(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】レーダーシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 13/88 20060101AFI20240808BHJP
G01S 7/04 20060101ALI20240808BHJP
G01S 13/86 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01S13/88
G01S7/04
G01S13/86
(21)【出願番号】P 2021138712
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-086729(JP,A)
【文献】特開2013-134343(JP,A)
【文献】特開2019-211249(JP,A)
【文献】国際公開第2021/059340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を捜索対象となる領域に向けて発し、当該領域で前記送信波が反射された反射波に基づいて前記領域内の捜索を
行うレーダー装置が複数組み合わされたレーダーシステムであって、
各前記レーダー装置は、
前記領域内における前記捜索に適した一領域として設定される適正領域が設定され、
前記送信波を、前記適正領域内を走査するように発するレーダー装置本体と、
前記レーダー装置本体に固定され、前記適正領域の端部に向けて前記送信波が発せられる際の前記送信波の経路と近接した経路でレーザー光を
、前記レーザー光に照射された箇所を、前記端部に対応する範囲を線状に示す軌跡となるように走査して照射するレーザー光発振部と、
を具備
し、
前記レーダー装置が複数配列されて設けられ、各前記レーダー装置における前記軌跡を、前記領域の地図画像に重畳させて表示させることを特徴とするレーダーシステム。
【請求項2】
前記レーダー装置は、前記軌跡を撮像する撮像ユニットを具備することを特徴とする請求項
1に記載の
レーダーシステム。
【請求項3】
前記レーダー装置において、前記レーザー光発振部は、前記レーザー光を前記送信波と同期させて発することを特徴とする請求項
1または2に記載の
レーダーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダーを用いて落下物等の物体を認識するレーダー装置、レーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダーなどで、広大なエリア(作業現場、グラウンド、施設内、駐車場、道路、線路、滑走路など)における障害物や落下物等、各種の物体を検出するシステムが知られている。レーダー装置においては、送信アンテナから送信された送信波が捜索対象となる物体等で反射され、この反射波が受信アンテナで受信され、その受信波が受信アンテナで受信される。送信波と受信波の関係(時間差等)から、物体までの距離やこの物体が移動体である場合にはその移動速度も算出することができる。この際、送信波の指向性は高く設定されるために、送信波が走査されることによって、広い領域が捜索される。
【0003】
この際、受信波の強度(反射受信電力)は反射体までの距離等に応じて定まるため、状況に応じて大きく異なり、この強度が高すぎる場合には、受信回路に障害が発生する場合がある。例えば、反射体がレーダーのある側に向かって高速で移動しているような場合には、この強度が急激に増大するため、こうした問題が発生しやすい。特許文献1には、このような場合において障害が発生することを抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的には、レーダーの検知精度を高くするためには、反射受信電力は一定の範囲内にあることが要求される。この点において、特許文献1に記載の技術においては、反射受信電力が過大となることは防止されるが、反射受信電力が過度に低下することも抑制することも必要である。このためには、レーダーによる捜索範囲(送信波が走査される範囲)は、一定の領域内となることが要求される。
【0006】
図6は、この状況を単純化して模式的に示す図であり、
図6(a)は、この状況を鉛直面内において示し、
図6(b)は、この状況を水平面内において示す。ここでは、レーダー装置90の捜索の対象は地上G上の落下物200であるものとする。レーダー装置90においては、送信波の仰角、方位角が走査されることによって、送信波が捜索対象となる2次元領域を照射する。例えばレーダー装置90は回転式である。
【0007】
図6(a)に示されるように、レーダー装置90は、地上Gの一点において設置されたレーダー搭100上に固定されており、少なくとも送受信アンテナは回転可能に設けられている。レーダー装置90からの送信波とこれに対応する反射波の経路は同一であり、ここでは、レーダー装置90からみて遠くなる側の経路R1、近くなる側の経路R2が示されており、送信波の仰角は、鉛直面内において経路R1と経路R2の間となるように走査されるものとする。
【0008】
上記の反射受信電力が反射点からの距離で定まると単純化した場合には、上記のような適正な捜索範囲は、レーダー装置90からの距離が適正な範囲内となる領域である。この場合、
図6(a)において、経路R1の距離(長さ)をD1、経路R2の距離(長さ)をD2とし、D1が上記のような距離の範囲の最大値(反射受信電力の最低値に対応)、D2がその最小値(反射受信電力の最大値に対応)とすると、地上Gが水平面である場合には、
図6における領域(適正領域)Xが適正な捜索範囲となる。
【0009】
一方、
図6(b)に示されるように、送信波の方位角は水平面内における経路H1と経路H2の間で走査される。このため、
図6(b)に示されるように、地上Gが水平面で構成される場合には、経路R1、R2は、地上G上においてはレーダー装置90を中心とした円の半径となり、前記の領域Xは、経路R1に対応した円弧状の境界線B1、経路R2に対応した円弧状の境界線B2で囲まれた領域となる。境界線B1、B2は、鉛直面内における送信波の方向(仰角)が
図6(a)のそれぞれ経路R1、R2に対応した状態で固定されて方位角が走査された場合の、送信波の地上G上での軌跡に対応する。
図6(b)における領域(適正領域)Xが、捜索の対象となるべき所望の領域となるように設定される。
【0010】
しかしながら、
図6(b)における領域X(境界線B1、B2)を視覚的に認識することはできないため、レーダー装置90の設置時において、このような状況を適切に認識することは容易ではなかった。あるいは、レーダー装置90の設置後においても、レーダー搭100の経時変化による僅かな傾斜により送信波の方向が設置時から傾斜する場合もあるため、同様の確認を要する場合もあった。
【0011】
また、道路や滑走路等における落下物を検出するためにレーダーを用いる場合には、異なる捜索領域をもち各々が
図6の構成とされたレーダー装置90を地上に複数配置して用いることによって、広い範囲を捜索する方式が用いられる。この場合においては、個々のレーダー装置90毎に上記のような適正領域の確認(あるいはこれに伴う調整作業)をすることが要求されるため、上記のような捜索範囲を認識する作業が容易に行えることが要求された。すなわち、レーダー装置による捜索範囲が適正であることを容易に確認することができる技術が求められた。
【0012】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、送信波を捜索対象となる領域に向けて発し、当該領域で前記送信波が反射された反射波に基づいて前記領域内の捜索を行うレーダー装置が複数組み合わされたレーダーシステムであって、各前記レーダー装置は、前記領域内における前記捜索に適した一領域として設定される適正領域が設定され、前記送信波を、前記適正領域内を走査するように発するレーダー装置本体と、前記レーダー装置本体に固定され、前記適正領域の端部に向けて前記送信波が発せられる際の前記送信波の経路と近接した経路でレーザー光を、前記レーザー光に照射された箇所を、前記端部に対応する範囲を線状に示す軌跡となるように走査して照射するレーザー光発振部と、を具備し、前記レーダー装置が複数配列されて設けられ、各前記レーダー装置における前記軌跡を、前記領域の地図画像に重畳させて表示させる。
前記レーダー装置は、前記軌跡を撮像する撮像ユニットを具備してもよい。
前記レーダー装置において、前記レーザー光発振部は、前記レーザー光を前記送信波と同期させて発してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、レーダー装置による捜索範囲が適正であることを容易に確認させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るレーダー装置の構成を鉛直面内において示す図である。
【
図2】実施形態に係るレーダー装置の構成を水平面内において示す図である。
【
図3】実施形態に係るレーダー装置、レーダーシステムのブロック図である。
【
図4】実施形態に係るレーダー装置において表示される画像の例である。
【
図5】実施形態に係るレーダーシステムにおいて表示される画像の例である。
【
図6】従来のレーダー装置の構成を鉛直面内(a)、水平面内(b)において示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るレーダー装置、レーダーシステムについて説明する。
図1は、このレーダー装置10の構成を
図6(a)に対応した鉛直面内での構成を示す図であり、
図2は、
図6(b)に対応した上面図である。ここで用いられるレーダー装置本体20の基本的構成、動作は
図6のレーダー装置90と同様である。すなわち、レーダー装置本体20は、捜索対象となる領域に送信波を発してその反射波を受信することによって、地上G上の落下物等を捜索することができる。この際、経路R1(距離D1)、経路R2(距離D2)、これにより定まる適正な捜索範囲となる領域(適正領域)X、その外側端部、内側端部(境界線B1、B2)についても同様である。
【0017】
ただし、
図1に示されるように、このレーダー装置10においては、レーダー装置本体20に対してレーザー光発振部30が固定されている。レーザー光発振部30は、可視光(例えば赤色)であり指向性の高いレーザー光を前記の捜索対象となる領域に向けて発し、このレーザー光は、レーダー装置本体20が発する送信波と同期して発せられる。レーザー光発振部30はレーダー装置本体20とは別体であるために送信波(反射波)の経路とこのレーザー光の経路を厳密に一致させることは実際には困難であるが、小型のレーザー光発振部30をレーダー装置本体20に固定した場合には、これらの経路を近くすることができる。また、このレーザー光も、レーダー装置本体20における送信波と同様に、水平面内における方位角が走査される。
【0018】
レーザー光発振部30が発するレーザー光の経路としては、経路R1に近い(経路R1に対応する)経路RL1、経路R2に近い(経路R2に対応する)経路RL2が設定される。このレーザー光が照射された箇所は、可視光で発光する発光点LP1、LP2として認識することができる。ただし、前記のようにこのレーザー光もレーダー装置本体20における送信波と同様に水平面内における方位角が走査されるため、
図1における発光点LP1、LP2は、レーザー光の方位角が走査された場合には、
図2において、発光点LP1、LP2の軌跡である発光線LL1、LL2として認識される。この発光線LL1、LL2は外部から認識することができる。レーダー装置本体20における送信波の走査(回転)が機械的に行われる場合には、レーザー光発振部30をレーダー装置本体20に固定することによって、レーザー光と送信波の走査を容易に同期させて行うことができる。
【0019】
図2における領域X内を捜索するためには、少なくとも領域X内では2次元的に網羅して送信波を走査する必要があるため、仰角、方位角が共に走査される。これに対し、レーザー光は、領域Xの端部を作業者に視覚的に認識させるためにだけ用いられ、落下物200の捜索には直接用いられないため、経路R1に対応した経路RL1、経路R2に対応した経路RL2(
図2における円弧形状である発光線LL1、LL2に対応)においてのみ、レーザー光の方位角を走査してもよい。すなわち、レーザー光の仰角は走査される必要はない。
【0020】
前記の通り経路RL1と経路R1、経路RL2と経路R2を近く設定することによって、
図2における発光線LL1と発光線LL2の間の領域を、前記の領域Xを近似した領域とすることができる。一方、前記の領域Xを視覚的に認識することはできないのに対し、発光線LL1と発光線LL2は視覚的に認識することができる。このため、発光線LL1、LL2を認識することによって、間接的に領域Xを認識することができる。
【0021】
この認識は、捜索を行うべき領域が発光線LL1、LL2の間にあるか否かを作業者が目視で確認することによって行うことができる。あるいは、
図2の状況を撮像ユニット40を用いて撮像し、その映像を基にして判断をすることができ、この判断を作業者が、あるいは画像認識によってコンピュータが行うこともできる。レーザー光は、発光線LL1、LL2が確認できる限りにおいて連続発振される必要はなく、パルス状に発振されてもよい。この場合には、撮像タイミングをこの発振タイミングに同期させることによって、必要最小限の場合においてのみレーザー光の照射を行わせることができる。
【0022】
図3は、上記の機能を実現するレーダー装置10の構成を示す図である。ここでは、
図2の状況を撮像する撮像ユニット40についても記載されている。レーザー光発振部30において、レーザー光は連続的に発振されていてもよいが、パルス状に発振される場合には、そのタイミングはレーダー装置本体20から発せられる送信波と同期させることが、例えば経路R1と経路RL1を近づけるためには好ましい。
図3の構成は、このように送信波とレーザー光が同期するように設定されている。
【0023】
このレーダー装置本体20において送信波として発せられるのは90GHz帯のミリ波であり、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave:周波数連続変調)方式で動作する。このため、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇するように変調された高周波信号(チャープ)が、FMCW送信源21で生成される。この高周波信号は、電力分配器22によってその一部が分配された後に、送信電力増幅器23によって増幅されてから送信アンテナ24によって送信波として発せられる。送信アンテナ24の指向性は高く、例えばその向きが機械的に制御されることによって、送信波が前記のように走査される。
【0024】
受信アンテナ25は、この送信波が対象で反射された反射波を受信できるように設定される。これによって受信された反射波(受信波)は、受信電力増幅器26で増幅されてから、電力分配器22によって分配された高周波信号(送信波に対応)と混合器27によって混合されることによって、IF信号が生成される。このIF信号には、送信波を反射した反射体に関する情報として、反射体までの距離や移動速度等が反映される。このため、信号処理部28は、IF信号をAD変換し、適宜信号処理を行うことによって、これらの情報を認識することができる。この手法は、周知のFMCWレーダーおけるものと同一である。また、この際、信号処理部28は、例えば受信波の強度を認識し、これに応じてFMCW送信源21を制御して、送信波の強度を調整することもできる。
【0025】
レーザー光発振部30には、可視光のレーザー光を発するレーザー光源31が設けられる。レーザー光源31としては、半導体レーザー、ガスレーザー等、所望のタイミングで可視光のレーザー光を発振できるものを用いることができる。レーザー光の波長としては、これによる発光線LL1、LL2が視認しやすい波長が適宜選択される。
【0026】
発振制御部32は、レーザー光源31における発振を制御する。この発振タイミングは、前記の通りレーダー装置本体20における送信波の発振タイミングと同期するように設定される。このためには送信波の発振タイミングに同期したパルス信号であるタイミング信号を、FMCW送信源21や電力分配器22から取り出すことができる。また、実質的には反射波の受信タイミングをこのために用いることもでき、この場合には、このタイミング信号を受信電力増幅器26が反射波を認識したことによって発することもできる。
【0027】
前記のように、
図2のようにレーザー光が照射された状況を作業者が目視で確認することができる。しかしながら、この状況を上方から撮像ユニット40で撮像することもできる。前記のようにレーザー光発振部30はレーダー装置本体20に近接していることが好ましいが、撮像ユニット40は、
図2の状況を適切に撮像するためには、レーザー光発振部30、レーダー装置本体20から離間していることが好ましい。
【0028】
図3において、撮像ユニット40には、
図2の状況を撮像できる撮像部41、各種のデータを記憶する記憶部42、撮像された画像を表示するディスプレイである表示部43、撮像ユニット40全体の制御を行う撮像制御部44が設けられる。
【0029】
撮像制御部44は、撮像部41の撮像タイミングを上記のレーザー光の発振タイミングと同期させることによって、上記の発光線LL1、LL2をより明瞭に撮像し、その画像を表示部43で表示させることができ、作業者はこの画像を確認することができる。この際、捜索対象となる領域の地図データを記憶部42が記憶しておけば、この地図画面に撮像データ(発光線LL1、LL2)を重畳させて表示部43で表示させることができる。
【0030】
図4は、捜索対象となる領域が空港における滑走路である場合における、このような表示の例である。ここでは、図中横方向に延伸する2本の滑走路(RW1、RW2)が存在し、実際に撮像された前記の発光線LL1、LL2が、空港の地図データに重畳されて表示される。この際、撮像制御部44は、発光線LL1のやや外側にある境界線B1、発光線LL2のやや内側にある境界線B2を仮想的に表示部43で表示するさせることにより、領域Xを表示することもできる。作業者は、この画面を見ることによって、レーダー装置10による捜索対象範囲(領域X)が適正であるか(滑走路RW上にあるか)否かを容易に認識することができる。
【0031】
なお、
図3においては表示部43と撮像部41が共に撮像ユニット40内に設けられているが、撮像部41は前記のようにレーザー光発振部30、レーダー装置本体20から離間していることが好ましい一方で、表示部43は、作業者が目視しやすい場所に設置することが好ましい。このため、撮像ユニット40の構成要素は一体化されている必要はない。
【0032】
以上のように、上記のレーダー装置10を用いた場合には、作業者は、送信波が適正な捜索範囲である領域Xに照射されるか否かを容易に認識することができる。こうした特性は、複数のレーダー装置を用いたレーダーシステムにおいては特に有効である。
図5は、このレーダー装置10を複数配列させたレーダーシステムを用いて
図4と同様の滑走路RWを捜索する場合の状況を
図4と同様に示す例である。この場合においては、単一の撮像ユニットを全てのレーダー装置において共通に用いることができる。
図5は、この場合における表示部43の画像の例である。
【0033】
図5においては、各レーダー装置10に対応した領域(適正領域)Xを全て認識することができる。この際、捜索対象を図中下側の滑走路RW1とする場合に、滑走路RW1が隙間なく領域Xで埋められれば、滑走路RW1上の落下物200を確実に認識することができる。
【0034】
各レーダー装置10の設置時においては、このように各レーダー装置10の捜索対象領域となるべき領域Xが配置されていることを確認する必要がある。上記の構成により、設置工事者は、この確認を容易に行うことができる。また、
図1におけるレーダー搭100が経時変化によって傾斜することがあり、対応する領域Xが初期の状態から移動する場合もあるため、この確認作業(あるいはその結果に応じた調整作業)を、定期的に行う必要がある。この場合において、レーダーシステムにおいて使用されるレーダー装置の数が多い場合には、この確認作業が煩雑となるところ、個々のレーダー装置を上記の構成とすることによって、この確認作業等を特に容易とすることができる。
【0035】
なお、上記の例では、
図1等に示されたように、発光線LL1、LL2は、実際の領域(適正領域)Xの端部である境界線B1、B2よりも僅かに内側(
図2において発光線LL1が境界線B1よりも僅かに下側、発光線LL2が境界線B2よりも僅かに上側)に設定された。このため、視覚的に認識可能な発光線LL1と発光線LL2の間の領域は確実に領域Xに含まれる。しかしながら、発光線LL1、LL2と境界線B1、B2の関係は、これらを明確に対応付ける(あるいは発光線LL1、LL2をそれぞれ近似的に境界線B1、B2とみなす)ことができる限りにおいて、適宜設定することができる。例えば、発光線LL1、LL2が境界線B1、B2よりも僅かに外側(
図2において発光線LL1が境界線B1よりも僅かに上側、発光線LL2が境界線B2よりも僅かに下側)とすることもできる。いずれの場合も、発光線LL1と境界線B1、発光線LL2と境界線B2、をそれぞれ近くするようにレーダー装置本体20とレーザー光発振部30を設けることが特に好ましい。
【0036】
また、上記の例では、境界線B1、B2の確認のためにレーザー光が領域Xが方位角方向で走査されて線状に形成された発光線LL1、LL2が形成された。しかしながら、例えば
図4における境界線B1、B2がレーダー装置10を中心とした円弧状であることが明らかであれば、レーザー光は領域Xの全方位にわたり走査されて発光線LL1、LL2が全方位にわたり連続的に形成される必要はない。すなわち、発光線LL1、LL2が形成されなくとも、少なくとも
図1における発光点LP1、LP2が形成され、これらが目視あるいは撮像ユニットで確認できればよい。
【0037】
一方、捜索対象となる領域が厳密な平面ではなく傾斜している箇所があるような場合には、境界線B1、B2は円弧形状とはならない。こうした場合においては、レーザー光を走査して発光線LL1、LL2を形成することが特に有効である。この際、
図1における経路R1と経路RL1、経路R2と経路RL2を極力近づけることが好ましい。
【0038】
また、上記の例では領域Xの遠い側の端部(境界B1)、近い側の端部(境界B2)が発光線LL1(発光点LP1)、発光線LL2(発光点LP2)によってそれぞれ確認されるものとした。しかしながら、境界B1、B2のうちの一方のみが(例えば遠方の境界B1を発光線LL1(発光点LP1)により)確認できる構成としてもよい。
【0039】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0040】
1 レーダーシステム
10、90 レーダー装置
20 レーダー装置本体
21 FMCW送信源
22 電力分配器
23 送信電力増幅器
24 送信アンテナ
25 受信アンテナ
26 受信電力増幅器
27 混合器
28 信号処理部
30 レーザー光発振部
31 レーザー光源
32 発振制御部
40 撮像ユニット
41 撮像部
42 記憶部
43 表示部
44 撮像制御部
100 レーダー搭
200 落下物(物体)
B1、B2 境界線
G 地上
H1、H2、R1、R2、RL1、RL2 経路
LL1、LL2 発光線
LP1、LP2 発光点
X 領域(適正領域)