(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】織機におけるリングバーテンプル
(51)【国際特許分類】
D03J 1/22 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
D03J1/22
(21)【出願番号】P 2020176872
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大山 勝也
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03885600(US,A)
【文献】国際公開第2018/088473(WO,A1)
【文献】特開2003-278054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03J 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機の全幅テンプル装置に用いられると共に織布が巻き掛けられるリングバーテンプルであって、丸棒状のインナーバー及び前記インナーバーの両側に連続して設けられるリングテンプルで構成されると共に、各前記リングテンプルが円筒状の胴体部及び複数の針が植設されたテンプルリングを含むと共に前記インナーバー側及び端部側の一対の前記胴体部で複数の前記テンプルリングを挟むようにして構成されている、織機におけるリングバーテンプルにおいて、
各前記リングテンプルにおける前記インナーバー側の前記胴体部及び前記端部側の前記胴体部の前記織布が巻き掛けられる部分の外径が、前記インナーバーの外径と略同径であるように構成されている
ことを特徴とする織機におけるリングバーテンプル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機の全幅テンプル装置に用いられると共に織布が巻き掛けられるリングバーテンプルであって、丸棒状のインナーバー及び前記インナーバーの両側に連続して設けられるリングテンプルで構成されると共に、各前記リングテンプルが円筒状の胴体部及び複数の針が植設されたテンプルリングを含むと共に前記インナーバー側及び端部側の一対の前記胴体部で複数の前記テンプルリングを挟むようにして構成されている、織機におけるリングバーテンプルに関する。
【背景技術】
【0002】
織機において、高密度の織布を製織する場合に、製織中における織布の織縮みを防止し得る全幅テンプル装置が従来から広く用いられている。なお、その全幅テンプル装置は、織前の近傍で織幅に亘って設けられるベースプレートと、そのベースプレート上に設けられるカバーとを有している。さらに、その全幅テンプル装置は、ベースプレートとカバーとで画定される空間に収容されるテンプルバーを有している。そして、その全幅テンプル装置においては、織布は、カバーの上面に沿うかたちで前記空間内に案内されると共に前記空間内でテンプルバーに巻き掛けられ、テンプルバーとベースプレート及びカバーとの協働で全幅に亘って把持されている。
【0003】
また、その全幅テンプル装置におけるテンプルバーとしては、両端の部分が所謂リングテンプルであるように構成されたリングバーテンプルがある。そして、そのようなリングバーテンプルが、特許文献1に開示されている。その特許文献1に開示された全幅テンプル装置(以下、「従来装置」と言う。)におけるリングバーテンプルは、丸棒状のインナーバー(ガイドロッド)とその両側に配置されるリングテンプル(テンプルシリンダー)とで構成されている。また、その各リングテンプルは、円筒状の胴体部(傾斜ベアリング)及び複数の針が植設されたテンプルリング(ニードルリング)を含み、インナーバー側及び端部側の一対の胴体部が複数のテンプルリングを間に挟むように設けられた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来装置におけるリングバーテンプルは、各リングテンプルにおける各胴体部の外径がインナーバーの外径よりも小径であるように構成されている。そのため、その従来装置では、インナーバー側からリングテンプルの端部に向けて、リングテンプルの軸線に対し平行では無く傾斜した状態で織布がリングテンプルに巻き掛けられた状態となる。なお、リングテンプルは、全てのテンプルリングにおける針に織布が十分に刺さった状態で所望の把持力が得られるように構成されている。しかし、そのリングテンプルにおいて、織布が前記のように傾斜した状態で巻き掛けられると、インナーバー側において織布に対する針の刺さり具合が十分では無い状態となる場合があり、その結果として織布の把持が十分に行われないといった状況が発生する。
【0006】
なお、リングバーテンプルにおいては、各胴体部の外径がインナーバーの外径よりも大径であるように構成されたものとすることも考えられる。しかし、その場合には、インナーバーとベースプレート及びカバーとによる織布の把持が十分に行われない状態となる場合がある。
【0007】
以上のような実情を鑑み、本発明は、織機の全幅テンプル装置に用いられるリングバーテンプルにおいて、巻き掛けられた織布の把持をより十分に行うことができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、織機の全幅テンプル装置に用いられると共に織布が巻き掛けられるリングバーテンプルであって、丸棒状のインナーバー及び前記インナーバーの両側に連続して設けられるリングテンプルで構成されると共に、各前記リングテンプルが円筒状の胴体部及び複数の針が植設されたテンプルリングを含むと共に前記インナーバー側及び端部側の一対の前記胴体部で複数の前記テンプルリングを挟むようにして構成されている、織機におけるリングバーテンプルを前提とする。
【0009】
その上で、前記の目的を達成すべく、本発明によるリングバーテンプルは、各前記リングテンプルにおける前記インナーバー側の前記胴体部及び前記端部側の前記胴体部の前記織布が巻き掛けられる部分の外径が、前記インナーバーの外径と略同径であるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるリングバーテンプルによれば、全幅テンプル装置において、織布は、各リングテンプルに対しその軸線と平行を成す状態で巻き掛けられることとなる。それにより、その巻き掛け状態で、織布は、各リングテンプルにおける全てのテンプルリングの針に十分に刺さった状態となる。その結果として、そのリングテンプルによる織布の把持が所望の把持力で行われる状態となる。このように、本発明によるリングバーテンプルによれば、織布の把持をより十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるリングバーテンプルを含む全幅テンプル装置を備えた織機の一例を示す概略平面図。
【
図2】
図1で示す全幅テンプル装置のA-A線断面図。
【
図4】
図3で示すリングバーテンプルが取り付けられる取付部材の側面図。
【
図5】
図4で示す取付部材が取り付けられる支持部の側面図。
【
図6】
図4で示す取付部材及び支持部のB-B線断面図。
【
図7】
図1で示す全幅テンプル装置における反給糸側の部分の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、
図1~7に基づき、本発明によるリングバーテンプルを含む全幅テンプル装置の一実施例を説明する。
【0013】
図1に示すように、織機1において、全幅テンプル装置2は、織前CFに対する筬3側(経糸列T側)とは反対側の織前CF近傍で、製織される織布Wの織幅に亘って延在するように設けられている。なお、織機1は、左右のサイドフレーム(図示略)間に架設された梁材であるフロントトップステー8を備えている。また、そのフロントトップステー8には、織幅方向に間隔を置いて複数のブラケット4が取り付けられている。そして、全幅テンプル装置2は、そのフロントトップステー8に対しその複数のブラケット4を介して支持されている。
【0014】
また、織機1上において、前記のようにフロントトップステー8に取り付けられた複数のブラケット4には、全幅テンプル装置2よりも長尺の取付バー5が取り付けられている。さらに、織機1は、給糸側及び反給糸側のそれぞれに、緯入れされる緯糸を切断するためのカッタ装置6、7を備えている。そして、そのカッタ装置6、7は、前記のように設けられた取付バー5に取り付けられるかたちで、織幅方向において、全幅テンプル装置2の両端の近傍に配置されている。
【0015】
また、全幅テンプル装置2は、
図2に示すように、ブラケット4に取り付けられるベースプレート10aを含むベース体10、そのベースプレート10aに対し取り付けられるカバー11、及びベースプレート10aとカバー11とで画定される空間12に収容されるテンプルバーとしてのリングバーテンプル13をその主な構成要素としている。
【0016】
それらの各構成要素について、ベース体10は、織布Wの織幅に亘る長尺の部材であるベースプレート10aを主体として構成されている。また、そのベースプレート10aは、ブラケット4に取り付けられる部分であってカバー11が取り付けられる部分である被取付部10a1と、前記のようにカバー11とでリングバーテンプル13を収容する空間12を画定してリングバーテンプル13との協働で織布Wを案内するベース側案内部10a2とから成っている。
【0017】
そのベースプレート10aの構成について、被取付部10a1は、概ね板状に形成されており、その板厚方向に見て長辺方向の寸法が短辺方向の寸法よりも十分に長い矩形状の部分となっている。また、ベース側案内部10a2は、被取付部10a1に対し前記短辺方向における一端側で連続すると共に前記長辺方向に亘って存在するようなかたちで、被取付部10a1と一体に形成されている。なお、そのベース側案内部10a2は、前記長辺方向に見て略円弧状を成し、被取付部10a1の前記板厚方向における一方の端面の側が曲面状の内側面となるように形成されている。
【0018】
また、図示の例では、ベースプレート10aは、カバー11と係合する係合部10a3を有している。その係合部10a3は、被取付部10a1における前記一方の端面から突出すると共に、被取付部10a1に対し前記長辺方向に亘って、すなわち、ベースプレート10aの幅方向に亘って存在するように形成されている。また、その係合部10a3は、被取付部10a1から突出する部分に対し先端側の部分が前記短辺方向におけるベース側案内部10a2側へ延びるような略L字形に形成されている。
【0019】
カバー11は、ベース体10におけるベースプレート10aに対し取り付けられる部分である取付部11aと、前記のようにベースプレート10aとでリングバーテンプル13を収容する空間12を画定してリングバーテンプル13との協働で織布Wを案内するカバー側案内部11bとを含むように構成されている。
【0020】
そのカバー11の構成について、取付部11aは、板状に形成されており、その板厚方向に見て、長辺方向の寸法がベースプレート10aの被取付部10a1における前記長辺方向の寸法と略一致した細長い矩形状の部分となっている。また、カバー側案内部11bは、概ね板状に形成されており、その板厚方向に見て、長辺方向の寸法が取付部11aの前記長辺方向の寸法と一致した細長い矩形状の部分となっている。そして、カバー側案内部11bは、その長辺方向を取付部11aの前記長辺方向と一致させた状態で、カバー11において存在している。したがって、カバー11は、その全体として取付部11aの前記長辺方向である幅方向の寸法が、ベースプレート10aの前記幅方向における寸法と略一致したものとなっている。
【0021】
また、そのカバー側案内部11bは、カバー11がベースプレート10aに取り付けられた状態で前記のように空間12を画定すべく、前記板厚方向においてベースプレート10aにおけるベース側案内部10a2と対向する部分(対向部分)を有している。言い換えれば、カバー11は、取付部11aの端面の短辺方向である前後方向において、ベースプレート10aに取り付けられた状態でカバー側案内部11bにおける先端側(取付部11a側とは反対の側)の部分がベースプレート10aにおけるベース側案内部10a2と対向する前記対向部分となるような大きさに形成されている。因みに、図示の例では、そのカバー11の前記前後方向の寸法は、被取付部10a1の前記短辺方向である前後方向におけるベースプレート10aの寸法と略同じような大きさとなっている。そして、そのカバー側案内部11bにおいて、前記のようにベース側案内部10a2と対向する前記対向部分は、前記幅方向に見て、緩やかに湾曲するように形成されている。
【0022】
なお、そのカバー11は、取付部11aにおいてベースプレート10aに取り付けられる際にカバー側案内部11bがベースプレート10aにおける係合部10a3と干渉しないように、前記板厚方向における取付部11aの位置とカバー側案内部11bの位置とを異ならせるように形成されている。そこで、カバー11は、その取付部11aとカバー側案内部11bとの間に、取付部11aから前記板厚方向に延びて両者を連結する連結部11dを有している。但し、その取付部11aとカバー側案内部11bとの位置関係は、カバー側案内部11bの前記対向部分における前記のように湾曲した部分の内側面が前記板厚方向において取付部11a側を向くようなものとなっている。
【0023】
さらに、カバー11は、ベース体10のベースプレート10aにおける係合部10a3に対し係合される被係合部11cを有している。その被係合部11cは、カバー側案内部11bの前記板厚方向における前記内側面側の端面から突出し、カバー11の前記幅方向に亘って存在するように形成されている。また、その被係合部11cは、カバー側案内部11bから突出する部分に対し先端側の部分が前記前後方向における取付部11a側へ延びるような略L字形に形成されている。
【0024】
なお、その被係合部11cの位置は、前記前後方向に関し、その被係合部11cにおけるカバー側案内部11bの前記先端側を向く面が、カバー側案内部11bにおける前記内側面に連続するような位置となっている。さらに、被係合部11cは、そのカバー側案内部11bの前記内側面に連続する面が、前記内側面と略同じ曲率で湾曲するように形成されている。したがって、カバー11においては、その被係合部11cも前記した空間12を形成する部分となっている。
【0025】
リングバーテンプル13は、
図3に示すように、丸棒状の部材で形成されたインナーバー14と、そのインナーバー14の両側に連続して設けられるリングテンプル15、15とで構成されている。なお、各リングテンプル15自体は、一般的なリングテンプルと同様の構成のものである。詳しくは、各リングテンプル15は、複数のテンプルリング16と、その複数のテンプルリング16を間に挟むように設けられる一対の胴体部18、18と、各テンプルリング16及び各胴体部18を支持する支持軸17とを含むように構成されている。
【0026】
その各リングテンプル15の構成について、各テンプルリング16は、中央に貫通孔(図示略)を有する円板状の部材であり、複数(多数)の針16aがその外周面から突出するかたちで植設されたものとなっている。なお、その各テンプルリング16における前記貫通孔は、支持軸17を挿通可能な孔径に形成されている。
【0027】
また、各胴体部18は、円筒状の部材であり、その軸線方向に貫通するように形成された貫通孔18aを有している。なお、その各胴体部18における貫通孔18aの孔径は、支持軸17の直径と略一致したものとなっている。また、その各胴体部18において、その軸線方向における一方の端面は、軸線と直交する方向に対し傾斜する傾斜面となっている。
【0028】
そして、各リングテンプル15において、複数のテンプルリング16は、その貫通孔に挿通された支持軸17に支持された状態で、支持軸17上に設けられている。但し、各テンプルリング16は、支持軸17に取り付けられたボス部材(図示略)に対し、前記貫通孔において、相対回転可能に外嵌されるかたちで支持されている。なお、そのボス部材は、板厚方向の寸法がテンプルリング16と略同じ円板状の部材であり、外嵌されたテンプルリング16の板厚方向が支持軸17の軸線方向に対し傾斜した状態となるような形状に形成されている。したがって、各テンプルリング16は、そのボス部材を介して支持軸17に支持された状態で、その端面が支持軸17の軸線と直交する方向に対し傾斜した状態、具体的には、胴体部18における前記傾斜面が胴体部18の軸線と直交する方向に対し成す角度と略同じ角度で傾斜した状態となっている。
【0029】
そして、一対の胴体部18、18は、そのように支持軸17上に設けられた複数のテンプルリング16に対する両側において、それぞれの貫通孔18aに支持軸17が挿通された状態で、支持軸17に対し相対回転不能に取り付けられている。但し、その取り付けは、各胴体部18における前記傾斜面をテンプルリング16に対向させた状態で行われている。そして、各リングテンプル15において、各胴体部18は、隣接するテンプルリング16に対しその前記傾斜面を当接させるかたちで、支持軸17に支持されている。その上で、リングバーテンプル13において、各リングテンプル15は、その支持軸17の軸心をインナーバー14の軸心と一致させるかたちで、インナーバー14に対し組み付けられている。
【0030】
なお、そのようなリングバーテンプル13において、その各リングテンプル15は、その端部側(インナーバー14側とは反対側)の胴体部18の軸線方向における他方の端面(前記傾斜面とは反対側の端面)から突出する突出部19を有している。但し、その突出部19は、胴体部18よりも小径の軸状であって、その軸心を胴体部18の軸心に一致させるような位置において前記他方の端面から突出している。そして、その突出部19は、その胴体部18と一体的に形成されている。その上で、リングバーテンプル13は、その各リングテンプル15における突出部19においてベース体10に対し支持される。したがって、その各リングテンプル15における突出部19が、リングバーテンプル13をベース体10に支持された状態とするためのリングバーテンプル13における軸部となっている。
【0031】
そして、以上のような各構成要素を含む全幅テンプル装置2は、前記幅方向における位置を一致させると共に、ベースプレート10aのベース側案内部10a2における前記した曲面状の前記内側面とカバー11のカバー側案内部11bにおける前記湾曲した部分の前記内側面とを対向させた状態で、カバー11をその取付部11aにおいてベースプレート10aの被取付部10a1に取り付けるかたちで構成されている。なお、その取り付けにおいて、カバー11における被係合部11cとベースプレート10aにおける係合部10a3とは係合させた状態とされている。
【0032】
また、その取り付けは、ネジ部材40を用いて行われる。そこで、カバー11における取付部11aには、そのネジ部材40が挿通される貫通孔11fが、その前記板厚方向に貫通するように形成されている。一方で、ベースプレート10aにおける被取付部10a1には、そのネジ部材40が螺挿される雌ネジ孔10a5が、その取付部11aの貫通孔11fと対向するように形成されている。
【0033】
そして、その取り付けにより、ベースプレート10aにおけるベース側案内部10a2とカバー11におけるカバー側案内部11b及び被係合部11cとでリングバーテンプル13を収容する空間12が画定されている。但し、その取り付け状態において、ベース側案内部10a2の先端とカバー側案内部11bの先端とは離間しており、その空間12は、その先端の側において一部が外部に開放されている。なお、その開放された部分の大きさ(ベース側案内部10a2の前記先端とカバー側案内部11bの前記先端との間隔)はリングバーテンプル13におけるインナーバー14の直径よりも小さくなっており、その開放された部分からはリングバーテンプル13が抜け出ないようになっている。
【0034】
そして、リングバーテンプル13は、前記のように画定された空間12に収容されている。その上で、そのように構成された全幅テンプル装置2は、前記のように空間12が開放される部分を織前CF側へ向けた状態で、ベースプレート10aにおける被取付部10a1において、前述のようにブラケット4に取り付けられている。それにより、全幅テンプル装置2は、フロントトップステー8に支持されるかたちで織機1上に設けられている。なお、ブラケット4に対するベースプレート10aの被取付部10a1の取り付けは、ネジ部材41を用いて行われる。そこで、ベースプレート10aにおける被取付部10a1には、そのネジ部材41が挿通される貫通孔10a6が、その前記板厚方向に貫通するように形成されている。一方で、ブラケット4には、そのネジ部材41が螺挿される雌ネジ孔4aが、その被取付部10a1の貫通孔10a6と対向するように形成されている。
【0035】
因みに、織機1においては、製織された織布Wは、織前CFから全幅テンプル装置2におけるベース側案内部10a2の前記先端を経由して空間12内へ導入され、その空間12内でリングバーテンプル13に巻き掛けられている。さらに、その織布Wは、その全幅テンプル装置2において、空間12内でカバー側案内部11bの前記先端側へ向けて転向され、カバー側案内部11bの前記先端を経由し、カバー側案内部11bの上面に沿うかたちで案内されている。
【0036】
それにより、その全幅テンプル装置2においては、リングバーテンプル13は、巻き掛けられた織布Wの張力により、空間12内において前記開放された部分(ベース側案内部10a2及びカバー側案内部11bの前記先端)の側へ付勢された状態となっている。その結果として、リングバーテンプル13におけるインナーバー14の範囲においては、織布Wは、インナーバー14とベースプレート10a及びカバー11とによって把持(挟持)された状態となっている。また、各リングテンプル15の範囲においては、織布Wは、各テンプルリング16の針16aによって把持された状態となっている。したがって、織布Wは、リングバーテンプル13とベースプレート10a及びカバー11とにより、その全幅に亘って把持された状態となっている。
【0037】
以上のような全幅テンプル装置2において、本発明では、リングバーテンプル13は、各リングテンプル15におけるインナーバー14側の胴体部18及び前記端部側の胴体部18の織布Wが巻き掛けられる部分の外径が、インナーバー14の外径と略同径であるように構成されている。なお、その前記端部側の胴体部18の織布Wが巻き掛けられる部分について、前記端部側の胴体部18においては、織布Wの織幅との関係で、織布Wが巻き掛けられる範囲(部分)は、その軸線方向における全体とは限らない。その上で、前記端部側の胴体部18については、少なくともその織布Wが巻き掛けられている部分が、前記のように略同径とされる。
【0038】
そして、本実施例では、前記端部側の胴体部18は、
図3に示すように、その軸線方向に亘って外径が同じであるように形成されている。また、その前記端部側の胴体部18の外径は、インナーバー14側の胴体部18の外径と同じであって、インナーバー14の外径と略同径となっている。
【0039】
また、以上のようなリングバーテンプル13を含む全幅テンプル装置2において、ベース体10は、リングバーテンプル13をその軸部19において支持するための支持部を、その両端部に有している。さらに、その全幅テンプル装置2は、その支持部に対し着脱可能に取り付けられると共に、リングバーテンプル13における軸部19の周面に係合するように形成された係合部を有する板状の軸止部を含む取付部材を備えている。そのような全幅テンプル装置2の一実施例(本実施例)を、
図4~7に基づき、以下で詳細に説明する。
【0040】
全幅テンプル装置2において、ベース体10は、リングバーテンプル13をベースプレート10aに対し支持された状態とするための支持部10bを有している。その支持部10bは、板状の部材であり、板厚方向に見て矩形状を成している。また、支持部10bは、その端面の長辺方向における一端側の部分(一端部)に、その支持部10bをベースプレート10aに対し取り付けるためのネジ部材21が挿通される貫通孔10b1を有している。また、その貫通孔10b1は、その支持部10bの端面の短辺方向に間隔を置いて2つ形成されている。
【0041】
その上で、支持部10bは、ベース体10において、前記幅方向におけるベースプレート10aの両側でベースプレート10aに対し取り付けられている。より詳しくは、ベースプレート10aの被取付部10a1には、支持部10bにおける2つの貫通孔10b1、10b1の間隔と同じ間隔で、その前記長辺方向の両側面のそれぞれにおいて開口する2つの雌ネジ孔(図示略)が形成されている。そして、各支持部10bは、各貫通孔10b1に挿通されたネジ部材21がそのベースプレート10aにおける前記雌ネジ孔に螺装されることで、ベースプレート10aに取り付けられている。
【0042】
但し、その取り付けは、被取付部10a1の前記板厚方向に関し、支持部10bの前記長辺方向における他端側の部分(他端部)が被取付部10a1に対する係合部10a3側に位置するような向きで行われている。したがって、その取り付け状態では、各支持部10bは、ベース体10において、ベースプレート10aにおける被取付部10a1から係合部10a3側に向けて立設された状態となっている。
【0043】
なお、各支持部10bの前記長辺方向における寸法は、前記のようにカバー11がベースプレート10aに取り付けられて両者が組み合わされた状態でのそのカバー11とベースプレート10aとの組合せ体の前記板厚方向における寸法(ベースプレート10a(被取付部10a1)におけるブラケット4に取り付けられる端面からカバー11のカバー側案内部10bの前記上面までの寸法)より大きいものとなっている。したがって、支持部10bを含むベース体10にカバー11が取り付けられた状態では、各支持部10bにおける前記他端部は、前記幅方向に見て、カバー11と重複しない位置に位置している。
【0044】
また、全幅テンプル装置2は、前記のように構成されたベース体10に対しリングバーテンプル13が支持された状態とするためにベース体10における支持部10b毎に設けられる取付部材30を備えている。その各取付部材30は、板状の部材であり、板厚方向に見て略矩形状を成している。なお、各取付部材30の端面の短辺方向における寸法は、支持部10bの前記長辺方向における寸法と略一致したものとなっている。また、各取付部材30の端面の長辺方向における寸法は、前記前後方向におけるベースプレート10a及びカバー11の寸法と略一致したものとなっている。
【0045】
そして、その各取付部材30は、対応する支持部10bに対し着脱可能に取り付けられるかたちで設けられている。そこで、各支持部10bには、その支持部10bに対し取付部材30を取り付けるためのネジ部材22が挿通される貫通孔10b2が形成されている。また、その貫通孔10b2は、支持部10bにおける前記他端部において、その支持部10bの前記短辺方向に間隔を置いて2つ形成されている。その一方で、各取付部材30には、支持部10bの前記他端部における2つの貫通孔10b2、10b2の間隔と同じ間隔で、2つの雌ネジ孔31、31が形成されている。但し、各取付部材30における両雌ネジ孔31、31の位置は、その取付部材30がベース体10における支持部10bに取り付けられた際に、前記幅方向に見て、取付部材30が前記組合せ体における空間12と重複した状態となるような位置とされている。
【0046】
その上で、各取付部材30は、対応する支持部10bの前記他端部における各貫通孔10b2に挿通されたネジ部材22がその雌ネジ孔31に螺装されることで、その支持部10bに取り付けられている。但し、その取り付けは、前記幅方向に関し、ベース体10における各支持部10bの外側の端面に対し取付部材30を対向させた状態で、支持部10bに対するベース体10における内側から支持部10bの貫通孔10b2に対しネジ部材22を挿通するかたちで行われている。
【0047】
また、その取り付けは、前記幅方向に見て、取付部材30が前記組合せ体における空間12と重複した状態となるような向きで行われている。なお、その取り付け状態においては、支持部10bを被取付部10a1に対し固定するネジ部材21と各取付部材30とは、前記幅方向に見て重複した状態となる。そこで、その取付部材30と支持部10bとの間におけるそのネジ部材21の頭部の配置を許容するために、ベース体10における各支持部10bの前記外側の端面には、そのネジ部材21の頭部が当接する部分がその部分以外の部分に対し窪む凹部が形成されている。
【0048】
なお、その各支持部10bの前記他端部における各貫通孔10b2の孔径は、その貫通孔10b2に挿通されるネジ部材22の直径よりも若干大きくされている。それにより、全幅テンプル装置2において、その支持部10bに対する取付部材30の取り付け位置が調整できるようになっている。
【0049】
また、各取付部材30は、前記のように支持部10bに取り付けられた状態でリングバーテンプル13を支持するために、リングバーテンプル13における軸部19の周面と係合する係合部32を有している。そして、そのような係合部32を有する板状の各取付部材30について、本実施例では、その全体が軸止部に相当する。その上で、その各取付部材30における係合部32は、本実施例では、その取付部材30の前記板厚方向に貫通するように形成された係合孔となっている。
【0050】
その各取付部材30における係合孔32について、孔径は、リングバーテンプル13における軸部19の直径と略一致したものとなっている。したがって、リングバーテンプル13は、その各軸部19が取付部材30におけるその係合孔32に嵌め合わされるかたちで、両取付部材30、30によって支持された状態とされる。但し、その各取付部材30における係合孔32の位置は、その取付部材30が支持部10bに取り付けられた状態において、前記のように支持された状態でのリングバーテンプル13におけるインナーバー14の範囲で前記した織布Wの把持(挟持)が実現されるような位置とされている。そして、前記のようにリングバーテンプル13を支持した状態で各取付部材30が支持部10bに取り付けられることにより、リングバーテンプル13がベース体10に対し支持された状態とされる。
【0051】
なお、本実施例では、リングバーテンプル13における各軸部19は、その周面の一部が平面状に形成されたものとなっている。すなわち、各軸部19は、その周面に平面部19aを有している。それに対し、各係合孔32は、その内周面が軸部19における平面部19aにおいても当接するように、その内周面の一部が軸部19の周面における平面部19aと略同じ大きさの平面であるように形成されている。すなわち、各係合孔32は、その内周面に、軸部19の平面部19aと当接する平面状の当接面32aを有している。このように、各係合孔32は、その内周面の全周に亘って当接(係合)した状態で軸部19と嵌まり合う孔形状を成すものとなっている。
【0052】
そして、各軸部19及び各係合孔32が前記のように形成されていることで、前記のようにリングバーテンプル13がベース体10に対し支持された状態では、そのリングバーテンプル13の軸線周りの角度は、各取付部材30の係合孔32における当接面32aの向きに応じたものとなる。なお、ここで言う当接面32aの向きは、取付部材30を前記板厚方向に見たときのその前記長辺方向(前記短辺方向)に対し当接面32aが成す角度に相当する。そして、その当接面32aの向きは、リングバーテンプル13の各軸部19における平面部19aの軸線周りでの向きを踏まえ、製織される織布W(その織布Wに対する所望の引張り力)に応じて設定されている。
【0053】
また、リングバーテンプル13は、前記のようにベース体10に対し支持された状態では、各リングテンプル15もベースプレート10a及びカバー11に近接した状態となっている。なお、リングバーテンプル13は、その軸線方向に見て、その各リングテンプル15における各テンプルリング16の針16aがインナーバー14の外周面から突出するように構成されている。そこで、全幅テンプル装置2においては、各リングテンプル15における各テンプルリング16の針16aがベースプレート10a及びカバー11と干渉するのを避けるために、ベースプレート10a及びカバー11には、各リングテンプル15と対向する部分に凹部が形成されている。
【0054】
具体的には、ベースプレート10aのベース側案内部10a2における前記した曲面状の前記内側面には、各リングテンプル15の軸線方向における複数のテンプルリング16の存在範囲に亘って窪むベース側凹部10a4が形成されている。また、カバー11のカバー側案内部11bにおける前記湾曲した部分の前記内側面及び被係合部11cにおける前記面(カバー側案内部11bの前記内側面に連続する面)には、ベースプレート10aにおけるベース側凹部10a4の前記幅方向の範囲と同様の範囲に亘って窪むカバー側凹部11eが形成されている。それにより、全幅テンプル装置2においては、リングバーテンプル13が前記のようにベース体10に対し支持された状態において、そのリングバーテンプル13における各テンプルリング16の針16aとベースプレート10a及びカバー11とが干渉しないようになっている。
【0055】
そして、リングバーテンプル13は、前記のようにベース体10に対し支持された状態において、各取付部材30に対し固定されている。その上で、本実施例では、そのための固定手段として割締め構造が用いられている。
【0056】
その割締め構造について、割締め構造33は、取付部材30において係合孔32に連通するように形成されたスリット34と、スリット34を横切るかたちで取付部材30に螺装されるネジ部材37とを含むように構成されている。
【0057】
より詳しくは、スリット34は、各取付部材30において、その板厚方向に貫通すると共に、係合孔32から取付部材30の前記長辺方向へ延びるように形成されている。なお、その係合孔32におけるスリット34が連通する位置は、全幅テンプル装置2を前記幅方向に見て、取付部材30の前記長辺方向に関し係合孔32の中心に対する前記した空間12が開放される部分側とは反対側であって、取付部材30の前記短辺方向に関し係合孔32の中央部付近である位置となっている。また、その係合孔32における内周面において、スリット34が連通(開口)する位置は、前記した当接面32aが形成された位置とは異なっており、図示の例では、その位置は、当接面32aと対向する位置となっている。因みに、図示の例では、各取付部材30には、スリット34における係合孔32と連通する側とは反対の側においてスリット34が連通するように、その板厚方向に貫通する貫通孔が形成されている。なお、そのスリット34が連通する前記貫通孔の孔径は、スリット34における2つの対向面34a、34bの間の間隔よりも大きいものとなっている。
【0058】
そして、各取付部材30には、前記のようにネジ部材37がスリット34を横切るかたちで螺装されている。すなわち、ネジ部材37は、取付部材30の前記長辺方向におけるスリット34の範囲内で、その軸線を取付部材30の前記短辺方向に一致させるかたちで、取付部材30に対し挿入されている。
【0059】
そこで、取付部材30には、その前記短辺方向におけるスリット34に対する一方の側の部分に、その前記短辺方向において貫通し、スリット34における2つの対向面34a、34bのうちの一方の対向面34aに開口する貫通孔35が形成されている。一方で、取付部材30の前記短辺方向におけるスリット34に対する他方の側の部分には、その前記短辺方向において前記他方の側の部分を貫通して他方の対向面34bに開口すると共に、スリット34を介して貫通孔35に対向する雌ネジ孔36が形成されている。但し、図示の例では、その貫通孔35が形成される前記一方の側の部分は、全幅テンプル装置2が織機1上に設置された状態で、スリット34に対し上側となる部分である。
【0060】
そして、取付部材30においてそのような割締め構造33が設けられた全幅テンプル装置2においては、取付部材30における貫通孔35に対し挿入されたネジ部材37がスリット34を経由して雌ネジ孔36に螺挿され、更にそのネジ部材37が締め付けられることで、そのスリット34が連通する係合孔32に嵌め合わされた軸部19が締め付けられた状態となる。それにより、リングバーテンプル13が取付部材30に対し固定された状態となる。
【0061】
なお、各取付部材30は前記のように支持部10bに取り付けられることで全幅テンプル装置2上に設けられるが、本実施例では、その両取付部材30、30の前記幅方向における間隔は、ベースプレート10a(ベース側案内部10a2)の前記幅方向における寸法と略一致したものとなっている。
【0062】
より詳しくは、ベースプレート10aの前記幅方向における両側部には、支持部10bが取り付けられる部分に支持部10bの厚さ分だけ窪む凹部が形成されている。それにより、支持部10bがベースプレート10aに取り付けられた状態では、前記幅方向に関し、支持部10bにおける前記外側の端面の位置がベースプレート10aにおける両側面の最も外側に位置する部分の位置と略一致した状態となっている。なお、カバー11の前記幅方向における両側部には、そのようにベースプレート10aに対し取り付けられた支持部10bの配置を許容するような凹部が形成されている。それにより、前記幅方向に関し、その取り付け状態での支持部10bにおける前記外側の端面の位置は、カバー11における両側面の最も外側に位置する部分の位置に対しても略一致した状態となっている。
【0063】
その上で、全幅テンプル装置2において、各取付部材30は、ベースプレート10aに取り付けられた支持部10bに対し前記のようなかたちで取り付けられており、前記幅方向に関し、その内側(支持部10b側)の端面の位置が支持部10bにおける前記外側の端面の位置と一致した状態となっている。したがって、前記幅方向に関し、両取付部材30、30の間隔は、ベースプレート10aの寸法(前記した両側面の最も外側に位置する部分間の寸法)と略一致したものとなっている。
【0064】
また、リングバーテンプル13において、各リングテンプル15は、前記のように軸部19が胴体部18よりも小径であることから、軸部19と前記端部側(インナーバー14側とは反対側)の胴体部18との間に胴体部18の軸線方向における外側を向く面である外端面(前記他方の端面における軸部19の存在範囲外の面)を有している。その上で、本実施例では、リングバーテンプル13は、前記軸線方向におけるその両外端面の間隔が、ベースプレート10aの前記幅方向における寸法、すなわち、両取付部材30、30の前記幅方向における間隔と略一致したものとされている。
【0065】
したがって、リングバーテンプル13は、前記のようにベース体10に対し支持された状態では、ベース体10における各取付部材30の前記内側の端面に対し、その前記外端面が当接した状態となっている。それにより、リングバーテンプル13は、そのように支持された状態において、その前記幅方向における位置が両取付部材30、30によって規制された状態となっている。
【0066】
また、リングバーテンプル13において、各リングテンプル15は、前記のようにその支持軸17の軸心をインナーバー14の軸心と一致させるかたちでインナーバー14に対し組み付けられている。その上で、本実施例では、そのリングバーテンプル13は、その各リングテンプル15がインナーバー14に対し着脱可能であるように構成されている。
【0067】
より詳しくは、各リングテンプル15は、前述のように一対の胴体部18、18が複数のテンプルリング16を間に挟むかたちで支持軸17に対し取り付けられた構成となっている。また、支持軸17の長さ寸法は、そのリングテンプル15における軸部19の端面からインナーバー14側(その軸部19側とは反対側)の胴体部18における前記他方の端面(前記傾斜面とは反対側の端面)までの寸法よりも大きいものとなっている。その上で、前記端部側(軸部19側)の胴体部18の支持軸17に対する取り付けは、その軸部19の前記端面の位置を支持軸17における一方の端面の位置に略一致させた状態で行われている。したがって、各リングテンプル15において、その支持軸17は、その他方の端部(他端部)がインナーバー14側の胴体部18から突出している。
【0068】
一方、インナーバー14には、リングテンプル15における支持軸17が挿入可能な孔径の挿入孔14aが、その両端部においてそれぞれの端面に開口するように形成されている。また、その各挿入孔14aは、インナーバー14を軸線方向に見て、その中心がインナーバー14の軸心と略一致するように形成されている。さらに、その挿入孔14aの深さ寸法は、リングテンプル15において前記のようにインナーバー14側の胴体部18から突出する支持軸17の突出量よりも大きくされている。
【0069】
そして、リングバーテンプル13においては、各リングテンプル15における支持軸17の前記他端部がインナーバー14における挿入孔14aに挿入された状態とすることで各リングテンプル15がインナーバー14に組み付けられた状態となっており、それにより、前述のように各リングテンプル15における支持軸17の軸心とインナーバー14の軸心とが一致した状態となっている。
【0070】
なお、インナーバー14における挿入孔14aの孔径は、支持軸17の前記他端部が挿入された状態で、支持軸17がインナーバー14に対し遊嵌された状態となるような大きさとなっている。また、インナーバー14に対するリングテンプル15の組み付けは、その支持軸17の挿入孔14aへの挿入(遊嵌)のみで行われている。したがって、リングバーテンプル13は、各リングテンプル15がインナーバー14に対し着脱可能な構成となっている。さらに、そのリングバーテンプル13においては、そのように組み付けられた状態で、インナーバー14とリングテンプル15(支持軸17)とは相対回転可能となっている。
【0071】
また、以上のように構成された全幅テンプル装置2において、本実施例では、カバー11は、前記幅方向(全幅テンプル装置2が織機1上に設置された状態で織幅方向と一致する方向)に関し、各リングテンプル15に対応する部分とその部分以外の部分とが分割可能であるように構成されている。より詳しくは、カバー11において、前記幅方向におけるリングテンプル15に対応する各端部の部分とその両端部の間の部分とは、それぞれ別部材として形成されている。すなわち、カバー11は、その各端部を形成する2つの部材(端側部材)と、その2つの端側部材の間の部分を形成する部材(中央部材)とから成っている。
【0072】
なお、そのように構成されたカバー11において、各前記端側部材の前記幅方向における寸法は、前記軸線方向におけるリングテンプル15の寸法よりも大きくされている。したがって、全幅テンプル装置2においては、そのカバー11におけるその各前記端側部材と前記中央部材との境界位置は、リングバーテンプル13の軸線方向におけるインナーバー14の両端の位置よりも内側の位置となっている。そして、カバー11は、各前記端側部材及び前記中央部材がそれぞれベース体10におけるベースプレート10aに取り付けられるかたちで構成されている。それにより、カバー11は、各前記端側部材と前記中央部材との間で分割可能に構成されたものとなっている。
【0073】
また、ベース体10におけるベースプレート10aは、前記幅方向(全幅テンプル装置2が織機1上に設置された状態で織幅方向と一致する方向)に関し、リングバーテンプル13におけるインナーバー14の存在範囲内で、給糸側の部分と反給糸側の部分とに分割可能であるように構成されている。すなわち、ベースプレート10aは、その反給糸側の部分となる部材(反給糸側部材)と給糸側の部分となる部材(給糸側部材)とから成っている。但し、本実施例では、その反給糸側部材と給糸側部材とは、前記幅方向に関し、その境界位置がカバー11における反給糸側の前記端側部材と前記中央部材との境界と略一致した位置となるように、その寸法が設定されている。そして、ベースプレート10aは、前記反給糸側部材及び前記給糸側部材がそれぞれブラケット4に取り付けられるかたちで構成されている。それにより、ベースプレート10aは、前記反給糸側部材と前記給糸側部材との間で分割可能に構成されたものとなっている。
【0074】
そして、前記のように構成されたリングバーテンプル13によれば、以上で説明した全幅テンプル装置2において、織布Wは、前述のようにリングバーテンプル13に巻き掛けられた状態で、各リングテンプル15に対しその軸線と平行を成す状態となっている。それにより、その織布Wは、前記のように各リングテンプル15の範囲において各テンプルリング16の針16aによって把持された状態では、その全てのテンプルリング16の針16aに対し十分に刺さった状態となっている。その結果として、各リングテンプル15による織布Wの把持が所望の把持力で行われることとなっている。したがって、本実施例のリングバーテンプル13によれば、織布Wの把持を十分に行うことができる。
【0075】
なお、以上で説明した例では、リングバーテンプル13は、各リングテンプル15がインナーバー14に対し着脱可能であるように構成されている。しかし、本発明において、リングバーテンプルは、そのようにリングテンプルがインナーバーに対し着脱可能であるように構成されたものに限らない。例えば、リングバーテンプルの軸線方向に亘る通しの軸を支持軸とし、その支持軸の両端部のそれぞれにリングテンプルを構成する胴体部及びテンプルリングが支持されると共に、そのリングテンプル間に中空円筒状に形成されたインナーバーが回転可能に支持されるようにして、リングバーテンプルを構成するようにしても良い。そして、そのように構成することで、リングバーテンプルは、リングテンプルがインナーバーに対し着脱不能であるように構成されたものとなる。
【0076】
また、本発明は、以上で説明した例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 織機
2 全幅テンプル装置
3 筬
4 ブラケット
4a 雌ネジ孔
5 取付バー
6、7 カッタ装置
8 フロントトップステー
10 ベース体
10a ベースプレート
10a1 被取付部
10a2 ベース側案内部
10a3 係合部
10a4 ベース側凹部
10a5 雌ネジ孔
10a6 貫通孔
10b 支持部
10b1 貫通孔
10b2 貫通孔
11 カバー
11a 取付部
11b カバー側案内部
11c 被係合部
11d 連結部
11e カバー側凹部
11f 貫通孔
12 空間
13 リングバーテンプル
14 インナーバー
14a 挿入孔
15 リングテンプル
16 テンプルリング
16a 針
17 支持軸
18 胴体部
18a 貫通孔
19 突出部(軸部)
19a 平面部
21 ネジ部材
22 ネジ部材
30 取付部材(軸止部)
31 雌ネジ孔
32 係合孔(係合部)
32a 当接面
33 割締め構造
34 スリット
34a 一方の対向面
34b 他方の対向面
35 貫通孔
36 雌ネジ孔
37 ネジ部材
40 ネジ部材
41 ネジ部材
CF 織前
T 経糸列
W 織布