(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240808BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240808BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240808BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240808BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/30
G02B5/22
G02B1/14
(21)【出願番号】P 2021570270
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 IB2020054900
(87)【国際公開番号】W WO2020240386
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】201920794921.8
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】田村 健太郎
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116882(JP,A)
【文献】特開2019-061241(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168726(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0277023(US,A1)
【文献】特開2018-084596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0185383(US,A1)
【文献】特開2016-017152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0129172(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 5/30
B60K 35/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示情報を有する直線偏波の可視光を放射する表示部と、
前記表示部からの前記可視光を透過し前記表示部への赤外線の入射量を低減する赤外線削減部と、
前記赤外線削減部を透過した前記可視光を反射する反射部とを備え、
前記赤外線削減部が赤外線削減層を含み、
前記赤外線削減層が遅軸を有し、
前記遅軸が前記直線偏波の振動方向に概ね平行である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記赤外線削減部が、紫外線の透過率を低減する紫外線削減層を更に含み、
前記赤外線削減層及び前記紫外線削減層の両方が、可視光領域で透過性を有する、
請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置のうちの1つとしての乗り物用ヘッドアップディスプレイでは、例えば、表示情報を有する液晶パネルは、自動車の計器盤の内部に配設されており、バックライトから出て液晶パネルを透過した光は、鏡によってフロント風防ガラスに向かって放射される。放射された光は、フロント風防ガラスによって反射された後に運転者の目に入射し、運転者は、液晶パネルからの表示情報を仮想画像で目視確認することができる。更に、乗り物においては、外部光(太陽光)中の赤外光線(赤外線)によって発生する熱エネルギーが液晶パネルに与える影響を低減することが重要である。したがって、特許文献1には、乗り物用ヘッドアップディスプレイが開示されており、乗り物用ヘッドアップディスプレイでは、光学フィルターは、液晶パネルに入射する赤外線を遮断するために、液晶パネルとフロント風防ガラスとの間に配設されている。また、特許文献2には、2種類のポリマーフィルムを赤外光削減部として使用する乗り物用ヘッドアップディスプレイが開示されている。
【0003】
先行技術文献
特許文献
特許文献1:特開11-23997号
特許文献2:特開2017-138448号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載の表示装置では、光学フィルターが、例えば延伸ポリマーフィルムを含む場合、光学フィルターは屈折率異方性を生じさせ、複屈折を呈する。したがって、表示情報を有する直線偏波の可視光が表示部から放射され光学フィルターを透過するとき、直線偏波は楕円偏波に変化する場合がある。楕円偏波の可視光がフロント風防ガラスによって反射されると、可視光の反射率は、偏波の成分に応じて変化する。その結果、運転者によって認識される表示情報は、表示部から放射されたときの表示情報と異なり、目視確認するのが困難である場合がある。一方、上記の特許文献2に記載の表示装置では、第2のポリマーフィルムは、第1のポリマーフィルム上に配設されており、第2のポリマーフィルムは、第1のポリマーフィルムで生じた複屈折を補償するために使用される。しかしながら、運転者の目視確認を維持しながら、液晶パネルに入射する赤外線の量を低減するために、更なる改善が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの方式による表示装置は、表示情報を有する直線偏波の可視光を放射する表示部と、表示部からの可視光を透過し表示部への赤外線の入射量を低減する赤外線削減部と、赤外線削減部を透過した可視光を反射する反射部とを備え、赤外線削減部は赤外線削減層を含み、赤外線削減層は遅軸を有し、遅軸は直線偏波の振動方向に概ね平行である。
【0006】
該表示装置の赤外線削減部は、表示部からの可視光を透過しつつ、表示部への赤外線の入射量を低減する。その結果、可視光に含まれる表示情報の輝度が維持されつつ、例えば、太陽光中の赤外線によって発生する熱エネルギーが表示部に与える影響は低減する。また、赤外線削減部に含まれる赤外線削減層は遅軸を有し、遅軸は直線偏波の振動方向に概ね平行である。したがって、遅軸が直線偏波の振動方向に概ね平行でない方式と比較して、直線偏波の可視光が赤外線削減部を透過した後に直線偏波の可視光を楕円偏波に変化させる比は低減する。その結果、乗り物の運転者などの目視確認者は、上記のように表示部から放射された可視光に含まれる表示情報を容易に認識することができ、表示情報の目視確認は維持される。
【0007】
別の方式による表示装置では、「概ね平行」という用語は、遅軸と直線偏波の振動方向とによって形成された角度が0度より大きく10度より小さいことを意味し得る。
【0008】
該表示装置によれば、表示部からの可視光が赤外線削減部を透過した後に、可視光の直線偏波を楕円偏波に変化させる比は更に低減する。赤外線削減部を通過する可視光中で楕円偏波が占める比は更に低減し、したがって、反射部によって反射された可視光を認識する目視確認者は、表示部から放射された可視光の表示情報によって同様の表示情報を認識することができる。
【0009】
別の方式による表示装置では、赤外線削減部に対する直線偏波の入射角は、0度より大きくてもよく90度より小さくてもよい。
【0010】
該表示装置によれば、表示部からの可視光の光路に対する赤外線削減部の配向を調整することが容易であり、このため、太陽光などの外部光の一部は、赤外線削減部によって反射された後に、運転者などの目視確認者の目に向かって進行しない。
【0011】
別の方式による表示装置では、赤外線削減部は、紫外線の透過率を低減する紫外線削減層を更に含んでもよく、赤外線削減層及び紫外線削減層の両方は、可視光領域で透過性を有する。
【0012】
該表示装置によれば、赤外線削減部は紫外線削減層を更に含み、したがって、表示部が太陽光などに含まれる紫外線で照射されることを防止する。また、赤外線削減層及び紫外線削減層の両方は、可視光領域で透過性を有し、したがって、赤外線削減部を通過する可視光に含まれる表示情報の輝度は維持される。
【0013】
別の方式による表示装置では、透過性は、可視光領域で60%を超える透過率を有してもよい。
【0014】
該表示装置によれば、赤外線削減部を通過する可視光に含まれる表示情報の輝度はより維持される。
【0015】
別の方式による表示装置では、赤外線削減部はハードコーティングを含んでもよい。
【0016】
該表示装置によれば、赤外線削減部はハードコーティングを含んでもよく、したがって、赤外線削減部の機械的強度が増大する。また、かき傷などに対する耐性が増大する。
【0017】
別の方式による表示装置では、紫外線削減層は接着剤層であってもよい。
【0018】
該表示装置の紫外線削減層は接着剤層であってもよく、したがって、紫外線削減層は、紫外線削減層の接着性により、例えば、赤外線削減層に積層され得る。
【0019】
別の方式による表示装置では、表示装置は窓部を更に備えてもよく、窓部は、乗り物の計器盤に設けられた開口部上に組み付けられており、可視光の光路上で表示部と反射部との間に配設されており、赤外線削減部は、窓部と反射部との間に設けられている。
【0020】
該表示装置によれば、赤外線削減部は窓部上に設けられており、窓部を保護することができる。窓部は、小さい機械的強度を有する樹脂などの材料からなることができる。
【0021】
別の方式による表示装置では、表示装置は窓部を更に備えてもよく、窓部は、乗り物の計器盤に設けられた開口部上に組み付けられており、可視光の光路上で表示部と反射部との間に配設されており、赤外線削減部は、表示部と窓部との間に設けられている。
【0022】
該表示装置によれば、赤外線削減部及び表示部は計器盤内に配設されており、例えばガラスなどの窓材によって保護され得る。
【発明の効果】
【0023】
本開示の一態様によれば、表示情報の目視確認を維持することに基づいて、表示部への赤外線の入射量を低減することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の実施態様による表示装置の一例を示す図である。
【
図3A】ローラー状に巻かれた延伸ポリマーフィルムを概略的に示す外観図である。
【
図3B】
図3Aの延伸ポリマーフィルムを概略的に示す上面図である。
【
図4A】延伸ポリマーフィルムを中央領域で切り出すことによって形成された赤外線削減フィルムの上面図である。
【
図4B】延伸ポリマーフィルムを周辺領域で切り出すことによって形成された赤外線削減フィルムの上面図である。
【
図5】本開示の一実施態様による赤外線削減部の断面図である。
【
図6A】赤外線削減部に入射する可視光の振動方向の配向を示す例示図である。
【
図6B】可視光の振動方向と赤外線削減部の遅軸との関係を示す拡大図である。
【
図7A】赤外線削減層が、可視光が垂直に入射するように構成されている状態を示す例示図である。
【
図7B】赤外線削減層が、可視光が垂直に入射するのではなく特定の入射角で入射するように構成されている状態を示す例示図である。
【
図8A】赤外線削減部を通過する直線偏波の可視光の偏波状態を判定する測定システムを示す概略図である。
【
図8B】赤外線削減部を通過する直線偏波の可視光の偏波状態を判定する測定システムを示す概略図である。
【
図9A】実施形態1における、赤外線削減フィルムの遅軸と可視光の振動方向との関係を示す拡大図である。
【
図9B】比較例1における、赤外線削減フィルムの遅軸と可視光の振動方向との関係を示す拡大図である。
【
図9C】比較例2における、赤外線削減フィルムの遅軸と可視光の振動方向との関係を示す拡大図である。
【0025】
符号の説明
1 表示装置
10 表示部
20 赤外線削減部
22 赤外線削減層
24 紫外線削減層
25 ハードコーティング
30 反射部
40 乗り物
42 計器盤
44 開口部
46 窓部
SA1 遅軸
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の一実施態様による表示装置は、表示情報を有する直線偏波の可視光を放射する表示部と、表示部からの可視光を透過し表示部への赤外線の入射量を低減する赤外線削減部と、赤外線削減部を透過した可視光を反射する反射部とを備え、赤外線削減部は赤外線削減層を含み、赤外線削減層は遅軸を有し、遅軸は直線偏波の振動方向に概ね平行である。
【0027】
表示装置の赤外線削減部は、表示部からの可視光を透過しつつ、表示部への赤外線の入射量を低減する。その結果、可視光に含まれる表示情報の輝度は維持されつつ、例えば、太陽光中の赤外線によって発生する熱エネルギーが表示部に与える影響は低減する。また、赤外線削減部に含まれる赤外線削減層は遅軸を有し、遅軸は直線偏波の振動方向に概ね平行である。したがって、遅軸が直線偏波の振動方向に概ね平行でない方式と比較して、直線偏波の可視光が赤外線削減部を透過した後に直線偏波の可視光を楕円偏波に変化させる比は低減する。その結果、乗り物の運転者などの目視確認者は、上記のように表示部から放射された可視光に含まれる表示情報を容易に認識することができ、表示情報の目視確認は維持される。
【0028】
本明細書において「表示情報」という用語は、目視確認により特定の意味を理解又は認識するために使用され得る情報を広く含むことに留意されたい。例えば、車載用表示装置の場合、地図、交通標識、及び他のナビゲーション情報が広く含まれる。上記の「表示部への赤外線の入射量を低減する」とは、赤外線を吸収又は反射することによって、表示部への赤外線の入射量を低減することを意味する。更に、上記の「屈折率異方性」とは、ポリマーフィルムなどの2次元媒体において、屈折率が2次元平面の各方向に応じて変化すること、すなわち屈折率が面内異方性を有することを意味する。また、「MD方向(Machine Direction)」とは、ポリマーフィルムが巻かれている方向(長手方向)を示し、「CD方向(Cross Machine Direction)」とは、長手方向に垂直な方向(横方向)を示す。
【0029】
以下、添付の図面を参照して、表示装置の実施態様について詳細に説明する。本明細書では、同一の参照符号が同一の要素に使用されており、繰り返しの説明は省略されている。この実施態様では、X軸、Y軸、及びZ軸が添付の図面に設定されているが、これらの軸のそれぞれは、説明の便宜のために設定されている。Z軸は、赤外線削減部の積層方向に設定されている。
【0030】
図1は、本開示の実施態様による表示装置の一例を示す図である。
図1は、本実施態様による表示装置1が乗り物用ヘッドアップディスプレイとして適用されている例を示す。表示装置1は、乗り物40内に、表示部10と、赤外線削減部20と、反射部30とを備える。表示装置1は、光源12を更に備えてもよい。光源12は、例えば、隠しランプ(hidden lamp)、ハロゲンランプ、発光ダイオード、又は冷陰極管を含む。光源12は可視光L1を生じさせる。
【0031】
表示部10は、例えば、液晶パネル、有機ELパネル、デジタルミラー装置、MEMSディスプレイ、及び、レーザディスプレイを含み、表示情報を有する。表示部10は、光源12から可視光L1を受光し、表示情報を有する直線偏波の可視光L2を赤外線削減部20に向けて放射する。表示部10が有機ELパネルを含む場合、表示部10と光源12とは一体化されてもよく、光源12と一体化された表示部10は、可視光L2を赤外線削減部20に向けて放射することができる。
図1は、表示部10と光源12とが一体化されている例を示す。
【0032】
本実施態様では、第1の光路変更部14及び第2の光路変更部16は、表示部10と赤外線削減部20との間に更に含まれてもよい。表示部10を通過する可視光L2の光路が第1の光路変更部14及び第2の光路変更部16によって順次に変更された後に、可視光L2は、赤外線削減部20に入射する。すなわち、可視光L2の光路が第1の光路変更部14によって第2の光路変更部16に向けて変更された後に、次いで、可視光L2の光路は、第2の光路変更部16によって赤外線削減部20に向けて変更される。第1の光路変更部14及び第2の光路変更部16の両方は、例えば、平面鏡又は凹面鏡などの鏡を含む。
【0033】
赤外線削減部20は、表示部10への赤外線の入射量を低減する。赤外線は、太陽光などに含まれる光である。また、赤外線削減部20は、表示部10からの可視光L2を透過し、透過した可視光L3を反射部30に向けて放射する。反射部30は、例えば、乗り物40のフロント風防ガラスを含み、赤外線削減部20を透過した可視光L3を、運転者などの目視確認者D1に向けて反射する。反射された可視光L4を受光すると、目視確認者D1は、乗り物40の前方の外側視野に加えて、フロント風防ガラスによって隔てられた位置SRにおける表示情報を目視確認することができる。
【0034】
上記のように、赤外線削減部20は、表示部10からの可視光L2を透過しつつ、表示部10への赤外線の入射量を低減する。その結果、可視光L2に含まれる表示情報の輝度が維持されつつ、例えば、太陽光中の赤外線によって発生する熱エネルギーが表示部10に与える影響は低減する。
【0035】
乗り物40は計器盤42を含み、開口部44は、計器盤42上に配設されてもよい。開口部44は、例えば計器盤42の上部42aに設けられている。表示装置1は、窓部46を更に備えてもよい。窓部46は、開口部44に組み付けられており、可視光L2の光路上で表示部10と反射部30との間に配設されている。
【0036】
【0037】
図2Aに示すように、第1の例では、赤外線削減部20は、窓部46と反射部30との間に設けられてもよい。具体的には、赤外線削減部20は、例えば窓部46上に設けられている。赤外線削減部20は、下面20aと、下面20aの反対側の上面20bとを有し、下面20aは、例えば窓部46上に位置する。
【0038】
第1の例では、表示部10からの可視光L2は、窓部46及び赤外線削減部20をこの順に透過し、可視光L3は赤外線削減部20から放射される。また、太陽光などの外部光SL1は赤外線削減部20に入射し、入射光SL1の一部は、赤外線削減部20の上面20bによって反射され、反射光SL2になる。
【0039】
第1の例における表示装置1の赤外線削減部20は、窓部46上に設けられており、したがって、窓部46を保護することができる。その結果、窓部46は、ガラスなどの機械的強度より低い機械的強度を有する樹脂などの材料を使用して形成され得る。例えば、これらの材料は、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、変性アクリル系ポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、及びアクリル樹脂などの合成樹脂などを含んでもよい。
【0040】
図2Bに示すように、第2の例では、赤外線削減部20はまた、表示部10と窓部46との間に設けられてもよい。換言すれば、赤外線削減部20は、窓部46の下の位置において、具体的には計器盤42内に配設されてもよい。その結果、赤外線削減部20は窓部46によって保護され得る。この場合、赤外線削減部20を保護するのに十分強い窓材によって窓部46を形成することが理想的であり、例えば、窓材は、ガラス、又は強化プラスチックなどを含んでもよい。
【0041】
第2の例では、表示部10からの可視光L2は、赤外線削減部20及び窓部46をこの順に透過して、可視光L3は窓部46から放射される。また、太陽光などの外部光SL1は窓部46に入射し、入射光SL1の一部は、窓部46の上面46bによって反射され、反射光SL2になる。
【0042】
第2の例の表示装置1によれば、赤外線削減部20及び表示部10は、計器盤42内に配設されており、窓材によって保護され得る。
【0043】
赤外線削減部20は、赤外線削減部20の下面20aなどの一方の表面からの可視光L2を透過し、上面20bなどの他方の表面から入射する赤外線SL1の量を低減する。赤外線削減部20は、赤外線削減層22を含む(
図4を参照されたい)。赤外線削減層22は、可視光領域で透過性を有してもよい。
【0044】
表示装置1によれば、赤外線削減層22は可視光領域で透過性を有し、したがって、赤外線削減部20を通過する可視光に含まれる表示情報の輝度は維持される。表示装置1では、透過性は、可視光領域で60%を超える透過率を有してもよい。表示装置1によれば、赤外線削減部20を通過する可視光に含まれる表示情報の輝度はなおも維持される。
【0045】
赤外線削減層22は、例えば、ローラー状に巻かれた延伸ポリマーフィルムから切り出された赤外線削減フィルムを含む。赤外線削減フィルムは、ポリマーフィルム、具体的には、赤外線の透過量を低減するポリエステルフィルムなどのフィルムから構成されてもよい。
【0046】
図3Aは、ローラー状に巻かれた延伸ポリマーフィルムを概略的に示す外観図である。
図3Bは、
図3Aの延伸ポリマーフィルムを概略的に示す上面図である。延伸ポリマーフィルム50はMD方向に巻かれており、延伸ポリマーフィルム50はまた、CD方向に配置された中央領域E1及び周辺領域E2を有する。中央領域E1は、CD方向で周辺領域E2間に位置する領域である。
【0047】
図4Aは、延伸ポリマーフィルムを中央領域で切り出すことによって形成された赤外線削減フィルムの上面図である。
図4Bは、延伸ポリマーフィルムを周辺領域で切り出すことによって形成された赤外線削減フィルムの上面図である。
【0048】
延伸ポリマーフィルム50は、ポリマーを構築する分子鎖の主鎖方向での屈折率と主鎖に直交する方向での屈折率とが互いに異なるという特徴を有する。また、延伸ポリマーフィルム50は、延伸ポリマーフィルム50の製造プロセスで延伸され、屈折率異方性を有する。
【0049】
延伸ポリマーフィルム50では、MD方向での屈折率とCD方向での屈折率とは互いに異なる。例えば、正の固有複屈折を有するポリマーフィルムがCD方向に延伸されたとき、CD方向での屈折率はMD方向での屈折率より大きくなる。また、
図3A及び
図3Bに示すように、延伸ポリマーフィルム50では、最大屈折率を有する方向を示す遅軸SA1はCD方向に直線状であるのではなく、湾曲している。
【0050】
図3A及び
図3Bに示すように、赤外線削減フィルムは、延伸ポリマーフィルム50を中央領域E1及び周辺領域E2から切り出すことによって形成され得る。本実施態様では、例えば、概ね矩形の2次元形状を有する赤外線削減フィルム60は、延伸ポリマーフィルム50の中央領域E1から切り出されてもよい。赤外線削減フィルム60は、長辺62と、長辺62に概ね垂直な短辺64とを有する。赤外線削減フィルム60は、赤外線削減フィルム60の長辺62が延伸ポリマーフィルム50のCD方向に概ね平行であるように切られてもよい。切られた赤外線フィルム60では、例えば、遅軸SA1の中央部の接線方向が第1の軸Ax1として設定されている場合、第1の軸Ax1は、切られた赤外線フィルム60のCD方向に概ね平行であり、中央部を除く遅軸SA1の各部分の接線は、第1の軸Ax1と交差する角度(配向角度)AL1を有する。
【0051】
本実施態様では、例えば概ね矩形の2次元形状を有する赤外線削減フィルム70は、延伸ポリマーフィルム50の周辺領域E2から切り出されてもよい。赤外線削減フィルム70は、長辺72と、長辺72に概ね垂直な短辺74とを有する。赤外線削減フィルム70は、赤外線削減フィルム70の長辺62が遅軸SA1に概ね平行であるように切り出されてもよい。赤外線削減フィルム70では、例えば、遅軸SA1の中央部と交差し第1の軸Ax1に概ね平行である方向が第2の軸Ax2として設定されている場合、遅軸SA1と第2の軸Ax2との交点の接線は、第2の軸Ax2と交差する角度(配向角度)AL2を有する。
【0052】
本実施態様では、配向角度AL2は配向角度AL1より大きく、配向角度は、配向角度がCD方向で中央部から端部に向かうにつれて大きくなる。
【0053】
次いで、
図4Aを参照して、赤外線削減フィルム60の遅軸SA1について説明する。赤外線削減フィルム60は、延伸ポリマーフィルム50を中央領域E1から切り出すことによって形成される。赤外線削減フィルム60の長辺62の方向は、第1の軸Ax1に沿う方向、すなわち、赤外線削減フィルム60の遅軸SA1に概ね平行である。
【0054】
赤外線削減フィルム60の遅軸SA1の配向角度AL1は、赤外線削減フィルム60の平面における、第1の軸Ax1に対する遅軸SA1のずれの大きさを示す。赤外線削減フィルム60の平面では、配向角度AL1が小さい場合、遅軸SA1は第1の軸Ax1に概ね平行であると考えられ得る。概ね平行であると考えられるためには、例えば、配向角度AL1は、好ましくは0度~10度の範囲である。ここで、0度の配向角度AL1は、遅軸SA1が第1の軸Ax1に平行であることを意味し、「概ね平行」はまた、「平行」を含む。
【0055】
例えば、配向角度AL1は、より好ましくは0度~5度の範囲である。配向角度AL1を当該範囲に設定することによって、赤外線削減フィルム60の遅軸SA1は、第1の軸Ax1により平行であることができる。
【0056】
矩形であることに加えて、赤外線削減フィルム60の2次元形状は、例えば、正方形若しくは菱形などの四角形形状、又は円形、又は楕円であってもよい。
【0057】
次いで、
図4Bを参照して、赤外線削減フィルム70の遅軸SA1について説明する。赤外線削減フィルム70は、延伸ポリマーフィルム50を周辺領域E2から切り出すことによって形成される。遅軸SA1の中央部の接線方向が第3の軸Ax3に設定されている場合、赤外線削減フィルム70の長辺72の方向は、第3の軸Ax3に沿う方向、すなわち、赤外線削減フィルム70の遅軸SA1に概ね平行であることが示されている。
【0058】
赤外線削減フィルム70では、中央部を除く遅軸SA1の各部の接線は、第3の軸Ax3と交差する角度(配向角度)AL3を有し、配向角度AL3は、赤外線削減フィルム70の平面における、第3の軸Ax3に対する遅軸SA1のずれの大きさを示す。赤外線削減フィルム70の平面では、配向角度AL3が小さい場合、遅軸SA1は第3の軸Ax3に概ね平行であると考えられ得る。概ね平行であると考えられるためには、例えば、配向角度AL3は、好ましくは0度~10度の範囲である。
【0059】
例えば、配向角度AL3は、より好ましくは0度~5度の範囲である。配向角度AL3を当該範囲に設定することによって、赤外線削減フィルム70の遅軸SA1は、第3の軸Ax3により平行であることができる。
【0060】
赤外線削減フィルム70の2次元形状は、赤外線削減フィルム60の2次元形状と同じである。矩形であることに加えて、赤外線削減フィルム70の2次元形状はまた、例えば、正方形若しくは菱形四角形形状、又は円形、又は楕円であってもよい。
【0061】
次いで、
図5を参照して、赤外線削減部20の構造及び材料について更に詳細に説明する。
図5は、本開示の一実施態様による赤外線削減部の断面図である。赤外線削減部20は、基材21と、赤外線削減層22とを含む。基材21は上面21aと下面21bとを有し、赤外線削減層22は、例えば、基材21の上面21a上、又は、上面21aの上に設けられている。赤外線削減層22は、赤外線削減フィルム60を含む。
【0062】
基材21は、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、脂環式オレフィンポリマー、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの鎖状オレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、変性アクリル系ポリマー、エポキシ樹脂、ポリスチレン、及びアクリル樹脂などの合成樹脂を含む。基材21の厚さは、例えば、10μm~5000μmである。
【0063】
赤外線削減層22に含まれる赤外線削減フィルム60として、赤外線吸収材を含有する単層ポリマーフィルム又は多層ポリマーフィルムが使用され得る。単層ポリマーフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン系樹脂、及びポリイミド樹脂を含んでもよい。単層ポリマーフィルムの厚さは、例えば10μm~1000μmである。
【0064】
多層ポリマーフィルムは、複数のポリマーフィルムが積層されている多層光学フィルム(MOF)であってもよく、各層の厚さが調整されている多層構造は、赤外線を反射するために使用される。各層の厚さは、例えば、100nm~1000nmである。
【0065】
赤外線削減フィルム60のポリマーフィルムは、例えば、ポリマー、及び結晶性、半結晶性、又は液晶のコポリマーを含む。
【0066】
赤外線削減フィルム60としてのポリマーフィルムに含まれる材料は、例えば、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)(具体的には、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル)及びその異性体(例えば、2,6-、1,4-、1,5-、2,7-、及び2,3-PEN)、ポリブチレンナフタレート、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリイミド(例えば、ポリアクリルイミド)、ポリエーテルイミド、アタクチックポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート(例えば、ポリイソブチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、及びポリメチルメタクリレート)、ポリアクリレート(例えば、ポリブチルアクリレート及びポリメチルアクリレート)、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)、シンジオタクチックポリ-α-メチルスチレン、シンジオタクチックポリジクロロスチレン、これらのポリスチレンのうちのいずれかから形成されたコポリマー及び混合物、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、及びニトロセルロース)、ポリアルキリデンポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、及びポリ(4-メチル)ペンテン)、フッ素化ポリマー(例えば、ペルフルオロアルコキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー、ポリビニリデンフルオリド、及びポリクロロトリフルオロエチレン)、塩素化ポリマー(例えば、ポリビニリデンクロリド及びポリビニルクロリド)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアセテート、ポリエーテルアミド、アイオノマー樹脂、エラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、及びネオプレン)、並びにポリウレタンを含んでもよい。
【0067】
赤外線削減フィルム60としてのポリマーフィルムに含まれる他の材料は、例えば、coPEN、すなわち、PENのコポリマー(例えば、2,6-、1,4-、1,5-、2,7-及び/又は2,3-ナフタレンジカルボン酸又はこれらのエステルと、(a)テレフタル酸又はそのエステル、(b)イソフタル酸又はそのエステル、(c)フタル酸又はそのエステル、(d)アルカンジオール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、及び/又は(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマー、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマー(例えば、テレフタル酸又はそのエステルと、(a)ナフタレンジカルボン酸又はそのエステル、(b)イソフタル酸又はそのエステル、(c)フタル酸又はそのエステル、(d)アルカンジオール、(e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボン酸、及び/又は(g)シクロアルカンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)とのコポリマー、スチレンのコポリマー(例えば、スチレン-ブタジエンコポリマー及びスチレン-アクリロニトリルコポリマー)、及び4,4’-ジ安息香酸とエチレングリコールとのコポリマーを含んでもよい。
【0068】
赤外線削減フィルム60のポリマーフィルムはそれぞれ、上記のポリマー又はコポリマーのうちの2つ以上の混合物、例えば、sPSとアタクチックポリスチレンとの混合物を含有してもよい。また、coPENは粒子の混合物であってもよく、粒子の混合物において、少なくとも1つの成分は、ナフタレンジカルボン酸を基材として使用するポリマーであり、他の成分は、PET、PEN、又はcoPENなどの他のポリエステル又はポリカーボネートであってもよい。
【0069】
PENは、赤外線削減フィルム60のポリマーフィルムに含まれる材料として好ましく、約155℃~約230℃で熱的に安定である。PENに加えて、好ましい材料は、例えば、ポリブチレンナフタレー、及び他の結晶性ナフタレンジカルボン酸ポリエステルを含んでもよい。
【0070】
赤外線削減フィルム60のポリマーフィルムでは、ポリマーフィルムの屈折率が実質的に変化しない範囲で、少量のコモノマーが置換されてナフタレンジカルボン酸ポリエステルにすることができる。好ましいモノマーは、イソフタル酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ジ安息香酸、テレフタル酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、又はシクロヘキサンジカルボン酸に基づく物質を含んでもよい。少量のコモノマーが置換されてナフタレンジカルボン酸ポリエステルにするとき、屈折率が低減することがあることに留意されたい。しかしながら、屈折率が低減した場合でも、これは、ポリマー層への接着、フィルム製造中の押出温度の低減、溶融粘度の整合の最適化、及びフィルム製造中のフィルム延伸のためのガラス転移温度の整合の最適化のうちのいずれかによって補償され得る。
【0071】
多層ポリマーフィルムの厚さ、可撓性、及び経済的効率の理由で、多層ポリマーフィルムに含まれる層の数は、所望の光学特性が最小の数の層によって実施されるように選択される。層の数は、好ましくは約10000未満、より好ましくは約5000未満、更に好ましくは約2000未満である。
【0072】
赤外線削減フィルム60については、赤外線削減フィルム60の製造プロセスにおいて、赤外線削減フィルム60は、単層ポリマーフィルム及び多層ポリマーフィルムのそれぞれのフィルムに含まれるポリマー材料を同時に押し出すことによって形成され得る。フィルムの製造プロセスにおいて、次いで、フィルムは、指定の温度で延伸することによって配向プロセスに供されて、所望の厚さを有するフィルムを形成する。所望により、熱硬化プロセスが特定の温度で行われてもよい場合がある。押出プロセスと配向プロセスとは、同時に行われ得る。
【0073】
また、ポリマーフィルムを積層する方法として、フィルムのそれぞれは、接着剤を使用して固定的に積層され得る。具体的には、例えば、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、湿気硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、及び嫌気型接着剤などが使用され得る。接着剤の種類は、各ポリマーフィルムの材料などに応じて適宜決定され得る。例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系の接着剤が使用され得、高い透明性を有する接着剤が使用され得る。これらの接着剤は、各ポリマーフィルムの表面に直接コーティングされてもよく、又は、接着テープの層若しくは接着剤から作製されたシートなどが、ポリマーフィルムの表面の全体若しくは一部に接着されてもよい。また、ポリマーフィルムを積層する方法として、各ポリマーフィルムの端部を少なくとも部分的に取り囲むことができるフレームが調製されてもよく、複数のポリマーフィルムは、フレームを使用して重ね合わされ固定的に配置されてもよい。
【0074】
図5に示すように、赤外線削減部20は、所望により、赤外線低減層23を更に含む。赤外線低減層23は、反射と吸収とのうちの少なくとも1つによって赤外線の透過量を低減する。赤外線削減層22は上面22a及び下面22bを有し、赤外線低減層23は、例えば赤外線削減層22の上面22a上に設けられている。赤外線削減層22は、赤外線低減層23と基材21との間に位置してもよい。赤外線削減部20において、赤外線低減層23は、所望により、例えば赤外線削減層22の下面22b上に設けられてもよい。赤外線低減層23はまた、所望により、例えば赤外線削減層22の上面22a及び下面22bの両方上に設けられてもよい。構成にかかわらず、赤外線低減層23は、赤外線の透過量を低減することができる。
【0075】
赤外線低減層23は、例えば、金属、金属合金、又は酸化物半導体を含み、1μm以上の波長を有する近赤外領域及び赤外線領域での光を主に反射する。例えば、金属は、銀、金、銅、又はアルミニウムを含んでもよい。銀は、薄膜形状に容易に形成され得、近赤外領域及び赤外線領域での光を容易に反射することができるため、特に好ましい金属である。金属合金は、銀合金、ステンレス鋼、又はinconelを含む。金属合金のうちでも、少なくとも30重量%の銀を含有する銀合金は、薄膜を製造することが容易であり、近赤外領域及び赤外線領域での光を反射することが容易であるため、特に好ましい材料である。銀、50質量%未満の金、及び/又は20質量%未満の銅を含有する銀合金はまた、耐久性に優れ、したがって、好ましい材料である。例えば、酸化物半導体は、好ましくは、二酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)、又は酸化アンチモンスズ(ATO)を含む。金属、金属合金、又は酸化物半導体は、単一の層に形成されてもよく、又は複数の層に形成されてもよい。
【0076】
赤外線低減層23は、例えば、熱分解、粉体塗装、蒸着、陰極スパッタリング、又はイオンプレーティングなどによって形成され、金属、酸化物半導体、又は金属合金は、ポリマーフィルム上に形成される。一様なフィルム構造及び厚さを得るという観点から、陰極スパッタリング及びイオンプレーティングが、好ましい製造方法である。赤外線低減層23は、接着剤を使用して多層ポリマーフィルムにラミネートされた別の金属化ポリマー又はガラスシートであってもよい。接着剤は、例えば、ホットメルト接着剤又は感圧接着剤を含む。ホットメルト接着剤は、例えば、Shell Chemicals Company(Ohio,USA)製のVITEL 3300接着剤であり、感圧接着剤は、例えば、3M Company(Minnesota,USA)製の90/10 IOA/AA及び95/5 IOA/アクリルアミドのアクリル系接着剤である。
【0077】
金属及び金属合金は、約10nm~約40nmの厚さにコーティングされてもよく、好ましくは約12nm~約30nmの厚さにコーティングされる。酸化物半導体層は、約20nm~約200nmの厚さにコーティングされてもよく、好ましくは約80nm~約120nmの厚さにコーティングされる。赤外線低減層23が多層ポリマーフィルム上にラミネートされた金属化ポリマー又はガラスシートであるとき、シート上の金属又は金属合金のコーティング厚さは、例えば、約10nm~約40nmであり、シート上の酸化物半導体のコーティング厚さは、例えば、約20nm~約200nmである。
【0078】
本実施形態の赤外線削減部20は、赤外線低減層23を含んでもよく、したがって、表示部10への赤外線の入射量は更に低減し得る。一方で、赤外線削減部20は、表示情報を有する可視光を透過し、したがって、表示情報の輝度を維持する。
【0079】
図5に示すように、赤外線削減部20は、所望により、紫外線削減層24を更に含む。紫外線削減層24は、紫外線の透過量を低減する。紫外線削減層24は、例えば、赤外線削減層22の下面22bの下に設けられており、赤外線低減層23と基材21との間に位置してもよい。赤外線削減部20において、紫外線削減層24は、例えば、赤外線削減層22の上面21a上に設けられてもよい。紫外線削減層24は、例えば、所望により、赤外線削減層22の上面22a及び下面22bの両方上に設けられてもよい。構成にかかわらず、紫外線削減層24は、紫外線の透過量を低減することができる。
【0080】
紫外線削減層24は、可視光領域で透過性を有してもよい。表示装置1によれば、赤外線削減部20は、紫外線削減層24を更に含み、したがって、表示部10が太陽光などに含まれる紫外線で照射されることを防止する。また、紫外線削減層は可視光領域で透過性を有し、したがって、赤外線削減部20を通過する可視光に含まれる表示情報の輝度は維持される。表示装置1では、透過性は、可視光領域で60%を超える透過率を有してもよい。表示装置1によれば、赤外線削減部20を通過する可視光に含まれる表示情報の輝度はなおも維持される。
【0081】
表示装置1では、紫外線削減層24は接着剤層であってもよい。表示装置1によれば、紫外線削減層は接着剤層であってもよく、したがって、紫外線は効果的に削減され得、紫外線削減層24は、例えば、紫外線削減層24の接着性により、例えば赤外線削減層22に積層され得る。
【0082】
接着剤層は、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、又はベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含む。例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤は、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホンベンゾフェノン、又はビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニルメタン)を含んでもよい。例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤は、サリチル酸フェニル、サリチル酸p-tert-ブチルフェニル、及びサリチル酸p-オクチルフェニルを含んでもよい。例えば、シアノアクリレート系紫外線吸収剤は、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート及びエチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレートを含んでもよい。例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミノフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、又は2,2-メチレンビス{4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールを含んでもよい。これらの紫外線吸収剤のうちでも、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が、好ましくは使用される。
【0083】
これらの紫外線吸収剤は、例えば、アクリル系接着剤100質量部に対して、0.5質量部~30質量部の範囲の量で含有される。紫外線吸収剤の含有量は0.5質量部以上であり、それにより、紫外線の透過を抑制する効果は改善され得る。紫外線吸収剤の含有量は30質量部以下であり、それにより、紫外線吸収剤は、アクリル系接着剤中に一様に分散することができ、可視光領域での透明性は更に改善され得る。これらの紫外線吸収剤は、より好ましくは、例えば、アクリル系接着剤100質量部に対して、1質量部~10質量部の範囲の量で含有される。
【0084】
接着剤層の厚さは、例えば、1μm~500μm、好ましくは5μm~50μmの範囲である。当該範囲の厚さを有することにより、接着剤層は、必要とされる接着力をより確実に得ることができ、コストの増大を抑制することができる。
【0085】
図5に示すように、赤外線削減部20は、所望により、ハードコーティング25を更に含む。赤外線低減層23はハードコート機能を含んでもよい。ハードコーティング25は、例えば、基材21の下面21bの下に設けられている。ハードコーティング25は、例えば、所望により、赤外線低減層23の上面23a上に設けられてもよい。ハードコーティング25は、所望により、例えば、赤外線低減層23の上面23aの上と、基材21の下面21bの下との両方に設けられてもよい。ハードコーティング25は、赤外線削減部20の最上層及び最下層のうちの少なくとも1つの層を構築することができる。構成にかかわらず、ハードコーティング25は、赤外線削減部20を保護することができる。また、ハードコーティング25は、赤外線削減部20の機械的強度を増大させることができる。
【0086】
ハードコーティング25は、例えば、結合剤、及び結合剤中に分散したナノ粒子を含む。結合剤は、例えば、メタクリルオリゴマー及び/又はモノマーであり、結合剤の含有量は、例えば、5質量%~60質量%である。結合剤中のナノ粒子の含有量は、例えば、40質量%~95質量%である。結合剤中のナノ粒子のうちでも、10質量%~50質量%のナノ粒子(第1のナノ粒子)は、例えば、2nm~200nmの粒径を有する。また、50質量%~90質量%のナノ粒子(第2のナノ粒子)は、例えば、60nm~400nmの粒径を有する。ナノ粒子の粒径と第1のナノ粒子の粒径との比は、2~200である。
【0087】
ハードコーティング25は、ワイヤーバー法、ノッチバー法、及びスクリーン印刷法などの計量コーティング方法(measuring coating method)によって形成され得る。
【0088】
表示装置1によれば、赤外線削減部20は、ハードコーティング25を含んでもよく、したがって、赤外線削減部20の機械的強度が増大し、かき傷などに対する耐性が増大する。
【0089】
次いで、
図6を参照して、本実施態様の表示装置1の赤外線削減部20と、赤外線削減部20に入射する直線偏波の可視光L2との関係について説明する。
図6Aは、赤外線削減部20に入射する可視光L2の振動方向PL1の配向を示す例示図である。また、
図6Bは、可視光L2の振動方向PL1と赤外線削減部20の遅軸SA1との関係を示す拡大図である。
【0090】
赤外線削減部20は、赤外線削減フィルム60からなる赤外線削減層22を含み、赤外線削減層22は遅軸SA1を有する。可視光L2は、表示部10からの表示情報を有する直線偏波であり、可視光L2の直線偏波は、振動方向PL1を有する。赤外線削減部20に入射する可視光L2の振動方向PL1は、遅軸SA1と、ある角度、すなわち、角度TH1を形成する。
【0091】
可視光L2の振動方向PL1が遅軸SA1に概ね平行であると言えない場合、例えば、角度TH1が約45度である場合、可視光L2の直線偏波の振動方向PL1が変化することを可能にする。これは、赤外線削減フィルム60において、赤外線削減フィルム60中に含有されるポリマーの1次元分子構造に起因して、遅軸SA1に沿う方向での屈折率が、遅軸SA1に垂直な方向での屈折率と著しく異なるためである。直線偏波の可視光L2は、遅軸SA1の方向での屈折率及び遅軸SA1に垂直な方向での屈折率の両方を経験する。これら2つの異なる屈折率に起因して、複屈折が、赤外線削減フィルム60を含む赤外線削減部20において起こる。その結果、直線偏波の可視光L2が赤外線削減部20を透過したとき、可視光L2の直線偏波は楕円偏波に変化する場合がある。
【0092】
これに対して、可視光L2の振動方向PL1が遅軸SA1に概ね平行である場合、すなわち、角度TH1が0度である又は0度に近い場合、可視光L2の直線偏波の振動方向PL1が変化することを可能にせず、直線偏波は維持され得る。これは、直線偏波の可視光L2が、概ね遅軸SA1に沿う方向での屈折率のみを経験するためである。角度TH1が概ね90度である又は90度に近い場合、すなわち、概ね垂直である場合にも、可視光L2の直線偏波の振動方向PL1が変化することを可能にしないことに留意されたい。これは、直線偏波の可視光L2が、遅軸SA1に概ね垂直な方向での屈折率のみを経験し得るためである。
【0093】
ここで、例えば、振動方向PL1と共軸の回転中心線RT1が中心軸とされて赤外線削減部20を回転させ、このため、赤外線削減部20に対する可視光L2の入射角が変化すると想定される。この場合、赤外線削減部20の遅軸SA1が可視光L2の直線偏波の振動方向に概ね平行である場合、可視光L2の直線偏波は維持され得る。これは、入射角が変化した場合でも、可視光L2の直線偏波が、赤外線削減部20中のポリマーの1次元軸方向での、すなわち遅軸SA1に沿う概ね同じ屈折率を経験し続けるためである。
【0094】
更に補足すれば、可視光L2の直線偏波の振動方向PL1が赤外線削減部20の遅軸SA1に概ね垂直であるとき、赤外線削減部20に対する可視光L2の入射角が変化した場合、可視光L2の直線偏波は維持されない。これは、入射角が変化した場合、赤外線削減部20中のポリマーの1次元軸方向が可視光L2の振動方向PL1と異なるように変化するためである。したがって、可視光L2の直線偏波は、ポリマーの1次元分子構造に起因して旋光を発生させる。
【0095】
次いで、
図7を参照して、可視光L2が赤外線削減部20に入射したときの入射角、及びその影響について説明する。
図7Aは、赤外線削減部20が、可視光L2の入射角NA1が0度であるように、すなわち光が垂直に入射するように構成されている方式を示例示図である。また、
図7Bは、赤外線削減部20が、可視光L2の入射角NA1が0度より大きく90度より小さいように構成されている方式、すなわち、赤外線削減部20が可視光L2に対して斜めに構成されている方式を示す例示図である。次いで、
図7Aでは、参照の方法が想定されており、
図7Bでは、本実施態様が想定されている。
【0096】
表示部10からの可視光L2は赤外線削減部20に入射し、入射した可視光L2の一部は赤外線削減部20を透過して可視光L3になる。また、太陽光などの外部光SL1は赤外線削減部20に入射し、入射光SL1の一部は赤外線削減部20によって反射され、反射光SL2になる。
図7A及び
図7Bにおいて、外部光SL1と可視光L2とは同じ光路タイミングにあると想定されていることに留意されたい。
【0097】
図7Aに示すように、可視光L2が赤外線削減部20に垂直に入射した場合、太陽光などの反射光SL2、すなわち、赤外線削減部20によって反射された外部光SL1によって生じた反射光SL2は、赤外線削減部20を透過した可視光L3の光路と概ね同じ光路を有する。その結果、外部光SL1の反射光SL2は、可視光L3と共に、運転者などの目視確認者D1の目に向かって進行する。
【0098】
一方、
図7Bに示すように、本実施態様による赤外線削減部20は、可視光L2に対して斜めに構成されており、太陽光などの反射光SL3は、赤外線削減部20を透過した可視光L3の光路と異なる光路を有する。すなわち、本実施態様の表示装置1によれば、可視光L2の光路に対する赤外線削減部20の配向を調整することが容易であり、このため、外部光SL1の一部は、赤外線削減部20によって反射された後に、運転者などの目視確認者D1の目に向かって進行しない。
【0099】
上記のように、本実施態様の表示装置1によれば、赤外線削減部20に含まれる赤外線削減層22は遅軸SA1を有し、遅軸SA1は、直線偏波の振動方向PL1に概ね平行である。したがって、遅軸SA1が直線偏波の振動方向PL1に概ね平行でない方式と比較して、直線偏波の可視光L2が赤外線削減部20を透過した後に直線偏波の可視光L2を楕円偏波に変化させる比は低減する。その結果、乗り物の運転者などの目視確認者D1は、上記のように表示部10から放射された可視光L2に含まれる表示情報を容易に認識することができ、表示情報の目視確認は維持される。
【0100】
本実施態様では、可視光L2の直線偏波の振動方向PL1に概ね平行である遅軸SA1は、遅軸SA1と直線偏波の振動方向PL1とによって形成された角度TH1が0度~10度の範囲であると定義され得る。補足として、「概ね平行」という概念はまた、角度TH1が0度である、すなわち平行であることを含み、また、例えば0度~5度の範囲の角度TH1で実質的に平行であることを含む。
【0101】
表示装置1によれば、表示部10からの可視光が、赤外線削減層22を含む赤外線削減部20を透過した後に、可視光L2の直線偏波を楕円偏波に変化させる比は更に低減する。その結果、反射部30によって反射された可視光L2を認識する目視確認者は、表示部から放射された可視光の表示情報によって同様の表示情報を認識することができる。
【0102】
本実施態様では、遅軸SA1と直線偏波の振動方向PL1とによって形成された角度TH1が0度~10度の範囲であるとき、例えば、概ね矩形の2次元形状を有する赤外線削減フィルム60については、矩形の一辺としての最大の長さが50cmまでであることを可能し得る。
【0103】
実施形態
以下、本開示の実施形態及び比較例により、表示装置1について更に説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0104】
実施形態1
多層赤外線削減フィルムの製造
ポリエステルフィルムを含む多層延伸ポリマーフィルムが調製され、多層延伸ポリマーフィルム(3M Japan Corporation製の3M(商標)scotchtint(商標)window film multi-layer NANO80S)についての遅軸の方向が測定される。位相差測定装置KOBRA(Oji Scientific Instruments Co., Ltd.製)が、遅軸の方向の測定において使用される。遅軸の方向の測定結果に基づいて、多層赤外線削減フィルムは、多層延伸ポリマーフィルムの中央領域から切り出される。多層赤外線削減フィルムの2次元形状は、長辺と、長辺に概ね垂直な短辺とを有する。多層赤外線削減フィルムの長辺は、多層延伸ポリマーフィルムのCD方向、すなわち、第1軸の方向に概ね平行である。本実施態様では、長辺の長さは110mmに設定されており、短辺の長さは100mmに設定されている。また、遅軸の方向と切られたフィルムの長辺の方向とによって形成された角度は3.1度以下である。
【0105】
赤外線削減部の製造
本実施態様では、接着機能を有する紫外線削減層と、赤外線削減層と、ハードコート機能を有する赤外線低減層とを順次に含む赤外線削減部が製造される。ハードコーティングについては、3次元架橋アクリル系樹脂が使用され、紫外線削減層を介して窓部分に接着される。窓部については、面内等方性を有するポリカーボネートが使用される。窓部の厚さは0.2mmに設定されている。紫外線削減層については、アクリル系感圧接着テープ(PSA)が使用される。赤外線削減層については、多層赤外線削減フィルムが使用される。多層赤外線削減フィルムの厚さは50μmに設定されている。赤外線低減層は、アンチモン酸化スズ(antimony tin oxide、ATO)粉末から作製される。赤外線低減層の厚さは2μmに設定されている。
【0106】
偏波状態の測定
図8A及び
図8Bは、赤外線削減部を通過する直線偏波の可視光の偏波状態を判定する測定システムを示す概略図である。
図8A及び
図8Bの測定システムでは、直線偏波を放射する白色液晶ディスプレイが表示部10pとして使用されており、フロート板ガラスFGが反射部30pとして使用されている。ディスプレイ部分10pからの可視光L2pは、表示情報を含む。フロート板ガラスFGは、可視光領域で概ね透明であり、フロート板ガラスFGの厚さは約5mmである。反射部30pに対する可視光L2pの入射角AGpは約45度である。
図8A及び
図8Bに示す構成では、運転者に相当する位置において、計測者D1pは、反射部30pの表側の目視検査によって反射部30pを観察することができる。
【0107】
本実施形態では、直線偏波の可視光L2pは、表示部10pから赤外線削減部20pに向かって放射される。放射された可視光L2pの偏波方向は、概ね赤外線削減部20pの長辺に沿い、赤外線削減部20pの遅軸は、可視光L2pの直線偏波の振動方向に概ね平行であるように設定されている。具体的には、赤外線削減部20pの遅軸と可視光L2pの直線偏波の振動方向とによって形成された角度TH1pは、赤外線削減部20p全体の平均で0度である。
【0108】
図8Aは、可視光が赤外線削減部20pに垂直に入射する測定システムを示す図であり、
図8Bは、可視光が赤外線削減部20pに入射角NA1pで入射する測定システムを示す図である。本実施形態では、偏波状態は、
図8Aの測定システム及び
図8Bの測定システムの両方を使用して測定される。
図8Bの測定システムにおいて、入射角NA1pは17度に設定されている。
図8Aの測定システムは、測定システムにおける可視光L2pの入射角NA1pが0度であるときの
図7Bの測定システムに対応する。
【0109】
本実施形態では、
図8A及び
図8Bに示す測定システムは、赤外線削減部20pを通過する直線偏波の可視光L4pの偏波状態を観察するために使用される。フロート板ガラスFGによって反射された可視光L4pが、着色の度合いが確認されない表示情報を含むことが計測者D1pによって観察されたとき、これは「A(良好)」として評価される。可視光L4が、玉虫色に変化する虹色のパターンなどの着色された表示情報を含むことが計測者D1pによって観察されたとき、これは「B(不良)」として評価される。
【0110】
図9Aは、本実施形態における、赤外線削減フィルム60pの遅軸SA1pと可視光L2の振動方向PL1pとの関係を示す拡大図である。本実施形態による赤外線削減フィルム60pは、延伸ポリマーフィルムの中央領域から切り出され、赤外線削減フィルム60pの長辺62pは、延伸ポリマーフィルム50のCD方向に概ね平行である。本実施形態では、遅軸SA1pの方向と入射可視光L2の振動方向PL1pとによって形成された角度TH1pの平均値は0度である。
【0111】
比較例1
多層赤外線削減フィルムの製造
この比較例では、多層延伸ポリマーフィルムが、実施形態1と同じようにして調製され、多層延伸ポリマーフィルムは、多層延伸ポリマーフィルムの中央領域から切り出される。この比較例の多層赤外線削減フィルムの2次元形状は、長辺と、長辺に概ね垂直な短辺とを有する。多層赤外線削減フィルムの長辺は、多層延伸ポリマーフィルムのMD方向に概ね平行であるように設定されている。
【0112】
偏波状態の測定
この比較例では、赤外線削減部20pを通過する直線偏波の可視光L4pの偏波状態が、実施形態1と同じようにして観察される。この比較例では、直線偏波の可視光L2pは、表示部10pから赤外線削減部20pに向かって放射される。放射された可視光L2pの偏波方向は、赤外線削減部20pの長辺に概ね平行であり、赤外線削減部20pの遅軸は、可視光L2pの直線偏波の振動方向に概ね垂直であるように設定されている。具体的には、赤外線削減部20pの遅軸と可視光L2pの直線偏波の振動方向とによって形成された角度は、赤外線削減部20p全体の平均で90度である。
【0113】
図9Bは、この比較例における、赤外線削減フィルム60qの遅軸SA1qと可視光L2の振動方向PL1qとの関係を示す拡大図である。この比較例では、遅軸SA1qの方向と入射可視光L2の振動方向PL1qとによって形成された角度TH1qの平均値は90度である。
【0114】
比較例2
赤外線削減フィルムの製造
ポリエステルフィルムを含む多層延伸ポリマーフィルムが調製される。この比較例では、赤外線削減フィルムは、多層延伸ポリマーフィルムの周辺領域から切り出され、赤外線削減フィルムの2次元形状は、長辺と、長辺に概ね垂直な短辺とを有する概ね矩形であるように設定されている。この比較例では、長辺の長さは110mmに設定されており、短辺の長さは100mmに設定されている。
【0115】
この比較例では、赤外線削減フィルムは、長辺がMD方向であるように切られる。この比較例の赤外線削減フィルムの短辺は、CD方向、すなわち第1の軸の方向に概ね平行である。切られたフィルムの遅軸の方向と長辺の方向とによって形成された角度は70度である。
【0116】
赤外線削減部の製造
この比較例で製造された多層赤外線削減フィルムを使用することに加えて、赤外線削減部が、実施形態1と同じようにして製造される。多層赤外線削減フィルムの厚さは50μmに設定されている。
【0117】
偏波状態の測定
この比較例では、赤外線削減部20pを通過する直線偏波の可視光L4pの偏波状態が、実施形態1と同じようにして観察される。
【0118】
この比較例では、直線偏波の可視光L2pは、表示部10pから赤外線削減部20pに向かって放射される。放射された可視光L2pの偏波方向は、赤外線削減部20pの長辺に概ね平行である。赤外線削減部20pの遅軸と可視光L2pの直線偏波の振動方向とによって形成された角度は、赤外線削減部20p全体の平均で70度である。
【0119】
図9Cは、この比較例における、赤外線削減フィルム70rの遅軸SA1rと可視光L2の振動方向PL1rとの関係を示す拡大図である。この比較例では、遅軸SA1rの方向と入射可視光L2の振動方向PL1rとによって形成された角度TH1rの平均値は70度である。
【0120】
表1は、実施形態1、比較例1、及び比較例2の赤外線削減層、遅軸の方向、及び偏波状態の測定結果をまとめた表である。表1の実施形態1及び比較例1では、「延伸フィルム」は、赤外線削減部が、延伸ポリマーフィルムから作製された赤外線削減層を含むことを示す。表1の比較例2では、「延伸フィルム/非延伸フィルム」は、比較例2の赤外線削減部が、ラミネート体上の比較例2の赤外線削減部の調製体を実施形態1の赤外線削減部の上に重ね合わすことによって形成された赤外線削減層を含むことを示す。表1において、「形成された角度(平均)」は、赤外線削減部の遅軸と可視光の直線偏波の振動方向とによって形成された角度の平均を示す。表1において、「垂直に入射」は、
図8Aの測定システムを使用する偏波状態の測定結果を示し、「斜めに入射」は、
図8Bの測定システムを使用する偏波状態の測定結果を示す。
【表1】
以下に例示的な実施形態を挙げる。
[項目1]
表示情報を有する直線偏波の可視光を放射する表示部と、
前記表示部からの前記可視光を透過し前記表示部への赤外線の入射量を低減する赤外線削減部と、
前記赤外線削減部を透過した前記可視光を反射する反射部とを備え、
前記赤外線削減部が赤外線削減層を含み、
前記赤外線削減層が遅軸を有し、
前記遅軸が前記直線偏波の振動方向に概ね平行である
ことを特徴とする表示装置。
[項目2]
「概ね平行」という用語は、前記遅軸と前記直線偏波の前記振動方向とによって形成された角度が0度より大きく10度より小さいことを意味する、
項目1に記載の表示装置。
[項目3]
前記赤外線削減部に対する前記直線偏波の入射角が、0度より大きく90度より小さい、
項目1に記載の表示装置。
[項目4]
前記赤外線削減部が、紫外線の透過率を低減する紫外線削減層を更に含み、
前記赤外線削減層及び前記紫外線削減層の両方が、可視光領域で透過性を有する、
項目1に記載の表示装置。
[項目5]
前記透過性が、前記可視光領域で60%を超える透過率を有する、
項目4に記載の表示装置。
[項目6]
前記赤外線削減部がハードコーティングを含む、
項目4に記載の表示装置。
[項目7]
前記紫外線削減層が接着剤層である、
項目4に記載の表示装置。
[項目8]
前記表示装置が窓部を更に備え、前記窓部が、乗り物の計器盤に設けられた開口部上に組み付けられており、前記可視光の光路上で前記表示部と前記反射部との間に配設されており、
前記赤外線削減部が、前記窓部と前記反射部との間に設けられている、
項目1~7のいずれか一項に記載の表示装置。
[項目9]
前記表示装置が窓部を更に備え、前記窓部が、乗り物の計器盤に設けられた開口部上に組み付けられており、前記可視光の光路上で前記表示部と前記反射部との間に配設されており、
前記赤外線削減部が、前記表示部と前記窓部との間に設けられている、
項目1~7のいずれか一項に記載の表示装置。