(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ガス・センサの較正
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240808BHJP
A61B 5/1459 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G01N21/64 B
A61B5/1459
(21)【出願番号】P 2021564983
(86)(22)【出願日】2020-05-01
(86)【国際出願番号】 GB2020051066
(87)【国際公開番号】W WO2020222014
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521478072
【氏名又は名称】サイロジカ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーウェル、ニコラス ポール
(72)【発明者】
【氏名】クレイン、バリー コリン
(72)【発明者】
【氏名】サガール、プラヴェーン
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー、アラスター アラン
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534614(JP,A)
【文献】特開平05-249036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0256562(US,A1)
【文献】BANERJEE, et al.,High throughput non-destructive assessment of quality and safety of packaged food products using phosphorescent oxygen sensors,Trends in Food Science & Technology,2016年02月01日,Vol.50,pp.85-102,http://dx.doi.org/10.1016/j.tifs.2016.01.021
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62 - G01N 21/74
A61B 5/06 - A61B 5/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状物質によって緩和される発光寿命を有する発光性化合物を含むガス・センサ
であって、前記発光性化合物の温度を測定するように構成された温度センサ
を含む前記ガス・センサを使用して、環境
(ヒトを除く)中の前記ガス状物質の濃度を測定する方法であって、
前記ガス・センサが前記環境に露出されている間に、前記発光性化合物の前記発光寿命の値を測定することと、
前記ガス状物質に露出されていない前記発光性化合物の割合を表す較正因子によってシュテルン-フォルマーの式に従って修正された、前記ガス状物質の前記発光寿命と前記濃度との間の関係性のモデルを使用して、前記温度センサによって測定された前記発光性化合物の温度を考慮して前記測定された前記発光寿命から前記ガス状物質の濃度を導出して、前記シュテルン-
フォルマーの式は、前記温度に
線形従属す
るシュテルン-
フォルマー定数および/または前記温度に
線形従属する前記ガス状物質による緩和がないときの前記発光寿命の値を含むことと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記発光寿命の値を測定することが、
光源を使用して前記発光性化合物を励起することと、
前記発光性化合物によって発光された光の強度を測定することと、
前記測定された強度から前記発光寿命の前記値を導出することと、
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス状物質が、酸素を含む、請求項1から
2までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記発光性化合物が、白金錯体を含む、請求項1から
3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記発光性化合物が、重合体又はゾルゲルを含む基質内に懸濁されている、溶解されている、又は分子的に結合されている、請求項1から
4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基質が、ポリスチレンを含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記環境が
、動物の身体内である、請求項1から
6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法を利用するためのガス・センサを較正する方法であって、前記ガス・センサは、ガス状物質に露出されていない発光性化合物の割合を表す較正因子によって修正された、前記ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルを使用して、前記ガス状物質によって緩和される前記発光寿命を有する前記化合物を含
み、前記ガス・センサ
は、前記発光性化合物の温度を測定するように構成された温度センサ
を更に含み、前記方法は、
前記ガス・センサが少なくとも2つの既知の前記ガス状物質の濃度に露出されている間に、前記発光性化合物の前記発光寿命の値を測定することと、
前記温度センサによって測定された前記発光性化合物の温度を考慮した前記モデルを使用して、前記発光寿命の前記測定された値から前記較正因子を導出することと、
を含み、
前記ガス状物質の前記発光寿命と前記濃度との間の関係性のモデルは、シュテルン-
フォルマーの式に従い、
前記シュテルン-
フォルマーの式は、前記温度に
線形依存する前記シュテルン-
フォルマー定数および/または前記温度に
線形依存する前記ガス状物質による緩和がないときの前記発光寿命の値を含む、方法。
【請求項9】
前記ガス状物質の前記既知の濃度のうちの1つが、濃度ゼロである、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス状物質が、空気中に存在し、前記ガス状物質の前記既知の濃度のうちの1つが、空気中の濃度である、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項11】
前記発光寿命の値を測定することが、
光源を使用して前記発光性化合物を励起することと、
前記発光性化合物によって発光された光の強度を測定することと、
前記測定された強度から前記発光寿命の前記値を導出することと、
を含む、請求項
8から
10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガス状物質が、酸素を含む、請求項
8から
11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記発光性化合物が、白金錯体を含む、請求項
8から
12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記発光性化合物が、重合体又はゾルゲルを含む基質内に懸濁されている、溶解されている、又は分子的に結合されている、請求項
8から
13までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記基質が、ポリスチレンを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
環境中のガス状物質の濃度を測定するためのガス・センサ装置であって、
前記ガス状物質によって緩和される発光寿命を有する発光性化合物を含むガス・センサ
であって、前記発光性化合物の温度を測定するように構成された温度センサ、及び前記発光性化合物によって放出される光を検出するように構成された検出器と
を含む前記ガス・センサと、
前記検出器によって出力された信号から前記化合物の発光寿命を導出し、前記ガス状物質に露出されていない前記発光性化合物の割合を表す較正因子によってシュテルン-フォルマーの式に従って修正された、前記ガス状物質の前記発光寿命と前記濃度との間の関係性のモデルを使用して、前記温度センサによって測定された前記発光性化合物の温度を考慮して測定された前記発光寿命から前記ガス状物質の濃度を導出するように構成された分析システムと、を備え、
前記シュテルン-
フォルマーの式は、前記温度に
線形依存す
るシュテルン-
フォルマー定数および/または前記温度に
線形依存する前記ガス状物質による緩和がないときの前記発光寿命の値を含む、ガス・センサ装置。
【請求項17】
前記ガス・センサが、前記発光性化合物を励起するように構成された光源をさらに含む、請求項
16に記載のガス・センサ装置。
【請求項18】
前記検出器によって出力される前記信号が、前記発光性化合物によって発光される前記光の強度を表す、請求項
16または17に記載のガス・センサ装置。
【請求項19】
前記ガス・センサが、光導波路を含み、前記発光性化合物が、前記光導波路の端部に配置され、前記光導波路が、光を前記発光性化合物から前記検出器に誘導するように配置されている、請求項
16から
18までのいずれか一項に記載のガス・センサ装置。
【請求項20】
前記発光性化合物の周りに延在し、前記発光性化合物によって発光された光を前記光導波路内に反射するように構成された、反射器をさらに備える、請求項
19に記載のガス・センサ装置。
【請求項21】
前記反射器が、前記ガス状物質を透過させる、請求項
20に記載のガス・センサ装置。
【請求項22】
前記ガス状物質が、酸素を含む、請求項
16から
21までのいずれか一項に記載のガス・センサ装置。
【請求項23】
前記発光性化合物が、白金錯体を含む、請求項
16から
22までのいずれか一項に記載のガス・センサ装置。
【請求項24】
前記ガス・センサが、重合体又はゾルゲルを含む基質を含み、前記発光性化合物が、前記基質内に懸濁されている、溶解されている、又は分子的に結合されている、請求項
16から
23までのいずれか一項に記載のガス・センサ装置。
【請求項25】
前記基質が、ポリスチレンを含む、請求項
24に記載のガス・センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性化合物を含むガス・センサを使用して、環境中のガス状物質の濃度を測定するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス状及び非ガス状の両方のいくつかの異なる物質の混合物を含み得る、環境の特定のガス状物質の濃度を決定可能であることが、多くの領域で所望されている。たとえば、臨床設定では、低酸素症を検出し、防止するために、患者の血液の酸素濃度をリアル・タイムで正確に決定可能であることが重要である。別の実例は、食品産業での制御された環境の監視であり、そこでは、酸素の存在が、食品の腐敗をもたらすリスクのために望ましくない可能性がある。ある周知の種類のセンサは、発光性化合物、たとえば、標的ガス状物質の濃度に依存する発光寿命を有する、蛍光有機色素を使用する。発光性化合物を、それを環境に露出させながら励起し、その発光寿命を測定することによって、環境中の標的物質の濃度が測定され得る。この種類のシステムは連続して運転され得るので、分析又は他の同様に面倒な処置のために、たとえば血液又は食品が保存されている雰囲気の試料を定期的に採取する必要がないという利点を有する。
【0003】
多くの発光性化合物の発光寿命の、標的ガス状物質の濃度への依存性が知られている。多くの場合、依存性は、シュテルン-フォルマーの式を使用してモデル化され得、式では、τ0/τが、ガス状物質の濃度に線形従属している(ここで、τは、ガス状物質存在下で観測される寿命であり、τ0は、物質不存在下での寿命である)。
【0004】
しかしながら、有用なデバイスを製造するために、発光性化合物は、センサに組み込まれるべきである。この工程は、発光寿命の標的ガス状物質の濃度への依存性に影響を及ぼし得、発光性化合物が分離状態の場合の依存性と比較して、それを複雑にしている。たとえば、シュテルン-フォルマーの式が、分離された化合物の寿命依存性に通常使用される場合、τ0/τは、センサに組み込まれた化合物の濃度に線形従属せず、面倒なデバイス特有の較正処置が、観測された依存性に適合させるために必要とされる。
【0005】
一般に、依存性の複雑性のため、いくつかの較正パラメータが決定される必要があり、それにより、デバイスをいくつかの既知のガス状物質の濃度で較正することが必要となる。このことは、複数の正確に知られているガス濃度を提供するために、複雑で特殊な機器を必要とし得る。加えて、個々のデバイスは、使用前のしばらくの間保存され得、そのことが、製造時に遂行される較正を不正確にしかねないデバイスの特性の変化をもたらし得る。これらの組み合わせは、エンド・ユーザが、デバイスの使用前毎に、高価な特殊機器を使用して、複雑な較正処置を遂行する必要があることを意味する。これは、エンド・ユーザにとって、面倒であり、時間のかかることである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Chuら、Sensors and Actuators B 155(2011)53~57頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、多数の較正パラメータを決定するための複雑な較正処置を必要としない、発光性化合物を使用して標的ガス状物質の濃度を測定するための、方法及び装置を有することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、ガス状物質によって緩和される発光寿命を有する発光性化合物を含むガス・センサを使用して、環境中のガス状物質の濃度を測定する方法が提供され、方法は、ガス・センサが環境に露出されている間に、発光性化合物の発光寿命の値を測定することと、ガス状物質に露出されていない発光性化合物の割合を表す較正因子によって修正された、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルを使用して、測定された発光寿命からガス状物質の濃度を導出することと、を含む。
【0009】
ガス状物質に露出されていない発光性化合物の割合を表すモデルを使用することによって、発光性化合物をセンサ内に組み込むことの発光寿命への効果を説明することができる。このことは、測定された発光寿命から、ガス状物質の濃度を正確に決定するために必要とされる、較正処置の複雑性を大幅に低減する。モデルは、寿命を、あたかも発光性化合物のある割合が、ガス状物質に露出されていない、又は言い換えれば、ガス状物質と相互作用するために利用できないように表すが、これは、センサの組み込みが発光性化合物及びその発光寿命に影響を与える実際の物理的メカニズムではない可能性がある。それにもかかわらず、このモデルは、発光性化合物の振る舞いを適切に正確に説明すると知られてきた。
【0010】
実施例では、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルは、シュテルン-フォルマーの式に従う。
【0011】
シュテルン-フォルマーの関係を使用することが、モデルのパラメータを決定する便利な既知の開始点を提供する。
【0012】
実施例では、ガス・センサは、ガス・センサの温度を測定するように構成された温度センサをさらに備え、ガス状物質の濃度を導出するステップは、温度センサによって測定されたガス・センサの温度を考慮に入れ、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルは、温度に依存する。
【0013】
発光寿命は温度に依存することが多い。ガス状物質の濃度を導出するときに、温度依存性を考慮することによって、方法は、より広い範囲の状況下で、濃度をより正確に決定することが可能になる。
【0014】
実施例では、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルは、シュテルン-フォルマーの式に従い、シュテルン-フォルマーの式は、温度に依存するシュテルン-フォルマー定数を含み、任意選択でシュテルン-フォルマー定数は、温度に線形従属する。
【0015】
実施例では、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルは、シュテルン-フォルマーの式に従い、シュテルン-フォルマーの式は、温度に依存するガス状物質による緩和がないときの発光寿命の値を含み、任意選択で、緩和がない発光寿命の値は、温度に線形従属する。
【0016】
これらの実施例により、方法が、モデル内のパラメータの温度依存性を直接的な手法で説明することができる。このことが、データの分析を簡略化する一方で、センサが、使用される可能性がある温度にわたって、十分に正確な示度をやはり提供する。
【0017】
実施例では、発光寿命の値を測定することは、光源を使用して発光性化合物を励起することと、発光性化合物によって発光された光の強度を測定することと、測定された強度から発光寿命の値を導出することと、を含む。
【0018】
発光寿命を測定するために、発光性化合物の制御された照明を使用することにより、測定工程にわたるより良好な制御が可能になり、濃度を導出するために使用される寿命測定の精度を改善する。
【0019】
実施例では、環境は、人又は動物の身体内にあり、任意選択でガス状物質が酸素を含む。
【0020】
外科及び臨床状況では、患者の血液内の溶存ガスの濃度を監視することが、一般に所望される。これにより、危険な状態が検出されることが可能になり、又はたとえば、人工換気の制御を可能にする。詳細には、患者の血液の酸素濃度の監視は、深刻で恒久的な損傷を患者にもたらし得る低酸素症を防止するために重要である。
【0021】
実施例では、発光性化合物は、白金錯体を含む。
【0022】
そのような錯体は、ガス・センサを作成するのに適する特性を有することで知られている。
【0023】
実施例では、発光性化合物は、重合体又はゾルゲル、任意選択でポリスチレンを含む基質内に懸濁される。
【0024】
発光性化合物を基質内に懸濁させることは、センサを製造し、センサ内に発光性化合物を組み込むための、簡便な方法を提供する。基質の選択は、基質材料での標的ガス状物質の溶解性により、センサの応答時間に影響を及ぼし得る。したがって、好適な基質を選択することは、センサ設計での重要な考慮事項である。ポリスチレンは、酸素に対して、他の同等の材料よりも低い溶解性を有するので、有用な応答時間を有するセンサを提供するのに適している。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、ガス状物質に露出されていない発光性化合物の割合を表す較正因子によって修正された、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルを使用する、ガス状物質によって緩和される発光寿命を有する化合物を含む、ガス・センサを較正する方法が提供され、方法は、ガス・センサが少なくとも2つの既知のガス状物質の濃度に露出されている間に、発光性化合物の発光寿命の値を測定することと、モデルを使用して、発光寿命の測定された値から較正因子を導出することと、を含む。
【0026】
この方法を使用することにより、十分に正確にシステムが較正されることが可能になり、一方で、エンド・ユーザはわずか2つのデータ・ポイントを測定すれば済む。このことは、エンド・ユーザの負担を大幅に低減し、時間を節約する。このことはまた、エンド・ユーザにとって利用可能であるに違いない機器の複雑性を低減し、較正を遂行するために既知のガス濃度を提供し、ユーザにそのような機器を取得し、運転し、維持する費用を節約させる。
【0027】
実施例では、ガス状物質の前記既知の濃度のうちの1つは、濃度ゼロである。
【0028】
較正用濃度のこの選択は、ガス状物質不存在下での寿命が2つの測定値から計算されるのではなく、直接決定されることを可能にするので、特に簡便である。センサは、製造されるとき、標的ガス状物質のない環境中でパッケージングされ得、その結果、エンド・ユーザは、センサを開封する前に測定を実施することによって、いずれの特殊機器も用いずにこの較正ステップを遂行できる。
【0029】
実施例では、前記ガス状物質は、空気中に存在し、ガス状物質の前記既知の濃度のうちの1つは、空気中の濃度である。
【0030】
これは、エンド・ユーザが、較正目的に既知の濃度を作成するために特殊な機器を所有する必要性を排除するので、較正点の簡便な選択である。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、環境中のガス状物質の濃度を測定するためのガス・センサ装置が提供され、ガス・センサ装置は、ガス状物質によって緩和される発光寿命を有する発光性化合物、及び発光性化合物によって放出される光を検出するように構成された検出器を含むガス・センサと、検出器によって出力された信号から化合物の発光寿命を導出し、ガス状物質に露出されていない発光性化合物の割合を表す較正因子によって修正された、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルを使用して、測定された発光寿命からガス状物質の濃度を導出するように、構成された分析システムと、を備える。
【0032】
第3の態様の実施例では、ガス・センサは、発光性化合物を励起するように構成された光源をさらに含む。
【0033】
ガス・センサ内に照明源を含むことにより、発光性化合物に届けられる光を制御することによる測定工程にわたるより良好な制御が可能になる。このことは、濃度を導出するために使用される寿命測定の精度を改善する。
【0034】
第3の態様の実施例では、検出器によって出力される信号は、発光性化合物によって発光される光の強度を表す。
【0035】
発光強度の変化を使用することは、発光寿命を測定するための、よく認知された方法であり、システムが周知技術を活用することを可能にし、センサの設計及び製造を簡素化する。
【0036】
第3の態様の実施例では、ガス・センサは、光導波路を含み、発光性化合物は、光導波路の端部に配置され、光導波路は、光を発光性化合物から検出器に誘導するように配置されている
【0037】
光導波路は、全内部反射を使用し、光が導波路から損失することを防止する。このことは、光が発光性化合物に効率的に導入及びそこから導出されることが可能であり、信号を改善し、高品質でより信頼できる測定をもたらすことを意味している。それらはまた、小さく、可撓性を有するように作成され得るので、患者の身体内に挿入される必要があるセンサに特に適している。使用され得る光導波路の例は、光ファイバである。
【0038】
第3の態様の実施例では、装置は、発光性化合物の周りに延在し、発光性化合物によって発光された光を光導波路内に反射するように構成された、反射器をさらに備える。任意選択で反射器は、ガス状物質を透過させる。
【0039】
反射器を使用することは、光導波路によって収集され、続いて検出され得る発光性化合物によって、放出される光の割合を増加させる。このことは、検出器によって受けられた信号を改善し、それが、次にガス・センサ装置によってなされる測定値の精度及び信頼性を向上させる。反射器がガス状物質を透過させるように作成されている場合、それは、その能力に影響を及ぼすことなく、発光性化合物を完全に封入し、環境中のガス状物質をセンシングし得る。このことは、収集され検出器に伝送され得る発光性化合物によって放出される光の割合をさらに改善する。
【0040】
本発明の第2の態様によって提供される較正方法は、本発明の第1及び第3の態様で使用されるガス状物質に露出されていない発光性化合物の割合を表す較正因子を決定するために、使用され得る。
【0041】
本発明の実施例が、次いで添付図面を参照して非限定的な例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図4】バイパス・ガス・センサの例を示す図である。
【
図5】酸素濃度の関数としての蛍光寿命の測定値の例を示す図である。
【
図6】実施例による較正方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施例によるガス・センシング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、環境100中のガス状物質の濃度を測定するためのそのようなガス・センサ装置2の実施例のシステム構成を示す。ガス状物質は、環境100中にガス状形態で存在し得、又は別法としてそれは、環境100中の別の物質、たとえば間質液又は血液などの液体内に溶解又は懸濁され得る。そのようなガス・センサ装置2の例は、酸素濃度をセンシングするための酸素センサであり得る。
【0044】
ガス・センサ装置2は、ガス状物質によって緩和される発光寿命を有する発光性化合物を含むガス・センサ4を備える。このことは、発光性化合物の発光寿命が、ガス状物質のより高い濃度で短いことを意味している。そのような発光性化合物の例は、ガス・センサ装置2が酸素濃度をセンシングするための酸素センサである場合、白金錯体である。
【0045】
ガス・センサ2は、発光性化合物が配設されているセンサ・プローブ8を備える。センサ・プローブ8は、ガス状物質が測定されることになる環境100に直接露出されるガス・センサ4の構成要素であり得る。
【0046】
ガス・センサ4は、基質9(
図1で模式的に示されている)を含み、発光性化合物は、基質9内に懸濁されている、溶解されている、又は分子的に結合されている。基質9は、センサ・プローブ8の一部である。基質9は、環境100中で安定であり、発光性化合物を支持することができる任意の材料を含み得る。
【0047】
ガス・センサ4は、発光性化合物を励起するように構成された光源10をさらに含む。光源10は、発光性化合物を励起するために必要とされる波長及び強度で光を放出することができる任意の光源であり得る。通常、これは、発光性化合物の性質に依存する。たとえば、光源10は、レーザダイオードを含み得る。光源10によって放出される光は、発光性化合物に伝送される前に光学フィルタ12によってフィルタリングされる。光学フィルタ12は、発光性化合物を励起するために必要な波長の光だけが発光性化合物に伝送されることを保証するために、使用される。これは、背景雑音及び期待されない励起源を低減し、発光性化合物の励起のより良好な制御及び一定性をもたらす。光源10は、振動強度を用いる連続光源又はパルス光源であり得る。
【0048】
ガス・センサ4は、発光性化合物によって放出される光を検出するように構成された検出器14をさらに含む。検出器14は、発光性化合物によって放出される波長で、光を受けることに応答して信号を生成することができる、任意のデバイスであり得る。たとえば、検出器14は、電荷結合デバイス、能動画素センサ、フォトダイオード、又はフォトレジスタを含み得る。
【0049】
検出器14によって出力される信号は、発光性化合物によって発光される光の強度を表すことができる。このことは、以下にさらに説明するように、発光性化合物の寿命を測定する簡便な方法を提供する。
【0050】
ガス・センサ4は、光ファイバ16を含み、発光性化合物が懸濁される基質9は、光ファイバ16の端部に配置されていて、光ファイバ16は、発光性化合物によって放出される光を検出器14に誘導するように配置されている。光ファイバは、全内部反射を使用し、光がファイバから損失することを防止する。このことは、光が発光性化合物に効率的に導入及びそこから導出されることが可能であり、信号を改善し、高品質でより信頼できる測定をもたらすことを意味している。それらはまた、小さく、可撓性を有するように作成され得るので、患者の身体内に挿入される必要があるセンサに特に適している。発光性化合物を光ファイバ16の端部に配置することは、光が、発光性化合物に又はそこから伝送されることを保証する簡便な方法である。たとえば、光ファイバ16は、PMMAファイバ光学部品を含み得る。光ファイバは、発光性化合物が配置されたファイバ16の端部に取り付けられたポリイミド・シース18を含み得る。光ファイバ16は、光導波路として機能し、適切な場合、他の任意の好適な光導波路が、光ファイバ16に代えて使用され得る。
【0051】
任意選択で、反射器19は、発光性化合物の周りに延在して配設され、発光性化合物によって発光された光を光ファイバ16内に反射するように構成されている。反射器19は、光ファイバ16によって収集され、続いて検出され得る、発光性化合物によって放出される光の割合を増大させ、検出器14によって受け取られる信号を改善する。反射器19は、発光性化合物上に堆積された層を含み、たとえば反射器19は、ポリスルホンの層を含み得る。反射器19は、検出されることになるガス状物質を透過させるように選択され得る。このことは、反射器19が、発光性化合物を完全に覆うことができ、光ファイバ16に伝送される光を最大限に増大させ、一方で、発光性化合物のガス状物質への感度に影響を及ぼさないことを意味している。
【0052】
ガス・センサ4は、ガス・センサ4の温度を測定するように構成された温度センサ20を備える。温度センサ20は、センサ・プローブ8内に組み込まれても、又は、それと分離されていてもよい。温度センサ20は、熱電対又はサーミスタを含み得る。
【0053】
ガス・センサ4のいくつか又は全ては、使い捨てであり得る。このことは、臨床状況で簡便であり、ガス・センシング装置2は、患者の身体内部のガス濃度をセンシングするために使用される。そのような事例では、身体内に挿入されるガス・センシング装置2の一部は、滅菌されていなければならず、患者間で再利用され得ない。たとえば、ガス・センサ4がセンサ・プローブ8を含む事例では、発光性化合物を含むセンサ・プローブ8のみが、使い捨てとすることができ、検出器14又は光源10は使い捨てとすることができない。そのような事例では、ガス・センサ4は、センサ・プローブ8を光源10及び検出器14に接続するように構成されたコネクタ・インタフェース21をさらに備える。
【0054】
ガス・センシング装置2は、検出器14によって出力された信号から発光性化合物の発光寿命を導出するように構成された分析システム30をさらに含む。分析システム30は、通信インタフェース22を介してガス・センサ4に接続されている。通信インタフェース22は、有線接続、たとえばシリアル若しくはイーサネット(登録商標)接続、又はガス・センシング装置用に特化して設計された別のインタフェースの種類を含み得る。別法として、ブルートゥース(登録商標)又はWi-Fiなどの無線接続が、使用され得る。通信インタフェース22は、検出器14によって出力される信号を分析システム30に送信する。それはまた、分析システム30からの信号がガス・センサ4に送信され、たとえば光源10を制御することを可能にする。
【0055】
一般に、発光寿命を測定する2つの方法が存在する。第1の方法は、発光強度減衰曲線を測定するためのものであり、第2の方法は、位相差を測定するためのものである。
【0056】
第1の方法では、光パルスが、光源10によって発光性化合物に供給され、発光性化合物を励起する。発光性化合物は次に、光パルスが終了した後時間と共に減衰する強度を有する光を放出する。パルスの終了後の時間の間の強度の変化を測定することによって、発光寿命が決定され得る。
【0057】
第2の方法では、光源10は、光を連続して印加するが、振動強度を伴わない。発光性化合物によって放出される光も、強度が振動することになる。発光寿命は、発光性化合物を励起するために使用される光の振動と、発光性化合物によって放出される光の振動との間の位相差を使用して決定され得る。どちらの方法も本ガス・センシング装置2での使用に適しているが、選択された方法は、検出器14及び光源10に関する個別の要件に影響を及ぼし得る。
【0058】
したがって、光源10が、振動強度を有する連続光源である実施例では、分析システム30は、発光性化合物の発光寿命を、検出器14によって出力された信号から、発光性化合物を励起するために使用される光の振動と、発光性化合物によって放出される光の振動との間の位相差を使用して、導出するように構成されることになる。
【0059】
光源10が、パルス光源である実施例では、分析システム30は、発光性化合物の発光寿命を、検出器14によって出力された信号から、パルスの終了後の時間の間の強度変化を測定することによって、導出するように構成されることになる。
【0060】
分析システム30は、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルを使用して、測定された発光寿命から、ガス状物質の濃度を導出するように構成されている。このモデルは、以下でさらに詳細に説明される。
【0061】
ガス・センサ4が温度センサ20を備える実施例では、分析システムは、ガス状物質の濃度を、温度センサ20によって測定されたガス・センサ4の温度を考慮して、導出するように構成されている。
【0062】
ガス・センシング装置2は、分析システム30に接続された表示デバイス35を備える。表示デバイス35は、分析システム30によって決定されたガス状物質の濃度を、ユーザに便利なフォーマットで表示する。それはまた、ガス・センサ装置2から導出された他の情報、たとえばガス・センサ4の温度、又は決定された濃度での推定される誤差若しくは不確実性を表示し得る。
【0063】
本ガス・センシング装置2は、臨床状況での使用に特に適している。ガス・センサ4又はセンサ・プローブ8は、患者の体内への挿入のために非常に小さく作成され得る。ガス・センシング装置2は、患者の血液内の溶存ガスの濃度を測定するために使用され得る。代謝にとって重要である、酸素又は二酸化炭素などのガスが、具体的な関心事である。たとえば、ガス・センシング装置2は、換気装置用の制御システムの一部として使用され得る。そのような事例では、ガス・センシング装置2によって測定されたガス状物質の濃度は、たとえば低酸素症を防止するために、患者の血液内の酸素濃度の適切な範囲を維持するように、換気装置を制御するために使用される。別の例は、心臓バイパス処置中に酸素供給パラメータを制御するために、酸素の測定をすることである。別法として、ガス・センシング装置2は、外科的処置中の麻酔の適切なレベルを維持することを支援するように、患者の血液中の麻酔剤の濃度を検出するために、使用され得る。
【0064】
図2~4は、ガス・センサ4がセンサ・プローブ8を含む事例での、臨床状況での使用のための、ガス・センサ4のいくつかの具体的な例示の実施例を示している。
【0065】
図2は、ガス・センサ4が、血管内センサ40である実施例の図を示している。発光性化合物が、患者内部にカテーテルを介して挿入されている光ファイバ16の先端に配置されている。センサ・プローブ8は、熱電対又は他の任意の好適な温度センサを含む温度センサ20と共に、ファイバ光学部品16を収容する。センサ・プローブ8は、ケーブルを用いて又は無線通信を介してガス・センシング装置2の残部に接続されている。
【0066】
図3は、ガス・センサ4が、間質酸素センサ50である実施例の図を示している。この事例では、ガス・センサ4は、センサ・プローブ8及び外側部分54を含む。センサ・プローブ8は、皮膚52に穴を開け、間質液内の酸素濃度を測定する。格納式の針が、皮膚52に穴を開けるために使用され得、ガス・センサ4が、測定値を分析システム30及び表示デバイス35に無線で送信する。別法として、分析システム30が、外側部分54に配置され得、分析システム30によって決定された濃度が、表示デバイス35に無線で送信される。熱電対又はサーミスタを含む温度センサ20が、皮膚温度を測定するために配設される。これは、皮膚52に侵入するセンサ・プローブ8内部、又は外側部分54内部の皮膚52近傍に配設され得る。
【0067】
図4は、ガス・センサ4がバイパス・センサ60である実施例の図を示している。そのようなセンサは、ポンピングされる血液中のガス状物質の濃度を監視するために、外部血液ポンプ内で使用される。換気装置の事例についての上述と同様に、血液ガス濃度の測定値は、たとえば血液の適切な酸素供給レベルを維持するために、外部血液ポンプによる血液のポンピング速度の制御の一部として使用される。この事例では、使い捨てのセンサ・プローブ8が、バイパス・ループ61に取り付けられ、その結果、発光性化合物を含む検知物質が、それを通過する血液と接触する。恒久的な再使用可能な光学/電気コネクタ62が、使い捨てのセンサ・プローブ8をガス・センシング装置2の残部に接続する。サーミスタ又は別の好適な温度センサ20が、血液の温度を測定するために、使い捨てのセンサ・プローブ8内部に取り付けられている。
【0068】
検出されることになるガス状物質は一般に、通常の温度及び圧力(NTP)、たとえば288.15K(15.00℃)及び101.325kPaでガス状に分離している任意の物質であり得る。測定されるとき、ガス状物質は、液体内に溶解され得る。
【0069】
検出されることになるガス状物質は通常、人又は動物の身体内に見られるもの、たとえば血液ガス(酸素又は二酸化炭素)、一般的な信号分子である一酸化窒素、一酸化炭素、又は麻酔ガス(たとえば、亜酸化窒素、イソフルラン、セボフルラン、デスフルラン)である。好ましくは、検出されることになるガス状物質は、血液ガス(酸素、二酸化炭素、又は窒素)であり、酸素又は二酸化炭素が好ましく、酸素が最も好ましい。
【0070】
発光性化合物は、検出されることになるガス状物質に対して感度を有する化合物であり、よって、発光性化合物はガス状物質によって緩和される発光寿命を有する。通常、発光性化合物は、緩和されるとき、10ns以上の、好ましくは100ns以上の、より好ましくは1μs以上の寿命を有する。通常、発光性化合物は、蛍光化合物を含む。発光性化合物は、通常、生体適合性がある。ある態様では、発光性化合物は、有機色素である。
【0071】
検出されることになるガス状物質が酸素である場合、発光性化合物は通常、酸素に対して感度を有する有機色素である。たとえば、発光性化合物は、多環芳香族化合物或いは1つ又は複数の芳香族配位子、具体的には多環芳香族配位子を有する、遷移金属の錯体であり得る。遷移金属は、たとえば白金(たとえば、白金(II))、ルテニウム(たとえば、ルテニウム(II))、パラジウム(たとえば、パラジウム(II))、オスミウム(たとえば、オスミウム(II))、イリジウム(たとえば、イリジウム(III))、コバルト(たとえば、コバルト(II))、又は亜鉛であり得る。白金(たとえば、白金(II))、ルテニウム(たとえば、ルテニウム(II))、及びパラジウム(たとえば、パラジウム(II))が好ましい。最も好ましくは、発光性化合物は、白金錯体(たとえば、白金(II)錯体)であり、1つ又は複数の芳香族配位子、具体的には多環芳香族配位子を有する白金(II)の錯体であることが最も好ましい。
【0072】
多環芳香族配位子又は多環芳香族化合物は、縮合又は非縮合の可能性がある2つ以上の芳香環を含む。例は、ポルフィリン、ビピリジン、アントラセン、フルオロアントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、又はデカシクレン、及びその誘導体を含む。ポルフィリン及びその誘導体が好ましい。単体で有機色素として又は遷移金属錯体の配位子としてのいずれかで使用され得るポルフィリン誘導体の例は、テトラフェニル・ポルフィン(TPP、テトラフェニル・ポルフィリンとしても知られている)を含むフェニル・ポルフィリン、及びテトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィン(TFPP)を含むTPPのハロゲン化された種類を含む。
【0073】
したがって、最も好ましい発光性化合物は、白金(たとえば、白金(II))、ルテニウム(たとえば、ルテニウム(II))、及びパラジウム(たとえば、パラジウム(II))の錯体であり、ポルフィリン配位子、具体的にはテトラフェニル・ポルフィリン及びハロゲン化されたテトラフェニル・ポルフィリンを有する錯体を有する白金(II)の錯体が、最も好ましい。好ましい発光性化合物は、白金(II)メソ-テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィン(PtTFPP)である。
【0074】
ガス状物質が酸素以外である場合、その発光寿命が選択されたガス状物質の存在下で緩和される発光性化合物が選択されるべきである。血液ガス、一酸化窒素、一酸化炭素、又は麻酔ガスの存在下で緩和されることができる、有機色素などの好適な発光性化合物が、当技術分野で知られており、当業者によって選択され得る。
【0075】
発光性化合物は、励起波長と異なる波長で放出するものが好ましい。白金(II)錯体は、その励起及び発光波長が良好に分離されるので、この点で特に好適である。白金(II)錯体はまた、比較的長い発光寿命を提供する。白金テトラフェニル・ポルフィリン錯体の蛍光は、酸素存在下で、非常に効果的に緩和される。
【0076】
発光性化合物は、基質内に懸濁されている、溶解されている、又は分子的に結合されている。したがって、発光性化合物は、基質内部に物理的に閉じ込められていても、又は基質に共有結合されていてもよい。基質は、検出されることになるガス状物質を透過させる。
【0077】
ある態様では、基質は、重合体を含む。重合体基質は、親水性又は疎水性であり得る。たとえば、重合体基質は、ヒドロゲルたとえばPHEMA又はポリアクリルアミドであり得る。PPMA、PMMA、及びPEMAを含むアクリレート重合体が、使用され得る。別法として、基質は、疎水性重合体を含み得、たとえばポリスチレンを含み得る。疎水性重合体は、水溶性の干渉から蛍光体を保護するので好ましく、水分が環境中に行きわたっているところで、血液ガスをセンシングすることに、特に適切である。
【0078】
別の態様では、基質は、ゾルゲルを含む。発光性化合物を支持するためのゾルゲル基質は、Chuら(Sensors and Actuators B 155(2011)53~57頁)によって記載されている。
【0079】
反射器は、検出されることになるガス状物質を透過させ、発光の波長で光を反射することに適している材料で形成されている。好適な材料は、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、及びポリフェニルスルホン(PPSU)などの重合体を含む。ポリスルホンが好ましい。酸化チタン又は硫酸バリウムを含むシリコンなどの他の反射する化合物を使用することも可能であろう。
【0080】
いくつかの実施例では、検出されることになるガス状物質は、基質材料に可溶であり得る。このことは、環境中のガス状物質の濃度の変化に対する、ガス・センサの応答の遅れの原因となり得る。たとえば、環境中のガス状物質の濃度が急速に低下する場合、基質内に溶存するガスが放出され得る。基質内に懸濁された発光性化合物は、基質によって放出されたガスに露出されるので、環境中よりも高いガス状物質の濃度を経験する。基質中のガス濃度が環境中のガス濃度と平衡する時間尺度に応じて、ガス・センサは、環境中のガス状物質の濃度の変化に対してごくゆっくりと反応することもある。
【0081】
したがって、ガス状物質の溶解性が、センサの応答時間の大きな遅れの原因とならないように、基質を含む材料を選択することが所望される。たとえば、センサの応答時間が、ガス状物質の濃度が環境中で通常変化する時間尺度よりも大幅に長い場合、問題となり得る。ポリスチレンは、センサが酸素濃度を検出するように構成されている場合、ポリスチレン内の酸素溶解性が大きな遅れ時間をもたらす程でないので、基質用の好適な材料の一例である。
【0082】
ガス状物質の存在下で、発光性化合物の発光寿命が緩和される、すなわち、低減されるようになる。発光寿命の緩和は、発光性化合物の励起された分子とガス状物質の分子/粒子との間の衝突に起因する。発光性化合物の励起された分子とガス状物質の分子との間の衝突は、発光性化合物分子が速やかに光を放出し、したがって励起が解かれるようになる、原因となる。ガス状物質の濃度が増大すると、そのような衝突の割合も増大するので、発光のより速い減衰速度をもたらす。
【0083】
較正方法及びガス・センシング方法を説明する前に、方法の一部として使用されるガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルを先に説明する。
【0084】
多くの発光性化合物に関して、緩和効果は、ガス状物質が酸素である場合、式1で示されているようなシュテルン-フォルマーの式が使用されてモデル化され得る。シュテルン-フォルマーの式は、τ
0/τとガス状物質濃度との間に線形関係を有する。
【数1】
ここで、
τ -酸素存在下での蛍光寿命
τ
0 -酸素不存在下での蛍光寿命
K
SV -シュテルン-フォルマー定数(緩和効果を定量化する)
[O
2] -酸素濃度
【0085】
発光性化合物がセンサに組み込まれている場合、センサは、標準シュテルン-フォルマー・プロファイルに従わない緩和メカニズムによって機能することがわかる。言い換えれば、ガス状物質の濃度へのτ0/τの依存性は、式1のように線形ではなく、センサによって変化するより複雑な依存性(通常は二次又はさらに高次の)を有する。
【0086】
本発明者らは、この効果が、ガス状物質(たとえば、酸素)のセンシングに使用される発光性化合物(たとえば、白金錯体)が、ファイバ光学部品の端部の基質(たとえば、ポリスチレンフィルムを含む)内で不動化され得、発光性化合物の割合がガス状物質のセンシングに利用不可能である原因になるという事実による、ということを理論化した。このことは、ガス状物質に露出されていない発光性化合物の割合を表す較正因子によって修正された、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルの発展をもたらしてきた。しかしながら、センサ内部への組み込むことが、発光寿命のガス状物質濃度への依存性に影響を及ぼす物理的メカニズムは、様々であり得る。たとえば、異なる割合の発光性化合物が、ゼロから環境中の実際の濃度の「実効」ガス状物質濃度の範囲を経験する事例があり得る。それにもかかわらず、本明細書で説明されるモデルは、発光性化合物の観測された振る舞いを十分に正確に説明することを見出してきており、本発明は、モデルの基礎をなす具体的な物理的メカニズムが実際に、観測された効果の直接の原因となるか否かに限定されない。
【0087】
モデルによれば、観測された蛍光寿命は、式2によって記述される。
【数2】
ここで、
τ
obs -ガス状物質(たとえば、酸素)の存在下での観測された蛍光寿命
τ
real -ガス状物質(たとえば、酸素)の存在下での絶縁されている発光性化合物に期待される蛍光寿命
X -較正因子(ガス状物質に露出されていない発光性化合物の割合)
【0088】
それが適切ある場合、使用される発光性化合物に応じて、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルは、シュテルン-フォルマーの式に従う。そのような実施例では、τrealは、濃度への通常のシュテルン-フォルマー依存性に従って決定され得る。
【0089】
式2が式1に代入され、修正されたシュテルン-フォルマーの式である式3をもたらし得る。
【数3】
これは、式4に再整理され得る。
【数4】
【0090】
較正因子Xは、次に、再整理された式4から導出された式5を使用して決定され得る。
【数5】
【0091】
環境中のガス状物質の濃度をより正確に決定するために、発光性化合物の温度を考慮することが好ましい。そのような事例では、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルは、温度に依存する。このことは、発光性化合物の発光寿命が温度依存性を有し得るので、有益であり、これを考慮することが、モデルの精度を改善する。
【0092】
ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルが、シュテルン-フォルマーの式に従う場合、シュテルン-フォルマーの式は、温度に依存するシュテルン-フォルマー定数を含み得る。
【0093】
加えて、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルが、シュテルン-フォルマーの式に従う場合、シュテルン-フォルマーの式は、温度に依存するガス状物質による緩和がないときの発光寿命の値を含み得る。
【0094】
このことは、τ0及びKSVの両方が温度に対して感度を有し得るので、有益である。特に、シュテルン-フォルマー定数は、温度に線形従属し得る。τ0の緩和がない発光寿命の値も、温度に線形従属し得る。それらの温度依存性の例は、式6及び式7で示されている。
KSV=KSV.37℃+(T-37).β
式6
ここで、
KSV.37℃ -37℃におけるシュテルン-フォルマー定数
β -KSV対温度の傾き
τ0=τ0.37℃+(T-37).α
式7
ここで、
τ0.37℃ -37℃における酸素不存在下での蛍光寿命
α -τ0対温度の傾き
【0095】
式6及び式7を式4に代入すると、温度依存性を有するシュテルン-フォルマーの式をもたらす。
【数6】
【0096】
ガス・センシング方法及び較正方法で使用されるモデルを説明しきたので、ここから、方法自体の説明に進むことができる。
【0097】
図6は、ガス状物質によって緩和される発光寿命を有する発光性化合物を含むガス・センサ4を較正する較正方法のフローチャートを示している。較正方法は、ガス・センサ4を較正する手順を簡素化するために、上述のモデルを活用し、その結果、エンド・ユーザへの要求が軽減される。特に、わずか2つの既知のガス濃度を使用してガス・センサ4を較正することが可能になり、これが、ガス・センサ4を較正するためにエンド・ユーザによって必要とされる、時刻及び機器の複雑性を大幅に低減する。
【0098】
較正方法は、以下のステップを含む。
【0099】
ステップS1では、ガス・センサ4が少なくとも2つの既知のガス状物質の濃度に露出されている間に、発光性化合物の発光寿命の値が測定される。どの順番で既知の濃度が測定されるかは、問題ではない。たとえば、ガス・センサ4は、最初にガス状物質の高い濃度に露出され得、続いて低い濃度に露出され得、又は逆もまた同様である。
【0100】
ある例では、前記ガス状物質は、空気中に存在し、ガス状物質の前記既知の濃度のうちの1つは、空気中の濃度である。このことは、ガス・センサ4が、適度に一定した、空気中の既知の濃度を有するガス状物質(たとえば、酸素又は窒素)を検出するように構成されている場合、それが、ガス状物質の既知の濃度のうちの1つを生成するための特殊機器の必要性を排除するので、有益であり得る。
【0101】
ガス状物質が空気中に存在する場合、ガス・センサ4は最初に、ガス状物質の既知の濃度を有する環境中でパッケージングされ得、ステップS1は、ガス・センサ4がガス状物質の既知の濃度下でパッケージングされている間に、発光寿命の第1の値を測定することと、引き続きパッケージングを開け、ガス・センサ4を空気中に露出させた後に、発光寿命の第2の値を測定することと、を含む。ガス・センサ4がセンサ・プローブ8を含む場合、センサ・プローブ8のみが、ガス状物質の既知の濃度下で、最初にパッケージングされ得る。
【0102】
このことは、センサ・プローブ8又はガス・センサ4が使い捨てである、及び/又は滅菌されている実施例で、特に便利である。これは、ガス・センサ4が必要とされるまでパッケージング内に格納され、使用する直前に較正され、次に使用後に捨てられ得るからである。それはまた、ガス状物質の2つの既知の濃度を生成するための特殊機器の必要性を排除する。
【0103】
任意選択で、ガス状物質の前記既知の濃度のうちの1つは、濃度ゼロである。これは、ガス状物質の既知の濃度のもう一方が、空気中の濃度である場合、又は別法として、既知の濃度のもう一方が、別のやり方で提供され得る場合であり得る。この実施例は、ゼロの濃度を使用することにより、上の式で示されているようなτ0の直接の決定も可能になるので、測定値からこれを推定する必要がなく、簡便である。このことは、較正処置の計算の複雑性を低減する。ガス・センサ4が、ガス状物質の既知の濃度を含む環境中でパッケージングする場合、既知の濃度をゼロであるようにガス・センサ4をパッケージングすることは、特に簡単である。たとえば、パッケージングは、排気され得、又はパッケージングは、ガス・センサ4によって検出されることになるガス状物質以外のガス状物質で充填され得る。さらに、発光寿命の測定は、ガス・センサ4が開封される前になされ得るので、エンド・ユーザは、較正用のガス状物質のゼロ濃度を生成するために、いずれの特殊機器も必要としない。
【0104】
ガス・センサ装置2が血液ガス濃度を測定するために使用される場合、ガス状物質の既知の濃度のうちの1つの別の選択肢により、ガス・センサ4は、血液内のガス状物質の濃度との平衡に到達し、次に、血液サンプルを採取することが可能となる。血液サンプル内のガス状物質の濃度は、別の技術、たとえば従来の血液ガス分析機を使用して決定され得、血液サンプルと同時に採取された発光寿命の測定値は、血液サンプルを分析することから取得された既知の濃度に存在する。
【0105】
どの順番で2つ以上の既知の濃度の発光寿命が測定されるかは、問題ではない。いくつかの実施例では、ゼロ濃度での発光寿命を最初に測定することが、より簡便である一方で、このことは、較正方法を適切に遂行するために不可欠ではない。
【0106】
発光寿命の値を測定することは、光源10を使用して発光性化合物を励起することと、発光性化合物によって発光された光の強度を測定することと、測定された強度から発光寿命の値を導出することと、を含み得る。光源10は、振動強度を用いる連続光源又はパルス光源であり得る。光源10の選択に応じて、発光寿命の値を導出することは、発光性化合物を励起するために使用される光の振動と、発光性化合物によって放出される光の振動との間の位相差を使用して、又はパルスの終了後の時間の間の強度変化を測定することによって、遂行される。
【0107】
ステップS2では、較正因子は、ガス状物質に露出されていない化合物の割合を表す較正因子によって修正された、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルを使用して、発光寿命の測定された値から導出される。
【0108】
これにより、簡単な較正のための2点測定が可能になる。たとえば、ガス・センサ装置2が酸素を検出するように構成されている場合、2点較正が実行され得、その結果、初期の較正点が0%酸素であり(ガス・センサ4用の修正された雰囲気パッケージングを使用して)、より高い酸素濃度での第2の測定が、空気中(酸素約20%である)でなされる。
【0109】
上記の式5でわかるように、モデルは、シュテルン-フォルマーの式に従い、較正因子は、3つの定数τobs、τ0、及びKSVを含む式によって与えられる。KSVは、発光性化合物(たとえば、白金錯体)の緩和速度であり、したがってセンサ間で一定であるべきである。したがって、それは、製造時に決定され得る。このことは、エンド・ユーザによってなされる2つの測定が、較正因子を決定しガス・センサ4を較正するために、十分であることを意味している。
【0110】
実施例では、ガス・センサ4が温度センサ20をさらに備える場合、較正方法は、発光性化合物の温度を測定するステップS3を含み、較正因子を導出するステップS2は、温度センサ20によって測定されたガス・センサ4の温度を考慮に入れ、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルは、温度に依存する。そのような実施例では、モデルは上述のようであり、すなわち、モデルは、シュテルン-フォルマーの式に従い得、ガス状物質による緩和がないときのシュテルン-フォルマー定数及び/又は発光寿命は、温度に依存し得る。さらに、ガス状物質(τ0)による緩和がないときのシュテルン-フォルマー定数の温度依存性及び/又は発光寿命の温度依存性は、線形であり得る。
【0111】
シュテルン-フォルマー定数及び/又はτ
0の温度依存性が線形である場合、それは、定数α及びβが小さく、これらの値に推定値を使用することが、適度なセンサ精度をもたらす場合であり得る。したがって、製造時に決定されたこれらの定数の値がエンド・ユーザによって使用され得る。このことは、センサの使用前に計算される必要があるであろう3つの残りの較正定数が存在することを意味している。それらは、τ
0、K
SV、及びXである。K
SVが定数であると仮定して(上述のように)、式9のように収集されたデータを使用してXを計算するために、式2を再整理することができる。
【数7】
【0112】
式1を式9に代入すると、上述したように、式5をもたらす。ガス状物質が酸素である実施例では、これは式10をもたらす。
【数8】
【0113】
式6及び式7を式10に代入すると、式11をもたらす。
【数9】
これは、式12をもたらすために再整理され得る。
【数10】
ここで、
τ
Obs -T
2で測定された寿命
τ
0.Obs -T
1で測定されたτ
0
τ
0.T2 -T
2で計算されたτ
0
α -τ
0対温度の傾き
K
SV.37℃ -37℃におけるシュテルン-フォルマー定数
K
SV.T2 -T
2でのシュテルン-フォルマー定数
β -K
SV対温度の傾き
T
1 -第1の較正点(0%酸素)での温度
T
2 -第2の較正点(酸素存在)での温度
[O
2] -第2の較正点での酸素濃度
【0114】
実際上、較正因子を決定するために式11又は12を使用することにより、τ
0/τとガス状物質濃度との間の線形関係が、ガス状物質に露出させた発光性化合物の部分について使用されることを可能にし、計算を簡略化し、線形関係を導出するためにわずか2つの較正測定値を必要とする。このことは、
図5で図示されており、例示の実施例では、酸素濃度へのτ
0/τの依存性が、発光寿命が酸素に露出されていない発光性化合物の割合を考慮するために補正された後、どのように線形であるのかが示されている。
【0115】
詳細には、
図5は、ガス・センサ4の6つの異なる酸素濃度に対する較正を示している。τ
realが計算された後、得られたシュテルン-フォルマーのグラフは、期待されたように線形である。この場合、蛍光色素の29.5%が、センシングに利用できていない。
図5での測定に関して、τ
0=55.7μs、K
sv=0.031、X=29.5%である。
【0116】
較正方法では、ガス状物質及び発光性化合物は、上述の物質又は物質の部類のうちの任意のものであり得る。較正方法で使用されるガス・センサ4は、上述のように構成されている。
【0117】
較正方法を説明してきたので、ここからガス・センシング方法の説明に移る。
【0118】
図7は、ガス・センサを使用して、環境中のガス状物質の濃度を測定するガス・センシング方法のフローチャートを示しており、ガス・センサは、ガス状物質によって緩和される発光寿命を有する発光性化合物を含む。ガス・センシング方法は、エンド・ユーザにとって簡潔で簡便な較正方法に対応するガス・センシング方法を提供するために、上述のモデルを活用する。
【0119】
ガス・センシング方法は、以下のステップを含む。
【0120】
ステップS10では、ガス・センサが環境に露出されている間に、発光性化合物の発光寿命の値が測定される。環境は、人又は動物の身体内であり得る。たとえば、環境は、血管内部又は身体組織の内部であり得る。そのような実施例では、ガス・センシング方法は、血液又は間質液内の溶存ガスの濃度を測定するために使用され得る。別法として、環境は、溶存ガス状物質の濃度を測定することが所望される別の液体環境であり得る。たとえば、ガス・センシング方法は、血液が血液ポンプによって人体又は動物の身体の外部で循環させられている、血液ループ内の血液ガスの濃度を測定するために使用され得る。この場合、環境は、血液ポンプの血液輸送部品の内部である。これらの例は、ガス・センシング方法の好ましい使用方法を表しているが、ガス・センシング方法は、液体に溶存するガス状物質の濃度を測定することに限定されず、拘束されないガス状形態のガス状物質の濃度を測定することへの使用にも適している。
【0121】
発光寿命の値を測定することは、光源10を使用して発光性化合物を励起することと、発光性化合物によって発光された光の強度を測定することと、測定された強度から発光寿命の値を導出することと、を含み得る。光源10は、振動強度を用いる連続光源又はパルス光源であり得る。光源10の選択に応じて、発光寿命の値を導出することは、発光性化合物を励起するために使用される光の振動と、発光性化合物によって放出される光の振動との間の位相差を使用して、又はパルスの終了後の時間の間の強度変化を測定することによって、遂行される。
【0122】
ステップS12では、ガス状物質の濃度が、ガス状物質に露出されていない発光性化合物の割合を表す較正因子によって修正された、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルを使用して、測定された発光寿命から導出される。
【0123】
実施例では、ガス・センサ4が温度センサ20をさらに備える場合、ガス・センシング方法は、ガス・センサ4の温度を測定するステップS11をさらに含み、ガス状物質の濃度を導出するステップS12は、温度センサ20によって測定されたガス・センサ4の温度を考慮に入れ、ガス状物質の発光寿命と濃度との間の関係性のモデルは、温度に依存する。そのような実施例では、モデルは上述のようであり、すなわち、モデルは、シュテルン-フォルマーの式に従い得、ガス状物質による緩和がないときのシュテルン-フォルマー定数及び/又は発光寿命は、温度に依存し得る。さらに、ガス状物質(τ0)による緩和がないときのシュテルン-フォルマー定数の温度依存性及び/又は発光寿命の温度依存性は、線形であり得る。
【0124】
測定された寿命からガス状物質の濃度を導出するステップは、ガス状物質(τreal)に露出されている発光性化合物の割合の発光寿命を導出することと、ガス状物質に露出されている発光性化合物の割合の発光寿命からガス状物質の濃度を導出することと、を含み得る。ガス状物質に露出されている発光性化合物の割合の発光寿命からガス状物質の濃度を導出することは、ガス状物質に露出されている発光性化合物の割合の、発光寿命のガス状物質の濃度への依存性に、シュテルン-フォルマーの関係を使用することを含み得る。
【0125】
ガス・センシング方法では、ガス状物質及び発光性化合物は、上述の物質又は物質の部類のうちの任意のものであり得る。ガス・センシング方法で使用されるガス・センサ4は、上述のように構成されている。
【0126】
ここで、本発明の実施例を使用して決定されたガス状物質の濃度の精度を確認するために、試験結果が記載される。試験は、ガス状物質が酸素であり、基質がポリスチレンであり、発光性化合物が蛍光有機色素(白金(II)メソ-テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィン(PtTFPP))である実施例を使用して遂行された。
【0127】
式11を使用して、2つのセンサが30℃における0及び150mmHgで較正された。表1は、Xを計算するために使用された較正定数を示している。
【表1】
【0128】
センサ007-011に関してX=28.31、センサ007-002に関してX=34.08。表2は、2つのセンサに関する試験の精度を示している。試験では、30、37、及び40℃における0mmHgと290mmHgとの間の酸素濃度が測定され、個々のセンサ毎に5.3%及び5.5%の平均絶対偏差(MARD)が結果として得られた。このテストからの精度データが表2に示されている。
【表2】