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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】固体撮像素子、および、撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/70 20230101AFI20240808BHJP
   H04N 25/77 20230101ALI20240808BHJP
【FI】
H04N25/70
H04N25/77
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021543641
(86)(22)【出願日】2020-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2020027393
(87)【国際公開番号】W WO2021044737
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019162246
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112955
【弁理士】
【氏名又は名称】丸島 敏一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智裕
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-186006(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169216(WO,A1)
【文献】特開2011-244452(JP,A)
【文献】特開2016-024234(JP,A)
【文献】特開2018-006989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の光電変換素子と、
一対の浮遊拡散層と、
前記一対の光電変換素子のそれぞれの転送先を前記一対の浮遊拡散層のいずれかに切り替えて前記転送先へ電荷を転送する転送部と
を具備し、
前記転送部は、前記一対の光電変換素子の一方から前記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する処理の後に、前記一対の光電変換素子の一方から前記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する処理と前記一対の光電変換素子の他方から前記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する処理とを同時に行う
固体撮像素子。
【請求項2】
前記転送部は、
前記一対の光電変換素子の一方から前記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する第1の転送トランジスタと、
前記一対の光電変換素子の一方から前記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する第2の転送トランジスタと、
前記一対の光電変換素子の他方から前記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する第3の転送トランジスタと、
前記一対の光電変換素子の他方から前記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する第4の転送トランジスタと
を備える請求項記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記一対の光電変換素子のそれぞれから電荷を排出する一対の電荷排出トランジスタをさらに具備する
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記一対の浮遊拡散層のそれぞれを初期化する一対のリセットトランジスタをさらに具備する
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記一対の浮遊拡散層の電荷電圧変換効率を制御する一対の変換効率制御トランジスタをさらに具備する
請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記一対の浮遊拡散層のそれぞれの電圧を増幅して一対の画素信号を生成する一対の増幅トランジスタと、
前記一対の画素信号の一方を選択する一対の選択トランジスタと
をさらに具備する請求項1記載の固体撮像素子。
【請求項7】
前記一対の画素信号のそれぞれを順にデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器をさらに具備する請求項記載の固体撮像素子。
【請求項8】
前記デジタル信号を積算する演算回路をさらに具備する
請求項記載の固体撮像素子。
【請求項9】
一対の光電変換素子と、
一対の浮遊拡散層と、
前記一対の光電変換素子のそれぞれの転送先を前記一対の浮遊拡散層のいずれかに切り替えて前記転送先へ電荷を転送する転送部と、
前記電荷の量に応じた画素信号をデジタル信号に変換して処理する信号処理部と
を具備し、
前記転送部は、前記一対の光電変換素子の一方から前記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する処理の後に、前記一対の光電変換素子の一方から前記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する処理と前記一対の光電変換素子の他方から前記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する処理とを同時に行う
撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、固体撮像素子に関する。詳しくは、画素毎にアナログデジタル変換を行う固体撮像素子、および、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、FA(Factory Automation)や空撮の分野において、時間遅延積分(TDI:Time Delay Integration)センサが用いられている。このTDIセンサは、被写体の移動速度に合わせて時間をずらしながら、電荷量を積分するTDI処理を行うセンサである。例えば、隣接する2ラインで1ライン分の浮遊拡散層を共有し、2ラインのそれぞれの電荷を、その浮遊拡散層に時間をずらして転送する固体撮像素子が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この電荷転送によりTDI処理が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2014-510447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、TDI処理により、明るさの向上やノイズ低減を図っている。しかしながら、上述の固体撮像素子では、浮遊拡散層に2ライン分の電荷を転送してAD(Analog to Digital)変換を行い、次の電荷転送を開始する前に、浮遊拡散層を初期化する必要がある。このため、浮遊拡散層の初期化に要する時間の分、AD変換の速度が低下するという問題がある。
【0005】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、時間遅延積分を行う固体撮像素子において、AD変換の速度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、一対の光電変換素子と、一対の浮遊拡散層と、上記一対の光電変換素子のそれぞれの転送先を上記一対の浮遊拡散層のいずれかに切り替えて上記転送先へ電荷を転送する転送部とを具備する固体撮像素子である。これにより、AD変換の速度が向上するという作用をもたらす。
【0007】
また、この第1の側面において、上記転送部は、上記一対の光電変換素子の一方から上記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する処理と上記一対の光電変換素子の他方から上記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する処理とを同時に行ってもよい。これにより、それらの転送を順に行う場合と比較して、AD変換の速度が向上するという作用をもたらす。
【0008】
また、この第1の側面において、上記転送部は、上記一対の光電変換素子の一方から上記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する第1の転送トランジスタと、上記一対の光電変換素子の一方から上記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する第2の転送トランジスタと、上記一対の光電変換素子の他方から上記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する第3の転送トランジスタと、上記一対の光電変換素子の他方から上記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する第4の転送トランジスタとを備えてもよい。これにより、一対の光電変換素子のそれぞれの転送先を、一対の浮遊拡散層のいずれかに切り替えることができるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記一対の光電変換素子のそれぞれから電荷を排出する一対の電荷排出トランジスタをさらに具備してもよい。これにより、光電変換素子が初期化されるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記一対の浮遊拡散層のそれぞれを初期化する一対のリセットトランジスタをさらに具備してもよい。これにより、浮遊拡散層が初期化されるという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記一対の浮遊拡散層の電荷電圧変換効率を制御する一対の変換効率制御トランジスタをさらに具備してもよい。これにより、電荷電圧変換効率が変更されるという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記一対の浮遊拡散層のそれぞれの電圧を増幅して一対の画素信号を生成する一対の増幅トランジスタと、上記一対の画素信号の一方を選択する一対の選択トランジスタとをさらに具備してもよい。これにより、選択された画素信号が出力されるという作用をもたらす。
【0013】
また、この第1の側面において、上記一対の画素信号のそれぞれを順にデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器をさらに具備してもよい。これにより、複数のデジタル信号が生成されるという作用をもたらす。
【0014】
また、この第1の側面において上記デジタル信号を積算する演算回路をさらに具備してもよい。これにより、デジタルTDI処理が行われるという作用をもたらす。
【0015】
また、本技術の第2の側面は、一対の光電変換素子と、一対の浮遊拡散層と、上記一対の光電変換素子のそれぞれの転送先を上記一対の浮遊拡散層のいずれかに切り替えて上記転送先へ電荷を転送する転送部と、上記電荷の量に応じた画素信号をデジタル信号に変換して処理する信号処理部とを具備する撮像装置である。これにより、デジタル信号が処理され、AD変換の速度が向上するという作用をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本技術の第1の実施の形態における撮像装置の一構成例を示すブロック図である。
図2】本技術の第1の実施の形態における撮像装置の利用例を説明するための図である。
図3】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の積層構造の一例を示す図である。
図4】本技術の第1の実施の形態における受光チップの一構成例を示すブロック図である。
図5】本技術の第1の実施の形態における回路チップの一構成例を示すブロック図である。
図6】本技術の第1の実施の形態における画素AD変換部の一構成例を示す図である。
図7】本技術の第1の実施の形態におけるADC(Analog to Digital Converter)の一構成例を示すブロック図である。
図8】本技術の第1の実施の形態におけるアナログTDI回路の一構成例を示す回路図である。
図9】本技術の第1の実施の形態における差動入力回路および正帰還回路の一構成例を示す回路図である。
図10】本技術の第1の実施の形態における信号処理回路の一構成例を示すブロック図である。
図11】本技術の第1の実施の形態におけるアナログTDI回路内の素子のレイアウトの一例を示す図である。
図12】本技術の第1の実施の形態におけるアナログTDI回路内の素子のレイアウトの別の例を示す図である。
図13】本技術の第1の実施の形態におけるトランジスタの制御例を示すタイミングチャートである。
図14】本技術の第1の実施の形態における2フレーム目の露光終了までの固体撮像素子の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図15】本技術の第1の実施の形態における4フレーム目の浮遊拡散層の初期化までの固体撮像素子の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図16】本技術の第1の実施の形態における5フレーム目の露光終了までの固体撮像素子の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図17】本技術の第1の実施の形態における1フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路の状態の一例を示す図である。
図18】本技術の第1の実施の形態における2フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路の状態の一例を示す図である。
図19】本技術の第1の実施の形態における3フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路の状態の一例を示す図である。
図20】本技術の第1の実施の形態における4フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路の状態の一例を示す図である。
図21】本技術の第1の実施の形態における5フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路の状態の一例を示す図である。
図22】比較例における2フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路の状態の一例を示す図である。
図23】本技術の第1の実施の形態におけるTDI処理の一例を示す図である。
図24】本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子の動作の一例を示すフローチャートである。
図25】本技術の第1の実施の形態の変形例におけるアナログTDI回路の一構成例を示す回路図である。
図26】本技術の第2の実施の形態におけるアナログTDI回路の一構成例を示す回路図である。
図27】本技術の第2の実施の形態におけるトランジスタの制御例を示すタイミングチャートである。
図28】本技術の第2の実施の形態の変形例におけるアナログTDI回路の一構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(一対の光電変換素子のそれぞれの電荷の転送先を切り替える例)
2.第2の実施の形態(トランジスタを削減し、一対の光電変換素子のそれぞれの電荷の転送先を切り替える例)
【0018】
<1.第1の実施の形態>
[撮像装置の構成例]
図1は、本技術の実施の形態における撮像装置100の一構成例を示すブロック図である。この撮像装置100は、画像データを撮像する装置であり、光学部110、固体撮像素子200、記憶部120、制御部130および通信部140を備える。
【0019】
光学部110は、入射光を集光して固体撮像素子200に導くものである。固体撮像素子200は、画像データを撮像するものである。この固体撮像素子200は、画像データを記憶部120に信号線209を介して供給する。
【0020】
記憶部120は、画像データを記憶するものである。制御部130は、固体撮像素子200を制御して画像データを撮像させるものである。この制御部130は、例えば、信号線208を介して、撮像タイミングを示す同期信号XHSを固体撮像素子200に供給する。
【0021】
通信部140は、画像データを記憶部120から読み出して外部に送信するものである。
【0022】
図2は、本技術の第1の実施の形態における撮像装置100の利用例を説明するための図である。同図に例示するように、撮像装置100は、ベルトコンベア510が設けられた工場などで用いられる。
【0023】
ベルトコンベア510は、一定の速度で、被写体511を所定の方向に移動させるものである。撮像装置100は、ベルトコンベア510の近傍に固定され、この被写体511を撮像して画像データを生成する。画像データは、例えば、欠陥の有無などの検査に用いられる。これにより、FAが実現される。
【0024】
なお、撮像装置100は、一定速度で移動する被写体511を撮像しているが、この構成に限定されない。空撮など、被写体に対して撮像装置100が一定速度で移動して撮像する構成であってもよい。
【0025】
[固体撮像素子の構成例]
図3は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の積層構造の一例を示す図である。この固体撮像素子200は、回路チップ202と、その回路チップ202に積層された受光チップ201とを備える。これらのチップは、ビアなどの接続部を介して電気的に接続される。なお、ビアの他、Cu-Cu接合やバンプにより接続することもできる。
【0026】
図4は、本技術の第1の実施の形態における受光チップ201の一構成例を示すブロック図である。受光チップ201には、画素アレイ部210および周辺回路212が設けられる。
【0027】
画素アレイ部210には、複数の画素が二次元格子状に配列される。この画素アレイ部210において、水平方向に配列された画素の集合を「行」または「ライン」と称し、垂直方向に配列された画素の集合を「列」と称する。
【0028】
また、画素アレイ部210は、複数の画素ブロック211に分割される。それぞれの画素ブロック211には、例えば、8行×2列の画素が配列される。また、列方向において隣接する2画素は、1つのアナログTDI回路220を構成する。画素ブロック211内に8行×2列の画素が配列される場合、画素ブロック211内のアナログTDI回路220の個数は、4行×2列の8個となる。アナログTDI回路220の回路構成については後述する。
【0029】
周辺回路212には、例えば、DC(Direct Current)電圧を供給する回路などが配置される。
【0030】
図5は、本技術の第1の実施の形態における回路チップ202の一構成例を示すブロック図である。この回路チップ202には、DAC(Digital to Analog Converter)251、画素駆動回路252、時刻コード生成部253、画素AD変換部254および垂直走査回路255が配置される。さらに回路チップ202には、制御回路256、信号処理回路400、画像処理回路260、および、出力回路257が配置される。
【0031】
DAC251は、所定のAD変換期間内に亘って参照信号をDA(Digital to Analog)変換により生成するものである。例えば、のこぎり刃状のランプ信号が参照信号として用いられる。DAC251は、参照信号を画素AD変換部254に供給する。
【0032】
時刻コード生成部253は、AD変換期間内の時刻を示す時刻コードを生成するものである。時刻コード生成部253は、例えば、カウンタにより実現される。カウンタとして、例えば、グレイコードカウンタが用いられる。時刻コード生成部253は、時刻コードを画素AD変換部254へ供給する。
【0033】
画素駆動回路252は、アナログTDI回路220のそれぞれを駆動してアナログの画素信号を生成させるものである。
【0034】
画素AD変換部254は、アナログTDI回路220のそれぞれのアナログ信号(すなわち、画素信号)をデジタル信号に変換するAD変換を行うものである。この画素AD変換部254は、複数のクラスタ300により分割される。クラスタ300は、画素ブロック211ごとに設けられ、対応する画素ブロック211内のアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0035】
画素AD変換部254は、AD変換によりデジタル信号を配列した画像データをフレームとして生成し、信号処理回路400に供給する。
【0036】
垂直走査回路255は、画素AD変換部254を駆動してAD変換を実行させるものである。
【0037】
信号処理回路400は、フレームに対して所定の信号処理を行うものである。信号処理として、CDS(Correlated Double Sampling)処理およびデジタルTDI処理を含む各種の処理が実行される。この信号処理回路400は、処理後のフレームを画像処理回路260に供給する。
【0038】
画像処理回路260は、信号処理回路400からのフレームに対して、所定の画像処理を実行するものである。画像処理として、画像認識処理、黒レベル補正処理、画像補正処理やデモザイク処理などが実行される。この画像処理回路260は、処理後のフレームを出力回路257に供給する。
【0039】
出力回路257は、画像処理後のフレームを外部に出力するものである。
【0040】
制御回路256は、DAC251、画素駆動回路252、垂直走査回路255、信号処理回路400、画像処理回路260および出力回路257のそれぞれの動作タイミングを同期信号XHSに同期して制御するものである。
【0041】
図6は、本技術の第1の実施の形態における画素AD変換部254の一構成例を示す図である。この画素AD変換部254には、複数のADC310が二次元格子状に配列される。ADC310は、アナログTDI回路220ごとに配置される。画素の行数および列数がN行(Nは、整数)およびM列(Mは、整数)である場合、アナログTDI回路220の個数は、N×M/2個であるため、N×M/2個のADC310が配置される。
【0042】
クラスタ300のそれぞれには、画素ブロック211内のアナログTDI回路220の個数と同じ個数のADC310が配置される。画素ブロック211内に4行×2列のアナログTDI回路220が配列される場合、クラスタ300内にも4行×2列のADC310が配列される。
【0043】
ADC310は、対応するアナログTDI回路220により生成されたアナログの画素信号に対してAD変換を行うものである。このADC310は、AD変換において、画素信号と参照信号とを比較し、その比較結果が反転したときの時刻コードを保持する。そして、ADC310は、保持した時刻コードをAD変換後のデジタル信号として出力する。
【0044】
また、クラスタ300の列ごとにリピータ部360が配置される。クラスタ300の列数がM/2である場合、M/2個のリピータ部360が配置される。リピータ部360は、時刻コードを転送するものである。リピータ部360は、時刻コード生成部253からADC310へ時刻コードを転送する。また、リピータ部360は、ADC310から信号処理回路400へデジタル信号を転送する。このデジタル信号の転送は、デジタル信号の「読出し」とも呼ばれる。
【0045】
また、同図において、かっこ内の数字は、ADC310のデジタル信号の読出し順序の一例を示す。例えば、1行目の奇数列のデジタル信号が1番目に読み出され、1行目の偶数列のデジタル信号が2番目に読み出される。2行目の奇数列のデジタル信号が3番目に読み出され、2行目の偶数列のデジタル信号が4番目に読み出される。以下、同様に、各行の奇数列、偶数列のデジタル信号が順に読み出される。
【0046】
なお、アナログTDI回路220のごとに、ADC310を配置しているが、この構成に限定されない。複数のアナログTDI回路220が1つのADC310を共有する構成であってもよい。
【0047】
[ADCの構成例]
図7は、本技術の第1の実施の形態におけるADC310の一構成例を示すブロック図である。このADC310は、差動入力回路320と、正帰還回路330と、ラッチ制御回路340と、複数のラッチ回路350とを備える。
【0048】
また、アナログTDI回路220と差動入力回路320の一部とは、受光チップ201に配置され、差動入力回路320の残りと、その後段の回路とは、回路チップ202に配置される。
【0049】
差動入力回路320は、アナログTDI回路220からの画素信号と、DAC251からの参照信号とを比較するものである。この差動入力回路320は、比較結果を示す比較結果信号を正帰還回路330に供給する。
【0050】
正帰還回路330は、出力の一部を入力(比較結果信号)に加算し、出力信号VCOとしてラッチ制御回路340に供給するものである。
【0051】
ラッチ制御回路340は、垂直走査回路255からの制御信号xWORDに従って、出力信号VCOが反転したときの時刻コードを複数のラッチ回路350に保持させるものである。
【0052】
ラッチ回路350は、ラッチ制御回路340の制御に従って、リピータ部360からの時刻コードを保持するものである。ラッチ回路350は、時刻コードのビット数の分、設けられる。例えば、時刻コードが15ビットの場合、ADC310内に、15個のラッチ回路350が配置される。また、保持された時刻コードは、AD変換後のデジタル信号としてリピータ部360により読み出される。
【0053】
同図に例示した構成により、ADC310は、アナログTDI回路220からの画素信号をデジタル信号に変換する。
【0054】
[アナログTDI回路の構成例]
図8は、本技術の第1の実施の形態におけるアナログTDI回路220の一構成例を示す回路図である。このアナログTDI回路220は、リセットトランジスタ221および222と、浮遊拡散層223および224と、転送部230と、電荷排出トランジスタ225および226と、光電変換素子227および228とを備える。また、アナログTDI回路220は、SF(Source Follower)読出し回路240をさらに備える。アナログTDI回路220内のトランジスタ(リセットトランジスタ221など)として、例えば、nMOS(n-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタが用いられる。
【0055】
リセットトランジスタ221は、画素駆動回路252からのリセット信号RST1に従って、浮遊拡散層223の電荷量を初期化するものである。リセットトランジスタ222は、画素駆動回路252からのリセット信号RST2に従って、浮遊拡散層224の電荷量を初期化するものである。
【0056】
浮遊拡散層223および224は、電荷を蓄積し、電荷量に応じた電圧を生成するものである。なお、浮遊拡散層223および224は、特許請求の範囲に記載の一対の浮遊拡散層の一例である。
【0057】
転送部230は、光電変換素子227および228のそれぞれの転送先を浮遊拡散層223および224のいずれかに切り替えて、その転送先へ電荷を転送するものである。この転送部230は、転送トランジスタ231乃至234を備える。
【0058】
転送トランジスタ231は、画素駆動回路252からの転送信号TX1-1に従って、光電変換素子227から浮遊拡散層223へ電荷を転送するものである。転送トランジスタ232は、画素駆動回路252からの転送信号TX1-2に従って、光電変換素子227から浮遊拡散層224へ電荷を転送するものである。なお、転送トランジスタ231は、特許請求の範囲に記載の第1の転送トランジスタの一例であり、転送トランジスタ232は、特許請求の範囲に記載の第2の転送トランジスタの一例である。
【0059】
転送トランジスタ233は、画素駆動回路252からの転送信号TX2-1に従って、光電変換素子228から浮遊拡散層223へ電荷を転送するものである。転送トランジスタ234は、画素駆動回路252からの転送信号TX2-2に従って、光電変換素子228から浮遊拡散層224へ電荷を転送するものである。なお、転送トランジスタ233は、特許請求の範囲に記載の第3の転送トランジスタの一例であり、転送トランジスタ234は、特許請求の範囲に記載の第4の転送トランジスタの一例である。
【0060】
電荷排出トランジスタ225は、画素駆動回路252からの排出信号OFG1に従って光電変換素子227から電荷を引き抜いて初期化するものである。電荷排出トランジスタ226は、画素駆動回路252からの排出信号OFG2に従って光電変換素子228から電荷を引き抜いて初期化するものである。
【0061】
光電変換素子227および228は、光を電荷に変換するものである。光電変換素子227および228は、互いに異なる行に配置される。例えば、光電変換素子227は、奇数行(1行目など)に配置され、光電変換素子228は、光電変換素子227に隣接する偶数行(2行目など)に配置される。なお、光電変換素子227および228は、特許請求の範囲に記載の一対の光電変換素子の一例である。
【0062】
SF読出し回路240は、浮遊拡散層223および224のいずれかの電圧に応じた画素信号を出力するものである。このSF読出し回路240は、増幅トランジスタ241および242と、選択トランジスタ243および244と、電流源トランジスタ245とを備える。
【0063】
増幅トランジスタ241は、浮遊拡散層223の電圧を増幅するものである。増幅トランジスタ242は、浮遊拡散層224の電圧を増幅するものである。
【0064】
選択トランジスタ243は、画素駆動回路252からの選択信号SEL1に従って、増幅トランジスタ241により増幅された電圧の信号を画素信号SIGとしてADC310に出力するものである。選択トランジスタ244は、画素駆動回路252からの選択信号SEL2に従って、増幅トランジスタ242により増幅された電圧の信号を画素信号SIGとしてADC310に出力するものである。
【0065】
電流源トランジスタ245は、増幅トランジスタ241および242と選択トランジスタ243および244とに一定の電流を供給するものである。
【0066】
同図においては、アナログTDI回路220は、1行目および2行目に配置されているものとする。3行目以降のn(nは、整数)行目に対しては、リセット信号RSTn、転送信号TXn-1、転送信号TXn-2、排出信号OFGnおよび選択信号SELnが送信される。
【0067】
図9は、本技術の第1の実施の形態における差動入力回路320および正帰還回路330の一構成例を示す回路図である。
【0068】
差動入力回路320は、pMOS(p-channel MOS)トランジスタ321、324および326と、nMOSトランジスタ322、323、325、327および328と、容量329とを備える。これらのうちnMOSトランジスタ322、323、325および328と容量329とは、受光チップ201に配置され、残りは回路チップ202に配置される。
【0069】
nMOSトランジスタ322および325は、差動対を構成し、これらのトランジスタのソースは、nMOSトランジスタ323のドレインに共通に接続される。また、nMOSトランジスタ322のドレインは、pMOSトランジスタ321のドレインとpMOSトランジスタ321および324のゲートとに接続される。nMOSトランジスタ325のドレインは、pMOSトランジスタ324のドレインとpMOSトランジスタ326のゲートとに接続される。また、nMOSトランジスタ322のゲートには、DAC251からの参照信号REFが入力される。
【0070】
nMOSトランジスタ325のゲートには、容量329を介して、アナログTDI回路220からの画素信号SIGが入力される。また、nMOSトランジスタ328のソースおよびドレインは、nMOSトランジスタ325のゲートおよびドレインに接続される。このnMOSトランジスタ328のゲートには、垂直走査回路255からのオートゼロ信号AZが入力される。
【0071】
nMOSトランジスタ323のゲートには、所定のバイアス電圧VB1が印加され、nMOSトランジスタ323のソースには、所定の接地電圧が印加される。
【0072】
pMOSトランジスタ321、324および326は、カレントミラー回路を構成する。pMOSトランジスタ321、324および326のソースには、電源電圧VDDHが印加される。この電源電圧VDDHは、後述する電源電圧VDDLよりも高い。
【0073】
nMOSトランジスタ327のゲートには電源電圧VDDLが印加される。また、nMOSトランジスタ327のドレインは、pMOSトランジスタ326のドレインに接続され、ソースは、正帰還回路330に接続される。
【0074】
正帰還回路330はpMOSトランジスタ331、332、334および335と、nMOSトランジスタ333、336および337とを備える。pMOSトランジスタ331および332とnMOSトランジスタ333とは、電源電圧VDDLに直列に接続される。また、pMOSトランジスタ331のゲートには、垂直走査回路255からの駆動信号INI2が入力される。pMOSトランジスタ332およびnMOSトランジスタ333の接続点は、nMOSトランジスタ327のソースに接続される。
【0075】
nMOSトランジスタ333のソースには接地電圧が印加され、ゲートには、垂直走査回路255からの駆動信号INI1が入力される。
【0076】
pMOSトランジスタ334および335は、電源電圧VDDLに直列に接続される。また、pMOSトランジスタ335のドレインは、pMOSトランジスタ332のゲートと、nMOSトランジスタ336および337のドレインとに接続される。pMOSトランジスタ335およびnMOSトランジスタ337のゲートには、垂直走査回路255からの制御信号TESTVCOが入力される。また、pMOSトランジスタ334およびnMOSトランジスタ336のゲートは、pMOSトランジスタ332およびnMOSトランジスタ333の接続点に接続される。
【0077】
pMOSトランジスタ335およびnMOSトランジスタ337の接続点からは、出力信号VCOが出力される。また、nMOSトランジスタ336および337のソースには、接地電圧が印加される。
【0078】
なお、差動入力回路320および正帰還回路330のそれぞれは、図7で説明した機能を持つのであれば、図9に例示した回路に限定されない。
【0079】
[信号処理回路の構成例]
図10は、本技術の第1の実施の形態における信号処理回路400の一構成例を示すブロック図である。この信号処理回路400は、複数のセレクタ405と、複数の演算回路410と、P相フレームメモリ440と、過去フレームメモリ450とを備える。
【0080】
セレクタ405は、クラスタ300の列ごと、言い換えれば、リピータ部360ごとに配置される。クラスタ300に2列のADC310が配列される場合、2列ごとにセレクタ405が配置される。また、演算回路410は、ADC310の列ごとに配置される。ADC310がM列である場合、M/2個のセレクタ405と、M個の演算回路410とが配置される。
【0081】
前述したようにリピータ部360は、奇数列のデジタル信号と偶数列のデジタル信号とを順に出力する。
【0082】
セレクタ405は、制御回路256の制御に従って、デジタル信号の出力先を選択するものである。リピータ部360により奇数列が出力された場合にセレクタ405は、その奇数列に対応する演算回路410にデジタル信号を出力する。一方、偶数列が出力された場合にセレクタ405は、その偶数列に対応する演算回路410にデジタル信号を出力する。
【0083】
演算回路410は、セレクタ405からのデジタル信号に対してCDS処理とデジタルTDI処理とを行うものである。
【0084】
ここで、デジタル信号は、P相レベルとD相レベルとを含む。P相レベルは、画素がリセット信号RSTにより初期化されたときのレベルを示す。一方、D相レベルは、転送信号により電荷が転送されたときの露光量に応じたレベルを示す。P相レベルは、リセットレベルとも呼ばれ、D相レベルは、信号レベルとも呼ばれる。
【0085】
CDS処理において、M個の演算回路410は、P相レベルを配列したP相フレームをP相フレームメモリ440に保持させる。そして、M個の演算回路410は、画素毎にP相レベルと、D相レベルとの差分を求め、差分データを配列したCDSフレームを現在フレームとして生成する。
【0086】
そして、デジタルTDI処理において、M個の演算回路410は、CDSフレームを過去フレームとして過去フレームメモリ450に保持させる。次に、M個の演算回路410は、CDS処理後のCDSフレーム内の所定アドレスのラインと、2フレーム前の過去フレーム内の所定アドレスに隣接するアドレスのラインとを加算する。
【0087】
また、M個の演算回路410は、CDSフレームと、デジタルTDI処理後のTDIフレームとを画像処理回路260に供給する。
【0088】
図11は、本技術の第1の実施の形態におけるアナログTDI回路220内の素子のレイアウトの一例を示す図である。光電変換素子227および228は、垂直方向に配列され、浮遊拡散層223および224は水平方向に配列される。光電変換素子227および228と、浮遊拡散層224との間には、転送トランジスタ232および234が配置される。また、光電変換素子227および228と浮遊拡散層223との間には、転送トランジスタ231および233が配置される。同図における矢印は、電荷の転送方向を示す。
【0089】
ここで、光電変換素子227は、例えば、奇数行であるk(kは、奇数)行に配置され、光電変換素子228は、偶数行であるk+1行に配置されるものとする。また、2k行の光電変換素子227を「PDk」とし、k+1行の光電変換素子228を「PD(k+1)」とする。k行およびk+1行に対応する浮遊拡散層223および224のうち一方を「FDk」とし、他方を「FD(k+1)」とする。kが「1」である場合、1行目に「PD1」が配置され、2行目に「PD2」が配置される。また、1行目および2行目に「FD1」および「FD2」が配置される。
【0090】
また、浮遊拡散層224の左側には、矩形のトランジスタ配置部247が設けられ、浮遊拡散層223の右側には、矩形のトランジスタ配置部246が配置される。トランジスタ配置部246には、例えば、図8に例示した回路内のリセットトランジスタ221、電荷排出トランジスタ225、増幅トランジスタ241および選択トランジスタ243が配置される。トランジスタ配置部247には、例えば、図8に例示した回路内のリセットトランジスタ222、電荷排出トランジスタ226、増幅トランジスタ242、選択トランジスタ244および電流源トランジスタ245が配置される。
【0091】
図12は、本技術の第1の実施の形態におけるアナログTDI回路220内の素子のレイアウトの別の例を示す図である。同図に例示するように、トランジスタ配置部246および247は、L字型であってもよい。同図におけるaは、トランジスタ配置部246を上側に、トランジスタ配置部247を下側に配置したレイアウトの一例を示す。同図におけるbは、トランジスタ配置部246を下側に、トランジスタ配置部247を上側に配置したレイアウトの一例を示す。
【0092】
[固体撮像素子の動作例]
図13は、本技術の第1の実施の形態におけるトランジスタの制御例を示すタイミングチャートである。画素駆動回路252は、同期信号XHSに同期したタイミングで、排出信号OFGにより、全画素の露光を開始させる。全画素の露光の終了タイミングは、次の露光開始の直前である。例えば、タイミングT1乃至T2の間のタイミングで最初の露光が終了し、最初のフレームF1が生成される。また、最初の露光終了後に2回目の露光が開始される。そして、タイミングT22の後のタイミングで2回目の露光が終了し、2番目のフレームF2が生成される。また、2番目の露光終了直後に3回目の露光が開始される。
【0093】
また、タイミングT1において、画素駆動回路252は、リセット信号RST1により、1行目のFD1を初期化する。また、露光終了直前のタイミングT12において、画素駆動回路252は、転送信号TX1-1により、PD1からFD1へ電荷を転送させる。
【0094】
続いてフレームF1の露光終了後のタイミングT2において、画素駆動回路252は、リセット信号RST2により、2行目のFD1を初期化する。また、露光終了前のタイミングT22において、画素駆動回路252は、転送信号TX1-2およびTX2-1により、PD1からFD2へ電荷を転送させるとともにPD2からFD1へ電荷を転送させる。
【0095】
同図に例示したように、排出信号OFGにより露光が開始され、リセット信号RSTにより浮遊拡散層(FD1やFD2)が初期化される。
【0096】
図14は、本技術の第1の実施の形態における2フレーム目の露光終了までの固体撮像素子200の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0097】
フレームF1の露光開始後に同期信号XHSが立ち下がったタイミングT1において、画素駆動回路252は、リセット信号RST1によりFD1を初期化する。また、差動入力回路320には、オートゼロ信号AZが入力される。そして、初期化直後のタイミングT11において、選択信号SEL1が送信され、ADC310は、FD1のP相レベルをデジタル信号に変換する。続いて露光終了直前のタイミングT12において、画素駆動回路252は、転送信号TX1-1により、PD1からFD1へ電荷を転送させる。この電荷の転送により、FD1は、初期状態から、ラインL1の露光量に応じた電荷を保持した状態に移行する。ここで、ラインL1は、奇数行である1行目のラインである。
【0098】
そして、フレームF2の露光開始後に同期信号XHSが立ち下がったタイミングT2において、画素駆動回路252は、リセット信号RST1によりFD2を初期化する。また、差動入力回路320には、オートゼロ信号AZが入力される。そして、初期化直後のタイミングT21において、選択信号SEL2が送信され、ADC310は、フレームF2のFD2のP相レベルをデジタル信号に変換する。
【0099】
続いて露光終了直前のタイミングT22において、画素駆動回路252は、転送信号TX1-2およびTX2-1により、PD1からFD2へ電荷を転送させるとともにPD2からFD1へ電荷を転送させる。これらの転送により、FD1は、フレームF1のラインL1と、フレームF2のラインL2とのそれぞれの露光量に応じた電荷を保持した状態に移行する。ここで、ラインL2は、偶数行である2行目のラインである。一方、FD2は、初期状態からラインL2の露光量に応じた電荷を保持した状態に移行する。同図に例示したようにFD1においては、フレームF1のラインL1と、フレームF2のラインL2とのそれぞれの電荷量が積算されているため、アナログのTDI処理が実現される。
【0100】
図15は、本技術の第1の実施の形態における4フレーム目の浮遊拡散層の初期化までの固体撮像素子の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0101】
フレームF3の露光が開始されたタイミングT23において、選択信号SEL1が送信され、ADC310は、フレームF1のラインL1と、フレームF2のラインL2とを積算したラインのD相レベルをAD変換する。また、演算回路410は、そのD相レベルと、フレームF1のFD1のP相レベルとの差分を求めるCDS処理を行う。
【0102】
フレームF3の露光開始後に同期信号XHSが立ち下がったタイミングT3において、画素駆動回路252は、リセット信号RST1によりFD1を初期化する。また、差動入力回路320には、オートゼロ信号AZが入力される。そして、初期化直後のタイミングT31において、選択信号SEL1が送信され、ADC310は、フレームF3のFD1のP相レベルをデジタル信号に変換する。
【0103】
続いて露光終了直前のタイミングT32において、画素駆動回路252は、転送信号TX1-1およびTX2-2により、PD1からFD1へ電荷を転送させるとともにPD2からFD2へ電荷を転送させる。これらの転送により、FD1は、初期状態からフレームF3のラインL1を保持した状態に移行し、FD2は、フレームF2のラインL1とフレームF3のラインL2とのそれぞれの露光量に応じた電荷を保持した状態に移行する。
【0104】
フレームF4の露光が開始されたタイミングT33において、選択信号SEL2が送信され、ADC310は、フレームF2のラインL1と、フレームF3のラインL2とを積算したラインのD相レベルをAD変換する。また、演算回路410は、そのD相レベルと、フレームF2のFD2のP相レベルとの差分を求めるCDS処理を行う。
【0105】
フレームF4の露光開始後に同期信号XHSが立ち下がったタイミングT4において、画素駆動回路252は、リセット信号RST2によりFD2を初期化する。また、差動入力回路320には、オートゼロ信号AZが入力される。
【0106】
なお、フレームF3の露光以降は、3行目以降においても電荷の転送が並列して実行されるが、3行目以降の制御は省略されている。
【0107】
図16は、本技術の第1の実施の形態における5フレーム目の露光終了までの固体撮像素子200の動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0108】
初期化直後のタイミングT41において、選択信号SEL2が送信され、ADC310は、フレームF4のFD2のP相レベルをデジタル信号に変換する。
【0109】
続いて露光終了直前のタイミングT42において、画素駆動回路252は、転送信号TX1-2およびTX2-1により、PD1からFD2へ電荷を転送させるとともにPD2からFD1へ電荷を転送させる。これらの転送により、FD1は、フレームF3のラインL1とフレームF4のラインL2とのそれぞれの露光量に応じた電荷を保持した状態に移行する。一方、FD2は、初期状態からフレームF4のラインL1を保持した状態に移行する。
【0110】
フレームF5の露光が開始されたタイミングT43において、選択信号SEL1が送信され、ADC310は、フレームF3のラインL1と、フレームF4のラインL2とを積算したラインのD相レベルをAD変換する。また、演算回路410は、そのD相レベルと、フレームF3のFD1のP相レベルとの差分を求めるCDS処理を行う。
【0111】
フレームF5の露光開始後に同期信号XHSが立ち下がったタイミングT5において、画素駆動回路252は、リセット信号RST1によりFD1を初期化する。また、差動入力回路320には、オートゼロ信号AZが入力される。そして、初期化直後のタイミングT51において、選択信号SEL1が送信され、ADC310は、フレームF5のFD1のP相レベルをデジタル信号に変換する。また、演算回路410は、フレームF1のラインL1と、フレームF2のラインL2と、フレームF3のラインL3と、フレームF4のラインL4とを積算するデジタルTDI処理を行う。
【0112】
続いて露光終了直前のタイミングT52において、画素駆動回路252は、転送信号TX1-1およびTX2-2により、PD1からFD1へ電荷を転送させるとともにPD2からFD2へ電荷を転送させる。これらの転送により、FD1は、初期状態からフレームF5のラインL1を保持した状態に移行し、FD2は、フレームF4のラインL1とフレームF5のラインL2とのそれぞれの露光量に応じた電荷を保持した状態に移行する。
【0113】
フレームF5の露光が終了したタイミングT53において、選択信号SEL2が送信され、ADC310は、フレームF4のラインL1と、フレームF5のラインL2とを積算したラインのD相レベルをAD変換する。また、演算回路410は、そのD相レベルと、フレームF4のFD2のP相レベルとの差分を求めるCDS処理を行う。
【0114】
続いて、図14乃至図16のタイミングチャートの各時点におけるアナログTDI回路220の状態について説明する。
【0115】
図17は、本技術の第1の実施の形態における1フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路220の状態の一例を示す図である。同図におけるaは、タイミングT1におけるアナログTDI回路220の状態の一例を示し、同図におけるbは、フレームF1の露光終了時のアナログTDI回路220の状態の一例を示す。
【0116】
同図におけるaに例示するように、タイミングT1において画素駆動回路252は、FD1を初期化する。そして、同図におけるbに例示するように、フレームF1の露光終了時に画素駆動回路252は、PD1からFD1へ電荷を転送させる。これにより、フレームF1のラインL1の露光量に応じた電荷がFD1に保持される。
【0117】
図18は、本技術の第1の実施の形態における2フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路220の状態の一例を示す図である。同図におけるaは、タイミングT2におけるアナログTDI回路220の状態の一例を示し、同図におけるbは、フレームF2の露光終了時のアナログTDI回路220の状態の一例を示す。
【0118】
同図におけるaに例示するように、タイミングT2において画素駆動回路252は、FD2を初期化する。そして、同図におけるbに例示するように、フレームF2の露光終了時に画素駆動回路252は、PD1からFD2へ電荷を転送させるとともに、PD2からFD1へ電荷を転送させる。これにより、フレームF1のラインL1と、フレームF2のラインL2とのそれぞれの露光量に応じた電荷がFD1に保持される。一方、FD2には、フレームF2のラインL1の露光量に応じた電荷が保持される。
【0119】
図19は、本技術の第1の実施の形態における3フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路220の状態の一例を示す図である。同図におけるaは、タイミングT3におけるアナログTDI回路220の状態の一例を示し、同図におけるbは、フレームF3の露光終了時のアナログTDI回路220の状態の一例を示す。
【0120】
同図におけるaに例示するように、タイミングT3において画素駆動回路252は、FD1を初期化する。そして、同図におけるbに例示するように、フレームF3の露光終了時に画素駆動回路252は、PD1からFD1へ電荷を転送させるとともに、PD2からFD2へ電荷を転送させる。これにより、フレームF3のラインL1の露光量に応じた電荷がFD1に保持される。一方、FD2には、フレームF2のラインL1と、フレームF3のラインL2とのそれぞれの露光量に応じた電荷がFD1に保持される。
【0121】
図20は、本技術の第1の実施の形態における4フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路220の状態の一例を示す図である。同図におけるaは、タイミングT4におけるアナログTDI回路220の状態の一例を示し、同図におけるbは、フレームF4の露光終了時のアナログTDI回路220の状態の一例を示す。
【0122】
同図におけるaに例示するように、タイミングT4において画素駆動回路252は、FD2を初期化する。そして、同図におけるbに例示するように、フレームF4の露光終了時に画素駆動回路252は、PD1からFD2へ電荷を転送させるとともに、PD2からFD1へ電荷を転送させる。これにより、フレームF3のラインL1と、フレームF4のラインL2とのそれぞれの露光量に応じた電荷がFD1に保持される。一方、FD2には、フレームF4のラインL1の露光量に応じた電荷が保持される。
【0123】
図21は、本技術の第1の実施の形態における5フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路220の状態の一例を示す図である。同図におけるaは、タイミングT5におけるアナログTDI回路220の状態の一例を示し、同図におけるbは、フレームF5の露光終了時のアナログTDI回路220の状態の一例を示す。
【0124】
同図におけるaに例示するように、タイミングT5において画素駆動回路252は、FD1を初期化する。そして、同図におけるbに例示するように、フレームF5の露光終了時に画素駆動回路252は、PD1からFD1へ電荷を転送させるとともに、PD2からFD2へ電荷を転送させる。これにより、フレームF5のラインL1の露光量に応じた電荷がFD1に保持される。一方、FD2には、フレームF4のラインL1と、フレームF5のラインL2とのそれぞれの露光量に応じた電荷がFD1に保持される。
【0125】
ここで、アナログTDI回路において、FD1およびFD2の一方と、その一方へ電荷を転送する2つの転送トランジスタとが削減された構成の比較例を想定する。
【0126】
図22は、比較例における2フレーム目の露光終了までのアナログTDI回路の状態の一例を示す図である。同図におけるaは、タイミングT2におけるアナログTDI回路220の状態の一例を示し、同図におけるbは、FDを初期化したアナログTDI回路の状態を示す。同図におけるcは、フレームF2の露光終了時のアナログTDI回路の状態の一例を示す。
【0127】
PD1およびPD2が1つのFDを共有する比較例では、同図におけるaに例示するように、比較例の画素駆動回路252は、PD2からFDへ電荷を転送させる。これにより、フレームF1のラインL1とフレームF2のラインL2とのそれぞれの露光量に応じた電荷がFDに保持される。そして、これらのラインを積算したラインのD相レベルがデジタル信号に変換される。
【0128】
そして、比較例の画素駆動回路252は、同図におけるbに例示するようにFDを初期化する。P相レベルがデジタル信号に変換されると、同図におけるcに例示するように、PD1からFDへ電荷を転送させる。これにより、フレームF2のラインL1の露光量に応じた電荷がFDに保持される。
【0129】
同図に例示するように、PD1およびPD2に対してFDが1つしかない比較例では、フレームF2のラインL2の電荷転送と、そのフレームF2のラインL1の電荷転送とを同時に行うことができない。これらの電荷転送は、FDのリセットを挟んで順に実行される。
【0130】
これに対して、FD1およびFD2を設けたアナログTDI回路220では、図18におけるbに例示したように、フレームF2のラインL2の電荷転送と、そのフレームF2のラインL1の電荷転送とを同時に行うことができる。このため、FDの初期化を待たずに、次の電荷転送を開始することができる。したがって、同期信号XHSの間隔を比較例よりも短くすることができる。この同期信号XHSに同期して、TDIフレームの1ラインが走査されるため、同期信号XHSの間隔を短くすることにより、TDIフレームの走査の速度、すなわちスキャンレートを向上させることができる。また、同期信号XHSに同期して実行されるAD変換の速度を向上させることができる。
【0131】
図23は、本技術の第1の実施の形態におけるTDI処理の一例を示す図である。例えば、最初にフレームF1が撮像され、続いてフレームF2、F3、F4およびF5が順に撮像されたものとする。同図における矢印は、被写体の移動方向を示す。同図に例示するように、この被写体は、垂直方向に沿って1ラインずつ移動するものとする。
【0132】
アナログTDI回路220は、FD1を初期化し、フレームF1のラインL1の電荷をFD1に転送する。次にアナログTDI回路220は、フレームF2のラインL2の電荷をFD1に転送するとともに、フレームF2のラインL1の電荷をFD2に転送する。FD1には、ラインL1+L2の電荷が保持され、その電荷量に応じた電圧は、デジタル信号に変換される。
【0133】
続いて、アナログTDI回路220は、FD1およびFD3を初期化し、フレームF3のラインL2の電荷をFD2に転送するとともに、フレームF3のラインL1の電荷をFD1に転送する。同時にアナログTDI回路220は、フレームF3のラインL3の電荷をFD3に転送する。FD2には、ラインL1+L2の電荷が保持され、その電荷量に応じた電圧は、デジタル信号に変換される。
【0134】
そして、アナログTDI回路220は、FD2およびFD4を初期化し、フレームF4のラインL2の電荷をFD1に転送するとともに、フレームF4のラインL1の電荷をFD2に転送する。同時にアナログTDI回路220は、フレームF4のラインL4の電荷をFD3に転送し、フレームF4のラインL3の電荷をFD4に転送する。FD1には、ラインL1+L2の電荷が保持され、その電荷量に応じた電圧は、デジタル信号に変換される。また、FD3には、ラインL3+L4の電荷が保持され、その電荷量に応じた電圧は、デジタル信号に変換される。
【0135】
演算回路410は、フレームF2で出力されたデジタル信号とフレームF4で出力されたデジタル信号とのそれぞれに対してCDS処理を行い、それらのCDS結果を加算する。これにより、フレームF1のラインL1と、フレームF2のラインL2と、フレームF3のラインL3と、フレームF4のラインL4とが積算される。前述したように、被写体は1ラインずつ移動するため、積算対象の各ラインのパターンは、同一である。演算回路410は、加算したラインをTDIフレームの最後のラインとして出力する。このように、時間をずらして露光量を積分する処理は、TDI処理と呼ばれる。
【0136】
続いて、アナログTDI回路220は、FD3およびFD5を初期化し、フレームF5のラインL2の電荷をFD2に転送する。同時にアナログTDI回路220は、フレームF5のラインL3の電荷をFD3に転送し、フレームF5のラインL4の電荷をFD4に転送する。同時にアナログTDI回路220は、フレームF5のラインL5の電荷をFD5に転送する。FD2には、ラインL1+L2の電荷が保持され、その電荷量に応じた電圧は、デジタル信号に変換される。また、FD4には、ラインL3+L4の電荷が保持され、その電荷量に応じた電圧は、デジタル信号に変換される。
【0137】
演算回路410は、フレームF3で出力されたデジタル信号とフレームF5で出力されたFD4に対応するデジタル信号とのそれぞれに対してCDS処理を行い、それらのCDS結果を加算する。これにより、フレームF2のラインL1と、フレームF3のラインL2と、フレームF4のラインL3と、フレームF5のラインL4とが積算される。演算回路410は、加算したラインをTDIフレームの最後から2番目のラインとして出力する。
【0138】
フレームF6以降においても同様の処理が実行され、TDIフレームの行が順に出力される。
【0139】
なお、演算回路410は、CDS処理に加えてデジタルTDI処理を実行しているが、CDS処理のみを実行する構成とすることもできる。また、固体撮像素子200は、アナログおよびデジタルのTDI処理により、4ラインを積算しているが、より多くのラインを積算することもできる。また、固体撮像素子200は、最初の4フレームについて先頭のラインから4ラインを積分しているが、この構成に限定されない。例えば、被写体の移動方向が逆の場合、固体撮像素子200は、最初の4フレームについて最後のラインから4ラインを積分すればよい。
【0140】
図24は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像素子200の動作の一例を示すフローチャートの一例である。この動作は、例えば、フレームの撮像を行うための所定のアプリケーションが実行されたときに開始される。
【0141】
固体撮像素子200内の画素駆動回路252は、全画素を同時に露光し、露光終了時に浮遊拡散層(FD1やFD2)を初期化する(ステップS901)。そして、ADC310は、初期化したFDのP相レベルをAD変換する(ステップS902)。
【0142】
また、アナログTDI回路220は、電荷転送により隣接する2ラインの電荷量をアナログ加算する(ステップS903)。また、演算回路410は、2ラインを保持するFDのD相レベルを変換し、CDS処理を行う(ステップS904)。また、演算回路410は、2ラインがデジタル出力されると、それらを加算するデジタルTDI処理を行う(ステップS905)。ステップS905の後に、固体撮像素子200は、ステップS901以降を繰り返し実行する。
【0143】
このように、本技術の第1の実施の形態では、PD1およびPD2のそれぞれの転送先をFD1およびFD2のいずれかへ切り替える転送部230を設けたため、PD1からFD2への電荷転送とPD2からFD1への電荷転送とを同時に行うことができる。これにより、それらの電荷転送を順に行う場合と比較して、スキャンレートを速くし、AD変換の速度を向上させることができる。
【0144】
[変形例]
上述の第1の実施の形態では、一定の電荷電圧変換効率によりアナログTDI回路220が画素信号を生成していたが、低照度の際のノイズを低減する観点から、互いに異なる2つの電荷電圧変換効率により画素信号を生成することが望ましい。この第1の実施の形態の変形例のアナログTDI回路220は、互いに異なる2つの電荷電圧変換効率のそれぞれにより画素信号を生成する点において第1の実施の形態と異なる。
【0145】
図25は、本技術の第1の実施の形態の変形例におけるアナログTDI回路220の一構成例を示す回路図である。この第1の実施の形態の変形例のアナログTDI回路220は、変換効率制御トランジスタ235および236と、容量237および238とをさらに備える点において第1の実施の形態と異なる。変換効率制御トランジスタ235および236として、例えば、nMOSトランジスタが用いられる。
【0146】
変換効率制御トランジスタ235は、制御信号FDG1に従って浮遊拡散層223(FD1)の電荷電圧変換効率を制御するものである。変換効率制御トランジスタ236は、制御信号FDG2に従って浮遊拡散層224(FD2)の電荷電圧変換効率を制御するものである。変換効率制御トランジスタ235は、リセットトランジスタ221と直列に接続され、それらの接続点と接地端子との間に容量237が挿入される。変換効率制御トランジスタ236は、リセットトランジスタ222と直列に接続され、それらの接続点と接地端子との間に容量238が挿入される。
【0147】
画素駆動回路252が、FD1の初期化直後にパルス期間に亘ってハイレベルの制御信号FDG1を供給し、それ以降はローレベルに制御することにより、アナログTDI回路220は、所定値より高い電荷電圧変換効率にすることができる。一方、画素駆動回路252が、常にハイレベルの制御信号FDG1を供給することにより、アナログTDI回路220は、所定値より低い電荷電圧変換効率にすることができる。FD2についても同様である。以下、高い方の電荷電圧変換効率を単に「高変換効率」と称し、低い方の電荷電圧変換効率を単に「低変換効率」と称する。
【0148】
例えば、画素駆動回路252は、制御信号FDGにより、高変換効率および低変換効率の両方で画素信号を生成する。そして、演算回路410は、高変換効率によるデジタル信号がフルコード未満の場合に、その高変換効率によるデジタル信号を、その画素の信号として出力する。一方、高変換効率によるデジタル信号がフルコードの場合に、演算回路410は、その低変換効率によるデジタル信号を、その画素の信号として出力する。これにより、ダイナミックレンジを拡大し、低照度の信号のノイズを低減することができる。
【0149】
このように、本技術の第1の実施の形態の変形例では、アナログTDI回路220は、高変換効率および低変換効率の両方による画素信号を生成し、フルコードであるか否かに応じて何れかを選択することにより、低照度の際のノイズを低減することができる。
【0150】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、画素毎にリセットトランジスタを配置していたが、画素数が多くなるほど、回路規模が増大するおそれがある。この第2の実施の形態のアナログTDI回路220は、リセットトランジスタを削減し、電荷排出トランジスタ225および226の制御により浮遊拡散層223および224を初期化する点において第1の実施の形態と異なる。
【0151】
図26は、本技術の第2の実施の形態におけるアナログTDI回路220の一構成例を示す回路図である。この第2のアナログTDI回路220は、リセットトランジスタ221および222が配置されない点において第1の実施の形態と異なる。
【0152】
図27は、本技術の第2の実施の形態におけるトランジスタの制御例を示すタイミングチャートである。露光開始のタイミングにおいて、画素駆動回路252は、全画素に対し、排出信号(OFG1やOFG2)と同時に、転送信号(TX1-1およびTX2-1)を送信する。これにより、光電変換素子227および228と同時に、浮遊拡散層223および224も初期化される。
【0153】
このように、本技術の第2の実施の形態では、画素駆動回路252が、電荷排出トランジスタ225および226の制御により浮遊拡散層223および224を初期化するため、リセットトランジスタ221および222が不要となる。これにより、回路規模を削減することができる。
【0154】
[変形例]
上述の第2の実施の形態では、一定の電荷電圧変換効率によりアナログTDI回路220が画素信号を生成していたが、低照度の際のノイズを低減する観点から、互いに異なる2つの電荷電圧変換効率により画素信号を生成することが望ましい。この第2の実施の形態の変形例のアナログTDI回路220は、互いに異なる2つの電荷電圧変換効率のそれぞれにより画素信号を生成する点において第2の実施の形態と異なる。
【0155】
図28は、本技術の第2の実施の形態の変形例におけるアナログTDI回路220の一構成例を示す回路図である。この第2の実施の形態の変形例のアナログTDI回路220は、変換効率制御トランジスタ235および236と、容量237および238とをさらに備える点において第2の実施の形態と異なる。
【0156】
変換効率制御トランジスタ235は、浮遊拡散層223と電源端子との間に挿入され、変換効率制御トランジスタ235および浮遊拡散層223の接続点と接地端子との間に容量237が挿入される。変換効率制御トランジスタ235は、浮遊拡散層223と電源端子との間に挿入され、変換効率制御トランジスタ235および浮遊拡散層223の接続点と接地端子との間に容量237が挿入される。変換効率制御トランジスタ236は、浮遊拡散層224と電源端子との間に挿入され、変換効率制御トランジスタ236および浮遊拡散層224の接続点と接地端子との間に容量238が挿入される。
【0157】
第2の実施の形態の変形例の画素駆動回路252によるトランジスタの制御方法は、図27に例示した制御と同様である。
【0158】
このように、本技術の第2の実施の形態の変形例では、アナログTDI回路220が高変換効率および低変換効率の両方による画素信号を生成し、フルコードであるか否かに応じて何れかを選択することにより、低照度の際のノイズを低減することができる。
【0159】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0160】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)一対の光電変換素子と、
一対の浮遊拡散層と、
前記一対の光電変換素子のそれぞれの転送先を前記一対の浮遊拡散層のいずれかに切り替えて前記転送先へ電荷を転送する転送部と
を具備する固体撮像素子。
(2)前記転送部は、前記一対の光電変換素子の一方から前記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する処理と前記一対の光電変換素子の他方から前記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する処理とを同時に行う前記(1)記載の固体撮像素子。
(3)前記転送部は、
前記一対の光電変換素子の一方から前記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する第1の転送トランジスタと、
前記一対の光電変換素子の一方から前記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する第2の転送トランジスタと、
前記一対の光電変換素子の他方から前記一対の浮遊拡散層の一方へ電荷を転送する第3の転送トランジスタと、
前記一対の光電変換素子の他方から前記一対の浮遊拡散層の他方へ電荷を転送する第4の転送トランジスタと
を備える前記(2)記載の固体撮像素子。
(4)前記一対の光電変換素子のそれぞれから電荷を排出する一対の電荷排出トランジスタをさらに具備する
前記(1)から(3)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(5)前記一対の浮遊拡散層のそれぞれを初期化する一対のリセットトランジスタをさらに具備する
前記(1)から(4)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(6)前記一対の浮遊拡散層の電荷電圧変換効率を制御する一対の変換効率制御トランジスタをさらに具備する
前記(1)から(5)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(7)前記一対の浮遊拡散層のそれぞれの電圧を増幅して一対の画素信号を生成する一対の増幅トランジスタと、
前記一対の画素信号の一方を選択する一対の選択トランジスタと
をさらに具備する前記(1)から(6)のいずれかに記載の固体撮像素子。
(8)前記一対の画素信号のそれぞれを順にデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器をさらに具備する前記(7)記載の固体撮像素子。
(9)前記デジタル信号を積算する演算回路をさらに具備する
前記(8)記載の固体撮像素子。
(10)一対の光電変換素子と、
一対の浮遊拡散層と、
前記一対の光電変換素子のそれぞれの転送先を前記一対の浮遊拡散層のいずれかに切り替えて前記転送先へ電荷を転送する転送部と、
前記電荷の量に応じた画素信号をデジタル信号に変換して処理する信号処理部と
を具備する撮像装置。
【符号の説明】
【0161】
100 撮像装置
110 光学部
120 記憶部
130 制御部
140 通信部
200 固体撮像素子
201 受光チップ
202 回路チップ
210 画素アレイ部
211 画素ブロック
212 周辺回路
220 アナログTDI回路
221、222 リセットトランジスタ
223、224 浮遊拡散層
225、226 電荷排出トランジスタ
227、228 光電変換素子
230 転送部
231~234 転送トランジスタ
235、236 変換効率制御トランジスタ
237、238、329 容量
240 SF読出し回路
241、242 増幅トランジスタ
243、244 選択トランジスタ
245 電流源トランジスタ
246、247 トランジスタ配置部
251 DAC
252 画素駆動回路
253 時刻コード生成部
254 画素AD変換部
255 垂直走査回路
256 制御回路
257 出力回路
260 画像処理回路
300 クラスタ
310 ADC
320 差動入力回路
321、324、326、331、332、334、335 pMOSトランジスタ
322、323、325、327、328、333、336、337 nMOSトランジスタ
330 正帰還回路
340 ラッチ制御回路
350 ラッチ回路
360 リピータ部
400 信号処理回路
405 セレクタ
410 演算回路
440 P相フレームメモリ
450 過去フレームメモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28