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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】壁杭の鉛直支持力の評価方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/18 20060101AFI20240808BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
E02D5/18 102
E02D5/18 101
E02D27/12 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021133603
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023028111
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 俊昌
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119968(JP,A)
【文献】特開2011-012510(JP,A)
【文献】特開2006-152799(JP,A)
【文献】特開2006-233688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/00- 5/20
E02D 27/00-27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁杭の鉛直支持力の評価方法であって、
壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示す実測結果基づき壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示すグラフを作成する、または、杭荷重が作用する位置において壁杭を矩形断面の杭として多質点解析用にモデル化し、モデル化した前記杭により解析を行い、杭周面に作用する摩擦抵抗が先端押込み荷重に加算された壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示すグラフを作成する工程と
壁杭の短辺幅Bに0.05~0.2の範囲内である係数aを乗じた値Baを壁杭の極限鉛直支持力時の先端沈下量として算定した後、その壁杭の先端沈下量に対応する壁杭の押込み荷重Ruを壁杭の極限鉛直支持力として前記グラフから抽出する工程と、を備えることを特徴とする壁杭の鉛直支持力の評価方法。
【請求項2】
前記壁杭の短辺幅Bは、壁杭の壁厚さが一様な場合は壁厚さであり、拡底部を有する壁杭の場合は拡底部における突出部を含む平面への投影面積を壁杭の長辺幅で除して求めた等価な短辺幅とすることを特徴とする請求項1に記載の壁杭の鉛直支持力の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁杭の性能評価を行うための壁杭の鉛直支持力の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭基礎の性能評価方法として、杭先端の鉛直支持力により評価する場合がある(特許文献1、2参照)。一方、建築物の基礎構造としては、杭基礎だけでなく、建物の周囲に沿って連続的に形成される壁杭が採用される場合がある。このような壁杭の鉛直支持力は、断面積が等価な円形杭(円柱状の杭)に置き換えて評価していた。具体的には、壁杭を、柱直下に配設された円形杭に置き換えた後、支持力式を適用して等価な直径Dの0.1D沈下時の支持力を極限支持力としていた。また、例えば、特許文献1には、ソイルセメント柱列壁杭の評価方法として、芯材が埋設されたソイルセメント柱をそれぞれ単杭とみなして、極限支持力を算定する方法が開示されている。
特許文献2には、杭の長手方向に複数の拡径部を有する多段拡径場所打ちコンクリート杭の評価方法として、杭先端地盤の極限抵抗力と、拡径部径を直径として、拡径部の支圧効果が及ぶ範囲を有効高さとする鉛直円筒すべり面に生じる極限周面摩擦力と、軸部の極限周面摩擦力との和から杭の自重を減算した値を、極限鉛直支持力を算定する方法が開示されている。
非特許文献1には、場所打ちコンクリート造の円形杭、および拡底部無しの地中壁杭の部分試験体を用いた鉛直載荷試験で得られた、鉛直荷重と沈下量関係の計測値が開示されている。
非特許文献1の計測値によると、壁杭の場合、建物の柱間隔が大きくなると、等価な直径も大きくなって極限支持力が大きくなるものの、評価される沈下量が大きくなる傾向であった。また、連続した壁状体を有する壁杭では、独立した等価な円形杭に置き換えて極限支持力を評価すると、壁杭が連続する方向の剛性が考慮されないため、不同沈下量が過大になってしまう。一方、3次元有限要素法を用いて極限支持力を評価する場合には、連続した壁杭および地盤をモデル化する必要があり、膨大な計算時間と多額な検討費用が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-119968号公報
【文献】特開2006-152799号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】社団法人:日本建設業連合会「BCS基礎杭評価研究会、終了報告書」、平成11年8月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、モデル化が簡便で、設計期間および設計費用の低減化を可能とし、なおかつ、壁杭の性能評価を合理的に行うことを可能とした壁杭の鉛直支持力の評価方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の壁杭の鉛直支持力の評価方法は、壁杭の鉛直支持力の評価方法であって、壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示す実測結果基づき壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示すグラフを作成する、または、杭荷重が作用する位置において壁杭を矩形断面の杭として多質点解析用にモデル化し、モデル化した前記杭により解析を行い、杭周面に作用する摩擦抵抗が先端押込み荷重に加算された壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示すグラフを作成する工程と、壁杭の短辺幅Bに0.05~0.2の範囲内である係数aを乗じた値Baを壁杭の極限鉛直支持力時の先端沈下量として算定した後、その壁杭の先端沈下量に対応する壁杭の押込み荷重Ruを壁杭の極限鉛直支持力として前記グラフから抽出する工程と、を備えることを特徴とする。
この発明によれば、先ず始めに、壁杭の短辺幅Bに1より小さい係数aを乗じた値Baを壁杭の極限鉛直支持力時の先端沈下量として算定した後、次に、その先端沈下量に対応する壁杭の押込み荷重Ruを壁杭の極限鉛直支持力として算定する。よって、本発明の壁杭の鉛直支持力の評価方法によれば、壁杭の極限鉛直支持力を壁杭に対するデータに基づいて推定するため、円形杭を対象とした従来の算出方法に比べて、極限鉛直支持力時の先端沈下量および極限鉛直支持力を合理的に評価できる。また、極限鉛直支持力時の先端沈下量および極限鉛直支持力は、壁杭を対象とする実測結果、または解析結果に基づいて算定するために、壁杭の合理的な性能評価を確保しつつ、設計期間と設計費用を低減することができる。また、矩形断面の杭と断面積の等しい円形杭とを比較した場合、周面積は円形杭の方が小さくなる。したがって、杭を矩形断面とした方が、円形断面の場合よりも周面積が大きくなり、同じ地盤であっても周面摩擦抵抗を大きくとれる。なお、杭設計においては、杭頭の鉛直支持力は杭先端の極限支持力に杭周囲の摩擦抵抗を加算したものとする。
また、壁杭の極限鉛直支持力時の先端沈下量Baは、壁杭の短辺幅Bに乗じる係数aを0.05~0.2の範囲内に設定することで、壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示す実測結果、または解析結果で得られた、壁杭の極限鉛直支持力に対応する先端沈下量を精度良く算定することができる。
の発明の壁杭の鉛直支持力の評価方法は、前記壁杭の短辺幅Bは、壁杭の壁厚さが一様な場合は壁厚さであり、拡底部を有する壁杭の場合は拡底部における突出部を含む平面への投影面積を、壁杭の長辺幅で除して求めた等価な短辺幅とすることを特徴とする。
この発明によれば、壁厚さが一様な壁杭、および拡底部を有する壁杭において、其々、地盤反力に抵抗する壁杭の短辺方向の壁幅を壁杭の短辺幅とすることで、壁杭の鉛直支持力機構を成立させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の壁杭の鉛直支持力の評価方法によれば、モデル化が簡便で、設計期間および設計費用の低減化を可能とし、なおかつ、壁杭の性能評価を合理的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は本実施形態の壁杭の一例を示す斜視図、(b)は壁杭の鉛直支持力の評価方法に使用する多質点解析モデルである。
図2】(a)は壁杭の一例を示す斜視図、(b)は壁杭を円形杭に置換した解析モデルの斜視図である。
図3】壁杭の設計手順を示すフローチャートである。
図4】壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示す模式図である。
図5】沈下量の算定に使用する3次元有限要素法解析モデルである。
図6】杭の押込み荷重と先端沈下量関係の模式図である。
図7】他の形態に係る壁杭の例を示す斜視図である。
図8】壁杭および円形杭の先端押込み荷重と先端沈下量関係の各実測値を比較したグラフである。
図9】壁杭および円形杭の先端押込み荷重と先端沈下量関係の実測値と解析値を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、壁杭の鉛直支持力の評価方法として、壁杭の押込み荷重(鉛直荷重度)と先端沈下量との関係を示す実測値、または解析値に基づき、壁杭の短辺幅Bに係数aを乗じた値Baを壁杭の極限鉛直支持力時の先端沈下量として算定した後、その壁杭の先端沈下量に対応する壁杭の押込み荷重Ruを壁杭の極限鉛直支持力として算定する方法である。壁杭の先端沈下量は、壁杭の載荷試験結果による実測値、3次元有限要素法解析による解析値、多質点解析結果による解析値のうち、いずれかで算定する。
本実施形態では、建物の基礎として壁杭を採用する場合において、壁杭の設計時における壁杭の鉛直支持力の評価方法について説明する。
図1に本実施形態の壁杭の鉛直支持力の評価方法に使用する解析モデルを示す。本実施形態では、図1(a)に示す連続した壁杭1を、図1(b)に示すように、杭荷重Pが作用する位置において矩形断面の杭11として多質点解析用にモデル化を行い、杭11同士の間に拘束条件(同一変位や連続した壁としてのせん断剛性や曲げ剛性を考慮した変形分布を与えるなど)を考慮することで、解析モデル上の要素12,12,…の数を増やすことなく連続した壁杭1の挙動を模擬する。なお、杭の設計では、杭頭の鉛直支持力を杭先端の極限支持力に杭周囲の摩擦抵抗を加算したものとする。このとき、図1(b)の多質点モデルでは、周面摩擦抵抗の評価に矩形の形状を考慮する。
従来、壁杭1の極限鉛直支持力を判定するための杭先端の沈下量は、壁杭先端部での矩形状の横断面積を等価な円形杭13に置換して算定していたのに対し(図2参照)、本願発明者は、壁杭1の短辺幅Bに1よりも小さい係数aを乗じた値Baを壁杭1の極限鉛直支持力時の先端沈下量として算定した後、壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量の関係を推定して、その先端沈下量に対応する壁杭の押込み荷重Ruを壁杭の極限鉛直支持力として算定する、壁杭の鉛直支持力の評価方法を考案した。
次に、図4に示すように、前記極限鉛直支持力に安全率を乗じた値を各要求性能レベル(損傷限界、使用限界)での鉛直支持力として算出した後、壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量曲線から各要求性能レベルにおける沈下量を算出する。なお、壁杭の先端押込み荷重と先端沈下量関係は、非特許文献1に記載されている壁杭の鉛直載荷実験の実測値に基づく、式1で推定する。式1の詳細は、後述する。
【0010】
以下、壁杭の設計手順について説明する。図3に壁杭の設計手順を示す。
図3に示すように、壁杭1の設計では、まず、地盤特性、壁杭の形状および杭長を設定する。
次に、壁杭1の極限鉛直支持力の算定を行う。
壁杭1の極限鉛直支持力の算定では、まず、非特許文献1に記載されている壁杭の鉛直載荷実験の実測値、または壁杭の解析値に基づき、壁杭1の押込み荷重と壁杭1の先端沈下量との関係を示すグラフを作成する。図4に、壁杭の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示す模式図を示す。なお、本実施形態では、柱列式連続壁により壁杭1を構築するものとし、既知の実測値(非特許文献1を参照)として、壁杭1の鉛直荷重載荷時の先端押込み荷重と先端沈下量曲線を利用する。次に、壁杭1を図1(b)に示すように、杭荷重Pが作用する位置において矩形断面の杭11として多質点解析用にモデル化を行う。このモデルによる解析を行うことで、先端押込み荷重に杭周面に作用する摩擦抵抗が加算され、壁杭1の押込み荷重と壁杭の先端沈下量との関係を示すグラフ(図4)を得る。壁杭1(杭11)の短辺幅Bに1より小さい係数a(本実施形態では0.1)を乗じた値Baを壁杭1の先端沈下量とした場合の鉛直荷重度(押込み荷重)を、図4のグラフから抽出し、この値を極限鉛直荷重とする。
極限鉛直荷重を算出したら、図3に示すように、壁杭1の許容鉛直荷重を算出する。具体的には、極限鉛直荷重を利用して、使用限界状態の許容鉛直支持力および損傷限界状態の許容鉛直荷重を算出する。使用限界状態の許容鉛直荷重は、極限支持荷重に安全率(1/3)を乗じた値とする。また、損傷限界状態の許容鉛直荷重は、極限支持荷重に安全率(2/3)を乗じた値とする。
次に、図3に示すように、各限界状態に対する壁杭1の沈下量を算出する。
そして、図3に示すように、算出した極限鉛直荷重、許容鉛直荷重、先端沈下量等を設計用限界値(使用限界、損傷限界)と比較し、設計用限界値以下の場合には、基礎部材の設計を進め、設計用限界値よりも大きい場合には壁杭の杭形状や杭長を再度設定した後、極限鉛直荷重、許容鉛直荷重、先端沈下量等を算定して、各応答値が設計用限界値以下になるように設計する。
【0011】
以上、本実施形態の壁杭の鉛直支持力の評価方法によれば、壁杭1の極限鉛直支持力(極限鉛直荷重)を壁杭1に対応する既知の実測値(非特許文献1を参照)、または解析値に基づいて推定するため、壁杭1を円形杭13に置き換える従来の算出方法に比べて、壁杭の先端沈下量を合理的に評価できる。また、壁杭の押込み荷重と先端沈下量関係を多質点解析モデルで推定する方法は、3次元有限要素法解析で推定する場合に比べてモデル化が簡便であり、壁杭の設計期間および設計費用の低減化が可能である。地盤の鉛直荷重度(鉛直荷重を先端面積で除した値)は、本来先端形状の影響を受ける。壁杭1の先端荷重度が同一であれば、鉛直支持力の評価に壁杭の幅を用いることで、極限支持力時の沈下量が小さくなり、合理的な評価方法となる。
また、一般的に明瞭な変化点のない壁杭の鉛直荷重度-先端沈下量曲線において、実情に即した極限鉛直荷重を推定できる。
また、壁杭1の形状を解析モデルに取り入れることにより、壁杭1の挙動(荷重~沈下関係)を精度よく推定できる。
また、連続した壁杭1を独立した矩形断面の杭11としてモデル化した場合には、杭同士の間の拘束条件(同一変位や連続した壁としてのせん断剛性や曲げ剛性を考慮した変形分布を与える)を考慮することで、解析モデル上の要素数を増やすことなく連続した壁杭の挙動を模擬できる。また、矩形断面の杭11と断面積の等しい円形杭とを比較した場合、周面積は円形杭の方が小さくなる。すなわち、矩形断面とした方が、円形の場合よりも周面積が大きくなり、同じ地盤であっても周面摩擦抵抗を大きくとれる。
【0012】
以上、本発明の実施形態について説明したが本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記実施形態では、既知のデータとして、鉛直載荷試験を実施する場合について説明したが、過去の試験実績などがある場合には、これを既知のデータとして使用してもよい。
前記実施形態では、壁杭の極限鉛直支持力を算定する際に短辺幅に乗じる係数を0.1(10%)としたが、当該係数は1より小さい値であれば、限定されるものではない。なお、前記係数を0.05~0.2の範囲内にすれば、一般的に明瞭な変化点のない壁杭の鉛直荷重度-先端沈下量曲線において、実測値または解析値を反映させた極限鉛直荷重を推定できる。係数aを0.1とした根拠は、基礎指針(日本建築学会:建築基礎構造設計指針、第3版、2019年11月)、「6.2、杭の鉛直支持力」による、「第2限界抵抗力:押込み荷重が最大となったときの荷重。ただし、杭先端沈下量が先端直径の10%以下の範囲とする。」の記載に基づいている。また、係数aの下限値0.05は、壁杭の躯体寸法等のバラツキ程度を考慮して、0.1を下回る値に設定した。さらに、係数aの上限値0.2は、高野・岸田の模型Non-displacement杭による実験(岸田英明・高野昭信:砂地盤中の埋込み杭先端部の接地圧分布(その2、接地圧分布と埋込み杭の先端支持力の関係)、日本建築学会論文報告集、第261号、pp.25~40、1977.11)において、杭先端地盤が全面的に塑性化する沈下量は、杭径(先端直径)の20%とされている開発成果に基づき、設定した。
前記実施形態では、壁杭1の鉛直荷重度(押込み荷重)-先端沈下量曲線を多質点解析による解析値により作成するものとしたが、壁杭の鉛直荷重度(押込み荷重)-先端沈下量曲線は、壁杭の載荷試験結果による実測値または3次元有限要素法解析結果による解析値等の方法で算定してもよい。
壁杭1の極限鉛直支持力を算定する際に使用する既知のデータは前記実施形態で示したものに限定されるものではなく、例えば、鉛直載荷試験等により採取してもよい。
図7に示すように、壁杭1が拡底部14を有する連続地中壁杭の場合には、拡底部を含む平面の投影面積を壁杭の長辺長さで除して求めた等価な短辺幅を壁杭1の幅Bとすればよい。
【0013】
以下、本発明の壁杭の鉛直支持力の評価方法と従来の評価方法とを比較した結果を示す。図8に、実測値に基づく壁杭の荷重と沈下量の関係と円形杭の荷重と沈下量との関係を示す。また、表1に壁杭および円形杭の断面諸元を示す。表1に示すように、壁杭と円形杭は、同等の断面寸法になるように設定した。
【0014】
【表1】
【0015】
図8に示すように、壁杭1にすることで杭先端の沈下量が小さくなり、常時荷重による沈下量を合理的に評価できることが確認できた。
次に、図9に示す実測データと、式1により算出したデータとの比較を行った。図10に実測値と式1の算出結果による荷重と沈下量の関係を示す。
【0016】
【数1】
【0017】
図9に示すように、壁杭と円形杭のいずれの場合であっても、実測値と解析値とが同等の非線形を示す結果となった。
【符号の説明】
【0018】
1 壁杭
11 矩形断面の杭
12 要素
13 円形杭
a 係数
B 短辺幅
杭荷重
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9