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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】飛行時間測定用CMOSイメージセンサ
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/76 20230101AFI20240808BHJP
   G01S 7/4863 20200101ALI20240808BHJP
   G01S 17/894 20200101ALI20240808BHJP
   H04N 25/78 20230101ALI20240808BHJP
【FI】
H04N25/76
G01S7/4863
G01S17/894
H04N25/78
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021529128
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2019082208
(87)【国際公開番号】W WO2020104644
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】18382849.0
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19171544.0
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521221504
【氏名又は名称】テレダイン・インノバシオネス・ミクロエレクトロニカス・ソシエダッド・リミターダ・ウニペルソナル
【氏名又は名称原語表記】Teledyne Innovaciones Microelectronicas SLU
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ドミンゲス・カストロ
(72)【発明者】
【氏名】ホセ・アンヘル・セゴビア・デ・ラ・トレ
(72)【発明者】
【氏名】アナ・ゴンサレス・マルケス
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ロマイ
(72)【発明者】
【氏名】アマンダ・ヒメネス・マルフォ
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-032206(JP,A)
【文献】特開2017-036971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0261553(US,A1)
【文献】特開2012-021896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0194956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30 - 5/33
H04N 23/11
H04N 23/20 -23/30
H04N 25/00
H04N 25/20 -25/61
H04N 25/615-25/79
H01L 27/14 -27/148
H01L 29/76
H10K 39/32 -39/34
G01C 3/00 - 3/32
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 -17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパルス持続時間τを有する光パルスの立ち上がりエッジの時間発生を検出するためのCMOS撮像センサであって、
・画素であって、各画素(P)が、
‐電流源として動作する光検出器(PhD)と
素の電圧供給ノード(VDD-P)とセンスノード(SN)との間に接続され、連続的に動作する非線形抵抗器(R)と、を少なくとも含む画素構造を有し、
‐センスノード(SN)は、キャパシタンス(C)を有する容量性のセンスノードであって、該センスノードの前記非線形抵抗器(R)およびキャパシタンス(C)は、ローパスフィルタとして動作し、ある低周波範囲内で電流電圧変換を行い、ある高周波範囲内で積分を行うように構成される、画素と、
・画素内の光検出器に到達する光パルスの立ち上がりエッジの時間発生を測定するための少なくとも選択された画素(P)における測定フェーズを制御する制御回路(100)であって、
‐前記非線形抵抗器を介して前記画素内で連続電流電圧変換を実装し、
‐前記非線形抵抗器およびキャパシタンスによって、前記光検出器から受信した信号を変換し、高周波範囲内で少なくとも立ち上がりエッジパルス位置情報を含むメイン信号成分を有し、そして前記高周波範囲から離れた低周波範囲内に主に集中するノイズ成分を有する電圧信号(V SN )をセンスノードで生成するように構成された、制御回路(100)と、
・選択された画素のセンスノードからの電圧信号の読み出し回路であって、少なくとも
‐パルス幅持続時間に対して高いサンプリング時間を印加するアナログ/デジタル変換器(300)と、
‐アナログ/デジタル変換の前または後に、バンドパスフィルタまたはハイパスフィルタのうちの少なくとも1つを連続的に適用するように構成され、メイン信号成分付近の少なくともある周波数帯域における信号対ノイズ比を増加させ、少なくとも立ち上がりエッジパルス位置情報を回復させる効果を有する、フィルタリング手段(F)と含む、読み出し回路と、
を備えるCMOS撮像センサ。
【請求項2】
各画素(P)の画素構造はさらに、センスノード(SN)と光検出器との間に直列に接続された転送トランジスタ(T TX )を備え、転送トランジスタは、測定フェーズの全てでオン状態であり、そして転送トランジスタは、光検出器ノード(PN)とセンスノード(SN)との間のデカップリング素子として動作する、請求項1に記載のCMOS撮像センサ。
【請求項3】
非線形抵抗器は、セットトランジスタ(TRS)であり、選択された画素内のサブ閾値領域で動作し、該トランジスタは、さらにスイッチとして使用され、非選択画素における電圧基準でセンスノード(SN)を維持するようにオンになる、請求項1または2に記載のCMOS撮像センサ。
【請求項4】
制御回路は、画素の電圧供給ノードに印加されるゲート信号(RST)または電圧基準(VDD_RST)の少なくとも1つを制御することによって、選択された画素における非線形抵抗として前記リセットトランジスタを動作させるように構成される、請求項に記載のCMOS撮像センサ。
【請求項5】
転送トランジスタは、非選択画素においてもオンモードに設定される、請求項2に依存したときの請求項3または4に記載のCMOS撮像センサ。
【請求項6】
ある画素のセンスノードにおけるキャパシタンスは、5フェムトファラド以下である、請求項1~のいずれかに記載のCMOS撮像センサ。
【請求項7】
フィルタリング手段(F)は、アナログ/デジタル変換器の中に、サンプルホールド回路(301)の後でデジタル化回路(302)の前に実装される、請求項1~のいずれかに記載のCMOS撮像センサ。
【請求項8】
フィルタリング手段(F)は、デジタルで実装され、アナログ/デジタル変換器(300)によって提供されるデジタル化サンプル上で動作する、請求項1~のいずれかに記載のCMOS撮像センサ。
【請求項9】
前記デジタルフィルタリング手段(F)は、2つの連続サンプル信号の間の差分を計算することによって、ハイパスフィルタを達成する、請求項に記載のCMOS撮像センサ。
【請求項10】
フィルタは、高周波範囲における信号情報のパルス位置および振幅、ならびに低周波範囲における少なくとも背景光ノイズを抽出するように構成されたデジタルフィルタである、請求項に記載のCMOS撮像センサ。
【請求項11】
選択された画素のセンスノード(SN)と読み出し回路(300)との間に少なくとも電力増幅器(200)をさらに備え、電力増幅器は、ハイインピーダンス入力と、出力ライン(CL)のインピーダンスを読み出し回路に整合するインピーダンス出力とを有する、請求項1~10のいずれかに記載のCMOS撮像センサ。
【請求項12】
電力増幅器(200)は、少なくともソースフォロワ出力ステージ(TFW,TLD)を含む、請求項11に記載のCMOS撮像センサ。
【請求項13】
出力ラインは、伝送ライン(MST)である、請求項11または12に記載のCMOS撮像センサ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載のCMOS撮像センサをパルス光受信機として備え、
パルス光源が、測定フェーズごとに5つ以下光パルス放射するように動作する、ダイレクト飛行時間システム。
【請求項15】
画素に到達した光パルスの立ち上がりエッジの時間発生を測定するために、CMOS撮像センサ内の画素を動作させる方法であって、該画素は、
・光に露出され、電流源として動作する光検出器(PhD)と、
・供給電圧基準源と、キャパシタンス(C)を有する容量性のセンスノード(SN)との間に接続された第1リセットトランジスタ(TRST)であって、センスノードは、電圧信号を出力し、該第1リセットトランジスタ(T RST )および該センスノードのキャパシタンス(C)は、ローパスフィルタとして動作し、ある低周波範囲内で電流電圧変換を行い、ある高周波範囲内で積分を行うように構成される、第1リセットトランジスタ(TRST)と
を備える構造を有し、
該方法は、
・第1リセットトランジスタを非線形抵抗として連続的に動作させことと、
・前記非線形抵抗およびキャパシタンスによって、前記光検出器から受信した信号を変換し、高周波範囲内で少なくとも立ち上がりエッジパルス位置情報を含むメイン信号成分を有し、そして前記高周波範囲から離れた低周波範囲内に主に集中するノイズ成分を有する電圧信号(V SN )をセンスノードで生成することと、
アナログ/デジタル変換の前または後に、電圧信号(V SN をバンドパスフィルタまたはハイパスフィルタのうちの少なくとも1つを介して連続的にフィルタリングし、その結果、フィルタリングの周波数範囲における信号対ノイズ比を増加させることと、
・前記連続フィルタリングの前または後に、光パルスの持続時間(τ)に対応する周波数値よりも高いサンプリング周波数(SMP)で、アナログ/デジタル変換することと、
・フィルタ処理されたデジタル信号内の立ち上がりエッジパルス位置をレベルトリガリングにより決定することと、を含む測定フェーズを適用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、飛行時間(TOF:time-of-flight)測定のための光センサに関し、より詳細には、CMOS撮像センサをベースとした光センサおよびダイレクト飛行時間測定(D-TOF)に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行時間光センサは、3Dイメージングおよび測距アプリケーション、例えば、測量または自動運転支援アプリケーションにおいて使用され、観察中の場面での任意の物体/細部の距離マップを提供する。各距離情報は、光センサ内の画素または画素グループによって時間測定値から計算され、これは、検出器に近接する変調光源から場面に向けて放射され、照射された場面内の物体によって後方散乱したパルス光の移動時間tである。適用可能な式は、d=(1/2・C)・tであり、Cは光速度であり、除算係数2は光の往復移動を考慮している。1つの方法では、時間尺度は、位相差から間接的に計算される。この場合、光源は、RF変調されたものであり、撮像センサは、キャプチャシーケンスにおいて互いにオフセットしたN個の積分期間(N個のフェーズ)の各々においてキャプチャされた光振幅を測定するように動作する。移動時間は、周知の式を用いてN個のレベルから導出される。他の方法では、移動時間は、再構成された波形におけるパルス信号の立ち上がりエッジの検出によって直接測定される。光源は、光パルスを放射するものであり、イメージセンサは、後方散乱された短い光パルス信号の立ち上がりエッジを始動させるように動作する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いずれの場合も、光センサは、場面内の最も近い物体と最も遠い物体、及び/又は最も暗いものと最も明るいものが検出できるように、高いダイナミックレンジおよび良好な信号対ノイズ比(SNR)を有する必要があり、このことは、画素構造および動作が、背景光ノイズに対して最も弱い信号の検出を可能にするために最低のノイズレベルにすべきであり、最も強い信号に対して飽和すべきでないことを意味する。制約条件は、意図したアプリケーションに応じて変化してもよい。しかし、例えば、自動車の運転支援アプリケーションでは、光センサは、夜間に使用した場合に、暗いおよび明るい細部(車がトンネルまたは暗い通路に入ったときの昼光も同様)をキャプチャするのが効率的である必要がある。あるいは、太陽光のような強い周囲光が存在する場合もある。CMOSイメージセンサは、こうしたアプリケーションにとって良好な候補であり、量子効率、フィルファクタ(充填率)、および高いダイナミックレンジの点で効率的な画素を備える。また、相関二重サンプリング(CDS)を用いた読み出し方法は、CMOS画素の容量性センスノード内の電子回路(リセットトランジスタ)によってもたらされる熱雑音(いわゆるkTCノイズ)をキャンセルするのに有効である。しかし、実際には、TOFシステムにおけるCMOSイメージセンサは、間接的な方法だけを実装し、そしてそれらの画素は、リセットフェーズ、積分(N個のフェーズ)シーケンス、および読み出しシーケンスを含む極めて伝統的なタイミングシーケンスで動作する。
【0004】
しかしながら、直接測定を実施するD-TOFシステムにおける関心が高まりつつある。D-TOFシステムの一般的な原理を図1に概略的に示す。それは、パルス光源10と、互いに近接したイメージセンサ11と、少なくとも1つのカウンタ(処理システム)を含むタイマー回路12とを備える。時間カウントが、視野内の3D場面に向かって光源10による光パルスLPの発光時の開始カウント信号によってタイマー回路内で開始し、そして後方散乱光パルスLPの立ち上がりエッジのイメージセンサ1による検出時の停止カウント信号により、時間カウントは停止する。センサの画素マトリクス内の異なる距離及び/又は異なる関心領域における物体に対応して、多くの時間カウントが使用できる。これは、周知の先行技術である。
【0005】
既知のD-TOFシステムとして、我々は、SPADシステム(「SPAD」はシングルフォトンアバランシェダイオードを意味する)を引用できる。これらのシステムは、極めて効率的かつ正確であるが、多くのパワーを必要とする。理由は、サンプリングされた波形の立ち上がりエッジを見つけるために、統計的解析、ヒストグラムおよび平均化に依存しており、これは多数の光パルスを意味する。効率は、単一光子に対するSPADの大きな感度、および読み出しノイズに対する非感受性のためである。しかしながら、そのフィルファクタはかなり小さく、各画素は、クエンチング回路と共に光検出器(アバランシェフォトダイオード)を含む必要があり、デジタル変換器およびヒストグラムモジュールまでの時間、およびその量子効率もまた小さい(光検出器に到達する1つの光子が1つの電子を発生する確率)、フィルファクタと組み合わせると、低い光検出効率(PDE)となり、入射光子全体のうち限られた数の光子のみを各画素で検出できるに過ぎず、例えば、20個の光子またはそれ以上ごとに1つだけしか検出できない。
【0006】
そして、少ない数の短い光パルスのみの発光に基づいて、例えば、1つから多くて5つまでの光パルスの範囲内、好ましくは1つまたは2つのパルスだけに基づいて、統計的ツールを使用せずに正確な応答を提供することができる高いダイナミックレンジD-TOFシステムについてのニーズがあり、これにより光源パワーおよび回路占有面積の両方を最小化している。これはすべて、CMOSイメージセンサをベースとしたD-TOFシステムを設計する際に見られる誘因的傾向であり、画素構造は、光検出器(フォトダイオード、好ましくはピンド(pinned:ピン留め)フォトダイオード、またはフォトゲート)、容量性センスノード(浮遊拡散)、および画素の初期化フェーズ、積分フェーズおよび読み出しフェーズのシーケンスのための複数のトランジスタ(またはトランジスタのゲート)で構成される。
【0007】
しかしながら、D-TOF動作では、CMOS画素は、従来、別個の積分フェーズで、そして読み出し位相では動作できないが、画素の検知エレメントによって光生成された電流波形信号の連続的な再構成(読み出し)を可能にする方法で動作できる。
【0008】
これを達成するための基本的アイデアが、パルス持続時間に対して極めて高い周波数(ナイキスト-シャノン定理)で光検知ノードにおいて発生した信号をサンプリングすることであり、そのため単一の信号パルスの波形が再構成でき(オシロスコープのように)、光パワーを最小化し、極めて短い反応時間が可能になる。しかしながら、光検出器から由来する信号は、電流の流れであり、極めて弱い電流の流れを送出して、ノイズによって大きく劣化することなく、電流で直接デジタルに変換することは極めて困難である。
【0009】
より詳細には、D-TOF動作では、連続読み出し波形で始動する信号情報は、(後方散乱光パルスの時間位置)を測定する時間情報に対応する立ち上がりエッジである。立ち上がりエッジは、画素に入射する後方散乱光パルスの短いパルス持続時間に対して少数の電子の光発生に物理的に対応する。これは、実際、少数の電子、例えば、10~20個の電子に達する極めて弱い信号に対応することがあり、このことは、画素レベルの内部ノイズが極めて低くなるべきであることを意味する。時間的に接近し得る連続的な後方散乱光パルスを検出できるという他の要件がある。根本的な問題をよりよく理解するために実際の数値例を考えると、5ナノ秒のパルス持続時間を有する光パルスでは、受信機は、数十ナノ秒、例えば、20ナノ秒だけ分離した場面内の様々な細部に対応する2つの近接した後方散乱光パルスを区別できることが必要である。これは、容量性であるセンスノードにおいて、情報の損失を意味するパルスの混合を回避するために、立ち上がりエッジのメモリ効果が短いことが必要であることを意味する。
【0010】
そして、光検出器によって生成される光生成電流を、画素の容量性センスノードにおいて積分し、漏れ抵抗器を用いてキャパシタを放電し、次のパルスを積分する準備ができるようにすることによって、これを達成することが提案される。しかしながら、RC回路は、パルス信号の形状を変更する高周波積分器として動作する。さらに、弱い信号についてI/V変換の利得を増加させるためには高い抵抗値が望ましいが、強い信号(照明付き場面で明るくて接近した細部に対応する)では、センスノードのキャパシタンスは飽和することがあり、これは情報の損失を意味する。他の制約条件は、RC時定数に関連しており、電流パルスを受信するRC回路による高周波積分の結果としてセンスノードにおけるステップ電圧の後、このステップは、新たな到来する電流パルスの検出を充分に可能にするために高速に消滅できる。
【0011】
他の懸念事項は、CMOS画素の容量性センスノード内の抵抗器によって自動的にもたらされる熱雑音(kTCノイズ)である。CDS読み出しが従来の時系列の熱雑音をキャンセルするのに効率的であれば、必要とされる高いサンプリングレートのために、提案された連続的信号再構成シーケンスと互換性のある手法ではない。この熱雑音は、信号レベルに直接に依存するショットノイズに加わり、これは、ノイズが時間的に一定ではないことを意味する。
【0012】
そして、高いダイナミックレンジのD-TOF測定のためにCMOS画素を動作させることは、少なくともこれらの様々な問題、特に彩度(saturation)およびSNRに関する実際的な制約を備えた高いダイナミックレンジの観点では単純ではなく、信号およびノイズに対するRおよびCの個々の影響を理解するには、画素のレベルでのノイズおよび信号解析が必要であると考えられる。この解析は、特にSNRおよび熱雑音の影響に関する重要な点は、熱雑音パワーが、最初に想定されるような抵抗のものではなく、キャパシタ値のみに依存することである。さらに、我々は、熱雑音のRMS(二乗平均平方根)値が、電圧値に換算して表現した場合、ボルツマン定数kと絶対温度Tの積と、キャパシタンス値との比率の平方根に等しいことを見出した。そして、RMS電圧は、高いキャパシタンス値で減少することになる。
【0013】
しかしながら、上述したように単一の短い光パルスに対応する少数の電子だけの弱い信号を区別しようとする場合、ノイズに関して、RMS値を、電圧換算ではなく、電子の数のRMS値で表現すべきであることを我々は見出した。そして我々は、熱雑音の影響を低減するために、キャパシタンス値は、実際に可能な限り低減されるべきであることを見出した。図2に示す光電流I(t)の連続I/V変換を実施するCMOS撮像画素の小信号における簡略化モデルを参照して、これを簡単に説明する。RC回路は、電流源I(t)に並列接続される。信号に依存するノイズ解析では、電流源は、振幅Iおよび持続時間τのパルスを放出すると仮定した(ここで、τは、図1のD-TOFシステムの短い光パルスの持続時間である)。キャパシタは、画素のセンスノードSNにおける積分キャパシタンスを表す。並列の抵抗器は、信号情報を一定の時間(RC時定数)内で消失させ、新たな入力電流パルスを受信する準備を行うことを可能にする。
【0014】
画素レベル(ショットノイズ、熱雑音)でのSNRに対する影響を評価する目的のために、5ナノ秒(パルス持続時間)の光パルスから生成される、Ne-=16個の電子の弱い信号の現実的な例を考える。
【0015】
最初に、ショットノイズ:信号に対して固有のショットノイズの平均(RMS)値は、下記式1の適用により、4個の電子に達する。
信号とショットノイズの比率は、下記の比率であり、4個の電子に達する。
これは、正しい(最小SNRが3個の電子であることは一般に認められている)。
【0016】
第2に、熱雑音:抵抗Rによって生ずる熱雑音の平均(RMS)値は、下記式から得られる。
ここで、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度(300°K)、Cは静電容量値である。
【0017】
電子換算で表現すると、下記式3のようになる。
ここで、qは、1個の電子の電荷である。
【0018】
これは、上述したように、電子換算の熱雑音は、キャパシタンス値とともに増加することを示す。そして、熱雑音を最小化するために、我々は、センスノードにおけるキャパシタンスを可能な限り減少させる画素構造および動作を検討する必要がある。
【0019】
しかし、これはまた、低いキャパシタンス値(典型的には、現在の技術で数フェムトファラド(10-15ファラッド)単位よりも低いことを意味する)であっても、熱雑音は、10個の電子を超えて高すぎたままである。例えば、2fF程度に低いキャパシタンス値では、熱雑音のRMS平均値は、18個の電子に達する(式(3)の適用)。
【0020】
そして、16個の電子に上記のように評価された弱い信号では、ショットノイズとkTCノイズの両方を考慮したSNRは、1未満の値に低下する。
【0021】
これは、弱い信号をノイズから上手く区別するにははるかに小さすぎる。さらに、ここでは説明していないが、更なるノイズ源が存在しており、特に、背景光ノイズ(アプリケーション(光動作条件および検知される場面の種類)に依存する)および画素(増幅器、サンプリング、A/D変換)の後に来る電子回路からのものであることに留意する。
【0022】
そして、形状再構成、メモリ効果、I/V利得およびSNRに関して様々な制約条件を最適化するためにR値およびC値を見つけられる場合でも、これは、連続波形再構成をベースとする受信機におけるこうした弱い信号の検出を効率的に可能にするには充分でないであろう。
【0023】
パルス形状変更および飽和限界に関する他の制約条件とともにこの低いSNRは、効率的なD-TOF CMOS画素を達成するために解決すべき技術的課題である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明では、この課題に対する技術的解決法を見出し、これは、画素内の非線形抵抗器の使用と、読み出し回路におけるフィルタリング技術との組み合わせである。非線形抵抗器が、強い光信号、強い光背景または長すぎる測定フェーズのために、信号が特定レベルまで増加すると、抵抗値が減少して、更なる偏位を制限するという利点を提供する。即ち、非線形抵抗は、極めて高いダイナミックレンジ内の飽和を回避し、これは望ましいことである。しかし、非線形抵抗は、周波数領域に関してRC機能を考慮すると、興味深い利点を生じることが判明した。
【0025】
より詳細には、ノイズの態様を無視した場合、画素に到達する後方散乱光パルスが、光パルス持続期間σに渡って複数の電子の光検出器ノードでの発生をもたらし(図3に例として示す電流パルス)、図4に示すように、センスノードにおける電圧波形の高速立ち上がり(急峻なエッジ)において、提案したようなセンスノードのキャパシタンスと組み合わせて非線形抵抗による連続的なセンシングによって生じる。
【0026】
これは、提案したセンシングRC回路は、全スペクトル範囲に渡ってローパスフィルタとして機能しないが、低周波範囲のみで機能し、高周波範囲内でキャパシタンスノードでの積分器として機能するためであり、これは、関心のあるメイン情報信号(パルス立ち上がりエッジに対応する)のものである。我々は、図2のRC回路の伝達関数の漸近解析によりこれを実証ができる。即ち、
‐f<<1/(2πRC)(低い周波数に対応)では、伝達方程式は、V=I・R。
‐f>>1/(2πRC)(高い周波数に対応)では、伝達方程式は、V=I/(s・C)であり、これは、キャパシタでの強度の積分器を表す。即ち、抵抗器を全く使用しない場合に得られるものと正確に同じ挙動である。
【0027】
キャパシタンスでのこの高周波積分は、(短い)光パルス持続期間σに対応するメイン信号成分に対して生ずるものである。例えば、S=5nsでは、周波数信号は200MHzに等しく、有用な信号情報は、それより上で見つかり、例えば、200MHz超の数十MHzの帯域幅で見つかり、実際の抵抗値およびキャパシタンス値を考慮してRC回路によってフィルタ処理されない。しかしながら、図4に示すように、RC時定数のために信号の形状は大きく劣化する。
【0028】
これに対して、図5に示すように、白色雑音(平坦なスペクトル密度)に等価な熱雑音は、RC回路(flp=1/(2πRC))で作成されたローパスフィルタのカットオフ周波数flpで区切られた低周波帯域に集中している。
【0029】
実際、ノイズ成分の大部分を集中させる低周波数範囲の上限が、RC回路のカットオフ周波数に対応し、そして、有用な信号の大部分を集中させる高周波範囲の下限が、パルス持続時間σの関数であり、これは、離間した(分離した)低周波数帯域および高周波数帯域において実際に生じる。
【0030】
そして、我々は、画素内の提案したRC回路を通じて連続電流センシングから生ずるこのスペクトル分離を巧みに利用して、フィルタリングによる有用な信号の高周波範囲における信号対ノイズ比を増加させ、また初期パルス形状を回復させることが可能になる。そして、パルス位置を効率的な検出は、デジタル化したサンプル(フィルタリング後)上で始動することによって得られる。
【0031】
そして本発明は、ダイレクト飛行測定時間を達成するためのCMOS画素構造に関するものであり、非線形抵抗器を介して画素内で連続的なI/V変換を実施することを提案する。技術的解決法は、センスノードのキャパシタンスと組み合わせた非線形抵抗器によって生成されるRC回路のローパスフィルタ動作および高周波積分機能を利用するものであり、読み出し回路のレベルでバンドパスまたはハイパスの範囲でのフィルタリングにより、高い信号対ノイズ比で信号情報の大部分を回復させる。
【0032】
他の技術的態様は、技術的解決法を改善し、基本CMOS画素に従来から存在するトランジスタを使用することによって、測定フェーズでのI/V変換を実施する。これは、概念および製造コストの点で最適であり、SNR、高いダイナミックレンジおよび動作の簡潔性の点で効率的である。
【0033】
特に、転送トランジスタが、通常、光検出器ノードとセンスノードとの間のCMOS画素に設けられ、光検出器に蓄積された光生成電子をセンスノードに転送し、画素の読み出し動作が開始できる。本発明では、フォトダイオードとセンスノードとの間のこうした転送トランジスタは、測定フェーズに沿って全ての光検知ノードとセンスノードとの間のデカップリング素子として使用するために画素内に設けられ、転送トランジスタがアクティブである間、読み出しを行うことができる。そして、センスノードにおけるキャパシタンスは最小化され、上述したように、熱雑音を減少させるのに役立つ。
【0034】
権利請求したように、本発明は、所定のパルス持続時間τを有する光パルスの時間発生を検出するためのCMOS撮像センサに関し、
・画素であって、各画素が、
‐電流源として動作する光検出器と、
‐センスノードと光検出器との間に直列に接続された転送トランジスタと、
‐画素の電圧供給ノードとセンスノードとの間に接続され、非線形抵抗器と、を少なくとも含む画素構造を有し、センスノードは、容量性のセンスノードである、画素と、
・画素内の光検出器に到達する光パルスの時間発生を測定するための少なくとも選択された画素における測定を制御する制御回路であって、選択された画素において、電圧基準が電圧基準ノードに印加され、転送トランジスタは測定フェーズの全てでオン状態であり、そして転送トランジスタは、光検出器ノードとセンスノードとの間のデカップリング素子として動作し、非線形抵抗器は、センスノードでのキャパシタンスと組み合わせて、ローパスフィルタ機能および高周波積分機能を有するRC回路を形成し、電圧信号を生成し、該電圧信号は、ある高周波範囲内で少なくともパルス位置情報を含むメイン信号成分を有し、前記高周波範囲から離れた低周波範囲内に主に集中するノイズ成分を有する、制御回路と、
・選択された画素のセンスノードからの電圧信号の読み出し回路であって、少なくとも
‐パルス幅持続時間に対して高いサンプリング時間を印加するアナログ/デジタル変換器と、
‐アナログ/デジタル変換の前または後に、バンドパスフィルタまたはハイパスフィルタのうちの1つを適用するように構成され、メイン信号成分付近の少なくともある周波数帯域における信号対ノイズ比を増加させる効果を有する、フィルタリング手段(F)と含む、読み出し回路と、を備える。
【0035】
非線形抵抗器をディスクリート抵抗器として実装することは、実際には面積占有の点で高価である。
【0036】
好都合には、非線形抵抗器は、サブ閾値領域で動作するトランジスタによって実装される。一実施形態では、このトランジスタは、従来のCMOS画素に一般に見られるリセットトランジスタである。本発明によれば、このリセットトランジスタは、選択された画素内の非線形抵抗器としてサブ閾値領域で動作し、スイッチとして使用され、非選択画素における電圧基準にセンスノードを維持するためにオンになる。
【0037】
本発明はまた、こうした光センサを受信機として含むダイレクト飛行時間システムに関するものであり、画素に到達した光パルスに対応する電圧信号波形内のパルス位置を始動することによって、時間の測定のためにCMOS画素を動作させる方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照して、非限定的な例および実施形態によって説明される。
【0039】
図1】D-TOFシステムの一般原理を示す。
図2】本発明に係る抵抗器を介した連続I/V変換を積分するCMOS画素の小信号における等価回路である。
図3】短い(後方散乱)光パルスに応答したCMOS画素の光検出器によって生成される理想的な電流パルスを表す。
図4図3の電流パルスのセンスノードのキャパシタンスにおけるRC高周波積分機能を示す。
図5】抵抗器によってセンスノードのキャパシタンスに誘起される熱雑音に適用されるRCローパスフィルタリング機能を表す。
図6】本発明に係るCMOSイメージセンサにおいて、画素のセンスノードと読み出し回路の入力との間に増幅器回路を含む関連する回路を備えた基本的な画素構造の概略図である。
図7】本発明に係るセンシングフェーズを達成するための、図6の画素構造の制御信号のクロノグラムである。
図8図6の画素構造の変形例を示す図である。
図9図6の増幅器回路の他の実装を示す図である。
図10】光源の光パルス幅に対するハイパスフィルタまたはローパスフィルタによるSNR改善を強調する。
図11】ハイパスフィルタの最適カットオフ周波数を決定するための掃引方法を示す。
図12】2つの後方散乱光パルスが時間的に接近して画素に到達する場合、本発明に従って動作する画素の効率を示す。
図13】読み出し回路にハイパスフィルタリングを実装するための差分デジタル方法の効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明に係るダイレクト飛行時間測定に使用されるCMOS撮像センサにおける画素構造の実施形態を図6に示し、画素動作を制御するための対応する信号を図7に示す。
【0041】
画素構造は、光検出器としてフォトダイオードPHDを含む。それは、好ましくはピンド(pinned:ピン留め)フォトダイオードである。本発明は、光検出器として光ゲートにも同様に適用されることに留意する。
【0042】
それは、光センサの従来の画素構造のように、電圧供給ノードVDD-Pと光検出器との間に直列に接続されたリセットトランジスタTRSTおよび転送トランジスタTTxを含む。センスノードSNは、リセットトランジスタと転送トランジスタとの間にある。それは、画素構造のトポロジーおよび技術に固有のセンスノードにおける等価な寄生キャパシタンスの少なくとも(1つ)を含むキャパシタンス値Cを有する容量性ノードである。従来の画素では、センスノードでのキャパシタンスは浮遊拡散によって主に決定され、読み出しフェーズの前に積分期間中に積分された全電荷量を受信できるように高い値が望ましい。
【0043】
本発明の画素構造の実施形態では、キャパシタンスは、好ましくは最大限減少しており、このことは、実際、画素構造の固有の寄生キャパシタンスに減少できることを意味する。そして、キャパシタンス値は、5フェムトファラッド(10-15ファラッド)よりも低くでき、例えば、2フェムトファラドに等しい。しかしながら、これは好ましい条件に過ぎず、既に説明したように非線形抵抗としてのリセットトランジスタの動作モードによって、熱雑音レベルを該キャパシタンスに低減できるようにする。より高いキャパシタンス値が適用できる。
【0044】
センスノードは、画素の出力信号を提供し、これは電圧信号VSNであり、読み出し回路300に連続的に伝送される。
【0045】
読み出し回路300は、主として、高速アナログ/デジタル変換器ADCと、フィルタリング手段Fとを備え、少なくとも1つのバンドパスフィルタまたはハイパスフィルタを適用するフィルタリング手段を介して、少なくともある周波数帯域において高い信号対ノイズ比で、センスノードによって出力される信号の波形をデジタル的に再構成する。そして、信号は、トリガー手段TRGによって始動され、信号内のパルス位置を正確に検出する。ADCは、高速ADCであり、これは、1/τの少なくとも2倍であるサンプリングレートSMPで動作することを意味する。τは、検出対象の信号パルスのパルス持続時間である。例えば、τが5nsに等しい場合、最小SMPレートは400Mhzであり、これは2、5nsのサンプリング時間に対応する。しかしながら、このサンプリング時間が低くなるほど、パルス位置を検出する精度が高くなり、よって、測定した距離の精度が高くなる。
【0046】
フィルタリング手段Fについては、図6に示すように、デジタルドメインで実装でき((ADCの後)、低周波範囲での更なる信号情報(ノイズ)を抽出可能になる。フィルタリング手段は、アナログドメインでも実装でき、そしてフィルタリング手段Fは、サンプルホールド回路S&HとADCのデジタル化回路DCVとの間にある。この場合、低周波数情報は失われる。これについては、後で詳細に説明する。
【0047】
本発明に係るダイレクト飛行時間測定を行う画素動作は、画素のリセットトランジスタおよび転送トランジスタに印加される制御信号を通じて制御され、画素がDTOF測定フェーズのために選択されるか、または非選択状態のままであるかに依存する。
【0048】
画素が非選択状態である場合(図7のアイドルフェーズに対応する)、動作は、画素の従来のリセットフェーズに対応しており、ある公称電圧値(本例では0.2ボルト)が、信号VDD-RSTを介して画素の電力供給ノードVDD-Pに印加され、リセットトランジスタおよび転送トランジスタの両方がオン状態に切り替わり、RST信号およびTX信号の両方がハイ(論理)電圧に設定される。これによりセンスノードSN(リセットトランジスタを介して)およびフォトダイオードPHD(転送トランジスタおよびリセットトランジスタを介して)をリセットすることが可能になる。
【0049】
画素が選択された場合(SEL信号はハイ論理レベルに設定。図7)、
・転送トランジスタは、同じオン状態のままであり、そしてフォトダイオードノードPN(比較的高いキャパシタンスを有する)とセンスノードSNとの間のデカップリング(減結合)素子として動作し、センスノードにおけるキャパシタンスを最小化する。
・リセットトランジスタは、RST信号を介してそのゲート電圧を低下させることによって、または画素の電力供給ノードVDD-Pに印加される電圧値を介してその電源電圧を増加させることによって、サブ閾値領域で動作する。本例では、電力供給ノードVDD-Pに印加される電圧値は、低い値(例えば、2ボルト)から高い値(例えば、3.3ボルト、所定の技術ではセンサの正の供給電圧に対応する)までになり、一方、RSTは、オン値(3.3ボルト)のままである。他の例では、低い値(本例では0.2ボルト)が、画素の電力供給ノードVDD-Pに連続的に印加でき、そして非線形抵抗としての動作は、RST信号を介してゲート電圧レベルを低下させることによって制御される。実際には、RST信号およびVDD-RST信号の一方または両方を介して、非線形抵抗としてリセットトランジスタの動作を極めて広い範囲で実装し制御することが可能である。
【0050】
選択された画素のこの動作モードの結果、画素のセンスノードで出力される信号VSNのスペクトル密度は、有用な信号情報が高周波範囲に主に集中するようになり、ノイズ成分は低周波範囲に主に集中するようになり、これは、始動する前に、高いSNRで有用な信号を集中させる少なくともある周波数範囲の信号を抽出するために、読み出し回路(図6または図8に実装されたポストフィルタリング手段Fを介して利用される。
【0051】
図8に示す変形例では、画素構造は、光検出器(ノードPN)に接続されたブルーミング防止トランジスタTBGを含み、これは、アイドル状態(非選択画素に対応する)で使用可能であり、フォトダイオードから電荷を抽出し、そして、転送トランジスタを介してセンスノードのキャパシタンスからも電荷を抽出する。そして、例えば、リセットトランジスタをアイドル状態に維持でき、測定フェーズで画素が非線形抵抗器として選択された場合にのみ動作できる。
【0052】
サブ閾値領域で動作するトランジスタを介する以外に、画素内の非線形抵抗を実装できる他の可能性があり、そのため本発明は、一般に、選択された画素内の転送トランジスタと直列配置された非線形抵抗を含む画素構造に適用される。しかしながら、リセットトランジスタの使用により、基本的にこうしたリセットトランジスタおよび転送トランジスタを備える既知のCMOS画素技術に適用することが容易になる。即ち、制御回路は、説明したように、測定フェーズを提供するように構成される必要がある。
【0053】
図10は、高速アナログ/デジタルサンプリングを適用する読み出し回路の側で適用される本発明のポストフィルタリングの効果を示す。我々は、本例では時間0で開始し、1マイクロ秒を持続する測定フェーズでは、図3に示すような電流パルスが、測定フェーズの中間(図中の時間0.5マイクロ秒)で光検出器(画素に到達する後方散乱光パルスに対する応答として)によって発生したと仮定する。信号VSNは、極めてノイズがあり、これは、矢印で示すパルス信号をノイズと区別できないようにする。本発明に係る適切なフィルタリングを用いて、フィルタ処理された信号VHFが得られ、信号のピーク(有用な情報を有する)が減少するが、ノイズ成分は大幅に減衰する。そして、SNRは著しく改善され、トリガー手段を介してパルスの位置を効率的に検出できる。
【0054】
即ち、信号は、我々のCMOS画素構造のRC回路によってローパスフィルタ処理されるが、重要な情報は失われず、ポストフィルタリング手段Fを介して有意に回復できる。
【0055】
これは、場面内のいくつかの物体からのエコーに対応するいくつかのパルスが異なる距離に位置して現れる場合でも真のままである。これは図12に示す。説明を簡略化するために、ノイズは省略している。上のカーブl(t)は、光検出器が2つの光パルスP1,P2を受信したときの光生成信号を示す。選択された画素における画素レベルのRC回路による電圧変換の後、対応するパルスは、信号VSN(t)における2つのステップST1およびST2を生じさせ、これらはRCのローパスフィルタ機能のために混合される。しかしながら、我々のポストフィルタリングの後は、両方のパルスは、フィルタ処理した信号VHFにおいて位置および振幅の点で完全に回復される。実際、我々は、5nsの光パルス持続時間でこれを確認できており、50nsだけ離れた近接パルスを検出することが可能であった。
【0056】
そして、本発明は、ハイパスフィルタ処理後に回復された信号中のピークとして現れる複数の固体物体の位置の検出を可能にする。
【0057】
本発明の他の態様は、画素と読み出し回路との間の信号伝送経路に関する。実際、例えば、説明したように、200MHZの範囲内の高周波情報を有するセンスノードに出力される信号を伝送する必要がある。図6に示すような出力ラインCLが使用され、いくつかの画素が同じ読み出し回路(1つの選択された画素が一度に読まれる)を共有する場合、これは、選択された画素のセンスノードと読み出し回路との間に高い抵抗およびキャパシタンスを有する伝送経路をもたらす。出力ラインは、並列のキャパシタンスと直列の抵抗との組合せによってモデル化でき、信号情報を大きく劣化させる可能性があるフィルタリング効果を伴う。本発明の改善した実施形態によれば、図6図8に示すように、電力増幅回路200が、画素のセンスノードSNと、選択された画素を読み出し回路300に接続する出力ラインCLとの間に設けられる。電力増幅器は、典型的には、高い入力インピーダンス(入力信号を弱めないように)および良好に制御された出力インピーダンスを有し、出力ラインのインピーダンスに整合している。
【0058】
好ましくは、図6に示すように、電力増幅器200は、マイクロストリップラインMSTのような伝送ラインによる出力ラインCLの実装と組み合わさる。そして、出力ラインは、比較的に良好に制御された特性インピーダンスを有し、これは分布型のR(抵抗)、L(インダクタ)、C(キャパシタ)モデルに対応する。電力増幅器と伝送ラインとの組合せは、全体スペクトル範囲(大きい信号帯域幅伝送)で読み出し回路への信号の高速伝送を改善する。
【0059】
電力増幅器200は、本質的には、ノイズ、特にショットノイズおよび熱雑音を発生するが、増幅器での駆動電流を、所望の増幅機能を有するのに厳密に必要なものよりも高く設定することによって、増幅器の入力において低レベルに維持することができる。電流が大きくなるほど、ノイズ、特にショットノイズおよび熱雑音は低くなる。電力増幅器はまた、フリッカーノイズを発生し、これは、読み出し回路に実装されるバンドパスまたはハイパスフィルタリングによって好都合に除去されることに留意する。電力増幅器200は、当業者に既知であるように任意の適切な構造を有してもよい。
【0060】
図6の実施形態では、増幅器200は、センサの公称供給電圧(VDD)とグランドとの間に直列に一対のトランジスタTFW,TCSを含むシングルステージで簡単に製作され、いわゆる「ソースフォロワ増幅器」を形成する。トランジスタTCSは、電流源として使用され、適切なゲート電圧VBNでバイアスされ、駆動トランジスタTFWのバイアス状態を、強い反転および飽和モードに適切に固定するのに必要な電流Iを生成し、ソースフォロワ素子として動作する。上述したように、増幅器の入力においてノイズを低減するために、電流Iは、これに厳密に必要とされる電流よりも高く設定される。例えば、約22×10-6アンペアの電流Iが、ソースフォロワ動作を有するのに充分であるが、センスノードでの誘導ノイズを許容レベルに低減するために、約90×10-6アンペアに設定される。
【0061】
増幅器のこうした実施形態の利点は、画素構造の内部で容易に実装され、画素内に極めて低いエリア(2つのトランジスタのみ)を要する点である。そして、画素のフィルファクタ(fill factor)量子効率(FFQE)は影響を受けない。しかしながら、こうした電力増幅器のインピーダンスおよび電力利得特性は、出力ラインの固有抵抗およびキャパシタンスが低い場合にのみ適切であり、これは、1つまたは数個の画素(同じ列(column)に配置される)のみが同じ出力ラインCLを介して同じ読み出し回路300に接続されることを意味する。高い容量性出力ラインの場合、信号特性をさらに改善するために、いくつかの連続した増幅ステージを備えたより複雑な構造を有する電力増幅器200を設計または選択することが実際には望ましい。そして、更なるノイズ低減及び/又は電力利得が得られる。また、SNRを向上させることによって、アナログ/デジタル変換器の分解能制約条件を緩和する。図9は、例示のために、こうした改善された増幅器の一実施形態を示す。この例では、電力増幅器200は、ミラー電流配置を備えたN型およびP型(CMOS)両方のトランジスタをベースとした第1増幅ステージを含み、続いてソースフォロアステージ(TFW、TCS)を含む。本発明は、電力増幅器200の特定の実施形態に限定されず、当業者は、異なる応用制約条件(表面、インピーダンスを含む)を考慮して、本発明に係るDTOF CMOSセンサに適合した増幅器構造を設計または選択してもよい。
【0062】
ある場合には、電力増幅器200は必要でないことに留意すべきである。特に、センサ内の全ての画素が連続的に感知する必要がある場合、これらが全て同時に選択されて、図7に示す測定フェーズを適用することを意味し、各画素は、少なくとも高速アナログ/デジタル変換器を備えたそれ自体の読み出し回路300を有する必要があり、可能性として少なくとものアナログで実装される場合にはポストフィルタリング手段を有する必要がある。この場合、出力センスノードは、画素内で行うことができる個別の読み出し回路に直接に接続でき、あるいはセンサとともに積層された別個の基板上に実装できる(3Dスタック法)。
【0063】
上述したように、フィルタリング手段Fに関して、これらはアナログドメイン(図8)またはデジタルドメイン(図6)のいずれかで動作可能である。両方の場合、フィルタリング手段は、高周波範囲帯域を考慮して設計され、これは、本発明に従って信号成分の大部分を含んでおり、一方、ノイズ成分の大部分は、画素のレベルでRC回路動作によってフィルタ除去されている。
【0064】
一実施形態では、ポストフィルタリング手段は、ローパスフィルタ(画素構造内のRC回路)に対して相補的なハイパスフィルタを実装する。これは、信号の2つの連続サンプル間の差を作る差分手法、即ち、現在のサンプルから前回のサンプルを減算することによって、極めて簡単に達成できる。これは、図13に示しており、上の第1カーブは、センスノードに出力される連続電圧信号VSN(t)を示す。矢印は、検出対象の信号パルスの時間的位置を示し、これはノイズと区別できない。中間の第2カーブは、フィルタリングの前に、高速アナログ/デジタル変換器300によって出力される再構成されたデジタル化波形信号VSMP(t)である。そして第3カーブは、第nサンプリング時間におけるフィルタ処理されたサンプル値が、第n-1サンプリング時間におけるサンプル値だけ少ない第nサンプリング時間におけるサンプル値に等しい差分手法によって得られた差分サンプル信号である。その結果、ノイズから検出できる信号ピークが生じる。この減算は、デジタルで実装するのが極めて容易であり、アナログでも同様である。
【0065】
より複雑なフィルタがSNRを改善するために実装できる。特に、バンドパスフィルタが、センスノードで得られる信号のスペクトル特性に基づいて、信号対ノイズ比を最適化するように特別に適合できる。σ=5ナノ秒の光パルスについて、センスノードでの有用な信号は、200Mhz(=1/σ)付近の周波数範囲で主に集中することを説明した。所定のトポロジーにおいて、信号が主に集中しているこの周波数範囲、例えば、200Mhz±10Mhzを推測して、対応するバンドパスフィルタを実装することが可能である。
【0066】
また、実装するハイパスフィルタのカットオフ周波数が、周波数を掃引してSNRを最適化するものを見出すことによって、所定のセンサおよび所定のアプリケーションについて評価できる。これを図11に示す。
【0067】
そして、我々は、ADC(図6)の後であるデジタルドメインで後処理フィルタを実装することを選んでもよく、これは、一般に、センサの外部にある処理デバイス内を意味する。そして、パルス位置情報を回復するハイフィルタリング機能と、背景光信号情報を含む付加的信号情報を抽出するローフィルタリング機能とを組み合わせたフィルタリング処理(計算)を実装できる。こうした背景情報により、測定の信頼性を改善できる。
【0068】
後処理の実際の実装は、コンテキスト/アプリケーションに依存する。特に、もしアプリケーションが完全に既知であれば、後処理フィルタは、センサ(図8)の中にアナログで設置でき、システム全体はより安価であり、外部コンポーネントが少なくなる。これは可能であり、図13を参照して説明したように(2つの連続サンプル間の減算)、本発明に従って適用する基本的なフィルタリング動作はとても簡単であり、ハードウェアで実装するのが容易であるためである。フィルタがセンサの中に設置されれば、製品の順応性が失われる。改善されたSNRが望ましい場合には、デジタル実装が好ましい。
図1
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