(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】異常検知装置および異常検知方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240808BHJP
【FI】
G06T7/00 610B
(21)【出願番号】P 2021142617
(22)【出願日】2021-09-01
【審査請求日】2023-02-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 掲載年月日 令和3年8月20日 掲載アドレス http://gijutsu12/Giken/index.html
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 裕喜
【審査官】▲柳▼谷 侑
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-133953(JP,A)
【文献】特開2018-116364(JP,A)
【文献】特開2020-013507(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183547(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/158950(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/012523(WO,A1)
【文献】特開2020-035097(JP,A)
【文献】特開2019-92972(JP,A)
【文献】特開2021-103454(JP,A)
【文献】特開2020-125920(JP,A)
【文献】国際公開第2020/261568(WO,A1)
【文献】特開2017-211259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により撮像された、搬送経路上で搬送される部品における所定の対象物に対する撮像画像を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記撮像画像から前記対象物の画像部分を抽出画像として抽出する抽出部と、
設定に応じて、または、前記抽出画像のデータサイズもしくは形状に応じて、該抽出画像を
複数の画像に分割する
か否かを切り替えて実行する分割部と、
前記分割部により分割された
場合には前記複数の画像を入力として、
該分割部により分割されない場合には前記抽出画像を入力として、所定の学習モデルを用いた異常判定処理により、異常の有無を示す判定結果、および前記判定結果の信頼性の程度を示す信頼度を出力として得る判定部と、
前記取得部により取得された前記撮像画像に対して、
異常を示す前記判定結果および
該判定結果の前記信頼度を重畳して表示装置に表示させる表示制御部と、
を備えた異常検知装置。
【請求項2】
前記部品が前記搬送経路上の所定位置に搬送されたことを示す信号を受信する受信部を、さらに備え、
前記取得部は、前記受信部により前記信号が受信された場合に、前記撮像装置により撮像された前記撮像画像の取得を開始する請求項
1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記受信部により前記信号が受信された場合、待機モードから復帰させ、前記判定部による前記異常判定処理が終了すると、前記待機モードへ移行させる請求項
2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記部品における所定の対象物の画像と、正常か異常かを示すラベルとを組み合わせた教師データを用いて、教師あり学習により前記学習モデルを生成する生成部を、さらに備えた請求項1~
3のいずれか一項に記載の異常検知装置。
【請求項5】
撮像装置により撮像された、搬送経路上で搬送される部品における所定の対象物に対する撮像画像を取得する取得ステップと、
取得した前記撮像画像から前記対象物の画像部分を抽出画像として抽出する抽出ステップと、
設定に応じて、または、前記抽出画像のデータサイズもしくは形状に応じて、該抽出画像を
複数の画像に分割する
か否かを切り替えて実行する分割ステップと、
分割した
場合には前記複数の画像を入力として、
分割しない場合には前記抽出画像を入力として、所定の学習モデルを用いた異常判定処理により、異常の有無を示す判定結果、および前記判定結果の信頼性の程度を示す信頼度を出力として得る判定ステップと、
取得した前記撮像画像に対して、
異常を示す前記判定結果および
該判定結果の前記信頼度を重畳して表示装置に表示させる表示制御ステップと、
を有する異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知装置および異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自動搬送の製造ラインにおいては、要所に撮像装置を設置し、部品に対して目視確認またはルールベースに基づく撮像画像に対する画像判定を行っている。このような製造ラインにおける撮像装置の撮像画像に対する画像判定についての技術として、対象物の表面の画像を取得する取得部と、取得部で取得された対象物の表面の画像から得られる、対象物の表面において鏡面反射成分と拡散反射成分の比率が互いに異なる複数の反射状態に基づいて、対象物の表面の色を判定する処理である色判定処理を行う判定部と、を備えた検査システムが開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の製造ラインにおける技術では、自動車部品のように凹凸等の特徴的な曲線部分が多く存在する部品に対して、単純な色判定処理等に基づく画像処理では、形状の異常を検知することが困難であるという課題がある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、対象物について精度よく形状の異常を検知することができる異常検知装置および異常検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る異常検知装置は、撮像装置により撮像された、搬送経路上で搬送される部品における所定の対象物に対する撮像画像を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記撮像画像から前記対象物の画像部分を抽出画像として抽出する抽出部と、設定に応じて、または、前記抽出画像のデータサイズもしくは形状に応じて、該抽出画像を複数の画像に分割するか否かを切り替えて実行する分割部と、前記分割部により分割された場合には前記複数の画像を入力として、該分割部により分割されない場合には前記抽出画像を入力として、所定の学習モデルを用いた異常判定処理により、異常の有無を示す判定結果、および前記判定結果の信頼性の程度を示す信頼度を出力として得る判定部と、前記取得部により取得された前記撮像画像に対して、異常を示す前記判定結果および該判定結果の前記信頼度を重畳して表示装置に表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、対象物について精度よく形状の異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る異常検知システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る異常検知装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る異常検知装置の機能的なブロック構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、撮像されたルーフ部材の撮像画像およびフランジ部を含む抽出画像の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、フランジ部の正常画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、フランジ部の異常画像の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、フランジ部の抽出画像を分割した状態を説明する図である。
【
図8】
図8は、撮像画像のフランジ部の形状についての判定結果を重畳表示した状態の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る異常検知システムの異常検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、
図1~
図9を参照しながら、本発明に係る異常検知装置および異常検知方法の実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0010】
(異常検知システムの全体構成)
図1は、実施形態に係る異常検知システムの全体構成の一例を示す図である。
図1を参照しながら、本実施形態に係る異常検知システム1の全体構成について説明する。
【0011】
図1に示す異常検知システム1は、搬送ライン3(搬送経路)において、撮像装置により撮像された画像が示す部品における所定の対象物の形状の異常を検知するためのシステムである。
図1に示すように、異常検知システム1は、PLC(Programmable Logic Controller)11と、撮像装置12と、異常検知装置10と、表示装置13と、サーバ装置20と、を含む。
【0012】
PLC11は、搬送ライン3における車体等の部品30の設置動作、組付け動作および搬送動作等を制御する産業用制御装置である。PLC11は、部品30が搬送ライン3上において、撮像装置12による撮像に適した所定位置に搬送されたタイミングで、当該所定位置に搬送されたことを示す搬送信号を、異常検知装置10へ送信する。PLC11からの搬送信号は、直接、またはリレー部品等を介して異常検知装置10へ送信されるものとすればよい。例えば、PLC11は、撮像装置12による撮像に適した所定位置に多関節ロボット等の制御により部品30を設置したタイミング、または、リミッタスイッチ、近接センサもしくは光電センサ等により当該所定位置に部品30が搬送されたことを検知されたタイミングで、搬送信号を異常検知装置10へ送信する。なお、異常検知装置10は、搬送ライン3に設置されたリミッタスイッチ、近接センサもしくは光電センサ等から、所定位置に部品30が搬送されたことを示す搬送信号を受信するものとしてもよい。
【0013】
撮像装置12は、部品30における所定の対象物であるルーフ部材のフランジ部を含む領域を撮像する撮像装置である。撮像装置12は、撮像した撮像画像を異常検知装置10へ送信する。本実施形態では、部品30は、自動車の車体であるものとし、所定の対象物は、車体のルーフ部材のフランジ部であるものとして説明する。なお、部品30および所定の対象物は、これらに限定されるものではない。
【0014】
なお、撮像装置12による撮像画像は、静止画データであってもよく、動画データであってもよい。
【0015】
異常検知装置10は、撮像装置12で撮像された撮像画像に含まれる部品30のルーフ部材のフランジ部について、形状の異常を検知するための装置である。異常検知装置10は、例えば、シングルボードコンピュータによって実現される。なお、異常検知装置10はシングルボードコンピュータであることに限定されず、通常のPC(Personal Computer)またはワークステーション等の情報処理装置であってもよい。異常検知装置10は、画像処理プログラム101と、前処理プログラム102と、異常判定プログラム103と、を含む。
【0016】
画像処理プログラム101は、撮像装置12により撮像された撮像画像から、ルーフ部材のフランジ部の画像を抽出する等の画像処理を行うプログラムである。なお、画像処理プログラム101における抽出方法は、撮像画像の所定の領域の切り出し処理、テンプレートマッチング等による所定のアルゴリズムに基づく抽出処理、または、教師あり学習等により生成した所定の学習モデルを用いるYOLO(You Only Look Once)等を用いた既存の抽出処理のいずれに基づく方法であってもよい。
【0017】
前処理プログラム102は、画像処理プログラム101により抽出された抽出画像に対して、後段の異常判定プログラム103による異常判定のための所定の前処理を実行するためのプログラムである。前処理プログラム102は、所定の前処理として、具体的には、異常判定プログラム103による異常判定処理の負荷を軽減するために、抽出画像を複数の画像に分割する。
【0018】
異常判定プログラム103は、前処理プログラム102により分割された各分割画像について、所定の学習モデル104を用いて異常判定処理を実行するためのプログラムである。具体的には、異常判定プログラム103は、各分割画像を入力として、学習モデル104による判別処理により、正常か異常かの判定結果の出力を得る。学習モデル104は、ルーフ部材のフランジ部の画像に、ラベルとしての正常または異常の情報を組み合わせた教師データを用いて、例えば機械学習の教師あり学習の一例であるCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)等により生成される学習モデルである。また、CNNの場合、前処理プログラム102により抽出画像から分割される分割画像は、垂直および水平のピクセル数が同一の画像(正方形の画像)に分割する必要がある。ただし、抽出画像から直接、正方形の画像に分割する必要は必ずしもなく、学習モデル104による異常判定の精度が確保できる範囲で、分割後の画像を正方形となるように画像サイズを変更するものとしてもよい。なお、学習モデル104を生成する学習アルゴリズムは、CNNに限定されるものではなく、その他の学習アルゴリズムによって生成されるものとしてもよい。また、本実施形態では、フランジ部の画像から、学習モデル104を用いた異常判定処理の結果として、当該フランジ部の形状が正常か異常かの判定結果、および当該判定結果の信頼性の程度を示す信頼度が得られるものとして説明する。
【0019】
表示装置13は、異常判定プログラム103による判定結果等を表示する、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)またはOELD(Organic Electro-Luminescent Display:有機ELディスプレイ)等の表示装置である。
【0020】
サーバ装置20は、異常判定プログラム103による判定結果等を蓄積するサーバ装置である。
【0021】
(異常検知装置のハードウェア構成)
図2は、実施形態に係る異常検知装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2を参照しながら、本実施形態に係る異常検知装置10のハードウェア構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、異常検知装置10は、CPU(Central Processing Unit)201と、RAM(Random Access Memory)202と、ROM(Read Only Memory)203と、補助記憶装置204と、ネットワークI/F205と、入出力I/F206と、表示出力I/F207と、撮像I/F208と、を備えている。これらの各部は、バスライン210を介して互いにデータ通信が可能となるように接続されている。
【0023】
CPU201は、異常検知装置10全体の動作を制御する演算装置である。RAM202は、CPU201のワークエリアとして使用される揮発性記憶装置である。ROM203は、IPL(Initial Program Loader)のようなCPU201が最初に実行するプログラム等を記憶する不揮発性記憶装置である。なお、CPU201、RAM202およびROM203は、例えば1つの基板に実装されたSoC(System on a Chip)として構成されていてもよい。
【0024】
補助記憶装置204は、上述した画像処理プログラム101、前処理プログラム102、異常判定プログラム103および学習モデル104、ならびにこれらのプログラムで用いられる各種データ等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、eMMC(embedded Multi Media Card)またはmicroSDカード等の補助記憶装置である。
【0025】
ネットワークI/F205は、ネットワーク等に接続してデータ通信するためのインターフェースである。
図2に示す例では、ネットワークI/F205は、サーバ装置20に接続されており、異常検知装置10における上述の判定結果等をサーバ装置20へ送信する。また、ネットワークI/F205は、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)のプロトコルで通信可能にするEthernet(登録商標)規格のインターフェースである。なお、ネットワークI/F205は、有線通信に限定されるものではなく、Wi-Fi(登録商標)等に基づく無線通信のインターフェースであってもよい。
【0026】
入出力I/F206は、PLC11と通信をするためのGPIO(General Purpose Input/Output)等のインターフェースである。入出力I/F206は、例えば、PLC11から上述の搬送信号を受信し、異常判定プログラム103による判定結果を示す信号(正常または異常を示す信号)をPLC11へ送信する。
【0027】
表示出力I/F207は、異常判定プログラム103による判定結果等の表示データを表示装置13へ送信するためのHDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)等のインターフェースである。
【0028】
撮像I/F208は、撮像装置12から撮像画像を受信するためのUSB(Universal Serial Bus)等のインターフェースである。
【0029】
なお、
図1に示す異常検知装置10のハードウェア構成は一例を示すものであり、当該構成に限定されるものではない。例えば、グラフィック処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)等を備えているものとしてもよい。
【0030】
(異常検知装置の機能的なブロック構成)
図3は、実施形態に係る異常検知装置の機能的なブロック構成の一例を示す図である。
図4は、撮像されたルーフ部材の撮像画像およびフランジ部を含む抽出画像の一例を示す図である。
図5は、フランジ部の正常画像の一例を示す図である。
図6は、フランジ部の異常画像の一例を示す図である。
図7は、フランジ部の抽出画像を分割した状態を説明する図である。
図8は、撮像画像のフランジ部の形状についての判定結果を重畳表示した状態の一例を示す図である。
図3~
図8を参照しながら、本実施形態に係る異常検知装置10の機能的なブロック構成および動作について説明する。
【0031】
図3に示すように、異常検知装置10は、取得部301と、工程通信部302と、抽出部303と、前処理部304(分割部)と、異常判定部305(判定部)と、表示制御部306と、生成部307と、記憶部308と、を有する。
【0032】
取得部301は、撮像装置12により撮像された、車体である部品30のルーフ部材のフランジ部を含む撮像画像を、撮像I/F208を介して取得する機能部である。ここで、
図4(a)に、撮像画像の一例として、撮像装置12により撮像された、部品30のルーフ部材31のフランジ部31aを含む撮像画像IMG1を示している。また、取得部301は、後述する工程通信部302から部品30についての上述の搬送信号を受信した旨を受け取った場合、撮像装置12により撮像された撮像画像の取得を開始する。なお、工程通信部302により搬送信号を受信したタイミングで、撮像装置12による撮像動作の開始、かつ取得部301による撮像画像の取得動作の開始が行われるものとしてもよい。取得部301は、取得した撮像画像を、抽出部303へ出力する。取得部301は、例えば、
図2に示すCPU201により画像処理プログラム101が実行されることによって実現される。
【0033】
工程通信部302は、入出力I/F206を介して通信を行う機能部である。例えば、工程通信部302は、部品30が搬送ライン3上において、撮像装置12による撮像に適した所定位置に搬送されたタイミングでPLC11から搬送信号を受信し、当該搬送信号を受信した旨を、取得部301へ出力する。また、工程通信部302は、異常判定部305による判定結果を示す信号(正常または異常を示す信号)をPLC11へ送信する。工程通信部302は、例えば、
図2に示すCPU201により所定のプログラムが実行されることによって実現される。
【0034】
抽出部303は、取得部301により取得された撮像画像から、所定の対象物の画像部分を抽出する機能部である。具体的には、抽出部303は、取得部301により取得された撮像画像から、部品30のルーフ部材のフランジ部の画像を抽出する。例えば、
図4(b)では、抽出部303は、取得部301から受け取った撮像画像である
図4(a)に示す撮像画像IMG1から、部品30のルーフ部材31のフランジ部31aを含む画像として抽出画像EIMG1を抽出した例を示している。また、
図5に示す抽出画像EIMG1は、抽出部303により撮像画像から抽出された、形状が正常なフランジ部31aを含む抽出画像の一例を示す。一方、
図6に示す抽出画像EIMG2は、抽出部303により撮像画像から抽出された、異常な形状部分を有するフランジ部31aを含む抽出画像の一例を示す。
図6では、抽出画像EIMG2に示すフランジ部31aに、異常な形状部分として、3か所の異常部分31bを含む例を示している。
【0035】
抽出部303による抽出方法は、撮像画像の所定の領域の切り出し処理、テンプレートマッチング等による所定のアルゴリズムに基づく抽出処理、または、教師あり学習等により生成した所定の学習モデルを用いるYOLO等を用いた既存の抽出処理のいずれに基づく方法であってもよい。抽出部303は、抽出したフランジ部31aの抽出画像、前処理部304へ出力する。抽出部303は、例えば、
図2に示すCPU201により画像処理プログラム101が実行されることによって実現される。
【0036】
前処理部304は、抽出部303により抽出されたフランジ部31aの抽出画像に対して、後段の異常判定部305による異常判定処理のための所定の前処理を実行する機能部である。前処理部304は、所定の前処理として、具体的には、異常判定部305による異常判定処理の負荷を軽減するために、抽出画像を複数の画像に分割する。
図7に示す例では、前処理部304は、例えば、抽出部303より抽出された抽出画像EIMG1について、5つの分割画像SIMGに分割している。なお、異常判定部305が用いる学習モデル104がCNNに基づくものである場合、上述のように、抽出画像から分割される分割画像は、垂直および水平のピクセル数が同一の画像(正方形の画像)に分割する必要がある。ただし、抽出画像から直接、正方形の画像に分割する必要は必ずしもなく、学習モデル104による異常判定の精度が確保できる範囲で、分割後の画像を正方形となるように画像サイズを変更するものとしてもよい。前処理部304は、分割した複数の分割画像を、異常判定部305へ出力する。
【0037】
抽出部303により抽出された抽出画像が高解像度のデータサイズが大きな画像である場合、異常判定部305による異常判定処理に大きな負荷がかかるところ、上述のように、前処理部304により抽出画像を複数の分割画像に分割することによって、当該異常判定処理の負荷を低減することができる。また、異常判定部305による異常判定処理の負荷を低減するために、抽出画像を縮小してデータサイズを小さくすることも考えられるが、抽出画像に含まれるフランジ部31aの形状の解像度が下がり、当該異常判定処理の精度が低下するため、好ましくない。なお、
図7の例では、所定の対象物として横長のフランジ部31aであるために、水平方向に分割しているが、これに限定されるものではなく、抽出画像に含まれる所定の対象物の形状および大きさに応じて、垂直方向、または水平方向および垂直方向に分割するものとしてもよい。また、前処理部304により抽出画像を必ず分割しなければならないわけではなく、抽出画像のデータサイズおよび形状によっては、異常判定部305により抽出画像に対して直接、異常判定処理が実行されるものとしてもよい。この場合、前処理部304により抽出画像を分割するか否かは、設定に切り替えられるものとしてもよく、または、抽出画像のデータサイズまたは形状に応じて自動で切り替えらえるものとしてもよい。
【0038】
前処理部304は、例えば、
図2に示すCPU201により前処理プログラム102が実行されることによって実現される。
【0039】
異常判定部305は、前処理部304により分割された各分割画像について、記憶部308に記憶された学習モデル104を用いて異常判定処理を実行する機能部である。具体的には、異常判定部305は、各分割画像を入力として、学習モデル104による判別処理により、正常か異常かの判定結果(異常の有無を示す判定結果)の出力を行う。この場合、異常判定部305は、分割画像ごとに異常判定処理を行うため、いずれの分割画像に異常があるかを区別して出力することが可能である。また、異常判定部305は、分割画像ごとに、フランジ部31aの形状が正常か異常かの判定結果、および当該判定結果の信頼性の程度を示す信頼度を出力する。異常判定部305は、分割画像ごとの判定結果および信頼度を表示制御部306およびサーバ装置20へ出力し、分割画像ごとの判定結果を工程通信部302へ出力する。そして、工程通信部302は、分割画像ごとの判定結果を、PLC11へ送信し、PLC11は、いずれかの分割画像の判定結果に異常を示すものがある場合には、搬送ライン3に対する所定の処理(ライン停止等)を実行する。異常判定部305は、例えば、
図2に示すCPU201により異常判定プログラム103が実行されることによって実現される。
【0040】
なお、異常判定部305による異常判定処理は、学習モデル104を用いた判別処理を利用するものとしているが、これに限定されるものではなく、テンプレートマッチング等の学習モデルを用いない所定のアルゴリズムに基づく異常判定処理を実行するものとしてもよい。この場合においても、前処理部304により抽出画像を複数の分割画像に分割することによって、当該異常判定処理の負荷を低減することができる。
【0041】
表示制御部306は、異常判定部305から受け取った判定結果を表示装置13に表示させる機能部である。例えば、表示制御部306は、取得部301により取得された撮像画像に対して、当該判定結果を重畳して表示する。なお、当該撮像画像に対して、当該判定結果に加えて、当該判定結果の信頼度を重畳させて表示するものとしてもよい。
図8に示す例では、表示制御部306は、取得部301により取得された撮像画像IMG2において、異常判定部305による異常判定処理で判別されたフランジ部31aにおける異常部分に対して、異常を示す判定結果としての「anomaly」、および当該異常判定処理の信頼度を含む重畳表示部SPNa、SPNbをそれぞれ重畳させて表示している。なお、表示制御部306は、例えば、信頼度の数値に応じて、重畳表示部の表示色等の態様を異なるように表示させてもよい。
【0042】
このように、判定結果を表示装置13に表示させることによって、搬送ライン3の作業者は、判定結果を視覚的に認識することができる。また、撮像画像のフランジ部31aの異常部分に、判定結果を重畳させて表示することによって、作業者は、学習モデル104により判別された、フランジ部31aにおける形状の異常部分を容易に確認することができる。また、撮像画像のフランジ部31aの異常部分に、学習モデル104を用いた識別処理の信頼度を重畳させて表示することによって、学習モデル104に基づく異常判定処理の信頼性を確認することができる。
【0043】
表示制御部306は、例えば、
図2に示すCPU201により異常判定プログラム103等のプログラムが実行されることによって実現される。
【0044】
生成部307は、ルーフ部材のフランジ部の画像に、ラベルとしての正常または異常の情報を組み合わせた教師データを用いて、例えば機械学習の教師あり学習の一例であるCNN等により学習モデル104を予め生成する機能部である。生成部307は、生成した学習モデル104を記憶部308に記憶させる。生成部307は、例えば、
図2に示すCPU201により、上述の教師あり学習を実現する学習プログラムが実行されることによって実現される。
【0045】
記憶部308は、画像処理プログラム101、前処理プログラム102、異常判定プログラム103および学習モデル104、ならびにこれらのプログラムで用いられる各種データ等を記憶する機能部である。なお、上述の
図1で示したように、画像処理プログラム101、前処理プログラム102、学習モデル104を用いる異常判定プログラム103は、別々のプログラムとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、1つのプログラムとして構成されているものとしてもよい。記憶部308は、
図2に示す補助記憶装置204によって実現される。
【0046】
なお、
図3に示した異常検知装置10の各機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、
図3で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、
図3の1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
【0047】
(異常検知システムの異常検知処理の流れ)
図9は、実施形態に係る異常検知システムの異常検知処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9を参照しながら、本実施形態に係る異常検知システム1の異常検知処理の流れについて説明する。
【0048】
<ステップS11>
まず、部品30が搬送ライン3上において、撮像装置12による撮像に適した所定位置に搬送されたタイミングで、PLC11から当該所定位置に搬送されたことを示す搬送信号が、工程通信部302により受信された場合(ステップS11:Yes)、異常検知装置10は待機モードから通常の動作モードに復帰し、工程通信部302は、当該搬送信号を受信した旨を、取得部301へ出力し、ステップS12へ移行する。部品30が所定位置に搬送されていない場合(ステップS11:No)、当該所定位置に搬送されるまで待機する。ここで、待機モードとは、例えば省電力状態の動作モードである。
【0049】
<ステップS12>
取得部301は、工程通信部302から搬送信号を受信した旨を受け取った場合、撮像装置12により撮像された撮像画像の取得を開始し、取得した撮像画像を、抽出部303へ出力する。そして、ステップS13へ移行する。
【0050】
<ステップS13>
抽出部303は、取得部301により取得された撮像画像から、所定の対象物としての部品30のルーフ部材31のフランジ部31aの画像部分を抽出する。抽出部303は、抽出したフランジ部31aの抽出画像、前処理部304へ出力する。そして、ステップS14へ移行する。
【0051】
<ステップS14>
前処理部304は、後段の異常判定部305による異常判定処理のための前処理として、抽出部303により抽出されたフランジ部31aの抽出画像を複数の画像に分割する。前処理部304は、分割した複数の分割画像を、異常判定部305へ出力する。そして、ステップS15へ移行する。
【0052】
<ステップS15>
異常判定部305は、前処理部304により分割された各分割画像について、記憶部308に記憶された学習モデル104を用いて異常判定処理を実行する。具体的には、異常判定部305は、各分割画像を入力として、学習モデル104による判別処理により、正常か異常かの判定結果の出力を行う。また、異常判定部305は、分割画像ごとに、フランジ部31aの形状が正常か異常かの判定結果、および当該判定結果の信頼性の程度を示す信頼度を出力する。異常判定部305は、分割画像ごとの判定結果および信頼度を表示制御部306およびサーバ装置20へ出力し、分割画像ごとの判定結果を工程通信部302へ出力する。そして、ステップS16へ移行する。
【0053】
<ステップS16>
表示制御部306は、取得部301により取得された撮像画像に対して、当該判定結果を重畳して表示する。そして、ステップS17へ移行する。
【0054】
<ステップS17>
工程通信部302は、分割画像ごとの判定結果を、PLC11へ送信する。PLC11は、いずれかの分割画像の判定結果に異常を示すものがある場合には、搬送ライン3に対する所定の処理(ライン停止等)を実行する。そして、異常検知装置10は待機モードへ移行する。そして、異常検知処理を終了する。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る異常検知装置10では、取得部301が、撮像装置12により撮像された、搬送ライン3上で搬送される部品30におけるルーフ部材31のフランジ部31aに対する撮像画像を取得し、前処理部304が、取得部301により取得された撮像画像におけるフランジ部31aの画像部分を、複数の画像に分割し、異常判定部305が、前処理部304により分割された複数の分割画像を入力として、学習モデル104を用いた異常判定処理により、異常の有無を示す判定結果を出力として得るものとしている。これによって、所定の対象物としてのフランジ部31aについて精度よく形状の異常を検知することができる。また、撮像画像のフランジ部31aの画像部分を複数の分割画像に分割するため、異常判定部305による異常判定処理の負荷を低減することができる。
【0056】
また、異常検知装置10では、抽出部303が、取得部301により取得された撮像画像からフランジ部31aの画像部分を抽出画像として抽出し、前処理部304が、抽出部303により抽出された抽出画像を、複数の画像に分割するものとしている。これによって、所定の対象物としてのフランジ部31aを含む画像部分を抽出したうえで異常判定処理が行われるので、フランジ部31aに対する異常検知の精度を向上させることができる。
【0057】
また、異常検知装置10では、工程通信部302が、部品30が搬送ライン3上の所定位置に搬送されたことを示す搬送信号を受信し、取得部301が、工程通信部302により搬送信号が受信された場合に、撮像装置12により撮像された撮像画像の取得を開始するものとしている。これによって、搬送信号が受信された時点から、撮像画像の取得処理が開始されて、異常判定処理までの一連の処理が実行されるので、異常検知装置10の処理負荷を低減することができる。
【0058】
また、異常検知装置10では、工程通信部302により搬送信号が受信された場合、待機モードから復帰させ、異常判定部305による異常判定処理が終了すると、待機モードへ移行させるものとしている。これによって、異常検知装置10としてシングルボードコンピュータ等を採用することができ、処理負荷を低減することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 異常検知システム
3 搬送ライン
10 異常検知装置
11 PLC
12 撮像装置
13 表示装置
20 サーバ装置
30 部品
31 ルーフ部材
31a フランジ部
31b 異常部分
101 画像処理プログラム
102 前処理プログラム
103 異常判定プログラム
104 学習モデル
301 取得部
302 工程通信部
303 抽出部
304 前処理部
305 異常判定部
306 表示制御部
307 生成部
308 記憶部