(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 153/02 20060101AFI20240808BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240808BHJP
C09J 5/06 20060101ALI20240808BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240808BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/08
C09J5/06
B32B27/30 B
A61F13/51
(21)【出願番号】P 2022129935
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2016209655の分割
【原出願日】2016-10-26
【審査請求日】2022-09-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智穂
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-169531(JP,A)
【文献】特開2012-207127(JP,A)
【文献】特開平08-060121(JP,A)
【文献】特開2016-029131(JP,A)
【文献】特開2005-248176(JP,A)
【文献】特表2009-511713(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111669(WO,A1)
【文献】特開平06-107745(JP,A)
【文献】特開昭60-203646(JP,A)
【文献】特開2012-012437(JP,A)
【文献】特開2017-186487(JP,A)
【文献】特開2016-204665(JP,A)
【文献】特開平06-145611(JP,A)
【文献】特開2008-297441(JP,A)
【文献】特開2014-214185(JP,A)
【文献】米国特許第05089558(US,A)
【文献】国際公開第2015/111675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 153/02
C09J 11/08
C09J 5/06
B32B 27/30
A61F 13/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体を有するホットメルト接着剤であって、
(A)熱可塑性ブロック共重合体は、(A1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物及び(A2)スチレンブタジエンブロック共重合体の未水素添加物のみからなり、
(B)α-メチルスチレン系樹脂を、(A)および(B)の総重量100重量部に対し5重量部以上の量で含まず、
(C)粘着付与樹脂を、(A)および(B)の総重量100重量部に対し、150~190重量部の量で含み、
ガラス転移温度が-10~13℃である、
吸収性物品の位置決めに用いられる、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
(A1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物は、スチレン含有率が10~60重量%である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(A)熱可塑性ブロック共重合体の総重量100重量部に対し、(A1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物が15~50重量部含まれる、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤が塗布された吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。本発明は、特に、生理用ナプキン等の吸収性物品をパンティー等の衣服に固定するために好適なホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品とは、例えば、経血、おりもの、尿及び汗等の体から発生する体液を吸収させるために、例えば下着やシャツ等の衣類に固定して用いる物品であって、体液が衣類に付着すること等によって生ずる不快感及び非衛生性を防止するために使用される物品をいう。吸収性物品として、例えば、生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙おむつ、ペットシート、病院用ガウン及び手術用白衣等が知られている。従って、そのような吸収性物品を、上述の衣類に固定して、その位置がずれないようにするための位置決め用接着剤も開発されている。
【0003】
多くの吸収性物品は、一般に肌に当接する透湿性トップシートと、下着に当接する不透液性バックシートの間に吸収体を有する。位置決め用接着剤は、一般に、剥離基材に塗工された後に、バックシートに転写される。転写された位置決め用接着剤を下着に接触させることで、吸収性物品が下着に保持されることになる。
【0004】
位置決め接着剤の性能が不十分であると、吸収性物品が下着に保持されずに、体液が衣類に付着することがある。従って、近年では、位置決め用接着剤の更なる性能改良が求められている。
【0005】
例えば、特許文献1は、位置決め用接着剤として、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等の水素添加型ブロック共重合体を用いたホットメルト接着剤を開示する(特許請求の範囲等参照)。しかし、特許文献1のホットメルト接着剤は、保持力に不十分な面があり、吸収性物品が被着物からずれることがある。吸収性物品のずれを完全に防止するために、比較的多量のホットメルト接着剤が使用される。
【0006】
特許文献2のホットメルト接着剤は、未水素添加型熱可塑性ブロック共重合体およびα-メチルスチレン系樹脂を含み、生理用ナプキン等の吸収性物品を下着に固定する用途に適している([請求項1][0001][表1]~[表3])。同文献のホットメルト接着剤は、糊残り発生を防止できるが、保持力に不十分な面があり、稀ではあるが、ナプキンが被着物から僅かにずれてしまうこともあった。
【0007】
特許文献1及び2のホットメルト接着剤は保持力、例えば、低温(-10~10℃程度)環境下における剥離強度、に改善の余地がある。
【0008】
近年では、吸収性物品の臭気低減のため、リモネン等の香料が吸収体に塗布されていることがある。香料は揮発性を有するため、バックシートに塗布されたホットメルト接着剤内部に浸透し、ホットメルト接着剤の粘着(タック)を低下させる。ホットメルト接着剤の粘着(タック)が低下すると、ホットメルト接着剤が柔らかくなりすぎ、被着物から吸収性物品を剥がす際に、被着物に糊が残り易くなる。
【0009】
特許文献2では、被着物に対する粘着を改善するために、α-メチルスチレン系樹脂をホットメルト接着剤に配合するが、α-メチルスチレン系樹脂は揮発性成分を含み、その臭気が不快に感じられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-297441号公報
【文献】特開2012-12437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、保持力及び耐香料性に優れ、糊残り及び不快臭が少ないホットメルト接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明および本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
【0013】
1. (A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体を有するホットメルト接着剤であって、
(A)熱可塑性ブロック共重合体は、(A1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物と(A2)スチレンブタジエンブロック共重合体の未水素添加物とを含むものであり、
(B)α-メチルスチレン系樹脂を、(A)および(B)の総重量100重量部に対し5重量部以上の量で有しない、ホットメルト接着剤。
【0014】
2. (A1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物は、スチレン含有率が10~60重量%である、1に記載のホットメルト接着剤。
【0015】
3. (A)熱可塑性ブロック共重合体の総重量100重量部に対し、(A1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物が5~50重量部含まれる、1または2に記載のホットメルト接着剤。
【0016】
4. さらに、(B)α-メチルスチレン系樹脂を有し、(B)の量は(A)および(B)の総重量100重量部に対し4.5重量部以下である、1~3のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0017】
5. さらに、(C)粘着付与樹脂を有し、(C)粘着付与樹脂が未水添添樹脂を含む、1~4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0018】
6. 吸収性物品の位置決めに用いられる、1~5のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【0019】
7. 1~6のいずれかに記載のホットメルト接着剤が塗布された吸収性物品。
【発明の効果】
【0020】
本発明のホットメルト接着剤は、下着等の衣類に生理用ナプキン等の吸収性物品をずらさず保持でき、かつ、かかる吸収性物品を衣類から剥がす際に、衣類に接着剤が残らず、更に、臭気がなく、リモネン等の香料で性能が低下することがない。
【0021】
従って、本願のホットメルト接着剤は、生理用ナプキン等の吸収性物品の性能及び有用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】リモネン蒸気が存在する50℃の環境に3日間静置したホットメルト接着剤成形体の平面図である。形状が全く崩れておらず、耐香料性が◎である旨を示す。
【
図2】リモネン蒸気が存在する50℃の環境に3日間静置したホットメルト接着剤成形体の平面図である。形状が殆ど崩れておらず、耐香料性が○である旨を示す。
【
図3】リモネン蒸気が存在する50℃の環境に3日間静置したホットメルト接着剤成形体の平面図である。形状が崩れており、耐香料性が×である旨を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のホットメルト接着剤は、(A)熱可塑性ブロック共重合体を有するものである。
【0024】
本発明において、「(A)熱可塑性ブロック共重合体」とは、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とがブロック共重合した共重合体であって、通常、ビニル系芳香族炭化水素ブロックと共役ジエン化合物ブロックを有して成るものを含む樹脂組成物である。
【0025】
ここで、「ビニル系芳香族炭化水素」とは、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物を意味し、具体的には、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、及びビニルアントラセン等を例示できる。特にスチレンが好ましい。これらのビニル系芳香族炭化水素は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0026】
「共役ジエン化合物」とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物を意味する。「共役ジエン化合物」として、具体的には、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(又はイソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンを例示することができる。1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエンが特に好ましい。これらの共役ジエン化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0027】
本発明の(A)熱可塑性ブロック共重合体は、(A1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物と、(A2)スチレンブタジエンブロック共重合体の未水素添加物とを含んでいる。
【0028】
(A1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物とは、共役ジエン化合物に基づくブロックが水素添加されていないトリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体、具体的には、スチレン-イソプレン-スチレン重合体(以下、「SIS」とする)である。
【0029】
(A2)スチレンブタジエンブロック共重合体の未水素添加物とは、共役ジエン化合物に基づくブロックが水素添加されていないスチレンブタジエンブロック共重合体であり、トリブロック型ブロック共重合体であっても、それ以外のもの(ラジアル型ブロック共重合体、リニア型ブロック共重合体)であっても良い。
【0030】
本明細書では、(A)熱可塑性ブロック共重合体が水素添加されているか否かは、「水素添加率」で示される。水素添加率が0%であれば、(A)熱可塑性ブロック共重合体は未水素添加物である。
【0031】
(A)熱可塑性ブロック共重合体の「水素添加率」とは、共役ジエン化合物に基づくブロックに含まれる全脂肪族二重結合を基準とし、その中で、水素添加されて飽和炭化水素結合に転換された二重結合の割合をいう。この「水素添加率」は、赤外分光光度計及び核磁器共鳴装置等によって測定することができる。
【0032】
本明細書において、トリブロック型スチレンブロック共重合体とは、下記式(1)で示されるブロックを有し、それ以外のブロックを含まないスチレンブロック共重合体をいう。これは、後述するリニア型スチレンブロック共重合体とは明確に区別される。
【0033】
[化1]
S-E-S (1)
[式中、Sはスチレンブロック、Eは共役ジエンブロックである。]
【0034】
リニア型スチレンブロック共重合体とは、下記式(1)で示されるブロックと下記式(2)で示されるブロックの双方を有するスチレンブロック共重合体をいう。
【0035】
[化2]
S-E (2)
[式中、S及びEは上記と同意義である。]
【0036】
式(2)のスチレン共役ジエンブロック共重合体は「ジブロック」と呼ばれることがある。スチレンブロック共重合体に含まれる式(2)のスチレン共役ジエン化合物ブロック共重合体の割合を「ジブロック含有率」という。
【0037】
つまり、トリブロック型スチレンブロック共重合体は、ジブロック含有率が0重量%となり、ジブロック含有率によって、リニア型スチレンブロック共重合体と明確に区別されている。
【0038】
本明細書において、(A1)SISは式(1)のE(共役ジエンブロック)がイソプレンブロックであり、(A2)は式(1)および式(2)の双方の構造を有し、E(共役ジエンブロック)がブタジエンブロックである。
【0039】
本発明のホットメルト接着剤は、(A1)SISを含むことによって、凝集力が向上して保持力に優れ、耐香料性にも優れ、生理用ナプキンに用いられた場合、糊残りの発生を低下させることができる。
【0040】
(A1)SISは、スチレン含有率が10~60重量%であるのが好ましく、15~45重量%であるのがさらに好ましく、25~45重量%であるのが特に好ましい。(A1)のスチレン含有率が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト接着剤の耐香料性がより向上する。
【0041】
本発明では、(A1)SISは、(A)熱可塑性ブロック共重合体100重量部に対し、15~50重量部含まれるのが好ましい。
【0042】
(A1)SISが上記割合で含まれることによって、本発明のホットメルト接着剤は、優れた保持力を維持しつつ、糊残り発生をも抑制し、なおかつ、耐香料性や塗工性にも優れたものとなり、生理用ナプキン等の位置決めホットメルト接着剤として特に好適なものとなる。
【0043】
(A1)SISの市販品としては、Dexco社製のVector4411A(商品名)、Vector4211A(商品名)、Vector4211N(商品名)、Vector4114N(商品名)、クレイトン社製のKraton D1162PT等が挙げられる。
【0044】
本発明のホットメルト接着剤は、(A2)スチレンブタジエンブロック共重合体の未水素添加物を有することによって、凝集力が向上して保持力に優れたものとなる。
【0045】
(A2)スチレンブタジエンブロック共重合体の未水素添加物は、トリブロック型であっても、リニア型やラジアル型であっても差し支えない。
【0046】
ラジアル型スチレンブロック共重合体の具体的な構造を式(3)に示す。
【0047】
[化3]
(S-B)nY (3)
【0048】
式(3)中、nは2以上の整数、Sはスチレンブロック、Bはブタジエンブロック、Yはカップリング剤である。nは好ましくは3又は4であり、特に3であることが好ましい。nが3の上記共重合体を3分岐型といい、nが4の上記共重合体を4分岐型という。
【0049】
カップリング剤はリニア型スチレンブロック共重合体を放射状に結合させる多官能性化合物である。カップリング剤の種類は特に限定されない。
【0050】
カップリング剤の一例としては、ハロゲン化シラン、アルコキシシランなどのシラン化合物、ハロゲン化錫などの錫化合物、ポリカルボン酸エステル、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのアクリルエステル、エポキシシラン、ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物などが挙げられる。具体例としては、トリクロロシラン、トリブロモシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロ錫、ジエチルアジペートなどが挙げられる。
【0051】
(A2)スチレンブタジエンブロック共重合体の未水素添加物としては、JSR社製のJSR TR2000(商品名)、JSR TR2003、旭化成ケミカルズ社製のアサプレンT420(商品名)、アサプレンT438、アサプレンT439(商品名)等が市販されている。
【0052】
本発明において、(A)熱可塑性ブロック共重合体は、(A1)や(A2)に該当しない(A3)その他のスチレンブロック共重合体を含んでいても差支えない。(A3)その他スチレンブロック共重合体として、「リニア型スチレンイソプレンブロック共重合体」、「ラジアル型スチレンイソプレンブロック共重合体」、「水素添加型スチレンブロック共重合体」が挙げられる。
【0053】
リニア型スチレンイソプレンブロック共重合体の市販品としては、日本ゼオン社製のクインタック3270(商品名)、クインタック3421(商品名)、クインタック3433N(商品名)、クインタック3520(商品名)等が挙げられる。
【0054】
ラジアル型スチレンイソプレンブロック共重合体としては、日本ゼオン社製のクインタック3460(商品名)、クインタック3450(商品名)等が挙げられる。
【0055】
水素添加型スチレンブロック共重合体とは、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とをブロック共重合し、得られたブロック共重合体における共役ジエン化合物に基づくブロックの全部、若しくは一部が水素添加されたブロック共重合体をいう。
【0056】
水素添加型スチレン系トリブロック共重合体の具体例として、SEPSトリブロック共重合体、SEBSトリブロック共重合体、SEEPSトリブロック共重合体、SEEBSトリブロック共重合体が挙げられる。
【0057】
SEPSトリブロック共重合体とは、スチレンポリマーブロックの末端ブロックと、エチレン構造とプロピレン構造とが混在した中央ブロックとで構成されたブロック共重合体、即ち、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体である。
【0058】
SEBSトリブロック共重合体とは、スチレンポリマーブロックの末端ブロックと、エチレン構造とブチレン構造とが混在した中央ブロックとで構成されたブロック共重合体、即ち、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体である。
【0059】
SEEPSとは、スチレン末端ブロックと、水素化イソプレン/ブタジエンの中央ブロックとのブロック共重合体である。
【0060】
SEPSの市販品としては、クラレ社製のセプトン2006,2007、2063,2104、4033及び4044(商品名)が挙げられる。
【0061】
SEEPSの市販品として、クラレ社製のセプトン4099、4077及び4055(商品名)が挙げられる。
【0062】
SEBSの市販品としては、クレイトンポリマー社製のクレイトンG1657、G1650、G1654及びG1651(商品名)、クラレ社製のセプトン8007、8076、8104が挙げられる。
【0063】
本発明のホットメルト接着剤には、(A)熱可塑性ブロック共重合体に(B)α-メチルスチレン系樹脂を配合してもよい。但し、好ましい一形態において(B)α-メチルスチレン系樹脂は、(A)と(B)との総重量100重量部に対し、5重量部5重量部又はそれ以上の量で配合されない。(B)α-メチルスチレン系樹脂の配合量は、4.5重量部以下であることが好ましく、特に4重量部以下であることが最も望ましい。
【0064】
(B)α-メチルスチレン系樹脂の配合量が上記範囲にあることによって、本発明のホットメルト接着剤は、耐香料性に優れ、揮発性物質の臭気発生が抑えられる。
【0065】
(B)α-メチルスチレン系樹脂は、α-メチルスチレン重合体又はスチレン-α-メチルスチレン共重合体が用いられる。本発明の態様として、(B)α-メチルスチレン系樹脂は、スチレン-α-メチルスチレン共重合体がより好ましく、特に軟化点85~120℃(JIS K2207に規定する環球法で測定)のものがより好ましい。具体的には、イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、クリスタレックス3100(商品名)、クリスタレックス1120(商品名)、クリスタレックス5140(商品名)、三井化学社製のFTR-2120(商品名)等の市販品を例示できる。
【0066】
尚、本明細書では、α-メチルスチレン系樹脂は、後述する(C)粘着付与樹脂に含まれないこととする。
【0067】
本発明のホットメルト接着剤は、(C)粘着付与樹脂および(D)可塑剤を有するのが好ましい。粘着付与樹脂は、ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。
【0068】
本発明では、(C)粘着付与樹脂の添加量は、(A)と(B)との総重量100重量部に対し、10~250重郎部であるのが好ましい。
【0069】
(C)粘着付与樹脂の添加量が上記範囲であることによって、本発明のホットメルト接着剤は、(B)α-メチルスチレン系樹脂の添加量を小さくすることが可能となるので臭気が低くなり、さらに、耐香料性も向上する。
【0070】
(C)粘着付与樹脂として、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。これらの粘着付与樹脂は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色~淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。これらの特性を総合的に考慮すると、粘着付与樹脂として、未水添粘着付与樹脂が好ましい。
【0071】
(C)粘着付与樹脂として、市販品を用いることができる。そのような市販品として例えば、トーネックス社製のECR179EX(商品名);丸善石油化学社製のマルカクリヤーH(商品名);荒川化学社製のアルコンM100(商品名);出光興産社製のアイマーブS100(商品名);ヤスハラケミカル社製のクリアロンK100(商品名)、クリアロンK4090(商品名)及びクリアロンK4100;トーネックス社製のECR179EX(商品名)およびECR231C(商品名)、イーストマンケミカル社製のリガライトC6100L(商品名)およびリガライトC8010(商品名);三井化学社製のFTR2140(商品名)および日本ゼオン社製のクイントンDX390N(商品名)、クイントンDX395(商品名)を例示することができる。これらの市販の粘着付与樹脂は、単独で又は組み合わせて使用することが可能である。
【0072】
本発明では、未水添粘着付与樹脂を用いると、糊残りが少なく、保持力に優れたホットメルト接着剤が得られる。未水添粘着付与樹脂としては、クイントンDX390N(商品名)、クイントンDX395(商品名)を使用すると、糊残りと保持力のバランスに優れたホットメルト接着剤が得られる。
【0073】
本発明では、成分(A)および(B)の総重量100重量部に対し、(C)粘着付与樹脂の添加量が10~200重量部であることが好ましく、特に130~200重量部であることが望ましく、150~190重量部であることがさらに望ましく、170~190重量部であることが最も望ましい。(C)粘着付与樹脂の配合量が上記範囲であることによって、本発明のホットメルト接着剤は、タックが付与され、糊残りの発生を防止することができる。
【0074】
(D)可塑剤は、ホットメルト接着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、ブロック共重合体に相溶し、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。(D)粘着付与樹脂として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを挙げることができる。無色、無臭であるパラフィン系オイルが特に好ましい。
【0075】
(D)可塑剤としては、市販品を用いることができる。例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、DNオイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エッソ社製のPrimol352(商品名)、出光興産社製のプロセスオイルNS100、ペトロチャイナカンパニー社製のKN4010(商品名)、サン石油社製のサンピュアーN90を例示することができる。これらの(D)可塑剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0076】
本発明のホットメルト接着剤は、さらに、(E)安定化剤を含んでいても良い。「安定化剤」とは、ホットメルト接着剤の熱による分子量低下、ゲル化、着色、臭気の発生等を防止して、ホットメルト接着剤の安定性を向上するために配合されるものであり、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に制限されるものではない。「安定化剤」として、例えば酸化防止剤及び紫外線吸収剤を例示することができる。
【0077】
「紫外線吸収剤」は、ホットメルト接着剤の耐光性を改善するために使用される。「酸化防止剤」は、ホットメルト接着剤の酸化劣化を防止するために使用される。酸化防止剤及び紫外線吸収剤は、一般的に使い捨て製品に使用されるものであって、後述する目的とする使い捨て製品を得ることができるものであれば使用することができ、特に制限されるものではない。
【0078】
酸化防止剤として、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。紫外線吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤を例示できる。更に、ラクトン系安定剤を添加することもできる。これらは単独又は組み合わせて使用することができる。
【0079】
(E)安定化剤剤として、市販品を使用することができる。例えば、住友化学工業(株)製のスミライザーGM(商品名)、スミライザーTPD(商品名)及びスミライザーTPS(商品名)、チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名)、イルガノックスHP2225FF(商品名)、イルガフォス168(商品名)及びイルガノックス1520(商品名)、城北化学社製のJF77(商品名)を例示することができる。これらは、単独で又は組み合わせて使用することができる。安定化剤は、一般的に使い捨て製品に使用されるものであって、後述する目的とする使い捨て製品を得ることができるものであれば使用することができ、特に制限されるものではない。
【0080】
本発明に係るホットメルト接着剤は、必要に応じて、微粒子充填剤等の上記以外の添加剤を含んでいても良い。
【0081】
本発明のホットメルト接着剤は、上記成分を所定の割合で配合し、必要に応じて更に種々の添加剤を配合し、加熱して溶融し混合することで製造される。具体的には、上記成分を攪拌機付きの溶融混合釜に投入し、加熱混合することによって製造される。
【0082】
得られたホットメルト接着剤は、160℃での溶融粘度が5,000mPa・s以下であることが好ましく、2,000~5,000mPa・sであることが特に好ましく、3,000~4,500mPa・sであるのが最も好ましい。
【0083】
本明細書において、「溶融粘度」とは、ホットメルト接着剤の溶融体の粘度をいう。ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.27)で測定される。
【0084】
本発明に係るホットメルト接着剤は、160℃での溶融粘度が5,000mPa・s以下と低いため、塗工性能が優れている。
【0085】
本発明のホットメルト接着剤は、液状または半液状で供給されることが可能である。ホットメルト接着剤を保温容器に液状または半液状に保管しておき、そのまま供給できるので、ホットメルト接着剤は環境的にも非常に好ましい。即ち、ホットメルト接着剤を製造する際、廃材の発生を減少することができ、消費電力も節約できる。
【0086】
更に、本発明に係るホットメルト接着剤は、実施例で記載する保持力の評価方法において、40℃における保持力が10分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、50分以上であることが特に好ましい。
【0087】
また、本発明に係るホットメルト接着剤は、実施例において記載する剥離強度の評価方法による剥離強度(10℃、20℃、40℃)が1200gf/inch(11.8N/3.05cm)以上であることが好ましく、1400gf/inch(13.7N/3.56cm)であることがより好ましい。
【0088】
本発明に係るホットメルト接着剤は、一般的に知られているホットメルト接着剤の製造方法を用いて、(A)及び(B)、更に必要に応じて各種添加剤を配合して製造することができる。例えば、上述の成分を所定量配合し、加熱溶融して製造することができる。目的とするホットメルト接着剤を得ることができる限り、各成分を加える順序、加熱方法等は、特に制限されるものではない。
【0089】
本発明では、動的粘弾性測定装置を用いて、各速度を10Rad/sに固定し、温度スィープモードにて、5℃/分の昇温速度で、-25℃~150℃でスキャンし、50℃のスキャン値を本発明の貯蔵弾性率G’を測定する。貯蔵弾性率G’は弾性に相当する特性値であるが、粘性に相当する特性値として損失弾性率G”が知られている。動的粘弾性装置でG’を測定すると、G”も同時に測定されるので、損失弾性率G”と貯蔵弾性率G’との比(G”/G’)で示される損失正接(tanδ)も同時に得ることができる。
【0090】
本発明に係るホットメルト接着剤は、ガラス転移温度(Tg)が15℃以下であることが好ましく、-10℃~13℃であることがより好ましく、0℃~10℃であることが最も望ましい。ホットメルト接着剤は、ガラス転移温度(Tg)が上記範囲内にあることで、硬くなりすぎず、寒冷地域でも吸収性物品を下着へしっかり保持できる。吸収性物品の使用環境温度と比べ、ホットメルト接着剤のTgが高いと、ホットメルト接着剤がガラス状態となり、吸収性物品をホットメルト接着剤で下着に保持し難くなる。寒冷地域での吸収性物品の使用を考慮すると、ホットメルト接着剤のTgは上記範囲が好ましい。
【0091】
本明細書においてガラス転移温度(Tg)とは、上述の動的粘弾性測定装置で周波数を10Rad/sに固定して行われる貯蔵弾性率G’の測定と同時に測定される損失正接(tanδ)を温度に対してプロットして、得られるピークの、ピークトップを示す温度をいう。
【0092】
バックシートがポリオレフィンフィルムである生理用ナプキンにホットメルト接着剤を塗工する場合、160℃での粘度が5000mPa・s以下なので、ホットメルト接着剤を直接、ポリオレフィンフィルムに容易に塗工することができる。160℃でホットメルト接着剤をフィルムへ容易に均一に塗工できるので、ホットメルト接着剤の劣化もなく、生理用ナプキンは下着にしっかり保持され、下着から剥がされる際、糊残りが下着に発生することもない。
【0093】
本発明に係るホットメルト接着剤は、紙加工、製本、使い捨て製品等、幅広く利用されるが、吸収性物品に特に有効に利用される。「吸収性物品」とは、いわゆる衛生材料であれば、特に限定されるものではない。具体的には生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙おむつ、ペットシート、病院用ガウン及び手術用白衣等を例示できる。
【0094】
吸収性物品は、織布、不織布、ゴム、樹脂、紙類、ポリオレフィンフィルムからなる群から選択される少なくとも一種の部材に本発明に係るホットメルト接着剤を塗工することで構成される。尚、ポリオレフィンフィルムは、耐久性及びコスト等の理由からポリエチレンフィルムが好ましい。
【0095】
本発明に係るホットメルト接着剤は、生理用ナプキンに好適である。一般的に生理用ナプキンは、例えば、トップシートとバックシートとの間に吸収体を有し、トップシートが肌に当接し、バックシートが下着等に当接する。本発明に係るホットメルト接着剤は、生理ナプキンの非肌当接面であるバックシートがポリオレフィンフィルムである場合、特に効果を発揮する。
【0096】
ホットメルト接着剤が塗工されたポリオレフィンと下着との剥離強度を強くすることによって、生理用ナプキンが下着からずれなくなる。本発明では、ポリオレフィンフィルムにホットメルト接着剤を直接塗工するか、離型フィルムに塗工されたホットメルト接着剤をポリオレフィンフィルムに転写することで、下着からのズレを防止するだけでなく、下着への糊残りの発生をも防止することが可能となる。
【0097】
吸収性物品の製造ラインでは、一般に使い捨て製品の各種部材(例えば、剥離紙、ティッシュ、コットン、不織布、ポリオレフィンフィルム等)にホットメルト接着剤を塗工する。塗工の際、ホットメルト接着剤を、種々の噴出機から噴出して使用してよい。
【0098】
ホットメルト接着剤を塗工する方法は、目的とする吸収性物品を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような塗工方法は、接触塗工、非接触塗工に大別される。「接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させる塗工方法をいい、「非接触塗工」とは、ホットメルト接着剤を塗工する際、噴出機を部材やフィルムに接触させない塗工方法をいう。接触塗工方法として、例えば、スロットコーター塗工及びロールコーター塗工等を例示でき、非接触塗工方法として、例えば、螺旋状に塗工できるスパイラル塗工、波状に塗工できるオメガ塗工やコントロールシーム塗工、面状に塗工できるスロットスプレー塗工やカーテンスプレー塗工、点状に塗工できるドット塗工などを例示できる。
【0099】
上記塗工方法でホットメルト接着剤を塗工し、吸収性物品を製造する。吸収性物品としては、例えば、生理用ナプキン、尿取りライナー、産褥ショーツ、母乳パッド、汗脇パッド、紙おむつ、ペットシート、病院用ガウン及び手術用白衣等を例示できる。本発明では、バックシートがポリオレフィンフィルムの生理用ナプキンが効果を最も発揮できる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を更に詳細に、かつ、より具体的に説明することを目的として、実施例を用いて本発明を説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら制限するものではない。但し、実施例8は参考例である。
【0101】
ホットメルト接着剤を配合するための成分を以下に示す。
【0102】
(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体
(A1-1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物(クレイトンポリマー社製のKraton D1162PT(商品名))
(A1-2)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物(DEXCO社製のVECTOR 4211N(商品名))
(A1-3)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物(DEXCO社製のVECTOR 4114N(商品名))
【0103】
(A2)スチレンブタジエンジブロック共重合体の未水素添加物(旭化成社製のアサプレンT438(商品名))
【0104】
(A3-1)リニア型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物(日本ゼオン社製のクインタック3520N(商品名))
(A3-2)リニア型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物((日本ゼオン社製のクインタック3433N(商品名))
【0105】
(B)α-メチルスチレン系樹脂
(B1)スチレン-α-メチルスチレン共重合体(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3100(商品名))
【0106】
(C)粘着付与樹脂
(C1)芳香族石油炭化樹脂の水素化誘導体(日本ゼオン社製のクイントン DX395(商品名))
(C2)環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素誘導体(エクソンモービル社製 Escorets HA103(商品名))
【0107】
(D)可塑剤
(D1)パラフィン系オイル(出光興産社製のダイアナフレシアS-32(商品名))
【0108】
(E)安定化剤
(E1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製のイルガノックス1010(商品名))
(E2)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ダブルボンドケミカル社製のチソーブP(商品名))
【0109】
表1~3に成分(A)~(E)の配合比を示す。万能攪拌機を用い、各成分を約140℃で2時間かけて溶融混合し、実施例1~13および比較例1~5のホットメルト接着剤を製造した。表1~3に示されるホットメルト接着剤の組成(配合)に関する数値は全て重量部である。
【0110】
実施例および比較例の各々のホットメルト接着剤について、ガラス転移温度を測定し、耐香料性、保持力、糊残り、臭気を評価した。以下、各評価の概要について説明する。
【0111】
<保持力(剥離強度)>
厚さ50μmのPETフィルムに各ホットメルト接着剤を塗工し、厚さ50μmの接着剤層をPETフィルム上に形成した後、これを25mm幅に成形して試験体とした。
【0112】
一方、JIS染色堅ろう度試験用(JIS L0803準拠)の絹を折り目方向に30×70mmに切り出し、貼り合わせ用基材とした。
【0113】
試験体と貼り合せ用基材を23℃の環境で30分以上養生した後、2kgローラーで貼り合せた。両者を貼り合せた後、速やかに万能型引っ張り試験機を用い、300mm/minの速度で180°剥離試験を行った。各ホットメルト接着剤について、少なくとも3個の試料を測定し、平均値を求めて剥離強度の値とした。
【0114】
剥離強度は以下の基準で評価した。
【0115】
◎・・・・・・550/25mmを超える
○・・・・・・400~550/25mm
△・・・・・・200~400/25mm
×・・・・・・200/25mm未満
【0116】
<糊残り>
剥離強度を測定した後、速やかに貼り合わせ基材の剥離面を指触により確認し、糊残りの有無を評価した。糊残りを顕著に判別できる基材が絹であったため、評価基材として絹を採用した。糊残りの評価基準について、以下に示す。
【0117】
◎・・・・・・糊残りなし
○・・・・・・僅かに糊残りあり
△・・・・・・やや糊残りあり
×・・・・・・明らかに糊残りあり
【0118】
<耐香料性>
【0119】
各ホットメルト接着剤を立方体形状(5mm×5mm×5mm)に成形し、試験体とした。試験体の1面をPETフィルムに貼り、密閉容器(体積710ml 金属管)の底に並べた。D-リモネン(ヤスハラケミカル株式会社)0.4mlをガラス瓶(15ml)に滴下し、試験体を密封容器の底に固定した後、速やかに蓋を閉め、50℃の環境下で3日間静置させた。また、ブランク(対照サンプル)としてD-リモネンを滴下せずに試験を実施し、同様に50℃の環境下で3日間静置させた。静置後、試験体の形状がどのようになっているか観察した。
【0120】
◎・・・・・・対照サンプルと差異なく、形状を維持している(
図1参照)。
○・・・・・・対照サンプルとやや差異があるが、形状を維持している(
図2参照、立方体の角がやや丸くなっている)。
×・・・・・・対照サンプルと差異があり、形状が崩れている(
図3参照、立方体の形状が崩れ、円形になっている)。
【0121】
<臭気>
ガラス瓶(70ml)に各ホットメルト接着剤を30g秤量し、乾燥機にて180℃で溶解、冷却させた。冷却後、サンプルを乾燥機にて40℃で30分養生し、試験体を作製した。試験体の臭気を被験者10人に評価させ、臭気レベルを人為的に数値化した。
【0122】
臭気レベルの数値は被験者の感覚に基づき、以下の評価基準を設定した。
【0123】
臭気レベル(官能評価)
1・・・・何も臭いを感じない
2・・・・わずかに臭いを感じる
3・・・・何の臭いか判断できる
4・・・・臭いを感じる
5・・・・強い臭いを感じる
【0124】
各ホットメルト接着剤について、被験者10人の臭気レベルの平均値を算出し、その平均値でホットメルト接着剤の臭気を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0125】
◎・・・・平均値が2.0未満
○・・・・平均値が2.0~3.0
△・・・・平均値が3.0~3.5
×・・・・平均値が3.5を超える
【0126】
<ガラス転移温度>
動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製のレオメータAR-G2(商品名))を用い、ガラス転移温度を測定した。ホットメルト接着剤を装置の治具にて加熱し、直径25mmφ、厚さ15,000μmの円盤状に成形した。
【0127】
ガラス転移温度の測定は、ステンレス製のパラレルプレートを用い、角速度10rad/sに固定し、温度スィープモードで速度5℃/分、-25℃~150℃の範囲で昇温して行った。
【0128】
軟化点以下の温度範囲で、損失弾性率(G”)と貯蔵弾性率(G’)の比で示される損失正接Tanδ(G”/G’)が測定される。その損失正接Tanδを温度に対してプロットして、得られたピークのピークトップを示す温度を読み取り、ホットメルト接着剤のガラス転移温度とした。
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
表1及び2に示されるように、実施例のホットメルト接着剤は、(A1)トリブロック型スチレンイソプレンブロック共重合体の未水素添加物および(A2)スチレンブタジエンブロック共重合体の未水素添加物の双方を含み、(B)α―メチルスチレン系樹脂を5重量部未満含んでいるので、臭気がなく、リモネン等の香料で性能が低下することがなく、剥離強度に優れ、且つ、糊残りが殆どない。
【0133】
これに対し、表3に示されるように、比較例のホットメルト接着剤は、成分(A1)、若しくは(A2)のいずれかを含まないか、成分(B)を5重量部以上含んでいるので、実施例のホットメルト接着剤よりも、各性能のいずれかが著しく劣っている。
【0134】
これらの結果から、成分(A1)および(A2)を含み、必要に応じて成分(B)を5重量部未満含むホットメルト接着剤は、臭気がなく、耐香料性および保持力に優れ、糊残りが少ないので、吸収性物品の位置決め用として特に有効であることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、ホットメルト接着剤、及びそのホットメルト接着剤が塗工された吸収性物品を提供できる。本発明に係る吸収性物品は、非肌当接面であるバックシートがポリオレフィンフィルムである生理用ナプキンとして特に有効である。