグメントとの連結に用いられる連結用の孔42aと空気を抜く孔42bが形成されている。
【0088】
基礎構造物1Cは、鋼製セグメント40Cとで主筋30を挟んで当該主筋30を支持する支持部90を備える。支持部90は、主桁42Cの周方向Cに沿った内側の縁部に沿うように湾曲した板材から形成されている。支持部90は、主桁42Cの内側に配置され、鋼製セグメント40Cの主桁42Cに締結具(例えば、ボルト、ナット)を用いて連結される。なお、支持部90は、主桁42Cに限らず、プレート41、継手部43、リブ44等に連結されていてもよい。
【0089】
図14に示すように、支持部90は、鋼製セグメント40Cとで主筋30を挟んで当該主筋30を支持するものであり、本体部91と、受容部92と、連結部93と、を有する。
本体部91は、主桁42Cの周方向Cに沿うように、主桁42Cとほぼ同じ曲率を有するように形成されており、周方向C(長手方向)に沿った長さは一つの鋼製セグメント40Cの主桁42Cとほぼ同じ長さに形成されている。
受容部92は、主筋30を受容して係止する切欠部であり、本体部91の周方向(長手方向)Cに沿った外側(長さが長い膨出側)の縁部に所定の間隔で形成されている。受容部92は、例えば、主筋30の配置間隔をあけて本体部91に形成されている。受容部92は、例えば、半円形状に形成されており、用いられる主筋30の半分程度が嵌り込むような大きさに形成されている。したがって、主筋30は、支持部90に挿通されることはなく、単に主筋30の一部が嵌め込まれ、主筋30はクリップや溶接等により支持部90に固定される。
連結部93は、本体部91に設けられており、本体部91の周方向(長手方向)Cに沿った外側(長さが長い膨出側)に向けて突出して延びるように形成されている。連結部93の先端部には、締結具を挿通する孔が形成されており、締結具を連結部93の孔と主桁42Cの孔に挿通して締結することで支持部90を主桁42Cに連結することができる。本体部91の一端部には、隣接する支持部90と連結するための連結部93aが設けられている。なお、連結部93,93aは、本体部91に一体に形成されていてもよいし、本体部91とは別個の部材から形成されていてもよい。
【0090】
基礎構造物1Cを構築する際には、セグメント構造体10を設計上の高さにまで構築した後、
図15(a)に示すように、複数の主筋30が取り付けられた支持部90を鋼製セグメント40Cの主桁42Cに締結具を用いて連結する。ここで、支持部90の各受容部92には、予め工場等で主筋30を取り付けておくことが好ましい。受容部92に主筋30を取り付ける際には、主筋30を受容部92に嵌め込み、クリップや溶接等の手法により、主筋30を支持部90に固定する。支持部90は、主筋30の両端部において取り付けることが好ましいが、主筋30の長さに応じて3カ所以上に支持部90を取り付けてもよい。なお、支持部90に主筋30を取り付けず、単に、主桁42Cと支持部90とで主筋30を挟み込んで支持するようにしてもよい。
【0091】
全周に亘って、主筋30を設置した後、
図15(b)に示すように、セグメント構造体10の内側に中詰部20を構成するコンクリートを段階的に打設する。打設されたコンクリートは、孔42bから充填空間S内の空気を押し出ながら充填空間Sを埋めていく。
また、コンクリートは、空間V内にも流れ込むので、コンクリートが固化した後は、充填部54として、連結部51のボルト51aと一体化される。これにより、隣接する鋼製セグメント40C同士の連結が強固になる。
【0092】
図15(c)に示すように、主筋30が取り付けられた支持部90の主桁42Cへの連結、コンクリートの打設を繰り返し、コンクリートをセグメント構造体10の上端にまで打設して中詰部20を形成する。これにより、主筋30及び鋼製セグメント40Cは、中詰部20を介して互いに一体化され、
図16に示すような基礎構造物1Cが構築される。このとき、主筋30は、基礎構造物1C(鉄筋コンクリート構造物)の主筋としての機能を発揮し、鋼製セグメント40Cが連結機構50によって連結されたリング体11は、基礎構造物1C(鉄筋コンクリート構造物)の帯筋としての機能を発揮する。
【0093】
以上のような、基礎構造物1Cによれば、主筋30を配置する際には、予め支持部90に複数の主筋30を取り付けておき、支持部90を主桁42Cにクリップ等で留めるという簡単な作業で一度に複数の主筋30を主桁42Cに沿って配置することができるので、第1の実施の形態のように、主筋30を主桁42の孔42cに順次挿通するという手間のかかる作業を省略することができ、作業効率を大幅に改善することができる。これにより、第1の実施の形態における基礎構造物1よりも施工期間を短縮することができる。また、第3の実施の形態における基礎構造物1Bのように、主筋30を一本ずつ切欠部42Bcに嵌め込んで固定する必要もないので、第3の実施の形態における基礎構造物1Bよりも施工期間を短縮することができる。
また、主桁42C等の鋼製セグメント40C自体を加工する必要がないので、後施工に対応することができるようになり、施工中に設計変更があった場合でも、支持部90の受容部92の数や大きさを変更することにより、配置する主筋30の数や大きさを柔軟に変更することができる。
また、支持部90に複数の受容部92を形成しておくことで、支持部90に複数の主筋30を取り付けてユニット化することができ、当該ユニットを主桁42Cに連結することで一度に多くの主筋30を配置することができ、作業効率を大幅に改善することができる。
【0094】
以上、本発明の好適な実施の形態及び他の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、上記実施の形態及び他の実施の形態の各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態及び他の実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
図17は、変形例に係る鋼製セグメント40Dの斜視図である。
【0095】
鋼製セグメント40Dは、プレート41Dと、主桁42Dと、継手部43Dと、リブ(補剛材)44Dと、第2の継手部52Dとを有する。鋼製セグメント40Dにおいて一対の主桁42Dのうち一(下側)の主桁42Dは、継手部43D及び第2の継手部52Dとの連結箇所を除いて、プレート41Dに向かって凹に形成された凹部45Dを有する。鋼製セグメント40Dにおいて主筋30が挿通される孔42Dcは、上側の主桁42Dにおいては周方向Cに沿って形成されているが、下側の主桁42Dにおいては周方向Cにおける端部にのみ形成されている。
【0096】
図18は、変形例に係る鋼製セグメント40Dを上下に重ねた状態を示す概略図である。鋼製セグメント40Dを用いてリング体を形成した場合、一方のリング体上に重ねられる他方のリング体は、それぞれの鋼製セグメント40Dの上側の主桁42Dにおいてのみ主筋30が挿通されている。下側の主桁42Dの凹部45Dの位置には、下側のリング体における鋼製セグメント40Dの上側の主桁42Dが位置している。鋼製セグメント40Dにより、鋼製セグメント40と同様の効果を奏しつつ、使用する鋼材の量を大幅に減じることができる。また、主筋30を挿通する孔42Dcの数を減らすことができるので、作業効率を向上させることができる。なお、鋼製セグメント40Dを、基礎構造物1Aに適用することもできる。
【0097】
上記の実施の形態において、鋼製セグメント40の主桁42に設けられている孔42cは、一の仮想円上に設けられていたが、主桁42に一の仮想円とは異なる径の他の仮想円を想定しさらに孔42cを設けてもよい。この場合、主筋30は、軸線xを中心として二重に設けられている。
【0098】
また、他の実施の形態に係る鋼製セグメント40Aにおいて、主筋30Aは、外側ピース60及び内側ピース65のそれぞれに挿通されているが、外側ピース60又は内側ピース65に挿通されていてもよい。
【0099】
また、鋼製セグメント40,40Aの主桁42,62,67自体に主筋30が予め取り付けられていてもよい。高さ方向において隣接する鋼製セグメント40,40Aにおけるこれらの主筋30は、高さ方向において互いに連結する際に互いに接合すればよい。
【0100】
また、第4の実施の形態における支持部90を、第3の実施の形態において切欠部42Bcに嵌め込まれた主筋30の押さえとして用いてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 基礎構造物
10 セグメント構造体
11 リング体(帯筋代替部)
20 中詰部
30 主筋
40 鋼製セグメント
41 プレート
42 主桁
42c 孔(主筋がそれぞれ挿通される孔)
43 継手部
44 リブ(補剛材)
50 連結機構
51 連結部
52 第2の継手部
53 継手リブ
54 充填部
1A 基礎構造物
10A セグメント構造体
11A リング体(帯筋代替部)
30A 主筋
40A 鋼製セグメント
60 外側ピース
61 プレート
62 主桁
62c 孔
65 内側ピース
66 プレート
67 主桁
67c 孔
70 連結ピース
80 中詰部
1B 基礎構造物
40B 鋼製セグメント
42B 主桁
42Bc 切欠部
1C 基礎構造物
40C 鋼製セグメント
42C 主桁
90 支持部
91 本体部
92 受容部
93,93a 連結部
A 埋設方向
C 周方向
S,S1 充填空間(空間)
x 軸線