(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】PD-1に結合する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240808BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240808BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240808BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240808BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240808BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240808BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240808BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240808BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 T
A61P35/00
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021514466
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 CN2019087287
(87)【国際公開番号】W WO2019219064
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-16
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520447787
【氏名又は名称】ナンジン リーズ バイオラブズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】カン,シャオチャン
(72)【発明者】
【氏名】ライ,ショウペン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、シャオ
【審査官】三谷 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/019896(WO,A1)
【文献】特表2017-505125(JP,A)
【文献】特開2006-340714(JP,A)
【文献】特表2017-530722(JP,A)
【文献】特表2016-523265(JP,A)
【文献】国際公開第2017/210617(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号8~15のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか又はから成る重鎖可変領域を含み、且つ、
配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はから成る軽鎖可変領域を含み、
PD-1に結合する、
分離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
重鎖を含み、該重鎖が、配列番号21~
36のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1
に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
軽鎖を含み、該軽鎖が、配列番号39に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1
または2に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
重鎖及び軽鎖を含み、該重鎖が、配列番号21~
36のいずれか1つのアミノ酸配列を含み、且つ、該軽鎖が、配列番号39のアミノ酸配列を含む、請求項1~
3のいずれか1項
に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
(a)ヒトPD-1に結合する、(b)サルPD-1に結合する、(c)マウスPD-1に結合しない、(d)CD28と交差反応しない、(e)ICOSと交差反応しない、(f)BTLAと交差反応しない、(g)CTLA-4と交差反応しない、(h)PD-1-PD-L1相互作用を阻害する、(i)PD-1-PD-L2相互作用を阻害する、(j)T細胞によるIL-2の放出を誘発する、(k)T細胞によるIFNγの放出を誘発する、(l)PD-1発現細胞に対してADCCを誘発しない、及び/又は(m)PD-1発現細胞に対してCDCを誘発しない、請求項1~
4のいずれか1項
に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
ヒト抗体
又はキメラ抗体である、請求項1~
5のいずれか1項
に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
IgG1又はIgG4アイソタイプである、請求項1~
6のいずれか1項
に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項8】
二重特異性抗体である、請求項1~
7のいずれか1項
に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項9】
抗原結合部分が、(i)Fab断片;(ii)F(ab')
2断片;
並びに(iii)抗体の単一アームのV
L及びV
Hドメインから成るFv断片から選択される、請求項1~
8のいずれか1項
に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項
に記載の抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子。
【請求項11】
請求項
10に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項12】
請求項
10に記載の核酸分子又は請求項
11に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項13】
請求項1~
9のいずれか1項
に記載の抗体又はその抗原結合部分を含む免疫結合体であって、抗体-薬物結合体である前記免疫結合体。
【請求項14】
請求項1~
9のいずれか1項
に記載の抗体若しくはその抗原結合部分、又は請求項
13記載の免疫結合体と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項15】
抗腫瘍剤をさらに含む、請求項
14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
腫瘍の成長の阻害において使用するための、請求項
14又は
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記腫瘍が、結腸直腸腺癌、肺癌、リンパ腫、中皮腫、黒色腫、及び腎細胞癌から成る群より選択される、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が、少なくとも1つの追加の作用物質と併用するためのものである、請求項
14~
17のいずれか1項
に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記作用物質が、免疫刺激抗体、サイトカイン及び共刺激抗体から選択される、請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記免疫刺激抗体が、抗LAG-3抗体、抗PD-L1抗体、抗TIM-3抗体又は抗CTLA-4抗体であり、且つ/又は
前記サイトカインが、IL-2又はIL-21であり、且つ/又は
前記共刺激抗体が、抗CD137又は抗GITR抗体である、
請求項
19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
腫瘍の成長を阻害するための医薬の調製における、請求項1~
9のいずれか1項
に記載の抗体若しくはその抗原結合部分、又は請求項
13に記載の免疫結合体、又は請求項
14若しくは
15に記載の医薬組成物の使用。
【請求項22】
前記腫瘍が、結腸直腸腺癌、肺癌、リンパ腫、中皮腫、黒色腫、及び腎細胞癌から成る群より選択される、請求項
21に記載の使用。
【請求項23】
前記医薬が、少なくとも1つの追加の作用物質と組み合わせて投与されるものであり、前記作用物質が、免疫刺激抗体、サイトカイン及び共刺激抗体から選択される、請求項
21または
22に記載の使用。
【請求項24】
前記免疫刺激抗体が、抗LAG-3抗体、抗PD-L1抗体、抗TIM-3抗体又は抗CTLA-4抗体であり、且つ/又は
前記サイトカインが、IL-2又はIL-21であり、且つ/又は
前記共刺激抗体が、抗CD137又は抗GITR抗体である、
請求項
23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、分離されたモノクローナル抗体、特に、高親和性及び高機能性でヒトPD-1に特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。抗体をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞、及び抗体を発現させるための方法もまた提供される。本発明はさらに、抗体を含む免疫結合体、二重特異性分子、及び医薬組成物、並びに本発明の抗PD-1抗体を使用する診断及び治療方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
治療用抗体、特に、特定の疾患に関連する細胞タンパク質を標的化するモノクローナル抗体は、製薬産業の最も急成長している分野の1つである。
【0003】
1つのこのような標的タンパク質は、PDCD1遺伝子によってコードされる、PD-1(CD279)としても知られているプログラム細胞死タンパク質1であり(Ishida Y,et al.,EMBO J 11:3887-95(1992)、Francisco LM,et al.,Immunological Reviews.236:219-42(2010))、これは、T細胞調節因子のCD28ファミリーのメンバーであるがモノマーとして存在しており、他のCD28ファミリーメンバーにおいて特徴的な対合していないシステイン残基を欠いている。
【0004】
PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、活性化したB細胞、T細胞、及び骨髄細胞上で発現する、55kDaのI型膜貫通タンパク質である(Keir ME,et al.,Annu Rev Immunol 26:677-704(2008)、Agata et al.(1996)Int Immunol 8:765-72、Okazaki et al.(2002)Curr.Opin.Immunol.14:391779-82、Bennett et al.(2003)J Immunol 170:711-8)。PD-1は、2つのリガンド、PD-L1及びPD-L2に結合する(Dong H,et al.,Nat Med 5:1365-9(1999)、Latchman Y,et al.,Nat Immunol 2:261-8(2001))。そのリガンドに結合すると、PD-1は、T細胞受容体(TCR)のシグナル伝達を阻害し、免疫刺激性サイトカインの分泌及び生存タンパク質の発現を下方調節することが見出されている(Keir ME,et al.,Annu Rev Immunol 26:677-704(2008)、Dong H,et al.,Nat Med 5:1365-9(1999))。
【0005】
前臨床研究は、単独で(Hirano F,et al.,Cancer Res 65:1089-96(2005))又は他の免疫チェックポイント阻害と組み合わせて(Woo SR,et al.,Cancer Res 72(4):917-27(2012))PD-1経路のシグナル伝達を無くした後の、腫瘍の退行又は宿主の生存の延長を示した。
【0006】
PD-1受容体を標的化する多くのがん免疫療法剤が開発されている。1つのこのような抗PD-1抗体は、ニボルマブ(Bristol Myers SquibbによってOPDIVO(登録商標)という商品名で販売されている)であり、これは、全部で296人の患者を用いた臨床試験において、非小細胞肺がん、黒色腫、及び腎細胞がんにおいて完全奏効又は部分奏効をもたらした(Topalian SL et al.(2012)The New England Journal of Medicine.366(26):2443-54)。ニボルマブは、日本において2014年に、及び米国FDAによって2014年に、転移性黒色腫の治療について認可された。別の抗PD-1抗体である、PD-1受容体を標的化するペムブロリズマブ(KEYTRUDATM、MK-3475、Merck)もまた、米国FDAによって2014年に、転移性黒色腫の治療について認可された。これは、米国での臨床試験において、肺がん、リンパ腫、及び中皮腫に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
既に開発され、認可されている抗PD-1抗体があるものの、結合親和性及び他の望ましい薬学的特性が増強した、さらなるモノクローナル抗体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヒト又はサルのPD-1に結合する分離されたモノクローナル抗体、例えばヒトモノクローナル抗体を提供する。
【0009】
一態様において、本発明は、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む重鎖可変領域を有する分離されたモノクローナル抗体(例えば、ヒト抗体)又はその抗原結合部分であって、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域が、
(1)それぞれ、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3、又は
(2)それぞれ、配列番号1、配列番号2、及び配列番号4
に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
抗体又はその抗原結合断片がPD-1に結合する、分離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。これらのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号40から43の核酸配列によってコードされ得る。
【0010】
一態様において、本発明の分離されたモノクローナル抗体(例えば、ヒト抗体)又はその抗原結合部分は、配列番号8から16のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1に結合する。これらのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号44から52の核酸配列によってコードされ得る。
【0011】
本発明のモノクローナル抗体又はその抗原結合部分は、一実施形態において、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む軽鎖可変領域を含み、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域は、それぞれ配列番号5、6、及び7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1に結合する。これらのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号53から55の核酸配列によってコードされ得る。
【0012】
一態様において、本発明の分離されたモノクローナル抗体(例えば、ヒト抗体)又はその抗原結合部分は、配列番号17に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1に結合する。これらのアミノ酸配列は、配列番号56の核酸配列によってコードされ得る。
【0013】
一態様において、本発明の分離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分は、各々がCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3は、(1)それぞれ、配列番号1、2、3、5、6、及び7、又は(2)それぞれ、配列番号1、2、4、5、6、及び7に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1に結合する。
【0014】
一実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、(1)それぞれ、配列番号8及び17、(2)それぞれ、配列番号9及び17、(3)それぞれ、配列番号10及び17、(4)それぞれ、配列番号11及び17、(5)それぞれ、配列番号12及び17、(6)それぞれ、配列番号13及び17、(7)それぞれ、配列番号14及び17、(8)それぞれ、配列番号15及び17、又は(9)それぞれ、配列番号16及び17に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1に結合する。
【0015】
一実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、重鎖及び軽鎖を含み、重鎖は、上記のような重鎖可変領域及び配列番号18又は19で示される重鎖定常領域を含み、軽鎖は、上記のような軽鎖可変領域及び配列番号20で示される軽鎖定常領域を含む。配列番号18から20のアミノ酸配列は、配列番号57から59の核酸配列によってコードされ得る。
【0016】
一実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、ジスルフィド結合によって相互接続している重鎖及び軽鎖を含み、これらは、(1)それぞれ、配列番号21及び39、(2)それぞれ、配列番号22及び39、(3)それぞれ、配列番号23及び39、(4)それぞれ、配列番号24及び39、(5)それぞれ、配列番号25及び39、(6)それぞれ、配列番号26及び39、(7)それぞれ、配列番号27及び39、(8)それぞれ、配列番号28及び39、(9)それぞれ、配列番号29及び39、(10)それぞれ、配列番号30及び39、(11)それぞれ、配列番号31及び39、(12)それぞれ、配列番号32及び39、(13)それぞれ、配列番号33及び39、(14)それぞれ、配列番号34及び39、(15)それぞれ、配列番号35及び39、(16)それぞれ、配列番号36及び39、(17)それぞれ、配列番号37及び39、又は(18)それぞれ、配列番号38及び39に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1に結合する。
【0017】
本発明の抗体又はその抗原結合部分は、先行技術の抗PD-1抗体、例えばニボルマブと比較して、ヒトPD-1又はサルPD-1に対する同等の又はさらに良好な結合親和性/能力を有する。さらに、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、T細胞を誘発して、より多くのIL-2及びIFNγを放出させ、先行技術の抗PD-1抗体、例えばニボルマブより良好なインビボでの抗腫瘍効果をもたらす。
【0018】
具体的には、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、およそ1.406×10-9M以下のKDでヒトPD-1に結合し、PD-1へのPD-L1/PD-L2の結合を阻害する。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、マウスPD-1に結合せず、CD28、ICOS、BTLA、又はCTLA-4と交差反応しない。さらに、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、より高いMFI値でヒト及びカニクイザルPBMC上に発現されたPD-1に、より強力に結合し、T細胞が先行技術の抗PD-1抗体、例えばニボルマブよりも、高いレベルのIL-2分泌及びIFNγを放出することを誘発する。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、抗原特異的な記憶応答を刺激し、及び/又は抗体応答を刺激する。
【0019】
本発明の抗体は、例えばIgG1又はIgG4アイソタイプの、例えば完全長抗体であり得る。或いは、抗体は、抗体断片、例えばFab断片若しくはF(ab’)2断片、又は一本鎖抗体であり得る。重鎖定常領域は、空間的に、抗PD-1抗体がPD-1発現細胞に対して抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発しないように設計される。例えば、ヒトIgG1重鎖は、ADCC機能又はCDC機能を排除するためのL234A、L235A、D265A、及び/又はP329A(EUナンバリング)突然変異を有し得る。本発明の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体、例えばモノクローナル抗体であり得る。
【0020】
本発明はまた、治療薬、例えば放射性同位体に連結している、本発明の抗体又はその抗原結合部分を含む免疫結合体を提供する。本発明はまた、前記抗体と異なる結合特異性を有する第2の機能的部分(例えば二次抗体)又はその抗原結合部分に連結した、本発明の抗体又はその抗原結合部分を含む、二重特異性分子を提供する。
【0021】
本発明の抗体若しくはその抗原結合部分、又は免疫結合体、又は二重特異性分子、及び薬学的に許容される担体を含む組成物もまた提供される。
【0022】
本発明の抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、並びに、このような核酸を含む発現ベクター、及びこのような発現ベクターを含む宿主細胞もまた、本発明に包含される。発現ベクターを含む宿主細胞を使用して抗PD-1抗体を調製するための方法もまた提供され、この方法は、(i)宿主細胞において抗体を発現させるステップ、及び(ii)宿主細胞から抗体を分離するステップを含む。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、被験体における免疫応答が調節されるように、本発明の抗体又はその抗原結合部分を被験体に投与することを含む、被験体において免疫応答を調節する方法を提供する。好ましくは、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、被験体における免疫応答を増強する、刺激する、又は増大させる。さらなる態様において、本発明は、治療有効量の本発明の抗体又はその抗原結合部分を被験体に投与することを含む、被験体における腫瘍細胞の成長を阻害する方法を提供する。一実施形態において、腫瘍は、肺がん、リンパ腫、中皮腫、黒色腫、又は腎細胞がんからなる群から選択される充実性腫瘍である。別の態様において、本発明は、治療有効量の本発明の抗体又はその抗原結合部分を被験体に投与することを含む、被験体における感染性疾患を治療する方法を提供する。別の態様において、本方法は、本発明の免疫結合体、二重特異性分子、又は代替として、被験体において本発明の免疫結合体、二重特異性分子を発現し得る核酸分子を投与することを含む。
【0024】
さらに、本発明は、被験体における抗原に対する免疫応答が増強するように、(i)抗原、及び(ii)抗PD-1抗体又はその抗原結合部分を被験体に投与することを含む、被験体における抗原に対する免疫応答を増強させる方法を提供する。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、又は病原体由来の抗原であり得る。
【0025】
本発明の抗体は、少なくとも1つのさらなる作用物質、例えば、免疫刺激抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗TIM-3抗体、及び/若しくは抗CTLA-4抗体)、サイトカイン(例えば、IL-2及び/若しくはIL-21)、又は共刺激抗体(例えば、抗CD137及び/若しくは抗GITR抗体)と組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明の他の特性及び利点は、以下の詳細な説明及び実施例から明らかとなるであろうが、これらは、限定するものと解釈されるべきではない。本願の全体で引用されている全ての参考文献、GenBankエントリー、特許、及び公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】抗PD-1抗体21F12のHPLCプロファイルを示す図である。
【
図2A-2D】ヒトPD-1への抗PD-1抗体21F12、19E11(A)、21F12-1F6
-IgG1、21F12-1B12(B)、21F12-1E11、21F12-1E10、21F12-3G1(C)、及び21F12-1E11、21F12-1B12、21F12-2E1、21F12-2H7(D)の結合能力を示す図である。
【
図3A-3C】ヒトPD-1(A)、カニクイザルPD-1(B)、及びマウスPD-1(C)への抗PD-1抗体21F12-1F6の結合能力を示す図である。
【
図4A-4D】ヒトCD28(A)、ヒトICOS(B)、ヒトBTLA(C)、及びヒトCTLA4(D)に対する抗PD-1抗体21F12-1F6の交差反応性を示す図である。
【
図5A-5F】ヒトPD-1/PD-L1相互作用に対する抗PD-1抗体
21F
12-1F6(A)、21F12、21F12-3G1(B)、21F12、21F12-1E11、21F12-1B12、21F12-2E1、21F12-2H7(C)、21F12-1C4、21F12(D)、及び21F12-1E10、21F12(E)の遮断能力、並びに、ヒトPD-1/PD-L2相互作用(F)に対する抗PD-1抗体
21F12-1F6-IgG1の遮断能力を示す図である。
【
図6A-6B】CHO-K1-PD-1細胞で発現しているPD-1への抗PD-1抗体21F12-1F6(A)、21F12、21F12-1C4、21F12-1E10、21F12-1B12、及び21F12-3G1(B)の結合能力を示す図である。
【
図7A-7B】ヒトPBMC(A)又はカニクイザルPBMC(B)で発現しているPD-1への抗PD-1抗体21F12-1F6の結合能力を示す図である。
【
図8A-8B】抗PD-1抗体21F12-1F6がヒトT細胞によるIL2(A)及び
IFNγ(B)の放出を誘発することを示す図である。
【
図9】Jurkat-NFAT-PD1レポーター遺伝子システムにおけるPD-1-PD-L1相互作用に対する抗PD-1抗体21F12-1F6の遮断能力を示す図である。
【
図10】FcγRIへの抗体21F12-1F6の結合能力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示をより容易に理解するために、特定の用語を最初に定義する。追加の定義は、詳細な説明全体で記載されている。
【0029】
用語「PD-1」とは、プログラム細胞死タンパク質1を指す。用語「PD-1」は、バリアント、アイソフォーム、ホモログ、オルソログ、及びパラログを含む。例えば、ヒトPD-1タンパク質に特異的な抗体は、特定のケースにおいて、ヒト以外の種、例えばカニクイザルに由来するPD-1タンパク質と交差反応し得る。他の実施形態において、ヒトPD-1タンパク質に特異的な抗体は、ヒトPD-1タンパク質に完全に特異的であり得、他の種に対して交差反応性を示さないか若しくは他のタイプの交差反応性を示し得、又は特定の他の種(全ての他の種ではなく)に由来するPD-1と交差反応し得る。
【0030】
用語「ヒトPD-1」とは、PD-1のヒト配列、例えば、Genbank受託番号NP_005009.2を有するヒトPD-1の完全なアミノ酸配列を指す。
【0031】
用語「免疫応答」とは、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び前記細胞又は肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体、サイトカイン及び補体を含む)の作用を指す。当該作用は、侵入した病原体、病原体に感染した細胞及び組織、がん細胞、又は正常なヒト細胞又は組織(自己免疫若しくは病的炎症の場合)に対する選択的な損傷、破壊、及び人体からの排除をもたらす。
【0032】
「抗原特異的T細胞応答」とは、T細胞が特異的な抗原でT細胞を刺激することにより引き起こされるT細胞による応答を指す。抗原特異的刺激時のT細胞による応答の非限定的な例は、増殖及びサイトカイン産生(例えば、IL-2産生)を含む。
【0033】
本明細書において、用語「抗体」は、全抗体及びそのいずれかの抗原結合断片(即ち、「抗原結合部分」)又は一本鎖を含む。全抗体は、ジスルフィド結合によって互いに結合された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(ここで、VHと略される)及び重鎖定常領域(ここでCHと略される)から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインから構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここで、VLと略される)及び軽鎖定常領域(ここで、CLと略される)から構成される。軽鎖定常領域は、CLの1つのドメインから構成される。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在する領域にさらに細分化することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置される3つのCDR及び4つのFRで構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、宿主組織又は因子(免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む)への免疫グロブリンの結合を媒介できる。時として、重鎖定常領域は、このような機能を排除するように修飾される。
【0034】
本明細書で使用されている抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)との用語とは、抗原(例えば、PD-1タンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって達成できることが示されている。抗体の「抗原結合部分」との用語に含まれる結合断片の例には、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインから構成される一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド橋により結合された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)VH及びCH1ドメインから構成されるFd断片、(iv)単一アームのVL及びVHドメインから構成されるFv断片、(v)VHドメインから構成されるdAb断片(Wardet al.,(1989)Nature 341:544-546)、(vi)分離された相補性決定領域(CDR)、並びに(vii)単一の可変ドメイン及び2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域であるナノボディを含む。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え法により、それらを単一タンパク質鎖にすることができる合成リンカーを用いて結合することができる。前記単一タンパク質鎖において、VL及びVHがペアになって一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られている。例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照)を形成する。このような一本鎖抗体も抗体の「抗原結合部分」との用語に含まれることが意図されてる。これらの断片は、当業者に知られている従来の技術を使用して得られ、断片は、インタクト抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0035】
本明細書で使用されている「分離(単離)された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図している(例えば、PD-1タンパク質に特異的に結合する分離された抗体は、PD-1タンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかし、ヒトPD-1タンパク質に特異的に結合する分離された抗体は、他の抗原(例えば、他の種に由来するPD-1タンパク質)に対して交差反応性を有してもよい。さらに、分離された抗体は、他の細胞物質及び/及び化学物質を実質的に含まない。
【0036】
本明細書で使用されている用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」とは、単一分子組成の抗体分子の調製を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0037】
用語「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0038】
用語「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」は、本明細書では用語「抗原に特異的に結合する抗体」と互換的に使用される。
【0039】
用語「抗体誘導体」とは、抗体の修飾型(例えば、抗体と別の薬剤及び抗体との複合体)のいずれかを指す。
【0040】
本明細書において、「ヒトPD-1に特異的に結合する」抗体は、非PD-1タンパク質に実質的に結合せず、ヒトPD-1タンパク質(例えば、1つの以上の非ヒト種に由来するPD-1タンパク質)に結合する抗体を指すことを意図している。好ましくは、抗体は、「高親和性」で、すなわち、1×10-8M以下、及びより好ましくは5×10-9M以下のKDで、ヒトPD-1タンパク質に結合する。
【0041】
本明細書において、タンパク質又は細胞に「実質的に結合しない」という用語は、タンパク質又は細胞に結合しないか、又は高親和性で結合しないことを意味する。即ち、1x10-6M以上、好ましくは1x10-5M以上、より好ましくは1x10-4M以上、さらに好ましくは1x10-3M以上、さらにより好ましくは1x10-2M以上のKDでタンパク質又は細胞に結合する。
【0042】
本明細書において、用語「Kassoc」又は「Ka」は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことを意図している。また、用語「Kdis」又は「Kd」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことを意図している。用語「KD」は、解離定数であり、Kaに対するKdの比(即ち、Kd/Ka)から得られanモル濃度(M)で示される。抗体のKD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して決定することができる。好ましくは、抗体のKDの決定は、表面プラズモン共鳴、より好ましくは、バイオセンサーシステム(例えば、BiacoreTMシステム)を使用して行われる。
【0043】
IgG抗体についての「高親和性」という用語は、標的抗原に対して1x10-6M以下、より好ましくは5x10-8M以下、さらに好ましくは1x10-8M以下、さらにより好ましくは5x10-9M以下、特に好ましくは1x10-9M以下のKDを有する抗体を指す。しかし、「高親和性」結合は、他の抗体アイソタイプによって異なる。例えば、IgMアイソタイプの「高親和性」結合とは、10-6M以下、より好ましくは10-7M以下、さらに好ましくは10-8M以下のKDを有する抗体を指す。
【0044】
最大阻害濃度の半分としても知られている用語「IC50」とは、特異的な生物学的又は生化学的機能を抗体の不存在下と比較して50%阻害する抗体の濃度を指す。
【0045】
用語「EC50」は、最大有効濃度の半分として知られており、特定の曝露時間後にベースラインと最大値との中間の反応を誘発する抗体の濃度を指す。
【0046】
本明細書において、用語「抗体依存性細胞傷害性」、「抗体依存性細胞介在性細胞傷害性」、又は「ADCC」とは、それによって、免疫系のエフェクター細胞が、標的細胞、例えば、その膜表面抗原に抗体が結合している腫瘍細胞を活動的に溶解する、細胞介在性の免疫防御のメカニズムを指す。本発明の抗体は、PD-1発現細胞に対してはADCCを誘発せず、そのため、免疫細胞を保護する。
【0047】
用語「補体依存性細胞傷害性」又は「CDC」とは、一般に、表面抗原に結合すると古典的な補体経路を開始して膜侵襲複合体の形成及び標的細胞の溶解を誘発する、IgG抗体及びIgM抗体のエフェクター機能を指す。本発明の抗体は、PD-1発現細胞に対してはCDCを誘発せず、そのため、免疫細胞を保護する。
【0048】
用語「被験体」には、ヒト及び非ヒト動物が含まれる。用語「非ヒト動物」には、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、爬虫類のような哺乳類及び非哺乳類が含まれる。非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマのような哺乳類動物が好ましい。
【0049】
以下、本発明の様々な態様をさらに詳しく説明する。
【0050】
本発明は抗PD-1抗体を目的としており、その配列情報を以下の表1にまとめる。
【0051】
表1におけるCDR領域は、Kabatナンバリングシステムによって決定されている。しかし、当分野で周知されているように、CDR領域はまた、Chothia、CCG、及びIMGTシステム/方法のような、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づく他のシステムによっても決定することができる。
【0052】
【0053】
本発明の抗体は、配列番号18のアミノ酸配列を有する突然変異体IgG1定常領域を含有し得る。本発明の抗体はまた、配列番号19のアミノ酸配列を有するIgG4定常領域を含有し得る。
【0054】
<PD-1に対する増大した結合能力及び有利な機能的性質を有する抗PD-1抗体>
【0055】
本発明の抗体又はその抗原結合部分は、先行技術の抗PD-1抗体、例えばニボルマブと比較して、ヒトPD-1又はサルPD-1に対する同等の又はさらに良好な結合親和性/能力を有する。さらに、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、予備刺激されたPBMCを誘発して、より多くのIL-2及びIFNγを放出させ、先行技術の抗PD-1抗体、例えばニボルマブよりも良好なインビボでの抗腫瘍効果をもたらす。
【0056】
具体的には、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、およそ1.406×10-9M以下のKDでヒトPD-1に結合し、PD-1へのPD-L1/PD-L2の結合を阻害する。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、マウスPD-1に結合せず、CD28、ICOS、BTLA、又はCTLA-4と交差反応しない。さらに、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、より低いEC50値でカニクイザルPD-1に結合し、予備刺激されたPBMCが先行技術の抗PD-1抗体、例えばニボルマブよりも、高いレベルのIL-2分泌及びIFNγを放出することを誘発する。本発明の抗体又はその抗原結合部分は、抗原特異的な記憶応答を刺激し、及び/又は抗体応答を刺激する。
【0057】
本発明の好ましい抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。さらに、又は代替として、抗体は、例えばキメラ抗体又はヒト化モノクローナル抗体であり得る。
【0058】
<モノクローナル抗PD-1抗体>
【0059】
ヒトPD-1に結合する他の抗PD-1抗体のVH配列及びVL配列(又はCDR配列)は、本発明の抗PD-1抗体のVH配列及びVL配列(又はCDR配列)と「ミックス及びマッチ」し得る。好ましくは、VH鎖及びVL鎖(又はこのような鎖内のCDR)がミックス及びマッチすると、特定のVH/VL対のVH配列は、構造的に類似のVH配列で置き換えられる。同様に、好ましくは、特定のVH/VL対のVL配列は、構造的に類似のVL配列で置き換えられる。
【0060】
したがって、一実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、
(a)表1において上記で列挙されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び
(b)表1において上記で列挙されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又はヒトPD-1に特異的に結合する別の抗PD-1抗体のVL
を含む。
【0061】
別の実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合部分は、
(a)表1において上記で列挙される重鎖可変領域のCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域、並びに
(b)表1において上記で列挙される軽鎖可変領域のCDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域、又はヒトPD-1に特異的に結合する別の抗PD-1抗体のCDR
を含む。
【0062】
さらに別の実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、ヒトPD-1に結合する他の抗体のCDR、例えば、異なる抗PD-1抗体の重鎖可変領域のCDR1及び/若しくはCDR3、並びに/又は軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及び/若しくはCDR3と組み合わされている、抗PD-1抗体の重鎖可変領域CDR2を含む。
【0063】
さらに、当分野で周知されているように、CDR3ドメインは、CDR1及び/及びCDR2ドメインとは独立して単独で、同族抗原に対する抗体の結合特異性を決定でき、共通のCDR3配列に基づく同じ結合特異性を有する複数の抗体が予測可能に生成される。例えば、Klimka et al.,British J.of Cancer 83(2):252-260(2000);Beiboer et al.,J.Mol.Biol.296:833-849(2000);Rader et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:8910-8915(1998);Barbas et al.,J.Am.Chem.Soc.116:2161-2162(1994);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:2529-2533(1995);Ditzel et al.,J.Immunol.157:739-749(1996);Berezov et al.,BIAjournal 8:Scientific Review 8(2001);Igarashi et al.,J.Biochem(Tokyo)117:452-7(1995);Bourgeois et al.,J.Virol 72:807-10(1998);Levi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:4374-8(1993);Polymenis and Stoller,J.Immunol.152:5218-5329(1994)and Xu and Davis,Immunity 13:37-45(2000)を参照されたい。また、米国特許第6,951,646;6,914,128;6,090,382;6,818,216;6,156,313;6,827,925;5,833,943;5,762,905及び5,760,185も参照されたい。これらの参考文献のそれぞれは、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0064】
したがって、別の実施形態において、本発明の抗体は、抗PD-1抗体の重鎖可変領域のCDR2、並びに、抗PD-1抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域の少なくともCDR3、又はヒトPD-1に特異的に結合し得る別の抗PD-1抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR3を含む。これらの抗体は、好ましくは、本発明の抗PD-1抗体と(a)PD-1との結合について競合する、(b)機能的特性を保持している、(c)同一のエピトープに結合する、及び/又は(d)類似の結合親和性を有する。さらに別の実施形態において、抗体はさらに、抗PD-1抗体の軽鎖可変領域のCDR2、又はヒトPD-1に特異的に結合し得る別の抗PD-1抗体の軽鎖可変領域のCDR2を含み得る。別の実施形態において、本発明の抗体は、抗PD-1抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR1、又はヒトPD-1に特異的に結合し得る別の抗PD-1抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR1を含み得る。
【0065】
<保存的修飾>
【0066】
別の実施形態において、本発明の抗体は、1つ以上の保存的修飾によって本発明の抗PD-1抗体のものと異なる、CDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列の重鎖及び/又は軽鎖可変領域配列を含む。当分野で理解されているように、抗原結合機能が維持されたままで特定の保存的配列修飾を行うことができる。例えば、Brummell et al.(1993)Biochem 32:1180-8、de Wildt et al.(1997)Prot.Eng.10:835-41、Komissarov et al.(1997)J.Biol.Chem.272:26864-26870、Hall et al.(1992)J.Immunol.149:1605-12、Kelley and O’Connell(1993)Biochem.32:6862-35、Adib-Conquy et al.(1998)Int.Immunol.10:341-6及びBeers et al.(2000)Clin.Can.Res.6:2835-43を参照されたい。
【0067】
したがって、一実施形態において、抗体は、CDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、並びに/又はCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、
(a)重鎖可変領域のCDR1配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/若しくはその保存的修飾を含み、並びに/又は
(b)重鎖可変領域のCDR2配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/若しくはその保存的修飾を含み、並びに/又は
(c)重鎖可変領域のCDR3配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/若しくはその保存的修飾を含み、並びに/又は
(d)軽鎖可変領域のCDR1配列及び/若しくはCDR2配列及び/若しくはCDR3配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/若しくはその保存的修飾を含み、並びに/又は
(e)抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合する。
【0068】
本明細書において、用語「保存的配列修飾」は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性を顕著に影響及び変化を与えないアミノ酸修飾を指すことを意図している。このような保存的修飾は、アミノ酸の置換、挿入、欠失を含む。修飾は、部位特異的変異導入及びPCR媒介変異導入などの当分野で知られている標準的な技術により本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。このようにして、本発明の抗体のCDR領域における1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、変更された抗体は、本明細書に記載の機能的アッセイを使用して、保持機能(即ち、上記の機能)について試験することができる。
【0069】
<改造抗体及び修飾体(修飾抗体)>
【0070】
本発明の抗体は、本発明の抗PD-1抗体のVH/VL配列の1つ以上を有する抗体を、修飾抗体を改造するための出発材料として使用して、調製することができる。抗体は、一方及び両方の可変領域(即ち、VH及び/又はVL)、例えば、1つ以上のCDR領域及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することにより改造され得る。追加及び代替として、抗体は、例えば、抗体のエフェクター機能を変更するために、定常領域内の残基を修飾することにより改造され得る。
【0071】
特定の実施形態において、CDR移植を採用して抗体の可変領域を改造することができる。抗体は、主に6つの重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)にあるアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列よりも個々の抗体間で多様である。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用の原因であるため、異なる特性を有する異なる抗体に由来のフレームワーク配列上に移植された特定の天然型抗体に由来のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然型抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann et al.(1998)Nature 332:323-327、Jones et al.(1986)Nature 321:522-525、Queen et al.(1989)Proc.Natl.Acad.U.S.A.86:10029-10033、米国特許第5,225,539、5,530,101、5,585,089、5,693,762及び6,180,370)。
【0072】
したがって、本発明の別の実施形態は、上記のような本発明の配列を含むCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域、並びに/又は上記のような本発明の配列を含むCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、分離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分に関する。これらの抗体は本発明のモノクローナル抗体のVH CDR配列及びVL CDR配列を含むが、これらの抗体は、異なるフレームワーク配列を含んでいてよい。
【0073】
このようなフレームワーク配列は、公共DNAデータベース又は生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公開された参考文献から得られる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子のための生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベース(インターネット上で利用可能:www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbase)、及びKabat et al.(1991),cited supra、Tomlinson et al.(1992) J.Mol.Biol.227:776-798、Cox et al.(1994) Eur.J.Immunol.24:827-836から見出される。それぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。他の例として、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子のための生殖細胞系列DNA配列は、Genbankデータベースから見出される。例えば、以下のHCo7 HuMAbマウスで見出される重鎖生殖細胞系列配列は、付随のGenbankアクセッション番号1-69(NG-0010109、NT--024637&BC070333)、3-33(NG--0010109&NT--024637)及び3-7(NG--0010109&NT--024637)で入手可能である。他の例として、以下のHCo12 HuMAbマウスで見出される重鎖生殖細胞系列配列は、付随のGenbankアクセッション番号1-69(NG-0010109、NT--024637&BC070333)、5-51(NG--0010109&NT--024637)、4-34(NG--0010109&NT--024637)、3-30.3(CAJ556644)&3-23(AJ406678)で入手可能である。
【0074】
抗体タンパク質配列は、当業者に周知であるGapped BLASTと呼ばれる配列類似性検索方法の1つを使用して、コンパイルされたタンパク質配列データベースと比較される(Altschul et al.(1997),supra)。
【0075】
本発明の抗体で使用するための好ましいフレームワーク配列は、本発明の抗体で使用されるフレームワーク配列と構造的に類似するもの。VHCDR1、CDR2及びCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子に見出される配列と同一の配列を有するフレームワーク領域に移植され得る。或いは、CDR配列は、生殖細胞系列配列と比較して1つ以上の変異を含むフレームワーク領域に移植され得る。例えば、特定の例では、フレームワーク領域内の残基を変異させて抗体の抗原結合能力を維持及び強化することが有益であることが発見された(例えば、米国特許第5,530,101、5,585,089、5,693,762及び6,180,370).
【0076】
他の可変領域修飾のタイプは、内VH及び/又はVLCDR1、CDR2及び/又はCDR3領域のアミノ酸残基を変異させることで目的抗体の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を向上させることである。部位特異的変異導入又はPCR媒介変異導入を実施して変異を導入することができ、抗体結合又は他の目的機能特性に対する影響は、本明細書に記載され、実施例に提供されているインビトロ又はインビボアッセイで評価することができる。好ましくは、保存的修飾(当分野で知られている)が導入されるのが好ましい。変異は、アミノ酸の置換、挿入又は欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つ及び5つ以下の残基が変更される。
【0077】
したがって、別の実施形態において、本発明は、(a)本発明の配列、又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VH CDR1領域、(b)本発明の配列、又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VH CDR2領域、(c)本発明の配列、又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VH CDR3領域、(d)本発明の配列、又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VL CDR1領域、(e)本発明の配列、又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VL CDR2領域、及び(f)本発明の配列、又は1つ、2つ、3つ、4つ、若しくは5つのアミノ酸の置換、欠失、若しくは付加を有するアミノ酸配列を含む、VL CDR3領域を含む、重鎖可変領域を含む、分離された抗PD-1モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0078】
本発明の改造抗体は、例えば、抗体の特性を改善するためのVH及び/又はVLにおけるフレームワーク残基に対する修飾を含む。典型的には、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列配列に「逆変異」させることである。より具体的には、体細胞変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る.このような残基は、前記抗体フレームワーク配列を前記抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することにより同定することができる。
【0079】
他のフレームワーク修飾のタイプは、フレームワーク領域、又は1つ以上のCDR領域における1つ以上の残基をT細胞エピトープが除去されるように変異させることにより、抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。このアプローチは「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許公開第20030153043号に詳しく記載されている。
【0080】
フレームワーク又はCDR領域内になされる修飾に加えて又はその代わりに、本発明の抗体は、本発明の抗体は、典型的には、抗体の1つ以上の機能特性、例えば、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、及び/及び抗原依存性細胞毒性を変えるために、Fc領域内の修飾を含むように改造されてもよい。さらに、本発明の抗体は、化学的に修飾されてもよく(例えば、1つ以上の化学的部分が抗体に取り付けられてもよく)、そのグリコシル化を変更するように修飾されてもよく、又は1つ以上の抗体の機能特性を変更するように修飾されてもよい。
【0081】
一実施形態において、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数が変更(例えば、増加又は減少)されるようにCH1のヒンジ領域を修飾する。このアプローチは米国特許第5,677,425号に詳しく記載されている。CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖のアセンブリを促進するために、及び抗体の安定性を増加若しくは減少させるために変更される。
【0082】
他の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域を変異させることにより、抗体の生物学的半減期を増加させる。より具体的には、Fcヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に1つ以上のアミノ酸変異を導入することにより、抗体は、天然のFcヒンジドメインSpA結合と比較して、ブドウ球菌プロテインA(SpA)結合が低下する。このアプローチは米国特許第6,165,745号に詳しく記載されている。
【0083】
さらに別の実施形態において、抗体のグリコシル化が修飾される。例えば、非グリコシル化抗体が作製される(即ち、抗体はグリコシル化を欠いている)。グリコシル化を変更することにより、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めることができる。このような炭水化物の修飾は、例えば、抗体配列における1つ以上のグリコシル化部位を変更することにより達成され得る。例えば、1つ以上のアミノ酸置換を導入することにより、1つ以上の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を除去することで、その部位のグリコシル化を除去することができる。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高めることができる。例えば、米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号を参照されたい。
【0084】
追加及び代替として、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体及び二分GlcNac構造が増加した抗体などのグリコシル化のタイプが変更された抗体を作製することができる。このような変更されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を高めることが実証されている。このような炭水化物の修飾は、例えば、抗体をグリコシル化機構が変更された宿主細胞で発現させることにより達成され得る。グリコシル化機構が変更された細胞は、当分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現することによりグリコシル化が変更された抗体を産生する宿主細胞として使用することができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705及びMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ)を欠いているため、Ms704、Ms705及びMs709細胞株で発現する抗体の炭水化物がフコースを欠いている。Ms704、Ms705及びMs709 FUT8-/-細胞株は、2つの置換ベクターを使用して、CHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的破壊によって作製された(米国特許公開第20040110704及びYamane-Ohnuki et al.(2004)Biotechnol Bioeng 87:614-22を参照)。他の例として、EP1,176,195には、機能的に破壊されたFUT8遺伝子(フコシルトランスフェラーゼをコードする)を持つ細胞株が記載されている。このような細胞株で発現される抗体は、α-1,6結合関連酵素を減少及び除去することにより低フコシル化を示す。EP1,176,195には、抗体のFc領域に結合するか又は酵素活性を持たないN-アセチルグルコサミンにフコースを加える酵素活性が低い細胞株、例えば、ラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)がさらに記載されている。PCT公開WO03/035835には、フコースをAsn(297)結合炭水化物に結合する能力が低下し、その宿主細胞で発現される抗体の低フコシル化ももたらすバリアントCHO細胞株であるLec13細胞が記載されている(Shields et al.(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740を参照)。PCT公開WO 06/089231に記載されているように、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は鶏の卵でも産生され得る。或いは、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、レムナなどの植物細胞で産生され得る。植物系で抗体を産生する方法は、2006年8月11日に出願されたAlston&Bird LLP代理人整理番号040989/314911に対応する米国特許出願に開示されています。PCT公開WO99/54342には、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように改造された細胞株が記載されている。この改造された細胞株で発現された抗体は、増加した二分GlcNac構造を示し、これにより、抗体のADCC活性が増加する(Umana et al.(1999)Nat.Biotech.17:176-180を参照)。或いは、フコシダーゼ酵素により抗体のフコース残基を切り離すことができる。例えば、α-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al.(1975)Biochem.14:5516-23)。
【0085】
本発明の抗体の他の修飾はペグ化である。抗体をペグ化することにより、例えば抗体の生物学的(例えば血清)半減期を延長することができる。抗体をペグ化するために、1つ以上のPEG基が抗体及び抗体断片に結合する条件下で、抗体及びその断片を、典型的に、PEGの反応性エステル及びアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応させる。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(及び類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応及びアルキル化反応を介して行われる。本明細書で使用される「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1-C10)アルコキシ-若しくはアリールオキシ-ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコール-マレイミドなど、他のタンパク質を誘導体化するために使用されるPEGの任意の形態を包含することを意図している。特定の実施形態において、ペグ化される抗体は非グリコシル化抗体である。タンパク質のペグ化方法は当分野で知られており、本発明の抗体に適用することができる。例えば、EPO154316及びEP0401384を参照されたい。
【0086】
<抗体の物理的性質>
【0087】
本発明の抗体は、それらの異なるクラスを検出及び/及び区別するために、それらの様々な物理的特性によって特徴付けられ得る。
【0088】
例えば、抗体は、軽鎖又は重鎖可変領域のいずれかに1つ以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗原結合の変化により、抗体の免疫原性の増加、及び抗体のpKの変化をもたらす可能性がある(Marshall et al(1972)Annu Rev Biochem 41:673-702、Gala and Morrison(2004)J Immunol 172:5489-94、Wallick et al(1988)J Exp Med 168:1099-109、Spiro(2002)Glycobiology 12:43R-56R、Parekh et al(1985)Nature 316:452-7、Mimura et al.(2000)Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含むモチーフで起こることが知られている。いくつかの例では、可変領域グリコシル化を含まない抗PD-1抗体を有することが好ましい。これは、可変領域にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択するか、又はグリコシル化領域内の残基を変異させることにより達成できる。
【0089】
好ましい実施形態において、抗体にはアスパラギン異性部位が含まれない。アスパラギンの脱アミド化はN-G及びD-G配列で起こり、ポリペプチド鎖にキンクを導入し、その安定性を低下させるイソアスパラギン酸残基の生成をもたらす可能性がある(イソアスパラギン酸効果)。
【0090】
各抗体には固有の等電点(pI)があり、一般的に6~9.5のpH範囲にある。IgG1抗体のpIは典型的には7~9.5のpH範囲内にあり、IgG4抗体のpIは典型的には6~8のpH範囲内にある。正常範囲外のpIを持つ抗体は、インビボ条件下でいくらかの展開及び不安定性を有する可能性があると推測されている。したがって、正常範囲にあるpI値を含む抗PD-1抗体を有することが好ましい。これは、pIが正常範囲の抗体を選択するか、又は帯電した表面残基を変異させることにより達成できる。
【0091】
<本発明の抗体をコードする核酸分子>
【0092】
他の態様において、本発明は、本発明の抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域又はCDRをコードする核酸分子を提供する。核酸は、細胞全体、細胞溶解物に存在し、又は部分的に精製された形若しくは実質的に純粋な形で存在し得る。核酸は、標準技術により他の細胞成分及び他の汚染物質、例えば他の細胞核酸及びタンパク質から精製されると、「分離」されるか、又は「実質的に純粋に」なる。本発明の核酸は、例えばDNA及びRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0093】
本発明の核酸は、標準的な分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに説明するように、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体の場合、ハイブリドーマによって作られた抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅及びcDNAクローニング技術によって得られる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから得られた抗体の場合(例えば、ファージディスプレイ技術を使用する)、このような抗体をコードする核酸は、遺伝子ライブラリーから回収することができる。
【0094】
本発明の好ましい核酸分子は、PD-1モノクローナル抗体のVH配列及びVL配列又はCDRをコードする核酸分子を含む。VH及びVLセグメントをコードするDNA断片が得られると、これらのDNA断片は、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作することにより、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子又はscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作では、VL又はVHをコードするDNA断片は、抗体定常領域や柔軟なリンカーなどの、別のタンパク質をコードする別のDNA断片に機能的に連結される。本明細書において、用語「機能的に連結される」は、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームに保持されるように2つのDNA断片が連結されることを意味する。
【0095】
VH領域をコードする分離されたDNAは、VHをコードするDNAを重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に機能的に連結することにより、全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当分野で知られており、これらの領域を包含するDNA断片は標準的なPCR増幅により得られる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であってもよくいが、最も好ましくは、IgG1又はIgG4定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VHコードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする他のDNA分子に機能的に連結することができる。
【0096】
VL領域をコードする分離されたDNAは、VLコードDNAを軽鎖定常領域CLをコードする他のDNA分子に機能的に連結することにより、全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当業者で知られており、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅により得られる。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、κ及びλ定常領域であり得る。
【0097】
scFv遺伝子を作製するために、VH及びVLコードDNA断片を柔軟なリンカー、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3をコードする他の断片に機能的に連結することにより、VH及びVL配列は、柔軟なリンカーを介してVL及びVH領域が結合された連続した一本鎖タンパク質として発現され得る(例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426、Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883、McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-554)。
【0098】
<本発明のモノクローナル抗体の調製>
【0099】
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、よく知られている体細胞ハイブリダイゼーション技術(Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495)を使用して調製することができる。モノクローナル抗体を調製するための他の実施形態には、Bリンパ球のウイルス及び発がん性形質転換及びファージディスプレイ技術が含まれる。キメラ抗体及びヒト化抗体も当分野で周知である。例えば、米国特許第4,816,567、5,225,539、5,530,101、5,585,089、5,693,762及び6,180,370号を参照されたい。それらの内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0100】
<本発明のモノクローナル抗体を産生するトランスフェクトーマの調製>
【0101】
本発明の抗体は、例えば、組換えDNA技術と当分野で周知である遺伝子トランスフェクション方法との組み合わせにより宿主細胞トランスフェクトーマ内で産生することができる(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。一実施形態において、標準的な分子生物学技術によって得られた部分及び全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写及び翻訳調節配列に機能的に連結されるように1つ以上の発現ベクターに挿入される。本明細書において、用語「機能的に連結される」とは、ベクター内の転写及び翻訳調制御列が抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節する意図された機能を果たすように抗体遺伝子がベクターに連結されることを意味する。
【0102】
用語「調節配列」は、プロモーター、エンハンサー及び抗体鎖遺伝子の転写及び翻訳を制御する他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図している。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス要素(例えば、サイトメガロウイルス由来のプロモーター及び/及びエンハンサー(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマ)が含まれる。或いは、ユビキチンプロモーターやβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス性調節配列を使用してもよい。さらに、調節要素は、異なる由来源からの配列から構成され、例えば、SRαプロモーターシステムは、SV40初期プロモーターとヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復配列に由来する配列を含む(Takebe et al.(1988)Mol.Cell.Biol.8:466-472)。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0103】
抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、同じ又は別々の発現ベクターに挿入することができる。好ましい実施形態において、可変領域を使用して、VHセグメントがベクター内のCHセグメントに機能的に連結され、VLセグメントがベクター内のCLセグメントに機能的に連結されるように、可変領域を目的のアイソタイプの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を既にコードしている発現ベクターに挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を作製する。追加及び代替として、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド及び異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質からのシグナルペプチド)であり得る。
【0104】
本発明の組換え発現ベクターは、前記抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、宿主細胞内のベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)及び選択マーカー遺伝子などの追加の配列を持ってもよい。選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、米国特許第4,399,216、4,634,665及び5,179,017号)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅を伴うdhfr宿主細胞で使用)及びNeo遺伝子(G418選択用)を含む。
【0105】
軽鎖及び重鎖の発現のために、標準的な技術により発現ベクターをコードする重鎖及び軽鎖を宿主細胞にトランスフェクトする。用語「トランスフェクション」のさまざまな形態は、外因性DNAを原核生物及び真核生物の宿主細胞に導入するために一般的に使用される多種多様な技術(例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなど)を包含することを意図している。原核及び真核宿主細胞のいずれかで本発明の抗体を発現させることは理論的には可能であるが、真核細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞での抗体の発現が最も好ましい。これは、このような真核細胞、特に哺乳類細胞は、原核細胞よりも免疫学的活性を有する適切に折りたたまれた抗体を組み立てて分泌する可能性が高いためである。
【0106】
本発明の組換え抗体を発現するための好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO細胞)(DHFR選択マーカー(例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)J.Mol.Biol.159:601-621)と共に使用されるdhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220)を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2を含む。特に、NSO骨髄腫細胞と共に使用するための別の好ましい発現系は、WO87/04462、WO89/01036及びEP338,841に開示されているGS遺伝子発現系である。組換え発現ベクターをコードする抗体遺伝子が哺乳動物宿主細胞に導入された場合、抗体は、宿主細胞での抗体の発現、又は好ましくは宿主細胞が成長する培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することにより産生される。標準的なタンパク質精製法により培地から抗体を回収することができる。
【0107】
<免疫結合体(免疫コンジュゲート)>
【0108】
本発明の抗体を治療薬に結合させて、抗体-薬物結合体(ADC)などの免疫結合体を形成することができる。適切な治療薬には、代謝拮抗剤、アルキル化剤、DNAマイナーグルーブバインダー、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼI及びII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質、及び抗有糸分裂剤が含まれる。ADCにおいて、抗体及び治療薬は、好ましくは、ペプチジル、ジスルフィド、及びヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介して結合される。より好ましくは、前記リンカーは、ペプチジルリンカー、例えば、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Pro-Val-Gly-Val-Val、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、Ser又はGluである。ADCは、米国特許第7,087,600、6,989,452及び7,129,261号、PCT公開WO02/096910、WO07/038,658、WO07/051,081、WO07/059,404、WO08/083,312及びWO08/103,693、米国特許公開第20060024317、20060004081及び20060247295号に記載のように調製され得る。これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
<二重特異性分子>
【0110】
他の態様において、本開示は、少なくとも1つの他の機能分子に連結された本発明の1つ及び複数の抗体を含む二重特異性分子を特徴とする。前記他の機能分子は、例えば、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を産生する他のペプチド又はタンパク質(例えば、受容体のための別の抗体及びリガンド)である。したがって、本明細書で使用される「二重特異性分子」には、3つ以上の特異性を有する分子が含まれる。
【0111】
一実施形態において、二重特異性分子は、抗Fc結合特異性及び抗PD-1結合特異性に加えて、第3特異性を有する。第3特異性は、抗エンハンスメント因子(EF)に対するものであり得る。前記抗エンハンスメント因子(E)は、例えば、細胞毒性活性に関与する表面タンパク質に結合し、これにより標的細胞に対する免疫応答を増強させる分子。例えば、前記抗エンハンスメント因子は、(例えば、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40又はICAM-1を介して)細胞毒性T細胞又は他の免疫細胞に結合することにより、標的細胞に対する免疫応答を増強させることができる。
【0112】
二重特異性分子は、多くの異なる形式及びサイズになり得る。サイズスペクトルにおいて、二重特異性分子は、同一の特異性を持つ2つの結合アームを有する代わりに、それぞれ異なる特異性を持つ2つの結合アームを有する以外、従来の抗体形式を保持する。もう1つの極端な例では、二重特異性分子は、ペプチド鎖、いわゆるBs(scFv)2構築物によって連結された2つの一本鎖抗体断片(scFv's)からなる。中間サイズの二重特異性分子には、ペプチジルリンカーによって連結された2つの異なるF(ab)断片が含まれる。これら及び他の形式の二重特異性分子は、遺伝子工学、体細胞交雑、及び化学的方法によって調製することができる。例えば、Kufer et al,cited supra,Cao and Suresh,Bioconjugate Chemistry,9(6),635-644(1998),and van Spriel et al.,Immunology Today,21(8),391-397(2000)を参照されたい。これらの参考文献は本明細書に組み込まれる。
【0113】
<医薬組成物>
【0114】
他の態様において、本開示は、薬学的に許容される担体と共に製剤化された本発明の1つ以上の抗体を含む医薬組成物を提供する。この組成物は、他の抗体及び薬物などの1つ以上の追加の薬学的有効成分を任意に含有してもよい。本発明の医薬組成物はまた、例えば、別の免疫刺激剤、抗がん剤、抗ウイルス剤又はワクチンとの併用療法で投与することができる。抗PD-1抗体がワクチンに対する免疫応答を増強させる。
【0115】
医薬組成物は、任意の数の賦形剤を含み得る。使用できる賦形剤には、担体、界面活性剤、増粘剤及び乳化剤、固体バインダー、分散及び懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、保存料、等張剤、及びそれらの組み合わせが含まれる。適切な賦形剤の選択と使用は、Gennaro,ed.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.(Lippincott Williams&Wilkins 2003)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
好ましくは、前記医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄及び表皮投与(例えば、注射及び注入による)に適している。投与経路に応じて、活性化合物は、酸の作用及びそれを不活性化する可能性のある他の自然条件から保護するために材料でコーティングすることができる。本明細書で使用される「非経口投与」という用語は、通常は注射による、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、胸骨内注射及び注入を含むがこれらに限定されない。或いは、本発明の抗体は、局所、表皮及び粘膜投与経路などの非腸管外経路を介して、例えば鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下及び局所的に投与することができる。
【0117】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される塩を含み得る。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持しており、いかなる望ましくない毒物学的影響も与えない、塩を指す。このような塩の例には、酸付加塩及び塩基付加塩が含まれる。酸付加塩には、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などの無毒の無機酸に由来するもの、並びに、脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族スルホン酸及び芳香族スルホン酸などの無毒の有機酸に由来するものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属に由来するもの、並びに、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどの無毒の有機アミンに由来するものが含まれる。
【0118】
医薬組成物は、滅菌水溶液及び分散液の形態であり得る。それらはまた、マイクロエマルジョン、リポソーム、及び高薬物濃度に適した他の秩序構造に製剤化することができます。
【0119】
担体材料と組み合わせて単一剤形を生成することができる有効成分の量は、治療される被験体及び特定の投与経路に応じて異なり、一般的に、治療効果を奏する組成物の量である。一般的には、有効成分と薬学的に許容される担体の合計100%に対して、有効成分の量は、約0.01%から約99%、好ましくは約0.1%から約70%、最も好ましくは約1%から約30%である。
【0120】
投与計画は、最適な望ましい反応(例えば、治療反応)を提供するために調整される。例えば、単回ボーラスで投与してもよく、治療状況の緊急性によって経時的に分割された用量で投与してもよいか、又は用量を比例的に減少及び増加させてもよい。投与の容易さ及び投与量の均一性の観点から、投与単位形態で非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される用量単位形態は、治療される被験体の単位用量として適した物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要な医薬品担体に関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。あるいは、抗体を徐放性製剤として投与してもよく、この場合、投与頻度を減少させる必要がある。
【0121】
抗体の投与については、投与量は宿主体重の約0.0001-100mg/kg、より一般的には0.01-5mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、10mg/kg体重又は1-10mg/kgであり得る。例示的な治療計画は、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1か月に1回、3か月に1回及び3~6か月に1回の投与を伴う。本発明の抗LAG-3抗体の好ましい投与計画には、1mg/kg体重及び3mg/kg体重での静脈内投与が含まれ、各薬剤は、投薬計画(i)4週間に1回で6回後、3か月に1回、(ii)3週間に1回及び(iii)3mg/kg体重で1回後、1mg/kg体重で3週間に1回のうちの1種により同時に与えられる。いくつの方法では、投与量は、血漿抗体濃度が約1~1000μg/ml、いくつの方法では約25~300μg/mlとなるように調整される。
【0122】
本発明の抗PD-1抗体の「治療有効用量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の低下、疾患の症状のない期間の頻度と時間の増加、又は疾患の苦痛による障害若しくは障害の予防をもたらす。例えば、腫瘍を有する被験体の治療のために、「治療有効用量」は、治療されていない被験体と比較して腫瘍の成長を、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも60%、よりさらに好ましくは少なくとも約80%阻害する。治療的化合物の治療的有効量は、被験体の腫瘍サイズを減少させるか、又は症状を改善することができる。被験体は、典型的にはヒト、他の哺乳動物であり得る。
【0123】
医薬組成物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤であり得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、colLAGen、ポリオルトエステル、ポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーを使用できる。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0124】
治療用組成物は、(1)無針皮下注射装置(例えば、米国特許第5,399,163、5,383,851、5,312,335、5,064,413、4,941,880、4,790,824及び4,596,556号)、(2)微量注入ポンプ(米国特許第4,487,603号)、(3)経皮デバイス(米国特許第4,486,194号)、(4)点滴装置(米国特許第4,447,233及び4,447,224号)、及び(5)浸透デバイス(米国特許第4,439,196及び4,475,196号)などの医療機器により投与することができる。これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
特定の実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、生体内での適切な分布が確保されるように製剤化することができる。例えば、本発明の治療用抗体が血液脳関門を通過することを確保するために、リポソームに製剤化することができ、特定の細胞及び器官への選択的輸送を促進する標的化部分をさらに含んでもよい。例えば、米国特許第4,522,811、5,374,548、5,416,016及び5,399,331号、V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685、Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038、Bloeman et al.(1995)FEBS Lett.357:140、M.Owais et al.(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180、Briscoe et al.(1995)Am.J.Physiol.1233:134、Schreier et al.(1994)J.Biol.Chem.269:9090、Keinanen and Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123、並びにKillion and Fidler(1994)Immunomethods 4:273を参照されたい。
【0126】
<発明の使用及び方法>
【0127】
本発明の抗体(組成物、二重特異性抗体、及び免疫結合体)は、例えばPD-1の遮断による免疫応答の増強を伴う、インビトロ及びインビボでの多くの有用性を有する。このような抗体は、インビトロ及びエクスビボで培養中の細胞に投与でき、或いは様々な状況で免疫を強化するために、例えばインビボでヒト被験者に投与することができる。したがって、一態様において、本発明は、被験体における免疫応答が改変されるように本発明の抗体及びその抗原結合部分を被験体に投与するステップを含む、被験体における免疫応答を改変する方法を提供する。好ましくは、応答は、強化、刺激及びアップレギュレートされる。
【0128】
好ましい被験体は、免疫応答の増強を必要とするヒト被験体を含む。該方法は、免疫応答(例えば、T細胞媒介免疫応答)を増強することにより治療できる障害を有するヒト患者の治療に特に適している。特定の実施形態では、この方法はインビボでのがんの治療に特に適している。免疫の抗原特異的増強を達成するために、抗PD-1抗体を目的抗原と一緒に投与することができ、或いは抗原が治療被験体(例えば、担がん又はウイルス感染被験体)にすでに存在している可能性がある。PD-1に対する抗体を他の薬剤と一緒に投与する場合、両者は順序で及び同時に投与することができる。
【0129】
本発明の抗PD-1抗体の、PD-L1分子及び/又はPD-L2分子へのPD-1の結合を阻害する能力、並びに抗原特異的T細胞応答を刺激する能力を考慮すると、本発明はまた、抗体を使用して抗原特異的T細胞応答を刺激する、増強する、又は上方調節するための、インビトロ及びインビボでの方法を提供する。例えば、本発明は、前記T細胞を本発明の抗体と接触することにより抗原特異的T細胞応答を刺激するステップを含む抗原特異的T細胞応答の刺激方法を提供する。抗原特異的T細胞応答の適切な指標のいずれかは、抗原特異的T細胞応答を測定するために使用できます。
【0130】
このような適切な指標の非限定的な例には、抗体の存在下でのT細胞増殖の増加及び/及び抗体の存在下でのサイトカイン産生の増加が含まれる。好ましい実施形態において、抗原特異的T細胞によるインターロイキン2の産生が刺激される。
【0131】
本発明は、本発明の抗体を被験体に投与することにより前記被験体において免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)を刺激することを含む被験体における免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)の刺激方法をさらに提供する。好ましい実施形態において、前記被験体は担がん被験体であり、腫瘍に対する免疫応答が刺激される。他の好ましい実施形態において、前記被験体はウイルス感染被験体であり、ウイルスに対する免疫応答が刺激される。
【0132】
他の実施形態において、本発明は、被験体に本発明の抗体を投与することにより被験体において腫瘍の成長を抑制することを含む被験体における腫瘍細胞の成長を抑制する方法を提供する。さらに別の実施形態において、本発明は、被験体に本発明の抗体を投与することにより被験体においてウイルス感染を治療することを含む被験体におけるウイルス感染の治療方法を提供する。
【0133】
本発明の上記方法及び他の方法の詳細は、後述する。
【0134】
<がん>
【0135】
抗体によるPD-1の遮断は、患者のがん性細胞に対する免疫応答を増強させることができる。一態様において、本発明は、抗PD-1抗体を使用することによりがん性腫瘍の成長を抑制する被験体のインビボ治療に関する。抗PD-1抗体を単独で使用してがん性腫瘍の成長を阻害することができる。或いは、抗PD-1抗体は、後述のように、他の免疫原性薬剤、標準的ながん治療剤又は他の抗体と組み合わせて使用することができる。
【0136】
したがって、一実施形態において、本発明は、被験体に治療有効量の抗PD-1抗体又はその抗原結合部位を投与するステップを含む被験体における腫瘍細胞の成長を抑制する方法を提供する。好ましくは、前記抗体は、ヒト抗PD-1抗体(例えば、本明細書に記載の任意のヒト抗ヒトPD-1抗体)である。追加的及び代替的に、抗体はキメラ及びヒト化抗PD-1抗体であり得る。
【0137】
本発明の抗体を使用することで成長が抑制され得る好ましいがんは、免疫療法に典型的に応答するがんを含む。治療のための好ましいがんの非限定的な例には、肺がん、リンパ腫、中皮腫、黒色腫、及び腎細胞がんが含まれる。さらに、本発明は、本発明の抗体を使用することにより成長が抑制され得る難治性及び再発性の悪性腫瘍を含む。
【0138】
本発明の方法によって治療可能ながんの他の例には、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部がん、皮膚及び眼内の悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部がん、胃がん、精巣がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、急性骨髄性白血病を含む慢性及び急性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓及び尿管がん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境的に誘発されるがん、及びこれらのがんの組み合わせが含まれる。本発明は、転移性がん、特にPD-L1を発現する転移性がんの治療にも有用である(Iwai et al.(2005)Int.Immunol.17:133-144)。
【0139】
必要に応じて、PD-1に対する抗体は、がん性細胞、精製腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド、炭水化物分子を含む)、細胞、免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子がトランスフェクトされた細胞などの免疫原性薬剤と組み合わせることができる(He et al(2004)J.Immunol.173:4919-28)。使用できる腫瘍ワクチンの非限定的な例には、メラノーマ抗原のペプチド、例えば、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MART1及び/又はチロシナーゼ、又はサイトカインGM-CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞のペプチドが含まれる。
【0140】
PD-1遮断は、ワクチン接種プロトコールと組み合わせた場合、より効果的である。腫瘍に対するワクチン接種のための多くの実験的な戦略が考案されている(Rosenberg,S.,2000,Development of Cancer Vaccines,ASCO Educational Book Spring:60-62、Logothetis,C.,2000,ASCO Educational Book Spring:300-302、Khayat,D.2000,ASCO Educational Book Spring:414-428、Foon,K.2000,ASCO Educational Book Spring:730-738,Restifo,N.and Sznol,M.,Cancer Vaccines,Ch.61,pp.3023-3043 in DeVita et al.(eds.),1997,Cancer:Principles and Practice of Oncology,Fifth Edition)。これらの戦略の1つでは、自己及び同種の腫瘍細胞を使用してワクチンを調製する。これらの細胞ワクチンは、腫瘍細胞がGM-CSFを発現するように形質導入されたときに最も効果的であることが示されている。GM-CSFは、腫瘍ワクチン接種のための抗原提示の強力な活性化剤であることが示されている(Dranoff et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:3539-43).
【0141】
様々な腫瘍における遺伝子発現及び大規模な遺伝子発現パターンの研究により、いわゆる腫瘍特異的抗原の定義がもたらされた(Rosenberg,SA(1999)Immunity 10:281-7).多くの場合、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍及び腫瘍が発生した細胞で発現する分化抗原(例えば、メラノサイト抗原gp100、MAGE抗原、及びTrp-2)である。さらに重要なことに、これらの抗原の多くは、宿主に見られる腫瘍特異的T細胞の標的であることが示されている。PD-1遮断は、これらのタンパク質に対する免疫応答を生成するために、腫瘍で発現した組換えタンパク質及び/及びペプチドのコレクションと組み合わせて使用できます。これらのタンパク質は通常、免疫系によって自己抗原とみなされるため、それらに対して耐性がある。腫瘍抗原には、染色体のテロメアの合成に必要なタンパク質テロメラーゼが含まれる場合があり、タンパク質テロメラーゼは85%以上のヒト癌及び限られた数の体組織でのみ発現される(Kim et al.(1994)Science 266:2011-2013)。これらの体組織は、様々な手段によって免疫攻撃から保護され得る。腫瘍抗原は、タンパク質配列の変化、又は2つの無関係な配列(即ち、フィラデルフィア染色体におけるbcr-abl)間での融合タンパク質の形成を引き起こす体細胞変異のため、がん細胞で発現する「新抗原」又はB細胞腫瘍のイディオタイプでもある。
【0142】
他の腫瘍ワクチンは、ヒトのがんに関係するウイルス(例えば、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBV及びHCV)、カポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV))に由来するタンパク質を含み得る。PD-1遮断物と併用できる腫瘍特異的抗原のもう1つの形態は、腫瘍組織自体から分離された精製熱ショックタンパク質(HSP)である。これらの熱ショックタンパク質は、腫瘍細胞からのタンパク質の断片を含み、これらのHSPは、腫瘍免疫を誘発するための抗原提示細胞への送達において非常に効率的である(Suot&Srivastava(1995)Science 269:1585-1588、Tamura et al.(1997)Science 278:117-120)。
【0143】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答を刺激するために使用できる強力な抗原提示細胞である。DCはex vivoで生成され、腫瘍細胞抽出物と同様に様々なタンパク質及びペプチド抗原を搭載することができる(Nestle et al.(1998)Nature Medicine 4:328-332)。DCは、これらの腫瘍抗原を発現させるための遺伝的手段によっても形質導入することができる。DCは、免疫の目的で腫瘍細胞に直接融合されている(Kugler et al.(2000)Nature Medicine 6:332-336)。ワクチン接種の方法として、DC免疫をPD-1遮断と効果的に組み合わせて、より強力な抗腫瘍応答を活性化することができる。
【0144】
PD-1遮断は、標準的ながん治療と組み合わせることができる。PD-1遮断は、化学療法レジメンと効果的に組み合わせることができる。これらの場合、投与される化学療法剤の用量を減らすことが可能である(Mokyr et al.(1998)Cancer Research 58:5301-5304)。このような組み合わせの例は、黒色腫の治療のためのデカルバジンと組み合わせた抗PD-1抗体である。このような組み合わせの別の例は、黒色腫の治療のためのインターロイキン-2(IL-2)と組み合わせた抗PD-1抗体である。PD-1遮断と化学療法の併用の科学的根拠は、ほとんどの化学療法化合物の細胞毒性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路の腫瘍抗原レベルの増加をもたらすことである。細胞死によるPD-1遮断との相乗効果をもたらすことができる他の併用療法は、放射線、外科手術、及びホルモン除去である。これらのプロトコルのそれぞれにより、宿主において腫瘍抗原のソースが形成される。血管新生阻害剤は、PD-1遮断物と組み合わせることができる。血管新生の阻害は、腫瘍抗原を宿主抗原提示経路に供給する腫瘍細胞死を引き起こす。
【0145】
腫瘍は多種多様なメカニズムにより宿主の免疫監視を回避することができる。これらのメカニズムの多くは、腫瘍によって発現される免疫抑制性のあるタンパク質の不活性化によって克服することができる。これらのタンパク質は、特にTGF-β(Kehrl et al.(1986)J.Exp.Med.163:1037-1050)、IL-10(Howard&O’Garra(1992)Immunology Today 13:198-200)、及びFasリガンド(Hahne et al.(1996)Science 274:1363-1365)を含む。これらの各実体に対する抗体を抗PD-1と組み合わせて使用することにより、免疫抑制剤の効果を打ち消し、宿主による腫瘍免疫応答を促進することができる。
【0146】
宿主免疫応答性を活性化する他の抗体は、抗PD-1と組み合わせて使用することができる。これらの抗体は、DC機能と抗原提示を活性化する樹状細胞の表面上の分子を含む。抗CD40抗体は、T細胞ヘルパー活性を効果的に置換することができ(Ridge et al.(1998)Nature 393:474-478)、PD-1抗体と組み合わせて使用できる(Ito et al.(2000)Immunobiology 201(5)527-40)。CTLA-4(例えば、米国特許第5,811,097号)、OX-40(Weinberg et al.(2000)Immunol 164:2160-2169)、4-1BB(Melero et al.(1997)Nature Medicine 3:682-685(1997)及びICOS(Hutloff et al.(1999)Nature 397:262-266)などのT細胞共刺激分子に対する活性化抗体は、T細胞活性化のレベルを高めることができる。
【0147】
腫瘍に対する抗原特異的T細胞を刺激するために、抗原特異的T細胞のエクスビボ活性化及び拡大ならびにこれらの細胞のレシピエントへの養子移入を含むいくつかの実験的治療プロトコルもある(Greenberg&Riddell(1999)Science 285:546-51)。これらの方法は、CMVなどの感染性因子に対するT細胞応答を活性化するためにも使用できる。抗PD-1抗体の存在下でのエクスビボ活性化は、養子移入されたT細胞の頻度と活性を増加させることができる。
【0148】
<感染症>
【0149】
本発明の他の方法は、特定の毒素及び病原体に曝露された患者を治療するために使用される。したがって、本発明の他の態様は、被験体に抗PD-1抗体又はその抗原結合部分を投与することにより前記被験体の感染症を治療することを含む被験体における感染症の治療方法を提供する。好ましくは、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体である。
【0150】
上記で論じたような腫瘍へのその適用と同様に、抗体媒介性のPD-1遮断を、単独で、又はワクチンと組み合わせてアジュバントとして使用して、病原体、毒素、及び自己抗原に対する免疫応答を刺激することができる。この治療アプローチが特に有用であり得る病原体の例には、効果的なワクチンが現在存在していない病原体、又は従来のワクチンが完全に効果的ではない病原体が含まれる。これらには、限定はしないが、HIV、肝炎(A型、B型、及びC型)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が含まれる。
【0151】
<併用療法>
【0152】
他の態様において、本発明は、併用療法を提供する。この併用療法では、本発明の抗PD-1抗体(又はその抗原結合部分)を免疫応答の刺激に有効な1つ以上の追加抗体と同時に投与することにより、被験体における免疫応答をさらに増強、刺激又はアップレギュレートする。一実施形態において、本発明は、被験体における免疫応答を刺激する方法を提供する。この方法は、被験体に抗PD-1抗体及び1つ以上の追加の免疫刺激抗体(例えば、抗LAG-3抗体、抗PD-L1抗体及び/又は抗CTLA-4抗体)を同時に投与することにより、被験体において免疫応答を刺激する(例えば、腫瘍成長を抑制するか、又は抗ウイルス応答を刺激する)ことを含む。
【0153】
別の実施形態において、本発明は、腫瘍の成長が阻害されるように、抗PD-1抗体、並びに、抗LAG-3抗体、抗PD-L1抗体、及び/又は抗CTLA-4抗体などの1つ以上の追加の免疫刺激抗体を被験体に投与することを含む、過剰増殖性疾患(例えば、がん)を治療するための方法を提供する。
【0154】
抗体による、PD-1、並びにCTLA-4及び/又はLAG-3及び/又はPD-L1などの1つ以上の第2の標的抗原の遮断は、患者におけるがん性細胞に対する免疫応答を増強し得る。その成長が本開示の抗体を使用して阻害され得るがんには、免疫療法に対して典型的に応答性のがんが含まれる。本開示の併用療法で治療するためのがんの代表的な例には、抗PD-1抗体での単剤療法についての考察において上記で具体的に列挙されているがんが含まれる。
【0155】
特定の実施形態において、本明細書において論じられる治療用抗体の組み合わせは、薬学的に許容される担体中の単一の組成物として同時に、又は薬学的に許容される担体中の各抗体を有する別個の組成物として同時に、投与することができる。別の実施形態において、治療用抗体の組み合わせは、連続的に投与することができる。
【0156】
さらに、2以上の用量の併用療法を連続的に投与する場合、連続投与の順序は、投与の各時点で逆になっても同一の順序で維持されてもよく、連続投与は同時投与であり得るか、又はこれらのあらゆる組み合わせであり得る。
【0157】
組み合わされたPD-1並びにCTLA-4及び/又はLAG-3及び/又はPD-L1の遮断はまた、標準的ながん治療とさらに組み合わせることができる。例えば、組み合わされたPD-1並びにCTLA-4及び/又はLAG-3及び/又はPD-L1の遮断は、化学療法レジメと効果的に組み合わせることができる。これらの場合において、本開示の組み合わせと投与される他の化学療法試薬の用量を低減させることが可能である(Mokyr et al.(1998)Cancer Research 58:5301-5304)。
【0158】
他の例においた、抗PD-1と抗CTLA-4及び/又は抗LAG-3抗体及び/又は抗PD-L1抗体の組み合わせは、抗腫瘍性抗体と組み合わせて使用することができる。前記抗腫瘍性抗体は、例えば、RituxanTM(リツキシマブ)、HerceptinTM(トラスツズマブ)、BexxarTM(トシツモマブ)、ZevalinTM(イブリツモマブ)、CampathTM(アレムツズマブ)、LymphocideTM(パーツズマブ)、AvastinTM(ベバシズマブ)及びTarcevaTM(エルロチニブ)などである。理論に拘束されない一例としてと、抗がん抗体及び毒素に結合した抗がん抗体による治療は、CTLA-4、PD-1、PD-L1及びLAG-3によって媒介される免疫応答を強化するがん細胞死(例、腫瘍細胞)を引き起こすことができる。例示的な実施形態では、過剰増殖性疾患(例えば、がん腫瘍)の治療は、抗PD-1、抗CTLA-4及び/及び抗LAG-3及び/及び抗PD-L1抗体と組み合わせた抗癌抗体を同時、順次、及びそれらの任意の組み合わせで含むことができ、これにより、宿主による抗腫瘍免疫応答を強化することができる。
【0159】
腫瘍は多種多様なメカニズムにより宿主の免疫監視を回避する。これらのメカニズムの多くは、腫瘍によって発現される免疫抑制性のあるタンパク質の不活性化によって克服することができる。これらのタンパク質は、特にTGF-β(Kehrl et al.(1986)J.Exp.Med.163:1037-1050)、IL-10(Howard&O’Garra(1992)Immunology Today 13:198-200)、及びFasリガンド(Hahne et al.(1996)Science 274:1363-1365)を含む。他の例では、。これらの各実体に対する抗体を抗PD-1、抗CTLA-4及び/又は抗LAG-3及び/又は抗PD-L1抗体と組み合わせて使用することにより、免疫抑制剤の効果を打ち消し、宿主による抗腫瘍免疫応答を促進することができる。
【0160】
宿主免疫応答性を活性化する他の抗体は、抗PD-1、抗CTLA-4及び/又は抗LAG-3及び/又は抗PD-L1抗体の組み合わせと組み合わせて使用することができる。これらの抗体は、DC機能と抗原提示を活性化する樹状細胞の表面上の分子を含む。抗CD40抗体(Ridge et al.,supra)は、抗LAG-3、抗CTLA-4及び/又は抗PD-1及び/又は抗PD-L1の組み合わせと組み合わせて使用できる(Ito et al.,supra)。T細胞共刺激分子に対する他の活性化抗体(Weinberg et al.,supra,Melero et al.supra,Hutloff et al.,supra)もT細胞活性化レベルを高めることができる。
【0161】
腫瘍に対する抗原特異的T細胞を刺激するために、抗原特異的T細胞のエクスビボ活性化及び拡大ならびにこれらの細胞のレシピエントへの養子移入を含むいくつかの実験的治療プロトコルもある(Greenberg&Riddell,supra)。これらの方法は、CMVなどの感染性因子に対するT細胞応答を活性化するためにも使用できる。抗LAG-3、抗CTLA-4及び/又は抗PD-1及び/又は抗PD-L1抗体の存在下でのエクスビボ活性化は、養子移入されたT細胞の頻度と活性を増加させることができる。
【0162】
以下、本発明の実施形態を示す。
[1]CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む重鎖可変領域を含む、分離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域が、
(1)それぞれ、配列番号1、配列番号2、及び配列番号3、又は
(2)それぞれ、配列番号1、配列番号2、及び配列番号4
のアミノ酸配列を含み、
抗体又はその抗原結合断片がPD-1に結合する、
前記分離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
[2]CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域を含む軽鎖可変領域をさらに含み、CDR1領域、CDR2領域、及びCDR3領域が、それぞれ配列番号5、6、及び7のアミノ酸配列を含む、[1]に記載の抗体又はその抗原結合部分。
[3]配列番号8~16のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、[1]に記載の抗体又はその抗原結合部分。
[4]配列番号17に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、[1]に記載の抗体又はその抗原結合部分。
[5]配列番号17に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をさらに含む、[3]に記載の抗体又はその抗原結合部分。
[6]重鎖及び軽鎖を含み、重鎖が、配列番号21~38のいずれか1つに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、軽鎖が、配列番号39に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、[1]に記載の抗体又はその抗原結合部分。
[7](a)ヒトPD-1に結合する、(b)サルPD-1に結合する、(c)マウスPD-1に結合しない、(d)CD28と交差反応しない、(e)ICOSと交差反応しない、(f)BTLAと交差反応しない、(g)CTLA-4と交差反応しない、(h)PD-1-PD-L1相互作用を阻害する、(i)PD-1-PD-L2相互作用を阻害する、(j)T細胞によるIL-2の放出を誘発する、(k)T細胞によるIFNgの放出を誘発する、(l)PD-1発現細胞に対してADCCを誘発しない、及び/又は(m)PD-1発現細胞に対してCDCを誘発しない、[1]に記載の抗体又はその抗原結合部分。
[8]ヒト抗体、マウス抗体、キメラ抗体、又はヒト化抗体である、[1]に記載の抗体又はその抗原結合部分。
[9][1]に記載の抗体又はその抗原結合部分、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
[10]抗腫瘍剤をさらに含む、[9]に記載の医薬組成物。
[11]腫瘍の成長を阻害するための薬剤の調製における、[1]に記載の抗体又はその抗原結合部分の使用。
[12]腫瘍が、結腸直腸腺がん、肺がん、リンパ腫、中皮腫、黒色腫、及び腎細胞がんからなる群から選択される、[11]に記載の使用。
本開示は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これらの実施例はさらなる限定と解釈されるべきではない。本出願を通して引用されたすべての図及びすべての参考文献、Genbank配列、特許及び公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0163】
[実施例]
[実施例1]
ファージのパンニング、スクリーニング、及び親和性成熟
ファージライブラリー
抗体一本鎖ファージディスプレイライブラリーを、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)のレパートリーをクローニングすることによって作成した。重鎖レパートリー及び軽鎖レパートリーを、末梢血から主に回収したヒトリンパ球からのPCR増幅によって作成した。VLレパートリー及びVHレパートリーを混合し、オーバーラッププライマーを用いるPCRにかけた。抗体の最終フォーマットは、VH断片及びVL断片を有する一本鎖Fv(scFv)に、可撓性のリンカーペプチド(GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号60))が連結したものであった。
【0164】
ヒトPD-1に対するファージライブラリーパンニング
【0165】
特異的scFv断片を提示するファージ粒子の選択を、Immuno 96 MicroWellTMプレート(Nunc、Denmark)で行った。まず、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の50μg/mlのPD-1組換えタンパク質(AcroBiosystems、カタログ番号PD1-H5221)を、プレートに一晩、4℃でコーティングした。PBS(2%MPBS)中の2%(w/v)ミルクパウダーでブロッキングした後、約1011個のファージ粒子を含有するライブラリーを添加し、プレートを2時間、室温(RT、25~28℃)でインキュベートした。プレートを、0.1%Tween 20を含有するPBS(PBS-T)で10~20回洗浄し、その後、PBSで10~20回洗浄することによって、結合していないファージを除去した。結合したファージを、50μlの1μg/μlトリプシンと10分間、その後、pH2.0の50μlの50mMグリシン-HClとインキュベーションすることによって溶出した(10分後に、pH7.5の50μlの200mMのNa2HPO4ですぐに中和した)。4ラウンドのパンニングを行った。
【0166】
ファージスクリーニング
【0167】
3ラウンド目及び4ラウンド目のパンニングから、ファージをピックアップし、ヒトPD-1の結合について試験した。具体的には、ヒトPD-1(AcroBiosystems、カタログ番号PD1-H5221)を0.1μg/mLで96ウェルプレートにコーティングし、単一クローンファージをプレートに添加した。次いで、結合していないファージを洗い流し、結合したファージを、抗M13二次抗体(Abcam、カタログ番号ab50370)によって検出した。
【0168】
ELISA陽性クローンをシーケンシングし、そこから、クローン21F12、16B2、16C1、19E11、及び45E2を含む5つの固有の配列を同定した。抗PD-1抗体21F12の重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列のID番号を上記の表1に示す。
【0169】
親和性成熟
【0170】
クローン21F12由来の抗体の結合親和性を向上させるために、HCDR1及びHCDR3についての2つのファージライブラリーをパンニングのために構築した。3ラウンドのパンニングの後、バリアントを、ヒトPD-1(AcroBiosystems、カタログ番号PD1-H5221)への正の結合についてELISAスクリーニングによって試験した。正のバリアントのオフ速度ランキングを、Octet Red 96(Fortebio)によって決定した。オフ速度が向上したクローンを取り出し、分析のために完全長IgGに変換した。バリアント抗PD-1抗体21F12-1B12、21F12-1E11、21F12-2E1、21F12-2H7、21F12-1C4、21F12-1E10、21F12-1F6、及び21F12-3G1の重鎖/軽鎖のアミノ酸配列のID番号もまた、上記の表1にまとめた。
【0171】
各抗PD-1抗体の重鎖及び軽鎖をコードするヌクレオチド配列を、発現ベクターpcDNA3.1(Invitrogen)に挿入し、ここで、抗体は、配列番号18で示されるアミノ酸配列を有する突然変異体IgG1定常領域、及び配列番号20で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域を含有していた。ベクターを、ExpiCHOTM発現系(ThermoFisher)を製造者の指示に従って使用して、CHO-S細胞にコトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞をExpiCHOTM発現培地において12日間培養し、次いで、培養上清を採取し、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー(GE healthcare)での精製に送った。
【0172】
[実施例2]
抗PD-1モノクローナル抗体の物理的及び化学的特性
クローン21F12由来の抗体をサイズ排除クロマトグラフィーで試験した。特に、20μgのサンプルを、100mMのリン酸ナトリウム+100mMのNa2SO4(pH7.0)をランニングバッファーとして使用して、TSK G3000SWXLカラムに注入した。ラン時間は29分間であった。全ての測定は、Agilent 1220 HPLCで行った。データを、OpenLABソフトウェアを使用して分析した。
【0173】
図1に示すように、抗体21F12のメインピークはSECにおいて95%を超えており、このことは、精製された抗体の高い純度及び完全性を示唆している。
【0174】
[実施例3]
抗PD-1抗体はヒトPD-1に結合した
ELISAアッセイを行って、ヒトPD-1への抗体の相対的結合能力を決定した。
【0175】
ヒトPD-1タンパク質(SINO Biological Inc.、カタログ番号10377-H08H-100)を、一晩、4℃、25ng/ウェルでインキュベートすることによって、96ウェルプレートに固定した。プレートを次いで、PBS中の1%BSAと1時間、37℃でインキュベートすることによって、ブロッキングした。ブロッキングした後、プレートを、PBST(0.05%Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した。連続希釈した抗PD-1抗体(配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)又はヒトIgGコントロール(配列番号61及び62で示される重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を使用して、米国特許出願第20190016800A1号に従って調製された)を、結合バッファー(0.05%Tween20及び0.5%BSAを含有するPBS)中で調製し、固定されたタンパク質と1時間、37℃でインキュベートした。結合した後、プレートをPBSTで3回洗浄し、1時間、37℃で、結合バッファー中に1/20000希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトF(ab’)2抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-035-097)とインキュベートし、再度洗浄し、TMB(ThermoFisherカタログ番号34028)で15分間可視化し、次いで、1MのH2SO4で停止させた。各プレートウェルは、各ステップで50μLの溶液を含有していた。
【0176】
450nm~620nmでの吸光度を決定した。ヒトPD-1に結合している抗体についてのEC
50値及び結合曲線を
図2Aから
図2Dに示し、これは、本発明の抗PD-1抗体がヒトPD-1に特異的に結合したことを示唆している。
【0177】
[実施例4]
抗PD-1抗体はヒト及びカニクイザルPD-1に結合した
ELISAアッセイを行って、組換えヒト、カニクイザル、及びマウスPD-1への抗体の相対的結合活性を決定した。
【0178】
ヒトPD-1タンパク質(SINO Biological Inc.、カタログ番号10377-H08H-100)、カニクイザルPD-1タンパク質(Acrobiosystems、カタログ番号PD1-C5223)、又はマウスPD-1タンパク質(SINO Biological Inc.、カタログ番号50124-M08H)を、一晩、4℃、25ng/ウェルでインキュベートすることによって、96ウェルプレートに固定した。プレートを次いで、PBS中の1%BSAと1時間、37℃でインキュベートすることによって、ブロッキングした。ブロッキングした後、プレートを、PBST(0.05%Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した。連続希釈したニボルマブ類似体(ポジティブコントロールとして使用され、配列番号63及び64で示される重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を使用して調製された)、抗PD-1抗体21F12-1F6(配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)、ヒトIgGコントロール(実施例3において調製された通り)を、結合バッファー(0.05%Tween20及び0.5%BSAを含有するPBS)中で調製し、固定されたタンパク質と1時間、37℃でインキュベートした。結合した後、プレートをPBSTで3回洗浄し、1時間、37℃で、結合バッファー中に1/20000希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトF(ab’)2抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-035-097)とインキュベートし、再度洗浄し、TMB(ThermoFisherカタログ番号34028)で15分間可視化し、次いで、1MのH2SO4で停止させた。各プレートウェルは、各ステップで50μLの溶液を含有していた。
【0179】
450nm~620nmでの吸光度を決定した。ヒトPD-1、カニクイザルPD-1、又はマウスPD-1に結合している抗体についてのEC
50値及び結合曲線を
図3Aから3Cに示した。データは、抗PD-1抗体21F12-1F6がヒト及びサルPD-1に特異的に結合したが、マウスPD-1には結合しなかったことを示唆した。特に、抗体21F12-1F6は、ニボルマブ類似体と比較して低いEC50値でサルPD-1に結合した。
【0180】
[実施例5]
ヒト及びカニクイザルPD-1タンパク質に対する抗PD-1抗体の結合親和性
ヒトPD-1及びカニクイザルPD-1に対する抗体21F12-1F6の動態結合活性を、Biacore X100システム(Biacore、GE Healthcare)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。
【0181】
簡潔に述べると、固定バッファー(10mMの酢酸ナトリウム、pH4.5)中の50μg/mLのヤギ抗ヒトFcγ(Jackson Immunoカタログ番号109-005-098)をフローセルに注入し、8008.5RUの固定レベルを得た。抗PD-1抗体21F12-1F6(配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)とランニングバッファー(HBS-EP+バッファー)とを、5μL/分の流量でフローセルに注入した。12.5nMから200nMの範囲の様々な濃度のヒトPD-1-hisタンパク質(Acrobiosystems、カタログ番号PD1-H5221)を、ランニングバッファー中での希釈を用いて調製した。各濃度のヒトPD-1タンパク質を、30μL/分の流量で120秒間の結合領域にわたり注入し、その後、500秒間解離させた。各サイクルの後、CM5チップ表面を、10mMのグリシン-HCl(pH1.5)を30μL/分の流量で30秒間注射して再生させた。バックグラウンド除去結合センサーグラムを使用して結合速度Ka及び解離速度Kdを分析し、それに応じて平衡解離定数KDを計算した。得られたデータセットを、Biacore X100評価ソフトウェアを使用して1:1ラングミュア結合モデルにフィットさせた。
【0182】
サルPD-1の結合では、固定バッファー(10mMの酢酸ナトリウム、pH4.5)中の50μg/mLのヤギ抗ヒトFcγ(Jackson Immunoカタログ番号109-005-098)をフローセルに注入し、7807.1RUの固定レベルを得た。抗PD-1抗体21F12-1F6とランニングバッファー(HBS-EP+バッファー)とを、5μL/分の流量でフローセルに注入した。12.5nMから200nMの範囲の様々な濃度のカニクイザルPD-1-hisタンパク質(Acrobiosystems、カタログ番号PD1-C5223)を、ランニングバッファー中での希釈を用いて調製した。各濃度のカニクイザルPD-1タンパク質を、30μL/分の流量で120秒間の結合領域にわたり注入し、その後、500秒間解離させた。各サイクルの後、CM5チップ表面を、10mMのグリシン-HCl(pH1.5)を30μL/分の流量で30秒間注射して再生させた。バックグラウンド除去結合センサーグラムを使用して結合速度Ka及び解離速度Kdを分析し、それに応じて平衡解離定数KDを計算した。得られたデータセットを、Biacore X100評価ソフトウェアを使用して1:1ラングミュア結合モデルにフィットさせた。
【0183】
以下の表2は、ヒトPD-1タンパク質及びカニクイザルPD-1タンパク質に対する抗PD-1抗体21F12-1F6の結合親和性をまとめたものである。
【0184】
【0185】
[実施例6]
抗PD-1抗体は、ヒトICOS、ヒトCD28、ヒトCTLA-4、又はヒトBTLAと交差反応しなかった
ELISAアッセイを使用して、組換えヒトICOS、ヒトCD28、ヒトCTLA4、及びヒトBTLAに対する抗PD-1抗体の結合活性を決定した。
【0186】
ヒトICOS(Acrobiosystems、カタログ番号ICS-H5250)、ヒトCD28(Acrobiosystems、カタログ番号11524-H02H)、ヒトCTLA-4(Acrobiosystems、カタログ番号CT4-H5229)、又はヒトBTLA(Acrobiosystems、カタログ番号BTA-H52E0)を、一晩、4℃、25ng/ウェルでインキュベートすることによって、96ウェルプレートに固定した。プレートを次いで、PBS中の1%BSAと1時間、37℃でインキュベートすることによって、ブロッキングした。ブロッキングした後、プレートを、PBST(0.05%Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した。連続希釈したニボルマブ類似体(実施例4において調製された通り)、21F12-1F6(配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)、及びヒトIgGコントロール(実施例3において調製された通り)を、結合バッファー(0.05%Tween20及び0.5%BSAを含有するPBS)中で調製し、固定されたタンパク質と1時間、37℃でインキュベートした。結合した後、プレートをPBSTで3回洗浄し、1時間、37℃で、結合バッファー中に1/20000希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトF(ab’)2抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-035-097)とインキュベートし、再度洗浄し、TMB(ThermoFisherカタログ番号34028)で15分間可視化し、次いで、1MのH2SO4で停止させた。各プレートウェルは、各ステップで50μLの溶液を含有していた。
【0187】
450nm~620nmでの吸光度を決定した。ヒトICOS、ヒトCD28、ヒトCTLA4、及びヒトBTLAに結合している抗体の代表的な結合曲線を
図4Aから
図4Dにそれぞれ示した。データは、抗PD-1抗体21F12-1F6が、試験した通りのタンパク質に結合しなかったことを示した。
【0188】
[実施例7]
抗PD1抗体は、PD-1とPD-L1又はPD-L2との相互作用を遮断した
抗PD-1抗体の、ヒトPD-L1又はPD-L2へのヒトPD-1の結合を阻害する能力を評価するために、ELISA遮断アッセイを行った。
【0189】
ヒトPD-1(Leadsbiolabsにおいて調製され、配列番号66で示されるNP_005009.2のアミノ酸配列)を、一晩、4℃、25ng/ウェルでインキュベートすることによって、96ウェルプレートに固定した。非特異的結合部位を、PBS中の1%BSAと1時間、37℃でインキュベートすることによってブロッキングした。ブロッキングした後、プレートを、PBST(0.05%Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した。連続希釈したニボルマブ類似体(実施例4において調製された通り)、抗PD-1 21F12抗体(全て、配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)、及びヒトIgGコントロール(実施例3において調製された通り)を、結合バッファー(0.05%Tween20及び0.5%BSAを含有するPBS)中で調製し、同一容積で0.8μg/mLで調製されたヒトPD-L1-マウスFcタグ(Leadsbiolabsにおいて調製された、配列番号65で示されるアミノ酸配列)と混合し、次いで、得られた混合物を、固定されたタンパク質と1時間、37℃でインキュベートした。その後、プレートをPBSTで3回洗浄し、1時間、37℃で、結合バッファー中に1/10000希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウス-Fc IgG(Jackson Immuno Research、カタログ番号115-035-164)とインキュベートし、再度洗浄し、TMB(ThermoFisherカタログ番号34028)で15分間可視化し、次いで、1MのH2SO4で停止させた。各プレートウェルは、各ステップで50μLの溶液を含有していた。
【0190】
450nm~620nmでの吸光度を決定した。これらの抗体についての代表的な結合曲線及びIC
50値を
図5Aから
図5Eに示した。結果は、本発明の抗PD-1抗体がヒトPD1とPD-L1との間の相互作用を遮断したことを示した。
【0191】
同様に、100ng/ウェルのヒトPD-1(Leadsbiolabsにおいて調製された、配列番号66で示されるアミノ酸配列)を、一晩、4℃でインキュベートすることによって、96ウェルプレートに固定した。非特異的結合部位を、PBS中の1%BSAと1時間、37℃でインキュベートすることによってブロッキングした。ブロッキングした後、プレートを、PBST(0.05%Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した。連続希釈したニボルマブ類似体(実施例4において調製された通り)、21F12-1F6(配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)、及びヒトIgGコントロール(実施例3において調製された通り)を、結合バッファー(0.05%Tween20及び0.5%BSAを含有するPBS)中で調製し、同一容積で0.8μg/mLで調製されたヒトPD-L2-hisタグ(SINO Biological Inc、カタログ番号10292-H08H)と混合し、次いで、得られた混合物を、固定されたタンパク質と1時間、37℃でインキュベートした。その後、プレートをPBSTで3回洗浄し、1時間、37℃で、結合バッファー中に1/5000希釈したペルオキシダーゼ標識マウス抗hisタグ抗体(GenScript、カタログ番号A00612)とインキュベートし、再度洗浄し、TMB(ThermoFisherカタログ番号34028)で15分間可視化し、次いで、1MのH2SO4で停止させた。各プレートウェルは、各ステップで50μLの溶液を含有していた。
【0192】
450nm~620nmでの吸光度を決定した。これらの抗体についての代表的な結合曲線及びIC
50値を
図5Fに示した。結果は、抗体21F12-1F6がヒトPD1とPD-L2との間の相互作用を遮断したことを示した。
【0193】
[実施例8]
抗PD-1抗体は、CHO-K1-PD-1細胞によって発現される細胞表面PD-1に結合した
抗PD-1抗体を、CHO-K1細胞で安定的に発現されるヒトPD-1に結合するそれらの能力について試験した。
【0194】
チャイニーズハムスター卵巣上皮CHO-K1細胞株(ATCC、カタログ番号CCL-61)を、5%CO2を有する加湿インキュベーター内の10%FBSを含有するF-12K培地において37℃で維持した。配列番号66のヒトPD-1をコードする核酸配列を、ポリエチレンイミン(MW25K、23966-2、Polyscience)を使用して、CHO-K1細胞にトランスフェクトし、ヒトPD-1を安定的に発現するクローンを、限界希釈によって得た。
【0195】
連続希釈した抗PD-1抗体を、上記で調製された50μLの10000個のCHO-K1細胞に添加した。得られた混合物を4℃で30分間インキュベートし、次いで、細胞をPBSバッファーによって2回洗浄した。PBSバッファー中のPE標識ロバ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Researchカタログ番号109-116-098)第2試薬(1:100)を使用して、第2試薬と混合物とを4℃で30分間インキュベートし、その後2回洗浄することによって、結合を検出した。その後、細胞をPBSバッファー中に再懸濁した。ヒトPD-1の結合の分析を、BD Accuri C5フローサイトメーター(BD Bioscience)で行った。これらの抗体についての代表的な結合曲線及びEC
50値を、
図6A及び
図6Bに示した。
【0196】
結果は、本発明の抗PD-1抗体(配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)及びニボルマブ類似体が、CHO-K1細胞で安定的に発現されるヒトPD-1に、類似のEC50値で、特異的に結合したことを示した。
【0197】
[実施例9]
抗PD-1抗体は、刺激されたPBMCによって発現された細胞表面PD-1に結合した
抗PD-1抗体を、刺激されたPBMCで発現されるヒト及びカニクイザルPD-1に結合するそれらの能力について試験した。
【0198】
ヒト及びカニクイザルPBMCを、密度勾配遠心分離によって末梢血から分離した。3×10
6個のヒトPBMCを、PBS(Hyclone、カタログ番号SH3025601)中に5μg/mLで希釈された濃度の、コーティングされた抗CD3(Biogems、カタログ番号05121-25-500)抗体によって、24時間、事前刺激した。3×10
6個のカニクイザルPBMCを、20ng/mLの濃度のSEB(Toxin Tech、カタログ番号BT202)によって2日間、事前刺激した。連続希釈したニボルマブ類似体(実施例4において調製された通り)及び21F12-1F6(配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)を、10万個のヒトPBMC又は10万個のカニクイザルPBMCにそれぞれ添加した。混合物を4℃で30分間インキュベートし、次いで、細胞を、PBS(Hyclone、カタログ番号SH3025601)バッファーを使用して2回洗浄した。細胞を、PE標識ヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-116-098)第2試薬と製造者の指示に従って4℃で30分間インキュベートし、次いで、2回洗浄した。その後、細胞をPBSバッファー中に再懸濁した。PD-1の結合の分析を、BD Accuri C5フローサイトメーター(BD Bioscience)で行った。これらの抗体についての代表的な結合曲線及びEC
50値を、
図7A及び
図7Bに示した。
【0199】
結果は、抗PD-1抗体である21F12-1F6及びニボルマブ類似体の両方が、ヒト及びカニクイザルの刺激されたPBMCで発現されているPD-1に特異的に結合し得、抗体21F12-1F6が、ニボルマブ類似体と比較して低いEC50値でサルPD-1に結合したことを示した。
【0200】
[実施例10]
抗PD-1抗体は、ヒトT細胞によるIL-2及びIFNγの放出を誘発した
抗PD-1抗体の機能的活性を、SEB刺激後のヒトPBMCで評価した。
【0201】
ヒトPBMCを、密度勾配遠心分離によって、健康なドナーの末梢血から分離した。ヘパリン添加した血液を2倍の容積のPBSによって希釈し、希釈した血液をSepMate-50(Stemcell、カタログ番号86450)チューブ中で層にした。1200gで10分間、室温で遠心分離した後、リンパ球含有画分を採取し、PBSで洗浄し、10%DMSO(Sigma、カタログ番号D2650)及び90%FBS(Gibco、カタログ番号10099141)で組成されている凍結培地中に再懸濁し、次いで、液体窒素中に保存した。7.5×106個のヒトPBMCを、20ng/mLの濃度のSEB(Toxin Tech、カタログ番号BT202)で24時間刺激した。10万個の得られた細胞を、96ウェルプレートの各ウェルにおいて、完全RPMI 1640(Gibco、カタログ番号22400089)中に播種した。連続希釈したニボルマブ類似体(実施例4において調製された通り)、21F12-1F6(配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)、及びヒトIgGコントロール(Biolegend、カタログ番号QA16A15)を培地にそれぞれ添加した。SEBを20ng/mLの最終濃度で添加し、得られた混合物を37℃で2日間インキュベートし、培養上清を回収し、IL-2及びIFNγのレベルを、ヒトIL2 ELISAキット(R&D、カタログ番号DY202)及びヒトIFN-ガンマELISAキット(R&D、カタログ番号DY285B)を製造者の指示に従って使用して、ELISAによって検出した。
【0202】
IL-2のレベルを
図8Aに示し、
IFNγのレベルを
図8Bに示した。
【0203】
結果は、刺激されたヒトPBMCが、21F12-1F6治療で、ニボルマブ類似体又はIgGコントロールでの治療と比較して、より高いレベルのIL2及びIFNγを放出したことを示した。
【0204】
[実施例11]
抗PD-1抗体は、Jurkat-NFAT-PD1レポーター遺伝子の発光を誘発した
抗PD-1抗体の活性を、Jurkat-NFAT-PD-1レポーター遺伝子アッセイで評価した。
【0205】
Jurkat-NFAT-PD1エフェクター細胞をCHO-PDL1/CD3標的細胞と共培養すると、TCR-NFAT媒介発光が、PD-1-PD-L1相互作用について阻害された。細胞混合物に抗PD-1抗体を添加した後、PD-1-PDL1相互作用は遮断され、発光が次いで回復した。
【0206】
チャイニーズハムスター卵巣上皮CHO-K1細胞株(ATCC、カタログ番号CCL-61)を、5%CO
2を有する加湿インキュベーター内の10%FBSを含有するF-12K培地において37℃で維持した。ヒトPD-L1(配列番号67で示されるNP_054862.1のアミノ酸)及びOKT3-scFv(配列番号68で示されるアミノ酸配列)をコードする核酸配列を、ポリエチレンイミン(MW25K、23966-2、Polyscience)を使用してCHO-K1細胞にコトランスフェクトし、ヒトPD-L1及びOKT3-scFvを安定的に発現するクローンを、限界希釈によって得た。得られたCHO-PDL1/CD3標的細胞を、1日目に96ウェルプレートに播種した(30000個細胞/ウェル)。2日目に、96ウェルプレート上の培地(10%FBSを含有するDMEM-F12)を廃棄し、次いで、連続希釈した抗PD-1抗体並びにJurkat-NFAT-PD1細胞(エレクトロポレーションによって、Jurkat細胞株(CBTCCCAS、クローンE6-1)と、配列番号66のヒトPD-1及びpGL4.30[luc2P/NFAT-RE/Hygro](Promega、E848A)をコードする核酸配列とをコトランスフェクトすることによって調製され、ヒトPD-1及びNFATを安定的に発現するクローンを限界希釈によって得た)(30000個細胞/ウェル)を、プレートに添加した。プレートを、37℃、5%CO
2のインキュベーターで6時間インキュベートした。次いで、60
μLのOne-Glo
TM試薬(Promega Corporationカタログ番号E6130)を、アッセイプレートのウェルに添加し、発光を、発光プレートリーダー(Tecan F200)を使用して測定した。EC
50値を計算し、PD-L1とPD-1との相互作用の遮断についての代表的な曲線を
図9に示した。
【0207】
結果は、抗PD-1抗体21F12-1F6(配列番号18の突然変異体IgG1定常領域を有する)及びニボルマブ類似体が、類似のEC50値でヒトPD-1とPD-L1との間の相互作用を遮断したことを示した。
【0208】
[実施例12]
FcγRIの結合
L234A、L235A、D265A、及びP329A突然変異を有する突然変異体IgG1定常領域、又はIgG4定常領域を、抗体21F12-1F6の重鎖定常領域として使用して、FcγR-Fc相互作用を引き起こした。ELISAアッセイを使用して、ヒトFcγRIに対する得られた抗体の相対的結合活性を決定した。
【0209】
ヒトFcγRI(Acrobiosystems、カタログ番号FCA-H52H2)を、一晩、4℃でインキュベートすることによって、96ウェルプレートに固定した。プレートを次いで、PBS中の1%BSAと1時間、37℃、200μL/ウェルでインキュベートすることによって、ブロッキングした。ブロッキングした後、プレートを、PBST(0.05%Tween20を含有するPBS)で3回洗浄した。連続希釈したリツキシマブ類似体(ポジティブコントロールとして使用され、配列番号69及び70で示される重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を用いて、米国特許第5,736,137号に従って調製された)、突然変異体IgG1定常領域を有する21F12-1F6、並びにIgG4定常領域を有する21F12-1F6を、結合バッファー(0.05%Tween20及び0.5%BSAを含有するPBS)中で調製し、固定されたタンパク質と1時間、37℃でインキュベートした。結合した後、プレートをPBSTで3回洗浄し、1時間、37℃で、結合バッファー中に1/10000希釈したペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトF(ab’)2抗体(Jackson Immuno Research、カタログ番号109-035-097)とインキュベートし、再度洗浄し、TMB(ThermoFisherカタログ番号34028)で15分間可視化し、次いで、1MのH2SO4で停止させた。各プレートウェルは、別段の指示がない限り、各ステップで50μLの溶液を含有していた。
【0210】
450nm~620nmでの吸光度を決定した。FcγRI-抗体の結合についてのEC
50及び代表的な結合曲線を、
図10に示した。
【0211】
結果は、IgG4重鎖定常領域又は突然変異体IgG1重鎖定常領域を有する21F12-1F6が、野生型IgG1重鎖定常領域を有するリツキシマブ類似体と比較して非常に弱くヒトFcγRIに結合したことを示した。
【0212】
[実施例13]
抗PD-1抗体は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)を誘発しなかった
抗体依存性細胞介在性細胞傷害性(ADCC)アッセイをJurkat-PD1細胞で行った。Jurkat-PD-1細胞は、エレクトロポレーションによって、ヒトPD-1(配列番号66で示されるアミノ酸)をコードする核酸配列でJurkat細胞株(CBTCCCAS、クローンE6-1)をトランスフェクトすることによって調製した。ヒトPD-1を安定的に発現するクローンを、限界希釈によって得た。
【0213】
Jurkat-PD1細胞を、ウェル当たり10000個細胞の密度で播種し、アッセイバッファー(フェノールレッドを含有しないMEM培地+1%FBS)中で30分間、100nM又は10nMの抗PD-1抗体(突然変異体IgG1定常領域又はIgG4定常領域を有する)とプレインキュベートした。健康なドナーのPBMCエフェクター細胞を添加して、10:1、25:1、又は50:1のE/T比で、ADCCの影響を開始させた。Daudi(CBTCCCAS、カタログ番号TCHu140)に対するリツキシマブ類似体(実施例13において調製された通り)のADCCの影響を内部コントロールとして使用して、アッセイの質を確実なものとした。37℃、5%CO2のインキュベーターにおいて24時間インキュベートした後、細胞上清を次いで回収して、細胞傷害性LDHアッセイキット(Dojindo、カタログ番号CK12)を使用して、放出されたLDHを測定した。OD490nmでの吸光度をF50(Tecan)で読み取った。細胞溶解のパーセンテージを、以下の式に従って計算した。
細胞溶解%=100×(ODサンプル-OD標的細胞プラスエフェクター細胞)/(OD最大放出-OD最小放出)。
データをGraphpad Prismによって分析した。
【0214】
データは、突然変異体IgG1定常領域を有する抗PD-1抗体21F12-1F6も、IgG4定常領域を有する21F12-1F6も、Jurkat-PD1細胞に対してADCC活性を有していなかったことを示した。
【0215】
[実施例14]
抗PD-1抗体は、補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発しなかった
Jurkat-PD1細胞での補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイ。Jurkat-PD1細胞を、ウェル当たり5000個細胞の密度で播種し、アッセイバッファー(フェノールレッドを含有しないMEM培地+1%FBS)中で30分間、100nM又は10nMの抗体とプレインキュベートした。プレートに次いで、健康なドナーの血漿を10容積%、20容積%、及び50容積%の濃度で添加して、CDCの影響を開始させた。37℃、5%CO2のインキュベーターにおいて4時間インキュベートした後、細胞にCell-Titer Glo試薬(Promega、カタログ番号G7572)を添加し、RLUデータをF200(Tecan)で読み取った。細胞溶解のパーセンテージを、以下の式に従って計算した。
細胞溶解%=100×(1-(RLUサンプル)/(RLU細胞+NHP))(式中、NHPは正常なヒト血漿を表す。)
【0216】
データは、突然変異体IgG1定常領域を有する抗PD-1抗体21F12-1F6も、IgG4定常領域を有する21F12-1F6も、Jurkat-PD1細胞に対してCDC活性を有していなかったことを示した。
【0217】
[実施例15]
抗PD-1抗体は、インビボでの抗腫瘍効果を有していた
抗PD-1抗体のインビボでの有効性を、結腸がんを有するhPD-1 KIマウスにおいて研究した。
【0218】
本実施例における実験では、ヒトPD-1の細胞外部分を発現するヒト化マウスC57BL/6J-Pdcd1em1(PDCD1)Smocを、Shanghai Model Organisms Center,Inc.から購入した。
【0219】
MC38マウス結腸がん細胞株を、Obio Technology(Shanghai)Corp.,Ltd.から購入した。MC38細胞に、レトロウイルス形質導入を使用して、オボアルブミン(OVA)(配列番号71で示されるAAB59956のアミノ酸)をコードする核酸配列を形質導入した。細胞をその後、限界希釈によってクローニングした。OVAタンパク質を高度に発現するクローンを、ELISAキット(cloud clone corp、CEB459Ge)を使用して選択した。MC38-OVAクローンを、10%ウシ胎児血清と4μg/mLのピューロマイシン(Gibco、A11138-03)とを有する完全培地において維持した。
【0220】
C57BL/6J-Pdcd1em1(PDCD1)Smocマウスに、1×106個のMC38-OVA細胞を皮下移植し、これらのマウスを、平均腫瘍容積がおよそ80mm3(L×W2/2)に達したら、0日目に3つの群(各郡においてN=7)にランダム化した。0日目、3日目、7日目、10日目、及び14日目に、マウスに、21F12-1F6(突然変異体IgG1定常領域を有する、10mg/kg)、ニボルマブ類似体(実施例4において調製された通り、10mg/kg)、及びPBSをそれぞれ腹腔内投与した。腫瘍容積を、キャリパー測定によって、実験の間、週に2回、モニタリングした。
【0221】
抗PD-1抗体21F12-1F6及びニボルマブ類似体での治療は、PBS群と比較して有意な腫瘍成長阻害をもたらし、21F12-1F6群は、以下の表3に示すように、ニボルマブ類似体群と比較して高いTGI率を示した(89.95%対76.71%)。
【0222】
【0223】
本願における配列を以下にまとめる。
【0224】
【配列表】