IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中日本高速道路株式会社の特許一覧 ▶ 日進機工株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】はつり装置及び自動はつり工法
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/09 20060101AFI20240808BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
E01C23/09 Z
E01D24/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020189298
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078553
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390020422
【氏名又は名称】日進機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【弁理士】
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】藤田 鉱治
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 太一
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 敏孝
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼ 高志
(72)【発明者】
【氏名】中谷 光志
(72)【発明者】
【氏名】井上 大介
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-077546(JP,A)
【文献】登録実用新案第3184723(JP,U)
【文献】特開2018-051688(JP,A)
【文献】特開2020-153213(JP,A)
【文献】特開平05-171821(JP,A)
【文献】特開2015-140571(JP,A)
【文献】特開2005-035033(JP,A)
【文献】特開2000-002003(JP,A)
【文献】特開昭60-253603(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02354315(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/09
E01D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事現場に設置されて、道路、橋梁、コンクリートその他の材料で構成された構造物の所定の領域を自動的にはつり処理を行うはつり装置であって、
はつり面に対して超高圧水を噴射して破砕するウォータージェットノズルを備えるWJヘッドと、
前記WJヘッドを保持して移動する移動台部を有し、該移動台部を、はつり処理を行う前記所定の領域と並行なX-Y平面上の所望の位置に移動させるX-Y移動機構と、
前記ウォータージェットノズルに超高圧水を供給する超高圧水供給路と、
前記ウォータージェットノズルによるはつり処理により生じた残渣排液及び水蒸気その他の気体を排出する吸引排出路と、
前記ウォータージェットノズルで自動的にはつり処理を行う前記所定の領域、前記超高圧水供給路、及び吸引排水路を含む空間の側面と上面とを防音カバーで覆うはつり作業室と、
を備え、
前記はつり作業室は密閉構造であり、少なくとも、超高圧水を外部から前記はつり作業室の内部へ供給する密閉構造の第1の接続部と、はつり作業室内部の前記吸引排出路からの残渣排液及び水蒸気その他の気体を外部へ排出する密閉構造の第2の接続部を備える、
ことを特徴とするはつり装置。
【請求項2】
前記X-Y移動機構は、前記所定の領域のはつり面の両側に間隔をあけて平行に設けられた2つの固定ガイドと、2つの前記固定ガイドに跨って該固定ガイドに沿ってスライド移動可能な移動ガイドとを有しており、
前記移動台部は前記移動ガイド上に載置され、該移動ガイドに沿ってスライド移動可能に載置されており、
前記超高圧水供給路は、一端を前記第1の接続部に接続されており他端を前記はつり作業室の内部に設けられた第1の中継部に接続された管路と、一端を前記第1の中継部に接続されており他端を第2の中継部に接続された屈曲可能な第1の超高圧ホースと、一端を前記第2の中継部に接続されており他端を第3の中継部に接続されている屈曲可能な第2の超高圧ホースとを備え、前記第1の中継部は前記固定ガイドまたは本体枠体に固定され、前記第2の中継部は前記移動ガイドに固定され、第3の中継部は前記移動台部に固定された前記WJヘッドに固定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のはつり装置。
【請求項3】
前記第1の中継部は、前記固定ガイドの長さ方向に沿って前記第1の接続部からの距離が前記固定ガイドの全長の1/4~1/2の距離の位置に固定されており、前記第2の中継部は前記第1の接続部からの前記固定ガイドと直行する方向の距離が前記移動ガイドの全長の1/4~1/2の距離の位置に、前記移動ガイドに固定されている
ことを特徴とする請求項2に記載のはつり装置。
【請求項4】
前記第2の超高圧ホースが接続される前記第2の中継部及び第3の中継部の双方またはいずれか一方は、前記X-Y平面に垂直な軸を中心に回動可能なスイーベルジョイントであり、前記第2の超高圧ホースの双方の端部又はいずれか一方の端部は、前記X-Y平面に垂直な軸を中心に自由に回動可能である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のはつり装置。
【請求項5】
前記第1の超高圧ホースが接続される前記第1の中継部及び前記第2の中継部の双方またはいずれか一方は、前記X-Y平面に垂直な軸を中心に回動可能なスイーベルジョイントであり、前記第1の超高圧ホースの双方の端部又はいずれか一方の端部は、前記X-Y平面に垂直な軸を中心に自由に回動可能である
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のはつり装置。
【請求項6】
前記はつり作業室に、開閉可能な防音扉を設けたことを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載のはつり装置。
【請求項7】
前記防音扉は、少なくとも前記はつり作業室の側壁と天井の一部を開閉可能であることを特徴とする請求項6に記載のはつり装置。
【請求項8】
前記防音カバーは、硬質材料の保護プレートと、吸音層を備える防音パネルとを備えることを特徴とする請求項2から7のいずれか1項に記載のはつり装置。
【請求項9】
前記防音カバーは、前記はつり作業室の内部側に前記保護プレートを備え、その外側に空隙を介して前記防音パネルと接続固定されている
ことを特徴とする請求項8に記載のはつり装置。
【請求項10】
前記吸引排出路は、残渣排液を吸引する残渣排液吸引部と、水蒸気その他の気体を吸引するための気体吸引部を備え、前記はつり作業室の内部を減圧状態に維持する
ことを特徴とする請求項2から9のいずれか1項に記載のはつり装置。
【請求項11】
前記はつり作業室内において、前記WJヘッドは前記ウォータージェットノズルの周囲を覆う一次カバー部を備える
ことを特徴とする請求項2から10のいずれか1項に記載のはつり装置。
【請求項12】
前記はつり作業室の外に、前記X-Y移動機構を駆動する電気機器及び配線を設けたことを特徴とする請求項2から11のいずれか1項に記載のはつり装置。
【請求項13】
前記X-Y移動機構は、前記固定ガイド及び前記移動ガイド内に装架した1本の駆動ベルトを前記固定ガイドの端部に配置した駆動モータにより駆動することにより、前記移動台部を前記X-Y平面上を自由に移動するよう構成し、前記駆動モータを前記はつり作業室の外に配置した
ことを特徴とする請求項12に記載のはつり装置。
【請求項14】
制御プログラムに基づいて、前記X-Y移動機構による前記WJヘッドの移動及び超高圧水の噴射を自動的に制御する制御部と、
複数の所定の形状および大きさのはつり処理を実行するための制御用データを記憶する記憶部と、
複数の形状、大きさ、位置を指定する操作部と、
を備え、操作部により指定された前記所定の領域の一部または複数の箇所を、指定した形状および大きさによりはつり処理を行うことを特徴とする請求項2から13のいずれか1項に記載のはつり装置。
【請求項15】
WJヘッドを所望の位置に移動させながらウォータージェットノズルから超高圧水を噴射して、道路、橋梁、コンクリートその他の材料で構成された構造物の所定の領域を自動的にはつり処理する自動はつり工法であって、
はつり処理を行う前記WJヘッドの移動範囲全体の側面及び上部を密閉構造の防音カバーで覆ってはつり作業室とし、
前記はつり作業室の外壁となる前記防音カバーの壁面に設けられた密閉構造の第1の接続部を介して外部から内部へ前記超高圧水を供給し、該超高圧水を内部の超高圧水供給路を介して前記ウォータージェットノズルに供給し、
内部の残渣排液を吸引パイプで吸引して、前記はつり作業室の前記防音カバーの壁面に設けられた密閉構造の第2の接続部を介して外部に排出することにより、
超高圧水によるはつり処理の騒音の外部への漏洩を抑制したことを特徴とする自動はつり工法。
【請求項16】
前記超高圧水供給路は第1の超高圧ホースと第2の超高圧ホースを備え、前記WJヘッドのX方向への移動に合わせて前記第1の超高圧ホースが追随して移動し、前記WJヘッドの前記X方向と直行するY方向への移動に合わせて第2の超高圧ホースが追随して移動する
ことを特徴とする請求項15に記載の自動はつり工法。
【請求項17】
前記吸引パイプには蒸気その他の気体を吸引する気体吸引部が接続されており、該気体吸引部により前記はつり作業室の内部の気体を吸引して減圧することにより、該はつり作業室内における騒音の伝達を抑制する
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の自動はつり工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、橋梁、その他のコンクリート等による構造物に超高圧水(ウォータージェット)を噴射衝突させて、コンクリート等の構造材を破壊して剥ぎ取る(以下、“はつり“又は”はつり処理“と称する)超高圧水によるはつり装置及び自動はつり工法に関する。特に、道路等の構造物の劣化部分のはつり処理を自動的に行うことのできる静粛性の高い超高圧水を用いたはつり装置及び自動はつり工法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や橋梁などのはつり処理を行う従来技術として、高圧水を噴射するコリジョンノズル(以下適宜、「ウォータージェットノズル」又は「WJノズル」と称する)をX-Y方向に移動させながら所定範囲を自動的にはつり処理を行う伸縮継手の撤去方法及び道路の切削方法がある(特許文献1)。
この特許文献1の従来技術では、超高圧水を噴射するコリジョンノズル41を取り付けた前後スライダ48を二つの左右レール42,42と二つの前後レール46,46に沿ってモータ45と49によりX―Y方向に移動させることにより、自動的にX-Y平面のはつり処理を行う移動装置40を有している。
【0003】
なお、本明細書の段落[0002]~[0009]における従来技術の説明においては、特許文献1に記載の発明の説明の便宜のために、特許文献1において使用されている符号(数字)を、参照用符号としてそのまま使用して説明する。従って、他の段落で本発明の実施形態等で使用している符号(数字)は、段落[0002]~[0009]で使用している特許文献1の符号(数字)と同じ数字であっても、その意義が異なるので注意されたい。
【0004】
ウォータージェットによるはつり処理は、コンクリートブレーカによる破砕と異なり振動は抑制されるが、はつり処理面に対して超高圧水を噴射衝突させてコンクリート等を破砕するため、大きな騒音(衝突音と破砕音)が発生する。そのため、特許文献1の方法では、装置や周辺設備の破損防止と騒音抑制のために、移動装置40の外側を囲うように防護枠70を設けて、その防護枠の内側にポリカーボネードからなる厚さ1.0mmの防音シート71を設け、さらに外側にプラスチック製の吸音パネル72を設けて、移動装置40全体を覆っている。移動装置40は、コリジョンノズル41、前後スライダ48、二つの左右レール42,42と二つの前後レール46,46、モータ45、49のすべてを含んでおり、これらはすべて防音シート71と吸音パネルの中に収納されている。
【0005】
特許文献1に開示されている防音構造では、作業領域は防音シート71と吸音パネル72で覆われているものの、防音シート71及び吸音パネル72にはそれぞれ、高圧水や圧縮空気を通す管80,81及び電気系統の配線61を通すために、左右方向(幅方向)に延びる細長い矩形の開口71aと72aが設けられている。そして左右に延びる細長い開口71a、72aを覆う位置にゴム製のカバーシート73と74がそれぞれ設けられている。カバーシート73,74は開口71a,72aを覆う構造となっているものの、開口の上部が固定されて、その固定部を支点として前後に自由に揺動可能(開閉可能)とした上で、開口71a、72aに高圧水のホース等を通している。また、開口71a,72aの下側には、バキュームホースを接続する接続管78が挿入される挿入穴71b、72bが左右に設けられている。このバキュームホースを介して、破砕した微細なコンクリートと水の混ざった「ノロ」と称する残渣排液、及び超高圧水の衝突により高温の水蒸気などを排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-77546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の従来技術では、はつり領域に設けられた移動装置40全体を覆うように防音シート及びプラスチックの吸音パネルをかぶせて、はつり処理による騒音を抑制している。しかし、特許文献1の防音シート71と吸音パネル72には、前述の通り、幅方向のほぼ全面にわたり左右方向に延びる横方向に延びる細長い矩形の開口71a,72aを設けて、高圧水や圧縮空気を通す管80,81や電気配線61を通している。この管80,81は本願発明の超高圧ホースに相当するものであり、内部で自動的に移動するWJノズルの動きに追随するように移動させる必要がある。
【0008】
この細長い開口71a、72aには開口部分を覆うゴム製のカバーシート73と74が設けられているものの、カバーシート73と74の上部が固定されて揺動可能になっており、管81、82などの挿入部分は開口71a、72aを覆うことはできない。そのため、細長い開口71a,72aの管81,82の左右上下に大きな隙間ができ、そこから騒音が大きく漏れてしまい、十分な防音効果が得られなかった。また、WJノズルの動きに合わせて開口71a、72aに沿って管81.82を自由に移動するために、特に管80,81が移動する際にはカバーシートが大きく揺動して騒音漏れがひどくなる。このように、特許文献1に示す防音構造では、深夜の作業等においては騒音が大きく響き、周辺住民への影響が問題となる他、作業従事者の作業環境の改善という観点からも問題があった。
【0009】
また、WJノズルに超高圧水を供給する管81,82(超高圧ホース)には高い圧力がかかり管81,82は非常に硬くて曲がりにくい。したがって、WJノズルが所定の領域を移動しながら自動的にはつり処理を行うためには、WJノズルの動きに合わせて管81,82の曲げが小さくなるように(曲げ部分の曲率半径が大きくなるように)、管81,82の向きを調整する必要がある。そのため特許文献1の方法においては、WJノズルの動きに合わせて管81,82の曲げが小さくなるように、左右方向のほぼ全面にわたる細長い開口71a、72aを設け、該開口71a,72aを介して、防音シートと吸音パネルの外側から適宜人手により管81,82を動かして管81,82の向きを調整していた。したがって、特許文献1の方法では開口71a,72aによる騒音の漏れに加えて、WJノズルは所定領域を自動的にはつり処理が行っているにもかかわらず、管81,82の向きの調整に人手を要するため、完全な自動化とは言えないという問題もあった。
【0010】
さらに、特許文献1では、はつり処理により生じるノロ(残渣排液)の排水処理と、高温の水蒸気が防音シート内に充満することを防止するために、「ノロ」と「高温の水蒸気」を接続管78及びバキュームホースにより防音シートと吸音パネルの外に排出している。しかし、はつり処理を行う領域の床面には凹凸や、コンクリートの塊である「ガラ」が散在しているため、特許文献1では床面と吸引ホースとの間に隙間ができてノロが防音シートの外に漏れ出るという問題もあった。
【0011】
また、上述のように防音シート内は高温の水蒸気が充満した高湿度空間であり、はつり処理によるコンクリートのガラが飛び散るので、防音シート内のモータや電気配線等の電気設備は破損、劣化が進行しやすく、漏電や故障が発生しやすいという問題もあった。
【0012】
本発明は、上記した従来技術の問題点に着目してなされたものであり、超高圧水により所定の領域を自動的にはつり処理を行う防音効果の優れたはつり装置及び自動はつり工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、本発明の第1の態様に係るはつり装置は、工事現場に設置されて、道路、橋梁、コンクリートその他の材料で構成された構造物の所定の領域を自動的にはつり処理を行うはつり装置であって、
はつり面に対して超高圧水を噴射して破砕するウォータージェットノズルを備えるWJヘッドと、
前記WJヘッドを保持して移動する移動台部を有し、該移動台部を、はつり処理を行う前記所定の領域と並行なX-Y平面上の所望の位置に移動させるX-Y移動機構と、
前記ウォータージェットノズルに超高圧水を供給する超高圧水供給路と、
前記ウォータージェットノズルによるはつり処理により生じた残渣排液及び水蒸気その他の気体を排出する吸引排出路と、
前記ウォータージェットノズルで自動的にはつり処理を行う前記所定の領域、前記超高圧水供給路、及び吸引排水路を含む空間の側面と上面とを防音カバーで覆うはつり作業室と、を備え、
前記はつり作業室は密閉構造であり、少なくとも、超高圧水を外部から前記はつり作業室の内部へ供給する密閉構造の第1の接続部と、はつり作業室内部の前記吸引排出路からの残差排液及び水蒸気その他の気体を外部へ排出する密閉構造の第2の接続部を備える、
ことを特徴とする。
【0014】
上記構成のはつり装置によれば、超高圧水を噴射してはつり処理を行うはつり作業室は、はつり処理面である底面を除き、側面及び上部の全面が密閉構造の防音カバーでおおわれており、超高圧水は密閉構造の第1の接続部を介して行われ、内部の残渣排液や水蒸気も密閉構造の第2の接続部を介して排出される。従って、従来のように開口部が設けられていないため、開口部を介して騒音が漏れることがなく、はつり処理に伴う騒音を大幅に抑制することができる。なお、内部に圧縮空気を供給する場合、またはモータなどの電気機器が存在する場合、電気系統の電力を供給する電線や制御信号その他の電気信号の通信のための配線を接続する場合など、必要に応じて第3、第4、第5の接続部等を設けることもできる。さらに、第1及び/又は第2の接続部を複数設けることも可能である。さらに、作業現場環境に応じて各接続部の位置を自由に選択できるように、はつり作業室の前面、後面、又は左右面にそれぞれ第1の接続部及び第2の接続部、その他の接続部を、複数の位置に設けても良い。これらの接続部は使用されない接続部は機密に封止されている。
【0015】
また、本発明の他の態様に係るはつり装置は、前記X-Y移動機構は、前記所定の領域のはつり面の両側に間隔をあけて平行に設けられた2つの固定ガイドと、2つの前記固定ガイドに跨って該固定ガイドに沿ってスライド移動可能な移動ガイドとを有しており、
前記移動台部は前記移動ガイド上に載置され、該移動ガイドに沿ってスライド移動可能に載置されており、
前記超高圧水供給路は、一端を前記第1の接続部に接続されており他端を前記はつり作業室の内部に設けられた第1の中継部に接続された管路と、一端を前記第1の中継部に接続されており他端を第2の中継部に接続された屈曲可能な第1の超高圧ホースと、一端を前記第2の中継部に接続されており他端を第3の中継部に接続されている屈曲可能な第2の超高圧ホースとを備え、前記第1の中継部は前記固定ガイドまたは本体枠体に固定され、前記第2の中継部は前記移動ガイドに固定され、第3の中継部は前記移動台部に固定された前記WJヘッドに固定されていることを特徴とする。
【0016】
この実施態様によると、超高圧水供給路が、管路と第1の超高圧ホースと第2の超高圧ホースが、第1、第2、第3の中継部を介して直列に接続されている。第1の超高圧ホース及び第2の超高圧ホースがそれぞれ別々に移動して変形することが可能であるために、超高圧水供給路が変形しながら第1のWJヘッドの動きに自動的に追随することが可能となる。
【0017】
また、前記第1の中継部は、前記固定ガイドの長さ方向に沿って前記第1の接続部からの距離が前記固定ガイドの全長の1/4~1/2の距離の位置に固定されており、前記第2の中継部は前記第1の接続部からの前記固定ガイドと直行する方向の距離が前記移動ガイドの全長の1/4~1/2の距離の位置に、前記移動ガイドに固定されることが好ましい。これにより、第1及び第2の超高圧ホース長さをそれぞれ固定ガイド及び移動ガイドとほぼ同じ程度または少し長い程度の長さとすることにより、超高圧ホースの屈曲部の曲率半径が小さくなるのを抑制することができる。
さらに、第1、第2の超高圧ホースが接続される第1~第3の中継部のいずれか一つ又は複数を、X-Y平面に垂直な軸を中心に回動可能なスイーベルジョイントとすることが好ましい。これによりWJヘッドの動きに合わせて、第1及び第2の超高圧ホースが追随しやすくなり、変形部の曲率半径をより大きく保つことが可能となる。
【0018】
さらに、はつり作業室には、開閉可能な防音扉を設けることが好ましい。また、該防音扉ははつり作業室の側面だけでなく、天井の一部も開閉可能であることが望ましい。これにより、はつり作業室内での作業がやりやすくなる。また、防音カバーは内側が硬質材料の保護プレートで、外側が吸音層を備える防音パネルとすることが好ましい。また、保護プレートと防音パネルは5mm~15mmの範囲内で、空隙(スペース)を開けて固定することがさらに好ましい。これにより吸音層により騒音を窮するとともに、空隙により防音機能を高めることが可能となる。
【0019】
はつり装置内部には、残渣排液を吸引する残渣排液吸引部と水蒸気や気体を吸引して減圧する気体吸引部を備える吸引排出路を設けることが好ましい。これにより残渣排液がはつり作業室から漏れ出すことや水蒸気の充満を抑制するとともに、はつり作業室内部を減圧することにより、騒音伝達媒体である空気の濃度を落としてはつり作業室内部での騒音の伝達率を下げている。また、X-Y移動機構の破損防止や騒音抑制の観点から、はつり作業室内部のWJノズルの周囲にも一次カバーを設けることが好ましい。
【0020】
さらに、高湿度、高温、ガラの飛散などの環境であるはつり作業室の外に、X-Y移動機構の駆動モータを配置することが好ましい。これにより、モータや電気配線の劣化や破損を抑制することができる。
さらに、制御プログラムに基づいて、前記X-Y移動機構による前記WJヘッドの移動及び超高圧水の噴射を自動的に制御する制御部と、複数の所定の形状および大きさのはつり処理を実行するための制御用データを記憶する記憶部と、複数の形状、大きさ、位置を指定する操作部と、を備え、操作部により指定された前記所定の領域の一部または複数の箇所を、指定した形状および大きさによりはつり処理を行うように構成することも可能である。この構成により、はつり対象となる道路などの劣化状態に応じて、効率的なはつり処理が可能となる。
【0021】
本発明の第1の態様に係る自動はつり工法は、WJ ヘッドを所望の位置に移動させながらウォータージェットノズルから超高圧水を噴射して、道路、橋梁、コンクリートその他の材料で構成された構造物の所定の領域を自動的にはつり処理する自動はつり工法であって、
はつり処理を行う前記WJヘッドの移動範囲全体の側面及び上部を密閉構造の防音カバーで覆ってはつり作業室とし、
前記はつり作業室の外壁となる前記防音カバーの壁面に設けられた密閉構造の第1の接続部を介して外部から内部へ前記超高圧水を供給し、該超高圧水を内部の超高圧水供給路を介して前記ウォータージェットノズルに供給し、
内部の残渣排液吸引パイプで吸引して、前記はつり作業室の前記防音カバーの壁面に設けられた密閉構造の第2の接続部を介して外部に排出することにより、
超高圧水によるはつり処理の騒音の外部への漏洩を抑制したことを特徴とする。
【0022】
本発明の他の態様に係る自動はつり工法は、前記超高圧水供給路は第1の超高圧ホースと第2の超高圧ホースを備え、前記WJヘッドのX方向への移動に合わせて前記第1の超高圧ホースが追随して移動し、前記WJヘッドの前記X方向と直行するY方向への移動に合わせて第2の超高圧ホースが追随して移動することを特徴とする。
また、前記吸引パイプには蒸気その他の気体を吸引する気体吸引部が接続されており、該気体吸引部により前記はつり作業室の内部の気体を吸引して、前記はつり作業室内部を減圧することにより、騒音の防音カバーの外への伝達を抑制しても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、防音カバーを密閉構造とし、超高圧水の供給は第1の接続部を介して行い、内部の残差排液や水蒸気その他の気体の排出は第2の接続部から行うことにより、作業現場に設置可能で騒音抑制効果の高い自動はつり装置を提供することができる。従って、より騒音を抑制でき、深夜でも住宅近くで作業できるだけでなく、作業現場の騒音を抑えた良好な作業環境を提供することができる
また、本発明の他の実施形態によれば、防音カバー内部の超高圧ホースの向きを、WJヘッドの移動の動きに合わせて自動的に調整されるので、人手による超高圧ホースの調整が不要な自動はつり装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明のはつり装置の一実施形態を示す斜視図。
図2】はつり装置の防音扉の一部、その他の扉を開けた状態を示す斜視図。
図3図1に示すはつり装置の天井部分の防音カバーを外した状態を示す平面図。
図4】(a)は本発明のWJヘッドアセンブリの一例を示す側面図であり、(b)は内部(一次)防音カバーとその内部のWJノズルの構成の概要を示す概念図。
図5】高速道路のはつり作業に投入する1単位の作業車両機器の配置の一例を示す図。
図6】X方向ガイド及びモータを付けた状態の本体枠体部の一例を示す斜視図。
図7】防音カバー枠体部の一実施形態を示す斜視図。
図8】(a)防音パネルの構造のカバーフレームへの接続構造の一例を示す部分拡大断面図であり、(b)は特殊ハニカム構造の防音パネルの一例を示す断面図。
図9】防音扉とカバーフレームの密閉構造を示す部分拡大断面図。
図10】防音扉の開閉状態を示す側面図、及びヒンジ(平蝶番)と床面側とのカバーフレーム周辺の濾水構造の一例を示す部分拡大図。
図11図1のはつり装置の正面側と後面側の双方の防音扉、及び接続部蓋を開けた状態を示す左側面図。
図12】(a)は超高圧水の接続部の一例を例示する説明図、(b)は圧縮空気を接続する接続部の一例を説明する図、(c)は排水ホースの接続部の一例を説明する図。
図13】(a)は本発明の一実施形態に係るX-Y移動機構の斜視図であり、(b)は、その駆動原理を示す図である。
図14図13に示すX-Y移動機構の制御方法を説明する図。
図15】はつり作業室の内部の構造を示す側面図。
図16】スイーベルジョイント27の構造の一例を模式的に示す図。
図17】WJヘッドの移動に追随する超高圧水の供給機構の第1の実施例の動きを説明する説明図。
図18】WJヘッドの移動に追随する超高圧水の供給機構の第1の実施例の他の動きを説明する説明図。
図19】WJヘッドの移動に追随する超高圧水の供給機構の第2の実施例の動きを説明する説明図。
図20】WJヘッドの移動に追随する超高圧水の供給機構の第2の実施例の他の動きを説明する説明図。
図21】(a)はノロ及び高温水蒸気の回収、減圧する回収減圧設備を例示する内部構造を単純化して例示した平面図である。(b)は(a)に示すA-A線方向の部分拡大断面図であり、(c)はB-B線方向の部分拡大断面図。
図22】(a)は、はつり装置を模式的に示す平面図であり、(b)は(a)に示している矢印Cの方向からみた防音カバーの駆動ベルトの通過部分を模式的に示す部分拡大図である。
図23】(a)は騒音測定現場の環境及び測定位置等を示す平面図であり、(b)は測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、超高圧水を噴射してはつり処理を行うはつり処理装置に関するものであり、はつり処理に伴う騒音が外部に漏れることを抑制した従来に比べて静粛性の高いはつり処理装置を提供するものである。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態にかかるはつり装置の外観を示す斜視図である。図2図1のはつり装置10の片側(正面側)の2つの防音扉12を開放した状態、及び右側面の調整部扉13と左側面の接続部蓋14及び電源部蓋15をそれぞれ開けた状態を示す斜視図である。図3は、図1の天井部分(上側)の防音カバーを取り除いて内部が見える状態にした平面図である。図4(a)は、ウォータージェットヘッドアセンブリ(本明細書においては「WJヘッド」と称する)を例示する斜視図であり、図4(b)は超高圧水を照射するウォータ―ジェットノズル(以下「WJノズル」と称する)とWJノズルを覆う一次カバー部の構成例を説明するための概念図である。
【0027】
図1に示す通り、本発明の一実施形態に係るはつり装置10では、はつり処理作業を行う領域を含むはつり装置全体を防音カバー11で覆っている。防音カバー11で覆う領域の大きさは、騒音の遮蔽、コスト及び作業性等を勘案した上で、自動的にはつり処理を行う範囲の大きさ、及びはつり処理に必要な内部機構等に応じて、適宜決定することができる。一度の設定で自動的にはつり処理を行う作業範囲は、一般的には1000mm x 1500mm程度であるので、この広さを自動はつり領域の基準の大きさとすると、防音カバー11で覆う範囲はおおよそ、底面が1700mmx2500mm程度、コスト低減の観点からは1500mm程度と低い高さに設定することが好ましい。なお、この寸法は例示であり、要求される作業条件や状況に応じて、これより大きくすることも、小さくすることも自由に選択することが可能である。
【0028】
図1~3等に示す実施形態では、はつり処理作業を行う空間であるはつり作業室40と、制御室41、調整室42の3つの部屋を設けており、各部屋を個別に防音カバー11で覆う構成を例示している。しかし、必ずしも制御室41、調整室42まで防音カバー11で覆う必要はなく、はつり作業室40のみを防音カバー11で覆う構成としてもよい。
【0029】
はつり装置10では、必要に応じてはつり作業室40の内部に入ることができるように、防音扉12が設けられている。本明細書で例示するはつり装置10では、図2に示すようにはつり作業室40の正面側に2つの防音扉12を有しており、後面側にも2つの防音扉12を備えている。防音扉12をどこに何個設けるかは設置作業、調整作業の効率の観点から任意に設定できる。
【0030】
また、上述したように、防音カバー11で覆う高さを1500mm前後と比較的低い場合には、防音カバー11の側面だけが開く防音扉では、内部作業の際には天井に頭が使えてしまう。そのため、防音扉12は、防音カバー11の天井部分の一部も側面の防音カバー11と一体となって開閉される構造とすることが好ましい。図2の例では、防音扉12は、側面と天井の一部の防音カバー11が一緒に上側にはね上がるように開閉される構造となっているが、横方向に開閉する防音扉としてもよい(図示せず)。横方向に開閉する場合でも、防音扉は側面部と天井の一部が一緒に開閉できる構造とすることが好ましい。
【0031】
図3を参照して、はつり装置10のはつり作業室40内の内部構造を説明する。後述するように、制御室41の下側にある接続部蓋14を開けた内部に設けられている第1の接続部20(図11参照)に外側から超高圧ホースが接続されて、超高圧水がはつり装置10の内部に供給される。超高圧水は、第1の接続部20から管路21(図15参照)を介して第1の中継部22に運ばれる。第1の中継部22は、固定部材21aによりX方向ガイド51(図15参照)に固定されており、第1の中継部22には第1の超高圧ホース23の一端が接続されている。第1の超高圧ホース23の他端は、Y方向ガイド52(図13参照)に固定されている第2の中継部24の一端に接続されている。第2の中継部24の他端には第2の超高圧ホース25が接続されており、第2の超高圧ホース25の他端はさらに第3の中継部26に接続されている。第1及び第2の超高圧ホースで運ばれた超高圧水は、第3の中継部26からWJヘッド30を介してWJノズル31a、31b(図4参照)に供給される。管路21、第1の中継部22、第1の超高圧ホース23、第2の中継部24、第2の超高圧ホース25、第3の中継部26が、超高圧水供給路を形成する。X方向ガイド51、Y方向ガイド52については後述する。
【0032】
図4(a)は、WJヘッド30の一例を示す斜視図である。WJヘッド30は上部には回動可能なスイーベルジョイントを備える第3の中継部26が設けられており、ここに第2の超高圧ホース25の一端が接続される。超高圧水は第3の中継部26からWJヘッド30の内部を通り下方のWJノズル31(31a,31b:図4(b)参照)に送られる。WJノズル31a,31bは、側面と上面が第1次防音カバー(内部防音カバー)32に覆われており、超高圧水を下方に噴射してはつり処理を行うために下面のみが開放されている。図4(b)はWJノズル31と内部防音カバー32の構造を模式的に示す側面の断面図である(断面の斜線は省略している)。内部防音カバーの接続構造を示すために内部防音カバー32の構造と留め具を模式的に示し、WJノズル31を破線で示している。
【0033】
WJノズル31は、互いに所定の角度で向き合う2つのWJノズル31a、31bにより構成されており、2つのWJノズル31a、31bは圧縮空気により回転されながらWJノズルの先端から超高圧水を下方に噴射してはつり処理を行う。2つのWJノズル31a、31bによる超高圧水の噴射角度及び圧縮空気によるノズルの回転機構等は、当業者に周知又は公知の技術を適宜使用することができる。内部防音カバー32は、外側の金属部32aと内側の耐衝撃性及び耐水性の樹脂部32bとがボルトとナット34aにより接続されており、金属部32aがボルトとナット34bによりWJヘッド30の躯体33に固定されている。この内部防音カバー32により、はつり処理作業に伴い飛散するコンクリート破片(ガラ)のはつり作業室40内への飛散を抑制し、はつり処理に伴い発生する第1次騒音がはつり作業室40内に広がるのを抑制する。
【0034】
本発明に係るはつり装置は種々のはつり処理作業の工事現場で使用することができるが、代表的な使用例は、高速道路のはつり処理作業である。図5は、高速道路のはつり処理作業現場で使用される設備及び作業車両等の基本構成単位を示す図である。はつり処理作業には、はつり装置10の他に、はつり装置10に供給される超高圧水や圧縮空気を作成するための水源、コンプレッサ、電源等、及びこれらを運ぶための車両やクレーンが必要となる。そのため、図1に示すように、給水車90、ポンプユニット91、コンプレッサ92、発電機93、はつり装置10または組み立てユニットを運ぶクレーン車94、はつり処理作業により発生した排水等を回収する吸引ポンプ車95等が、作業現場に必要な1単位として出動して稼働されることにより、はつり処理作業が行われる。吸引ポンプ車95は、本発明でははつり作業室40内部の減圧処理にも使用される。
【0035】
図1に示す本発明の一実施形態に係るはつり装置10では、はつり処理の作業空間であるはつり作業室40全体を防音カバー11で覆うとともに、さらに制御室41、調整室42も防音カバー11で覆って、はつり処理に伴う騒音をできるだけ外に逃がさない構造としている。図6は、本願発明のはつり装置10全体の基本フレームである本体枠体部16の一実施形態を示す斜視図である。図7は防音カバー11を取り付けるフレームとなるカバー枠体部17の一実施形態を示す斜視図である。いずれの枠体部16,17も、アルミフレーム等の比較的軽い金属材料、または樹脂材料からなるフレーム(本体フレーム16a、カバーフレーム17a)で構成されることが好ましい。
【0036】
カバー枠体部17は本体枠体部16よりも少し大きく、本体枠体部16を完全に覆い、カバー枠体部17が本体枠体部16の本体フレーム16aに固定される構造となっている。図6に示す本体枠体部16の実施形態では、本体枠体部16に、後述するX-Y移動機構のX方向ガイド51が一体的に構成され、2つの駆動モータ55a,55bがX方向ガイド51に固定されている状態を示している。
【0037】
上述の通り、本明細書に示す実施形態のはつり装置10では、はつり領域部分を覆うはつり作業室40と、外部から超高圧ホース等を接続する接続部や超高圧水の圧力や電気機器等の制御部や操作端末等の操作部が設置される制御室41と、搬送ベルトの調整などを行う調整室42の3つの部屋がそれぞれ個別に防音カバー11で仕切られて覆われている(図3、6等参照)。本実施形態では防音効果を高めるために3つの部屋をそれぞれ防音カバー11で覆う構成としているが、これに限らず、はつり作業室40だけを防音カバー11で覆い、他の部分は外壁を設けない構造、または他の部屋の外壁は防音カバー11以外の壁面で区画する構造としても良い。
【0038】
はつり装置10の外面を覆う防音カバー11は、保護プレート11aと防音パネル11cとから構成される。図8図9を参照して、防音カバー11の構成を説明する。図8(a)は、防音カバー11の一部である防音パネル11cの構成と、防音パネル11cのカバーフレーム17aへの取り付け構造を模式的に示す部分拡大断面図であり、図8(b)は、防音パネル11cを構成する吸音層の特殊ハニカム構造の一例を示す断面図である。図9は、防音扉12の一部を模式的に示す部分拡大断面図である。防音扉12は防音カバー11で構成されているので、ヒンジ等を除く主要な構成は防音カバー11と同じである。なお、他の図も同様であるが、特に図8図9及び後述する図10においては、各部の大きさは、各部の構造をわかり易く説明するために強調して描いてあり、実際の寸法比とは異なる。図9はまた、防音扉12とカバーフレーム17aの密閉構造も示している。図8、9に示す構造は一例であり、本発明の防音カバー11及びカバーフレーム17aへの接続構造は、図8、9で示す構成に限定されず、他の構成を採用しても良い。
【0039】
図9に示す本発明の一実施形態に係る防音カバー11は、保護プレート11aと防音パネル11cとで構成されている。防音カバーシート11は、保護プレート11aをはつり作業室40の内部側にして、空隙11bを設けて防音パネル11cに接続された構成となっている。保護プレート11aは、はつり処理作業により発生するコンクリート破片(ガラ)の衝突による防音カバー11の破損、超高圧水や高温水蒸気による劣化を防ぐために、耐衝撃性及び耐水性を有する樹脂などの材料が好ましいが、特に樹脂に限定されるものではない。保護プレート11aは、ボルト11eなどにより、スペーサ11dを介して5mm~15mm程度の空隙(空間)11bを隔てて、防音パネル11cに取り付けられる。防音パネル11cの吸音及び遮音機能に加えて、この空隙11bが防音効果をさらに高める効果を有している。保護プレート11aにより防音カバー11の破損を防ぐとともに、保護プレート11a、空隙11b及び防音パネル11cの三重構造によりはつり作業室40内の騒音が外にもれることを防いでいる。
【0040】
図8、9に示すように、防音パネル11cは内側に吸音板11c1、中央部分に厚い吸音層11c2、外側に遮音板11c3を設けた3層構造となっている。吸音板11c1としては例えばアルミ繊維などの多孔性焼結金属を使用することができる。遮音板11c3としては、アルミ板等の耐水金属プレートを使用するのが好ましい。吸音層11c2は、例えば、図8(b)に例示すように、芯材11c2aにより特殊ハニカム構造を形成し、ハニカム構造の隙間(空間)に吸音材11c2bを埋め込む構造とすることが好ましい。ここで特殊ハニカム構造とは、断面が正六角形に限定されない多角形状、または角のない変形した形状の空洞を芯材により作成して、多数並べた形状をいう。芯材11c2aとしては、例えば、セラミックを含侵したセラミックペーパーなどの耐水性を有する含侵加工紙その他の材料を使用することができる。また、吸音材11c2bとしては従来から存在する多種のものを使用することができ、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン等の発砲樹脂などを使用することができる。また、芯材の形状もハニカム構造に限定されず、段ボール状の形状やアコーディオン形状など、吸音効果の高い周知、公知の構造とすることもできる。
【0041】
図8(a)を用いて、防音パネル11cのカバーフレーム17aへの取り付け構造の一例を説明する。図8(a)に示すように、カバーフレーム17aには、挿入ガイド17bが取付ボルト17cにより固定されており、この挿入ガイド17bに防音パネル11cをスライド挿入することにより、防音パネル11cがカバー枠体部17全体に取り付けられて、はつり装置10全体が防音パネル11cで覆われる。図8ではわかり易くするために、取付ボルト17cの頭部が防音パネル11c側に突出している状態を示しているが、取付ボルト17cは挿入ガイド17b内に埋め込まれるように構成することが好ましい。
【0042】
防音パネル11cをカバーフレーム17aにスライド挿入して取り付けた後に、保護プレート11aが、スペーサ11dを介して防音パネル11cにボルト11e等により固定される。はつり装置10は防音カバー11が取り付けられた状態ではつり作業現場に運搬し、クレーン車によりはつり作業現場に設置しても良いが、図6,7に示すような本体枠体部16及びカバー枠体部17を結合した枠体だけの状態、またはX-Y移動機構50まで取り付けた状態ではつり作業現場に運び、で防音カバー11、その他の装置を作業現場で組み立てるようにしても良い。
【0043】
図9に、防音扉12の下側部分と、防音扉12と協働するカバーフレーム17aの防音及び濾水防止構造を例示する。カバーフレーム17aの上部には防音扉12の内側への過度の移動を停止するストッパー43a、防音扉12とストッパー43aとの間の気密性を維持するための密閉ゴム43bが設けられている。防音扉12は図10に示すように、図9の右側方向に跳ね上がるように回動して大きく開放され、閉じるときの停止位置はストッパー43aにより規制される。カバーフレーム17aの外側には側部止水ゴム43cが設けられており、さらに下側には底部止水ゴム43dが設けられている。カバーフレーム17aの下側の底部止水ゴム43dは、はつり装置10が設置される床面と密着して、微小コンクリート破片と水の混ざった残渣排液(ノロ)が内側から外側に漏れ出すのを防止するとともに音漏れを防止するものであり、側部止水ゴム43cはさらにその外側で濾水を防止している。
【0044】
図10は防音扉12のヒンジ(平蝶番)12aと、床面側のカバーフレーム17a近辺の濾水構造の一例を示す部分拡大図である。防音扉12を閉じた状態を実線で示し、開く途中の段階にある防音扉12を破線で示している。図10の上部に示すように、天井部分のカバーフレーム17aと防音扉12の遮音板11c3がヒンジ12aにより接続されて、防音扉12がヒンジ12aを中心に上下方向に回動可能となっている。ヒンジ12aの反対側には回動停止部材12bがカバーフレーム17aに固定されて防音扉12側に突出しており、突出部上に遮音ゴム12cが設けられている。防音扉12が、上部に回動して開放されると、はつり作業室40内にアクセスすることができる。
【0045】
防音扉12が閉じたときには、防音扉12の下部がカバーフレーム17aの上に隙間なく入り込み、密閉ゴム43bによりカバーフレーム17aとの当接部における騒音漏れや蒸気漏れを防止している。カバーフレーム17a、ストッパー43a、側部止水ゴム43c、底部止水ゴム43dの構造は図9と同様である。図10では、後述する吸引パイプ62を例示している。吸引パイプ62は、はつり装置10の周囲を取り囲むように配置され、ノロや高温水蒸気を吸い込み排出する。
【0046】
図11図1に示すはつり装置10の左側面図であり、図2に示すように接続部蓋14を開け、さらに正面側と後面側の双方の防音扉12をいずれも開けた状態を示している。図11では、各接続部の位置を例示しており、左下の一番左側の接続部は、外部から超高圧ホースを接続するための第1の接続部20であり、一番右側の接続部は残渣排液等を吸引する第2の接続部61であり、中央の接続部は、圧縮空気を供給するための第3の接続部46である。
【0047】
各接続部20、46、61の配置の順序は任意に設定できる。またこれらの各接続部20,46,61の位置は、はつり装置10の左側面に限定する必要はなく、右側、又は左右双方に設けて良い。さらにはつり装置10の作業現場の状況に応じていずれの方向からでも超高圧水を供給できるように、左右双方、前後等に接続部を複数設けても良い。また、圧縮空気を使用してWJノズル31a,31bを回転させない場合等のように、圧縮空気を利用しない場合には、必ずしも第3の接続部46を設ける必要はない。
【0048】
図12に、第1~第3の接続部20、61、46の例を示す。図12(a)は、第1の接続部20の構造の一例を示す側面図であり、左側は外部超高圧ホース85の接続端部85aであり、この接続端部85aを右側の第1の接続部20に挿入して、ナット85bにより固定する。外部超高圧ホース85の他端部(図示せず)はポンプユニット91に接続されており、ポンプユニット91から超高圧水がはつり作業室内部に供給される。
【0049】
超高圧水は、第1の接続部20からはつり装置内部に投入され、はつり作業室40内の第1の中継部22まで運ばれて、そこから第2の中継部24及び第3の中継部26を介してWJヘッドまで供給される。超高圧水と圧縮空気はそれぞれ同じ中継ルートを介して供給することが好ましいが、異なるルートを介して供給しても良い。図12(b)は圧縮空気を供給する第3の接続部46の接続構造を示す図であり、コンプレッサ92に接続されている左側の外部圧縮空気ホースの端部86aを、右側の第3の接続部46に挿入することにより接続固定され、圧縮空気が内部に供給される。
【0050】
図12(c)は後述するノロや水蒸気を外部に排出する排水ホースの接続部である第2の接続部61の構造を説明する図である。第2の接続部61には、外部からノロ等を吸引するための外部排水ホース87が接続される。外部排水ホースの他端は吸引ポンプ車95に接続されて、吸引ポンプ車により吸引されている。第2の接続部61に、外周にねじ山が設けられた内部排水ホース61aが固定されており、外部排水ホース87にも外周に内部排水ホース61aと同じねじ山が設けられている。また、第2の接続部61には、内周に同じねじ山を備えるナット状のホース接続部材61cを備えており、外周排水ホースの端部87aと内部排水ホースの端部61bとを突き合わせて、ホース接続部材を回転させることにより、両ホース87と61aとが接続される。
【0051】
次に、WJヘッドをX-Y方向に移動させるX-Y移動機構について説明する。
図13(a)は本発明の一実施形態に係るX-Y移動機構の斜視図であり、図13(b)は、その駆動原理を示す図である。X-Y移動機構50は、平行に伸びている2つのX方向ガイド51と、2つのX方向ガイド51の間に装荷されてX方向ガイド51に沿ってスライド移動可能であるY方向ガイド52を備えている。X方向ガイド51は、本体フレーム16aに固定された「固定ガイド」であり、Y方向ガイド52は2つのX方向ガイド51に装荷された2つのガイドが互いに接続固定されて一体となってX方向に移動する「移動ガイド」である。
【0052】
Y方向ガイド52はY方向ガイド52に沿ってスライド移動可能な移動台部(ステージ)53を備えている。移動ガイドであるY方向ガイド52にはさらに、第2の中継部24が固定されており、第2の中継部24はY方向ガイド52の移動に伴い、Y方向ガイド52とともにX方向に移動する。移動台部53には第3の中継部26及びWJヘッド30が固定されており、第3の中継部26及びWJヘッド30は移動台部53とともにはつり領域45の上をX方向及びY方向に移動する。
【0053】
本実施形態で例示するX-Y移動機構50は、図13(b)に示す通り、プーリ56a~56hを介してX-Y軸を一本の駆動ベルト54でリンクした平面ガントリ機構であり、2つの駆動モータ55a、55bの回転方向の組み合わせにより、X方向、Y方向、及び斜め方向への自由移動が可能である。図14に示す表を用いて、移動台部53の移動について説明する。図14において、時計回りを正転、反時計回りを逆転として説明する。図14の表に示す通り、2つの駆動モータ55a及び55bを同時に正転させると移動台部53は図14のY方向上側(-Y方向とする)に向かって移動し、双方を同時に逆転すると移動台部53はY方向下側(+Y方向)に向かって移動する。駆動モータ55aを逆転させ、55bを正転させるとX方向右側(+X方向とする)に向かって移動し、駆動モータ55aを正転させ、55bを逆転させるとX方向左側(-X方向)に向かって移動する。また、片方の駆動モータのみを駆動することにより斜めに移動することができる。これにより図14に示すような所定のはつり領域45上の任意の位置に移動することができる。
なお図13、14に示すようなX-Y移動機構50は、フェスト株式会社より「平面ガントリEXCM」として販売されている。
【0054】
WJノズルには超高圧ホースを介して超高圧水が送りこまれるが、超高圧ホースには超高圧水の高い圧力がかかっているために、超高圧ホースを簡単に曲げることはできず、特に小さな曲率半径で曲げることは難しい。そのために、特許文献1などの従来技術のはつり装置においては、X-Y方向に移動するWJノズルの移動位置に合わせて防音シートの外側から細長い開口部を設け、該開口部を介して、ノズルの移動に追随して超高圧ホース(管)を左右に移動させることができるようにしていた。そのため、特許文献1では、超高圧ホース(管)を送り込み又は引き出すために、はつり領域の横幅とほぼ同等の長さの横に長い開口窓が必要であり、この細長い開口窓を介して超高圧ホースを移動させており、そのため開口部から大きな騒音が漏れていた。
これに対して、本発明では以下のように構成して、開口窓を設けることなく、WJヘッドの移動に合わせて、第1、第2の超高圧ホース23、25が自動的に屈曲して追随することを可能としている。
【0055】
図3図13及び図15を用いて、本発明のはつり装置10における接続部20からWJノズル31a、31bまでの超高圧水の供給について説明する。図15は、はつり作業室40の内部の構造を示す側面図である。図15に示すように、管路21は接続部20からはつり領域内部(はつり作業室40)に少し入った位置から上方に立ち上がっており、X方向ガイド51よりも少し上方の位置で水平方向に曲げられてX方向ガイド51と並行に中央部に向かって第1の中継部22まで伸びている。管路21の先端である第1の中継部22は、本体フレーム16a(図3参照)に固定されている。第1の中継部22から第3の中継部26までの中継経路については既に説明した通りであるが、中継経路はWJヘッド30の移動に伴い変化するのでさらに詳細に説明する。
【0056】
WJヘッド30のX-Y方向の移動に伴い、第1及び第2の超高圧ホース23、25が適切に追随する構成を、図16図20を参照しつつ詳細に説明する。
第1の超高圧ホース23は、WJヘッド30のX軸方向への移動に対応して追随するために設けたものであり、第2の超高圧ホース25はWJヘッド30のY軸方向への移動に追随するために設けたものである。WJヘッド30の移動に伴う第1の超高圧ホース23及び第2の超高圧ホース25の変形時の曲率半径が小さくなりすぎないようにするためには、まず、第1の中継部22と第2の中継部の固定位置が重要である。
【0057】
結論から述べると、図17(a)に示すように、管路21の長さがX方向ガイド51の長さの1/4~1/2となる位置に固定し、第2の中継部を、第1の中継部22側からY方向ガイド52の長さの1/4~1/2の位置に固定するのが好ましい。この位置に固定することにより第1の超高圧ホース23、第2の超高圧ホース25の曲率半径が小さくなりすぎず、かつホースの長さを適正にすることができる。
【0058】
さらに、WJヘッド30の移動に伴って追随する超高圧ホースの曲げ部分の曲率半径が小さくなりすぎないようにするためには、第2の中継部24及び/又は第3の中継部26を構成する接続継手として、図15の上下方向を回転軸として接続部の角度を自由に変えることができる回動可能な継手(本発明では、「スイーベルジョイント」と称する)を備えることが好ましい。図16にスイーベルジョイント27の構造の一例を模式的に示す。スイーベルジョイント27は、固定されている中継管27bに回動可能に接続される継手27aと、中継管27bと継手27aの接続部分で超高圧水が漏れないように封止する封止部27cにより構成されている。したがって、継手27aは中継管27bを軸として時計方向又は半時計方向に回動可能である。
【0059】
以下、図17~20を参照して、はつり作業室40内において、WJヘッド30の移動に追随する超高圧水の供給機構の実施例を説明する。
図17及び図18では、第1の中継部22の位置を、X方向ガイド51の1/3程度の位置に固定し、第2の中継部24をY方向ガイド52の1/3程度の位置に固定した実施例(第1の実施例)を示している。また、第3の中継部26にスイーベルジョイントを採用して、WJヘッド30のY軸方向への移動に伴う第2の超高圧ホースの曲率半径が小さくならないようにした例を示している。なお、図17を除き、管路21は省略している。
【0060】
図17は、WJヘッド30のX軸方向の移動に追随する場合の第1の超高圧ホース23の変形状態を例示している。第1の中継部22、第2の中継部24が第1の実施例の位置にある場合には、WJヘッド30が図17(a)の位置から、図17(b)の位置にX軸方向に移動する場合、第1の超高圧ホース23には無理な変形は見られない。すなわち、第1の超高圧ホース23は、逆さJ字状の形状から逆さU字状に変形し、反対方向の辺が伸びた逆さJ字状に変形するだけですると、曲率半径に大きな変化はみられない。また、第1の超高圧ホース23の長さもほぼX方向ガイド51と同程度の長さとすることにより、余分な弛みも生じない。これは、多少の差はあるものの、第1の中継部22をX軸方向1/4~1/2範囲内で変更してもあまり大きな変化はみられない。第2の中継部24の位置をY軸方向1/4~1/2の範囲内で変更した場合も同様である。
【0061】
図18は、第1の実施例におけるWJヘッド30のY軸方向の移動に追随する第2の超高圧ホース25の変形状態を例示している。第2の中継部24と第3の中継部26の距離が比較的近いため、WJヘッド30の移動位置によっては、第2の超高圧ホース25の曲率半径が小さくなるおそれがある。そのため第3の中継部26をスイーベルジョイント27として、曲率半径が小さくなることを防いでいる。この点については、図19図20に一例として示すように、第2の中継部24と第3の中継部26の距離を離すことにより、スイーベルジョイントを設けなくとも、曲率半径が小さくなることを防止することが可能となる。
【0062】
図19図20は、WJヘッド30の移動に追随する超高圧水の供給機構の他の実施例(第2の実施例)を示す。第1の実施例と異なるのは、第2の中継部24をY方向ガイド52の第1の実施例とは反対側に設けるとともに、取付部材24cを少し長くして第2の中継部24と第3の中継部26との距離が遠くなるようにしている。これにより、第3の超高圧ホースの曲率半径を大きくすることができる。また、第3の中継部26だけでなく、第2の中継部24の第1の超高圧ホースが接続される接続端部24aをスイーベルジョイント27にしている。
【0063】
第2の実施例では、第1の中継部22と第2の中継部24の相対位置が変わるので、ホースの変形状態が第1の実施例とは異なってくる。WJヘッド30の位置が図19(a)の位置では、逆U字状であるが、(b)の位置に移動すると、逆L字状となり、曲率半径を維持することができる。なお、第2の実施例のように、取付部材24cを長くすることにより、後述するように、第2の超高圧ホース25の曲率半径を大きくできるというメリットが得られる。しかし、第2の中継部24がY方向ガイド52から大きく突出している分、はつり作業室40を大きくする必要がある。
【0064】
さらに、第2の中継部の接続端部24aをスイーベルジョイント27とすることにより、接続端部24aの角度を90度変化させてWJヘッド30の動きに追随することができる。しかし、第2の中継部の接続端部24aがスイーベルジョイントにしない場合には、図17(b)に示すような逆J字状に変形する必要があるため、第1の超高圧ホース23をより長くする必要がある。第1の超高圧ホースが長くなると、外側に突出する逆J字状の変形部分を覆うために、はつり作業室40をさらに大きくすることが必要となる。
【0065】
図20は、第2の実施例において、WJヘッド30がY軸方向に移動する場合の第2の超高圧ホース25の変形を説明する図である。第2の実施例のように、比較的長い取付部材24cを用いることにより第2の中継部24と第3の中継部26の距離を比較的大きくとると、第2の超高圧ホースの曲率半径を大きい状態に維持することが容易となる。第2の実施例においても、第1の中継部22をX軸方向1/4~1/2範囲内で変更し、第2の中継部24の位置をY軸方向1/4~1/2の範囲内で変更してもほぼ同様の結果をえることが可能である。
【0066】
図17図20では、スイーベルジョイントを第3の中継部26、第2の中継部24の接続端部24aに採用する例を示したが、これらの部位に加えて又はこれらの部位に代えて、他の部位にスイーベルジョイントを採用することも可能である。
【0067】
本発明のはつり装置では、超高圧水を衝突させてコンクリート等を破壊するため、破壊されたコンクリート塊(ガラ)や微細コンクリートの残渣排液(ノロ)が排出されるとともに、超高圧水の衝突により高温の水蒸気が発生する。本願発明のようにはつり作業室40を完全に覆う場合、ノロや高温の水蒸気を外部に排出する必要がある。そのため、はつり作業室40内に図21に例示するようなノロ及び高温の水蒸気の回収設備を設けて、第2の接続部61から吸引して回収している。
【0068】
図21(a)は、はつり作業室40内のノロ及び高温水蒸気を回収し、はつり作業室40内を減圧する吸引機構からなる吸引排出路60を例示する内部構造を単純化して示す平面図である。図21(b)は図21(a)のA-A線方向の部分拡大断面図であり、図21(c)はB-B線方向の部分拡大断面図である。図21からわかるように、吸引排出路60は、ノロを吸い込み回収するための複数の吸引穴または吸引スリット62aを有する互いに接続された一連の吸引パイプ62を備えている。図21のA-A線の部分拡大断面図に示すように、吸引パイプ62はT字継手63部分で立ち上がりT字継手63を介して第2の接続部61の内部排水ホース61aに接続されている。第2の接続部61には外部の吸引ポンプ車95に繋がっている外部排水ホース87(図12参照)が接続されて、吸引パイプ62の吸引スリット62aを介してはつり作業室40内のノロを吸引して回収する。吸引パイプ62は複数の吸引スリット62a等の吸引部を備えている。
【0069】
また、図21(a)のA-A線の部分拡大断面図である図21(b)に示すように、T字継手63の上方には調整バルブ65を備える蒸気吸引パイプ64が設けられ、ここから高温の水蒸気等が吸引されて回収する。図21では蒸気吸引パイプ64は1か所しか例示していないが、蒸気吸引パイプ64も複数設けることができる。この蒸気吸引パイプ64は、蒸気に限らずはつり作業室40内の気体を吸引する気体吸引部を構成しており、はつり作業室40内を一定程度減圧することにより騒音を抑制する減圧機構の機能も有している。調整バルブ65によりはつり作業室40内をどの程度減圧するかを調整することができる。また、吸引パイプ62の下面外側にはパイプ止水ゴム62bが設けられて、ノロが外部に漏れ出すことを防止しており、本体フレーム16aの下面にも防音扉12の下側のカバーフレーム17aの下側同様に、床面96との間に2重に底部止水ゴム43dが設けられている。
【0070】
また、B-B線部分拡大断面図に示すように、吸引パイプ62には複数の箇所に吸引パイプ62を床面に押圧する押圧部材66が設けられている。押圧部材66は一端が吸引パイプに固定され、他端が弾性部材67により床面96側に付勢されており、吸引パイプ62を弾性部材67により、常に床面に押圧して、ノロが外部に漏れ出すことを防止している。
【0071】
特許文献1にも開示されているように、従来のX-Y移動機構では、移動台をX-Y方向に自由に移動させるための少なくとも1つの駆動モータが防音シート内に設置されている。しかし、前述した通り、超高圧水によるはつり装置では、はつり作業室40内部は水と水蒸気が充満した高湿度で大小のガラが飛散する環境である。このような環境に電気機器を配置すると故障や漏電の可能性が高くなり、機器の劣化も早くなる。そのため、はつり作業室40には、できるだけ電気配線や電気機器を配置しないことが好ましい。
【0072】
そこで、図1乃至図3等に示す本発明一実施形態に係るはつり装置10では、前述したようなX-Y移動機構50を採用して、駆動モータ55aと55bをはつり作業室40から隔離された制御室41に配置している。このように、駆動モータ及びその配線をはつり作業室40の外に配置することにより、内部の劣悪環境下に配置する場合にくらべて駆動モータ55a、55bとその電気配線の劣化や故障のリスクを抑制することが可能となる。
【0073】
また、本発明の実施例では、X-Y移動機構50の駆動ベルト54のテンションを監視し調整等を行う調整機構(図示せず)もはつり作業室40とは別の調整室42内に配置している。これにより、自動はつり作業中に、はつり作業室40を密閉した状態で駆動ベルト54の点検や監視及び調整が可能となる。
【0074】
なお、本実施形態では、駆動モータ55a、55bとその配線の劣化防止や作業性に観点から、駆動モータ及び調整機構をはつり作業室40の外に配置するようにしたが、騒音防止の観点からは、はつり作業室40のみを防音カバー11で覆うだけでも十分効果がある。なお、劣悪環境ではあるものの、正確な動作の監視や作業モニタの観点からは、はつり作業室内部の状況を監視するセンサ、カメラなどを、必要に応じて、はつり作業室40内に設ける構成としても良い。
【0075】
駆動モータ55a,555b及び/又は調整機構をはつり作業室40の外に配置する場合、例えば図22に示すような構造を採用することにより、はつり作業室40の密閉性を確保することができる。図22(a)は、はつり装置10を模式的に示す平面図である。図22(b)は、図22(a)に示す矢印Cの方向(はつり作業室40の内部側)からみた防音カバー11の駆動ベルト54の通過部分を模式的に示す部分拡大図である。
【0076】
防音カバー11には駆動ベルトが出入りするために、1か所につき図22(b)に示すような2つの1組の通過穴44a、44bを設け、各通過穴44a、44bにはそれぞれ両側から駆動ベルト54を挟むように2つのブラシ47a、47bが設けられている。ブラシ47aと47bの毛48aと48bはそれぞれ駆動ベルト54の表面と裏面に当接して、ガラやノロその他のごみを取り除いている。駆動ベルト54の幅(図における高さw)は、25mm程度であり、通過穴44a、44bの高さh1と横h2の大きさは駆動ベルト54の幅Wよりも僅かに大きい程度であるので、機密性は十分確保される。制御室41に駆動モータ55a、55bを配置し、調整室42に調整機構を設ける場合には、このような一組の通過穴44a,44bが、4組設けられる。駆動モータのみ制御室に配置する場合には、通過穴44a,44bは制御室側の防音カバーのみに2組設けられる。
なお、X-Y駆動機構の駆動モータをはつり作業室40の外に配置することは必須ではなく、はつり作業室40内に配置しても良い。その場合、WJヘッドを移動させるX-Y駆動機構としては、特許文献1に示すような従来技術や周知、慣用技術を用いることができる。
【0077】
本発明のはつり装置10では、例えば、1000mm × 1500mmのはつり領域45(図14参照)を防音カバー11で覆いはつり作業室40として密閉して、自動的にはつり処理を行う。そのため、予めどの部分をどの程度ではつり処理するかを調べ、それに基づいてはつり領域を設定し、X-Y移動機構の移動台部53の動きとWJノズル31を制御して、設定されて領域を設定された形状及び深さではつり処理を行う。
【0078】
基本的には、このような制御は、CPUと、記憶部と、記憶部に予め記録されたプログラムを備えた制御装置(図示せず)に、所定の設定入力を行うことにより、指定された箇所ごとに長方形、三角形、ひし形、その他自由な形状の自由な大きさはつり箇所の指定、及びはつり処理の深さの設定が可能となる。具体的には、制御装置により、駆動モータ55a、55bを回転駆動する方向及び駆動量並びに駆動タイミングや速度を制御することにより、WJノズル31の移動場所と移動速度を制御し、必要に応じて、WJノズル31の噴射タイミングと超高圧水の圧力も制御することにより、所望のはつり処理を実行することが可能となる。
【0079】
自動制御を行うにあたり、WJノズルの現在位置は、駆動モータ55a,55bの駆動データに基づいて把握することができる。また、必要に応じて、移動台部やWJノズルの位置を検出する各種センサや、作業状況を把握するカメラ等をはつり作業室40内に設置するようにしても良い。また、長方形、三角形、ひし形、円形、楕円形等の典型的な形状を制御する制御データ及び制御プログラムを予め記憶しておき、希望の形状を選択して座標、大きさ、傾斜角度等の数値を入力するだけで所望の箇所を所望の形状ではつり処理できるように構成することもできる。また、事前に取得した座標データを自動入力することや、はつり処理する形状を手書きで図形入力することにより、はつり処理箇所を指定できるように構成することも可能である。
【0080】
図23に、本発明の一実施形態であるはつり装置10の作業現場における騒音防止効果を検証するため、模擬工事現場を設定して、騒音を測定した結果を示す。(a)は騒音測定現場の環境及び測定位置等を示す平面図であり、(b)は測定結果を示す表である。はつり装置のみ稼働した状態で防音扉12を開放したときと防音扉12を閉じたときの騒音の測定結果と、全機材を稼働したときの騒音の測定結果等を示している。
【0081】
測定は以下の環境及び条件にて行った。
測定機器:デジタル騒音計 シンワ(周波数特性 dbA:A特性音圧レベルLa)
測定場所日進機工技術センター(周囲通常作業有=暗騒音あり)
超高圧水噴射圧力:230MPa
噴射流量 :23L/分
測定場所:図23(a)のAライン,Bラインの各地点(地上1mの高さでの測定)
【0082】
実際の作業現場においては、吸引車、ポンプ車も騒音を発生するため、測定は、はAラインとBラインの各地点で測定した。図23(b)に示す通り、Aラインの測定では、はつり装置10のみを可動させて4個の防音扉をすべて開放してはつり装置のみを稼働させた状態と、防音扉をすべて閉じてはつり装置10のみを稼働させた状態と、吸引車、ポンプ車を含むすべての機材を稼働させた状態の3つの状態の騒音を測定している。Bラインの測定では、防音扉を閉じてすべての機材を稼働させた状態のみ測定している。
【0083】
図23(b)のはつり装置10のみ稼働させたときの測定データからわかる通り、防音扉12を開いたときに比べて防音扉を閉じたときには、装置から5m近傍では測定値が91.5dbと67dbであり騒音を約25db抑制でき、25m離れた位置での測定値が76.3dbと66.9dbであり約10dbの騒音抑制効果を得られることが観測された。これは暗騒音が51~56dbあることを考慮すると、大きな騒音抑制効果があることがわかる。全機材稼働状態でも、Aラインはほぼ70db程度に抑制されている。Bラインの騒音が大きいのは、吸引車(吸引ポンプ車)等の騒音の影響だと思われる。
【0084】
なお、以上説明した本発明の実施形態では、防音カバー、X-Y移動装置、超高圧水供給路の構成、吸引排水路など各種の構成を複数例示しているが、これらは本明細書または図面に明示的に開示した組み合わせだけでなく、それぞれを適宜組み合わせた構成とすることができる。
【符号の説明】
【0085】
10 はつり装置
11 防音カバー
12 防音扉
16 本体枠体部
17 カバー枠体部
20 第1の接続部
21 管路
22 第1の中継部
23 第1の超高圧ホース
24 第2の中継部
25 第2の超高圧ホース
26 第3の中継部
27 スイーベルジョイント
30 ウォータージェットヘッドアセンブリ(WJヘッド)
31 ウォータージェットノズルド(WJノズル)
40 はつり作業室
41 制御室
42 調整室
50 X-Y移動機構
51 X方向ガイド(固定ガイド)
52 Y方向ガイド(移動ガイド)
55a、55b 駆動モータ
60 吸引排出路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23