(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】空中表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20240808BHJP
G02B 30/60 20200101ALI20240808BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B30/60
(21)【出願番号】P 2021039967
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 勝平
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦
(72)【発明者】
【氏名】大原 知子
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-272326(JP,A)
【文献】特開2018-81138(JP,A)
【文献】特開2017-107165(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1663757(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0226212(US,A1)
【文献】特開2021-144071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
G02B 5/00-5/136
G09G 3/00-3/08,3/12,3/16
G09G 3/19-3/26,3/34,3/38
G09F 9/00
G09F 13/00-13/46
H04N 13/00-17/06
G03B 35/00-37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部を有する面状発光体と、
前記面状発光体の出射面側に配置され、前記発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する再帰反射シートと、
前記再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーと、
を備え、
前記複数の貫通孔の配置パターンは、想定される複数のアイポイントから見た際に前記空中表示と前記貫通孔との重なりによる前記空中表示の欠けが前記配置パターンを認識できる範囲に留まる、
空中表示装置。
【請求項2】
前記空中表示を認識する点で重要度の高い部分について前記重なりが少なくなることが優先される、
請求項1に記載の空中表示装置。
【請求項3】
前記再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、アイポイントから見た際の垂直方向での前記重なりが少なくなることが優先される、
請求項1または2に記載の空中表示装置。
【請求項4】
前記空中表示を認識する点で重要度の高い部分に対応する前記貫通孔の径は、その他の前記貫通孔の径よりも大きく設定される、
請求項1~3のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項5】
前記再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、垂直方向または水平方向に並ぶ前記貫通孔のピッチは、非単調または不規則に設定される、
請求項1~4のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項6】
前記再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、垂直方向または水平方向に並ぶ前記貫通孔は、隣接する列または行と連続する長さが異なる、
請求項1~5のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項7】
前記再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、垂直方向または水平方向に並ぶ前記貫通孔の連続数は、最小限に設定される、
請求項1~6のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項8】
前記再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、垂直方向または水平方向に対して斜め方向に並ぶ前記貫通孔を有する、
請求項1~7のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項9】
曲線を構成する前記貫通孔を有する、
請求項1~8のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項10】
前記配置パターンは枠を構成する前記貫通孔を有する、
請求項1~9のいずれか一つに記載の空中表示装置。
【請求項11】
前記枠を構成する前記貫通孔の径は、前記枠の内部の図形を構成する前記貫通孔の径よりも小さい、
請求項10に記載の空中表示装置。
【請求項12】
前記枠に対応する前記貫通孔は、千鳥状に配置される、
請求項10または11に記載の空中表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、再帰反射シートやハーフミラーが用いられ、空中に画像を結像させる空中表示装置が提案されている(例えば、特許文献1、2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-81138号公報
【文献】特開2017-107165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、画像が結像される位置を調整しやすくしたり、空中に表示される画像を広い角度から観察可能としたりすることを主な目的としており、空中表示の質の向上を目指すものではなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、空中表示の質の向上を図ることのできる空中表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る空中表示装置は、面状発光体と、再帰反射シートと、ハーフミラーとを備える。前記面状発光体は、発光部を有する。前記再帰反射シートは、前記面状発光体の出射面側に配置され、前記発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する。前記ハーフミラーは、前記再帰反射シートの出射面側に配置される。前記複数の貫通孔の配置パターンは、想定される複数のアイポイントから見た際に前記空中表示と前記貫通孔との重なりによる前記空中表示の欠けが前記配置パターンを認識できる範囲に留まる。
【0007】
本発明の一態様に係る空中表示装置は、空中表示の質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態にかかる空中表示装置の例を示す表示面側から見た図である。
【
図3】
図3は、空中表示の欠けの例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3における空中表示の欠けが発生する様子を示す図である。
【
図5】
図5は、垂直方向(Y軸方向)において再帰反射シートの1つの貫通孔により空中表示の欠けが発生する再帰反射シートの他の貫通孔の範囲の例を示す図である。
【
図6】
図6は、水平方向(X軸方向)において再帰反射シートの1つの貫通孔により空中表示の欠けが発生する再帰反射シートの他の貫通孔の範囲の例を示す図である。
【
図7】
図7は、1つの貫通孔に対して空中表示の欠けが発生する可能性のある再帰反射シート上の他の貫通孔の範囲の例を示す図である。
【
図8】
図8は、配置パターンの評価と状態との対応関係の例を示す図である。
【
図9】
図9は、配置パターンの評価の例を示す図(1)である。
【
図10】
図10は、配置パターンの評価の例を示す図(2)である。
【
図11】
図11は、配置パターンの評価の例を示す図(3)である。
【
図12】
図12は、配置パターンの評価の例を示す図(4)である。
【
図13】
図13は、配置パターンの評価の例を示す図(5)である。
【
図14】
図14は、配置パターンの評価の例を示す図(6)である。
【
図15】
図15は、配置パターンの評価の例を示す図(7)である。
【
図16】
図16は、配置パターンの評価の例を示す図(8)である。
【
図17】
図17は、貫通孔の配置を等間隔にしないことで空中表示の欠けを低減させる例を示す図である。
【
図18】
図18は、配置パターンに貫通孔により枠を設けるとともに、枠を小さい径の貫通孔で作ることで空中表示の欠けを低減させる例を示す図(1)である。
【
図19】
図19は、配置パターンに貫通孔により枠を設けるとともに、枠を小さい径の貫通孔で作ることで空中表示の欠けを低減させる例を示す図(2)である。
【
図20】
図20は、枠による空白領域によって空中表示の欠けが低減する例を示す図である。
【
図21】
図21は、小さい径の貫通孔で枠を作ることで空中表示の欠けが低減する例を示す図である。
【
図22】
図22は、貫通孔の配置を直線からずらすことで空中表示の欠けを低減させる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る空中表示装置について図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0010】
図1は、一実施形態にかかる空中表示装置1の例を示す表示面側から見た図である。
図2は、
図1におけるX-X断面図である。なお、
図1および
図2における空中表示装置1は、個室トイレ内の壁面等に設置される操作パネルに採用されることが想定されており、表示面が水平方向を向いている。
【0011】
図1および
図2において、空中表示装置1は、略矩形状の開口2aが形成されたフレーム2内に、面状発光体を構成する線状光源3と導光板4とが配置されている。線状光源3は、導光板4の入光側面4aの長手方向(X軸方向)に沿って線状に発光する光源である。導光板4は、ポリカーボネートやアクリル等の透明材料により形成され、入光側面4aから入射された光を終端側まで導き、裏面(非表示面)側に設けられた、光学素子により形成される発光部4bにより光を反射する。
【0012】
なお、この実施形態では、発光部4bの光学素子の調整により、表示面側のアイポイントEPが存在しない方向(
図2における左下側)に光を出射し、アイポイントEPが存在する所定方向に出射する光を抑制するようにしている。アイポイントEPは、ユーザが目視することが想定される位置である。
【0013】
また、導光板4の発光部4bは、後述する再帰反射シート5における、空中表示する図形を表すのに用いられる可能性のある複数の貫通孔5aの位置を余裕をもってカバー(貫通孔5aの周囲の所定範囲もカバー)する略矩形状の領域(表示面側から見た形状)を発光するか、または、再帰反射シート5の1または複数の貫通孔5aに対応する位置を余裕をもってカバー(貫通孔5aの周囲の所定範囲もカバー)する領域を発光するものとする。前者の場合、導光板4の発光部4bの端部は、再帰反射シート5のいちばん外側の貫通孔5aに正対する位置から導光方向(Y軸方向)に長く設定される。この長く設定された端部は、再帰反射シート5の貫通孔5aから光軸を逆方向に伸ばして導光板4の裏側付近に到達する位置よりも、配光や部材の位置精度等を考慮してより外側の位置である。横方向(X軸方向)について、導光板4の発光部4bは、導光板4のほぼ全幅に延びるものとなる。後者の場合、導光板4の発光部4bは、再帰反射シート5の各貫通孔5aについて、導光方向(Y軸方向)と横方向(X軸方向)とについて長く設定される。前者の場合、空中表示する図形を変更する場合、再帰反射シート5の貫通孔5aを変更すればよいため、対応が容易になる。また、後者の場合、導光板4から出る光を表示に必要なものに絞ることができるため、光効率を高めることができる。
【0014】
また、フレーム2の非表示面側には、開口2aを覆うように、反射シート8が配置されており、導光板4から背面側へ漏れる光を導光板4に戻すことで、光効率を高め、輝度を高めている。なお、フレーム2の非表示面側に開口2aはなくてもよく(底板で塞がれていてもよい)、導光板4の非表示面側に反射シート8が設けられていればよい。
【0015】
また、導光板4の出射面側には、発光部4bに対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔5aを有する再帰反射シート5が、反射面を出射面側(導光板4とは反対側)に向けて配置されている。再帰反射シート5は、透明の微小なガラスビーズ球などが表面に隙間なく配置され、入射された光を同じ経路で出射(入射角と出射角が同じ)する性質を有したシートである。再帰反射シート5としては、ガラスビーズ球の他に、コーナーキューブと呼ばれる、光を反射する性質を持った3枚の面が互いに直角に組み合わされた、立方体の頂点の内面を利用したものも使用することができる。この場合、コストは若干高くなるが、光利用効率が高く、空中表示(空中像)のボケが少なくなるという利点がある。
【0016】
また、フレーム2の表示面側には、開口2aを覆うようにハーフミラー6が配置され、ハーフミラー6にはトップカバー7が外側に重ねられている。なお、ハーフミラー6の外側(視認側)にハードコート処理を施すことにより、トップカバー7を省略することもできるが、ハーフミラー6はフィルム状であるため、支持用の透明樹脂板が必要となる。なお、ハードコート処理は、傷防止や汚れ防止、抗菌などを目的として施されるものであり、トップカバー7が外側に配置される場合でも、トップカバー7にハードコート処理を施すのが好ましい。ハーフミラー6は、入射された光の半分程度を反射し、残りの半分程度を透過させる性質を有した光学部材である。トップカバー7は、透明材料により形成され、ハーフミラー6を保護するためのものである。なお、トップカバー7の透過度を下げることにより、外部から空中表示装置1の内部が見えづらくなり、空中表示だけを見やすくすることができる。また、再帰反射シート5とハーフミラー6とは、互いに少し傾けて配置されるものであってもよい。
【0017】
図2において、面状発光体を構成する導光板4の発光部4bから出た光は再帰反射シート5の貫通孔5aを通って経路L1で出る。この光は、半分程度がハーフミラー6で反射され、経路L2により再帰反射シート5に当たる。再帰反射シート5に当たった光は、入射角と同じ出射角で経路L3によりハーフミラー6に戻り、半分程度が透過する。発光部4bのある点から出た光は、経路L1の角度が変わっても幾何学的な関係から空中表示装置1外の同じ位置を通過するため、ハーフミラー6およびトップカバー7の外側に空中像による空中表示Iが行われ、ユーザのアイポイントEPから視認することができ、ユーザに指Fにより触れる動作を行わせることができる。
【0018】
上記の構造の空中表示装置1における空中表示の質の問題としては、再帰反射シート5の貫通孔5aの配置パターンに起因する空中表示Iの欠けがある。空中表示の欠けが発生すると、空中表示したい図形が正確に表示されず、スイッチのインタフェース等として充分な機能を発揮させることが困難になる。
【0019】
図3は、空中表示の欠けの例を示す図であり、本来は、縦9個×横9個の全てについて白丸の空中表示が行われるところ、一番下の空中表示I-1の行だけが表示され、その上の空中表示I-2~I-9の行が欠けてしまっている。空中表示I-9の背後に見える黒丸の行は、透けて見える再帰反射シート5の貫通孔5aである。
【0020】
図4は、
図3における空中表示の欠けが発生する様子を示す図であり、
図3における右側から見た断面図である。なお、導光板4等による面状発光体については省略されている。
図4において、あるアイポイントから見られている状態で、再帰反射シート5の貫通孔5a-1~5a-9から左下向きに出射面側に出た光は、ハーフミラー6により反射されて再帰反射シート5側に戻る。この反射光のうち、貫通孔5a-1に対応するものは、5の平坦な面により再帰反射されてハーフミラー6およびトップカバー7を通った後に空中表示I-1として正常に表示される。しかし、反射光のうち貫通孔5a-2~5a-9に対応するものは、再帰反射シート5の貫通孔5a-1~5a-8に入ってしまい、正常に再帰反射されないため、空中表示I-2~I-9は欠けてしまう。
【0021】
図5は、垂直方向(Y軸方向)において再帰反射シート5の1つの貫通孔5aにより空中表示の欠けが発生する再帰反射シート5の他の貫通孔の範囲RVの例を示す図である。
図5において、アイポイントの垂直方向の視野は、水平方向に対して10°~35°の範囲にあるものとしている。今、貫通孔5aの直径を1mm、再帰反射シート5とハーフミラー6との間隔を10mmとすると、幾何学的な関係から、貫通孔5aの下端から範囲RVの上端までの距離Aは2.53mm、範囲RVの長さBは14.0mmとなる。
【0022】
図6は、水平方向(X軸方向)において再帰反射シート5の1つの貫通孔5aにより空中表示の欠けが発生する再帰反射シート5の他の貫通孔の範囲RHの例を示す図である。
図6において、アイポイントの水平方向の視野は、正面方向に対して-40°~+40°の範囲にあり、垂直方向の視野は0°にあるものとしている。今、貫通孔5aの直径を1mm、再帰反射シート5とハーフミラー6との間隔を10mmとすると、幾何学的な関係から、範囲RHの長さCは34.6mmとなる。
【0023】
図7は、1つの貫通孔5aに対して空中表示の欠けが発生する可能性のある再帰反射シート5上の他の貫通孔の範囲RVHの例を示す図であり、再帰反射シート5の出射面側正面から見た図である。アイポイントの垂直方向の視野は水平方向に対して10°~35°、水平方向の視野は正面方向に対して-40°~+40°、貫通孔5aの直径を1mm、再帰反射シート5とハーフミラー6との間隔を10mmとしている。
図7において、1つの貫通孔5aに対して、その2.53mm下から左右対称に、上底が35.1mm、下底が41.9mm、高さが11.5mmの台形状の範囲RVHに他の貫通孔が存在すると、欠けが生ずる可能性がある。従って、上記の視野範囲内において空中表示の欠けが発生しない貫通孔5aの配置パターンとしては、複数の貫通孔5aが横長に配置されるか、貫通孔5a自体が横長の場合のみとなり、貫通孔5aが縦横に配置される表示面積が広いものは、欠けが生ずるものとして、欠けを低減する対策が必要となる。
【0024】
欠けを低減する対策の基本としては、複数の貫通孔の配置パターンが、想定される複数のアイポイントから見た際に空中表示と貫通孔との重なりによる空中表示の欠けが配置パターンを認識できる範囲に留まるものとすることである。以下、実際の配置パターンの評価を通して、空中表示の欠けが生じにくい貫通孔の配置パターンについて考察する。
【0025】
図8は、配置パターンの評価と状態との対応関係の例を示す図である。
図8において、評価「〇」は、配置パターンの欄に例示されるように、状態として、どの角度から見ても、孔の欠けがほとんどなく、パターンが認識できるものである。評価「△」は、配置パターンの欄に例示されるように、状態として、どの角度から見ても、孔の一部しか欠けず、パターンが認識できるものである。評価「×」は、配置パターンの欄に例示されるように、状態として、ある特定の角度で空中表示のほとんどが消えてしまい、パターンが視認できないものである。
【0026】
図9~
図16は、配置パターンの評価の例を示す図である。
図9において、番号001および番号003の配置パターンは評価「×」である。これらの配置パターンは格子状の正方配置からは変更されているが、水平方向(図における左右方向)および垂直方向(図における上下方向)に貫通孔が規則的に配置されていることが要因である。これに対し、番号002および番号004の配置パターンは評価「△」である。これは、垂直方向または水平方向に並ぶ貫通孔のピッチが、非単調または不規則に設定されることにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりが少なくなることによる。
【0027】
図17は、貫通孔5aの配置を等間隔にしないことで空中表示の欠けを低減させる例を示す図である。
図17において、左側の図は比較のために再帰反射シート5の貫通孔5a-1~5a-5を垂直方向(Y軸方向)に等間隔に配置した場合を示しており、右側の図は貫通孔5a-1と貫通孔5a-2との間隔を広くし、貫通孔5a-2と貫通孔5a-3との間隔を短くし、貫通孔5a-3と貫通孔5a-4との間隔を広くしている。等間隔に配置した左側の図では下側の空中表示I-1、I-2は正常に表示されているが、上側の空中表示I-3~I-5は欠けてしまっている。これに対して、右側の図では、空中表示I-4は欠けてしまっているが、その他の空中表示I-1~I-3、I-5は正常に表示されており、欠けが改善されている。
【0028】
次に、
図10において、番号005~008の配置パターンは評価「△」である。これは、垂直方向または水平方向に並ぶ貫通孔が、隣接する列または行と連続する長さが異なることによる。また、番号005の配置パターンについては、円または円弧による曲線を構成する貫通孔を有することによる。これらにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりが少なくなり、空中表示の欠けが減少する。
【0029】
次に、
図11において、番号009、010、012は評価「〇」であり、番号011は評価「△」である。これは、配置パターンが枠を構成する貫通孔を有することによる。また、枠を構成する貫通孔の径が、枠の内部の図形を構成する貫通孔の径よりも小さいことによる。なお、枠よりもその内部の図形がより重要と考えた場合、空中表示を認識する点で重要度の高い部分について、重なりが少なくなることが優先され、空中表示を認識する点で重要度の高い部分に対応する貫通孔の径は、その他の貫通孔の径よりも大きく設定されると言い換えることもできる。また、番号012の配置パターンについては、枠に対応する貫通孔が、千鳥状に配置されることによる。また、番号009、010の配置パターンについては、円または円弧による曲線を構成する貫通孔を有することによる。これらにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりが少なくなり、空中表示の欠けが減少する。番号011は、垂直方向または水平方向に並ぶ貫通孔の連続数は、最小限に設定されるべきところ、長い直線となっているため評価「△」となっている。
【0030】
図18および
図19は、配置パターンに貫通孔5aにより枠を設けるとともに、枠を小さい径の貫通孔5aで作ることで空中表示の欠けを低減させる例を示す図である。
図18は、四角形状の枠が千鳥状の貫通孔5aで設けられており、内部の図形との間に四角形状の空白領域Vが形成されることで、空中表示の欠けを低減させることができる。また、
図19は、円形状の枠が貫通孔5aで設けられており、内部の図形との間にドーナツ形状の空白領域Vが形成されることで、空中表示の欠けを低減させることができる。
【0031】
図20は、枠による空白領域Vによって空中表示の欠けが低減する例を示す図である。
図20において、再帰反射シート5の枠の内部の貫通孔5a-2~5a-4から出てハーフミラー6によって反射された光は、平坦な空白領域Vで再帰反射され、欠けのない空中表示I-2~I-4となっている。また、貫通孔5a-5から出てハーフミラー6によって反射された光も、平坦な空白領域Vで再帰反射され、欠けのない空中表示I-5となっている。貫通孔5a-1から出てハーフミラー6によって反射された光も、パターンの外側の平坦な面で再帰反射され、欠けのない空中表示I-1となっている。
【0032】
図21は、小さい径の貫通孔5aで枠を作ることで空中表示の欠けが低減する例を示す図である。
図21において、左側の図は、再帰反射シート5上の貫通孔5aの配置を示しており、中央の図形よりも径の小さい貫通孔5aで円形状の枠が構成されている。右側の図は、ある角度から見た空中表示を示しており、枠と中央の図形の貫通孔により欠けが発生している様子を示している。しかし、枠の貫通孔の径が中央の図形の貫通孔の径よりも小さいため、中央の図形の欠けは部分的なものに留まり、視認性の低下を抑えることができる。
【0033】
図22は、貫通孔5aの配置を直線からずらすことで空中表示の欠けを低減させる例を示す図である。
図11の番号012の千鳥状の枠も、この例に近いものとなる。
図22において、左側の図は、比較のために再帰反射シート5上に貫通孔5a-1~5a-5を等間隔ではないが直線状に配置したものであり、その隣は空中表示を示している。この場合、空中表示I-1~I-3、I-5は正常に表示されているが、空中表示I-4は完全に欠けてしまっている。右側の図は、貫通孔5a-1~5a-5を左右にずらして配置したものであり、その隣は空中表示を示している。この場合、空中表示I-1、I-3、I-5は正常に表示され、空中表示I-2、I-4は半分程度の欠けに留まり、視認できる程度に留まっている。
【0034】
次に、
図12において、番号013~015は評価「△」であり、番号016は評価「×」である。これは、番号013~015は、垂直方向または水平方向に並ぶ貫通孔が、隣接する列または行と連続する長さが異なることによる。また、円または円弧による曲線を構成する貫通孔を有することによる。番号016は、番号015と縦横の関係が異なるだけであるが、アイポイントから見た際の垂直方向での重なりが少なくなることが優先されることから欠けが発生しやすくなり、評価「×」となっている。
【0035】
次に、
図13において、番号017、018は評価「△」であり、番号019、020は評価「〇」である。これは、配置パターンが枠を構成する貫通孔を有することと、枠を構成する貫通孔の径が、枠の内部の図形を構成する貫通孔の径よりも小さいことによる。番号017は、円または円弧による曲線を構成する貫通孔を有することもある。ただし、番号017の内部には大きな径の貫通孔が設けられており、これと重複する枠のかなりの部分が欠けてしまうため、評価は「〇」とはなっていない。
【0036】
次に、
図14において、番号021~024は評価「△」である。これは、配置パターンが枠を構成する貫通孔を有することと、枠を構成する貫通孔の径が、枠の内部の図形を構成する貫通孔の径よりも小さいことによる。
【0037】
次に、
図15において、番号025~028は評価「〇」である。これは、配置パターンが枠(一部の辺が省略された場合を含む)を構成する貫通孔を有することと、枠を構成する貫通孔の径が、枠の内部の図形を構成する貫通孔の径よりも小さいことと、垂直方向または水平方向に対して斜め方向に並ぶ貫通孔を有することによる。
【0038】
次に、
図16において、番号029、030、032は評価「〇」であり、番号031は評価「△」である。これは、番号029、030については、配置パターンが枠を構成する貫通孔を有することと、枠を構成する貫通孔の径が、枠の内部の図形を構成する貫通孔の径よりも小さいことと、円または円弧による曲線を構成する貫通孔を有することとによる。番号031、032についても、ほぼ枠が設けられている点で評価「△」以上となっているが、番号031では枠が二重となっているため、その部分で欠けが生じやすく、評価「△」となっている。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0040】
以上のように、実施形態に係る空中表示装置は、発光部を有する面状発光体と、面状発光体の出射面側に配置され、発光部に対応する位置に空中表示する図形を表した複数の貫通孔を有する再帰反射シートと、再帰反射シートの出射面側に配置されたハーフミラーとを備え、複数の貫通孔の配置パターンは、想定される複数のアイポイントから見た際に空中表示と貫通孔との重なりによる空中表示の欠けが配置パターンを認識できる範囲に留まる。これにより、空中表示の質の向上を図ることができる。
【0041】
また、空中表示を認識する点で重要度の高い部分について重なりが少なくなることが優先される。これにより、重要度の高い部分の視認性を高めることができる。
【0042】
また、再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、アイポイントから見た際の垂直方向での重なりが少なくなることが優先される。これにより、ユーザが空中表示を見下ろすような状態で使われる場合における視認性を高めることができる。
【0043】
また、空中表示を認識する点で重要度の高い部分に対応する貫通孔の径は、その他の貫通孔の径よりも大きく設定される。これにより、重要度の高い部分の視認性を高めることができる。
【0044】
また、再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、垂直方向または水平方向に並ぶ貫通孔のピッチは、非単調または不規則に設定される。これにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりを少なくし、空中表示の欠けを減少させることができる。
【0045】
また、再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、垂直方向または水平方向に並ぶ貫通孔は、隣接する列または行と連続する長さが異なる。これにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりを少なくし、空中表示の欠けを減少させることができる。
【0046】
また、再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、垂直方向または水平方向に並ぶ貫通孔の連続数は、最小限に設定される。これにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりを少なくし、空中表示の欠けを減少させることができる。
【0047】
また、再帰反射シートが壁面に略平行に配置される環境において、垂直方向または水平方向に対して斜め方向に並ぶ貫通孔を有する。これにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりを少なくし、空中表示の欠けを減少させることができる。
【0048】
また、曲線を構成する貫通孔を有する。これにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりを少なくし、空中表示の欠けを減少させることができる。
【0049】
また、配置パターンは枠を構成する貫通孔を有する。これにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりを少なくし、空中表示の欠けを減少させることができる。
【0050】
また、枠を構成する貫通孔の径は、枠の内部の図形を構成する貫通孔の径よりも小さい。これにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりを少なくし、空中表示の欠けを減少させることができる。
【0051】
また、枠に対応する貫通孔は、千鳥状に配置される。これにより、アイポイントから見た空中表示と貫通孔との重なりを少なくし、空中表示の欠けを減少させることができる。
【0052】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 空中表示装置,2 フレーム,2a 開口,3 線状光源,4 導光板,4a 入光側面,4b 発光部,5 再帰反射シート,5a 貫通孔,6 ハーフミラー,7 トップカバー,8 反射シート,EP アイポイント,I 空中表示,F 指