(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】抗Siglec-5抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240808BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240808BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240808BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240808BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240808BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240808BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240808BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240808BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240808BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P25/28
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/04
A61P35/02
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021504329
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 US2019043758
(87)【国際公開番号】W WO2020023920
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-26
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517041235
【氏名又は名称】アレクトル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カルプ, パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】バンコティ, ラシュミ
(72)【発明者】
【氏名】ラム, ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンタール, アーノン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-035551(JP,A)
【文献】Glycobiology,2009年,Vol. 19, No. 8,p. 841-846
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む軽鎖可変
ドメインと、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含む重鎖可変
ドメインとを含み、
(a)前記HVR-L1が配列番号103のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L3が配列番号153のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H2が配列番号39のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配
列を含むか、
(b)前記HVR-L1が配列番号104のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L2が配列番号128のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L3が配列番号154のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H1が配列番号21のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H2が配列番号40のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H3が配列番号71のアミノ酸配
列を含むか、
(c)前記HVR-L1が配列番号111のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L2が配列番号133のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L3が配列番号161のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H1が配列番号26のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H2が配列番号46のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H3が配列番号77のアミノ酸配
列を含むか、
(d)前記HVR-L1が配列番号114のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L3が配列番号153のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H2が配列番号49のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配
列を含むか、
(e)前記HVR-L1が配列番号115のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L2が配列番号128のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L3が配列番号154のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H1が配列番号21のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H2が配列番号50のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H3が配列番号71のアミノ酸配
列を含むか、あるいは
(f)前記HVR-L1が配列番号111のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L2が配列番号133のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-L3が配列番号161のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H1が配列番号26のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H2が配列番号51のアミノ酸配
列を含み、前記HVR-H3が配列番号77のアミノ酸配
列を含む、
単離モノクローナル抗Siglec-5抗体。
【請求項2】
(a)
軽鎖可変ドメインが配列番号194のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号174のアミノ酸配列を含むか;
(b)
軽鎖可変ドメインが配列番号195のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号175のアミノ酸配列を含むか;
(c)軽鎖可変ドメインが配列番号202のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号181のアミノ酸配列を含むか;
(d)軽鎖可変ドメインが配列番号205のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号184
、185、または186のアミノ酸配列を含むか;
(e)軽鎖可変ドメインが配列番号206のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号184
、185、または186のアミノ酸配列を含むか;
(f)軽鎖可変ドメインが配列番号207のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号187
、188、189、または190のアミノ酸配列を含むか;
(g)軽鎖可変ドメイ
が配列番号208のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号187
、188、189、または190のアミノ酸配列を含むか;
(h)軽鎖可変ドメインが配列番号209のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号191
、192、または193のアミノ酸配列を含むか;
(i)軽鎖可変ドメインが配列番号210のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号191
、192、または193のアミノ酸配列を含むか;
あるいは
(j)軽鎖可変ドメインが配列番号211のアミノ酸配列を含み、
重鎖可変ドメインが配列番号191
、192、または193のアミノ酸配列を含む
、
請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項3】
IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスである、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項4】
IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプを有する、請求項
3に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項5】
抑制性Fc受容体に結合する、請求項
4に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項6】
前記抑制性Fc受容体が抑制性Fcγ受容体IIB(FcγIIB)である、請求項
5に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項7】
前記抑制性Fc受容体が抑制性Fcγ受容体IIB(FcγIIB)であり、
(a)
抗Siglec-5抗体が、ヒトまたはマウスIgG1アイソタイプを有し、N297A、D265A、D270A、L234A、L235A、G237A、P238D、L328E、E233D、G237D、H268D、P271G、A330R、C226S、C229S、E233P、L234V、L234F、L235E、P331S、S267E、L328F、A330L、M252Y、S254T、T256E、N297Q、P238S、P238A、A327Q、A327G、P329A、K322A、T394D、E430G、V263L、V266L、V273C、V273E、V273F、V273L、V273M、V273S、V273Y、V305K、V305W、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置であって、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、前記残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含むか、もしくはグリシン236に相当する位置でのFc領域のアミノ酸欠失を含むか、
(b)
抗Siglec-5抗体が、IgG1アイソタイプを有し、IgG2アイソタイプ重鎖定常ドメイン1(CH1)及びヒンジ領域を含み、任意により、前記IgG2アイソタイプCH1及びヒンジ領域が、ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCP(配列番号218)のアミノ酸配列を含み、任意により、抗体Fc領域が、S267Eアミノ酸置換、L328Fアミノ酸置換、もしくは両方、及び/またはN297AもしくはN297Qアミノ酸置換を含み、残基の番号付けがEU番号付けによるものであるか、
(c)
抗Siglec-5抗体が、IgG2アイソタイプを有し、P238S、V234A、G237A、H268A、H268Q、V309L、A330S、P331S、C214S、C232S、C233S、S267E、L328F、M252Y、S254T、T256E、H268E、N297A、N297Q、A330L、C127S、E430G、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含み、残基の番号付けがEU番号付けによるものであるか、
(d)
抗Siglec-5抗体が、ヒトまたはマウスIgG4アイソタイプを有し、L235A、G237A、S228P、L236E、S267E、E318A、L328F、M252Y、S254T、T256E、E233P、F234V、L234A/F234A、S228P、S241P、L248E、T394D、N297A、N297Q、L235E、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含み、残基の番号付けがEU番号付けによるものであるか、あるいは
(e)
抗Siglec-5抗体が、ハイブリッドIgG2/4アイソタイプを有し、任意により、前記抗体が、ヒトIgG2のアミノ酸118~260及びヒトIgG4のアミノ酸261~447を含むアミノ酸配列を含み、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、請求項
6に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項8】
(a)
抗Siglec-5抗体が、ヒトまたはマウスIgG1アイソタイプを有し、N297A、N297Q、D270A、D265A、L234A、L235A、C226S、C229S、P238S、E233P、L234V、P238A、A327Q、A327G、P329A、K322A、L234F、L235E、P331S、T394D、A330L、M252Y、S254T、T256E、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含み、残基の番号付けがEU番号付けによるものであるか、
(b)
抗Siglec-5抗体が、IgG2アイソタイプを有し、P238S、V234A、G237A、H268A、H268Q、H268E、V309L、N297A、N297Q、A330S、P331S、C232S、C233S、M252Y、S254T、T256E、C127S、E430G、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含み、残基の番号付けがEU番号付けによるものであるか、あるいは
(c)
抗Siglec-5抗体が、IgG4アイソタイプを有し、E233P、F234V、L234A/F234A、L235A、G237A、E318A、S228P、L236E、S241P、L248E、T394D、M252Y、S254T、T256E、N297A、N297Q、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含み、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、請求項
7に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項9】
(a)Fc領域が、A330L、L234F;L235E、P331S、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される位置での1つ以上の追加のアミノ酸置換を更に含み、残基の番号付けがEU番号付けによるものであるか、
(b)Fc領域が、M252Y、S254T、T256E、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される位置での1つ以上の追加のアミノ酸置換を更に含み、残基の番号付けがEU番号付けによるものであるか、または
(c)Fc領域が、EU番号付けによるS228Pアミノ酸置換を更に含む、請求項
8に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項10】
IgG4アイソタイプを有する、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項11】
残基位置228でのS228Pアミノ酸置換、残基位置234でのF234Aアミノ酸置換、及び残基位置235でのL235Aアミノ酸置換を含み、残基位置の番号付けがEU番号付けによるものである、請求項
10に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項12】
ヒトSiglec-5タンパク質に
おけるアミノ酸残基を含むエピトープに結合する
抗体断片である、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項13】
ヒトSiglec-5、ヒトSiglec-5の天然に存在するバリアント
、及びヒトSiglec-5の疾患バリアントからなる群から選択される1種以上のヒトタンパク質に結合する
第2の抗体断片に架橋される抗体断片である、請求項
12に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項14】
前記抗体断片が、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、またはscFv断片である、請求項
12または13に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項15】
マウス抗体である、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項16】
ヒト化抗体、二重特異性抗体、多価抗体、コンジュゲート抗体、またはキメラ抗体である、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項17】
第1の抗原及び第2の抗原を認識する二重特異性抗体である、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項18】
前記第1の抗原がSiglec-5であり、前記第2の抗原が、
(a)血液脳関門を通過する輸送を促進する抗原、
(b)トランスフェリン受容体(TR)、インスリン受容体(HIR)、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1及び2(LPR-1及び2)、ジフテリア毒素受容体、CRM197、ラマ単一ドメイン抗体、TMEM30(A)、タンパク質形質導入ドメイン、TAT、Syn-B、ペネトラチン、ポリアルギニンペプチド、アンジオペプペプチド、ならびにANG1005からなる群から選択される血液脳関門を通過する輸送を促進する抗原、
(c)疾患原因ペプチドもしくはタンパク質または疾患原因核酸からなる群から選択される疾患原因物質であって、前記疾患原因核酸が、アンチセンスGGCCCC(G2C4)リピート伸長RNAであり、前記疾患原因タンパク質が、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク
質、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドからなる群から選択される、前記疾患原因物質、
(d)免疫細胞で発現されるリガンド及び/またはタンパク質であって、PD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG-3、DR-5、CD2、CD5、CD39、CD73、及びホスファチジルセリンからなる群から選択される、前記リガンド及び/または前記タンパク質、ならびに
(e)1種以上の腫瘍細胞で発現されるタンパク質、脂質、多糖、または糖脂質である、請求項
17に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項19】
コンジュゲート抗体である、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項20】
検出可能なマーカー、毒素または治療薬にコンジュゲートされている、請求項
19に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項21】
リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メイタンシノイド、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン(dihydroxy anthracin dione)、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、αサルシン、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン(curicin)、クロチン、カリケアミシン、サボンソウ由来の阻害因子、糖質コルチコイド、アウリスタチン、オーレオマイシン(auromycin)、イットリウム、ビスマス、コンブレタスタチン、デュオカルマイシン、ドラスタチン、cc1065、及びシスプラチンからなる群から選択される毒素にコンジュゲートされている、請求項
20に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項22】
アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク
質、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチド、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される疾患原因タンパク質に特異的に結合する1種以上の抗体と、またはPD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG3、DR-5、CD2、CD5、CD39、CD73、TREM1、TREM2、CD33、Siglec-6、Siglec-7、Siglec-9、Siglec-10、Siglec-11、ホスファチジルセリン、疾患原因核酸、アンチセンスGGCCCC(G2C4)リピート伸長RNA、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される免疫調節性タンパク質に結合する1種以上の抗体と組み合わせて使用される、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項23】
0.42nM~
79nMの範囲であるヒトSiglec-5及び哺乳動物Siglec-5に対する解離定数(K
D)を有し、前記K
Dが
25℃の温度で決定される、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項24】
79nM~
61nM、
15nM~
5.3nM、または
1.7nM~
0.42nMの範囲であるヒトSiglec-5に対する解離定数(K
D)を有し、前記K
Dが
25℃の温度で決定される、請求項1に記載の抗Siglec-5抗体。
【請求項25】
請求項1に記載の抗Siglec-5抗体をコードする核酸配列を含む単離核酸。
【請求項26】
請求項
25に記載の核酸を含むベクター。
【請求項27】
請求項
26に記載のベクターを含む単離宿主細胞。
【請求項28】
抗Siglec-5抗体を生成する方法であって、前記抗Siglec-5抗体が生成されるように請求項
27に記載の宿主細胞を培養することを含む、前記方法。
【請求項29】
前記宿主細胞により生成された前記抗Siglec-5抗体を回収することを更に含む、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載の抗Siglec-5抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項31】
認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染症、及びがんからなる群から選択される疾患、障害、または損傷を予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを処置するための医薬であって、治療上有効量の請求項1に記載の抗Siglec-5抗体を含む、医薬。
【請求項32】
1種以上の免疫細胞の生存、成熟、機能性、遊走、または増殖を、それらを必要とする個体において引き起こすか、または促進するための医薬であって、治療上有効量の請求項1に記載の抗Siglec-5抗体を含む、医薬。
【請求項33】
制御性T細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性マクロファージ、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、急性骨髄性白血病(AML)細胞、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞、または慢性骨髄性白血病(CML)細胞の活性、機能性、または生存を、減少させる必要がある個体において減少させるための医薬であって、治療上有効量の請求項1に記載の抗Siglec-5抗体を含む、医薬。
【請求項34】
1以上の細胞でのSiglec-5の細胞レベルを、減少させる必要がある個体において減少させるための医薬であって、治療上有効量の請求項1に記載の
抗Siglec-5抗体を含む、医薬。
【請求項35】
1以上の好中球における活性酸素種(ROS)生成を、それを必要とする個体において引き起こすための医薬であって、治療上有効量の請求項1に記載の抗Siglec-5抗体を含む、医薬。
【請求項36】
1以上の好中球における好中球細胞外トラップ(NET)形成を、それ必要とする個体において引き起こすための医薬であって、治療上有効量の請求項1に記載の抗Siglec-5抗体を含む、医薬。
【請求項37】
1以上の好中球における好中球活性化を、それを必要とする個体において引き起こすための医薬であって、治療上有効量の請求項1に記載の抗Siglec-5抗体を含む、医薬。
【請求項38】
1以上の免疫抑制好中球を、除去する必要がある個体において除去するための医薬であって、治療上有効量の請求項1に記載の抗Siglec-5抗体を含む、医薬。
【請求項39】
マクロファージにおけるファゴサイトーシス活性を、増加させる必要がある個体において増加させるための医薬であって、治療上有効量の請求項1に記載の抗Siglec-5抗体を含む、医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月27日に出願の米国仮出願第62/711,405号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:735022002740SEQLIST.TXT、記録日:2019年7月25日、サイズ:106KB)。
【0003】
本開示は、抗Siglec-5抗体及びかかる抗体の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0004】
シアル酸結合Ig様レクチン-5(Siglec-5)は、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、及びミクログリア細胞などの成熟骨髄性細胞ならびにリンパ系細胞が含まれる免疫細胞及び造血細胞上に発現される1型免疫グロブリン様膜貫通タンパク質である(Crocker et al.(2007)Nat Rev Immunol.7:255-266;Macauley et al.(2014)Nat.Rev.Imm.14:653-666;Cornish et al(1998)Blood 92(6):2123-2132;Yamanaka et al.(2009)Glycobiology.19:841-846)。Siglec-5は、糖タンパク質及び糖脂質のシアル酸残基に結合するレクチンのSiglecファミリーに属するメンバーである。Siglecタンパク質の1つの結合標的候補は、ガングリオシドであり、すなわち、シアル酸付加グリカンに連結されたセラミドからなる糖脂質である。ほとんどのガングリオシドは、共通のラクト-セラミドコア及び1つ以上のシアル酸残基を共有する。分枝または末端のいずれかでの他の中性糖及びシアル酸の異なる連結での付加、ならびにシアル酸自体の修飾により、Siglecリガンドの多様性がもたらされる。
【0005】
シアル酸結合部位を含有するアミノ末端Vセットドメインを含む2~17個の細胞外Igドメインから構成される、ヒトで14個、マウスで9個のSiglecタンパク質が同定されている。シアル酸結合領域は、VセットIg様ドメインに位置し、このドメインは、全てのSiglecにおいて高度に保存されている2つの芳香族残基と1つのアルギニンのモチーフを含有する(Crocker et al.(2007)Nat Rev Immunol.7:255-266;McMillan and Crocker(2008)Carbohydr Res.343:2050-2056;Von Gunten and Bochner(2008)Ann NY Acad Sci.1143:61-82;May et al.(1998)Mol.Cell 1:719-728;Crocker et al.(1999) Biochem J.341:355-361;及びCrocker and Varki(2001)Trends Immunol.2:337-342)。シアル酸付加リガンドに対する結合部位は、リガンドが結合した状態及び結合していない状態の結晶構造によりマッピングされている(Attrill et al.,(2006)J.Biol.Chem.281 32774-32783;Alphey et al.(2003)J.Biol.Chem.278:5 3372-3377;Varki et al.,Glycobiology,16 pp.1R-27R、May et al.(1998)Mol.Cell 1:5:719-728、Zhuravleva et al(2008)J.Mol.Biol.375:437-447)。細胞膜はシアル酸に富むため、Siglecによるリガンド結合は、シス及びトランスで起こり得、両方ともそれらの機能特性に影響を及ぼす。各Siglecは、哺乳動物細胞の表面上に見出される多様な種類のシアル酸付加グリカンへの結合に対する異なる選択性を有する(Crocker et al.(2007)Nat Rev Immunol.7:255-266)。ほとんどのSiglecは、それらの細胞質尾部に1つ以上の免疫受容体抑制性チロシンモチーフ(ITIM)配列を含有し、これにより、SiglecがチロシンホスファターゼSHP1及びSHP2の動員を介して抑制性受容体及び免疫機能の負の調節因子として機能することが可能となる(Crocker et al.(2007)Nat Rev Immunol.7:255-266;McMillan and Crocker(2008)Carbohydr Res.343:2050-2056;及びVon Gunten and Bochner(2008)Ann NY Acad Sci.1143:61-82)。ある種のSiglecは、それらの細胞質尾部に免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)配列を含有し、これにより、Siglecが脾臓チロシンキナーゼ(Syk)の予測される動員を介して活性化受容体及び免疫機能の正の調節因子として作用することが可能となる(Macauley SM.et al.,(2014)Nature Reviews Immunology 14,653-666)。Siglecタンパク質ファミリーは、自己免疫、感染感受性、リンパ腫、白血病、及び急性骨髄性白血病が含まれる複数種類のがん、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、神経変性障害、喘息、アレルギー、敗血症、慢性閉塞性肺疾患、移植片対宿主病、好酸球増加症、ならびに骨粗鬆症が含まれる複数のヒト疾患と関連する(Macauley SM.et al.,(2014)Nature Reviews Immunology 14,653-666)。
【0006】
Siglec-5は、細胞外N末端Ig様(免疫グロブリン様)V型ドメイン、Ig様C2セットドメインに加えて、その細胞質ドメイン内にコンセンサスITIMモチーフを含有する。COS細胞におけるSiglec-5の発現は、末端α2-3またはα2-6シアル酸結合により媒介される赤血球のシアル酸依存的結合を実証した(Cornish et al.(1998)Blood 92(6):2123-2132)。Siglec-5のN末端VセットIg様ドメイン内でのリガンド結合は、非常に可変的なGG’リンカー及びCC’ループ領域にマッピングされている。リガンド相互作用は、シアル酸リガンドが結合した状態及び結合していない状態のIg-Vセットドメイン及び第1のIg-Cセットドメインの結晶構造を用いて調査された(Zhuravleva et al.(2008)J.Mol.Biol.375;437-447)。B群Streptococcusが、細胞壁アンカー型βタンパク質により媒介されるシアル酸非依存的な様式でヒト好中球のSiglec-5に結合することが示された(Carlin et al (2009)J.Exp.Med.206 (8) 1691-1699)。GBSβタンパク質のSiglec-5への結合は、SHPホスファターゼの動員をもたらし、ファゴサイトーシス、酸化バースト、及び細胞外トラップの生成などの機能を阻害する(Carlin et al (2009)J.Exp.Med.206 (8) 1691-1699)。
【0007】
Siglec-5は、チロシンキナーゼによるTyr-520及びTyr-544のリン酸化を受け、これにより、抑制性受容体としての機能を媒介するチロシンホスファターゼSHP-1及びSHP-2が動員される(Avril et al.,(2005)J.Biol.Chem.280:19843-19851)。ITIMドメイン内の近位Tyr-520のリン酸化後、Siglec-5は、SHP-2/PTPN11及びSHP-1/PTPN6に結合する。Siglec-5は、ラット好塩基球性白血病細胞においてFcεRIにより媒介される活性を阻害することが示され、このことは、以前に、KIR(キラーIg様受容体)と称される抑制性受容体クラスを特徴付けるために使用された(Avril et al.,(2005)J.Biol.Chem.280:19843-19851)。ホスファターゼ活性は、細胞内カルシウム動員の減少、及び複数タンパク質のチロシンリン酸化の減少(Ulyanova,T.,et al.,(1999)Eur J lmmunol 29,3440-3449;Paul,S.P.,et al.,(2000).Blood 96,483-490)に加えて、ITAMモチーフを含有するもの、パターン認識受容体、Toll様受容体、及びダメージ関連分子パターン(dAMP)受容体が含まれる隣接する活性化受容体上のシグナル伝達分子の脱リン酸化を部分的に介したシグナル伝達及び免疫反応の遮断と関連する。Siglec-5の一部の抑制性機能は、チロシンリン酸化の非存在下で生じることが示されている。Siglec-5は、ホスホチロシン非依存的様式でSHP-1またはSHP-2を活性化し得、これは、抑制性のシグナル伝達に十分であり得る(Avril et al.,(2005)J.Biol.Chem.280:19843-19851)。
【0008】
Siglecリガンドまたは抗体により媒介される受容体ライゲーションは、多数のSiglecファミリーメンバーのエンドサイトーシスを引き起こし、これがこのグループの受容体の一般的な生物学的特徴であること示唆する(Tateno et al.,(2007)Mol.Cell.Bio.27(16):5699-5710,Macauley SM.et al.,(2014)Nature Reviews Immunology 14,653-666)。リガンドにより引き起こされる受容体エンドサイトーシス及びその後の分解という同様のメカニズムが、チロシンキナーゼ受容体(Monsonego-Oran et al.,(2002)Febs letters 528,83-89;及びFasen et al.,(2008)Cell & Molecular Biology 9.251-266)に加えてステロイド受容体(Callige et al.,(2005)Mol.Cell.Biol.25.4349-4358;及びPollenz et al.,(2006) Chemico-Biological Interactions.164.49-59)で報告されている。
【0009】
Siglec-5に対する抗体は、例えば、WO2007120815、US20070244038、WO2002008257、Erickson-Miller et al.(2003)Exp.Hemat.31:382-388、及びCornish et al(1998)Blood 92(6):2123-2132において記載されている。
【0010】
従って、望ましくないSiglec-5活性に関連する1つ以上の疾患、障害、及び状態を処置するために、Siglec-5に特異的に結合し、細胞表面上のSiglec-5発現を低減し、及び/または1つ以上のSiglec-5活性を低減する治療抗体が必要である。
【0011】
特許、特許出願、及び刊行物が含まれる、本明細書において引用される全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0012】
本開示は、一般に抗Siglec-5抗体及びかかる抗Siglec-5抗体の使用方法を対象とする。本明細書において提供される方法は、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病、正常圧水頭症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、タウオパチー疾患、那須ハコラ病、脳卒中、急性外傷、慢性外傷、ループス、急性及び慢性大腸炎、関節リウマチ、創傷治癒、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、肥満、マラリア、本態性振戦、中枢神経ループス、ベーチェット病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、シャイドレーガー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、急性散在性脳脊髄炎、肉芽腫性障害、サルコイドーシス、加齢性疾患、発作、脊髄損傷、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性症、緑内障、色素性網膜炎、網膜変性、気道感染、敗血症、眼感染、全身感染、ループス、関節炎、多発性硬化症、低骨密度、骨粗鬆症、骨形成、大理石骨病、骨ページェット病、固形癌及び血液癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、真正多血症、本態性血小板血症、原発性または特発性骨髄繊維症、原発性または特発性脊髄硬化症、骨髄由来腫瘍、Siglec-5及び/またはSiglec-5リガンドを発現する腫瘍、甲状腺癌、感染、CNSヘルペス、寄生虫感染、トリパノソーマ感染、Cruzi感染、Pseudomonas aeruginosa感染、Leishmania donovani感染、B群Streptococcus感染、Campylobacter jejuni感染、Neisseria meningitidis感染、I型HIV、ならびにHaemophilus influenzaeを予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを有する個体を処置するのに有用である。本明細書において提供される方法は、1種以上の免疫細胞の生存、成熟、機能、遊走、または増殖を、それらを必要とする個体において引き起こすか、または促進するのにも有用である。更に本明細書において提供される方法は、制御性T細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、好中球、NK細胞、急性骨髄性白血病(AML)細胞、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞、または慢性骨髄性白血病(CML)細胞の活性、機能、または生存を、減少させる必要がある個体において減少させるのに有用である。本明細書において提供される方法は、Siglec-5の細胞レベルを減少させるのにも有用である。
【0013】
本開示のある種の態様は、ヒト初代免疫細胞及びSiglec-5発現細胞株などの細胞上のSiglec-5の細胞表面レベルを減少させることができ、Siglec-5へのSiglec-5リガンドの結合を阻害または遮断せず、Siglec-14と交差反応せず、活性酸素種(ROS)生成を引き起こすことができ、好中球細胞外トラップ(NET)形成を引き起こすことができ、及び/またはマクロファージにおけるファゴサイトーシス活性を増加させる抗Siglec-5抗体の同定に少なくとも部分的に基づく。
【0014】
従って、本開示のある種の態様は、単離モノクローナル抗Siglec-5抗体であって、当該抗Siglec-5抗体がSiglec-5の細胞レベルを減少させる、当該単離モノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、単離モノクローナル抗Siglec-5抗体であって、当該抗Siglec-5抗体が、Siglec-5の細胞レベルを減少させ、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害しない、当該単離モノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、単離されたモノクローナル抗Siglec-5抗体であって、当該抗Siglec-5抗体が、Siglec-5の細胞レベルを減少させ、Siglec-14に結合しない、当該単離されたモノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。
【0015】
先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の細胞表面レベルを減少させるか、Siglec-5の細胞内レベルを減少させるか、Siglec-5の総レベルを減少させるか、またはそれらの任意の組み合わせである。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の分解、Siglec-5の切断、Siglec-5の内部移行、Siglec-5のシェディング、Siglec-5発現の下方調節、またはそれらの任意の組み合わせを引き起こす。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗体は、インビトロでのSiglec-5の細胞レベルを減少させる。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗体は、インビボでのSiglec-5の細胞レベルを減少させる。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、好中球における活性酸素種(ROS)生成を引き起こす。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、好中球における好中球細胞外トラップ(NET)形成を引き起こす。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、好中球における好中球活性化を引き起こす。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、マクロファージにおけるファゴサイトーシス活性を増加させる。
【0016】
先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現を増加させる。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の細胞表面レベルを上昇させる。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現を増加させる。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の細胞表面レベルを増加させる。
【0017】
先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5直鎖エピトープに結合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5不連続または立体構造エピトープに結合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5への結合についてS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種以上の抗体と競合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5への結合について、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種以上の抗体と同一のまたは重複するエピトープに結合する。
【0018】
先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、配列番号1のアミノ酸残基268~278内の1つ以上のアミノ酸残基、または配列番号1のアミノ酸残基268~278に相当するSiglec-5タンパク質のアミノ酸残基に結合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、アミノ酸配列LSWFQGSPALN(配列番号221)内の1つ以上のアミノ酸残基に結合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、配列番号1のアミノ酸残基226~244内の1つ以上のアミノ酸残基、または配列番号1のアミノ酸残基226~244に相当するSiglec-5タンパク質のアミノ酸残基に結合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、アミノ酸配列QTITIFRNGIALEILQNTS(配列番号220)内の1つ以上のアミノ酸残基に結合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、配列番号1のアミノ酸残基228~238内の1つ以上のアミノ酸残基、または配列番号1のアミノ酸残基228~238に相当するアミノ酸残基に結合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、アミノ酸配列ITIFRNGIALE(配列番号219)に結合する。
【0019】
先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、ここで、当該軽鎖可変ドメイン、当該重鎖可変ドメイン、または両方は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9からなる群から選択されるモノクローナル抗体のHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では:(a)HVR-L1は、配列番号103~115からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;(b)HVR-L2は、配列番号127~135からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;(c)HVR-L3は、配列番号153~163からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;(d)HVR-H1は、配列番号20~28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;(e)HVR-H2は、配列番号39~51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;または(f)HVR-H3は、配列番号70~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、(a)HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号103のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号153のアミノ酸配列を含み;(b)HVR-H1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号40のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号71のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号104のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号128のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号154のアミノ酸配列を含み;(c)HVR-H1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号41のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号72のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号105のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号129のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号155のアミノ酸配列を含み;(d)HVR-H1が配列番号23のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号42のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号73のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号106のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号156のアミノ酸配列を含み;(e)HVR-H1が配列番号24のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号43のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号74のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号107のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号130のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号157のアミノ酸配列を含み;(f)HVR-H1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号44のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号75のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号108のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号131のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号158のアミノ酸配列を含み;(g)HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号109のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号159のアミノ酸配列を含み;(h)HVR-H1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号45のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号76のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号110のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号132のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号160のアミノ酸配列を含み;(i)HVR-H1が配列番号26のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号46のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号77のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号111のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号133のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号161のアミノ酸配列を含み;(j)HVR-H1が配列番号27のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号47のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号78のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号112のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号134のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号162のアミノ酸配列を含み;(k)HVR-H1が配列番号28のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号48のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号79のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号113のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号135のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号163のアミノ酸配列を含み;(l)HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号49のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号114のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号153のアミノ酸配列を含み;(m)HVR-H1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号50のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号71のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号115のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号128のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号154のアミノ酸配列を含み;(n)HVR-H1が配列番号26のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号51のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号77のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号111のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号133のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号161のアミノ酸配列を含む。
【0020】
先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、配列番号194~211からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び/または配列番号174~193からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9からなる群から選択されるモノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン、ならびに/またはS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9からなる群から選択されるモノクローナル抗体の重鎖可変ドメインを含む。
【0021】
本開示の他の態様は、単離モノクローナル抗Siglec-5抗体であって、当該抗Siglec-5抗体が、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、当該軽鎖可変ドメイン、当該重鎖可変ドメイン、または両方が、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9からなる群から選択されるモノクローナル抗体のHVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む、当該単離モノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。幾つかの実施形態では、(a)HVR-L1が、配列番号103~115からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;(b)HVR-L2が、配列番号127~135からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;(c)HVR-L3が、配列番号153~163からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;(d)HVR-H1が、配列番号20~28からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;(e)HVR-H2が、配列番号39~51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか;または(f)HVR-H3が、配列番号70~79からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、(a)HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号103のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号153のアミノ酸配列を含み;(b)HVR-H1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号40のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号71のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号104のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号128のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号154のアミノ酸配列を含み;(c)HVR-H1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号41のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号72のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号105のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号129のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号155のアミノ酸配列を含み;(d)HVR-H1が配列番号23のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号42のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号73のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号106のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号156のアミノ酸配列を含み;(e)HVR-H1が配列番号24のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号43のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号74のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号107のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号130のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号157のアミノ酸配列を含み;(f)HVR-H1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号44のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号75のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号108のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号131のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号158のアミノ酸配列を含み;(g)HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号109のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号159のアミノ酸配列を含み;(h)HVR-H1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号45のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号76のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号110のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号132のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号160のアミノ酸配列を含み;(i)HVR-H1が配列番号26のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号46のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号77のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号111のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号133のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号161のアミノ酸配列を含み;(j)HVR-H1が配列番号27のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号47のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号78のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号112のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号134のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号162のアミノ酸配列を含み;(k)HVR-H1が配列番号28のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号48のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号79のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号113のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号135のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号163のアミノ酸配列を含み;(l)HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号49のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号114のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号153のアミノ酸配列を含み;(m)HVR-H1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号50のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号71のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号115のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号128のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号154のアミノ酸配列を含み;(n)HVR-H1が配列番号26のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号51のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号77のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号111のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号133のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号161のアミノ酸配列を含む。
【0022】
本開示の他の態様は、単離モノクローナル抗Siglec-5抗体であって、当該抗Siglec-5抗体が、配列番号194~211からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、及び/または配列番号174~193からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む、当該単離モノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、単離モノクローナル抗Siglec-5抗体であって、当該抗Siglec-5抗体が、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9からなる群から選択されるモノクローナル抗体の軽鎖可変ドメイン、ならびに/またはS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9からなる群から選択されるモノクローナル抗体の重鎖可変ドメインを含む、当該単離モノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、単離モノクローナル抗Siglec-5抗体であって、当該抗Siglec-5抗体が、Siglec-5への結合について、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される1種以上の抗体と競合する、当該単離モノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9からなる群から選択されるモノクローナル抗体と実質的に同一のSiglec-5エピトープに結合する単離モノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。
【0023】
本開示の他の態様は、配列番号1のアミノ酸残基268~278または配列番号1のアミノ酸残基268~278に相当するSiglec-5タンパク質のアミノ酸残基、配列番号1のアミノ酸残基226~244または配列番号1のアミノ酸残基226~244に相当するSiglec-5タンパク質のアミノ酸残基、及び配列番号1のアミノ酸残基228~238または配列番号1のアミノ酸残基228~238に相当するSiglec-5タンパク質のアミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基内の1つ以上のアミノ酸残基に結合する単離モノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、アミノ酸配列LSWFQGSPALN(配列番号221)、アミノ酸配列QTITIFRNGIALEILQNTS(配列番号220)、及びアミノ酸配列ITIFRNGIALE(配列番号219)からなる群から選択されるアミノ酸配列内の1つ以上のアミノ酸残基に結合する単離モノクローナル抗Siglec-5抗体に関する。
【0024】
先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗体は、IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプを有する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗体は、抑制性Fc受容体に結合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抑制性Fc受容体は、抑制性Fcγ受容体IIB(FcγIIB)である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では:(a)抗Siglec-5抗体は、ヒトもしくはマウスIgG1アイソタイプを有し、N297A、D265A、D270A、L234A、L235A、G237A、P238D、L328E、E233D、G237D、H268D、P271G、A330R、C226S、C229S、E233P、L234V、L234F、L235E、P331S、S267E、L328F、A330L、M252Y、S254T、T256E、N297Q、P238S、P238A、A327Q、A327G、P329A、K322A、T394D、E430G、V263L、V266L、V273C、V273E、V273F、V273L、V273M、V273S、V273Y、V305K、V305W、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置であって、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、当該残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含むか、もしくはグリシン236に相当する位置でのFc領域におけるアミノ酸欠失を含むか;(b)抗Siglec-5抗体は、IgG1アイソタイプを有し、IgG2アイソタイプ重鎖定常ドメイン1(CH1)及びヒンジ領域を含み、ここで、任意により、当該IgG2アイソタイプCH1及びヒンジ領域が、ASTKGPSVFP LAPCSRSTSE STAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGVHTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSNFGTQT YTCNVDHKPS NTKVDKTVERKCCVECPPCP(配列番号218)のアミノ酸配列を含み、任意により、抗体Fc領域は、S267Eアミノ酸置換、L328Fアミノ酸置換、もしくは両方、及び/またはN297AもしくはN297Qアミノ酸置換を含み、残基の番号付けはEU番号付けによるものであるか;(c)抗Siglec-5抗体は、IgG2アイソタイプを有し、P238S、V234A、G237A、H268A、H268Q、V309L、A330S、P331S、C214S、C232S、C233S、S267E、L328F、M252Y、S254T、T256E、H268E、N297A、N297Q、A330L、C127S、E430G、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置であって、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、当該残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含むか;(d)抗Siglec-5抗体は、ヒトもしくはマウスIgG4アイソタイプを有し、L235A、G237A、S228P、L236E、S267E、E318A、L328F、M252Y、S254T、T256E、E233P、F234V、L234A/F234A、S228P、S241P、L248E、T394D、N297A、N297Q、L235E、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置であって、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、当該残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含むか;または(e)抗Siglec-5抗体は、ハイブリッドIgG2/4アイソタイプを有し、ここで、任意により、当該抗体は、ヒトIgG2のアミノ酸118~260及びヒトIgG4のアミノ酸261~447を含むアミノ酸配列を含み、残基の番号付けはEUまたはKabat番号付けによるものである。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、(a)抗Siglec-5抗体は、ヒトもしくはマウスIgG1アイソタイプを有し、N297A、N297Q、D270A、D265A、L234A、L235A、C226S、C229S、P238S、E233P、L234V、P238A、A327Q、A327G、P329A、K322A、L234F、L235E、P331S、T394D、A330L、M252Y、S254T、T256E、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置であって、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、当該残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含むか;(b)抗Siglec-5抗体は、IgG2アイソタイプを有し、P238S、V234A、G237A、H268A、H268Q、H268E、V309L、N297A、N297Q、A330S、P331S、C232S、C233S、M252Y、S254T、T256E、C127S、E430G、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置であって、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、当該残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含むか;または(c)抗Siglec-5抗体は、IgG4アイソタイプを有し、E233P、F234V、L234A/F234A、L235A、G237A、E318A、S228P、L236E、S241P、L248E、T394D、M252Y、S254T、T256E、N297A、N297Q、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される残基位置であって、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、当該残基位置でのFc領域における1つ以上のアミノ酸置換を含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、(a)Fc領域は、A330L、L234F、L235E、P331S、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される位置であって、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、当該位置での1つ以上の追加のアミノ酸置換を更に含むか;(b)Fc領域は、M252Y、S254T、T256E、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される位置であって、残基の番号付けがEU番号付けによるものである、当該位置での1つ以上の追加のアミノ酸置換を更に含むか;または(c)Fc領域は、EU番号付けに従ってS228Pアミノ酸置換を更に含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗体は、IgG4アイソタイプを有する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、残基位置228でのS228Pアミノ酸置換、残基位置234でのF234Aアミノ酸置換、及び残基位置235でのL235Aアミノ酸置換を含み、ここで、残基位置の番号付けはEU番号付けによるものである。
【0025】
先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、Siglec-5タンパク質は、哺乳動物タンパク質またはヒトタンパク質である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、Siglec-5タンパク質は、野生型タンパク質である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、Siglec-5タンパク質は、天然に存在するバリアントである。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、Siglec-5タンパク質は、ヒト樹状細胞、ヒトマクロファージ、ヒト好中球、ヒトNK細胞、ヒト単球、ヒト破骨細胞、ヒトB細胞、ヒトT細胞、ヒトヘルパーT細胞、ヒト細胞障害性T細胞、ヒト顆粒球、及びヒトミクログリアからなる群から選択される1種以上の細胞で発現される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5タンパク質に特異的に結合する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5のアミノ酸残基を含むエピトープに結合する抗体断片である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5、ヒトSiglec-5の天然に存在するバリアント、及びヒトSiglec-5の疾患バリアントからなる群から選択される1種以上のヒトタンパク質に結合する抗体断片である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗体断片は、ヒトSiglec-5、ヒトSiglec-5の天然に存在するバリアント、及びヒトSiglec-5の疾患バリアントからなる群から選択される1種以上のヒトタンパク質に結合する第2の抗体断片に架橋される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、またはscFv断片である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、マウス抗体である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒト化抗体、二重特異性抗体、多価抗体、コンジュゲート抗体、またはキメラ抗体である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、第1の抗原及び第2の抗原を認識する二重特異性抗体である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、第1の抗原はSiglec-5であり、第2の抗原は、(a)血液脳関門を横切る輸送を促進する抗原;(b)トランスフェリン受容体(TR)、インスリン受容体(HIR)、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1及び2(LPR-1及び2)、ジフテリア毒素受容体、CRM197、ラマ単一ドメイン抗体、TMEM30(A)、タンパク質形質導入ドメイン、TAT、Syn-B、ペネトラチン、ポリアルギニンペプチド、アンジオペプペプチド、及びANG1005からなる群から選択される血液脳関門を通過する輸送を促進する抗原;(c)疾患原因ペプチドもしくはタンパク質または疾患原因核酸からなる群から選択される疾患原因物質であって、当該疾患原因核酸が、アンチセンスGGCCCC(G2C4)(配列番号225)リピート伸長RNAであり、当該疾患原因タンパク質が、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドからなる群から選択される、当該疾患原因物質;(d)免疫細胞で発現されるリガンド及び/またはタンパク質であって、PD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG-3、DR-5、CD2、CD5、CD39、CD73、及びホスファチジルセリンからなる群から選択される、当該リガンド及び/またはタンパク質;ならびに(e)1種以上の腫瘍細胞で発現されるタンパク質、脂質、多糖、または糖脂質である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、コンジュゲート抗体である。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、検出可能なマーカー、毒素、または治療薬にコンジュゲートされる。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メイタンシノイド、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、Pseudomonas外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、αサルシン、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン(curicin)、クロチン、カリケアミシン、Saponaria officinalis由来の阻害因子、糖質コルチコイド、アウリスタチン、オーレオマイシン、イットリウム、ビスマス、コンブレタスタチン、デュオカルマイシン、ドラスタチン、cc1065、及びシスプラチンからなる群から選択される毒素にコンジュゲートされる。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質もしくはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチド、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される疾患原因タンパク質に特異的に結合する1種以上の抗体と;またはPD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG3、DR-5、CD2、CD5、CD39、CD73、TREM1、TREM2、CD33、Siglec-6、Siglec-7、Siglec-9、Siglec-10、Siglec-11、ホスファチジルセリン、疾患原因核酸、アンチセンスGGCCCC(G2C4)(配列番号225)リピート伸長RNA、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される免疫調節性タンパク質に結合する1種以上の抗体と組み合わせて使用される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、約0.42nM~約79nM、約79nM~約61nM、約15nM~約5.3nM、または約1.7nM~約0.42nMの範囲であるヒトSiglec-5に対する解離定数(KD)を有し、ここで、当該KDは、約25℃の温度で決定される。
【0026】
本開示の他の態様は、先行実施形態のいずれかの抗Siglec-5抗体をコードする核酸配列を含む単離核酸に関する。本開示の他の態様は、先行実施形態のいずれかの核酸を含むベクターに関する。本開示の他の態様は、先行実施形態のいずれかのベクターを含む単離宿主細胞に関する。本開示の他の態様は、抗Siglec-5抗体を作製する方法であって、当該抗Siglec-5抗体が生成されるように先行実施形態のいずれかの宿主細胞を培養することを含む、当該作製する方法に関する。幾つかの実施形態では、本方法は、宿主細胞により生成される抗Siglec-5抗体を回収することを更に含む。本開示の他の態様は、先行実施形態のいずれかの方法により作製された単離抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、先行実施形態のいずれかの抗Siglec-5抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。
【0027】
本開示の他の態様は、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病、正常圧水頭症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、タウオパチー疾患、那須ハコラ病、脳卒中、急性外傷、慢性外傷、ループス、急性及び慢性大腸炎、関節リウマチ、創傷治癒、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、肥満、マラリア、本態性振戦、中枢神経ループス、ベーチェット病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、シャイドレーガー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、急性散在性脳脊髄炎、肉芽腫性障害、サルコイドーシス、加齢性疾患、発作、脊髄損傷、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性症、緑内障、色素性網膜炎、網膜変性、気道感染、敗血症、眼感染、全身感染、ループス、関節炎、多発性硬化症、低骨密度、骨粗鬆症、骨形成、大理石骨病、骨ページェット病、及びがん、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、真正多血症、本態性血小板血症、原発性または特発性骨髄繊維症、原発性または特発性脊髄硬化症、骨髄由来腫瘍、Siglec-5を発現する腫瘍、1種以上のSiglec-5リガンドを発現する腫瘍、甲状腺癌、感染、CNSヘルペス、寄生虫感染、トリパノソーマ感染、Cruzi感染、Pseudomonas aeruginosa感染、Leishmania donovani感染、B群Streptococcus感染、Campylobacter jejuni感染、Neisseria meningitidis感染、I型HIV、ならびにHaemophilus influenzaeからなる群から選択される疾患、障害、または損傷を予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを処置する方法であって、Siglec-5の細胞レベルを減少させる抗Siglec-5抗体の治療上有効量をその必要がある個体に投与することを含む、当該方法に関する。本開示の他の態様は、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病、正常圧水頭症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、タウオパチー疾患、那須ハコラ病、脳卒中、急性外傷、慢性外傷、ループス、急性及び慢性大腸炎、関節リウマチ、創傷治癒、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、肥満、マラリア、本態性振戦、中枢神経ループス、ベーチェット病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、シャイドレーガー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、急性散在性脳脊髄炎、肉芽腫性障害、サルコイドーシス、加齢性疾患、発作、脊髄損傷、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性症、緑内障、色素性網膜炎、網膜変性、気道感染、敗血症、眼感染、全身感染、ループス、関節炎、多発性硬化症、低骨密度、骨粗鬆症、骨形成、大理石骨病、骨ページェット病、及びがん、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、真正多血症、本態性血小板血症、原発性または特発性骨髄繊維症、原発性または特発性脊髄硬化症、骨髄由来腫瘍、Siglec-5を発現する腫瘍、1種以上のSiglec-5リガンドを発現する腫瘍、甲状腺癌、感染、CNSヘルペス、寄生虫感染、トリパノソーマ感染、Cruzi感染、Pseudomonas aeruginosa感染、Leishmania donovani感染、B群Streptococcus感染、Campylobacter jejuni感染、Neisseria meningitidis感染、I型HIV、ならびにHaemophilus influenzaeからなる群から選択される疾患、障害、または損傷を予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを処置するのに使用するための、Siglec-5の細胞レベルを減少させる抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病、正常圧水頭症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、タウオパチー疾患、那須ハコラ病、脳卒中、急性外傷、慢性外傷、ループス、急性及び慢性大腸炎、関節リウマチ、創傷治癒、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、肥満、マラリア、本態性振戦、中枢神経ループス、ベーチェット病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、シャイドレーガー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、急性散在性脳脊髄炎、肉芽腫性障害、サルコイドーシス、加齢性疾患、発作、脊髄損傷、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性症、緑内障、色素性網膜炎、網膜変性、気道感染、敗血症、眼感染、全身感染、ループス、関節炎、多発性硬化症、低骨密度、骨粗鬆症、骨形成、大理石骨病、骨ページェット病、及びがん、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、真正多血症、本態性血小板血症、原発性または特発性骨髄繊維症、原発性または特発性脊髄硬化症、骨髄由来腫瘍、Siglec-5を発現する腫瘍、1種以上のSiglec-5リガンドを発現する腫瘍、甲状腺癌、感染、CNSヘルペス、寄生虫感染、トリパノソーマ感染、Cruzi感染、Pseudomonas aeruginosa感染、Leishmania donovani感染、B群Streptococcus感染、Campylobacter jejuni感染、Neisseria meningitidis感染、I型HIV、ならびにHaemophilus influenzaeからなる群から選択される疾患、障害、または損傷を予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを処置するための薬剤の製造における、Siglec-5の細胞レベルを減少させる抗Siglec-5抗体の使用に関する。本開示の他の態様は、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんからなる群から選択される疾患、障害、または損傷を予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを処置する方法であって、Siglec-5の細胞レベルを減少させる薬剤の治療上有効量をその必要がある個体に投与することを含む、当該方法に関する。本開示の他の態様は、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんからなる群から選択される疾患、障害、または損傷を予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを処置するのに使用するための、Siglec-5の細胞レベルを減少させる抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんからなる群から選択される疾患、障害、または損傷を予防するか、それらのリスクを低減するか、または処置するための薬剤の製造におけるSiglec-5の細胞レベルを減少させる抗Siglec-5抗体の使用に関する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、先行実施形態のいずれかの抗Siglec-5抗体である。
【0028】
本開示の他の態様は、1種以上の細胞のSiglec-5の細胞レベルを、減少させる必要がある個体において減少させる方法であって、治療上有効量の単離抗Siglec-5抗体を当該個体に投与することを含む、当該方法に関する。本開示の他の態様は、1種以上の細胞のSiglec-5の細胞レベルを、減少させる必要がある個体において減少させるのに使用するための単離抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、1種以上の細胞のSiglec-5の細胞レベルを、減少させる必要がある個体において減少させるための薬剤の製造における単離抗Siglec-5抗体の使用に関する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、先行実施形態のいずれかの抗Siglec-5抗体である。
【0029】
本開示の他の態様は、1種以上の好中球における活性酸素種(ROS)生成を、それを必要とする個体において引き起こす方法であって、治療上有効量の単離抗Siglec-5抗体を当該個体に投与することを含む、当該方法に関する。本開示の他の態様は、1種以上の好中球における活性酸素種(ROS)生成を、それを必要とする個体において引き起こすのに使用するための単離抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、1種以上の好中球における活性酸素種(ROS)生成を、それを必要とする個体において引き起こすための薬剤の製造における単離抗Siglec-5抗体の使用に関する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、先行実施形態のいずれかの抗Siglec-5抗体である。
【0030】
本開示の他の態様は、1種以上の好中球における好中球細胞外トラップ(NET)形成を、それを必要とする個体において引き起こす方法であって、治療上有効量の単離抗Siglec-5抗体を当該個体に投与することを含む、当該方法に関する。本開示の他の態様は、1種以上の好中球における好中球細胞外トラップ(NET)形成を、それを必要とする個体において引き起こすのに使用するための単離抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、1種以上の好中球における好中球細胞外トラップ(NET)形成を、その必要がある個体において引き起こすための薬剤の製造における単離抗Siglec-5抗体の使用に関する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、先行実施形態のいずれかの抗Siglec-5抗体である。
【0031】
本開示の他の態様は、1種以上の好中球における好中球活性化を、その必要がある個体において引き起こす方法であって、治療上有効量の単離抗Siglec-5抗体を当該個体に投与することを含む、当該方法に関する。本開示の他の態様は、1種以上の好中球における好中球活性化を、その必要がある個体において引き起こすのに使用するための単離抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、1種以上の好中球における好中球活性化を、その必要がある個体において引き起こすための薬剤の製造における単離抗Siglec-5抗体の使用に関する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、先行実施形態のいずれかの抗Siglec-5抗体である。
【0032】
本開示の他の態様は、1種以上の好中球の免疫抑制を、軽減する必要がある個体において軽減する方法であって、治療上有効量の単離抗Siglec-5抗体を当該個体に投与することを含む、当該方法に関する。本開示の他の態様は、1種以上の好中球の免疫抑制を、軽減する必要がある個体において軽減するのに使用するための単離抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、1種以上の好中球の免疫抑制を、軽減する必要がある個体において軽減するための薬剤の製造における単離抗Siglec-5抗体の使用に関する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、先行実施形態のいずれかの抗Siglec-5抗体である。
【0033】
本開示の他の態様は、マクロファージのファゴサイトーシス活性を、増加させる必要がある個体において増加させる方法であって、治療上有効量の単離抗Siglec-5抗体を当該個体に投与することを含む、当該方法に関する。
【0034】
先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、本方法は、個体に抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体を投与すること、及び/または1つ以上の標準的もしくは試験的抗がん治療を施すことを更に含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗Siglec-5抗体と組み合わせて投与される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、抗PD-1抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、及び抗HVEM抗体、抗B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)抗体、抗キラー細胞抑制受容体(KIR)抗体、抗GAL9抗体、抗TIM-1抗体、抗TIM3抗体、抗TIM-4抗体、抗A2AR抗体、抗CD39抗体、抗CD73抗体、抗LAG-3抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗CD27抗体、抗CD30抗体、抗TNFa抗体、抗CD33抗体、抗Siglec-6抗体、抗Siglec-7抗体、抗Siglec-9抗体、抗Siglec-10抗体、抗Siglec-11抗体、抗TREM1アンタゴニスト抗体、抗TREM2アンタゴニスト抗体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、1つ以上の標準的または試験的抗がん療法は、放射線療法、細胞障害性化学療法、標的療法、イマチニブ療法、トラスツズマブ療法、エタナーセプト療法、養子細胞移植(ACT)療法、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)移植療法、ワクチン療法、及びサイトカイン療法からなる群から選択される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、本方法は、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体を個体に投与することを更に含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗Siglec-5抗体と組み合わせて投与される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗CCL2抗体、抗CSF-1抗体、抗IL-2抗体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、本方法は、刺激性チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体を個体に投与することを更に含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、刺激性チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体は、抗Siglec-5抗体と組み合わせて投与される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、刺激性チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体は、抗CD40アゴニスト抗体、抗OX40アゴニスト抗体、抗ICOSアゴニスト抗体、抗CD28アゴニスト抗体、抗TREM1アゴニスト抗体、抗TREM2アゴニスト抗体、抗CD137/4-1BBアゴニスト抗体、抗CD27アゴニスト抗体、抗糖質コルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト抗体、抗BTLAアゴニスト抗体、HVEMアゴニスト抗体、抗CD30アゴニスト抗体、抗CD2アゴニスト抗体、抗CD5アゴニスト抗体、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、本方法は、少なくとも1種の刺激性サイトカインを個体に投与することを更に含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、少なくとも1種の刺激性サイトカインは、抗Siglec-5抗体と組み合わせて投与される。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、少なくとも1種の刺激性サイトカインは、IFN-α4、IFN-γ、IL-1β、TNF-α、IL-6、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、LIF、IFN-γ、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-23、CXCL10、IL-33、MCP-1、MIP-1-β、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】ヒトSiglec-5(配列番号1)とカニクイザルSiglec-5(配列番号2)との間のアミノ酸配列比較を示す。アスタリスク(「*」)は、単一の完全に保存された残基を有する位置を示し、コロン(「:」)は、特性の類似性が強い群間の保存(Gonnet PAM 250行列において0.5超のスコア)を示し、ピリオド(「.」)は、特性の類似性が弱い群間の保存(Gonnet PAM 250行列において0.5以下のスコア)を示す。
【
図1B】ヒトSiglec-5(配列番号1)とヒトSiglec-14(配列番号3)との間のアミノ酸配列比較を示す。アスタリスク(「*」)は、単一の完全に保存された残基を有する位置を示し、コロン(「:」)は、特性の類似性が強い群間の保存(Gonnet PAM 250行列において超0.5のスコア)を示し、ピリオド(「.」)は、特性の類似性が弱い群間の保存(Gonnet PAM 250行列において0.5以下のスコア)を示す。
【
図2A】抗Siglec-5抗体の組換えヒトSiglec-5または組換えヒトSiglec-14を発現するCHO細胞への結合のFACS解析の結果を示す。
【
図2B】アイソタイプ対照と比較した抗Siglec-5特異的抗体の初代ヒト好中球への結合のFACS解析の結果を示す。
図2A及び
図2Bにおいて、抗体1A5は、ヒトSiglec-5及びヒトSiglec-14の両方を認識する。
【
図3】本開示の抗Siglec-5抗体が、固定化Siglec-5-Fcタンパク質と赤血球上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を遮断しないことを実証する結果を示す。
【
図4A】CHO-S5形質移入細胞の細胞表面Siglec-5受容体の抗Siglec-5抗体依存的下方調節を示す。
【
図4B】Siglec-14ヌルドナーからのヒト初代B細胞の細胞表面Siglec-5受容体のSiglec-5抗体依存的下方調節を示す。
【
図4C】抗Siglec-5特異的抗体の存在下での分化したヒトマクロファージM0、M1、及びM2aにおけるSiglec-5の下方調節を示す。
【
図5】抗Siglec-5抗体の存在下でのヒト初代好中球における活性酸素種(ROS)生成の誘発を示す。
【
図6】抗Siglec-5抗体とインキュベートされたヒト初代好中球による好中球細胞外トラップ(NET)の形成を示す。
【
図7】抗Siglec-5特異的抗体の存在下でのインビトロで分化したヒトマクロファージによる標的細胞のファゴサイトーシスを示す。
【
図8】ヒトSiglec-5遺伝子導入マウスから単離された血液及び腫瘍中の免疫細胞上のSiglec-5の発現を示す。
【
図9】本開示の抗Siglec-5抗体が、組換えヒトSiglec-5を発現するCHO細胞(CHO-S hSiglec-5)に結合するが、Siglec-5(元のCHO-S)を発現しない元のCHO細胞または組換えヒトSiglec-14(CHO-S hSiglec-14)を発現するCHO細胞に結合しないことを示す。CHO細胞を、各プロットのx軸に示すように漸増する濃度の抗Siglec-5抗体とインキュベートした。次いで、抗Siglec-5抗体のCHO細胞の表面への結合を、FACSにより測定した。y軸は、示される各抗Siglec-5抗体の、hIgG1アイソタイプ対照抗体と比較したCHO細胞の表面への結合を提供する。S5-174-H2L1は抗体S5-174-H3を指し、S5-174-H3L1は抗体S5-174-H5を指し、S5-174-H3L2は抗体S5-174-H6を指し、S5-174-H4L1は抗体S5-174-H7を指し、S5-174-H4L2は抗体S5-174-H8を指し、S5-G03-H2L1は抗体S5-G-03-H4を指し、S5-G03-H2L2は抗体S5-G-03-H5を指し、S5-G03-H3L1は抗体S5-G-03-H7を指し、S5-G03-H3L2は抗体S5-G-03-H8を指し、S5-G03-H3L3は抗体S5-G-03-H9を指す。
【
図10】本開示の抗Siglec-5抗体が、インビトロでSiglec-5の細胞表面レベルを下方調節することを示す。Siglec-5(CHO-S5)を発現するCHO細胞を、各プロットのx軸に示すように、漸増する濃度の抗Siglec-5抗体と16~24時間インキュベートした。次いで、細胞表面のSiglec-5発現をFACS解析により測定した。残存するSiglec-5のパーセント細胞表面発現を、プロットのy軸(対照からの%hSiglec-5)に提供する。残存するSiglec-5のパーセント細胞表面発現を、以下の式により計算した:(試験抗体の存在下での1A5-PEのMFI)/(試験抗体の非存在下での1A5-PEのMFI)*100%(式中、MFIは平均蛍光強度である)。1A5-PEは抗Siglec-5-PE(クローン1A5、Biolegend)を指し、試験抗体は試験された本開示の抗Siglec-5抗体を指す。hIgG1はアイソタイプ対照抗体を指し、S5-174-H2L1は抗体S5-174-H3を指し、S5-174-H3L1は抗体S5-174-H5を指し、S5-174-H3L2は抗体S5-174-H6を指し、S5-174-H4L1は抗体S5-174-H7を指し、S5-174-H4L2は抗体S5-174-H8を指し、S5-G03-H2L1は抗体S5-G-03-H4を指し、S5-G03-H2L2は抗体S5-G-03-H5を指し、S5-G03-H3L1は抗体S5-G-03-H7を指し、S5-G03-H3L2は抗体S5-G-03-H8を指し、S5-G03-H3L3は抗体S5-G-03-H9を指す。
【
図11】本開示の抗Siglec-5抗体が、初代ヒト骨髄由来抑制性細胞におけるCD86発現を増加させることを示す。2人のヒト血液ドナー(ドナー849及びドナー851)から得られたヒト骨髄由来抑制性細胞(MDSC)を、プロットのx軸(最高10μg/mL)に示すように、漸増する濃度の抗Siglec-5抗体で48時間処理した。次いで、MDSC上のCD86の発現を、抗CD86(IT2.2)抗体を使用してFACSにより定量した。CD86平均蛍光強度(MFI)中央値を、プロットのy軸に提供する。mIgG1及びhIgG1はアイソタイプ対照抗体を指し、S5-174-H3L2は抗体S5-174-H6を指し、S5-G03-H3L1は抗体S5-G-03-H7を指し、S5-7A5.3及びS5-8A1.3はそれぞれ抗体7A5及び8A1を指す。
【
図12】本開示の抗Siglec-5抗体が、初代ヒト骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4発現を増加させることを示す。2人のヒト血液ドナー(ドナー849及びドナー851)から得られたヒト骨髄由来抑制性細胞(MDSC)を、プロットのx軸(最高10μg/mL)に示すように漸増する濃度の抗Siglec-5抗体で処理した。抗体処理の48時間後の馴化培地を、CCL4の発現の変化について評価した。CCL4の発現レベルを、Quantikine ELISAキット(R&D Systems)を使用して、またはHuman Chemokine Legendplex(Biolegend)により製造者のプロトコールに従って測定した。CCL4の発現レベルをy軸(pg/ml)に提供する。mIgG1及びhIgG1はアイソタイプ対照抗体を指し、S5-174-H3L2は抗体S5-174-H6を指し、S5-G03-H3L1は抗体S5-G-03-H7を指し、S5-7A5.3及びS5-8A1.3はそれぞれ抗体7A5及び8A1を指す。
【
図13】本開示の抗Siglec-5抗体が、初代ヒト骨髄由来抑制性細胞におけるCD86発現を増加させることを示す。2人のヒト血液ドナー(ドナー910及びドナー911)から得られたヒト骨髄由来抑制性細胞(MDSC)を、x軸に示す抗Siglec-5抗体(10μg/mL)で48時間処理した。抗体処理なしの対照も、ドナー910からのMDSCを用いて実施した(「処理なし」)。次いで、MDSC上のCD86の発現を、抗CD86(IT2.2)抗体を使用してFACSにより定量した。CD86平均蛍光強度(MFI)中央値を、プロットのy軸に提供する。mIgG1、mIgG2a、及びhIgG1は、アイソタイプ対照抗体を指し、S5-7A5.3及びS5-8A1.3は、それぞれ抗体7A5及び8A1を指し、S5-1A5は、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体(BioLegend)である。
【
図14】本開示の抗Siglec-5抗体が、初代ヒト骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4発現を増加させることを示す。2人のヒト血液ドナー(ドナー910及びドナー911)から得られたヒト骨髄由来抑制性細胞(MDSC)を、x軸に示す抗Siglec-5抗体(10μg/mL)で48時間処理した。抗体処理なしの対照も実施した(「処理なし」)。抗体処理の48時間後の馴化培地を、CCL4の発現の変化について評価した。CCL4の発現レベルを、Quantikine ELISAキット(R&D Systems)を使用して、またはHuman Chemokine Legendplex(Biolegend)により製造者のプロトコールに従って測定した。CCL4の発現レベルをy軸(pg/ml)に提供する。mIgG1、mIgG2a、及びhIgG1は、アイソタイプ対照抗体を指し、S5-7A5.3及びS5-8A1.3は、それぞれ抗体7A5及び8A1を指し、S5-1A5は、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体(BioLegend)である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
一般的な技術
本明細書において記載または参照される技術及び手順は、一般的に周知であり、一般に、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3d edition(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology (F.M.Ausubel,et al.eds.,(2003));the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.):PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995)),Harlow and Lane,eds.(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,and Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1987));Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture (R.I.Freshney),ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8)J.Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995);及びCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)に記載される幅広く利用される方法などの従来の方法を使用して当業者により用いられる。
【0037】
定義
本明細書で使用する場合、用語「予防」は、個体における特定の疾患、障害、または状態の発症または再発に対する予防を提供することを含む。個体は、特定の疾患、障害、もしくは状態の素因を有してもよく、それらに罹りやすくてもよく、またはかかる疾患、障害、もしくは状態を発症するリスクがあってもよいが、まだ当該疾患、障害、または状態と診断されていない。
【0038】
本明細書で使用する場合、特定の疾患、障害、または状態を発症する「リスクがある」個体は、検出可能な疾患または疾患の症状を有していても有していなくてもよく、本明細書に記載される処置方法の前に検出可能な疾患または疾患の症状を示していても示していなくてもよい。「リスクがある」とは、個体が、当該技術分野において知られている特定の疾患、障害、または状態の発症と相関する測定可能なパラメータである1つ以上のリスク因子を有することを意味する。これらのリスク因子のうちの1つ以上を有する個体は、これらのリスク因子のうちの1つ以上を有さない個体より、特定の疾患、障害、または状態を発症する確率が高い。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「処置」は、臨床病態の経過中に、処置されている個体の自然経過を変化させるように設計された臨床的介入を指す。処置の望ましい効果としては、進行速度の減少、病的状態の改善または緩和、及び特定の疾患、障害、または状態の寛解または予後の改善が挙げられる。例えば、特定の疾患、障害、または状態に関連する1つ以上の症状が軽減または除去される場合に個体は成功裡に「処置される」。
【0040】
「有効量」は、少なくとも所望の治療結果または予防結果を達成するために必要な用量及び期間での有効な量を指す。有効量は、1回以上の投与で提供され得る。本明細書における有効量は、個体の病状、年齢、性別、及び体重などの因子、ならびに個体における所望の反応を誘発する処置の能力によって異なり得る。また有効量は、治療上有益な効果が処置の任意の毒性または有害作用を上回るものである。予防的使用については、有益な、または所望の結果としては、疾患の生化学的症状、組織学的症状、及び/または行動症状、その合併症、及び疾患の発症の過程で見られる中間的な病理学的表現型が含まれる疾患のリスクの除去もしくは低減、重症度の軽減、または発症の遅延などの結果が挙げられる。治療的使用については、有益な、または所望の結果としては、臨床結果、例えば、疾患に起因する1つ以上の症状の軽減、疾患の罹患者の生活の質の向上、疾患の処置に必要な他の薬物の投与量の減少、例えば、標的化を介した別の薬物の効果増強、疾患進行の遅延、及び/または生存の延長が挙げられる。薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、直接的または間接的に予防的または治療的処置を達成するのに十分な量である。臨床状況において理解されるように、薬物、化合物、または医薬組成物の有効量は、別の薬物、化合物、または医薬組成物と併用して達成されてもされなくてもよい。従って、「有効量」は、1種以上の治療薬の投与との関連において検討され得、単一の薬剤は、1種以上の他の薬剤と併用して所望の結果が達成され得るまたは達成される場合に、有効量で投与されると見なされ得る。
【0041】
「治療上有効量」は、少なくとも特定の疾患、障害、または状態の測定可能な改善を達成するのに必要とされる最低濃度である。本明細書における治療上有効量は、患者の病状、年齢、性別、及び体重などの因子、ならびに個体における所望の反応を誘発するSiglec-5タンパク質アンタゴニストの能力に応じて異なり得る。また治療上有効量は、治療上有益な効果がSiglec-5タンパク質アンタゴニストの任意の毒性または有害作用を上回るものである。
【0042】
本明細書で使用する場合、別の化合物または組成物と「併用した」投与には、同時投与及び/または異なる時点での投与が含まれる。併用した投与は、異なる投与頻度または投与間隔、及び同じ投与経路または異なる投与経路の使用が含まれる、共製剤としての投与または別個の組成物としての投与も包含する。
【0043】
処置、予防、またはリスクの低減の目的上の「個体」は、ヒト、飼育動物及び家畜、ならびに動物園の動物、競技用動物、または愛玩動物、例えば、イヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、スナネズミ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどが含まれる哺乳動物として分類される任意の動物を指す。好ましくは、個体はヒトである。
【0044】
用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書において「抗体」と互換的に使用される。用語「抗体」は、本明細書において最も広い意味で使用され、具体的にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を、それらが所望の生物活性を示す限り包含する。
【0045】
基本的な4本鎖の抗体単位は、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ4量体の糖タンパク質である。VH及びVLの組合せが、共に単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Ed.,Daniel P.Stites,Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(eds.),Appleton & Lange,Norwalk,CT,1994,page 71 and Chapter 6を参照のこと。
【0046】
任意の脊椎動物種由来のL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と称される2つの明らかに異なる種類のうちの1つに割り当てられ得る。それらの重鎖定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。それぞれ、アルファ(「α」)、デルタ(「δ」)、イプシロン(「ε」)、ガンマ(「γ」)、及びミュー(「μ」)と称される重鎖を有する5つのクラスの免疫グロブリン:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在する。γ及びαクラスは、CH配列及び機能における比較的小さな差異に基づいて更にサブクラス(アイソタイプ)に分けられ、例えば、ヒトは以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元形状は周知であり、例えば、一般に、Abbas et al.,Cellular and Molecular Immunology,4th ed.(W.B.Saunders Co.,2000)に記載されている。
【0047】
「天然抗体」は、通常、2本の同一の軽(L)鎖及び2本の同一の重(H)鎖から構成される約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結されているが、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間では、ジスルフィド結合の数が異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)を有し、複数の定常ドメインがそれに続く。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)及び軽鎖の他端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと揃えられ、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと揃えられている。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖の可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
【0048】
「単離」抗体、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体は、その生成環境(例えば、天然または組換え)の成分から同定、分離、及び/または回収されたものである。好ましくは、単離ポリペプチドは、その生成環境由来の全ての他の混入成分と会合していない。その生成環境由来の混入成分、例えば、組換え遺伝子導入細胞に起因するものは、通常、抗体の研究使用、診断的使用、または治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク性または非タンパク性の溶質が含まれ得る。好ましい実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えば、ローリー法により決定して抗体の95重量%超まで、及び幾つかの実施形態では、99重量%超まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用して少なくとも15残基のN末端または内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシー・ブルー、もしくは好ましくは銀染色を使用する非還元もしくは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性まで精製される。単離抗体には、組換えT細胞内の生体内原位置の抗体が含まれるが、これは、当該抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないためである。しかしながら、通常、単離ポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0049】
本開示の抗Siglec-5抗体などの抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、当該抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」と称され得る。これらのドメインは、通常、(同じクラスの他の抗体と比較して)抗体の最も可変的な部分であり、抗原結合部位を含む。
【0050】
用語「可変的」は、可変ドメインの特定のセグメントの配列が、抗体、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体間で広範囲に異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体のその特定の抗原に対する特異性を決める。しかしながら、可変性は、可変ドメインの全範囲にわたって均一に分布しているわけではない。むしろ、これは軽鎖及び重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR)と称される3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と称される。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ、主としてβシート構造をとり、3つのHVRにより連結されている4つのFR領域を含み、当該3つのHVRは当該βシート構造を連結し、場合によってはその一部を形成するループを形成している。各鎖のHVRは、FR領域により互いに近接して保持され、他方の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば、抗体の抗体依存性細胞傷害における関与を示す。
【0051】
本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる本開示の抗Siglec-5抗体などの抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な天然に生じる変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化など)を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、1つ以上の抗原部位に対して向けられる。幾つかの実施形態では、本開示のモノクローナル抗体は、二重特異性抗体であり得る。通常、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、1つ以上の抗原部位上の単一の決定基に対して向けられる。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる場合の抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とすると解釈されない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 101(34):12467-472(2004);及びLee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)を参照のこと)、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein.,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14 (3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2d ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)、ならびにヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全体を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を生成する技術(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;同5,545,806号;同5,569,825号;同5,625,126号;同5,633,425号;及び同5,661,016号;Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);ならびにLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照のこと)が含まれる種々の技術により作製され得る。
【0052】
用語「全長抗体」、「インタクトな抗体」、または「全抗体」は、互換的に使用され、抗体断片の対語として、実質的にインタクトな形態での抗体、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体を指す。具体的には、全抗体には、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものが含まれる。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒトの天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。場合によっては、インタクトな抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0053】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部、好ましくは、インタクトな抗体の抗原結合領域及び/または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2 、及びFv断片;ダイアボディ;直線状抗体(米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995)を参照のこと);一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成される多重特異抗体が挙げられる。
【0054】
本開示の抗Siglec-5抗体などの抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と称される2つの同一の抗原結合断片、及び容易に結晶化する能力を反映した呼称である残りの「Fc」断片を生成する。Fab断片は、L鎖全体に加えて、H鎖の可変領域ドメイン(VH)、及び1本の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fab断片は、抗原結合に関しては一価であり、すなわち、それは単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理によって、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合されたFab断片におおむね相当し、依然として抗原を架橋することができる単一の大きなF(ab’)2 断片が得られる。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体のヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む幾つかの追加の残基を有する点でFab断片と異なる。Fab’-SHは、本明細書において、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離のチオール基を有するFab’の呼称である。F(ab’)2 抗体断片は、元々、Fab’断片の間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体断片のその他の化学的結合も公知である。
【0055】
Fc断片は、ジスルフィド結合により互いに保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列によって決まり、この領域は、特定の種類の細胞上に見出されるFc受容体(FcR)によっても認識される。
【0056】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、1つの重鎖可変領域ドメイン及び1つの軽鎖可変領域ドメインが緊密に非共有結合的に会合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を付与する、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえも、結合部位全体よりも低い親和性であるが、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0057】
「sFv」または「scFv」とも略される「一本鎖Fv」は、単一ポリペプチド鎖に連結されたVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にする、VH及びVLドメイン間のポリペプチドリンカーを更に含む。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照のこと。
【0058】
抗体、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体の「機能断片」は、通常、インタクトな抗体の抗原結合領域もしくは可変領域、またはFcR結合能を保持するか、もしくは改変されたFcR結合能を有する抗体のFc領域を含む当該インタクトな抗体の一部を含む。抗体断片の例としては、直線状抗体、一本鎖抗体分子、及び抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。
【0059】
用語「ダイアボディ」は、VH及びVLドメイン間の短いリンカー(約5~10)残基)により、Vドメインの鎖内ではなく鎖間の対形成が達成され、これにより、二価の断片、すなわち、2つの抗原結合部位を有する断片が得られるようにsFv断片(前の段落を参照のこと)を構築することによって調製される小さな抗体断片を指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVHドメイン及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する、2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;Hollinger et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 90:6444-48(1993)に詳細に記載されている。
【0060】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」は、本開示の抗Siglec-5抗体などの抗体(免疫グロブリン)であって、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の相当する配列と同一または相同であり、一方で、その鎖(複数可)の残りが、別の種に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の相当する配列と同一または相同である抗体、及びかかる抗体の断片(それらが所望の生物活性を示す限り)を指す(米国特許第4,816,567号;Morrison et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,81:6851-55(1984))。本明細書における関心対象のキメラ抗体としては、抗体の抗原結合領域が、例えば、関心対象の抗原でマカクサルを免疫することにより生成される抗体に由来するPRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられる。本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットとして使用される。
【0061】
本開示の抗Siglec-5抗体などの非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、最小限の非ヒト免疫グロブリン由来の配列を含むキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、非ヒト種、例えば、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類のHVR由来の所望の特異性、親和性、及び/または能力を有する残基(ドナー抗体)で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基が、相当する非ヒト残基で置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体において見出されない残基を含み得る。これらの改変は、結合親和性などの抗体性能を更に改良するために実行され得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、当該可変ドメインにおいて超可変ループの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリン配列のものに相当し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものであるが、FR領域は、抗体性能、例えば、結合親和性、異性化、免疫原性などを改善する1つ以上の個々のFR残基の置換を含み得る。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、通常、H鎖で6以下、L鎖で3以下である。ヒト化抗体は、任意に、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常はヒト免疫グロブリンの少なくとも一部も含む。更なる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);ならびに米国特許第6,982,321号及び第7,087,409号も参照のこと。
【0062】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生成された、本開示の抗Siglec-5抗体などの抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するもの、及び/または本明細書において開示されるヒト抗体の作製技術のいずれかを使用して作製されたものである。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特定的に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーが含まれる当該技術分野において公知の様々な技術を使用して生成され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載の方法もヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)も参照のこと。ヒト抗体は、抗原曝露に反応してかかる抗体を生成するように改変されている一方で、その内因性遺伝子座は無効にされたトランスジェニック動物、例えば、免疫化ゼノマウスに抗原を投与することによって調製され得る(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び第6,150,584号参照)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体に関するLi et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)も参照のこと。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語「超可変領域」、「HVR」、または「HV」は、配列が超可変的であり、及び/または構造的に明確なループを形成する抗体可変ドメインの領域、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体のものを指す。一般に、抗体は6つのHVR:VHにおける3つ(H1、H2、H3)及びVLにおける3つ(L1、L2、L3)を含む。天然抗体では、H3及びL3が、6つのHVRの中で最も多様性を示し、特にH3は、抗体への微細特異性の付与において固有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000);Johnson and Wu in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003))を参照のこと。実際、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科動物抗体は、軽鎖の非存在下で機能的かつ安定である。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993)及びSheriff et al.,Nature Struct.Biol.3:733-736(1996)を参照のこと。
【0064】
複数のHVRの記述が本明細書において使用され、本明細書に包含される。EUまたはKabat相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列多様性に基づいており、最も一般的に使用される(Kabat et al.、前出)。Chothiaは、その代わりに構造的ループの位置を指す(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、EUまたはKabat CDRとChothia構造的ループとの間の折衷案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用されている。「接触(contact)」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の解析に基づいている。これらのHVRの各々に由来する残基を以下に示す。
【0065】
HVRは、以下の「延長したHVR」を含み得る:VLにおける24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、及び89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおける26~35(H1)、50~65または49~65(好ましい実施形態)(H2)、及び93~102、94~102、または95~102(H3)。これらの延長したHVRの定義の各々の可変ドメイン残基は、Kabat et al.(前出)に従って番号付けされる。
【0066】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書において定義されるHVR残基以外の可変ドメインの残基である。
【0067】
本明細書で使用する場合、「アクセプターヒトフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク由来のVLまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、それらと同じアミノ酸配列を含むか、または既存のアミノ酸配列変化を含み得る。幾つかの実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。既存のアミノ酸変化がVHに存在する場合、好ましいそれらの変化は、71H、73H、及び78Hのうちの3つ、2つ、または1つの位置のみで生じ、例えば、それらの位置でのアミノ酸残基は、71A、73T、及び/または78Aであり得る。一実施形態では、VLのアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0068】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に考えつくアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列は、可変ドメイン配列のサブグループから選択される。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)におけるようなサブグループである。例として、VLについて、Kabat et al.(前出)におけるようなサブグループカッパI、カッパII、カッパIII、またはカッパIVであり得るサブグループが挙げられる。更に、VHについて、サブグループは、Kabat et al.(前出)におけるようなサブグループI、サブグループII、またはサブグループIIIであり得る。
【0069】
例えば、本開示の抗Siglec-5抗体の特定の位置での「アミノ酸改変」は、指定された残基の置換もしくは欠失、または指定された残基に隣接する少なくとも1つのアミノ酸残基の挿入を指す。指定された残基に「隣接」する挿入とは、その1~2残基以内での挿入を意味する。挿入は、指定された残基のN末端またはC末端であり得る。本明細書において好ましいアミノ酸の改変は、置換である。
【0070】
本開示の抗Siglec-5抗体などの「親和性成熟」抗体とは、その1つ以上のHVRにおける1つ以上の改変であって、それらの改変(複数可)を有さない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改善をもたらす当該1つ以上の改変を有するものである。一実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対するナノモルまたは更にはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該技術分野において公知の手順により生成される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャフリングによる親和性成熟を記載している。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発は、例えば、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994);Schier et al.Gene 169:147-155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)により記載されている。
【0071】
本明細書で使用する場合、用語「特異的に認識する」または「特異的に結合する」は、標的と抗体、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体との間の親和性または結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用であって、生体分子が含まれる分子の不均一集団の存在下での当該標的の存在を判定する、当該相互作用を指す。例えば、標的またはエピトープに特異的または優先的に結合する抗体、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体は、この標的またはエピトープに対して、他の標的または当該標的の他のエピトープに結合するよりも大きな親和性、結合活性で、より容易に、及び/またはより長い時間結合する抗体である。この定義を読むことにより、例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分)が、第2の標的に特異的または優先的に結合してもしなくてもよいことも理解されよう。従って、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的結合を(含み得るが)必ずしも必要としない。標的に特異的に結合する抗体は、少なくとも約103M-1もしくは104M-1、場合により、約105M-1もしくは106M-1、他の例では約106M-1もしくは107M-1、約108M-1~109M-1、または約1010M-1~1011M-1以上の結合定数を有し得る。種々の免疫アッセイフォーマットが、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために使用され得る。例えば、固相ELISA免疫アッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するために定型的に使用される。例えば、特異的な免疫反応を測定するために使用され得る免疫アッセイフォーマット及び条件の説明については、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照のこと。
【0072】
本明細書で使用する場合、Siglec-5タンパク質と第2のタンパク質との間の「相互作用」は、限定されるものではないが、タンパク質-タンパク質相互作用、物理的相互作用、化学的相互作用、結合、共有結合、及びイオン結合を包含する。本明細書で使用される場合、抗体が2つのタンパク質間の相互作用を妨害、低減、または完全に除去する場合、抗体は、当該2つのタンパク質間の「相互作用を阻害する」。本開示の抗体またはその断片が、2つのタンパク質のうちの1つに結合する場合、当該抗体またはその断片は、2つのタンパク質間の「相互作用を阻害する」。
【0073】
「アゴニスト」抗体または「活性化」抗体は、抗体であって、当該抗体が抗原に結合した後に当該抗原の1つ以上の活性または機能を引き起こす(例えば、増加させる)当該抗体、例えば、本開示の抗Siglec-5アゴニスト抗体である。
【0074】
「遮断」抗体、「アンタゴニスト」抗体、または「抑制性」抗体は、抗体であって、当該抗体が抗原に結合した後に当該抗原の1種以上のリガンドへの結合を阻害もしくは低減し(例えば、減少させ)、及び/または当該抗体が当該抗原に結合した後、当該抗原の1つ以上の活性もしくは機能を阻害もしくは低減する(例えば、減少させる)当該抗体、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体である。幾つかの実施形態では、遮断抗体、アンタゴニスト抗体、または阻害抗体は、抗原の1種以上のリガンドへの結合、及び/または当該抗原の1つ以上の活性もしくは機能を実質的もしくは完全に阻害する。
【0075】
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因する生物活性を指し、抗体アイソタイプにより異なる。
【0076】
本明細書において、用語「Fc領域」は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域が含まれる免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は異なり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226の位置のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端までの区間と定義される。Fc領域のC末端のリジン(EU番号付けシステムに従って残基447)は、例えば、抗体の生成もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を遺伝子組換え操作することによって除去され得る。従って、インタクトな抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、ならびにK447残基を有する抗体及び有さない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。本開示の抗体における使用に好適な天然配列Fc領域としては、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4が挙げられる。
【0077】
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびに天然に存在するそれらのバリアントが含まれる。
【0078】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸の改変、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)を有するために天然配列Fc領域とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、約1~約10のアミノ酸置換、好ましくは、約1~約5のアミノ酸置換を天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域に有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域との、好ましくは少なくとも約80%の相同性、最も好ましくはそれとの少なくとも約90%の相同性、より好ましくはそれとの少なくとも約95%の相同性を有する。
【0079】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(γ受容体)であり、これには、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体(これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び選択的にスプライシングされた形態が含まれる)が含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれ、これらは主にそれらの細胞質ドメインにおいて異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、免疫受容体活性化チロシンモチーフ(「ITAM」)をその細胞質ドメインに含む。抑制性受容体FcγRIIBは、免疫受容抑制性チロシンモチーフ(「ITIM」)をその細胞質ドメインに含む(例えば、M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)を参照のこと)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994);及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説されている。今後同定されるものを含め、他のFcRは、本明細書において「FcR」に包含される。FcRは、抗体の血清半減期を増加させることもできる。
【0080】
インビボでのFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくは形質移入細胞株、またはバリアントFc領域を有するポリペプチドが投与された霊長類において分析され得る。WO2004/42072(Presta)は、FcRへの結合が改善または減弱された抗体バリアントを記載している。例えば、Shields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)も参照のこと。
【0081】
本明細書で使用する場合、ペプチド、ポリペプチド、または抗体配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「相同性」は、配列をアラインメントし、必要に応じてギャップを導入して最大限の配列同一性パーセントを達成した後の、特定のペプチドまたはポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の百分率(%)を指し、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない。アミノ酸配列同一性パーセントを決定することを目的としたアラインメントは、当該技術分野における技術の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大限のアラインメントを得るのに必要な当該技術分野において公知の任意のアルゴリズムを含む、アラインメントの評価のための適切なパラメータを決定することができる。
【0082】
「単離」細胞は、その細胞が生成された環境において通常会合している少なくとも1つの夾雑細胞から同定及び分離された分子または細胞である。幾つかの実施形態では、単離細胞は、生成環境に付随する全ての成分と会合していない。単離細胞は、それが天然に見出される形態または状況以外の形態で存在する。単離細胞は、組織、器官、または個体内に天然に存在する細胞とは区別される。幾つかの実施形態では、単離細胞は、本開示の宿主細胞である。
【0083】
本開示の抗Siglec-5抗体などの抗体をコードする「単離」核酸分子は、それが生成された環境において通常会合している少なくとも1つの夾雑核酸分子から同定及び分離された核酸分子である。好ましくは、単離核酸は、生成環境に付随する全ての成分と会合していない。本明細書におけるポリペプチド及び抗体をコードする単離核酸分子は、それが天然に見出される形態または状況以外の形態で存在する。従って、単離核酸分子は、細胞内に天然に存在する本明細書におけるポリペプチド及び抗体をコードする核酸とは区別される。
【0084】
本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、核酸分子であって、それが連結されている別の核酸を輸送することができる当該核酸分子を指すことを意図する。ベクターの一種は「プラスミド」であり、これは、追加のDNA断片がライゲーションされ得る環状二本鎖DNAを指す。別の種類のベクターはファージベクターである。別の種類のベクターは、追加のDNA断片がウイルスゲノムにライゲーションされ得るウイルスベクターである。ある種のベクターは、それらが導入された宿主細胞内で自己複製が可能である(例えば、細菌の複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入の際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、これにより、宿主ゲノムと共に複製される。更に、ある種のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」、または単に「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、多くの場合プラスミドの形態である。プラスミドが最も一般的に用いられるベクターの形態であるため、本明細書では、「プラスミド」及び「ベクター」は互換的に使用され得る。
【0085】
本明細書において互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、これにはDNA及びRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、もしくは塩基、及び/またはそれらの類似体、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによって、もしくは合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びそれらの類似体を含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾はポリマーの構築の前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、合成後になされる修飾(複数可)、例えば、標識へのコンジュゲーションを含み得る。他の種類の修飾としては、例えば、「キャップ」、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドの類似体との置換、ヌクレオチド間の修飾、例えば、非荷電結合によるもの(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)及び荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるもの、懸垂部分を含むもの、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ボロン、酸化金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、修飾された結合によるもの(例えば、αアノマー核酸など)、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未修飾形態が挙げられる。更に、糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれかが、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基で置き換えられ得るか、標準的な保護基で保護され得るか、もしくは追加のヌクレオチドへの追加の結合を準備するために活性化され得るか、または固体もしくは半固体の支持体にコンジュゲートされ得る。5’及び3’末端のOHは、リン酸化され得るか、またはアミンで、もしくは1~20個の炭素原子の有機キャッピング基部分で置換され得る。他のヒドロキシルも標準的な保護基に誘導体化され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチルリボース、2’-O-アリルリボース、2’-フルオロリボースまたは2’-アジドリボース、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体、及び塩基性ヌクレオシド類似体、例えば、メチルリボシドが含まれる、当該技術分野において一般的に公知であるリボースまたはデオキシリボース糖の類似形態も含み得る。1つ以上のホスホジエステル結合が代替的な連結基で置き換えられ得る。これらの代替的な連結基としては、限定されるものではないが、ホスフェートがP(O)S([チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)で置き換えられており、式中、各RまたはR’が独立して、H、または任意にエーテル(-O-)結合を含む置換もしくは非置換アルキル(1~20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、またはアラルキルである実施形態が挙げられる。ポリヌクレオチドにおける全ての結合が同一である必要はない。上記の説明は、RNA及びDNAが含まれる本明細書において言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0086】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入断片の組み込みのためのベクター(複数可)のレシピエントとなり得るか、またはレシピエントである個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、当該子孫は、自然、偶発的変異、または意図的な変異のために、必ずしも元の親細胞と完全に同一でなくてもよい(形態またはゲノムDNA相補体において)。宿主細胞には、インビボにおいて本開示のポリヌクレオチド(複数可)で形質移入された細胞が含まれる。
【0087】
本明細書で使用する場合、「担体」には、用いられる用量及び濃度で曝露される細胞または哺乳動物に対して無毒性である、薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤が含まれる。多くの場合、生理学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸が含まれる酸化予防剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンが含まれる単糖類、二糖類、及び他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;及び/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS(商標)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0088】
本明細書で使用する場合、用語「アポトーシス」は、遺伝子依存的な細胞内での細胞破壊のプロセスを指す。アポトーシスは、ネクローシスとは異なる。アポトーシスには、細胞骨格の破壊、細胞質の収縮及び凝縮、細胞膜の外表面におけるホスファチジルセリンの発現、ならびに小疱形成が含まれ、膜結合小胞またはアポトーシス小体の形成をもたらす。このプロセスは、「プログラム細胞死」とも称される。アポトーシスの間に、特徴的な現象、例えば、湾曲した細胞表面、核クロマチンの凝縮、染色体DNAの断片化、及びミトコンドリア機能の喪失が観察される。様々な公知の技術、例えば、アネキシンV、ヨウ化プロピジウム、DNA断片化アッセイ、及びYO-PRO-1(Invitrogen)での細胞染色が、アポトーシスを検出するために使用され得る。幾つかの実施形態では、アネキシンV及びヨウ化プロピジウムでの染色が使用され得、アネキシンV+/PI+、アネキシンV+/PI-、及びアネキシンV-/PI+集団を合わせた百分率(%)が死細胞と見なされる。
【0089】
本明細書で使用する場合、用語「Siglec-5の細胞レベルを減少させるか、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害するか、または両方である薬剤」とは、インビトロ、生体内原位置、及び/またはインビボにおいて、Siglec-5(哺乳動物Siglec-5、例えば、ヒトSiglec-5)の生物活性を低減する(顕著な低減を含む)か、減少させるか、遮断するか、阻害するか、または妨害する分子を指す。用語「薬剤」は、生物作用のいかなる特定のメカニズムを意味するものでもなく、直接的または間接的にかかわらず、Siglec-5との相互作用、そのリガンドのうちの1種以上との相互作用、または別のメカニズムを介した相互作用であるかにかかわらず、Siglec-5との全ての可能な薬理学的、生理学的、及び生化学的相互作用、ならびに様々な異なる組成物及び化学的に異なる組成物によって達成され得る当該相互作用の結果を明示的に含み、かつ包含する。例示的な薬剤としては、限定されるものではないが、Siglec-5に特異的に結合する抗Siglec-5抗体、可溶性Siglec-5受容体タンパク質、可溶性Siglec-5-Fc融合タンパク質(例えば、Siglec-5イムノアドヘシン)、Siglec-5リガンドに結合する可溶性Siglec受容体、Siglec-5リガンドに結合するSiglec-Fc融合タンパク質(例えば、Siglecイムノアドヘシン)、Siglec-5をコードする核酸に対して向けられたアンチセンス分子、Siglec-5をコードする核酸に対して向けられた低分子干渉RNA(「siRNA」)分子、Siglec-5抑制化合物、Siglec-5に結合するRNAまたはDNAアプタマー、及びSiglec-5の構造類似体が挙げられる。幾つかの実施形態では、Siglec-5阻害剤(例えば、抗体)は、Siglec-5の細胞レベルを減少させるか、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害するか、または両方である薬剤に結合し(物理的に相互作用し)、Siglec-5リガンドに結合し、及び/またはSiglec-5の合成もしくは生成を阻害する(低減する)。他の実施形態では、本開示の阻害剤の薬剤は、Siglec-5に結合し、そのリガンドのうちの1種以上へのその結合を防ぐ。更なる他の実施形態では、本開示の薬剤は、Siglec-5の発現(すなわち、転写または翻訳)を低減または排除する。Siglec-5の細胞レベルを減少させるか、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害するか、または両方である薬剤の種類の例を本明細書に提供する。
【0090】
本明細書で使用する場合、用語「Siglec-5に結合するか、またはこれと相互作用する薬剤」は、直接的にまたは間接的にのいずれかでSiglec-5タンパク質と相互作用する分子を指す。用語「薬剤」は、生物作用のいかなる特定のメカニズムを意味するものでもなく、直接的または間接的にかかわらず、Siglec-5との相互作用または別のメカニズムを介した相互作用であるかにかかわらず、Siglec-5との全ての可能な薬理学的、生理学的、及び生化学的相互作用、ならびに様々な異なる組成物及び化学的に異なる組成物によって達成され得る当該相互作用の結果を明示的に含み、かつ包含する。例示的な薬剤としては、限定されるものではないが、Siglec-5に特異的に結合する抗Siglec-5抗体が挙げられる。
【0091】
本明細書で使用する場合、用語「RNA干渉」または「RNAi」は、一般に、二本鎖RNA分子もしくは短鎖ヘアピンRNA分子が、当該二本鎖もしくは短鎖ヘアピンRNA分子が実質的または完全な相同性を共有する核酸配列の発現を低減または阻害するプロセスを指す。用語「低分子干渉RNA]もしくは「siRNA」または「RNAi薬剤」は、RNA干渉を誘発するRNA配列を指す。Kreutzer et al.,WO00/44895;Zernicka-Goetz et al.,WO01/36646;Fire,WO99/32619;Mello and Fire,WO01/29058を参照のこと。本明細書で使用する場合、siRNA分子としては、化学修飾ヌクレオチド及び非ヌクレオチドを包含するRNA分子が挙げられる。用語「ddRNAi薬剤」は、外因性ベクターから転写されるDNA依存性RNAi薬剤を指す。用語「短鎖ヘアピンRNA」または「shRNA」は、二本鎖領域及びループ領域を有するRNA構造を指す。ある種の実施形態では、ddRNAi薬剤は、最初にshRNAとして発現される。
【0092】
本明細書で使用する場合、用語「アプタマー」は、所望の分子標的、例えば、一般的な代謝補因子(例えば、補酵素A、S-アデノシルメチオニンなど)、タンパク質(例えば、補体タンパク質C5、抗体など)、または核酸分子における保存された構造要素(例えば、転写因子の結合に重要な構造など)などに緊密かつ特異的に結合することができる異種オリゴヌクレオチドを指す。アプタマーは、通常、約10~約100ヌクレオチド長、約10~約75ヌクレオチド長、約10~約50ヌクレオチド長、約10~約35ヌクレオチド長、及び約10~約25ヌクレオチド長の範囲のDNAまたはRNAヌクレオチド配列を含む。合成DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドは、標準的な固相ホスホラミダイト法及び機器を使用して、例えば、Applied Biosystems(Foster City、CA)から入手可能な3900 High Throughput DNA Synthesizer(商標)を使用して作製され得る。アプタマーには、しばしば、骨格または結合の修飾(例えば、ペプチド核酸(PNA)もしくはホスホロチオエート結合)を含む、DNA及びRNAに見出される通常存在するヌクレオチド(例えば、A、G、C、及びT/U)の誘導体または類似体が組み込まれ、ヌクレアーゼに対する耐性、結合親和力が増加するか、またはそうでなければそれらの薬物動態特性が変化する。例示的な修飾は、米国特許第6,455,308号、同第4,469,863号、同第5,536,821号、同第5,541,306号、同第5,637,683号、同第5,637,684号、同第5,700,922号、同第5,717,083号、同第5,719,262号、同第5,739,308号、同第5,773,601号、同第5,886,165号、同第5,929,226号、同第5,977,296号、同第6,140,482号、ならびにWIPO公開WO00/56746号及び第WO01/14398号に記載されている。かかる類似体または誘導体を含むオリゴヌクレオチドの合成方法は、例えば、上記で引用した特許公報、ならびに米国特許第6,455,308号、同第5,614,622号、同第5,739,314号、同第5,955,599号、同第5,962,674号、同第6,117,992号、及びWO00/75372に開示されている。
【0093】
本明細書で使用する場合、用語「約」は、本技術分野の当業者に良く知られているそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書における、「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(及び記載している)。
【0094】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈で明確に指示されない限り、複数形の参照を含む。例えば、「抗体」への言及は、1つから多数の抗体、例えば、モル量への言及であり、当業者に公知のその等価物などが含まれる。
【0095】
本明細書に記載される本開示の態様及び実施形態には、「を含む(comprising)」態様及び実施形態、「からなる(consisting of)」態様及び実施形態、ならびに「本質的にからなる(consisting essentially of)」態様及び実施形態が含まれることが理解されよう。
【0096】
概観
本開示は、Siglec-5の細胞レベルを減少させ、好中球における活性酸素種(ROS)生成を引き起こすか、もしくは増加させ、好中球における好中球細胞外トラップ(NET)形成を引き起こすか、もしくは増加させ、及び/またはマクロファージにおけるファゴサイトーシス活性を増加させる抗Siglec-5抗体;かかる抗Siglec-5抗体を作製及び使用する方法;かかる抗Siglec-5抗体を含有する医薬組成物;かかる抗Siglec-5抗体をコードする核酸;ならびにかかる抗Siglec-5抗体をコードする核酸を含有する宿主細胞に関する。
【0097】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の分解、下方調節、切断、受容体脱感作、及び/またはリソソーム標的化を引き起こすことによる当該抗体のSiglec-5の細胞発現(例えば、細胞表面発現)を低減する能力に少なくとも部分的に起因する1つ以上のアンタゴニスト活性を有し得る。
【0098】
幾つかの実施形態では、抗体誘導性のSiglec-5活性は、限定されるものではないが、Siglec-5に曝露される抗体の密度を増加させるための完全長抗Siglec-5抗体のプレート結合の試験、抗Siglec-5抗体の二次抗体との架橋、抗Siglec-5抗体の1種以上のFcg受容体(例えば、FcgRIIB)を発現する細胞との架橋、溶液中でのSiglec-5抗体の使用、及びSiglec-5抗体のFab断片の使用が挙げられる、本明細書において開示される技術のいずれかによりインビトロで決定または試験され得る。
【0099】
本開示のある種の態様は、細胞のSiglec-5の細胞表面レベルを減少させ、1つ以上のSiglec-5活性の低減、中和、予防、または抑制をもたらす能力を示す抗Siglec-5抗体の同定に少なくとも部分的に基づく。例示的なSiglec-5活性としては、限定されるものではないが、Syk、LCK、FYM、及び/またはZAP70などのSrcファミリーチロシンキナーゼによるTyr-520及びTyr-544のリン酸化;チロシン特異的タンパク質ホスファターゼSHP1及びSHP2の動員及びそれらへの結合;Dynamini-1に対するグアニンヌクレオチド交換因子として作用するPLC-γ1の動員及びそれへの結合;SH2ドメイン含有タンパク質(例えば、Crkl)の動員及びそれへの結合;脾臓チロシンキナーゼSykの動員及びそれへの結合;SH3-SH2-SH3増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2)の動員及びそれへの結合;複数のSH2含有タンパク質の動員及びそれへの結合;IFN-α4、IFN-β、IL-1β、IL-1α、TNF-α、IL-6、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、LIF、IFN-γ、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、CRP、MCP-1、及びMIP-1-βなどの1種以上の炎症促進性サイトカインの発現の調節;マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、及びミクログリア細胞から選択される1種以上の細胞における1種以上の炎症促進性サイトカインの発現の調節;IL-4、IL-10、IL-13、IL-35、IL-16、TGFβ、IL-1Ra、G-CSF、及びTNF、IFN-β1a、IFN-β1b、またはIL-6に対する可溶性受容体などの1種以上の抗炎症性サイトカインの発現の増加;マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、及びミクログリア細胞から選択される1種以上の細胞における1種以上の抗炎症性サイトカインの発現の調節;C1qa、C1qB、C1qC、C1s、C1R、C4、C2、C3、ITGB2、HMOX1、LAT2、CASP1、CSTA、VSIG4、MS4A4A、C3AR1、GPX1、TyroBP、ALOX5AP、ITGAM、SLC7A7、CD4、ITGAX、及びPYCARDから選択される1種以上のタンパク質の発現の調節;細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)のリン酸化の阻害;1種以上の細胞タンパク質のチロシンリン酸化であって、任意により、当該1種以上の細胞のタンパク質がZAP-70を含み、当該チロシンリン酸化がZAP-70のTyr-319で起こる、当該1種以上の細胞タンパク質のチロシンリン酸化の減少;C-Cケモカイン受容体7(CCR7)の発現の調節;ミクログリア細胞のCCL19及びCCL21発現細胞への走化性の阻害;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、単球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、M2ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、及びM2 NK細胞から選択される1種以上の細胞により引き起こされるT細胞増殖の減少;破骨細胞生成の阻害、破骨細胞形成速度の減少、または両方;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の生存の減少;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の増殖の減少;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の遊走の阻害;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の1つ以上の機能の阻害;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の成熟の阻害;アポトーシス神経細胞の除去、神経組織破片の除去、機能不全シナプスの除去、非神経組織破片の除去、細菌除去、他の異物の除去、疾患原因タンパク質の除去、疾患原因ペプチドの除去、及び腫瘍細胞の除去から選択される1つ以上の種類の除去の阻害であって、任意により、当該疾患原因タンパク質が、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドから選択され、当該腫瘍細胞が、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、及び甲状腺癌から選択されるがん由来である、当該阻害;アポトーシス神経細胞、神経組織破片、機能不全シナプス、非神経組織破片、細菌、他の異物、疾患原因タンパク質、疾患原因ペプチド、疾患原因核酸、または腫瘍細胞のうちの1種以上のファゴサイトーシスの阻害であって、任意により、当該疾患原因核酸が、アンチセンスGGCCCC(G2C4)(配列番号225)リピート伸長RNAであり、当該疾患原因タンパク質が、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドから選択され、当該腫瘍細胞が、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、または甲状腺癌から選択されるがん由来である、当該阻害;腫瘍細胞上のSiglec-5リガンドへの結合;好中球、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、ミクログリア、マクロファージ、及びNK細胞から選択される細胞上のSiglec-5リガンドへの結合;ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上による腫瘍細胞殺傷の阻害;ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上の抗腫瘍細胞増殖活性の阻害;ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上の抗腫瘍細胞転移活性の阻害;1種以上のITAMモチーフ含有受容体であって、任意により、TREM1、TREM2、SIRPB1、FcgR、DAP10、及びDAP12から選択される、当該1種以上のITAMモチーフ含有受容体の阻害;1種以上のパターン認識受容体(PRR)によるシグナル伝達の阻害であって、任意により、当該1種以上のPRRが、病原体関連分子パターン(PAMP)を識別する受容体、ダメージ関連分子パターン(DAMP)を識別する受容体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、当該阻害;モチーフD/Ex0~2YxxL/IX6~8YxxL/I(配列番号4)を含む1種以上の受容体の阻害;1種以上のToll様受容体によるシグナル伝達の阻害;JAK-STATシグナル伝達経路の阻害;活性化B細胞の核因子カッパ軽鎖エンハンサー(NFκB)の阻害;
ITAMモチーフ含有受容体の脱リン酸化;1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または免疫細胞上で発現される受容体の発現の調節であって、任意により、当該1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または免疫細胞上で発現される受容体が、CD86、C1qa、C1qB、C1qC、C1s、C1R、C4、C2、C3、ITGB2、HMOX1、LAT2、CASP1、CSTA、VSIG4、MS4A4A、C3AR1、GPX1、TyroBP、ALOX5AP、ITGAM、SLC7A7、CD4、ITGAX、及び/またはPYCARDを含み、1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または免疫細胞に発現される受容体が、ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上で発現される、当該調節;1種以上のSiglec-5依存性遺伝子の発現の増加;破壊されたSiglec-5依存的遺伝子発現の正常化;1種以上のITAM依存性遺伝子の発現の減少であって、任意により、当該1種以上のITAM依存性遺伝子が、活性化T細胞核因子(NFAT)転写因子により活性化される、当該減少;免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の機能の促進またはレスキュー;免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の腫瘍への浸潤の増加;腫瘍、末梢血、またはその他のリンパ器官における腫瘍促進性免疫抑制性骨髄/顆粒球細胞の数の増加;骨髄由来抑制性細胞の腫瘍促進作用の増強;腫瘍または末梢血における腫瘍促進性サイトカインの発現の増加であって、任意により、当該腫瘍促進性サイトカインが、VEGF、TGFβ、またはIL-10である、当該増加;腫瘍促進性FoxP3+制御性Tリンパ球の腫瘍浸潤の増加;骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の腫瘍促進作用の増強;制御性B細胞の腫瘍促進作用の増強;免疫抑制性好中球の腫瘍促進作用の増強;腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的Tリンパ球の活性化の減少;腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的NK細胞の浸潤の減少;NK細胞の腫瘍殺傷能の減少;免疫反応を増強する能力を有する腫瘍特異的Bリンパ球の浸潤の減少;腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的Tリンパ球の浸潤の減少;腫瘍容積の増加;腫瘍成長速度の増加;転移の増加;腫瘍再発率の増加;抗腫瘍T細胞反応を調節する1つ以上の免疫療法であって、任意により、PD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG3、DR-5、CD2、CD5、TREM1、TREM2、CD39、CD73、CSF-1受容体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上のタンパク質を標的とする免疫療法である、当該1つ以上の免疫療法、または1種以上のがんワクチンの有効性の減少;PLCγ/PKC/カルシウム動員の阻害;ならびにPI3K/Akt、Ras/MAPKシグナル伝達の阻害が挙げられる。
【0100】
幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体によるがんの処置は、(i)がん患者の腫瘍、末梢血、及びリンパ器官に蓄積する腫瘍促進性免疫抑制性骨髄/顆粒球細胞の生存、増殖、成熟、分化、及び/または機能を直接または間接的に減少させ;(ii)がん患者の腫瘍、末梢血、及びその他のリンパ器官における腫瘍促進性免疫抑制性骨髄/顆粒球細胞の数を減少させ;(iii)骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の腫瘍促進性作用を遮断し;(iv)がん患者の腫瘍、末梢血、及びその他のリンパ器官における腫瘍促進性制御性B細胞の数を減少させ;(iv)がん患者の腫瘍及び末梢血における腫瘍促進性サイトカイン、例えば、TGFβ及びIL-10の発現を減少させ;(v)腫瘍促進性FoxP3+制御性Tリンパ球の腫瘍浸潤を減少させ;(vii)腫瘍殺傷能を有するTリンパ球の浸潤及び活性化を増加させ;(viii)腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的NK細胞の浸潤を増加させ;(ix)NK細胞の腫瘍殺傷能を増加させ;(x)免疫反応を増強する能力を有する腫瘍特異的Bリンパ球の浸潤を増加させ;(xi)腫瘍容積を減少させ;(xii)腫瘍成長速度を低減し;(xiii)転移を低減及び/または阻害し;(xiv)腫瘍再発率を低減し;(xv)抗腫瘍T細胞反応、例えば、PD1/PDL1、CTLA4、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、KIR、GAL9、CD2、CD5、CD39、CD73、CD30、TIGIT、VISTA、TIM1、TIM3、TIM4を調節する免疫療法及びがんワクチンの有効性を増加させ;(xvi)PLCγ/PKC/カルシウム動員を引き起こすか、活性化するか、またはそうでなければ増加させ;(xvii)PI3K/Akt、Ras/MAPKシグナル伝達を引き起こすか、活性化するか、またはそうでなければ増加させる。
【0101】
免疫抑制性細胞は、骨髄由来抑制性細胞(MDSC)とも称されることがある。ヒトにおいて、MDSCは、以下のマーカーの組合せのうちの1つにより定義され得る:(1)CD14+ HLA-DRlow/-、(2)CD14+ IL4Rα+、(3)CD14+ HLA-DR- IL4Rα+、(4)CD34+ CD14+ CD11b+ Siglec-5+、(5)CD11b+ CD14+ Siglec-5+、(6)Siglec-5+ HLA-DR-、(7)Lin- HLA-DR-、(8)Lin- HLA-DR- Siglec-5+、(9)Lin- HLA-DR- Siglec-5+ CD11b+、(10)Lin- Siglec-5+ CD11b+ CD15+、(11)Lin- HLA-DR- Siglec-5+ CD11b+ CD14- CD15+、(12)CD11b+ CD14- Siglec-5+、(13)CD11b+ CD14- HLA-DR- Siglec-5+ CD15+、(14)Siglec-5+ HLA-DR- CD15+、(15)CD15+ IL4Rα+、(16)CD11b+ CD15+ CD66b+、(17)CD15+ FSClow SSChigh、(18)CD15high Siglec-5+、(19)CD11b+ CD14- CD15+、(20)CD66b+ SSChigh、及び(21)CD11b+ CD15+(Solito S et al.Annals of the NY Academy of Sciences,2014も参照のこと)。マウスでは、MDSCは、表面マーカーの発現であるCD45+、CD11b+、Gr1+、及び/またはIl4Ra+により定義され得る。更なる例示的な免疫抑制性単球系列は、CD45+、CD11b+、Gr1low;及びCD45+、CD11c+である。
【0102】
更に本開示は、Siglec-5と結合または相互作用する抗Siglec-5抗体に関する。ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の細胞表面レベルを減少させ、及び/またはSiglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害しない。ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSigelc-5に結合するが、ヒトSiglec-14に結合しない。ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5に結合するが、カニクイザルSiglec-5に結合しない。
【0103】
Siglec-5タンパク質
一態様では、本開示は、本開示のSiglec-5タンパク質内のエピトープなどの領域と相互作用するか、またはそうでなければそれに結合する(例えば、モノクローナル)単離抗体などの抗体を提供する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5タンパク質に結合し、当該Siglec-5タンパク質への結合後に1つ以上のSiglec-5活性、例えば、細胞におけるSiglec-5発現に関連する活性を調節する。本開示のSiglec-5タンパク質としては、限定されるものではないが、哺乳動物Siglec-5タンパク質、ヒトSiglec-5タンパク質、マウスSiglec-5タンパク質、及びラットSiglec-5タンパク質が挙げられる。
【0104】
Siglec-5は、Siglec-5分子、シアル酸結合Ig様レクチン5、CD170抗原、CD170、OBBP2、CD33L2、及びOB-BP2と様々に称される。
【0105】
Siglec-5は、限定されるものではないが、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、樹状細胞、破骨細胞、単球、及びミクログリアが含まれる、免疫細胞上で主に発現される免疫グロブリン様受容体である。幾つかの実施形態では、Siglec-5は、CD64と受容体シグナル伝達複合体を形成する。幾つかの実施形態では、Siglec-5シグナル伝達は、PI3Kまたは他の細胞内シグナルの下流阻害をもたらす。骨髄性細胞では、Toll様受容体(TLR)シグナルが、例えば、感染反応の文脈において、Siglec-5活性の阻害に重要である。TLR、例えば、マクロファージ、好中球、NK細胞、及び樹状細胞で発現されるTLRは、病的炎症反応においても重要な役割を果たす。
【0106】
限定されるものではないが、ヒトSiglec-5、カニクイザルSiglec-5、及びマウスSiglec-5が含まれる様々なSiglec-5ホモログが公知である。ヒトSiglec-5のアミノ酸配列を、配列番号1として以下に記載する。
【0107】
幾つかの実施形態では、Siglec-5は、シグナル配列を含む前駆体タンパク質である。幾つかの実施形態では、Siglec-5は、成熟タンパク質である。幾つかの実施形態では、成熟Siglec-5タンパク質は、シグナル配列を含まない。幾つかの実施形態では、成熟Siglec-5タンパク質は、細胞上で発現される。幾つかの実施形態では、成熟Siglec-5タンパク質は、限定されるものではないが、ヒト樹状細胞、ヒトマクロファージ、ヒト単球、ヒト破骨細胞、ヒト好中球、ヒトB細胞、ヒトT細胞、ヒトヘルパーT細胞、ヒト細胞障害性T細胞、ヒト顆粒球、及びヒトミクログリアが含まれる細胞の表面などの細胞上で発現される。本開示の抗Siglec-5抗体などの本開示の薬剤は、本明細書において開示される任意の細胞上で発現される本開示のSiglec-5タンパク質のいずれかに結合し得る。
【0108】
ヒトSiglec-5などの本開示のSiglec-5タンパク質は、限定されるものではないが、配列番号1のアミノ酸残基1~16に位置するシグナル配列、配列番号1のアミノ酸残基19~136に位置する細胞外免疫グロブリン様可変型(IgV)ドメイン、配列番号1のアミノ酸残基146~229及び236~330に位置する2つのIg様C2型ドメイン、配列番号1のアミノ酸残基442~462に位置する膜貫通ドメイン、配列番号1のアミノ酸残基518~523に位置するITIMモチーフ1、及び配列番号1のアミノ酸残基542~547に位置するSLAM様モチーフが含まれる幾つかのドメインを含有する。当業者が理解するように、本開示のドメインの最初及び最後の残基は、使用されるコンピュータモデリングプログラムまたはドメインを決定するために使用される方法によって異なり得る。
【0109】
本開示のある種の態様は、ヒトSiglec-5に結合する抗Siglec-5抗体を提供する。本開示のある種の態様は、ヒトSiglec-5に結合するが、カニクイザルSiglec-5に結合しない抗Siglec-5抗体を提供する。
【0110】
従って、本明細書で使用する場合、本開示の「Siglec-5」タンパク質としては、限定されるものではないが、哺乳動物Siglec-5タンパク質、ヒトSiglec-5タンパク質、及び霊長類Siglec-5タンパク質が挙げられる。加えて、本開示の抗Siglec-5抗体は、哺乳動物Siglec-5タンパク質、ヒトSiglec-5タンパク質、及び霊長類Siglec-5のうちの1種以上の内部のエピトープに結合し得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5タンパク質に特異的に結合し得る。
【0111】
幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルを減少させる本開示の抗Siglec-5抗体は、pH依存的様式でSiglec-5に結合し得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、中性pHでSiglec-5に結合し得、Siglec-5タンパク質から分離せずに内部移行され得る。あるいは、酸性pHにおいて、本開示の抗Siglec-5抗体は、それらが内部移行され、次いで、エンドソーム/リソソーム経路により分解されるとSiglec-5から分離し得る。ある種の実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、5.5~8.0、5.5~7.5、5.5~7.0、5.5~6.5、5.5~6.0、6.0~8.0、6.5~8.0、7.0~8.0、7.5~8.0、6.0~7.5、6.0~7.0、6.5~7.5の範囲であるpHでSiglec-5に結合する。ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、6.0未満、5.5未満、5.0未満、4.5未満、4.0未満、3.5未満、3.0未満、2.5未満、または2.0未満のpHでSiglec-5から分離する。
【0112】
幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルを減少させる本開示の抗Siglec-5抗体、またはSiglec-5の細胞レベルを減少させ、及び/またはSiglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害しない本開示の抗Siglec-5抗体、またはSiglec-5と結合もしくは相互作用する本開示の抗Siglec-5抗体、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体は、本開示の野生型Siglec-5タンパク質、その天然に存在するバリアント、及び/またはその疾患バリアントに結合する。
【0113】
幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルを減少させ、及び/またはSiglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害しない本開示の抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5のバリアントに結合する。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルを減少させ、及び/またはSiglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害しない本開示の抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-14に結合しない。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルを減少させ、及び/またはSiglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害しない本開示の抗Siglec-5抗体は、カニクイザルSiglec-5に結合しない。
【0114】
幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルを減少させる本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、ヒト樹状細胞、ヒトマクロファージ、ヒトNK細胞、ヒト単球、ヒト破骨細胞、ヒト好中球、ヒトB細胞、ヒトT細胞、ヒトヘルパーT細胞、ヒト細胞障害性T細胞、ヒト顆粒球、及びヒトミクログリアが含まれる細胞の表面に発現されるSiglec-5タンパク質に結合する。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルを減少させる本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞の表面に発現されるSiglec-5タンパク質に結合し、表面に発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に、本開示の少なくとも1つのSiglec-5活性を調節する(例えば、引き起こすか、または阻害する)。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5タンパク質に特異的に結合する。
【0115】
Siglec-5リガンド
例示的なSiglec-5リガンドとしては、限定されるものではないが、シアル酸、シアル酸含有糖脂質、シアル酸含有糖タンパク質、α-2,8-ジシアリル含有糖脂質、分枝α-2,6結合シアル酸含有糖タンパク質、末端α-2,6結合シアル酸含有糖脂質、末端α-2,3結合シアル酸含有糖タンパク質、ジシアロガングリオシド(例えば、シアル酸付加グリカンに連結されたセラミドを含有するガングリオシドまたは糖脂質)、分泌型ムチン、赤血球上に発現されたSiglec-5リガンド、細菌細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、アポトーシス細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、神経細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、グリア細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、ミクログリア上に発現されたSiglec-5リガンド、アストロサイト上に発現されたSiglec-5リガンド、腫瘍細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、ウイルス上に発現されたSiglec-5リガンド、樹状細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、βアミロイド斑に結合したSiglec-5リガンド、タウ濃縮体に結合したSiglec-5リガンド、疾患原因タンパク質上のSiglec-5リガンド、疾患原因ペプチド上のSiglec-5リガンド、マクロファージ上に発現されたSiglec-5リガンド、好中球上に発現されたSiglec-5リガンド、ナチュラルキラー細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、単球上に発現されたSiglec-5リガンド、T細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、ヘルパーT細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、細胞障害性T細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、B細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、腫瘍埋没型免疫抑制性マクロファージ上に発現されたSiglec-5リガンド、骨髄由来抑制性細胞上に発現されたSiglec-5リガンド、制御性T細胞上に発現されたSiglec-5リガンドが挙げられる。幾つかの実施形態では、本開示のSiglec-5リガンドは、ガングリオシド(例えば、ジシアロガングリオシド)である。ジシアロガングリオシドは、一般に、共通のラクト-セラミドコア及び1つ以上のシアル酸残基を共有する。
【0116】
好適なガングリオシド(例えば、ジシアロガングリオシド)リガンドの更なる例を、表Aに列挙する。一般に、ガングリオシド(例えば、ジシアロガングリオシド)は、糖鎖に連結された1つ以上のシアル酸(例えば、n-アセチルノイラミン酸、NANA)を有するスフィンゴ糖脂質から構成される。
【0117】
抗Siglec-5抗体
本開示のある種の態様は、Siglec-5の細胞レベルを減少させる抗Siglec-5抗体に関する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の細胞レベルを減少させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の分解、下方調節、切断、受容体脱感作、及び/またはリソソーム標的化を引き起こすことによるSiglec-5の細胞発現(例えば、細胞表面発現)を低減する抗Siglec-5抗体の能力に少なくとも部分的に起因する1つ以上の活性を有し得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、インビトロでSiglec-5の細胞表面レベルを減少させるか、または低減する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビボでSiglec-5の細胞表面レベルを減少させるか、または低減する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、組換えヒトSiglec-5を発現する細胞(例えば、CHO細胞)においてSiglec-5の細胞表面レベルを減少させるか、または低減する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、例えば、初代免疫細胞(例えば、B細胞)が含まれる、免疫細胞におけるSiglec-5の細胞表面レベルを減少させるか、または低減する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、マクロファージにおける(例えば、ヒトマクロファージにおける)Siglec-5の細胞表面レベルを減少させるか、または低減する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、分極化マクロファージ(例えば、分極化ヒトマクロファージ)におけるSiglec-5の細胞表面レベルを減少させるか、または低減する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、M0マクロファージ、M1マクロファージ、及び/またはM2aマクロファージにおけるSiglec-5の細胞表面レベルを減少させるか、または低減する。
【0118】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用(例えば、結合)を阻害しない。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の細胞レベルを減少させ、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用(例えば、結合)を阻害しない。本開示の他の態様は、好中球における活性酸素種(ROS)生成を引き起こし、及び/または好中球における好中球細胞外トラップ(NET)形成を引き起こす抗Siglec-5抗体に関する。本開示の他の態様は、好中球における活性酸素種(ROS)生成を減少させるか、もしくは低減し、及び/または好中球における好中球細胞外トラップ(NET)形成を減少させるか、もしくは低減する抗Siglec-5抗体に関する。
【0119】
本明細書で開示される通り、Siglec-5は、細胞において恒常的にリサイクルされ得、従って、細胞表面上のSiglec-5に結合する任意の薬剤(例えば、抗体)を細胞内にリサイクルし得る(例えば、エンドサイトーシス)。しかしながら、かかるエンドサイトーシスは、Siglec-5の細胞レベル(例えば、細胞表面レベル)の減少をもたらさなくてもよい。急性骨髄性白血病(AML)細胞が、表面に発現されたSiglec-5に結合した抗Siglec-5抗体のエンドサイトーシスを媒介し得ることが示されているが、Siglec-5の細胞レベルの減少は実証されなかった。従って、本開示のある種の態様は、細胞表面に発現されたSiglec-5に結合するだけでなく、Siglec-5の細胞レベルも減少させる抗Siglec-5抗体に関する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞表面に発現されたSiglec-5に結合し、更に細胞内にエンドサイトーシスされる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞内にエンドサイトーシスされることなく細胞表面に発現されたSiglec-5に結合する。
【0120】
Siglec-5の細胞レベルは、限定されるものではないが、Siglec-5の細胞表面レベル、Siglec-5の細胞内レベル、及びSiglec-5の総レベルを指し得る。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルの減少は、Siglec-5の細胞表面レベルの減少を含む。本明細書で使用する場合、抗Siglec-5抗体は、それが、Siglec-5の細胞表面レベルを測定するための、例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS)などのフローサイトメトリーを利用する、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において公知の任意の細胞ベースのインビトロアッセイまたは好適なインビボモデルにより測定した際に、Siglec-5の細胞表面レベルの20%以上の減少を引き起こす場合、Siglec-5の細胞表面レベルを減少させる。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルの減少は、Siglec-5の細胞内レベルの減少を含む。本明細書で使用する場合、抗Siglec-5抗体は、それが、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において公知の任意の細胞ベースのインビトロアッセイまたは好適なインビボモデル、例えば、免疫染色、ウェスタンブロット分析、共免疫沈降法、及びセルサイトメトリーにより測定した際に、Siglec-5の細胞内レベルの20%以上の減少を引き起こす場合、Siglec-5の細胞内レベルを減少させる。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルの減少は、Siglec-5の総レベルの減少を含む。本明細書で使用する場合、抗Siglec-5抗体は、それが、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において公知の任意の細胞ベースのインビトロアッセイまたは好適なインビボモデル、例えば、免疫染色、ウェスタンブロット分析、共免疫沈降法、及びセルサイトメトリーにより測定した際に、Siglec-5の総レベルの20%以上の減少を引き起こす場合、Siglec-5の総レベルを減少させる。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の分解、Siglec-5の切断、Siglec-5の内部移行、Siglec-5のシェディング、及び/またはSiglec-5の発現の下方調節を引き起こす。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルは、インビトロ細胞アッセイを利用して初代細胞(例えば、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、ミクログリア、及びマクロファージ)または細胞株で測定される。
【0121】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5抗体の非存在下でのSiglec-5の細胞レベルと比較して少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%以上Siglec-5の細胞レベルを減少させる。
【0122】
本明細書に記載されるか、または当該技術分野において公知の任意の細胞ベースのインビトロアッセイまたは好適なインビボモデルが、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用(例えば、結合)の阻害を測定するために使用され得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5に結合し、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用(例えば、結合)を阻害しない。
【0123】
本明細書で使用する場合、抗Siglec-5抗体は、それが、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において公知の任意のインビトロアッセイまたは細胞ベースの培養物アッセイを利用して、飽和抗体濃度でリガンドのSiglec-5への結合を20%未満減少させる場合、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用(例えば、結合)を阻害しない。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において公知の任意のインビトロアッセイまたは細胞ベースの培養物アッセイを利用すると、飽和抗体濃度でSiglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用(例えば、結合)を20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満阻害する。
【0124】
本明細書で使用する場合、Siglec-5のレベルは、Siglec-5をコードする遺伝子の発現レベル;Siglec-5をコードする1種以上の転写物の発現レベル;Siglec-5タンパク質の発現レベル;及び/または細胞内及び/または細胞表面に存在するSiglec-5タンパク質の量を指し得る。遺伝子発現、転写、翻訳、及び/またはタンパク質存在量もしくは局在のレベルを測定するための任意の当該技術分野において公知の方法が、Siglec-5のレベルを決定するために使用され得る。
【0125】
加えて、本開示の抗Siglec-5抗体は、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及び/またはがんを予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを処置するために使用され得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、1種以上の免疫細胞の生存、成熟、機能、遊走、もしくは増殖を、それらを必要とする個体において引き起こすか、もしくは促進するために、または制御性B細胞、制御性T細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、急性骨髄性白血病(AML)細胞、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞、及び/または慢性骨髄性白血病(CML)細胞の活性、機能、もしくは生存を、減少させる必要がある個体において減少させるために使用され得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、モノクローナル抗体である。
【0126】
幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の細胞レベル(例えば、細胞表面レベル、細胞内レベル、及び/または総レベル)を減少させる。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の下方調節を引き起こす。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の切断を引き起こす。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の内部移行を引き起こす。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、Siglec-5のシェディングを引き起こす。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の分解を引き起こす。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の脱感作を引き起こす。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、Siglec-5を一過性に活性化するリガンド模倣物として作用する。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、リガンド模倣物として作用し、Siglec-5の細胞レベルの減少を引き起こす前にSiglec-5を一過性に活性化する。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、リガンド模倣物として作用し、Siglec-5の分解を引き起こす前にSiglec-5を一過性に活性化する。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、リガンド模倣物として作用し、Siglec-5の切断を引き起こす前にSiglec-5を一過性に活性化する。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、リガンド模倣物として作用し、Siglec-5の内部移行を引き起こす前にSiglec-5を一過性に活性化する。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、リガンド模倣物として作用し、Siglec-5のシェディングを引き起こす前にSiglec-5を一過性に活性化する。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、リガンド模倣物として作用し、Siglec-5の発現の下方調節を引き起こす前にSiglec-5を一過性に活性化する。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、リガンド模倣物として作用し、Siglec-5の脱感作を引き起こす前にSiglec-5を一過性に活性化する。
【0127】
ある種の実施形態では、Siglec-5の細胞レベルを減少させ、及び/またはSiglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用を阻害しない抗Siglec-5抗体は、Siglec-5と結合するか、または物理的に相互作用する抗Siglec-5抗体である。抗Siglec-5抗体は、標的抗原(例えば、Siglec-5)に対するナノモルまたは更にはピコモルの親和性を有し得る。ある種の実施形態では、抗体のKdは、約10pM~約100nMである。例えば、抗体のKdは、約100nM、約50nM、約10nM、約1nM、約900pM、約800pM、約790pM、約780pM、約770pM、約760pM、約750pM、約740pM、約730pM、約720pM、約710pM、約700pM、約650pM、約600pM、約590pM、約580pM、約570pM、約560pM、約550pM、約540pM、約530pM、約520pM、約510pM、約500pM、約450pM、約400pM、約350pM約300pM、約290pM、約280pM、約270pM、約260pM、約250pM、約240pM、約230pM、約220pM、約210pM、約200pM、約150pM、約100pM、約50pM、約40pM、約30pM、または約20pM、または約15pMのうちのいずれかから約1pM、約2pM、約3pM、約4pM、約5pM、約6pM、約7pM、約8pM、約9pM、約10pM、約11pM、約12pM、約13pM、または約14pMのうちのいずれかまでである。Siglec-5と特異的に相互作用及び/または結合する抗体の調製及び選択のための方法が本明細書に記載される。
【0128】
幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、マウス抗体である。幾つかの実施形態では、本開示の単離抗Siglec-5抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、モノクローナル抗体、多価抗体、またはキメラ抗体である。かかる抗体の例示的な説明は、本開示を通して見出される。
【0129】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5に結合する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5に特異的に結合する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5に結合するが、Siglec-14に結合しない。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5に結合するが、ヒトSiglec-14に結合しない。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5に結合するが、カニクイザルSiglec-5に結合しない。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、リガンドのSiglec-5への結合を遮断しない。
【0130】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞における活性酸素種(ROS)の生成を引き起こすか、または増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビトロで細胞における活性酸素種(ROS)の生成を引き起こすか、または増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビボで細胞における活性酸素種(ROS)の生成を引き起こすか、または増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、好中球、初代好中球、ヒト好中球、及び/または初代ヒト好中球における活性酸素種(ROS)の生成を引き起こすか、または増加させる。
【0131】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞における活性酸素種(ROS)の生成を減少させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビトロで細胞における活性酸素種(ROS)の生成を減少させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビボで細胞における活性酸素種(ROS)の生成を減少させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、好中球、初代好中球、ヒト好中球、及び/または初代ヒト好中球における活性酸素種(ROS)の生成を減少させる。
【0132】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞における好中球細胞外トラップ(NET)の生成または形成を引き起こすか、または増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビトロで細胞における好中球細胞外トラップ(NET)の生成または形成を引き起こすか、または増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビボで細胞における好中球細胞外トラップ(NET)の生成または形成を引き起こすか、または増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体、好中球、初代好中球、ヒト好中球、及び/または初代ヒト好中球における好中球細胞外トラップ(NET)の生成または形成を引き起こすか、または増加させる。
【0133】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞における好中球細胞外トラップ(NET)の生成または形成を減少させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビトロで細胞における好中球細胞外トラップ(NET)の生成または形成を減少させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビボで細胞における好中球細胞外トラップ(NET)の生成または形成を減少させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、好中球、初代好中球、ヒト好中球、及び/または初代ヒト好中球における好中球細胞外トラップ(NET)の生成または形成を減少させる。
【0134】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現を増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現を増加させる。
【0135】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、マクロファージにおけるファゴサイトーシス活性を引き起こすか、または増強する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、ヒトマクロファージにおけるファゴサイトーシス活性を引き起こすか、または増強する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、初代ヒトマクロファージにおけるファゴサイトーシス活性を引き起こすか、または増強する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、M0マクロファージ、M1マクロファージ、及び/またはM2aマクロファージにおけるファゴサイトーシス活性を引き起こすか、または増強する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビトロでマクロファージにおけるファゴサイトーシス活性を引き起こすか、または増強する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビボでマクロファージのファゴサイトーシス活性を引き起こすか、または増強する。
【0136】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞の表面に発現される本開示のSiglec-5タンパク質に結合し、表面に発現されたSiglec-5タンパク質に結合した後に本開示の1つ以上のSiglec-5活性を調節する(例えば、引き起こすか、または阻害する)アゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体である。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、不活性抗体である。
【0137】
アッセイ
Siglec-5の細胞レベルを減少させる抗Siglec-5抗体は、当該技術分野において周知の方法、例えば、放射標識阻害剤アッセイ、光学アッセイ、タンパク質結合アッセイ、生化学的スクリーニングアッセイ、免疫アッセイ、質量シフト測定アッセイ、蛍光アッセイ、及び/または発蛍光性ペプチド切断アッセイなどを使用して同定及び/または特徴付けされ得る。
【0138】
結合アッセイ及び他のアッセイ
ある種の実施形態では、Siglec-5に結合し、Siglec-5の細胞レベルを減少させる抗Sigelc-5抗体は、抗Siglec-5抗体候補のSiglec-5との相互作用及び/または結合親和性の存在を検出するための当該技術分野において周知の技術により同定され得る。
【0139】
ある種の実施形態では、Siglec-5と相互作用する抗Sigelc-5抗体は、放射標識阻害剤アッセイを使用して同定され得る。例えば、既知量の放射標識された薬剤候補が、既知量の固定化Siglec-5及び緩衝液と共にインキュベートされ得る。その後、固定化Siglec-5が緩衝液で洗浄され得、固定化Siglec-5が、残存する放射標識抗Sigelc-5抗体候補の存在について、当該技術分野において公知の技術、例えば、ガンマカウンターなどを使用して測定され得る。放射標識物質の存在を示す測定値は、放射標識抗体候補がSiglec-5と相互作用し、及び/またはそれに結合することができることを示し得る。
【0140】
ある種の実施形態では、Siglec-5と相互作用する抗体は、光学技術を使用して同定され得る。Siglec-5抗体を検出するための例示的な光学技術は、例えば、比色共鳴グラフト表面にSiglec-5を結合させ、これにより、光が取るべき光路の変化により反射光の波長をシフトさせ、その後、候補薬剤をSiglec-5と相互作用させた場合の更なる反射光の波長変化を測定することを含み得る。例えば、薬剤がSiglec-5と共にインキュベートされる場合に、測定された反射光の波長に変化がないことは、薬剤候補がSiglec-5と相互作用できないことを示し得る。薬剤候補がSiglec-5と共にインキュベートされる場合に、測定された反射光の波長に変化があることは、抗体候補がSiglec-5と結合及び/または相互作用できることを示し得る。
【0141】
ある種の実施形態では、Siglec-5と相互作用する抗体は、タンパク質結合アッセイを使用して同定され得る。Siglec-5抗体を検出するための例示的なタンパク質結合アッセイとしては、例えば、抗体候補の存在下でのSiglec-5の共免疫沈降法が挙げられ得る。例えば、Siglec-5が緩衝液中で抗体候補と共にインキュベートされ得、その後、Siglec-5を捕捉するための特異的な固定化分子、例えば、抗Siglec-5抗体などが、抗体候補の存在下でSiglec-5を捕捉するために使用され得、当該技術分野において公知の洗浄手順の間、相互作用している抗体候補を潜在的に伴ってSiglec-5と結合する。その後、相互作用している抗体候補を潜在的に伴ってSiglec-5が遊離され得、抗体候補の特徴に基づいて、例えば、質量分析及び/またはウェスタンブロットなどの技術により抗体候補の存在が検出され得る。
【0142】
ある種の実施形態では、Siglec-5と相互作用する抗体は、当該技術分野において周知の生化学アッセイ及び/または免疫アッセイを使用して同定され得る。例示的な技術としては、例えば、ウェスタンブロット、免疫染色、及び共免疫沈降法などの技術を使用して、例えば、Siglec-5濃度及び/またはタンパク質半減期の変化を定量的に測定するアッセイが挙げられ得る。例えば、抗体候補が、Siglec-5を含有する試料、例えば、Siglec-5を発現する細胞と共にインキュベートされ得、その後、Siglec-5タンパク質の量及び/または細胞レベルが経時的研究の間の複数時点で測定され得る。対照処理と比較したタンパク質の量、細胞レベル、及び/またはタンパク質半減期の変化は、Siglec-5抗体候補がSiglec-5の半減期及び/または活性を変化させることができ得ることを示し得る。
【0143】
ある種の実施形態では、質量シフト測定アッセイが、Siglec-5と相互作用する抗体を同定するために使用され得る。例示的な質量シフト測定アッセイは、例えば、限定されるものではないが、質量分析計などの機器を使用して、抗体候補がSiglec-5と相互作用した際のSiglec-5の質量変化を測定することにより、強く結合した及び/または共有結合したSiglec-5抗体の存在を検出することを含み得る。例えば、質量シフトアッセイは、抗体候補の相互作用の性質に応じて、タンパク質全体及び/またはペプチドベースの解析で行われ得る。Siglec-5への上記抗体候補の添加と相関する質量シフトが検出されることは、抗体候補がSiglec-5と相互作用するか、またはそうでなければそれを阻害することができ得ることを示し得る。加えて、例示的な質量シフト測定アッセイは、例えば、抗体候補がSiglec-5と相互作用した際のそれぞれの抗体候補の質量と相関するSiglec-5への質量付加を、例えば、表面プラズモン共鳴などの技術を使用して検出することを含み得る。例えば、光の屈折率の変化が測定され得、センサー表面に結合されたSiglec-5の質量変化と相関され得る。
【0144】
ある種の実施形態では、化学的架橋アッセイが、Siglec-5と相互作用するSiglec-5抗体を同定するために使用され得る。例えば、抗体候補が、Siglec-5と、Siglec-5と相互作用している抗体候補を当該Siglec-5分子に共有結合的に連結することができる分子架橋剤と共にインビボまたはインビトロでインキュベートされ得る。その後、限定されるものではないが、質量分析及び/またはウェスタンブロットなどの技術が、Siglec-5と相互作用するか、またはそうでなければそれを阻害することができ得る抗体候補を同定するために使用され得る。例えば、抗体候補と共有結合的に架橋されたSiglec-5の検出は、抗体候補がSiglec-5と相互作用するか、またはそうでなければそれを阻害することができ得ることを示し得る。
【0145】
ある種の実施形態では、Siglec-5と相互作用する抗体は、蛍光アッセイを使用して同定され得る。例えば、既知量の蛍光性抗体候補が、既知量の固定化Siglec-5及び緩衝液と共にインキュベートされ得る。その後、固定化Siglec-5が緩衝液で洗浄され得、固定化Siglec-5が残存する蛍光性Siglec-5抗体候補の存在について、限定されるものではないが、蛍光検出などの当該技術分野において公知の技術を使用して測定され得る。蛍光物質の存在を示す測定値は、蛍光性抗体候補がSiglec-5と相互作用し、及び/またはそれに結合することができることを示し得る。
【0146】
Siglec-5と相互作用するか、またはそれに結合する本開示の抗体を同定するための上記のアッセイは、Siglec-14と相互作用しないか、またはそれに結合しない抗Siglec-5抗体を同定するためにも使用され得る。
【0147】
活性アッセイ
本開示のSiglec-5抗体の生物活性を同定及び試験するために、当技術分野において公知のアッセイ及び/または本明細書に記載されるアッセイが使用され得る。幾つかの実施形態では、1つ以上のSiglec-5活性を調節するSiglec-5抗体の能力を試験するためのアッセイが提供される。
【0148】
抗Siglec-5抗体結合領域
本開示のある種の態様は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基17~441、19~360、19~330、19~229、19~136、146~229、もしくは236~330の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基17~441、19~360、19~330、19~229、19~136、146~229、もしくは236~330に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する抗Siglec-5抗体を提供する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基63~71の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基63~71に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基63~71、83~92、及び125~132の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基63~71、83~92、及び125~132に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基65~71の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基65~71に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基65~71及び81~87の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基65~71及び81~87に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基65~71、77~84、及び119~127の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基65~71、77~84、及び119~127に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基65~73の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基65~73に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基77~84の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基77~84に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基81~87の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基81~87に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基83~92の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基83~92に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基119~127の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基119~127に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基125~132の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基125~132に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基352~358の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基352~358に相当するSiglec-5ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。
【0149】
幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基268~278、226-244、もしくは228~238の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基268~278、226-244、もしくは228~238に相当するSiglec-5タンパク質ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基268~278の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基268~278に相当するSiglec-5タンパク質ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、アミノ酸配列LSWFQGSPALN(配列番号221)内の1つ以上の残基に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基226~244の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基226~244に相当するSiglec-5タンパク質ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、アミノ酸配列QTITIFRNGIALEILQNTS(配列番号220)内の1つ以上のアミノ酸残基に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトSiglec-5(配列番号1)のアミノ酸残基228~238の範囲内の、または配列番号1のアミノ酸残基228~238に相当するSiglec-5タンパク質ホモログもしくはオーソログのアミノ酸残基の範囲内の1つ以上のアミノ酸に結合する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、アミノ酸配列ITIFRNGIALE(配列番号219)内の1つ以上のアミノ酸残基に結合する。
【0150】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、立体構造エピトープに結合し得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の不連続エピトープに結合し得る。幾つかの実施形態では、Siglec-5の不連続エピトープは、2つ以上のペプチド、3つ以上のペプチド、4つ以上のペプチド、5つ以上のペプチド、6つ以上のペプチド、7つ以上のペプチド、8つ以上のペプチド、9つ以上のペプチド、または10以上のペプチドを有し得る。本明細書で開示される通り、Siglec-5エピトープは、配列番号1のアミノ酸配列の5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、もしくは20以上のアミノ酸残基、または配列番号1のアミノ酸配列に相当する哺乳動物Siglec-5タンパク質の5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、もしくは20以上のアミノ酸残基を含む1つ以上のペプチドを含み得る。
【0151】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、表2、3、6、及び7に列挙する抗体のいずれかから選択される少なくとも1種の抗体の結合を競合阻害する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される少なくとも1種の抗体の結合を競合阻害する。
【0152】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、表2、3、6、及び7に列挙する抗体のいずれかから選択される少なくとも1種の抗体により結合されるSiglec-5エピトープと同一であるか、またはそれと重複するヒトSiglec-5のエピトープに結合する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される少なくとも1種の抗体により結合されるSiglec-5エピトープと同一であるか、またはそれと重複するヒトSiglec-5のエピトープに結合する。
【0153】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、表2、3、6、及び7に列挙する抗体のいずれかから選択される少なくとも1種の抗体により結合されるのと実質的に同一のSiglec-5エピトープに結合する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される少なくとも1種の抗体により結合されるのと実質的に同一のSiglec-5エピトープに結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法は、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)において提供される。
【0154】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、当該抗Siglec-5抗体が、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体のSiglec-5への結合を、当該抗Siglec-5抗体の非存在下でのSiglec-5への結合と比較して約50%~100%の範囲の量で低減する場合、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体とSiglec-5への結合について競合する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、当該抗Siglec-5抗体が、Siglec-5にS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体の結合を、当該抗Siglec-5抗体の非存在下でのSiglec-5への結合と比較して少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%低減する場合、Siglec-5への結合についてS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体と競合する。幾つかの実施形態では、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体のSiglec-5への結合を100%低減する本開示の抗Siglec-5抗体は、当該抗Siglec-5抗体が、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体のSiglec-5への結合をほぼ完全に遮断することを示す。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体ならびにS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体は、抗Siglec-5抗体対S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体の10:1の比率、9:1の比率、8:1の比率、7:1の比率、6:1の比率、5:1の比率、4:1の比率、3:1の比率、2:1の比率、1:1の比率、0.75:1の比率、0.5:1の比率、0.25:1の比率、0.1:1の比率、0.075:1の比率、0.050:1の比率、0.025:1の比率、0.01:1の比率、0.0075:1の比率、0.0050:1の比率、0.0025:1の比率、0.001:1の比率、0.00075:1の比率、0.00050:1の比率、0.00025:1の比率、0.0001:1の比率、1:10の比率、1:9の比率、1:8の比率、1:7の比率、1:6の比率、1:5の比率、1:4の比率、1:3の比率、1:2の比率、1:0.75の比率、1:0.5の比率、1:0.25の比率、1:0.1の比率、1:0.075の比率、1:0.050の比率、1:0.025の比率、1:0.01の比率、1:0.0075の比率、1:0.0050の比率、1:0.0025の比率、1:0.001の比率、1:0.00075の比率、1:0.00050の比率、1:0.00025の比率、または1:0.0001の比率に相当する量で存在する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体の量と比較して約1.5倍~100倍の範囲または100倍超の量で過剰に存在する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体の量と比較して約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、45倍、50倍、55倍、60倍、65倍、70倍、75倍、80倍、85倍、90倍、95倍、100倍過剰の量で存在する。
【0155】
当該技術分野において公知の任意の好適な競合アッセイまたはSiglec-5結合アッセイ、例えば、BIAcore解析、ELISAアッセイ、またはフローサイトメトリーが、抗Siglec-5抗体がS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、ならびにそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上の抗体とSiglec-5への結合について競合するかどうかを決定するために利用され得る。例示的な競合アッセイでは、固定化Siglec-5または細胞表面にSiglec-5を発現する細胞が、Siglec-5(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)に結合する第1の標識抗体、及びSiglec-5への結合について当該第1の抗体と競合する能力が試験されている第2の非標識抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上澄み中に存在し得る。対照として、固定化Siglec-5またはSiglec-5を発現する細胞が、第1の標識抗体を含むが、第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のSiglec-5への結合を許容する条件下でのインキュベーション後、余剰な結合していない抗体が除去され、固定化Siglec-5またはSiglec-5を発現する細胞に会合した標識の量が測定される。固定化Siglec-5またはSiglec-5を発現する細胞に会合した標識の量が、試験試料において対照試料と比較して実質的に減少する場合、第2の抗体がSiglec-5への結合について第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照のこと。
【0156】
抗Siglec-5抗体軽鎖及び重鎖可変領域
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、(a)S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、S5-G-03-H9、及びそれらの任意の組み合わせから選択される抗体のいずれかのHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのHVRを含む軽鎖可変領域;及び/または(b)S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、S5-G-03-H9、及びそれらの任意の組み合わせから選択される抗体のいずれかのHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのHVRを含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、(i)S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体由来のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(ii)S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体由来のアミノ酸配列を含むHVR-L2;(iii)S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体由来のアミノ酸配列を含むHVR-L3;(iv)S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体由来のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(v)S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体由来のアミノ酸配列を含むHVR-H2;ならびに(vi)S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体由来のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む。幾つかの実施形態では、HVR-L1、HVR-L2、HVR-L3、HVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9、及びそれらの任意の組み合わせから選択される抗体由来のEUもしくはKabat CDR配列、Chothia CDR配列、または接触CDR配列を含む。
【0157】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含み、ここで、当該軽鎖可変ドメインは、(a)配列番号103~115から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)配列番号127~135から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(c)配列番号153~163から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3のうちの1つ以上を含み、及び/または重鎖可変ドメインは、(a)配列番号20~28から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号39~51から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H2;及び(c)配列番号70~79から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3のうちの1つ以上を含む。
【0158】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、ここで、(a)HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号103のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号153のアミノ酸配列を含み;(b)HVR-H1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号40のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号71のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号104のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号128のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号154のアミノ酸配列を含み;(c)HVR-H1が配列番号22のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号41のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号72のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号105のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号129のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号155のアミノ酸配列を含み;(d)HVR-H1が配列番号23のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号42のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号73のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号106のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号156のアミノ酸配列を含み;(e)HVR-H1が配列番号24のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号43のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号74のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号107のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号130のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号157のアミノ酸配列を含み;(f)HVR-H1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号44のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号75のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号108のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号131のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号158のアミノ酸配列を含み;(g)HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号39のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号109のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号159のアミノ酸配列を含み;(h)HVR-H1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号45のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号76のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号110のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号132のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号160のアミノ酸配列を含み;(i)HVR-H1が配列番号26のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号46のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号77のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号111のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号133のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号161のアミノ酸配列を含み;(j)HVR-H1が配列番号27のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号47のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号78のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号112のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号134のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号162のアミノ酸配列を含み;(k)HVR-H1が配列番号28のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号48のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号79のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号113のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号135のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号163のアミノ酸配列を含み;(l)HVR-H1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号49のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号70のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号114のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号127のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号153のアミノ酸配列を含み;(m)HVR-H1が配列番号21のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号50のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号71のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号115のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号128のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号154のアミノ酸配列を含み;(n)HVR-H1が配列番号26のアミノ酸配列を含み、HVR-H2が配列番号51のアミノ酸配列を含み、HVR-H3が配列番号77のアミノ酸配列を含み、HVR-L1が配列番号111のアミノ酸配列を含み、HVR-L2が配列番号133のアミノ酸配列を含み、HVR-L3が配列番号161のアミノ酸配列を含む。
【0159】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体のいずれかの軽鎖可変領域;及び/またはS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体のいずれかの重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、表2、3、6、及び7に列挙されるか、もしくはS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体のいずれかの軽鎖可変領域;及び/または表2、3、6、及び7に列挙されるか、もしくはS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体のいずれかの重鎖可変領域を含む。
【0160】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、配列番号194~211のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域;及び/または配列番号174~193のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号194のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号174のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号195のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号175のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号196のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号176のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号197のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号177のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号198のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号178のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号199のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号179のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号200のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号174のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号201のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号180のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号202のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号181のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号203のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号182のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号204のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号183のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号205のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号184のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号206のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号184のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号205のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号185のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号206のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号185のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号205のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号186のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号206のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号186のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号207のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号187のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号208のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号187のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号207のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号188のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号208のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号188のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号207のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号189のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号208のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号189のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号207のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号190のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号208のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号190のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号209のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号191のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号210のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号191のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号211のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号191のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号209のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号192のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号210のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号192のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号211のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号192のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号209のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号193のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号210のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号193のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号211のアミノ酸配列を含み;重鎖可変ドメインは、配列番号193のアミノ酸配列を含む。
【0161】
幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体が提供され、ここで、当該抗体は上記で提供される実施形態のいずれかにおけるようなVH及び上記で提供される実施形態のいずれかにおけるようなVLを含む。一実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、配列番号174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、及び193から選択されるVH配列;ならびに配列番号194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、及び211から選択されるVL配列(それらの配列の翻訳後修飾を含む)を含む。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体のVH配列及びVL配列を含む。
【0162】
別の態様では、本開示の抗Siglec-5抗体は、配列番号174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、または193のアミノ酸配列に対する少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある種の実施形態では、配列番号174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、または193のアミノ酸配列に対する少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、当該VH配列を含む抗Siglec-5抗体は、Siglec-5に結合する能力を保持する。ある種の実施形態では、配列番号174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、または193における合計1~10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失されている。ある種の実施形態では、配列番号174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、または193における合計1~5のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失されている。ある種の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRにおいて)生じる。任意により、抗Siglec-5抗体は、配列番号174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、または193のVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VHは、(a)表2及び/または表6に示すHVR-H1のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)表2及び/または表6に示すHVR-H1のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)表2及び/または表6に示すHVR-H1のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0163】
別の態様では、本開示の抗Siglec-5抗体は、配列番号194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、または211のアミノ酸配列に対する少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある種の実施形態では、配列番号194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、または211のアミノ酸配列に対する少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、当該VL配列を含む抗Siglec-5抗体は、Siglec-5に結合する能力を保持する。幾つかの実施形態では、配列番号194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、または211における合計1~10のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失されている。ある種の実施形態では、配列番号194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、または211における合計1~5のアミノ酸が、置換、挿入、及び/または欠失されている。ある種の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRにおいて)生じる。任意により、抗Siglec-5抗体は、配列番号194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、または211のVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VLは、(a)表3及び/または表7に示すHVR-H1のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(b)表3及び/または表7に示すHVR-H1のアミノ酸配列を含むHVR-L2;ならびに(c)表3及び/または表7に示すHVR-H1のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0164】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号103のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号127のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号153のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-172である。
【0165】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号40のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号104のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号154のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-174である。
【0166】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号41のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号72のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号105のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号129のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号155のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-175である。
【0167】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号42のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号73のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号106のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号127のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号156のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-176である。
【0168】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号24のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号43のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号74のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号107のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号130のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号157のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-182である。
【0169】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号44のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号75のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号108のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号131のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号158のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-183である。
【0170】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号39のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号109のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号127のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号159のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-190である。
【0171】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号25のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号45のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号76のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号110のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号132のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号160のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-202である。
【0172】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号46のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号77のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号133のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号161のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-G-03である。
【0173】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号27のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号47のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号78のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号112のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号134のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号162のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-G-07である。
【0174】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号48のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号79のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号113のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号135のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号163のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体であるS5-G-10である。
【0175】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号49のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号70のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号114のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号127のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号153のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-172-H1である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-172-H2である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-172-H3である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-172-H4である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-172-H5である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-172-H6である。
【0176】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号50のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号71のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号115のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号128のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号154のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-174-H1である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-174-H2である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-174-H3である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-174-H4である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-174-H5である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-174-H6である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-174-H7である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-174-H8である。
【0177】
幾つかの実施形態では、(a)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号51のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号77のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号111のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号133のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び(f)配列番号161のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む抗Siglec-5抗体が、本明細書において提供される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-G-03-H1である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-G-03-H2である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-G-03-H3である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-G-03-H4である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-G-03-H5である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-G-03-H6である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-G-03-H7である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-G-03-H8である。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗Siglec-5モノクローナル抗体S5-G-03-H9である。
【0178】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、配列番号174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、及び193から選択されるVH配列;ならびに配列番号194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、及び211から選択されるVL配列を含む抗体とヒトSiglec-5への結合について競合する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体と結合について競合する。
【0179】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及び/またはHVR-H3を含む重鎖可変ドメイン、ならびにHVR-L1、及びHVR-L2、及び/またはHVR-L3を含む軽鎖可変ドメインを含む抗Siglec-5抗体とヒトSiglec-5への結合について競合し、ここで、(a)当該HVR-H1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号39のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号70のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号103のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号127のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号153のアミノ酸配列を含み;(b)当該HVR-H1は配列番号21のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号40のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号71のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号104のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号128のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号154のアミノ酸配列を含み;(c)当該HVR-H1は配列番号22のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号41のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号72のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号105のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号129のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号155のアミノ酸配列を含み;(d)当該HVR-H1は配列番号23のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号42のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号73のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号106のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号127のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号156のアミノ酸配列を含み;(e)当該HVR-H1は配列番号24のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号43のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号74のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号107のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号130のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号157のアミノ酸配列を含み;(f)当該HVR-H1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号44のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号75のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号108のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号131のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号158のアミノ酸配列を含み;(g)当該HVR-H1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号39のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号70のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号109のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号127のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号159のアミノ酸配列を含み;(h)当該HVR-H1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号45のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号76のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号110のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号132のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号160のアミノ酸配列を含み;(i)当該HVR-H1は配列番号26のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号46のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号77のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号111のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号133のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号161のアミノ酸配列を含み;(j)当該HVR-H1は配列番号27のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号47のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号78のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号112のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号134のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号162のアミノ酸配列を含み;(k)当該HVR-H1は配列番号28のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号48のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号79のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号113のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号135のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号163のアミノ酸配列を含み;(l)当該HVR-H1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号49のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号70のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号114のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号127のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号153のアミノ酸配列を含み;(m)当該HVR-H1は配列番号21のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号50のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号71のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号115のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号128のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号154のアミノ酸配列を含み;(n)当該HVR-H1は配列番号26のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号51のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号77のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号111のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号133のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号161のアミノ酸配列を含む。
【0180】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、配列番号194のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号195のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号175のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号196のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号176のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号197のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号177のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号198のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号178のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号199のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号179のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号200のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号201のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号180のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号202のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号181のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号203のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号182のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号204のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号183のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号205のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号184のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号206のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号184のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号205のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号185のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号206のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号185のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号205のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号186のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号206のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号186のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号207のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号187のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号208のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号187のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号207のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号188のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号208のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号188のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号207のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号189のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号208のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号189のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号207のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号190のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号208のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号190のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号209のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号191のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号210のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号191のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号211のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号191のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号209のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号210のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号211のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号209のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号193のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号210のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号193のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;及び/または配列番号211のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号193のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗体とヒトSiglec-5への結合について競合する。
【0181】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、配列番号174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、及び193から選択されるVH配列;ならびに配列番号194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、及び211から選択されるVL配列を含む抗Siglec-5抗体により結合されるエピトープと同一であるか、またはそれと重複するヒトSiglec-5のエピトープに結合する。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗Siglec-5抗体により結合されるエピトープと同一であるか、またはそれと重複するヒトSiglec-5のエピトープに結合する。
【0182】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、HVR-H1、HVR-H2、及び/またはHVR-H2を含む可変重鎖ドメイン、ならびにHVR-L1、HVR-L2、及び/またはHVR-L3を含む可変軽鎖ドメインを含む抗Siglec-5抗体により結合されるエピトープと同一であるか、またはそれと重複するヒトSiglec-5のエピトープに結合し、ここで、(a)当該HVR-H1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号39のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号70のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号103のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号127のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号153のアミノ酸配列を含み;(b)当該HVR-H1は配列番号21のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号40のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号71のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号104のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号128のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号154のアミノ酸配列を含み;(c)当該HVR-H1は配列番号22のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号41のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号72のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号105のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号129のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号155のアミノ酸配列を含み;(d)当該HVR-H1は配列番号23のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号42のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号73のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号106のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号127のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号156のアミノ酸配列を含み;(e)当該HVR-H1は配列番号24のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号43のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号74のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号107のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号130のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号157のアミノ酸配列を含み;(f)当該HVR-H1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号44のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号75のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号108のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号131のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号158のアミノ酸配列を含み;(g)当該HVR-H1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号39のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号70のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号109のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号127のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号159のアミノ酸配列を含み;(h)当該HVR-H1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号45のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号76のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号110のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号132のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号160のアミノ酸配列を含み;(i)当該HVR-H1は配列番号26のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号46のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号77のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号111のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号133のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号161のアミノ酸配列を含み;(j)当該HVR-H1は配列番号27のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号47のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号78のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号112のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号134のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号162のアミノ酸配列を含み;(k)当該HVR-H1は配列番号28のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号48のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号79のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号113のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号135のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号163のアミノ酸配列を含み;(l)当該HVR-H1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号49のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号70のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号114のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号127のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号153のアミノ酸配列を含み;(m)当該HVR-H1は配列番号21のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号50のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号71のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号115のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号128のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号154のアミノ酸配列を含み;(n)当該HVR-H1は配列番号26のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H2は配列番号51のアミノ酸配列を含み、当該HVR-H3は配列番号77のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L1は配列番号111のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L2は配列番号133のアミノ酸配列を含み、当該HVR-L3は配列番号161のアミノ酸配列を含む。
【0183】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、配列番号194のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号195のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号175のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号196のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号176のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号197のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号177のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号198のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号178のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号199のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号179のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号200のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号174のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号201のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号180のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号202のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号181のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号203のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号182のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号204のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号183のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号205のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号184のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号206のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号184のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号205のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号185のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号206のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号185のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号205のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号186のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号206のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号186のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号207のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号187のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号208のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号187のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号207のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号188のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号208のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号188のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号207のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号189のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号208のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号189のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号207のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号190のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号208のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号190のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号209のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号191のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号210のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号191のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号211のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号191のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号209のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号210のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号211のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号192のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号209のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号193のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;配列番号210のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号193のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;及び/または配列番号211のアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン及び配列番号193のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含む抗Siglec-5抗体により結合されるエピトープと同一であるか、またはそれと重複するヒトSiglec-5のエピトープに結合する。
【0184】
本開示の抗Siglec-5抗体のいずれかは、細胞株により生成され得る。幾つかの実施形態では、細胞株は、哺乳動物細胞株であり得る。ある種の実施形態では、細胞株は、ハイブリドーマ細胞株であり得る。他の実施形態では、細胞株は、酵母細胞株であり得る。抗体生成に好適な当該技術分野において公知の任意の細胞株が、本開示の抗体を生成するために使用され得る。抗体生成のための例示的な細胞株は、本開示を通して説明される。
【0185】
幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗Siglec-5モノクローナル抗体である。ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、アンタゴニスト抗体である。ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、アゴニスト抗体または不活性抗体である。
【0186】
抗Siglec-5抗体の結合親和性
ヒトSiglec-5、哺乳動物Siglec-5、または両方に対する抗Siglec-5抗体の解離定数(KD)は、100nM未満、75nM未満、50nM未満、25nM未満、20nM未満、15nM未満、10nM未満、9nM未満、8nM未満、7nM未満、6nM未満、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.95nM未満、0.9nM未満、0.85nM未満、0.8nM未満、0.75nM未満、0.70nM未満、0.69nM未満、0.68nM未満、0.67nM未満、0.66nM未満、0.65nM未満、0.64nM未満、0.63nM未満、0.62nM未満、0.61nM未満、0.6nM未満、0.59nM未満、0.58nM未満、0.57nM未満、0.56nM未満、0.55nM未満、0.54nM未満、0.53nM未満、0.52nM未満、0.51nM未満、0.50nM未満、0.49nM未満、0.48nM未満、0.47nM未満、0.46nM未満、0.45nM未満、0.44nM未満、0.43nM未満、0.42nM未満、0.41nM未満、0.4nM未満、0.39nM未満、0.38nM未満、0.37nM未満、0.36nM未満、0.35nM未満、0.34nM未満、0.33nM未満、0.32nM未満、0.31nM未満、0.3nM未満、0.29nM未満、0.28nM未満、0.27nM未満、0.26nM未満、0.25nM未満、0.24nM未満、0.23nM未満、0.22nM未満、0.21nM未満、0.2nM未満、0.19nM未満、0.18nM未満、0.17nM未満、0.16nM未満、0.15nM未満、0.14nM未満、0.13nM未満、0.12nM未満、0.11nM未満、0.1nM未満、0.09nM未満、0.08nM未満、0.07nM未満、0.06nM未満、0.05nM未満、0.04nM未満、0.03nM未満、0.02nM未満、または0.01nM(すなわち、10pM)未満であり得る。幾つかの実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-5、哺乳動物Siglec-5、または両方に対する80nM未満~0.4nM未満の範囲の解離定数(KD)を有する。幾つかの実施形態では、抗体は、ヒトSiglec-5に対する約400pm~約80nMの範囲の解離定数(KD)を有する。幾つかの実施形態では、抗体は、約0.42nM、約0.85nM、約1.1nM、約1.5nM、約1.7nM、約5.3nM、約7.1nM、約15nM、約31nM、約61nM、または約79nMのヒトSiglec-5に対する解離定数(KD)を有する。
【0187】
本明細書において提供される抗体のいずれかの幾つかの実施形態では、抗体は、1μM未満、100nM未満、10nM未満、1nM未満、0.1nM未満、0.01nM未満、または0.001nM未満(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。解離定数は、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法(例えば、ForteBioによるOctet Systemを参照のこと)、等温滴定カロリメトリー(ITC)、示差走査型カロリメトリー(DSC)、円二色性(CD)、ストップトフロー解析、及び比色または蛍光タンパク質融解解析などの任意の生化学的または生物物理学的技術が含まれる任意の解析技術により決定され得る。一実施形態では、KDは、放射標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。幾つかの実施形態では、RIAは、例えば、Chen et al.J.Mol.Biol.293:865-881(1999)に記載のように関心対象の抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて実行される。幾つかの実施形態では、KDは、BIACORE表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定され、例えば、BIACORE-2000またはBIACORE-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用したアッセイは、抗原固定化CM5チップを用いて25℃にて約10レスポンスユニット(RU)で実行される。幾つかの実施形態では、KDは、例えば、本明細書における実施例で述べるようにForteBio Octet(登録商標) Red384システム(ForteBio、Menlo Park、CA)を使用して測定される。幾つかの実施形態では、KDは、約25℃の温度で決定される。
【0188】
更なる抗Siglec-5抗体、例えば、本開示のSiglec-5タンパク質に特異的に結合する抗体は、その物理的/化学的性質及び/または生物活性について、当該技術分野において公知の様々なアッセイにより同定、スクリーニング、及び/または特徴付けされ得る。
【0189】
Fcγ受容体に結合することができる抗Siglec-5抗体
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、Fcγ受容体に結合する能力を保持する。幾つかの実施形態では、かかる抗体は、受容体活性化に適合可能な正確なエピトープ特異性を有する場合、それらがクラスター化するのを可能にし、例えば、Siglec-5受容体を一過性に刺激する特徴を有し得る。幾つかの実施形態では、かかる抗体は、その後、Siglec-5の分解、Siglec-5の脱感作、Siglec-5の切断、Siglec-5の内部移行、Siglec-5のシェディング、Siglec-5発現の下方調節、及び/またはSiglec-5のリソソーム分解を引き起こすことにより、Siglec-5発現及び/またはSiglec-5タンパク質の1つ以上の活性の長期持続性阻害剤として作用し得る。
【0190】
インビボにおいて、本開示の抗Siglec-5抗体は、可能性のある複数のメカニズムのうちの任意の1つ以上により、受容体をクラスター化し、Siglec-5を一過性に活性化し得る。IgG2などのヒト抗体の幾つかのアイソタイプは、それらに特有の構造に起因する受容体をクラスター化するか、または受容体をクラスター化構造に保持する内在能力を有し、これにより、Fc受容体に結合することなく、Siglec-5などの受容体を一過性に活性化する(例えば、White et al.,(2015)Cancer Cell 27,138-148)。
【0191】
幾つかの実施形態では、他の抗体は、隣接する細胞上のFcg受容体に結合することにより、受容体(例えば、Siglec-5)をクラスター化し得る。幾つかの実施形態では、抗体のIgG Fc定常領域のFcg受容体への結合は、抗体の凝集を引き起こし得、次に、抗体がその可変領域を介して結合する受容体を凝集させ得る(Chu et al(2008)Mol Immunol,45:3926-3933;及びWilson et al.,(2011)Cancer Cell 19,101-113)。幾つかの実施形態では、サイトカイン分泌、酸化バースト、ファゴサイトーシスの増加、及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の増強を誘発しない抑制性Fcg受容体FcgR(FcgRIIB)への結合が、FcgRIIBへの結合が有害な免疫反応効果を伴わないため、インビボで抗体をクラスター化するのに好ましい方法である。
【0192】
本開示の抗Siglec-5抗体が受容体をクラスター化することができる他のメカニズムが存在する。例えば、互いに架橋されている抗体断片(例えば、Fab断片)が、上記のようにFcg受容体に結合するFc領域を有する抗体と同様の様式で受容体(例えば、Siglec-5)をクラスター化するために使用され得る。幾つかの実施形態では、架橋された抗体断片(例えば、Fab断片)は、それらが細胞表面上で受容体クラスター化を引き起こし、標的(例えば、Siglec-5)上の適切なエピトープに結合する場合、アゴニスト抗体として一過性に機能し得る。
【0193】
従って、幾つかの実施形態では、Siglec-5タンパク質に結合する本開示の抗体には、エピトープ特異性に起因して、Siglec-5に結合し、1つ以上のSiglec-5活性を一過性に活性化した後、例えば、Siglec-5の細胞レベルを減少させ、1つ以上のSiglec-5活性を阻害し(例えば、Siglec-5の細胞レベルの減少により)、及び/またはSiglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用(例えば、結合)を阻害する(例えば、Siglec-5の細胞レベルの減少により)、アゴニスト抗体が含まれ得る。幾つかの実施形態では、かかる抗体は、Siglec-5上のリガンド結合部位に結合し得、天然リガンドの作用を一過性に模倣し得る。あるいは、かかる抗体は、リガンド結合部位でない1つ以上のドメインに結合することにより標的抗原を刺激してシグナルを伝達させ得る。幾つかの実施形態では、かかる抗体は、リガンド結合に干渉しない。幾つかの実施形態では、抗体がSiglec-5上のリガンド結合部位に結合するかしないかにかかわらず、当該抗体は、その後、Siglec-5の分解、Siglec-5の脱感作、Siglec-5の切断、Siglec-5の内部移行、Siglec-5のシェディング、Siglec-5発現の下方調節、及び/またはSiglec-5のリソソーム分解を引き起こすことにより、Siglec-5発現及び/またはSiglec-5タンパク質の1つ以上の活性の長期持続性阻害剤として作用し得る。
【0194】
例示的な抗体のFcアイソタイプ及び改変を、以下の表Bに提供する。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体に結合することができる本開示の抗Siglec-5抗体は、以下の表Bに列挙するFcアイソタイプを有する。
【0195】
理論に拘束されるものではないが、表Bに記載されるアイソタイプに加えて、ヒトのFcg受容体I、IIA、IIC、IIIA、IIIB及び/またはマウスのFcg受容体I、III、及びIVに結合するヒトIgG1またはIgG3アイソタイプ及びそれらの変異体を有する抗体(例えば、Strohl(2009)Current Opinion in Biotechnology 2009,20:685-691)も、一過性のアゴニスト抗体として作用し得ると考えられる。
【0196】
幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、IgGクラス、IgMクラス、またはIgAクラスのものである。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプを有する。
【0197】
ある種の実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、IgG2アイソタイプを有する。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、ヒトIgG2定常領域を含有する。幾つかの実施形態では、ヒトIgG2定常領域は、Fc領域を含む。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、抑制性Fc受容体に結合する。ある種の実施形態では、抑制性Fc受容体は、抑制性Fcγ受容体IIB(FcγIIB)である。幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上の改変を含有する。例えば、幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上のアミノ酸置換(例えば、同一アイソタイプの野生型Fc領域と比較して)を含有する。幾つかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、V234A(Alegre et al.,(1994)Transplantation 57:1537-1543.31;Xu et al.,(2000)Cell Immunol,200:16-26)、G237A(Cole et al.(1999)Transplantation,68:563-571)、H268Q、V309L、A330S、P331S(US2007/0148167;Armour et al.(1999)Eur J Immunol 29:2613-2624;Armour et al.(2000)The Haematology Journal 1(Suppl.1):27;Armour et al.(2000)The Haematology Journal 1(Suppl.1):27)、C232S及び/またはC233S(White et al.(2015)Cancer Cell 27,138-148)、S267E、L328F(Chu et al.,(2008)Mol Immunol,45:3926-3933)、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択され、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。
【0198】
幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、C127Sアミノ酸置換を含有する重鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有し、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う(White et al.,(2015)Cancer Cell 27,138-148;Lightle et al.,(2010)PROTEIN SCIENCE 19:753-762;及びWO2008079246)。
【0199】
幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、C214Sアミノ酸置換を含有するカッパ軽鎖定常ドメインを有するIgG2アイソタイプを有し、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う(White et al.,(2015)Cancer Cell 27,138-148;Lightle et al.,(2010)PROTEIN SCIENCE 19:753-762;及びWO2008079246)。
【0200】
ある種の実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、IgG1アイソタイプを有する。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、マウスIgG1定常領域を含有する。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、ヒトIgG1定常領域を含有する。幾つかの実施形態では、ヒトIgG1定常領域は、Fc領域を含む。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、抑制性Fc受容体に結合する。ある種の実施形態では、抑制性Fc受容体は、抑制性Fcγ受容体IIB(FcγIIB)である。幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上の改変を含有する。例えば、幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上のアミノ酸置換(例えば、同一アイソタイプの野生型Fc領域と比較して)を含有する。幾つかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、N297A(Bolt S et al.(1993)Eur J Immunol 23:403-411)、D265A(Shields et al.(2001)R.J.Biol.Chem.276,6591-6604)、D270A、L234A、L235A(Hutchins et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA,92:11980-11984;Alegre et al.,(1994)Transplantation 57:1537-1543.31;Xu et al.,(2000)Cell Immunol,200:16-26)、G237A(Alegre et al.(1994)Transplantation 57:1537-1543.31;Xu et al.(2000)Cell Immunol,200:16-26)、P238D、L328E、E233D、G237D、H268D、P271G、A330R、C226S、C229S、E233P、L234V、L234F、L235E(McEarchern et al.,(2007) Blood,109:1185-1192)、P331S(Sazinsky et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA 2008,105:20167-20172)、C127S、V263L、V266L、S267E、V273C、V273E、V273F、V273L、V273M、V273S、V273Y、L328F、A330L、M252Y、S254T、T256E、N297Q、P238S、P238A、V305K、V305W、A327Q、A327G、P329A、K322A、T394D、及び/またはE430Gから選択され、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。
【0201】
幾つかの実施形態では、抗体は、IgG2アイソタイプ重鎖定常ドメイン1(CH1)及びヒンジ領域を含む(White et al.,(2015)Cancer Cell 27,138-148)。ある種の実施形態では、IgG2アイソタイプCH1及びヒンジ領域は、ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCP(配列番号218)のアミノ酸配列を含有する。幾つかの実施形態では、抗体Fc領域は、S267Eアミノ酸置換、L328Fアミノ酸置換、もしくは両方、及び/またはN297AもしくはN297Qアミノ酸置換を含有し、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。
【0202】
ある種の実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、IgG4アイソタイプを有する。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、ヒトIgG4定常領域を含有する。幾つかの実施形態では、ヒトIgG4定常領域は、Fc領域を含む。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、抑制性Fc受容体に結合する。ある種の実施形態では、抑制性Fc受容体は、抑制性Fcγ受容体IIB(FcγIIB)である。幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上の改変を含有する。例えば、幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上のアミノ酸置換(例えば、同一アイソタイプの野生型Fc領域と比較して)を含有する。幾つかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、L235A、G237A、S228P、L236E(Reddy et al.,(2000)J Immunol,164:1925-1933)、S267E、E318A、L328F、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択され、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。幾つかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、S228P、F234A、及びL235Aから選択され、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。幾つかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、Fcの残基位置228でのS228P、Fcの残基位置234でのF234A、及びFcの残基位置235でのL235Aから選択され、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。
【0203】
ある種の実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、ハイブリッドIgG2/4アイソタイプを有する。幾つかの実施形態では、Fcγ受容体結合抗体は、EUまたはKabat番号付けに従うヒトIgG2のアミノ酸118~260及びEUまたはKabat番号付けに従うヒトIgG4のアミノ酸261~447を含有するアミノ酸配列を含む(WO1997/11971;WO2007/106585)。
【0204】
ある種の実施形態では、抗体は、マウスIgG4定常領域を含有する(Bartholomaeus,et al.(2014)J.Immunol.192,2091-2098)。
【0205】
幾つかの実施形態では、Fc領域は、EUまたはKabat番号付けに従うA330L、L234F、L235E、またはP331S、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の追加のアミノ酸置換を更に含有する。
【0206】
抗Siglec-5アンタゴニスト抗体
第3のクラスの本開示の抗Siglec-5抗体には、アンタゴニスト抗体が含まれる。幾つかの実施形態では、Siglec-5タンパク質に結合する抗体には、Siglec-5の細胞レベルを低減し、及び/またはSiglec-5タンパク質の1つ以上の活性を阻害するアンタゴニスト抗体が含まれ得る。かかる抗体は、Siglec-5と1種以上のSiglec-5リガンドとの間の相互作用(例えば、結合)を(例えば、Siglec-5細胞レベルを低減することなどによって間接的に)予防すること、または1種以上のSiglec-5リガンドの存在下でのSiglec-5の細胞外ドメインから細胞質へのシグナル伝達を予防することのいずれかによってSiglec-5タンパク質の1つ以上の活性を阻害する。アンタゴニスト抗体は、Siglec-5の分解、Siglec-5の脱感作、Siglec-5の切断、Siglec-5の内部移行、Siglec-5のシェディング、Siglec-5発現の下方調節、及び/またはSiglec-5のリソソーム分解を引き起こすことによってSiglec-5の細胞表面レベルを減少させることによりSiglec-5タンパク質の1つ以上の活性を阻害し得る。幾つかの実施形態では、かかる抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、Siglec-5を一過性に活性化しなくてもよい。
【0207】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、本開示の一過性抗Siglec-5アゴニスト抗体のエピトープ特異性を有し得るが、Fcg受容体に結合することができないFcドメインを有し得、従って、例えば、Siglec-5を一過性にクラスター化し、活性化することができない。
【0208】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、限定されるものではないが、以下の活性のうちの1つ以上を有する:サイトカインシグナル抑制因子(SOCS)タンパク質(例えば、SOCS3タンパク質)のSiglec-5タンパク質への結合を減少させる能力、Siglec-5タンパク質のプロテアソーム分解を増加させる能力、循環樹状細胞、マクロファージ、単球、T細胞、及び/またはミクログリアの表面でのSiglec-5の機能的発現を低減する能力、Syk、LCK、FYM、及び/またはZAP70などのSrcファミリーチロシンキナーゼによるTyr-520及びTyr-544のリン酸化を減少させるか、または阻害する能力;チロシン特異的タンパク質ホスファターゼSHP1及びSHP2の動員及びそれらへの結合を阻害する能力;Dynamini-1に対するグアニンヌクレオチド交換因子として作用するPLC-γ1の動員及びそれへの結合を阻害する能力;SH2ドメイン含有タンパク質(例えば、Crkl)の動員及びそれへの結合を阻害する能力;脾臓チロシンキナーゼSykの動員及びそれへの結合を阻害する能力;SH3-SH2-SH3増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2)の動員及びそれへの結合を阻害する能力;複数のSH2含有タンパク質の動員及びそれへの結合を阻害する能力;1種以上の炎症促進性サイトカインであって、任意により、IFN-α4、IFN-β、IL-1β、IL-1α、TNF-α、IL-6、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、LIF、IFN-γ、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-33、MCP-1、及びMIP-1-βから選択される、当該1種以上の炎症促進性サイトカインの発現を調節する能力;マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、及びミクログリア細胞から選択される1種以上の細胞における1種以上の炎症促進性サイトカインの発現を調節する能力;1種以上の抗炎症性サイトカインであって、任意により、IL-4、IL-10、IL-13、IL-35、IL-16、TGFβ、IL-1Ra、G-CSF、及びTNF、IFN-β1a、IFN-β1b、またはIL-6に対する可溶性受容体から選択される、当該1種以上の抗炎症性サイトカインの発現を調節する能力;マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、及びミクログリア細胞から選択される1種以上の細胞における1種以上の抗炎症性サイトカインの発現を調節する能力;C1qa、C1qB、C1qC、C1s、C1R、C4、C2、C3、ITGB2、HMOX1、LAT2、CASP1、CSTA、VSIG4、MS4A4A、C3AR1、GPX1、TyroBP、ALOX5AP、ITGAM、SLC7A7、CD4、ITGAX、及びPYCARDから選択される1種以上のタンパク質の発現を調節する能力;細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)リン酸化の阻害を相殺する能力;1種以上の細胞タンパク質のチロシンリン酸化であって、任意により、当該1種以上の細胞タンパク質がZAP-70を含み、当該チロシンリン酸化がZAP-70のTyr-319で起こる、当該1種以上の細胞タンパク質のチロシンリン酸化の減少を予防する能力;C-Cケモカイン受容体7(CCR7)の発現を調節する能力;ミクログリア細胞のCCL19及びCCL21発現細胞への走化性の阻害を予防する能力;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、単球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、M2ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、及びM2 NK細胞から選択される1種以上の細胞により引き起こされるT細胞増殖の減少を予防する能力;破骨細胞生成の阻害を予防する能力、破骨細胞形成速度の減少を予防する能力、または両方;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の生存の減少を予防する能力;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の増殖の減少を予防する能力;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の遊走を増強する能力;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の1つ以上の機能の減少を予防する能力;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の成熟を増強する能力;アポトーシス神経細胞の除去、神経組織破片の除去、機能不全シナプスの除去、非神経組織破片の除去、細菌除去、他の異物の除去、疾患原因タンパク質の除去、疾患原因ペプチドの除去、及び腫瘍細胞の除去から選択される1つ以上の種類の除去を増強する能力であって、任意により、当該疾患原因タンパク質が、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドから選択され、当該腫瘍細胞が、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、及び甲状腺癌から選択されるがん由来である、当該能力;アポトーシス神経細胞、神経組織破片、機能不全シナプス、非神経組織破片、細菌、他の異物、疾患原因タンパク質、疾患原因ペプチド、疾患原因核酸、または腫瘍細胞のうちの1種以上のファゴサイトーシスの阻害であって、任意により、当該疾患原因核酸が、アンチセンスGGCCCC(G2C4)(配列番号225)リピート伸長RNAであり、当該疾患原因タンパク質が、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドから選択され、当該腫瘍細胞が、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、または甲状腺癌から選択されるがん由来である、当該阻害;腫瘍細胞上のSiglec-5リガンドへの結合;好中球、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、ミクログリア、マクロファージ、及びNK細胞から選択される細胞上のSiglec-5リガンドへの結合;ミクログリア、マクロファージ、
好中球、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上による腫瘍細胞殺傷の阻害;ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上の抗腫瘍細胞増殖活性の活性化;ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上の抗腫瘍細胞転移活性を増強する能力;1種以上のITAMモチーフ含有受容体であって、任意により、TREM1、TREM2、SIRPB1、FcgR、DAP10、及びDAP12から選択される、当該1種以上のITAMモチーフ含有受容体の活性を増強する能力;1種以上のパターン認識受容体(PRR)であって、任意により、当該1種以上のPRRが、病原体関連分子パターン(PAMP)を識別する受容体、ダメージ関連分子パターン(DAMP)を識別する受容体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、当該1種以上のパターン認識受容体(PRR)によるシグナル伝達を増強する能力;モチーフD/Ex0~2YxxL/IX6~8YxxL/I(配列番号4)を含む1種以上の受容体の活性を増強する能力;1種以上のToll様受容体によるシグナル伝達を増強する能力;JAK-STATシグナル伝達経路を増強する能力;活性化B細胞(NFκB)の核因子カッパ軽鎖エンハンサーの活性を増強する能力;ITAMモチーフ含有受容体のリン酸化を増加させる能力;1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または免疫細胞上で発現される受容体の発現を増加させる能力であって、任意により、当該1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または免疫細胞上で発現される受容体が、CD86、C1qa、C1qB、C1qC、C1s、C1R、C4、C2、C3、ITGB2、HMOX1、LAT2、CASP1、CSTA、VSIG4、MS4A4A、C3AR1、GPX1、TyroBP、ALOX5AP、ITGAM、SLC7A7、CD4、ITGAX、及び/またはPYCARDを含み、当該1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または免疫細胞に発現される受容体が、ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上で発現される、当該能力;1種以上のSiglec-5依存性遺伝子の発現を減少させる能力;1種以上のITAM依存性遺伝子の発現の発現を増強する能力であって、任意により、当該1種以上のITAM依存性遺伝子が、活性化T細胞核因子(NFAT)転写因子により活性化される、当該能力;免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の分化を減少させるか、またはそうでなければ阻害する能力;免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の機能を減少させるか、またはそうでなければ阻害する能力;免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の腫瘍への浸潤を減少させるか、またはそうでなければ阻害する能力;腫瘍、末梢血、またはその他のリンパ器官における腫瘍促進性免疫抑制性骨髄/顆粒球細胞の数を減少させるか、またはそうでなければ抑制する能力;制御性B細胞の腫瘍促進作用を減少させるか、またはそうでなければ阻害する能力;腫瘍または末梢血における腫瘍促進性サイトカイン、例えば、TGFβまたはIL-10の発現を減少させるか、またはそうでなければ阻害する能力;腫瘍促進性FoxP3+制御性Tリンパ球の腫瘍浸潤を減少させるか、またはそうでなければ阻害する能力;骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の腫瘍促進作用を減少させるか、またはそうでなければ阻害する能力;腫瘍殺傷能を有するマクロファージの活性を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;腫瘍殺傷能を有する抗腫瘍マクロファージの腫瘍浸潤を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;腫瘍殺傷能を有する好中球の活性を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;腫瘍殺傷能を有する抗腫瘍好中球の腫瘍浸潤を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異性Tリンパ球を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異性NK細胞の浸潤を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;NK細胞の腫瘍殺傷能を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;免疫反応を増強する能力を有する腫瘍特異的Bリンパ球の活性を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;免疫反応を増強する能力を有する腫瘍特異的Bリンパ球の浸潤を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的Tリンパ球の浸潤を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;腫瘍容積を減少させる能力;腫瘍成長速度を減少させる能力;転移を減少させるか、またはそうでなければ阻害する能力;腫瘍再発率を減少させる能力;抗腫瘍T細胞反応を調節する1つ以上の免疫療法であって、任意により、PD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG3、DR-5、CD2、CD5、TREM1、TREM2、CD39、CD73、CSF-1受容体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上のタンパク質を標的とする免疫療法である、当該1つ以上の免疫療法、または1種以上のがんワクチンの有効性を増加させるか、またはそうでなければ増強する能力;PLCγ/PKC/カルシウム動員を増加またはそうでなければ増強する能力;ならびにPI3K/Akt、Ras/MAPKシグナル伝達を増加またはそうでなければ増強する能力。
【0209】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、1種以上のFcγ受容体への結合の低減を示すFc領域を有する。かかるFc領域及び改変の例を、以下の表Cに提供する。幾つかの実施形態では、抗体は、以下の表Cに列挙するFcアイソタイプを有する。
【0210】
Fcγ受容体への結合が低減された抗体Fcアイソタイプ
幾つかの実施形態では、Fcγ受容体への結合が低減された抗Siglec-5抗体は、以下の表Cに列挙するFcアイソタイプを有する。
【0211】
ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、IgG1アイソタイプを有する。幾つかの実施形態では、抗体は、マウスIgG1定常領域を含有する。幾つかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG1定常領域を含有する。幾つかの実施形態では、ヒトIgG1定常領域は、Fc領域を含む。幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上の改変を含有する。例えば、幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上のアミノ酸置換(例えば、同一アイソタイプの野生型Fc領域と比較して)を含有する。
【0212】
幾つかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、N297A、N297Q(Bolt S et al.(1993)Eur J Immunol 23:403-411)、D270A、D265A、L234A、L235A(McEarchern et al.,(2007)Blood,109:1185-1192)、C226S、C229S(McEarchern et al.,(2007)Blood,109:1185-1192)、P238S(Davis et al.,(2007)J Rheumatol,34:2204-2210)、E233P、L234V(McEarchern et al.,(2007)Blood,109:1185-1192)、P238A、A327Q、A327G、P329A(Shields RL.et al.,(2001)J Biol Chem.276(9):6591-604)、K322A、L234F、L235E(Hezareh,et al.,(2001)J Virol 75,12161-12168;Oganesyan et al.,(2008).Acta Crystallographica 64,700-704)、P331S(Oganesyan et al.,(2008)Acta Crystallographica 64,700-704)、T394D(Wilkinson et al.(2013)MAbs 5(3):406-417)、A330L、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択され、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。ある種の実施形態では、Fc領域は、EU番号付け規則に従うグリシン236に相当する位置でのアミノ酸欠失を更に含む。
【0213】
幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、EU番号付け規則に従うC220Sアミノ酸置換を含有する重鎖定常領域を有するIgG1アイソタイプを有する。幾つかの実施形態では、Fc領域は、EU番号付け規則に従うA330L、L234F;L235E及び/またはP331Sから選択される1つ以上の追加のアミノ酸置換を更に含有する。ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、IgG2アイソタイプを有する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトIgG2定常領域を含有する。幾つかの実施形態では、ヒトIgG2定常領域は、Fc領域を含む。幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上の改変を含有する。例えば、幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上のアミノ酸置換(例えば、同一アイソタイプの野生型Fc領域と比較して)を含有する。幾つかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、P238S、V234A、G237A、H268A、H268Q、H268E、V309L、N297A、N297Q、V309L、A330S、P331S、C232S、C233S、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択され、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う(Vafa O.et al.,(2014)Methods 65:114-126)。
【0214】
ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、IgG4アイソタイプを有する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、ヒトIgG4定常領域を含有する。幾つかの実施形態では、ヒトIgG4定常領域は、Fc領域を含む。幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上の改変を含有する。例えば、幾つかの実施形態では、Fc領域は、1つ以上のアミノ酸置換(例えば、同一アイソタイプの野生型Fc領域と比較して)を含有する。幾つかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換は、E233P、F234V、L235A、G237A、E318A(Hutchins et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA,92:11980-11984)、S228P、L234A/F234A、L236E、S241P、L248E(Reddy et al.,(2000)J Immunol,164:1925-1933;Angal et al.,(1993)Mol Immunol.30(1):105-8;US8614299B2;Vafa O.et al.,(2014)Methods 65:114-126)、T394D、M252Y、S254T、T256E、N297A、及び/またはN297Qから選択され、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。
【0215】
幾つかの実施形態では、Fc領域は、M252Y、S254T、及び/またはT256Eから選択される1つ以上の追加のアミノ酸置換を更に含有し、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。
【0216】
更なるIgG変異
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるIgG1バリアントのうちの1つ以上は、補体活性化を排除するために、A330L変異(Lazar et al.,(2006)Proc Natl Acad Sci USA,103:4005-4010)、またはL234F、L235E、及び/またはP331S変異(Sazinsky et al.,(2008)Proc Natl Acad Sci USA,105:20167-20172)のうちの1つ以上と組み合わされ得、ここで、アミノ酸位はEU番号付け規則に従う。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるIgGバリアントは、ヒト血清における抗Siglec-5抗体半減期を増強するために、1つ以上の変異と組み合わされ得る(例えば、EU番号付け規則に従うM252Y、S254T、T256E変異)(Dall’Acqua et al.,(2006)J Biol Chem,281:23514-23524;及びStrohl e al.,(2009)Current Opinion in Biotechnology,20:685-691)。
【0217】
幾つかの実施形態では、本開示のIgG4バリアントは、抗体の安定化を増強するために、EU番号付け規則に従うS228P変異(Angal et al.,(1993)Mol Immunol,30:105-108)及び/またはPeters et al.,(2012)J Biol Chem.13;287(29):24525-33に記載されている1つ以上の変異と組み合わされ得る。
【0218】
二重特異性抗体
本開示のある種の態様は、本開示のSiglec-5タンパク質上の1つ以上のドメイン及び第2の抗原に結合する二重特異性抗体に関する。二重特異性抗体を生成する方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に記載されている。幾つかの実施形態では、本開示の二重特異性抗体は、本開示のSiglec-5タンパク質の1つ以上のアミノ酸残基、例えば、ヒトSiglec-5(配列番号1)の1つ以上のアミノ酸残基、または配列番号1のアミノ酸残基に相当するSiglec-5タンパク質上のアミノ酸残基に結合する。幾つかの実施形態では、本開示の二重特異性抗体は、第1の抗原及び第2の抗原を認識する。幾つかの実施形態では、第1の抗原は、Siglec-5タンパク質または天然に存在するそのバリアントである。幾つかの実施形態では、第2の抗原も、Siglec-5タンパク質または天然に存在するそのバリアントである。幾つかの実施形態では、第2の抗原は、血液脳関門を横切る輸送を促進する抗原である(例えば、Gabathuler R.,Neurobiol.Dis.37 (2010)48-57を参照のこと)。かかる第2の抗原としては、限定されるものではないが、トランスフェリン受容体(TR)、インスリン受容体(HIR)、インスリン様増殖因子受容体(IGFR)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1及び2(LPR-1及び2)、ジフテリア毒素受容体、CRM197、ラマ単一ドメイン抗体、TMEM30(A)、タンパク質導入ドメイン、TAT、Syn-B、ペネトラチン、ポリアルギニンペプチド、ANG1005(例えば、Gabathuler,2010 を参照のこと)などのアンジオペプペプチド、ならびに血液脳関門内皮細胞上に豊富に存在する他の細胞表面タンパク質(例えば、Daneman et al.,PLoS One.2010 Oct 29;5(10):e13741を参照のこと)が挙げられる。幾つかの実施形態では、第2の抗原は、限定されるものではないが、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドが含まれる、疾患原因タンパク質である。幾つかの実施形態では、第2の抗原は、限定されるものではないが、PD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG3、DR-5、CD2、CD5、CD39、CD73、及びホスファチジルセリンが含まれる、免疫細胞で発現される1種以上のリガンド及び/またはタンパク質である。幾つかの実施形態では、第2の抗原は、1種以上の腫瘍細胞で発現されるタンパク質、脂質、多糖類、または糖脂質である。
【0219】
抗体断片
本開示のある種の態様は、本開示のSiglec-5タンパク質、Siglec-5タンパク質の天然に存在するバリアント、及びSiglec-5タンパク質の疾患バリアントのうちの1種以上に結合する抗体断片に関する。幾つかの実施形態では、抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv、またはscFv断片である。
【0220】
幾つかの実施形態では、抗体断片は、第2のSiglec-5抗体と、及び/またはアミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質もしくはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドから選択される疾患原因タンパク質に特異的に結合する1種以上の抗体と、もしくはPD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG3、DR-5、CD2、CD5、CD39、CD73、ホスファチジルセリン、及びそれらの任意の組み合わせから選択される免疫調節性タンパク質に結合する1種以上の抗体と組み合わせて使用される。
【0221】
幾つかの実施形態では、本開示の抗体断片は、本開示の抗Siglec-5抗体のいずれかと同一のエピトープに結合する機能断片であり得る。幾つかの実施形態では、抗体断片は、対応する全長抗体と同一のエピトープを有するが、非常に小さい分子量を有する、本開示の抗Siglec-5抗体または抗体断片の小型化バージョンである。かかる小型化抗Siglec-5抗体断片は、イメージング及び診断的有用性に有利な、より良好な脳透過能力及びより短い半減期を有し得る(例えば、Lutje S et al.,Bioconjug Chem.2014 Feb 19;25(2):335-41;Tavare R et al.,Proc Natl Acad Sci USA.2014 Jan 21;111(3):1108-13;及びWiehr S et al.,Prostate.2014 May;74(7):743-55を参照のこと)。従って、幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体断片は、それらの対応する全長抗体と比較してより良好な脳透過性を有し、及び/またはそれらの対応する全長抗体と比較してより短い半減期を有する。
【0222】
抗体フレームワーク
本明細書に記載される抗体のいずれかは、フレームワークを更に含む。幾つかの実施形態では、フレームワークは、ヒト免疫グロブリンフレームワークである。例えば、幾つかの実施形態では、抗体(例えば、抗Siglec-5抗体)は、上記実施形態のいずれかにおけるようなHVRを含み、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを更に含む。ヒト免疫グロブリンフレームワークは、ヒト抗体の一部であり得、または非ヒト抗体は、1つ以上の内因性のフレームワークを、ヒトフレームワーク領域(複数可)と置き換えることによりヒト化され得る。ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域としては、限定されるものではないが、「ベストフィット」法(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照のこと)を使用して選択されるフレームワーク領域;ヒト抗体の軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照のこと);ヒト成熟(体細胞成熟)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照のこと);ならびにスクリーニングFRライブラリーに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照のこと)が挙げられる。
【0223】
幾つかの実施形態では、抗体は、本開示のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3、ならびに表5に示すような軽鎖フレームワーク領域のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含む軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗体は、本開示のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3、ならびに表4に示すような重鎖フレームワーク領域のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含む重鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態では、抗体は、本開示のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3、ならびに表5に示すような軽鎖フレームワーク領域のうちの1つ、2つ、3つ、または4つを含む軽鎖可変領域を含み、本開示のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3、ならびに表4に示すような重鎖フレームワーク領域のうちの1つ、2つ、3つまたは4つを含む重鎖可変領域を更に含む。
【0224】
抗体の調製
本開示の抗Siglec-5抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化及びキメラ抗体、ヒト抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、及びF(ab’)2)、二重特異性及び多特異性抗体、多価抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、コンジュゲート抗体、ライブラリー由来抗体、改変されたエフェクター機能を有する抗体、抗体部分を含有する融合タンパク質、ならびに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、及び共有結合的に改変された抗体が含まれる、本開示のSiglec-5タンパク質のアミノ酸残基を有するエピトープなどの、抗原認識部位を含む任意の他の改変された立体構造の免疫グロブリン分子を包含し得る。抗Siglec-5抗体は、ヒト、マウス、ラット、または(キメラまたはヒト化抗体が含まれる)他の任意の起源のものであり得る。
【0225】
(1)ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗Siglec-5抗体などのポリクローナル抗体は、一般に、関連抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により動物中で産生される。関連抗原(例えば、本開示の精製または組換えSiglec-5タンパク質)を、免疫される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシン阻害因子に、二官能性物質または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲート)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2 、またはR1N=C=NR(式中、R及びR1は、独立して低級アルキル基である)を使用してコンジュゲートすることが有用であり得る。用いられ得るアジュバントの例としては、フロイント完全アジュバント及びMPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)が挙げられる。免疫化プロトコールは、過度な実験をすることなく、当業者により選択され得る。
【0226】
動物は、例えば、100μg(ウサギの場合)または5μg(マウスの場合)のタンパク質またはコンジュゲートを、3倍量のフロイント完全アジュバントと組み合わせ、溶液を複数部位に皮内注射することにより、所望の抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対し免疫される。1ヶ月後、動物は、フロイント完全アジュバント中の元の量の1/5~1/10のペプチドまたはコンジュゲートを用いた複数部位の皮下注射により追加免疫される。7~14日後、動物は採血され、血清が抗体価について分析される。動物は、力価がプラトーに達するまで追加免疫される。またコンジュゲートは、タンパク質融合物として組換え細胞培養で作製され得る。またミョウバンなどの凝集剤は、免疫反応を増強するのに好適である。
【0227】
(2)モノクローナル抗体
モノクローナル抗Siglec-5抗体などのモノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から取得され、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な天然に生じる変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除いて同一である。従って、修飾語「モノクローナル」は、別々の抗体の混合物ではないような抗体の特徴を指す。
【0228】
例えば、モノクローナル抗Siglec-5抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法を使用して作製され得、または組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)により作製され得る。
【0229】
ハイブリドーマ法では、免疫化のために使用されるタンパク質(例えば、本開示の精製または組換えSiglec-5タンパク質)に特異的に結合する抗体を生成するか、または生成することができるリンパ球を誘発するために、マウスまたはハムスターなどの他の適切な宿主動物が上記のように免疫される。あるいは、リンパ球がインビトロで免疫され得る。次いで、リンパ球は、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞と融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。
【0230】
免疫化剤は、通常、抗原タンパク質(例えば、本開示の精製または組換えSiglec-5タンパク質)またはその融合バリアントを含む。一般に、ヒト起源の細胞が所望される場合は末梢血リンパ球(「PBL」)が使用されるが、非ヒト哺乳動物供給源が所望される場合は脾臓またはリンパ節細胞が使用される。次いで、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を使用して不死化細胞株と融合される。Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press(1986),pp.59-103。
【0231】
不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯動物、ウシ、またはヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が用いられる。このように調製されたハイブリドーマ細胞は、融合していない元の骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1種以上の物質を好ましくは含有する好適な培養培地に播種され、増殖する。例えば、元の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、通常、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含む(HAT培地)。
【0232】
好ましい不死化骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による抗体の安定した高レベルの生成を補助し、HAT培地などの培地に感受性を示すものである。これらの中でも、MOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍(Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、California USAから入手可能)に由来するものなどのマウス骨髄腫株、ならびにSP-2細胞及びその派生株(American Type Culture Collection、Manassas、Virginia USAから入手可能)が好ましい。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の生成について記載されている(Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0233】
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地は、抗原(例えば、本開示のSiglec-5タンパク質)に対して向けられたモノクローナル抗体の生成について分析される。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により生成されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ、例えば、放射免疫測定法(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により決定される。
【0234】
ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地は、所望の抗原(例えば、本開示のSiglec-5タンパク質)に対して向けられたモノクローナル抗体の存在について分析され得る。好ましくは、モノクローナル抗体の結合親和性及び特異性は、免疫沈降またはインビトロ結合アッセイ、例えば、放射免疫測定法(RIA)または酵素結合アッセイ(ELISA)により決定され得る。かかる技術及びアッセイは、当該技術分野において公知である。例えば、結合親和性は、Munson et al.,Anal.Biochem.,107:220(1980)のスキャッチャード解析により決定され得る。
【0235】
所望の特異性、親和性、及び/または活性の抗体を生成するハイブリドーマ細胞が同定された後に、クローンは、限界希釈法によりサブクローニングされ得、標準的な方法(Goding、前出)により増殖され得る。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、哺乳動物の腫瘍としてインビボで増殖され得る。
【0236】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-セファロースクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィー、及び上記のような他の方法などの従来の免疫グロブリン精製手順により、培養培地、腹水液、または血清から適切に分離される。
【0237】
抗Siglec-5モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号に開示されるもの及び上記のようなものなどの組換えDNA法によっても作製され得る。モノクローナル抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を使用して配列決定される(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源として役立つ。単離されると、DNAは、発現ベクターに配置され得、次いで、これらはE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの、形質移入されなければ免疫グロブリンタンパク質を生成しない宿主細胞に、かかる組換え宿主細胞でモノクローナル抗体を合成するために形質移入される。抗体をコードするDNAの、細菌における組換え発現に関する総説としては、Skerra et al.,Curr.Opin.Immunol.,5:256-262(1993)及びPluckthun,Immunol.Rev.130:151-188(1992)が挙げられる。
【0238】
ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、McCafferty et al.,Nature,348:552-554(1990)に記載されている技術を使用して生成された抗体ファージライブラリから単離され得る。Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)は、それぞれマウス及びヒト抗体のファージライブラリからの単離を記載している。後続の刊行物は、鎖シャッフリングによる高親和性(ナノモル(「nM」)範囲)ヒト抗体の生成(Marks et al.,Bio/Technology,10:779-783(1992))、ならびに非常に大きなファージライブラリを構築するための戦略としての感染及びインビボ組換えの組み合わせ(Waterhouse et al.,Nucl.Acids Res.,21:2265-2266(1993))について記載している。従って、これらの技術は、所望の特異性のモノクローナル抗体(例えば、本開示のSiglec-5タンパク質に結合するもの)を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術の実行可能な代替例である。
【0239】
また抗体またはその断片をコードするDNAは、例えば、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列で相同なマウス配列を置換することにより(米国特許第4,816,567号;Morrison,et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部を、免疫グロブリンコード配列に共有結合的に連結させることにより改変され得る。典型的には、かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインと置換されるか、またはそれらは、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位及び異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作成するために、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインと置換される。
【0240】
本明細書に記載されるモノクローナル抗体(例えば、本開示の抗Siglec-5抗体またはその断片)は、一価であり得、その調製は当該技術分野において周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖及び改変された重鎖の組換え発現を伴う。重鎖は、一般に、重鎖架橋を予防するために、Fc領域の任意の点で切断される。あるいは、関連するシステイン残基が、架橋を予防するために、別のアミノ酸残基で置換され得るか、または除去される。インビトロの方法も、一価抗体を調製するのに好適である。抗体の断片、特に、Fab断片を生成するため抗体の消化は、当該技術分野において公知の定型的な技術を使用して達成され得る。
【0241】
キメラまたはハイブリッド抗Siglec-5抗体も、架橋剤を必要とするものが含まれる、合成タンパク質化学の公知の方法を使用してインビトロで調製され得る。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することにより構築され得る。この目的に好適な試薬の例としては、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデートが挙げられる。
【0242】
(3)ヒト化抗体
本開示の抗Siglec-5抗体またはその抗体断片には、ヒト化またはヒト抗体が更に含まれ得る。ヒト化型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有するキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2 または抗体の他の抗原結合配列)である。ヒト化抗体には、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)の所望の特異性、親和性、及び能力を有するCDR由来の残基で置き換えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基も含み得る。一般に、ヒト化抗体は、CDR領域の全てまたはほぼ全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、FR領域の全てまたはほぼ全てが、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つの及び通常2つの可変ドメインのほぼ全てを含む。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、通常は、ヒト免疫グロブリンのものも含む。Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Opin.Struct.Biol.2:593-596(1992)。
【0243】
非ヒト抗Siglec-5抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、通常は「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は、基本的には、Winter及び共同研究者の方法(Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536(1988))に従って、またはげっ歯動物のCDRもしくはCDR配列をヒト抗体の対応する配列で置換することにより実施され得る。従って、かかる「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインよりも実質的に少ない部分が、非ヒト種由来の対応する配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際には、ヒト化抗体は、通常、幾つかのCDR残基及びおそらく幾つかのFR残基が、げっ歯動物抗体の類似部位由来の残基で置換されているヒト抗体である。
【0244】
ヒト化抗体の作製に使用されるヒト可変ドメインの選択は、軽鎖及び重鎖の双方ともに、抗原性を低減するために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、げっ歯動物抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯動物のものに最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受け入れられる。Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987)。別の方法は、全てのヒト抗体の軽鎖または重鎖の特定のサブグループのコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同一のフレームワークが、幾つかの異なるヒト化抗体に使用され得る。Carter et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993)。
【0245】
更に、抗体が、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化されることが重要である。この目的を達成するために、好ましい方法に従い、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物を解析するプロセスによりヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に使用されており、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される立体配座構造を例示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示の検査により、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の予想される役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原に結合する能力に影響を与える残基の解析が可能となる。このようにして、標的抗原または複数の標的抗原(例えば、本開示のSiglec-5タンパク質)に対する増加した親和性などの所望の抗体特性が達成されるように、FR残基がレシピエント及びインポート配列から選択され得、組み合わされ得る。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的に、かつ最も実質的に関与する。
【0246】
様々な形態のヒト化抗Siglec-5抗体が意図される。例えば、ヒト化抗Siglec-5抗体は、免疫複合体を生成するために、任意に1種以上の細胞毒性剤(複数可)とコンジュゲートされる、Fabなどの抗体断片であり得る。あるいは、ヒト化抗Siglec-5抗体は、インタクトなIgG1抗体などのインタクトな抗体であり得る。
【0247】
(4)ヒト抗体
あるいは、ヒト抗Siglec-5抗体が生成され得る。例えば、内因性免疫グロブリン生成がない状態で全レパートリーのヒト抗体を免疫化時に生成することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが現在可能である。キメラマウス及び生殖系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体生成の完全な阻害をもたらす。かかる生殖系列変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子配列の導入は、抗原曝露時にヒト抗体の生成をもたらす。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255-258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immunol.,7:33(1993);米国特許第5,591,669号及びWO97/17852を参照のこと。
【0248】
あるいは、免疫されていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからインビトロでヒト抗Siglec-5抗体及び抗体断片を生成するために、ファージディスプレイ技術が使用され得る。McCafferty et al.,Nature 348:552-553(1990);Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991)。この技術に従って、抗体Vドメイン遺伝子は、M13またはfdなどの糸状バクテリオファージの主要またはマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として提示される。糸状粒子はファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有するため、機能特性に基づく抗体の選択は、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択ももたらす。従って、ファージは、B細胞の幾つかの性質を模倣する。ファージディスプレイは、種々のフォーマットで実施され得、例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Curr.Opin Struct.Biol.3:564-571(1993)に概説される。V遺伝子セグメントの幾つかの供給源が、ファージディスプレイに使用され得る。Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)では、免疫されたマウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さなランダムライブラリーの組み合わせから抗オキサゾロン抗体の多様な配列が単離された。免疫されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーが構築され得、多種多様な抗原(自己抗原が含まれる)に対する抗体が、基本的にMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)またはGriffith et al.,EMBO J.12:725-734(1993)により記載されている技術に従って単離され得る。米国特許第5,565,332号及び同第5,573,905号を参照のこと。更に、酵母ディスプレイ技術が、インビトロでヒト抗Siglec-5抗体及び抗体断片を生成するために使用され得る(例えば、WO2009/036379;WO2010/105256;WO2012/009568;US2009/0181855;US2010/0056386;及びFeldhaus and Siegel(2004)J.Immunological Methods 290:69-80)。他の実施形態では、リボソームディスプレイ技術が、インビトロでヒト抗Siglec-5抗体及び抗体断片を生成するために使用され得る(例えば、Roberts and Szostak(1997)Proc Natl Acad Sci 94:12297-12302;Schaffitzel et al.(1999)J.Immunolical Methods 231:119-135;Lipovsek and Pluckthun(2004)J.Immunological Methods 290:51-67)。
【0249】
Cole et al.及びBoerner et al.の技術も、ヒト抗Siglec-5モノクローナル抗体の調製に利用可能である(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985)及びBoerner et al.,J.Immunol.147(1):86-95(1991))。同様に、ヒト抗Siglec-5抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されているマウスに導入することにより作製され得る。曝露すると、遺伝子再構成、アセンブリ、及び抗体レパートリーが含まれる、あらゆる点でヒトにおいて観察されるものに酷似しているヒト抗体生成が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、同第5,661,016号、ならびに以下の科学刊行物:Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-13(1994),Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845-51(1996),Neuberger,Nature Biotechnology 14:826(1996);及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)に記載されている。
【0250】
最後に、ヒト抗Siglec-5抗体は、活性化B細胞によりインビトロでも生成され得る(米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照のこと)。
【0251】
(5)抗体断片
ある種の実施形態では、抗Siglec-5抗体全体ではなく、抗Siglec-5抗体断片を使用することに利点がある。より小さい断片サイズは、迅速な排除及びより良好な脳透過性を可能にする。
【0252】
抗体断片の生成のための様々な技術が開発されている。元来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質消化により得られた(例えば、Morimoto et al.,J.Biochem.Biophys.Method.24:107-117(1992);及びBrennan et al.,Science 229:81(1985)を参照のこと)。しかしながら、これらの断片は現在、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体をコードする核酸を使用して、組換え宿主細胞により直接生成され得る。Fab、Fv、及びscFv抗体断片は全て、E.coliで発現され、それから分泌され得、これにより、大量のこれらの断片の直接的な生成が可能となる。抗Siglec-5抗体断片は、上記のように抗体ファージライブラリからも単離され得る。あるいは、Fab’-SH断片は、E.coliから直接回収され、F(ab’)2断片を形成するために化学的に結合され得る(Carter et al.,Bio/Technology 10:163-167(1992))。F(ab’)2断片は、別のアプローチに従って、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。インビボ半減期が増加したFab及びF(ab’)2抗体断片の生成は、米国特許第5,869,046号に記載されている。他の実施形態では、選択される抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号、及び米国特許第5,587,458号を参照のこと。抗Siglec-5抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているような「直鎖状抗体」であり得る。かかる直鎖状抗体断片は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0253】
(6)二重特異性及び多特異性抗体
二重特異性抗体(BsAb)は、同一のまたは別のタンパク質(例えば、本開示の1種以上のSiglec-5タンパク質)上のものが含まれる、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。あるいは、BsAbの一部が、標的Siglec-5抗原に結合するアームを有し得、他の一部が、第2のタンパク質に結合するアームと組み合わされ得る。かかる抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)に由来し得る。
【0254】
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野で公知である。全長二重特異性抗体の従来の生成は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対であって、当該2つの鎖が異なる特異性を有する、当該2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく。Millstein et al.,Nature,305:537-539(1983)。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、考え得る10種の異なる抗体分子の混合物を生成し、これらのうちの1種のみが正しい二重特異性構造を有する。アフィニティークロマトグラフィーステップにより通常行われる、正しい分子の精製は、むしろ扱いにくく、生成物収率が低い。類似の手順は、WO93/08829及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0255】
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性(抗体抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインが、免疫グロブリン定常ドメイン配列と融合される。融合は、好ましくは、ヒンジ領域、CH2領域、及びCH3領域のうちの少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。融合物のうちの少なくとも1種に存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物、及び必要に応じて、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAが、別個の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物に同時形質移入される。これは、構築に使用される3種のペプチド鎖の不均等な比率が最適収率を提供する実施形態において、3種のポリペプチド断片の相互比率の調整に大きな柔軟性を提供する。しかしながら、少なくとも2種のポリペプチド鎖の等しい比率での発現が、高収率をもたらす場合、または比率が特に重要でない場合、2種または3種全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0256】
このアプローチの好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームの第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、及び他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)から構成される。免疫グロブリン軽鎖が二重特異性分子の半分のみに存在することにより、分離の簡単な手段が提供されるため、この非対称構造は、所望の二重特異性複合体の、不必要な免疫グロブリン鎖の混合物からの分離を容易することが判明した。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成に関する更なる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照のこと。
【0257】
WO96/27011または米国特許第5,731,168号に記載されている別のアプローチによれば、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の百分率を最大にするように、一対の抗体分子間の界面が遺伝子操作される。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖が、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖(複数可)と同一または同様のサイズの代償的「空洞」が、大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)と置き換えることにより、第2の抗体分子の界面に作成される。これは、ホモ二量体などの他の不必要な最終生成物と比較したヘテロ二量体の収率を増加させるメカニズムを提供する。
【0258】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術は、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製され得る。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、F(ab’)2断片を生成するために、インタクトな抗体がタンパク質分解的に切断される手順について記載している。これらの断片は、近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィド形成を予防するために、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。次いで、生成されたFab’断片は、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab’-TNB誘導体の一方は、二重特異性抗体を形成するためにFab’-TNB誘導体に再変換される。生成された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
【0259】
Fab’断片は、E.coliから直接回収され、二重特異性抗体を形成するために、化学的に結合され得る。Shalaby et al.,J.Exp.Med.175:217-225(1992)は、完全ヒト化二重特異性抗体であるF(ab’)2分子の生成について記載している。各Fab’断片は、E.coliから別々に分泌され、二重特異性抗体を形成するために、インビトロでの指向性化学的結合に供された。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体を過剰発現する細胞及び正常ヒトT細胞に結合し、ヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発することができた。
【0260】
組換え細胞培養物から直接的に二価抗体断片を作製及び単離するための様々な技術も記載されている。例えば、二価ヘテロ二量体が、ロイシンジッパーを使用して生成されている。Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合により、2種の異なる抗体のFab’部分に連結された。単量体を形成するために抗体ホモ二量体がヒンジ領域で還元され、次いで、抗体ヘテロ二量体を形成するために再酸化された。Hollinger et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)により記載されている「ダイアボディ」技術は、二重特異性/二価抗体断片を作製するための、代替的メカニズムを提供している。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つの断片のVH及びVLドメインは、別の断片の相補的なVL及びVHドメインと対形成させられ、これにより、2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用による二重特異性/二価抗体断片を作製する別の戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照のこと。
【0261】
2超の結合価を有する抗体も意図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。
【0262】
例示的な二重特異性抗体は、所与の分子(例えば、本開示のSiglec-5タンパク質)上の2つの異なるエピトープに結合し得る。あるいは、Siglec-5シグナル伝達成分を標的とするアームが、特定のタンパク質を発現する細胞に対する細胞の防衛機構に着目するために、白血球上のトリガー分子、例えば、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28、またはB7)、またはIgG(FcγR)に対するFc受容体、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わされ得る。二重特異性抗体は、特定のタンパク質を発現する細胞に対する細胞毒性剤を局在化するためにも使用され得る。かかる抗体は、タンパク質結合アーム及び細胞毒性剤または放射性核種キレート剤、例えば、EOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETAに結合するアームを有する。別の関心対象の二重特異性抗体は、関心対象のタンパク質に結合し、組織因子(TF)に更に結合する。
【0263】
(7)多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも速く内部移行(及び/または異化)され得る。本開示の抗Siglec-5抗体またはその抗体断片は、3つ以上の抗原結合部位を有する(IgMクラス以外のものである)多価抗体(例えば、四価抗体)であり得、これらは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により容易に生成され得る。多価抗体は、二量体化ドメイン及び3つ以上の抗原結合部位を含み得る。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む。この筋書きでは、抗体は、Fc領域及び当該Fc領域のアミノ末端の3つ以上の抗原結合部位を含む。本明細書における好ましい多価抗体は、3つ~約8つ、好ましくは4つの抗原結合部位を含有する。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(好ましくは、2つのポリペプチド鎖)を含有し、ここで、当該ポリペプチド鎖または複数のポリペプチド鎖は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖または複数のポリペプチド鎖は、VD1-(X1)n-VD2-(X2)n-Fcを含み得、ここで、VD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、Fcは1つのFc領域のポリペプチド鎖であり、X1及びX2はアミノ酸またはポリペプチドを表し、nは0または1である。同様に、ポリペプチド鎖または複数のポリペプチド鎖は、VH-CH1-可動性リンカー-VH-CH1-Fc領域鎖;またはVH-CH1-VH-CH1-Fc領域鎖を含み得る。本明細書における多価抗体は、好ましくは、少なくとも2つの(好ましくは、4つの)軽鎖可変ドメインポリペプチドを更に含む。本明細書における多価抗体は、例えば、約2つ~約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含み得る。本明細書において意図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、任意に、CLドメインを更に含む。多価抗体は、Siglec-5抗原に加えて、限定されるものではないが、追加の抗原であるAベータペプチド抗原またはαシヌクレインタンパク質抗原;またはタウタンパク質抗原;またはTDP-43タンパク質抗原;またはプリオンタンパク質抗原;またはハンチンチンタンパク質抗原;またはRAN;グリシン-アラニン(GA)、グリシン-プロリン(GP)、グリシン-アルギニン(GR)、プロリン-アラニン(PA)、もしくはプロリン-アルギニン(PR)から構成されるジペプチドリピート(DPRペプチド)が含まれる翻訳産物抗原;インスリン受容体;インスリン様増殖因子受容体、トランスフェリン受容体;または血液脳関門を横切る抗体移入を促進する任意の他の抗原を認識し得る。
【0264】
(8)ヘテロコンジュゲート抗体
ヘテロコンジュゲート抗体も本開示の範囲内である。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合した抗体(例えば、本開示の抗Siglec-5抗体またはその抗体断片)から構成される。例えば、ヘテロコンジュゲートにおける抗体の一方はアビジンに結合され得、他方はビオチンに結合され得る。かかる抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的化することが提唱されており(米国特許第4,676,980号)、HIV感染を処置するために使用されている。国際公開WO91/00360、WO92/200373、及びEP0308936。抗体が、架橋剤を必要とするものが含まれるタンパク質合成化学の公知の方法を使用してインビトロで調製され得ることも意図される。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することにより構築され得る。この目的に好適な試薬の例としては、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデート、ならびに例えば、米国特許第4,676,980号に開示されているものが挙げられる。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の便利な架橋法を使用して作製され得る。好適な架橋剤は、当該技術分野において周知であり、米国特許第4,676,980号に多数の架橋技術と共に開示されている。
【0265】
(9)エフェクター機能の遺伝子操作
エフェクター機能を改変するため、及び/または抗体の血清半減期を増加させるために、本開示の抗Siglec-5抗体を改変することも望ましい場合がある。例えば、FcγRI、FcγRII、及び/またはFcγRIIIなどの特定のFc受容体に対する結合親和性を除去または低減するために定常領域のFc受容体結合部位が、改変または変異され得る。幾つかの実施形態では、エフェクター機能は、抗体の(例えば、IgGのCH2ドメインの)Fc領域のN-グリコシル化を除去することにより損なわれる。幾つかの実施形態では、エフェクター機能は、PCT WO99/58572及びArmour et al.,Molecular Immunology 40:585-593(2003);Reddy et al.,J.Immunology 164:1925-1933(2000)に記載されているように、ヒトIgGの233~236、297、及び/または327~331などの領域を改変することにより損なわれる。
【0266】
抗体の血清半減期を増加させるために、例えば、米国特許第5,739,277号に記載されるように、サルベージ受容体に結合するエピトープが抗体(特に、抗体断片)に組み込まれ得る。本明細書で使用する場合、用語「サルベージ受容体に結合するエピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期の増加を担う、IgG分子(例えば、IgG1 、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
【0267】
(10)他のアミノ酸配列改変
本開示の抗Siglec-5抗体またはその抗体断片のアミノ酸配列改変も意図される。例えば、抗体または抗体断片の結合親和性及び/または他の生物学的性質を改善することが望ましい場合がある。抗体または抗体断片のアミノ酸配列バリアントは、当該抗体または抗体断片をコードする核酸に、適切なヌクレオチド変化を導入することにより、またはペプチド合成により調製される。かかる改変としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、及び/またはそれらへの挿入、及び/またはそれらの置換が挙げられる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物に到達するために行われ、但し、最終構築物は、所望の特性(すなわち、本開示のSiglec-5タンパク質と結合するか、または物理的に相互作用する能力)を有する。アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数または位置の変化など、抗体の翻訳後プロセスも変化させ得る。
【0268】
抗Siglec-5抗体の変異誘発に好ましい位置である特定の残基または領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells in Science,244:1081-1085(1989)により記載されているような「アラニンスキャニング変異誘発」と称される。この方法では、残基または標的残基群(例えば、arg、asp、his、lys、及びgluなどの荷電残基)が同定され、アミノ酸の標的抗原との相互作用に影響を与えるために、中性または負に荷電したアミノ酸(最も好ましくは、アラニンまたはポリアラニン)で置き換えられる。次いで、機能が置換に対する感受性を示すアミノ酸位置が、置換部位に、またはそれらに対し、更なるまたは他のバリアントを導入することにより改良される。従って、アミノ酸配列変異を導入するための部位が予め決定されているが、変異それ自体の性質を予め決定する必要はない。例えば、所与の部位での変異の性能を解析するために、アラニンスキャニングまたはランダム変異誘発が標的コドンまたは領域で実施され、発現された抗体バリアントが所望の活性についてスクリーニングされる。
【0269】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基~100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲のアミノ(「N」)末端融合及び/またはカルボキシ(「C」)末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体または細胞毒性ポリペプチドに融合された抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体のN末端またはC末端の、酵素または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの融合が挙げられる。
【0270】
別の種類のバリアントは、アミノ酸置換バリアントである。これらのバリアントは、異なる残基で置き換えられた少なくとも1つのアミノ酸残基を抗体分子内に有する。置換変異誘発において最も関心を引く部位としては超可変領域が挙げられるが、FR改変も意図される。保存的置換を、以下の表D内の「好ましい置換」という見出しの下に示す。かかる置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、表Dの「例示的置換」と呼ばれる、またはアミノ酸クラスに関して以下に更に記載されるような、より実質的な変化が導入され得、生成物がスクリーニングされ得る。
【0271】
抗体の生物学的性質の実質的な改変は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくはらせん形構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ高さ、の維持への置換の影響が顕著に異なる置換を選択することにより達成される。天然に存在する残基は、共通する側鎖特性に基づいて以下のグループに分類される:
(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;
(2)中性親水性:cys、ser、thr;
(3)酸性:asp、glu;
(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;
(5)鎖の方向に影響を与える残基:gly、pro;及び
(6)芳香族:trp、tyr、phe。
【0272】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを、別のクラスに交換することを伴う。
【0273】
抗体の適切な立体構造を維持することに関与しない任意のシステイン残基も、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を予防するために、一般にセリンで置換され得る。逆に、システイン結合(複数可)は、抗体の安定性を改善するために抗体に追加され得る(特に抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
【0274】
特に好ましい種類の置換バリアントは、親抗体(例えばヒト化またはヒト抗Siglec-5抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を含む。一般に、更なる開発のために選択される、得られたバリアント(複数可)は、それらが生成される親抗体と比較して改善された生物学的特性を有する。かかる置換バリアントを生成するための便利な方法は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を伴う。要約すると、幾つかの超可変領域部位(例えば、6~7部位)が、各部位での全ての可能なアミノ酸置換を生成するために変異される。このようにして生成された抗体バリアントは、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III生成物との融合物として、繊維状ファージ粒子から一価様式で提示される。次いで、ファージディスプレイされたバリアントは、本明細書において開示されるように、それらの生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。改変の超可変領域部位候補を同定するために、抗原結合に顕著に寄与する超可変領域残基を同定するためのアラニンスキャニング変異誘発が実施され得る。あるいは、または加えて、抗体と抗原(例えば、本開示のSiglec-5タンパク質)との間の接触点を同定するために、抗原抗体複合体の結晶構造を解析することが有益であり得る。かかる接触残基及び隣接残基は、本明細書において詳述される技術による置換の候補である。かかるバリアントが生成されると、バリアントのパネルが、本明細書に記載されるようにスクリーニングに供され、1つ以上の関連するアッセイにおいて優れた特性を有する抗体が、更なる開発のために選択され得る。
【0275】
抗体の別の種類のアミノ酸バリアントは、抗体の元のグリコシル化パターンを変化させる。変化とは、抗体に見出される1つ以上の炭水化物部分を欠失させること、及び/または抗体に存在しない1つ以上のグリコシル化部位を付加することを意味する。
【0276】
抗体のグリコシル化は、通常、N結合型またはO結合型のいずれかである。N結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭化水素部分の付加を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(ここで、Xはプロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的付加のための認識配列である。従って、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位をもたらす。O結合型グリコシル化は、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの付加を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリシンも使用され得る。
【0277】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、抗体が上述の(N結合型グリコシル化部位のための)トリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するように、アミノ酸配列を変化させることにより、簡便に達成される。変化は、元の抗体の配列に、(O結合型グリコシル化部位のために)1つ以上のセリンまたはトレオニン残基を付加することにより、またはこれらにより置換することによってもなされ得る。
【0278】
抗IgE抗体のアミノ酸配列バリアントをコードする核酸分子は、当該技術分野で公知の種々の方法により調製される。これらの方法としては、限定されるものではないが、天然の供給源からの単離(天然に存在するアミノ酸配列バリアントの場合)またはオリゴヌクレオチド媒介性(または部位特異的)変異誘発による調製、PCR変異誘発、及び抗体の前もって調製されたバリアントもしくは非バリアントバージョン(例えば、本開示の抗Siglec-5抗体)または抗体断片のカセット式変異誘発が挙げられる。
【0279】
(11)抗体コンジュゲート
本開示の抗Siglec-5抗体またはその抗体断片は、検出可能なマーカー、毒素、または治療薬にコンジュゲートされ得る。検出可能なマーカー、毒素、または治療薬などの分子を抗体にコンジュゲートするための当該技術分野において公知の任意の好適な方法が使用され得る。
【0280】
薬物コンジュゲーションは、生物学的に活性な細胞傷害性(抗がん)ペイロードまたは薬物の、特定の腫瘍マーカー(例えば、理想的には、腫瘍細胞内または腫瘍細胞上にのみ見出されるタンパク質)を特異的に標的とする抗体への結合を伴う。抗体は、体内でこれらのタンパク質を探知し、それら自身をがん細胞の表面に付着させる。抗体と標的タンパク質(抗原)との間の生化学反応は、腫瘍細胞内でシグナルを誘発し、次いで、腫瘍細胞は、抗体を細胞毒素と共に吸収または内部移行する。ADCが内部移行された後、細胞傷害性薬物が放出され、がんを死滅させる。この標的化のために、理想的には、薬物は、より小さい副作用を有し、他の化学療法薬より広い治療域を与える。抗体をコンジュゲートする技術は、当該技術分野で公知である(例えば、Jane de Lartigue,OncLive July 5,2012;ADC Review on antibody-drug conjugates;及びDucry et al.,(2010).Bioconjugate Chemistry 21(1):5-13を参照のこと)。
【0281】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メイタンシノイド、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、Pseudomonas外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、αサルシン、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン(curicin)、クロチン、カリケアミシン、Saponaria officinalis由来の阻害因子、糖質コルチコイド、アウリスタチン、オーレオマイシン、イットリウム、ビスマス、コンブレタスタチン、デュオカルマイシン、ドラスタチン、cc1065、及びシスプラチンから選択される毒素にコンジュゲートされ得る。
【0282】
(12)他の抗体改変
本開示の抗Siglec-5抗体またはその抗体断片は、当該技術分野で公知であり、容易に入手可能である追加の非タンパク質部分を含有するように更に改変され得る。好ましくは、抗体の誘導体化に好適な部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因する製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分枝状または非分枝状であり得る。抗体に付着されるポリマーの数は異なり得、2つ以上のポリマーが付着される場合、それらは同一の分子または異なる分子であり得る。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、限定されるものではないが、抗体の改善される特定の特性または機能、抗体誘導体が既定の条件下での治療に使用されるかどうか、などが含まれる考慮点に基づいて決定され得る。かかる技術及び他の好適な製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.,Alfonso Gennaro,Ed.,Philadelphia College of Pharmacy and Science(2000)に開示されている。
【0283】
結合アッセイ及び他のアッセイ
本開示の抗Siglec-5抗体は、例えば、公知の方法、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)、ウェスタンブロットなどにより抗原結合活性について試験され得る。
【0284】
幾つかの実施形態では、表2、3、6、及び7に列挙する抗体、またはS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8、及びS5-G-03-H9から選択される抗体のいずれかと競合する抗体を同定するために競合アッセイが使用され得る。ある種の実施形態では、かかる競合する抗体は、表2、3、6、及び7に列挙する抗体、またはS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、S5-G-10、S5-172-H1、S5-172-H2、S5-172-H3、S5-172-H4、S5-172-H5、S5-172-H6、S5-174-H1、S5-174-H2、S5-174-H3、S5-174-H4、S5-174-H5、S5-174-H6、S5-174-H7、S5-174-H8、S5-G-03-H1、S5-G-03-H2、S5-G-03-H3、S5-G-03-H4、S5-G-03-H5、S5-G-03-H6、S5-G-03-H7、S5-G-03-H8及びS5-G-03-H9から選択される抗体のいずれかによって結合されるのと同一のエピトープ(例えば、直鎖または立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法は、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,” in Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)において提供される。
【0285】
例示的な競合アッセイでは、固定化Siglec-5または細胞表面にSiglec-5を発現する細胞が、Siglec-5(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)に結合する第1の標識抗体及びSiglec-5への結合について当該第1の抗体と競合する能力について試験されている第2の非標識抗体を含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上澄み中に存在し得る。対照として、固定化Siglec-5またはSiglec-5を発現する細胞が、第1の標識抗体を含むが、第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートされる。第1の抗体のSiglec-5への結合を許容する条件下でのインキュベーション後、余剰な結合していない抗体が除去され、固定化Siglec-5またはSiglec-5を発現する細胞に会合した標識の量が測定される。固定化Siglec-5またはSiglec-5を発現する細胞に会合した標識の量が、試験試料において対照試料と比較して実質的に減少する場合、第2の抗体がSiglec-5への結合について第1の抗体と競合していることを示す。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照のこと。
【0286】
核酸、ベクター、及び宿主細胞
本開示の抗Siglec-5抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されているような組換え方法及び組成物を使用して生成され得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体のいずれかをコードするヌクレオチド配列を有する単離核酸が提供される。かかる核酸は、抗Siglec-5抗体のVLを含有するアミノ酸配列及び/またはVHを含有するアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードし得る。幾つかの実施形態では、かかる核酸を含有する1種以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。幾つかの実施形態では、かかる核酸を含有する宿主細胞も提供される。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含有するアミノ酸配列及び抗体のVHを含有するアミノ酸配列をコードする核酸を含有するベクター、または(2)抗体のVLを含有するアミノ酸配列をコードする核酸を含有する第1のベクター及び抗体のVHを含有するアミノ酸配列をコードする核酸を含有する第2のベクターを含有する(例えば、それらで形質導入されている)。幾つかの実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0287】
本開示の抗Siglec-5抗体を作製する方法が提供される。幾つかの実施形態では、本方法は、抗体の発現に好適な条件下で抗Siglec-5抗体をコードする核酸を含有する本開示の宿主細胞を培養することを含む。幾つかの実施形態では、抗体は、その後に宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収される。
【0288】
本開示の抗Siglec-5抗体の組換え生成のために、抗Siglec-5抗体をコードする核酸が、単離され、宿主細胞での更なるクローニング及び/または発現のために1種以上のベクターに挿入される。かかる核酸は、容易に単離され得、従来の手順を使用して、(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)配列決定され得る。
【0289】
本開示の抗Siglec-5抗体のいずれかまたは本明細書に記載されるそのポリペプチド断片(抗体が含まれる)をコードする核酸配列を含有する好適なベクターとしては、限定されるものではないが、クローニングベクター及び発現ベクターが挙げられる。好適なクローニングベクターは、標準的な技術により構築され得、または当該技術分野における入手可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されたクローニングベクターは、使用されることが意図される宿主細胞に応じて異なり得るが、有用なクローニングベクターは一般に、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼのための単一の標的を有し得、及び/またはベクターを含有するクローンを選択するのに使用することができるマーカーの遺伝子を保有し得る。好適な例としては、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその派生物、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、ならびにpSA3及びpAT28などのシャトルベクターが挙げられる。これら及び多数の他のクローニングベクターが、BioRad、Strategene、及びInvitrogenなどの商業的販売業者から入手可能である。
【0290】
発現ベクターは一般に、本開示の核酸を含有する複製可能なポリヌクレオチド構築物である。発現ベクターは、エピソームまたは染色体DNAの不可欠な部分のいずれかとして、宿主細胞において複製可能であり得る。好適な発現ベクターとしては、限定されるものではないが、プラスミド、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスが含まれるウイルスベクター、コスミド、及びPCT公開第WO87/04462号に開示されている発現ベクター(複数可)が挙げられる。ベクター構成要素としては一般に、限定されるものではないが、以下のうちの1つ以上が挙げられる:シグナル配列;複製開始点;1種以上のマーカー遺伝子;好適な転写調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、及びターミネーター)。発現(すなわち、翻訳)のためには、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、及び終止コドンなどの1つ以上の翻訳調節エレメントも通常必要とされる。
【0291】
関心対象の核酸を含有するベクターは、電気穿孔法;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を用いる形質移入;微粒子銃;リポフェクション;及び感染(例えば、ベクターは、Vaccinia virusなどの感染因子である)が含まれる多数の適切な手段のいずれかにより宿主細胞内に導入され得る。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する選択は、多くの場合、宿主細胞の特徴に依存するであろう。幾つかの実施形態では、ベクターは、本開示の抗Siglec-5抗体をコードする1つ以上のアミノ酸配列を含有する核酸を含有する。
【0292】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞としては、原核細胞または真核細胞が挙げられる。例えば、本開示の抗Siglec-5抗体は、特に、グリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない場合、細菌において生成され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、E.coliにおける抗体断片の発現を記載している、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号;ならびにCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254を参照のこと。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離され得、更に精製され得る。
【0293】
原核生物に加えて、グルコシル化経路が「ヒト化」されており、これにより、部分的または完全なヒトグルコシル化パターンを有する抗体の生成がもたらされる真菌及び酵母菌株が含まれる、糸状菌または酵母などの真核微生物も、抗体をコードするベクターに好適なクローニングまたは発現宿主である(例えば、Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004);及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006))。
【0294】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来し得る。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。特にSpodoptera frugiperda細胞の形質移入のために、昆虫細胞と併用して使用され得る多数のバキュロウイルス株が同定されている。植物細胞培養物も宿主として利用され得る(例えば、トランスジェニック植物において抗体を生成するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号)。
【0295】
脊椎動物細胞も宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖させるのに適している哺乳動物細胞株が有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例としては、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されている293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されているTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);マウス乳房腫瘍(MMT 060562);例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されているようなTRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞が含まれるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));ならびにY0、NS0、及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体生成に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照のこと。
【0296】
Siglec-5の活性
PI3K活性化
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体などの本開示のSiglec-5薬剤は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後にPI3K活性化を引き起こし得る。
【0297】
PI3Kは、ホスファチジルイノシトール(PtdIns)のイノシトール環の3位ヒドロキシル基をリン酸化することができる近縁の細胞内シグナル伝達物質キナーゼのファミリーである。PI3Kファミリーは、一次構造、調節、及びインビトロでの脂質基質特異性に基づいて3つの異なるクラス(クラスI、クラスII、及びクラスIII)に分けられる。
【0298】
活性化PI3Kは、限定されるものではないが、PtdIns3P、PtdIns(3,4)P2、PtdIns(3,5)P2、及びPtdIns(3,4,5)P3が含まれる様々な3-リン酸化ホスホイノシチドを生成する。これらの3-リン酸化ホスホイノシチドは、シグナル伝達タンパク質が様々な細胞膜に動員されるメカニズムにおいて機能する。これらのシグナル伝達タンパク質は、限定されるものではないが、PXドメイン、プレクストリン相同ドメイン(PHドメイン)、及びFYVEドメインが含まれるホスホイノシチド結合ドメインを含有する。PI3K活性化を決定するための当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得る。
【0299】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体などの本開示のSiglec-5薬剤は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれるPI3K活性のレベルの減少に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0300】
サイトカインの発現の調節
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞表面に発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に脳において炎症促進性メディエーターを調節し得る(例えば、増加または減少させ得る)。ある種の実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後にサイトカイン(例えば、炎症促進性メディエーター)の発現を調節し、及び/または抗炎症性メディエーターの発現を低減する。
【0301】
炎症は、血管組織の、病原体、損傷細胞、及び刺激物などの有害な刺激に対する複雑な生物学的反応の一部である。急性炎症の典型的な徴候は、疼痛、熱、発赤、及び腫脹である。炎症は、損傷の部位を限定すること、または免疫系の細胞を動員し、活性化することによって感染を除去することによる生物を保護する免疫反応である。炎症反応は、厳密に調節され、生物に傷害を引き起こすのを回避するためにその持続時間及び程度は制限されている。炎症は、急性または慢性のいずれかに分類され得る。急性炎症は、最初に有害な刺激を認識し、白血球を血液から損傷組織に動員する自然免疫応答により駆動される。サイトカイン及びケモカインの放出が含む生化学的事象のカスケードは、局所血管系、免疫系、及び損傷組織内の様々な細胞を巻き込んで炎症反応を伝播する。慢性炎症は、長期的かつ持続性であり、炎症反応に関与する免疫細胞の種類の漸進的な変化をもたらす。慢性炎症は、炎症プロセスの結果としての組織の漸進的な破壊及び線維形成を特徴とする。
【0302】
本明細書で使用する場合、抗炎症性メディエーターは、炎症反応を低減、阻害、または不活性化するメカニズムに、直接的にまたは間接的にのいずれかで(例えば、抗炎症性シグナル伝達経路を介して)関与するタンパク質である。抗炎症性メディエーターを同定及び特徴付けるための当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得る。抗炎症性メディエーターの例としては、限定されるものではないが、IL-4、IL-10、IL-13、IL-35、IL-16、IFN-α、TGF-β、IL-1Ra、G-CSFなどのサイトカイン、及びTNF-αまたはIL-6に対する可溶性受容体が挙げられる。炎症促進性のメディエーターの例としては、限定されるものではないが、IFN-α4、IFN-β、IL-1β、TNF-α、IL-6、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、LIF、IFN-γ、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-23、CXCL10、IL-33、CRP、IL-33、MCP-1、及びMIP-1-βなどのサイトカインが挙げられる。
【0303】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、IL-1b、IL-8、及びTNF-aなどのサイトカインの発現を調節(例えば、増加または減少)し得る。ある種の実施形態では、サイトカインの発現の調節は、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及び/またはミクログリア細胞で生じる。発現の調節としては、限定されるものではないが、遺伝子発現の増加、転写発現の増加、またはタンパク質発現の増加が挙げられ得る。遺伝子、転写物(例えば、mRNA)、及び/またはタンパク質の発現を決定するための当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得る。例えば、ノーザンブロット分析は、サイトカイン遺伝子発現レベルを決定するために使用され得、RT-PCRは、サイトカインの転写レベルを決定するために使用され得、ウェスタンブロット分析は、サイトカインタンパク質レベルを決定するために使用され得る。
【0304】
本明細書で使用する場合、サイトカインは、本開示の抗Siglec-5抗体で処理された対象の1種以上の細胞におけるその発現が、当該抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の細胞において発現された同一のサイトカインの発現と比較して調節される場合、調節された発現を有し得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、対象の1種以上の細胞におけるサイトカイン発現を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の細胞におけるサイトカイン発現と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%調節し得る。他の実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、対象の1種以上の細胞におけるサイトカイン発現を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の細胞におけるサイトカイン発現と比較して少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍によって、少なくとも2.1倍、少なくとも2.15倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.25倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.35倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.45倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.55倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5.0倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6.0倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7.0倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8.0倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9.0倍、少なくとも9.5倍、または少なくとも10倍に調節する。
【0305】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体などの本開示のSiglec-5薬剤は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれる1種以上の炎症促進性メディエーターの異常レベルに関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有用である。
【0306】
炎症促進性のメディエーターの発現の調節
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に炎症促進性メディエーターの発現を調節し得る(例えば、増加または減少させる)。
【0307】
本明細書で使用する場合、炎症促進性のメディエーターは、炎症反応を引き起こすか、活性化するか、促進するか、または増加させるメカニズムにおいて直接的にまたは間接的にのいずれかで(例えば、炎症促進性シグナル伝達経路を介して)関与するタンパク質である。炎症促進性メディエーターを同定及び特徴付けるための当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得る。
【0308】
炎症促進性メディエーターの例としては、限定されるものではないが、I及びII型インターフェロン、IL-1β、TNF-α、IL-6、IL-8、IL-20ファミリーメンバー、IL-33、LIF、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、ならびにCRPなどのサイトカインが挙げられる。
【0309】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、I及びII型インターフェロン、IFN-α4、IFN-β、IL-1β、TNF-α、IL-6、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、LIF、IFN-γ、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-23、CXCL10、IL-33、CRP、IL-33、MCP-1、及びMIP-1-βなどの炎症促進性メディエーターの機能的発現及び/または分泌を調節し得る。ある種の実施形態では、炎症促進性メディエーターの発現の調節は、マクロファージ、好中球、NK細胞、樹状細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及び/またはミクログリア細胞で生じる。発現の調節としては、限定されるものではないが、遺伝子発現の調節、転写発現の調節、またはタンパク質発現の調節が挙げられ得る。遺伝子、転写物(例えば、mRNA)、及び/またはタンパク質の発現を決定するための当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得る。例えば、ノーザンブロット分析は、炎症促進性メディエーター遺伝子発現レベルを決定するために使用され得、RT-PCRは、炎症促進性メディエーターの転写レベルを決定するために使用され得、ウェスタンブロット分析は、炎症促進性メディエータータンパク質レベルを決定するために使用され得る。
【0310】
ある種の実施形態では、炎症促進性メディエーターには、炎症性サイトカインが含まれる。従って、ある種の実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、1種以上の炎症性サイトカインの分泌を調節し得る。分泌が本開示の抗Siglec-5抗体により調節され得る炎症性サイトカインの例としては、限定されるものではないが、例えば、I及びII型インターフェロン、IFN-α4、IFN-β、IL-1β、TNF-α、IL-6、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、LIF、IFN-γ、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-23、CXCL10、IL-33、CRP、IL-33、MCP-1、及びMIP-1-βが挙げられる。
【0311】
ある種の実施形態では、炎症促進性メディエーターには、炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または免疫細胞で発現される受容体が含まれる。従って、ある種の実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または免疫細胞で発現される受容体の発現を調節し得る。発現が本開示の抗Siglec-5抗体により調節され得る、炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または免疫細胞で発現される受容体の例としては、限定されるものではないが、CD86、CD80、CD83、C1qa、C1qB、C1qC、C1s、C1R、C4、C2、C3、ITGB2、HMOX1、LAT2、CASP1、CSTA、VSIG4、MS4A4A、C3AR1、GPX1、TyroBP、ALOX5AP、ITGAM、SLC7A7、CD4、ITGAX、及びPYCARDが挙げられる。
【0312】
本明細書で使用する場合、炎症促進性メディエーターは、本開示の抗Siglec-5アゴニスト抗体などのSiglec-5薬剤で処理された対象の1種以上の細胞におけるその発現が、当該抗Siglec-5アゴニスト抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の細胞において発現された同一の炎症促進性メディエーターの発現と比較して調節(例えば、増加または減少)される場合、調節された発現を有し得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、対象の1種以上の細胞における炎症促進性メディエーターの発現を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の細胞における炎症促進性メディエーターの発現と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%調節し得る。他の実施形態では、抗Siglec-5抗体は、対象の1種以上の細胞における炎症促進性メディエーターの発現を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の細胞における炎症促進性メディエーターの発現と比較して少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.15倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.25倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.35倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.45倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.55倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5.0倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6.0倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7.0倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8.0倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9.0倍、少なくとも9.5倍、または少なくとも10倍に調節し得る。
【0313】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現を増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現を、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体で処理されていない骨髄性細胞におけるCD86の発現と比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、少なくとも200%、少なくとも210%、少なくとも220%、少なくとも230%、少なくとも240%、少なくとも250%、少なくとも260%、少なくとも270%、少なくとも280%、少なくとも290%、少なくとも300%、または少なくとも310%増加させる。
【0314】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現を増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現を、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体で処理されてない骨髄性細胞におけるCD86の発現と比較して少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.8倍、少なくとも3倍、少なくとも3.2倍、少なくとも3.4倍、少なくとも3.6倍、少なくとも3.8倍、少なくとも4倍、または少なくとも4.2倍増加させる。
【0315】
幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現は、本開示の抗Siglec-5抗体での処理の約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、または約72時間後に決定される。幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現は、本開示の抗Siglec-5抗体での処理の約48時間後に決定される。
【0316】
幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現は、タンパク質の発現レベルを測定するための当該技術分野において公知の任意の方法を使用して決定される。タンパク質の発現レベルを測定するための方法の例としては、限定されるものではないが、フローサイトメトリーまたは蛍光活性化セルソーティング(FACS)、ウェスタンブロット、及び顕微鏡法(例えば、蛍光顕微鏡法)が挙げられる。ある種の実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCD86の発現は、FACSにより決定される。
【0317】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現を増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現を、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体で処理されていない骨髄性細胞におけるCCL4の発現と比較して少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、少なくとも200%、少なくとも210%、少なくとも220%、少なくとも230%、少なくとも240%、少なくとも250%、少なくとも260%、少なくとも270%、少なくとも280%、少なくとも290%、少なくとも300%、少なくとも310%以上増加させる。
【0318】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現を増加させる。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現を、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体で処理されていない骨髄性細胞におけるCCL4の発現と比較して少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.8倍、少なくとも2倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.8倍、少なくとも3倍、少なくとも3.2倍、少なくとも3.4倍、少なくとも3.6倍、少なくとも3.8倍、少なくとも4倍、少なくとも4.2倍以上増加させる。
【0319】
幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現は、本開示の抗Siglec-5抗体での処理の約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、または約72時間後に決定される。幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現は、本開示の抗Siglec-5抗体での処理の約48時間後に決定される。
【0320】
幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現は、本開示の抗Siglec-5抗体での処理の約24時間、約36時間、約48時間、約60時間、または約72時間後に細胞増殖培地におけるCCL4の発現を測定することにより決定される。幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現は、本開示の抗Siglec-5抗体での処理の約48時間後に細胞増殖培地におけるCCL4の発現を測定することにより決定される。
【0321】
幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現は、タンパク質の発現レベルを測定するための当該技術分野において任意の公知の方法を使用して決定される。タンパク質の発現レベルを測定するための方法の例としては、限定されるものではないが、フローサイトメトリーまたは蛍光活性化セルソーティング(FACS)、ELISA、ウェスタンブロット、Quantikine ELISAキット(R&D Systems)またはHuman Chemokine Legendplex(Biolegend)などの市販のキット、及び顕微鏡法(例えば、蛍光顕微鏡法)が挙げられる。幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現は、Quantikine ELISAキット(R&D Systems)を使用して、またはHuman Chemokine Legendplex(Biolegend)により決定される。ある種の実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現は、ELISAを使用して、例えば、Quantikine ELISAキット(R&D Systems)を使用して決定される。幾つかの実施形態では、骨髄由来抑制性細胞におけるCCL4の発現は、フローサイトメトリーにより、例えば、Human Chemokine Legendplex(Biolegend)を使用して決定される。
【0322】
幾つかの実施形態では、本開示の幾つかの抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれる1種以上の炎症促進性メディエーターの異常レベルに関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有用であり得る。
【0323】
ERKリン酸化
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)のリン酸化を引き起こし得る。
【0324】
細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)は、例えば、分化細胞における減数分裂、有糸分裂、及び有糸分裂後の機能の調節に関与する、幅広く発現されるタンパク質キナーゼ(細胞内シグナル伝達キナーゼ)である。増殖因子、サイトカイン、ウイルス感染、ヘテロ三量体Gタンパク質共役受容体のリガンド、形質変換薬、及び発がん物質などの様々な刺激が、ERK経路を活性化する。ERKのリン酸化は、それらのキナーゼ活性の活性化をもたらす。
【0325】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれるERKリン酸化のレベルの減少に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0326】
Sykリン酸化
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に脾臓チロシンキナーゼ(Syk)リン酸化を引き起こし得る。
【0327】
脾臓チロシンキナーゼ(Syk)は、幾つかの基質をリン酸化し、これにより、細胞活性化及び炎症プロセスをもたらすシグナル伝達複合体の形成を促進することにより、Siglec-5の下流で機能する細胞内シグナル伝達分子である。
【0328】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれるERKリン酸化のレベルの減少に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0329】
Siglec-5リン酸化
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に、Src、Syk、Fyn、Fgr、Lck、Hck、Blk、Lyn、及びFrkなどのSrcファミリーチロシンキナーゼによるTyr-520及びTyr-544のSiglec-5リン酸化を一過性に引き起こし得る。
【0330】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれる、Siglec-5リン酸化のレベルの減少に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0331】
ITAMモチーフ含有受容体のリン酸化
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に、TREM1、TREM2、SIRPB1、FcgR、DAP10、及びDAP12などのITAMモチーフ含有受容体のリン酸化を引き起こし得る。
【0332】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれる、ITAMモチーフ含有受容体のリン酸化レベルの減少に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0333】
C-Cケモカイン受容体7の発現の調節
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後にC-Cケモカイン受容体7(CCR7)の発現を調節し得る。発現の調節(例えば、増加または減少)としては、限定されるものではないが、遺伝子発現の調節、転写発現の調節、またはタンパク質発現の調節が挙げられる。遺伝子、転写物(例えば、mRNA)、及び/またはタンパク質の発現を決定するための当該技術分野において公知の任意の方法が使用され得る。例えば、ノーザンブロット分析は、抗炎症性メディエーター遺伝子発現レベルを決定するために使用され得、RT-PCRは、抗炎症性メディエーターの転写レベルを決定するために使用され得、ウェスタンブロット分析は、抗炎症性メディエータータンパク質レベルを決定するために使用され得る。
【0334】
C-Cケモカイン受容体7(CCR7)は、Gタンパク質共役受容体ファミリーのメンバーである。CCR7は、様々なリンパ系組織で発現され、B細胞及びT細胞を活性化することができる。幾つかの実施形態では、CCR7は、記憶T細胞の、リンパ節などの二次リンパ器官への遊走を調節し得る。他の実施形態では、CCR7は、樹状細胞の成熟を刺激し得る。CCR7は、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンドCCL19/ELC及びCCL21に結合することができる受容体タンパク質である。
【0335】
本明細書で使用する場合、CCR7は、本開示の抗Siglec-5抗体で処理された対象の1種以上の細胞におけるその発現が、当該抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の細胞において発現されたCCR7の発現と比較して調節(例えば、増加または減少)される場合、調節された発現を有し得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、対象の1種以上の細胞におけるCCR7発現を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の細胞におけるCCR7発現と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%調節し得る。他の実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、対象の1種以上の細胞におけるCCR7発現を、例えば、当該抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の細胞におけるCCR7発現と比較して少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.15倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.25倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.35倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.45倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.55倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5.0倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6.0倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7.0倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8.0倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9.0倍、少なくとも9.5倍、または少なくとも10倍に調節する。
【0336】
幾つかの実施形態では、CCR7の発現の増加は、マクロファージ、好中球、NK細胞、樹状細胞、及び/またはミクログリア細胞において生じる。CCR7の発現の増加は、ミクログリア細胞のケモカインCCL19及びCCL21を発現する細胞への走化性を引き起こし得る。従って、ある種の実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、ミクログリア細胞のCCL19及びCCL21発現細胞への走化性を引き起こし得る。
【0337】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれる、CCR7の異常レベルに関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有用である。
【0338】
骨髄由来樹状細胞の抗原特異的T細胞増殖を引き起こす能力の増強または正常化
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に、骨髄由来樹状細胞の抗原特異的T細胞増殖を引き起こす能力を増強及び/または正常化し得る。
【0339】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、対象の1種以上の骨髄由来樹状細胞における骨髄由来樹状細胞の抗原特異的T細胞増殖を引き起こす能力を、例えば、抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の骨髄由来樹状細胞における骨髄由来樹状細胞の抗原特異的T細胞増殖を引き起こす能力と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%増強及び/または正常化し得る。他の実施形態では、抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、対象の1種以上の骨髄由来樹状細胞における骨髄由来樹状細胞の抗原特異的T細胞増殖を引き起こす能力を、例えば、抗体で処理されていない対応する対象の1種以上の骨髄由来樹状細胞における骨髄由来樹状細胞の抗原特異的T細胞増殖を引き起こす能力と比較して少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.15倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.25倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.35倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.45倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.55倍、少なくとも3.0倍で、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5.0倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6.0倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7.0倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8.0倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9.0倍、少なくとも9.5倍、または少なくとも10倍に増強及び/または正常化し得る。
【0340】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれる、骨髄由来樹状細胞の抗原特異的T細胞増殖を引き起こす能力の減少または調節不全に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0341】
破骨細胞生成
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に破骨細胞生成を引き起こし得、及び/または破骨細胞形成速度を増加させ得る。
【0342】
本明細書で使用する場合、破骨細胞は、骨組織の石灰化した基質を除去し、生体骨を分解すること(例えば、骨吸収)により骨組織を除去することができる骨細胞の1種である。破骨細胞は、骨髄細胞系列の細胞の融合により形成され得る。幾つかの実施形態では、破骨細胞は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)及びカテプシンKの高発現により特徴付けられ得る。
【0343】
本明細書で使用する場合、破骨細胞形成速度は、抗Siglec-5アンタゴニスト抗体で処理された対象における破骨細胞形成速度が、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象における破骨細胞形成速度よりも大きい場合に増加し得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、対象における破骨細胞形成速度を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象における破骨細胞形成速度と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%増加させ得る。他の実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、対象における破骨細胞形成速度を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象における破骨細胞形成速度と比較して少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.15倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.25倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.35倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.45倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.55倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも4.5倍で、少なくとも5.0倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6.0倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7.0倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8.0倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9.0倍、少なくとも9.5倍、または少なくとも10倍に増加させ得る。
【0344】
本明細書で使用する場合、破骨細胞形成速度は、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体で処理された対象における破骨細胞形成速度が、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象における破骨細胞形成速度よりも小さい場合に減少し得る。幾つかの実施形態では、本開示のアゴニスト抗Siglec-5抗体は、対象における破骨細胞形成速度を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象における破骨細胞形成速度と比較して少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%減少させ得る。他の実施形態では、本開示のアゴニスト抗Siglec-5抗体は、対象における破骨細胞形成速度を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象における破骨細胞形成速度と比較して少なくとも1.5分の1、少なくとも1.6分の1、少なくとも1.7分の1、少なくとも1.8分の1、少なくとも1.9分の1、少なくとも2.0分の1、少なくとも2.1分の1、少なくとも2.15分の1、少なくとも2.2分の1、少なくとも2.25分の1、少なくとも2.3分の1、少なくとも2.35分の1、少なくとも2.4分の1、少なくとも2.45分の1、少なくとも2.5分の1、少なくとも2.55分の1、少なくとも3.0分の1、少なくとも3.5分の1、少なくとも4.0分の1、少なくとも4.5分の1、少なくとも5.0分の1、少なくとも5.5分の1、少なくとも6.0分の1、少なくとも6.5分の1、少なくとも7.0分の1、少なくとも7.5分の1、少なくとも8.0分の1、少なくとも8.5分の1、少なくとも9.0分の1、少なくとも9.5分の1、または少なくとも10分の1に減少させ得る。
【0345】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、骨密度の病的減少に関連する骨粗鬆症及び骨密度の病的増加に関連する骨多孔症が含まれる、骨形成及び維持の異常に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0346】
Siglec-5を発現する細胞の増殖及び生存
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に樹状細胞、マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、単球、好中球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及びミクログリア細胞の増殖、生存、及び/または機能を向上させ得る。
【0347】
本明細書で使用する場合、本開示のマクロファージとしては、限定されるものではないが、M1マクロファージ、活性化M1マクロファージ、及びM2マクロファージ(例えば、M2aマクロファージ)が挙げられる。本明細書で使用する場合、本開示の好中球としては、限定されるものではないが、M1好中球、活性化M1好中球、及びM2好中球が挙げられる。本明細書で使用する場合、本開示のナチュラルキラー(NK)細胞としては、限定されるものではないが、M1 NK細胞、活性化M1 NK細胞、及びM2 NK細胞が挙げられる。本明細書で使用する場合、本開示のミクログリア細胞としては、限定されるものではないが、M1ミクログリア細胞、活性化M1ミクログリア細胞、及びM2ミクログリア細胞が挙げられる。
【0348】
ミクログリア細胞は、脳及び脊髄の常在マクロファージであるグリア細胞の1種であり、従って、中枢神経系(CNS)における最初のかつ主要な形態の能動免疫防御として作用する。ミクログリア細胞は、脳内の全グリア細胞集団の20%を構成する。ミクログリア細胞は、常にCNSからプラーク、損傷した神経細胞、及び感染因子を除去している。脳及び脊髄は、それらが、ほとんどの病原体が脆弱な神経組織に到達するのを防止する血液脳関門として公知の一連の内皮細胞により身体の残部から分離されているという点で「免疫特権」器官と考えられる。感染因子が脳に直接導入されるか、または血液脳関門を横切る場合、ミクログリア細胞は、炎症を抑えるために迅速に反応し、感染因子が敏感な神経組織に損傷を与える前にそれらを破壊しなければならない。身体の残部から抗体を利用できない(血液脳関門を横切るほど十分に小さい抗体はほとんどない)ために、ミクログリアは、異物を認識し、それらを飲み込み、T細胞を活性化する抗原提示細胞として作用することができなければならない。このプロセスは、潜在的に致命的な損傷を防止するために迅速に行われなければならないため、ミクログリア細胞は、CNSの小さな病的変化にさえ極めて高い感受性を示す。それらは、細胞外カリウムの小さな変化にさえ反応する独特なカリウムチャネルを有することによって、この感受性を部分的に達成する。
【0349】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、NK細胞、及び/またはミクログリアでのCD80、CD83、及び/またはCD86の発現を増加させ得る。
【0350】
本明細書で使用する場合、マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、樹状細胞、単球、T細胞、及び/またはミクログリアの増殖速度、生存性、及び/または機能は、本開示の抗Siglec-5抗体で処理された対象の樹状細胞、マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、及び/またはミクログリアの増殖速度、生存性、及び/または機能が、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の樹状細胞、マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及び/またはミクログリアの増殖速度、生存性、及び/または機能より高い場合、発現の増加を含み得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、対象の樹状細胞、マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及び/またはミクログリアの増殖速度、生存、及び/または機能を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の樹状細胞、マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及び/またはミクログリアの増殖速度、生存、及び/または機能と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも115%、少なくとも120%、少なくとも125%、少なくとも130%、少なくとも135%、少なくとも140%、少なくとも145%、少なくとも150%、少なくとも160%、少なくとも170%、少なくとも180%、少なくとも190%、または少なくとも200%向上させ得る。他の実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、対象の樹状細胞、マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及び/またはミクログリアの増殖速度、生存、及び/または機能を、例えば、抗Siglec-5抗体で処理されていない対応する対象の樹状細胞、マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及び/またはミクログリアの増殖速度、生存、及び/または機能と比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.15倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.25倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.35倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.45倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.55倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4.0倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5.0倍、少なくとも5.5倍、少なくとも6.0倍、少なくとも6.5倍、少なくとも7.0倍、少なくとも7.5倍、少なくとも8.0倍、少なくとも8.5倍、少なくとも9.0倍、少なくとも9.5倍、または少なくとも10倍向上させ得る。
【0351】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれる、樹状細胞、好中球、マクロファージ、好中球、B細胞、NK細胞、単球、破骨細胞、皮膚のランゲルハンス細胞、クッパー細胞、T細胞、及び/またはミクログリアの増殖の減少、生存の減少、アポトーシスの増加、及び/または機能に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0352】
除去及びファゴサイトーシス
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、アポトーシス神経細胞、神経系の神経組織破片、神経系の非神経組織破片、機能不全シナプス、細菌、他の異物、疾患原因タンパク質、疾患原因ペプチド、疾患原因核酸、または腫瘍細胞のうちの1種以上の細胞で発現されたSiglec-5タンパク質への結合後に除去及び/またはファゴサイトーシスを引き起こし得る。ある種の実施形態では、疾患原因タンパク質としては、限定されるものではないが、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートが挙げられる。ある種の実施形態では、疾患原因核酸としては、限定されるものではないが、アンチセンスGGCCCC(G2C4)(配列番号225)リピート伸長RNAが挙げられる。
【0353】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、アポトーシス神経細胞の除去、神経組織破片の除去、機能不全シナプスの除去、非神経組織破片の除去、細菌除去または他の異物の除去、疾患原因タンパク質の除去、疾患原因ペプチドの除去、疾患原因核酸の除去、及び腫瘍細胞の除去が含まれる1つ以上の種類の除去を引き起こし得る。
【0354】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、アポトーシス神経細胞、神経組織破片、機能不全シナプス、非神経組織破片、細菌、他の異物、疾患原因タンパク質、疾患原因ペプチド、疾患原因核酸、及び/または腫瘍細胞のうちの1種以上のファゴサイトーシスを引き起こし得る。
【0355】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)のレベルが減少した条件下での好中球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、単球、及び/またはミクログリアによるファゴサイトーシスを増加させ得る。
【0356】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、クロイツフェルト-ヤコブ病、正常圧水頭症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、タウオパチー疾患、那須ハコラ病、脳卒中、急性外傷、慢性外傷、ループス、急性及び慢性大腸炎、関節リウマチ、創傷治癒、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、肥満、マラリア、本態性振戦、中枢神経ループス、ベーチェット病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症、シャイドレーガー症候群、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、急性散在性脳脊髄炎、肉芽腫性障害、サルコイドーシス、加齢性疾患、発作、脊髄損傷、外傷性脳損傷、加齢黄斑変性症、緑内障、色素性網膜炎、網膜変性、気道感染、敗血症、眼感染、全身感染、ループス、関節炎、多発性硬化症、低骨密度、骨粗鬆症、骨形成、大理石骨病、骨ページェット病、ならびに膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫が含まれるがん、本態性血小板血症、原発性または特発性骨髄繊維症、原発性または特発性脊髄硬化症、骨髄由来腫瘍、Siglec-5を発現する腫瘍、甲状腺癌、感染、CNSヘルペス、寄生虫感染、トリパノソーマ感染、Cruzi感染、Pseudomonas aeruginosa感染、Leishmania donovani感染、B群Streptococcus感染、Campylobacter jejuni感染、Neisseria meningitidis感染、I型HIV、ならびにHaemophilus influenzaeが含まれる、アポトーシス神経細胞、神経系の神経組織破片、神経系の非神経組織破片、細菌、他の異物、疾患原因タンパク質に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれる、アポトーシス神経細胞、神経系の神経組織破片、神経系の非神経組織破片、細菌、他の異物、疾患原因タンパク質に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0357】
Siglec-5依存性遺伝子の発現
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、Siglec-5依存性遺伝子の活性及び/または発現を減少させ得、それにより、免疫系を活性化するシグナル伝達カスケードに関連する遺伝子発現、例えば、ITAM含有受容体、パターン認識受容体、Toll様受容体、ダメージ関連分子パターン(DAMP)受容体に関連する遺伝子発現、例えば、転写因子の活性化T細胞核因子(NFAT)ファミリーの1種以上の転写因子を増加させる。
【0358】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、限定されるものではないが、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんが含まれる、高レベルのSiglec-5依存性遺伝子に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0359】
T細胞のSiglec-5依存的活性化
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、細胞障害性T細胞、ヘルパーT細胞、または両方の活性を増加させ得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体などの本開示のSiglec-5薬剤は、限定されるものではないが、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、及び甲状腺癌などの固形腫瘍が含まれる腫瘍が含まれる、細胞障害性T細胞、ヘルパーT細胞、または両方の活性の減少に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0360】
好中球のSiglec-5依存的阻害
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アゴニスト抗体は、好中球の活性を減少させ得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アゴニスト抗体は、限定されるものではないが、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、及び甲状腺癌などの固形腫瘍が含まれる腫瘍が含まれる、ナチュラルキラー細胞、好中球、または両方の活性の減少に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0361】
ナチュラルキラー(NK)細胞による細胞殺傷のSiglec-5依存的増強
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、NK細胞の殺傷活性を増加させ得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体は、限定されるものではないが、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、及び甲状腺癌などの固形腫瘍が含まれる腫瘍が含まれる、ナチュラルキラー細胞、好中球、または両方の活性の減少に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0362】
腫瘍関連免疫細胞のSiglec-5依存的阻害
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アゴニスト抗体は、制御性T細胞、または抑制性腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞、または腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、腫瘍関連制御性B細胞、または骨髄由来抑制性細胞の活性を減少させ得、増殖を減少させ得、生存を減少させ得、機能性を減少させ得、腫瘍またはリンパ器官(例えば、脾臓及びリンパ節)への浸潤を減少させ得、及び/またはアポトーシスを促進し得る。幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5アゴニスト抗体は、限定されるものではないが、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、甲状腺癌などのSiglec-5を発現しない固形腫瘍及び白血病細胞などのSiglec-5を発現する血液腫瘍が含まれる腫瘍が含まれる、1つ以上の種類の免疫抑制性細胞の活性に関連する状態及び/または疾患を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0363】
医薬組成物
本開示の抗Siglec-5抗体は、薬剤を適切な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることにより、治療投与のための種々の製剤に組み込まれ得、固体形態、半固体形態、液体形態、または気体形態の調製物に製剤化され得る。かかる製剤の例としては、限定されるものではないが、錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル、マイクロスフェア、及びエアロゾルが挙げられる。医薬組成物は、所望の製剤に応じて、動物またはヒト投与のための医薬組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルである、薬学的に許容される非毒性担体または希釈剤を含み得る。希釈剤は、生物活性の組み合わせに影響を与えないように選択される。かかる希釈剤の例としては、限定されるものではないが、蒸留水、緩衝水、生理食塩水、PBS、リンガー液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液が挙げられる。本開示の医薬組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療的、非免疫原性安定剤、賦形剤などを更に含み得る。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤、ならびに界面活性剤などの生理学的条件に近づけるための追加の物質も含み得る。
【0364】
本開示の医薬組成物は、種々の安定化剤のいずれか、例えば、抗酸化物質なども含み得る。医薬組成物がポリペプチドを含む場合、当該ポリペプチドは、当該ポリペプチドのインビボ安定性を増強するか、またはそうでなければその薬理学的性質を増強する(例えば、当該ポリペプチドの半減期を増加させ、その毒性を低減し、溶解性または取り込みを増強する)様々な周知の化合物と複合体化され得る。かかる修飾剤または複合化剤の例としては、限定されるものではないが、スルフェート、グルコネート、シトレート、及びホスフェートが挙げられる。組成物のポリペプチドは、それらのインビボ特性を増強する分子と複合体化され得る。かかる分子としては、限定されるものではないが、炭化水素、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、及び脂質が挙げられる。
【0365】
様々な種類の投与に好適な製剤の更なる例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,PA,17th ed.(1985)に見出され得る。薬物送達の方法の簡潔な概説については、Langer,Science 249:1527-1533(1990)を参照のこと。
【0366】
経口投与の場合、活性成分は、カプセル、錠剤、及び散剤などの固体剤形で、またはエリキシル剤、シロップ剤、及び懸濁液などの液体剤形で投与され得る。活性成分(複数可)は、グルコース、ラクトース、スクロース、マンニトール、デンプン、セルロースまたはセルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ナトリウムサッカリン、タルク、炭酸マグネシウムなどの不活性な成分及び粉末状担体と共にゼラチンカプセルにカプセル化され得る。所望の色、味、安定性、緩衝能、分散、または他の公知の望ましい特徴を提供するために添加され得る追加の不活性な成分の例は、ベンガラ、シリカゲル、ラウリル硫酸ナトリウム、二酸化チタン、及び食用白色インクである。類似の希釈剤が、圧縮錠剤を作製するために使用され得る。錠剤及びカプセルの両方が、数時間にわたり薬物の連続的放出を提供するための持続放出製品として製造され得る。圧縮錠剤は、任意の不快な味をマスクし、錠剤を空気から保護するためにシュガーコーティングもしくはフィルムコーティングされ得るか、または消化管における選択的崩壊のために腸溶コーティングされ得る。経口投与のための液体剤形は、患者による受け入れを向上するための着色剤及び香味料を含有し得る。
【0367】
非経口投与に好適な製剤には、抗酸化物質、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張無菌注射液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び防腐剤を含み得る水性及び非水性の無菌懸濁液が含まれる。
【0368】
医薬組成物を製剤化するために使用される成分は、好ましくは高純度のものであり、潜在的に有害な夾雑物を実質的に含まない(例えば、少なくとも米国食品(National Food)(NF)グレード、一般に少なくとも分析グレード、より典型的には少なくとも医薬品グレード)。更に、インビボでの使用が意図される組成物は通常、無菌である。所与の化合物が使用前に合成されなければならない場合、得られる生成物は、通常、合成または精製プロセス中に存在し得る任意の潜在的な毒物、特に任意のエンドトキシンを実質的に含まない。非経口投与のための組成物は、無菌でもあり、実質的に等張性でもあり、GMP条件下で作製される。
【0369】
製剤は、脳または中枢神経系での保持及び安定化のために最適化され得る。薬剤が頭蓋区画内に投与される場合、薬剤がその区画に保持され、血液脳関門に拡散しないか、またはそうでなければこれを横切らないことが望ましい。安定化技術は、分子量の増加を達成するための、架橋、多量体化、またはポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、中性タンパク質担体などの基への連結を含む。
【0370】
保持を増加させるための他の戦略は、本開示の抗Siglec-5抗体などの本開示の薬剤の、生分解性または生体内崩壊性インプラント剤への封入を含む。治療効果のある薬剤の放出速度は、ポリマーマトリックスを通した輸送速度及びインプラント剤の生分解速度により制御される。薬剤のポリマーバリアを通した輸送は、化合物の溶解性、ポリマーの親水性、ポリマー架橋の程度、ポリマーバリアを当該薬物に対してより透過性にするための吸水時のポリマーの膨張、インプラント剤の形状などによる影響も受ける。インプラント剤は、移植部位として選択された領域のサイズ及び形状に相応する寸法のものである。インプラント剤は、粒子、シート、パッチ、プラーク、繊維、マイクロカプセルなどであり得、選択された挿入部位に適合可能な任意のサイズまたは形状のものであり得る。
【0371】
インプラント剤は、一体化していてもよく、すなわち、活性薬剤が、ポリマーマトリックス中に均一に分布しているか、またはカプセル化されており、ここで、活性薬剤のリザーバーは、ポリマーマトリックスによりカプセル化されている。用いられるポリマー組成物の選択は、投与部位、所望の処置期間、患者の耐性、処置される疾患の性質などにより異なる。ポリマーの特性としては、移植部位での生分解性、関心対象の薬剤との適合性、カプセル化の容易さ、生理学的環境における半減期が挙げられる。
【0372】
用いられ得る生分解性ポリマー組成物は、分解された時に、単量体を含む生理学的に許容される分解生成物をもたらす有機エステルまたはエーテルであり得る。単独のまたは他の単量体と組み合わせた無水物、アミド、オルトエステルなどが有用であり得る。ポリマーは、縮合ポリマーであろう。ポリマーは、架橋されていても、または架橋されていなくてもよい。特に関心対象となるのは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれか、及び多糖類である。関心対象のポリエステルの中には、D-乳酸、L-乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせのポリマーが含まれる。L-ラクテートまたはD-ラクテートを用いることにより、ポリマーの緩徐な生分解が達成される一方で、ラセミ体により分解は実質的に増強される。グリコール酸及び乳酸のコポリマーは、特に関心対象となるものであり、生分解速度はグリコール酸の乳酸との比率により制御される。最も急速に分解されるコポリマーは、おおよそ等量のグリコール酸及び乳酸を有し、ここで、いずれのホモポリマーも分解に対してより耐性を示す。グリコール酸の乳酸との比率は、インプラント剤の脆性にも影響を与え、より柔軟なインプラント剤が、より大きな形状にとって望ましい。関心対象の多糖類の中には、アルギン酸カルシウム、及び官能化セルロース、特に、水不溶性であり、約5kD~500kDの分子量であることを特徴とするカルボキシメチルセルロースエステルなどがある。生分解性ヒドロゲルも、本発明のインプラント剤に用いられ得る。ヒドロゲルは、通常、液体を吸収する能力を特徴とするコポリマー材料である。用いられ得る例示的な生分解性ヒドロゲルは、Heller in:Hydrogels in Medicine and Pharmacy,N.A.Peppes ed.,Vol.III,CRC Press,Boca Raton,Fla.,1987,pp137-149に記載されている。
【0373】
薬学的用量
本開示の抗Siglec-5抗体などの本開示のSiglec-5薬剤を含有する本開示の医薬組成物は、ボーラスとしての、または一定期間にわたる連続注入による静脈内投与などの公知の方法に従って、Siglec-5薬剤による処置を必要とする個体、好ましくはヒトに、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、頭蓋内、脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、クモ膜下腔内、経口、局所、または吸入経路により投与され得る。
【0374】
本開示の医薬組成物の用量及び所望の薬物濃度は、想定される特定の使用に応じて異なり得る。適切な投与量または投与経路の決定は、十分に当業者の技術の範囲内である。動物実験は、ヒトの治療に有効な投与量を決定するための信頼できる指針を提供する。有効用量の種間スケーリングは、Mordenti,J.and Chappell,W.“The Use of Interspecies Scaling in Toxicokinetics,” In Toxicokinetics and New Drug Development,Yacobi et al.,Eds,Pergamon Press,New York 1989,pp.42-46に記載されている原理に従って実行され得る。
【0375】
本開示の抗Siglec-5抗体のいずれかなどの本開示のSiglec-5薬剤のいずれかのインビボ投与の場合、標準的用量は、投与の経路に応じて、1日当たり、個体の体重の1kg当たり約10ng~約100mgまたはそれ以上、好ましくは、約1mg/kg/日~10mg/kg/日の間で変化し得る。治療される疾患、障害、または状態の重症度に応じて、数日間またはそれ以上にわたる反復投与の場合、処置は、症状の所望の抑制が達成されるまで持続される。
【0376】
例示的な投与計画は、約2mg/kgの抗Siglec-5抗体などの本開示のSiglec-5薬剤の初期投与量を投与すること、その後、約1mg/kgの週1回の維持投与量を隔週で投与することを含み得る。他の投与計画は、医師が達成したい薬物動態学的減衰パターンに応じて有用であり得る。例えば、個体に1週間に1回~21回投与することが本明細書において意図される。ある種の実施形態では、約3μg/kg~約2mg/kg(例えば、約3μg/kg、約10μg/kg、約30μg/kg、約100μg/kg、約300μg/kg、約1mg/kg、及び約2/mg/kg)の範囲の投与が使用され得る。ある種の実施形態では、投与頻度は1日3回、1日2回、1日1回、1日おきに1回、1週間に1回、2週間に1回、4週間に1回、5週間に1回、6週間に1回、7週間に1回、8週間に1回、9週間に1回、10週間に1回、もしくは1ヶ月に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、またはより長い期間に1回である。治療の経過は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニタリングされる。抗Siglec-5抗体などの投与されるSiglec-5薬剤を含む投与計画は、使用される投与量とは関係なく、時間の経過に伴い変化し得る。
【0377】
抗Siglec-5抗体などのSiglec-5薬剤の1回以上の投与が与えられている個体において、特定の抗Siglec-5抗体などの特定のSiglec-5薬剤の用量は、経験的に決定され得る。個体は、漸増する投与量の抗Siglec-5抗体などのSiglec-5薬剤が投与される。抗Siglec-5抗体などのSiglec-5薬剤の有効性を評価するために、本開示の疾患、障害、または状態(例えば、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、発作、網膜ジストロフィー、外傷性脳損傷、脊髄損傷、長期抑圧、アテローム硬化性血管疾患、及び正常な老化の望ましくない症状)のいずれかの臨床症状がモニタリングされ得る。
【0378】
本開示の抗Siglec-5抗体などのSiglec-5薬剤の投与は、例えば、投与の目的が治療であるか、または予防であるかを問わないレシピエントの生理的状態、及び当業者に公知の他の因子に応じて連続的または断続的であり得る。抗Siglec-5抗体などのSiglec-5薬剤の投与は、予め選択された期間にわたりほぼ連続的であり得、または間隔を置いた一連の投与であり得る。
【0379】
特定の用量及び送達方法に関する指針は、文献において提供されている。例えば、米国特許第4,657,760号、同第5,206,344号、または同第5,225,212号を参照のこと。異なる製剤が、異なる処置及び異なる障害に有効であること、ならびに特定の器官または組織を処置することを意図する投与が、別の器官または組織に対する処置とは異なる様式での送達を必要とし得ることは、本開示の範囲内である。更に、用量は、1回以上の別々の投与より、または連続注入により投与され得る。状態に応じた数日間またはそれ以上にわたる反復投与の場合、処置は、疾患の症状の所望される抑制が生じるまで持続される。しかしながら、他の投与計画が有用であり得る。この治療の経過は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニタリングされる。
【0380】
治療使用
更なる本開示の態様は、限定されるが、本開示のSiglec-5タンパク質の調節(例えば、活性化または阻害)、Syk、LCK、FYM、及び/またはZAP70などのSrcファミリーチロシンキナーゼによるTyr-520及びTyr-544のうちの1つ以上のリン酸化の防止;チロシン特異的タンパク質ホスファターゼSHP1及びSHP2の動員及びそれらへの結合;Dynamini-1に対するグアニンヌクレオチド交換因子として作用するPLC-γ1の動員及びそれへの結合;SH2ドメイン含有タンパク質(例えば、Crkl)の動員及びそれへの結合;脾臓チロシンキナーゼSykの動員及びそれへの結合;SH3-SH2-SH3増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2)の動員及びそれへの結合;複数のSH2含有タンパク質の動員及びそれへの結合;1種以上の炎症促進性サイトカインの発現の調節(例えば、活性化または阻害)であって、任意により、当該1種以上の炎症促進性サイトカインが、IFN-α4、IFN-β、IL-1β、IL-1α、TNF-α、IL-6、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、LIF、IFN-γ、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-33、MCP-1、及びMIP-1-βから選択される、当該調節;マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、及びミクログリア細胞から選択される1種以上の細胞における1種以上の炎症促進性サイトカインの発現の調節(例えば、活性化または阻害);1種以上の抗炎症性サイトカインの発現の調節(例えば、活性化または阻害)であって、任意により、当該1種以上の抗炎症性サイトカインが、IL-4、IL-10、IL-13、IL-35、IL-16、TGFβ、IL-1Ra、G-CSF、及びTNF、IFN-β1a、IFN-β1b、またはIL-6に対する可溶性受容体から選択される、当該調節;マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、及びミクログリア細胞から選択される1種以上の細胞における1種以上の抗炎症性サイトカインの発現の調節(例えば、活性化または阻害);C1qa、C1qB、C1qC、C1s、C1R、C4、C2、C3、ITGB2、HMOX1、LAT2、CASP1、CSTA、VSIG4、MS4A4A、C3AR1、GPX1、TyroBP、ALOX5AP、ITGAM、SLC7A7、CD4、ITGAX、及びPYCARDから選択される1種以上のタンパク質の発現の調節(例えば、活性化または阻害);細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)リン酸化の活性化;1種以上の細胞タンパク質のチロシンリン酸化の調節(例えば、活性化または阻害)であって、任意により、当該1種以上の細胞タンパク質がZAP-70を含み、当該チロシンリン酸化がZAP-70のTyr-319で起こる、当該調節;C-Cケモカイン受容体7(CCR7)の発現の調節(例えば、活性化または阻害);ミクログリア細胞のCCL19及びCCL21発現細胞への走化性の活性化;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、M2ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、及びM2 NK細胞から選択される1種以上の細胞により引き起こされるT細胞増殖の調節(例えば、活性化または阻害);破骨細胞生成の調節(例えば、活性化または阻害)、破骨細胞形成速度の調節(例えば、活性化または阻害)、または両方;樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の生存の調節(例えば、活性化または阻害);樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の増殖の調節(例えば、活性化または阻害);樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の遊走の調節(例えば、活性化または阻害);樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の1つ以上の機能の調節(例えば、活性化または阻害);樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、制御性B細胞、形質細胞、M1マクロファージ、M1好中球、M1 NK細胞、活性化M1マクロファージ、活性化M1好中球、活性化M1 NK細胞、M2マクロファージ、M2好中球、M2 NK細胞、単球、破骨細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、顆粒球、好中球、ミクログリア、M1ミクログリア、活性化M1ミクログリア、及びM2ミクログリアから選択される1種以上の細胞の成熟の調節(例えば、活性化または阻害);アポトーシス神経細胞の除去、神経組織破片の除去、機能不全シナプスの除去、非神経組織破片の除去、細菌除去、他の異物の除去、疾患原因タンパク質の除去、疾患原因ペプチドの除去、及び腫瘍細胞の除去から選択される1つ以上の種類の除去の活性化であって、任意により、当該疾患原因タンパク質が、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドから選択され、当該腫瘍細胞が、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、及び甲状腺癌から選択されるがん由来である、当該活性化;アポトーシス神経細胞、神経組織破片、機能不全シナプス、非神経組織破片、細菌、他の異物、疾患原因タンパク質、疾患原因ペプチド、疾患原因核酸、または腫瘍細胞のうちの1種以上のファゴサイトーシスの活性化であって、任意により、当該疾患原因核酸が、アンチセンスGGCCCC(G2C4)(配列番号225)リピート伸長RNAであり、当該疾患原因タンパク質が、アミロイドβ、アミロイドβオリゴマー、アミロイドβ斑、アミロイド前駆体タンパク質またはその断片、タウ、IAPP、αシヌクレイン、TDP-43、FUSタンパク質、C9orf72(9番染色体オープンリーディングフレーム72)、c9RANタンパク質、プリオンタンパク質、PrPSc、ハンチンチン、カルシトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、アタキシン、アタキシン1、アタキシン2、アタキシン3、アタキシン7、アタキシン8、アタキシン10、レビー小体、心房性ナトリウム利尿因子、膵島アミロイドポリペプチド、インスリン、アポリポタンパク質AI、血清アミロイドA、メディン、プロラクチン、トランスチレチン、リゾチーム、β2ミクログロブリン、ゲルソリン、ケラトエピテリン、シスタチン、免疫グロブリン軽鎖AL、S-IBMタンパク質、リピート関連非ATG(RAN)翻訳産物、ジペプチドリピート(DPR)ペプチド、グリシン-アラニン(GA)リピートペプチド、グリシン-プロリン(GP)リピートペプチド、グリシン-アルギニン(GR)リピートペプチド、プロリン-アラニン(PA)リピートペプチド、ユビキチン、及びプロリン-アルギニン(PR)リピートペプチドから選択され、当該腫瘍細胞が、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、または甲状腺癌から選択されるがん由来である、当該活性化;腫瘍細胞上のSiglec-5リガンドへの結合の阻害;好中球、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、単球、ミクログリア、マクロファージ、及びNK細胞から選択される細胞上のSiglec-5リガンドへの結合の調節(例えば、活性化または阻害);ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、B細胞、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上による腫瘍細胞殺傷の活性化;ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上の抗腫瘍細胞増殖活性の活性化;ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上の抗腫瘍細胞増殖活性の活性化;1種以上のITAMモチーフ含有受容体の調節(例えば、活性化または阻害)であって、任意により、当該1種以上のITAMモチーフ含有受容体が、TREM1、TREM2、SIRPB1、FcgR、DAP10、及びDAP12から選択される、当該調節;1種以上のパターン認識受容体(PRR)によるシグナル伝達の調節(例えば、活性化または阻害)であって、任意により、当該1種以上のPRRが、病原体関連分子パターン(PAMP)を識別する受容体、ダメージ関連分子パターン(DAMP)を識別する受容体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、当該調節;モチーフD/
Ex0~2YxxL/IX6~8YxxL/I(配列番号4)を含む1種以上の受容体の調節(例えば、活性化または阻害);1種以上のToll様受容体によるシグナル伝達の調節(例えば、活性化または阻害);JAK-STATシグナル伝達経路の調節(例えば、活性化または阻害);活性化B細胞(NFκB)の核因子カッパ軽鎖エンハンサーの調節(例えば、活性化または阻害);ITAMモチーフ含有受容体のリン酸化;1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または受容体の発現の調節(例えば、活性化または阻害)であって、任意により、当該1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または受容体が、CD86、C1qa、C1qB、C1qC、C1s、C1R、C4、C2、C3、ITGB2、HMOX1、LAT2、CASP1、CSTA、VSIG4、MS4A4A、C3AR1、GPX1、TyroBP、ALOX5AP、ITGAM、SLC7A7、CD4、ITGAX、及び/またはPYCARDを含み、当該1種以上の炎症性受容体、補体カスケードのタンパク質、及び/または受容体が、ミクログリア、マクロファージ、好中球、NK細胞、B細胞、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、好中球、T細胞、ヘルパーT細胞、または細胞障害性T細胞のうちの1種以上で発現される、当該調節;1種以上のSiglec-5依存性遺伝子の発現の調節(例えば、活性化または阻害);破壊されたSiglec-5依存的遺伝子発現の正常化;1種以上のITAM依存性遺伝子の発現の調節(例えば、活性化または阻害)であって、任意により、当該1種以上のITAM依存性遺伝子が、活性化T細胞核因子(NFAT)転写因子により活性化される、当該調節;免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の機能のレスキュー;免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の腫瘍への浸潤の低減;腫瘍、末梢血、またはその他のリンパ器官における腫瘍促進性免疫抑制性骨髄/顆粒球細胞の数の増加;腫瘍または末梢血における腫瘍促進性サイトカインの発現の増加であって、任意により、当該腫瘍促進性サイトカインが、TGFβまたはIL-10である、当該増加;腫瘍促進性FoxP3+制御性Tリンパ球の腫瘍浸潤の増加;骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の腫瘍促進作用の増強;腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的Tリンパ球の活性化の減少;腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的NK細胞の浸潤の減少;NK細胞の腫瘍殺傷能の減少;制御性B細胞の腫瘍促進作用の増強;制御性B細胞の腫瘍浸潤の増加;免疫反応を増強する能力を有する腫瘍特異的Bリンパ球の腫瘍浸潤の減少;腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的Tリンパ球の腫瘍浸潤の減少;腫瘍容積の増加;腫瘍成長速度の増加;転移の増加;腫瘍再発率の増加;抗腫瘍T細胞反応を調節する1つ以上の免疫療法であって、任意により、PD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG3、DR-5、CD2、CD5、TREM1、TREM2、CD39、CD73、CSF-1受容体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上のタンパク質を標的とする免疫療法である、当該1つ以上の免疫療法、または1種以上のがんワクチンの有効性の減少;PLCγ/PKC/カルシウム動員の阻害;及び/またはPI3K/Akt、Ras/MAPKシグナル伝達の阻害が含まれる1つ以上のSiglec-5活性を、調節する必要がある個体において、治療上有効量の本開示のSiglec-5薬剤、例えば、本開示の抗Siglec-5抗体を当該個体に投与に投与して、当該個体におけるSiglec-5活性のうちの1つ以上を調節(例えば、活性化または阻害)することにより、調節(例えば、活性化または阻害)する方法を提供する。
【0381】
本明細書で開示される通り、Siglec-5に結合し、Siglec-5の細胞レベルを減少させる本開示の抗Siglec-5抗体は、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及び/またはがんを予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを処置するために使用され得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、抗体、可溶性Siglec-5受容体、Siglec-5-Fc融合タンパク質、Siglec-5イムノアドヘシン、1種以上のSiglec-5リガンドに結合する可溶性Siglec受容体、Siglec-Fc融合タンパク質、Siglecイムノアドヘシン、アンチセンス分子、siRNA、低分子阻害剤、タンパク質、及びペプチドから選択される。幾つかの実施形態では、Siglec-5抗体は、アゴニスト抗体である。幾つかの実施形態では、Siglec-5抗体は、不活性抗体である。幾つかの実施形態では、Siglec-5抗体は、アンタゴニスト抗体である。
【0382】
幾つかの実施形態では、本開示は、Siglec-5の細胞レベルを減少させる治療上有効量の本開示の薬剤をそれを必要とする個体に投与することにより、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及び/またはがんを予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを処置する方法を提供する。幾つかの実施形態では、薬剤は、抗体、可溶性Siglec-5受容体、Siglec-5-Fc融合タンパク質、Siglec-5イムノアドヘシン、1種以上のSiglec-5リガンドに結合する可溶性Siglec受容体、Siglec-Fc融合タンパク質、Siglecイムノアドヘシン、アンチセンス分子、siRNA、低分子阻害剤、タンパク質、及びペプチドから選択される。幾つかの実施形態では、薬剤は、本開示の抗Siglec-5抗体である。
【0383】
幾つかの実施形態では、本開示は、Siglec-5の細胞レベルを減少させる治療上有効量の本開示の薬剤をそれを必要とする個体に投与することによる、がんを予防するか、そのリスクを低減するか、または、それを処置する方法を提供する。幾つかの実施形態では、薬剤は、抗体、可溶性Siglec-5受容体、Siglec-5-Fc融合タンパク質、Siglec-5イムノアドヘシン、1種以上のSiglec-5リガンドに結合する可溶性Siglec受容体、Siglec-Fc融合タンパク質、Siglecイムノアドヘシン、アンチセンス分子、siRNA、低分子阻害剤、タンパク質、及びペプチドから選択される。ある種の実施形態では、薬剤は、本開示の抗Siglec-5抗体である。幾つかの実施形態では、薬剤は、以下から選択される1つ以上のSiglec-5活性を阻害する:(a)免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、免疫抑制性NK細胞、B細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連抑制性好中球、腫瘍関連抑制性NK細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の増殖、成熟、遊走、分化、及び/または機能の促進;(b)免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連抑制性好中球、腫瘍関連抑制性NK細胞、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の腫瘍への浸潤の増強;(c)腫瘍、末梢血、またはその他のリンパ器官における腫瘍促進性免疫抑制性骨髄/顆粒球細胞の数の増加;(d)骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の腫瘍促進作用の増強;(e)腫瘍または末梢血における腫瘍促進性サイトカインの発現の増加であって、任意により、当該腫瘍促進性サイトカインが、TGFβまたはIL-10である、当該増加;(f)腫瘍促進性FoxP3+制御性Tリンパ球の腫瘍浸潤の増加;(g)腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的Tリンパ球の活性化の減少;(h)腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的Tリンパ球の浸潤の減少;(i)腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的NK細胞の浸潤の減少;(j)NK細胞の腫瘍殺傷能の減少;(k)免疫反応を増強する能力を有する腫瘍特異的Bリンパ球の浸潤の減少;(l)免疫反応を増強する能力を有する腫瘍特異的Bリンパ球の活性化の減少;(m)腫瘍容積の増加;(n)腫瘍成長速度の増加;(o)転移の増加;(p)腫瘍再発率の増加;(q)抗腫瘍T細胞反応を調節する1つ以上の免疫療法であって、任意により、PD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG3、DR-5、CD2、CD5、TREM1、TREM2、CD39、CD73、CSF-1受容体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上のタンパク質を標的とする免疫療法である、当該1つ以上の免疫療法、またはがんワクチンの有効性の減少;(r)PLCγ/PKC/カルシウム動員の阻害;ならびに(s)PI3K/Akt、Ras/MAPKシグナル伝達の阻害。幾つかの実施形態では、薬剤は、以下から選択される1つ以上のSiglec-5活性を阻害する:(a)免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、非腫瘍形成性CD14+骨髄性細胞、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の増殖、成熟、遊走、分化、及び/または機能の促進;(b)免疫抑制性樹状細胞、免疫抑制性マクロファージ、免疫抑制性好中球、非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、制御性B細胞、及び制御性T細胞のうちの1種以上の腫瘍への浸潤の増強;(c)腫瘍、末梢血、またはその他のリンパ器官における腫瘍促進性免疫抑制性骨髄/顆粒球細胞及び/または非腫瘍形成性CD14+骨髄性細胞の数の増加;(d)非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞及び/または非腫瘍形成性CD14+骨髄性細胞の腫瘍促進作用の増強;(e)腫瘍または末梢血における腫瘍促進性サイトカインの発現の増加であって、任意により、当該腫瘍促進性サイトカインが、TGFβまたはIL-10である、当該増加;(f)腫瘍促進性FoxP3+制御性Tリンパ球の腫瘍浸潤の増加;(g)腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的Tリンパ球の活性化の減少;(h)腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的Tリンパ球の浸潤の減少;(i)腫瘍殺傷能を有する腫瘍特異的NK細胞の浸潤の減少;(j)NK細胞の腫瘍殺傷能の減少;(k)免疫反応を増強する能力を有する腫瘍特異的Bリンパ球の浸潤の減少;(l)免疫反応を増強する能力を有する腫瘍特異的Bリンパ球の活性化の減少;(m)腫瘍容積の増加;(n)腫瘍成長速度の増加;(o)転移の増加;(p)腫瘍再発率の増加;(q)1種以上のPD-1リガンドの発現の増加;(r)抗腫瘍T細胞反応を調節する1つ以上の免疫療法であって、任意により、PD1/PDL1、CD40、OX40、ICOS、CD28、CD137/4-1BB、CD27、GITR、PD-L1、CTLA4、PD-L2、PD-1、B7-H3、B7-H4、HVEM、LIGHT、BTLA、CD30、TIGIT、VISTA、KIR、GAL9、TIM1、TIM3、TIM4、A2AR、LAG3、DR-5、CD2、CD5、CD39、CD73、TREM1、TREM2、CSF-1受容体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上のタンパク質を標的とする免疫療法である、当該1つ以上の免疫療法、または1種以上のがんワクチンの有効性の減少;(s)PLCγ/PKC/カルシウム動員の阻害;(t)PI3K/Akt、Ras/MAPKシグナル伝達の阻害;ならびに(u)1種以上の化学療法剤の有効性の減少であって、任意により、当該1種以上の化学療法剤が、ゲムシタビン、カペシタビン、アンスラサイクリン、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))、エピルビシン(Ellence(登録商標))、タキサン、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、5-フルオロウラシル(5-FU)、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標))、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、及びそれらの任意の組み合わせである、当該減少。幾つかの実施形態では、薬剤は、以下から選択される1つ以上の活性を示す:(a)腫瘍浸潤CD3+T細胞の数の増加;(b)Siglec-5の1種以上のSiglec-5リガンドへの結合の阻害;(c)末梢免疫細胞におけるSiglec-5の細胞レベルの減少;(d)非腫瘍形成性CD14+骨髄性細胞の数の低減であって、任意により、当該非腫瘍形成性CD14+骨髄性細胞が腫瘍浸潤細胞であるか、または任意により、当該非腫瘍形成性CD14+骨髄性細胞が血液中に存在する、当該低減;(e)非腫瘍形成性CD14+骨髄性細胞の数の低減であって、任意により、当該非腫瘍形成性CD14+骨髄性細胞が腫瘍浸潤細胞であるか、または任意により、当該非腫瘍形成性CD14+骨髄性細胞が腫瘍内に存在する、当該低減;(f)1種以上の細胞におけるPD-L1レベルの低減であって、任意により、当該1種以上の細胞が、非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞(MDSC)である、当該低減;(g)1種以上の細胞におけるPD-L2レベルの低減であって、任意により、当該1種以上の細胞が、非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞(MDSC)である、当該低減;(h)1種以上の細胞におけるCD11bレベルの低減であって、任意により、当該1種以上の細胞が、非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞(MDSC)である、当該低減;(i)1種以上の細胞におけるB7-H3レベルの低減であって、任意により、当該1種以上の細胞が、非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞(MDSC)である、当該低減;(j)1種以上の細胞におけるCD200Rレベルの低減であって、任意により、当該1種以上の細胞が、非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞(MDSC)である、当該低減;(k)1種以上の細胞におけるCD163レベルの低減であって、任意により、当該1種以上の細胞が、非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞(MDSC)である、当該低減;(l)1種以上の細胞におけるCD206レベルの低減であって、任意により、当該1種以上の細胞が、非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞(MDSC)である、当該低減;(m)固形腫瘍の腫瘍成長速度の減少;(n)腫瘍容積の低減;(o)1種以上のPD-1阻害剤の有効性の増加;(p)1つ以上のチェックポイント阻害剤療法及び/または免疫調節療法の有効性の増加であって、任意により、1つ以上のチェックポイント阻害剤療法及び/または免疫調節療法が、CTL4、アデノシン経路、PD-L1、PD-L2、OX40、TIM3、LAG3、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1種以上を標的とする、当該増加;(q)非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の分化、生存、及び/または1つ以上の機能の阻害;(r)1種以上の骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の細胞死の誘発;ならびに(s)非腫瘍形成性骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の存在下でのT細胞の増殖の増加。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、疾患、障害、または損傷は、がんである。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、疾患、障害、または損傷はがんであり、当該がんはSiglec-5または1種以上のSiglec-5リガンドを発現する。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、薬剤は、膀胱癌、脳癌、乳癌、大腸癌、直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び/または多発性骨髄腫を予防するか、それらのリスクを低下させるか、またはそれらを処置するのに有益である。
【0384】
本明細書で開示される通り、本開示の抗Siglec-5抗体は、1種以上の免疫細胞(例えば、自然免疫細胞または適応免疫細胞)の生存、成熟、機能、遊走、または増殖を引き起こし、及び/または促進するためにも使用され得る。幾つかの実施形態では、本開示は、Siglec-5の細胞レベルを減少させる治療上有効量の本開示の薬剤を個体に投与することによる、1種以上の免疫細胞の生存、成熟、機能、遊走、または増殖を、それを必要とする当該個体において引き起こすか、または促進する方法を提供する。幾つかの実施形態では、薬剤は、抗体、可溶性Siglec-5受容体、Siglec-5-Fc融合タンパク質、Siglec-5イムノアドヘシン、1種以上のSiglec-5リガンドに結合する可溶性Siglec受容体、Siglec-Fc融合タンパク質、Siglecイムノアドヘシン、アンチセンス分子、siRNA、低分子阻害剤、タンパク質、及びペプチドから選択される。幾つかの実施形態では、薬剤は、本開示の単離抗Siglec-5抗体である。幾つかの実施形態では、1種以上の免疫細胞は、樹状細胞、マクロファージ、好中球、NK細胞、ミクログリア、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0385】
本開示の他の態様は、反応性を評価する必要がある対象の、Siglec-5と結合または相互作用する薬剤に対する反応性を評価する方法であって、a.当該対象に抗Siglec-5抗体を投与する前に当該対象から得られた血液試料中の非腫瘍形成性骨髄性細胞のCD45+及びCD14+の発現レベルを測定すること;b.当該対象に治療上有効量の当該薬剤を投与すること;及びc.当該抗Siglec-5抗体の投与後に、当該対象から得られた血液試料中の非腫瘍形成性骨髄性細胞のCD45+及びCD14+の発現レベルを測定することを含み、当該抗Siglec-5抗体の投与後における非腫瘍形成性骨髄性細胞上のCD45+、CD14+のレベルの低減が、当該対象が当該薬剤に反応することを示す、当該方法に関する。幾つかの実施形態では、反応性を評価する方法は、治療上有効量の1種以上の追加の薬剤を投与することを更に含む。先行実施形態のいずれかと組み合わされ得る幾つかの実施形態では、薬剤は、抗体、可溶性Siglec-5受容体、Siglec-5-Fc融合タンパク質、Siglec-5イムノアドヘシン、可溶性Siglec受容体、Siglec-Fc融合タンパク質、Siglecイムノアドヘシン、アンチセンス分子、siRNA、低分子阻害剤、タンパク質、及びペプチドから選択される。血液試料などの試料を取得するための任意の好適な方法が使用され得る。幾つかの実施形態では、反応性を評価する方法は、治療上有効量の1種以上の追加の薬剤を投与することを更に含む。幾つかの実施形態では、薬剤は、抗体、可溶性Siglec-5受容体、Siglec-5-Fc融合タンパク質、Siglec-5イムノアドヘシン、可溶性Siglec受容体、Siglec-Fc融合タンパク質、Siglecイムノアドヘシン、アンチセンス分子、siRNA、低分子阻害剤、タンパク質、及びペプチドから選択される。幾つかの実施形態では、薬剤は、単離抗Siglec-5抗体または抗Siglec-5抗体コンジュゲートである。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、本開示の抗Siglec-5抗体である。幾つかの実施形態では、対象は、ヒトである。
【0386】
幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の細胞レベル(例えば、細胞表面レベル、細胞内レベル、または総レベル)を低減する。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の分解を引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の切断を引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の内部移行を引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5のシェディングを引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5発現の下方調節を引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5を一過性に活性化し、次いで、その分解を引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5を一過性に活性化し、次いで、その切断を引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5を一過性に活性化し、次いで、その内部移行を引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5を一過性に活性化し、次いで、そのシェディングを引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5発現を一過性に活性化して、次いで、その下方調節を引き起こす。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5を一過性に活性化し、次いで、その発現の減少を引き起こす。ある種の実施形態では、個体は、Siglec-5バリアントアレルを有する。
【0387】
更に本明細書で開示される通り、本開示の抗Siglec-5抗体は、制御性T細胞、制御性B細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性マクロファージ、腫瘍埋没型免疫抑制性好中球、腫瘍埋没型免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、急性骨髄性白血病(AML)細胞、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞、及び/または慢性骨髄性白血病(CML)細胞の活性、機能、または生存を減少させるために使用され得る。幾つかの実施形態では、本開示は、治療上有効量の抗Siglec-5抗体を個体に投与することによる、制御性T細胞、制御性B細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性マクロファージ、腫瘍埋没型免疫抑制性好中球、腫瘍埋没型免疫抑制性NK細胞、骨髄由来抑制性細胞、腫瘍関連マクロファージ、腫瘍関連好中球、腫瘍関連NK細胞、急性骨髄性白血病(AML)細胞、慢性リンパ性白血病(CLL)細胞、または慢性骨髄性白血病(CML)細胞の活性、機能、または生存を、減少させる必要がある当該個体において減少させる方法を提供する。幾つかの実施形態では、抗体は、アンタゴニスト抗体、不活性抗体、及びアゴニスト抗体から選択される。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、本開示の単離抗Siglec-5抗体または抗Siglec-5抗体コンジュゲートである。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体コンジュゲートは、検出可能なマーカー、毒素、または治療薬にコンジュゲートされた抗Siglec-5抗体を含む。
【0388】
本明細書で開示される通り、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、赤血球、細菌細胞、アポトーシス細胞、神経細胞、グリア細胞、ミクログリア、アストロサイト、腫瘍細胞、ウイルス、樹状細胞、βアミロイド斑に結合したSiglec-5リガンド、タウ濃縮体に結合したSiglec-5リガンド、疾患原因タンパク質上のSiglec-5リガンド、疾患原因ペプチド上のSiglec-5リガンド、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞、単球、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、B細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性マクロファージ、骨髄由来抑制性細胞、及び/または制御性T細胞が含まれる、インビトロまたはインビボにおける1種以上の細胞のSiglec-5の細胞レベルを減少させるために使用され得る。幾つかの実施形態では、本開示は、Siglec-5と結合または相互作用する治療上有効量の薬剤を個体に投与することによる、1種以上の細胞のSiglec-5の細胞レベルを、減少させる必要がある当該個体において減少させる方法を提供する。幾つかの実施形態では、薬剤は、抗体、アンタゴニスト抗体、不活性抗体、アゴニスト抗体、Siglec-5リガンド、Siglec-5リガンド(アゴニスト)断片、Siglec-5イムノアドヘシン、Siglec-5リガンド模倣物、可溶性Siglec-5受容体、Siglec-5-Fc融合タンパク質、1種以上のSiglec-5リガンドに結合する可溶性Siglec受容体、1種以上のSiglec-5リガンドに結合するSiglec-Fc融合タンパク質、及び低分子化合物から選択される。幾つかの実施形態では、薬剤は、本開示の単離抗Siglec-5抗体または抗Siglec-5抗体コンジュゲートである。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体コンジュゲートは、検出可能なマーカー、毒素、または治療薬にコンジュゲートされた抗Siglec-5抗体を含む。幾つかの実施形態では、1種以上の細胞は、赤血球、細菌細胞、アポトーシス細胞、神経細胞、グリア細胞、ミクログリア、アストロサイト、腫瘍細胞、ウイルス、樹状細胞、βアミロイド斑に結合したSiglec-5リガンド、タウ濃縮体に結合したSiglec-5リガンド、疾患原因タンパク質上のSiglec-5リガンド、疾患原因ペプチド上のSiglec-5リガンド、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞、単球、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、B細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性マクロファージ、骨髄由来抑制性細胞、制御性T細胞、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0389】
Siglec-5の細胞レベルは、限定されるものではないが、Siglec-5の細胞表面レベル、Siglec-5の細胞内レベル、及びSiglec-5の総レベルを指し得る。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルの減少は、Siglec-5の細胞表面レベルの減少を含む。本明細書で使用する場合、抗Siglec-5抗体は、それが、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において公知の任意の細胞ベースのインビトロアッセイまたは好適なインビボモデルにより測定した際に、Siglec-5の細胞表面レベルの21%以上の減少を引き起こす場合、Siglec-5の細胞表面レベルを減少させる。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルの減少は、Siglec-5の細胞内レベルの減少を含む。本明細書で使用する場合、抗Siglec-5抗体は、それが、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において公知の任意の細胞ベースのインビトロアッセイまたは好適なインビボモデルにより測定した際に、Siglec-5の細胞内レベルの21%以上の減少を引き起こす場合、Siglec-5の細胞内レベルを減少させる。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルの減少は、Siglec-5の総レベルの減少を含む。本明細書で使用する場合、抗Siglec-5抗体は、それが、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において公知の任意の細胞ベースのインビトロアッセイまたは好適なインビボモデルにより測定した際に、Siglec-5の総レベルの20%以上の減少を引き起こす場合、Siglec-5の総レベルを減少させる。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の分解、Siglec-5の切断、Siglec-5の内部移行、Siglec-5のシェディング、及び/またはSiglec-5の発現の下方調節を引き起こす。幾つかの実施形態では、Siglec-5の細胞レベルは、インビトロ細胞アッセイを利用して初代細胞(例えば、樹状細胞、骨髄由来樹状細胞、B細胞、単球、ミクログリア、及びマクロファージ)または細胞株で測定される。
【0390】
本明細書で開示される通り、本開示の抗Siglec-5抗体は、例えば、インビトロまたはインビボにおける1種以上の好中球において活性酸素種(ROS)生成及び/または細胞外トラップ(NET)形成を引き起こすことによる、好中球の活性化の誘発及び/または好中球の免疫抑制の軽減のために使用され得る。幾つかの実施形態では、本開示は、Siglec-5と結合または相互作用する治療上有効量の薬剤を個体に投与することによる、1種以上の好中球における活性酸素種(ROS)生成を、それを必要とする当該個体において引き起こす方法を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、Siglec-5と結合または相互作用する治療上有効量の薬剤を個体に投与することによる、1種以上の好中球における細胞外トラップ(NET)形成を、それを必要とする当該個体において引き起こす方法を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、Siglec-5と結合または相互作用する治療上有効量の薬剤を個体に投与することによる、1種以上の好中球における好中球活性化を、それを必要とする当該個体において引き起こす方法を提供する。幾つかの実施形態では、本開示は、Siglec-5と結合または相互作用する治療上有効量の薬剤を個体に投与することによる、1種以上の好中球の免疫抑制を、軽減する必要がある当該個体において軽減する方法を提供する。幾つかの実施形態では、薬剤は、抗体、アンタゴニスト抗体、不活性抗体、アゴニスト抗体、Siglec-5リガンド、Siglec-5リガンド(アゴニスト)断片、Siglec-5イムノアドヘシン、Siglec-5リガンド模倣物、可溶性Siglec-5受容体、Siglec-5-Fc融合タンパク質、1種以上のSiglec-5リガンドに結合する可溶性Siglec受容体、1種以上のSiglec-5リガンドに結合するSiglec-Fc融合タンパク質、及び低分子化合物から選択される。幾つかの実施形態では、薬剤は、本開示の単離抗Siglec-5抗体または抗Siglec-5抗体コンジュゲートである。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体コンジュゲートは、検出可能なマーカー、毒素、または治療薬にコンジュゲートされた抗Siglec-5抗体を含む。幾つかの実施形態では、1種以上の細胞は、赤血球、細菌細胞、アポトーシス細胞、神経細胞、グリア細胞、ミクログリア、アストロサイト、腫瘍細胞、ウイルス、樹状細胞、βアミロイド斑に結合したSiglec-5リガンド、タウ濃縮体に結合したSiglec-5リガンド、疾患原因タンパク質上のSiglec-5リガンド、疾患原因ペプチド上のSiglec-5リガンド、マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞、単球、T細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、B細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性樹状細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性マクロファージ、骨髄由来抑制性細胞、制御性T細胞、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0391】
幾つかの実施形態では、個体は、Siglec-5のヘテロ接合性バリアントを有する。
【0392】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、抗Siglec-5抗体または二重特異性抗Siglec-5抗体の、パターン認識受容体に結合する抗体、Toll様受容体に結合する抗体、ダメージ関連分子パターン(DAMP)受容体に結合する抗体、及び/またはサイトカインに結合する抗体もしくはインターロイキンに対する抗体との同時投与を更に含み得る。
【0393】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、個体に抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体を投与すること、及び/または1つ以上の標準的もしくは試験的抗がん治療を施すことを更に含み得る。幾つかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗Siglec-5抗体と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、抗PD-1抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、及び抗HVEM抗体、抗B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)抗体、抗キラー細胞抑制受容体(KIR)抗体、抗GAL9抗体、抗TIM-1抗体、抗TIM3抗体、抗TIM-4抗体、抗A2AR抗体、抗CD39抗体、抗CD73抗体、抗LAG-3抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗CD27抗体、抗CD30抗体、抗TNFa抗体、抗CD33抗体、抗Siglec-6抗体、抗Siglec-7抗体、抗Siglec-9抗体、抗Siglec-10抗体、抗Siglec-11抗体、抗TREM1アンタゴニスト抗体、抗TREM2アンタゴニスト抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD2抗体、抗CD5抗体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。幾つかの実施形態では、1つ以上の標準的または試験的抗がん療法は、放射線療法、細胞障害性化学療法、標的療法、イマチニブ療法、トラスツズマブ療法、エタナーセプト療法、養子細胞移植(ACT)療法、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)移植療法、ワクチン療法、及びサイトカイン療法から選択される。
【0394】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体を個体に投与することを更に含み得る。幾つかの実施形態では、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗Siglec-5抗体などのSiglec-5薬剤と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態では、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗CCL2抗体、抗CSF-1抗体、抗IL-2抗体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0395】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、刺激性チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体を個体に投与することを更に含み得る。幾つかの実施形態では、刺激性チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体は、抗Siglec-5抗体などのSiglec-5薬剤と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態では、刺激性チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体は、アゴニスト抗CD40抗体、抗OX40アゴニスト抗体、抗ICOSアゴニスト抗体、抗CD28アゴニスト抗体、抗TREM1アゴニスト抗体、抗TREM2アゴニスト抗体、抗CD137/4-1BBアゴニスト抗体、抗CD27アゴニスト抗体、抗糖質コルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト抗体、抗BTLAアゴニスト抗体、HVEMアゴニスト抗体、抗CD30アゴニスト抗体、抗CD2アゴニスト抗体、抗CD5アゴニスト抗体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0396】
幾つかの実施形態では、本開示の方法は、少なくとも1種の刺激性サイトカインを個体に投与することを更に含み得る。幾つかの実施形態では、少なくとも1種の刺激性サイトカインは、抗Siglec-5抗体などのSiglec-5薬剤と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態では、少なくとも1種の刺激性サイトカインは、IFN-α4、IFN-β、IL-1β、TNF-α、IL-6、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、LIF、IFN-γ、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-23、CXCL10、IL-33、MCP-1、MIP-1-β、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0397】
認知症
認知症は、正常な老化から予測され得るものを超える、それ以前に損なわれていないヒトの全体的な認知能力の重大な喪失として現れる非特異的な症候群(すなわち、一連の徴候及び症状)である。全体的な脳損傷のみの結果としての認知症は、変化しない場合がある。あるいは、認知症は、進行性であり得、身体の損傷または疾患に起因する長期的な衰退をもたらすことがある。認知症は、高齢者集団において非常に一般的であるが、65歳以前に発症する可能性もある。認知症の影響を受ける認知領域としては、限定されるものではないが、記憶、注意持続、言語、及び問題解決が挙げられる。一般に、個体が認知症と診断される前に、症状は、少なくとも6ヶ月間存在しなければならない。
【0398】
認知症の例示的な型としては、限定されるものではないが、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、意味性認知症、及びレビー小体型認知症が挙げられる。
【0399】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体の投与は、認知症を予防し得るか、そのリスクを低減し得るか、及び/またはそれを処置し得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体の投与は、認知症を有する個体における1つ以上のSiglec-5活性を調節し得る。
【0400】
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉の進行性の変性から生じる状態である。変性は、経時的に側頭葉に進行し得る。有病率はアルツハイマー病(AD)に次いで2番目であり、FTDは初老期認知症症例の20%を占める。FTDの臨床的特徴としては、記憶障害、行動異常、人格変化、及び言語障害が挙げられる(Cruts,M.& Van Broeckhoven,C.,Trends Genet.24:186-194(2008);Neary,D.,et al.,Neurology 51:1546-1554(1998);Ratnavalli,E.,Brayne,C.,Dawson,K.& Hodges,J.R.,Neurology 58:1615-1621(2002))。
【0401】
FTD症例のかなりの部分は、常染色体優性様式で遺伝するが、1つの家族内であっても、症状は、行動障害を伴うFTDから原発性進行性失語症、大脳皮質基底核神経節変性症までの範囲に及び得る。大部分の神経変性疾患と同様に、FTDは、罹患した脳における特定のタンパク質凝集体の病理学的存在を特徴とし得る。歴史的に、FTDの最初の記載は、神経原線維変化またはピック体における高リン酸化型タウタンパク質の神経細胞内蓄積の存在を認めた。微小管関連タンパク質タウの因果的役割は、幾つかの家族におけるタウタンパク質をコードする遺伝子の変異の同定により支持された(Hutton,M.,et al.,Nature 393:702-705(1998)。しかしながら、大多数のFTD脳は、高リン酸化型Tauの蓄積を示さないが、ユビキチン(Ub)及びTAR DNA結合タンパク質(TDP43)に対する免疫反応性を示す(Neumann,M.,et al.,Arch.Neurol.64:1388-1394(2007))。それらのUb封入対を伴うFTD症例(FTD-U)の大多数は、プログラニュリン遺伝子に変異を保有することが示された。
【0402】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体の投与は、FTDを予防し得るか、そのリスクを低減し得るか、及び/またはそれを処置し得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体の投与は、FTDを有する個体における1つ以上のSiglec-5活性を調節し得る。
【0403】
アルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)は、認知症の最も一般的な型である。この疾患に対する治療法はなく、この疾患は、進行するにつれて悪化し、最終的に死をもたらす。多くの場合、ADは、65歳を超える人々において診断される。しかしながら、より有病率の低い早期発症型アルツハイマー病は、かなり早い時期に発症し得る。
【0404】
アルツハイマー病の一般的な症状としては、最近の出来事を記憶することが困難、認知症状、錯乱、過敏性及び攻撃性、気分変動、言語障害、ならびに長期記憶喪失などの行動症状が挙げられる。疾患が進行するにつれて、身体機能は失われ、最終的には死をもたらす。アルツハイマー病は、完全に明らかになる前の不明かつ可変的な期間の間に発症し、何年もの間、診断未確定で進行し得る。
【0405】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体の投与は、アルツハイマー病を予防し得るか、そのリスクを低減し得るか、及び/またはそれを処置し得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体の投与は、アルツハイマー病を有する個体における1つ以上のSiglec-5活性を調節し得る。
【0406】
パーキンソン病
特発性もしくは原発性パーキンソン症候群、低運動性硬直症候群(HRS)、または振戦麻痺と称され得るパーキンソン病は、運動系制御に影響を及ぼす神経変性脳障害である。脳におけるドーパミン産生細胞の進行性の死により、パーキンソン病の主要な症状がもたらされる。多くの場合、パーキンソン病は、50歳以上の人々において診断される。パーキンソン病は、ほとんどの人々において特発性(既知の原因を有さない)である。しかしながら、遺伝的要因もこの疾患に関与する。
【0407】
パーキンソン病の症状としては、限定されるものではないが、手、腕、脚、顎、及び顔面の振戦、四肢及び胴体の筋硬直、動作緩慢(運動緩慢)、姿勢不安定性、歩行困難、精神神経障害、発語または行動の変化、うつ病、不安、疼痛、精神病、認知症、幻覚、ならびに睡眠障害が挙げられる。
【0408】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体の投与は、パーキンソン病を予防し得るか、そのリスクを低減し得るか、及び/またはそれを処置し得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体の投与は、パーキンソン病を有する個体における1つ以上のSiglec-5活性を調節し得る。
【0409】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
本明細書で使用する場合、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、または運動ニューロン疾患、またはルー・ゲーリック病は、互換的に使用され、急速な進行性脱力、筋萎縮及び線維束性収縮、筋痙縮、発話困難(構音障害)、嚥下困難(嚥下障害)、ならびに呼吸困難(呼吸窮迫症)を特徴とする様々な病因を有する消耗性疾患を指す。
【0410】
プログラニュリンが、ALSに関与し(Schymick,JC et al.,(2007)J Neurol Neurosurg Psychiatry.;78:754-6)、TDP-43などのALSの原因となるタンパク質により引き起こされる損傷を防ぐことが示されている(Laird,AS et al.,(2010).PLoS ONE 5:e13368)。またpro-NGFが、脊髄損傷後のオリゴデンドロサイト及び皮質脊髄神経細胞のp75により媒介される死を引き起こすことも実証された(Beatty et al.,Neuron(2002),36,pp.375-386;Giehl et al,Proc.Natl.Acad.Sci USA(2004),101,pp 6226-30)。
【0411】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体の投与は、ALSを予防し得るか、そのリスクを低減し得るか、及び/またはそれを処置し得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体の投与は、筋萎縮性側索硬化症を有する個体における1つ以上のSiglec-5活性を調節し得る。
【0412】
ハンチントン病
ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン遺伝子(HTT)の常染色体優性変異により引き起こされる遺伝性の神経変性疾患である。ハンチンチン遺伝子内のサイトカイン-アデニン-グアニン(CAG)トリプレットリピートの伸長は、この遺伝子によりコードされるハンチンチンタンパク質(Htt)の変異型の生成をもたらす。この変異型ハンチンチンタンパク質(mHtt)は、有毒であり、神経細胞死に寄与する。ハンチントン病の症状は、任意の年齢で現れ得るが、35歳及び44歳の間で最も一般的に現れる。
【0413】
ハンチントン病の症状としては、限定されるものではないが、運動制御障害、痙攣、不規則運動(舞踏病)、異常な眼球運動、平衡障害、発作、咀嚼困難、嚥下困難、認知障害、発語変化、記憶障害、思考困難、不眠、疲労、認知症、人格変化、うつ病、不安、及び強迫行動が挙げられる。
【0414】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体の投与は、ハンチントン病(HD)を予防し得るか、そのリスクを低減し得るか、及び/またはそれを処置し得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体の投与は、ハンチントン病を有する個体における1つ以上のSiglec-5活性を調節し得る。
【0415】
タウオパチー疾患
タウオパチー疾患またはタウオパチーは、脳内での微小管関連タンパク質タウの凝集により引き起こされる神経変性疾患の1種である。アルツハイマー病(AD)は、最もよく知られているタウオパチー疾患であり、不溶性の神経原線維変化(NFT)という形態での神経細胞内でのタウタンパク質の蓄積を伴う。他のタウオパチー疾患または障害としては、進行性核上性麻痺、ボクサー認知症(慢性外傷性脳症)、17番染色体に連鎖しパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症、リティコ・ボディグ疾患(グアムのパーキンソン認知症複合)、神経原線維変化型老年期認知症、神経節膠腫及び神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハレルフォルデン・スパッツ病、リポフスチン沈着症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、嗜銀顆粒病(AGD)、ハンチントン病、及び前頭側頭葉変性症が挙げられる。
【0416】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体の投与は、タウオパチー疾患を予防し得るか、そのリスクを低減し得るか、及び/またはそれを処置し得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体の投与は、タウオパチー疾患を有する個体における1つ以上のSiglec-5活性を調節し得る。
【0417】
多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、散在性硬化症または散在性脳脊髄炎とも称され得る。MSは、脳及び脊髄の軸索周囲の脂肪ミエリン鞘が損傷し、脱髄及び瘢痕化ならびに広範囲の徴候及び症状をもたらす炎症性疾患である。MSは、脳及び脊髄内の神経細胞の、相互に効果的に伝達する能力に影響を及ぼす。神経細胞は、ミエリンと称される絶縁物質内に囲まれている軸索と称される長い繊維に活動電位と称される電気信号を送ることにより伝達する。MSでは、身体自身の免疫系がミエリンを攻撃し、損傷を与える。ミエリンが失われると、軸索は、もはや効果的にシグナルを伝導することができない。MS発症は通常、若年成人で生じ、女性においてより一般的である。
【0418】
MSの症状としては、限定されるものではないが、感度の減少または刺痛感などの感覚の変化;感覚減退及び感覚異常などの刺痛感またはしびれ;筋力低下;クローヌス;筋痙攣;移動困難;運動失調などの協調運動及び平衡障害;構音障害などの発語困難または嚥下障害などの嚥下困難;眼振などの視覚障害;閃光感覚及び複視が含まれる視神経炎;疲労;急性または慢性疼痛;ならびに膀胱直腸障害;様々な程度の認知障害;うつ病または情緒不安定の情動性症状;通常の周囲温度よりも高い温度への曝露に起因する現存の症状の増悪であるウートホフ現象;ならびに首を曲げる時に背中に走る電気的感覚であるレルミット徴候が挙げられる。
【0419】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体の投与は、多発性硬化症を予防し得るか、そのリスクを低減し得るか、及び/またはそれを処置し得る。幾つかの実施形態では、抗Siglec-5抗体の投与は、多発性硬化症を有する個体における1つ以上のSiglec-5活性を調節し得る。
【0420】
がん
本開示の更なる態様は、治療上有効量の本開示の単離抗Siglec-5抗体を、それを必要とする個体に投与することによる、がんを予防するか、そのリスクを低減するか、またはそれを処置するための方法を提供する。本開示の単離抗体のいずれかは、これらの方法において使用され得る。幾つかの実施形態では、単離抗体は、本開示のアゴニスト抗体である。他の実施形態では、単離抗体は、本開示のアンタゴニスト抗体である。他の実施形態では、単離抗体は、本開示の不活性抗体である。他の実施形態では、単離抗体は、本開示の抗体コンジュゲートである。
【0421】
本明細書で開示されるように、腫瘍微小環境は、Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージ、好中球、NK細胞、及び骨髄/顆粒球系列の細胞を含む不均一免疫浸潤物を含有することが知られている。腫瘍における制御性T細胞、制御性B細胞、腫瘍埋没型免疫抑制性骨髄細胞、及び/またはM2マクロファージ、M2好中球、及び/またはM2 NK細胞の存在及び活性は、予後不良と関連する。対照的に、細胞障害性T細胞の存在及び活性は、がん治療に有益である。細胞障害性T細胞の活性を直接または間接的に増強し、様々な免疫抑制性細胞の数及び活性を低減する治療法は、顕著な治療的有用性を提供すると予想される。有望な前臨床研究は、免疫抑制性細胞を標的とする薬物(例えば、CSF1/CSF1R遮断抗体)と細胞障害性T細胞を活性化する免疫チェックポイント遮断抗体との間の相乗効果を示しており、両方の細胞型の操作が個々の治療法の効果が十分でない腫瘍モデルにおいて有効性を示すことを意味している(Zhu Y;Cancer Res.2014 Sep 15;74(18):5057-69)。従って、幾つかの実施形態では、骨髄性細胞、好中球、B細胞、T細胞のサブセット、及び腫瘍関連免疫細胞上に発現されるSiglec-5の遮断は、有益な抗腫瘍免疫反応を刺激し得、治療的抗腫瘍免疫反応をもたらす。
【0422】
幾つかの実施形態では、がんを予防するか、そのリスクを低減するか、またはそれを有する個体を処置するための方法は、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体を当該個体に投与することを更に含む。抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する抗体の例としては、限定されるものではないが、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、抗PD-1抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、及び抗HVEM抗体、抗B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)抗体、抗キラー細胞抑制受容体(KIR)抗体、抗GAL9抗体、抗TIM-1抗体、抗TIM3抗体、抗TIM-4抗体、抗A2AR抗体、抗CD39抗体、抗CD73抗体、抗LAG-3抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗CD27抗体、抗CD30抗体、抗TNFa抗体、抗CD33抗体、抗Siglec-6抗体、抗Siglec-7抗体、抗Siglec-9抗体、抗Siglec-10抗体、抗Siglec-11抗体、抗TREM1アンタゴニスト抗体、抗TREM2アンタゴニスト抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD2抗体、抗CD5抗体、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。幾つかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、本開示の抗Siglec-5アンタゴニスト抗体などの本開示のSiglec-5薬剤と組み合わせて投与される。
【0423】
幾つかの実施形態では、本開示の方法により予防または処置されるがんとしては、限定されるものではないが、扁平上皮癌(例えば、上皮性扁平上皮癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、ならびに肺の扁平上皮癌が含まれる肺癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌及び消化管間質癌が含まれる胃癌または胃癌(gastric or stomach cancer)、膵癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、黒色腫、表在性拡大型黒色腫、悪性黒子型黒色腫、末端黒子型黒色腫、結節性黒色腫、多発性骨髄腫及びB細胞リンパ腫;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);毛様細胞性白血病;慢性骨髄芽球性白血病;ならびに移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症に付随する異常血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に付随するもの)、メーグス症候群、脳及び頭頸部癌、ならびに付随する転移が挙げられる。幾つかの実施形態では、がんは、結腸直腸癌である。幾つかの実施形態では、がんは、非小細胞肺癌、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、腎細胞癌、膀胱癌、卵巣癌、黒色腫、乳癌、胃癌、及び肝細胞癌から選択される。幾つかの実施形態では、がんは、トリプルネガティブ乳癌である。幾つかの実施形態では、がんは、初期がんまたは末期がんであり得る。幾つかの実施形態では、がんは、原発性腫瘍であり得る。幾つかの実施形態では、がんは、上記の種類のがんのいずれかに由来する第2の部位での転移性腫瘍であり得る。
【0424】
幾つかの実施形態では、本開示の抗Siglec-5抗体は、限定されるものではないが、膀胱癌、乳癌、結腸及び直腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、卵巣癌、線維肉腫、ならびに甲状腺癌が含まれるがんを予防するか、そのリスクを低減するか、またはそれを処置するために使用され得る。
【0425】
幾つかの実施形態では、本開示は、治療上有効量の本開示の抗Siglec-5抗体を個体に投与することによる、がんを予防するか、そのリスクを低減するか、またはそれを有する当該個体を処置する方法を提供する。
【0426】
幾つかの実施形態では、本方法は、個体に抑制性免疫チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体を投与すること、及び/または別の標準的または試験的抗がん療法を施すことを更に含む。幾つかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、本開示の抗Siglec-5抗体と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態では、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗PD-L1抗体、抗CTLA4抗体、抗PD-L2抗体、抗PD-1抗体、抗B7-H3抗体、抗B7-H4抗体、及び抗HVEM抗体、抗B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)抗体、抗キラー細胞抑制受容体(KIR)抗体、抗GAL9抗体、抗TIM-1抗体、抗TIM3抗体、抗TIM-4抗体、抗A2AR抗体、抗CD39抗体、抗CD73抗体、抗LAG-3抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗CD27抗体、抗CD30抗体、抗TNFa抗体、抗CD33抗体、抗Siglec-6抗体、抗Siglec-7抗体、抗Siglec-9抗体、抗Siglec-10抗体、抗Siglec-11抗体、抗TREM1アンタゴニスト抗体、抗TREM2アンタゴニスト抗体、抗TIGIT抗体、抗VISTA抗体、抗CD2抗体、抗CD5抗体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。幾つかの実施形態では、標準的または試験的抗がん療法は、放射線療法、細胞傷害性化学療法、標的療法、イマチニブ(Gleevec(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、養子細胞移植(ACT)、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)移植、ワクチン療法、及びサイトカイン療法から選択される1つ以上の治療法である。
【0427】
幾つかの実施形態では、本方法は、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体を個体に投与することを更に含む。幾つかの実施形態では、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、本開示の抗Siglec-5抗体と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態では、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体は、抗CCL2抗体、抗CSF-1抗体、抗IL-2抗体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0428】
幾つかの実施形態では、本方法は、刺激性免疫チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体を個体に投与することを更に含む。幾つかの実施形態では、刺激性チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体は、本開示の抗Siglec-5抗体と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態では、刺激性チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体は、アゴニスト抗CD40抗体、抗OX40アゴニスト抗体、抗ICOSアゴニスト抗体、抗CD28アゴニスト抗体、抗TREM1アゴニスト抗体、抗TREM2アゴニスト抗体、抗CD137/4-1BBアゴニスト抗体、抗CD27アゴニスト抗体、抗糖質コルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト抗体、抗BTLAアゴニスト抗体、HVEMアゴニスト抗体、抗CD30アゴニスト抗体、抗CD2アゴニスト抗体、抗CD5アゴニスト抗体、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0429】
幾つかの実施形態では、本方法は、少なくとも1種の刺激性サイトカインを個体に投与することを更に含む。幾つかの実施形態では、少なくとも1種の刺激性サイトカインは、本開示の抗Siglec-5抗体と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態では、少なくとも1種の刺激性サイトカインは、IFN-α4、IFN-β、IL-1β、TNF-α、IL-6、IL-8、CRP、IL-20ファミリーメンバー、LIF、IFN-γ、OSM、CNTF、GM-CSF、IL-11、IL-12、IL-17、IL-18、IL-23、CXCL10、IL-33、MCP-1、MIP-1-β、及びそれらの任意の組み合わせから選択される。
【0430】
キット/製造物品
本開示は、本開示のSiglec-5薬剤(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)またはその機能断片を含有するキット及び/または製造物品も提供する。本開示のキット及び/または製造物品は、本開示の精製抗体を含む1つ以上の容器を含み得る。幾つかの実施形態では、キット及び/または製造物品は、本開示の方法に従った使用説明書を更に含む。幾つかの実施形態では、これらの使用説明書は、本開示の任意の方法により、認知症、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、混合型認知症、タウオパチー疾患、感染、及びがんから選択される疾患、障害、または損傷を予防するか、それらのリスクを低減するか、またはそれらを有する個体を処置するための、本開示のSiglec-5薬剤(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)の投与の記載を含む。
【0431】
幾つかの実施形態では、使用説明書は、例えば、個体、組織試料、または細胞においてSiglec-5タンパク質を検出する方法の記載を含む。キット及び/または製造物品は、処置に適した個体を、その個体が疾患及び疾患の段階を有するかどうかを識別することに基づいて選択することの記載を更に含み得る。
【0432】
幾つかの実施形態では、キット及び/または製造物品は、本開示の別の抗体(例えば、抑制性チェックポイント分子に特異的に結合する少なくとも1種の抗体、抑制性サイトカインに特異的に結合する少なくとも1種の抗体、及び/または刺激性チェックポイントタンパク質に特異的に結合する少なくとも1種のアゴニスト抗体)及び/または少なくとも1種の刺激性サイトカインを更に含み得る。幾つかの実施形態では、キット及び/または製造物品は、本開示の任意の方法に従って、抗体及び/または刺激性サイトカインを本開示のSiglec-5薬剤(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)と組み合わせて使用するための使用説明書、本開示のSiglec-5薬剤(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)を抗体及び/または刺激性サイトカインと組み合わせて使用するための使用説明書、または本開示のSiglec-5薬剤(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)ならびに抗体及び/または刺激性サイトカインを使用するための使用説明書を更に含み得る。
【0433】
使用説明書は、一般に、意図した処置のための用量、投与スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)、または分割単位用量であっても良い。本開示のキット及び/または製造物品において供給される使用説明書は、通常、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)に書かれた使用説明書であるが、機械で読み取ることができる使用説明書(例えば、磁気または光記憶ディスクに移された使用説明書)も許容される。
【0434】
ラベルまたは添付文書は、組成物が、例えば、本開示の疾患を処置するために使用されることを示す。使用説明書は、本明細書に記載される方法のいずれかを実施するために提供され得る。
【0435】
本開示のキット及び/または製造物品は、好適な包装内に存在する。好適な包装としては、限定されるものではないが、バイアル、ボトル、ジャー、軟包装(例えば、密封マイラーまたはプラスチック袋)などが挙げられる。吸入器、経鼻投与デバイス(例えば、噴霧器)、またはミニポンプなどの注入デバイスなどの特定のデバイスと組み合わせて使用するための包装も意図される。キット及び/または製造物品は、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針により貫通可能な栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであり得る)。容器も無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針により貫通可能な栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1種の活性薬剤は、本開示のSiglec-5薬剤(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)である。容器は、第2の薬学的活性薬剤を更に含み得る。
【0436】
キット及び/または製造物品は、任意に緩衝剤及び説明情報などの追加の構成要素を提供し得る。通常、キットは、容器及び当該容器上のまたは当該容器に付随するラベルまたは添付文書(複数可)を含む。
【0437】
診断的使用
本開示の単離抗体などの本開示のSiglec-5薬剤(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)は、診断的有用性も有する。従って、本開示は、本開示の抗体またはその機能断片の、個体または個体に由来する組織試料におけるSiglec-5タンパク質の検出などの診断目的での使用方法を提供する。
【0438】
幾つかの実施形態では、個体は、ヒトである。幾つかの実施形態では、個体は、本開示の疾患、障害、または損傷に罹患しているか、またはそれらを発症するリスクがあるヒト患者である。幾つかの実施形態では、診断方法は、生体試料、例えば、生検材料、組織、または細胞におけるSiglec-5タンパク質を検出することを伴う。本開示のSiglec-5薬剤(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)は、生体試料と接触され、抗原に結合した抗体が検出される。例えば、生検材料は、疾患関連細胞を検出及び/または定量化するために本明細書に記載される抗Siglec-5抗体で染色され得る。検出方法は、抗原に結合した抗体の定量化を伴い得る。生体試料における抗体検出は、免疫蛍光顕微鏡検査、免疫細胞染色、免疫組織染色、ELISA、FACS解析、免疫沈降、またはマイクロ陽電子放出断層撮影が含まれる当該技術分野において公知の任意の方法により行われ得る。ある種の実施形態では、抗体は、例えば、18Fで放射標識され、その後、マイクロ陽電子放出断層撮影解析を利用して検出される。患者における抗体結合は、陽電子放出断層撮影(PET)、X線コンピュータ断層撮影、単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、コンピュータ断層撮影(CT)、及びコンピュータ体軸断層撮影(CAT)などの非侵襲技術によっても定量化され得る。
【0439】
他の実施形態では、本開示の単離抗体(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)は、例えば、前臨床疾患モデル(例えば、非ヒト疾患モデル)から得られる脳検体におけるミクログリアを検出及び/または定量化するために使用され得る。従って、本開示の単離抗体(例えば、本明細書に記載される抗Siglec-5抗体)は、前頭側頭型認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、発作、網膜ジストロフィー、アテローム硬化性血管疾患、那須ハコラ病、または多発性硬化症などの神経系疾患または損傷のモデルにおける処置後に、対照と比較した治療反応を評価するのに有用であり得る。
【0440】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示の全体にわたる全ての引用は、参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0441】
実施例1:Siglec-5に特異的な抗体の作製
本開示は、Siglec-5に結合する抗体を提供する。一部の態様では、本開示は、Siglec-5に結合するが、Siglec-5と相同性の高いタンパク質であるSiglec-14に結合しない抗体を提供する。
【0442】
ヒトSiglec-5のアミノ酸配列を、以下に記載する(配列番号1)。ヒトSiglec-5は、配列番号1のアミノ酸残基1~16に位置するシグナル配列、アミノ酸残基17~441に位置する細胞外ドメイン、配列番号1のアミノ酸残基19~136に位置する細胞外免疫グロブリン様可変型(IgV)ドメイン、配列番号1のアミノ酸残基146~229及び236~330に位置する2つのIg様C2型ドメイン、配列番号1のアミノ酸残基442~462に位置する膜貫通ドメイン、配列番号1のアミノ酸残基518~523に位置するITIMモチーフ1、ならびに配列番号1のアミノ酸残基542~547に位置するSLAM様モチーフを含有する。ヒトSiglec-5(配列番号1)のカニクイザルSiglec-5ホモログ(配列番号2)とのアミノ酸配列の配列比較を、
図1Aに示す。ヒトSiglec-5(配列番号1)及びヒトSiglec-14(配列番号4)のアミノ酸配列の配列比較を、
図1Bに示す。
【0443】
【0444】
図1Bに示すように、ヒトSiglec-5及びヒトSiglec-14は、それらの細胞外ドメインにおいて相同性が高く、それらの細胞外ドメインの全体にわたって80%の同一性を共有するが、それらの細胞外ドメインの最初の237アミノ酸では99%超の同一性を共有する。
【0445】
Siglec-5に特異的な抗体を、Adler,et al.mAbs.2017 “Rare,high-affinity mouse anti-PD-1 antibodies that function in checkpoint blockade,discovered using microfluidics and molecular genomics”に記載のように分子ゲノミクスアプローチを使用して作製した。10匹のマウス(5匹のSJ/Lマウス及び5匹のBalb/cマウス)を、3週間の複数部位反復免疫化(RIMMS)プロトコールを使用して、ヒトSiglec-5の細胞外ドメインを含むHisタグ付けされたSiglec-5タンパク質で免疫化した。10匹の動物のうちの9匹が、免疫原に対して高い力価を生じた。リンパ節及び脾臓をこれらのマウスから収集し、そこからB細胞を負の選択により単離した。
【0446】
各動物からのリンパ節及び脾臓のB細胞をプールし、各動物から106個のB細胞を10%のOptiprep(Sigma)を含有するPBS中に再懸濁して、単一細胞エマルション液滴を生成し、その後、重鎖及び軽鎖を、Adler,et al.に記載のようにガラスマイクロ流体チップ上でRT-PCRにより増幅した。要約すると、特別に設計された並行流エマルション液滴ガラスマイクロ流体チップを使用して、単一細胞懸濁液及び細胞溶解緩衝液中のポリ(A)+mRNAを捕捉するためのオリゴdTビーズを含有する直径約45μmのエマルション液滴を作製した。次いで、mRNAが結合したビーズを、2xワンステップRT-PCR緩衝液、Superscript III逆転写酵素、Platinum Taq(ThermoFisher)、ならびにIgK C領域、IgG C領域、及び全てのV領域に対して向けられたプライマーの混合物を含有するオーバーラップ伸長RT-PCRミックス中に再懸濁した。重複領域は、scFvのGly-Serリッチ配列をコードするDNA配列であった。ビーズ混合物を、鉱油ベースの界面活性剤混合物と共にTelosエマルション液滴ガラスマイクロ流体チップに注入し、27μmの液滴を作製した。このプロセスにより、単一細胞由来の重鎖及び軽鎖可変ドメイン配列が増幅及び連結されて、連結されたscFvの配列が形成された。
【0447】
RT-PCR反応の後、RT-PCR生成物をアガロースゲルで精製し、ネステッドPCR反応を実行して、ディープシークエンシングまたは酵母ディスプレイのためのアダプターを付加した。ネステッドPCR生成物を、シークエンシングまたは酵母でのクローニングの前にゲル精製した。酵母クローニングベクター(pYD)は、GAL1/10プロモーター、Aga2細胞壁テザー、及びC末端c-Mycタグを含有した。Saccharomyces cerevisiaeを、ゲル精製されたPCR産物及び相同組換えのための直鎖化pYDベクターと共に電気穿孔した。
【0448】
酵母ベース抗体プラットフォームを使用して、Siglec-5に結合するが、Siglec-14に結合しない抗体を選択した。Siglec-5に結合するscFvを発現する細胞を同定するために、酵母細胞を、ビオチン化され、Hisタグ付けされたSiglec-5-Fcタンパク質(70nM)を用いて染色し、次いで、PE-ストレプトアビジンを用いて染色した。Siglec-14に結合するscFv細胞を同定するために、酵母細胞を、Siglec-14-Fc(70nM、R&D)を用いて染色し、次いで、APCコンジュゲート抗ヒトIgGを用いて染色した。細胞表面でのscFv発現を確認するために酵母を、抗c-Myc抗体を用いて、続いて、AF-488コンジュゲート二次抗体を用いて染色した。Siglec-5に結合するが、Siglec-14に結合しないscFvを発現する酵母細胞を、AF488+/PE+/APC-集団を選別することにより選択した。
【0449】
プラスミドミニプレップを、FACS選別により回収された酵母から調製した。末端テール化PCRを使用して、抗体ディープシークエンシングのためのプラスミドライブラリーにIlluminaアダプターを付加した。シークエンシングライブラリーを、quantitative PCR Illumina Library Quantification kit(KAPA)を使用して定量した。ライブラリーを、500 cycle MiSeq Reagent Kit v2を製造者の使用説明書に従って使用して、MiSeq(Illumina)で配列決定した。約100,000~150,000の配列リードが、各ライブラリーから取得された。ライブラリー内でのscFvの選別前及び選別後の頻度を比較することにより、選別後でのその特定の抗体の濃縮倍率を得た。少なくとも4の濃縮倍率を有する11種の抗体を、完全な抗体として哺乳動物細胞で発現させ、インビトロで特徴付けした(表1)。
【0450】
実施例2:抗Siglec-5抗体のヒト化
以下の研究の目的は、マウス抗ヒトSiglec-5抗体:S5-172、S5-174、及びS5-G-03のヒト化バリアントを作製することであった。
【0451】
マウス抗Siglec-5抗体を、各マウス親抗体のCDRを、配列がマウス抗体に最も近いヒト生殖細胞系列フレームワークに移植することによってヒト化した。1つ以上のフレームワーク復帰突然変異を有する抗体も作製した。合計で、S5-172の6種のヒト化抗Siglec-5抗体(S5-172-H1~S5-172-H6)を作製した。S5-174の8種のヒト化抗Siglec-5抗体(S5-174-H1~S5-174-H8)を作製した。S5-G-03の9種のヒト化抗Siglec-5抗体(S5-G-03-H1~S5-G-03-H9)を作製した。
【0452】
抗体の重鎖可変領域HVR配列を、以下の表2に示す。抗体の軽鎖可変領域HVR配列を、以下の表3に示す。抗体の重鎖フレームワーク領域の配列を、以下の表4に示す。抗体の軽鎖フレームワーク領域の配列を、以下の表5に示す。抗体の重鎖可変領域配列を、以下の表6に示す(HVR配列に下線が引かれている)。抗体の軽鎖可変領域配列を、以下の表7に示す(HVR配列に下線が引かれている)。
【0453】
実施例3:抗Siglec-5抗体結合の特徴付け
以下の研究の目的は、上記のように作製された抗Siglec-5抗体の結合親和性を測定すること、及びそれらのSiglec-5を発現する細胞への結合を評価することであった。
【0454】
抗Siglec-5抗体の見かけの結合親和性を、標準的な技術による表面プラズモン共鳴(SPR)アレイにより測定した(Abdiche,et al.(2016)MAbs 8:264-277)。要約すると、抗Siglec-5抗体を、4つの異なる密度で(10μg/mL、2.5μg/mL、0.63μg/mL、及び0.16μg/mLの抗体濃度で)HC 30Mチップ上に固定化した。次いで、異なる濃度(0~500nM)のヒスチジンタグ付けされたヒトSiglec-5またはカニクイザルSiglec-5(NovoProtein)を、HBS-EP
+/1mg/mLのBSAランニング緩衝液中で抗Siglec-5抗体が捕捉された表面に結合させた(5分の注入時間、15分の解離時間)。Carterraソフトウェアを使用して動態解析を実行し、各抗体について会合及び解離速度定数(それぞれk
a及びk
d)を得た。見かけの親和定数(K
D)は、k
d/k
a比から計算した。抗Siglec-5抗体のヒトSiglec-5への結合の親和性測定結果を、以下の表8に示す。いずれの抗Siglec-5抗体も、カニクイザルSiglec-5タンパク質に結合しなかった。
【0455】
抗Siglec-5抗体を、ヒトSiglec-5(CHO-S5)またはヒトSiglec-14(CHO-S14)で安定的に形質移入されたCHO細胞に結合するそれらの能力について評価した。抗Siglec-5抗体を、初代ヒト好中球に結合するそれらの能力についても評価した。細胞を、暗下にて氷上で抗Siglec-5抗体の様々な希釈物と30分間インキュベートし、続いて、蛍光コンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体と30分インキュベートした。細胞を、FACS緩衝液(PBS+2%のFBS、2mMのEDTA)で2回洗浄し、フローサイトメトリーをBD FACS Cantoで実行した。データをFlowJoソフトウェア(Ashland、OR)を使用して解析した。結果を
図2A及び
図2Bに示す。図において、「hIgG1」及び「mIgG1」は、アイソタイプ対照抗体を指し、「S5/14 1A5」は、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する市販の抗体(BioLegend、クローン1A5)を指す。
【0456】
全ての抗Siglec-5抗体は、CHO-S5細胞及び好中球に結合したが、市販の抗体である1A5のみが実質的にCHO-S14への結合を示した。抗Siglec-5抗体であるS5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、及びS5-G-10は、CHO-S14への結合を実質的に示さなかった。これらの結果は、本開示の抗Siglec-5抗体が、Siglec-5に結合するが、Siglec-14を結合しないことを示した。総合すると、これらの結果は、本開示の抗Sigelc-5抗体が、Siglec-5に特異的であり、Siglec-14を認識しないことを示した。
【0457】
実施例4:抗Siglec-5抗体のエピトープビニング
以下の研究の目的は、抗Siglec-5特異的抗体及びSiglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体をエピトープビニングすることであった。
【0458】
抗Siglec-5抗体のエピトープビンを、標準的な技術によるSPRアレイによって決定した(Abdiche,et al.(2014)PLoS One 9:e92451)。要約すると、抗Siglec-5抗体を、抗原への強い結合をもたらすように、以前に決定された密度でHC 30Mチップ上に固定化した。Hisタグ付けされたヒトSiglec-5(50nM)を、競合抗体(200nM)と予め混合し、その後、HBS-EP+/1mg/mLのBSAランニング緩衝液中のそれらをアレイ上に5分間注入した。抗原:競合抗体の固定化抗体への結合は、固定化抗体及び競合抗体が2つの異なるエピトープビンに分類されることを示す。抗原:競合抗体の結合の欠如は、固定化抗体及び競合抗体が、同一のエピトープビンに分類されることを示す。
【0459】
抗Siglec-5抗体のエピトープビニングの結果を、以下の表9に示す。表9において、「7A5」及び「8A1」は、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体を指す。抗体7A5は、配列番号214のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号215のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する。抗体8A1は、配列番号216のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号217のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する。「1A5」、「194128」、「REA393」、「C2」、及び「E1」は、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する市販の抗体を指す(BioLegend、クローン1A5;R&D Systems、クローン194128;Miltenyi、クローンREA393;Santa Cruz、クローンC-2及びE-1)。本明細書に記載される抗Siglec-5特異的抗体は、エピトープビン3、4、及び5に分類される。Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体は、異なるエピトープビンである1及び2に分類される。
【0460】
抗Siglec-5抗体を、リガンドのSiglec-5受容体への結合と競合するそれらの能力について更に評価した。Siglec-5のリガンド結合ドメインは、Siglec-5及びSiglec-14のアミノ酸配列がほぼ同一である領域である、Siglec-5の最初の2つのIg様ドメイン内に含まれる(Angata,et al.,FASEB Journal,2006)。抗Siglec-5抗体のSiglec-5へのリガンド結合との競合を測定するために、固相赤血球(RBC)付着アッセイを、標準的なプロトコールに従って実施した(Kelm et al.,Current Biology,1994)。赤血球(RBC)が、シアル酸を含有する糖タンパク質で高度に修飾され、これにより、RBCの固定化Siglec-5への結合を遮断する抗Siglec-5抗体の能力が、リガンドへの干渉を決定するために使用され得る。要約すると、5μg/mlのSiglec-5-Fcを、Immunolonの96ウェルプレートに室温にて一晩コーティングし、PBSで洗浄し、次いで、結合緩衝液(0.25%のBSA、1mMのCaCl2を含有するPBS)で1時間ブロッキングした。抗Siglec-5抗体(0.5μg/mlまたは1.0μg/ml)を、室温にて1時間穏やかに振動させながら結合させた。結合していない抗体の除去後、赤血球を1ml当たり3.0×106個細胞の濃度で各ウェルに添加し、1時間室温でインキュベートした。次いで、結合していないRBCをPBSで3回慎重に洗浄し、結合したRBCの低浸透圧溶解のために水を各ウェルに添加した。プレートを-80℃に10分間移し、続いて、37℃に15分間移した。結合したRBCをペルオキシダーゼ活性により検出し、続いて、2N硫酸で反応を停止させた。シグナルを450nmで検出した。データを、抗体非存在下でのプレートに結合されたSiglec-5-FcへのRBCの結合に対するパーセントとして計算した。
【0461】
リガンド競合アッセイの結果を、
図3に示す。
図3において、「RBCのみ」は、抗体とインキュベートされなかった赤血球を指し、「mIgG1」及び「hIgG1」は、アイソタイプ対照抗体を指し、S5/14 1A5は、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する市販の抗体(BioLegend、クローン1A5)を指す。「抗体2G5」は、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体を指す。抗体2G5は、配列番号212のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号213のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を有する。
【0462】
本開示の抗Siglec-5特異的抗体(S5-172、S5-174、S5-175、S5-176、S5-182、S5-183、S5-190、S5-202、S5-G-03、S5-G-07、及びS5-G-10)は、試験されたいずれの抗体濃度でもSiglec-5へのリガンドの結合を遮断しなかった。対照的に、両方のSiglec-5及びSiglec-14に結合する抗体は、試験されたいずれの抗体濃度でもリガンド結合を遮断した。これらの結果は、本開示の抗Siglec-5抗体がSiglec-5へのリガンドの結合を遮断しないことを示した。
【0463】
実施例5:抗Siglec-5抗体により引き起こされたインビトロでのSiglec-5細胞表面レベルの減少
以下の研究の目的は、本開示の抗Siglec-5抗体がインビトロにおいて細胞のSiglec-5の細胞表面レベルを低減するかどうかを試験することであった。
【0464】
本開示の抗Siglec-5抗体を、Siglec-5で安定的に形質移入されたCHO細胞(CHO-S5)の表面Siglec-5レベルを低減するそれらの能力について試験した。CHO-S5細胞を、抗Siglec-5抗体(0.25μg/mL)と共に5%のCO
2下、37℃にて16~24時間インキュベートし、その後、Siglec-5の細胞表面発現をFACS分析により検出した。細胞を、検出用抗体である抗Siglec-5-PE(クローン1A5、Biolegend)と共に暗下にて氷上で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液(PBS+2%FBS、2mMのEDTA)中で2回洗浄し、フローサイトメトリーをBD FACS Cantoで実行した。データを、FlowJoソフトウェアを使用して解析した。残存するSiglec-5のパーセント細胞表面発現を、以下の式を使用して計算した:(試験抗体の存在下での1A5-PEのMFI)/(試験抗体の非存在下での1A5-PEのMFI)*100%。これらの研究の結果を
図4Aに示す。
図4Aに示すように、本開示の抗Siglec-5抗体は、組換えSiglec-5で安定的に形質移入されたCHO細胞の表面Siglec-5レベルを低減した。
【0465】
抗Siglec-5抗体を、ヒト初代免疫細胞の表面上のSiglec-5を低減するそれらの能力について更に評価した。B細胞を、Yamanaka,et al.(2009)Glycobiology 19:841-6に記載のようにSiglec-14ヌル多型についてホモ接合と同定された健常なヒトドナーから単離した。細胞を、抗Siglec-5抗体(0.016μg/mL)と共に16~24時間インキュベートし、その後、細胞表面上に残存するSiglec-5の量を上記のようにフローサイトメトリーにより定量化した。これらの研究の結果を
図4Bに示す。
図4Bに示すように、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビトロでヒトB細胞の表面Siglec-5レベルを低減した。
【0466】
本開示の抗Siglec-5抗体を、M0様、M1様、M2a様として分極化された初代ヒトマクロファージの表面上のSiglec-5レベルを低減するそれらの能力について更に評価した。要約すると、単球を、健常なヒトドナーから取得された新鮮血から単離し、0.1μg/mLのrHuM-CSFでマクロファージに7日間分化させた。7日目にマクロファージを、0.1μg/mLのrHuM-CSF中で培養するか、またはM1(10ng/mLのLPS+20ng/mLのIFNγの存在下で)もしくはM2a(50ng/mLのIL-4の存在下で)に2日間分極化させた。分極化マクロファージを、抗Siglec-5抗体(10μg/mL)で18時間処理し、その後、細胞表面上に残存するSiglec-5の量を、上記のようにフローサイトメトリーにより定量した。これらの研究の結果を
図4Cに示す。
図4Cに示すように、本開示の抗Siglec-5抗体は、インビトロでヒトマクロファージの表面Siglec-5レベルを低減した。更に結果は、本開示の抗Siglec-5抗体が、M0マクロファージ、M1マクロファージ、及びM2aマクロファージの表面Siglec-5レベルを低減したことを示した。
【0467】
本開示の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5のレベルを低減する異なる能力を示した。抗Siglec-5抗体S5-172、S5-174、S5-176、S5-190、及びS5-G-03は、CHO-S5形質移入体上及び初代免疫B細胞上の両方のSiglec-5レベルを低減し、抗Siglec-5抗体S5-G-03は、試験された他の抗Siglec-5抗体で観察されたものと比較してB細胞上のSiglec-5の最大の減少を示した。S5-175及びS5-202などの他の抗Siglec-5抗体は、Siglec-5の細胞表面レベル低減の程度がより小さかった。S5-182及びS5-183などの幾つかの抗Siglec-5抗体は、細胞表面レベルのSiglec-5のわずかな減少を示した。抗Siglec-5抗体S5-172、S5-174、及びS5-G-03は、3つ全てのマクロファージサブセット:M0、M1、及びM2aのSiglec-5細胞表面レベルを低減する同程度の能力を示した。まとめると、これらの結果は、Siglec-5及びSiglec-14の両方を認識し、Siglec-5の細胞レベルを低減するか、または減少させ、Siglec-5へのリガンドの結合を遮断する抗体と異なり、本開示の抗Siglec-5抗体が、Siglec-5の細胞レベルを低減するか、または減少させるが、Siglec-5へのリガンドの結合を遮断しないことを示した。
【0468】
実施例6:インビトロにおける抗Siglec-5抗体の存在下でのROS生成の特徴付け
以下の研究の目的は、本開示の抗Siglec-5抗体のヒト初代好中球による活性酸素種(ROS)生成に対する効果を評価することであった。
【0469】
ROS生成を評価するために、好中球を、EasySep(商標) direct human neutrophil kit(STEMCELL Technologies)での単離の2~4時間前に収集されたヒト血液試料から単離した。好中球を、0.5%のHycloneウシ胎仔血清(GE Healthcare Life Sciences)を補足したRPMI 1640(Mediatech)を含有する96ウェルプレート(Thermo Scientific)中に100,000個の細胞/ウェルで蒔いた。抗Siglec-5抗体を、1μg/mLで添加し、5%のCO2下、37℃で10分間インキュベートした。CM-H2DCFDA(Life Technologies)を、DMSOを用いて1mMで再構成し、PBS中に10μMまで希釈した。検出溶液を、2μMのCM-H2DCFDAの最終濃度で培地中の好中球に添加した。37℃での1時間のインキュベーション後、励起波長:495nm及び発光波長:530nmでの蛍光強度を、Synergy H1マイクロプレートリーダー(BioTek)またはSpectraMax i3xマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して測定した。全ての二重反復試料について蛍光強度値を平均した。抗体が添加されなかった試料の蛍光強度値を、全ての試料から減算した。
【0470】
ROS生成アッセイの結果を
図5に示す。
図5において、「hIgG1」は、アイソタイプ対照抗体を指す。
【0471】
図5の結果は、本開示のある種の抗Siglec-5抗体、例えば、S5-172、S5-174、及びS5-176が好中球により生成されるROSのレベルを増加させたことを示す。他の抗Siglec-5抗体、例えば、S5-175、S5-182、S5-183、S5-190、及びS5-202は、アイソタイプ対照抗体で観察されたものと比較して好中球により生成されるROSのレベルの減少を示した。
【0472】
実施例7:インビトロでの抗Siglec-5抗体の存在下でのNET形成の特徴付け
以下の研究の目的は、抗Siglec-5抗体の存在下でのヒト初代好中球による好中球細胞外トラップ(NET)形成を評価することであった。
【0473】
NET形成を評価するために、好中球を、EasySep(商標) direct human neutrophil kit(STEMCELL Technologies)での単離の2~4時間前に収集されたヒト血液から単離した。好中球を、0.5%のHycloneウシ胎仔血清(GE Healthcare Life Sciences)を補足したRPMI 1640(Mediatech)を含有する96ウェルプレート(Thermo Scientific)中に100,000個の細胞/ウェルで蒔いた。Siglec-5抗体を1μg/mLで添加し、5%のCO2下、37℃で一晩インキュベートした。SYTOX Green Nucleic Acid Stain(Life Technologies)をPBS中に25μMまで希釈した。検出溶液を、5μMのSYTOX(登録商標) Green Nucleic Acid Stainの最終濃度で培地中の好中球に添加した。37℃での5分間のインキュベーション後、励起波長:495nm及び発光波長:530nmでの蛍光強度を、Synergy H1マイクロプレートリーダー(BioTek)またはSpectraMax i3xマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して測定した。全ての二重反復試料について蛍光強度値を平均した。抗体が添加されなかった試料の蛍光強度値を、全ての試料から減算した。
【0474】
NET形成アッセイの結果を
図6に示す。
図6において、「hIgG1」は、アイソタイプ対照抗体を指す。
【0475】
図6の結果は、S5-172、S5-174、S5-175、S5-182、及びS5-183が含まれる本開示のある種の抗Siglec-5抗体が、アイソタイプ対照抗体で観察されたものと比較して好中球細胞外トラップの形成を増加させたことを示す。本開示の他の抗Siglec-5抗体、例えば、S5-176、S5-190、及びS5-202は、好中球細胞外トラップの形成の減少をもたらした。
【0476】
実施例8:インビトロでの抗Siglec-5抗体によるファゴサイトーシスの刺激
以下の研究の目的は、インビトロで初代ヒトマクロファージにおけるファゴサイトーシスを刺激または引き起こす抗Siglec-5抗体の能力を評価することであった。
【0477】
上記のように得た初代ヒトマクロファージを、抗Siglec-5抗体と共に一晩インキュベートし、続いて、抗CD20抗体によりオプソニン化されたCFSE標識ラージ細胞を3:1のマクロファージ:ラージ細胞の比率で添加した。24時間後、ラージ細胞をファゴサイトーシスしたマクロファージを示すCD14+ FITC+細胞を、フローサイトメトリーにより定量した。
【0478】
ファゴサイトーシスアッセイの結果を
図7に示す。抗Siglec-5抗体S5-G-03で処理されたM0マクロファージ、M1マクロファージ、及びM2aマクロファージは、アイソタイプ対照抗体で処理された場合より有意に強いファゴサイトーシスを示した。抗Siglec-5抗体S5-174は、M0マクロファージ及びM1マクロファージにおける増強されたファゴサイトーシスを示した。抗Siglec-5抗体S5-172は、M0マクロファージ及びM2aマクロファージにおいてファゴサイトーシスの中程度の増強をもたらした。これらの結果は、本開示の抗Siglec-5特異的抗体が、マクロファージによる標的細胞のファゴサイトーシスを増強することができることを示した。
【0479】
実施例9:ヒトSiglec-5遺伝子導入マウスにおけるSiglec-5発現の特徴付け
以下の研究の目的は、ヒトSiglec-5遺伝子導入マウスの免疫細胞上でのSiglec-5の発現を評価すること、及び循環免疫細胞及び腫瘍浸潤性免疫細胞上のSiglec-5の発現を比較することであった。
【0480】
以下の研究において、Siglec-5をコードするヒトゲノム遺伝子座を導入したマウスを使用した。Siglec-5トランスジェニックマウス及び対照野生型マウスの右後側腹部に、同系のMC38腫瘍株を接種した。腫瘍が約200~250mm3に到達した時に、血液及び腫瘍を収集し、Siglec-5の発現を解析した。要約すると、腫瘍をMiltenyi腫瘍解離キットを使用して解離させ、その後、細胞を70μmセルストレーナーに通し、PBS+2%のFBSで洗浄した。血液細胞及び解離した腫瘍細胞を、マウスCD11b、マウスGr1、マウスCD11c、マウスNK1.1、マウスCD3、マウスCD8、マウスCD19、及びSiglec-5特異的抗体(S5-190)を用いて暗下にて氷上で30分間染色した。細胞をFACS緩衝液(PBS+2%のFBS、2mMのEDTA)中で2回洗浄し、フローサイトメトリーをBD Fortessaで実行した。データを、FlowJoソフトウェアを使用して解析した。
【0481】
これらの研究の結果を
図8に示す。トランスジェニックマウス(TG)からの細胞上の抗Siglec-5抗体の平均蛍光強度(MFI)を、野生型マウス(WT)からの細胞上のMFIにより規定されたバックグラウンドと比較した。
【0482】
循環血液細胞のうち、CD11bhi Gr1hi(好中球及び顆粒球)細胞集団が、かなり高いレベルのSiglec-5を発現した。循環CD11bhi Gr1mid(単球)、CD11c+樹状細胞、またはNK1.1+NK細胞では、Siglec-5発現は、ほとんど観察されなかった。対照的に、腫瘍浸潤性免疫細胞は、かなりより多くのSiglec-5発現を示した。腫瘍浸潤性CD11bhi Gr1hi(MDSC)、CD11bhi Gr1mid(単球、マクロファージ)、CD11bmid Gr1hi、及びCD11c+樹状細胞も、バックグラウンドと比較して有意なSiglec-5発現を示した。対照的に、腫瘍浸潤性NK細胞は、有意なレベルのSiglec-5を発現しなかった。これらの結果は、Siglec-5が、腫瘍微小環境において上方調節され、おそらくがん病態に寄与することを示した。
【0483】
実施例10:Siglec-5抗体のエピトープマッピング
抗Siglec-5抗体を、ヒトSiglec-5アミノ酸配列全体にわたる15アミノ酸長または25アミノ酸長ペプチドに結合するそれらの能力について試験する。また抗Siglec-5抗体を、それらのSiglec-5結合領域を決定することにより参照Siglec-5抗体と比較する。
【0484】
抗Siglec-5抗体のエピトープビニングは、例えば、BiaCore T200機器で実行する。データ解析は、BiaCore T200 Evaluation Software(バージョン2.0)を使用して実行する。HBS-EP+(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/vのSurfactant P20、pH7.4)を、ランニング緩衝液として、及び試薬を調製するために使用する。ヒトSiglec-5-Fcキメラ(10nM;R&D Systems)を、抗ヒトFc IgGが固定化されたCM5センサーチップ(GE Healthcare)上に捕捉する(60秒の接触時間、30μL/分の流速、0秒の安定化時間)。次いで、試料のマウス抗Siglec-5抗体(100nM)を、捕捉されたSiglec-5の面上に流し(60秒の接触時間、30μL/分の流速、0秒の解離時間)、続いて、参照マウス抗Siglec-5抗体を流す(100nM、60秒の接触時間、30μL/分の流速、30秒の解離時間)。サイクルの間でチップ表面を10mMのグリシン-HCl(pH1.7)を使用して再生させる(60秒の接触時間、30μL/分の流速、60秒の安定化時間)。得られるSPRシグナルは、ブランクのフローセルで実行される測定からの反応の差として取得される。リガンドなし対照(0nMの抗原+100nMのIgG)は、センサーチップ表面への抗体の有意な非特異的結合を示さない。
【0485】
14残基の重複を有する直鎖15アミノ酸長ペプチドは、ヒトSiglec-5(配列番号1)の配列に基づいて合成される。加えて、1残基シフトした直鎖25アミノ酸長ペプチドは、ヒトSiglec-5(配列番号1)の配列に基づいて合成される。合成されたペプチドの各々への抗Siglec-5抗体の結合を、ELISAベースの方法を使用して試験する。このアッセイにおいて、ペプチドアレイは、一次抗体溶液とインキュベートされる(4℃で一晩)。洗浄後、ペプチドアレイを、抗体-ペルオキシダーゼコンジュゲート(SBA、カタログ番号2010-05)の1/1000希釈物と25℃で1時間インキュベートする。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質である2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸(ABTS)及び2μl/mlの3%H2O2を添加する。1時間後、発色を測定する。発色は、電荷結合素子(CCD)カメラ及び画像処理システムにより定量される。
【0486】
代替的に、標的分子のエピトープを再現するために、環状ペプチド及び組み合わせのペプチドのライブラリーが合成される。アミノ官能基化ポリプロピレン支持体は、商標登録された親水性ポリマー製剤でグラフト化し、続いて、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)をジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と共に使用してt-ブチロキシカルボニル-ヘキサメチレンジアミン(BocHMDA)と反応させ、その後、トリフルオロ酢酸(TFA)を使用してBoc基を切断することにより取得される。標準的なFmoc-ペプチド合成を使用して、特別に改造したJANUS液体ハンドリングステーション(Perkin Elmer)によりアミノ官能化固体支持体上にペプチドを合成する。
【0487】
Pepscanの登録商標されたChemically Linked Peptides on Scaffolds(CLIPS)技術を使用して、構造模倣物を合成する。CLIPS技術は、ペプチドを、単一ループ及び二重ループ構造にすることを可能にする。CLIPSテンプレートをシステイン残基に結合させる。ペプチド内の複数のシステインの側鎖を、1つまたは2つのCLIPSテンプレートに結合させる。例えば、mP2 CLIPS(2,6-ビス(ブロモメチル)ピリジン)の0.5mM溶液を、炭酸水素アンモニウム(20mM、pH7.8)/アセトニトリル(1:3(v/v))中に溶解させる。この溶液をペプチドアレイ上に添加する。CLIPSテンプレートは、ペプチドアレイ(3μlウェルの455ウェルプレート)の固相結合ペプチド内に存在する2つのシステインの側鎖に結合する。ペプチドアレイを完全に溶液で覆い、溶液中で30~60分間、穏やかに振盪させる。最後に、ペプチドアレイを過剰のH2Oで十分に洗浄し、PBS(pH7.2)中1%のSDS/0.1%のβ-メルカプトエタノールを含有する破壊緩衝液中で70℃にて30分間超音波処理し、続いて、H2O中で更に45分超音波処理した。T3 CLIPS(2,4,6-トリス(ブロモメチル)ピリジン)保有ペプチドを、上記と同様の方法で、しかし、3つのシステインを使用して作製する。
【0488】
環状ペプチド:17アミノ酸長の固定されたペプチド。2~16位は、標的配列由来の15アミノ酸である。天然のシステイン残基は、アセトアミドメチル基(ACM)により保護されている。1及び17位は、mP2 CLIPS部分により連結されているシステインである。組み合わせのペプチド(不連続模倣物):33アミノ酸長の固定されたペプチド。2~16位及び18~32位は、標的配列由来の15アミノ酸長ペプチドであり、天然のシステイン残基はACMにより保護されている。1、17、及び33位は、T3 CLIPS部分により連結されているシステインである。
【0489】
合成されたペプチドの各々への抗体の結合を、PEPSCANベースのELISAで試験する。ペプチドアレイを、実験に基づいて最適化された濃度の試験抗体及びブロッキング溶液(例えば、PBS/1%のTween80中の4%のウマ血清、5%の卵白アルブミン(w/v))から構成される試験抗体溶液とインキュベートする。ペプチドアレイを、試験抗体溶液と4℃で一晩インキュベートする。洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%のTween80)での十分な洗浄後、ペプチドアレイを、適切な抗体-ペルオキシダーゼコンジュゲートの1/1000希釈物と25℃で1時間インキュベートする。洗浄緩衝液での洗浄後、ペルオキシダーゼ基質である2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸(ABTS)及び2μl/mlの3%H2O2を添加する。1時間後、発色を測定する。発色は、電荷結合素子(CCD)カメラ及び画像処理システムにより定量される。
【0490】
あるいは、質量分析法が立体構造エピトープを同定するために使用される。抗Siglec-5抗体が結合するSiglec-5タンパク質上の立体構造エピトープの重要な残基を高分解能で決定するために、抗体/抗原複合体を重水素化架橋剤とインキュベートし、複数酵素によるタンパク質分解切断に供した。架橋したペプチドの濃縮後、試料を高分解能質量分析(nLC-Orbitrap MS)により解析し、生成されたデータを、XQuestソフトウェアを使用して解析する。具体的には、Siglec-5及び抗体の等モル溶液(各5μl中4μM)を混合することによって、Siglec-5 ECD/抗体複合体を作製する。得られる1μlの混合物を、アセトニトリル/水(1:1、v/v)、TFA0.1%中の再結晶化シナピン酸マトリックス(10mg/ml)(K200 MALDI Kit)から構成される1μlのマトリックスと混合する。混合後、1μlの各試料をMALDIプレート(SCOUT 384)上にスポットする。室温で結晶化した後、プレートをMALDI質量分析計に導入し、直ちに解析する。解析は3重反復で行う。単量体抗体、抗原、及び抗体、ならびに抗原/抗体複合体を表すピークを予想分子量で検出する。
【0491】
次いで、立体構造的結合においてエピトープが、タンパク質分解により生成された非構造化C1qペプチドと競合するかどうかを決定する。具体的には、抗Siglec-5細胞外ドメイン(ECD)/抗体複合体が直鎖ペプチドと競合することができるかどうかを決定するために、Siglec-5 ECD抗原を固定化ペプシンで消化する。10μMの濃度を有する25μlの抗原を、5μMの固定化ペプシンと混合し、室温で30分間インキュベートする。インキュベーション時間後、試料を遠心分離し、上澄みをピペットで採取する。タンパク質分解の完了は、リニアモードのHigh-Mass MALDI質量分析により制御される。ペプシンタンパク質分解は、1000~3500Daの範囲のペプチドを多量に得られるように最適化される。次に、タンパク質分解により生成された5μlの抗原ペプチドを、5μlの抗体(8μM)と混合し、37℃で6時間インキュベートする。抗体のSiglec-5抗原ペプチドとのインキュベーション後、最終混合物が2μM/2μM/2.5μMのSiglec-5/抗体/Siglec-5抗原ペプチドを含有するように、5μlの混合物を5μlのインタクトなSiglec-5抗原(4μM)と混合する。標準的な窒素レーザーを備えるCovalXのHM3相互作用モジュールを使用し、0~2000kDaの異なる質量範囲に焦点を置いて、MALDI ToF MS解析を実行する。
【0492】
解析では、以下のパラメータを質量分析計に適用する:リニア・ポジティブモード;イオン源1:20kV;イオン源2:17kV;パルスイオン抽出:400ns;HM3について:ゲイン電圧:3.14kV;ゲイン電圧:3.14kV;加速電圧:20kV。機器を較正するために、インスリン、BSA、及びIgGのクラスターでの外部較正を適用する。各試料について、3つのスポットを解析する(1スポット当たり300のレーザーショット数)。示されるスペクトルは、合計300のレーザーショット数に対応する。Complex Tracker解析ソフトウェア(バージョン2.0、CovalX Inc)を使用してMSデータを解析する。Siglec-5の抗Siglec-5抗体への結合について立体構造エピトープを同定するために、化学的架橋、High-Mass MALDI質量分析、及びLC-Orbitrap質量分析を使用して、抗原と抗体との間の相互作用界面を以下の手順に従って調べる。最終濃度が2μM/2μMの抗体/抗原混合物を得るために、5μlの抗原試料(濃度4μM)を5μlの抗体試料(濃度4μM)と混合する。混合物を37℃で180分間インキュベートする。第1のステップにおいて、1mgのスベリン酸ジスクシンイミジルH12(DSS-H12)架橋剤を1mgのスベリン酸ジスクシンイミジルD12(DSS-D12)架橋剤と混合する。調製した2mgを、DSS H12/D12の2mg/ml溶液を得るために、1mlのDMFと混合した。先に調製した10μlの抗体/抗原混合物を、調製した架橋剤d0/d12(2mg/ml)の1μl溶液と混合した。架橋反応を達成するために、溶液を室温で180分間インキュベートする。
【0493】
タンパク質分解を促進するために、タンパク質中に存在するジスルフィド結合を還元する必要があり得る。架橋済み試料を20μlの炭酸水素アンモニウム(25mM、pH8.3)と混合する。混合後、2.5μlのDTT(500mM)を溶液に添加する。次いで、混合物を55℃で1時間インキュベートする。インキュベーション後、暗室にて室温で1時間インキュベートする前に2.5μlのヨードアセトアミド(1M)を添加する。インキュベーション後、120μlのタンパク質分解に使用する緩衝液を添加することによって、溶液を1/5に希釈する。145μlの還元/アルキル化架橋済み試料を2μlのトリプシン(Sigma、T6567)と混合する。タンパク質分解混合物を37℃で一晩インキュベートする。a-キモトリプシンタンパク質分解の場合、タンパク質分解の緩衝液は、100mMのTris-HCL、10mMのCaCl2、pH7.8である。145μlの還元/アルキル化架橋済み複合体を2μlのα-キモトリプシン200μMと混合し、30℃で一晩インキュベートする。この解析では、LCをOrbitrap質量分析と組み合わせて使用する。Xquest(バージョン2.0)及びstavroxソフトウェアを使用して架橋ペプチドを解析する。次いで、ペプチド及び架橋アミノ酸を同定する。
【0494】
実施例11:ヒト化抗Siglec-5抗体は、組換えSiglec-5を発現するCHO細胞に結合する
以下の研究により、本開示のヒト化抗Siglec-5抗体の、組換えSiglec-5または組換えSiglec-14を発現するCHO細胞に対する結合動態を調査した。
【0495】
本開示の様々な抗Siglec-5抗体を、ヒトSiglec-5(CHO-S5)またはヒトSiglec-14(CHO-S14)で安定的に形質移入されたCHO細胞に結合するそれらの能力について評価した。細胞を抗Siglec-5抗体の様々な希釈物と暗下にて氷上で30分間インキュベートし、続いて、蛍光コンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体と30分インキュベートした。次いで、細胞をFACS緩衝液(PBS+2%のFBS、2mMのEDTA)で2回洗浄し、フローサイトメトリーをBD FACS Cantoで実行した。データをFlowJoソフトウェア(Ashland、OR)を使用して解析した。これらの研究の結果を
図9に示す。
図9において、hIgG1はアイソタイプ対照抗体を指し、S5-174-H2L1は抗体S5-174-H3を指し、S5-174-H3L1は抗体S5-174-H5を指し、S5-174-H3L2は抗体S5-174-H6を指し、S5-174-H4L1は抗体S5-174-H7を指し、S5-174-H4L2は抗体S5-174-H8を指し、S5-G03-H2L1は抗体S5-G-03-H4を指し、S5-G03-H2L2は抗体S5-G-03-H5を指し、S5-G03-H3L1は抗体S5-G-03-H7を指し、S5-G03-H3L2は抗体S5-G-03-H8を指し、S5-G03-H3L3は抗体S5-G-03-H9を指す。
【0496】
図9に示すように、全ての試験されたヒト化抗Siglec-5抗体は、CHO-S5細胞に結合した。試験されたヒト化抗Siglec-5抗体のいずれも、CHO-S14または対照CHO細胞に結合しなかった。ヒト化抗Siglec-5抗体は、親(非ヒト化)抗Siglec-5抗体を使用して観察されたのと同程度にCHO-S5細胞に結合した。これらの結果は、本開示のヒト化抗Siglec-5抗体がヒトSiglec-5に結合するが、ヒトSiglec-14に結合しないことを示した。総合すると、これらの結果は、本開示のヒト化抗Siglec-5抗体がSiglec-5に対する結合特異性を維持していることを示した。
【0497】
実施例12:ヒト化抗Siglec-5抗体は、Siglec-5細胞表面レベルを下方調節する
以下の研究により、本開示のヒト化抗Siglec-5抗体がインビトロで細胞のSiglec-5の細胞表面レベルを低減するかどうかを調査した。
【0498】
本開示の抗Siglec-5抗体を、Siglec-5で安定的に形質移入されたCHO細胞(CHO-S5)の表面Siglec-5レベルを低減するそれらの能力について試験した。CHO-S5細胞を、抗Siglec-5抗体と共に5%のCO2下、37℃にて16~24時間インキュベートし、その後、Siglec-5の細胞表面発現をFACS分析により検出した。細胞を、異なるビンの検出用抗体である抗Siglec-5-PE(クローン1A5、Biolegend)と共に暗下にて氷上で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液(PBS+2%FBS、2mMのEDTA)中で2回洗浄し、フローサイトメトリーをBD FACS Cantoで実行した。データを、FlowJoソフトウェアを使用して解析した。残存するSiglec-5のパーセント細胞表面発現を、以下の式を使用して計算した:(試験抗体の存在下での1A5-PEのMFI)/(試験抗体の非存在下での1A5-PEのMFI)*100%。
【0499】
これらの研究の結果を
図10に示す。
図10において、hIgG1はアイソタイプ対照抗体を指し、S5-174-H2L1は抗体S5-174-H3を指し、S5-174-H3L1は抗体S5-174-H5を指し、S5-174-H3L2は抗体S5-174-H6を指し、S5-174-H4L1は抗体S5-174-H7を指し、S5-174-H4L2は抗体S5-174-H8を指し、S5-G03-H2L1は抗体S5-G-03-H4を指し、S5-G03-H2L2は抗体S5-G-03-H5を指し、S5-G03-H3L1は抗体S5-G-03-H7を指し、S5-G03-H3L2は抗体S5-G-03-H8を指し、S5-G03-H3L3は抗体S5-G-03-H9を指す。
図10に示すように、本開示のヒト化抗Siglec-5抗体は、元の親抗Siglec-5抗体と比較して同程度にCHO Siglec-5細胞の表面Siglec-5レベルを低減した。
【0500】
実施例13:抗Siglec-5抗体は、CD86及びCCL4発現を引き起こす。
本開示の抗Siglec-5抗体を、初代ヒト骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の表面CD86レベルを増加させるそれらの能力について更に評価した。要約すると、単球を、2人の健常なヒトドナーから取得された新鮮血から単離し、0.1μg/mLのrHuGM-CSF及びrHuIL-6でマクロファージに7日間分化させた。7日目に、MDSCを抗Siglec-5抗体(様々な濃度、最高10μg/mL)で48時間処理し、その後、MDSC上のCD86(炎症促進性マーカー)の発現を、抗CD86(IT2.2)抗体を使用して定量化した。
【0501】
これらの研究の結果を、
図11(CD86)及び
図12(CCL4)に示す。
図11及び
図12において、S5-174-H3L2は抗体S5-174-H6を指し、S5-G03-H3L1は抗体S5-G-03-H7を指し、S5-7A5.3及びS5-8A1.3は、それぞれ、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体7A5及び8A1を指す。
【0502】
図11に示すように、抗Siglec-5抗体S5-G-03-H7は、MDSCでCD86の発現を引き起こした。加えて、48時間の抗体処理後の馴化培地を、NK細胞、単球、及び他の免疫細胞の化学誘引物質であるCCL4の発現の変化について評価した。CCL4発現を、Quantikine ELISAキット(R&D Systems)を使用して、またはHuman Chemokine Legendplex(Biolegend)により製造者のプロトコールに従って測定した。これらの研究の結果を
図12に示す。
図12に示すように、抗Siglec-5抗体S5-G-03-H7は、これらの細胞におけるCCL4発現も引き起こした。
【0503】
別の一連の実験で、追加の抗Siglec-5抗体を、上記と同様のプロトコールを使用してMDSCに対するそれらの活性について試験した。これらの研究の結果を
図13及び
図14に示す。
図13及び
図14において、S5-7A5.3及びS5-8A1.3は、それぞれ、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体7A5及び8A1を指し、S5-1A5は、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体(BioLegend)である。
【0504】
図13及び
図14に示すように、抗Siglec-5抗体S5-G10は、それぞれ、CD86及びCCL4の発現を引き起こした。一方、他の抗Siglec-5抗体または他の抗Siglec-5/14抗体は、効果を有さなかった。CD86及びCCL4発現に対するS5-G10の効果は、S5-G10のエピトープビンに関連する特有の性質に起因するものであり得る。
【0505】
実施例14:抗Siglec-5抗体のエピトープ
本開示のSiglec-5抗体を、ヒトSiglec-5細胞外ドメインの全体にわたる15アミノ酸長または25アミノ酸長ペプチドに結合するそれらの能力について試験した。また抗Siglec-5抗体を、それらのSiglec-5結合領域を決定することにより参照Siglec-5抗体と比較した。
【0506】
抗体のエピトープビニングを、BiaCore T200機器で実行した。データ解析を、BiaCore T200 Evaluation Software(バージョン2.0)を使用して実行した。HBS-EP+(10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%v/vのSurfactant P20、pH7.4)を、ランニング緩衝液として、及び試薬を調製するために使用した。ヒトSiglec-5-Fcキメラ(10nM;R&D Systems)を、抗ヒトFc IgGが固定化されたCM5センサーチップ(GE Healthcare)上に捕捉した(60秒の接触時間、30μL/分の流速、0秒の安定化時間)。次いで、試料のマウス抗Siglec5抗体(100nM)を、捕捉されたSiglec5の面上に流し(60秒の接触時間、30μL/分の流速、0秒の解離時間)、続いて、参照マウス抗Siglec5抗体を流した(100nM、60秒の接触時間、30μL/分の流速、30秒の解離時間)。サイクルの間でチップ表面を10mMのグリシン-HCl(pH1.7)を使用して再生させた(60秒の接触時間、30μL/分の流速、60秒の安定化時間)。得られたSPRシグナルは、ブランクのフローセルで実行される測定からの反応の差として取得された。リガンドなし対照(0nMの抗原+100nMのIgG)は、センサーチップ表面への抗体の有意な非特異的結合を示さなかった。
【0507】
14残基の重複を有する直鎖15アミノ酸長ペプチドを、ヒトSiglec-5(配列番号1)の配列に基づいて合成した。加えて、1残基シフトした直鎖25アミノ酸長ペプチドを、ヒトSiglec-5(配列番号1)の配列に基づいて合成した。合成されたペプチドの各々へのSiglec-5抗体の結合を、ELISAベースの方法で試験した。このアッセイにおいて、ペプチドアレイを、一次抗体溶液とインキュベートした(4℃で一晩)。洗浄後、ペプチドアレイを、抗体-ペルオキシダーゼコンジュゲート(SBA、カタログ番号2010-05)の1/1000希釈物と25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質である2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸(ABTS)及び2μl/mlの3%H2O2を添加した。1時間後、発色を測定した。発色を、電荷結合素子(CCD)カメラ及び画像処理システムにより定量した。
【0508】
代替的に、標的分子のエピトープを再現するために、環状ペプチド及び組み合わせのペプチドのライブラリーを合成した。アミノ官能基化ポリプロピレン支持体を、商標登録された親水性ポリマー製剤でグラフト化し、続いて、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)をジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と共に使用してt-ブチロキシカルボニル-ヘキサメチレンジアミン(BocHMDA)と反応させ、その後、トリフルオロ酢酸(TFA)を使用してBoc基を切断することにより取得した。標準的なFmoc-ペプチド合成を使用して、特別に改造したJANUS液体ハンドリングステーション(Perkin Elmer)によりアミノ官能化固体支持体上にペプチドを合成した。
【0509】
Pepscanの登録商標されたChemically Linked Peptides on Scaffolds(CLIPS)技術を使用して、構造模倣物を合成した。CLIPS技術は、ペプチドを、単一ループ及び二重ループ構造にすることを可能にする。CLIPSテンプレートをシステイン残基に結合させる。ペプチド内の複数のシステインの側鎖を、1つまたは2つのCLIPSテンプレートに結合させる。例えば、mP2 CLIPS(2,6-ビス(ブロモメチル)ピリジン)の0.5mM溶液を、炭酸水素アンモニウム(20mM、pH7.8)/アセトニトリル(1:3(v/v))中に溶解させる。この溶液をペプチドアレイ上に添加する。CLIPSテンプレートは、ペプチドアレイ(3μlウェルの455ウェルプレート)の固相結合ペプチド内に存在する2つのシステインの側鎖に結合する。ペプチドアレイを完全に溶液で覆い、溶液中で30~60分間、穏やかに振盪させる。最後に、ペプチドアレイを過剰のH2Oで十分に洗浄し、PBS(pH7.2)中1%のSDS/0.1%のβ-メルカプトエタノールを含有する破壊緩衝液中で70℃にて30分間超音波処理し、続いて、H2O中で更に45分超音波処理した。T3 CLIPS(2,4,6-トリス(ブロモメチル)ピリジン)保有ペプチドを、同様の方法で、しかし、今度は3つのシステインを用いて作製した。
【0510】
環状ペプチド:17アミノ酸長の固定されたペプチド。2~16位は、標的配列由来の15アミノ酸である。天然のシステイン残基は、アセトアミドメチル基(ACM)により保護されている。1及び17位は、mP2 CLIPS部分により連結されているシステインである。組み合わせのペプチド(不連続模倣物):33アミノ酸長の固定されたペプチド。2~16位及び18~32位は、標的配列由来の15アミノ酸長ペプチドであり、天然のシステイン残基はACMにより保護されている。1、17、及び33位は、T3 CLIPS部分により連結されているシステインである。
【0511】
合成されたペプチドの各々への抗体の結合を、PEPSCANベースのELISAで試験する。ペプチドアレイを、実験に基づいて最適化された濃度の試験抗体及びブロッキング溶液(例えば、PBS/1%のTween80中の4%のウマ血清、5%の卵白アルブミン(w/v))から構成される試験抗体溶液とインキュベートする。ペプチドアレイを、試験抗体溶液と4℃で一晩インキュベートする。洗浄緩衝液(1×PBS、0.05%のTween80)での十分な洗浄後、ペプチドアレイを、適切な抗体-ペルオキシダーゼコンジュゲートの1/1000希釈物と25℃で1時間インキュベートする。洗浄緩衝液での洗浄後、ペルオキシダーゼ基質である2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸(ABTS)及び2μl/mlの3%H2O2を添加する。1時間後、発色を測定する。発色は、電荷結合素子(CCD)カメラ及び画像処理システムにより定量される。
【0512】
下記の表10に示す通り、抗体S5-G-10、S5-G-07、S5-PN202、S5/14 C2、S5/14-8A1.3、S5/14-REA383は、Siglec-5の細胞外ドメイン(IgVドメイン及び第2のIg様C2型ドメイン近位を含む)内の直鎖ペプチドに対する強い結合を示した。表10に示す通り、抗体S5/14-REA383により認識されるペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基73~88に相当し、アミノ酸配列:PETQGRF(配列番号224)を有する。抗体S5/14-8A1.3により認識されるペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基28~42に相当し、アミノ酸配列PCSFSYPWRSWYSS(配列番号223)を有する。抗体S5/14-C2により認識されるペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基136~142に相当し、アミノ酸配列DIHFLEP(配列番号222)を有する。
【0513】
抗Siglec-5抗体S5-PN 202により認識されるペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基268~278に相当し、アミノ酸配列LSWFQGSPALN(配列番号221)を有する。抗Siglec-5抗体S5-G-07により認識されるペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基226~244に相当し、アミノ酸配列QTITIFRNGIALEILQNTS(配列番号220)を有する。抗Siglec-5抗体S5-G-10により認識されるペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基228~238に相当し、アミノ酸配列ITIFRNGIALE(配列番号219)を有する。まとめると、これらの結果は、本開示のSiglec-5特異的な抗Siglec-5抗体が、Siglec-5及びSiglec-14の両方に結合する抗体のSiglec-5内の領域とは異なるSiglec-5内の領域に結合することを示した。
【配列表】