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特許7535526鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きのスチールコード
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きのスチールコード
(51)【国際特許分類】
   D07B 1/06 20060101AFI20240808BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20240808BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240808BHJP
   C25D 3/56 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
D07B1/06 A
B60C9/00 K
B60C1/00 C
C25D3/56 D
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021544298
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2020051847
(87)【国際公開番号】W WO2020156967
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/074260
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502385850
【氏名又は名称】エンベー ベカルト ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】NV Bekaert SA
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(72)【発明者】
【氏名】ワン バオウシン
(72)【発明者】
【氏名】タン ユンファン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン アモン
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-330168(JP,A)
【文献】米国特許第04446198(US,A)
【文献】特開昭55-075817(JP,A)
【文献】特開2007-217858(JP,A)
【文献】特開昭60-077989(JP,A)
【文献】国際公開第97/023311(WO,A1)
【文献】特開昭61-222737(JP,A)
【文献】特開2018-119189(JP,A)
【文献】特開昭62-203615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
C25D1/00-3/66
D07B1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のフィラメントを含むスチールコードであって、
前記フィラメントが、スチールフィラメント状基材を含み、
コーティングが前記スチールフィラメント状基材を部分的に又は全体的に覆い、
前記コーティングが、銅及び亜鉛からなる真ちゅうを含み、
前記コーティングが鉄に富む
スチールコードであり、
前記鉄が前記真ちゅう中に粒子として存在し、前記粒子が10~10,000ナノメートルのサイズを有することを特徴とする、スチールコード。
【請求項2】
前記粒子が20~5000ナノメートルのサイズを有する、請求項1に記載のスチールコード。
【請求項3】
前記真ちゅうが少なくとも63質量%の銅を含み、残りが亜鉛である、請求項1又は2に記載のスチールコード。
【請求項4】
前記コーティング中の鉄の量が1質量%以上であり、真ちゅう及び鉄の総質量に対して10質量%よりも少ない、請求項1~3のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項5】
前記コーティング中の鉄の前記量が3質量%以上であり、真ちゅう及び鉄の総質量に対して9質量%よりも少ない、請求項4に記載のスチールコード。
【請求項6】
前記コーティングが亜鉛鉄合金を実質的に含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項7】
前記フィラメントの表面に存在するリンの量がPであり、前記フィラメントの表面に存在する鉄の量がFeであり、前記P及びFeが本説明において定義されるようなP及びFe手順3によって決定され、1平方メートル当たりのミリグラム単位で表され、前記Pが4mg/m以下及びゼロよりも大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項8】
前記表面に存在する鉄の前記量Feが30mg/m以上である、請求項7に記載のスチールコード。
【請求項9】
FeのPに対する比が27よりも大きい、請求項7又は8に記載のスチールコード。
【請求項10】
表面コーティング重量SCWが、表面積の単位当たりの前記コーティング中に存在する真ちゅう及び鉄の質量の合計であり、前記コーティング重量が1平方メートル当たりのグラム単位で表され、Feの、Pとコーティング重量SCWとの積に対する比が13よりも大きい、請求項7~9のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項11】
前記スチールコードがシングルフィラメントからなる、請求項1~10のいずれか一項に記載のスチールコード。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のスチールコードで補強された加硫ゴムを含むゴム製品であって、前記ゴム製品が、タイヤ、乗用車タイヤ、トラックタイヤ、バンタイヤ、オフロードタイヤ、ホース、油圧ホース、ベルト、シンクロベルト、コンベヤーベルト、エレベーターベルトからなる群からのものである、ゴム製品。
【請求項13】
前記加硫ゴムがコバルトを実質的に含まない、請求項12に記載のゴム製品。
【請求項14】
ゴム製品の補強のための、請求項1~11のいずれか一項に記載のスチールコードの、使用。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載のスチールコードのフィラメントの製造方法であって、以下の工程:
a.中間径を有する中間スチールワイヤーを提供する工程;
b.前記中間スチールワイヤーを、銅、鉄及び亜鉛で電解コーティングする工程;
c.前記銅-鉄-亜鉛被覆中間スチールワイヤーを熱処理にかけて少なくとも420℃及び530℃未満の温度で前記亜鉛を前記銅中へ拡散させ、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間スチールワイヤーをもたらす工程;
d.酸浴への浸漬によって、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの前記中間スチールワイヤーの表面から酸化亜鉛及び酸化鉄を除去する工程;
e.鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの前記中間スチールワイヤーを湿式伸線操作にかけ、それによって前記フィラメントを得る工程
を含む方法であり、
前記中間スチールワイヤーを鉄で電解コーティングする工程は、50~60℃の温度で、電解めっき液中で行われ、
前記湿式伸線操作によって、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの前記中間スチールワイヤー上に存在するような前記鉄粒子が、10,000nm未満及び10nmよりも大きいサイズまで縮小され、前記湿式伸線が、少なくとも3.5の真の伸びまで行われ、
前記湿式伸線操作において、少なくとも前記フィラメントの最終直径を決定するダイは、ダイヤモンドを含むダイであることを特徴とする、方法。
【請求項16】
工程:
b.前記中間スチールワイヤーを、銅、鉄及び亜鉛で電解コーティングする工程
が、以下のサブ工程:
b1.前記中間ワイヤーを銅で電解コーティングする工程;
b2.前記銅被覆中間ワイヤーを鉄で電解コーティングする工程;
b3.前記銅-鉄被覆中間ワイヤーを亜鉛で電解コーティングする工程
によって行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程:
b2.前記銅被覆中間スチールワイヤーを鉄で電解コーティングする工程
が、以下の電解めっき液:
- 塩化第一鉄溶液;
- 硫酸第一鉄溶液;
- 硫酸第一鉄アンモニウム溶液;
- フルオロホウ酸第一鉄溶液;
- スルファミン酸第一鉄溶液;
- 混合硫酸塩-塩化物浴
からなる群からのいずれか1つ中で行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程:
e.鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの前記中間スチールワイヤーを湿式伸線操作にかける工程
が、湿式伸線が、ダイヤモンドを含む1つ以上のダイを用いて行われる、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ、ホース、コンベヤーベルト及び他の用途などのゴム商品を補強するためのスチールコードに関する。
【背景技術】
【0002】
2019年に、車両用の約20億のスチールコード補強タイヤが世界中で生産されることが計画されている。スチールコードそれ自体は、真ちゅうコーティングでコートされたスチールフィラメントでできている。スチール及び真ちゅうは、環境に及びヒトの健康に比較的無害である。
【0003】
しかしながら、スキムコンパウンドとスチールコードとの間の接着性を安定するために、タイヤメーカーは、例えばナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト又はデカン酸コバルトホウ素錯体などのコバルトベースの有機塩を、カーボンブラック、硫黄、硬化促進剤、オイル、酸化防止剤、活性化剤等に加えてゴムに添加している。これらのコバルトベースの有機塩のいくつかは発がん性であると疑われており、使用の制限をますます受けている。
【0004】
接着システムにおいて有機コバルト塩がどのように機能しているかは、これまでも広範な学術研究の主題であり、その中で、故W.J.van Ooijは、顕著な役割を果たした。本出願の目的のためには、2001年の彼のレビュー「Rubber-brass bonding」、「Handbook of Rubber Bonding」,Rapra Technology Limitedの第6章が、基本的な参考文献(BR:Basic Reference)として心に留められるであろう。加硫前及び加硫中のゴムネットワークへの樹枝状非化学量論的硫化銅(xが約1.8のCuS)の成長が主要な接着メカニズムであると考えられる。この層は、「接着層」であり、250nm未満、又はわずか100nmの厚さでさえある。
【0005】
有機コバルト塩は、2つの目標に役立つ:
・第一に、結合性の少ない硫化亜鉛(ZnS)の成長を抑え、それによって結合形成中の非化学量論的樹枝状硫化銅の形成に有利に働く;
・高温多湿条件での接着の損失は、亜鉛の酸化物及び水酸化物を形成する接着層への亜鉛イオン(Zn2+)の拡散による真ちゅうの「脱亜鉛現象」及びそれによる接着層の弱化によることが一般に認められている。有機コバルト塩を添加する第二の目標は、それ故、この拡散メカニズムを抑えることによって高温多湿条件でのゴム結合へのスチールコードの保持を改善することである。
欠点は、有機コバルト塩が、ジエンゴム結合に対して酸化触媒として働き、それによって、最終的にゴム破損につながり得るゴム老化を加速させることである。
【0006】
ゴムでの有機コバルト塩の使用を回避するために、前世紀の70年代の終わりに、ゴム中へよりもむしろスチールコードの真ちゅう層中へコバルトを組み入れることが提案されている。例えば米国特許第4,255,496号明細書及び米国特許第4,265,678号明細書を参照されたい。そのような三元合金層は実際に、高温多湿条件での非常に良好な接着保持結果を与える。しかしながら、それらは、ゴムからの有機コバルト塩の完全な排除を可能にしなかった。国際公開第2011/076746号パンフレット、国際公開第2013/117248号パンフレット、国際公開第2013/117249号パンフレットに公開された本出願人の最近の研究は、コバルトをも含まないコンパウンドにおける三元合金コーティングの使用を可能にするための解決策をさらに提案した。
【0007】
この技術によって、コバルトが真ちゅうコーティングに組み入れられる場合の、シングルタイヤに組み入れられているコバルトの総量は、ゴム中に有機コバルト塩として混合される場合のコバルト(金属としての)の量の約1/5~1/10に低減される。これは、コバルト使用の実質的な低減及び環境への負荷の低下を表す。
【0008】
しかしながら、製造環境においてコバルト含有化合物を取り扱う問題は、その後、タイヤメーカーからスチールコードメーカーへシフトしてきている。
【0009】
タイヤ業界が直面する別の問題は、接着ゴムにおける有機コバルト塩の使用を避けての遷移が、タイヤの製造を複雑にする製造戦略の主要なシフトであることである。コバルトを含まない追加のゴム混合物が導入されなければならず、且つ従来のゴムとの分離が完璧でなければならない。
【0010】
さらに、コバルトは、例えば電気自動車に使用されるような再充電可能な電池の製造における戦略的材料になっている。その結果としてコバルトの価格が上昇しており、市場供給と需要とのバランスが今後数年で平衡に達するとは期待されない。コバルトの使用をそのように排除することは、環境に有益であり、且つ、オペレーターの健康問題を解決するのみならず、タイヤの全体価格にも有益であろう。
【0011】
結論として、タイヤからのコバルトの完全排除は、タイヤの価格に、オペレーターの健康のために及び環境のために有益である。他の、コバルトよりも有害性がより少ない金属が、それ故、考慮されるべきである。
【0012】
ゴム中の加硫促進剤と金属表面との相互作用に基づいて、van Ooijは、BR、176ページにおいて:「促進剤と反応することができる全ての金属が原則としてゴムに結合する可能性がある。これらの金属としては、遷移金属コバルト、銅、鉄、ニッケル及び亜鉛が挙げられる。これらのうち、銅及びコバルトは、非常に活性であり、強い結合を形成する。他の金属は、(鉄又は亜鉛の場合には)硫化物成長が遅いので実際には結合しないか、又は金属は、(ニッケルの場合には)受動的であるか、又は硫化物は、銅及びコバルトが形成するように樹枝状結晶を形成しない」と憶測している。
【0013】
この故に、スチール基材コーティング上の硫化物層の成長は、コバルトを使用する場合よりも鉄を第3金属として使用する場合に、より遅いと予期される。しかしながら、通常の真ちゅう被覆スチールコードにおいてでさえも、-スチール基材の-いくらかの鉄が表面に存在し、この鉄が接着保持及び増成に寄与することは見出されている。「Mechanism and theories of rubber adhesion to steel tire cords-an overview」,W.J.van Ooij,RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY,Volume 57,page 421-456,1984の429ページを参照されたい。それ故、薄い真ちゅうコーティングは、接着特性及び接着保持を改善している。しかしながら、それでも十分な量の銅及び亜鉛が表面に存在しなければならず、且つフィラメントが延伸にかけられなければならないので、真ちゅうコーティングの薄さには限界がある。
【0014】
接着目的のための三元真ちゅう-鉄合金の使用が、米国特許第4,446,198号明細書に提案されているが、本明細書で以下に説明されるように他の問題がその使用を妨げてきたので、このコーティングの実施が追求されることはなかった。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、先行技術に関連した問題を克服することを目標にした。本発明の主な目的は、タイヤにおけるコバルトの使用をまとめて排除することである。より具体的には、本発明者らは、鉄を真ちゅうコーティング中へ導入することについての問題を克服した。さらに、本発明者らは、鉄に富む真ちゅうコーティングの使用が、完全にコバルトを含まないゴムコンパウンドを使用する場合の一般的な老化試験において、良好な初期接着及び接着保持を可能にすることを実証する。本発明者らは、本発明者らが提案するスチールコードコーティングが、コバルト含有ゴムコンパウンドでも等しく良好に機能し、それによってゴムの交換が偶然に起きるであろう場合に、リスクを軽減することもまた見出している。
【0016】
製品請求項1に要約されるような本発明の第1態様によれば、スチールコードが提示される。スチールコードは、スチールフィラメント状基材を含む1つ以上のフィラメントと、スチールフィラメント状基材を部分的に又は完全に覆うコーティングとを含む。コーティングは、-本出願の目的のためには-銅及び亜鉛からなる真ちゅうを含む。コーティングは鉄に富む。コーティングの特徴は、鉄が真ちゅう中に粒子として存在し、粒子が10~10,000ナノメートルのサイズを有することである。
【0017】
スチールコードは、タイヤ、ホース又はベルトなどのゴム物品に、フレキシビリティーと組み合わせた引張強度及び圧縮強度をもたらす。ゴム-スチールコード複合材を形成するために、フィラメントはゴム接着性コーティングを備える。フィラメントは、束へ束ねるか又はストランドへ撚り合わせることができる。ストランド又は束は、順にケーブルへ撚り合わせることができる。ストランド、束及びケーブルは、まとめてスチールコードと言われる。現在、シングルスチールフィラメント-通常「モノフィラメント」と言われる-はまた、タイヤの補強のためにも考慮されているので、シングルフィラメントは、-本出願の目的のためには-スチールコードとも考えられている。加えて、用語「スチールコード」の使用は、他の非スチールフィラメント又はフィラメント状材料がスチールフィラメントと混合されることを排除しない。アラミドベースのTwaron(登録商標)若しくはKevlar(登録商標)、又はDyneema(登録商標)などの超高分子量ポリエチレン繊維などの例えば有機人造高性能繊維の添加は、追加の官能性をスチールコードに与え得る。
【0018】
「スチールフィラメント状基材」をもって、その幅及び厚さ寸法を超える長さの細長いスチール要素であって、長さ、幅及び厚さが互いに相互に直交して配向するスチール要素を意味する。例えば、長さは数キロメートルであるが、幅及び厚さは1ミリメートル未満である。スチールフィラメント状基材の直交横断面は、正方形、長方形又は多角形であることができるが、好ましくは、それは、直径「d」の円形である。フィラメントの直径は、0.10mm~0.50mmである。例えば0.275~0.40mmのより大きい直径は、これらのフィラメントが比較的堅いので、タイヤのベルト補強として主に使用される。フィラメントは、少ない(9未満の)フィラメントで又はモノフィラメントとしてさえも構造物へアセンブルされる。9つ以上のフィラメントを含むアセンブリへアセンブルされた0.10mm~0.275mmなどのより細かいフィラメントが、タイヤのカーカスの補強のために好ましくは使用される。より細かいフィラメントでより容易に達成することができる、それらの強度、フレキシビリティー及び耐疲労性は、より重要である。
【0019】
そのスチールフィラメント状基材のスチールは、好ましくは、次の限界(全ての百分率は、「重量%」と省略される、質量による百分率である):
・0.60重量%~1.20重量%、例えば0.80重量%~1.1重量%の範囲の炭素含有量;
・0.10重量%~1.0重量%、例えば0.20重量%~0.80重量%の範囲のマンガン含有量;
・0.10重量%~1.50重量%、例えば0.15重量%~0.70重量%の範囲のケイ素含有量;
・0.03重量%未満、例えば0.01重量%未満の硫黄含有量;
・0.03重量%未満、例えば0.01重量%未満のリン含有量
内の組成の普通炭素鋼でできている。
スチールを歪み硬化操作にかけることによって、2500MPa超又は3000MPa超、又はさらには3500MPa超の引張強度の、類似の伸線フィラメントを得ることができる。
【0020】
スチールのマイクロ合金化は、さらにより高い引張強度フィラメントを得るのに役立つことができる。合金化元素の質量百分率は、以下の限界の間である:クロム:0.10重量%~1.0重量%;ニッケル:0.05重量%~2.0重量%;コバルト:0.05重量%~3.0重量%;バナジウム:0.05重量%~1.0重量%;モリブデン:0.05重量%~0.60重量%;銅:0.10重量%~0.40重量%;ホウ素:0.001重量%~0.010重量%;ニオブ:0.001重量%~0.50重量%;チタン:0.001重量%~0.50重量%;アンチモン:0.0005重量%~0.08重量%;カルシウム:0.001重量%~0.05重量%;タングステン:例えば約0.20重量%の量で;ジルコニウム:例えば0.01重量%~0.10重量%の範囲の量で;アルミニウム:好ましくは0.035重量%よりも低い、例えば0.015重量%よりも低い、例えば0.005重量%よりも低い量で;窒素:0.005重量%未満の量で;希土類金属(重量%REM):0.010重量%~0.050重量%の範囲の量で。
マイクロ合金化合金は、3500MPa超の、又は3700超、4000MPaまで及びそれ超さえの引張強度に達することを可能にする。
【0021】
代わりのアプローチにおいて、十分な引張強度に達するためにはるかに延伸された低炭素鋼を使用することができる。典型的なスチール組成物は、そのとき、0.20重量%未満の炭素含有量を有する。ある例は、0.04重量%~0.08重量%の範囲の炭素含有量、0.166重量%のケイ素含有量、0.042重量%のクロム含有量、0.173重量%の銅含有量、0.382重量%のマンガン含有量、0.013重量%のモリブデン含有量、0.006重量%の窒素含有量、0.077重量%のニッケル含有量、0.007重量%のリン含有量、0.013重量%の硫黄含有量であり、全ての百分率は、質量による百分率である。これらのフィラメントの最終的な引張強度は著しく低い:1200MPa超又はさらには1400MPa超であるが、それらは、中間熱処理の排除のために低下したカーボン・フットプリンドを有する。
【0022】
スチールフィラメント状基材は、コーティングで部分的に又は完全に覆われている。「部分的に覆われている」をもって、スチールフィラメント状基材の特定の領域が外部に曝されていることを意味する。通常、これらの領域は、縦方向であり、フィラメントの伸線に起因する。ときどき、それらは延伸線として目に見える。場合により、しかし稀に、フィラメント状基材はコーティングで完全に覆われる。
【0023】
コーティングは、鉄に富む真ちゅうを含む。「鉄に富む」をもって、鉄がフィラメント状スチール基材に由来しないことを意味する。それは、真ちゅうに添加された鉄である。鉄についての特徴は、それが、10~10,000ナノメートルのサイズの粒子としてコーティング中に存在することである。本出願の目的のためには、「粒子のサイズ」をもって、粒子の表面における任意の2つの点間の最大距離を意味する。
【0024】
本発明者らは、ゴムコンパウンドへのスチールコードの接着において粒子の存在が重要な役割を演じていることを見出した。真ちゅうコーティング中の鉄粒子の存在は、より微粒の真ちゅうコーティングをもたらす。より微粒の真ちゅうコーティングは、顆粒境界及び多くの格子欠陥を通して、銅が初期接着層形成中に効率的に拡散することができるので、接着増成にとってより良好であると憶測される。結果として、初期接着性能は、通常の真ちゅうコーティングのそれと比較してより良好である。この点において、鉄粒子が小さくて、且つ、豊富であることが好ましい。さらに、鉄粒子が存在する結果、生じた真ちゅうの格子構造は、高温多湿条件で著しく改善された接着保持をもたらす。
【0025】
一方で、湿式伸線中に加工問題をもたらすので、鉄粒子は大きすぎることができないことが分かった。それ故、本発明のさらなる洗練された実施形態において、鉄粒子は、20~5,000ナノメートル、又はさらには20~3000ナノメートル、より特に20~2000ナノメートル、例えば20~1,000nmのサイズを有する。
【0026】
さらに好ましい実施形態において、鉄粒子のいくらかは、スチールフィラメント状基材へとプレスされる。鉄粒子は、コーティングを表面仕上げしてもよい。鉄粒子のいくらか-特により大きい粒子-は、平らな表面を示し得る。粒子の形状は、好ましくは扁球である、すなわち、粒子は、針状形よりもむしろ平らな、ディスク形である。
【0027】
粒子は、以下の手順(「手順1」)によって観察することができる:
P1(a) 約0.2グラムの量のスチールコードが1~2cmのピースへカットされ、秤量される。重量「W」が記録される。ピースがビーカー中に保たれる;
P1(b) 10mlの真ちゅう剥離液をビーカーへ添加し、5分間超音波浴中に保つ。
真ちゅうストリッピング液(「ストリッピング液」)は、1L水溶液中にアンモニア水NH・HOと共に16gの過硫酸アンモニウム(NHを含む。
P1(c) フィラメントをプラスチックピンセットで保持しながらストリップされたフィラメントを純水でリンスすること。ビーカーによって保持されたストリッピング液中へリンシング水を集めること。ストリップされたフィラメントを乾燥させること。
P1(d) 粒子を観察するために、粒子を紙フィルター上で濾過するか、又はマグネット上に抽出し、引き続き不活性雰囲気中で乾燥させることができる。
粒子は、好ましくは走査電子顕微鏡又は光学顕微鏡によって観察することができる。
より大きい(1000nm超)粒子の大きさを観察するための代替法は、乾燥したストリップされたフィラメント上のスチールフィラメント状基材上へ押し付けられている鉄粒子を検出することである。
【0028】
フィラメントのコーティングは真ちゅうを含む。本出願の目的のためには、真ちゅうは、亜鉛及び銅からなる合金である。それは、銅又は亜鉛原子が、結晶格子内で互いに入れ替わり得る置換型合金である。コーティング内で、真ちゅうの組成は、コーティングの径方向外側でのほとんど純粋な亜鉛からフィラメント状基材に近いほとんど純粋な銅まで変わり得る。好ましくは真ちゅう中の銅の全体含有量は、コーティング中の銅及び亜鉛質量(コーティング中の任意の他の元素を除いて)の合計に対して63質量パーセント以上である。より好ましくは、銅及び亜鉛質量の合計中の銅質量の比は、65質量パーセント超、又はさらには67質量パーセント超である。真ちゅう中の銅の量が63質量パーセント超である場合、ベータ(β)-真ちゅうの形成は、アルファ(α)-真ちゅうを優先して回避される。ベータ真ちゅうは、より硬い相の真ちゅうであり、変形させるのがより困難である。
【0029】
コーティングに添加される鉄の量は、真ちゅう及び鉄の総質量の1%以上であり、10%よりも少ない。鉄富化の質量が真ちゅう及び鉄質量の1%よりも少ない場合、接着性能の改善は全く気付かれない。添加される鉄の質量が10%よりも大きい場合、伸線するのが困難になる。
【0030】
好ましい実施形態において、コーティング中の鉄の量は、真ちゅう及び鉄の総質量に対して2質量%以上及び10質量%よりも少ない。さらにより好ましい実施形態において、鉄の量は、真ちゅう及び鉄の総質量に対して3~9質量%である。
【0031】
鉄に富む真ちゅうのコーティング中の、鉄、銅及び亜鉛の量は、第2試験手順(「手順2」)によって測定することができる、すなわち、
P2(a)~P2(c)
手順1の工程P1(a)~P1(c)に従うこと;
P2(d)5mLの37%塩酸HClを添加し、ビーカー中の溶液を混合することによってビーカー中の溶液をアルカリ性から酸性に変えること;
P2(e)ビーカー中の溶液を容量フラスコに移し、室温まで冷却し、脱塩水で100mLに希釈すること;
P2(f)全てが100mLの脱塩水当たり10mLのストリッピング液、5mLの37%HClのマトリックス中の(0;0;0)、(2;0.02;1)、(5;0.1;2)、(10;0.5;5)mg/Lの(Cu;Fe;Zn)の標準溶液を使用して、誘導結合プラズマ-発光分析法(ICP-OES)によって溶液中の鉄、銅及び亜鉛の濃度を測定すること。
【0032】
コーティング中のそれぞれの元素についての好ましい範囲は、銅、鉄及び亜鉛の総質量に対して62~69質量パーセントの銅及び1~10質量パーセントの鉄であり、残りは亜鉛である。銅、鉄及び亜鉛の総質量の62~66質量パーセントが銅であり、2~10、又はさらには3~9質量パーセントが鉄であり、残りが亜鉛であることが最も好ましい。1つの好ましい組成は、64重量%の銅及び8重量%の鉄であり、残りが亜鉛である。銅、鉄及び亜鉛の濃度は、ICP-OESによって測定される。
【0033】
さらに好ましい実施形態において、コーティングは、鉄亜鉛合金を実質的に含まない。鉄亜鉛合金は、多数の相:鉄含有量の増加する量でエータ(η)、ゼータ(ζ)、デルタ(δ)、ガンマ1(Γ)及びガンマ(Γ)相で生じる。わずか0.03重量%の鉄のエータ(η)相は、それでも純亜鉛と見なされるべきであり、亜鉛のようにソフトであり、本出願の目的のためには、鉄亜鉛合金と見なされない。鉄亜鉛合金層又は粒子の存在が忌み嫌われる理由は、それらが、湿式伸線中に嫌われる、より高い硬度を有することである。
【0034】
スチールコードの総質量-質量コーティング重量(MCW)-に対するコーティングの総量、すなわち、スチールコードのフィラメント上の銅、亜鉛及び鉄の合計は、フィラメントの1kg当たり好ましくは1~6.5グラムのコーティング(1~6.5g/kg)である。より好ましくは、それは、フィラメントの1kg当たり3~5グラム(3~5g/kg)、例えばフィラメントの1kg当たり3.5~4グラム(3.5~4g/kg)である。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、スチールフィラメントの表面に存在するリン及び鉄の量は制御される。表面に存在するリンの量は、Pと言及され、1平方メートル当たりのミリグラム(mg/m)単位で表され、表面での鉄の量は、Feと言及され、また、mg/m単位で表される。表面上に存在するリン及び鉄の量は、フィラメントの表面を弱酸で穏やかにエッチングし、リン及び鉄を溶解させ、以下の測定手順(「手順3」)に従うことによって決定される:
P3(a)約5グラムのスチールコードを秤量し、約5cmのピースへカットし、試験管へ導入すること;
P3(b)10mLの0.01モル濃度塩酸HClを添加すること;
P3(c)試料を酸溶液と15秒間振盪すること;
P3(d)ICP-OESによって溶液中に存在するFe及びPの量を測定すること;
P3(e)フィラメント状スチールの単位表面積当たりのFe及びPの質量の単位での結果を、1平方メートル当たりのミリグラム(mg/m)単位で表すこと。結果は、Fe及びPと表される。
【0036】
本発明者らは、表面上に存在するリンの量が4mg/mよりも低いが、ゼロよりも大きい:0<P≦4mg/mの場合に最良の接着結果が得られることを見出す。より高い量のPは、接着層の成長を減速する。4mg/mよりも低いPで、接着層は、加硫サイクルの開始直後に、しかしゴムの架橋の開始前に既に生じる。Pは、3mg/mよりも低くすることができるか、又は1.5mg/mよりも低くさえできる。
【0037】
さらに好ましい実施形態において、表面に存在する鉄の量Feは、30mg/m以上(Fe≧30mg/m)である。35mg/m超又は40mg/m超の鉄が表面に存在する場合にさらにより好ましい。本発明者らは、十分な量の鉄が、十分な接着保持を有するためにフィラメントの表面上に存在すべきであると憶測する。表面での鉄粒子の存在は、接着層の方へのZn2+イオンの拡散を抑え、それによって本明細書で以下に実証されるように高温多湿条件での改善された接着保持をもたらすであろうと考えられる。
【0038】
好ましくは、フィラメントの表面に存在する鉄の量Feと同じフィラメントの表面に存在するリンの量Pとの比は、27よりも大きい、又は30よりさえも大きい。この比が満たされる場合、十分な量の鉄が表面に存在し、一方、リンの量は十分に低い。
【0039】
鉄の量はコーティング重量と共に上がるので、鉄の相対的存在のための改善された手段は、表面に存在するリンの量Pとの比を取る前に、最初に表面に存在する鉄の量Feを表面コーティング重量SCWで割ることである。表面コーティング重量は、P及びFeの単位と一致したままにするために、1平方メートル当たりのグラム(g/m)単位で表される。ミリメートル「mm」単位で表される直径「d」のフィラメントについての表面コーティング重量SCW(g/m単位での)と質量コーティング重量(g/kg単位での)MCWとの関係は、本発明によるスチールワイヤー及びコーティング厚さについて:
SCW=1.97×d×MCW
である。好ましくは、Fe/(SCW×P)-すなわち、Feの、PとSCWとの積に対する比-に等しい比(Fe/SCW)/Pは、13よりも大きい。その値よりも上で、接着保持について最良の結果が得られる。この比が14よりも高い場合には、さらにより良好である。25までの値を得ることができる。
【0040】
本発明の別の好ましい実施形態において、スチールコードは、シングルフィラメントからなる。そのようなシングルフィラメントは、タイヤに、例えばビーズ補強材としてビーズエリアに、又はベルト硬化補強材(「モノフィラメント」)としてベルトエリアに、使用することができる。或いはまた、本発明によるシングルスチールフィラメントは、ホース補強ワイヤーとしても使用することができる。
【0041】
本発明の第2態様によれば、上記の実施形態のいずれか1つによるスチールコードで補強された加硫ゴムを含むゴム製品が特許請求される。ゴム製品は、例えば乗用車、トラック、バン又はオフロード機械のためのタイヤであることができる。或いはまた、ゴム製品は、油圧ホースなどのホース、又は例えばコンベヤーベルト、シンクロベルト若しくはエレベーターベルトのようなベルトであることができる。これらの製品の全ては、それぞれの技術分野において公知の又は公知になるべき方法で製造され、アセンブルされる。唯一の相違は、補強のために使用されるスチールコードが、鉄に富んだ真ちゅうコーティングであって、鉄が真ちゅうコーティング中に粒子として存在し、及び粒子が10~10,000ナノメートルのサイズを有する、真ちゅうコーティングを示すことである。それが、接着及び接着保持への悪影響なしに現在使用されているコバルト含有コンパウンドと相溶性であることが本発明の利点である。
【0042】
しかしながら、スチールコードは、ゴムに添加されたコバルト又は有機コバルト化合物を実質的に含まない接着ゴムコンパウンド-「スキムコンパウンド」として知られる-と相溶性であるように、特に考案されている。「実質的に含まない」をもって、加硫ゴム中でX線蛍光によって検出できるようなコバルトの量が、ゴムの1グラム当たり100ミリグラム未満(ゴムの0.01質量パーセントCo、重量%)、又はゴムの1グラム当たり50ミリグラム(0.005重量%Co)未満、若しくはゴムの1グラム当たり20ミリグラム(0.002重量%Co)未満、若しくは10ミリグラム(0.001重量%Co)未満でさえであることを意味する。通常はスキムコンパウンドのみが有機コバルト化合物を含有するので、分析は、最良には、スチールコードの近くのゴム、例えばスチールコードがゴム製品から引っ張り出される場合にスチールコードに接着している残りのゴムに関して行われる。それは、最高濃度のコバルトが予期される場所である。
【0043】
また、ゴム製品-好ましくはコバルトを実質的に含まないゴム製品-における補強のための、上記実施形態のいずれかによるスチールコードの使用が特許請求される。
【0044】
本発明の第3態様によれば、上記のようなスチールコードのフィラメントの製造方法が提示される。本方法は、
(a)中間径「D」を有する中間スチールワイヤー:第1中間スチールワイヤーを提供する工程(中間径は、最終フィラメント径、スチール組成、特に炭素含有量、達成されるべき最終引張強度に基づいて選択される。典型的なサイズは、0.5~3.2mmである);
(b)中間スチールワイヤーを、銅、鉄及び亜鉛で、「電気めっき」とも呼ばれる、電解コーティングする工程(好ましくは、金属銅、鉄及び亜鉛は層状にコートされる);
(c)銅-鉄-亜鉛被覆中間スチールワイヤーを熱処理にかけて少なくとも420℃の温度、亜鉛の溶融温度で亜鉛を銅中へ拡散させる工程(鉄-亜鉛ゼータ(ζ)相の形成は、温度が530℃未満に保たれる場合に回避される:鉄は溶融しないであろうし、鉄-亜鉛合金の形成は全くない。温度は、亜鉛が銅中へ拡散することを可能にするために少なくとも2秒間保持されなければならず、10秒以内で拡散は十分である。結果として生じたワイヤーは、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間スチールワイヤーである);
(d)任意選択的に、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間スチールワイヤーの表面から酸化亜鉛及び酸化鉄を除去する工程(好ましくは、これは、酸浴中で行われる。或いはまた、酸化亜鉛及び酸化鉄の形成は、拡散工程(c)を、窒素雰囲気などの不活性雰囲気中で行うことによって回避することができる);
(e)鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間スチールワイヤーを湿式伸線操作にかけ、それによって本発明によるフィラメントを得る工程(フィラメントの最終直径は、「d」と称される)
を含む。
本発明の特徴は、湿式伸線操作によって、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間スチールワイヤー上に存在するような鉄粒子が、10000nmすなわち10μm未満、及び10nmよりも大きいサイズまで縮小されることである。
【0045】
本方法のさらに好ましい実施形態において、中間スチールワイヤーを、銅、鉄及び亜鉛で電解コーティングする工程(b)は、以下:
(b1)中間ワイヤーを銅で電解コーティングする工程;
(b2)銅被覆中間ワイヤーを鉄で電解コーティングする工程;
(b3)銅-鉄被覆中間ワイヤーを亜鉛で電解コーティングする工程
の順に行われる。
この順に従うことは、以前に堆積されたコーティングが、その後に堆積される層の浴中で溶解しないという利点を有する。
【0046】
工程(b2)は、以下の電解めっき液:
・塩化第一鉄溶液;
・硫酸第一鉄溶液;
・硫酸第一鉄アンモニウム溶液;
・フルオロホウ酸第一鉄溶液;
・スルファミン酸第一鉄溶液;
・混合硫酸塩-塩化物浴
からなる群からのいずれか1つ中で行うことができる。
【0047】
さらに好ましい実施形態において、工程(e)-ここで、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間スチールワイヤーを湿式伸線操作にかけ、それによって本方法によるフィラメントを得る-において、伸線は、少なくとも3.5の真の伸びまで行われる。湿式伸線中に与えられる真の伸び「ε」は、
ε=2 ln(D/d)
に等しい。
真の伸び「ε」が、3.5よりも大きいか、又は3.7よりも大きいか、若しくはさらに3.9よりも大きく、さらには現在、スチールに関して達成可能な限界にある4よりもさらに大きい場合には、鉄粒子は、10,000nmよりも小さい、又はさらに5000nmよりも小さい、例えば3,000nm、若しくは2,000nmよりも小さいサイズにまで伸ばされ、切り刻まれ、粉砕される。
【0048】
本発明者らは、湿式伸線がダイヤモンドを含むダイによって行われる場合に、フィラメントでできたスチールコードの接着及び接着保持を増加させる、さらに有利な表面特性が誘導されることを見出した。「ダイヤモンドを含むダイ」をもって意味するものの非包括的な例は、シングル天然ダイヤモンド、シングル人造ダイヤモンド、一緒に焼結されたダイヤモンド粒子の成形体(「焼結ダイヤモンド」)、カルボナード(「黒ダイヤモンド」)又は多結晶ダイヤモンド(「PCD」ダイ)でできたダイである。
【0049】
少なくともフィラメントの最終直径を決定するダイ-ヘッドダイと呼ばれる-は、ダイヤモンドを含むダイである。或いはまた、ワイヤーの延伸方向の上方の1つ、2つ、3つ又はそれ以上のダイも、ダイヤモンドを含むダイであることができ、ダイの残りは、通常の硬質金属、例えば炭化タングステンダイである。場合により、全てのダイがダイヤモンドを含むダイであるが、これは余りにも費用がかかり、本発明のこの好ましい方法を実施するために必要ではないと一般に考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1a】スチール基材に、その上へ押し付けられるコーティングに由来する鉄粒子を示す。
図1b】HAADF-STEMによって検出されるような真ちゅうコーティング中に存在するような鉄粒子を示す。
図2a】アンダーキュア加硫条件で系統Iコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
図2b】レギュラーキュア加硫条件で系統Iコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
図2c】オーバーキュア加硫条件で系統Iコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
図2d】硬化湿潤(cured humidity)老化後の系統Iコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
図2e】水蒸気老化後の系統Iコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
図3a】アンダーキュア加硫条件で系統IIコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
図3b】レギュラーキュア加硫条件で系統IIコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
図3c】オーバーキュア加硫条件で系統IIコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
図3d】硬化湿潤老化後の系統IIコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
図3e】水蒸気老化後の系統IIコンパウンドにおいて得られるような引き抜き力接着結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
系統Iコンパウンドは、業界において現在使用されている有機コバルト塩を含有する、5つの異なるコンパウンドである。系統IIコンパウンドは、添加されたコバルトを含まない、5つの異なるコンパウンドである。
【0052】
図2a~2e、図3a~3e中の各点は、異なる加硫条件(a~c)又は老化条件(d~e)によるそれぞれの系統内の5つの異なるコンパウンドの平均を表す。
【0053】
図2a~2e、及び3a~3eにおいて、基準値「0」は、通常の真ちゅう被覆スチールコードの平均であり、スチールコードのフィラメントは、系統Iコンパウンドに関して得られるようなSet Wダイにおいて延伸される。
【0054】
本発明は、3×0.28Super Tensile構成で実施された。「Super Tensile」をもってシングルフィラメントの引張強度が、3440N/mmのターゲット値で少なくとも3265N/mmであることを意味する。
【0055】
フィラメントは、次のとおり調製された:
・スチールが0.80重量%炭素の最小炭素含有量及び0.85重量%の最大炭素含有量を有することを意味するクラス0.80Cのチールワイヤーロッドが選択された。他の元素は、段落[0019]~[0020]における明細、本特許明細書(普通炭素鋼組成)に従って存在した。スチールワイヤーは、1.98mmの直径まで乾燥延伸された。
・このスチールワイヤーは、完全オーステナイト化に達するためにワイヤーを950℃超に先ず加熱することによって正当に特許権を取得された。その後ワイヤーは、当技術分野において公知の水-空気-水特許権取得設備において冷却された。これは、本方法が特許請求するとおりの「中間径を有する中間スチールワイヤー」である;
・この中間スチールワイヤーは、22~38g/Lの範囲の濃度のCu+2、150~250g/Lの濃度範囲のピロホスフェート(P 4-)、5~10g/Lの濃度範囲の硝酸イオンNO 及び1~3g/Lの濃度のアンモニアNHからなる水性のアルカリ性浴中にCu2+カチオンとP 4-アニオンとの錯体を含有するピロリン酸銅浴を通してワイヤーを導くことによって銅層で電気めっきされた。浴は、8.0~9.0のpHで運転され、電流密度は、1~9A/dmに保持される。堆積させられる銅の量は、所望の最終コーティング組成の関数として調整される;
・銅被覆中間ワイヤーは、その後、2.7~3.0のpH、50~60℃の温度及び5~6A/dmの電流密度で、以下のライン:75g/Lの鉄(II)、30~38g/Lの濃度範囲のスルファミン酸アンモニウム、37~45g/Lの塩化ナトリウムに沿った組成のスルファミン酸第一鉄(Fe(OSONH)溶液を通して導かれる。堆積させられる鉄の量は、所望の最終コーティング組成の関数として調整される。
スルファミン酸第一鉄電解質液の使用は、安定した及びよく制御可能な浴をもたらす;
・銅-鉄被覆中間ワイヤーは、その後、3~3.7のpHで、40~90g/Lの亜鉛を含有する水性硫酸亜鉛(ZnSO・7HO)浴を通して導かれる。亜鉛層は、20~30A/dmの電流密度で堆積させられる;
・銅-鉄-亜鉛被覆中間ワイヤーは、その後、中間頻度(mid frequent)加熱ステージ、引き続き温度絶縁ゾーンによる加熱にかけられる。硬質鉄-亜鉛合金の形成を防ぐために温度が530℃超に上昇しないように注意された。結果として生じたワイヤーは、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間スチールワイヤーである;
・次のステージにおいて、熱処理中に形成された酸化亜鉛及び酸化鉄が、リン酸浸漬によって除去される。浸漬時間及びクリーニングに依存して、表面上に存在するリンの量を調節することができる。
【0056】
実験の第1設計において、残りが亜鉛である、1、2、3、4、5重量%Feの鉄含有量と共に62、64、66、68重量%Cuのコーティング組成が組み合わせられた。重量分率は、全体コーティング量に対してである。結果は、最良の接着結果がより高いFe濃度で得られることを示した。それ故、実験の第2設計は、さらにより高い鉄含有量で着手された。
【0057】
実験の第2設計において、以下の組成及びコート重量が、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間スチールワイヤー上で得られた(表I):
【0058】
【表1】
【0059】
手順1による中間スチールワイヤー上のコーティングの溶解は、鉄粒子の存在を明らかにした。X線ディフラクトグラムは、ベータ(β)-真ちゅうピークが、ベータ-真ちゅうが存在するであろう場合にピークが予期される43.3°の2シータ(2θ)角に全く存在しないこと及びこれは全ての発明試料についてであることを明らかにした。
【0060】
その後に、鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間ワイヤーは、潤滑油中のその後より小さいダイを通してワイヤーを湿式伸線することによって0.28mmの最終直径まで延伸される。潤滑油は、有機化合物中にリンを一般に含む高圧添加剤を含有する。2つのタイプのダイが湿式伸線中に比較された:
・Set W:それらのうちの最後の1つがヘッドダイである最後の3つのダイを含めた;全ての延伸ダイが炭化タングステンダイである;
・Set D:少なくともヘッドダイが焼結ダイヤモンドダイであり、ダイの残りは炭化タングステンダイである。
鉄粒子に富む真ちゅうコーティング付きの中間スチールワイヤーに適用された全体の真の伸びは3.91である。
【0061】
中間ワイヤーの真ちゅうコーティング中の鉄粒子を考える場合に、この粒子は、ワイヤーの方向に、すなわち、縦方向に(D/d)の伸びにかけられる。同時に粒子は、両方とも(d/D)倍で、半径方向及び周方向に圧縮される。これは、鉄が圧縮可能ではないという仮定の下である。これは、0.28mmの直径まで延伸される場合に約50倍で1.98mmの中間ワイヤー中に存在する鉄粒子が伸ばされることを暗示する。鉄はそのような高い伸びを持続することができないので、中間ワイヤーのより大きい粒子は、上で記載された手順1によって検証できるように、10nm~10,000nmのサイズの粒子へと粉砕され、切り刻まれ、壊される。
【0062】
図1aは、走査電子顕微鏡(SEM)での真ちゅうの除去後のフィラメントS64-8-Dの表面を示す。フィラメント状基材上へ押し付けられた様々な鉄粒子102(7.5μm)、102’(6.8μm)、102’’(8.5μm)、104(1.0μm)、104’(1.0μm)が検出できる。粒子のサイズ-それによって互いに最も離れている点を取る-は、最大でも8.5μmである。
【0063】
より小さい鉄粒子(104、104’)は、高角環状暗視野、走査型透過電子顕微鏡法(HAADF-STEM)などの他の技術が用いられる場合に1.0μmの記述サイズよりも小さいことさえあり得る。120nmのサイズの粒子を真ちゅうコーティングの内部に検出することができる:コーティング中の鉄の濃度を示す図1bを参照されたい。鉄粒子-矢印で示される-は目に見える。点線は、コーティングの外線をより良く目に見えるようにするために追加されている。
【0064】
最も大きい粒子のサイズと、中間スチールワイヤーの真ちゅうコーティング中へ組み入れられた鉄の量との相関関係があるように思われる:組み入れられる鉄が多ければ多いほど、粒子はより大きいように思われる。
【0065】
3つのスチールフィラメントが、3×0.28STコードへ撚られ、リン及び鉄の表面残基が、結果として生じたコードについて手順3のとおり測定された。結果は、表IIに表される:
【0066】
【表2】
【0067】
表IIから、Set Wダイが表面でのより多くのリン並びにより多くの鉄をもたらすことが明らかである。Set Dダイは、コーティングに添加された同じ鉄についてより低いリン及び鉄濃度をもたらす。比Fe/Pは、Set D延伸ダイで延伸されたフィラメントについて常に27超である。比(Fe/SCW)/Pを用いる場合、差はさらにより明確であり、値の関連範囲はより減少する。Set D延伸ワイヤーの値は全て、14超及び15超さえのこの比を有するが、Set W延伸ワイヤーは、13未満及び11未満さえのこの比を有する。
【0068】
図2a~2e、3a~3eのシリーズで、5つのコンパウンド(有機コバルト塩を含有する)系統I及び(意図的に添加されたコバルトを含まない)系統IIのコンパウンドでの表IIの異なる試料の接着結果が表される。接着結果は、BISFA(「The International Bureau for Standardisation of Man-made fibres」)冊子「Internationally agreed methods for testing of steel tyre cord」1995年版、所与の条件(アンダーキュア、レギュラーキュア、オーバーキュア)に応じた「D12 Determination of static adhesion to rubber compounds」にさらに詳述されるような、ASTM D2229-04標準に従って決定されるような引き抜き力である。この試験において、スチールコードはブロック形ゴムに埋め込まれ、加硫後に軸方向に沿ってゴムから引き抜かれる。達成される最大力(N単位での)が記録される。24の個々の最大力(N単位での)の平均が「引き抜き力」(POF)として記録される。
【0069】
10のコンパウンドの各1つについて、レギュラーキュア(RC)のための条件は、TC90時間プラス5分として設定され、TC90は、特定のゴムが、加硫温度で取られるレオメーター曲線上でその最大トルクの90%に達するその時間である。「オーバーキュア」条件(OC)は、レギュラーキュア時間の2倍ほど長く本出願でその通常の硬化時間を十分に越えてゴムが加硫される場合に起こる。アンダーキュア(UC)加硫は、レギュラーキュア時間の半分だけゴムを加硫することによって行われる。
【0070】
接着保持を確証するために、以下の老化条件がRC硬化試料に適用される;
・硬化湿潤(CH)後に:RC試料は、14日間95%相対湿度環境中に93℃で保持される。
・水蒸気老化(SA)後に:水蒸気老化ではRC試料は、2日間120℃で水蒸気蒸しされる。
以下では、加硫条件UC、RC若しくはOCのうちのいずれか1つ又は老化条件CH若しくはSAのうちのいずれか1つが「条件」と言われるであろう。
【0071】
接着試験の結果は、図2a~2e及び3a~3eに基準平均(Reference Average)(「RA」)からのZ-スコア偏差として表される。基準平均RA-全ての図において「0」で示される-は、系統Iの全てのコバルト含有コンパウンドでのRef W試料の加重平均に等しく、これは、その図のとおり特定の条件についてである。特定の条件で系統IコンパウンドでのRef W試料に関して得られた全ての結果の統計的標準偏差が、計算され、その条件についての基準標準偏差(「RSTD」)と呼ばれる。要約すれば:基準は、図の短い説明文に述べられる条件のそれぞれでの公知の真ちゅう(Ref W試料)-コバルト含有ゴムシステム(系統I)である。
【0072】
系統I及びIIのそれぞれについて、並びに表IIの試料(「Samples」)のそれぞれについて、各条件についての引き抜き力が決定された。引き抜き力は、試料平均(「SA」)へと加重平均され、統計的標準偏差が計算され、その系統及び条件についての試料標準偏差(「SSTD」)と言われる。
【0073】
ある種の条件についてのコンパウンドの系統における試料のZ-スコアは、そのとき、基準標準偏差及び試料標準偏差のプール標準偏差で割られたその統についての試料平均と、条件マイナスその条件についての基準平均との差に等しい。要約すれば:
【数1】

式中、Nは、SA及びSSTDを得るためにプールされた結果の数であり、Nは、RA及びRSTDを得るためにプールされた結果の数である。
【0074】
Z-スコアは、平均からの偏差について基準平均からどれほど統計的に有意であるか、すなわち、特定の系統、試料が試験された条件での現在技術を示す:
・「-2」未満であるZ-スコアは、基準平均と比較して統計的に有意な悪化を示し;
・-2~-1のZ-スコアは、可能性がある、しかし統計的に有意ではない悪化を示し;
・「-1」~「+1」のZ-スコアは、基準平均の統計的に有意な悪化又は改善が全く推測できないことを示し;
・+1~+2のZ-スコアは、可能性がある、しかし統計的に有意ではない改善を示し;
・+2超のZ-スコアは、最先端技術の統計的に有意な改善を表す。
【0075】
系統I、すなわち、コバルト含有コンパウンドに関して、以下の結論を下すことができる:
【0076】
図2a:アンダーキュア条件で、真ちゅうコーティング中の鉄粒子の存在は、
・Set Wダイが用いられる場合、基準平均と比較して統計的に有意な改善又は悪化をもたらさない;
・Set Dダイが用いられる場合、基準平均と比較して改善につながり得る;
UC条件での最良の結果は、より少ない量の鉄がコーティングへ組み入れられる場合に得られる。
【0077】
図2b:レギュラーキュア条件で、真ちゅうコーティング中の鉄粒子の存在は、
・Set Wダイが用いられる場合、有意ではない改善をもたらし;
・Set Dダイが用いられる場合、改善をもたらす。
しかしながら、改善は、統計的に有意ではない。
組み入れられる鉄粒子の量は、有意な影響力を持たない。
【0078】
図2c:オーバーキュア条件で、真ちゅうコーティング中の鉄粒子の存在は、最新技術と比較して統計的に改善された結果につながらない。しかしながら、本発明が悪化につながるという兆候は全くない:全てのZ-スコアは全体にわたってプラスである。
【0079】
図2d:硬化湿潤コンディショニング後に、本発明の使用は、Set Dダイを用いながらより高い量の鉄(8重量%~10重量%)が真ちゅうコーティング中へ組み入れられる場合に、統計的に有意な改善をもたらす。他の試料に関して有意な改善は全くない。一般に、本発明の使用は、悪化した結果をもたらさない。
【0080】
図2e:本発明は、Set Dダイが用いられる場合に水蒸気老化後に、接着保持の高い、統計的に有意な改善をもたらす。結果は、コーティング中の鉄含有量の増加と共にさらにもっと改善される。Set Wダイの使用は、改善につながるが、それは統計的に有意ではない。
【0081】
本発明者らは、本発明が、場合により劣る接着結果又は接着保持問題の増加といういかなるリスクにも直面することなく、現在使用されているコバルト含有コンパウンドに現在使用されているスチールコードと交換して用いることができると結論する。それどころか、Set Dダイを用いる場合に、水蒸気老化後の接着保持結果は、非常に及び統計的に有意に改善される。
【0082】
系統II、すなわち、意図的に添加されたコバルトを含まないコンパウンドに関して、以下の結論を下すことができる:
【0083】
図3a:アンダーキュアにおいて本発明は、最先端技術(すなわち:コバルト含有コンパウンドでの真ちゅう被覆Set W延伸スチールコード)と比較して有意な改善又は悪化を全くもたらさない。一般に、鉄含有量の増加がより低いアンダーキュア結果につながり得るというわずかな傾向がある。この傾向は、Set Dダイが用いられる場合は、積極的に言えるほどではない。
【0084】
図3b:レギュラーキュア条件で、Z-スコアは、全てプラスであり、本発明の悪影響が全く予期されないことを示す。改善は、統計的には有意ではない。
【0085】
図3cに表されるように同じ結論をオーバーキュア結果について下すことができる:本発明のスチールコードはより良好であるが、改善は、統計的に有意ではない。
【0086】
図3d:本発明は、より高い鉄含有量(6重量%、8重量%及び10重量%)について及びSet D延伸ダイが用いられる場合に、硬化湿潤結果の統計的に有意な改善を示す。他の結果は、統計的に有意ではないままである。
【0087】
図3e:本発明は、水蒸気老化条件後においてSet W及びSet Dダイの両方について、先行技術よりも際立った及び統計的に有意な改善を示す。コーティング中の鉄の含有量の増加が向上した結果につながるという明らかな兆しがあるが、8重量%の鉄までにすぎない。
【0088】
図3a~3eにおいて:「真ちゅう」は、系統IIコンパウンドで試験される場合にSet W基準ワイヤーで得られた結果を言う。
【0089】
結論として、真ちゅうコーティングへの鉄粒子の組み入れは、意図的に添加されたコバルトを含まないコンパウンドで、及びコバルトを含有しないコンパウンドで、接着保持の改善につながることが実証された。
【0090】
本発明は、タイヤ、ホース又はベルトなどのゴム製品を補強するために、ゴム中の及びスチールコードコーティング中のコバルトの存在を完全に排除するために特に行われた。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e