(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】モード混合光ファイバ、ならびにそれを用いた方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20240808BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20240808BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20240808BHJP
【FI】
G02B6/02 401
G02B6/02 411
G02B6/036
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2022168459
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2018527854の分割
【原出願日】2016-08-12
【審査請求日】2022-11-18
(32)【優先日】2015-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518049072
【氏名又は名称】ニューファーン
【氏名又は名称原語表記】Nufern
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】クレメンス・ジョリベット
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ファーリー
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスラフ・アブラムチク
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・コンロイ
(72)【発明者】
【氏名】カニシュカ・タンカラ
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-541271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0204190(US,A1)
【文献】国際公開第2012/165389(WO,A1)
【文献】FARLEY KEVIN et.al.,Optical fiber designs for beam shaping,PROCEEDINGS OF SPIE,米国,SPIE,2014年,Vol.8961,89612U-1 - 89612U-10
【文献】小西一昌 他,パワー伝送用矩形コアファイバの開発,SEIテクニカルレビュー,日本,住友電気工業株式会社,2010年07月,第177号,p.125-p.128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02- 6/036
G02B 6/44
H01S 3/00- 4/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長を有する光放射を送達するためのモード混合光ファイバであって、
前記モード混合光ファイバは、入力端、出力端
、中心線、及び屈折率プロファイルを有し、
前記モード混合光ファイバは、
波長を有する光放射のための
円形の最内コアであって、屈折率プロファイルと中心線とを有する最内コアと、
前記最内コアに配置されたクラッドとを備え、
前記最内コアの屈折率プロファイルは、前記モード混合光ファイバの長手方向に沿って螺旋状に形成され、前記最内コアは、前記最内コアの中心線に対して非対称に配置された環状ダウンドープ領域から構成され、
前記モード混合光ファイバは、前記波長において少なくとも7つのモードを有し、
前記モード混合光ファイバの屈折率プロファイルは、その入力端で入力された光の一部を
、前記モード混合光ファイバの低次モードから
、前記モード混合光ファイバの高次モードに分配するように構成される、
モード混合光ファイバ。
【請求項2】
前記モード混合光ファイバは、前記波長において少なくとも20個のモードを有する、
請求項1に記載のモード混合光ファイバ。
【請求項3】
前記環状ダウンドープ領域は、円環状である形状を有する、
請求項1又は2に記載のモード混合光ファイバ。
【請求項4】
前記環状ダウンドープ領域は、非円形の丸い環状または多角形環状である形状を有する、
請求項1~3のいずれかに記載のモード混合光ファイバ。
【請求項5】
前記環状ダウンドープ領域の屈折率は、前記最内コアの残部に対する相対開口値が0.01~0.15の範囲となる屈折率である、
請求項1~4のいずれかに記載のモード混合光ファイバ。
【請求項6】
前記環状ダウンドープ領域は、5~20ミクロンの範囲の内径と0.5~3ミクロンの範囲の環状厚さを有する、
請求項1~5のいずれかに記載のモード混合光ファイバ。
【請求項7】
前記最内コアの中心線に対して非対称に配置された1つの環状ダウンドープ領域は、前記最内コアの唯一のドープ領域である、
請求項1~6のいずれかに記載のモード混合光ファイバ。
【請求項8】
前記最内コアが50~2000ミクロンの範囲の直径を有する、
請求項1~7のいずれかに記載のモード混合光ファイバ。
【請求項9】
アップドープ領域またはダウンドープ領域を除く前記最内コアはアンドープシリカから形成され、
前記クラッドはフッ素ドープシリカから形成され、
前記環状ダウンドープ領域はフッ素ドープシリカから形成される、
請求項1~8のいずれかに記載のモード混合光ファイバ。
【請求項10】
前記最内コアの中心線が、前記モード混合光ファイバの前記中心線と非共線状に位置付けられている、請求項1~9のいずれかに記載のモード混合光ファイバ。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれかに記載のモード混合光ファイバと、
前記モード混合光ファイバの入力端に直接光学的に結合された出力端を有する第1の光ファイバとを備える光学システムであって、
前記第1の光ファイバは、波長を有する光放射を伝搬するように構成される、
光学システム。
【請求項12】
前記第1の光ファイバは、前記波長においてシングルモードである、
請求項
11に記載の光学システム。
【請求項13】
前記第1の光ファイバは、前記波長においてマルチモードである、
請求項
11に記載の光学システム。
【請求項14】
前記第1の光ファイバの出力端は、前記モード混合光ファイバの入力端に融着接続される、
請求項
11~13のいずれかに記載の光学システム。
【請求項15】
前記第1の光ファイバは、ファイバレーザまたはファイバアンプの活性光ファイバである、
請求項
11~14のいずれかに記載の光学システム。
【請求項16】
前記モード混合光ファイバの出射端から自由空間伝搬ビームを出射するように構成される、
請求項
11~15のいずれかに記載の光学システム。
【請求項17】
前記光学システムはさらに、第2の光ファイバを備え、
前記第2の光ファイバは、波長においてマルチモードであり、前記第2の光ファイバは、入力端と出力端とを有し、前記第2の光ファイバの入力端は、前記モード混合光ファイバの出力端に直接光学的に結合される、
請求項
11~16のいずれかに記載の光学システム。
【請求項18】
前記光学システムは、前記第2の光ファイバの出力端から自由空間伝搬ビームを発射するように構成される、
請求項
17に記載の光学システム。
【請求項19】
前記第1の光ファイバは、前記モード混合光ファイバと同じ直径を有する、
請求項
11~18のいずれかに記載の光学システム。
【請求項20】
請求項
1~10のいずれかに記載のモード混合光ファイバと、
前記モード混合光ファイバの入力端に光学的に結合された光源とを、
備える光学システム。
【請求項21】
前記光源は、自由空間光学システムを介して前記モード混合光ファイバの入力端に光学的に結合される、
請求項
20に記載の光学システム。
【請求項22】
自由空間伝搬型光ビームを提供する方法であって、
前記方法は、
請求項
11~21のいずれかに記載の光学システムを提供するステップと、
前記モード混合光ファイバに波長の放射を伝播させるステップと、
前記モード混合光ファイバの出力端から自由空間伝搬光ビームを伝播させるステップと、
を含む方法。
【請求項23】
ピーク強度を有する入力放射がモード混合光ファイバに入力されるとき、入力放射は、前記ピーク強度の5%において外周部内に存在すると定義されるビームから構成され、前記ビームは、その平均強度の約15%以内の強度を有する断面積が40%を超えず、
前記モード混合光ファイバは、ピーク強度を有する出力放射を出力するように構成され、前記出力放射は、ピーク強度の5%において外周部内に横たわるように定義されるビームを含み、前記ビームは、平均強度の約15%以内の強度を有するその断面積の少なくとも80%を有する、
請求項
1~10のいずれかに記載のモード混合光ファイバ。
【請求項24】
ピーク強度を有する入力放射がモード混合ファイバに入力されるとき、前記入力放射は、前記ピーク強度の5%において外周部内に存在すると定義されるビームを含み、前記ビームは、その平均強度の約15%以内の強度を有する断面積が40%を超えず、
前記モード混合光ファイバは、ピーク強度を有する出力放射を出力するように構成され、前記出力放射は、ピーク強度の5%において外周部内に横たわるように定義されるビームを含み、前記ビームは、平均強度の約15%以内の強度を有するその断面積の少なくとも80%を有する、
請求項
11~21のいずれかに記載の光学システム。
【請求項25】
ピーク強度を有する入力放射がモード混合ファイバに入力されるとき、前記入力放射は、前記ピーク強度の5%において外周部内に存在すると定義されるビームを含み、前記ビームは、その平均強度の約15%以内の強度を有するその断面積の40%以下を有し、
前記モード混合光ファイバは、ピーク強度を有する出力放射を出力し、前記出力放射は、ピーク強度の5%において外周部内にあると定義されるビームを含み、前記ビームは、その断面積の少なくとも80%が、前記平均強度の約15%以内の強度を有する、
請求項
22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、光ファイバ及び光ファイバレーザに関する。本開示は、より具体的には、例えば、所望のビーム積パラメータ及びビームプロファイルを有する光ファイバレーザ出力を提供する際に有用なモード混合光ファイバに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年8月13日に出願された米国仮特許出願第62/204,900号の優先権の利益を主張するものであり、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
高出力の光学式レーザ及び増幅器は、様々な材料のレーザ切断、溶接、及び機械加工などの様々な目的で様々な産業で広く使用されている。希土類ドープ型光ファイバの研究開発は、大モード面積(LMA)ファイバのような特殊ファイバ設計の発見により、様々な高出力ファイバレーザ及び増幅器モジュールの導入を促した。マルチkWファイバレーザ及び増幅器は、非常に高い効率で実現され、レーザ材料処理の成長を促進している。当然のことながら、固体レーザのような他のタイプの高出力レーザも、材料処理用途に一般的に使用されている。
【0004】
材料加工の分野で使用されるレーザ及び増幅器は、望ましくは出力パワー及びビームプロファイルに関して特有の要件を満たす。パワーに関して、レーザまたは増幅器システムは、望ましくは、典型的には約数キロワットの所望の材料を処理するのに十分高い波長及びエネルギーを有する放射を送達する。マルチモードとシングルモードの2種類のkWレベルのファイバレーザを区別することができる。シングルモードファイバレーザは、典型的には約1~3kWの光パワーを送達し、マルチモードファイバレーザは、典型的には数十kWの出力パワーの範囲で動作する。材料加工用途では、シングルモードファイバとマルチモードファイバレーザの両方が使用される。マルチモードレーザは、例えば、マルチモードアクティブファイバを使用することによって、またはいくつかのシングルモードファイバレーザの出力をマルチモードの送達ファイバに組み合わせてワークピースに送達することによって構成することができる。同様に、マルチモード送達ファイバは、固体レーザからワークピースにパワーを送達するためにしばしば使用される。
【0005】
ビームプロファイルの観点から、ユーザは、通常、送達されたビームが所望のビームパラメータ積(BPP)を有することを望む。本明細書で使用されるBPPは、ビーム半径Rとビームの発散角との積として定義され、mm・mradの単位で表される。ビーム半径R(mm)は、ビームが光ファイバから出てくるときの最大強度の13.5%で測定されたビーム直径の半分として定義される。mrad単位での発散角θは、ビームがビーム送達光ファイバの端部から伝播するときに光軸に形成される半角として定義される。所望のBPP値は用途によって異なるが、ファイバ結合レーザのBPP値の3つの典型的な範囲を以下に示す。
●50μmコア直径のビーム送達ケーブルの場合、1.5~2mm・mrad
●100μmコア直径のビーム送達ケーブルの場合、3~4mm・mrad
●200μmコア直径のビーム送達ケーブルの場合、6~8mm・mrad
【0006】
さらに、多くの用途において、送達されるビームは、ビームに沿って実質的に均等に分配される強度プロファイルを有する。このような「フラットトップ(flat-top)」プロファイルは最大強度が中心のみにあり中心から離れて比較的先鋭なドロップオフ強度を有する、ガウスプロファイルとは異なる。「フラットトップ」プロファイルは、制御された正確な切断、溶接、または機械加工プロセスを可能にするのに役立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くの用途において、実質的に円形のプロファイルを有するビームもまた(または代替的に)所望される。
【0008】
必要なビームパラメータ積(BPP)を満足させながら材料加工用途にこのようなレーザを使用するために、従来の光ファイバレーザ及び増幅器システムは、出力をワークピースに送信するためのビーム送達ケーブルに結合されたシングルモードもしくはマルチモードレーザまたは増幅器出力を有する。同様に、従来の固体レーザは、レーザ出力をワークピースに送達するためのビーム送達ケーブルに結合されている。一般に使用されるビーム供給ケーブルは、50、100、200、400及び600ミクロンの典型的なコア直径及び0.1~0.4(及びしばしば0.4を上回る)の開口数(NA)を有する高度にマルチモードステップインデックスファイバで作製される。シングルモードレーザ出力(発射ファイバ)とビーム送達ケーブルとの間のオフセット接続、成形コアを有するビーム送達光ファイバ、外部ビーム成形技術、機械的なファイバのマイクロベンディング、ファイバテーパ(断熱的及び/または急な)、長周期グレーティング、及びマルチモードファイバにおけるマルチモード干渉のような所望のBPP及び所望のフラットトッププロファイルの両方を提供するため、多数の技術が試みられてきた。しかしながら、これらの各々には多くの欠点がある。
【0009】
したがって、例えば、所望のBPP値、所望の強度プロファイル(例えば、「フラットトップ」強度プロファイル)及び円形ビームプロファイルを1つ以上提供することができる改良された光ファイバ、システム及び方法の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本開示は、波長を有する光放射を送達するためのモード混合光ファイバを提供し、モード混合光ファイバは、入力端、出力端、中心線及び屈折率プロファイルを有する。モード混合光ファイバは、
最内コアであって、最内コアが屈折率プロファイルを有する最内コアと、
最内コアの周りに配置されたクラッドと、を備え、
モード混合光ファイバが、波長において少なくとも5つのモードを有し、
モード混合光ファイバが、その入力端でその光入力の一部をその低次モードからその高次モードに分配するように構成される。
【0011】
別の態様では、本開示は、光学システムを提供し、
本明細書に記載のモード混合光ファイバと、
モード混合光ファイバの入力端に直接光学的に結合された出力端を有する第1の光ファイバであって、波長を有する光放射を伝播するように構成された第1の光ファイバと、を備える。
【0012】
別の態様では、本開示は、光学システムを提供し、
本明細書に記載のモード混合光ファイバと、
第1のモード混合光ファイバの前記入力端に光学的に結合された光源(例えば、固体レーザ)と、を備える。
【0013】
別の態様では、本開示は、所望の強度プロファイルを有する波長の誘導放射を提供する方法を提供する。この方法は、本明細書で説明するモード混合ファイバの第1の端部に入力放射を結合することと、モード混合光ファイバに沿って放射を誘導して、所望の強度プロファイル、例えば本明細書に記載されるような、フラットトップ強度プロファイルを提供することと、を含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、自由空間伝播光ビームを提供するための方法を提供し、この方法は、
本明細書に記載の光学システムを提供することと、
モード混合光ファイバに波長の放射を伝播させることと、
自由空間伝播光ビームをモード混合光ファイバの出力端から伝播させることと、を含む
【0015】
これらの、ならびに他の態様、実施形態、利点、及び代替は、添付の図面を適宜参照して、以下の詳細な説明を読むことによって、当業者には明らかになるであろう。本明細書に記載された光ファイバ、システム及び方法の種々の実施形態は、レーザ加工用途ならびに例えばファイバビーム制御技術の恩恵を受ける様々な追加の用途において有用であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態によるモード混合光ファイバの断面概略図である。
【
図3】本発明の別の実施形態によるモード混合光ファイバの断面概略図である。
【
図4】本発明の別の実施形態によるモード混合光ファイバの断面概略図である。
【
図5】本発明の別の実施形態によるモード混合光ファイバの断面概略図である。
【
図6】本発明の別の実施形態によるモード混合光ファイバの断面概略図である。
【
図7】本発明の別の実施形態によるモード混合光ファイバの断面概略図である。
【
図8】本発明の別の実施形態によるモード混合光ファイバの断面概略図である。
【
図9】本発明の別の実施形態によるモード混合光ファイバの概略側面図である。
【
図10】本開示の一実施形態による光学システムの概略図である。
【
図11】本開示の別の実施形態による光学システムの概略図である。
【
図12】本開示の別の実施形態による光学システムの概略図である。
【
図13】実施例1の実験で用いたモード混合光ファイバの断面概略図である。
【
図14】実施例1の実験で用いたモード混合光ファイバの劈開されたファイバ端面の写真である。
【
図15】実施例1の実験において、モード混合ビーム送達ケーブルで励起されたモードのうち、計算されたパワー分布を示すグラフである。
【
図16】実施例1の実験におけるモード混合ビーム送達ケーブルによって送達された計算された全出力強度の2Dプロットである。
【
図17】実施例1の実験におけるモード混合ビーム送達ケーブルによって送達されたビームの計算されたプロファイルのプロットである。
【
図18】実施例1の実験における従来のビーム送達ケーブルで励起されたモード間のパワー分布の計算結果を示すグラフである。
【
図19】実施例1の実験において、従来のビーム送達ケーブルによって送達された計算された全出力強度の2Dプロットである。
【
図20】実施例1の実験における従来のビーム送達ケーブルによって送達されたビームの計算されたプロファイルのプロットである。
【
図21】実施例1の実験で説明したように、従来のシステムの概略図であり、これにより送達された全出力強度の2Dグラフである。
【
図22】実施例1の実験で説明したように、オフセットコアモード混合ファイバとそれによって送達される全出力強度の2Dグラフとを含む光学システムの概略図である。
【
図23】実施例2の実験で用いたモード混合光ファイバの設計を示す断面概略図である。
【
図24】
図22のファイバの劈開された端面の屈折率-コントラスト画像である。
【
図25】実施例2の実験において、モード混合ビーム送達ケーブルで励起されたモード間の計算されたパワー分布を示すグラフである。
【
図26】実施例2の実験におけるモード混合ビーム送達ケーブルによって送達された計算された全出力強度の計算値の2Dプロットである。
【
図27】実施例2の実験におけるモード混合ビーム送達ケーブルによって送達されたビームの計算されたプロファイルのプロットである。
【
図28】実施例2の実験で用いたオフセット低屈折率リングモード混合ファイバを含む光学システムの概略図である。
【
図29】実施例2の実験で説明したように、
図27のシステムによって送達された全出力強度の2Dグラフである。
【
図30】実施例2の実験で説明したように、
図27のシステムによって送達された出力の強度プロファイルである。
【
図31】実施例3の実験で送達された全出力強度の2Dグラフである。
【
図32】実施例3の実験で送達された出力の強度プロファイルである。
【
図33】実施例4に記載の第1の実験の結果を提供する1組の画像である。
【
図34】実施例4で説明した第2の実験の結果を提供する1組の画像である。
【
図35】実施例5に記載のモード混合ファイバのビーム発散対ファイバ長のプロットである
【
図36】実施例6に記載の実験結果を提供する1組の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
当業者であれば理解するであろうように、図面は必ずしも縮尺通りに描かれておらず、図面の明瞭化のためにシステムの様々な要素が省略されている場合がある。
【0018】
以下の説明では、読者が当業者によく知られている光ファイバの構造の基本的な知識を有すると仮定する。したがって、ファイバコア、クラッド、及びコーティングの概念は詳細には論じられていない。当業者にはよく知られているように、波長を有する放射は、一般にファイバのコア内を伝播し、その直径は典型的には数ミクロンから数百ミクロンの範囲にあり、いくつかの実施形態では、さらには最大1500ミクロンである。コアとクラッドとの間の屈折率差は、一般にファイバのコア内の1つ以上の伝播モードで光を閉じ込めるように作用する(ただし、当業者は、コア付近の領域のクラッドに実際にあるエネルギーが存在することを理解するであろう)。
【0019】
「光(light)」または「光学的(optical)」という用語は、光導波管の当業者によって理解されるように広く使用され、波長の可視範囲のみに限定されるものではない。本明細書に記載される屈折率は、放射の波長を参照して記載される。本明細書に記載の光ファイバ、システム及び方法の特定の実施形態では、波長は可視または近赤外(例えば、約0.5μm~約3μmの範囲内)である。
【0020】
本発明者らは、マルチモードビーム送達ファイバにおいて、光が全ての利用可能なモード(すなわち利用可能な全ての横モード)に均一に分配されている場合、出力ビームは、比較的フラットトップ強度プロファイルを示し得ることを明示してきた。高次モードを設定することは出力ビームの発散角にも影響し(高次モードはより大きな発散角で伝播するため)、BPPが増加する。全てのモードが均等に設定されると、ビーム発散はファイバコアの開口数に等しい。
【0021】
しかし、従来のシステムでは、全てのモードが均等に設定されていない。むしろ、マルチモードビーム送達ファイバで励起されるモードの数及び各々のモードで結合される相対的なパワーの量は、例えば、入射レーザ放射(例えば、アクティブファイバからの)とビーム送達ファイバのコアのモードとの間の空間的重複によって決定される。横モードは直交しているので、(例えば、アクティブファイバからの)入力レーザビームと非ゼロ空間的重複を有するモードのみが設定され得る。各々のモードによって運ばれるパワー量は、空間的重複の割合によって決定される。結果として、ビーム送達の出力で利用可能なビームプロファイル及びBPPは、使用される特定のタイプのレーザまたは増幅器(すなわち、レーザ/増幅器出力のプロファイルに依存する)に基づいて変化する。例えば、シングルモードレーザまたは増幅器源を使用する場合、従来のビーム送達ケーブルにおけるマルチモードステップインデックスファイバとのサイズ及び形状係数の著しい違いは、モード混合のレベルの低下をもたらす(すなわち、通常はわずかな低次モードが設定される)。マルチモードレーザまたは増幅器ファイバの使用は、多少問題を助長する可能性があるが、そのようなマルチモードレーザまたは増幅器ファイバは、典型的には少数しかモード化されないという事実のため、ビーム送達ファイバは、依然として典型的にその低次モードのみで放射を伝播する。より低次のモードのみが設定されている場合、送達されるビームの強度は、通常、中心部の強度が周辺部よりもはるかに高い。例えば、自由空間光学系を介して固体レーザをビーム送達ファイバに結合する場合、ビーム送達ファイバは同様に、主にその低次モードで放射を送信することができ、同様に、より強い中心を有する送達ビームに導く。
【0022】
本発明者らは、例えば、レーザ/増幅器放射(例えば、シングルモードもしくは少数モードのファイバから、または固体レーザから結合された)入力をその入力端(及びその出力端に向かって伝播する)でその高次モードに結合するように構成された光ファイバを提供することによって、先行技術の欠点に対処してきた。このような光ファイバは、光ファイバレーザまたは増幅器システムにおけるモード変換ファイバまたはビーム送達ファイバとして使用される場合、所望のBPP値、所望の強度プロファイル(例えば、「フラットトップ」な強度プロファイル)、及び円形ビーム形状のうちの1つ以上を有する出力を提供することができる。特定の実施形態では、このようなモード混合光ファイバは、入力光ファイバとモード混合光ファイバとの間のモード重複を撹乱し、それによってモード混合を増加させるために、コア内に非対称性を導入することによって提供することができる。
【0023】
当業者であれば理解するであろうように、本明細書に記載の光ファイバ設計はスケーラブルであり、所望の強度プロファイル(例えば「フラットトップ」及び/または円形ビーム)を維持しながらBPPに関してエンドユーザのニーズを満たす多くの自由度を提供する。本開示に基づいて、当業者は、従来の光学シミュレーション技術を使用して、本開示の範囲内でさらなる設計を提供することができる。
【0024】
有利に、このようなシステムは、標準的な融着接続手順及び従来の商業的接続機器を使用して全ファイバモノリシック構成で提供することができる。このような全ファイバ方式は、簡単で単純なハンドリング、実装、及びメンテナンスを提供することができる。当業者であれば理解するであろうように、本明細書に記載された光ファイバ、方法及びシステムは、外部要素、空間フィルタリング、または特別な処理を必要とせず、モードアップコンバージョンを遂行することができる。本明細書に記載される光ファイバは、ビーム送達ケーブルにパッケージングされ、単にレーザの出力に接続されることができ、したがって既存の光ファイバレーザ及び増幅器システムと互換性がある。同様に、本明細書に記載の光ファイバは、例えば自由空間光学系を介して、固体レーザのような他のタイプのレーザの出力に結合することができる。
【0025】
本開示の実施形態は、
図1の断面概略図及び
図2の概略側面図に示されている。モード混合光ファイバ100は、入力端102と出力端103とを有する。モード混合光ファイバ100はまた、中心線104(光ファイバの断面の幾何学的中心における点として定義される)及び屈折率プロファイル(光ファイバの断面の位置の関数としての屈折率として定義される)を有する。モード混合光ファイバ100は、(光ファイバの最内コアの断面の位置の関数としての屈折率として定義されるそれ自身の屈折率プロファイルを有する)最内コア110と、最内コアの周りに配置されたクラッド120とを含む。モード混合光ファイバは、波長(すなわち、その入力端からその出力端まで)を有する光放射を送達するように構成される。特に、モード混合光ファイバは、波長において少なくとも5つのモード(すなわち、最内コアによって実質的に閉じ込められたモード)を有する。例えば、特定の実施形態において、モード混合光ファイバは、波長において少なくとも7つのモード、または波長において少なくとも10のモードを有する。他の実施形態では、モード混合光ファイバは、波長において少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、または少なくとも50のモードを有する。
【0026】
重要なことに、モード混合光ファイバは、その入力端で光入力の一部をその低次モードから高次モードに分配する(そしてその出力端に向かって伝播する)ように構成される。モード混合光ファイバの低次モードだけでなく高次モード間の光パワーの分布により、ビームは、例えば、実質的に「フラットトップ」プロファイルのような所望のBPP及び/またはビーム形状を有するモード混合光ファイバの出力端から出力され得る。本開示は、その入力端でその光入力の一部をその低次モードからその高次モードに分配するように、モード混合光ファイバを構成する多数の方法を特定する。例えば、本開示の特定の実施形態では、モード混合光ファイバの最内コアは、光ファイバの中心線と実質的に非線共線状に位置付けされる中心線(すなわち、上述のように定義されるが、ファイバ全体とは反対の最内コアを基準とする)を有する。換言すれば、特定の実施形態では、モード混合光ファイバの最内コアは、モード混合光ファイバ全体に対して偏心して配置される。
図3は、最内コア310と、最内コアの周りに配置されたクラッド320とを有するモード混合ファイバ300の断面概略図である。この実施形態では、最内コア310は、ファイバ300全体に対して実質的に偏心して配置された中心線314を有する。すなわち、最内コア310の中心は、ファイバ300全体の中心線304から横方向にオフセットしている。ファイバの中心線に対する最内コアの中心の横方向オフセットは、少なくとも5ミクロン、例えば少なくとも10ミクロン、少なくとも20ミクロン、または少なくとも30ミクロンである。この実施形態では、モード混合光ファイバは、ステップインデックスプロファイルを有し、当業者は、他のインデックスプロファイルを使用することができることを理解するであろう。
【0027】
当業者であれば、モード混合光ファイバの最内コアが様々な形状を取ることができることを理解するであろう。例えば、特定の実施形態では、
図3に示すように、最内コアは、実質的に円形の断面形状を有する。モード混合光ファイバが、断面形状が実質的に円形の最内コアを有する場合、望ましくはモード間に所望の放射分布を提供することができる他のいくつかの特徴または特性を含む。例えば、上で説明したように、横方向にオフセットした最内コアを持つことができる。他の実施形態では、最内コアは、以下でより詳細に説明するように、モード間で放射を分配するように構成された屈折率プロファイルを有することができる。
【0028】
他の実施形態では、モード混合光ファイバの最内コアは、実質的に非円形の断面形状を有する。例えば、
図4の断面概略図に示されているモード混合光ファイバ400は、実質的に長方形の形状(ここでは、正方形)を有する最内コア410を有する。特定の実施形態では、実質的に非円形の最内コアは、モード混合光ファイバの中心線に沿ってセンタリングされる(すなわち、最内コアは、光ファイバの中心線と実質的に共線状に位置付けられる中心線を有する)。しかし、他の実施形態では、実質的に非円形の最内コアは、例えば、
図3に関して上述したような任意の形態で、光ファイバの中心線から横方向にオフセットしている。このような実施形態において、最内コアには、様々な他の実質的に非円形の形状を使用することができる。例えば、最内コアは、望ましい数の辺(例えば、三角形、長方形、五角形、六角形、八角形)を有する多角形形状(例えば、正多角形または不規則な多角形)を有することができる。多角形の頂点は、先鋭または多少丸みを帯びるようにすることができる。当然のことながら、実質的に非円形の最内コアは、多角形である必要はなく、丸みを帯びているが非円形の形状(例えば、楕円形、楕円形、半円形など)を有することができる。
【0029】
特定の実施形態では、モード混合光ファイバの最内コアは、1つ以上の実質的にアップドープされた領域及び/または1つ以上の実質的にダウンドープされた領域を有し、伝播モードの間の放射の所望の分布を提供するように構成される。以下でより詳細に説明するように、1つ以上の実質的にアップドープされた領域及び/または1つ以上の実質的にダウンドープされた領域は、多くの方法で構成することができる。アップドープされた領域は、最内コアの残部よりも高い波長において屈折率を有する領域である。当業者であれば、これは、より高い屈折率のドープ剤を有するアップドープされた領域、または最内コアの残部よりも低い屈折率のドープ剤を有するためであり得ることを理解するであろう。ダウンドープされた領域は、最内コアの残部よりも波長において低い屈折率を有する領域である。当業者であれば、これは、より低い屈折率のドープ剤を有するアップドープされた領域、または最内コアの残部よりも低い屈折率のドープ剤を有するためであり得ることを理解するであろう。当業者であれば、アップドープまたはダウンドープされた領域は、任意のドープ剤をそもそも必要とする必要があり、例えば、最内材料の残部が異なる屈折率差を有する場合には、実質的に純粋なシリカであり得るということを理解するであろう。
【0030】
特定の実施形態では、光ファイバの最内コアは、その中心線の周りに対称的に配置された1つ以上の実質的にダウンドープされた領域を含む。例えば、モード混合光ファイバの最内コアは、最内コアの中心線と実質的に共線状に配置された中心線を有する実質的にダウンドープされた領域を含むことができる。1つのそのような実施形態が、
図5の断面概略図で示されている。モード混合光ファイバ500は、クラッド520で囲まれた最内コア510を有する。最内コア510は、最内コア自体の中心線に沿って配置された中心線を有する実質的にダウンドープされた領域515を含む。当然のことながら、他の実施形態では、最内コアの中心線の周りに対称的に配置された実質的にダウンドープされた領域は存在しない。
【0031】
特定の実施形態では、モード混合光ファイバの最内コアは、中心線の周りに非対称的に配置された1つ以上の実質的にダウンドープされた領域を含む。このような実質的にダウンドープされた領域は、例えば、上述のように最内コアの中心線に沿って設けられたダウンドープされた領域と組み合わせて提供されてもよく、または最内コアの中心線に沿って設けられたダウンドープされた領域がない場合に設けられてもよい。
【0032】
例えば、
図6の断面概略図に示される光ファイバ600は、光ファイバの最内コアの中心線からオフセットして配置された実質的にダウンドープされた領域615を含む最内コア610を有する(この実施形態では、また光ファイバ自体の中心線からオフセットして配置されている)。別の実施形態として、
図7は、モード混合光ファイバの断面概略図である。モード混合光ファイバ700は、ダウンドープされたリング形状領域715を含む最内コア710を含み、ここでもまた、ダウンドープされた領域は、その中心が最内コアの中心(及びまたファイバの中心線)からオフセットされて配置される。
図8は、本明細書に記載のモード混合光ファイバのさらに別の実施形態の断面概略図である。
図8を参照すると、モード混合光ファイバ800は、ダウンドープされた領域815a、815b、815c及び815dを含む最内コア810を含む。ここで、ダウンドープされた領域815a、815b、815c、815dは、その中心が光ファイバの中心線804から様々な距離に配置されている。複数のダウンドープされた領域が設けられている場合、それらはランダムに配置されていてもよいし、または代替的に、規則的な幾何学的配列(すなわち、バンドギャップ構造を形成せずに)に配列されていてもよい。
【0033】
特定の実施形態では、モード混合光ファイバの最内コアは、1つ以上の実質的にアップドープされた領域を含む。例えば、1つ以上の実質的にアップドープされた領域は、例えば、ダウンドープされた領域に関して上述された方法のいずれかにおいて、最内コアの中心線の周りに非対称的に配置され得る。他の実施形態では、アップドープされた領域は、最内コアの中心(例えば、リング形状の領域)の周りに対称的に配置されるが、最内コアの周囲に向かって配置される(例えば、アップドープされた領域の面積の少なくとも1/2、2/3、またはさらには3/4が、最内コアの前記中心線から離れた最内コアの半径の少なくとも半分に配置されている)。存在する場合、1つ以上の高屈折率領域は、上記のような1つ以上の低屈折率領域と組み合わせて提供され得る。
【0034】
当業者は、光ファイバの最内コアに任意の数の実質的にアップドープされた/ダウンドープされた領域を設けることができることを理解するであろう。例えば、
図5、6、7、9及び23に関連して本明細書に記載されるような特定の実施形態では、最内コアにシングルの実質的にアップドープされた/ダウンドープされた領域のみが存在する。他の実施形態では、例えば、
図8に関して説明したように、複数のアップドープされた/ダウンドープされた領域が存在する。しかし、製造を簡単にするために、例えば、12以下、8以下、5以下、4以下、またはさらに3以下である数の、アップドープされた/ダウンドープされた領域の数を限定することが望ましい場合がある。アップドープされた/ダウンドープされた領域が複数ある場合、それらは波長においてバンドギャップを有するいわゆるフォトニック結晶またはフォトニックバンドギャップ構造を形成しない。
【0035】
モード混合光ファイバの最内コアは、様々なサイズで形成することができる。例えば、特定の実施形態では、光ファイバ最内コアは、約50μm~約3000μmの範囲、例えば約50μm~約2000μm、または約50μm~約1000μm、または約50μm~約600μm、または約100μm~約3000μm、または約100μm~約2000μm、または約100μm~約1000μm、または約100μm~約600μm、または約200μm~約3000μm、または約200μm~約2000μm、または約200μm~約1000μm、または約200μm~約600μmの範囲の直径(すなわち、最内コアを横切る半径方向平均距離)を有する。当業者は、所望の数のモードを提供し、入力光ファイバと重複するように最内コア直径を選択する。
【0036】
同様に、全体モード混合光ファイバは、様々なサイズで形成することができる。特定の実施形態では、モード混合光学系は、約100μm~約3600μm、例えば、約100μm~約3000μm、または約100μm~約2500μm、または約100μm~約1500μm、または約100μm~約1000μm、または約100μm~約800μm、または約100μm~約600μm、または約200μm~約3600μm、または約200μm~約3000μm、または約200μm~約2500μm、または約200μm~約1500μm、または約200μm~約1000μm、または約200μm~約800μm、または約200μm~約600μmの範囲の外径を有する。特定の実施形態では、モード混合光ファイバの外径は、最内コアの外径の少なくとも約1.05倍、例えば、約1.05~約5倍、または約1.05~約3倍、またはモード混合光ファイバの最内コアの外径の約1.05~約2倍である。例えば、いくつかの実施形態では、モード混合光ファイバの外径は、モード混合光ファイバの最内コアの外径の少なくとも約1.2倍、例えば、モード混合光ファイバの最内コアの外径の約1.2~約5倍、または約1.2~約3倍、または約1.2~約2倍の範囲である。
【0037】
当業者が理解するように、様々なアップドープされた領域及びダウンドープされた領域は、様々な形状及び様々なサイズで提供されてもよい。特定の実施形態では、様々なアップドープされた及び/またはダウンドープされた領域は、円形、非円形ではあるが丸みを帯びている(例えば、卵形、楕円形、半円形)、多角形(例えば、三角形、六角形、正方形)から選択された中実の断面形状を有する。様々なアップドープされた領域及び/またはダウンドープされた領域は、環状形状(例えば、円形リング、環状非円形、丸みを帯びた形状、または環状多角形)として設けることもできる。様々なアップドープされた領域及び/またはダウンドープされた領域は、例えば、少なくとも波長のサイズ(すなわち、半径方向平均断面幅)であってもよい。特定の実施形態では、様々なアップドープされた領域及び/またはダウンドープされた領域は、サイズが、例えば、約1μm~約2000μmの範囲、例えば約1μm~約1500μm、または約1μm~約1000μm、または約1μm~約800μm、または約1μm~約600μm、または約1μm~約400μm、または約1μm~約200μm、または約2μm~約2000μm、または約2μm~約1500μm、または約2μm~約1000μm、または約2μm~約800μm、または約2μm~約600μm、または約2μm~約400μm、または約2μm~約200μm、または約5μm~約2000μm、または約5μm~約1500μm、または約5μm~約1000μm、または約5μm~約800μm、または約5μm~約600μm、または約5μm~約400μm、または約5μm~約200μm、または約15μm~約2000μm、または約15μm~約1500μm、または約15μm~約1000μm、または約15μm~約800μm、または約15μm~約600μm、または約15μm~約400μm、または約15μm~約200μmの範囲である。特定の実施形態では、アップ及び/またはダウンドープされた領域の最内コア領域の全パーセンテージは、約5%~約95%の範囲内、例えば約5%~約85%、または約5%~約75%、または約5%~約50%、または約5%~約25%、または約10%~約95%、または約10%~約85%、または約10%~75%、または約10%約50%、または約10%~約25%、または約1%~約10%、または約1%~約20%、または約1%~約25%の範囲内である。
【0038】
1つ以上の実質的にアップドープされた領域及び/またはダウンドープされた領域は、最内コアの残部の屈折率と実質的に異なる屈折率を有する。例えば、実質的にアップドープされた領域は、最内コアの残部の屈折率よりも、少なくとも約0.001、少なくとも約0.002、少なくとも約0.003、またはさらには少なくとも約0.005上回る、例えば最内コアの残部のコアを少なくとも約0.01または少なくとも約0.02上回る、屈折率(すなわち、波長において)を有することができる。同様に、実質的にダウンドープされた領域は、最内コアの残部の屈折率よりも、少なくとも約0.001、少なくとも約0.002、少なくとも約0.003、またはさらには少なくとも約0.005下回り、例えば、例えば最内コアの残部の屈折率よりも、少なくとも約0.01、または少なくとも約0.02下回る屈折率を有することができる。しかしながら、特定の実施形態では、各々のアップドープされた領域及び/またはダウンドープされた領域と最内コアの残部との間の絶対屈折率差(すなわち、波長において)は、最大約0.2、最大約0.1、または最大約0.05である。このような材料は、最内コアの残部の残部と同様のガラスから製造することができ、したがって望ましくは最内コアの残部と同様の熱機械的特性を有することができ、製造を単純化することができる。特定の望ましい実施形態では、実質的にアップドープされた領域及び/またはダウンドープされた領域は、最内コア内の屈折率不連続の領域として形成される(すなわち、屈折率の変化が、最内コアの断面に沿って直線距離で約1μm以内で発生する)。
【0039】
特定の実施形態では、モード混合光ファイバの最内コアは、例えば円形リングの形状の、シングルの環形状のダウンドープされた領域を含む。環状のダウンドープされた領域は、例えば、5ミクロン~20ミクロンの範囲の内径を有し、0.5ミクロン~3ミクロンの範囲の環状の厚さを有することができる。ダウンドープされた領域の屈折率は、最内コアの残部に対する相対開口数値が、例えば0.01~0.15の範囲、例えば0.01~0.10、0.01~0.05、0.02~0.10または0.02~0.05であるようにすることができる。本明細書で使用されるように、非円形形体の「直径」は、形体の幾何学的中心からの半径方向平均距離の2倍である。
【0040】
モード混合光ファイバは、様々な長さで提供することができる。当業者は、放射の所望の分布を高次モードに提供するのに十分な長さを選択することができる。例えば、特定の実施形態では、モード混合光ファイバは、約1m~約100m、例えば、約1m~約50m、または約1m~約40m、または約1m~約50m、または約1m~約20m、または約1m~約10m、または約1m~約5m、または約5m~約100m、または約5m~約100mの範囲、例えば、約5m~約50m、または約5m~約40m、または約5m~約50m、または約5m~約20m、または約10m~約100m、または約10m~約50m、または約10m~約40mの範囲を有する。
【0041】
特定の実施形態(上述の
図3、4、6~8の実施形態を含む)では、モード混合光ファイバは、円対称の断面プロファイルを有していない。特定のこのような実施形態では、モード混合光ファイバの断面プロファイルは、その長さに沿って螺旋として形成される。すなわち、何らかの外力によってねじられていない状態では、光ファイバの様々な要素が、例えば、約1mm~約100cmの範囲、例えば、約1mm~約50cm、または約1mm~約30cm、または約1mm~約20cm、または約1mm~約10cm、または約1mm~約5cm、または約2mm~約100cm、または約2mm~約50cm、または約2mm~約30cm、または約2mm~約20cm、または約2mm~約10cm、または約2mm~約5cm、または約5mm~約100cm、または約5mm~約50cm、または約5mm~約30cm、または約5mm~約20cm、または約5mm~約10cm、または約5mm~約5cm、または約1cm~約100cm、または約1cm~約50cm、または約1cm~約30cm、または約1cm~約20cm、または約1cm~約10cm、または約1cm~約5cmの範囲のピッチでファイバの長さに螺旋状の構成でねじれる。このような構成を
図9の概略図に示す。偏心したコアを有する光ファイバ900の部分が側面図で示されており、最内コアの中心線914は破線で示されている。位置A、B、及びCの各々における断面プロファイルが示されている。特に、偏心したコアは、ファイバ全体にわたって螺旋として形成される。モード混合プロセスの効率は、そのような螺旋構成を使用することによって大幅に増加させることができる。そのようなファイバは、従来の方法を用いて(例えば、光ファイバの引き出し中にプリフォームを回転させることによって)作製することができる。
【0042】
モード混合光ファイバは、従来の方法を用いて従来の材料から作ることができる。例えば、光ファイバは、様々なシリカベースのガラス(例えば、ゲルマノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、フルオロケイ酸塩及びそれらの組み合わせ)を用いて製造することができる。特定の実施形態では、クラッド(少なくとも最内コアを直に囲む領域)はフッ素ドープされたシリカを含むが、最内コア(例えば、任意のアップドープされたまたはダウンドープされた領域を除く)は実質的にドープされていないシリカから形成される。他の実施形態では、クラッド(少なくとも最内コアを直に囲む領域)はドープされていないシリカを含むが、最内コア(例えば、任意のダウンドープされた領域を除く)はゲルマニウムでドープされたシリカから形成される。従来のドープ剤を用いて、アップドープされた領域及び/またはダウンドープされた領域を提供することができる。光ファイバを製造する従来の方法(例えば、異なる屈折率の様々なロッド及びチューブを一緒に積み重ね、その後、プリフォームにそれらを折り畳んでプリフォームを引き伸ばす)を使用して、本明細書に記載のモード混合光ファイバを作製することができる。
【0043】
本開示に基づいて、当業者は、多種多様なビームパラメータ積を提供するモード混合光ファイバを提供することができ、したがって広範な発散角を提供することができる。モード混合光のビーム発散が、約40mrad、60mradまたは80mradから光ファイバの開口数までの範囲、例えば、約40mrad~約600mrad、または約40mrad~約300mrad、または約40mrad~約160mrad、または約40mrad~約140mrad、または約40mrad~約120mrad、または約40mrad~約100mrad、または約40mrad~約80mrad、または約60mrad~約600mrad、または約60mrad~約300mrad、または約60mrad~約160mrad、または約60mrad~約140mrad、または約60mrad~約120mrad、または約60mrad~約100mrad、または約80mrad~約600mrad、または約80mrad~約300mrad、または約80mrad~約160mrad、または約80mrad~約140mrad、または約80mrad~約120mrad、または約80mrad~約100mrad、または約100mrad~約200mrad、または約100mrad~約400mrad、または約100mrad~約600mrad、または約200mrad~約600mradの範囲である。当然のことながら、当業者であれば、異なる用途に異なる発散角を有するモード混合光ファイバを提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、当業者は、最内コアのNAと同じ高さのビーム発散角を有するモード混合光ファイバを提供することができる。
【0044】
同様に、本開示に基づいて、当業者は、実質的なフラットトップ出力を提供するモード混合光ファイバを提供することができる。例えば、モード混合光ファイバは、その平均強度の約20%以内、約15%以内、または約10%以内で、その断面積の少なくとも70%、少なくとも80%、さらには少なくとも90%を有するビーム(すなわち、ピーク強度の5%の外周によって定義される)を出力するように構成される。例えば、モード混合ファイバは、モード混合ファイバへの放射入力が、平均強度(例えば、中心で最も高い強度を有する)の約20%以内、約15%以内、またはさらには約10%以内に、約50%以下、約40%以下、約30%以下、またはさらには約20%以下の断面積を有するとき、その平均強度の約20%以内、約15%以内、またはさらには約10%以内で、その断面積の少なくとも70%、少なくとも80%、またはさらには少なくとも90%を有する放射(すなわち、ピーク強度の5%の外周によって定義される)を誘導または出力するように構成され得る。
【0045】
モード混合光ファイバには、様々な開口数値を設けることができる。例えば、特定の実施形態では、モード混合光ファイバの開口数は、約0.10~約0.60の範囲内、例えば、約0.10~約0.40または約0.10~約0.30、または約0.10~約0.22、または約0.15~約0.60、または約0.15~約0.40、または約0.15~約0.30の範囲内である。
【0046】
最内コアの屈折率プロファイルの様々な領域は、例えば、散乱(または弱誘導)中心として作用し、光を反射(または誘導)し、最内コアのより高次のモードを接続することによって、その内部に放射の伝播を攪乱させることができる。本開示に基づいて当業者が理解するように、本明細書に記載のモード混合光ファイバの性能は、例えば、最内コアの横方向オフセット、最内コアの屈折プロファイル、開口数、モード混合ファイバの長さ、巻き取り条件(直径及び長さ)、及び最内コアの屈折率プロファイルの任意の螺旋性を含む複数の設計パラメータによって影響され得る。モード混合光ファイバの設計は、所望の最内コアサイズを提供するために(例えば、使用されるときに別個のビーム送達ファイバのサイズに適合するように)スケーリングされてもよい。
【0047】
本開示の別の態様は、上述したようなモード混合光ファイバと、モード混合光ファイバの入力端に直接光学的に結合された出力端を有する第1の光ファイバとを含む光学システムであり、第1の光ファイバは、波長を有する光放射を伝播するように構成されている。そのような実施形態の1つが
図10の概略側面図に示されている。光学システム1030は、入力端1002と出力端1004とを有するモード混合光ファイバ1000ならびに、出力端1044を有する第1の光ファイバ1040とを含む。第1の光ファイバの出力端1044は、モード混合光ファイバの入力端1002に直接的に光学的に結合されている(すなわち、それらの間に実質的な光学構成要素はない)。例えば、第1の光ファイバの出力端をモード混合光ファイバの入力端に融着接続することができる。第1の光ファイバは、光放射をモード混合光ファイバの入力端に結合することができ、その結果、それらの中心線が互いに整列する(すなわち、モード混合光ファイバの最内コアがモード混合光ファイバの中心線からオフセットしていることがあるとしても)。
【0048】
特に、モード混合光ファイバは、シングルまたは少数モードの光ファイバからの放射を受容し、高次モードへの放射の分布を通じて、(例えば、上述のような)所望の光学特性を有する出力ビームを提供することができる。したがって、特定の実施形態では、第1の光ファイバは波長においてシングルモードである。他の実施形態では、第1の光ファイバは、波長において7以下、6以下、5以下またはさらには4以下のモードを有する。当然のことながら、他の実施形態では、モード混合ファイバは、マルチモード光ファイバからの放射、または固体源からの放射(例えば、自由空間光学による結合を介して)を受け入れることができる。
【0049】
ある有利な実施形態では、第1の光ファイバは、光ファイバレーザまたは光ファイバ増幅器からの放射を提供するように構成される。例えば、第1の光ファイバは、ファイバレーザのアクティブ光ファイバまたは希土類ドープ型ファイバのようなファイバ増幅器、またはある非線形プロセスを介して利得を提供するように構成されたファイバ(例えば、ラマン散乱、ブリルアン散乱)であり得る。
【0050】
特定の実施形態では、第1の光ファイバは、モード混合光ファイバと実質的に同じ直径を有する。このような実施形態は、第1の光ファイバとモード混合光ファイバとの整列(すなわち、例えば融着接続を介した光結合)を単純化することができる点で特に有利であり得る。同様に、特定の実施形態では、第1の光ファイバの最内コアの直径は、モード混合光ファイバの最内コアの直径の10%以内、またはさらには5%以内である。
【0051】
特定の実施形態では、モード混合光ファイバは、その第2の端部から所望の光学特性を有するビームを提供することができる。例えば、特定の実施形態では、光学システムは、モード混合光ファイバの第2の端部から自由空間伝播ビームを(例えば、
図10の参照番号1060で識別されるように)発射するように構成される。このような実施形態では、モード混合光ファイバは、ビーム送達ファイバとして作用することができ、例えば、産業環境での取り扱いを可能にするように丈夫にされたビーム送達ケーブル内に構成することができる。必要に応じて、追加の光学系(例えば、コリメートレンズ及び/または他の回折素子もしくは屈折素子)をモード混合光ファイバの出力端に設けることができる。
【0052】
他の実施形態では、光学システムは、第2の光ファイバをさらに含み、第2の光ファイバが、波長においてマルチモードであり、第2の光ファイバが、入力端と出力端とを有し、第2の光ファイバの入力端が、モード混合光ファイバの出力端に直接光学的に結合される。1つの特定の実施形態を
図11の概略図に示す。光学システム1130は、第1の光ファイバ1140と、上述のようにモード混合光ファイバの入力1102に直接光学的に結合された第1の光ファイバの出力1144モードを有する混合光ファイバ1100とを含む。光学システム1100は、入力端1152と出力端1154とを有する第2の光ファイバ1150をさらに含み、第2の光ファイバの入力端1152は、モード混合光ファイバの出力端1104に直接的に光学的に結合される(ここでは融着接続される)。そのような実施形態では、モード混合光ファイバは、第1の光ファイバの出力の光学特性(例えば、強度プロファイル)を、より望ましい状態(例えば、フラットトップな強度プロファイルを有する)に変換して第2の光ファイバに結合するように作用することができる。
【0053】
システムは、第2の光ファイバの第2の端部から自由空間伝播ビーム(例えば、
図11の参照番号1160によって識別されるような)を発射するように構成することができる。このような実施形態では、第2の光ファイバは、ビーム送達ファイバとして作用することができ、例えば産業環境での取り扱いを可能にするように丈夫にされたビーム送達ケーブル内に構成することができる。必要に応じて、追加の光学系(例えば、コリメートレンズ及び/または他の回折素子もしくは屈折素子)を第2の光ファイバの出力端に設けることができる。
【0054】
他の実施形態では、光学システムは、入力端が固体レーザなどの光源の出力に結合されたその出力を有するモード混合光ファイバを含む。自由空間光学系を使用して、例えば、光源をモード混合ファイバの入力端に結合することができる。そのような実施形態の一例を
図12に示す。光ファイバシステム1230は、自由空間光学系1275(例えば、1つ以上のレンズ)を介してモード混合光ファイバ1200の入力端1202に結合されたその出力を有する光源1270(例えば、固体レーザ)を含む。モード混合光ファイバの第2の端部1200から、自由空間伝播ビーム(例えば、
図12の参照番号1260によって識別されるようにされる)を放射することができる。
【0055】
第2の光ファイバの最内コアの直径は、例えば、既存のシステムでの実装を可能にするために、エンドユーザのニーズに応じて変更することができる。第2の光ファイバの最内コアの直径は、モード混合光ファイバの最内コアの直径の約10%以内、またはさらには約5%以内であってもよい。当然のことながら、他の実施形態では、第2の光ファイバの最内コアは、異なるサイズ、例えば、約50μm~約3000μm、または約50μm~約2000μm、または約50μm~約1000μm、または約50μm~約600μm、または約100μm~約3000μm、または約100μm~約2000μm、または約100μm~約1000μm、または約100μm~約600μm、または約200μm~約3000μm、または約200μm~約2000μm、または約200μm~約1000μm、または約200μm~約600μmの範囲の直径であり得る。
【0056】
本明細書に記載されたシステムは、モード混合ファイバへの放射入力が、平均強度(例えば、中心で最も高い強度を有する)の約20%以内、約15%以内、さらには約10%以内で、その断面積の約50%以下、約40%以下、約30%以下またはさらには約20%以下を有するとき、その平均強度の約20%以内、約15%以内、または約10%以内で、その断面積の少なくとも70%、少なくとも80%、さらには少なくとも90%を有する放射(すなわち、ピーク強度の5%の外周によって定義される)を出力するように構成され得る。
【0057】
本開示の別の態様は、所望の強度プロファイルを有する波長の誘導放射を提供する方法である。この方法は、本明細書で説明するモード混合ファイバの第1の端部に入力放射を結合することと、モード混合光ファイバに沿って放射を誘導して、所望の強度プロファイル、例えば、本明細書に記載されるような、フラットトップ強度プロファイルを提供することと、を含む。特定の実施形態では、所望の強度プロファイルを有する誘導放射(すなわち、ピーク強度の5%の外周によって定義される)は、その平均強度の約20%以内、約15%以内、またはさらには10%以内で、その断面積の少なくとも70%、少なくとも80%、またはさらには少なくとも90%を有する。放射は、所望の強度プロファイルを有する放射を提供するために、例えば、約1m~約100mの範囲、例えば約1m~約50m、または約1m~約40m、または約1m~約50m、または約1m~約20m、または約1m~約10m、または約1m~約5m、または約5m~約100m、または約5m~約100mの範囲、例えば、約5m~約50m、または約5m~約40m、または約5m~約50m、または約5m~約20m、または約10m~約100m、または約10m~約50m、または約10m~約40mの範囲内のモード混合光ファイバの長さに沿って誘導され得る。特定の実施形態では、入力放射は、所望の強度プロファイルとは実質的に異なる強度プロファイルを有する。例えば、特定の実施形態では、入力放射は、平均強度(例えば、中心で最も高い強度を有する)の約20%以内、約15%以内、またはさらには10%以内で、その断面積の約50%以下、約40%以下、約30%以下または約20%以下を有する。本方法は、本明細書に記載されているモード混合ファイバまたはシステムのいずれかと組み合わせて使用することができる。
【0058】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の光学システムを使用して自由空間伝播光ビームを提供する方法である。この方法は、第1の光ファイバからモード混合光ファイバに波長の放射を伝播させることと、モード混合光ファイバの出力端からの放射を伝播させることと、を含む。システムが上記のような第2の光ファイバを含む場合、本方法は、第2の光ファイバを通ってその出力端から放射を伝播させることをさらに含むことができる。発散、BPP、及び/または平坦度が上記の任意の実施形態に記載されているようなものであるように、本方法を遂行することができる。例えば、特定の実施形態では、所望の強度プロファイルを有する誘導放射(すなわち、ピーク強度の5%の外周によって定義される)は、その平均強度の約20%以内、約15%以内、またはさらには10%以内で、その断面積の少なくとも70%、少なくとも80%、またはさらには少なくとも90%を有する。特定の実施形態では、入力放射は、所望の強度プロファイルとは実質的に異なる強度プロファイルを有する。例えば、特定の実施形態では、入力放射は、平均強度(例えば、中心で最も高い強度を有する)の約20%以内、約15%以内、またはさらには10%以内で、その断面積の約50%以下、約40%以下、約30%以下、または約20%以下を有する。
【0059】
本開示の様々な態様及び実施形態を、以下の非限定的な実施例を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0060】
本明細書に記載された特定のモード混合光ファイバのモード混合効果は、数値的及び実験的に実証された。
【実施例1】
【0061】
実施例1において、全体的な試験構成は
図11に示されており、モード混合ファイバが、大モード領域シングルモードファイバからの放射出力をビーム送達ケーブルに変換するように構成されている。
【0062】
モード混合光ファイバは、
図13の概略図に示され、劈開されたファイバ端面が
図14の写真に示されている。モード混合光ファイバは、ステップインデックスプロファイルを有する直径がゲルマニウムで被覆された直径が60μmのコアを有する。コアは、0.11の開口数を有し、光ファイバ全体の中心線に対して20μmだけ横方向にオフセットされている。全体のファイバ直径は、360μmである。
【0063】
第1の光ファイバは、20μmの直径のコア、0.06の開口数、及び全体の直径が400μmである従来の大モード領域シングルモードファイバである。第2の光ファイバ(すなわち、ビーム送達ケーブルの)は、商用の装置に適合し、100μmの直径のコアと、0.22の開口数と、360μmの全ファイバ直径と、25mの長さを有する。
【0064】
計算結果は、
図15~17に示される。ビーム送達ケーブルで励起されるモード間の出力分布は、
図15に示される。ビーム送達ケーブルによってされる全出力強度は、
図16に示され、対応するビームプロファイルは、
図17に示されている。出力ビームは、フラットトップ形状であり、BPPは、約3.4mm・mradと推定される。
【0065】
図18~20に示すモード混合ファイバを使用しない場合とこれらの結果を比較すると、モード混合ファイバによって誘導されるモード混合効果が明確に現れる。そうでなければ同じパラメータで、モード混合光ファイバなしで実行されたシミュレーションは、先鋭なピークの出力ビームを提供する、
【0066】
実験結果も収集した。モード混合光ファイバがない場合(
図18~20に関して説明したように)、従来のビーム送達ケーブルから出てくるビームは、近接場強度プロファイル及びBPPを記録することによって特徴付けられる。結果を
図21に示す。モード混合の度合いが低いため、ビームプロファイルは非常に不均一であり、測定されたBPPは、特に所望される範囲である3~4mm・mradのうちの2.5mm・mradである。対照的に、モード混合光ファイバを使用する場合、
図13~17に関して上述したように、近接場プロファイルは、3.5mm・mrad前後のBPP値を有する良好な均一性(
図22)を示す。
【実施例2】
【0067】
この実施例では、システムは、光ファイバをビーム送達ファイバとして混合するモード(例えば、
図11に示すように)で構成されていた。ここでも、シミュレーションと実験の両方の結果が示される。ここで、モード混合光ファイバは、0.22の開口数を提供するのに十分なダウンドープされたフッ素クラッド層で囲まれた直径100μmのシリカコアを有し、360μmの全体のファイバ直径を提供するシリカ外側クラッドを有する。コアは、フッ素ドープシリカによって形成された低屈折率リングを含む。このリングは環状厚さ4μmであり、その内径は30μmであり、その中心は光ファイバの中心線から12μmだけ横方向にオフセットしている。リングと最内コアの残部との間の屈折率コントラストは、0.1の開口数値を提供するのに十分である(すなわち、リングの材料と最内コアの残部の材料との間;リング自体は波長の光を誘導するには不十分である)。設計は、
図23の概略断面図に示される。第1の光ファイバは、実施例1で上述したような従来の大モード領域シングルモードファイバである。計算結果を
図25~27に要約し、モード混合光ファイバにおいて励起されるモード間のパワー分布を
図25に示し、モード混合光ファイバの第2の端部によって送達される全出力強度が
図26に示され、対応するビームプロファイルが
図27に示される。
【0068】
上述したように、この実施例では、モード混合ファイバは、ビーム送達ケーブルとして構成されている。モードアップコンバージョンは、
図25のパワー分布を示すプロット(最初の100モードのみを明確にするためにプロットしたもの)に実証される。これらの正確なパラメータでは、BPPは約4mm・mradと推定された。しかし、出力ビームは、(ガウスビームに比べて著しく平坦ではあるが)正確にフラットトップ形状であると計算されない。これは、ファイバの設計、コア要素のサイズ及び場所を適切に修正することによって、当業者によって変更され得る。
【0069】
図23及び
図24のモード混合ファイバを使用するアップコンバージョンビーム送達ケーブルによって生成されるモード混合の実験的実証を
図28~30に示す。
図28に、測定セットアップを概略図で示す。
図29及び
図30にそれぞれ示された測定された強度及びビームプロファイルは、3.9mm・mradで測定されたBPPで良好な均一性を実証、ビーム送達ケーブルとして使用されるこのファイバでモードアップコンバージョンが発生することを実証する。これは、
図21に示す結果と比較することができ、従来のビーム送達ケーブルの使用に起因する。ここで、低屈折率リングは、最大強度と比較して50%強度コントラストを有する出力強度プロファイルに現れる。このリングコントラストは、実施例3に関して以下に示すように、ファイバ設計を適切に修正することによって低減することができる。
【実施例3】
【0070】
この実施例では、システムは実施例2の構成と実質的に同様に構成されているが、コア内の低屈折率リングの開口数値は0.02(すなわち、実施例2のように0.1の代わりに)である。
【0071】
本実施例のモード混合ファイバを使用するアップコンバージョンビーム送達ケーブルによって生成されるモード混合の実験的実証を
図31及び
図32に示す。
図31及び
図32にそれぞれ実証された測定強度及びビームプロファイルは良好な均一性を示す。これは、実施例2の結果と比較することができ、実際には、適切な設計が、ダウンドープされたリングによって引き起こされる強度コントラストを低減しながら、望ましくはフラットトッププロファイルを維持することができることを実証している。
【実施例4】
【0072】
この実施例では、シングルモードの入力放射を用いて、異なるコア直径のモード混合光ファイバが使用され、50μmコア直径及び別の25μmコア直径のうちの1つが使用される。50μmコアモード混合ファイバを使用する第1の実験は、
図33に関して説明される。ここで、LMA/GDF20/400ファイバを、内側コア内にオフセット配置されたダウンドープされたリングを有する25m長モード混合光ファイバの入力端に接合し、詳細は
図33に示される。波長1.06μmのシングルモード放射をLMA-GDF20/400ファイバからモード混合光ファイバに結合した。強度は、モード混合光ファイバの出力で劈開された端面で測定した。
図33に示すように、出力強度は実質的に均一であったが、リング状のダウンドープされた要素の位置ではある程度の強度コントラストがあった。BPPは、約1.3mm-mradであった。第2の実験では、モード混合光ファイバは、第1の実験と同様であったが、コア直径は25μmであり、寸法は
図33に示されている。モード混合ファイバは5mの長さであり、コイル直径が8mm旋回されていた。ここで、入力ファイバはシングルモードSMF-28ファイバであり、放射の波長は1.55mであった。シングルモード放射は、LMA-GDF20/400ファイバからモード混合光ファイバに結合された。ここでも、
図34に示すように、出力強度は実質的に均一であった。BPPは、約1.5mm-mradであった。
【実施例5】
【0073】
この実施例は、螺旋プロファイルを有するモード混合光ファイバのビーム発散の望ましい増大を実証する。2つのモード混合光ファイバを作製したが、「紡糸」ファイバについては、プリフォームを引き出し中にスピンさせて50回転/mの周期を有する螺旋状のプロファイルを提供した。ビームの発散は、カットバック法を用いてファイバ長さの関数として測定した。結果を
図35のグラフに示す。特に、ビームの発散は、紡糸ファイバに関して実質的に増加した。
【実施例6】
【0074】
この実施例では、本明細書に記載されているように、様々なマルチモードファイバをモード混合ファイバに接続した。それぞれの場合において、モード混合ファイバは25mの長さであり、さもなければ実施例3のモード混合ファイバに類似していたが、ダウンドープされたリングのNA値は0.05であった。入力マルチモードファイバの2Dビーム強度及びモード混合ファイバの出力が
図36に提供されており、入力マルチモードファイバの比較的不均一な強度がモード混合ファイバによって比較的フラットトップな強度に変換されたことを実証する。
図36のグラフは、ビーム輝度には相対的にほとんど影響がないことを実証している。
【0075】
特許請求の範囲及び上記明細書において、「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」、「持っている(carrying)」、「有している(having)」、「含有している(containing)」、「包含している(involving)」などの全ての過渡的な句は、制限がないと理解される。「~からなる(consisting)」及び「基本的に~からなる(consisting essentially of)」という過渡的な句のみが、制限付き、または準制限付きの過渡的な句でなければならない。
【0076】
特に定義されていない場合、添付の特許請求の範囲を含む用語「a」、「an」、または「one」の使用は、制限がなく、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」を意味すると理解される。明確さを改善し、「1つの(one)」または類似の用語の制限のない性質を想起させるために、本明細書での「少なくとも1つの」または「1つ以上の」という用語の時折の使用は、本明細書の他の例における単独の用語「a」、「an」、または「one」の使用が限定されており、したがって単数形に制限されていることを暗に意味するものではない。同様に、「一部の」、「少なくとも一部」、または類似の句(例えば、「少なくとも一部」)の使用は、他の場所でそのような句が存在しないことを何らかの形で限定することを意味するものではない。
【0077】
次に、例えば、最初に言及された「少なくとも1つ」に対する限定の属性を指定するための、「前記少なくとも1つの」という句などの「少なくとも1つ」という句への言及は、さらなる仕様がそのように適用される請求項において具体的に列挙されていない限り、請求項が、物品、組成物、機械、またはプロセスに関して読まれるかどうかを決定する際に複数が検討下にある場合、本明細書が限定のあらゆる例に適用されなければならないことを必要とするとして解釈されないものとする。
【0078】
「AまたはB」のような「または」の使用は、A及びBの組み合わせをその範囲から除外する「排他的または」の論理的な関係として解釈されないものとする。むしろ「または」は、制限がなく、例えば、BなしのA、AなしのB、AとBを一緒にしたものと、他の制限のない列挙を含む全ての置換を含み、A及びBに加えて他の特徴も除外しない。
【0079】
上述の任意の1つの観点に関連して上記で説明された特徴のいずれも、本発明の開示を研究する当業者に明らかであるように、上記の態様のいずれかによる本発明の実施と組み合わせることができる。
【0080】
当業者は、本明細書に記載された本発明の具体的な実施形態に多くの等価物を慣用的な実験以上のものを用いることなく認識するか、または確認することができるであろう。したがって、前述の実施形態は単なる例示として提示され、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、本発明は具体的に記載される以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。本発明は、本明細書に記載の個々の特徴、システム、材料、及び/または方法に関する。加えて、そのような特徴、システム、材料、及び/または方法が相互に矛盾していると明示的に教示されていない場合、2つ以上のそのような特徴、システム、材料、及び/または方法の任意の組み合わせが本発明の範囲内に含まれる。
【0081】
様々な態様及び実施形態が本明細書に開示されているが、他の態様及び実施形態は当業者には明らかであろう。本明細書で開示された様々な態様及び実施形態は、説明のためのものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、真の範囲は、そのような請求範囲が権利を与えられている等価物の全範囲に沿って、特許請求の範囲によって示される。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。