IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エフテックの特許一覧

<>
  • 特許-車両用サブフレーム 図1
  • 特許-車両用サブフレーム 図2
  • 特許-車両用サブフレーム 図3
  • 特許-車両用サブフレーム 図4
  • 特許-車両用サブフレーム 図5
  • 特許-車両用サブフレーム 図6
  • 特許-車両用サブフレーム 図7
  • 特許-車両用サブフレーム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】車両用サブフレーム
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
B62D21/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021174820
(22)【出願日】2021-10-26
(65)【公開番号】P2022074054
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2020183879
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592037790
【氏名又は名称】株式会社エフテック
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【弁理士】
【氏名又は名称】多原 伸宜
(72)【発明者】
【氏名】川井 徹
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩之
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0110925(US,A1)
【文献】特開2016-037238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に装着される車両用サブフレームであって、
前記車体の前後方向に延在して配設され、前記前後方向における前方向の側の第1前車体取付部及び前記前後方向における後方向の側の第1後車体取付部が設定される第1サイドメンバと、
前記車体の前後方向に延在しながら前記車体の幅方向で前記第1サイドメンバに対向して配設され、前記前方向の側の第2前車体取付部及び前記後方向の側の第2後車体取付部が設定される第2サイドメンバと、
前記幅方向に延在して配設されると共に、前記第1サイドメンバ及び前記第2サイドメンバを連結する第1クロスメンバと、
を備え、
前記第1サイドメンバは、前記後方向の側から前記前方向の側に行くに従って前記幅方向の一方の外側に向けて偏向しながら延在する第1延在部を有し、
前記第2サイドメンバは、前記後方向の側から前記前方向の側に行くに従って前記幅方向の他方の外側に向けて偏向しながら延在する第2延在部を有し、
前記第1クロスメンバに前記前方向の側で対向すると共に、前記第1延在部において前記幅方向の前記一方の外側に向けて偏向する偏向度合いが大きくなる第1部分と、前記第2延在部において前記幅方向の前記他方の外側に向けて偏向する偏向度合いが大きくなる第2部分と、を連結する第2クロスメンバを更に備え、
前記第1サイドメンバは、前記前方向の側で前記車両の前面衝突時に折れ曲がり変形する第1前曲がり部と、前記後方向の側で前記前面衝突時に折れ曲がり変形する第1後曲がり部と、を有し、
前記第2サイドメンバは、前記前方向の側で前記前面衝突時に折れ曲がり変形する第2前曲がり部と、前記後方向の側で前記前面衝突時に折れ曲がり変形する第2後曲がり部と、を有し、
前記第2クロスメンバは、前記第1部分に対して、前記第1サイドメンバの前記第1前曲がり部と前記第1後曲がり部との間に連結されると共に、前記第2部分に対して、前記第2サイドメンバの前記第2前曲がり部と前記第2後曲がり部との間に連結される車両用サブフレーム。
【請求項2】
前記第1部分に対する前記第2クロスメンバの連結部は、前記幅方向の前記一方の側に行くほど前記前後方向の長さが長くなる第1拡大部を有し、
前記第2部分に対する前記第2クロスメンバの連結部は、前記幅方向の前記他方の側に行くほど前記前後方向の長さが長くなる第2拡大部を有する請求項1に記載の車両用サブフレーム。
【請求項3】
前記第1拡大部では、前記第1拡大部における前記前方向の側の壁部及び前記後方向の側の壁部の少なくとも一方が、前記前後方向において張り出し、
前記第2拡大部では、前記第2拡大部における前記前方向の側の壁部及び前記後方向の側の壁部の少なくとも一方が、前記前後方向において張り出す請求項2に記載の車両用サブフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サブフレームに関し、特に、自動車等の車両に装着されて内燃機関や電動モータといった駆動源やサスペンションアーム等を支持する車両用サブフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に装着されるサブフレームにおいては、サスペンションアームやスタビライザ等のサスペンション関連部品、ステアリングギヤボックス等のステアリング関連部品及び駆動源・ギヤ機構系のマウント関連部品といった種々の外力印加部品が装着されるようになっている。
【0003】
そのため、かかるサブフレームに対しては、その生産性等を向上させながら、その強度や剛性をより増大させた態様で車両の車体に装着されることが求められている。
【0004】
また、かかるサブフレームに対しては、それが装着される車両の典型的には前面衝突時において、その衝突時に車両が受ける運動エネルギの一部を吸収するためにそれが所望の変形モードで変形すること、つまり所要の衝突性能を発揮することが求められている。
【0005】
かかる状況下で、特許文献1は、車両の前部車体構造に関し、サスクロスメンバー20は、車両前後方向に伸び、途中に屈曲部を有する左右一対の前後方向メンバー21、22と、その前後方向メンバー21、22の前端で車幅方向に伸び、各前後方向メンバーの前端を連結する連結メンバー23と、各前後方向メンバー21、22の側面に各々設けられたサスアーム支持部24と、を備え、前部を厚板21A、22A、中間部を薄板21B、22B、及び後部を厚板21C、22Cとした突き合わせ溶接材で構成されることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-30949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特開2001-30949号公報の構成では、左右一対の前後方向メンバー21、22に中間薄板部21B、22Bを設定し、その前後方向メンバーの前端を連結メンバー23で連結していることにより、オフセット衝突の際に、衝突側の前後方向メンバー21で、前後方向の衝撃エネルギを吸収し、他方の前後方向メンバー22で、車幅方向に変換された衝撃エネルギを吸収することを企図したものであるが、前後方向メンバー21、22のような一対のサイドメンバの同士を、サスアーム支持部や中間の車体取付部を設定し得るクロスメンバで連結する場合に、車両の衝突時に不要な変形が発生することを抑制して中間薄板部21B、22Bのような脆弱部を確実に変形させて、所要の衝突性能を発揮する具体的な構成について、何等開示や示唆するものではない。
【0008】
本発明は、以上の検討を経てなされたもので、車両の前面衝突時に、サイドメンバに不要な変形が発生することを抑制して、所要の衝突性能を発揮することができる車両用サブフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成すべく、本発明の第1の局面は、車体に装着される車両用サブフレームであって、前記車体の前後方向に延在して配設され、前記前後方向における前方向の側の第1前車体取付部及び前記前後方向における後方向の側の第1後車体取付部が設定される第1サイドメンバと、前記車体の前後方向に延在しながら前記車体の幅方向で前記第1サイドメンバに対向して配設され、前記前方向の側の第2前車体取付部及び前記後方向の側の第2後車体取付部が設定される第2サイドメンバと、前記幅方向に延在して配設されると共に、前記第1サイドメンバ及び前記第2サイドメンバを連結する第1クロスメンバと、を備え、前記第1サイドメンバは、前記後方向の側から前記前方向の側に行くに従って前記幅方向の一方の外側に向けて偏向しながら延在する第1延在部を有し、前記第2サイドメンバは、前記後方向の側から前記前方向の側に行くに従って前記幅方向の他方の外側に向けて偏向しながら延在する第2延在部を有し、前記第1クロスメンバに前記前方向の側で対向すると共に、前記第1延在部において前記幅方向の前記一方の外側に向けて偏向する偏向度合いが大きくなる第1部分と、前記第2延在部において前記幅方向の前記他方の外側に向けて偏向する偏向度合いが大きくなる第2部分と、を連結する第2クロスメンバを更に備え、前記第1サイドメンバは、前記前方向の側で前記車両の前面衝突時に折れ曲がり変形する第1前曲がり部と、前記後方向の側で前記前面衝突時に折れ曲がり変形する第1後曲がり部と、を有し、前記第2サイドメンバは、前記前方向の側で前記前面衝突時に折れ曲がり変形する第2前曲がり部と、前記後方向の側で前記前面衝突時に折れ曲がり変形する第2後曲がり部と、を有し、前記第2クロスメンバは、前記第1部分に対して、前記第1サイドメンバの前記第1前曲がり部と前記第1後曲がり部との間に連結されると共に、前記第2部分に対して、前記第2サイドメンバの前記第2前曲がり部と前記第2後曲がり部との間に連結される車両用サブフレームである。
【0010】
また、本発明は、かかる第1の局面に加え、前記第1部分に対する前記第2クロスメンバの連結部は、前記幅方向の前記一方の側に行くほど前記前後方向の長さが長くなる第1拡大部を有し、前記第2部分に対する前記第2クロスメンバの連結部は、前記幅方向の前記他方の側に行くほど前記前後方向の長さが長くなる第2拡大部を有することを第2の局面とする。
【0011】
また、本発明は、かかる第の局面に加え、前記第1拡大部では、前記第1拡大部における前記前方向の側の壁部及び前記後方向の側の壁部の少なくとも一方が、前記前後方向において張り出し、前記第2拡大部では、前記第2拡大部における前記前方向の側の壁部及び前記後方向の側の壁部の少なくとも一方が、前記前後方向において張り出すことを第3の局面とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の局面における構成によれば、前記第1サイドメンバが、前記後方向の側から前記前方向の側に行くに従って前記幅方向の一方の外側に向けて偏向しながら延在する第1延在部を有し、前記第2サイドメンバが、前記後方向の側から前記前方向の側に行くに従って前記幅方向の他方の外側に向けて偏向しながら延在する第2延在部を有し、前記第1クロスメンバに前記前方向の側で対向すると共に、前記第1延在部において前記幅方向の前記一方の外側に向けて偏向する偏向度合いが大きくなる部分と、前記第2延在部において前記幅方向の前記他方の外側に向けて偏向する偏向度合いが大きくなる部分と、を連結する第2クロスメンバを更に備え、前記第1サイドメンバが、前方方向の側で車両の前面衝突時に折れ曲がり変形する第1前曲がり部と、後方向の側で前面衝突時に折れ曲がり変形する第1後曲がり部と、を有し、第2サイドメンバが、前方向の側で前面衝突時に折れ曲がり変形する第2前曲がり部と、後方向の側で前面衝突時に折れ曲がり変形する第2後曲がり部と、を有し、第2クロスメンバが、第1部分に対して、第1サイドメンバの第1前曲がり部と第1後曲がり部との間に連結されると共に、第2部分に対して、第2サイドメンバの第2前曲がり部と第2後曲がり部との間に連結されることにより、いわゆるオフセット衝突等において、車両に対して左右の一方の側に偏った前面衝突荷重が第1のサイドメンバ及び第2のサイドメンバの一方に印加されたときに、その一方のサイドメンバを幅方向の外側に向けて不要に変形させることを抑制しながら、他方のサイドメンバへ衝突荷重を伝達して分散させることができる。
【0014】
また、本発明の第2の局面における構成によれば、前記第1部分に対する前記第2クロスメンバの連結部が、前記幅方向の前記一方の側に行くほど前記前後方向の長さが長くなる第1拡大部を有し、前記第2部分に対する前記第2クロスメンバの連結部が、前記幅方向の前記他方の側に行くほど前記前後方向の長さが長くなる第2拡大部を有することにより、衝突荷重が印加されたサイドメンバを幅方向の外側に向けて不要に変形させることを確実に抑制しながら、衝突荷重を確実に分散させることができる。
【0015】
また、本発明の第3の局面における構成によれば、第1拡大部では、前記第1拡大部における前記前方向の側の壁部及び前記後方向の側の壁部の少なくとも一方が、前記前後方向において張り出し、前記第2拡大部では、前記第2拡大部における前記前方向の側の壁部及び前記後方向の側の壁部の少なくとも一方が、前記前後方向において張り出すことにより、サブフレーム周りのレイアウトの自由度に適合して、サイドメンバを確実に連結して、衝突荷重が印加されたサイドメンバを幅方向の外側に向けて不要に変形させることをより確実に抑制しながら、衝突荷重をより確実に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態における車両用サブフレームの構成を示す平面図である。
図2図2は、本実施形態における車両用サブフレームの構成を示す底面図である。
図3図3は、本実施形態における車両用サブフレームの構成を示す左側面図である。
図4図4(a)は、図1のA-A断面図であり、図4(b)は、図1のB-B断面図である。
図5図5(a)は、図3のC-C断面図であり、図5(b)は、図3のF-F断面図であり、図5(c)は、図3のG-G断面図である。
図6図6(a)は、本実施形態における車両用サブフレームのクラッシュボックスの構成を示す左拡大部分側面図であって、図6(b)は、本実施形態における車両用サブフレームのサイドメンバの構成を示す左拡大部分側面図であり、いずれも位置的は図3に相当する。
図7図7(a)は、本実施形態における車両用サブフレームが車両の前面衝突時に前方向の側から後方向の側に向けて印加される衝突荷重を受けて変形した変形状態を示す図3に相当する模式的左側面図であり、図7(b)は、本実施形態における車両用サブフレームが車両の前面衝突時に前方向の側から後方向の側に向けて印加される衝突荷重を受けて変形する際に、車両用サブフレームの前後方向における変形量に対する車両用サブフレームが受ける荷重の変化を示す模式図である。
図8図8(a)は、本実施形態における車両用サブフレームの部分平面図であり、図8(b)は、本実施形態における車両用サブフレームの部分底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1から図8を適宜参照して、本発明の実施形態における車両用サブフレームにつき詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系を成す。また、x軸の正方向が車体の右方向であり、y軸の正方向が車体の前方向であり、かつ、z軸の正方向が車体の上方向である。また、x軸の方向を幅方向又は横方向、y軸の方向を前後方向及びz軸の方向を上下方向と呼ぶことがある。
【0019】
図1から図3は、各々、本実施形態における車両用サブフレームの構成を示す平面図、底面図及び左側面図である。図4(a)及び図4(b)は、図1のA-A断面図及びB-B断面図であり、いずれもy軸及びz軸が成すy-z平面に平行な平面で切った縦断面図である。図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、図3のC-C断面図、F-F断面図及びG-G断面図であり、いずれもx軸及びz軸が成すx-z平面に平行な平面で切った縦断面図である。図6(a)は、本実施形態における車両用サブフレームのクラッシュボックスの構成を示す左拡大部分側面図であって、図6(b)は、本実施形態における車両用サブフレームのサイドメンバの構成を示す左拡大部分側面図であり、いずれも位置的は図3に相当する。また、図7(a)は、本実施形態における車両用サブフレームが車両の前面衝突時に前方向の側から後方向の側に向けて印加される衝突荷重(撃力)を受けて変形した変形状態を示す図3に相当する模式的左側面図であり、図7(b)は、本実施形態における車両用サブフレームが車両の前面衝突時に前方向の側から後方向の側に向けて印加される衝突荷重を受けて変形する際に、前後方向における車両用サブフレームの変形量(横軸)に対する車両用サブフレームが受ける荷重(縦軸)の変化を示す模式図である。ここで、図7(b)において、変形中等で変形量が増加し易い(時間変化が大きい)と荷重の傾きが小さくなり、変形前や変形後で変形量が増加し難い(時間変化が小さい)と荷重の傾きが大きくなる。また、図8(a)は、本実施形態における車両用サブフレームの部分平面図であり、図8(b)は、本実施形態における車両用サブフレームの部分底面図である。なお、図3図4(b)及び図5中では、便宜上、左側の構成要素の符号及び右側の構成要素の符号の一方を括弧書きで示している。図3及び図7(a)中では、便宜上、仮想線Bで車体の一部を示している。図5(a)中では、図3のD-D断面図及びE-E断面図の輪郭線を仮想線Cで模式的に示している。また、図5中の断面は、典型的には矩形状断面であり、h1、H1等の寸法は、便宜上板内間の寸法として示している。
【0020】
図1から図8に示すように、サブフレーム1は、いずれも図示を省略するが、自動車等の車両の駆動源である内燃機関及び電動モータの一方又は双方と、それらの所要な変速機や減速機と、を収容する収容室内で、前後方向に延在するフロントサイドフレーム等の車体に装着されながら、駆動源、変速機及び減速機の内の所要のものやサスペンションアーム等を支持するものである。かかるサブフレーム1は、典型的には、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称(面対称)な形状を有する。
【0021】
サブフレーム1においては、いずれも詳細は後述するが、車体に装着される部位として、第1車体取付部A1、第2車体取付部A2、第3車体取付部A3、第4車体取付部A4、第5車体取付部A5及び第6車体取付部A6の6カ所が設定され、サスペンションアームを支持する部位として、第1支持部S1、第2支持部S2、第3支持部S3及び第4支持部S4の4カ所が設定されている。
【0022】
また、サブフレーム1においては、各種の外力印加部品の装着用の取付部が設定されており、かかる各種の取付部としては、いずれも詳細は後述するが、ステアリングギヤボックス左取付部A7、ステアリングギヤボックス右取付部A8、駆動源、変速機及び減速機の内の所要のものを取り付ける複数のマウント取付部A9、スタビライザ左取付部A10及びスタビライザ右取付部A11が挙げられる。
【0023】
具体的には、サブフレーム1は、主として、閉断面を幅方向に連続して画成しながら幅方向に延在して配設されるクロスメンバ10と、クロスメンバ10等に連結されてその左端部の側に配設される左取付部材60と、クロスメンバ10等に連結されてその右端部の側に配設される右取付部材80と、クロスメンバ10並びに左取付部材60及び右取付部材80等に連結されると共に、前後方向に延在しながら幅方向で互いに対向して配設される一対のサイドメンバである左サイドメンバ110及び右サイドメンバ150と、クロスメンバ10、左取付部材60及び右取付部材80並びに左サイドメンバ110及び右サイドメンバ150等に連結されると共にクロスメンバ10の後方向の側に配設される後アッパメンバ210と、クロスメンバ10、左取付部材60及び右取付部材80、左サイドメンバ110及び右サイドメンバ150並び後アッパメンバ210に連結されると共に後アッパメンバ210に上下方向で対向して後アッパメンバ210の下方向の側に配設される後ロアメンバ230と、幅方向に延在してクロスメンバ10に前後方向で対向しクロスメンバ10の前方向の側に配設されると共に左サイドメンバ110及び右サイドメンバ150を連結する前クロスメンバ240と、左サイドメンバ110の前端部に連結されると共に左サイドメンバ110の前端部から前方向に延在して配設される左クラッシュボックス260と、右サイドメンバ150の前端部に連結されると共に右サイドメンバ150の前端部から前方向に延在して配設される右クラッシュボックス280と、を備える。これらの部材は、各々、典型的には、鋼板等の平板部材をプレス成形して得られるものであり、互いの重ね合わされた部分や突き合わされた部分が対応して当接された状態でプラグ溶接やアーク溶接等で溶接されて一体化されることにより、サブフレーム1は、基本的には閉断面形状を呈している。なお、これらの部材は、アルミ鋳造材等の金属材を鋳造して得られるものであってもよい。また、後アッパメンバ210、後ロアメンバ230、左クラッシュボックス260及び右クラッシュボックス280は、部品レイアウト上や衝突時を含む強度上等で必要とされない場合には、適宜選択的に省略してもよいが、本実施形態では、これらの部材をも備えた構成を例として説明する。
【0024】
クロスメンバ10は、幅方向に延在する横上部材12と、横上部材12の下方向の側でそれに上下方向で対向しながら幅方向に延在して配設されると共に、横上部材12に当接してそれに典型的にはアーク溶接等で溶接されることにより一体化された横下部材22と、を備える。また、クロスメンバ10は、互いに一体化された横上部材12及び横下部材22により、y-z平面に平行な平面における閉断面(縦閉断面)を幅方向に連続して画成する。
【0025】
詳しくは、横上部材12は、典型的には単一の1枚の鋼板等の板部材から成形され、基本的に上方向に凸の形状を呈した板部材であり、上壁部14、前縦壁部16、及び前縦壁部16の後方向の側で前縦壁部16に前後方向で対向する後縦壁部18を有する。上壁部14は、幅方向における横上部材12の全長にわたって設けられているが、前縦壁部16及び後縦壁部18は、幅方向における横上部材12の一部で消失している部分を有していてもよい。
【0026】
上壁部14は、前縦壁部16及び後縦壁部18を接続すると共に、その幅方向の中間部において、前方向に突出するように張り出した張出部20を有する。張出部20に対応する幅方向の部位における上壁部14には、それを貫通する貫通孔21が形成される。
【0027】
横下部材22は、典型的には単一の1枚の鋼板等の板部材から成形され、基本的に下方向に凸の形状を呈した板部材であり、底壁部24、前縦壁部26、及び前縦壁部26の後方向の側で前縦壁部26に前後方向で対向する後縦壁部28を有する。底壁部24、前縦壁部26、及び後縦壁部28は、幅方向における横下部材22の全長にわたって設けられているが、前縦壁部26及び後縦壁部28は、幅方向における横下部材22の一部で消失している部分を有していてもよい。
【0028】
底壁部24は、その幅方向の中間部において、横上部材12の張出部20に対応して、前方向に突出するように張り出した張出部30を有する。張出部30に対応する幅方向の部位における底壁部24には、それを貫通する貫通孔31が、横上部材12の貫通孔21に対応して形成されている。これらの貫通孔21及び31に対応して、クロスメンバ10の内部には、典型的には金属製の筒状部材であって図示を省略するカラー部材が固設されている。
【0029】
ここで、クロスメンバ10の左端部の側には、図示を省略する左側サスペンション部材を装着するための左開口端部35が設けられ、クロスメンバ10の右端部の側には、図示を省略する右側サスペンション部材を装着するための右開口端部45が設けられる。つまり、左開口端部35及び右開口端部45は、幅方向におけるクロスメンバ10の両端部の側に設定されている。
【0030】
クロスメンバ10の左端部では、横上部材12における前縦壁部16及び後縦壁部18、並びに横下部材22の前縦壁部26及び後縦壁部28は実質消失しているため、横上部材12の上壁部14と、横下部材22の底壁部24と、左支持部材36の縦壁部38と、左取付部材60の左前部材64と、で囲われた左側面視で矩形状の開口端部として、左開口端部35が画成される。左開口端部35において、左支持部材36の縦壁部38及び左取付部材60の左前部材64は共に平板部で互いに前後方向で対向し、このように対向する一方の縦壁部38には、それを貫通する貫通孔41が形成されると共に、貫通孔41に対しては、縦壁部38から前方向を向いてナット42が起立するように固設される。縦壁部38に前後方向で対向する左取付部材60の左前部材64の部分には、それを貫通する貫通孔43が縦壁部38の貫通孔41に対応して形成されている。左支持部材36は、典型的には単一の1枚の鋼板等の板部材から成形される部材であり、縦壁部38並びに少なくとも上方向の側及び下方向の側で縦壁部38から曲げ起こされたフランジ部40を有し、かかるフランジ部40が
クロスメンバ10における横上部材12の上壁部14の下方向の側及び横下部材22の底壁部24の上方向の側でそれらに重ね合わされて当接し、典型的にはアーク溶接等でそれらに対応して溶接されて一体化されている。
【0031】
クロスメンバ10の右端部に画成される右開口端部45に関連する構成は、左開口端部35に関連する構成に対して、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称なものであるため、その詳細な説明は省略するが、右開口端部45は、横上部材12の上壁部14と、横下部材22の底壁部24と、右支持部材46の縦壁部48と、右取付部材80の右前部材84と、で囲われ、左開口端部35における貫通孔41、ナット42及び貫通孔43に対応して貫通孔51、ナット52及び貫通孔53を有する右側面視で矩形状の開口端部である。右支持部材46は、典型的には単一の1枚の鋼板等の板部材から成形される部材であり、縦壁部48並びに少なくとも上方向の側及び下方向の側で縦壁部48から曲げ起こされたフランジ部50を有し、かかるフランジ部50がクロスメンバ10における横上部材12の上壁部14の下方向の側及び横下部材22の底壁部24の上方向の側でそれらに重ね合わされて当接し、典型的にはアーク溶接等でそれらに対応して溶接されて一体化されている。
【0032】
また、幅方向におけるクロスメンバ10の左右の両端部の側には、左開口端部35及び右開口端部45に対応した態様で、サブフレーム1を車体に取り付けるための一対の取付部材である左取付部材60及び右取付部材80が対応して配設される。
【0033】
左取付部材60は、基本的に上方向に向かって突出しながらクロスメンバ10の左端部の側に配設される左後部材62と、基本的に上方向に向かって突出しながらクロスメンバ10の左端部の側に配設されると共に左後部材62に対して前方向の側に配設される左前部材64と、を備える。左後部材62及び左前部材64は、各々、典型的には、鋼板等の一枚の平板部材をプレス成形して得られるものであってアーク溶接等で対応して溶接されて、互いの開いた部分を塞ぐ態様で一体化されており、左取付部材60は、閉断面形状を呈している。なお、成形性は煩雑になるが、必要に応じて、左後部材62及び左前部材64は、別体の2枚の鋼板等の板部材ではなく、単一の1枚の鋼板等の板部材から成形されるものであってもよい。
【0034】
詳しくは、左前部材64は、その下方向の側、前方向の側、左方向の側、右方向の側及び上方向の側の各々の壁部である底壁部65、前縦壁部66、左縦壁部67、傾斜壁部68及び上壁部69を対応して備える。底壁部65は、クロスメンバ10の横下部材22の底壁部24の上方向の側で、それに当接してプラグ溶接やアーク溶接等で溶接されている。前縦壁部66は、底壁部65、左縦壁部67、傾斜壁部68及び上壁部69に接続し、前縦壁部66の下部は、左支持部材36の縦壁部38において貫通孔41が形成されている平板部に前後方向で対向する平板部を構成して貫通孔43を有し、前縦壁部66における貫通孔43よりも上部は、クロスメンバ10の横上部材12の上壁部14及び左サイドメンバ110の左上部材112の各々に当接してアーク溶接等で溶接されている。左縦壁部67は、底壁部65、前縦壁部66及び上壁部69に接続している。傾斜壁部68は、前縦壁部66及び上壁部69に接続し、その下部は、クロスメンバ10の横上部材12の上壁部14、左サイドメンバ110(左上部材112及び左下部材132の少なくと一方)及び後アッパメンバ210の左前端部の各々に当接して、アーク溶接等で溶接されている。上壁部69には、図示を省略する車体取付用ボルトを挿通する貫通孔70が形成されている。つまり、左前部材64は、クロスメンバ10、左サイドメンバ110及び後アッパメンバ210と一体化されている。なお、サブフレーム1が車両の前面衝突時に前方向の側から後方向の側に向けて印加される衝突荷重を受けて変形する際に、左取付部材60が下方向の側に偏位することができるように、貫通孔70に挿通されて締結状態にあるボルトから貫通孔70の周囲の上壁部69に力を印加してそれを変形させ、そのボルトを貫通孔70から外して離脱させるために、貫通孔70の孔形状を円形以外の楕円形、角形及び液滴形等の形状としたり、貫通孔70の周壁に切欠を入れた切り欠き形状としてもよい。
【0035】
左後部材62は、左前部材64の後方向の側で左前部材64の各壁部に当接してアーク溶接等で各々溶接される壁部63を備える。壁部63において、更に、壁部63の下端部は、クロスメンバ10の横下部材22の底壁部24の上方向の側で、それに対して重なった部分が当接してアーク溶接等で溶接されると共に、その下端部よりも上部で左サイドメンバ110の左上部材112及び後アッパメンバ210の左前端部に当接する部分は、各々、アーク溶接等で溶接され、左後部材62は、クロスメンバ10、左サイドメンバ110及び後アッパメンバ210と一体化されている。
【0036】
クロスメンバ10の右端部の側に配設される右取付部材80に関連する構成は、左取付部材60に関連する構成に対して、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称なものであるため、その詳細な説明は省略するが、右取付部材80は、左取付部材60における左後部材62、壁部63、左前部材64、底壁部65、前縦壁部66、左縦壁部67、傾斜壁部68、上壁部69及び貫通孔70に対応して、右後部材82、壁部83、右前部材84、底壁部85、前縦壁部86、右縦壁部87、傾斜壁部88、上壁部89及び貫通孔90を有する。
【0037】
左サイドメンバ110は、基本的に上方向に凸の凸形状を呈し、クロスメンバ10の横上部材12の上壁部14に対してその下方向の側でそれに当接しながら、左側を前後方向に延在する板部材である左上部材112と、左上部材112の下方向の側でそれに上下方向で対向して配設されると共に基本的に下方向に凸の凸形状を呈して、クロスメンバ10の横下部材22の底壁部34に対してその上方向の側でそれに当接しながら、前後方向に延在する板部材である左下部材132と、を備える。左上部材112及び左下部材132では、互いの重ね合わされた部分や突き合わされた部分が対応して当接された状態で典型的にはアーク溶接等で対応して溶接されて、左上部材112及び左下部材132が一体化されている。なお、左サイドメンバ110においては、成形性は煩雑になるが、必要に応じて、左上部材112及び左下部材132は、別体の2枚の鋼板等の板部材ではなく、単一の1枚の鋼板等の板部材や筒部材から成形されるものであってもよい。
【0038】
詳しくは、左上部材112は、上壁部114、左側壁部116、及び左側壁部116の右方向の側で左側壁部116に幅方向で対向する右側壁部118を有し、上壁部114は、左側壁部116及び右側壁部118を接続すると共に、その前端部に貫通孔119及びその後端部に貫通孔120を有する。左上部材112は、かかる前端部と後端部との間に、左上偏向部121及び傾斜部122を有する。左上偏向部121は、上面視で、左上部材112において、貫通孔120を有する後端部から貫通孔119を有する前端部に向かって、左側壁部116及び右側壁部118並びにこれらに伴う上壁部114が前後方向に対して左方向の側に偏向しながら前後方向に延在する中間部であり、特に左取付部材60に設定される第3車体取付部A3よりも前方向の側で、左側壁部116及びこれに伴う上壁部114が左方向の側に偏向する度合いが増加していく(左側壁部116が湾曲面の場合にはその曲げRが小さくなり、左側壁部116が屈曲面の場合にはその前後方向に対する偏向の折れ角が大きくなる)左上偏向増加部121aを有している。但し、右側壁部118においては、左上偏向増加部121aにおいても、左側壁部116に比較して左方向の側に偏向する度合いが増加していない。傾斜部122は、側面視で、左上部材112において、貫通孔119を有すると共に傾斜せずに前後方向に延在する前端部と貫通孔120を有すると共に傾斜せずに前後方向に延在する後端部との間の中間部である。つまり、傾斜部122は、後方向に向かって、上壁部114において前曲がり部123で下降し始め後曲がり部124で下降を終わるように下降しながら直状に延在する中間部であって、前後方向に対する傾斜部122の下降の傾斜角αは、典型的には15°以下で0°より大の一定値に設定されている。左上部材112は、傾斜部122における後曲がり部124と後曲がり部124よりも前方向の側の所定部分とにわたり、傾斜角αで傾斜部122が延在する延在方向(傾斜方向)Aに直交する方向A’において、上壁部114の一般部Gが左下部材132の側を向いた向きに凸となるように陥設された凹部126を有する。凹部126は、傾斜部122の後端部で傾斜方向Aに所定長さで延在するように設定されており、凹部126の後曲がり部124の側の端部である後端部の位置は、その後端部から前曲がり部123までの距離よりも、その後端部から後曲がり部124までの距離が近くなるように設定されるもので、典型的は後曲がり部124の位置(後曲がり部124が屈曲部である場合にはその折れ線の位置であり、後曲がり部124が湾曲部である場合にはその湾曲の範囲内の位置)に一致するように設定されるものであるが、上壁部114が陥設されていない一般部Gと凹部126との間の変化面は、後曲がり部124を左上部材112の後端部の側に超えて延出してもよい。なお、詳細は後述するような凹部126及び146が前後方向に圧潰される際に、その圧潰を安定的に生じさせる観点からは、傾斜角αは10°以下の一定値に設定することが好ましい。
【0039】
左下部材132は、底壁部134、左側壁部136、及び左側壁部136の右方向の側で左側壁部136に幅方向で対向する右側壁部138を有し、底壁部134は、左側壁部136及び右側壁部138を接続すると共に、その前端部に貫通孔139及びその後端部に貫通孔140を有する。左下部材132は、かかる前端部と後端部との間に、左下偏向部141及び傾斜部142を有する。左下偏向部141は、上面視で、左下部材132において、貫通孔140を有する後端部から貫通孔139を有する前端部に向かって、左側壁部136及び右側壁部138並びにこれらに伴う底壁部134が前後方向に対して左方向の側に偏向しながら前後方向に延在する中間部であり、特に左取付部材60に設定される第3車体取付部A3よりも前方向の側で、左上部材112の左側壁部116及び右側壁部118並びにこれらに伴う上壁部114と同様に、左側壁部136及びこれに伴う底壁部134が左方向の側に偏向する度合いが増加していく(左側壁部136が湾曲面の場合にはその曲げRが小さくなり、左側壁部136が屈曲面の場合にはその前後方向に対する屈曲の折れ角が大きくなる)左下偏向増加部141aを有している。但し、右側壁部138においては、左下偏向増加部141aにおいても、左側壁部136に比較して左方向の側に偏向する度合いが増加していない。傾斜部142は、側面視で、左下部材132において、貫通孔139を有すると共に傾斜せずに前後方向に延在する前端部と貫通孔140を有すると共に傾斜せずに前後方向に延在する後端部との間の中間部である。つまり、傾斜部142は、後方向に向かって、底壁部134において前曲がり部143で下降し始め後曲がり部144で下降を終わるように傾斜角αで傾斜方向Aと平行に下降しながら直状に延在する中間部である。但し、傾斜部142は、前曲がり部143に連続して後方向に連なって傾斜角αよりも大きな傾斜角で下降する急傾斜部145を含んでいてもよい。左下部材132は、傾斜部142における後曲がり部144と後曲がり部144よりも前方向の側の所定部分とにわたり、方向A’において、底壁部134の一般部Gが左上部材112の側を向いた向きに凸となるように陥設された凹部146を有する。凹部146と左上部材112の凹部126とは方向A’で対向する、つまり凹部146における底壁部134が陥設された部分と左上部材112の凹部126における上壁部114が陥設された部分とは、典型的には、互いに平行であって、かつ方向A’に見て同じ輪郭形状を有してはみ出さないように重なり合う位置的関係にある。底壁部134は、前後方向において、後曲がり部144と貫通孔140との間に、貫通孔147、148及び149を有している。貫通孔139及び140は、左上部材112の貫通孔119及び120の下方向の側でそれらに対応して上下方向で対向しており、左上部材112には、貫通孔147、148及び149の上方向の側で対応して上下方向で対向し図示を省略した貫通孔が形成されていると共に、これらの貫通孔に対応して、左サイドメンバ110の内部には、典型的には金属製の筒状部材であって図示を省略するカラー部材が固設されている。
【0040】
左サイドメンバ110においては、サブフレーム1が車両の前面衝突時に前方向の側から後方向の側に向けて印加される衝突荷重を受けて変形する際に、前曲がり部123及び143、後曲がり部124及び144、凹部126及び146は脆弱部として機能し、具体的には、かかる衝突荷重の印加により、まず凹部126及び146が前後方向に圧潰され始め、それらが前後方向に凹部126及び146の前後方向の当初の全長の例えば2割から3割以下の長さ程度にまで潰されて短くなると実質的に潰され切った状態となり、前曲がり部123及び143が上方向の側に凸となる折れ曲がり変形が開始されると共に、このように潰されて短くなった凹部126及び146を折れ曲がりの起点として、後曲がり部124及び144が下方向の側に凸となるような折れ曲がり変形が開始されて、衝突荷重の印加が終わる際には、前曲がり部123及び143並びに後曲がり部124及び144の各々で折れ曲がって形成される2辺が互いに近接するような折れ曲がり状態を呈する。ここで、典型的には、左上部材112及び左下部材132の各々の材質や板厚は同じものに設定されており、図5Bに示す前曲がり部123及び143における縦断面の断面積、図5Cに仮想線Gで示す後曲がり部124及び144における縦断面の断面積、及び図5Cに示す凹部126及び146における縦断面の断面積を比較すると、凹部126及び146のものが最も小さく設定され、かつ凹部126及び146は傾斜方向Aに所定長さで延在するものであるため、最初に凹部126及び146の圧潰が開始される。次に、傾斜部122及び142を介して前後方向に順に配置される前曲がり部123及び143並びに後曲がり部124及び144については、前曲がり部123及び143における縦断面では、幅(幅方向の長さ)b1が後曲がり部124及び144における縦断面での幅b2よりもかなり広くなっているが、前曲がり部123及び143の折り曲げ強度と、後曲がり部124及び144の折り曲げ強度と、が等価なものとなるように、高さ(上下方向の長さ)h1は後曲がり部124及び144における縦断面での高さh2よりも所定長ほど低く設定されているため、前曲がり部123及び143が上方向の側に凸となる折れ曲がり変形と、後曲がり部124及び144が下方向の側に凸となるような折れ曲がり変形と、が実質同時期に開始されることになる。この際、後曲がり部124及び144が下方向の側に凸となるような折れ曲がりの起点となる部分は、後曲がり部124及び144における縦断面よりも高さが低められた縦断面で所定の長さまで潰されて短くなって後曲がり部124及び144に隣接して前方の側に位置する凹部126及び146である。また、傾斜部142が前曲がり部143に連続して急傾斜部145を含む場合には、前曲がり部123及び143が上方向の側に凸となる折れ曲がり変形がより促進されることになる。なお、必要に応じて、左上部材112及び左下部材132の各々の材質や板厚を異ならせてもよい。
【0041】
左サイドメンバ110は、左取付部材60に溶接されていることに加えて、左上部材112がクロスメンバ10の横上部材22の前縦壁部16に対して前方向の側から典型的にはアーク溶接等で対応して溶接され、左下部材132がクロスメンバ10の横下部材22の底壁部24の上方向の側でそれに当接してプラグ溶接やアーク溶接等で溶接されることにより、クロスメンバ10と一体化されている。また、左サイドメンバ110は、左上部材112が後アッパメンバ210の左後端部に当接してアーク溶接等で溶接され、左下部材132が後ロアメンバ230の左端部に当接してアーク溶接等で溶接されることにより、後アッパメンバ210及び後ロアメンバ230と一体化されている。なお、左上部材112及び左下部材132は、1枚の鋼板等の板部材で構成しているが、必要に応じて、前後方向の途中で分割した複数の鋼板等の板部材を連結して構成してもよい。また、かかる複数の板部材は、それらの板厚を異ならせてもよい。
【0042】
左サイドメンバ110の右側でそれに幅方向で対向して配設される右サイドメンバ150に関連する構成は、左サイドメンバ110に関連する構成に対して、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称なものであるため、その詳細な説明は省略するが、左サイドメンバ110の左上部材112、上壁部114、左側壁部116、右側壁部118、貫通孔119、120、左上偏向部121、左上偏向増加部121a、傾斜部122、前曲がり部123、後曲がり部124、凹部126、貫通孔127、128及び129、左下部材132、底壁部134、左側壁部136、右側壁部138、貫通孔139、140、左下偏向部141、左下偏向増加部141a、傾斜部142、前曲がり部143、後曲がり部144、急傾斜部145、凹部146、貫通孔147、148及び149に対応して、右上部材152、上壁部154、右側壁部156、左側壁部158、貫通孔159、160、右上偏向部161、右上偏向増加部161a、傾斜部162、前曲がり部163、後曲がり部164、凹部166、貫通孔167、168及び169、右下部材172、底壁部174、右側壁部176、左側壁部178、貫通孔179、180、右下偏向部181、右下偏向増加部181a、傾斜部182、前曲がり部183、後曲がり部184、急傾斜部185、凹部186、貫通孔187、188及び189を有する。
【0043】
後アッパメンバ210は、幅方向に延在するその前端の中間部がクロスメンバ10の横上部材12の上壁部14の後端部にその上方向の側から重なり、その左端部が左取付部材60の左後部材62及び左前部材64にそれらの上方向の側から対応して重なり、その右端部が右取付部材80の右後部材82及び右前部材84にその上方向の側から対応して重なり、かつ、前後方向に各々延在するその左右の両端部が左サイドメンバ110の左上部材112の上壁部114及び右サイドメンバ150の右上部材152の上壁部154に対応してその上方向の側から重なる板部材である。このように後アッパメンバ210の重なる部分の端部が典型的にはアーク溶接等で対応して溶接されることにより、後アッパメンバ210は、クロスメンバ10、左取付部材60、右取付部材80、左サイドメンバ110及び右サイドメンバ150と一体化されている。また、後アッパメンバ210は、幅方向に延在するその後端部が後ロアメンバ230に典型的にはアーク溶接等で対応して溶接されてこれと一体化されている。
【0044】
詳しくは、後アッパメンバ210には、幅方向に延在するその前端部における左右の両端部で左取付部材60及び右取付部材80の後方向の側に対応して、上方向に向かって起立するナット211及び212が固設されている。ナット211及び212は、図示を省略するステアリングギヤボックスの複数の固定部の内の1つを対応して取り付けるためのものであり、後アッパメンバ210には、ナット211及び212に対応して、貫通孔213及び214が形成されている。後アッパメンバ210には、左サイドメンバ110の左下部材132の貫通孔147、148及び149の上方向の側で対応して上下方向で対向した貫通孔215、216及び217が形成されると共に、貫通孔215及び216の間には、後アッパメンバ210の一部を下方向に陥設して形成されると共に図示を省略するスタビライザバーを幅方向に挿通自在な溝部218が幅方向にわたって設けられている。同様に、後アッパメンバ210には、右サイドメンバ150の右下部材172の貫通孔187、188及び189の上方向の側で対応して上下方向で対向した貫通孔225、226及び227が形成されると共に、貫通孔225及び226の間には、貫通孔215及び216の間の溝部218が幅方向に連続して延在している。
【0045】
後アッパメンバ210の下方向の側でそれに上下方向で対向する後ロアメンバ230は、幅方向に延在するその前端部が上下方向でクロスメンバ10の横下部材22の底壁部24の後端部にその下方向の側から重なり、前後方向に各々延在するその左右の端部が上下方向で左サイドメンバ110の左下部材132の底壁部134の右端部及び右サイドメンバ150の右下部材172の底壁部174の左端部に対応して重なる板部材であって、後アッパメンバ210の貫通孔213及び214の下方向の側でそれらに対応して上下方向で対向した貫通孔233及び234が形成されている。また、このように後ロアメンバ230の重なる部分の端部が典型的にはアーク溶接等で対応して溶接されることにより、後ロアメンバ230は、クロスメンバ10、並びに左サイドメンバ110及び右サイドメンバ150と一体化されている。また、後ロアメンバ230は、幅方向に延在するその後端部が後アッパメンバ210の後端部に当接して典型的にはアーク溶接等で溶接されており、これにより、後ロアメンバ230は、後アッパメンバ210と一体化されている。また、クロスメンバ10、左サイドメンバ110、右サイドメンバ150、後アッパメンバ210及び後ロアメンバ230で囲まれる部分は、閉空間を画成することになる。
【0046】
前クロスメンバ240は、その左方向の側が左サイドメンバ110の前後方向における前曲がり部123及び143と凹部126及び146との間で左サイドメンバ110に当接してそれに典型的にはアーク溶接等で溶接されることにより一体化され、その右方向の側が右サイドメンバ150の前後方向における前曲がり部163及び183と凹部166及び186との間で右サイドメンバ150に当接してそれに典型的にはアーク溶接等で溶接されることにより一体化されている。前クロスメンバ240は、幅方向に延在する横上部材242と、横上部材242の下方向の側でそれに上下方向で対向しながら幅方向に延在して配設されると共に、横上部材242に当接してそれに典型的にはアーク溶接等で溶接されることにより一体化された横下部材252と、を備える。また、前クロスメンバ240は、互いに一体化された横上部材242及び横下部材252により、y-z平面に平行な平面における閉断面(縦閉断面)を幅方向に連続して画成する。
【0047】
詳しくは、横上部材242は、典型的には単一の1枚の鋼板等の板部材から成形され、基本的に上方向に凸の形状を呈した板部材であり、上壁部244、前縦壁部246、及び前縦壁部246の後方向の側で前縦壁部246に前後方向で対向する後縦壁部248を有する。上壁部244は、前縦壁部246及び後縦壁部248を接続すると共に、複数の貫通孔249を有する。横上部材242は、左サイドメンバ110の左上偏向増加部121aにおいて、上壁部244の左端部が左サイドメンバ110の左上部材112の上壁部114に当接し、前縦壁部246及び後縦壁部248の各々の左端部が左サイドメンバ110の左上部材112の右側壁部118に当接して、それらに典型的にはアーク溶接等で溶接されることにより一体化された左連結部J1を成している。
【0048】
横下部材252は、典型的には単一の1枚の鋼板等の板部材から成形され、基本的に下方向に凸の形状を呈した板部材であり、底壁部254、前縦壁部256、及び前縦壁部256の後方向の側で前縦壁部256に前後方向で対向する後縦壁部258を有する。底壁部254は、前縦壁部256及び後縦壁部258を接続すると共に、横上部材242の複数の貫通孔249の下方向の側でそれらに対応して上下方向で対向した複数の貫通孔259を有する。横下部材252は、左サイドメンバ110の左下偏向増加部141aにおいて、底壁部254の左端部が左サイドメンバ110の左下部材132の底壁部134に当接し、前縦壁部256及び後縦壁部258の各々の左端部が左サイドメンバ110の左下部材132の右側壁部138に当接して、それらに典型的にはアーク溶接等で溶接されることにより一体化された左連結部J1を、横上部材242と同様に成している。ここで、前クロスメンバ240の左連結部J1の左サイドメンバ110に対する接触面積を増やす観点からは、前クロスメンバ240は、横上部材242及び横下部材252が協働し、幅方向の中央部から左方向の側に向かうにつれて前クロスメンバ240の前後方向の幅(長さ)wが増加する左拡大部E1を有していることが好ましい。詳しくは、前クロスメンバ240は、幅方向の中央部から左方向の側に向かって、前縦壁部246、256の対、及び後縦壁部248、258の対の少なくとも一方が、前縦壁部246、256の対である場合には前方向の側に、及び後縦壁部248、258の対である場合には後ろ方向の側に、対応して偏向し、これに伴って上壁部244及び底壁部254は、前方向の側及び後方向の側の少なくとも一方に張り出した左拡大部E1を成している。また、左サイドメンバ110の連結強度を高める観点からは、左連結部J1は、左取付部材60の上壁部の貫通孔70の側よりも、左サイドメンバ110の左上部材112の貫通孔119及び左下部材132の貫通孔139の側に近づけて設定することが好ましい。なお、前クロスメンバ240においては、成形性は煩雑になるが、必要に応じて、横上部材242及び横下部材252は、別体の2枚の鋼板等の板部材ではなく、単一の1枚の鋼板等の板部材や筒部材から成形されるものであってもよい。なお、前クロスメンバ240においては、右サイドメンバ150に対する連結構成は、左サイドメンバ110に対する連結構成に対して、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称なものであるため、その詳細な説明は省略するが、左連結部J1及び左拡大部E1に対応して、右連結部J2及び右拡大部E2を有する。
【0049】
左クラッシュボックス260は、その後端部に典型的にはアーク溶接等で溶接されると共に左サイドメンバ110の前端部に符号を省略するボルト等で締結される固定部材261と、前後方向に延在する左上部材262と、左上部材262の下方向の側でそれに上下方向で対向しながら前後方向に延在して配設されると共に、左上部材262に当接してそれに典型的にはアーク溶接等で溶接されることにより一体化された左下部材272と、左上部材262及び左下部材272の前端部に典型的にはアーク溶接等で溶接された平板部材である前端部材273と、を備え、前端部材273でその前端部が塞がれた筒状部材である。なお、左クラッシュボックス260においては、成形性は煩雑になるが、必要に応じて、左上部材262及び左下部材272は、別体の2枚の鋼板等の板部材ではなく、単一の1枚の鋼板等の板部材や筒部材から成形されるものであってもよい。また、典型的には、左上部材262及び左下部材272の各々の材質や板厚は同じものに設定されている。なお、必要に応じて、これらの各々の材質や板厚を異ならせてもよい。
【0050】
詳しくは、左上部材262は、典型的には単一の1枚の鋼板等の板部材から成形され、基本的に上方向に凸の形状を呈した板部材であり、上壁部264、左側壁部266、及び左側壁部266の右方向の側で左側壁部266に幅方向で対向する右側壁部268を有し、上壁部264は、左側壁部266及び右側壁部268を接続すると共に、前後方向において、その前端部とその後端部との間で、上壁部264において仮想線で示す一般部Gが下方向に凸となるように陥設された複数の凹部265を有する。複数の凹部265の前後方向における長さについては、典型的には、最も前方向の側に設けられた凹部265の前後方向の長さL1が、それよりも後方向の側に設けられた凹部265の前後方向の長さLnよりも長くなるように設定されている。
【0051】
左下部材272は、典型的には単一の1枚の鋼板等の板部材から成形され、基本的に下方向に凸の形状を呈した板部材であり、底壁部274、左側壁部276、及び左側壁部276の右方向の側で左側壁部276に幅方向で対向する右側壁部278を有し、底壁部274は、左側壁部276及び右側壁部278を接続すると共に、前後方向において、その前端部とその後端部との間で、左上部材262の複数の凹部265の下方の側でそれらと対応して上下方向で対向するように、底壁部274において仮想線で示す一般部Gが上方向に凸となるように陥設された複数の凹部275を有する。複数の凹部275の前後方向における長さについては、左上部材262の複数の凹部265のものと同様に、典型的には、最も前方向の側に設けられた凹部275の前後方向の長さL1が、それよりも後方向の側に設けられた凹部275の長さLnよりも長くなるように設定されている。複数の凹部265及び275は、脆弱部として機能し、最も前方向の側に設けられた凹部265及び275の前後方向の長さL1が、それらよりも後方向の側に設けられた凹部265及び275の長さLnよりも長くなるように設定されているため、最も前方向の側に設けられた凹部265及び275を起点として、複数の凹部265及び275は、前後方向に圧潰を開始する。また、図5Aに示すように、最も前方向の側に設けられた凹部265及び275の高さH1を、それらよりも後方向の側に設けられた凹部265及び275(仮想線Cで示す)の高さHnよりも低く設定することにより、より確実に、最も前方向の側に設けられた凹部265及び275を起点として、複数の凹部265及び275は、前後方向に圧潰を開始することになる。
【0052】
更に、典型的には、左クラッシュボックス260の左上部材262及び左下部材272の各々の材質や板厚は、左サイドメンバ110の左上部材112及び左下部材132の各々の材質や板厚と同じものであるか、又はより強度の弱いものや薄いものに設定されており、図5(a)に示す複数の凹部265及び275における縦断面の断面積は、図5(b)に示す前曲がり部123及び143における縦断面の断面積、図5(c)に仮想線Gで示す後曲がり部124及び144における縦断面の断面積、及び図5(c)に示す凹部126及び146における縦断面の断面積よりも小さく設定されている。このため、サブフレーム1が車両の前面衝突時に前方向の側から後方向の側に向けて印加される衝突荷重を受けて変形する際に、最初に凹部126及び146の圧潰が開始されることになる。
【0053】
左クラッシュボックス260の右側でそれに幅方向で対向して配設される右クラッシュボックス280に関連する構成は、左クラッシュボックス260に関連する構成に対して、y-z平面と平行な平面であって車体の幅方向の中央を前後方向に走る中央線を通る平面に対して、左右対称なものであるため、その詳細な説明は省略するが、左クラッシュボックス260の固定部材261、左上部材262、上壁部264、凹部265、左側壁部266、右側壁部268、左下部材272、前端部材273、底壁部274、凹部275、左側壁部276及び右側壁部278に対応して、固定部材281、右上部材282、上壁部284、凹部285、右側壁部286、左側壁部288、右下部材292、前端部材293、底壁部294、凹部295、右側壁部296及び左側壁部298を有する。
【0054】
さて、以上の構成のサブフレーム1に対して、車両の前面衝突時の前方向の側から後方向の側を向いた衝突荷重がサブフレーム1に印加された場合に、サブフレーム1の変形モードについて、詳細に説明する。ここで、サブフレーム1の変形モードは、左側の構成要素では、左クラッシュボックス260及び左サイドメンバ110の順で変形され、かつ左サイドメンバ110では圧潰が終わってから折り曲げ変形されるものであると共に、右側の構成要素では、右クラッシュボックス280及び右サイドメンバ150の順で変形され、かつ右サイドメンバ150では圧潰が終わってから折り曲げ変形が開始されるものであって、かかる変形モードを実現するため、これらの構成要素の材質、板厚、断面形状及び断面積といったこれらの変形特性を規定する力学的な特性を反映した構成が予め設定されており、サブフレーム1の左側の構成要素の力学的な特性とサブフレーム1の右側の構成要素の力学的な特性とは、互いに左右対称な構成ではあるが同じものに設定されている。また、典型的には、かかる衝突荷重は、左クラッシュボックス260及び右クラッシュボックス280の各々の前端部(前端部材273及び293)の2箇所に、互いに等しい大きさで激力的に印加されることを想定しているものであるため、以下の説明では、主として、サブフレーム1の左側の構成要素に着目して説明を進めることとする。
【0055】
まず、かかる衝突荷重が印加されると、前期変形モードで、サブフレーム1の左側の構成要素の中で最も前方の側に配置される左クラッシュボックス260が前後方向に微小に弾性変形してその変形量がD1となる、つまり左クラッシュボックス260の前端部材273が衝突荷重が印加される前の初期位置から後方向の側に向かって前後方向に長さD1まで変位して変位量がD1となると、サブフレーム1、つまり左クラッシュボックス260は後方向の側に向かって伝達される荷重F1を受けて、左クラッシュボックス260における左上部材262及び左下部材272の最も前方向の側に設けられた凹部265及び275が後方向の側に向かって前後方向に潰される圧潰が開始され、前端部材273の変位量がD3(>D1)になるとそれら及びそれらの後方の側の凹部265及び275が潰され切り、かつ左クラッシュボックス260の前後方向の当初の全長の例えば2割から3割以下の長さ程度にまで潰されて短くなると実質的に潰され切った状態となってここでの圧潰が終わっており、後方向の側に向かって伝達される荷重F3(>F1)を、左サイドメンバ110が受けることになる。このように前端部材273の変位量がゼロからD3になるまでの前期変形モードでは、左クラッシュボックス260に伝達されて受けた荷重はゼロからF3になり、凹部265及び275の圧潰が開始後終了することになって、左クラッシュボックス260の変形量は、前後方向にD3となる。なお、前端部材273の変位量がD2(D3>D2>D1)で、サブフレーム1が受ける荷重がF2(F3>F2>F1)に一旦増加して、凹部265及び275の圧潰が開始されて終わるまでの間にサブフレーム1が受ける荷重の最大値をとっており、その一部は左サイドメンバ110が変形されることなく受けていると考えられるが、この荷重F2は、実用的には、凹部265及び275が受ける荷重の最大値であると考えてよい。
【0056】
次に、かかる衝突荷重の印加中に、中期変形モードで、左サイドメンバ110に伝達された荷重F3は、左サイドメンバ110に過渡的な弾性変形を生じさせ、左クラッシュボックス260の前端部材273の後方向の側に向かって前後方向での変位量がD4(>D3)に到達し、その際の荷重F4(>F3)を左サイドメンバ110の凹部126及び146が受けて、凹部126及び146が傾斜方向Aに潰される圧潰が開始され、その直後の変位量D5(>D4)で、凹部126及び146の圧潰が開始されて終わるまでの間にサブフレーム1が受ける荷重の最大値F5(>F4)をとっている。そして、前端部材273の変位量がD6(>D5)になると126及び146が実質的に潰され切ってここでの圧潰が実質的に終わっており、その際の荷重F6(>F5)を、左サイドメンバ110の前曲がり部123及び143、後曲がり部124及び144が受けることになる。
【0057】
次に、かかる衝突荷重の印加中に、後期変形モードで、左サイドメンバ110の前曲がり部123及び143、後曲がり部124及び144が受けた荷重F6は、前曲がり部123及び143に上方向の側に凸となる折れ曲がり変形を開始させると共に、圧潰が実質的に終わっている凹部126及び146を折れ曲がりの起点として、後曲がり部124及び144を下方向の側に凸となるような折れ曲がり変形を開始させて、前曲がり部123及び143並びに後曲がり部124及び144の各々で折れ曲がって形成される2辺が互いに近づいていく折れ曲がり状態を呈し、これに伴って左取付部材60の上壁部69の貫通孔70を介して車体Bに締結されていたボルトが貫通孔70を変形させてこれから離脱して左中の第3車体取付部A3が車体Bから脱落し、左取付部材60が折れ曲がり変形中の左サイドメンバ110と共に下方向の側に移行される。そして、これ以降は、前曲がり部123及び143並びに後曲がり部124及び144の各々で折れ曲がって形成される2辺が互いに近接するように折れ曲がり状態が進んでいく。ここで、以上の前期変形モードから後期変形モードにおいて、前クロスメンバ240は、左サイドメンバ110及び右サイドメンバ150が互いに外側に変形して偏向することを抑制して、不要な変形モードが生じることを抑制している。
【0058】
以上の構成において、サブフレーム1が車体に装着される各種部位の内、左前の第1車体取付部A1としては、左サイドメンバ110の左上部材112に設けられた貫通孔119、左サイドメンバ110の左下部材132に設けられた貫通孔139及びこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当し、右前の第2車体取付部A2としては、右サイドメンバ150の右上部材152に設けられた貫通孔159、右サイドメンバ150の右下部材172に設けられた貫通孔179及びこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当し、左中の第3車体取付部A3としては、左取付部材60の上壁部69に設けられた貫通孔70が相当し、右中の第4車体取付部A4としては、右取付部材80の上壁部89に設けられた貫通孔90が相当し、左後ろの第5車体取付部A5としては、左サイドメンバ110の左上部材112に設けられた貫通孔120、左サイドメンバ110の左下部材132に設けられた貫通孔140、及びこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当し、並びに右後ろの第6車体取付部A6としては、右サイドメンバ150の右上部材152に設けられた貫通孔160、右サイドメンバ150の右下部材172に設けられた貫通孔180、及びこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当する。なお、これらの部位は、いずれも典型的にはボルト等の締結部材を用いる締結用の部位である。また、これらの部位としては、サブフレームマウント部材を介在させないリジット構造を採用した例を想定している。
【0059】
また、サブフレーム1がサスペンションアームの内側ピボット部を各々支持する各種部位の内、左前の第1支持部S1としては、左支持部材36に設けられた貫通孔41及びナット42、並びに左取付部材60に設けられた貫通孔43を有する左開口端部35が相当し、右前の第2支持部S2としては、右支持部材46に設けられた貫通孔51及びナット52、並びに右取付部材80に設けられた貫通孔53を有する右開口端部45が相当し、左後ろの第3支持部S3としては、左サイドメンバ110の左下部材132に設けられた貫通孔149、後アッパメンバ210に設けられた貫通孔217、及びこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当し、並びに右後ろの第4支持部S4としては、右サイドメンバ150の右下部材172に設けられた貫通孔189、後アッパメンバ210に設けられた貫通孔227、及びこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当する。なお、これらの部位は、いずれも典型的にはボルト等の締結部材を用いる締結用の部位である。また、これらの部位に適用されるサスペンションアームとして、L型ロアアームを採用する例を想定しているが、A型ロアアームや2本のI型ロアアームを採用するものであってもかまわない。また、左前の第1支持部S1及び右前の第2支持部S2では、図示を省略するインシュレータブッシュ部材の内筒が各々締結される例を想定し、左後ろの第3支持部S3及び右後ろの第4支持部S4では、いずれも図示を省略するが、ブラケットが各々締結されて、かかるブラケットにインシュレータブッシュ部材が装着される例を想定している。
【0060】
また、サブフレーム1が各種の外力印加部品を装着する各種取付部の内、ステアリングギヤボックス左取付部A7としては、後アッパメンバ210に設けられたナット211及び貫通孔213、並びに後ロアメンバ230に設けられた貫通孔233が相当し、ステアリングギヤボックス右取付部A8としては、後アッパメンバ210に設けられたナット212及び貫通孔214、並びに後ロアメンバ230に設けられた貫通孔234が相当し、マウント取付部A9としては、クロスメンバ10の横上部材12に設けられた貫通孔21、横下部材22に設けられた貫通孔31、前クロスメンバ240の横上部材242に設けられた貫通孔249、横下部材252に設けられた貫通孔259、及びこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当し、スタビライザ左取付部A10としては、左サイドメンバ110の左下部材132に設けられた貫通孔147及び148、後アッパメンバ210に設けられた貫通孔215及び216、並びにこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当し、スタビライザ右取付部A11としては、右サイドメンバ150の右下部材172に設けられた貫通孔187及び188、後アッパメンバ210に設けられた貫通孔225及び226、並びにこれらに対応して設けられて図示を省略するカラー部材が相当する。なお、これらの部位は、いずれも典型的にはボルト等の締結部材を用いる締結用の部位である。また、ステアリングギヤボックス左取付部A7及びステアリングギヤボックス右取付部A8では、ステアリングギヤボックス本体の左右の取付座が対応して締結される例を想定し、マウント取付部A9では、駆動源、変速機及び減速機の内の所要のものをマウントするための図示を省略するブラケットが締結される例を想定し、並びにスタビライザ左取付部A10及びスタビライザ右取付部A11では、いずれも図示を省略するが、ブラケットが各々締結されて、かかるブラケットにブッシュ部材を介してスタビライザバーが装着される例を想定している。
【0061】
以上の本実施形態におけるサブフレーム1においては、第1サイドメンバ110が、後方向の側から前方向の側に行くに従って幅方向の一方の外側に向けて偏向しながら延在する第1延在部121、141を有し、第2サイドメンバ150が、後方向の側から前方向の側に行くに従って幅方向の他方の外側に向けて偏向しながら延在する第2延在部161、181を有し、第1クロスメンバ10に前方向の側で対向すると共に、第1延在部121、141において幅方向の一方の外側に向けて偏向する偏向度合いが大きくなる部分121a、141aと、第2延在部161、181において幅方向の他方の外側に向けて偏向する偏向度合いが大きくなる部分161a、181aと、を連結する第2クロスメンバ240を更に備えることにより、いわゆるオフセット衝突時等において、車両に対して左右の一方の側に偏った前面衝突荷重が第1のサイドメンバ110及び第2のサイドメンバ150の一方に印加されたときに、その一方のサイドメンバ110、150を幅方向の外側に向けて不要に変形させることを抑制しながら、他方のサイドメンバ150、110へ衝突荷重を伝達して分散させることができる。
【0062】
また、本実施形態におけるサブフレーム1においては、第1サイドメンバ110に対する第2クロスメンバ240の連結部J1が、幅方向の一方の側に行くほど前後方向の長さが長くなる第1拡大部E1を有し、第2サイドメンバ150に対する第2クロスメンバ240の連結部J2が、幅方向の他方の側に行くほど前後方向の長さが長くなる第2拡大部E2を有することにより、衝突荷重が印加されたサイドメンバ110、150を幅方向の外側に向けて不要に変形させることを確実に抑制しながら、衝突荷重を確実に分散させることができる。
【0063】
また、本実施形態におけるサブフレーム1においては、第1拡大部E1では、第1拡大部E1における前方向の側の壁部及び後方向の側の壁部の少なくとも一方が、前後方向において張り出し、第2拡大部では、第2拡大部における前方向の側の壁部16、26及び後方向の側の壁部18、28の少なくとも一方が、前後方向において張り出すことにより、サブフレーム1周りのレイアウトの自由度に適合して、サイドメンバ110、150を確実に連結して、衝突荷重が印加されたサイドメンバ110、150を幅方向の外側に向けて不要に変形させることをより確実に抑制しながら、衝突荷重をより確実に分散させることができる。
【0064】
また、本実施形態におけるサブフレーム1においては、幅方向の一方の側において、第1サイドメンバ110及びクロスメンバ10に対して車体の上下方向の上方側に突設されて、前後方向における第1前車体取付部A1及び第1後車体取付部A5の間の第1中車体取付部A3が設定された第1車体取付部材60と、幅方向の他方の側において、第2サイドメンバ150及びクロスメンバ10に対して上方側に突設されて、前後方向における第2前車体取付部A2及び第2後車体取付部A6の間の第2中車体取付部A4が設定された第2車体取付部材80と、を更に備え、第1サイドメンバ110に対する第2クロスメンバ240の連結部J1が、第1中車体取付部A3よりも第1前車体取付部A1に近づけて配置され、第2サイドメンバ150に対する第2クロスメンバ240の連結部J2が、第2中車体取付部A4よりも第2前車体取付部A2に近づけて配置されることにより、サイドメンバ110、150をより確実に連結して、サイドメンバ110、150を幅方向の外側に向けて不要に変形させることをより確実に抑制することができる。
【0065】
なお、本発明は、部材の種類、形状、配置、個数などは前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明においては、車両の前面衝突時に、サイドメンバに不要な変形が発生することを抑制して、所要の衝突性能を発揮することができる車両用サブフレームを提供することができるものであるため、その汎用普遍的な性格から広範に車両等の移動体のサブフレームの分野に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0067】
1…サブフレーム
10…クロスメンバ
12…横上部材
14…上壁部
16…前縦壁部
18…後縦壁部
20…張出部
21…貫通孔
22…横下部材
24…底壁部
26…前縦壁部
28…後縦壁部
30…張出部
31…貫通孔
35…左開口端部
36…左支持部材
38…縦壁部
40…フランジ部
41…貫通孔
42…ナット
43…貫通孔
45…右開口端部
46…右支持部材
48…縦壁部
50…フランジ部
51…貫通孔
52…ナット
53…貫通孔
60…左取付部材
62…左後部材
63…壁部
64…左前部材
65…底壁部
66…前縦壁部
67…左縦壁部
68…傾斜壁部
69…上壁部
70…貫通孔
80…右取付部材
82…右後部材
83…壁部
84…右前部材
85…底壁部
86…前縦壁部
87…右縦壁部
88…傾斜壁部
89…上壁部
90…貫通孔
110…左サイドメンバ
112…左上部材
114…上壁部
116…左側壁部
118…右側壁部
119、120…貫通孔
121…左上偏向部
121a…左上偏向増加部
122…傾斜部
123…前曲がり部
124…後曲がり部
126…凹部
132…左下部材
134…底壁部
136…左側壁部
138…右側壁部
139、140…貫通孔
141…左下偏向部
141a…左下偏向増加部
142…傾斜部
143…前曲がり部
144…後曲がり部
145…急傾斜部
146…凹部
147、148及び149…貫通孔
150…右サイドメンバ
152…右上部材
154…上壁部
156…右側壁部
158…左側壁部
159、160…貫通孔
161…右上偏向部
161a…右上偏向増加部
162…傾斜部
163…前曲がり部
164…後曲がり部
166…凹部
172…右下部材
174…底壁部
176…右側壁部
178…左側壁部
179、180…貫通孔
181…右下偏向部
181a…右下偏向増加部
182…傾斜部
183…前曲がり部
184…後曲がり部
185…急傾斜部
186…凹部
187、188及び189…貫通孔
210…後アッパメンバ
211、212…ナット
213、214、215、216、217…貫通孔
218…溝部、
225、226、227…貫通孔
230…後ロアメンバ
233、234…貫通孔
240…前クロスメンバ
242…横上部材
244…上壁部
246…前縦壁部
248…後縦壁部
249…貫通孔
252…横下部材
254…底壁部
256…前縦壁部
258…後縦壁部
259…貫通孔
260…左クラッシュボックス
261…固定部材
262…左上部材
264…上壁部
265…凹部
266…左側壁部
268…右側壁部
272…左下部材
273…前端部材
274…底壁部
275…凹部
276…左側壁部
278…右側壁部
280…右クラッシュボックス
281…固定部材
282…右上部材
284…上壁部
285…凹部
286…右側壁部
288…左側壁部
292…右下部材
293…前端部材
294…底壁部
295…凹部
296…右側壁部
298…左側壁部
A1…第1車体取付部
A2…第2車体取付部
A3…第3車体取付部
A4…第4車体取付部
A5…第5車体取付部
A6…第6車体取付部
A7…ステアリングギヤボックス左取付部
A8…ステアリングギヤボックス右取付部
A9…マウント取付部
A10…スタビライザ左取付部
A11…スタビライザ右取付部
S1…第1支持部
S2…第2支持部
S3…第3支持部
S4…第4支持部
J1…左連結部
J2…右連結部
E1…左拡大部
E2…右拡大部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8