(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】信号機認識方法及び信号機認識装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20240808BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240808BHJP
G06T 7/90 20170101ALI20240808BHJP
G08G 1/095 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G08G1/09 D
G06T7/00 650A
G06T7/90 C
G08G1/095
(21)【出願番号】P 2021003866
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊彦
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-97018(JP,A)
【文献】特開2021-2275(JP,A)
【文献】特開2009-43068(JP,A)
【文献】特開2012-98967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0299893(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
G06T 7/00
G06T 7/90
G08G 1/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された撮像部を用いて、前記車両前方の画像を撮像し、
前記撮像部から入力される前記画像を処理するコントローラが、
前記画像に基づいて、前記画像内に存在する信号機の矢印の灯火の向き、及び前記画像内における前記矢印の灯火の位置を検出し、
前記矢印の灯火の向き及び位置に基づいて、前記信号機の赤色の灯火が存在すべき参照領域を、前記画像に設定し、
前記参照領域に前記赤色の灯火が存在するか否かを判定し、
前記参照領域に前記赤色の灯火が存在すると判定した場合に、検出された前記矢印の灯火の向きを、前記車両前方の信号機の現示として認識する
信号機認識方法。
【請求項2】
前記コントローラが、
前記画像における前記矢印の灯火の大きさに基づいて、前記画像に設定する前記参照領域の大きさを設定する
請求項1記載の信号機認識方法。
【請求項3】
前記コントローラが、
検出された前記矢印の灯火の向きが上向きである場合、前記参照領域を設定することなく、検出された前記矢印の灯火の向きを、前記車両前方の信号機の現示として認識し、
検出された前記矢印の灯火の向きが右向き又は左向きである場合には、前記参照領域に前記赤色の灯火が存在するか否かを判定した上で、前記車両前方の信号機の現示として認識する
請求項1又は2記載の信号機認識方法。
【請求項4】
前記コントローラが、
前記参照領域に、前記赤色の灯火に対応する色度を有する複数の画素が存在すると判定した場合に、前記参照領域に前記赤色の灯火が存在すると判定する
請求項1から3いずれか一項記載の信号機認識方法。
【請求項5】
前記コントローラが、
前記複数の画素の集合である集合画素の形状を判定し、
前記集合画素の形状と、前記信号機における前記赤色の灯火の形状との類似度が所定の判定値以上である場合に、検出された前記矢印の灯火の向きを、前記車両前方の信号機の現示として認識する
請求項4記載の信号機認識方法。
【請求項6】
車両に搭載されて、前記車両前方の画像を撮像する撮像部と、
前記撮像部から入力される前記画像を処理するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、
前記画像に基づいて、前記画像内に存在する信号機の矢印の灯火の向き、及び前記画像内における前記矢印の灯火の位置を検出し、
前記矢印の灯火の向き及び位置に基づいて、前記信号機の赤色の灯火が存在すべき参照領域を、前記画像に設定し、
前記参照領域に前記赤色の灯火が存在するか否かを判定し、
前記参照領域に前記赤色の灯火が存在すると判定した場合に、検出された前記矢印の灯火の向きを、前記車両前方の信号機の現示として認識する
信号機認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号機認識方法及び信号機認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、信号機の矢印の灯火の方向を認識する運転支援装置が開示されている。この運転支援装置は、車両の前方を撮影した画像に基づいて、矢印の灯火の向きである第1の方向と自車両が進もうとしている第2の方向とを対比する。運転支援装置は、第1の方向と第2の方向とが一致していないと判定した場合に、自車両の運転者に対して所定の運転支援を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、実際の交通環境において車両の前方を撮像した画像には、車両の前方に存在している信号機の実像の他、建物の窓ガラス又は大型トラックの車体側面などの反射面に反射した信号機の鏡像が含まれることがある。このため、信号機の矢印の灯火が反射面に反射した鏡像であるのか実像であるのかを判別して、信号機の矢印の灯火を精度よく認識する必要があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、信号機の矢印の灯火を精度よく認識することができる信号機認識方法及び信号機認識装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る信号機認識方法は、車両前方の画像を処理するコントローラが、画像内に存在する信号機の矢印の灯火の向き及び画像内における矢印の灯火の位置を検出し、矢印の灯火の向き及び位置に基づいて信号機の赤色の灯火が存在すべき参照領域を画像に設定し、参照領域に赤色の灯火が存在するか否かを判定し、参照領域に赤色の灯火が存在すると判定した場合に、検出された矢印の灯火の向きを車両前方の信号機の現示として認識する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、信号機の矢印の灯火を精度よく認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る信号機認識装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る信号機認識方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る信号機認識方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5A】
図5Aは、左向きの矢印の灯火を基準に参照領域を設定する処理を説明する説明図である。
【
図5B】
図5Bは、右向きの矢印の灯火を基準に参照領域を設定する処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1を参照して、本実施形態に係る信号機認識装置の構成を説明する。信号機認識装置は、撮像部10と、コントローラ30とを備えている。コントローラ30は、有線通信又は無線通信により、撮像部10と接続されている。また、コントローラ30は、有線通信又は無線通信により、運転支援装置50に接続されている。
【0011】
撮像部10、コントローラ30及び運転支援装置50は、図示しない車両に搭載されている。コントローラ30は、車両の外部に設置されるものであってもよい。
【0012】
撮像部10は、車両の進行方向、例えば車両前方の画像を撮像する。撮像部10はCCD、CMOS等の固体撮像素子を備えたデジタルカメラであり、車両の周囲を撮像して周辺領域の画像データを取得する。撮像部10は、焦点距離、レンズの画角、カメラの垂直方向及び水平方向の角度などが設定されることにより、車両前方の所定の範囲を撮像する。
【0013】
撮像部10によって撮像された画像は、コントローラ30に入力され、図示しない記憶部に記憶される。撮像部10は所定の周期で画像を撮像しており、コントローラ30に画像が順次入力される。
【0014】
コントローラ30は、撮像部10から入力される画像を処理する。コントローラ30は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータであり、制御装置または処理装置の一例である。コントローラ30には、コントローラ30を信号機認識装置の一部として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ30は、信号機認識装置が備える複数の情報処理回路として機能する。
【0015】
コントローラ30は、複数の情報処理回路として、矢印灯火検出部31、走行経路取得部32、参照領域設定部33、形状判定部34、及び矢印灯火認識部35を備えている。
【0016】
矢印灯火検出部31は、画像内に存在する信号機の矢印の灯火を検出し、その矢印の灯火の向き及び画像内における矢印の灯火の位置を検出する。走行経路取得部32は、車両の走行経路を取得する。
【0017】
信号機の矢印の灯火は、赤色の灯火とともに発せられる。参照領域設定部33は、矢印の灯火の向き及び位置に基づいて、信号機の赤色の灯火が存在すべき参照領域を画像に設定する。そして、参照領域設定部33は、参照領域に赤色の灯火が存在するか否か、すなわち、参照領域に赤色に対応する画素が存在するか否かを判定する。
【0018】
形状判定部34は、参照領域に赤色の灯火が存在すると判定した場合、参照領域における赤色の灯火の形状が、信号機における赤色の灯火の形状と類似するか否を判定する。
【0019】
矢印灯火認識部35は、参照領域に赤色の灯火が存在し、かつ、参照領域における赤色の灯火の形状が信号機の灯火形状と類似する場合に、矢印灯火検出部31が検出した矢印の灯火の向きを、車両前方の信号機の現示として認識する。そして、矢印灯火認識部35は、矢印灯火認識部35によって認識された矢印の灯火の向きを、運転支援装置50に出力する。
【0020】
運転支援装置50は、コントローラ30によって得られた信号機の認識結果に基づいて、図示しない車両の走行を支援する運転支援を行う。運転支援は、例えば、所定の走行経路に従って自動運転によって車両を走行させるものであってもよいし、車両の乗員の運転操作を支援するものであってもよい。また、運転支援は、ヒューマンインターフェース(表示装置及びスピーカ)を制御して、信号機の認識結果を車両の乗員に通知するものであってもよい。
【0021】
運転支援装置50は、コントローラ30から独立したハードウェアで構成する必要はない。コントローラ30が備える複数の情報処理回路の一つとして、運転支援装置50が実行する機能を実現してもよい。
【0022】
図2Aを参照し、信号機について説明する。
図2Aに示す信号機100は、いわゆる横型の信号機であり、三灯式の信号機本体110と、矢印式の信号機本体120とを備えている。
【0023】
三灯式の信号機本体110は、3色の色信号、例えば、青信号、黄信号及び赤信号を表す色の灯火を行う装置である。三灯式の信号機本体110は、青色灯器111、黄色灯器112、及び赤色灯器113を備えている。3つの色灯器111、112、113は横方向に沿って並んでいる。青色灯器111は左端に位置し、黄色灯器112は中央に位置し、赤色灯器113は右端に位置している。各色灯器111、112、113の並びは、交通法規等によって予め定められている。
【0024】
青色灯器111は、内部に光源が収められて、青色の灯火を行う灯器である。青色灯器111によって行われる灯火形状は、丸形状である。青色灯器111の灯火により、青信号が表される。
【0025】
青色灯器111と同様、黄色灯器112及び赤色灯器113は、内部に光源が収められて、黄色及び赤色の灯火を行う灯器である。黄色灯器112及び赤色灯器113によって行われる灯火形状は、丸形状である。黄色灯器112及び赤色灯器113による灯火により、黄信号及び赤信号が表される。
【0026】
三灯式の信号機本体110の灯火が表す意味は、車両が従うべき交通法規等によって定まる。例えば、青色の灯火(青信号)は「進んでも良い」の意味を表し、赤色の灯火(赤信号)は、「停止位置で止まれ」の意味を表す。黄色の灯火(黄信号)は、「停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合を除き、停止位置で止まれ」の意味を表す。
【0027】
「青色」の灯火とは、三灯式の信号機本体110が行う3色の灯火のうち、黄色及び赤色を除いた色を示すものである。すなわち、「青色」の灯火は、現実の色度として青色である必要はなく、緑色に相当する色度であってもよい。
【0028】
矢印式の信号機本体120は、所定向きの矢印信号、例えば左向きの矢印信号、上向きの矢印信号及び右向きの矢印信号を表す灯火を行う装置である。矢印式の信号機本体120は、三灯式の信号機本体110の下側に配置されている。
【0029】
矢印式の信号機本体120は、左矢印灯器121、上矢印灯器122、右矢印灯器123を備えている。3つの矢印灯器121、122、123は横方向に沿って並んでいる。左矢印灯器121は左端に位置し、上矢印灯器122は中央に位置し、右矢印灯器123は右端に位置している。
【0030】
すなわち、左矢印灯器121は、青色灯器111の下側に位置する。信号機100と正体した場合、左矢印灯器121は、赤色灯器113を基点に、左側に灯器2個分、かつ下側に灯器1個分だけずれた位置にある。上矢印灯器122は、黄色灯器112の下側に位置する。信号機100と正体した場合、上矢印灯器122は、赤色灯器113を基点に、左側に灯器1個分、かつ下側に灯器1個分だけずれた位置にある。右矢印灯器123は、赤色灯器113の下側に位置する。信号機100と正体した場合、右矢印灯器123は、赤色灯器113を基点に、下側に灯器1個分だけずれた位置にある。3つの色灯器111、112、113に対する各矢印灯器121、122、123の相対的な位置関係は、交通法規等によって予め定められている。
【0031】
左矢印灯器121は、内部に光源が収められて、左向きの矢印の灯火を行う灯器である。左矢印灯器121の灯火により、左向きの矢印信号が表される。左矢印灯器121と同様、上矢印灯器122及び右矢印灯器123は、内部に光源が収められて、上向きの矢印及び右向きの矢印の灯火を行う灯器である。上矢印灯器122及び右矢印灯器123の灯火により、上向きの矢印信号及び右向きの矢印信号が表される。
【0032】
矢印式の信号機本体120の灯火が表す意味は、車両が従うべき交通法規等によって定まる。例えば、左向きの矢印の灯火(左向きの矢印信号)は、「赤信号に係わらず、左方向に進行できる」の意味を表し、上向きの矢印の灯火(上向きの矢印信号)は、「赤信号に係わらず、直進方向に進行できる」の意味を表す。右向きの矢印の灯火(右向きの矢印信号)は、「赤信号に係わらず、右方向に進行できる」の意味を表す。
【0033】
信号機100は、いわゆる横型の信号機に限らず、
図2Bに示すように、縦型の信号機であってもよい。縦型の信号機100は、三灯式の信号機本体110と、三灯式の信号機本体110の右側に位置する矢印式の信号機本体120とを備えている。
【0034】
三灯式の信号機本体110において、3つの色灯器111、112、113は縦方向に沿って並んでいる。青色灯器111は下端に位置し、黄色灯器112は中央に位置し、赤色灯器113は上端に位置している。
【0035】
矢印式の信号機本体120において、3つの矢印灯器121、122、123は縦方向に沿って並んでいる。左矢印灯器121は下端に位置し、上矢印灯器122は中央に位置し、右矢印灯器123は上端に位置している。すなわち、左矢印灯器121は、青色灯器111の右側に位置する。信号機100と正体した場合、左矢印灯器121は、赤色灯器113を基点に、右側に灯器1個分、かつ下側に灯器2個分だけずれた位置にある。上矢印灯器122は、黄色灯器112の右側に位置する。信号機100と正体した場合、上矢印灯器122は、赤色灯器113を基点に、右側に灯器1個分、かつ下側に灯器1個分だけずれた位置にある。右矢印灯器123は、赤色灯器113の右側に位置する。信号機100と正体した場合、右矢印灯器123は、赤色灯器113を基点に、右側に灯器1個分だけずれた位置にある。3つの色灯器111,112、113に対する各矢印灯器121、122、123の相対的な位置関係は、交通法規等によって予め定められている。
【0036】
なお、矢印式の信号機本体120は、3つの矢印灯器121、122、123を全て備える必要はない。矢印式の信号機本体120は、信号機100が交通に与える通行権に応じた、少なくとも1つの矢印灯器121、122、123を備えていればよい。
【0037】
図3及び
図4を参照し、信号機認識装置によって実行される一連の処理、すなわち、信号機認識方法の処理の流れを説明する。
図3及び
図4に示すフローチャートは、撮像部10の撮像タイミングに対応して呼び出され、コントローラ30によって実行される。
【0038】
まず、矢印灯火検出部31は、撮像部10から入力された画像を取得する(ステップS10)。走行経路取得部32は、車両の走行経路を取得する。走行経路の取得は、車両の走行経路を案内するカーナビゲーションシステムの情報、方向指示器の示す方向などの情報から取得することが可能である。そして、走行経路取得部は、車両の走行経路に基づいて、車両の進行方向を特定する(ステップS11)。車両前方に信号機が存在する場合、車両の進行方向は、信号機が設けられた交差点における車両の進行方向に相当する。車両の進行方向は、左折、直進及び右折のいずれかになる。
【0039】
矢印灯火検出部31は、例えばテンプレートマッチングにより、画像200に存在する信号機の矢印の灯火を検出する(ステップS12)。矢印灯火検出部31は、標準の矢印の灯火の画像をテンプレートとして保持している。矢印灯火検出部31は、テンプレートを1画素ずつずらしながら画像200全体を走査し、例えば輝度の分布の相関を計算する。矢印灯火検出部31は、相関が最も高い値となったテンプレートの位置に、矢印の灯火(点灯している灯火)を検出する。
【0040】
矢印灯火検出部31は、車両の位置及び車両の周囲の地図を含む地図情報を参照し、或いは、車両周囲の物体を検出する物体検出センサの検出結果を参照してもよい。矢印灯火検出部31は、車両と信号機までの距離に応じて、参照するテンプレートを使い分けることで、画像内の信号機を早期に検出することができる。
【0041】
信号機の検出方法は、テンプレートマッチングに限定されない。信号機の検出は、AdaBoost、SVM(Support Vector Machine)のような機械学習に基づく処理を行う画像処理手段が、画像特徴量に基づいて行ってもよい。画像特徴量としては、画像中の複数領域間の輝度変化の総和を示すHaar-like特徴量、強度テクスチャを抽出できるLBP(Local Binary Pattern)特徴量、画像勾配の強度を方向別ヒストグラムとして表現したHOG(Histogram of Gradient)などを用いることができる。
【0042】
矢印の灯火を検出しない場合(ステップS13でNO)、矢印灯火検出部31は、本処理を終了する。一方、矢印の灯火を検出した場合(ステップS13でYES)、矢印灯火検出部31は、矢印の灯火の特徴を特定する(ステップS14)。具体的には、矢印灯火検出部31は、矢印の灯火の向きを特定する。また、
図5A及び
図5Bに示すように、矢印灯火検出部31は、矢印の灯火の周囲を囲むように、矢印の灯火と大体同じ大きさの矩形枠RFを設定する。そして、矢印灯火検出部31は、矩形枠RFの左上の位置(x、y)、並びに、矩形枠RFの縦方向の大きさh及び横方向の大きさwを特定する。矢印灯火検出部31は、矩形枠RFの位置並びに縦方向及び横方向の大きさを通じて、矢印の灯火の位置並びに縦方向及び横方向の大きさを特定する。
【0043】
図3に示すように、矢印の灯火の向きが車両の進行方向と異なる場合には(ステップS15でNO)、矢印灯火検出部31は、本処理を終了する。一方、矢印の灯火の向きが車両の進行方向と同じ場合には(ステップS15でYES)、矢印灯火検出部31は、検出した矢印の灯火が、上向き矢印の灯火であるか否か判定する(ステップS16)。
【0044】
矢印灯火検出部31が上向き矢印の灯火であると判定した場合(ステップS16でYES)、矢印灯火認識部35は、矢印灯火検出部31が検出した矢印の灯火の向き、すなわち、上向きの矢印を、車両前方にある信号機の現示として認識する(ステップS17)。そして、矢印灯火認識部35は、上向きの矢印を、運転支援装置50に出力する。
【0045】
一方、上向き矢印の灯火ではないと判定した場合(ステップS16でNO)、矢印灯火検出部31は、検出した矢印の灯火が、左向きの矢印の灯火であるか否かを判定する(ステップS18)。
【0046】
左向きの矢印の灯火である場合(ステップS18でYES)、参照領域設定部33は、参照領域RA1、RA2を設定する(ステップS19)。
図5Aに示すように、参照領域設定部33は、矢印の灯火の位置(x、y)から定まる第1位置(x+2w,y-h)を基点に、縦方向の大きさh及び横方向の大きさwとなる参照領域RA1を設定する。同様に、参照領域設定部33は、矢印の灯火の位置(x、y)から定まる第2位置(x-w、y-2h)を基点に、縦方向の大きさh及び横方向の大きさwとなる参照領域RA2を設定する。
【0047】
右向きの矢印の灯火である場合(ステップS18でNO)、参照領域設定部33は、参照領域RA1、RA2を設定する(ステップS20)。
図5Bに示すように、参照領域設定部33は、矢印の灯火の位置(x、y)から定まる第1位置(x、y-h)を基点に、縦方向の大きさh及び横方向の大きさwとなる参照領域RA1を設定する。同様に、参照領域設定部33は、矢印の灯火の位置(x、y)から定まる第2位置(x-w,y)を基点に、縦方向の大きさh及び横方向の大きさwとなる参照領域RA2を設定する。
【0048】
ステップS19又はステップS20で設定される参照領域RA1は、画像において検出された矢印の灯火が真の信号機(実像の信号機)のものであり、且つ、この信号機が横型の信号機であるならば、赤色の灯火が存在すべき領域に相当する。同様に、ステップS19又はステップS20で設定される参照領域RA2は、画像において検出された矢印の灯火が真の信号機のものであり、且つ、この信号機が縦型の信号機であるならば、赤色の灯火が存在すべき領域に相当する。上述した通り、左向きの矢印灯火又は右向きの矢印の灯火は、赤色の灯火に対して所定の位置関係にある。参照領域設定部33は、このような位置関係を前提に、参照領域RA1、RA2を設定する。
【0049】
図4において、参照領域設定部33は、参照領域RA1、RA2のそれぞれを対象として、点灯している赤色の灯火を抽出する(ステップS21)。参照領域RA1を例に説明するが、参照領域RA2に対する処理も同じである。
【0050】
参照領域設定部33は、参照領域RA1内に存在する複数の画素の各色度に基づいて、赤色の灯火に対応する色度を有する画素を抽出する。画像の各画素がRGB値で表現される場合、灯火色判定部36は、画素毎に、RGB値をRGB空間からHSV空間に変換して、色相を得る。これにより、各画素の色度は、例えば0度(赤色)から180度(青色)を経由して360度(赤色)に至る色相で表される。参照領域設定部33は、赤色灯器113の灯火を表す色相を中央値とする所定の色相範囲、すなわち、赤色に相当する色相範囲を保有している。参照領域設定部33は、画素毎に色相を評価し、評価した画素の色相が赤色に相当する色相範囲に含まれれば、その画素を赤色の灯火として抽出する。
【0051】
参照領域RA1、RA2のいずれかに赤色の灯火が存在する場合(ステップS22でYES)、形状判定部34は、赤色の灯火の円形度を算出する(ステップS23)。具体的には、形状判定部34は、赤色の灯火として抽出した複数の画素の集合を集合画素として認識し、その集合画素の形状を特定する。形状の特定は、以下の数式1に示すように、例えば円形度を算出することにより行われる。
(数式1)
円形度=4π×(画素集合の面積)÷(画素集合の周囲長)2
【0052】
数式1に示す円形度は、画素集合の形状が円形に近ければ近いほど、1に近くなる。すなわち、この円形度は、集合画素の形状と赤色灯器113の灯火形状との類似度を示すことなる。
【0053】
集合画素、すなわち赤色の灯火の円形度が所定値以上である場合には(ステップS24でYES)、形状判定部34は、赤色の灯火を円形と類似すると判定し、形状判定の結果を、矢印灯火認識部35に出力する。参照領域に赤色の灯火が存在し、かつ、赤色の灯火の形状が円形状と類似するとの判定結果を受け、矢印灯火認識部35は、検出した矢印の灯火の向き、すなわち、左向きの矢印又は右向きの矢印を、車両前方の信号機の現示として認識する(ステップS17)。そして、矢印灯火認識部35は、左向きの矢印又は右向きの矢印を、運転支援装置50に出力する。
【0054】
なお、矢印の灯火が点灯している場合は通常、同時に赤色の灯火も点灯しているため、ステップS22の処理において参照領域RA1、RA2のいずれかに赤色の灯火が抽出されるはずであるが、ステップS22の処理において赤色の灯火が抽出されない場合(ステップS24でNO)には、検出された矢印の灯火はノイズであると判定して無視する(ステップS25)。
【0055】
このように本実施形態の信号機認識方法では、コントローラ30が、画像内に存在する信号機の矢印の灯火の向き及び画像内における矢印の灯火の位置を検出し、矢印の灯火の向き及び位置に基づいて信号機の赤色の灯火が存在すべき参照領域RA1、RA2を画像に設定する。そして、コントローラ30は、参照領域RA1、RA2に赤色の灯火が存在するか否かを判定し、参照領域RA1、RA2に赤色の灯火が存在すると判定した場合に、検出された矢印の灯火の向きを、車両前方の信号機の現示として認識する。
【0056】
矢印の灯火を発する矢印灯器は、矢印の灯火の向き毎に、所定の規則に従って三灯式の信号機本体110の近傍に配置される。このため、矢印の灯火は、矢印の灯火の向き毎に、赤色の灯火に対する相対的な位置を定義することができる。したがって、矢印の灯火の向き及び位置に応じて参照領域RA1、RA2を設定し、その参照領域RA1、RA2に赤色の灯火が存在するかどうかを判定することで、検出された矢印の灯火が真の信号機に対応するものかどうかを認識することができる。その結果、建物の窓ガラスや大型トラックの側面などに反射して、左右反転して映り込んだ信号機の鏡像(虚像)を、真の信号機の像(実像)として認識することを抑制することができる。これにより、画像認識によって信号機を認識する場合にあっても、信号機の虚像として存在する矢印の灯火を、車両前方の信号機の現示として認識することがない。その結果、信号機の矢印の灯火を精度よく認識することができる。
【0057】
本実施形態の信号機認識方法では、コントローラ30が、矢印の灯火の大きさに基づいて、参照領域RA1、RA2の大きさを設定してもよい。
【0058】
画像における矢印の灯火の縦方向及び横方向の大きさは、車両と信号機との相対的な距離に比例する。そのため、矢印の灯火の大きさに基づいて、参照領域RA1、RA2の大きさを決定することで、必要な範囲に適切な大きさの参照領域を設定することができる。
【0059】
本実施形態の信号機認識方法では、コントローラ30が、検出された矢印の灯火の向きが上向きである場合、参照領域RA1、RA2を設定することなく、検出された矢印の灯火の向きを、信号機の現示として認識する。一方、コントローラ30は、検出された矢印の灯火の向きが右向き又は左向きである場合には、参照領域RA1、RA2に赤色の灯火が存在するか否かを判定した上で、車両前方の信号機の現示を認識してもよい。
【0060】
矢印の灯火の向きが上向きである場合、左右反転しても矢印の灯火の向きは同じとなる。そのため、矢印の灯火の向きが直進の現示である場合には、赤色の灯火の存在を判定することなく、その向きを信頼することができる。これにより、演算負荷を軽減することができる。
【0061】
本実施形態の信号機認識方法では、コントローラ30が、参照領域に赤色の灯火に対応する色度を有する複数の画素が存在すると判定した場合に、参照領域に赤色の灯火が存在すると判定してもよい。
【0062】
赤色の灯火に対応する所定範囲の色度を有する複数の画素を判定することで、参照領域に赤色の灯火が存在するか否かを正確に判定することができる。
【0063】
本実施形態の信号機認識方法では、コントローラ30が、複数の画素の集合である集合画素の形状を判定し、集合画素の形状と信号機における赤色の灯火の形状との類似度が所定の判定値以上である場合に、検出された矢印の灯火の向きを、車両前方の信号機の現示として認識してもよい。
【0064】
この構成によれば、色に加え、赤色の灯火の形状も加味することができるので、赤色の物体を信号機の赤灯と見誤ることを抑制することができる。これにより、信号機の矢印の灯火を精度よく認識することができる。
【0065】
以上、本実施形態に係る信号機認識方法及び信号機認識装置を説明した。実施形態に係る信号機認識装置は、実施形態で説明した信号機認識方法を実行するものであり、信号機認識方法と同様の作用、効果を奏する。
【0066】
上述した第1又は第2の実施形態では、信号機認識装置が、運転支援装置50を備えている。しかしながら、信号機認識装置は、撮像部10及びコントローラ30だけで構成されてもよい。
【0067】
また、上述した第1又は第2の実施形態では、三灯式の信号機本体を構成する各色灯器の灯火形状を円形状とした。しかしながら、各色灯器の灯火形状は、四角形状などの多角形状であってもよい。
【0068】
また、第1又は第2の第実施形態では、ソフトウェアによってコントローラ30が備える複数の情報処理回路を実現する例を示したが、もちろん、各情報処理回路の機能を実現するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0069】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0070】
10 撮像部
30 コントローラ
31 矢印灯火検出部
32 走行経路取得部
33 参照領域設定部
34 形状判定部
35 矢印灯火認識部
50 運転支援装置