(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-07
(45)【発行日】2024-08-16
(54)【発明の名称】低応力の結合フランジを備えたタービンハウジングおよびこのようなタービンハウジングを備えた排ガスタービン
(51)【国際特許分類】
F01D 25/24 20060101AFI20240808BHJP
【FI】
F01D25/24 J
(21)【出願番号】P 2022502801
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2020067326
(87)【国際公開番号】W WO2021008816
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-03-30
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522056149
【氏名又は名称】ターボ システムズ スウィッツァーランド リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Turbo Systems Switzerland Ltd
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 71a, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マティアス リヒナー
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】実公昭46-012407(JP,Y1)
【文献】特開2012-127280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0364479(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0143814(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3103972(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 25/24
F02B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスタービン用のタービンハウジング(1)であって、該タービンハウジング(1)は、軸受ハウジング側で軸受ハウジングに取り付けるための結合フランジ(2)を有し、該結合フランジ(2)に、周方向(9)で互いに離間させられたハウジング結合孔(3)が設けられており、前記結合フランジにおいて、互いに隣り合ったハウジング結合孔の間に、半径方向内向きで前記タービンハウジングの長手方向中心軸線の方向に開放された材料切欠き(4)が設けられて
おり、
前記タービンハウジングは、前記ハウジング結合孔(3)に半径方向(8)で隣り合って配置された緊締縁部(7)を有し、
前記互いに隣り合ったハウジング結合孔(3)は、少なくとも部分的に結合ウェブ(19)によって取り囲まれており、該結合ウェブ(19)は、前記緊締縁部(7)に比べて前記タービンハウジングの軸線方向(13)に引っ込んで配置されていて、前記緊締縁部(7)の半径方向内側の縁部領域に環状の凹部(5)が設けられており、互いに隣り合ったそれぞれ2つのハウジング結合孔の間に設けられた前記材料切欠き(4)は、前記結合ウェブ(19)に比べて前記タービンハウジングの軸線方向(13)に引っ込んで配置されている、
タービンハウジング。
【請求項2】
前記互いに離間させられたハウジング結合孔(3)は、前記結合フランジ(2)に周方向(9)で少なくとも1つの円に沿って配置されている、請求項1記載のタービンハウジング。
【請求項3】
前記緊締縁部(7)は、互いに隣り合った2つのハウジング結合孔(3)の間の領域に、
前記環状の凹部(5)を拡大するそれぞれ1つの緊締縁部切欠き(10)を有する、請求項
2記載のタービンハウジング。
【請求項4】
前記緊締縁部切欠き(10)の第1の深さ(20)が、前記環状の凹部(5)の第2の深さ(11)と、前記環状の凹部に設けられた前記ハウジング結合孔(3)の第3の深さ(12)との合計に合致しており、これらの深さは、前記タービンハウジングの軸線方向(13)に延びている、請求項
3記載のタービンハウジング。
【請求項5】
前記タービンハウジングは、複数の部分から形成されている、請求項1から
4までのいずれか1項記載のタービンハウジング。
【請求項6】
前記緊締縁部(7)は、前記タービンハウジングの別体の構成部分を形成している、請求項
5記載のタービンハウジング。
【請求項7】
熱シールドまたはノズルリングが、前記タービンハウジングの別体の構成部分を形成している、請求項
5記載のタービンハウジング。
【請求項8】
前記緊締縁部(7)は、前記熱シールドまたは前記ノズルリングの構成要素である、請求項
7記載のタービンハウジング。
【請求項9】
請求項1から
8までのいずれか1項記載のタービンハウジング(1)を有する排ガスタービン(15)。
【請求項10】
前記排ガスタービンは、前記タービンハウジング(1)に結合された軸受ハウジング(14)を有し、前記タービンハウジングは、結合要素(15)を用いて前記軸受ハウジングに結合されている、請求項
9記載の排ガスタービン。
【請求項11】
前記排ガスタービンは、それぞれ1つまたは複数の結合要素(15)によって前記タービンハウジング(1)の前記結合フランジ(2)と前記軸受ハウジング(14)とに押し付けられている緊締要素(16)を有する、請求項
10記載の排ガスタービン。
【請求項12】
前記緊締要素(16)は、
前記緊締縁部(7)に押し付けられている、請求項11記載の排ガスタービン。
【請求項13】
前記結合要素(15)は、ねじまたはねじ山付きピンである、請求項
10から
12までのいずれか1項記載の排ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低応力の結合フランジを備えたタービンハウジングおよびこのようなタービンハウジングを備えた排ガスタービンに関する。実施形態に応じて、排ガスタービンは、例えば、ターボチャージャ用のターボチャージャタービンまたは出力タービンであってよい。
【0002】
背景技術
米国特許出願公開第2015/0143814号明細書に基づいて、ガスタービンの一体の排ガスシステムが公知である。この排ガスシステムは、タービン出口ハウジングとタービン排ガスマニホールドとを有しており、タービン出口ハウジングは、外方に向かって方向付けられたインタフェースフランジでタービン排ガスマニホールドに結合されている。この構成は、必要な場合にタービン排ガスマニホールドを、簡単な連結解除によってタービン出口ハウジングから解離させて、新しい部材と交換することを可能にする。
【0003】
欧州特許出願公開第3103972号明細書に基づいて公知のガスタービンでは、高圧タービンハウジングが、外側に向かって方向付けられたフランジでディフューザハウジングに結合されている。
【0004】
欧州特許出願公開第1273760号明細書に基づいて公知のターボチャージャでは、タービン流入スクロールと、円形の通路を画定するタービンノズルリングとの間に、シール手段が配置されている。
【0005】
典型的なターボチャージャは、タービンハウジング、軸受ハウジングおよびコンプレッサハウジングを有しており、タービンハウジングは軸受ハウジングに結合されていて、さらに、軸受ハウジングはコンプレッサハウジングに結合されている。
【0006】
タービンハウジングと軸受ハウジングとの間の結合部は、複数の要求を満たす必要がある。これらの要求としては、シール性の保証、外力に基づく両ハウジングの間の回動の阻止およびバースト時でも両ハウジングの結合を保証することが挙げられる。これらの要求を満たすことができるようにするために、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間の結合部は、特に、この結合部がタービンハウジングと軸受ハウジングとの間の大きな温度差およびバースト時における大きな力に適合させられるように形成されていなければならない。確実な安全確保(英語ではcontainment「コンテインメント」と呼ばれる)は、このようなバースト時に、排ガスタービンに課される極めて重要な要求であり、ひいては、構造的に極めて程度の高い要求である。
【0007】
タービンハウジングと軸受ハウジングとを緊締リングの使用下で結合することは既に知られており、この緊締リングは、タービンハウジングのフランジの端部分を、軸受ハウジングのフランジの、タービンハウジングのフランジの端部分に接触している端部分に結合している。このような緊締リング結合部は、特に比較的低出力のターボチャージャで使用される。このような緊締リング結合部の欠点としては、この緊締リング結合部が、大きな力が作用するバースト発生時に、両ハウジングの結合を保証することができないということにある。
【0008】
比較的高出力のターボチャージャ、例えば、ターボチャージャごとに500KWよりも高い機関出力を有するターボチャージャでは、実際、タービンハウジングと軸受ハウジングとの結合は、タービンハウジングの、緊締プレートを備えたフランジの使用下で行われている。これらの緊締プレートを通して、例えばねじが貫通案内されており、このねじは、タービンハウジングのねじ山付き孔にねじ込まれていて、上述した緊締プレートをタービンハウジングと、タービンハウジングに隣り合った軸受ハウジングとに押し付け、これによって、軸受ハウジングもタービンハウジングに押し付けられる。このような緊締プレートフランジを使用する場合には、バースト発生時における強い力に基づいて、タービンハウジング内へのねじの比較的大きな進入深さが必要になる。ねじのこのような大きな進入深さを提供することができるようにするためには、タービンハウジングの結合フランジの厚さを相応に大きく寸法設定することが必要である。結合フランジのこの大きな厚さは、一方で結合フランジの剛性を高めるものの、他方でタービンハウジングの結合フランジの比較的ゆっくりとした不均一な加熱を生じさせる。これによって、タービンハウジングにおける過渡熱応力、特にタービンハウジングの結合フランジの領域ならびにタービンハウジングの舌片の領域における過渡熱応力が高くなる。より高い過渡熱応力によって、さらに、タービンハウジングの耐用寿命ひいてはターボチャージャ全体の耐用寿命が短くなってしまう。
【0009】
図1には、従来技術によるタービンハウジングを示すための第1の断面図が示してある。このタービンハウジング1は、結合フランジ2を有していて、この結合フランジ2を介してタービンハウジング1は、ターボチャージャの軸受ハウジング14に結合されている。この結合は、結合フランジ2のハウジング結合孔3にねじ込まれた結合要素15の使用下で実現されており、これらの結合要素15は、ナット17を用いて緊締プレート16を、タービンハウジング1の結合フランジ2と軸受ハウジング14とに押し付け、これによって、さらに、軸受ハウジング14は、タービンハウジング1に押し付けられる。上述したハウジング結合孔3は、周方向で互いに離間させられていて(つまり、互いに空間的に遠ざけられていて)、周方向で1つの円に沿って配置されている。緊締プレート16も同じくタービンハウジング1の周方向で1つの円に沿って配置されている。上述したように、タービンハウジング1と軸受ハウジング14との間の結合部に課される要求は高いので、結合フランジ2内への結合要素15の進入深さは大きくなければならない。このことは、さらに、タービンハウジング1と軸受ハウジング14との結合部の領域に、結合フランジ2の比較的大きなフランジ厚さ19を必要とする。
【0010】
図2には、従来技術によるタービンハウジングを示すための第2の断面図が示してある。この第2の断面図には、結合要素15がタービンハウジングの結合フランジ2のハウジング結合孔3にねじ込まれている結合態様が示されている。
図2からも分かるように、緊締プレート16はタービンハウジングの結合フランジ2と軸受ハウジング14とに押し付けられており、このことは、ナット17とワッシャ18との使用によって実現されている。
【0011】
発明の課題
本発明の課題は、ターボチャージャに基づき上述した欠点が減じられているタービンハウジングおよび排ガスタービンを提供することである。
【0012】
発明の概要
この課題は、請求項1に記載の特徴を有するタービンハウジングもしくは請求項11に記載の特徴を有する排ガスタービンによって解決される。
【0013】
このようなタービンハウジングは、軸受ハウジング側で軸受ハウジングに取り付けるための結合フランジを有し、結合フランジに、周方向で互いに離間させられたハウジング結合孔が設けられており、結合フランジにおいて、互いに隣り合ったハウジング結合孔の間に、半径方向内向きにタービンハウジングの長手方向中心軸線の方向に開放された材料切欠きが設けられている。実施形態および要求に応じて、タービンハウジングは、複数の部分から成っていてもよい。必要に応じて、タービンハウジングと軸受ハウジングとの間に熱シールドまたはノズルリングが配置されていてよい。
【0014】
いずれにせよ、記載全体において、「孔」という概念は機能的に解釈すべきものであり、製造に関して、穿孔機またはフライス加工機を用いた機械式の加工に起因するものではない。
【0015】
本発明の1つの実施形態によれば、互いに離間させられたハウジング結合孔は、結合フランジに少なくとも1つの円に沿って配置されている。
【0016】
本発明の1つの実施形態によれば、タービンハウジングは、ハウジング結合孔に半径方向で隣り合って配置された緊締縁部を有する。
【0017】
本発明の1つの実施形態によれば、緊締縁部に、凹部底を有する環状の凹部が設けられており、互いに隣り合ったハウジング結合孔は、凹部底に形成されており、互いに隣り合ったそれぞれ2つのハウジング結合孔の間に設けられた材料切欠きは、凹部底に設けられている。
【0018】
本発明の1つの実施形態によれば、緊締縁部は、互いに隣り合った2つのハウジング結合孔の間の領域に、環状の凹部を拡大するそれぞれ1つの緊締縁部切欠きを有する。
【0019】
本発明の1つの実施形態によれば、緊締縁部切欠きの深さは、環状の凹部の深さと、環状の凹部に設けられた材料切欠きの深さとの総和に合致している。
【0020】
本発明の1つの実施形態によれば、タービンハウジングは、複数の部分から形成されている。
【0021】
本発明の1つの実施形態によれば、緊締縁部は、タービンハウジングの別体の構成部分を形成している。
【0022】
本発明の1つの実施形態によれば、熱シールドまたはノズルリングは、タービンハウジングの別体の構成部分を形成している。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、緊締縁部は、熱シールドまたはノズルリングの構成要素である。
【0024】
本発明の1つの実施形態によれば、排ガスタービンは、本発明に係る特徴を有するタービンハウジングを有する。
【0025】
本発明の1つの実施形態によれば、排ガスタービンは、タービンハウジングに結合された軸受ハウジングを有し、タービンハウジングは、結合要素を用いて軸受ハウジングに結合されている。
【0026】
本発明の1つの実施形態によれば、排ガスタービンは、それぞれ1つまたは複数の結合要素によってタービンハウジングの結合フランジと軸受ハウジングとに押し付けられている緊締要素を有する。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、排ガスタービンの緊締要素は、緊締縁部に押し付けられている。
【0028】
構造的にかつ組立て技術的に簡単な実施形態では、結合要素は、ねじまたはねじ山付きピンである。
【0029】
本発明の利点は、特に、ハウジング結合孔同士の間に設けられた材料切欠きが、各々の排ガスタービンの運転時に、結合フランジ領域のより迅速かつより均一な昇温を可能にすることにある。さらに、材料切欠きに基づいて、結合フランジの領域に、タービンハウジングの減じられた剛性が存在している。これによって、排ガスタービンの運転時に、より僅かな過渡熱応力しか発生しない。これによって、さらに、タービンハウジングの耐用寿命ひいては排ガスタービン全体の耐用寿命が延ばされる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】従来技術によるタービンハウジングを示すための第1の断面図である。
【
図2】従来技術によるタービンハウジングを示すための第2の断面図である。
【
図3】本発明に係るタービンハウジングを示すための略図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態を示すための、半径方向における断面図である。
【
図5】
図4に示した断面線C-Cに沿った断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態を示すための略図である。
【
図7】
図6に示した断面線A-Aの方向における断面図である。
【
図8】本発明の別の実施形態を示すための略図である。
【
図9】
図8に示した断面線B-Bの方向における断面図である。
【0031】
実施例の詳細な説明
図3には、本発明に係るタービンハウジングを示すための略図が示してあり、
図3には、単にタービンハウジングの一部領域だけが示してある。タービンハウジングは、タービンハウジングの長手方向中心軸線21に対して同軸に配置された結合フランジ2を有しており、この結合フランジ2には、緊締縁部7が設けられている。この緊締縁部7には、半径方向8で内側に向かって延在している複数の結合ウェブ19が設けられており、これらの結合ウェブ19には、ハウジング結合孔3が形成されている。上述した結合ウェブ19ひいては結合ウェブ19に形成されたハウジング結合孔3も、タービンハウジングの周方向9で互いに離間させられている。結合ウェブ19およびハウジング結合孔3は、周方向9で結合フランジに1つまたは複数の円に沿って配置されている。周方向9で互いに離間させられたそれぞれ2つのハウジング結合孔3の間で、結合フランジ2の緊締縁部7には、半径方向内側に向かって開放した材料切欠き4が設けられている。これらの材料切欠き4は、材料除去によって結合フランジの緊締縁部に形成することができるか、または賦形製造法の使用時には直接形作ることができる。材料切欠きの幾何学形状は、種々様々に選択することができる。材料切欠きは、例えば半円形、楕円形、鐘形または四角形に形成されていてよい。
【0032】
タービンハウジングと、ターボチャージャの、
図3に示していない軸受ハウジングとの結合は、
図2に関連して上述したのと同様に、結合フランジ2のそれぞれ1つのハウジング結合孔3内に挿入された結合要素の使用により行われ、さらに、タービンハウジングの周方向で1つの円に沿って配置された緊締要素であって、1つの実施形態では緊締プレートである緊締要素は、タービンハウジングと軸受ハウジングとに押し付けられ、このことは、それぞれナットとワッシャとの使用によって実現されている。
【0033】
従来技術とは異なって設けられた材料切欠き4によって、ターボチャージャの運転時に、タービンハウジングの結合フランジ2がより迅速かつより均一に昇温される。さらに、結合フランジ2に形成された材料切欠き4に基づいて、タービンハウジングの剛性が結合フランジ2の領域で減じられる。これによって、さらに、結合フランジ2の領域に、従来技術に比べて減じられた過渡熱応力しか発生しなくなる。結合フランジ2の領域における過渡熱応力のこの低減によって、タービンハウジングの耐用寿命ひいてはターボチャージャ全体の耐用寿命も延ばされる。
【0034】
図4には、本発明の1つの実施形態を示すための半径方向における断面図が示してある。タービンハウジングの結合フランジ2と、結合フランジ2ひいてはタービンハウジングに結合された軸受ハウジング14とが示されている。さらに
図4から分かるように、図示の切断平面では緊締プレート16を使用した、タービンハウジングと軸受ハウジング14との結合が実現されている。緊締プレート16は、タービンハウジングの結合フランジ2と軸受ハウジング14とに押し付けられる。この押付けは、ナット17と、ナット17と緊締プレート16との間に配置されたワッシャ18とを使用して実現されている。さらに
図4から明らかなように、この押付けによって、軸受ハウジング14は、タービンハウジングの結合フランジ2に押し付けられる。それというのは、軸受ハウジング14が、半径方向外側に向かって、つまり、
図4で上方に向かって方向付けられた緊締縁部を有していて、この緊締縁部の背面が、結合フランジ2の、半径方向で内側に向かって、つまり、
図4で下方に向かって方向付けられた延長部に押し付けられるからである。最後に、
図4には、
図3に示された材料切欠き、即ち開口4のうちの1つの開口4も見ることができ、この開口4は、タービンハウジングと軸受ハウジング14とが互いに結合された状態において、図示の切断平面では、軸線方向で緊締プレート16と結合フランジ2との間に設けられている。
【0035】
図5には、
図4に示した断面線C-Cに沿った断面図が示してある。この図から特に分かるように、周方向9で互いに離間させられたそれぞれ2つのハウジング結合孔3であって、結合要素15が挿入されているハウジング結合孔3同士の間には、タービンハウジングの結合フランジ2の緊締縁部7に、材料切欠き4が設けられており、この材料切欠き4は、図示の切断平面において半径方向8で軸受ハウジング14の外側に位置していて、半径方向内側に向かって開放されている。
【0036】
図6には、本発明の別の実施形態を示すための略図が示してある。この別の実施形態では、タービンハウジングの結合フランジ2の緊締縁部7の半径方向内側の縁部領域に、環状の凹部5が設けられており、この凹部5は、周方向9でタービンハウジングの全周にわたって延在している。この環状の凹部5は、凹部底6を有している。
【0037】
本発明のこの実施形態では、周方向9で互いに離間させられたハウジング結合孔3が、環状の凹部5の凹部底6に形成されている。
【0038】
さらにこの実施形態では、互いに隣り合ったそれぞれ2つのハウジング結合孔3の間に設けられた材料切欠き4も同じく環状の凹部5の凹部底6に形成されている。材料切欠き4は、半径方向8で凹部底6全体にわたって延在している。
【0039】
環状の凹部5の凹部底6へのハウジング結合孔3および材料切欠き4の形成によって、軸受ハウジングとのタービンハウジングの結合領域におけるタービンハウジングの結合フランジ2の厚さ、ひいては、ターボチャージャの運転時に発生する結合フランジ2における過渡熱応力は、さらに減じられる。
【0040】
図7には、
図6に示した断面線A-Aの方向における断面図が示してある。この
図7では、凹部底6に形成されたハウジング結合孔3の深さが符号12で示してある。さらに
図7から分かるように、この実施形態では、材料切欠き4の深さは、凹部底6に形成されたハウジング結合孔3の深さ12と同じである。別の実施形態によれば、材料切欠き4の深さは、ハウジング結合孔3の深さと異なっていてもよい。環状の凹部5の深さは、符号11で示してある。環状の凹部の深さ11と、凹部底6に形成されたハウジング結合孔3の深さ12との和は、符号20で示してある。
【0041】
図8には、本発明の別の実施形態を示すための略図が示してある。この別の実施形態でも同様に、タービンハウジングの結合フランジ2の緊締縁部7の半径方向内側の縁部領域に、環状の凹部5が設けられており、この凹部5は、周方向9でタービンハウジングの全周にわたって延在している。環状の凹部5の凹部底6には、同様に周方向9で互いに離間させられたハウジング結合孔3が形成されており、これらのハウジング結合孔3同士の間には材料切欠き4が位置している。これらの切欠き4は、半径方向8で内側に向かって開放されていて、緊締縁部7の領域内にまで延在している。その結果、この改良形態では、緊締縁部7が、それぞれ互いに隣り合った2つのハウジング結合孔3の間に設けられた緊締縁部切欠き10を有している。この緊締縁部切欠き10は、図示の実施例では半径方向8で緊締縁部7全体を貫いて延在している。
【0042】
図9には、
図8に示した断面線B-Bの方向における断面図が示してある。この
図9によれば、緊締縁部7に設けられた緊締縁部切欠き10は、第1の深さ20を有している。環状の凹部5は、第2の深さ11を有している。凹部底6に形成されたハウジング結合孔3は、第3の深さ12を有している。緊締縁部切欠き10の第1の深さ20は、図示の実施例では、環状の凹部5の第2の深さ11と、環状の凹部5に設けられたハウジング結合孔3の第3の深さ12との合計と同じである。深さ20、深さ11および深さ12は、それぞれタービンハウジングの軸線方向13に延びている。
【0043】
次に、本発明の好適な全般的な態様について記載する。符号は、上述した全ての実施形態に関係しているが、言及は、個々の実施形態に制限されるものではなく、むしろ任意の実施形態および態様と組合せ可能である。
【0044】
1つの態様によれば、ハウジング結合孔3に加えて結合フランジ2に形成された切欠き4;10に基づいて、結合フランジ2のフランジ厚さは減じられており、この結果、従来技術に比べて、結合フランジ2において発生する過渡熱応力が減じられ、これによって、タービンハウジングの耐用寿命ひいてはターボチャージャ全体の耐用寿命が延ばされる。このターボチャージャは、上述したタービンハウジングを有している。
【0045】
別の態様によれば、このターボチャージャは、タービンハウジングに結合された軸受ハウジング14を有しており、タービンハウジングは、タービンハウジングのハウジング結合孔3に挿入された結合要素15を用いて軸受ハウジング14に結合されており、結合要素15は、例えばねじまたはねじ山付きピンである。
【0046】
別の態様によれば、ターボチャージャは、緊締プレート16として実現された緊締要素を有しており、この緊締要素は、それぞれ1つまたは複数の結合要素15によって、タービンハウジングの結合フランジ2と、軸受ハウジング14とに押し付けられている。このとき、緊締要素は、結合フランジ2の緊締縁部7に押し付けられている。緊締プレートの代わりに、例えば緊締ディスクまたは緊締リングを使用することも可能である。緊締要素は、好ましくは少なくとも僅かに弾性的に形成されており、これによって緊締要素をナットの締付け時に少なくとも僅かに撓ませることができる。
【0047】
別の態様によれば、結合フランジ2に設けられた互いに離間させられたハウジング結合孔3は、周方向で少なくとも1つの円に沿って、好ましくは最大で3つまたは最大で2つの(互いにかつ/またはタービン軸線に対して同心の)円に沿って配置されていて、少なくとも1つの円全体に沿って、好ましくは円の全周にわたって規則的な間隔を置いて分配されている。必要なハウジング結合孔3の数は、損傷時における強度要求(コンテインメント)とシール性要求とに応じて調整される。
【0048】
別の態様によれば、結合フランジ2に設けられた互いに離間させられたハウジング結合孔3は、周方向で2つ以上の円に沿って配置されていてもよく、例えば、それぞれ2つ目のハウジング結合孔3は、第1の円に沿って配置されていて、その間に配置されている各々のハウジング結合孔3は、第2の円に沿って配置されている。
【0049】
1つの態様によれば、結合フランジ2は、少なくとも5つのハウジング結合孔3を有しており、かつ/または互いに隣り合ったハウジング結合孔3の間に材料切欠き4のうちの少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つ、特に好ましくは少なくとも5つを有している。
【0050】
別の態様によれば、全てのハウジング結合孔3の間に材料切欠き4が設けられている。材料切欠き4は、半径方向内側に向かって開放されている。材料切欠き4は、好ましくは軸線方向で結合フランジ2の(例えば環状の)背面によって閉鎖されている、つまり、軸線方向で貫通していない。
【0051】
このような態様の代わりに、材料切欠き4は、全てのハウジング結合孔3の間に設けられているのではなく、耐用寿命に対する影響が重大である箇所にだけ、例えばスクロールへの進入の領域にだけ設けられていてよい。
【0052】
1つの態様によれば、結合フランジ2は、タービンハウジングの長手方向中心軸線21に対して同軸に配置されている。
【0053】
別の態様によれば、結合フランジ2は、排ガスタービンの軸受ハウジングに向かって方向付けられているか、もしくはタービンハウジングと軸受ハウジング(付加的に、フランジと軸受ハウジングの対応部分との間における、熱シールドおよび/またはディフューザリングの一部)との結合のために配置されている。
【0054】
1つの態様によれば、材料切欠き4は、両ハウジング結合孔3の中心間における間隔の半分よりも大きな、周方向における円弧長さを有している。
【0055】
1つの態様によれば、結合フランジ2は結合ウェブ19を有しており、これらの結合ウェブ19は、ハウジング結合孔3を少なくとも部分的に直に取り囲んでいて、周方向で、互いに隣り合ったハウジング結合孔3と、その間に位置している材料切欠き4との間に配置されている。
【0056】
1つの態様によれば、結合フランジ2は緊締縁部7を有しており、この緊締縁部7は、ハウジングに半径方向8で隣り合っている。
【0057】
1つの態様によれば、結合ウェブ19は、緊締縁部7を起点として半径方向内側に向かって延びている。緊締縁部7は、タービンハウジングの別体の部分として設けられていてもよいし、残りのタービンハウジングもしくは結合フランジ2と一体に設けられていてもよい。
【0058】
1つの態様によれば、タービンハウジングは、複数の部分から形成されていてよい。この場合には、熱シールドまたはノズルリングは、タービンハウジングの別体の部分を形成していてよい。タービンハウジングの緊締縁部7は、この場合、熱シールドまたはノズルリングの一部であってよく、つまり、熱シールドまたはノズルリングに組み込まれていてよい。
【0059】
1つの態様によれば、結合ウェブ19は、緊締縁部7に比べて軸線方向に引っ込んで(vertieft)配置されている。言い換えれば、緊締縁部7は(例えば1mm未満だけ、またはそれどころか最大で0.5mmだけかつ/または0.1mmよりも大きく)、軸線方向で結合ウェブ19を越えて張り出している(例えば、タービンハウジングから離れる方向にもしくは排ガスタービンの軸受14ハウジングに向かって張り出している)。したがって、結合ウェブ19は、凹部底の一部を形成している。1つの態様によれば、互いに隣り合ったそれぞれ2つのハウジング結合孔3の間に設けられた材料切欠き4は、結合ウェブ19に比べてさらに軸線方向に引っ込んで配置されている。
【0060】
1つの態様によれば、緊締縁部7は、周方向で連続して(中断部なしに)延びていてもよいし、切欠きを有していてもよい。
【0061】
1つの態様によれば、結合フランジ2は、凹部底6を有する環状の凹部5を有している。
【0062】
1つの態様によれば、互いに隣り合ったハウジング結合孔3は、凹部底6に形成されている。
【0063】
1つの態様によれば、互いに隣り合ったそれぞれ2つのハウジング結合孔3の間に設けられた材料切欠き4は、凹部底6に設けられている。
【0064】
上述したことから分かるように、本発明の好適な態様は、排ガスタービン用のタービンハウジングであって、このタービンハウジングは、排ガスタービンの軸受ハウジングにタービンハウジングを軸受ハウジング側で取り付けるための結合フランジ2を有している、タービンハウジングに関する。この結合フランジ2は、好ましくはタービンハウジングの軸受ハウジング14側の側壁である。タービンハウジングの側壁は、好ましくは軸受ハウジング14のタービン側の側壁との直接的な結合のために形成されているか、もしくは軸受ハウジング14のタービン側の側壁に直接結合されている。タービンハウジングの側壁は、好ましくは、(タービンハウジングのハウジング結合孔3に進入する)共通の結合要素15、例えば結合ねじを用いた軸受ハウジング14のタービン側の側壁との結合のために形成されているか、もしくはこのような共通の結合要素15を用いて軸受ハウジング14のタービン側の側壁に結合されている。好適な1つの態様によれば、結合箇所には、半径方向外側に向かって方向付けられた結合フランジは設けられておらず、かつ/またはこのような結合フランジは、タービンハウジングと軸受ハウジングとを結合するために必要でない。
【符号の説明】
【0065】
1 タービンハウジング
2 結合フランジ
3 ハウジング結合孔
4 材料切欠き(開口)
5 結合フランジに設けられた環状の凹部
6 凹部底
7 結合フランジの緊締縁部
8 半径方向
9 周方向
10 緊締縁部切欠き
11 環状の凹部5の深さ
12 ハウジング結合孔3の深さ
13 軸線方向;タービンハウジングの長手方向中心軸線21の方向
14 軸受ハウジング
15 結合要素
16 緊締要素
17 ナット
18 ワッシャ
19 結合ウェブ
20 環状の凹部5の深さとハウジング結合孔3の深さとの総和
21 タービンハウジングの長手方向中心軸線